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  • 特許-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20240401BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/087 325
G03G9/087 331
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019224126
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021092706
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 崇
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 悟崇
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 努
(72)【発明者】
【氏名】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】芝原 昇平
(72)【発明者】
【氏名】山本 侑奈
【審査官】川口 真隆
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/09
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及びアゾ色素を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットを有する重合体である重合体Aを有し、
該アゾ色素が、C.I.Pigment Yellow 74であり、
該トナー粒子中の、該メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)、該アゾ色素の物質量(mol)、及び該アゾ色素中のアゾ基数の関係が下記式を満足することを特徴とするトナー。
0.006≦[アゾ色素の物質量(mol)×アゾ色素中のアゾ基数/メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)]≦0.433
【請求項2】
前記結着樹脂中の前記重合体Aの含有量が、50.0質量%以上である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記重合体Aが、下記式(Z)で示されるビニル系モノマーに由来するモノマーユニットを有する請求項1又は2に記載のトナー。


[式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基を表し、RZ2は、シアノ基以外の任意の置換基を表す。]
【請求項4】
前記アゾ色素の分子量の、前記アゾ色素中のアゾ基数に対する比(アゾ色素の分子量/アゾ基数)が500.0以下である請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記重合体Aが、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットを有する請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記重合体A中の、前記炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットの含有量が、1.0モル%~50.0モル%である請求項に記載のトナー。
【請求項7】
前記アゾ色素の含有量が、前記結着樹脂100質量部に対し、1質量部~20質量部である請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記重合体Aが、ビニル系ポリマーである請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法に用いられるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像の画質を向上させる観点から、高着色力のトナーや高い画像光沢を発現するトナーが要求されている。これに対し、トナーに含有される結着樹脂及び着色剤について様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1では、スチレン、アクリロニトリル及びn-ブチルアクリレートを含有する結着樹脂と、カーボンブラック及びニグロシン染料を着色剤に用いたトナーが提供されている。
また、特許文献2では、スチレン、アクリロニトリル及びベヘニルアクリレートを含有する結着樹脂と、カーボンブラックを着色剤に用いたトナーが提供されている。
また、特許文献3では、スチレン、n-ブチルアクリレート及びメタクリル酸を含有する結着樹脂と、アゾ色素であるC.I.ピグメントイエロー155又はC.I.ピグメントイエロー180を着色剤に用いたトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-226473号公報
【文献】特開2014-130243号公報
【文献】特開2019-74727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のトナーでは確かに着色力が向上したり、画像光沢が向上したりする傾向が見られたが、未だ改善の余地があることがわかった。
また、本発明者らの検討により、アゾ色素を有するトナーにおいて、高着色力及び転写ボソの抑制の両立という課題に関しても改善の余地があることがわかった。
本開示は、アゾ色素を含有するトナーにおいて、高着色力及び転写ボソの抑制を両立し、さらに高い画像光沢を発現するトナーの提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
結着樹脂及びアゾ色素を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットを有する重合体である重合体Aを有し、
該アゾ色素が、C.I.Pigment Yellow 74であり、
該トナー粒子中の、該メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)、該アゾ色素の物質量(mol)、及び該アゾ色素中のアゾ基数の関係が下記式を満足することを特徴とするトナー。
0.006≦[アゾ色素の物質量(mol)×アゾ色素中のアゾ基数/メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)]≦0.433
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、アゾ色素を含有するトナーにおいて、高着色力及び転写ボソの抑制を両立し、さらに高い画像光沢を発現するトナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】タンデム方式の画像形成装置の例
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0009】
本発明者らは、以下のトナーにより上記課題を解決できることを見出した。
結着樹脂及びアゾ色素を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットを有する重合体である重合体Aを有し、
該トナー粒子中の、該メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)、該アゾ色素の物質量(mol)、及び該アゾ色素中のアゾ基数の関係が下記式を満足することを特徴とするトナー。
[アゾ色素の物質量(mol)×アゾ色素中のアゾ基数/メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)] ≦ 0.500
【0010】
本発明者らは、トナー粒子中のアゾ色素の分散性を向上させることで、トナーの高着色力を達成することを検討してきた。
アゾ色素の分散性を向上させるために、アゾ色素と親和性が高いモノマーユニットを有する重合体の検討を実施した。重合体全体にムラなくアゾ色素と親和性の高い構造が配置されると、トナー中のアゾ色素の分散性が飛躍的に向上することがわかった。
そして、本発明者らはシアノ基を有するモノマーユニットがアゾ色素との親和性が高いことを見出した。これは、アゾ色素中のアゾ基と重合体中のシアノ基が相互作用するためであると本発明者らは推測している。
【0011】
本発明者らは、シアノ基を有するモノマーユニットとアゾ色素との親和性が高くなることで、トナー粒子中のアゾ色素の分散性が向上し、着色力が向上することを見出した。
しかしながら、シアノ基を有するモノマーユニットとして、例えばアクリロニトリルに由来するモノマーユニットを用いた場合に、転写不良に由来する転写ボソが発生するという別の課題が見られた。
【0012】
転写ボソとは、均一な濃度の画像を出力する際に、ところどころで転写されないトナーがあるために、画像の面内均一性が低下する画像不良のことである。
これは、トナーの帯電保持性の低下が原因であると考えられ、トナーに帯電した電荷が、シアノ基の電子求引性により奪われたためであると本発明者らは考えている。
シアノ基の電子求引性を抑制するために、本発明者らが鋭意検討したところ、モノマーユニットに電子供与性基を有し、かつ、シアノ基に該電子供与性基が近接していることが重要であることを見出した。
【0013】
すなわち、結着樹脂が、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットを有する重合体である重合体Aを有していることが重要である。
メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットは、電子供与性基であるメチル基が電子求引性基であるシアノ基に近接した構造を有している。そのため、シアノ基の電子求引性を効率的に抑制できると考えており、トナーの帯電保持性が向上し、転写ボソの抑制につながったと予想している。
【0014】
トナー粒子中の、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)
、アゾ色素の物質量(mol)、及びアゾ色素中(アゾ色素一分子中)のアゾ基数の関係が、下記式を満たすことが重要である。
[アゾ色素の物質量(mol)×アゾ色素中のアゾ基数/メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)] ≦ 0.500
【0015】
[アゾ色素の物質量(mol)×アゾ色素中のアゾ基数/メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの物質量(mol)](以下、[A×アゾ基数/M]とも表記する。)が0.500以下であるということは、トナー粒子中のアゾ基数に対して、メタクリロニトリル由来のシアノ基が十分に存在することを意味する。そのため、0.500以下であると顔料分散性が向上し、上記効果を発現できるようになる。0.500以上になると顔料分散性が低下する。
なお、[A×アゾ基数/M]が、0.010以上0.050以下であることが好ましい。
【0016】
[A×アゾ基数/M]が0.050以下になると、顔料分散性がより向上する。
また、[A×アゾ基数/M]が0.010以上になると、帯電保持性が向上し、転写ボソをより抑制できる。
[A×アゾ基数/M]は、トナー粒子中の重合体Aの量、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニット数、アゾ色素の種類、量により調整することができる。
【0017】
次に、結着樹脂中の重合体Aの含有量が、50.0質量%以上であることが好ましく、80.0質量%以上であるとより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは100.0質量%以下である。
結着樹脂中の重合体Aの含有量が50.0質量%以上であると、結着樹脂中にメタクリロニトリルに由来するモノマーユニット数が多くなるため、顔料分散性が向上しやすくなる。80.0質量%以上であると、より顔料分散性が向上しやすくなる。
【0018】
重合体A中のメタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの含有量は、10質量%~75質量%であることが好ましく、25質量%~65質量%であることがより好ましい。また、重合体A中のメタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの含有量は、15.0mol%~85.0mol%であることが好ましく、25.0mol%~70.0mol%であることがより好ましい。
【0019】
次に、重合体Aは、ビニル系ポリマーであることが好ましい。そして、重合体Aが、下記式(Z)で示されるビニル系モノマーに由来するモノマーユニットを有することが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
[式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、RZ2は、シアノ基以外の任意の置換基を表す。]
重合体Aが、式(Z)で示すことができるビニル系モノマーに由来するユニットを有すると、帯電保持性が向上しやすくなる。また、重合体Aの脆性やガラス転移温度なども調整できるため、耐久性、定着性、および保存性の観点から好ましい。
Z2は、好ましくは炭素数1~12(より好ましくは1~6)のアルキル基又はフェ
ニル基である。
【0022】
具体的には、
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エチルスチレンなどのスチレン系単量体;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類;
などが挙げられる。その他、アクリルアミドなども挙げられる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
上述の重合性単量体の中でも、スチレン及び/又はスチレン誘導体を単独で、あるいはアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類と組み合わせて使用することがより好ましい。
重合体A中の式(Z)で示されるビニル系モノマーに由来するモノマーユニットの含有量は、5質量%~90質量%であることが好ましく、15質量%~65質量%であることがより好ましい。また、重合体A中のメタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの含有量は、10.0mol%~85.0mol%であることが好ましく、15.0mol%~70.0mol%であることがより好ましい。
【0023】
なお、本開示において、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。
(モノマーユニットを算出する場合は、式(Z)で表されるビニル系モノマー中のRZ2は、シアノ基も含まれる任意の置換基を表す。)
【0024】
重合体Aは、GPCにより測定されるTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、20000以上150000以下であることがより好ましい。Mwが上記範囲内であることで、室温付近での弾性が維持しやすくなり、耐久性が向上しやすくなる。
【0025】
次に、アゾ色素として、芳香族アゾ化合物が挙げられる。例えば、以下のものが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、C.I.Pigment Yellow 13、14、17、62、74、81、83、93、94、95、97、111、116、120、128、150、151、154、155、165、168、180、183、及び214、並びにC.I.Solvent Yellow 162などからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
【0026】
マゼンタ用着色剤としては、C.I.Pigment Red 5、31、57:1、144、146、147、150、166、170、176、178、185、220、221、238、及び269などからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
【0027】
これらの中で、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pi
gment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、及びC.I.Pigment Yellow 180からなる群から選択される少なくとも一イエロー用着色剤を含むことが好ましい。これらのアゾ色素であると、顔料分散性がより向上しやすくなる。
【0028】
アゾ色素の分子量の、アゾ色素中のアゾ基数に対する比(アゾ色素の分子量/アゾ基数)が、500.0以下であることが好ましく、400.0以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは250.0以上であり、より好ましくは300.0以上である。
(アゾ色素の分子量/アゾ基数)が500.0以下であることは、アゾ色素中のアゾ基数が多いことを示す。そのため、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニット中のシアノ基との親和性が高くなりやすいため、顔料分散性が向上しやすくなる。
【0029】
次に、アゾ色素の分子量が500.0以下であることが好ましく、400.0以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは250.0以上であり、より好ましくは300.0以上である。
アゾ色素の分子量が500.0以下であるとメタクリロニトリルに由来するモノマーユニット中のシアノ基との親和性がより高くなるため、顔料分散性が向上しやすくなる。特に、懸濁重合法のような水系媒体中でトナー粒子を製造する場合には、顔料分散性が向上しやすくなる。
【0030】
結着樹脂100質量部に対するアゾ色素の含有量が結着樹脂に対して1質量部~20質量部であることが好ましく、2質量部~10質量部であることがより好ましい。該含有量が1質量部以上であると着色力が向上する。一方、20質量部以下であると、例えば、懸濁重合法のような水系媒体中でトナー粒子を製造する場合には、顔料分散性が向上しやすくなる。
【0031】
次に、重合体Aが、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットを有することが好ましい。
重合体Aが、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットを有することで、トナーのシャープメルト性が向上しやすくなり、定着グロスが向上しやすくなる。
炭素数が18以上であると、トナーの融点を向上しやすくなり、保存性が向上する。また、炭素数が36以下であると結晶化速度が速くなりやすいため、定着後の紙裏汚れしにくくなる。
【0032】
重合体A中の炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットの含有量は、1.0モル%~50.0モル%であることが好ましく、1.0モル%~25.0モル%であることがより好ましい。該含有量が1.0モル%以上であることで定着グロスが向上しやすくなる。一方、50.0モル%以下であると、顔料分散性が向上しやすくなる。
また、重合体A中の炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットの含有量は、1質量%~75質量%であることが好ましく、3質量%~55質量%であることがより好ましい。
【0033】
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル
、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらのうち、トナーの保存安定性及び定着グロスの観点から、好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましくは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一である。
【0034】
続いて、以下にトナーに用いられるその他の材料について詳細に述べる。
<結着樹脂>
結着樹脂は、重合体Aに加え、本開示の効果を損なわない程度にビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を有してもよい。
中でも、電子写真特性の観点から、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
ビニル系樹脂に使用可能な重合性単量体は、上述した式(Z)で示すことができるビニル系モノマーが挙げられる。
【0035】
【0036】
[式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、RZ2は、シアノ基以外の任意の置換基を表す。]
Z2は、好ましくは炭素数1~12(より好ましくは1~6)のアルキル基又はフェニル基である。
必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの反応により得ることができる。
多価カルボン酸としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸;1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
多価アルコールとしては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール及び1,3-プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。
さらに、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールなど。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも使用することができる。
ポリエステル樹脂の製造方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0040】
次に、ポリウレタン樹脂について述べる。ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する物質との反応物であり、ジオール及びジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。
ジイソシアネート成分としては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物。
【0041】
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
【0042】
これらの中でも好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものは、XDI、IPDI及びHDIである。
また、ジイソシアネート成分に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ポリウレタン樹脂に用いることのできるジオール成分としては、前述したポリエステル樹脂に用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
【0043】
<ワックス>
トナー粒子はワックスを含有してもよい。
ワックスは、例えば以下のものが挙げられる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル等の1価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
セバシン酸ジベヘニル等の2価カルボン酸とモノアルコールのエステル類;
エチレングリコールジステアレート、ヘキサンジオールジベヘネート等の2価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
グリセリントリベヘネート等の3価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート等の4価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテー
ト等の6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ポリグリセリンベヘネート等の多官能アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステルワックス類;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系炭化水素ワックス及びその誘導体;
フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィン系炭化水素ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;
ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;酸アミドワックス等。
トナー粒子中のワックスの含有量は、1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
<重合開始剤>
重合体Aを得るために重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。
具体的には以下のものが挙げられる。
過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等に代表される過酸化物系重合開始剤;
2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等に代表されるアゾ系又はジアゾ系重合開始剤など。
【0045】
<着色剤>
トナーは上述のアゾ色素以外の着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、特段の制限なく従来公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色並びに他の色の顔料及び染料や、磁性体等を用いることができる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部~20.0質量部であることが好ましい。
【0046】
トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等に代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等に代表される金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金及びその混合物等が挙げられる。
磁性体を用いる場合、その含有量は結着樹脂100.0質量部に対し、40.0質量部~150.0質量部であることが好ましい。
【0047】
<荷電制御剤>
トナーは荷電制御剤を含有してもよい。
荷電制御剤としては、特段の制限なく従来公知の荷電制御剤を用いることができる。具体的には、負帯電制御剤として以下の、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物又は上記芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体若しくは共重合体;
スルホン酸基、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;
アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;
ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。
【0048】
また、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。
なお、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体、あるいは結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体等を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部~5.0質量部であることが好ましい。
【0049】
<外部添加剤>
トナーは、外部添加剤を含有してもよい。
外部添加剤としては特段の制限なく従来公知の外部添加剤を用いることができる。具体的には、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の原体シリカ微粒子;それら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子等の樹脂微粒子等が挙げられる。
外部添加剤を含有する場合の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して0.1質量部~5.0質量部であることが好ましい。
【0050】
続いて、トナーの製造方法について詳細に述べる。
トナーの製造方法としては、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法等の従来公知の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。上記方法は重合体製造と同時にトナーを製造する懸濁重合法と、別途製造した重合体を用いてトナーを製造する溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法に大別される。
一例として、懸濁重合法及び乳化凝集法でトナーを得る方法を以下に述べる。
【0051】
<懸濁重合法によるトナーの製造方法>
(分散工程)
メタクリロニトリル、及び必要に応じて式(Z)で示されるビニル系モノマー及び炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの他のビニル系モノマーなどを含む重合性単量体組成物、アゾ色素、並びに必要に応じて各種材料を加え、分散機を用いてこれらを溶融、溶解又は分散させた原材料分散液を調製する。
さらに、必要に応じて材料の項に挙げた、着色剤やワックス、荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、さらに他の添加剤を適宜加えることが可能である。粘度調整のための溶剤としては、上記材料を良好に溶解・分散可能で、水への溶解性が低い溶剤であれば特に制限
なく公知の溶剤を用いることができる。例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル等が挙げられる。また、分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機が挙げられる。
【0052】
(造粒工程)
原材料分散液を、あらかじめ用意しておいた水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機などの分散機を用いて懸濁液を調製する。水系媒体には粒径調整及び凝集抑制のための分散安定剤を含有することが好ましい。分散安定剤としては、特に制限なく従来公知の分散安定剤を使用することができる。
例えば、無機の分散安定剤としてヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等に代表されるリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等に代表される炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等に代表される金属水酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等に代表される硫酸塩、メタケイ酸カルシウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
また、有機の分散安定剤としては以下の、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が挙げられる。
中でも、無機の分散安定剤が電荷の分極が大きく、油相への吸着力が強いために、凝集抑制効果が強く、好ましい。また、pH調整により容易に除去可能であることからヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウムがさらに好ましい。
【0053】
(重合工程)
懸濁液中の重合性単量体を重合して、重合体Aを有するトナー粒子を得る。
重合工程では重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、原材料分散液を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に原材料分散液中に混合してもよい。また、造粒工程中や造粒工程完了後、すなわち重合工程を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合性単量体を重合して重合体を得たあと、必要に応じて加熱又は減圧することで脱溶剤処理を行い、トナー粒子の水分散液を得る。
原材料分散液中に高親水性の非晶性樹脂を添加した場合には、造粒工程から重合工程にかけて、非晶性樹脂がトナー粒子表層へと移行し、シェル層を形成する。
【0054】
(ろ過工程、洗浄工程、乾燥工程、分級工程、外添工程)
トナー粒子の水分散液から固液分離によって固形分を得るろ過工程、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程、粒度調整のための分級工程を行い、トナー粒子を得る。トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。必要に応じてトナー粒子と無機微粉体等の外部添加剤とを混合機を用いて混合・付着させ、トナーを得ることもできる。
【0055】
<乳化凝集法によるトナーの製造方法>
(重合体の製造工程)
重合体の製造方法は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、分散重合法等の従来公知の製造方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
一例として、以下に溶液重合法で重合体を得る方法を説明する。
メタクリロニトリル、及び必要に応じて他のビニル系モノマーを含む重合性単量体組成物をトルエン等の溶媒に溶解した単量体溶解液を調製する。そこに重合開始剤を添加し、重合性単量体を重合することで重合体Aがトルエン等の溶媒に溶解した重合体溶解液を得る。重合体溶解液を、重合体が不溶の溶媒(例えばメタノール等)と混合し、重合体Aを析出させる。析出した重合体Aをろ別・洗浄し、重合体Aを得る。
【0056】
(樹脂微粒子分散液の調製工程)
樹脂微粒子分散液は、公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。例えば、乳化重合法、自己乳化法、有機溶剤に溶解させた樹脂溶液に水系媒体を添加していくことで樹脂を乳化する転相乳化法、又は、有機溶剤を用いず、水系媒体中で高温処理することで強制的に樹脂を乳化する強制乳化法が挙げられる。
一例として、以下に転相乳化法で樹脂微粒子分散液を調製する方法について述べる。
重合体を含む樹脂成分をこれらが溶解する有機溶媒に溶解して、界面活性剤や塩基性化合物を加える。その際、樹脂成分が融点を有する結晶性樹脂であれば、融点以上に加熱して溶解させればよい。続いて、ホモジナイザーなどにより撹拌を行いながら、水系媒体をゆっくり添加し樹脂微粒子を析出させる。その後、加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂微粒子の水系分散液を作製する。
【0057】
ここで、重合体Aを含む樹脂成分を溶解するために使用する有機溶媒は、これらを溶解できるものであればよい。具体的には、トルエン、キシレン等が挙げられる。
調整工程時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
調整工程時に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、及びジエチルアミノエタノールなどの有機塩基が挙げられる。塩基性化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(アゾ色素などの着色剤分散液の調製)
アゾ色素などの着色剤分散液の調製は、公知の分散方法が利用でき、例えばホモジナイザーや、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機などの一般的な分散手段を用いることができ、なんら制限されるものではない。また、分散時に用いられる界面活性剤としては、上述の界面活性剤が挙げられる。
【0059】
(ワックス分散液の調製)
必要に応じてワックス分散液を調製する。ワックス分散液の調製に際しては、水中にワックスを界面活性剤や塩基性化合物などと共に分散した後、ワックスの融点以上の温度に加熱すると共に、強いせん断力が付与できるホモジナイザーや分散機を用いて分散処理する。このような処理を経ることにより、ワックス分散液が得られる。分散時に用いられる界面活性剤としては、上述の界面活性剤が挙げられる。また、分散時に用いられる塩基性化合物としては、上述の塩基性化合物が挙げられる。
【0060】
(凝集粒子形成工程)
凝集粒子形成工程においては、まず、樹脂微粒子分散液、着色剤分散液、及び必要に応じてワックス分散液等を混合して混合液とする。次いで、樹脂微粒子の融点以下の温度で加熱しながらpHを酸性にして凝集させ、樹脂微粒子、着色剤粒子、及び、ワックス粒子を含む凝集粒子を形成することにより、凝集粒子分散液を得る。
【0061】
(第一融合工程)
第一融合工程においては、凝集粒子形成工程に準じた撹拌条件下で、凝集粒子分散液のpHを上昇させることにより凝集の進行を止め、重合体Aの融点以上の温度で加熱を行うことによって融合粒子分散液を得る。
【0062】
(非晶性樹脂微粒子付着工程)
必要に応じて、得られた融合粒子に非晶性樹脂微粒子を付着させてもよい。非晶性樹脂微粒子付着工程では、融合粒子分散液に非晶性樹脂粒子分散液を添加し、pHを下降させることで、融合粒子の表面に、非晶性樹脂粒子を付着させて樹脂付着粒子の分散液を得る。
ここで、この被覆層は、後述するシェル層形成工程を経て形成されるシェル層に相当するものである。なお、非晶性樹脂微粒子分散液は、上述の樹脂微粒子分散液の調製工程に準じて製造することができる。
【0063】
(第二融合工程)
第二融合工程においては、第一融合工程に準じて、樹脂付着粒子分散液のpHを上昇させることにより凝集の進行を止め、重合体の融点以上の温度で加熱を行うことにより樹脂付着粒子を融合させてシェル層が形成されたトナー粒子を得る。
【0064】
(ろ過工程、洗浄工程、乾燥工程、分級工程、外添工程)
その後、トナー粒子の固形分をろ別するろ過工程、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程、粒度調整のための分級工程を行い、トナー粒子を得る。トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。必要に応じてトナー粒子と無機微粉体等の外部添加剤とを混合機を用いて混合・付着させ、トナーを得ることもできる。
【0065】
<その他のシェル層形成方法>
懸濁重合法及び乳化凝集法においては、上述の通りトナー粒子製造と同時にシェル層を形成する方法を用いることができる。また、溶解懸濁法においても懸濁重合法と同様の方法でシェル層形成が可能である。
また、他の方法として、トナーコアを形成した後にシェル層を形成することもできる。以下に一例としてトナーコアの水分散液(以下、トナーコア分散液)に対して乳化凝集法でシェル層を形成する方法を用いてシェル層を形成する方法を述べるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
<乳化凝集法によるシェル層の形成>
トナーコア分散液に対し、上述の乳化凝集法によるトナーの製造方法における、非晶性樹脂微粒子付着工程及び第二融合工程同様の操作を行うことで、シェル層を形成することができる。
その後、トナー粒子の固形分をろ別するろ過工程、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程、粒度調整のための分級工程を行い、トナー粒子を得る。
【0067】
続いて、以下に各物性の測定方法について説明する。
<トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモー
ドの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0068】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0069】
<重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定方法>
重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定は、H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られたH-NMRチャートより、メタクリロニトリルに由来するモノマーユニット
の構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。
同様に、式(Z)で示されるモノマーに由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、式(Z)で示されるモノマーとは異なる重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
さらに、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用している場合は、該(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークから、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの含有割合は、上記積分値S1、S2、及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、n3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
メタクリロニトリルに由来するモノマーユニットの割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
同様に、式(Z)で示されるモノマー、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットの割合は以下のように求める。
式(Z)で示されるモノマーに由来するモノマーユニットの割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットの割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
なお、重合体Aにおいて、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、H-NMRにて同様にして算出する。
また、トナーが懸濁重合法によって製造される場合、離型剤やその他の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合が算出できない場合が生じる。その場合、離型剤やその他の樹脂を使用しないで同様の懸濁重合を行うことで、重合体A’を製造し、重合体A’を重合体Aとみなして分析することができる。
【0070】
<アゾ色素などの着色剤の構造(NMR)>
アゾ色素などの着色剤の構造は、核磁気共鳴分光分析(H-NMR)により分析する。
測定装置:JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:1024回
測定溶媒:DMSO-d6
試料をDMSO-d6に可能な限り溶解し、上記条件で測定を行う。得られるスペクトルのケミカルシフト値及びプロトン比より、試料の構造を算出する。
【0071】
<アゾ色素などの着色剤の含有量の測定>
トナー中のアゾ色素などの着色剤の含有量の測定には、例えば、X線回折装置として、測定装置「RINT-TTRII」(株式会社リガク社製)と、装置付属の制御ソフト及び解析ソフトを用いることができる。
測定条件は以下の通りである。
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメータ:ロータ水平ゴニオメータ(TTR-2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/min.
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000~40.0000°
試料板に対象のトナーをセットして測定を開始する。CuKα特性X線において、ブラッグ角(2θ±0.20deg)3deg~35degの範囲で測定を行い、得られたスペクトルの全積分強度から、アゾ色素など着色剤由来以外のスペクトルの積分強度を引くことで、トナー中の着色剤の含有量を求める。
【0072】
<ガラス転移温度Tgの測定方法>
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲-10~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて-10℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとする。
【0073】
<重合体Aなど樹脂の分子量の測定方法>
重合体Aなど樹脂のTHF可溶分の分子量(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
・カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0ml/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
【0075】
<非晶性樹脂1の調製>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
30.00部
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
33.00部
・テレフタル酸 21.00部
・ドデセニルコハク酸 15.00部
・酸化ジブチルスズ 0.10部
減圧操作により系内を窒素置換した後、215℃にて5時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂1を合成した。非晶性樹脂1のMnは5200、Mwが23000、Tgは55℃であった。
【0076】
<実施例1>
(トナー粒子1の製造)
・メタクリロニトリル 30.0部(45.9モル%)
・スチレン 35.0部(34.1モル%)
・アクリル酸ブチル 25.0部(20.0モル%)
・C.I.Pigment Yellow 74(分子量372.4)4.0部
・ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム 1.00部
・フィッシャートロプッシュワックス(日本精蝋社製:HNP-51 融点Tm:74℃) 5.0部
からなる混合物を調製した。上記混合物をアトライター(日本コークス社製)に投入し、直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水735.00部とリン酸三ナトリウム(12水和物)16.00部を添加し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、イオン交換水65.00部に塩化カルシウム(2水和物)9.00部を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを6.0に調整し、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)8.00部を添加して60℃を保持しながら100rpmで5分間撹拌した後、上記高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体中に投入した。60℃を保持しながら上記高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。
上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで10時間重合反応を行った。その後、反応容器から還流冷却管を外し、反応液を95℃に昇温した後、95℃を保持しながら150rpmで5時間撹拌し、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液を150rpmで撹拌しながら20℃まで冷却した後、撹拌
を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて分散安定剤を溶解させた。固形分をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して、単量体組成物の重合体1を含むトナー粒子1を得た。
また、上記トナー粒子1の製造方法において、C.I.Pigment Yellow
74、ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム、フィッシャートロプッシュワックスを使用しないようにする以外はすべて同様にして、重合体1’を得た。融点は62℃であった。
上記重合体1と重合体1’は同様にして作製されているため、同等の物性を有していると判断した。
【0077】
(トナー1の調製)
上記トナー粒子1に、外添を行った。トナー粒子1: 100.0部に対し、外部添加剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g): 1.8部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0078】
【表1】

表中の略語は以下の通り。
MAN:メタクリロニトリル
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
BA:アクリル酸ブチル
BEA:アクリル酸ベヘニル
PY:C.I.Pigment Yellow
SY:C.I.Solvent Yellow
PR:C.I.Pigment Red
【0079】
【表2】

表中、Xは、“アゾ色素の分子量/アゾ基数”を示す。
【0080】
<実施例2~24>
実施例1において、使用する単量体組成物の種類及び添加量、重合体A以外の樹脂、並びにアゾ色素の種類及び添加量を表1のように変更する以外はすべて同様にして、トナー粒子2~24を得た。なお重合体A以外の樹脂は、混合物の調整段階で添加した。
さらに、実施例1と同様の外添を行い、トナー2~24を得た。物性を表2に、評価結果を表3に示す。なお、以下、実施例2~10は、それぞれ参考例2~10とする。
【0081】
<比較例1~6>
実施例1において、使用する単量体組成物の種類及び添加量、並びにアゾ色素の種類及び添加量を、表1のように変更する以外はすべて同様にして、比較用トナー粒子1~6を得た。さらに、実施例1と同様の外添を行い、比較用トナー1~6を得た。
物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0082】
<トナーの評価>
図1のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cを改造し、プロセススピ-ド310mm/secに変更し、シアンステーションだけでプリント可能とした。LBP9600C用トナーカートリッジに評価対象のトナーを200g充填した。
【0083】
<1>転写ボソ
トナーカートリッジごと高温高湿(温度32.5℃、相対湿度85%)環境下で24時間放置した。24時間放置後のトナーカートリッジをLBP9600Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で5000枚までプリントアウトした。5000枚出力後、トナー載り量0.40mg/cmのベタ画像をCS-680(坪量68g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)に出力した。
この画像を目視観察し、以下の基準に基づいて転写ボソの評価を行った。なお本開示においては、画像均一性の損なわれている部分を転写ボソと判断した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:通常光の下でも、強力な光にかざしても、転写ボソは見られない
B:通常光の下では転写ボソは見られないが、強力な光にかざすと転写ボソが見られる
C:通常光の下でも、1~3箇所転写ボソが見られるが、白抜けは見られない
D:通常光の下でも、4箇所以上転写ボソが見られる、あるいは1箇所以上白抜けが見られる
【0084】
<2>着色力
トナーカートリッジごと常温常湿(温度23℃、相対湿度50%)環境下で24時間放置した。
24時間放置後のトナーカートリッジをLBP9600Cに取り付け、評価紙上のトナーの載り量が0.50mg/cmであるベタ画像を出力し、その画像濃度をカラー反射濃度計(X-RITE 404A:X-Rite Co.製)を用いて測定し、評価した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:画像濃度が1.40以上
B:画像濃度が1.35以上1.40未満
C:画像濃度が1.20以上1.35未満
D:画像濃度が1.20未満
【0085】
<3>グロス
改造したキヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cの定着ユニットを定着温度が調整できるようにさらに改造した。
トナーカートリッジごと常温常湿(温度23℃、相対湿度50%)環境下で24時間放置した。
24時間放置後のトナーカートリッジをLBP9600Cに取り付け、ベタ全域画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.50mg/cm)をXerox社製business4200(75g/m)上に、設定温度170℃で出力した。定着画像内を9等分した各区画の75°グロスを測定し、平均値を求めて下記基準により評価した。
なお、光沢度測定器は、日本電色工業(株)製のPG-3D(入射角θ=75°)を使用し、標準面は光沢度96.9の黒色ガラスを使用した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:75°グロス平均値が23.0以上
B:75°グロス平均値が18.0以上23.0未満
C:75°グロス平均値が13.0以上18.0未満
D:75°グロス平均値が13.0未満
【0086】
【表3】
【符号の説明】
【0087】
1:感光体、2:現像ローラ、3:トナー供給ローラ、4:トナー、5:規制ブレード、6:現像装置、7:レーザー光、8:帯電装置、9:クリーニング装置、10:クリーニング用帯電装置、11:撹拌羽根、12:駆動ローラ、13:転写ローラ、14:バイアス電源、15:テンションローラー、16:転写搬送ベルト、17:従動ローラ、18:紙、19:給紙ローラ、20:吸着ローラ、21:定着装置
図1