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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】樹脂積層体および樹脂積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/00 20240101AFI20240401BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240401BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240401BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240401BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B32B1/00 Z
B32B27/00 E
B29C45/14
B29C45/16
B29C45/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019228550
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094804
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慶昌
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006394(JP,A)
【文献】特開2012-006381(JP,A)
【文献】特開2011-207123(JP,A)
【文献】特開2012-010341(JP,A)
【文献】特開2010-105385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00
B32B 27/00
B29C 45/14
B29C 45/16
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明の樹脂材料で形成された表面材と、
樹脂材料により形成された基材と、
前記表面材と前記基材との間に配置された装飾層と、
前記表面材の周縁部において、前記表面材と前記基材の双方に接するように配置された被覆部と、を備え、
前記基材は、板状の中央部と、前記中央部の周縁から所定方向に向かって形成された周縁部とを有し、
前記被覆部の前記所定方向側の面は、前記周縁部の端面と同一面に形成されている、
樹脂積層体。
【請求項2】
前記被覆部は、前記表面材と同じ材料または前記基材と同じ材料で形成されている、
請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
透明の樹脂材料で形成された表面材と、
樹脂材料により形成された基材と、
前記表面材と前記基材との間に配置された装飾層と、
前記表面材の周縁部において、前記表面材と前記基材の双方に接するように配置された被覆部と、を備え、
前記基材の反対側において、前記表面材の表面と前記被覆部の表面は、段差なく滑らかな湾曲を形成している、
樹脂積層体。
【請求項4】
透明の樹脂材料で形成され、一方の面に装飾層が設けられた表面材を準備する準備工程と、
第1金型に樹脂材料を射出して前記表面材の前記装飾層が形成された側に基材を形成する基材形成工程と、
前記第1金型と形状が異なる第2金型に樹脂材料を射出して、前記表面材の周縁部において前記表面材と前記基材の双方に接するように配置された被覆部を形成する被覆部形成工程と、を備え、
前記第2金型は、前記第1金型の一部を移動させた金型である、
樹脂積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体および樹脂積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材にインクで装飾を施す技術が多数開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1では、透明の樹脂材料で形成された表面材と、基材と、表面材と基材の間に配置され、インクで形成された装飾層と、を備えた化粧パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-151016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の化粧パネルでは、水浸漬や使用環境により表面材と装飾層の間や装飾層と基材の間が剥がれやすくなる。
【0006】
本発明は、剥離を抑制することが可能な樹脂積層体および樹脂積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明にかかる樹脂積層体は、表面材と、基材と、装飾層と、被覆部と、を備える。表面材は、透明の樹脂材料で形成されている。基材は、樹脂材料により形成されている。装飾層は、表面材と基材との間に配置されている。被覆部は、表面材の周縁部において、表面材と基材の双方に接するように配置されている。
【0008】
このように、表面材と基材の双方に接するように被覆部を形成することによって、被覆部が表面材と基材のそれぞれに接着して表面材と基材の間を繋ぐため、樹脂積層体の端から表面材と装飾層と基材の間において剥離が発生すること抑制することができる。
【0009】
第2の発明にかかる樹脂積層体は、第1の発明にかかる樹脂積層体であって、被覆部は、表面材と同じ材料または基材と同じ材料で形成されている。
【0010】
例えば、被覆部を表面材と同じ材料で形成した場合、透明であるため意匠性を損なわないようにできる。また、被覆部を基材と同じ材料で形成した場合、コストを低減することができる。このように、コストと意匠性のどちらを優先するかによって材料を使い分けることができる。
【0011】
第3の発明にかかる樹脂積層体は、第1または第2の発明にかかる樹脂積層体であって、基材の反対側において、表面材の表面と被覆部の表面は、滑らかな湾曲を形成している。
【0012】
これによって、表面材と被覆部の間に段差が生じないため、被覆部を設けた場合であっても意匠性を損なわないようにすることができる。
【0013】
第4の発明にかかる樹脂積層体の製造方法は、準備工程と、基材形成工程と、被覆部形成工程と、を備える。準備工程は、透明の樹脂材料で形成され、一方の面に装飾層が設けられた表面材を準備する。基材形成工程は、第1金型に樹脂材料を射出して表面材の装飾層が形成された側に基材を形成する。被覆部形成工程は、第1金型と形状が異なる第2金型に樹脂材料を射出して、表面材の周縁部において表面材と基材の双方に接するように配置された被覆部を形成する。
【0014】
このように、表面材と基材の双方に接するように被覆部を形成することによって、被覆部が表面材と基材のそれぞれに接着して表面材と基材の間を繋ぐため、樹脂積層体の端から表面材と装飾層と基材の間において剥離が発生すること抑制することができる。
【0015】
第5の発明にかかる樹脂積層体の製造方法は、第4の発明にかかる樹脂積層体の製造方法であって、第2金型は、第1金型の一部を移動させた金型である。
【0016】
このように、第1金型の一部を動かすことによって第1金型を変形させて第2金型とできるため、2つの金型を用意する必要がない。さらに、第1金型において表面材に基材を射出成型した後に、第1金型を変形させて、再度射出成型すればよいため、一方の金型において表面材に基材を射出成型した後に、表面材を他方の金型に入れ替える必要がなく、工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、剥離を抑制することが可能な樹脂積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にかかる実施の形態1の樹脂積層体の斜視図。
図2図1のHH´間の矢視断面図。
図3図2のS部拡大図。
図4】本発明にかかる実施の形態1の樹脂積層体の製造方法を示すフロー図。
図5】(a)図4の樹脂積層体の製造方法において表面材に装飾層を形成するステップを説明するための図、(b)表面材に装飾層が形成された状態を示す断面図。
図6】(a)基材を形成するための金型内に図5(b)に示す表面材を配置した状態を示す断面図、(b)図6(a)の金型を閉じた状態を示す断面図。
図7】表面材に配置された装飾層上に基材が形成された状態を示す断面図。
図8】(a)基材を形成するための金型内に図7に示す表面材を配置した状態を示す断面図、(b)図8(a)の金型を閉じた状態を示す断面図。
図9】(a)図8(b)の部分拡大図、(b)図9(a)の型空間に樹脂を射出した状態を示す図。
図10】本発明にかかる実施の形態2の樹脂積層体の斜視図。
図11図10の樹脂積層体の平面図。
図12】本発明にかかる実施の形態2の樹脂積層体の製造方法を示すフロー図。
図13】(a)金型内に表面材を配置した状態を示す断面図、(b)図13(a)の金型を閉じた状態を示す断面図。
図14】(a)図13(b)のU部拡大図、(b)図14(a)の状態から金型の一部をスライドさせた状態を示す図。
図15】(a)、(b)図14(a)および図14(b)に示すスライド移動を模式的に示す平面図。
図16】本発明にかかる実施の形態3の樹脂積層体の部分拡大断面図。
図17】本発明にかかる実施の形態4の樹脂積層体の部分拡大断面図。
図18】本発明にかかる実施の形態5の樹脂積層体の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の樹脂積層体について、図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明にかかる実施の形態1の樹脂積層体100について説明する。
【0020】
<構成>
(樹脂積層体の概要)
図1は、本実施の形態の樹脂積層体100の斜視図である。図2は、図1のHH´間の矢視断面図である。図3は、図2のS部拡大図である。
【0021】
図において、表側方向が矢印Aで示され、裏側方向が矢印Bで示されている。
本実施の形態の樹脂積層体100は、例えば、床材、パネル、タイル、化粧または加飾タイル、化粧または加飾パネル等に用いられる。
【0022】
本実施の形態の樹脂積層体100は、表面材1と、装飾層2と、基材3と、被覆部4と、を備える。表面材1は、透明の樹脂材料で形成されている。基材3は、樹脂材料によって形成されている。装飾層2は、表面材1と基材3の間に配置されている。被覆部4は、表面材1の周縁部12(後述する)において、表面材1と基材3の双方に接触して配置されている。
【0023】
樹脂積層体100は、図1および図2に示すように、中央部101と、周縁部102を有している。中央部101は、板状である。周縁部102は、中央部101に対して全周に亘って裏側方向Bに向かって湾曲するように設けられている。周縁部102と中央部101によって樹脂積層体100の裏面側には、凹部100aが形成されている。
また、本明細書において、樹脂積層体100の周縁部102から中央部101の中心に向かう方向を内側方向とし、樹脂積層体100の中央部101の中心から周縁部102に向かう方向を外側方向とする。
【0024】
(表面材)
表面材1は、透明の樹脂材料で形成されていれば特に限定されるものではなく、透明度の高い樹脂材料で形成されるほうがより好ましい。
【0025】
表面材1の材料としては、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレンなどから選ばれる少なくとも一つを含む材料より形成することができる。
【0026】
また、表面材1は、射出成形、プレス成形または真空形成などによって作成することができる。
【0027】
表面材1は、図2および図3に示すように、第1面1aと、第2面1bと、端面1cと、を有する。第1面1aは、表側に配置され、第2面1bは裏側に配置されている。第1面1aは、第2面1bの反対側に配置されている。端面1cは、第1面1aの端と第2面1bの端の間に形成されている。
【0028】
表面材1は、板状の部材であり、中央部11と、周縁部12と、を有する。中央部11は、平面視において四角形状の部分である。本実施の形態では中央部11は、平面状である。周縁部12は、中央部11の周縁に設けられている。周縁部12は、中央部11と繋がって中央部11と一体的に形成されている。周縁部12は、表面材1の周縁が全周に亘って裏側方向Bに湾曲するように形成されている。
【0029】
図3に示すように、表面材1の第1面1aのうち中央部11の部分が中央面11aとして示され、周縁部12の部分が周縁面12aとして示されている。表面材1の第2面1bのうち中央部11の部分が中央面11bとして示され、周縁部12の部分が周縁面12bとして示されている。
【0030】
表面材1の端面1cは、中央部11に対する周縁部12の湾曲により、中央部11と略平行に配置されている。表面材1の端面1cは、裏側方向Bに向くように形成されているともいえる。
【0031】
なお、表面材1の厚みは、0.3mm以上に設定する方が好ましい。表面材1の厚みの上限は特に設定されなくてもよいが、例えば10mm以下に設定してもよい。
【0032】
(装飾層)
装飾層2は、種々の模様、色等により形成され、樹脂積層体100を装飾するものである。装飾層2の模様、色等は、透明な表面材1を通して視認することができる。
【0033】
装飾層2は、表面材1の第2面1bおよび端面1cに形成される。装飾層2による装飾は、透明の表面材1を介して外部(第1面1a側)から視認することができる。
【0034】
装飾層2は、図2および図3に示すように、インクジェット印刷機によって表面材1の第2面1bおよび端面1cに非接触で印刷することができる。
【0035】
装飾層2は、インクジェット印刷機で吐出可能なインクによって形成される。この場合、表面材1の第2面1bおよび端面1cに直接印刷してもよいし、接着性を向上するために表面材1の第2面1bおよび端面1cにプライマー処理や放電処理を行った上で印刷してもよい。また、これらの処理は、印刷後に、装飾層2に対して行われてもよい。
【0036】
インクジェット印刷機によって吐出されるインクは、公知の技術によるインクを用いられる。例えば、モノマーを主要成分とし、オリゴマー、色材、分散材、光重合開始剤、界面活性剤などのその他添加剤のどれか一つ以上を含むUVもしくはEB硬化インク(引用:日本画像学会誌 第49巻 第5号 UVインクジェットの硬化特性および 高分子 34巻 11月号(1985年)電子線硬化樹脂 )。
【0037】
または、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られる例えば、浸透、蒸発、乾燥、酸重合乾燥、熱硬化インクを用いても良い。これらを組み合わせて使用してもよい。
【0038】
装飾層2は、インクジェット印刷機によって表面材1の第2面1bおよび端面1cに印刷によって形成される。
【0039】
なお、装飾層2の厚みは、0.1μm以上に設定する方が好ましい。装飾層2の厚みの上限は特に設定されなくてもよいが、200μm以下に設定してもよい。
【0040】
(基材)
基材3は、図2に示すように、表面材1を支持するものである。基材3は、図2に示すように、装飾層2の表面材1側とは反対側の面上に配置されている。
【0041】
基材3は樹脂材料で形成されており、この樹脂材料は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂積層体100が受ける衝撃を吸収するために弾性変形しやすい材料が好ましい。
【0042】
このような材料としては、例えば、PVC等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂などから選ばれる少なくとも1つの樹脂材料より形成することができる。また、上記装飾層2のインクとの接着性の観点からは、極性を有する樹脂材料で形成されるほうが好ましい。
【0043】
なお、基材3は、後述するようにインサート成形によって形成される。
基材3は、装飾層2上に設けられている。基材3は、表面材1側に配置される第1面3aと、第1面3aと反対側の第2面3bと、を有する。
【0044】
基材3は、中央部31と、周縁部32と、を有する。中央部31は、装飾層2を挟んで表面材1の中央部11に対向するように配置されている。中央部31は、概ね板状に形成されている。
【0045】
周縁部32は、中央部31の周縁に設けられている。周縁部32は、中央部31と繋がって一体的に形成されている。周縁部32は、表面材1の周縁部12の湾曲に沿って中央部31から裏側方向Bに向かって湾曲して形成されている。周縁部32と中央部31によって囲まれて上述した凹部100aが形成されている。
【0046】
図3に示すように、基材3の第1面3aのうち中央部31の部分が中央面31aとして示され、周縁部32の部分が周縁面32aとして示されている。基材3の第2面3bのうち中央部31の部分が中央面31bとして示され、周縁部32の部分が周縁面32bとして示されている。
【0047】
周縁面32aは、第1部分32a1と、第2部分32a2と、第3部分32a3と、を有する。第1部分32a1は、装飾層2を挟んで周縁面12bと対向する。第2部分32a2は、装飾層2を挟んで端面1cと対向する。第3部分32a3は、装飾層2の端面2eを挟んで周縁面12aと連なって設けられている。第3部分32a3は、装飾層2に覆われておらず、被覆部4が形成されていない状態では外側に曝されている。周縁面12aと第3部分32a3と端面2eは、概ね段差を生じないように滑らかに配置されている。
【0048】
なお、本実施の形態では、断面視において、第1部分32a1は表側方向Aに凸に湾曲し、第2部分32a2は表側方向Aに対して垂直に形成され、第3部分32a3は、表側方向Aに沿って形成されているが、これらに限られるものではない。
【0049】
中央面31bは、中央面31aと平行に形成され、周縁面32bは、中央面31bから外側方向に向かうに従って裏側方向Bに向かって湾曲して形成されている。
【0050】
なお、基材3の厚みは、0.3mm以上に設定する方が好ましい。基材3の厚みの上限は特に設定されなくてもよいが、10mm以下に設定してもよい。
【0051】
(被覆部4)
被覆部4は、表面材1と装飾層2と基材3の各々の間の剥離を防止するために設けられている。
【0052】
被覆部4は、表面材1の周縁部12において表面材1と基材3の双方に接して配置されている。被覆部4が表面材1と基材3の双方に接着されることによって剥離を防止することができる。
【0053】
詳細には、図3に示すように、被覆部4は、表面材1の周縁面12aと、装飾層2の端面2eと、基材3の周縁面32aの第3部分32a3に接触するように配置されている。
【0054】
被覆部4は、例えば、表面材1と同じ材料または基材3と同じ材料で形成することができるが、表面材1または基材3と同じ材料でなくてもよく、剥離を抑制することが可能であれば限定されるものではない。
【0055】
例えば、表面材1をアクリロニトリル・スチレン共重合体で形成し、基材3を塩化ビニル系樹脂で形成した場合に、被覆部4をスチレン系樹脂で形成してもよい。
【0056】
本実施の形態では、図1に示すように、被覆部4は表面材1の周縁部12の全周に亘って設けられている。
【0057】
また、被覆部4は、第1面4aと、第2面4bと、外周面4cと、湾曲面4dと、を有する。第2面4bは、基材3の端面3cと同一面に形成されている。外周面4cは、端面1cの外側方向の端から表側方向Aに沿って形成されている。湾曲面4dは、外周面4cの表側方向の端から周縁面12aに沿うように形成されている。第1面4aは、湾曲面4dの表側方向の端から中央面11aと平行に周縁面12aまで形成されている。
【0058】
また、被覆部4の表側方向Aおよび裏側方向Bに対して垂直な方向の幅を厚みWとすると、厚みWは0.3mm以上に設定する方が好ましい。表面材1の端面1cから表側方向Aに沿った被覆部4の高さをHとすると、高さHは0.5mm以上に設定する方が好ましい。
【0059】
このように、被覆部4は、基材3の第3部分32a3から表面材1の周縁面12aまでに亘って形成されている。なお、本実施の形態では、図3に示すように周縁面12aの一部が被覆部4によって覆われており、全部が覆われていないが、周縁面12aの全部が被覆部4によって覆われていてもよい。
【0060】
また、図1に示すように、被覆部4は、表面材1の周縁部12の全周に亘って形成されているが、全周に限らなくてもよく、一部に設けられていなくてもよい。
【0061】
<樹脂積層体の製造方法>
次に、本実施の形態の樹脂積層体100の製造方法について説明する。
【0062】
図4は、本実施の形態の樹脂積層体100の製造方法を示すフロー図である。図5図9は、樹脂積層体100の製造方法を説明するための断面図である。
【0063】
はじめにステップS10において、図1および図2に示すような表面材1が、射出成形、プレス成形または真空成形などによって作成される。
【0064】
次に、ステップS20において、図5(a)に示すように、表面材1の第2面1bおよび端面1cにインクジェット印刷機140からインク130が吐出され、インクが第2面1bおよび端面1cに塗布されて、図5(b)に示すように、装飾層2が形成される。なお、ステップS10、S20が、準備工程の一例に対応する。
【0065】
次に、ステップS30において、装飾層2上に基材3がインサート成形によって形成される。ステップS30は、基材形成工程の一例に対応する。
【0066】
具体的には、図6(a)、(b)に示すように、表面材1および装飾層2が第1金型700内に配置される。第1金型700は、装飾層2が形成された表面材1に基材3を形成するための金型であって、被覆部4を形成する型は含まれていない。
【0067】
第1金型700は、金型部分701と金型部分702とを有している。金型部分701には、樹脂材料を金型内に射出するためのゲート703が形成されている。金型部分702には、表面材1および装飾層2が配置される。本実施の形態では、ゲート703は数箇所形成されている。
【0068】
図6(b)に示すように、表面材1および装飾層2が金型部分702に配置されてから、金型部分701と金型部分702が閉じられる。これによって基材3を形成するための樹脂充填部である型空間700aが形成される。その後、型空間700aに樹脂材料がゲート703から射出され(矢印C参照)、基材3が形成される。
【0069】
基材3が形成された表面材1が第1金型700から取り出される。図7は、第1金型700から取り出された表面材1、装飾層2および基材3を示す図である。
【0070】
次に、ステップS40において、被覆部4がインサート成形によって形成される。ステップS40は、被覆部形成工程の一例に対応する。
【0071】
具体的には、図8(a)に示すように、表面材1、装飾層2および基材3が第2金型710内に配置される。第2金型710は、表面材1、装飾層2および基材3に被覆部4を形成するための金型である。
【0072】
第2金型710は、金型部分711と金型部分712とを有している。金型部分711には、樹脂材料を金型内に射出するためのゲート713が形成されている。金型部分712には、表面材1、装飾層2および基材3が配置される。本実施の形態では、ゲート713は数箇所形成されている。
【0073】
図8(b)に示すように、表面材1、装飾層2、および基材3が第2金型710に配置されてから、金型部分711と金型部分712が閉じられる。その後、樹脂材料がゲート713から第2金型710内に射出される(矢印D参照)。
【0074】
図9(a)は、図8(b)のT部拡大図である。図9(a)に示すように、金型部分711と金型部分712を閉じた状態では、被覆部4を形成するための樹脂充填部である型空間710aが形成されている。ゲート713から樹脂材料を射出することによって、型空間710aに樹脂が満たされ、図9(b)に示すように、被覆部4が形成される。なお、型空間710aに供給する樹脂は、表面材1を形成する透明樹脂または基材3を形成する樹脂のいずれであってもよい。また、上述したように、表面材1または基材3と同じ材料でなくてもよく、剥離を抑制することが可能であれば限定されるものではない。
【0075】
そして、被覆部4が形成された樹脂積層体100が第2金型710から取り出される。
なお、本実施の形態では、第1金型700で基材3を形成した後に第2金型710で被覆部4を形成している。仮に、第1金型700に型空間710aも形成して基材3と被覆部4の双方を一度に射出成形を行うとすると、表面材1の周縁部12の両面に型空間700aと型空間710aが形成されることになり、表面材1の両面に対して樹脂の射出成形が行われることになる。表面材1のような剛性が小さいインサート物の場合、射出された樹脂によって変形されることがある。
【0076】
そのため、本実施の形態では、第1金型700で基材3を形成した後に、基材3を第2金型710の金型部分711に当接させた状態で、型空間710aに樹脂を射出することによって、基材3が表面材1を支持することになり、表面材1を変形することなく被覆部4を形成することができる。
【0077】
以上のように、表面材1と基材3の双方に接するように被覆部4を形成することによって、被覆部4が表面材1と基材3のそれぞれに接着して表面材1と基材3の間を繋ぐため、樹脂積層体100の端から表面材1と装飾層2と基材3の間において剥離が発生すること抑制することができる。
【0078】
また、被覆部4を表面材1と同じ材料で形成した場合、透明であるため意匠性を損なわないようにできる。また、被覆部4を基材3と同じ材料で形成した場合、コストを低減することができる。このように、コストと意匠性のどちらを優先するかによって材料を使い分けることができる。
【0079】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2の樹脂積層体200について説明する。
【0080】
<構成>
図10は、本実施の形態2の樹脂積層体200を示す斜視図である。図11は、本実施の形態2の樹脂積層体200の平面図である。
【0081】
本実施の形態2の樹脂積層体200は、実施の形態1の樹脂積層体100と同様に表面材1、装飾層2、および基材3を備えているが、被覆部4の構成が異なっている。
【0082】
表面材1の周縁部12は、略四角形状であり、4つの辺部分120と、辺部分120の間を繋ぐ湾曲部分121と、を有する。
【0083】
本実施の形態2の被覆部4は、図11の平面視に示すように、略四角形状の表面材1の周縁部12のうち4辺の辺部分120には形成されているが、四角の湾曲部分121には形成されていない。
【0084】
このように、被覆部4は、表面材1の周縁部12の全周に亘って形成されていなくてもよい。なお、図1で示したHH´間の位置における樹脂積層体200の断面図は、図2と同様であり、被覆部の符号を4から204に置き換えただけであるため省略する。
【0085】
<樹脂積層体の製造方法>
図12は、本実施の形態2の樹脂積層体200の製造方法を示すフロー図である。
【0086】
図13および図14は、樹脂積層体100の製造方法を説明するための断面図である。
はじめに、実施の形態1と同様に、ステップS10およびステップS20が行われ、表面材1が形成され、表面材1上に装飾層2が形成される。
【0087】
次に、ステップS30において、装飾層2上に基材3がインサート成形によって形成される。
【0088】
ここで、実施の形態1とは異なり、一部がスライド可能な金型600が用いられる。図13(a)は、金型600内に表面材1および装飾層2を配置した状態を示す図である。金型600は、金型部分601と金型部分602とを有している。金型部分601には、基材3を形成するための樹脂材料を金型内に射出するための第1ゲート603が複数形成されている。また、金型部分601には、被覆部4を形成するための第2ゲート604が複数形成されている。金型部分602には、被覆部4を形成するためのスライド部605が設けられている。
【0089】
図13(a)に示すように、表面材1および装飾層2が金型部分602に配置されてから、図13(b)に示すように、金型部分601と金型部分602が閉じられる。その後、樹脂材料が第1ゲート603から金型600内に射出され(矢印E参照)、基材3が形成される。
【0090】
図14(a)は、図13(b)のU部の拡大図であり、基材3が形成された後の状態を示している。
【0091】
次に、ステップS40において、スライド部605を外側方向に向かってスライドさせる(矢印F参照)。図15(a)および図15(b)は、金型部分602側から見たスライド部605と表面材1の関係を示す模式図である。図15(a)に示すように、スライド部605は、表面材1の4つの辺部分120に対応する位置に設けられており、それぞれが外側方向に向かってスライド可能である。スライド部605を外側方向に向かってスライドすることによって、図14(b)に示すように、被覆部4を形成するための樹脂充填部である型空間600aが形成される。型空間600aは、第2ゲート604と連通されており、第2ゲート604から樹脂を型空間600aに射出する(矢印G参照)ことによって、被覆部4が形成される。なお、スライド部605を移動させる前の金型600が、第1金型の一例に対応する。スライド部605を移動させて型空間600aを形成させた後の金型600が、第2金型の一例に対応する。
【0092】
そして、被覆部4が形成された樹脂積層体200が金型600から取り出される。
このように、金型600の一部を動かすことによって金型600を変形させて型空間600aが形成された金型600とできるため、2つの金型を用意する必要がない。さらに、金型600において表面材1に基材3を射出成型した後に、金型600を変形させて、再度射出成型すればよいため、一方の金型において表面材に基材を射出成型した後に、表面材を他方の金型に入れ替える必要がなく、工数を削減することができる。
【0093】
(実施の形態3)
以下に、本発明の実施の形態3における樹脂積層体300について説明する。本樹脂積層体300は、実施の形態1の樹脂積層体100と異なり、表面材1から被覆部4にかけて滑らかに形成されている。
【0094】
図16は、本実施の形態3の樹脂積層体300の部分断面図である。図16に示す樹脂積層体300では、表面材1の周縁部12は、その外周部に切り欠き形状の段差部13を有している。周縁部12の周縁面12aは、段差部13を形成するように、第1部分12a1、第2部分12a2、および第3部分12a3を有する。
【0095】
第1部分12a1は、中央部11の中央面11aに湾曲して繋がっている。第2部分12a2は、第1部分12a1の外側方向の端から内側方向に向かって形成されている。第2部分12a2は、表側方向Aおよび裏側方向Bに対して概ね垂直に設けられている。第3部分12a3は、第2部分12a2の内側方向の端から端面1cの外側方向の端までを繋ぐように設けられている。
【0096】
装飾層2は、中央部11の中央面11bと周縁面12bと端面1c上に配置されている。
【0097】
基材3の周縁部32における周縁面32aの第1部分32a1は、装飾層2を挟んで周縁面12bに対向して設けられている。第1部分32a1は、図16では、概ね表側方向Aおよび裏側方向Bに沿って設けられている。第2部分32a2は、装飾層2を挟んで端面1cに対向して設けられている。第2部分32a2は、表側方向Aおよび裏側方向Bに対して略垂直に設けられている。第3部分32a3は、装飾層2の端面2eを挟んで周縁面12aの第3部分12a3と略同一面上に設けられている。第3部分32a3は、表側方向Aおよび裏側方向Bに沿って設けられている。
【0098】
被覆部4は、表面材1の第2部分12a2と第3部分12a3と端面2eと第2部分32a2に接触するように形成されている。また、被覆部4の外周面4fと第2部分12a2の間には段差が形成されておらず、周縁面12aの第1部分12a1から外周面4fにかけて滑らかに形成されている。これにより、意匠性を向上することができる。
【0099】
(実施の形態4)
以下に、本発明の実施の形態4における樹脂積層体400について説明する。本実施の形態4の樹脂積層体400は、実施の形態3の樹脂積層体300と異なり、被覆部4が、端面1cに対向する位置にも設けられている。
【0100】
図17は、本実施の形態4における樹脂積層体400の部分断面図である。
樹脂積層体400では、表面材1の周縁部12は、その外周部に切り欠き形状の段差部13を有している。周縁部12の周縁面12aは、段差部13を形成するように、第1部分12a1、第2部分12a2、および第3部分12a3を有する。
【0101】
第1部分12a1は、中央部11の中央面11aに繋がっている。第2部分12a2は、第1部分12a1の外側方向の端から内側方向に向かって形成されている。第3部分12a3は、第2部分12a2の内側方向の端から端面1cの外側方向の端までを繋ぐように設けられている。第3部分12a3は、表側方向Aに凸になるように湾曲して形成されている。
【0102】
装飾層2は、中央部11の中央面11bと周縁面12bと端面1c上に配置されている。
【0103】
基材3の周縁部32の周縁面32aは、段差が設けられておらず滑らかに形成されている。周縁面32aは、第1部分32a1と、第2部分32a2と、を有する。第1部分32a1は、図17では、装飾層2を挟んで周縁面12bに沿って設けられている。第2部分32a2は、第1部分32a1の裏側の端から裏側方向Bに向かって延伸するように設けられている。第1部分32a1の裏側の端は、端面3cに繋がっている。
【0104】
被覆部4は、第2部分32a2と、端面1cと、第3部分12a3と、第2部分12a2を覆うように形成されている。なお、被覆部4は、端面1cでは装飾層2を挟んで設けられているが、第2部分32a2と、第3部分12a3と、第2部分12a2には直接接触している。
【0105】
また、被覆部4の外周面4gは、第1部分4g1と、第2部分4g2と、を有する。第1部分4g1は、表側方向Aおよび裏側方向Bに沿って設けられている。第2部分4g2は、第1部分4g1の表側の端から第1部分12a1まで設けられている。第1部分4g1と第1部分12a1は、段差なく滑らかに湾曲を形成するように設けられている。
【0106】
このように、第1部分12a1から第1部分4g1にかけて滑らかに形成されていることにより、意匠性を向上することができる。
【0107】
(実施の形態5)
以下に、本発明の実施の形態5における樹脂積層体500について説明する。本実施の形態5の樹脂積層体500は、実施の形態3の樹脂積層体300と異なり、被覆部4が、表面材1に突出している構成が異なる。
【0108】
図18は、本実施の形態5の樹脂積層体500の部分拡大断面図である。樹脂積層体500の被覆部4は、表面材1に挿入されるように設けられている。
【0109】
図18は、本実施の形態5における樹脂積層体500の部分断面図である。
樹脂積層体500では、表面材1の周縁部12は、その外周部に段差部13および挿入部14を有する。表面材1の周縁部12は、段差部13および挿入部14を形成するように、第1部分12a1、第2部分12a2、および第3部分12a3を有する。
【0110】
第1部分12a1は、中央部11の中央面11aに繋がっている。第2部分12a2は、第1部分12a1の外側方向の端から内側方向に向かって形成されている。第3部分12a3は、第2部分12a2の内側方向の端から端面1cの外側方向の端までを繋ぐように設けられている。第3部分12a3には、装飾層2側に向かうように凹部12a4が形成されている。この凹部12a4が、挿入部14を構成する。
【0111】
装飾層2は、中央部11の中央面11bと周縁面12bと端面1c上に配置されている。
【0112】
基材3の周縁部32における周縁面32aの第1部分32a1は、装飾層2を挟んで周縁面12bに対向して設けられている。第2部分32a2は、装飾層2を挟んで端面1cに対向して設けられている。第2部分32a2は、表側方向Aおよび裏側方向Bに対して略垂直に設けられている。第3部分32a3は、装飾層2の端面2eを挟んで第3部分12a3と略同一面上に設けられている。第3部分32a3は、表側方向Aおよび裏側方向Bに沿って設けられている。
【0113】
被覆部4は、表面材1の第2部分12a2と第3部分12a3と凹部12a4と端面2eと第2部分32a2に接触するように形成されている。また、被覆部4の外周面4hと第2部分12a2の間には段差が形成されておらず、第1部分12a1から外周面4hにかけて滑らかに形成されている。これにより、意匠性を向上することができる。
【0114】
また、被覆部4が凹部12a4に入り込んでいるため、被覆部4と表面材1との接触面積が増え、接着性が向上する。これによって剥離を低減することができる。
【0115】
<他の実施の形態>
以上、本発明による樹脂積層体、及び樹脂積層体の製造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0116】
(A)
上記実施の形態では、樹脂積層体100、200、300、400、500の周縁部が湾曲しているが、湾曲していなくてもよい。要するに、被覆部4が表面材1と基材3の双方に接触するように設けられていればよい。
【0117】
(B)
上記実施の形態1の樹脂積層体100では、装飾層2は、表面材1と基材3の間の外側方向の端まで形成されているが、外側方向の端まで形成されていなくてもよい。装飾層2が端まで形成されていないほうが、表面材1と基材3が直接接触する部分が存在するため密着力の観点からは好ましい。
【0118】
(C)
上記実施の形態の樹脂積層体100、200、300、400、500は平面視において四角形状であるが、これに限らなくてもよく、例えば、三角形状、円形状、多角形状であってもよい。
【0119】
(D)
上記実施の形態2の樹脂積層体200では、辺部分120の間に湾曲部分121が設けられているが、湾曲部分121が設けられていない四角形状であってもよい。この場合、周縁部12の全体に亘って被覆部4が形成されていてもよい。
【0120】
(E)
上記実施の形態2では、辺部分120の全体に被覆部4が形成されているが、途中で途切れていてもよい。
【0121】
(F)
上記実施の形態100、200、300、400、500では、中央部11は平面状であるが、これに限られるものではなく、湾曲していてもよい。
【0122】
(G)
上記実施の形態1の図面では、第1金型700に2つのゲート703が設けられ、第2金型710に2つのゲート713が設けられているが、これらの数に限られるものではなく、場所についても図示される場所に限られるものではない。
【0123】
また、上記実施の形態2の図面では、金型600に、2つのゲート603と2つのゲート604が設けられているが、これらの数および場所に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の樹脂積層体は、剥離を抑制することが可能な効果を有し、化粧タイル、化粧パネル、加飾タイル、および加飾パネルなどとして有用である。
【符号の説明】
【0125】
1 :表面材
2 :装飾層
3 :基材
4 :被覆部
12 :周縁部
100 :樹脂積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18