(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】画像形成装置及びシート処理装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20240401BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240401BHJP
B65H 45/04 20060101ALI20240401BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G03G21/16 104
G03G21/00 530
B65H45/04
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2019233017
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 直史
(72)【発明者】
【氏名】松田 考平
(72)【発明者】
【氏名】荻野 博基
(72)【発明者】
【氏名】勝田 恭史
(72)【発明者】
【氏名】野口 香織
(72)【発明者】
【氏名】平田 淳子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 明
(72)【発明者】
【氏名】西沢 祐樹
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205520(JP,A)
【文献】特開2006-171607(JP,A)
【文献】特開2008-247611(JP,A)
【文献】特開2007-193004(JP,A)
【文献】特開2009-051140(JP,A)
【文献】特開2004-090221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 21/00
B65H 37/00-37/06
B65H 41/00
B65H 45/00-47/00
G03G 15/00
B42B 2/00- 9/06
B42C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにトナー像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成された前記トナー像を加熱してシートに定着させる定着手段と、
前記定着手段
により前記トナー像の定着処理を受けたシートを折り畳む折り手段と、
前記折り手段により折り畳まれたシートを加熱して圧着する圧着手段と、
を備えた画像形成装置であって、
前記定着手段を通過したシートを前記折り手段に向けて搬送する搬送ローラ対と、
前記
搬送ローラ対から前記折り手段に向かうシートの搬送
パスを形成するガイド部材であって、前記画像形成装置を上方から見たときに前記ガイド部材の少なくとも一部が露出しており、前記定着手段によって加熱されたシート
の熱の少なくとも一部を前記画像形成装置の上方の空間に逃がすように構成されたガイド部材と、
を備え、
前記搬送ローラ対から搬送されてきたシートが前記折り手段に進入する入口部の位置は、前記搬送ローラ対のニップ部よりも上方であり、
前記搬送パスは、水平方向において前記搬送ローラ対から前記折り手段に近づく方向に向かって上方に傾斜している、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着手段を通過したシートの搬送経路は、前記折り手段及び前記圧着手段を経由せずにシートを排出する第1経路と、
前記搬送パスを含む第2経路であって前記折り手段及び前記圧着手段を経由してシートを搬送する第2経路と
、に分岐している、
ことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ガイド部材
の上面は、前記第1経路を介して排出されたシートが積載される積載面である、
ことを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ガイド部材には、前記
ガイド部材の上面から前記ガイド部材の下面に貫通する開口部が設けられている、
ことを特徴とする請求項
1乃至
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記
搬送パスを形成する閉状態と、前記
搬送パスを開放する開状態との間で開閉可能に構成されており、
前記開口部は、ユーザによる前記ガイド部材の開閉を可能とする穴形状を含む、
ことを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記ガイド部材に設けられた複数の穴を含む、
ことを特徴とする請求項
4又は
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成手段に給送されるシートを収納するシート収納部を備え、
前記シート収納部の上方に前記画像形成手段が配置され、前記画像形成手段の上方に前記
ガイド部材が配置されており、
鉛直方向に見て前記
ガイド部材、前記画像形成手段及び前記シート収納部が重なっている、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段及び前記定着手段は、第1の筐体に配置され、
前記
ガイド部材、前記折り手段及び前記圧着手段は、前記第1の筐体の上部に装着される第2の筐体に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
シート搬送方向と直交するシート幅方向に見た場合に、水平方向における前記ガイド部材、前記折り手段及び前記圧着手段の占有範囲は、水平方向における前記第1の筐体の占有範囲に収まっている、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
気流を発生させる送風手段を備え、
前記送風手段が発生させる気流の少なくとも一部が、前記
搬送パスを通過するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成手段は、電子写真プロセスにより印刷用トナーを用いて前記トナー像を形成する第1プロセスユニットと、電子写真プロセスにより前記圧着手段でシートを圧着するための圧着用トナーをシートに塗布するための第2プロセスユニットと、を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
シートにトナー像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成された前記トナー像を加熱してシートに定着させる定着手段と、
前記定着手段を通過したシートを排出する排出ローラ対と、を備えた画像形成装置に接続されるシート処理装置であって、
前記定着手段
により前記トナー像の定着処理を受けたシートを折り畳む折り手段と、
前記折り手段により折り畳まれたシートを加熱して圧着する圧着手段と、
前記
排出ローラ対から前記折り手段に向かうシートの搬送
パスを形成するガイド部材であって、前記シート処理装置を上方から見たときに前記ガイド部材の少なくとも一部が露出しており、前記定着手段によって加熱されたシート
の熱の少なくとも一部を前記シート処理装置の上方の空間に逃がすように構成されたガイド部材と、
を備え、
前記排出ローラ対から搬送されてきたシートが前記折り手段に進入する入口部の位置は、前記排出ローラ対のニップ部よりも上方であり、
前記搬送パスは、水平方向において前記排出ローラ対から前記折り手段に近づく方向に向かって上方に傾斜している、
ことを特徴とするシート処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置及びシートを処理するシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給与明細書等の内容に秘匿性があり密封が必要な書類を作成する場合は、プレプリント紙を事前に用意した上で、バリアブルデータを個々のプレプリント紙に印刷し、さらに、後処理として密封処理が行われていた。この方式では、罫線等の書式フォーマットの印刷及び接着剤の塗布を必要とするプレプリント紙の作成に時間が掛かる上、必要数量の少ない用途では高コスト、非効率であった。
【0003】
特許文献1、2では、印刷用トナーに加えて圧着用トナー(粉体接着剤)を使用して電子写真プロセスを実行することにより、プレプリント紙を用意する工程を省略しながら密封された成果物を出力する画像形成装置を提案している。これらの装置では、印刷用トナー及び圧着用トナーをシートに転写し、転写されたトナーをシートに熱定着した後、シートを折り畳み、さらにシートを加熱しながら加圧することで圧着処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-171607号公報
【文献】特開2007-193004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各文献の方法では、第1段階の加熱処理(熱定着)によって加熱された印刷用トナーが十分に冷えていない状態でシートが折り畳まれることにより、画像の転移が生じる場合があった。即ち、加熱された印刷用トナーが冷えてシートの画像面にしっかりと固着する前に、折り畳まれた状態で画像面に対向するシートの対向面と接触して対向面に付着し、印刷物を開封したときに画像の一部が対向面側に転移してしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、シートを折り畳んだ際にトナー像の付着が生じる可能性を低減可能な画像形成装置及びシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートにトナー像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成された前記トナー像を加熱してシートに定着させる定着手段と、前記定着手段により前記トナー像の定着処理を受けたシートを折り畳む折り手段と、前記折り手段により折り畳まれたシートを加熱して圧着する圧着手段と、を備えた画像形成装置であって、前記定着手段を通過したシートを前記折り手段に向けて搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対から前記折り手段に向かうシートの搬送パスを形成するガイド部材であって、前記画像形成装置を上方から見たときに前記ガイド部材の少なくとも一部が露出しており、前記定着手段によって加熱されたシートの熱の少なくとも一部を前記画像形成装置の上方の空間に逃がすように構成されたガイド部材と、を備え、前記搬送ローラ対から搬送されてきたシートが前記折り手段に進入する入口部の位置は、前記搬送ローラ対のニップ部よりも上方であり、前記搬送パスは、水平方向において前記搬送ローラ対から前記折り手段に近づく方向に向かって上方に傾斜している、ことを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
本発明の他の一態様は、シートにトナー像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成された前記トナー像を加熱してシートに定着させる定着手段と、前記定着手段を通過したシートを排出する排出ローラと、を備えた画像形成装置に接続されるシート処理装置であって、前記定着手段により前記トナー像の定着処理を受けたシートを折り畳む折り手段と、前記折り手段により折り畳まれたシートを加熱して圧着する圧着手段と、前記排出ローラから前記折り手段に向かうシートの搬送パスを形成するガイド部材であって、前記シート処理装置を上方から見たときに前記ガイド部材の少なくとも一部が露出しており、前記定着手段によって加熱されたシートの熱の少なくとも一部を前記シート処理装置の上方の空間に逃がすように構成されたガイド部材と、を備え、前記排出ローラ対から搬送されてきたシートが前記折り手段に進入する入口部の位置は、前記排出ローラ対のニップ部よりも上方であり、前記搬送パスは、水平方向において前記排出ローラ対から前記折り手段に近づく方向に向かって上方に傾斜している、ことを特徴とするシート処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートを折り畳んだ際にトナー像の付着が生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1に係る画像形成装置の装置本体に対する圧着ユニットの装着を説明するための図。
【
図3】実施例1においてシートに転写されるトナー像の状態を説明するための模式図。
【
図4】実施例1に係る画像形成装置におけるシートの搬送経路を表す図(a、b)。
【
図5】実施例1に係る折り工程の内容を説明するための図(a~f)。
【
図6】実施例1に係る画像形成装置の外観を示す斜視図。
【
図7】実施例1に係る画像形成装置が出力する成果物を例示する図(a~c)。
【
図9】実施例1に係る第1排出トレイを表す断面図(a、b)。
【
図10】実施例1の変形例1に係る第1排出トレイを表す断面図。
【
図11】実施例1の変形例2に係る画像形成装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
(全体の装置構成)
最初に、画像形成装置の全体構成について、
図1、
図2、
図6を用いて説明する。
図1は、実施例1に係る画像形成装置本体(以下、装置本体10と記載する)と、装置本体10と接続された後処理ユニット30と、を備えた画像形成装置1の断面構成を表す概略図である。画像形成装置1は、電子写真式の印刷機構を備えた装置本体10と、シート処理装置としての後処理ユニット30とによって構成される電子写真画像形成装置(電子写真システム)である。
【0014】
図6は画像形成装置1の外観を表す斜視図である。後処理ユニット30は、装置本体10の上部に装着されている。画像形成装置1は、下部にシートカセット8を有し、右側面部に開閉可能なトレイ20を有し、上面部に第1排出トレイ13を備えている。
【0015】
まず、装置本体10の内部構成を説明する。
図1に示すように、装置本体10は、記録媒体としてのシートPを収納するシート収納部としてのシートカセット8と、画像形成手段としての画像形成ユニット1eと、定着手段としての第1定着器6と、これらを収容する筐体19と、備えている。装置本体10は、シートカセット8から給送されるシートPに画像形成ユニット1eによってトナー像を形成し、第1定着器6によって定着処理を施した印刷物を作成する印刷機能を有する。なお、記録媒体であるシートPとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施された紙、インデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシート材を使用可能である。
【0016】
シートカセット8は、装置本体10の下部において筐体19に対して引き出し可能に挿入されており、多数枚のシートPを収納している。シートカセット8に収納されたシートPは、給送ローラ等の給送部材でシートカセット8から給送され、分離ローラ対によって1枚ずつ分離された状態で、搬送ローラ8aによって搬送される。また、開いた状態のトレイ20(
図6)にセットされたシートを1枚ずつ給送することも可能である。
【0017】
画像形成ユニット1eは、4つのプロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cと、スキャナユニット2と、転写ユニット3と、を備えたタンデム型の電子写真ユニットである。プロセスカートリッジとは、画像形成プロセスを担う複数の部品を一体的に交換可能にユニット化したものである。装置本体10には、筐体19に支持されるカートリッジ支持部9が設けられており、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cはカートリッジ支持部9に設けられた装着部9n,9y,9m,9cに着脱可能に装着される。なお、カートリッジ支持部9は、筐体19から引き出し可能なトレイ部材であってもよい。
【0018】
各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cは、トナーの種類を除いて実質的に共通の構成を備えている。即ち、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cは、像担持体である感光ドラム101、帯電器である帯電ローラ102、トナーを収容するトナー収容部104n,104y,104m,104c、及びトナーを用いて現像を行う現像ローラ105と含む。
【0019】
4つのトナー収容部のうち、図中右側3つのトナー収容部104y,104m,104cには、記録媒体に画像を形成するためのトナー(第1のトナー)として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンの印刷用トナーTy,Tm,Tcが収容されている。これに対し、図中最も左側のトナー収容部104nには、印刷後に圧着処理を行うためのトナー(第2のトナー)である圧着用トナーTnが収容されている。トナー収容部104y,104m,104cは、いずれも印刷用トナーを収容する第1収容部の例であり、トナー収容部104nは圧着用トナーを収容する第2収容部の例である。また、プロセスカートリッジ7y,7m,7cは、いずれも印刷用トナーを用いてトナー像を形成する第1プロセスユニットの例であり、プロセスカートリッジ7nは、所定の塗布パターンで圧着用トナーの像を形成する第2プロセスユニットの例である。
【0020】
圧着用トナーTnの主成分は、印刷用トナーTy、Tm、Tcと同じ材料(例えば、スチレンアクリル樹脂)を用いることができる。また、PE(ポリエチレン)樹脂を添加して接着強度を高める場合もある。圧着用トナーTnは、例えば主成分に添加するワックス成分を増量することで、印刷用トナーTy、Tm、Tcと比べて融点を低く設計している。そのため、圧着用トナーTnは、印刷用トナーTy、Tm、Tcと比べて定着適正温度の下限が低くなっている。本実施例では、圧着用トナーTnは無色透明であり、テキスト等の黒色の画像を印刷する場合は、イエロー(Ty)、マゼンタ(Tm)、シアン(Tc)のトナーを重畳したプロセスブラックで表現する。ただし、例えば画像形成ユニット1eにブラックの印刷用トナーを用いる5つ目のプロセスカートリッジを追加し、黒色の画像をブラックの印刷用トナーで表現できるようにしてもよい。これに限らず、画像形成装置1の用途に応じて印刷用トナーの種類及び数は変更可能である。
【0021】
スキャナユニット2は、プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの下方、かつシートカセット8の上方に配置されている。スキャナユニット2は、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101にレーザ光を照射して静電潜像を書き込む本実施例の露光手段である。
【0022】
転写ユニット3は、中間転写体(二次的な像担持体)としての転写ベルト3aを備えている。転写ベルト3aは、二次転写内ローラ3b及び張架ローラ3cに巻き回されたベルト部材であり、外周面において各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101に対向している。転写ベルト3aの内周側には、各感光ドラム101に対応する位置に一次転写ローラ4が配置されている。また、二次転写内ローラ3bに対向する位置に、転写手段としての二次転写ローラ5が配置されている。二次転写ローラ5と転写ベルト3aとの間の転写ニップ5nは、転写ベルト3aからシートPにトナー像が転写される転写部(二次転写部)である。
【0023】
第1定着器6は、二次転写ローラ5の上方に配置されている。第1定着器6は、定着部材としての加熱ローラ6aと、加圧部材としての加圧ローラ6bとを有する熱定着方式の定着器である。加熱ローラ6aは、ハロゲンランプやセラミックヒータ等の発熱体や誘導加熱方式の発熱機構によって加熱される。加圧ローラ6bは、バネ等の付勢部材によって加熱ローラ6aに押圧されており、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bのニップ部(定着ニップ6n)を通過するシートPを加圧するための加圧力を発生させる。
【0024】
筐体19には、装置本体10からシートPを排出するための開口部である排出口12(第1の排出口)が設けられており、排出口12には排出ユニット34が配置されている。本実施例の排出手段である排出ユニット34は、第1排出ローラ34aと、中間ローラ34bと、第2排出ローラ34cと、を有するいわゆる三連ローラを使用している。また、第1定着器6と排出ユニット34との間には、シートPの搬送経路を切り替えるフラップ状のガイドである切替ガイド33が設けられている。切替ガイド33は、軸部33aを中心に先端33bが図中矢印c方向に往復するように回動可能である。
【0025】
なお、装置本体10は、両面印刷を行うための機構を備えている。具体的には、排出ユニット34が、例えば正転及び逆転が可能なモータに接続されることで、第1排出ローラ34a及び中間ローラ34bによってシートPの搬送方向を反転してスイッチバック搬送を実行可能に構成されている。さらに、主搬送路1mに対してループ状に接続された搬送路として、排出ユニット34によってスイッチバックされたシートPを再び主搬送路1mに搬送するための両面搬送路1rが設けられている。両面印刷の場合、主搬送路1mを通過する間に第1面に画像形成されたシートPが排出ユニット34によってスイッチバックされ、両面搬送路1rに搬送される。そして、シートPが表裏が反転した状態で主搬送路1mを再び通過する間に、シートPの第2面に画像が形成される。両面印刷後のシートPの搬送経路は、片面印刷の場合と同じく切替ガイド33によって切り替えられる。
【0026】
また、装置本体10において搬送ローラ8a、転写ニップ5n及び定着ニップ6nを通る搬送経路は、シートPに対する画像形成が行われる主搬送路1mを構成している。主搬送路1mは、画像形成時の主走査方向(主搬送路1mを搬送されるシートの搬送方向に垂直なシートの幅方向)から見た場合に、画像形成ユニット1eに対して水平方向の一方側を通って下方から上方に延びている。言い換えると、本実施例の装置本体10は、主搬送路1mが略鉛直方向に延びる、いわゆる垂直搬送型(縦パス型)のプリンタである。なお、鉛直方向に見た場合、第1排出トレイ13、中間パス15及びシートカセット8は互いに重なっている。そのため、水平方向に関して排出ユニット34がシートPを排出するときのシートの移動方向は、水平方向に関してシートカセット8からシートPが給送されるときのシートの移動方向とは反対向きとなる。
【0027】
また、
図1の視点(画像形成時の主走査方向に見た場合)において、後処理ユニット30の第2排出トレイ35を除いた本体部分の水平方向の占有範囲は、装置本体10の占有範囲に収まっていると好適である。このように後処理ユニット30を装置本体10の上方の空間に収めることで、圧着印刷機能を備えた画像形成装置1を、通常の縦パス型プリンタと同程度の設置空間に設置することが可能となる。
【0028】
(圧着ユニット)
図2に示すように、後処理ユニット30は装置本体10の上部に取り付けられている。後処理ユニット30は、折り手段としての折り器31と、圧着手段(第2の定着手段)としての第2定着器32とが、筐体(第2の筐体)39に収容されて一体化された後処理ユニットである。また、後処理ユニット30は、第1排出トレイ13と、シートの冷却部としての機能を有する中間パス15と、第2排出トレイ35とが設けられている。第1排出トレイ13は、後処理ユニット30の上面に設けられていると共に、画像形成装置1全体の上面(
図1)に位置している。後処理ユニット30が備える各部の機能は後述する。
【0029】
後処理ユニット30には、筐体39を装置本体10の筐体19(第1の筐体)に対して位置決めするための位置決め部(例えば、筐体19の凹部に係合する凸形状)が設けられている。また、後処理ユニット30には、装置本体10とは別の駆動源及び制御部が設けられており、後処理ユニット30のコネクタ36と装置本体10のコネクタ37が結合することで装置本体10と電気的に接続される。これにより、後処理ユニット30は、装置本体10を介して供給される電力を用いて、装置本体10に設けられた制御部からの指令に基づいて動作する状態となる。
【0030】
なお、後処理ユニット30を装着しない場合、装置本体10の上面に設けられた本体排出トレイ19aに印刷後のシートPが排出される。その場合、圧着用トナーTnを用いるプロセスカートリッジ7n(
図1)に代えて、ブラックの印刷用トナーを用いるプロセスカートリッジをカートリッジ支持部9に装着すれば、装置本体10は一般的なフルカラープリンタとして動作する。即ち、画像形成装置1は、装置本体10の基本構成を変更することなく、後処理ユニット30を含まない形態及びオプションとしての後処理ユニット30が取り付けられた
図1の形態のどちらでも使用可能である。
【0031】
(画像形成の動作)
次に、本実施例の画像形成装置1が行う画像形成動作について、
図1~
図8を用いて説明する。
図3は、シートPに転写されるトナー像の状態を説明するための模式図である。
図4(a、b)は、画像形成装置1におけるシートの搬送経路を表す図である。
図5(a~f)は、折り工程の内容を説明するための図である。
図7(a~c)は、画像形成装置1が出力する成果物を例示する図である。
図8は、比較例に係る画像形成装置401の概略図である。
図9(a、b)は、本実施例の第1排出トレイを表す断面図である。
【0032】
画像形成装置1に対して印刷すべき画像のデータ及び印刷の実行指令が入力されると、画像形成装置1の制御部はシートPを搬送して画像を形成し、必要に応じて後処理ユニット30による後処理を施す一連の動作(画像形成動作)を開始する。画像形成動作では、まず、
図1に示すように、シートPがシートカセット8から1枚ずつ給送され、搬送ローラ8aを介して転写ニップ5nへ向けて搬送される。
【0033】
シートPの給送に並行して、プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cが順次駆動され、感光ドラム101が図中時計回り方向(矢印w)に回転駆動される。このとき感光ドラム101は、帯電ローラ102によって表面に一様な電荷を付与される。また、スキャナユニット2が、画像データに基づいて変調したレーザ光を各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101に照射して、感光ドラム101の表面に静電潜像を形成する。次に、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの現像ローラ105に担持されたトナーによって、感光ドラム101上の静電潜像がトナー像に現像される。
【0034】
なお、無色透明の圧着用トナーによって現像されることで感光ドラム101上に形成されるトナー層は、視覚情報の伝達を目的としない点で、図形やテキスト等の画像を記録媒体に記録するための印刷用トナーのトナー像(通常のトナー像)とは異なっている。しかしながら、以下の説明では、シートPに所定の塗布パターンで圧着用トナーを塗布するために、電子写真プロセスによって塗布パターンに応じた形状で現像された圧着用トナーの層も「トナー像」の1つとして扱う。
【0035】
転写ベルト3aは、図中反時計回り方向(矢印v)に回転する。各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cにおいて形成されるトナー像は、感光ドラム101と一次転写ローラ4との間に形成される電界によって、感光ドラム101から転写ベルト3aに一次転写される。
【0036】
ここで、
図1に示すように、転写ベルト3aの回転方向において、圧着用トナーTnを用いるプロセスカートリッジ7nが4つのプロセスカートリッジの中で最も上流に位置する。また、プロセスカートリッジ7nから転写ベルト3aの回転方向下流側に向かって、イエロー、マゼンタ、シアンのプロセスカートリッジ7y,7m,7cが順に並んでいる。従って、
図3に示すように、4種類のトナー像が転写ベルト3a上で重なると、圧着用トナーTnが最下層(転写ベルト3aに接触する層)となり、その上にイエロー(Ty)、マゼンタ(Tm)、シアン(Tc)の印刷用トナーが順に重なった状態となる。
【0037】
転写ベルト3aに担持されて転写ニップ5nに到達したトナー像は、二次転写ローラ5と二次転写内ローラ3bとの間に形成される電界によって、主搬送路1mを搬送されてきたシートPに二次転写される。その際、トナー層の上下は反転する。即ち、転写ニップ5nを通過したシートPには、最下層(シートPに接触する層)からシアン(Tc)、マゼンタ(Tm)、イエロー(Ty)の印刷用トナーが重なり、さらにその上に圧着用トナーTnの層が形成される。従って、シートPに転写されたトナー像において、圧着用トナーTnの層が最表面となる。
【0038】
その後、シートPは、第1定着器6に搬送されて熱定着処理を受ける。即ち、シートPが定着ニップ6nを通過する際にシートP上のトナー像が加熱及び加圧されることで印刷用トナーTy,Tm,Tc及び圧着用トナーTnが溶融し、その後固着することで、シートPに定着した画像が得られる。
【0039】
装置本体10内において主搬送路1mを搬送されて第1定着器6を通過したシートPの搬送経路は、
図4(a、b)に示すように第1経路R1及び第2経路R2の2つに分岐する。
図4(a)に示す第1経路R1は、通常印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34によって第1排出トレイ13に排出される経路である。
図4(b)に示す第2経路R2は、圧着印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34、折り器31及び第2定着器32を介して第2排出トレイ35に排出される経路である。シートPを第1経路R1で搬送する場合、切替ガイド33はシートPの先端(シート搬送方向の下流端)を排出ユニット34の第1排出ローラ34aと中間ローラ34bのニップ部に案内する。また、シートPを第2経路R2で搬送する場合、切替ガイド33はシートPの先端を排出ユニット34の中間ローラ34bと第2排出ローラ34cのニップ部に案内する。
【0040】
第1経路R1は、圧着用トナーTnを使わない通常の画像形成動作(以下、通常印刷とする)のときに用いられる。通常印刷において、圧着用トナーTnを用いるプロセスカートリッジ7nの現像工程は行われない。よって、イエロー(Ty)、マゼンタ(Tm)、及び/又はシアン(Tc)の印刷用トナーのみで構成されたトナー像がシートPに転写ニップ5nで転写される。そして、
図4(a)に示すようにシートPは第1定着器6で熱定着処理を受けた後、排出ユニット34によって排出されて第1排出トレイ13の上面である積載面130に積載される。
【0041】
第2経路R2は、圧着用トナーTnを使う画像形成動作(以下、圧着印刷)のときに用いられる。圧着印刷の場合、
図3を用いて説明したように、転写ニップ5nを通過したシートP上には、最表層に圧着用トナーTnの層を有するトナー像が転写されている。そして、第1定着器6を通過して熱定着処理(1回目の熱定着)を受けたシートPは、
図4(b)に示すように排出ユニット34によって折り器31へと搬送される。
【0042】
第2経路R2における第1定着器6と折り器31との間には、中間パス15が設けられている。中間パス15は、画像形成装置1の上面部(天面部)を通るシート搬送路であり、第1排出トレイ13の下側で第1排出トレイ13と略平行に延びている。なお、中間パス15及び第1排出トレイ13は、水平方向に関して折り器31に向かって鉛直方向の上方に傾斜している。従って、折り器31の入口(下記のガイドローラ対(31c,31d)は、装置本体10の出口(中間ローラ34bと第2排出ローラ34cのニップ)よりも鉛直方向で上方に位置する。
【0043】
折り器31は、第1ガイドローラ31c、第2ガイドローラ31d、第1折りローラ31a及び第2折りローラ31bの4本のローラと、引き込み部31eと、を有している。第1ガイドローラ31c及び第2ガイドローラ31dは、折り器31の上流側の搬送パス(本実施例では中間パス15)から受け取ったシートPを挟持して搬送するガイドローラ対である。第1折りローラ31a及び第2折りローラ31bは、シートPを折り曲げながら送り出す折りローラ対である。
【0044】
なお、第2経路R2に沿ったシートの搬送方向における第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ31cまでの間隔M(
図1)は、折り処理前のシートPの搬送方向の全長L(
図5(a))よりも短くなるように構成されている。言い換えると、第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ31cまでの間隔Mにより、後処理ユニット30によって処理可能なシートの搬送方向の長さの下限が定まる。この構成により、排出ユニット34からガイドローラ対に滞りなくシートPが受け渡される。
【0045】
図5(a~f)に沿って折り器31による折り処理を説明する。折り処理を実行する場合、第1ガイドローラ31c及び第1折りローラ31aは図中時計回り方向に、第2ガイドローラ31d及び第2折りローラ31bは図中反時計回りに回転する。まず、排出ユニット34から送り出されたシートPの先端qが、
図5(a)に示すようにガイドローラ対(31c,31d)に引き込まれる。シートPの先端qは、
図5(b)に示すように、ガイド壁31fにより下向きに案内されて第1折りローラ31aに接触し、互いに対向している第1折りローラ31aと第2ガイドローラ31dに引き込まれて引き込み部31eの壁31gに当接する。
【0046】
ガイドローラ対(31c,31d)によるシートPの引き込みに連れて、先端qは壁31gに摺接しながら引き込み部31eの奥へと進む。やがて、先端qは
図5(c)に示すように引き込み部31eの端部31hに突き当たる。なお、引き込み部31eは、中間パス15の下方側で中間パス15と略平行に延びた空間を形成しており、
図5(c)の段階で、シートPは第2ガイドローラ31dに巻き付いてU字型に曲がった状態となる。
【0047】
図5(c)の状態からガイドローラ対(31c,31d)によってさらにシートPが引き込まれると、
図5(d)に示すように中腹部rでたわみが生じはじめる。やがて
図5(e)に示すように、中腹部rが第2折りローラ31bに接することで、第2折りローラ31bから受ける摩擦力により折りローラ対(31a,31b)のニップ部に引き込まれる。そして、
図5(f)に示すように、中腹部rを折り目として折り畳まれた状態で、折りローラ対(31a,31b)によって中腹部rを先頭にシートPが排出される。
【0048】
ここで、引き込み部31eの深さN(
図5(e))、即ち折りローラ対(31a,31b)のニップ部から引き込み部31eの端部31hまでの距離は、シートPの全長Lの半分の長さに設定している。これにより、折り器31は、シートPを半分の長さで二つ折りにする処理(中折り)を実行可能である。なお、引き込み部31eの深さNを変えることで、折り目の位置を任意に変えることができる。
【0049】
以上説明した折り器31は折り手段の一例であり、例えばシートPにブレードを押し当ててローラ対のニップ部に押し込むことで折り目を形成する折り機構を用いてもよい。また、折り処理の内容は二つ折りに限らず、例えばZ折りや三つ折りを実行する折り機構を用いてもよい。なお、本実施例の折り器31は、回転するローラと固定された引き込み部31eで構成されるため、往復運動をするブレードを用いる折り機構に比べて駆動機構の簡素化が可能である。また、本実施例の折り器31は、4本のローラ以外に、シート長さの半分の深さNを有する引き込み部31eを設ければよいため、後処理ユニット30の小型化が可能である。
【0050】
折り器31を通過したシートPは、
図4(b)に示すように第2定着器32に搬送される。第2定着器32は、第1定着器6と同様に熱定着方式の構成を有する。即ち、第2定着器32は、加熱部材としての加熱ローラ32aと、加圧部材としての加圧ローラ32bとを有する。加熱ローラ32aは、ハロゲンランプやセラミックヒータ等の発熱体や誘導加熱方式の発熱機構によって加熱される。加圧ローラ32bは、バネ等の付勢部材によって加熱ローラ32aに押圧されており、加熱ローラ32aと加圧ローラ32bのニップ部(圧着ニップ)を通過するシートPを加圧するための加圧力を発生させる。
【0051】
折り器31で折り畳まれたシートPは、第2定着器32によって圧着処理(圧着用トナーが塗布された画像面に対する2回目の熱定着)を受けることで、折り畳まれた状態のまま圧着される。即ち、シートPが圧着ニップを通過する際にシートP上の圧着用トナーTnが加熱されて再溶融した状態で加圧されることで、対向面(折り畳まれた状態で、圧着用トナーTnのトナー像が転写されたシートの画像面に対向する面)に付着する。そして、圧着用トナーTnが冷えて固まることで、圧着用トナーTnを接着剤としてシートPの画像面と対向面が結合(接着)される。
【0052】
ここで、第1定着器6の加熱ローラ6aがトナー像に直接接触するのに対し、第2定着器32の加熱ローラ32aは折られた状態のシートPを介して間接的に圧着用トナーTnを加熱することになる。このとき、前述したように圧着用トナーTnの融点を印刷用トナーTy,Tm,Tcの融点より低く設定することで、第2定着器32の定着温度を画像の転移が生じない程度に抑えることができる。即ち、第2定着器32の定着温度を高くした場合に懸念される、印刷用トナーTy,Tm,Tcの再溶融が発生して画像面から対向面に画像の一部が転移してしまうこと(ホットオフセット)を回避することができる。なお、第2定着器32の定着温度(加熱ローラ32aの設定温度)は、第1定着器6の定着温度(加熱ローラ6aの設定温度)より低く設定してもよいし、間接的な加熱となることを考慮して第1定着器6の定着温度以上に設定してもよい。
【0053】
第2定着器32による圧着処理を受けたシートPは、
図4(b)に示すように、後処理ユニット30の筐体39に設けられた排出口32c(第2の排出口)から図中左側に排出される。そして、装置本体10の左側面に設けられた第2排出トレイ35(
図1参照)に収納される。以上で、シートPが第2経路R2を搬送される場合の画像形成の動作が終了する。
【0054】
なお、シートPに対する圧着用トナーTnの塗布パターンによって、折り畳まれたシートPの結合箇所を変えることが可能となる。
図7(a~c)は、圧着用トナーTnの塗布パターンが異なる成果物(画像形成装置の出力物)を例示している。
図7(a、b)は、受け取った人が開封する用途の成果物(半接着の成果物)の例である。
図7(a)の圧着ハガキ51の場合、原紙の片面の全面51aに圧着用トナーTnが塗布され、中央の折り目51bで折り畳まれた状態で圧着される。
図7(b)の給与明細書52の場合、原紙の片面の外周部の全周52aに圧着用トナーTnが塗布され、中央の折り目52bで折り畳まれた状態で圧着される。
図7(c)は、開封されることを前提としない用途の成果物(完全接着の成果物)の例としての袋(薬袋)を表している。この場合、折り畳まれた状態のシートの折り目53bを含めた三辺が結合されるように、L字状の領域53aに圧着用トナーTnが塗布される。
【0055】
また、本実施例の画像形成装置1は、
図7(a~c)に例示したいずれの成果物についても、プレプリント紙を用意することなくワンストップで出力することが可能である。即ち、印刷用トナーを用いて原紙の片面又は両面に画像を記録する動作に並行して、所定の塗布パターンで圧着用トナーを塗布し、折り処理及び圧着処理を施した状態の成果物を出力することが可能である。例えば、
図7(a~c)の成果物を出力する場合、原紙として用いるシートの一方の面が成果物の外側となり、他方の面が成果物の内側となる。そこで、両面印刷における第1面の画像形成動作として、印刷用トナーで外側面用の画像を形成し、第2面の画像形成動作として、印刷用トナーで内側面用の画像を形成すると共に所定の塗布パターンで圧着用トナーを塗布すればよい。
【0056】
画像形成装置1が印刷用トナーを用いて記録する画像には、プレプリント紙を用いる場合のフォーマット(不変部分)と、個人情報等の可変部分とを含めることができる。従って、上記のように本実施例ではプレプリント紙ではない白紙等の原紙から、圧着処理によって圧着された成果物を出力することができる。ただし、プレプリント紙を記録媒体として使用し、可変部分の印刷処理と圧着処理を行う用途で本実施例の画像形成装置1を使用することもできる。
【0057】
(折り処理前のシートの冷却)
ここで、第1定着器6から折り器31に搬送されるシートPの冷却について説明する。後処理ユニット30で折り処理及び圧着処理を行う画像形成動作の場合、上述したように、第1定着器6で熱定着処理を受けたシートPは第2経路R2を介して折り器31に搬送されて折り畳まれる(
図4(b))。このとき、熱定着処理によって溶融したトナー像が十分に冷えて固まる前にシートPが折り畳まれると、印刷用トナーのトナー像がシートPの画像面から対向面に転移してしまう可能性がある。即ち、本来は画像面にのみ固着すべき印刷用トナーの一部が十分に冷えていない状態で対向面と接触することで対向面との間に付着力が発生する。そして、第2定着器32での圧着処理を経て画像形成装置1から排出された印刷物が開封されたときに印刷用トナーで構成される画像の一部が画像面から対向面に転移してしまう可能性があった。
【0058】
そこで、本実施例では、
図1に示すように第2経路R2における第1定着器6と折り器31との間に冷却部としての中間パス15を設けている。中間パス15を通過する間にシートPの放熱が進むことで、上述したような画像の転移が生じる可能性を低減することができる。
【0059】
なお、第1定着器6の定着温度は、印刷用トナー及び圧着用トナーの両方の定着適正温度を満たす範囲で設定され、例えば印刷用トナーの融点より高い160℃に設定される。これに対し、シートPが折り器31で折り処理を受けるときのシートPの温度は、画像の転移を効果的に低減するために、例えば圧着用トナーのガラス転移温度(50℃)以下であることが好ましい。言い換えると、冷却部は、複数枚のシートPに対して圧着印刷を連続して実行する場合に、上記定着温度で熱定着処理を受けたシートPを、折り器31に突入するまでに圧着用トナーのガラス転移温度程度まで冷却できる冷却性能を有すると好適である。
【0060】
図1に示すように、本実施例の中間パス15は、第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ31cまでの間隔Mより若干小さい長さFで設けられている。シートPが折り器31に到達するまでの放熱量を大きくするには、中間パス15が長い方が有利である。しかし、中間パス15が長すぎると装置の大型化を招くため、必要最小限に留めることが望ましい。そのため、中間パス15は、シートPの搬送方向において第1排出トレイ13と重複する範囲に設けている。言い換えると、本実施例の冷却部は、第2経路R2を構成するシート搬送路であって、第2経路R2におけるシート搬送方向に関して第1排出トレイ13の位置と重複する範囲のシート搬送路である。このようにシートの搬送方向において冷却部と第1排出トレイ13をオーバーラップして配置することで、シート上のトナー像の冷却と装置の小型化とを両立できる。また、本実施例では上述した通り折り器31の入口が装置本体10の出口よりも鉛直方向で上方に位置しており、中間パス15が傾斜している。そのため、中間パス15の水平方向の占有幅を小さく抑えつつ、冷却のために必要な長さFを確保することができる。
【0061】
また、本実施例では、中間パス15を含む第2経路R2を、画像形成装置1の上面部に、即ち、画像形成装置1の上面の一部を構成するように設けられている。この理由について、
図8を用いて説明する。
図8は、参考例における画像形成装置401のレイアウトを表しており、印刷用トナーを用いるプロセスカートリッジ407pと圧着用トナーを用いるプロセスカートリッジ407nによってシートにトナー像を形成し、第1定着器406で熱定着処理を行う。熱定着処理を受けたシートは、折り器431において折り畳まれ、その後、不図示の第2定着器で圧着処理を受ける。しかし、この構成では、第1定着器406から折り器431に至る経路が画像形成装置401内の奥まった位置にあり、熱源である第1定着器406の熱がこもりやすい。そのため、上述したように折り器431でシートが折り畳まれた際にトナー像が対向面に付着して、画像の転移が生じる懸念がある。
【0062】
これに対し、本実施例の冷却部である中間パス15は画像形成装置1の上面部に設けられており、第1定着器6で加熱されたシートPの熱を画像形成装置1の上方側の外部空間に逃がすことで、シートPを効果的に冷却することができる。
【0063】
図9(a)に示すように、中間パス15は、第1排出トレイ13の下面である上側ガイド面15aと、後処理ユニット30の筐体39に設けられた下側ガイド面15bとによって形成されるシート搬送路である。つまり、第1排出トレイ13は、上面である積載面130によって第1経路R1で排出されたシートを支持する排出トレイであると共に、下面である上側ガイド面15aによって第2経路R2を通るシートの上面を案内するガイド部材である。この第1排出トレイ13は、鉛直方向上方から見て少なくとも一部が露出するように配置されており、上面側で外気に接する部材となっている。そのため、中間パス15を通るシートPの効率的な冷却が可能となっている。
【0064】
ところで、本実施例のガイド部材である第1排出トレイ13は、
図9(b)に示すように中間パス15を開放する開状態と
図9(a)に示す閉状態との間で開閉可能な部材である。中間パス15を開放することで、例えば折り器31においてシートPのジャムが発生した場合にユーザが自らシートPを除去してジャム処理を行うことができる。図示した構成例において、第1排出トレイ13には上面から下面に貫通する穴形状である指掛け穴13bが設けられており、ユーザは指掛け穴13bに指を掛けて第1排出トレイ13を上方に持ち上げることができる。なお、シートPの搬送方向における第1排出トレイ13の下流端132は後処理ユニット30の筐体39と係脱可能に係合しており、第1排出トレイ13を持ち上げた際に筐体39から離脱する。また、指掛け穴13bは、シートPの搬送方向に垂直はシート幅方向に関して第1排出トレイ13の積載面130の中央部に設けられている。
【0065】
第1排出トレイ13が閉じている状態では、指掛け穴13bを介して中間パス15の内部と画像形成装置1の上方の空間が連通している。そのため、シートPが通過することで中間パス15の内部温度が上昇すると、指掛け穴13bを介した空気の対流によって中間パス15の内部温度の上昇が抑制される。従って、指掛け穴13bは、中間パス15(冷却部)の冷却効率に貢献する。
【0066】
(変形例)
なお、ガイド部材としての第1排出トレイ13を後処理ユニット30の筐体39から取り外し可能な構成に代えて、例えばシート搬送方向の上流端131又は下流端132を中心に筐体39に対して回動可能なガイド部材を用いてもよい。ガイド部材をどちら向きに開閉可能とするかは、例えば折り器31と排出ユニット34のどちらのジャム処理性を優先するかに応じて変更可能である。
【0067】
また、第1排出トレイ13の指掛け穴13bはガイド部材の開口部の一例である。
図10に変形例1として示すように複数の穴部13aを設けてもよい。これらの穴部13aは、例えば一定間隔で格子状に配置することで通気孔として機能し、穴部13aを介した空気の対流によって中間パス15の内部温度の上昇が抑制される。なお、通気孔としての穴部13aを指掛け穴13bと兼用としてもよいが、第1排出トレイ13に指掛け穴13bを設けずに穴部13aのみを設けてもよい。例えば穴部13aを覆うカバー部(フィンガーガード)を設けたり、上面視で穴部13aを一般的な指の太さより細かい格子状や、指の太さより細い幅で搬送方向に延びるスリット状とすることができる。
【0068】
また、画像形成装置1に送風ファンを配置して中間パス15に気流が流れるようにしてもよい。例えば、装置本体10に設けた送風ファンが発生させる気流の一部が中間パス15を経由して画像形成装置1の外部に抜けるように構成する。このような構成によってシートPに風を当てることも中間パス15(冷却部)の冷却効率に貢献する。
【0069】
また、冷却部としてのシート搬送路のガイド面を構成するガイド部材が外気に接する配置であれば本実施例の中間パス15と同程度の冷却効率を期待できるため、ガイド部材の上面を排出トレイとして利用しない構成としてもよい。例えば
図11に変形例2として示すように、第1経路R1を第2経路R2の下方に配置する構成も考えられる。この構成では中間パス15の上側ガイド13Aが第1経路R1で排出されるシートPに覆われることがないため、中間パス15の冷却効率をさらに向上可能である。なお、
図11において実施例1と共通の符号を付した要素は、実施例1で上述したものと共通の機能を有しているため、説明を省略する。
【0070】
また、画像形成装置の装置本体10に後処理ユニット30がオプションとして取り付けられる構成に代えて、後処理ユニット30の各部の機能が装置本体に一体に組み込まれた構成としてもよい。
【0071】
以上説明したように、本実施例では、第1定着器6と折り器31との間にシート上のトナー像を冷却するための冷却部を設けており、冷却部を画像形成装置1の上面部に配置している。これにより、第1定着器6によって熱定着処理を受けたシートPが折り器31に到達するまでに冷却されるため、折り器31で折り畳まれた際のトナー像の付着を低減することが可能となり、成果物の品質向上に貢献する。
【実施例2】
【0072】
次に、実施例2の形態について、
図12を用いて説明する。本実施例は、画像形成装置本体(以下、装置本体とする)201に対して側方に後処理ユニット301が接続される構成の画像形成システム100において、後処理ユニット301の上面部に冷却部が配置される。なお、実施例1と共通の符号を付した要素は、実施例1で上述したものと共通の機能を有することとし、説明を省略する。
【0073】
装置本体201の構成は、排出ユニット34がシートPを装置本体201の側方(図中右側)に排出する点を除き、実施例1と共通である。即ち、装置本体201では、シートカセット8から給送されるシートPに対して、印刷用トナー及び圧着用トナーのトナー像を転写し、第1定着器6で熱定着処理を施す。第1定着器6を通過したシートPの搬送経路は切替ガイド33によって第1経路R1と第2経路R2との間で切り替えられる。第1経路R1は、シートPに折り処理及び圧着処理を行わずにシートPを排出する経路であり、第2経路R2は、シートPに折り処理及び圧着処理を施した成果物を排出する経路である。後処理ユニット301は、実施例1と同様の折り器31及び第2定着器32を備えており、第2経路R2に送られたシートPに対して折り処理及び圧着処理を施して第2排出トレイ35に排出する。
【0074】
ここで、第2経路R2における第1定着器6と折り器31の間に、本実施例の冷却部としての中間パス215が設けられている。中間パス215は、第2経路R2におけるシート搬送方向に関して第1排出トレイ213の位置と重複する範囲のシート搬送路である。また、中間パス215は、後処理ユニット301の上面部を通るシート搬送路である。中間パス215の上側のガイド面を構成する第1排出トレイ213には、
図9(a、b)及び
図10で例示した開口部を設けると好適である。
【0075】
第2経路R2を介してシートPが搬送される場合、第1定着器6で熱定着処理を受けたシートPが中間パス215を通って折り器31に向かって搬送される間にシートP上のトナー像が冷却される。そのため、本実施例のように装置本体201の側方にシート処理装置としての後処理ユニット30が配置される構成でも、折り器31によって折り畳まれた際にトナー像が対向面に付着することを低減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1e…画像形成手段(画像形成ユニット)/6…定着手段(第1定着器)/7n…第2プロセスユニット(プロセスカートリッジ)/7y,7m,7c…第1プロセスユニット(プロセスカートリッジ)/8…シート収納部(シートカセット)/1,201…画像形成装置/13…ガイド部材(第1排出トレイ)/130…ガイド部材の上面、積載面/13a…開口部(穴部)/13b…開口部(指掛け穴)/15,215…冷却部(中間パス)/19…第1の筐体/30,301…シート処理装置(後処理ユニット)/31…折り手段(折り器)/32…圧着手段(第2定着器)/39…第2の筐体/R1…第1経路/R2…第2経路/Tn…圧着用トナー/Ty,Tm,Tc…印刷用トナー