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  • 特許-免震プルボックス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】免震プルボックス
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/10 20060101AFI20240401BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240401BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H02G9/10
E04H9/02 331Z
E02D27/34 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019226335
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095708
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502095993
【氏名又は名称】NTTリミテッド・ジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162593
【氏名又は名称】エクシオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕己
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲
(72)【発明者】
【氏名】女井 茂弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 史明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 桐子
(72)【発明者】
【氏名】三吉 貴之
(72)【発明者】
【氏名】林 雄介
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3112611(JP,U)
【文献】特開2016-101020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
E04H 9/02
H02G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤側に固定されていて配線ケーブルを挿通させる第一穴部を有する第一ボックスと、
前記地盤に対して水平方向に揺動する建物側に固定され且つ前記第一ボックスに対向して配設されていて前記配線ケーブルを挿通させる第二穴部を有する第二ボックスと、
を備え、
前記第一ボックス及び前記第二ボックスの開口部の開口方向が鉛直方向になっていて、前記第一ボックス及び第二ボックスで形成する内部空間内に前記配線ケーブルが余長部を有して収納されていて、前記第一ボックス及び第二ボックスは相対的に振動可能であることを特徴とする免震プルボックス。
【請求項2】
地盤側に固定されていて配線ケーブルを挿通させる第一穴部を有する第一ボックスと、
建物側に固定され且つ前記第一ボックスに対向して配設されていて前記配線ケーブルを挿通させる第二穴部を有する第二ボックスと、
を備え、前記第一ボックス及び第二ボックスで形成する内部空間内に前記配線ケーブルが余長部を有して収納されていて、前記第一ボックス及び第二ボックスは相対的に振動可能であり、
前記第二ボックス内には、前記配線ケーブルを吊り下げ支持する吊り支持部が前記第二穴部に対向して設けられている免震プルボックス。
【請求項3】
地盤側に固定されていて配線ケーブルを挿通させる第一穴部を有する第一ボックスと、
建物側に固定され且つ前記第一ボックスに対向して配設されていて前記配線ケーブルを挿通させる第二穴部を有する第二ボックスと、
を備え、前記第一ボックス及び第二ボックスで形成する内部空間内に前記配線ケーブルが余長部を有して収納されていて、前記第一ボックス及び第二ボックスは相対的に振動可能であり、
前記第一ボックス及び第二ボックスが当接する開口の端部にシール部材が設けられている免震プルボックス。
【請求項4】
前記第一穴部に前記配線ケーブルが挿通された第一管体が接続され、前記第二穴部に前記配線ケーブルが挿通された第二管体が接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載された免震プルボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤等から建物内に光ケーブル等の通信線や電気配線等の各種の配線ケーブルを引き込むための免震プルボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震建物において、地中や電柱等から通信線や電気配線等の配線ケーブルを建物内に引き込む際、地盤側と建物側でケーブルラックの縁を切り、その間に設けるプレート上部で配線ケーブルを露出させてとぐろ状に巻いて接続している。そのため、地震等の際に横揺れによって配線ケーブルに負荷がかかった場合でも、配線ケーブルが変位したり追従したりできるようにとぐろ状の余長部によって吸収できるようにしている。
例えば、図7(a)、(b)に記載された一般的な配線設備では、地盤に施工した基礎100の側壁101を貫通する電線や通信線等の配線ケーブル102を基礎100の底部のプレート上の余長部102aでとぐろをまかせ、配線ケーブル102の他端部側を建物基部103に設けた吊り金具104またはラックに支持している(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】CERA-DESIGN建築構造設計「免震設計ノート」「2010.04版 付録4話「付-4.免震部材特記仕様書例」付4-3頁『4.電気・電話等の引き込み』[令和1年11月20日検索]、インターネット(http://cera.world.coocan.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載された配線設備は、配線ケーブル102のとぐろを巻く余長部102aが基礎100の底部プレート上に露出しており、劣化や損傷等が起き易い上に安全上問題があった。また、地震等で振動すると配線ケーブル102は異物に引っかかる等して振動に追従して変位しないで切断や欠損等の可能性があった。
【0005】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、配線ケーブルの外部への露出を防いで保護できる上に、地震等の際にも振動によって配線ケーブルにかかる負荷を吸収できるようにした免震プルボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による免震プルボックスは、地盤側に固定されていて配線ケーブルを挿通させる第一穴部を有する第一ボックスと、前記地盤に対して水平方向に揺動する建物側に固定され且つ前記第一ボックスに対向して配設されていて前記配線ケーブルを挿通させる第二穴部を有する第二ボックスと、を備え、前記第一ボックス及び前記第二ボックスの開口部の開口方向が鉛直方向になっていて、第一ボックス及び第二ボックスで形成する内部空間内に配線ケーブルが余長部を有して収納されていて、第一ボックス及び第二ボックスは相対的に振動可能であることを特徴とする。
本発明によれば、配線ケーブルをとぐろ等が巻かれた余長部をもたせて第一ボックス及び第二ボックスの内部空間に収納したため、配線ケーブルを外部から保護して安全性を高める上に、地震等で振動して第一ボックス及び第二ボックスが相対的に横ずれしても余長部を延ばす等して変位に対応して追従できるため配線ケーブルの切断や損傷を抑制できる。
【0007】
また、第二ボックス内には、配線ケーブルを吊り下げ支持する吊り支持部が第二穴部に対向して設けられていることが好ましい。
第二ボックス内に第二穴部に対向して配線ケーブルの吊り下げ支持部を設けたため、地震等で第一ボックスと第二ボックスが相対的に横ずれして移動しても、配線ケーブルが撓んで第一ボックスと第二ボックスの間に挟まれて切断したり損傷したりすることを抑制できる。
【0008】
また、第一ボックス及び第二ボックスが当接する開口の端部にシール部材が設けられていてもよい。
第一ボックス及び第二ボックスの端部同士をシール部材で封止することで、外部から異物が侵入したりいたずらされたりしない。
【0009】
また、第一穴部に配線ケーブルが挿通された第一管体が接続され、第二穴部に配線ケーブルが挿通された第二管体が接続されていることが好ましい。
免震プルボックス内だけでなく、外部の配線ケーブルも第一管体と第二管体で保護できるため、安全性が高まる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による免震プルボックスによれば、第一ボックス及び第二ボックスで形成する内部空間内に配線ケーブルを収納して保護できて安全性が高い。また、地震等で配線ケーブルを収納した第一ボックス及び第二ボックスが振動して横ずれして配線ケーブルが引っ張られる等の負荷がかかったとしても配線ケーブルが変位して余長部によって吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による免震プルボックスの斜視図である。
図2】免震プルボックスの上部ボックスと下部ボックスをずらした状態の斜視図である。
図3】免震プルボックスを地盤と建物の間に装着した状態の説明図である。
図4】(a)、(b)は免震プルボックスの上部ボックスと下部ボックスが水平方向にずれた状態の説明図である。
図5】(a)、(b)、(c)は第一比較例の上部ボックスと下部ボックスがずれた状態の説明図である。
図6】(a)、(b)は第二比較例の上部ボックスと下部ボックスがずれた状態の説明図である。
図7】(a)は従来例による配線設備の断面図、(b)は配線ケーブルの余長部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による免震プルボックスについて添付図面により説明する。
図1から図4は実施形態による免震プルボックス1を示すものである。図1に示す免震プルボックス1は、例えば上下に配設された下部ボックス2と上部ボックス3とを備えている。下部ボックス2は、例えば直方体形状の金属枠に鋼板からなる下面6と4面の側面7a、7b、7c、7dとが固定されており、上面が開口8とされている。下部ボックス2の下面6は免震層5を介して地盤G上の基礎4に固定されている。免震層5は例えばゴム等の弾性体を複数層積層した構成を有しており、地震等の際に地盤Gの振動が下部ボックス2へ伝達することを低減させている。
【0013】
上部ボックス3は建物10の基部11に連結されており、例えば直方体形状の金属枠に鋼板からなる上面12と4面の側面13a、13b、13c、13dとが固定されており、下面が開口14とされている。しかも、上面12が建物10の基部11に固定されている。建物10は不図示の免震層を介して地盤Gに接続された免震建物である。
免震プルボックス1は、常態において、下部ボックス2の開口8を形成する各側面7a、7b、7c、7dと上部ボックス3の開口14を形成する各側面13a、13b、13c、13dとの一方、例えば下部ボックス2の各側面7a、7b、7c、7dの端部の全周にシール部材としてガスケット15が設けられている。
【0014】
これによって、常態では、下部ボックス2のガスケット15と上部ボックス3の各側面13a~13dの下端部とが互いに当接され、下部ボックス2の開口8と上部ボックス3の開口14が液密にシールされている。しかも、地震等の際に、下部ボックス2は地盤G及び免震層5に連動して振動し、上部ボックス3は建物10に連動して振動するため、相対的に水平方向にスライド移動可能とされている。振動時に、下部ボックス2と上部ボックス3は互いの動きに影響されない。
【0015】
図2において、下部ボックス2の一の側面7aには1または複数、例えば6個の第一穴部17が形成されており、各第一穴部17には例えば金属製の第一管体18の一端がそれぞれ連結されている。一の側面7aに設けられた第一穴部17は例えば側面7aの長手方向に一列に形成されているが、第一穴部17の配列は任意に形成することができる。
第一管体18内には例えば光ファイバー等の通信線、電線、電話線等の配線ケーブル19が挿通されている。第一管体18の他端は例えば図示しないマンホール内に設けられた別の管体やクロージャー等に連結されている。本実施形態では、各第一管体18内には例えば1本の配線ケーブル19が挿通されているが、複数本を束ねてまたはバラで挿通させてもよい。
【0016】
また、図1において、下部ボックス2の一の側面7aに対向する側の上部ボックス3の他の側面13cには、第一穴部17と同数の第二穴部21が形成されており、各第二穴部21には例えば金属製の第二管体22の一端がそれぞれ連結されている。他の側面13cに設けられた第二穴部21は例えば側面13cの長手方向に一列に形成されているが、第二穴部21の配列は任意に形成することができる。
第二管体22内には配線ケーブル19が挿通されている。第二管体22の他端は例えば建物10内のサーバ室の通信機器等に接続されている。免震プルボックス1の外側に設けられた配線ケーブル19は、全て第一管体18及び第二管体22で覆われて保護されている。
【0017】
下部ボックス2の第一管体18と上部ボックス3の第二管体22に挿通される配線ケーブル19は、図3に示すように、閉鎖された下部ボックス2及び上部ボックス3の内部空間内でとぐろを巻いた状態で収納されている。配線ケーブル19のとぐろを巻いた部分を余長部19aというものとし、好ましくは下部ボックス2内に保持されている。
地震等の際、図4(a)、(b)に示すように、地盤G及び免震層5と建物10とが水平方向に振動して下部ボックス2及び上部ボックス3が位置ずれを起こすことが想定される。その場合でも、免震プルボックス1の内部空間内の配線ケーブル19は余長部19aが変位して撓んだ状態を維持できる程度の長さに設定されている。そのため、地震時には、配線ケーブル19の余長部19aが短くなったり長くなったりすることで振動を吸収できる。
【0018】
しかも、上部ボックス3の内部には、各第二管体22に対向する位置に上面12から複数の吊り支持部24がそれぞれ垂下されている。各吊り支持部24は配線ケーブル19を支持するための例えばフック状またはリング状等の支持部を有している。しかも、各吊り支持部24は側面13cの各第二穴部21に対向する位置に設けられ、各配線ケーブル19は吊り支持部24から第二管体22にかけて略直線状に配設されることで、互いに絡んだり下部ボックス2と上部ボックス3の間に噛み込まれたりすることを防止できる。
本実施形態による免震プルボックス1では、地震時における免震層5と建物10との水平方向の相対的変位量(ずれ量)を例えば最大700mmとして、下部ボックス2及び上部ボックス3の縦横方向の長さを例えば約2倍の1500mm程度に設定した。
【0019】
本実施形態による免震プルボックス1は上述した構成を有しており、次にその作用を説明する。
地震のない通常の状態において、免震プルボックス1は、図1及び図3に示すように、下部ボックス2と上部ボックス3とが位置ずれすることなく上下に重ねて配設されており、ガスケット15を介して液密に配設されている。配線ケーブル19は、地盤Gの免震層5と建物10の基部11との間で、第一管体18及び第二管体22と免震プルボックス1とによって覆われて保護されている。この状態で、電流や通信信号等を建物10内のサーバ室の通信機器等と外部との間で配線ケーブル19を介して送受信できる。
【0020】
次に、地震等が発生した場合、地盤Gの振動に対して建物10の振動が遅れるため、地盤Gの免震層5の相対移動と建物10の基部11の相対移動とにずれが発生する。地盤Gの免震層5の振動に下部ボックス2が連動し、建物10の振動に上部ボックス3が連動するため、免震プルボックス1の下部ボックス2と上部ボックス3との間に水平方向の位置ずれが発生する。
例えば図4(a)に示すように下部ボックス2に対して上部ボックス3が第一管体18から離間する方向に相対移動すると、免震プルボックス1の内部空間内で配線ケーブル19が引っ張られる。この場合でも、免震プルボックス1の内部空間内での配線ケーブル19は余長部19aのとぐろが完全には解消しないで撓みが小さく変位する状態に保持される。しかも、配線ケーブル19は第二管体22に対向する位置に吊り支持部24で支持されるため、配線ケーブル19が下部ボックス2と上部ボックス3の間に垂れ下がって挟まれることを阻止できる。
【0021】
また、図4(b)に示すように下部ボックス2に対して上部ボックス3が第一管体18に近づく方向に相対移動すると、免震プルボックス1の内部空間内で配線ケーブル19の余長部19aが一層撓められる。しかも、第二管体22近傍の対向する位置で吊り支持部24によって配線ケーブル19が支持されるため、配線ケーブル19が下部ボックス2内で変位する。
そして、地盤Gと建物10の振動が収束すると、建物10の復元力によって、図3に示すように下部ボックス2及び上部ボックス3が元の重なった位置に復帰する。そのため、配線ケーブル19の余長部19aは免震プルボックス1の内部空間内でとぐろが巻かれた状態に保持される。
【0022】
次に本実施形態による免震プルボックス1に関連する比較例について図5及び図6により説明する。
先ず、本実施形態による免震プルボックス1において、吊り支持部24を上部ボックス3内に設けない場合について図5により説明する。吊り支持部24を設けない場合、地震のない状態では図5(a)に示すように、位置ずれしない下部ボックス2及び上部ボックス3内に配線ケーブル19が余長部19aでとぐろを巻いて保持される。
【0023】
そして、図5(b)に示すように、地震が発生して下部ボックス2と上部ボックス3とが離間する方向に相対的に移動して700mm程度位置ずれすると、配線ケーブル19の一部は引き延ばされて下部ボックス2の側面7cと上部ボックス3の側面13cとの間で略U字状に垂れ下がって片側を第二管体22に支持される。その後、図5(c)に示すように、下部ボックス2と上部ボックス3とが相対的に接近すると、配線ケーブル19のU字状に撓んだ一部が側面7cと側面13cに挟まれて損傷または切断されてしまうことがある。このような不具合を避けるために吊り支持部24を設置することが好ましい。
【0024】
次に、下部ボックス2及び上部ボックス3のサイズが地震時の想定される変位量が例えば700mm程度であった場合について図6により説明する。
この場合、地震のない状態では図6(a)に示すように、位置ずれしない下部ボックス2及び上部ボックス3内に配線ケーブル19が余長部19aでとぐろを巻いて保持される。第二管体22の近傍では、配線ケーブル19は上部ボックス3の上面12から垂下される吊り支持部24に支持されて第二管体22に挿通されている。
次に、図6(b)に示すように、地震が発生して下部ボックス2と上部ボックス3とが離間する方向に相対的に移動して位置ずれすると、下部ボックス2の側面7cと上部ボックス3の側面13aとの間に配線ケーブル19が挟まれ、切断されたり損傷したりしてしまうことがある。
従って、このような不具合を避けるために下部ボックス2と上部ボックス3の縦横方向のサイズは、地震時の変位量700mmより大きく形成することが好ましい。
【0025】
上述したように本実施形態による免震プルボックス1によれば、地盤Gの免震層5と建物10の基部11との間で配線ケーブル19を上下に分離する下部ボックス2及び上部ボックス3によって囲い、余長部19aを設けてとぐろを巻かせて余裕を持たせた。そのため、免震プルボックス1で配線ケーブル19を覆って保護できる上に地震等で下部ボックス2及び上部ボックス3が水平方向にずれたとしても損傷や切断等しないよう保護できる。しかも、地震が収束すれば下部ボックス2及び上部ボックス3が元の重なる位置に戻り、配線ケーブル19を余長部19aでとぐろを巻いた状態に復帰させることができる。
また、上部ボックス3の第二管体22の近傍で垂下する吊り支持部24で配線ケーブル19を支持しているため、地震等で下部ボックス2と上部ボックス3が相対移動しても配線ケーブル19が撓んで挟まれることを防止できる。
【0026】
また、下部ボックス2及び上部ボックス3の縦横方向のサイズを地震時に想定される最大の変位量700mmより大きく形成したため、地震時に下部ボックス2及び上部ボックス3が逆方向に相対移動したとしても下部ボックス2及び上部ボックス3が互いの重なりをなくす程度にずれることがなく、配線ケーブル19の切断や損傷等を抑制できる。
しかも、下部ボックス2及び上部ボックス3の各開口8、14の一方の端部にガスケット15を設けて液密にシールできる。更に、免震プルボックス1の第一穴部17及び第二穴部21にそれぞれ第一管体18及び第二管体22を連結させて、内部に配線ケーブル19を挿通させた。そのため、配線ケーブル19が外部に露出せず、虫等の異物が侵入したり、いたずら等されないように保護できて安全性を高めることができる。また、集中豪雨や台風等の際に地盤Gの基礎4と建物10の基部11との間に雨水が侵入したとしても配線ケーブル19が雨水に接触することを抑制できる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態による免震プルボックス1に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部分や部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0028】
例えば、上述した実施形態による免震プルボックス1では、下部ボックス2における一の側面7aに第一管体18を連結する第一穴部17を設け、上部ボックス3における対向する側の側面13cに第二管体22を連結する第二穴部21を設けて、配線ケーブル19を挿通させた。しかしながら、第一管体18を連結させる下部ボックス2の第一穴部17と第二管体22を連結させる上部ボックス3の第二穴部21の配置は任意の側面7a~7d、側面13a~13dのいずれかを選択できる。例えば第一管体18と第二管体22を互いに直交するように各側面7a~7d、側面13a~13dに連結してもよいし、同一側の側面7a~7d、側面13a~13dに連結してもよい。
また、免震プルボックス1の下部ボックス2及び上部ボックス3は直方体の箱状に限定されるものではなく、円筒状や多角形筒状等、適宜形状を採用できる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、免震プルボックス1の外部に第一管体18及び第二管体22を設けて、免震プルボックス1の外部でも配線ケーブル19を被覆しているが、免震プルボックス1の外部に設けた配線ケーブル19を金属管等の第一管体18及び第二管体22等で被覆しなくてもよい。
また、免震プルボックス1を基礎4上の免震層5の上に複数個配列させて、マンホールと建物10との間でそれぞれ複数の配線ケーブル19を接続してもよい。
本発明において、下部ボックス2は第一ボックスに含まれ、上部ボックス3は第二ボックスに含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 免震プルボックス
2 下部ボックス
3 上部ボックス
4 基礎
7a、7b、7c、7d、13a、13b、13c、13d 側面
8、14 開口
10 建物
11 基部
12 上面
15 ガスケット
17 第一穴部
18 第一管体
19 配線ケーブル
21 第二穴部
22 第二管体
24 吊り支持部
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7