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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 23/02 20060101AFI20240401BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20240401BHJP
   B41F 23/00 20060101ALI20240401BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20240401BHJP
   H05F 1/00 20060101ALI20240401BHJP
   B41F 7/02 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
B41F23/02
B41F33/00 620
B41F23/00
B65H5/00 A
H05F1/00 C
B41F7/02 414
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019238677
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107119
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】布施木 隆
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 豊
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-062644(JP,U)
【文献】特開2016-199358(JP,A)
【文献】特開2009-001418(JP,A)
【文献】特開2008-093495(JP,A)
【文献】特開2006-055714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0092518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-13/70
21/00-35/06
B65H 5/00
H05F 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する液体と圧縮空気とが供給されることにより液体の微粒子を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記液体を供給する液体供給装置と、
前記ノズルに前記圧縮空気を供給する空気供給装置と、
シート状の未印刷の複数のシートである被搬送物が搬送される、前記シートを搬送方向に僅かにずれるように重ねた状態で搬送方向の上流端から下流端まで送るフィーダーボードである搬送路の近傍で、前記搬送路を通る被搬送物に対して、前記液体の微粒子の噴射方向を前記フィーダーボードにおける搬送方向の下流側端部に上流側の上方から向かう方向に規定して前記液体の微粒子が吹き掛けられる位置を調整可能に、前記ノズルを前記フィーダーボードの上方で保持するノズル保持装置とを備え、
前記液体の微粒子は、前記被搬送物に吹き掛けられて前記被搬送物の表面に付着することにより前記被搬送物の表面のみ湿度が高くなるミストである静電気発生抑制装置を備えた印刷機。
【請求項2】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、
前記搬送路の湿度を検出する湿度センサと、
前記湿度センサの検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機
【請求項3】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、
被搬送物毎に静電気発生量に関連する値が記録されたデータベースと、
前記搬送路を通る被搬送物について前記静電気発生量に関連する値を前記データベースから読み出し、この値に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機
【請求項4】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、前記搬送路を通る被搬送物の静電気量を検出する静電気センサと、
前記静電気センサの検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機
【請求項5】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、
前記搬送路を通る被搬送物の搬送速度を検出する速度検出装置と、
前記速度検出装置の検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機
【請求項6】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、
前記搬送路を通る被搬送物の大きさおよび材質を検出する被搬送物検出装置と、
前記被搬送物検出装置の検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一つに記載の印刷機において、
前記液体の微粒子は、水を主成分とすることを特徴とする印刷機
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一つに記載の印刷機において、
前記ミストの個々の粒の粒径は15μmであることを特徴とする印刷機
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一つに記載の印刷機において、
前記空気供給装置は、開度に応じて圧縮空気の流量が変化する空気用電磁弁を備え、
前記空気用電磁弁の前記開度は、現在の状況に適した噴射量となるように最大開度と中間開度との2段階に切り換えられることを特徴とする印刷機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の微粒子をシート状の被搬送物に吹き掛ける静電気発生抑制装置およびこの静電気発生抑制装置を備えた印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の搬送物が搬送時に他の搬送物と擦れたり、他の搬送物から剥がされると静電気が生じる。シート状の搬送物に静電気が帯電すると、搬送物どうしが重なり合って送られたり、搬送物を搬送先で積み重ねるときに揃わないなどの問題が生じる。従来は、このような不具合を解消するために、シート状の搬送物から静電気を除去する静電気除去装置が用いられている。
【0003】
従来の静電気除去装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された静電気除去装置は、印刷機や複写機に用いられ、紙やフィルムの静電気を除去するものである。この静電気除去装置は、自然蒸発による水蒸気と空気とを混合させて紙やフィルムに吹き付け、湿度が増した空気と帯電物体との相対運動によって静電気を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭54-636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された静電気除去装置では、自然蒸発によって湿度を高める方式であるため、印刷機周辺の雰囲気温度による影響を受け、対象物の静電気を確実に除去できるものではなかった。この静電気除去装置は印刷機の内部に設置されているが、静電気除去装置を通過した後に発生した静電気や、発生レベルが高い静電気は除去できずに滞留し、不具合の原因になる。
また、特許文献1に示す静電気除去装置は、吸水材を用いているために日々のメンテナンスが必要となり、作業者の負担となるという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、日々のメンテナンスを必要とすることなく、シート状の被搬送物に静電気が帯電することを確実に抑制できる静電気発生抑制装置および印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る静電気発生抑制装置は、導電性を有する液体と圧縮空気とが供給されることにより液体の微粒子を噴射するノズルと、前記ノズルに前記液体を供給する液体供給装置と、前記ノズルに前記圧縮空気を供給する空気供給装置と、シート状の被搬送物が搬送される搬送路の近傍で、前記搬送路を通る被搬送物に対して、前記液体の微粒子の噴射方向を規定して前記液体の微粒子が吹き掛けられる位置を調整可能に、前記ノズルを保持するノズル保持装置とを備えたものである。
【0008】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、さらに、前記搬送路の湿度を検出する湿度センサと、前記湿度センサの検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0009】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、さらに、被搬送物毎に静電気発生量に関連する値が記録されたデータベースと、前記搬送路を通る被搬送物について前記静電気発生量に関連する値を前記データベースから読み出し、この値に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0010】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、さらに、前記搬送路を通る被搬送物の静電気量を検出する静電気センサと、前記静電気センサの検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0011】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、さらに、前記搬送路を通る被搬送物の搬送速度を検出する速度検出装置と、前記速度検出装置の検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0012】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、さらに、前記搬送路を通る被搬送物の大きさおよび材質を検出する被搬送物検出装置と、前記被搬送物検出装置の検出結果に基づいて前記液体の微粒子の噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0013】
本発明は、前記静電気発生抑制装置において、前記液体の微粒子は、水を主成分とするものであってもよい。
【0014】
本発明に係る印刷機は、前記静電気発生抑制装置を備えた印刷機であって、被搬送物としての未印刷のシートを印刷部に供給するシート供給部と、印刷後のシートが排出されるシート排出部とのうち少なくともいずれか一方に前記静電気発生抑制装置を備えているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性を有する液体の微粒子が被搬送物に吹き掛けられることにより、被搬送物の表面に導電性を有する液体の微粒子が付着し、被搬送物の表面のみ湿度が高くなる。このため、被搬送物の他の被搬送物との接触や、被搬送物のばたつきなどを発生原因とする静電気が被搬送物に帯電することを抑制することができる。
液体の微粒子を被搬送物に吹き掛けるにあたって、日々のメンテナンスを必要とする部品は不要である。
したがって、日々のメンテナンスを必要とすることなく、シート状の被搬送物が静電気で帯電することを確実に抑制できる静電気発生抑制装置および印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る静電気発生抑制装置を備えた印刷機の側面図である。
図2図2は、フィーダーボード上のシートにミストを吹き掛ける場合のミストの噴射方向を示す図である。
図3図3は、シート排出部で搬送されるシートにミストを吹き掛ける場合のミストの噴射方向を示す図である。
図4図4は、制御系の構成を示すブロック図である。
図5図5は、湿度に基づいてミスト量を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、機械速度に基づいてミスト量を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、静電気量に基づいてミスト量を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、シート情報に基づいてミスト量を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、検出装置の検出結果に基づいてミスト量を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る静電気発生抑制装置および印刷機の一実施の形態を図1図9を参照して詳細に説明する。
図1に示す印刷機1は、図1において最も右に描かれているシート供給部2から図1において左方向にシート3を搬送し、このシート3に対して印刷部4で印刷を行ってコーティング部5でコーティングを行った後に、このシート3をシート排出部6に排出する。シート3は紙またはフィルムである。この実施の形態においては、シート3が本発明でいう「シート状の被搬送物」に相当する。
【0018】
シート供給部2は、多数のシート3が積み重ねられた載置台7と、印刷部4にシート3を送る搬送路を構成するフィーダーボード8と、載置台7からフィーダーボード8にシート3を1枚ずつ送るサッカー装置(図示せず)などを備えている。フィーダーボード8は、図2(A)に示すように、複数のシート3を搬送方向に僅かにずれるように重ねた状態で、搬送方向の上流端から下流端まで送る。この実施の形態においては、シート3がフィーダーボード8から印刷部4に送られる際にシート3に静電気が発生することを抑制するために、フィーダーボード8の上方に本発明に係る静電気発生抑制装置11のノズル12が配置されている。静電気発生抑制装置11の説明は後述する。
【0019】
この印刷機1の印刷部4は、印刷を行う第1~第4の印刷ユニット13~16を備えている。第1~第4の印刷ユニット13~16は、それぞれ圧胴17と、ゴム胴18と、版胴19と、インキ供給装置20と、給水装置21などを備えている。第1~第4の印刷ユニット13~16の圧胴17どうしの間には、第1~第3の渡胴22~24が設けられている。第4の印刷ユニット13~16よりシート3の搬送方向の下流側にはコーティング部5とシート排出部6とが設けられている。第4の印刷ユニット16とコーティング部5との間には第4の渡し胴25が設けられている。コーティング部5は、圧胴26とコーター胴27とを備えている。この印刷機1の圧胴17,26と第1~第4の渡し胴22~25とは、それぞれシート3をくわえるくわえ爪装置(図示せず)を備えており、このくわえ爪装置を使用してシート3の受け渡しを行う。
【0020】
シート排出部6は、シート3をコーティング部5から搬送する搬送部31と、シート3が積載される積載台32を有する積載部33とを備えている。搬送部31は、シート3をデリバリチェーン34と多数の爪竿35とによって積載台32の上方に搬送する。デリバリチェーン34は、シート排出部6において搬送路を構成するもので、コーティング部5の近傍に位置する上流側スプロケット36と、積載部33の上方に位置する下流側スプロケット37とに掛け渡されている。また、デリバリチェーン34と上流側および下流側スプロケット36,37は、図3(B)に示すように、シート搬送方向とは直交する水平方向{図3(B)においては上下方向}に対をなすように設けられている。以下においては、シート搬送方向とは直交する水平方向を単に左右方向という。
【0021】
爪竿35は、これら一対のデリバリチェーン34,34どうしの間に架け渡されるとともに、搬送方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で、デリバリチェーン34に設けられている。爪竿35には、シート3の搬送方向下流側の端部を保持する複数のくわえ爪機構(図示せず)が設けられている。爪竿35は、シート3を保持してデリバリチェーン34と協働して搬送し、積載部33の上方で保持されているシート3を解放する。
この実施の形態においては、シート3がデリバリチェーン34によって送られる際にシート3に静電気が発生すること抑制するために、本発明に係る静電気発生抑制装置11のノズル12が搬送部31に設けられている。
【0022】
この実施の形態による静電気発生抑制装置11は、図2(A),(B)および図3(A),(B)に示すように、シート供給部2とシート排出部6とに設けられたノズル12および湿度センサ41と、図4に示す制御装置42、液体供給装置43および空気供給装置44などによって構成されている。図2(A)は、シート供給部2の要部の側面図であり、図2(B)は、シート供給部2の要部の平面図である。図3(A)は、シート排出部6の要部の側面図であり、図3(B)は、シート排出部6の要部の平面図である。以下においては、シート供給部2に設けられているノズル12を第1のノズル12Aといい、シート排出部6に設けられているノズル12を第2のノズル12Bという。
【0023】
第1および第2のノズル12A,12Bは、液体と圧縮空気とが供給されることにより液体の微粒子を噴射する構造のものである。第1のノズル12Aは、シート供給部2に設けられた第1のノズル保持装置45に保持されている。第2のノズル12Bは、シート排出部6に設けられた第2のノズル保持装置46に保持されている。以下においては、第1および第2のノズル12A,12Bから噴出する液体の微粒子を単にミストMという。ミストMの個々の粒の粒径は、約15μmである。ミストMを構成する液体は、導電性を有する液体で、水、または、溶剤が添加された水である。溶剤は、例えば帯電防止剤である。帯電防止剤としては、界面活性剤を用いることができる。すなわち、液体の微粒子は、水を主成分とするミストMである。液体は、ノズル12に液体用ホース(図示せず)を介して接続された液体供給装置43から供給される。
【0024】
圧縮空気は、空気用ホース(図示せず)を介して接続された空気供給装置44から第1および第2のノズル12A,12Bに供給される。この実施の形態による第1および第2のノズル12A,12Bは、圧縮空気の圧力で液体を吹き飛ばしてミストMを発生させ、このミストMを圧縮空気に乗せて所定の噴射方向に所定の速度で噴射する。
第1および第2のノズル保持装置45,46は、シート3が搬送される搬送路の近傍で、搬送路を通るシート3に対して、ミストMの噴射方向を規定してミストMが吹き掛けられる位置を調整可能に、第1および第2のノズル12A,12Bを保持しており、印刷機1の図示していないフレームに固定されている。第1、第2のノズル12A,12Bの取付角度の変更は、例えば、第1、第2のノズル12A,12Bを第1、第2のノズル保持装置45,46に固定するボルト(図示せず)が緩められている状態で、作業者(図示せず)が第1、第2のノズル12A,12Bを手で把持して行うことができる。
【0025】
シート供給部2に設けられた第1のノズル12Aは、図2(A)に示すように、フィーダーボード8の上方に配置されている。第1のノズル12Aは、図2(B)に示すように、左右方向{図2(B)においては上下方向}の2箇所にそれぞれ設けられている。これらの第1のノズル12Aから噴射されるミストMの噴射方向は、フィーダーボード8における搬送方向の下流側端部8aに上流側の上方から向かう方向である。第1のノズル12Aは、図2(B)に示すように、上方から見てミストMが左右方向に扇状に噴射されるように構成されている。この実施の形態においては、二つの第1のノズル12A,12Aは、フィーダーボード8の下流側端部8aの上に載るシート3の左右方向の全域にミストMが均等に吹き掛けられるように、シート搬送方向に対して左右方向に傾斜して配置されている。
フィーダーボード8における搬送方向の下流側端部8aの近傍には湿度センサ41が設けられている。湿度センサ41は、フィーダーボード8の近傍の空気の湿度を検出し、検出信号として後述する制御装置42に送る。
【0026】
シート排出部6に設けられた第2のノズル12Bは、図3(B)に示すように、シート排出部6におけるシート搬送方向の上流側端部であって、左右一対のデリバリチェーン34,34どうしの間に配置されている。また、第2のノズル12Bは、左右方向の2箇所にそれぞれ設けられている。これらの第2のノズル12B,12Bから噴射されるミストMの噴射方向は、図3(A)に示すように、側方から見て上流側スプロケット36を径方向に横切る方向であって、コーティング部5の圧胴26からシート排出部6に渡された直後のシート3の印刷面を指向する方向である。第2のノズル12Bは、図3(B)に示すように、上方から見てミストMが左右方向に扇状に噴射されるように構成されている。この実施の形態による二つの第2のノズル12B,12Bは、爪竿35のくわえ爪機構に保持されて搬送されるシート3の左右方向の全域にミストMが均等に吹き掛けられるように、左右方向に傾斜して配置されている。
【0027】
この実施の形態による液体供給装置43は、図4に示すように、ポンプ51と液体用レギュレータ52とを備えている。ポンプ51は、液体を液体用レギュレータ52に供給する。液体用レギュレータ52は、ポンプ51から送られた液体の圧力を所定の圧力に減圧する。第1および第2のノズル12A,12Bに供給された液体は、圧縮空気が後述する空気供給装置44から供給されるまで第1および第2のノズル12A,12Bに溜められ、圧縮空気が第1および第2のノズル12A,12Bに供給されることによりミストMとなって噴射される。
【0028】
なお、液体供給装置43は、ポンプ51と液体用レギュレータ52を使用することなく、図4中に二点鎖線で示すように液体タンク53によって構成することができる。この場合、水や、溶剤が添加された水が液体タンク53に溜められ、液体タンク53から例えば重力によって第1および第2のノズル12A,12Bに供給される。
【0029】
空気供給装置44は、空気用電磁弁54と空気用レギュレータ55とを備えている。圧縮空気は、図示していない空気圧源から空気用電磁弁54に供給され、空気用レギュレータ55を通して第1および第2のノズル12A,12Bに供給される。この実施の形態による空気供給装置44は、ノズル12毎に空気用電磁弁54と空気用レギュレータ55とを備えている。詳述すると、二つの第1のノズル12A,12Aにそれぞれ空気用電磁弁54および空気用レギュレータ55が接続され、二つの第2のノズル12B,12Bにそれぞれ空気用電磁弁54および空気用レギュレータ55が接続されている。すなわち、空気供給装置44は、4組の空気用電磁弁54と空気用レギュレータ55とを備えている。
【0030】
空気用電磁弁54は、第1および第2のノズル12A,12Bに供給される圧縮空気の流量を制御するためのもので、開度に応じて圧縮空気の流量が変化するように構成されている。この実施の形態による空気用電磁弁54は、開度を電流値で比例的に調整できる比例制御式の電磁弁が用いられている。空気用電磁弁54の開度(電流値)の制御は、後述する制御装置42によって行われる。
【0031】
空気用レギュレータ55は、空気用電磁弁54から送られた圧縮空気の圧力を所定の圧力に減圧する。空気用レギュレータ55から第1および第2のノズル12A,12Bに圧縮空気が供給されることにより、第1および第2のノズル12A,12Bが動作を開始し、液体供給装置43から送られた液体を用いてミストMを発生させ、このミストMを噴射する。ミストMの噴射量は、圧縮空気の供給量に略比例して増減する。第1および第2のノズル12A,12Bへの圧縮空気の供給が絶たれると、第1および第2のノズル12A,12BによるミストMの噴射も停止する。
【0032】
第1および第2のノズル12A,12Bによって噴射されたミストMがシート3に吹き掛けられると、ミストMがシート3の表面に付着して抵抗値が低下するから、シート3が他のシート3から剥がされたり、ばたつくような状態で搬送されたとしても、シート3において静電気の発生を抑制することができる。
【0033】
制御装置42は、シート供給部2とシート排出部6とにおいてそれぞれ現在の状況に適した噴射量となるように、第1および第2のノズル12A,12BによるミストMの噴射量を制御する。ここでいう「現在の状況に適した噴射量」とは、静電気の発生を抑制できるような噴射量である。この実施の形態による制御装置42は、湿度センサ41によって検出された搬送路の近傍の湿度に基づいて、現在の状況に適した噴射量を決める。なお、「現在の状況に適した噴射量」を決めるにあたっては、湿度の他に、シート3の搬送速度や、搬送路の静電気量、静電気発生量に関連する値であるシート3のサイズ・材質などの少なくとも一つを併用して行うことができる。また、湿度の代わりに、シート3の搬送速度、搬送路の静電気量、シート3のサイズ・材質などの少なくともいずれか一つに基づいて「現在の状況に適した噴射量」を決めることもできる。
【0034】
シート3の搬送速度は、例えば第1~第4の渡し胴22~25の回転速度など、シート3を搬送する際に動作する部品の速度を速度センサ61(図4参照)によって検出し、この速度センサ61の検出値から演算によって求めることができる。速度センサ61は、例えば回転軸の回転を光学的に検出するセンサや、モータのエンコーダなどによって構成することができる。請求項5記載の発明でいう「速度検出装置」は、速度センサ61によって構成されている。
【0035】
搬送路の静電気量は、静電気センサ62(図4参照)によって検出することができる。静電気センサ62は、例えば湿度センサ41が設けられている位置あるいはその近傍に配置することができる。
シート3のサイズ・材質は、機内情報63(図4参照)から読み出したり、被搬送物検出装置64(図4参照)によって検出することができる。機内情報63は、シート3毎にサイズと材質とが記録されたデータベースである。被搬送物検出装置64は、シート3をセンシングの対象とする光電センサや超音波センサなどによって構成されている。
【0036】
次に、制御装置42の更に詳細な構成の説明を含め、この実施の形態による静電気発生抑制装置11の動作を図5図9に示すフローチャートを用いて「現在の状況に適した噴射量」を決める方法毎に説明する。制御装置42は、第1のノズル12Aと第2のノズル12Bとの両方において、ミストMの噴射量が「現在の状況に適した噴射量」となるように液体供給装置43と空気供給装置44とを個別に制御する。以下においては、一つのノズルに対して制御装置42が実施する制御内容について説明する。
【0037】
<湿度センサを用いる場合>
現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって湿度センサ41を用いる場合、制御装置42は図5のフローチャートに示すように動作する。先ず、ステップS1において、制御装置42は、フィーダーポンプがON状態であるか否かを判定し、フィーダーポンプがON状態になるまで待機する。フィーダーポンプは、シート供給部2でサッカー装置を使用する場合にON状態になる。このため、シート供給部2が停止している場合は、ステップS1でNOと判定され、制御装置42は、空気供給装置44がOFFになる(ステップS2)とともに、ミストMの噴霧がOFFになる(ステップS3)状態を維持する。
【0038】
ステップS1でYESと判定された場合は、制御装置42が湿度センサ41の検出データに基づいて湿度を検出する(ステップS4)。そして、制御装置42は、湿度が判定値A以上であるか否かを判定する(ステップS5)。判定値Aは、ミストMが噴射される場合とそうでない場合とを分ける閾値である。湿度が判定値A以上の場合は、ミストMの噴射が不要であると判定され、ステップS6において空気用電磁弁54をOFF、すなわち開度を0とし、ステップS1に戻る。
【0039】
ステップS5でNOと判定された場合、制御装置42は、湿度が判定値Bより大きいか否かを判定する(ステップS7)。判定値Bは、圧縮空気の供給量が多く必要である場合とそうでない場合とを分ける閾値である。湿度が判定値Bより大きくない場合(判定値B以下の場合)は、ステップS7でNOと判定され、ステップS7からステップS8に進む。ステップS8においては、湿度が判定値B以下であるか否かが判定される。ステップS8でNOと判定された場合はステップS7に戻る。ステップS8でYESと判定された場合は、ステップS9に進み、空気用電磁弁54の開度を設定2として予め定めた開度に設定する。設定2によって規定される空気用電磁弁54の開度は100%である。空気用電磁弁54の開度を100%としたときのミストMの噴射量は、シート3の表面の抵抗値を下げるには十分な量であるが、印刷機内部への錆や印刷不良を誘発するほどの量ではない。なお、ミストMが印刷機1の機材に付着することもあるが、気化までの時間が短いので機材に影響はない。
【0040】
ステップS7でYESと判定された場合(湿度が判定値Bより大きい場合)は、空気用電磁弁54の開度を設定1として予め定めた開度に設定する(ステップS10)。設定1によって規定される空気用電磁弁54の開度は70%である。空気用電磁弁54の開度がステップS9やステップS10で100%あるいは70%に設定されることにより、圧縮空気が第1のノズル12Aあるいは第2のノズル12Bに供給され(ステップS11)、ミストMの噴霧が開始される(ステップS12)。
【0041】
このようにミストMの噴霧が開始されることにより、シート供給部2とシート排出部6とにおいてそれぞれミストMがシート3に吹き掛けられ、シート3の表面にミストM(導電性を有する液体の微粒子)が付着し、シート3の表面のみ湿度が高くなる。このため、シート3の他のシート3との接触、シート3の印刷機部品との接触や、シート3のばたつきなどを発生原因とする静電気でシート3が帯電することを抑制することができる。
この実施の形態において、ミストMをシート3に吹き掛けるにあたって、日々のメンテナンスを必要とする部品は不要である。
したがって、この実施の形態によれば、日々のメンテナンスを必要とすることなく、シート3に静電気が帯電することを確実に抑制できる静電気発生抑制装置および印刷機を提供することができる。
【0042】
静電気は、機械やシート3の状態によって不特定に発生する。この実施の形態による静電気発生抑制装置11によれば、静電気が発生する箇所に第1または第2のノズル12A,12Bをフレキシブルに移動して配置できるから、より効果的に静電気を発生(帯電)を抑制できる。
この実施の形態による静電気発生抑制装置11によれば、局所的に加湿を行うことができるので、室内空間全体を加湿する必要はない。このため、水の節約、圧縮空気を作るためのコンプレッサの電気使用量を低減できる。
【0043】
この実施の形態で示す静電気発生抑制装置11は、搬送路の湿度を検出する湿度センサ41と、湿度センサ41の検出結果に基づいてミストMの噴射量を制御する制御装置42とを備えている。このため、現在の状況に応じた最適な噴射量でミストMが噴射されるから、シート3が静電気で帯電することをより一層確実に防ぐことができる。
【0044】
<シートの搬送速度を用いる場合>
現在の状況に適した噴射量を決めるにあたってシート3の搬送速度を用いる場合、制御装置42は図6のフローチャートに示すように動作する。図6において、図5に示すフローチャートで説明したステップと同一のステップについては、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。現在の状況に適した噴射量を決めるにあたってシート3の搬送速度を用いる場合は、図6のフローチャートにおいてステップS1でYESと判定された後に、制御装置42が速度センサ61によって機械速度SPを検出する(ステップS21)。次に、制御装置42は、機械速度SPが判定値A以下であるか否かを判定する(ステップS22)。判定値Aは、ミストMが噴射される場合とそうでない場合とを分ける閾値である。機械速度SPが判定値A以下である場合は、YESと判定されてステップS6に進み、機械速度SPが判定値Aより大きい場合は、NOと判定されてステップS23に進む。
【0045】
ステップS23においては、機械速度SPが判定値B以下であるか否かを制御装置42が判定する。判定値Bは、圧縮空気の供給量が多く必要である場合とそうでない場合とを分ける閾値である。このとき、機械速度SPが判定値Bより大きい場合は、NOと判定され、ステップS24に進む。ステップS24においては、機械速度SPが判定値Bより大きいか否かを制御装置42が判定する。ステップS24でYESと判定された場合は、ステップS9へ進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定2として予め定めた開度(開度100%)に設定する。
一方、ステップS23でYESと判定された場合は、ステップS10に進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定1として予め定めた開度(開度70%)に設定する。
【0046】
このようにシート3の搬送速度を用いて現在の状況に適した噴射量を決める場合、すなわち、搬送路を通るシート3の搬送速度を検出する速度センサ61(速度検出装置)と、速度センサ61の検出結果に基づいてミストMの噴射量を制御する制御装置42とを備える場合であっても、現在の状況に応じた最適な噴射量でミストMが噴射されるから、シート3が静電気で帯電することをより一層確実に防ぐことができる。
【0047】
<搬送路の静電気量を用いる場合>
現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって搬送路の静電気量を用いる場合、制御装置42は図7のフローチャートに示すように動作する。図7において、図5に示すフローチャートで説明したステップと同一のステップについては、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって搬送路の静電気量を用いる場合は、図7のフローチャートにおいてステップS1でYESと判定された後に、制御装置42が静電気センサ62によって静電気量ELを検出する(ステップS31)。次に、制御装置42は、静電気量ELが判定値A以下であるか否かを判定する(ステップS32)。判定値Aは、ミストMが噴射される場合とそうでない場合とを分ける閾値である。
【0048】
静電気量ELが判定値A以下である場合は、YESと判定されてステップS6に進み、静電気量ELが判定値Aより大きい場合は、NOと判定されてステップS33に進む。ステップS33においては、静電気量ELが判定値B以下であるか否かを制御装置42が判定する。判定値Bは、圧縮空気の供給量が多く必要である場合とそうでない場合とを分ける閾値である。このとき、静電気量ELが判定値Bより大きい場合は、NOと判定され、ステップS34に進む。ステップS34においては、静電気量ELが判定値Bより大きいか否かを制御装置42が判定する。ステップS34でYESと判定された場合は、ステップS9へ進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定2として予め定めた開度(開度100%)に設定する。
一方、ステップS33でYESと判定された場合は、ステップS10に進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定1として予め定めた開度(開度70%)に設定する。
【0049】
このように搬送路の静電気量を用いて現在の状況に適した噴射量を決める場合、すなわち、搬送路を通るシート3の静電気量を検出する静電気センサ62と、静電気センサ62の検出結果に基づいてミストMの噴射量を制御する制御装置42とを備える場合であっても、現在の状況に応じた最適な噴射量でミストMが噴射されるから、シート3が静電気で帯電することをより一層確実に防ぐことができる。
【0050】
<機内情報から読み出したシートのサイズ・材質を用いる場合>
現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって機内情報63から読み出したシート3のサイズ・材質を用いる場合、制御装置42は図8のフローチャートに示すように動作する。図8において、図5に示すフローチャートで説明したステップと同一のステップについては、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって機内情報63から読み出したシート3のサイズ・材質を用いる場合は、図8のフローチャートにおいてステップS1でYESと判定された後に、制御装置42が印刷機の機内情報63(データベース)からシート情報PDを読み出す(ステップS41)。ここでいうシート情報PDとは、現在の印刷に用いられているシート3のサイズと材質である。
【0051】
次に、制御装置42は、シート3で発生する静電気の発生量である静電気発生量が記録されているデータテーブル(図示せず)を照合し、静電気発生量TDを読み出す(ステップS42)。データテーブルには、シート3のサイズを大きさ順に大中小の3段階に分けてサイズ毎に静電気発生量TDが大中小として記録されている。また、データテーブルには、シート3の材質を静電気が発生し易い順に大中小に分けて静電気が発生し易い順に静電気発生量TDが大中小として記録されている。
【0052】
制御装置42は、上述したデータテーブルから静電気発生量TDを読み出した後、現在の印刷に用いられているシート3のサイズと材質に静電気発生量TDを当てはめ、現在のシート3について、静電気の帯電を抑制可能なミスト噴射量が得られるような空気量Qを判定する(ステップS43)。ステップS43においては、現在のシート3のサイズに該当する静電気発生量TDが大中小のなかから選択され、選択された静電気発生量TDのシート3について静電気の発生を抑制できるミスト噴射量が得られるような空気量Qが3段階の判定値0~2のいずれか一つに判定される。現在のシート3のサイズが小サイズである場合は判定値0、中サイズである場合は判定値1、大サイズである場合は判定値2となる。
【0053】
また、ステップS43においては、現在のシート3の材質に該当する静電気発生量TDが大中小のなかから選択され、選択された静電気発生量TDのシート3について静電気の発生を抑制できるミスト噴射量が得られるような空気量Qが3段階の判定値0~2のいずれか一つに判定される。すなわち、静電気発生量TDが少ない材質である場合は判定値0、静電気発生量TDが中程度の材質である場合は判定値1、静電気発生量TDが多い材質である場合は判定値2となる。
【0054】
このように空気量Qの判定を行った後、制御装置42は、判定値が0であるか否かを判定する(ステップS44)。判定値が0である場合は、YESと判定されてステップS6に進み、判定値が0ではない場合は、NOと判定されてステップS45に進む。
ステップS45においては、判定値が1であるか否かを制御装置42が判定する。このとき、判定値が1ではない場合は、NOと判定され、ステップS46に進む。ステップS46においては、判定値が2であるか否かを制御装置42が判定する。ステップS46でYESと判定された場合は、ステップS9へ進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定2として予め定めた開度(開度100%)に設定する。この実施の形態によるステップS9においては、第1および第2のノズル12A,12Bの両方が開度100%になる。
一方、ステップS45でYESと判定された場合は、ステップS10に進み、制御装置42が空気用電磁弁54の開度を設定1として予め定めた開度(開度70%)に設定する。この実施の形態によるステップS10においては、第1のノズル12Aと第2のノズル12Bとのうち一方のノズル12の開度が70%になり、他方のノズル12の開度は0%になる。
【0055】
このように機内情報63から読み出したシート3のサイズ・材質を用いて現在の状況に適した噴射量を決める場合、すなわち、シート3毎に静電気発生量に関連する値が記録された機内情報63(データベース)と、搬送路を通るシート3について静電気発生量に関連する値を機内情報63から読み出し、この値に基づいてミストMの噴射量を制御する制御装置42とを備える場合であっても、現在の状況に応じた最適な噴射量でミストMが噴射されるから、シート3が静電気で帯電することをより一層確実に防ぐことができる。
【0056】
<検出装置によって検出したシートのサイズ・材質を用いる場合>
現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって被搬送物検出装置64によって検出されたシート3のサイズ・材質を用いる場合、制御装置42は図9のフローチャートに示すように動作する。図9において、図5および図8に示すフローチャートで説明したステップと同一のステップについては、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。現在の状況に適した噴射量を決めるにあたって被搬送物検出装置64によって検出されたシート3のサイズ・材質を用いる場合は、図9のフローチャートにおいてステップS1でYESと判定された後に、制御装置42が被搬送物検出装置64を用いてシート3のサイズと材質とを検出する(ステップS51)。すなわち、現在の印刷に用いられているシート3の実際のサイズと材質とを被搬送物検出装置64によって検出する。制御装置42は、このサイズと材質の検出を行った後は図8のフローチャートに示した制御動作と同一の動作を行う。
【0057】
このように被搬送物検出装置64によって検出したシート3のサイズ・材質を用いて現在の状況に適した噴射量を決める場合、すなわち、搬送路を通るシート3の大きさおよび材質を検出する被搬送物検出装置64と、被搬送物検出装置64の検出結果に基づいてミストMの噴射量を制御する制御装置42とを備える場合であっても、現在の状況に応じた最適な噴射量でミストMが噴射されるから、シート3が静電気で帯電することをより一層確実に防ぐことができる。
【0058】
上述した実施の形態において、ミストM(液体の微粒子)は、水を主成分とするミストMである。このため、ミストMがシート3に吹き掛けられて付着したとしても、蒸発することによりシート3が乾くから、印刷に何ら悪影響を及ぼすことはない。
上述した実施の形態による印刷機1は、未印刷のシート3を印刷部4に供給するシート供給部2と、印刷後のシート3が排出されるシート排出部6との両方にそれぞれ静電気発生抑制装置11を備えている。このため、シート3どうしが重なり合った状態で印刷部4に送られることがないし、シート排出部6の積載台上にシート3が重なるときにシート3が揃い易い。なお、印刷機1に静電気発生抑制装置11を設けるにあたっては、シート供給部2のみに設けるだけでもよいし、シート排出部6のみに設けるだけでもよい。
【0059】
上述した実施の形態による印刷機1は、印刷部4に給水装置21を備えたオフセット印刷機である。しかし、この印刷部4は、いわゆる「水なし印刷」で印刷を行う構成を採ることができる。このように水なし印刷を行う印刷機において、本発明に係る静電気発生抑制装置11を印刷部4よりシート搬送方向の上流側に設けることにより、印刷部4に送られるシート3の表面の湿度を高くすることができるから、インキ制御がし易くなるし、擦れなどの印刷障害の防止を図ることができる。
【0060】
上述した実施の形態による第1および第2のノズル保持装置45,46は、第1および第2のノズル12A,12Bの取付角度を作業者が手作業によって変更する構成のものである。しかし、第1および第2のノズル保持装置45,46としては、図示してはいないが、例えば電動式のアクチュエータによって第1、第2のノズル12A,12Bの取付角度(ミスト噴射方向)を遠隔操作によって変更できるように構成することができる。
【0061】
上述した実施の形態においては、本発明に係る静電気発生抑制装置11を印刷機1に搭載する例を示した。しかし、本発明の静電気発生抑制装置11を使用する装置は印刷機1に限定されることなく、適宜変更することができる。本発明に係る静電気発生抑制装置11は、シート状の被搬送物を搬送する装置であれば、どのような装置にも搭載することができる。この静電気発生抑制装置11は、例えば、打ち抜き機や折機などにも搭載することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…印刷機、2…シート供給部、3…シート(被搬送物)、4…印刷部、6…シート排出部、8…フィーダーボード(搬送路)、11…静電気発生抑制装置、12A…第1のノズル、12B…第2のノズル、34…デリバリチェーン(搬送路)、41…湿度センサ、42…制御装置、43…液体供給装置、44…空気供給装置、45…第1のノズル保持装置、46…第2のノズル保持装置、61…速度センサ(速度検出装置)、62…静電気センサ、63…機内情報(データベース)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9