(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】永続口唇メイクアップ用トップコート
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20240401BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/96
A61Q1/04
(21)【出願番号】P 2019562220
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 US2018015960
(87)【国際公開番号】W WO2018144460
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チュー, チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ロサリオ-メレンデス, ロセリン
(72)【発明者】
【氏名】デステノ, スーザン アシュレー
(72)【発明者】
【氏名】エル-クーリ, リタ ジャーキー
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】野田 定文
【審判官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131635(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1938864(EP,A1)
【文献】特開平10-194930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含むベースコート組成物、並びに
(2)以下:
(a)75%~95%のトリメチルペンタフェニルトリシロキサン;
(b)1%~5%のミツロウ;
(c)5%~10%の、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、
エチレン重合に由来するポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ合成により得られるワックス、40℃で固体である脂肪酸及びグリセリドのエステルワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択されるワックス;
(d
)5%
以下のシリコーン膜形成剤;
(e)0%~1%の酢酸トコフェロール;
(f)0%~10%のイソ酪酸酢酸スクロース;並びに
(g)0%~0.25%の香料
からなる、トップコート組成物
を含むキットであって、
ベースコート組成物は、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン膜形成剤を含み、
トップコート組成物は、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン膜形成剤を含む、
キット。
【請求項2】
ベースコート組成物は、以下:
1重量%~30重量%の少なくとも1種のシリコーンエラストマー;
2重量%~30重量%の少なくとも1種の不揮発性油;
2重量%~35重量%の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン共重合体;
5重量%~30重量%の少なくとも1種のシリコーン樹脂;
5%~50%の少なくとも1種の揮発性溶媒;
を含み、
シリコーンエラストマー対少なくとも1種の不揮発性油の比は、1:0.02~1:10であり;重量は、ベースコート組成物の合計重量に対するものであり、かつ
トップコート組成物は、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、並びにミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のワックスを含む、
請求項
1に記載のキット。
【請求項3】
ベースコート組成物が少なくとも1種のワックスを更に含む、請求項
2に記載のキット。
【請求項4】
ベースコート組成物が少なくとも1種の着色剤を更に含む、請求項
2又は
3に記載のキット。
【請求項5】
ベースコート組成物が少なくとも1種の充填剤を更に含む、請求項
2から
4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
トップコート組成物は、最大で11%の:(1)式R
1COOR
2の合成エステル、式中、R
1は、7~40個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖高級脂肪酸の残基を表し、かつR
2は、3~40個の炭素原子を有する分岐鎖炭化水素系鎖を表し;(2)C8-C26高級脂肪酸;又は(3)C8-C26高級脂肪アルコールを含む、請求項
1から
5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
口唇のメイクアップ方法であって、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含むベースコート組成物を、口唇に塗布すること、並びに少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物
であって、
以下:
(a)75%~95%のトリメチルペンタフェニルトリシロキサン;
(b)1%~5%のミツロウ;
(c)5%~10%の、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン重合に由来するポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ合成により得られるワックス、40℃で固体である脂肪酸及びグリセリドのエステルワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択されるワックス;
(d)5%以下のシリコーン膜形成剤;
(e)0%~1%の酢酸トコフェロール;
(f)0%~10%のイソ酪酸酢酸スクロース;並びに
(g)0%~0.25%の香料
からなる、トップコート組成物を、ベースコート組成物に塗布することを含み、ベースコート組成物は、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン膜形成剤を含む、方法。
【請求項8】
トップコート組成物をベースコート組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、ベースコート組成物の移り防止性を阻害しない、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
以下:
(a)75%~95%のトリメチルペンタフェニルトリシロキサン;
(b)1%~5%のミツロウ;
(c)5%~10%の、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、
エチレン重合に由来するポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ合成により得られるワックス、40℃で固体である脂肪酸及びグリセリドのエステルワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択されるワックス;
(d
)5%
以下のシリコーン膜形成剤;
(e)0%~1%の酢酸トコフェロール;
(f)0%~10%のイソ酪酸酢酸スクロース;並びに
(g)0%~0.25%の香料
からなる、トップコート組成物であって、
シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン膜形成剤を含む、トップコート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月31日出願の米国正規出願番号第15/420,888号の優先権を主張し、その内容は、本明細書により参照として援用される。
【0002】
本発明は、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物用のトップコート組成物に、ならびに少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物及び長時間持続口唇用組成物に塗布するトップコート組成物を含む、システム、キット、及び口唇を処置、メイクアップ、及び外観向上させる方法に関する。トップコート組成物は、口唇用組成物の移り防止性に実質的に影響を及ぼさない。
【背景技術】
【0003】
リップスティックまたは口紅などの有色素化粧品をはじめとする多くの化粧料組成物は、塗布した際に長時間持続性を有することを目的として配合されてきた。残念ながら、そうした組成物の多くは、一般に、良好な長時間持続性/移り防止性と、良好な塗布性、良好な快適性、及び/または良好な外観特性(例えば、光沢性)とを兼ね備えてはいない。
【0004】
例えば、口唇用組成物に関して、MQ樹脂などのケイ素樹脂を含有する市販品が知られている。そのような製品は、良好な長時間持続性/移り防止性をもたらすことが知られている。しかしながら、そのような製品は、塗布性が劣っている及び/または塗布の際の感触が劣っている(例えば、粗く感じる)。
【0005】
典型的には、第二の組成物(トップコート)を、そのような製品とは別に塗布して、組成物の不良な特性を改善し、製品が消費者に受け入れられるようにする。しかしながら、トップコート組成物は、口唇用組成物の長時間持続性/移り防止性を低下させる傾向にあり、そのため長時間持続性/移り防止性組成物は、消費者にとって受け入れにくくなり消費者の目的に合わなくなってしまう。
【0006】
このように、改善された化粧特性、特に、塗布した際の良好な移り防止性、感触、及び光沢特性を有する改善された口唇用組成物及びシステムへの重要は依然として存在する。
【0007】
したがって、本発明の1つの態様は、長時間持続口唇用組成物用のトップコート組成物であり、本トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物に塗布した際に、良好な化粧特性、例えば、良好な長時間持続性、感触、及び光沢特性などを提供または維持する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物用トップコート組成物に関し、トップコート組成物は、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含む。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0009】
本発明は、(1)少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を含むキットに関する。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0010】
本発明は、(1)少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を含む化粧システムに関する。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0011】
本発明は、口唇の外観を向上させる方法に関し、本方法は、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を、口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を、長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0012】
本発明は、口唇のメイクアップ方法に関し、本方法は、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を、口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を、長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0013】
本発明は、口唇の処置方法に関し、本方法は、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を、口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を、長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0014】
当然のことながら、上記の全般的な説明及び以下の詳細な説明は、両方とも、例示及び説明にすぎず、本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従って、「無水」という用語は、水をまったく含有しない組成物、すなわち、存在する可能性のある水は、出発物質の結晶化または吸着に由来するものだけである組成物を示す。どのような場合でも、無水組成物は、組成物の全重量に対して、水を5重量%未満、好ましくは1重量%未満、なお好ましくは、水を0.5重量%未満しか含有しない。
【0016】
本明細書中使用される場合、「少なくとも1つの」という表現は、1つまたは複数を意味し、したがって、個々の成分ならびに混合物/組み合わせを含む。
【0017】
実施例以外において、または特に記載がある場合、成分及び/または反応条件の量を表す全ての数字は、あらゆる場合において、「約」という用語により修飾されると理解されるべきであり、「約」は、示される数字の10%~15%内を意味する(例えば「約10%」は、9%~11%を意味し、「約2%」は、1.8%~2.2%を意味する)。
【0018】
「膜形成剤」または「膜形成作用剤」または「膜形成重合体」または「膜形成樹脂」は、本明細書中使用される場合、例えば、膜形成剤に付随する溶媒が基材から蒸発、基材に吸収、及び/または基材から消散した後、膜形成剤が塗布された基材上に膜を残す、重合体または樹脂を意味する。
【0019】
「移り防止性」という用語は、本明細書中使用される場合、例えば、飲食時、例えば、グラス、衣料品、または皮膚などの別の物質と接触することにより容易に取れてしまうことがないという、組成物が示す性質を示す。移り防止性は、そのような性質を評価する当該分野で既知である任意の方法により評価することができる。例えば、組成物の移り防止性は、「キス」試験により評価することができる。「キス」試験は、組成物をヒトケラチン物質、例えば、毛髪、皮膚、または口唇などに塗布すること、続いて塗布から一定時間が経過後、例えば塗布から2分後、物質をこする、例えば、1枚の紙で、毛髪、皮膚、または口唇をこすることを含む場合がある。同様に、組成物の移り防止性は、着用者から任意の他の基材へと移った製品の量、例えば個人の毛髪、皮膚、または口唇に組成物を塗布し、一定時間が経過した後に、衣類を着けて、毛髪、皮膚、または口唇から襟に移った量により評価することができる。次いで、基材(例えば、襟または紙)に移った製品の量を、評価及び比較することができる。例えば、組成物は、製品の大部分が着用者の毛髪、皮膚、または口唇に残ったならば、移り防止性であると言える。さらに、移った量は、市販の組成物など他の組成物の移った量と比較することができる。本発明の好適な実施形態において、組成物はほとんどまたはまったく、毛髪、皮膚、または口唇から基材に移らない。
【0020】
「長時間持続」組成物は、本明細書中使用される場合、肉眼で見て、長時間後も、呈色が、塗布時と同じまたは実質的に同じままである組成物を示す。長時間持続性は、そのような性質を評価する当該分野で既知の任意の方法により評価することができる。例えば、長時間持続は、組成物をヒト毛髪、皮膚、または口唇に塗布すること、及び長時間経過後に組成物の呈色を評価することを含む試験により、評価可能である。例えば、組成物の呈色は、毛髪、皮膚、または口唇に塗布後直ちに評価することができ、次いで、それらの特性を、ある一定時間後に再評価及び比較することができる。さらに、これらの特性を、市販の組成物など他の組成物に対して比較することができる。口唇用組成物の場合、「長時間持続」は、典型的には、組成物が、少なくとも約4時間から約24時間まで、口唇上に残存し、食事後であっても豊かな呈色を保持することを意味する。
【0021】
「液体」または「液状化粧料」または「液状リップスティック」または「液状組成物」は、固定された体積を有し、底面を覆うように流動し、それが埋めている容器の部分の形状をとり、わずかに圧縮性である組成物を意味する(General chemistry, Fourth Edition 2005, p.434に開示されるとおり)。
【0022】
「粘着性」は、本明細書中使用される場合、2つの物質間の接着を示す。例えば、2つの物質間に存在する粘着性が高いほど、2つの物質間の接着は強くなる。「粘着性」を定量するために、2つの物質に関してIUPACにより定義されるとおりの「接着仕事」を測定することが有用である。一般的にいうと、接着仕事は、2つの物質を分離させるために必要な仕事量を測定する。すなわち、2つの物質に関して接着仕事が大きいほど、物質間の接着は強く、これは2つの物質間により高い粘着性が存在することを意味する。
【0023】
接着仕事、したがって、粘着性は、接着の測定に使用され利用可能な技法及び方法、ならびに本明細書記載のとおりに行われるものを用いて定量可能である。
【0024】
「置換された」は、本明細書中使用される場合、少なくとも1つの置換基を有することを意味する。置換基の限定ではなく例として、酸素原子及び窒素原子などの原子、ならびに官能基、例えば、アミン基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホナート基、チオスルファート基、シロキサン基、及びポリシロキサン基などが挙げられる。置換基(複数可)は、さらに置換することができる。
【0025】
「Comprising(含む)」は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び/または成分を加えることが可能であることを意味する。本発明の生成物、組成物、方法、及びプロセスは、本明細書中記載される全ての必須要素及び制限と、ならびに本明細書中記載される追加または選択成分、要素、工程、または制限のいずれかを含むことができる。
【0026】
「含まない」または「実質的に含まない」または「欠いている」は、本明細書中使用される場合、その特定成分は組成物中にまったく存在しないことが好ましいものの、ごく少量で本発明の組成物中に存在することが可能であるが、ただし、その量は、本発明の調整組成物の有利な性質のうち少なくとも1つ、好ましくは大部分に実質的に影響を及ぼさないことを意味する。したがって、例えば、「フェニル化溶媒を含まない」は、不揮発性溶媒が、好ましくは排除される(すなわち0重量%である)ものの、組成物全体としての全重量に基づいて、約0.25重量%未満、典型的には約0.1重量%未満、典型的には約0.05重量%未満の量で組成物中に存在することができることを意味する。
【0027】
本明細書中使用される場合、提示される範囲は全て、与えられた範囲内のあらゆる特定範囲、及び範囲間のサブ範囲の組み合わせを含むことを意味する。したがって、1~5という範囲は、具体的には、1、2、3、4、及び5、ならびに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲を含む。
【0028】
本明細書中使用される場合、比の範囲は、与えられた範囲内のあらゆる特定比、及び範囲間のサブ範囲の組み合わせを含むことを意味する。
【0029】
「ケラチン物質」は、ケラチンを含む物質、例えば、毛髪、皮膚、眉毛、口唇、及び爪などを含む。
【0030】
「揮発性」は、本明細書中使用される場合、約100℃未満の引火点を有することを意味する。
【0031】
「不揮発性」は、本明細書中使用される場合、約100℃超の引火点を有することを意味する。
【0032】
本発明の組成物は、液状でも非液状(半固体、軟固体、固体など)でも任意の形状が可能である。例えば、本発明の組成物は、ペースト、固体、ゲル、またはクリームであることが可能である。本発明の組成物は、乳濁液、例えば、水中油または油中水乳濁液など、多相乳濁液、例えば、油中水中油乳濁液または水中油中水乳濁液、あるいは固体、硬質ゲル、または軟質ゲルなどであることも可能である。本発明の組成物は、例えば、外側または連続脂肪相を含むことが可能である。本組成物は、スティックまたはディスクとして成形された組成物またはキャストであることも可能である。
【0033】
本発明の組成物または方法は、本明細書中記載される本発明の必須要素及び制限、ならびに本明細書中記載されるまたは記載がなくとも有用な任意の追加または選択成分、組成物、または制限を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなることが可能である。
【0034】
長時間持続口唇用組成物
【0035】
本発明の実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物が、提供される。好ましくは、シリコーン膜形成剤は、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0036】
シリコーン樹脂
【0037】
好適な実施形態に従って、本発明の長時間持続口唇用組成物は、少なくとも1種のシリコーン樹脂を含む。適切なシリコーン樹脂の例として、例えば、米国特許第5,505,937号、米国特許第5,911,974号、米国特許第5,965,112号、米国特許第5,985,298号、米国特許第6,074,654号、米国特許第6,780,422号、米国特許第6,908,621号に記載されるものが挙げられ、これら特許の開示は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0038】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、シロキシシリケート樹脂を含有する。本発明によるシロキシシリケートの限定ではなく一例として、トリメチルシロキシシリケートがあり、これは、以下の式で表すことができる:
【0039】
[(CH3)3SiO]x(SiO4/2)y
【0040】
式中、x及びyは、例えば、50~80の範囲が可能である。そのようなシロキシシリケートは、General Electric、Dow Corning、Wacker、Milliken、Siltech、Grant Industries、Momentive、及びShin-Etsu Siliconesから、ResinMQ(登録商標)の商品名で市販されている。
【0041】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、シルセスキオキサン樹脂、例えば、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂などを含有する。
【0042】
シルセスキオキサン樹脂は、ある特定形状のシリコーン樹脂である。シリコーン樹脂の命名は、「MDTQ」命名法として当該分野で既知であり、これにより、シリコーン樹脂は、重合体を形成する様々な単量体シロキサン単位に従って記載される。「MDTQ」の各文字は、異なる型の単位を意味する。膜形成樹脂が、主に三官能基単位(すなわちT単位)で形成されている場合、その樹脂は、一般に、シルセスキオキサン樹脂と呼ばれ、そのような樹脂は、例えば、US2006/0292096に記載されている。US2006/0292096は、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0043】
本発明で使用可能なシルセスキオキサン樹脂の例として、一般式R1
nSiO(4-n)/2の平均シロキサン単位を有するシルセスキオキサン同種重合体及び/または共重合体であるアルキルシルセスキオキサン樹脂があり、式中、各R1はプロピル基であり、R1の80モル%超がC3-C10アルキル基であり、nは1.0~1.4の値であり、共重合体の60モル%超が、R1SiO3/2単位を含む。各R1がプロピル基である場合、これらの重合体は、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂または「t-プロピル」シルセスキオキサン樹脂と呼ばれる。これらの樹脂及びその作製方法は、例えば、US8,586,013、2012/0301415、2007/0093619、及び2006/0292096に記載されており、これらはそのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0044】
本発明での使用に適したポリプロピルシルセスキオキサン樹脂の限定ではなく例として、Dow CorningからDow Corning 670 FluidまたはDow Corning 680 Fluidとして市販されているものがある。これらのDow Corning樹脂は、一般式RnSiO(4-n)/2を有し、式中、Rは独立して、炭素原子を3個含む一価炭化水素基及び水素原子から選択され、Rの80モル%超はプロピル基であり、nは1.0~1.4の値であり、共重合体の60モル%超がRSiO3/2単位を含み、ヒドロキシルまたはアルコキシ含有量が0.2~10重量%、例えば、1~4重量%、好ましくは5~10重量%、より好ましくは6~8重量%である。好ましくは、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂は、分子量が約5000~約30,000であり、Tgが約-5℃~約5℃である。
【0045】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、シロキシシリケート樹脂、シルセスキオキサン樹脂、及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のシリコーン樹脂を含有する。
【0046】
少なくとも1種のシリコーン樹脂は、好ましくは、本発明の長時間持続口唇用組成物中に、約5%~約30重量%、好ましくは約10%~約25重量%、好ましくは約15%~約20重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在し、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0047】
ポリオルガノシロキサン共重合体
【0048】
好適な実施形態に従って、本発明の長時間持続口唇用組成物は、少なくとも1種のポリオルガノシロキサン共重合体を含む。本明細書中有用なポリオルガノシロキサン共重合体は、好ましくは、以下を含有する部分を少なくとも1つ有する重合体(同種重合体または共重合体)である:その部分の鎖中にまたはグラフトの形で1~約1000のオルガノシロキサン単位からなる少なくとも1つのポリオルガノシロキサン基、及び水素相互作用を確立することが可能な少なくとも2つの基。ポリオルガノシロキサン共重合体の限定ではなく例として、例えば、米国特許第8,945,525号に開示されるものがあり、その開示は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0049】
本発明の長時間持続口唇用組成物に使用可能なさらなるポリオルガノシロキサン共重合体として、文書US5,874,069、US5,919,441、US6,051,216、及びUS5,981,680に記載されるものが挙げられ、これらの内容全体は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0050】
本発明での使用に好適なポリオルガノシロキサン共重合体は、以下の式(III):
及び式(IV)
から選択される部分を少なくとも1つ含有し、
式中:
(a)R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同一であるか異なっており、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シロキサン鎖、及びフェニルからなる群より選択することができ;
(b)Xは、1~30個の炭素を有する直鎖または分岐鎖アルキレンであり;
(c)Yは、1~40個の炭素を有する直鎖または分岐鎖アルキレンからなる群より選択され;
(d)mは、1~700の数字であり;
(e)nは、1~500の数字である。
【0051】
本明細書中有用なポリオルガノシロキサン共重合体として特に好適なものは、Dow CorningからDC8178(登録商標)及びDC8179(登録商標)の商品名で市販されており、これらは、INCI命名法で、ナイロン-611/ジメチコン共重合体として知られる。
【0052】
好ましくは、ポリオルガノシロキサン共重合体は、本発明の長時間持続口唇用組成物中に、約2%~約35重量%、好ましくは約5%~約30重量%、好ましくは約7%~約20重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在し、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0053】
シリコーンエラストマー(シリコーン架橋重合体)(任意選択)
【0054】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、さらに、少なくとも1種のシリコーンエラストマーを含む。好ましくは、シリコーンエラストマーは、非乳化性ケイ素エラストマーである。「非乳化性」とは、親水性鎖、詳細には、ポリオキシアルキレン(特に、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン)またはポリグリセリル単位を持たないオルガノポリシロキサンエラストマーと定義される。すなわち、本発明の1つの特定の実施形態に従って、組成物は、ポリオキシアルキレン単位及びポリグリセリル単位を持たないシリコーンエラストマーを含む。
【0055】
非乳化性エラストマーの適切な例は、US8,637,057に記載されており、その開示は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0056】
本発明に有用な非乳化性エラストマーのさらなる適切な例として、KSG-6、KSG-15、KSG-16、KSG-18、KSG-41、KSG-42、KSG-43、及びKSG-44の名前でShin-Etsu社から販売されているもの、DC9040、DC9041、DC9509、DC9505、及びDC9506の名前でDow Corning社から販売されているもの、ならびにSFE839の名前でGeneral Electric社から販売されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
シリコーンエラストマーは、好ましくは、ゲル状または粉末状である。
【0058】
好適な実施形態に従って、シリコーンエラストマー粒子は、オルガノポリシロキサンエラストマーから形成されたゲル状または粉末状で、少なくとも1種の炭化水素系油及び/または1種のシリコーン油に入れられて、搬送される。こうしたゲルでは、オルガノポリシロキサン粒子は、非球形粒子であることが多い。本発明に有用なシリコーンエラストマーの限定ではなく例として、粘度値が約150~約700mm2/s、約200~約650mm2/s、及び約300~約600mm2/sであり、ジメチコン架橋重合体ゲル(溶媒に入ったジメチコン架橋重合体のブレンド)があり、粘度値には、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含まれる。
【0059】
本発明に特に有用であるのは、揮発性溶媒、例えばシリコーン油、炭化水素油、及びそれらの混合物に入った高分子量シリコーンエラストマーブレンドの場合がある。
【0060】
適切なシリコーンエラストマーゲルの具体例として、Dow Corningが供給するDC EL-8040ID(INCI名:イソドデカン(及び)ジメチコン架橋重合体)及びDC EL-9140DM(INCI名:ジメチコン(及び)ジメチコン架橋重合体)が挙げられる。
【0061】
シリコーンエラストマー及びそれらの合成の限定ではなく例は、例えば、U.S.8,637,057及びUS/20150174048に開示されており、これらは両方とも、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0062】
特定の理論に固執するつもりはないものの、シリコーンエラストマーは、組成物を粘稠にし、クッション性(スポンジ性)効果を与え、及び/または長時間持続口唇用組成物の塗布性を改善すると思われる。また、シリコーンエラストマーは、塗布後の非常に柔らかい感触及び/またはマットにする効果をもたらす。
【0063】
好ましくは、シリコーンエラストマーは、長時間持続口唇用組成物の合計重量に対して活性物質(乾燥物質)の1重量%~30重量%、好ましくは約1.5重量%~約20重量%、好ましくは2重量%~10重量%の範囲の含有量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在する。
【0064】
トップコート組成物
【0065】
本発明に従って、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物が提供される。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0066】
本発明の好適な実施形態に従って、トップコート組成物は、それが塗布された、それが塗布される予定の、及び/または塗布された後の長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害する量で、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。同じ好ましくは、トップコート組成物は、以下:
【0067】
(1)式R1COOR2の合成エステル、式中、R1は、7~40個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の高級脂肪酸の残基を表し、R2は、3~40個の炭素原子を有する分岐鎖炭化水素系鎖を表し、これは例えば、ピュアセリンオイル(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、C12~C15アルコールの安息香酸エステル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、安息香酸2-オクチルドデシル、アルコールもしくはポリアルコールのオクタン酸エステル、デカン酸エステルまたはリシノレイン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、コハク酸2-ジエチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ネオペンタン酸イソデシル、ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、トリイソステアリン酸グリセリルもしくはジグリセリルなど;ジイソノナン酸ジエチレングリコール;ペンタエリスリトールエステル;芳香族酸と4~22個の炭素原子を有するアルコールのエステル、詳細には、トリメリット酸トリデシルであり;
【0068】
(2)C8-C26高級脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、またはイソステアリン酸;及び/または
【0069】
(3)C8-C26高級脂肪アルコール、例えば、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イソステアリルアルコール、またはオクチルドデカノール;
を、トップコート組成物が塗布された、それが塗布される予定の、または塗布された後の長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害する量で含まない。
【0070】
フェニル化シリコーン油
【0071】
好適な実施形態に従って、本発明のトップコート組成物は、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油を含む。
【0072】
適切なフェニル化シリコーン油として、不揮発性フェニル化シリコーン油、例えば、シリコーン鎖からぶら下がるまたは鎖末端にフェニル基を有する直鎖または分岐鎖不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
適切な例として、フェニルトリメチコン、例えば、参照名Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluidで販売されているフェニルトリメチルシロキシトリシロキサンなど、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、例えば、Dow Corningから参照名PH-1555 HRIまたはDow Corning 555 Cosmetic Fluidで販売されているシリコーン油(化学名:1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン;INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)など、及びトリメチルシロキシフェニルジメチコン、例えば、Wacker社により参照名Belsil PDM 1000で販売されている製品などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
好ましくは、フェニル化シリコーン油は、本発明のトップコート組成物中、約50重量%~約96重量%、約60重量%~約96重量%、約70重量%~95重量%、好ましくは約75重量%~約95重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在し、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0075】
ワックス
【0076】
好適な実施形態に従って、本発明のトップコート組成物は、少なくとも1種のワックスを含む。本発明の目的に関して、ワックスは、室温(25℃)で固体であり、状態が固相/液相に可逆的に変化し(すなわち、物質の状態が、温度によって変化可能である)、45℃超、好ましくは55℃超、より好ましくは約65℃~約120℃の融点を有し、固相で異方性結晶組織を有する親油性脂肪化合物である。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、MettlerからDSC30の名前で販売されている熱量計を用いて測定可能である。石油由来のワックス、例えばマイクロクリスタリンワックスなどの場合、融点は、ASTM滴法、D-127に従って測定可能である。
【0077】
ワックスは、一般に、化粧品に使用されるものが可能である。ワックスは、天然起源のものが可能であり、例えば、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ウーリークーリーロウ(ouricoury wax)、モクロウ、コルク線維ロウ、サトウキビロウ、パラフィンワックス、亜炭ロウ、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンロウ、モンタンロウ、オゾケライト及び水素添加油、例えば水素添加ホホバ油などがある。
【0078】
ワックスは、合成起源のものも可能であり、例えば、エチレン重合に由来するポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ合成により得られるワックス、40℃では固体である脂肪酸及びグリセリドのエステルなどがある。
【0079】
特定のワックスとして、例えば、ポリエチレンワックス、例えば、Performalene 500-Lポリエチレンの名前で販売されている製品(New Phase Technology)など、及びポリメチレンワックス、例えば、Cirebelle 303の名前で販売されている製品(Sasol)などが挙げられる。
【0080】
特定のワックスとして、例えば、シリコーンワックス、例えば、少なくとも30個の炭素を有するアルキル単位で置換されたポリプロピルシルセスキオキサンワックスなどが挙げられる。ポリプロピルシルセスキオキサンワックスは、概して、特許公報第WO2005/100444号及びU.S.8,586,013に開示されたものであり、これらの全内容は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。本発明で使用するのに特に好適なポリプロピルシルセスキオキサンワックスは、DOW CORNINGから、商品名SW-8005 C30 Resin Waxで市販されている、C30-45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンである。
【0081】
好適な実施形態に従って、トップコート組成物は、ミツロウ、オゾケライト、及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のワックスを含む。
【0082】
好適な実施形態に従って、トップコート組成物は、ミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のワックスを含む。
【0083】
好ましくは、ワックスは、本発明のトップコート組成物中、約1重量%~約30重量%、約3重量%~約25重量%、約4重量%~40重量%、好ましくは約5重量%~約15重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在し、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0084】
追加成分
【0085】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物、トップコート組成物、またはその両方が、化粧組成物に典型的に含まれる追加成分を含むことができる。そのような成分についての非包括的説明を、以下に記載する。
【0086】
膜形成剤
【0087】
好適な実施形態に従って、トップコート組成物は、さらに、少なくとも1種の膜形成剤を含むか、長時間持続口唇用組成物は、さらに、上記で説明した少なくとも1種のシリコーン膜形成剤以外の追加膜形成剤を含むか、またはその両方である。好ましくは、膜形成剤がトップコート組成物中に存在する場合、膜形成剤は、シリコーン樹脂、ポリオルガノシロキサン共重合体、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン膜形成剤である。同じく好ましくは、シリコーン樹脂は、シロキシシリケート樹脂、シルセスキオキサン樹脂、及びそれらの混合物からなる群より選択される。長時間持続口唇用組成物中のシリコーン膜形成剤に関する上記の説明は、トップコート組成物中のシリコーン膜形成剤にも当てはまる。
【0088】
揮発性溶媒
【0089】
本発明の組成物は、任意選択で、さらに、少なくとも1種の揮発性溶媒を含むことができる。
【0090】
「揮発性溶媒」という表現は、室温及び常圧下で、皮膚または口唇と接触することで1時間未満のうちに蒸発することができる任意の非水性媒体を意味する。
【0091】
適切な揮発性溶媒の例として、揮発性炭化水素系油、例えば、8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油及びそれらの混合物など、及び詳細には分岐鎖C8-C16アルカン、例えば、C8-C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンなど、及び例えば、IsoparまたはPermethylの販売名で販売されている油、C8-C16分岐鎖エステル、例えば、ネオペンタン酸イソヘキシルまたはイソデシルなど、アルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、揮発性炭化水素系油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0092】
揮発性炭化水素系油の例として、以下の表1に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
【0094】
揮発性溶媒は、揮発性シリコーン油から選択される場合もあり、揮発性シリコーン油は、直鎖または環状が可能であり、室温で、6cSt以下の粘度を有し、2~7個のケイ素原子を有し、任意選択で1~10個の炭素原子を持つアルキルまたはアルコキシ基で置換される。
【0095】
適切な揮発性シリコーン油の例として、以下の表2に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【0097】
少なくとも1種の揮発性溶媒が存在する場合、それは、一般に、本発明の組成物中、約5重量%~約50重量%、例えば約10重量%~約45重量%、例えば約15重量%~約40重量%の範囲の量で存在し、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0098】
不揮発性溶媒
【0099】
本発明の組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種の不揮発性溶媒(油)を含むことができる。
【0100】
油の揮発性は、米国特許第6,338,839号に記載されるとおりに蒸発速度を用いて測定することができ、その内容は本明細書中参照として援用される。
【0101】
不揮発性油として、低粘度油(約5~約10センチポアズの粘度を有する)及び高粘度油(約100~約10,000センチポアズの粘度を有する)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ワックスとは対照的に、油は、室温で液体である。
【0102】
本発明の特定の実施形態に従って、油は、シリコーン油及び/または炭化水素油である高粘度油である。「高粘度」は、100cSt超の粘度、詳細には、25℃で250cSt超の粘度を有する油を意味する。より詳細には、不揮発性油は、シリコーン油から選択される。そのような油は、例えば、US2011/0293550及びUS2004/0126350に記載されており、これらは両方とも本明細書中参照として援用される。
【0103】
適切な不揮発性シリコーン油の限定ではなく例として、直鎖または環状シリコーン鎖を持ち、室温で液状またはペースト状のポリメチルシロキサン(PDMS)、特には、シクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン)、例えば、シクロヘキサシロキサンなど;アルキルまたはアルコキシ基を有するポリジメチル-シロキサン(CTFA呼称「ジメチコン」)、アルキルまたはアルコキシ基は、シリコーン鎖からぶら下がるまたは鎖末端にあり、2~24個の炭素原子を有する;ポリジエチルシロキサン;及び25℃で300cPs~25℃で約1500cPsの粘度を有するジメチコン流体が挙げられる。特に有用なジメチコン流体は、25℃で350cPs~25℃で約1000cPsの粘度を有する。
【0104】
本発明の高粘度シリコーン油として適切なものの具体例として、Dow Corning製のXiameter(登録商標)シリコーン流体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
少なくとも1種の不揮発性シリコーン油が存在する場合、それは、本発明の組成物中、組成物の合計重量に基づいて、約2重量%~約30重量%、例えば約4重量%~約25重量%、典型的には約6重量%~約20重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて存在する。
【0106】
長時間持続口唇用組成物の好適な実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーンエラストマー、好ましくは少なくとも1種のジメチコン架橋重合体と、25℃で350cSt以上の粘度を有する少なくとも1種の不揮発性シリコーン流体を、シリコーンエラストマーの重量対不揮発性シリコーン流体の重量が重量比で約1:0.02以上かつ約1:10以下(例えば、1:0.02~1:10、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲、例えば、約1:1~約1:6及び約1:1~約1:5なども含める)であるように混合することで、長時間持続、移り防止性、非粘着性、限られた剥離性、及び優れた快適性を特徴とする化粧料が得られる。
【0107】
長時間持続口唇用組成物の他の好適な実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーンエラストマー、好ましくは少なくとも1種のジメチコン架橋重合体と、25℃で350cSt以上の粘度を有する少なくとも1種の不揮発性シリコーン流体を、シリコーンエラストマーの重量対不揮発性シリコーン流体の重量が重量比で約1:0.02以上かつ約1:10以下(例えば、1:0.02~1:10、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲、例えば、約1:1~約1:6及び約1:1~約1:5なども含める)であるように混合することで、長時間持続、移り防止性、非粘着性、限られた剥離性、及び優れた快適性を特徴とする化粧料が得られる。
【0108】
ワックス
【0109】
本発明の長時間持続口唇用組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種のワックスを含むことができる。トップコート組成物のワックスに関する上記の説明は、長時間持続口唇用組成物のワックスにも当てはまる。
【0110】
顔料
【0111】
本発明の組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種の化粧用に許容可能な着色剤、例えば顔料または染料を含むことができる。適切な顔料の例として、無機顔料、有機顔料、レーキ、真珠光沢顔料、虹色または光学的可変顔料、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。顔料とは、当然ながら、無機または有機の白色または有色粒子を意味する。こうした顔料は、任意選択で、本発明の範囲内で表面処理されていてもよく、表面処理としては、シリコーン、全フッ素置換化合物、レシチン、及びアミノ酸などの処理があるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明で有用な無機顔料の代表例として、ルチルまたはアナターゼ二酸化チタン、カラーインデックスの参照番号CI 77,891;黒色、黄色、赤色、及び褐色酸化鉄、参照番号CI 77,499、77,492、及び77,491;マンガンバイオレット(CI 77,742);群青色(CI 77,007);酸化クロム(CI 77,288);クロム水和物(CI 77,289);及び第二鉄青(CI 77,510)、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるものが挙げられる。
【0113】
本発明で有用な有機顔料及びレーキの代表例として、D&C赤色19号(CI 45,170)、D&C赤色9号(CI 15,585)、D&C赤色21号(CI 45,380)、D&C橙色4号(CI 15,510)、D&C橙色5号(CI 45,370)、D&C赤色27号(CI 45,410)、D&C赤色13号(CI 15,630)、D&C赤色7号(CI 15,850)、D&C赤色6号(CI 15,850)、D&C黄色5号(CI 19,140)、D&C赤色36号(CI 12,085)、D&C橙色10号(CI 45,425)、D&C黄色6号(CI 15,985)、D&C赤色30号(CI 73,360)、D&C赤色3号(CI 45,430)、及びコチニールカルミン(CI 75,570)に基づく染料またはレーキ、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本発明で有用な真珠光沢顔料の代表例として、白色真珠光沢顔料、例えば酸化チタンで被覆した雲母、二酸化チタンで被覆した雲母、塩化酸化ビスマス、塩化酸化チタンなど、有色真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄を含む雲母チタン、第二鉄青を含む雲母チタン、酸化クロムなど、上記の種類の有機顔料を含む雲母チタン、及び塩化酸化ビスマスに基づくもの、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるものが挙げられる。
【0115】
本発明の組成物に使用される着色剤の正確な量及び種類は、色、発色強度、及び化粧料組成物の用途に依存することになり、その結果、化粧品配合分野の当業者により決定されることとなる。しかしながら、本発明で使用される着色剤の好適な量の1つは、組成物の重量に基づいて、約0.5%~約15%、約1.5%~約12%、及び約2%~約10%である。
【0116】
充填剤
【0117】
本発明の組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種の充填剤を含むことができる。本発明の組成物に使用可能な充填剤として、例えば、シリカ粉末;タルク;ポリアミド粒子、特にAtochem社からOrgasolの名前で販売されているもの;ポリエチレン粉末;アクリル共重合体を基材とする微粒子、例えば、Dow Corning社からPolytrapの名前で販売されているエチレングリコールジメタクリラート/ラウリルメタクリラート共重合体を基材とするもの;膨張粉末、例えば、中空微粒子、特にKemanord Plast社からExpancelの名前で販売されている微粒子またはMatsumoto社からMicropearl F 80 EDの名前で販売されている微粒子;天然有機物質の粉末、例えば、架橋もしくは非架橋コーンデンプン、コムギデンプン、またはコメデンプンなど、例えば、コハク酸オクテニル無水物で架橋したデンプン粉末など、これはNational Starch社からDry-Floの名前で販売されている;シリコーン樹脂マイクロビーズ、例えば、Toshiba Silicone社からTospearlの名前で販売されているものなど;粘土(bentone、ラポナイト、サポナイトなど);及びそれらの混合物が挙げられる。
【0118】
充填剤は、本発明の組成物中、約0.1重量%~約50重量%、例えば0.5重量%~約30重量%、例えば約1重量%~約20重量%の範囲の量で存在することができ、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0119】
シリカエアロゲル
【0120】
本発明の組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種のシリカエアロゲルを含むことができる。シリカエアロゲルとは、シリカゲルの液体成分を空気に置き換える(乾燥による)ことにより得られる多孔質物質である。シリカエアロゲルは、一般に、液体媒体中のゾルゲルプロセスを介して合成され、次いで、通常は超臨界流体により抽出して乾燥させる。抽出に最も一般的に使用されるのは、超臨界CO2である。この種の乾燥は、細孔及び物質の収縮を回避することを可能にする。ゾルゲルプロセス及び様々な乾燥プロセスは、Brinker CJ., and Scherer G.W., Sol-Gel Science: New York: Academic Press, 1990に詳細に記載されている。シリカエアロゲルは、概して、米国特許第9,320,689号に開示されており、その全内容は、本明細書により参照として援用される。
【0121】
本発明に使用可能な疎水性シリカエアロゲルとして、挙げることができる例には、Dow Corning社からVM-2260の名前で販売されているエアロゲル(INCI名:シリル化シリカ)があり、その粒子は、平均サイズが約1000ミクロンであり単位質量あたりの比表面積が600~800m2/gの範囲である。
【0122】
エアロゲルとして同じく挙げることができるものに、Cabot社から参照名AEROGEL TLD 201、AEROGEL OGD 201、AEROGEL TLD 203、ENOVA(登録商標)AEROGEL MT 1100、ENOVA AEROGEL MT 1200で販売されているものがある。
【0123】
詳細には、Dow Corning社からVM-2270の名前で販売されているエアロゲル(INCI名:シリル化シリカ)であって、その粒子が、平均サイズが約5~15ミクロンの範囲であり単位質量あたりの比表面積が600~800m2/gの範囲であるものが、使用可能である。
【0124】
シリカエアロゲル粒子は、本発明の組成物中、0.1重量%~約8重量%、好ましくは0.25重量%~6重量%、好ましくは0.5重量%~4重量%の範囲の量で、それらの間にある全ての範囲及びサブ範囲も含めて、使用可能であり、重量は全て、組成物全体としての重量に基づく。
【0125】
さらなる添加剤
【0126】
本発明の組成物は、任意選択でさらに、少なくとも1種の化粧用または皮膚科学的に許容可能な添加剤、例えば、増粘剤、可塑剤、抗酸化剤、精油、植物エキス、香料、保存料、香料、ペースト状脂肪物質、中和剤、重合体、及び化粧用活性作用剤及び/または皮膚科学的活性作用剤など、例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、及び医薬などを含むことができる。
【0127】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、以下を含む組成物であり:
(a)約1重量%~約30重量%の少なくとも1種のシリコーンエラストマー;
(b)約2重量%~約30重量%の少なくとも1種の不揮発性油;
(c)約2重量%~約35重量%の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン共重合体;
(d)約5重量%~約30重量%の少なくとも1種のシリコーン樹脂;
(e)約5%~約50%の少なくとも1種の揮発性溶媒;
(f)任意選択で、少なくとも1種のワックス;
(g)任意選択で、少なくとも1種の着色剤;及び
(h)任意選択で、少なくとも1種の充填剤;
組成物中、シリコーンエラストマー(a)対少なくとも1種の不揮発性油(b)の比は、約1:0.02~約1:10であり、重量は、組成物の合計重量に対するものである。
【0128】
好適な実施形態に従って、長時間持続口唇用組成物は、以下を含む液状組成物であり:
(a)約1重量%~約30重量%の少なくとも1種のジメチコン架橋重合体;
(b)約2重量%~約30重量%の少なくとも1種の350cSt以上の粘度を有する不揮発性シリコーン油;
(c)約2重量%~約35重量%のナイロン-611/ジメチコン共重合体;
(d)約5重量%~約30重量%の少なくとも1種のシロキシシリケート樹脂;
(e)約5%~約50%の少なくとも1種の揮発性炭化水素溶媒;
(f)任意選択で、少なくとも1種のワックス;
(g)任意選択で、少なくとも1種の着色剤;及び
(h)任意選択で、少なくとも1種の充填剤;
組成物中、シリコーンエラストマー(a)対少なくとも1種の不揮発性油(b)の比は、約1:0.02~約1:10であり、重量は、組成物の合計重量に対するものである。
【0129】
好適な実施形態に従って、(1)少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を含むキットが提供される。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0130】
好適な実施形態に従って、(1)少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を含む化粧システムが提供される。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0131】
好適な実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む、口唇の外観を向上させる方法が提供される。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0132】
好適な実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む、口唇のメイクアップ方法が提供される。好ましくは、口唇の「メイクアップ」は、少なくとも1種類の着色剤を、口唇を着色するのに十分な量で塗布することを含む。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続口唇用組成物の移り防止性を阻害しない。
【0133】
好適な実施形態に従って、少なくとも1種のシリコーン膜形成剤を含む長時間持続口唇用組成物を口唇に塗布すること、ならびに(2)少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスを含むトップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布することを含む、口唇の処置方法が提供される。好ましくは、トップコート組成物は、本質的に、少なくとも1種のフェニル化シリコーン油及び少なくとも1種のワックスからなる。好ましくは、トップコート組成物は、ジグリセリルポリアシルアジペートを含まない。好ましくは、トップコート組成物を長時間持続口唇用組成物に塗布した場合に、トップコート組成物は、長時間持続リップの移り防止性を阻害しない。
【0134】
本発明の組成物及び方法は、特定の成分及びプロセス工程「を含む」、「からなる」、または「から本質的になる」ことが可能である。本発明が特定の成分及び/またはプロセス工程「から本質的になる」場合の本発明の組成物及び方法の目的に関して、そのような組成物及び/または方法の唯一の「基本的かつ新規特性」は、移り防止性である。さらに、本発明の文脈において他の移り防止性向上剤または増幅剤(例えば、追加の膜形成剤)を本発明の方法及び組成物に加えることが可能であることが企図されていることを考慮すると、本発明の基本的かつ新規特性に対する「重大な効果」は、有害効果しかあり得ない。すなわち、移り防止性に対するプラス効果(例えば、追加の膜形成剤により発揮されるもの)は、本発明の範囲内にあるため、移り防止性に対して重大な有害効果を有する成分のみが、組成物または方法が必須要素「から本質的になる」かどうかの決定に関連すると思われる。
【0135】
特に記載がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される、成分、反応条件などの量を表す数字は全て、あらゆる場合において、「約」という用語により修飾されると理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲で記載される数値パラメーターは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変化する可能性がある近似である。
【0136】
本発明の範囲を広く記載する数字範囲及びパラメーターが近似であるにもかかわらず、具体的な例で記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、どの数値であっても、それぞれの測定で見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。以下の実施例は、結果的にその範囲を限定することなく本発明を例示することを意図している。パーセンテージは、重量基準で与えられる。
【実施例】
【0137】
以下の実施例から、本発明をより深く理解できるだろう。実施例は、非制限的であり例示にすぎないことを意図し、本発明の範囲は、特許請求の範囲により定義される。
【0138】
実施例1-本発明組成物
【0139】
以下の表に、本発明のトップコート組成物の例を記載する。
【0140】
実施例2-本発明組成物(複数可)の調製方法例
【0141】
イソ酪酸酢酸スクロース、フェニルプロピルジメチルシロキシシリケート、及びトリメチルペンタフェニルトリシロキサンを、容器中、90℃で、透明液体が得られるまで混合した。混合物に、オゾケライト及びミツロウを加え、90℃で、ワックスが溶融して溶液が透明になるまで撹拌した。次いで、酢酸トコフェロール及び香料を加えた。得られる混合物を、金型に注いで室温に冷却し、続いて、10分間冷蔵庫に入れた。型からスティックを取り出し、適切なパックに入れた。
【0142】
【0143】
実施例4-市販の長時間持続口唇用組成物及び比較用市販トップコート
【0144】
成分の明らかなベースコート及びトップコートを有する市販品を、評価した。市販品のベースコートは、本発明に従う、許容可能な長時間持続口唇用組成物である。市販品のトップコートは、許容可能なトップコートではなく、これは、本発明の一部を構成しない。
【0145】
ベースコート(長時間持続口唇用組成物):イソドデカン、トリメチルシロキシシリケート、ナイロン-611/ジメチコン共重合体、ジステアルジモニウムヘクトライト、ラウロイルリシン、c30-45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン、アルミナ、炭酸プロピレン、合成フルオロフロゴパイト、シリカ、ホウケイ酸ナトリウムカルシウム、ホウケイ酸アルミニウムカルシウム、ポリエチレンテレフタレート、香料、水酸化アルミニウム、アクリル酸共重合体、ベンジルアルコール、ジメチコン、パラフィン、酸化スズ。[+/-は、雲母、ci77891/二酸化チタン、ci77491、ci77492、ci77499/酸化鉄、ci15850/赤色7号、ci15985/黄色6号レーキ、ci45410/赤色28号レーキ、ci45380/赤色22号レーキ、ci19140/黄色5号レーキ、ci42090/青色1号レーキ、ci75470/カルミンを含有する場合がある]
【0146】
比較トップコート:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ビス-ジグリセリルポリアシルアジピン酸エステル-2、オゾケライト、Cera alba/ミツロウ/cire d’abeille、ホウケイ酸ナトリウムカルシウム、ホウケイ酸アルミニウムカルシウム、酢酸トコフェロール、香料。[+/-は、雲母、ci77891/二酸化チタン、ci77491/酸化鉄を含有する場合がある]
【0147】
実施例5-評価方法及び試験結果
【0148】
組成物を、粘着性、光沢、及び色移り防止性について試験した。試験方法を以下に記載する。
【0149】
タック試験
【0150】
3MILのドローダウンバー及び自動ドローダウン機械を使用して、各配合物を、対比カードに塗り伸ばしてフィルムにした。フィルムを室温(25℃)で一晩乾燥させ、ボールプローブを備えたテクスチャーアナライザーで分析した。350gの力を10秒間加えた後、粘着力を測定した。そうすると、粘着性の値は、試験した生成物の着用快適性と相関した。100gr/力超の値を有する粘着性を有する試料は、着用するのに非常に不快であると判断された。50~100gr/力の粘着値は、中程度の快適性を示し、50gr/力未満の値を持つものは、快適であると判断された。
【0151】
光沢試験
【0152】
3MILのドローダウンバー及び自動ドローダウン機械を使用して、各配合物を、対比カードに塗り伸ばしてフィルムにした。フィルムを室温(25℃)で一晩乾燥させ、次いで、光沢度計(BYK:micro-TRI-gloss)で分析した。トップコートを用いるシステムの場合、トップコートのフィルムが、カラーコートの全範囲を確実に覆うようにするため、トップコートは手でカラーコートの上に塗布し、それから光沢を測定した。
【0153】
色移り防止性試験
【0154】
以下の段落に記載される方法を、本出願の目的のため「方法A」と定義する。
【0155】
3MILのドローダウンバーを用いて、リップスティックベースコート(カラーコート)を、ポリウレタン白色バイオスキンに塗り伸ばしてフィルムにした。フィルムを一晩乾燥させた。各トップコートは、手でスティックを水平に動かすことにより塗布した。スティックへの色移りは、あり(色移りが生じた場合)及びなし(色移りが生じなかった場合)で記録した。トップコートを、カラーコート上で5分間静置し、次いでキムワイプ(三回折りたたんだもの)を試料の表面に乗せて、指で全体にわたり拭いた。色移りは、0(色移りなし)、1(少し色移り)、2(中程度に色移り)、3(激しく色移り)として数値化した。実生活でのトップコート再塗布を真似て、同じ範囲にトップコートを再塗布した。
【0156】
結果
【0157】
以下の表1は、ベースコートとして実施例3の長時間持続口唇用組成物を使用した場合の試験結果を示す。
【0158】
【0159】
以下の表2は、ベースコートとして実施例4の長時間持続口唇用組成物を使用した場合の試験結果を示す。
【0160】