(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】粉末コンテナおよびそれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
B65D 88/26 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B65D88/26 Z
(21)【出願番号】P 2019235859
(22)【出願日】2019-12-26
(62)【分割の表示】P 2017516960の分割
【原出願日】2015-09-23
【審査請求日】2019-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-20
(32)【優先日】2014-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517102994
【氏名又は名称】エルピーダブリュ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LPW TECHNOLOGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャロル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フェラー,ベン
(72)【発明者】
【氏名】デフリー,ロバート
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】久保 克彦
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0002443(US,A1)
【文献】米国特許第3223457(US,A)
【文献】特開2014-28996(JP,A)
【文献】特開平2-20691(JP,A)
【文献】特開2002-20802(JP,A)
【文献】特開平11-59786(JP,A)
【文献】特開2008-239243(JP,A)
【文献】特許第6768642(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00 ,
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形用の金属粉末と
不活性の加圧ガスとを収容する圧力容器
と、
使用時に前記
金属粉末が前記圧力容器から流れ出ることができる排出口と、
前記排出口を選択的に開閉するための排出口弁と、
を備え
る粉末搬送コンテナであって、
前記粉末
搬送コンテナは、さらに
前記
金属粉末および/または前記加圧ガスの様々なパラメータをそれぞれ監視または記録するように構成されたデータ検知手段および記録手段と、
連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を登録および記録するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、遠隔監視ステーションに前記センサ測定値または記録されたファイルを中継するように構成された通信モジュールを備え、
前記データ検知手段は、酸素センサを備える、粉末
搬送コンテナ。
【請求項2】
前記データ検知手段は、湿度センサ、温度センサ、歪ゲージ、計量装置、位置センサ、GPS移動追跡装置、加速度計、静電気センサ、および圧力センサからなる群の任意の一つ以上を備える、請求項1に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項3】
前記通信モジュールは、GSM送受信機を備える、請求項1または2に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項4】
前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口とに連通するパイロットラインと、
前記パイロットラインを選択的に開閉するためのパイロットライン弁と、
前記排出口弁の下流に位置する前記排出口に連通する抽気弁と、をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項5】
前記パイロットラインに接続された補充ガス供給源をさらに備える、請求項4に記載の
粉末搬送コンテナ。
【請求項6】
前記パイロットライン弁は、前記パイロットラインを選択的に閉鎖するため、または前記補充ガス供給源を前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口のいずれか一方または両方に選択的に接続するための三方弁を備える、請求項5に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項7】
前記補充ガス供給源は、加圧ガスキャニスターを備える、請求項5または6に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項8】
前記パイロットラインは、使用時に前記圧力容器内の前記
金属粉末より上の層に位置する前記圧力容器内のガスに連通する、請求項4から7のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項9】
前記圧力容器は、部分的に円錐形の本体部を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項10】
前記排出口は、半径方向外方に延びる接続フランジで終端する排出口管を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項11】
前記圧力容器は、使用時に前記圧力容器の上部周囲に密閉可能に取り付けられた取り外し可能な蓋を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項12】
前記圧力容器は、使用時に5バールまでの内圧に耐えるように構成される、請求項1から11のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項13】
前記圧力容器は、使用時に3バールまでの内圧に耐えるように構成される、請求項1から12のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項14】
パレットに固定された支持シャーシをさらに備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の
粉末搬送コンテナと、前記粉末
搬送コンテナの排出口に接続するように構成された注入口を有する積層造形装置とを備える、システム。
【請求項16】
前記積層造形装置の注入口は注入口弁を備え、前記排出口弁と前記注入口弁とが閉弁されたときに、前記粉末
搬送コンテナの排出口と前記積層造形装置の注入口とによって、密閉された容積の空間が形成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記粉末
搬送コンテナの排出口弁が開弁され、前記積層造形装置の注入口弁が開弁されたときに、
前記金属粉末は、前記粉末
搬送コンテナと前記積層造形装置との間を流れることができる、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
パイロットライン弁は、制御ユニットを介してコンピュータ制御され、前記制御ユニットは、圧力容器と排出口管に配置された圧力センサに接続される、請求項15、16または17に記載のシステム。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の粉末
搬送コンテナと、センサ測定値のために通信モジュールを周期的にポーリングするように構成された遠隔監視ステーションとを備える、システム。
【請求項20】
前記遠隔監視ステーションは、SMSメッセージを前記粉末
搬送コンテナに送信するように構成されており、前記通信モジュールは、前記センサ測定値または記録されたファイルのリストを含むSMSメッセージを介して応答する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記遠隔監視ステーションは、複数の粉末
搬送コンテナを監視するように、および様々な粉末
搬送コンテナの測定値の傾向を判定するためにそのデータを照合するように構成される、請求項19または20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の貯蔵および搬送のための装置および方法、特に粉末コンテナおよびそれを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形(AM)プロセスにおいて使用されるような特殊粉末の貯蔵および搬送には、使用可能状態でその粉末を目的地に到達させるために細心の配慮が必要である。現在、AM用粉末(例えば、サブミクロンサイズの金属粉)は、粉末製造設備で合金化および粉砕された後に、調節された空気が充満した状況で気密コンテナに充填される。これらの個別の密閉されたコンテナは、典型的には、バーコードやRFIDタグ等を使用して一意に識別可能であり、倉庫に保管された後に最終目的地へ搬送される。
【0003】
バーコードが付された気密コンテナの使用のような従来の貯蔵および搬送方法では、損傷、不正な混入、または経時変化を受けやすく、現時点では最終目的地での粉末の品質を保証できない。AMのような先端技術製造業において、汚染、バッチ毎のばらつき、および低品質の粉末は許容されない。したがって、AM用粉末のための改良されたおよび/または代替の梱包、貯蔵および搬送システムが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粉末の貯蔵および搬送に関連する一つ以上の課題の解決策を提供することであり、本発明の様々な態様が添付の特許請求の範囲に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、粉末と加圧ガスとを収容する圧力容器と、使用時に前記粉末が前記圧力容器から流れ出ることができる排出口と、前記排出口を選択的に開閉する排出口弁とを備える粉末コンテナが提供されており、前記コンテナは、前記粉末および/または前記加圧ガスの様々なパラメータを監視または記録するように構成されたデータ検知手段および記録手段(data sensing and/or logging means)と、連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を登録および記録するように構成された制御ユニットとをさらに備え、前記制御ユニットは、遠隔監視ステーションにセンサ測定値または記録されたファイルを中継するように構成された通信モジュールを備えている。
【0006】
適切には、前記データ検知および/または記録手段は、酸素センサ、湿度センサ、温度センサ、歪ゲージ、計量装置、位置センサ、GPS移動追跡装置、加速度計、静電気センサ、および圧力センサからなる群の任意の一つ以上を備えている。
【0007】
前記粉末コンテナは、前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口とに連通するパイロットラインと、前記パイロットラインを選択的に開閉するためのパイロットライン弁と、前記排出口弁の下流に位置する前記排出口に連通する抽気弁とをさらに備えてもよい。
【0008】
圧力容器の使用によって、加圧および調節された空気が充満した状況で粉末は適切に貯蔵されることが可能となる。これによって、調節された不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素)等が充満した状況で、粉末はコンテナに充填および貯蔵されることが可能となり、粉末の腐食、酸化または他の劣化を適切に防止できる。
【0009】
排出口は、フランジまたは真空フランジカップリング(KFフランジカップリングともいう)のようなコネクタを適切に備えており、それによって、コンテナの排出口とAM装置の注入口ポートとが直接的に接続されてもよい。コンテナをAM装置の注入口の領域に嵌合するために、マニフォルド、アダプタ、または他の連結管が提供されてもよい。AM装置の注入口は、典型的には注入口弁を備えており、注入口ポートとAM装置との間に配置されている。したがって、排出口弁を閉弁したコンテナと、注入口弁を閉弁したAM装置とを接続することによって、密閉された空気をコンテナの排出口弁とAM装置の注入口弁との間に封じ込めることができる。
【0010】
パイロットラインは、コンテナの(加圧および調節された空気を保持する)圧力容器の内部とコンテナの排出口弁の下流にあるコンテナの排出口とを連通している。したがって、コンテナがAM装置に接続されると、コンテナの排出口弁とAM装置の注入口弁との間の空間に加圧ガスを充填するようにパイロットライン弁を開弁できるようになる。また、コンテナの抽気弁を開弁することによって、圧力容器内からの加圧ガスを使用して、コンテナの排出口とAM装置の注入口との間の空間をパージできるようになる。パージされた後には、パイロットライン弁と抽気弁とを閉弁でき、その時に、コンテナの排出口弁とAM装置の注入口弁との間の空間には、調節された気体が導入される。これにより、コンテナからAM装置内に粉末が流れるように、コンテナの排出口弁とAM装置の注入口弁を開弁できるようになる。
【0011】
コンテナとAM装置との間に、AM装置に接続されるようにインターロック装置が設けられてもよい。インターロック装置は、コンテナの排出口の汚染物、過度の圧力、過度の湿気、過度の酸素等のような、特定のパラメータが許容範囲外である場合、コンテナがAM装置に開口しないように構成されてもよい。このような構成によって、AM装置への人為的過失および偶発的損傷または汚染の可能性が減少される。
【0012】
加圧および調節された空気を保持する圧力容器の使用によって、二つの主要機能が提供されることを理解されたい。一つ目は、望ましい状態に粉末を貯蔵することであり、これによって粉末の保存可能期間は向上し、粉末はより確実に望ましい/指定の状態で現場に到達できる。二つ目は、コンテナとAM装置との間の接続部の内部をパージするために圧力容器内の調節された空気を使用できることであって、それによって、外部やAM装置からの空気やガスによる粉末の汚染の可能性が減少される。加圧および調節された空気の使用によって、コンテナとAM装置との間の接続部の内部をパージするための保護ガスの補充供給源は必ずしも提供されなくてもよいことになる。
【0013】
しかしながら、例えば、制御弁を介して圧力容器またはパイロットラインに接続可能な加圧ガスシリンダによって、補充ガスが供給されてもよい。この補充ガス供給源は、例えば、コンテナが繰り返しAM装置に接続および接続解除される場合に必要である。すなわち、複数回のパージが必要であり、圧力容器内の加圧および調節された空気の圧力は枯渇する。補充ガス供給源は、用途の特定の要件に応じて、圧力容器内の圧力を最大まで上げるために使用されてもよく、パージのみのために使用されてもよい。
【0014】
コンテナは、粉末および/または調節された空気の様々なパラメータを監視および/または記録するように構成されたデータ検知および/または記録手段を備えている。データ検知および/または記録手段は、いずれか一つ以上の下記の部品を備えてもよい。
【0015】
データ検知および/または記録手段は、調節された空気の酸素含有量を監視および/または記録するために圧力容器内に配置された酸素センサを備えてもよい。適切には、この酸素センサは、圧力容器内の酸素レベルが粉末に害を及ぼし得る閾値を越えた場合に、例えば、酸化を引き起こすのに十分なレベルにある場合に、警告を発するように構成されてもよい。
【0016】
データ検知および/または記録手段は、調節された空気の水分含有量を監視および/または記録するために圧力容器内に配置された湿度センサを備えてもよい。適切には、この湿度センサは、圧力容器内の湿度または水分レベルが粉末に害を及ぼし得る閾値を越えた場合に、例えば、さびを引き起こすのに十分なレベルにある場合に、警告を発するように構成されてもよい。
【0017】
データ検知および/または記録手段は、粉末の温度および/または調節された空気の温度を監視および/または記録するために圧力容器内に配置された温度センサを備えてもよい。適切には、この温度センサは、例えば、海上輸送中や航空輸送中に生じ得る、温度が上限閾値より増加した場合または下限閾値より低下した場合に、警告を発するように構成されてもよい。
【0018】
データ検知および/または記録手段は、圧力容器の内容物の重みを監視および/または記録するための歪ゲージや計量装置を備えてもよい。適切には、この歪ゲージや計量装置は、圧力容器内の粉末の量を表示するように構成されてもよく、その重みが予期せずに低下した場合(例えば、漏れや不正な混入が発生した場合)または重量が閾値より低下した場合(すなわち、コンテナの交換が緊急に必要である場合)に、作業員に対して警告を発するように構成されてもよい。
【0019】
データ検知および/または記録手段は、搬送中のコンテナの位置を監視および/または記録するようにおよび/または盗難、不正な混入、輸送の遅延等を特定するように構成されたGPS移動追跡装置のような位置センサを備えてもよく、この位置センサは、ジャスト・イン・タイム方式の納期/物流管理には重要である。
【0020】
データ検知および/または記録手段は、コンテナの動き、より詳細には、振動と衝撃を監視および/または記録するように構成された加速度計、振動センサまたはジャイロスコープを備えてもよい。これらのセンサは、輸送中のコンテナの乱暴な取り扱いを特定すること、および/または圧力容器やコンテナの他の部分に対する損傷の可能性の警告を作業員に発することができる。さらに、過度の振動によって粉末は締固められる可能性があり、使用時の詰まりに繋がる可能性がある。したがって、詰まりの可能性の警告を作業員に発することは本発明の有用な設計上の特徴である。
【0021】
データ検知および/または記録手段は、圧力容器内の調節された空気の圧力を監視および/または記録するように構成された圧力センサを備えてもよい。適切には、この圧力センサによって、保護空気圧を作業員が監視できるようになり、漏れを検出し、また保護空気圧を最大まで上げる必要があるときにその通知を取得できるようになる。圧力センサは、補充ガス供給源が提供されている場合、その補充ガス供給源に作動的に接続されてもよく、調節された空気の圧力が閾値より低下したことを検知したときに、その圧力を最大まで自動的に補給するように構成されてもよい。
【0022】
粉末がコンテナからAM装置に容易に流れ得るかを判定および/または予測するために静電気センサが使用されてもよい。粉末中の過剰な静電気は、詰まりおよび/または流動率の低下につながる可能性があり、静電気センサを提供することによって、そのような有害な作用を特定、予測および/または監視できるようになることが分かっている。
【0023】
加えて、コンテナにはミキサが備えられてもよく、このミキサは、貯蔵または搬送中に締固められた可能性がある粉末を解すためにコンテナ内で移動するように構成された電動式ブレードのような機械式撹拌機であってもよい。他の実施形態では、ミキサは一つ以上のガス噴射システムを備えてもよく、ガス噴射システムは、粉末の詰まりおよび締固められた部分を解すために使用されてもよく、粉末の使用に先立って、粉末に再度空気を送りこむために使用されてもよい。ガス噴射システムが提供されている場合、このシステムは、コンテナ内でガスを再循環するように構成されたポンプを備えてもよく、または加圧ガスコンテナのような外部ガス供給源に接続されてもよい。
【0024】
データ検知および/またはデータ記録手段は、GSM送信機のような通信モジュールに作動的に接続されてもよく、通信モジュールは、遠隔監視ステーションに連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を送信できる。この遠隔監視ステーションは、(例えば、SMSメッセージを通信モジュールに送信することによって)周期的に通信モジュールをポーリングするように構成されてもよく、通信モジュールは、例えば、センサ測定値のリストを含んだSMSメッセージで応答する。遠隔監視ステーションは、複数のコンテナを監視するように、および様々なコンテナの測定値の傾向を判定するためにそのデータを照合するように構成されてもよい。例えば、複数の共同設置されたコンテナが温度上昇を発した場合、遠隔の倉庫設備にいる作業員にHVAC故障の警告を発するために使用されてもよい。
【0025】
コンテナは、パレットに固定されることが適切であり、すなわち、業界標準のパレットシステムに取り付けられることが適切であり、それによって、フォークリフトトラックやISO規格コンテナと互換性のある搬送システム等を使用して、容易にコンテナを積み降ろしおよび搬送できるようになる。パレットは、圧力容器に物理的保護を提供する保護枠組やシャーシを追加的に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
ここで添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を単に例示として説明する。
【
図1】
図1は、本発明に係るコンテナの模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のコンテナとAM装置との接続部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る第2のコンテナの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示す本発明に係るコンテナ10は、粉末14を貯蔵するための圧力容器12を備えている。圧力容器12は、排出口管18に向かう部分的に円錐形の本体部16を備え、排出口管18は、半径方向外方に延びる接続フランジ20で終端している。以下で詳細に説明するように、排出口管18の接続フランジ20は、AM装置28を補完する注入口フランジ26に接続されてもよい。
【0028】
圧力容器12は、取り外し可能な蓋22を介して充填されてもよく、蓋22は、本体部16の上部周囲に密閉可能にボルト止めされている。排出口管18は、排出口弁24を備えており、排出口弁24は、圧力容器から排出口18への粉末14の流れを制御するようにまたは停止するように構成されている。
【0029】
コンテナ10は、パイロットライン30をさらに備えており、パイロットライン30は、排出口弁24の下流の位置で圧力容器12(より詳細には、圧力容器内の粉末より上の層に位置するガス)と排出口管18とを流体連通させている。さらに、パイロットライン弁34も設けられている。
【0030】
排出口18は、抽気管36をさらに備えており、抽気管36は、抽気管弁38によって選択的に開閉される。
【0031】
ここで
図2を参照すると、コンテナ10は、圧力容器12の排出口18とAM装置28の注入口管40との接続によって、AM装置28に接続されてもよい。これは、コンテナの排出口18のフランジ20とAM装置の注入口40のフランジ26とを囲むように締める真空フランジクランプを使用して達成される。AM装置の注入口40は注入口弁42を備えており、排出口弁24と注入口弁42が閉弁されたときに、コンテナ10の排出口18とAM装置28の注入口40とによって、密閉された容積の空間が形成されることが分かる。
【0032】
コンテナ10がAM装置28に接続された後に、二つの圧力P1、P2が等しくなるまで加圧および調節されたガス32が容積44の空間内に流れることができるように、パイロットライン弁34は開弁されてもよい。次に、抽気管弁38は、容積44の空間内のガス32と空気が流れ出るように開弁されてもよく、それによって、容積44の空間はパージされる。一旦パージされると、パイロットライン弁34と抽気管弁38は閉弁されてもよい。一つの任意のステップでは、AM装置28の注入口弁42は、容積44の空間内の圧力P2とAM装置28の圧力P3とバランスを取るために開弁されてもよい。
【0033】
追加的にまたは代替的に、余剰圧力がコンテナ内に保持されてもよく、導管内の詰まりを解消するために使用されてもよい。例えば、コンテナの基部にある粉末が輸送中に締固められた場合、排出口管が開口したときに締固められた粉末を排出口に強制的に通過させるために、および/または詰まりを解消するためにコンテナ内の余剰圧力が使用されてもよく、それによって、詰まり部に渡って圧力の差が発生する。これは、粉末が搬送中に振動を受けた場合に特に有用であり、粉末粒子の締固めによって粉末間の隙間を減少させることができる。
【0034】
コンテナ10の排出口弁24が開弁され、AM装置28の注入口弁42が開弁されたときに、弁24、42の一方または両方が再び閉弁されるまで、粉末14はコンテナ10とAM装置との間を流れることができる。
【0035】
加圧および調節された空気32が充満した状況で圧力容器12内に粉末14を貯蔵して、粉末14がAM装置28に投入される前に、コンテナ10とAM装置28との間の接続部の内部をパージするために調節された空気を使用することによって、粉末14は空気と接触しないことを理解されたい。これらの構成によって、粉末14は調節された空気が充満した状況で梱包、貯蔵および搬送されるので、粉末の状態が保証され、さらに調節された空気32は、最終的にAM装置28に粉末が投入されるまで保持される。したがって、粉末の唯一の汚染の原因はAM装置28内のガスであり、いずれにしても作業員の行動に起因するため、粉末14の供給プロセスは、従来の粉末の貯蔵および搬送システムよりも良好に制御できる。
【0036】
もちろん、本発明のシステムは、粉末14を保持するためだけでなく、所望の回数のパージを可能にする余剰ガスを有するための十分に高い圧力P1が圧力容器12内に維持されることに依存している(調節された空気は、パージ中に外部に放出されるため、ガス32は部分的且つ必然的に失われる)。
【0037】
例えば、2750kg/m3の物質密度を有する100kgの粉末は、最高に高密度な状態で、0.036m3の空間を占有する。しかしながら、金属の粉末は、100%の密度を有することはなく、60%以下の充填密度を有することが一般的である。したがって、100kgの粉末は、0.06m3以下の空間、すなわち、約60.6Lの空間を占有する。圧力容器は、100Lの内容積を有してもよく、すなわち、圧力容器内に39.4Lの空き容積があり、ここにアルゴン等の加圧ガスが充填される。したがって、圧力容器の空き容積の合計は、空き空間の容積と金属粒子間の隙間の容積との和であり、60%の詰込み率では約124.5Lとなる。
【0038】
典型的には、接続部内の容積44は2.35L以下であり、10回のパージが必要であると仮定すると、23.5Lの補充ガス、すなわち、148L以下のガスが必要である。しかしながら、圧縮されたガスの容積は60L以下であるため、これらの必要条件を満たすために必要な圧力P1は、2.35バール以下となる。20回のパージが想定された場合、圧力P1の必要量は2.72バール以下に過ぎない。したがって、圧力P1が相対的に低いことを考慮すると、圧縮ガスを搬送するときの危険性は比較的に低いといえる。
【0039】
本発明のコンテナ10のより複雑なバージョンを示す
図3をここで参照すると、コンテナ10は、パレットに固定された支持シャーシ50に取り付けられており、支持シャーシ50は、圧力容器12を囲んでおり、圧力容器12に機械的保護を提供している。また、シャーシ50によって、コンテナ10は容易に積み降ろしおよび移動できる。本実施形態では、パイロットライン弁34は、パイロットライン30を選択的に閉鎖できる、または圧力容器12の内容物32に接続できる、または小さなガスキャニスター52の形態を持つ補充ガス供給源に接続できる三方弁を備えていることに留意されたい。パイロットライン弁34は、制御ユニット54を介してコンピュータ制御され、制御ユニット54は、圧力容器12に配置された圧力センサ56と、排出口管18に配置された圧力センサ58とに接続されている。制御ユニット54は、湿度センサ60と酸素センサ62とにさらに接続されている。制御ユニット54は、連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を登録および記録するように構成されたモジュール(例えば、PICおよび記憶装置)を備えている。さらに、制御ユニット54は、アドホックネットワークを介して、または間欠的に、または要求に応じて、遠隔監視ステーションへセンサ測定値を中継するため、またはファイルを記録するために、GSMモジュール(図示せず)と、GPSユニット(図示せず)と、アンテナ64とをさらに備えている。
【0040】
本発明がAM用粉末または他の原料粉末のための供給プロセスに係る多くの問題の解決策を提供していることは、上述の説明から容易に理解可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されているが、上述の実施形態の詳細な説明は単に例示であり、これらに制限されない。
【0041】
以下の記述は、請求項ではないが、本発明の様々な実施形態に関する。
【0042】
記述1:
- 粉末と加圧ガスとを収容する圧力容器と、使用時に前記粉末が前記圧力容器から流れ出ることができる排出口と、前記排出口を選択的に開閉する排出口弁とを備える粉末コンテナであって、前記粉末および/または前記加圧ガスの様々なパラメータを監視および/または記録するように構成されたデータ検知および/または記録手段をさらに備える、粉末コンテナ。
【0043】
記述2:
- 前記データ検知および/または記録手段は、酸素センサ、湿度センサ、温度センサ、歪ゲージ、計量装置、位置センサ、GPS移動追跡装置、加速度計、静電気センサ、および圧力センサからなる群の任意の一つ以上を備える、請求項1に記載のコンテナ。
【0044】
記述3:
- 連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を登録および記録するように構成された制御ユニットを備える、記述1または2に記載のコンテナ。
【0045】
記述4:
- 前記制御ユニットは、遠隔監視ステーションに前記センサ測定値を中継するように、またはファイルを記録するように構成された通信モジュールを備える、記述3に記載のコンテナ。
【0046】
記述5:
- 前記通信モジュールは、GSM送受信機を備える、記述4に記載のコンテナ。
【0047】
記述6:
- 前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口とに連通するパイロットラインと、前記パイロットラインを選択的に開閉するためのパイロットライン弁と、前記排出口弁の下流に位置する前記排出口に連通する抽気弁とをさらに備える、記述1から5のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0048】
記述7:
- 前記パイロットラインに接続された補充ガス供給源をさらに備える、記述6に記載のコンテナ。
【0049】
記述8:
- 前記パイロットライン弁は、前記パイロットラインを選択的に閉鎖するため、または前記補充ガス供給源を前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口のいずれか一方または両方に選択的に接続するための三方弁を備える、記述7に記載のコンテナ。
【0050】
記述9:
- 前記補充ガス供給源は、加圧ガスキャニスターを備える、記述7または8に記載のコンテナ。
【0051】
記述10:
- 前記パイロットラインは、使用時に前記圧力容器内の前記粉末より上の層に位置する前記圧力容器内のガスに連通する、記述6から9のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0052】
記述11:
- 粉末と加圧ガスを収容する圧力容器と、使用時に前記粉末が前記圧力容器から流れ出ることができる排出口と、前記排出口を選択的に開閉するための排出口弁とを備える粉末コンテナであって、前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口とに連通するパイロットラインと、前記パイロットラインを選択的に開閉するためのパイロットライン弁と、前記排出口弁の下流に位置する前記排出口に連通する抽気弁とをさらに備える、粉末コンテナ。
【0053】
記述12:
- 前記パイロットラインに接続された補充ガス供給源をさらに備える、記述11に記載のコンテナ。
【0054】
記述13:
- 前記パイロットライン弁は、前記パイロットラインを選択的に閉鎖するため、または前記補充ガス供給源を前記圧力容器の内部と前記排出口弁の下流に位置する前記排出口のいずれか一方または両方に選択的に接続するための三方弁を備える、記述12に記載のコンテナ。
【0055】
記述14:
- 前記補充ガス供給源は、加圧ガスキャニスターを備える、記述12または13に記載のコンテナ。
【0056】
記述15:
- 前記圧力容器は、前記排出口に向かう部分的に円錐形の本体部を備える、記述1から14のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0057】
記述16:
- 前記排出口は、半径方向外方に延びる接続フランジで終端する排出口管を備える、記述1から15のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0058】
記述17:
- 前記圧力容器は、使用時に前記圧力容器の上部周囲に密閉可能に取り付けられた取り外し可能な蓋を備える、記述1から16のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0059】
記述18:
- 前記パイロットラインは、使用時に前記圧力容器内の前記粉末より上の層に位置する前記圧力容器内のガスに連通する、記述6から17のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0060】
記述19:
- 前記圧力容器は、使用時に5バールまでの内圧に耐えるように構成される、記述1から18のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0061】
記述20:
- 前記圧力容器は、使用時に3バールまでの内圧に耐えるように構成される、記述1から19のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0062】
記述21:
- パレットに固定された支持シャーシをさらに備える、記述1から20のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0063】
記述22:
- 前記粉末および/または前記加圧ガスの様々なパラメータを監視および/または記録するように構成されたデータ検知および/または記録手段をさらに備える、記述11から21のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0064】
記述23:
- 前記データ検知および/または記録手段は、酸素センサ、湿度センサ、温度センサ、歪ゲージ、計量装置、位置センサ、GPS移動追跡装置、加速度計、静電気センサ、および圧力センサからなる群の任意の一つ以上を備える、記述22に記載のコンテナ。
【0065】
記述24:
- 連続的にまたは間欠的にセンサ測定値を登録および記録するように構成された制御ユニットを備える、記述22または23に記載のコンテナ。
【0066】
記述25:
- 前記制御ユニットは、遠隔監視ステーションに前記センサ測定値を中継するように、またはファイルを記録するように構成された通信モジュールを備える、記述24に記載のコンテナ。
【0067】
記述26:
- 前記通信モジュールは、GSM送受信機を備える、記述25に記載のコンテナ。
【0068】
記述27:
- 記述1から26のいずれか1項に記載のコンテナと、前記コンテナの排出口に接続するように構成された注入口を有する積層造形装置と、を備える、システム。
【0069】
記述28:
- 前記積層造形装置の注入口は注入口弁を備え、前記排出口弁と前記注入口弁が閉弁されたときに、前記コンテナの排出口と前記積層造形装置の注入口とによって密閉された容積の空間が形成される、記述27に記載のシステム。
【0070】
記述29:
- 前記コンテナの排出口弁が開弁され、前記積層造形装置の注入口弁が開弁されたときに、粉末は、前記コンテナと前記積層造形装置との間を流れることができる、記述27または28に記載のシステム。
【0071】
記述30:
- 前記パイロットライン弁は、制御ユニットを介してコンピュータ制御され、前記制御ユニットは、圧力容器と排出口管に配置された圧力センサに接続される、記述27から29のいずれか1項に記載のシステム。
【0072】
記述31:
- 記述1から30のいずれか1項に記載のコンテナと、センサ測定のために通信モジュールを周期的にポーリングするように構成された遠隔監視ステーションとを備える、システム。
【0073】
記述32:
- 前記遠隔監視ステーションは、SMSメッセージを前記コンテナに送信するように構成されており、前記通信モジュールは、前記センサ測定値または記録されたファイルのリストを含むSMSメッセージを介して応答する、記述32に記載のシステム。
【0074】
記述33:
- 前記遠隔監視ステーションは、複数のコンテナを監視するように、および様々なコンテナの測定値の傾向を判定するためにそのデータを照合するように構成される、記述32または32に記載のシステム。
【0075】
記述34:
- 実質的に、添付の図面を参照して上述した、且つ添付の図面に描かれた、コンテナまたはシステム。