(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】N-オキシド及びエクトインモノマー、ポリマー、それらの組成物及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/34 20060101AFI20240401BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240401BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20240401BHJP
A61L 29/14 20060101ALI20240401BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240401BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20240401BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20240401BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61L27/34
A61L27/52
A61L27/54
A61L29/08 100
A61L29/14 300
A61L29/16
A61L31/10
A61L31/14 300
A61L31/16
(21)【出願番号】P 2019572481
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 US2018040448
(87)【国際公開番号】W WO2019006398
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャオイ・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】プリイェシュ・ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】ジンロン・マ
(72)【発明者】
【氏名】ボーウェン・リ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-310915(JP,A)
【文献】特表2007-500548(JP,A)
【文献】特開昭55-104368(JP,A)
【文献】米国特許第08268296(US,B2)
【文献】国際公開第2017/041834(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/095264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/34
A61L 27/52
A61L 27/54
A61L 29/08
A61L 29/14
A61L 29/16
A61L 31/10
A61L 31/14
A61L 31/16
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種若しくは複数のN-オキシドポリマー又は1種若しくは複数のN-オキシドコポリマーの層でコーティングされた基材であって、
前記N-オキシドポリマー又はN-オキシドコポリマーが、式(IV
)の繰り返し単位:
【化1】
[式中、
*は、前記ポリマー又はコポリマー中の前記繰り返し単位の他の繰り返し単位への結合点を示し;
R
1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、シアノ、C
1~C
20アルキル及びC
6~C
12アリールからなる群から選択され;
R
2及びR
3は、前記N-オキシドポリマー又はN-オキシドコポリマーを調製するために使用された、付加、縮合又は遊離ラジカル重合による重合に適している単量体の重合の残基から独立して選択され;
R
4及びR
5は、水素、C
1~C
20アルキル、C
6~C
12アリール、及びC
3~C
7環状アルキルからなる群から独立して選択され;
LはC又はSiであり;
L
2は、-C(=O)-X-(CH
2)
n-(式中、XはO又はNであり、n=1~10である)、-(CH
2)
x-又は-(CH(CN))
x-(式中、xは1~20の整数である)から独立して選択され;
L
3及びL
4は、-(CH
2)
x-、-(CH(CN))
x-、-C(=O)NH(CH
2)
x-、-C(=O)O(CH
2)
x-、-C(=O)OC(=O)O(CH
2)
x-、-(CH
2)
x-O-(CH
2)
x-及び-(CH
2)
x-S-S-(CH
2)
x-(式中、xは、それぞれの出現において、1~20から独立して選択される整数である)から独立して選択され、あるいはL
3は存在せず、L
4は存在せず、又はL
3及びL
4は存在せず;
nは約10~約500の整数である]
を有する;又は
前記N-オキシドポリマー又はN-オキシドコポリマーが式(III)の繰り返し単位:
【化2】
[式中、
*は、前記ポリマー又はコポリマー中の前記繰り返し単位の他の繰り返し単位への結合点を示し;
Bはポリマー骨格であり;
Lは、-(CH
2)
x-、-(CH(CN))
x-、-C(=O)NH(CH
2)
x-、-C(=O)O(CH
2)
x-、-C(=O)OC(=O)O(CH
2)
x-、-(CH
2)
x-O-(CH
2)
x-及び-(CH
2)
x-S-S-(CH
2)
x-(式中、xは、それぞれの出現において、1~20から独立して選択される整数である)から独立して選択され;
R
1及びR
2は、水素、C
1~C
20アルキル、C
6~C
12アリール、及びC
3~C
7環状アルキルからなる群から独立して選択され;
nは約10~約500の整数である]
を有
し、
前記基材が、カテーテル、耳ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜、神経誘導管、組織接着剤、X線ガイド、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフト、血管グラフト、ステント、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、コンタクトレンズ、人工靱帯及び腱、歯科インプラント、再生組織工学用の組織スキャフォールド、粒子、生体分子、海洋デバイス、並びに送達ビヒクルからなる群から選択される生体医療デバイスである、基材。
【請求項2】
前記ポリマー骨格が、ポリエステル、ポリペプチド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリエポキシ、ビニルポリマー、フェノールポリマー、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン及びポリスルフィドからなる群から選択される、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
約200ng/cm
2未満、約100ng/cm
2未満、約50ng/cm
2未満、約20ng/cm
2未満、又は約10ng/cm
2未満のフィブリノーゲン吸着を有する、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
約5ng/cm
2未満のフィブリノーゲン吸着を有する、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項5】
N-オキシドポリマー又はコポリマーが、ランダム、マルチブロック又は星形ポリマー又はコポリマーである、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項6】
相互侵入N-オキシドポリマー又はコポリマー網目構造を含む、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項7】
N-オキシドポリマー又はコポリマーが、式(I
)を有するモノマー:
【化3】
[式中、
R
1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、シアノ、C
1~C
20アルキル及びC
6~C
12アリールからなる群から選択され;
R
2及びR
3は、付加、縮合又は遊離ラジカル重合による重合に適している官能基から独立して選択され;
R
4及びR
5は、水素、C
1~C
20アルキル及びC
6~C
12アリールからなる群から独立して選択され;
LはC又はSiであり;
L
2は、-(CH
2)
x-又は-(CH(CN))
x-(式中、xは1~20の整数である)から独立して選択され;
L
3及びL
4は、-(CH
2)
x-、-(CH(CN))
x-、-C(=O)NH(CH
2)
x-、-C(=O)O(CH
2)
x-、-C(=O)OC(=O)O(CH
2)
x-、-(CH
2)
x-O-(CH
2)
x-及び-(CH
2)
x-S-S-(CH
2)
x-(式中、xは、それぞれの出現において、1~20から独立して選択される整数である)から独立して選択される]
から調製される、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項8】
N-オキシドポリマー又はコポリマーが、N-オキシドアクリレート、N-オキシドアクリルアミド、N-オキシドメタクリレート、N-オキシドメタクリルアミド、N-オキシドビニル化合物、N-オキシドエポキシド及びその混合物から選択されるモノマーから調製される、請求項1又は2に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年6月29日に出願した米国特許仮出願第62/526,591号の利益を主張するものである。
【0002】
政府ライセンス権の声明
本発明は、米国海軍研究局(ONR)によって授与されたN00014-16-1-3084、国防脅威削減局(DTRA)によって授与されたHDTRA1-13-1-0044及び国立科学財団(NSF)によって授与されたDMR1708436の下の政府支援で行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
トリメチルアミンオキシド(TMAO)は、すべての保護オスモライトの中でも最も有力なものであり、様々な有機体においてタンパク質安定性を強く増強して過酷な変性ストレスを相殺することが示されている。サメ、ガンギエイ及びエイは、尿素変性を相殺するためにTMAOを蓄積することが知られている。TMAOのタンパク質フォールディング能力は、アルツハイマー病及びプリオン病、並びに神経芽細胞腫及び緑内障等のタンパク質のミスフォールディング疾病に関連した機構を検討するために使用されている。
【0004】
数種の好塩性有機体は、エクトインと呼ばれる保護オスモライトを蓄積して、高温及び塩気のある環境条件から生体高分子を保護する。エクトインは、ある種の疾病のための治療剤としての可能性と共に巨大分子、細胞及び組織に対する保護剤としての多数の応用のために、科学界からますます注目を受けている。他の適合溶質と比較して、エクトインは、UV照射又は細胞毒素に対して細胞全体さえ安定させかつまたUVA誘発された細胞傷害の影響から皮膚を保護する、付加的な保護特性を有する。これらの保護特性によって、ヘルスケア及びスキンケア産業においてエクトインは価値のある化合物になっている。構造上、エクトイン(1,4,5,6-テトラヒドロ-2-メチル-4-ピリミジンカルボン酸)は、1つを除いてすべての二重結合が水素化されたピリミジン誘導体である。この分子の最も重要な特性は、永久双性イオン構造をもたらす、N-C-N基中の非局在化π結合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
好都合の非汚損性を有するこれらのポリマーを含む、改善された非汚損性のポリマー、組成物及び材料を開発する必要性が存在する。本発明は、この必要を満たそうと努力し、更に関連する利益を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、N-オキシドモノマー、N-オキシドポリマー及びコポリマー、N-オキシドモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、N-オキシドポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにN-オキシドモノマー、N-オキシドポリマー及びN-オキシドコポリマーを使用する方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、エクトインモノマー、エクトインポリマー及びコポリマー、エクトインモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、エクトインポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにエクトインモノマー、エクトインポリマー及びエクトインコポリマーを使用する方法を提供する。
【0008】
本発明の前述の態様及び付随する利益の多くは、添付の図面と組み合わせると以下の詳細な説明を参照することによって一層よく理解されるようになるので、よりわかりやすくなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】代表的なN-オキシドポリマー表面、ATRPによって金基材からグラフト化することにより調製されたDMAPA N-オキシドブラシの表面プラズモン共鳴(SPR)データを示すグラフである。N-オキシドポリマー表面は10nmの膜厚を有し、2.2ng/cm
2のタンパク質吸着を示す。
【
図2A】ELISA法を使用して、代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲル、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルの相対的なフィブリノーゲン接着率を、ポリプロピレン(PP)に対して比較するグラフである。
【
図2B】代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲル表面、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲル表面(TMAOヒドロゲル)及び組織培養ポリスチレン(TCPS)表面の細胞接着の画像を比較する図である。
【
図3】代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲル対対照(N-オキシドポリマーヒドロゲルを含まない血液バッグ)を使用する、血小板の保存率をまとめた表である。ディスク%、球%及びデンドライト%についての第1及び第2の記載は、それぞれ5日後及び7日後の血小板の保存率を指す。
【
図4A】ネイティブなウリカーゼ及びポリ(DMAPA N-オキシド)にコンジュゲートされたウリカーゼについてのゲル浸透クロマトグラフを比較するグラフである。
【
図4B】N-オキシドポリマーコンジュゲーションの前後のウリカーゼの相対的な生物活性を比較するグラフである。
【
図5】免疫原性についてELISA法の結果:PEG-KLH又はDMAPA N-オキシドポリマー-KLH(TMAO-KLH)コンジュゲートの、マウスへの4週間の皮下投与後の、PEG又は代表的なN-オキシドポリマー(DMAPA N-オキシドポリマー)へのAb応答(抗ポリマーIgM及び抗ポリマーIgG)を比較するグラフである。
【
図6A】代表的なN-オキシドポリマーナノケージ、DMAPA N-オキシドポリマーナノケージ(TMAOナノケージ)、封入KLH及び遊離KLH(KLH)の粒度分布を動的光散乱によって測定して比較するグラフである。
【
図6B】
図6Aの代表的なN-オキシドポリマーナノケージのトンネル電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。
【
図7】ネイティブなウリカーゼ、PEGウリカーゼ、及び代表的なN-オキシドポリマーナノケージ保護ウリカーゼ(TMAOウリカーゼ)の熱安定性を比較するグラフである。
【
図8】ネイティブなウリカーゼ、PEGウリカーゼ、及び代表的なN-オキシドポリマーナノケージ保護ウリカーゼ(TMAOウリカーゼ)の血液循環プロファイルを比較するグラフである。
【
図9】相異なる架橋剤量(0.5、1、1.5質量%)を用いて調製した代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの平衡含水率を比較するグラフである。
【
図10A】それぞれ相異なる架橋剤量(0.5、1、1.5質量%)を用いて調製した代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの圧縮応力を比較するグラフである。
【
図10B】それぞれ相異なる架橋剤量(0.5、1、1.5質量%)を用いて調製した代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの破断点圧縮歪を比較するグラフである。
【
図10C】それぞれ相異なる架橋剤量(0.5、1、1.5質量%)を用いて調製した代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの圧縮弾性率を比較するグラフである。
【
図11】ELISAによって測定して、相異なる架橋剤量(0.5、1、1.5質量%)を用いて調製した代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの相対的なフィブリノーゲン接着率を比較するグラフである。ポリプロピレン(PP)シート、及び代表的なポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ヒドロゲルを、それぞれ陽性及び陰性対照として使用した。データはPPに規格化した。
【
図12】培養3日後のTCPS及びポリエクトインヒドロゲル表面に接着したNIH-3T3細胞の位相コントラスト画像を比較する図である。細胞は、リンスの前(a)及び後(c)に、TCPSの表面に大量に接着し、薄い仮足を伸ばすことによって広がっている。しかし、細胞は、リンスの前(b)にポリ(エクトイン)ヒドロゲル表面に接着することができないが、凝集し、リンスの後(d)には完全に洗い流された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本発明は、N-オキシドモノマー、N-オキシドポリマー及びコポリマー、N-オキシドモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、N-オキシドポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにN-オキシドモノマー、N-オキシドポリマー及びN-オキシドコポリマーを使用する方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、エクトインモノマー、エクトインポリマー及びコポリマー、エクトインモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、エクトインポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにエクトインモノマー、エクトインポリマー及びエクトインコポリマーを使用する方法を提供する。
【0012】
N-オキシドモノマー、ポリマー、コポリマー及びそれらの使用
本発明は、N-オキシドモノマー、N-オキシドポリマー及びコポリマー、N-オキシドモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、N-オキシドポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにN-オキシドポリマー及びN-オキシドコポリマーを使用する方法を提供する。
【0013】
本明細書において記述されるように、N-オキシドモノマーは、標準重合条件下で容易に重合されて溶質のポリマーを生成することができる。ポリマーは、直鎖状、分岐、星形又は架橋していてもよく、非特異的な生物汚損に更に耐え、異なる方式で強力な水和を提供することができる。
【0014】
N-オキシドモノマー、ポリマー及びコポリマー
特定の態様において、本発明は、N-オキシドモノマー並びにN-オキシドモノマーから調製されたポリマー及びコポリマーを提供する。
【0015】
本発明のモノマーは、(a)シリコーン、フッ素化、ペプチド、ウレタン、ウレア及びイミド骨格、並びにメタクリレート及びアクリレート骨格のほかの分解性骨格から選択される骨格を有するN-オキシドモノマー、(b)直鎖状N-オキシド架橋剤、分解性及び非分解性のN-オキシド系架橋剤、(c)ポリマー骨格中にN-オキシド基、若しくはポリマー側鎖中にN-オキシド基をもたらす直鎖状N-オキシド系モノマー、又は(d)導電性骨格を有するN-オキシドモノマーを含む。
【0016】
本発明のポリマー及びコポリマーは、N-オキシド基含有繰り返し単位を含む、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、及び分岐又は星形ポリマー等のポリマー及びコポリマー、例えば、本発明の1種又は複数のモノマー(例えば、N-オキシド含有モノマー)の重合(又は共重合)から調製されたそのようなポリマーを含む。
【0017】
ポリマー及びコポリマーは、医療デバイス/細胞治療、生物薬剤及び化学/海洋用途、化粧料(例えば、水又は湿りを保持する保湿クリーム、フェース/ボディクリーム、化粧用メーキャップ、フェースマスク及びシャンプー/コンディショナー中の添加剤として)等の様々な応用分野において、及びエネルギー装置(例えば、双極子によるエネルギー有効性の向上)において有利に使用することができる。
【0018】
N-オキシドモノマー。一態様において、本発明はN-オキシドモノマーを提供する。N-オキシドモノマーは、N-オキシド基含有繰り返し単位を含む、N-オキシド基含有ポリマー及びコポリマーを生成する。繰り返し単位及びポリマーのN-オキシド基は、ペンダントN-オキシド基(すなわち、ポリマー側鎖)、又はポリマー骨格の一部であるN-オキシド基であってもよい。
【0019】
特定の実施形態において、N-オキシドモノマーは、ペンダントN-オキシド基(ポリマー側鎖)を有するポリマー又はコポリマーを生成するモノマーを含む。代表的なN-オキシドモノマーは、式(I):
【0020】
【0021】
[式中、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、シアノ、C1~C20アルキル及びC6~C12アリールからなる群から選択され;
R2及びR3は、付加、縮合又は遊離ラジカル重合による重合に適している官能基から独立して選択され;
R4及びR5は、水素、C1~C20アルキル及びC6~C12アリール、環状アルキルからなる群から独立して選択され;
LはC又はSiであり;
L2は、-(CH2)x-又は-(CH(CN))x-(式中、xは0~20の整数である)から独立して選択され;
L3及びL4は、-(CH2)x-、-(CH(CN))x-、-C(=O)NH(CH2)x-、-C(=O)O(CH2)x-、-C(=O)OC(=O)O(CH2)x-、-(CH2)x-O-(CH2)x-及び-(CH2)x-S-S-(CH2)x-(式中、xは、それぞれの出現において、0~20、好ましくは1~20から独立して選択される整数である)から独立して選択される]
を有する。特定の実施形態において、L3及び/又はL4は存在しない。
【0022】
代表的なモノマーは次の化合物を含む:
【0023】
【0024】
[式中、m及びnは独立して1~3の整数である]。
【0025】
本発明のポリマー及びコポリマーを製造するのに役立つ代表的なN-オキシドモノマーの調製は、実施例1に述べられている。
【0026】
特定の実施形態において、本発明の新規のモノマーは、次の構造:
【0027】
【0028】
[式中、XはO又はNであり、n=1~10である]
を有するモノマーを含まない。
【0029】
本発明の表面コーティング、バルク材料、独立型材料、ヒドロゲル及びコンジュゲートを製造するために使用される本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーが、すぐ上に示されたメタクリレート/メタクリルアミドN-オキシドモノマーを含む、本明細書において記述されるモノマーから調製することができることは理解されよう。
【0030】
他の実施形態において、N-オキシドモノマーは、ポリマー骨格中にN-オキシド基を有するポリマー又はコポリマーを生成するモノマーを含む。代表的なN-オキシドモノマーは式(II):
【0031】
【0032】
[式中、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、シアノ、C1~C20アルキル及びC6~C12アリールからなる群から選択され;
R2及びR3は、付加、縮合又は遊離ラジカル重合による重合に適している官能基から独立して選択され;
L3及びL4は、-(CH2)x-、-(CH(CN))x-、-C(=O)NH(CH2)x-、-C(=O)O(CH2)x-、-C(=O)OC(=O)O(CH2)x-、-(CH2)x-O-(CH2)x-及び-(CH2)x-S-S-(CH2)x-(式中、xは、それぞれの出現において、0~20、好ましくは1~20から独立して選択される整数である)から独立して選択される]
を有する。
【0033】
N-オキシドポリマー及びコポリマー。他の態様において、本発明は、本明細書において記述されるような、N-オキシド繰り返し単位を含む、N-オキシドモノマーから調製されたN-オキシドポリマーを提供する。
【0034】
これらのポリマー及びコポリマーについての特定の実施形態において、ポリマー及びコポリマー骨格は、ポリエステル、ポリペプチド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリエポキシ、ビニルポリマー、フェノールポリマー、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリスルホン、又はポリスルフィドのうちのいずれか1つであってもよい。
【0035】
本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーは、式(I)及び式(II)のモノマーから調製されたポリマー及びコポリマーを含む。ポリマーは、(a)式(I)のモノマー又は(b)式(II)のモノマーの重合によって形成することができる。コポリマーは、(a)式(I)のモノマーと、式(I)のモノマーとの共重合に適している第2のコモノマーとの、(b)式(II)のモノマーと、式(II)のモノマーとの共重合に適している第2のコモノマーとの、(c)式(I)のモノマーと、式(I)のモノマーとの共重合に適している式(II)のモノマーとの共重合によって調製することができる。
【0036】
特定の実施形態において、N-オキシドモノマーは、ポリマー骨格からのペンダントである、N-オキシド部分を含むポリマーの繰り返し単位を生成する(すなわち、ポリマー側鎖の一部を形成する)。ポリマー骨格からのペンダントである、N-オキシド部分を有する代表的なポリマーは、式(III):
【0037】
【0038】
[式中、
*は、ポリマー又はコポリマー中の繰り返し単位の他の繰り返し単位への結合点を示し;
Bは上記のポリマー骨格であり;
Lは、N-オキシド部分を骨格に連結するリンカー基であり、代表的な基は、-(CH2)x-、-(CH(CN))x-、-C(=O)NH(CH2)x-、-C(=O)O(CH2)x-、-C(=O)OC(=O)O(CH2)x-、-(CH2)x-O-(CH2)x-及び-(CH2)x-S-S-(CH2)x-(式中、xは、それぞれの出現において、1~20から独立して選択される整数である)を含み;
R1及びR2は、水素、C1~C20アルキル(環状アルキル、例えば、C3~C7シクロアルキルを含む)、及びC6~C12アリールからなる群から独立して選択され;
nは約10~約500の整数である]
を有する。
【0039】
他の実施形態において、ポリマー骨格からのペンダントであるN-オキシド部分を有する代表的なポリマーは、式(IV):
【0040】
【0041】
[式中、式(IV)中のR2及びR3が、式(I)中の官能基R2及びR3それぞれの重合の残基であることを理解したうえで、R1、R2、R3、R4、R5、L、L2、L3及びL4は、式(I)のモノマーについて上に述べた通りであり;nは約10~約500の整数である]
を有する。
【0042】
他の実施形態において、N-オキシドモノマーは、ポリマー骨格(すなわち、ポリマー骨格の一部を形成する)中にある、N-オキシド部分を含むポリマーの繰り返し単位を生成する。ポリマー骨格中にN-オキシド部分を有する代表的なポリマーは、式(V):
【0043】
【0044】
[式中、式(V)中のR2及びR3が、式(II)中の官能基R2及びR3それぞれの重合の残基であることを理解したうえで、R1、R2、R3、L3及びL4は、式(II)のモノマーについて上に述べた通りであり;nは約10~約500の整数である]
を有する。
【0045】
導電性N-オキシドポリマー及びコポリマー。更なる態様において、本発明は、N-オキシド繰り返し単位を含む導電性N-オキシドポリマーを提供する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、ポリマー側鎖中にN-オキシド部分を含む導電性N-オキシドポリマーを提供する。代表的な導電性ポリマーは、式(VI):
【0047】
【0048】
[式中、
*は1個の繰り返し単位と次との結合点であり、
-[Ar-(X)a]n-はポリマー骨格であり、
Arは、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルキレン、置換アルキレン及びアルキニレンから選択され、
Xは、S、O、N、NH、CH=CH及びC6~C12アリーレンから選択され、
aは0又は1であり、
bは0又は1であり、
nは、5~約10,000の整数であり、
R1は、C1~C6置換又は非置換アルキレンであり、
R2及びR3は、水素、C1~C6アルキル、置換C1~C6アルキル、C6~C12アリール、及び置換C6~C12アリールからなる群から独立して選択される]
を有する。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、式(VI)のポリマーを含む改質表面を提供する。改質表面は、人工神経系、ニューロン再生プラットフォーム、神経センサー、細胞培養プラットフォーム;非汚損性半導体、バッテリー、有機太陽電池、バイオ燃料電池、印刷電子回路、有機発光ダイオード、アクチュエーター、エレクトロクロミズム装置、スーパーコンデンサー、化学センサー、柔軟な透明ディスプレイ、電磁気遮蔽、帯電防止コーティング、マイクロ波吸収装置又はレーダー吸収装置の表面であり得る。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、式(VI)のポリマーを含むバルク構築物を提供する。代表的な構築物は、医療、電子又は海洋デバイスであってもよい。これらの実施形態の幾つかにおいて、バルク構築物は、人工神経系、ニューロン再生プラットフォーム、神経センサー、細胞培養プラットフォーム;非汚損性半導体、バッテリー、有機太陽電池、バイオ燃料電池、印刷電子回路、有機発光ダイオード、アクチュエーター、エレクトロクロミズム装置、スーパーコンデンサー、化学センサー、柔軟な透明ディスプレイ、電磁気遮蔽、帯電防止コーティング、マイクロ波吸収装置又はレーダー吸収装置である。
【0051】
導電性N-オキシドポリマーは、官能化導電性ポリマーコーティングを表面に堆積させることにより調製することができる。調製方法は、
(a)導電性N-オキシドポリマーの前駆体であるモノマーを水性媒体に溶かしてモノマー溶液を形成する工程と、
(b)モノマー溶液を表面に接触させる工程と、
(c)モノマーを重合させて表面に官能化導電性ポリマーコーティングを形成する工程と
を含む。
【0052】
N-オキシド星形ポリマー及びコポリマー。他の態様において、本発明は、N-オキシド繰り返し単位を含むN-オキシド星形ポリマー及びコポリマーを提供する。
【0053】
これらのポリマーは、コア、及びコアに共有結合された複数のN-オキシド分岐を含む。これらのポリマーのコアは、星の形状を有する小分子、オリゴマー、又はポリマーであってもよい。特定の実施形態において、これらのポリマーは、3、4、5個又はそれ以上のN-オキシド分岐を含むことができる。これらの実施形態の幾つかにおいて、1個又は複数のN-オキシド分岐は、それら自体で更に分岐してもよい。特定の実施形態において、これらのポリマーは、複数のN-オキシド分岐の終端部に結合された末端官能基を更に含むことができる。代表的な末端官能基は、OH、NH、NH2、SH、N3、CH=CH2、C≡CH、COOH、CHO、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン-2-チオン、ピリジルジスルフィド、ジフッ素化シクロオクチン、Staudinger試薬対、イソシアレート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホNHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド及び5H-ジベンズ[b,f]アゼピン、並びにそれらの誘導体から選択される。
【0054】
N-オキシドコポリマー:疎水性及び親水性構成単位。更なる態様において、本発明は、N-オキシド繰り返し単位、並びに疎水性及び/又は親水性構成単位を含むN-オキシドコポリマーを提供する。
【0055】
特定の実施形態において、コポリマーは、N-オキシド繰り返し単位(例えば、ポリ(N-オキシド))を含むランダム、ジブロック又は超分岐コポリマーである。
【0056】
代表的なブロックコポリマーは、少なくとも1つのN-オキシド成分ブロック(A);及び少なくとも1つの疎水性ブロック(B)を含む。特定の実施形態において、コポリマーは、親水性ブロック(C)又は第2の疎水性ブロック(C)を更に含む。本発明のブロックコポリマーは、ABジブロックコポリマー、ABCトリブロックコポリマー、ABAトリブロックコポリマー、BABトリブロックコポリマー、直鎖状又は星の形状のマルチブロック(AB)nコポリマー、ミクトアームブロックコポリマー(ABn又はAnB)、及びその混合物を含む。特定の実施形態において、コポリマーは、中性の親水性繰り返し単位(例えば、エチレンオキシド繰り返し単位等のアルキレンオキシド繰り返し単位)を更に含む。
【0057】
特定の実施形態において、コポリマーは、N-オキシドモノマーに由来する繰り返し単位を含むN-オキシド成分(例えば、式(I)又は式(II)を有する本発明のN-オキシドモノマー)、及び疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む疎水性成分を含む。
【0058】
代表的な疎水性の繰り返し単位は、アクリル酸及びエステル、アルキルアクリル酸及びエステル、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、ポリシロキサン繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリウレタン繰り返し単位、ポリスチレン繰り返し単位、及びそのフッ素化誘導体に由来してもよい。
【0059】
特定の実施形態において、コポリマーは、N-オキシドモノマーに由来する繰り返し単位を含むN-オキシド成分(例えば、式(I)又は式(II)を有する本発明のN-オキシドモノマー)、親水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む親水性成分、及び任意選択で親水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む疎水性成分を含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、親水性の繰り返し単位はN-オキシド部分を含む。他の実施形態において、親水性の繰り返し単位は、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカルボキシベタイン(PCB)、ポリスルホベタイン(PSB)、ポリホスホベタイン(PPB)、ポリホスホリルコリン(PPC)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリ(2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート)(PDHPM)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(アクリル酸)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、高分子電解質、多糖、ポリアミド、及び雑多な親水性のポリマー、ペプチド系材料及び2種以上の親水性モノマーのコポリマーであってもよい。
【0060】
シリコーン系N-オキシドコポリマー。他の態様において、本発明は、N-オキシド繰り返し単位及びシリコーン繰り返し単位([R1R2SiO]n)を含む、シリコーン系N-オキシドコポリマーを提供する。
【0061】
特定の実施形態において、ケイ素系コポリマーはポリ(N-オキシド)を含む。
【0062】
特定の実施形態において、ケイ素系コポリマーは、ポリ(N-オキシド)を含むブロックコポリマーである。
【0063】
他の実施形態において、ケイ素系コポリマーは、ポリ(N-オキシド)を含むグラフトコポリマーである。
【0064】
適切なシリコーン系N-オキシドコポリマーは、式[R1R2SiO]n[式中、R1及びR2は、アルキル(メチル、エチル)、フェニル、ビニル、ヒドリド、シラノール、アルコキシ/ポリマーのアルコキシド、アミン、エポキシ、カルビノール、メタクリレート/アクリレート、メルカプト、アセトキシ/塩素/ジメチルアミン等の有機基、及び他の有機基である]を有するシリコーン繰り返し単位を含む。
【0065】
特定の実施形態において、ブロックコポリマーは、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及びマクロ開始剤を使用するリビング重合によってシリコーンから成長することができるポリ(N-オキシド)ブロック(PNO)を有する。代表的なシリコーン系N-オキシドブロックコポリマーは、PNO-b-PDMSジブロック、PNO-b-PDMS-b-PNOトリブロック、PDMS-b-PNO-b-PDMSトリブロック、PDMS-b-PEG-PNOトリブロック、直鎖状又は星の形状のマルチブロック(PDMS-b-PNO)n、ミクトアームブロック(PDMS)m-(PNO)n、又はコーム状のPDMS-(PNO)nコポリマーを含む。
【0066】
コーム状のPDMS-(PNO)nコポリマーについては、ポリ(N-オキシド)ポリマー鎖はPDMS骨格からグラフト化することができる。これは、PDMS系マルチ開始剤の使用により達成することができる(すなわち、開始剤は、PDMS骨格の側面に結合される。)。「グラフトトゥー」法については、PDMS骨格と反応した官能性末端基を有するポリ(N-オキシド)ポリマー鎖は、また、コーム状グラフトコポリマーを製造することができる。
【0067】
グラフトコポリマーについて、N-オキシド側鎖は、チオール-エン化学、マイケル付加、ヒドロシリル化反応、求電子付加、求核付加、又は他の適切な反応を使用してシリコーン骨格に結合することができる。
【0068】
上に認められるように、ブロックコポリマーは、リビング重合法によって調製することができる。有用な代表的リビング重合法には、リビングアニオン重合、リビングα-オレフィン重合、リビングカチオン重合、リビング開環メタセシス重合、リビング遊離ラジカル重合、リビング鎖成長重縮合、リビング基移動重合、及び安定遊離ラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合が含まれる。
【0069】
更なる態様において、本発明は、(a)シリコーン系N-オキシドコポリマー及び(b)ポリマーマトリックスを含む、バルク材料又はコーティング組成物であって、ポリマーマトリックスが、ロジン、アクリルポリマー、ポリエステル、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ及びフェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、フッ素化ポリマー、N-オキシドによって改質されたポリシロキサン、双性イオン(スルホベタイン、カルボキシベタイン、保護されたカルボキシベタイン及びMPC)、アミド、PEG、ポリ(2-オキサゾリン)、PVA、多糖、又はその混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、バルク材料又はコーティング組成物を提供する。
【0070】
特定の実施形態において、バルク材料又はコーティング組成物は、N-オキシドによって改質されたポリシロキサン結合剤マトリックス(シリコーン系N-オキシドコポリマーから形成された)を含む。これらの材料及びコーティングは、双性イオンによって改質されたポリシロキサン結合剤マトリックス(スルホベタイン、カルボキシベタイン、保護されたカルボキシベタイン、及びMPC)、アミド、PEG、ポリ(2-オキサゾリン)、PVA、多糖又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0071】
特定の実施形態において、バルク材料又はコーティング組成物は、(a)疎水性(例えば、PDMS)及び親水性(例えば、N-オキシド、双性イオン、保護された双性イオン、PEG、アミド、ポリ(2-オキサゾリン)、PVA、多糖又はそれらの組み合わせ)を含むコポリマー(ジブロック、トリブロック、グラフト又はランダム)、及び(b)上記のポリマーマトリックスを含む。
【0072】
バルク材料及びコーティング組成物は、それぞれ殺生物剤又は酵素等の1種又は複数の活性成分を更に含んでもよい。
【0073】
N-オキシドポリマーの表面コーティング、バルク材料、及び独立型材料
他の態様において、本発明は、N-オキシドポリマーの表面コーティング、バルク材料及び独立型材料を提供する。特定の実施形態において、N-オキシドポリマーの表面コーティング、バルク材料及び独立型材料は、N-オキシドモノマー、並びにN-オキシドモノマーから調製されたポリマー及びコポリマーから調製される。
【0074】
N-オキシドポリマーは、「グラフトフロム」又は「グラフトトゥー」法によって表面(例えば、医療デバイス、センサー、膜、船及び海洋構造体)に結合して表面を非汚損性にすることができる。N-オキシドポリマーもまた、バルク材料(例えば、シリコーン)とブレンドし、又はバルク材料に混ぜ込むことができる。表面コーティングは、平坦な表面又はナノ/ミクロ粒子表面にあってもよい。N-オキシドポリマーはまた、(i)シリコーン、フッ素化、ウレタン、イミド、アミド等の独特の骨格及び(ii)複数の水素結合等の強力な相互作用、及び(iii)相互侵入網目構造によって医療及び海洋用途のための独立型の低汚損性及び高強度の材料及びデバイスに調製することができる。
【0075】
N-オキシドポリマーの表面コーティング。本発明は、N-オキシドポリマーの表面コーティングを提供する。特定の実施形態において、表面コーティングは、本明細書において記述される本発明のN-オキシドポリマー(オリゴマー)又はN-オキシドコポリマー(例えば、式(III)、(IV)、(V)又は(VI)のポリマー)を含む。
【0076】
N-オキシドポリマー及びコポリマーでコーティングされた表面は、非汚損性を有する。表面の非汚損性は、フィブリノーゲン吸着及び細胞接着によって評価することができる。特定の実施形態において、本発明の表面は、約200ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は、約100ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。更なる実施形態において、本発明の表面は、約50ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は、約30ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。更なる実施形態において、本発明の表面は、約20ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は、約10ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。特定の実施形態において、本発明の表面は、約5ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。
【0077】
本発明の代表的なN-オキシドポリマーでコーティングされた表面の調製及び非汚損性は、実施例2に述べられている。
【0078】
特定の実施形態において、表面は、N-オキシドアクリレート、N-オキシドアクリルアミド、N-オキシドメタクリレート、N-オキシドメタクリルアミド、N-オキシドビニル化合物、N-オキシドエポキシド及びその混合物を含むがこれらに限定されない重合性基から選択される1種若しくは複数のN-オキシドモノマーから調製されたN-オキシドポリマー又はコポリマーでコーティングされる。代表的なN-オキシドモノマーは、式(I)及び式(II)のN-オキシドモノマーを含む、本明細書において記述されるものを含む。
【0079】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマー又はコポリマーは、ポリ(N-オキシド)を含む、ランダム、マルチブロック、又は超分岐コポリマーである。他の実施形態において、N-オキシドポリマー又はコポリマーは相互侵入N-オキシドポリマー網目構造である。
【0080】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマー又はコポリマーは、表面接着基(例えば、DOPA、チオール、シラン、クリックケミストリー、疎水性、親水性及び帯電基)を有する。
【0081】
N-オキシドポリマー及びコポリマーでコーティングされた表面は、共有結合の相互作用、物理的な疎水性-疎水性、電荷-電荷、ヒドロゲル結合相互作用、又は化学的及び物理的相互作用のそれらの組み合わせによって、基材表面へN-オキシドポリマー又はコポリマーを結合することにより調製することができる。
【0082】
N-オキシドポリマー又はコポリマーでコーティングされた表面は、基材表面からN-オキシドポリマーをグラフト化すること(「グラフトフロム」)(例えば、基材の存在下で適切なモノマーを重合させることによってポリマー又はコポリマーを形成することによるポリマー表面の調製、実施例2を参照)により調製することができ、又は、基材表面へのN-オキシドポリマーのグラフト化(「グラフトトゥー」)(例えば、予備形成されたポリマー又はコポリマーを基材に結合させることによって、ポリマー表面を調製すること)により調製することができる。
【0083】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマー及びコポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動重合(RAFT)、又は光イニファーター重合等の重合方法によって基材からグラフト化される。
【0084】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマー及びコポリマーは、コンジュゲーション方法、例えば、クリックケミストリー、DOPAコンジュゲーションケミストリー、又はチオール若しくはシランを介する自己集成した単分子層(SAM)によって基材にグラフト化される。
【0085】
N-オキシドポリマーの表面コーティングは、様々な基材(例えば、基材表面)に塗布することができる。特定の実施形態において、表面は、生体医療デバイスの全体又は一部である。代表的な生体医療デバイスは、カテーテル、耳ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜、神経誘導管、組織接着剤、X線ガイド、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフト、血管グラフト、ステント、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、コンタクトレンズ、人工靱帯及び腱、歯科インプラント、並びに再生組織工学用の組織スキャフォールドを含む。
【0086】
特定の実施形態において、デバイスはコンタクトレンズである。
【0087】
特定の実施形態において、表面は、粒子の全体又は一部である。代表的粒子には、金属、金属酸化物、セラミック、合成ポリマー、天然高分子、二酸化ケイ素、結晶及び半導体材料の粒子が含まれる。特定の実施形態において、粒子は、タンパク質(例えば、酵素)、又は核酸(例えば、DNA又はRNA)等の生体分子である。他の実施形態において、粒子は細胞である。
【0088】
特定の実施形態において、表面は、膜又はバイオ分離膜の全体又は一部である。代表的な膜としては、タンパク質精製、廃水処理、バイオリアクター、海水の脱塩、及び水/油精製に使用される膜を含む。
【0089】
特定の実施形態において、デバイスは海洋デバイスである。海洋デバイスの表面の全体又は一部は、ポリマーのN-オキシドコーティングでコーティングすることができる。代表的な海洋デバイスは、海洋船舶船体、海洋構造体、橋梁、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサー、魚網、ケーブル、チューブ/パイプ、コンテナ、膜、及びオイルフェンス等の海洋製品を含む。
【0090】
特定の実施形態において、表面は、遺伝子送達ビヒクル、RNA送達ビヒクル、又はタンパク質送達ビヒクル等の医薬送達ビヒクルすべてにあり、又はそれらすべてを形成する。
【0091】
特定の実施形態において、表面は、移植可能なセンサー又は皮下のセンサーの全体若しくは一部にあり、又はそれらの全体若しくは一部を形成する。
【0092】
特定の実施形態において、表面は、組織スキャフォールドの全体若しくは一部にあり、又はその全体若しくは一部を形成する。
【0093】
N-オキシドポリマーのバルク材料。本発明は、N-オキシドのポリマーのバルク材料を提供する。特定の実施形態において、バルク材料は、本明細書において記述される本発明のN-オキシドポリマー(オリゴマー)又はN-オキシドコポリマー(例えば、式(III)、(IV)、(V)、(VI)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(I)又は式(II)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0094】
特定の実施形態において、バルク材料は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー及び他の付加ポリマー等の1種若しくは複数の他のポリマーと、1種若しくは複数のN-オキシドポリマー又はコポリマーをブレンドすることにより得られる。
【0095】
他の実施形態において、バルク材料は、相互侵入N-オキシドポリマー網目構造、並びに、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー、及び他の付加ポリマー等の1種又は複数の他のポリマーを含む。
【0096】
N-オキシドポリマーの独立型材料。本発明は、N-オキシドポリマーの独立型材料を提供する。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のN-オキシドポリマー(オリゴマー)又はN-オキシドコポリマー(例えば、式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(I)又は式(II)のモノマー)を使用して重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0097】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマーの独立型材料は、非汚損性材料であり、高い機械的強度を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、独立型材料は、約30ng/cm2未満、約50ng/cm2未満又は約100ng/cm2未満のタンパク質吸着を有する非汚損性材料であり、約0.2MPaを超える、約0.5MPaを超える、又は約1.0MPaを超える引張/圧縮強さを有する。
【0098】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマーの独立型材料は、(a)シアノ基(C≡N)等の双極子間相互作用及び(b)水素供与体/受容体、例えば、アミド基(-(NH)-(C=O)-)、複数のアミド基((-(NH)-(C=O)-)n(n=1-5))、ウレタン基(-(NH)-(C=O)-O-)、複数のウレタン基((-(NH)-(C=O)-O-)n(n=1-5))、ウレア基(-(NH)-(C=O)-(NH)-)、複数のウレア基((-(NH)-(C=O)-(NH)-)n(n=1-5))、及びそれらの組み合わせの導入により強化されたN-オキシドポリマー網目構造である。これらの基は、N-オキシドモノマー及びN-オキシド(ランダム又はブロック)コポリマーに由来することができる。これらの基は、ポリマー骨格又はポリマーペンダント基中にあってもよい。
【0099】
N-オキシドポリマー網目構造は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブテン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、ポリ無水物、ポリエーテル、及び他の縮合/付加ポリマー等のN-オキシドモノマー又はN-オキシドポリマー中の骨格を用いて強化することができる。特定の実施形態において、N-オキシドポリマー網目構造は、上記のものの任意の組み合わせによって強化される。
【0100】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー、及び他の付加ポリマー等の他のポリマー又は複合体とコポリマーを形成することができる。ファイバー、粘土、ナノチューブ、及び他の無機の物体は、これらの材料の機械的性質を増強するために添加することができる。
【0101】
本発明のN-オキシドの独立型材料は、射出成形、ブロー成形、押し出し成形、カレンダー成形、流延、圧縮成形、プレバリケーション成形(prevarication molding)及び3D印刷等の様々な方法によって物体を成形することができる。
【0102】
本発明のN-オキシドの独立型材料は、カテーテル、耳ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜、神経誘導管、組織接着剤、X線ガイド、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフト、血管グラフト、ステント、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、コンタクトレンズ、人工靱帯及び腱、歯科インプラント、並びに再生組織工学用の組織スキャフォールド、薬物送達、遺伝子送達、RNA送達、タンパク質送達、海洋及びエンジニアリングデバイス/物体(例えば、膜、チューブ、パイプ、コンテナ又はプレート)等の生物医学/生物工学、消費者向け製品、エンジニアリング/海洋、治療/診断用途において使用することができる。
【0103】
特定の実施形態において、独立型材料は、海洋船舶船体、海洋構造体、橋梁、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサー、魚網、ケーブル、チューブ/パイプ、コンテナ、膜、及びオイルフェンス等の海洋製品において使用することができる。
【0104】
特定の実施形態において、独立型材料は生体材料にコンジュゲートすることができる。代表的な生体材料としては、核酸(例えば、遺伝子、DNA、RNA)、タンパク質(例えば、酵素、抗体又はその機能性フラグメント)、ペプチド、脂質、細胞又は微生物、中実のナノ粒子(酸化鉄、シリカ、量子ドット又は金ナノ粒子)が含まれ、又は、界面活性剤によって脱水から皮膚を保護するのに使用される。
【0105】
N-オキシドポリマーのヒドロゲル
本発明は、N-オキシドポリマーのヒドロゲルを提供する。特定の実施形態において、ヒドロゲルは、本明細書において記述される本発明の架橋したN-オキシドポリマー(オリゴマー)又はN-オキシドコポリマー(例えば、式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、ヒドロゲルは、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(I)又は式(II)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0106】
N-オキシドポリマーのヒドロゲルは、N-オキシドモノマー及び分解性又は非分解性のN-オキシド架橋剤を含む様々な架橋剤から作製することができる。N-オキシド星形ポリマーは、ヒドロゲルの形成により(例えば、クリックケミストリーによって)調製することができる。これらのヒドロゲルは、バルクヒドロゲル又はペレットヒドロゲルの形とすることができる。これらのヒドロゲルは、移植可能な材料及びカプセル形成を短縮するデバイスとして、様々な細胞(例えば、幹細胞、免疫細胞、小島、血小板及び心筋細胞)を保護、拡大、保持、識別する媒体として管理された方式で使用することができる。ペレット及び星形ヒドロゲルは、生物製剤(例えば、様々な細胞及び腫瘍ワクチン用の腫瘍)と共に注射可能であり得る。
【0107】
特定の実施形態において、N-オキシドヒドロゲルは、1種又は複数の架橋剤を使用して1種又は複数のN-オキシドモノマー(例えば、式(I)又は式(II)のモノマー)から調製される架橋したヒドロゲルである。
【0108】
これらの実施形態の幾つかにおいて、架橋剤はN-オキシド系架橋剤である。代表的なN-オキシド架橋剤は、式(VII):
【0109】
【0110】
[式中、
R1は、H、-(CH2)x-CH3(x= 0-4)、及びCNから独立して選択され;
xは1~200の整数であり;
YはO又はNHであり;
Dは、nが1~20の整数である-C(=O)(CH2)n-又は-(CH2)n-である]
のものを含む。
【0111】
これらの実施形態の他のものにおいて、架橋剤は、カルボキシベタイン、スルホベタイン、又はホスホベタイン部分を含む多官能性双性イオンの架橋剤である。
【0112】
これらの実施形態において更に、架橋剤は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、ポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレート若しくはジアクリルアミド、又はPEGジメタクリレート若しくはジメタクリルアミド等の多官能性架橋剤である。
【0113】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは、二官能性N-オキシド架橋剤を使用して調製される。他の実施形態において、ヒドロゲルは、分解性又は非分解性の架橋剤を使用して調製される。更なる実施形態において、ヒドロゲルは、分解性、双性イオンのジスルフィド架橋剤を使用して調製される。他の実施形態において、ヒドロゲルは、酵素又は適切な試剤によって分解することができるペプチド系架橋剤を使用して調製される。
【0114】
本発明のN-オキシドヒドロゲルは、熱、光又はレドックス等の遊離ラジカルを媒介とした重合技法によって調製することができる。
【0115】
本発明の代表的なN-オキシドヒドロゲルの調製は、実施例3に述べられている。代表的なN-オキシドヒドロゲルへのタンパク質吸着及び細胞接着は、実施例4に述べられている。
【0116】
本発明のN-オキシドヒドロゲルは、バイオセンサー及び生体医療デバイス、血管グラフト、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、細胞保存/増殖/分化、薬物送達プラットフォーム、船の船体、海洋構造体/設備、及び生理学的環境と接触する他の材料及びデバイスに使用することができる。
【0117】
特定の実施形態において、N-オキシドヒドロゲルは星形ヒドロゲルである。星形ヒドロゲルは、コア、及び、コアに共有結合された複数のN-オキシド系又は双性イオンの分岐を有するポリマーから調製することができる。代表的なコアは、3、4、5個又はそれ以上の分岐を有する星の形状の小分子、オリゴマー又はポリマーが含まれる。
【0118】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは、選択的に分解することができる(すなわち、特異的な条件下で)分解性の架橋剤によって架橋される。分解性架橋剤は、ペプチド架橋剤、多糖架橋剤、無水物架橋剤、ジスルフィド架橋剤及びポリエステル架橋剤から選択することができる。これらの実施形態の幾つかに関して、ヒドロゲルは酵素によって加水分解又は消化することができる。
【0119】
特定の実施形態において、星形ヒドロゲル分岐ポリマーは、分岐の終端部(例えば、複数のN-オキシド又は双性イオンの分岐の終端部)に結合された末端官能基を含む。代表的な末端官能基としては、OH、NH、NH2、SH、N3、CH=CH2、C≡CH、COOH、CHO、イミドエステル、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、アリールアジド、ジアジリン、マレイミド、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン-2-チオン、ピリジルジスルフィド、ジフッ素化シクロオクチン、Staudinger試薬対、イソシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、スルフヒドリル、ヒドラジン、ヒドロキシメチルホスフィン、スルホ-NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、スルホニルアジド及び5H-ジベンズ[b,f]アゼピンが含まれる。
【0120】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは、1種又は複数の第2のポリマー/コポリマー(第2の星形ヒドロゲル)に結合された第1のポリマー/コポリマー(第1の星形ヒドロゲル)を含む。ヒドロゲルは、注射可能なヒドロゲルとして使用することができる。これらの実施形態の幾つかにおいて、第1のポリマーは、末端官能基によって1種又は複数の第2のポリマーに結合される。
【0121】
星形ヒドロゲルは、双性イオンのヒドロゲルと組み合わせ、特定のテンプレートの様々な大きさのペレットとして、又は機械式縮小(例えば、ブレンダー)によって形成することができる。これらのペレットヒドロゲルは、生物学的な中味の有無によらず、注射可能なヒドロゲルとして使用することができる。
【0122】
本発明のN-オキシド星形ヒドロゲルは、(a)ATRP、RAFT、ROP、縮合、マイケル付加、分岐生成/成長反応によってN-オキシド又は双性イオンの分岐を合成する工程、及び(b)N-オキシド又は双性イオンの分岐をコアと反応させて星形ポリマーを生成する工程により製造することができる。特定の実施形態において、方法は、N-オキシド又は双性イオンの分岐の終端部を「クリック」反応、チオール交換反応又は還元反応によって官能化する工程を更に含む。
【0123】
特定の実施形態において、N-オキシドヒドロゲルはミクロゲルである。本発明のミクロゲルは、N-オキシド系モノマーから構成され任意の架橋化学に支援された約1ミクロン(10-6m)~1mm(10-2m)の間の寸法を有するミクロン規模の架橋したヒドロゲルである。
【0124】
本発明のミクロゲルは、官能化N-オキシドモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用して、様々な方法によって調製することができ、ここで:
(a)アジドとアルキン、アジドとアルケン、チオールとマレイミド、チオールとアルケン、チオールとジスルフィドから選択される反応性対の1つ、又は、他の「クリック」、生体直交型若しくは他の反応性対は;
(b)ポリマー構造体の終点に、又は骨格に沿って配置され;
(c)外科用途、治療用途、創傷治癒用途、薬物送達製剤、細胞保存及び貯蔵、又は再生医療のためのペプチド、核酸、タンパク質、抗体、ナノ粒子、ミクロ粒子、ミセル、リポソーム、ポリマーソーム、薬物、薬物前駆体、又は他の治療剤種又は薬物送達形式を統合する。
【0125】
特定の実施形態において、ミクロゲルは、N-オキシドモノマー若しくはポリマーと、他の種類のイオン性若しくは非イオン性の非汚損性モノマー若しくはポリマーとの、又はN-オキシド系ポリマーのコポリマーと、他の種類のイオン性若しくは非イオン性モノマーとの混合物を含む。
【0126】
ミクロゲルについては、架橋は、物理的及び/又は化学的機構の任意の組み合わせを使用して達成され、特定の実施形態において、次のものを含む:
(a)ラジカル媒介反応によってモノマーと共重合された、任意の構造の化学架橋剤であって、2個以上のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、マレイミド若しくは同様の反応性基を末端に有する、ポリエチレングリコール(PEG)、オリゴエチレングリコール(OEG)又は他の構造若しくは基に基づく市販の架橋剤、或いは、任意の官能性、反応性又は分解性基を組み込んだカスタム合成された架橋剤を含む。任意選択の分解性基は、ジスルフィド結合、エステル、無水物、酵素で開裂可能なペプチド(GPQGIWCGモチーフ等の)、又は外部刺激に応答する化学物質から選択されてもよい;
(b)主なポリマー鎖又は構成様式中、の官能基としてであろうと又は別々の架橋分子としてであろうとその介在物による、アジド/アルキン(SPAACを含む)及びチオールエン化学物質等の生体直交型の架橋化学物質及び「クリック」化学物質;
(c)イオン性相互作用、水素結合、疎水的相互作用、天然若しくは合成起原の生体分子若しくはナノ粒子との相互作用、又は他の任意の可逆的若しくは非可逆的な物理的相互作用を含む任意の型の物理的相互作用;及び
(d)上に言及した架橋機構の任意の組み合わせ。
【0127】
特定の実施形態において、ミクロゲルは、1種若しくは複数のN-オキシド部分又はこれらの分子の混合物を組み込んだ、二官能性N-オキシド架橋分子、オリゴマー又はポリマーを使用して調製される。
【0128】
特定の実施形態において、ミクロゲルは、1種若しくは複数の双性イオン部分又はこれらの分子の混合物を組み込んだ双性イオン(カルボキシベタイン、スルホベタイン又はホスホベタイン)の架橋分子、オリゴマー又はポリマーを使用して調製される。これらの架橋剤は、ジスルフィド結合、エステル又は刺激応答基又は分解性ペプチド等の分解性基を組み込んでいてもよい。
【0129】
特定の実施形態において、本発明は、上記の2種以上の集成されたミクロゲルから形成される材料であって、それぞれ個別のミクロゲル間の相互作用が、独特の性質を有するバルク材料をもたらす、材料を提供する。これらの材料は、小分子薬物、ペプチド、生体分子、ナノ粒子、細胞又は組織等の他の成分を含むことができる。
【0130】
特定の実施形態において、上記のミクロゲル及び集成体は、重合方法、例えば、マイクロエマルジョン重合の結果として有限の寸法を有するミクロゲルから作製される。
【0131】
他の実施形態において、ミクロゲルは、上記の(バルク)ヒドロゲル又は上記の星形ヒドロゲルに由来し、ヒドロゲルを有限の大きさの個別の単位に粉砕し、押し出し、刻み、切断し、又はペレットにする任意の処理工程を使用して、重合の後の有限の寸法に更に大きさを整える。
【0132】
上記のミクロゲル及び集成体は、貯蔵、輸送、使用又は殺菌のために、乾燥又は凍結乾燥(凍結・乾燥)して脱水粉末にすることができる。ミクロゲル粉末は、水、食塩水又はイオン溶液、細胞を含有する又は含有しない細胞増殖又は保存培地、又は、治療薬物、治療剤タンパク質、治療薬核酸、細胞、ナノ粒子又はミクロ粒子を含んでいてもよい他の生理学上適切な溶液を含む任意の水性流体で再水和することができる。
【0133】
N-オキシド星形ヒドロゲル及びミクロゲル及びそれらの集成体、並びに/又は完全若しくは部分的に乾燥された、若しくはこれらの再水和組成物は、次の使用を有する:
(a)非ニュートン挙動を有する材料(例えば、粘弾性、レオペクチック、チキソトロピー、ずり粘稠化(ダイラタント)、ずり流動化(擬塑性)、及び/又はビンガム塑性の性質を示す);
(b)損傷又は外部刺激の後に損傷を修復するか、又はそれらの性質を回復することができる、自己修復材料及び/又は形状記憶材料、又は同様の種類の「スマート」材料;及び
(c)例えば、海洋用途、薬物送達プラットフォーム、バイオセンサー、及び他の医療デバイス、血管グラフト、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、及び、生理的環境と接触する他の材料及びデバイスのための、非特異タンパク質又は他の生体分子の吸着を防止する、防汚材料又は表面コーティング。
【0134】
N-オキシド星形ヒドロゲル及びミクロゲル、及びそれらの集成体は、以下のように、生物医学的用途の注射可能又は拡張可能な材料として、特に非ニュートン液体特性及び高い生物学的適合性を要求する用途で使用することができる:
(a)美容又は再建手術において使用されるもの、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、注射可能なガラス状物質、人工軟骨、人工油脂、コラーゲン擬態物、及び他の軟繊維擬態物又は支持体等の、機械式支持ができる注射可能又は拡張可能な材料;
(b)特に非特異的相互作用が回避されなければならない場合、又は、非特異的/特異的相互作用の所望のバランスが達成されなければならない場合に、表面又は組織との望ましい又は特異的な生物学的相互作用を有する注射可能又は拡張可能な材料;及び
(c)外科用途、治療用途、創傷治癒、及び薬物送達製剤のための薬物、生体分子(例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、多糖)、細胞(例えば、膵島、心血管細胞、幹細胞、T細胞、血液細胞)、ナノ粒子又はミクロ粒子(例えば、PLGA/薬物製剤)、ミセル、リポソーム、ポリマーソーム、又は他の治療薬種若しくは薬物送達形式を送達及び/又は保護又は遮蔽する注射可能又は拡張可能な担体。
【0135】
N-オキシド星形ヒドロゲル及びミクロゲル、並びにそれらの集成体は、細胞及び組織の成長、保守又は増殖のためのスキャフォールド、マトリックス、又は基材として使用することができ、ここで、細胞及びミクロゲル構築物は、任意の培養方法又は任意の型のバイオリアクターを含む器具を使用して成長させることができ、以下を含む血統に由来することができる:
(a)以下を含む多能性及び多能な幹細胞及び始原細胞:
(i)胚性幹細胞(ESC)、組織由来の幹細胞(例えば、皮膚、血液又は眼から)、臍帯血又は骨髄に由来又は精製した造血幹細胞及び始原細胞(HSPC)、間葉系幹細胞、又は人工多能性幹細胞(iPSC)、
(ii)遺伝子組み換え又はトランスフェクトされた幹細胞及び始原細胞、並びに
(iii)癌幹細胞(CSC);
(b)赤血球(赤血球(erythrocytes))、白血球(白血球(leukocytes))及び血小板(血小板(thrombocytes))を含む、一般にヒト血液中に循環する造血性細胞;
(c)以下を含む、免疫細胞、及びその先祖又は識別された血統:
(i)特に未処理の細胞傷害性リンパ球(CTL)、及び中枢記憶T細胞を含むその識別又は活性化した血統を含む、CD8表面糖タンパク質を発現するT細胞、
(ii)特に、TH1、TH2、TH9、TH17、TFH、Treg及び中枢記憶(TCM)T細胞を含む、未処理のヘルパーTリンパ球及びその識別又は活性化した血統を含む、CD4表面糖タンパク質を発現するT細胞
(iii)任意の供給源からの調節性T細胞(TREG)、天然のTreg又は誘導されたTregのいずれか、
(iv)ナチュラルキラーT(NKT)細胞、
(v)キメラの抗原受容体T細胞(CAR-T)、
(vi)遺伝子組み換えのT細胞;
(d)B細胞、樹状細胞、及び他の抗原提示細胞(APC)又は特に上に列挙されない免疫細胞;
(e)糖尿病の治療及び管理に役立つ膵島又は他のインスリン産生細胞及びβ細胞;
(f)神経系細胞及び先祖;
(g)心血管系細胞及び先祖;並びに
(h)免疫療法、再生医療、血液の疾病又は悪性腫瘍、又は癌ワクチン又は治療の分野で役立つ細胞。
【0136】
N-オキシド星形ヒドロゲル及びミクロゲル、並びにそれらの集成体は、特に全血又は保存溶液中で室温又は低温で長期の期間、DMSO、グリセリン、グリシンベタイン又は他のオスモライト又は凍結防止剤の存在下であるかどうかにかかわらず、従来の方法を用いては保存するのが難しい血液細胞(例えば、血小板及び赤血球)等の細胞タイプのための、臨床用又は軍事用に細胞又は組織を保存するか、又はそれらの生物学的な機能を保持する任意の方法のための、生物学的適合材料、スキャフォールド、製剤成分又は接触材料として使用することができる。
【0137】
代表的なN-オキシドポリマーのペレットミクロゲルを使用する血小板の保存は、実施例5に述べられている。
【0138】
N-オキシド星形ヒドロゲル及びミクロゲル、並びにそれらの集成体は、物体、デバイス及び構成要素、例えば、移植可能なバイオセンサー;創傷ケアデバイス、のり及びシーラント、コンタクトレンズ;歯科インプラント;人工関節、人工骨、人工靱帯及び人工腱等の整形外科デバイス;カテーテル、人工弁、人工血管、人工ステント、LVAD又はリズム管理装置等の心血管デバイス;栄養管、消化管クリップ、胃腸スリーブ又は胃のバルーン等の消化器科デバイス;移植可能な避妊具又は膣スリング等のOB/Gynデバイス;吻合部結合子又は皮下ポート等の腎臓科デバイス;神経誘導管、脳脊髄液ドレーン又はシャント等の脳神経外科デバイス、皮膚修復デバイス等の皮膚科デバイス、シャント等の眼科デバイス、ステント、人工内耳、チューブ、シャント又は拡大器等の耳鼻咽喉科デバイス、眼内レンズ;乳房インプラント、鼻インプラント及び頬インプラント等の審美的インプラント;神経刺激デバイス、人工内耳及び神経管渠等の神経インプラント;血糖センサー及びインスリンポンプ等のホルモン制御インプラント;移植されたバイオセンサー;アクセスポートデバイス;及び、COPD又は人工肺の管理用の弁等の組織スキャフォールドの肺のデバイス;放射線不透過又は音波不透過なマーカ-等の放射線科デバイス;又はカテーテル若しくは人工尿道等の泌尿器科デバイスに使用することができる。
【0139】
他の態様において、本発明は、N-オキシド星形ヒドロゲル又はミクロゲルでコーティングされた基材又はミクロゲル集成体を提供する。代表的な基材は、物体、デバイス及び構成要素、例えば、移植可能なバイオセンサー;創傷ケアデバイス、のり及びシーラント、コンタクトレンズ;歯科インプラント;人工関節、人工骨、人工靱帯及び人工腱等の整形外科デバイス;カテーテル、人工弁、人工血管、人工ステント、LVAD又はリズム管理装置等の心血管デバイス;栄養管、消化管クリップ、胃腸スリーブ又は胃のバルーン等の消化器科デバイス;移植可能な避妊具又は膣スリング等のOB/Gynデバイス;吻合部結合子又は皮下ポート等の腎臓科デバイス;神経誘導管、脳脊髄液ドレーン又はシャント等の脳神経外科デバイス、皮膚修復デバイス等の皮膚科デバイス、シャント等の眼科デバイス、ステント、人工内耳、チューブ、シャント又は拡大器等の耳鼻咽喉科デバイス、眼内レンズ;乳房インプラント、鼻インプラント及び頬インプラント等の審美的インプラント;神経刺激デバイス、人工内耳及び神経管渠等の神経インプラント;血糖センサー及びインスリンポンプ等のホルモン制御インプラント;移植されたバイオセンサー;アクセスポートデバイス;及び、COPD又は人工肺の管理用の弁等の組織スキャフォールドの肺のデバイス;放射線不透過又は音波不透過なマーカ-等の放射線科デバイス;又はカテーテル若しくは人工尿道等の泌尿器科デバイスに使用することができる。
【0140】
N-オキシドポリマーのナノ粒子及びミクロ粒子
別の態様において、本発明は本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーを含むナノ粒子及びミクロ粒子を提供する。本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーは、ナノゲル、ミクロゲル、ミセル、リポソーム及びポリマーソームの形のナノ粒子及びミクロ粒子を形成するのに使用することができる。また、それらは、治療又は診断用の量子ドット、酸化鉄、シリカ及び金等の中実の粒子をコーティングするために使用することができる。本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーは、共有結合並びに非共有結合によるナノ粒子及びミクロ粒子に関係し得る。
【0141】
特定の実施形態において、ナノスケールの寸法を有する粒子が提供される。粒子は、複数のN-オキシドポリマー又はコポリマーを有する表面であって、そこにグラフト化され、又はそこからグラフト化された表面を有するコアを有する。代表的な粒子コアとしては、金属、金属酸化物、セラミック、合成高分子、天然高分子、結晶、半導体材料、グラフェン、グラフェンオキシド、酸化鉄、シリカ、量子ドット、ヒドロゲル、リポソーム、ミセル、炭素系材料又は生体分子が含まれる。
【0142】
N-オキシドポリマー及びコポリマーコンジュゲート
更なる態様において、本発明は、N-オキシドポリマー及びコポリマーコンジュゲートを提供する。N-オキシドポリマーは、生体分子(例えば、タンパク質/ペプチド、核酸及び糖)、他の巨大分子、及び細胞にグラフトトゥー法又はグラフトフロム法によって結合して様々なコンジュゲートを生成することができる。
【0143】
特定の実施形態において、N-オキシドポリマーコンジュゲート又はコポリマーコンジュゲートは、生体分子に結合された1種又は複数のN-オキシドポリマーを含むN-オキシドポリマーバイオコンジュゲートである。適切な生体分子としては、タンパク質、核酸、糖タンパク質、プロテオグリカン及び脂質が含まれる。適切な生体分子は、小分子治療剤(すなわち、約1000g/モル未満、好ましくは約800g/モル未満の分子量を有する炭素系治療剤)を含む。
【0144】
代表的なタンパク質としては、酵素、シグナル伝達タンパク質、止血及び血栓タンパク質、ワクチン、補体系タンパク質、及び抗体、それらの機能性フラグメント又は特徴的な部分が含まれる。代表的なシグナル伝達タンパク質としては、ホルモン、サイトカイン、調節タンパク質、インスリン、及びPD-1/PD-L1/2阻害薬が含まれる。
【0145】
他の実施形態において、N-オキシドポリマーコンジュゲート又はコポリマーコンジュゲートは、細胞、ウィルス又は細菌に結合された1種又は複数のN-オキシドポリマーを含むN-オキシドポリマー又はコポリマーバイオコンジュゲートである。
【0146】
N-オキシドポリマーコンジュゲート又はコポリマーコンジュゲートは、送達ビヒクルであってもよい。代表的な送達ビヒクルとしては、治療又は診断用途のためのミセル、リポソーム又はポリマーソームが含まれる。
【0147】
特定の実施形態において、本発明は、1種若しくは複数のN-オキシドポリマー又はコポリマーを含む本発明のコポリマー又はコンジュゲートされた脂質から自己集成したミセル、リポソーム、ポリマーソーム又は粒子を提供する。
【0148】
更なる実施形態において、本発明は、N-オキシドポリマー又はコポリマーコンジュゲート、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明のN-オキシドポリマー及びコポリマーは、担体又は希釈剤として組成物に使用することができる。
【0149】
代表的なN-オキシドポリマータンパク質コンジュゲートの調製は、実施例6に述べられている。代表的なN-オキシドポリマータンパク質コンジュゲートの免疫原性は、実施例7に述べられている。
【0150】
N-オキシドポリマーのナノゲル及びナノケージ
別の態様において、本発明は、N-オキシドポリマーナノゲル及びナノケージを提供する。N-オキシドポリマーは、1種又は複数の他の種を化学的に取り込むナノゲル、及び1種又は複数の他の種を物理的に取り込むナノケージを得るために使用することができる。
【0151】
特定の実施形態において、本発明は、1種若しくは複数のN-オキシドポリマー又は1種若しくは複数のN-オキシドコポリマーを含む、カーゴを化学的に封入するためのナノゲルを提供する。
【0152】
他の実施形態において、本発明は、1種若しくは複数のN-オキシドポリマー又は1種若しくは複数のN-オキシドコポリマーを含む、カーゴを物理的に封入するためのナノケージを提供する。
【0153】
ナノゲルによって化学的に取り込まれるか、又はナノケージによって物理的に取り込まれる適切なカーゴ(例えば、種)としては、タンパク質、脂質、糖タンパク質、細胞、ウィルス、細菌、及び小分子(例えば、約1000g/モル未満、好ましくは800g/モルの分子量を有する治療剤)、又は本明細書において記述される他の生体分子等の生体分子が含まれる。
【0154】
特定の実施形態において、ナノゲル又はナノケージは、N-オキシドポリマー又はコポリマー及び1種又は複数の治療剤を含む。
【0155】
他の実施形態において、ナノゲル又はナノケージは、N-オキシドポリマー又はコポリマー及び1種又は複数の診断用薬剤を含む。
【0156】
更なる実施形態において、ナノゲル又はナノケージは、N-オキシドポリマー又はコポリマー、1種又は複数の治療剤、及び1種又は複数の診断用薬剤を含む。
【0157】
タンパク質封入のための代表的なN-オキシドポリマーナノケージの調製は、実施例8に述べられている。代表的なN-オキシドポリマーナノケージのタンパク質安定化は、実施例9に述べられ、
図7に図示されている。代表的なN-オキシドポリマーナノケージを有するタンパク質の薬物動態は、実施例10に述べられ、
図8に図示されている。
【0158】
エクトインモノマー、ポリマー、コポリマー、及びそれらの使用
エクトイン(1,4,5,6-テトラヒドロ-2-メチル-4-ピリミジンカルボン酸)は、1個の二重結合以外のすべてが水素化されたピリミジン誘導体である。この分子の重要な特徴は、永久双性イオン構造をもたらす、N-C-N基中の非局在化π結合である。本明細書において記述されるように、エクトインのこの双性イオンの性質は、双性イオンの材料を製造するために開発することができる。本明細書において記述されるように、エクトインモノマーは、標準重合条件の下で容易に重合されてポリ(エクトイン)を形成することができる。これらのポリマーは、直鎖状、分岐であっても、又は架橋していてもよく、非特異性の生物汚損に耐えることができ、異なる方式で強力な水和を提供することができる。
【0159】
エクトインモノマー、ポリマー、コポリマー、及びそれらの使用
本発明は、エクトインモノマー、エクトインポリマー及びコポリマー、エクトインモノマー、ポリマー及びコポリマーを製造する方法、エクトインポリマー及びコポリマーを含む組成物及び材料、並びにエクトインポリマー及びエクトインコポリマーを使用する方法を提供する。
【0160】
本明細書において記述されるように、エクトインモノマーは、標準重合条件の下で容易に重合されてエクトインポリマー及びコポリマーを生成することができる。
【0161】
一態様において、本発明は、重合性エクトインモノマー及びその前駆体を提供する。
【0162】
特定の実施形態において、エクトインモノマーは、式(VIIIA)を有し、エクトインモノマー前駆体は式(VIIIB)
【0163】
【0164】
[式中、
Aは、H、F、Cl、Br、I、SH、NH2、N=C=O、N=C=S、COOH、COSH、C(=S)SH、OCOOH、OCOSH、OC(=S)OH、SC(=O)SH、SC(=S)SH、N(C=O)NH2、N(C=NH)NH2、N(C=S)NH2、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、CH2=CH-C(=O)-O-、CH2=CH-C(=O)-NH-、CH2=CH-C(=O)-S-から独立して選択され;
Gは、H、F、Cl、Br、I、OH、SH、NH2、N=C=O、N=C=S、COOH、COSH、C(=S)SH、OCOOH、OCOSH、OC(=S)OH、SC(=O)SH、SC(=S)SH、N(C=O)NH2、N(C=NH)NH2、N(C=S)NH2、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、CH2=CH-C(=O)-O-、CH2=CH-C(=O)-NH-、CH2=CH-C(=O)-S-から独立して選択され;又は存在せず
B及びFは、-(CH2)x-(式中、xは0~20の整数である)から独立して選択され;
CはCH又はNであり;
Dは、-C(=O)(CH2)xC(=O)-、-C(=O)-及び-(CH2)x-(式中、xは0~20の整数である)から選択され;
EはO又はNであり;
Xは、O、S又はNであり;
Iは、H又は-(CH2)xCH3(式中、xは0~20の整数である)であり;
nは1~5の整数であり;
Rは、水素、C1~C20アルキル、C6~C12アリール、環状アルキル基(例えば、イソボルニル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、及びフルオロアルキル(例えば、ペルフルオロブチル、ペルフルオロエチル)からなる群から選択される]
を有する。
【0165】
本発明のポリマー及びコポリマーを製造するのに役立つ代表的なエクトインモノマーの調製は、実施例11に述べられている。
【0166】
エクトインポリマー及びコポリマー。他の態様において、本発明は、本明細書において記述されるような、エクトイン又はエクトイン前駆体繰り返し単位を含む、エクトインモノマー及びエクトイン前駆体から調製されるエクトインポリマーを提供する。
【0167】
本発明のエクトインポリマー及びコポリマーは、式(VIIIA)及び式(VIIIB)のモノマーから調製されるポリマー及びコポリマーを含む。ポリマーは、(a)式(VIIIA)のモノマー又は(b)式(VIIIB)のモノマーの重合によって形成することができる。コポリマーは、(a)式(VIIIA)のモノマーと、式(VIIIA)のモノマーとの共重合に適している第2のコモノマーとの共重合、(b)式(VIIIB)のモノマーと、式(VIIIB)のモノマーとの共重合に適している第2のコモノマーとの共重合及び(c)(a)式(VIIIA)のモノマーと、式(VIIIA)のモノマーとの共重合に適している式(VIIIB)のモノマーとの共重合によって調製することができる。
【0168】
代表的なエクトインポリマー及びエクトイン前駆体ポリマーは、それぞれ式(IXA)及び式(IXB):
【0169】
【0170】
[式中、
Dは、-C(=O)(CH2)xC(=O)-、-C(=O)-、-(CH2)x-(式中、xは0~20の整数である)から選択され;
EはO又はNであり;
Xは、O、S又はNであり;
Iは、H又は-(CH2)xCH3(式中、xは0~20の整数である)であり;
iは2~約10,000の整数であり;
nは1~5の整数であり;
R1は、H、C1~C6アルキル、CN及びNO2から選択され;
Rは、水素、C1~C20アルキル、C6~C12アリール、環状アルキル基(例えば、イソボルニル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、フルオロアルキル(例えば、ペルフルオロブチル、ペルフルオロエチル)からなる群から選択される]
の繰り返し単位を有する。
【0171】
特定の実施形態において、エクトイン/エクトイン前駆体ポリマー又はコポリマーは、架橋したエクトイン/エクトイン前駆体ポリマー又はコポリマーである。特定の実施形態において、架橋したエクトイン/エクトイン前駆体ポリマー又はコポリマーは、エクトインモノマー又はエクトイン前駆体モノマーの、エクトイン架橋剤又はエクトイン前駆体架橋剤との共重合によって調製される。代表的なエクトイン架橋剤及びエクトイン前駆体架橋剤は、式(XA)及び式(XB):
【0172】
【0173】
[式中、
R1は、H、C1~C5アルキル及びCNから独立して選択され;
xは、それぞれの出現において、1~5の整数から独立して選択され;
Dは、-C(=O)(CH2)xC(=O)-、-C(=O)-及び-(CH2)x-(式中、xは0~20の整数である)から選択され;
EはO又はNであり;
Xは、O、S又はNであり;
Iは、H又は(CH2)x CH3(式中、xは0~20の整数である)であり;
nは1~5の整数であり;
Rは、水素、C1~C20アルキル、C6~C12アリール、環状アルキル基(例えば、イソボルニル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、及びフルオロアルキル(例えば、ペルフルオロブチル、ペルフルオロエチル)からなる群から選択される]
をそれぞれ有する。
【0174】
エクトインポリマーの表面コーティング、バルク材料、及び独立型材料
他の態様において、本発明は、エクトインポリマーの表面コーティング、バルク材料、及び独立型材料を提供する。特定の実施形態において、エクトインポリマーの表面コーティング、バルク材料、及び独立型材料は、エクトインモノマー、並びにエクトインモノマーから調製されたポリマー及びコポリマーから調製される。
【0175】
エクトインポリマーは、「グラフトフロム」法又は「グラフトトゥー」法によって表面(例えば、医療デバイス、センサー、膜、船及び海洋構造体)に結合させて表面を非汚損性にすることができる。エクトインポリマーはまた、バルク材料(例えば、シリコーン)とブレンドし、又はバルク材料に混ぜ込むことができる。表面コーティングは、平坦な表面又はナノ/ミクロ粒子にあってもよい。エクトインポリマーはまた、(i)シリコーン、フッ素化、ウレタン、イミド、アミド等の独特の骨格、(ii)複数の水素結合等の強力な相互作用、及び(iii)相互侵入網目構造によって医療及び海洋用途のための独立型の低汚損性及び高強度の材料及びデバイスに調製することができる。
【0176】
エクトインポリマーの表面コーティング。本発明は、エクトインポリマーの表面コーティングを提供する。特定の実施形態において、表面コーティングは、本明細書において記述される本発明のエクトインポリマー(オリゴマー)又はエクトインコポリマー(例えば、式(IXA)又は式(IXB)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、コーティングは、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0177】
エクトインポリマー及びコポリマーでコーティングされた表面は非汚損性を有する。表面の非汚損性は、フィブリノーゲン吸着及び細胞接着によって評価することができる。特定の実施形態において、本発明の表面は、約200ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は約100ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。更なる実施形態において、本発明の表面は、約50ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は、約30ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。更なる実施形態において、本発明の表面は、約20ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。他の実施形態において、本発明の表面は、約10ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。特定の実施形態において、本発明の表面は、約5ng/cm2未満のフィブリノーゲン吸着を有する。
【0178】
特定の実施形態において、表面は、エクトインアクリレート、エクトインアクリルアミド、エクトインメタクリレート、エクトインメタクリルアミド、エクトインビニル化合物、エクトインエポキシド及びそれらの混合物からなるがこれらに限定されない重合性基から選択される1種又は複数のエクトインモノマーから調製されたエクトインポリマー又はコポリマーでコーティングされる。代表的なエクトインモノマーは、式(VIIIA)及び式(VIIIB)のエクトインモノマーを含む、本明細書において記述されるものを含む。
【0179】
特定の実施形態において、エクトインポリマー又はコポリマーは、ポリ(エクトイン)を含む、ランダム、マルチブロック又は超分岐コポリマーである。他の実施形態において、エクトインポリマー又はコポリマーは、相互侵入エクトインポリマー網目構造である。
【0180】
特定の実施形態において、エクトインポリマー又はコポリマーは、表面接着基(例えば、DOPA、チオール、シラン、クリックケミストリー、疎水性、親水性及び帯電基)を有する。
【0181】
エクトインポリマー及びコポリマーでコーティングされた表面は、共有結合の相互作用、物理的な疎水性-疎水性、電荷-電荷、ヒドロゲル結合相互作用、又は化学的及び物理的相互作用のそれらの組み合わせによって、エクトインポリマー又はコポリマーを基材表面に結合させることにより調製することができる。
【0182】
エクトインポリマー又はコポリマーでコーティングされた表面は、基材表面からエクトインポリマーをグラフト化すること(「グラフトフロム」)(例えば、基材の存在下で適切なモノマーを重合させることによってポリマー又はコポリマーを形成することによるポリマー表面の調製)により調製することができ、又は、基材表面へN-オキシドポリマーをグラフト化すること(「グラフトトゥー」)(例えば、予備形成されたポリマー又はコポリマーを基材に結合させることによってポリマー表面を調製すること)により調製することができる。
【0183】
特定の実施形態において、エクトインポリマー及びコポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動重合(RAFT)、又は光イニファーター重合等の重合方法によって基材からグラフト化される。
【0184】
特定の実施形態において、エクトインポリマー及びコポリマーは、コンジュゲーション方法、例えば、クリックケミストリー、DOPAコンジュゲーションケミストリー、又はチオール若しくはシランを介する自己集成した単分子層(SAM)によって基材にグラフト化される。
【0185】
エクトインポリマーの表面コーティングは、様々な基材(例えば、基材表面)に適用することができる。特定の実施形態において、表面は、生体医療デバイスの全体又は一部である。代表的な生体医療デバイスは、カテーテル、耳ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜、神経誘導管、組織接着剤、X線ガイド、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフト、血管グラフト、ステント、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、コンタクトレンズ、人工靱帯及び腱、歯科インプラント、並びに再生組織工学用の組織スキャフォールドを含む。
【0186】
特定の実施形態において、デバイスはコンタクトレンズである。
【0187】
特定の実施形態において、表面は、粒子の全体又は一部である。代表的な粒子としては、金属、金属酸化物、セラミック、合成高分子、天然高分子、二酸化ケイ素、結晶及び半導体材料の粒子が含まれる。特定の実施形態において、粒子は、タンパク質(例えば、酵素)又は核酸(例えば、DNA又はRNA)等の生体分子である。他の実施形態において、粒子は細胞である。
【0188】
特定の実施形態において、表面は、膜又はバイオ分離膜の全体又は一部である。代表的な膜は、タンパク質精製、廃水処理、バイオリアクター、海水の脱塩、及び水/油の精製に使用される膜を含む。
【0189】
特定の実施形態において、デバイスは海洋デバイスである。海洋デバイスの表面の全体又は一部は、ポリマーエクトインのコーティングでコーティングすることができる。代表的な海洋デバイスは、海洋船舶船体、海洋構造体、橋梁、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサー、魚網、ケーブル、チューブ/パイプ、コンテナ、膜及びオイルフェンス等の海洋製品を含む。
【0190】
特定の実施形態において、表面は、遺伝子送達ビヒクル、RNA送達ビヒクル、又はタンパク質送達ビヒクル等の薬物送達ビヒクルの全体若しくは一部にあり、又はその全体若しくは一部を形成する。
【0191】
特定の実施形態において、表面は、移植可能な又は皮下のセンサーの全体若しくは一部にあり、又はその全体若しくは一部を形成する。
【0192】
特定の実施形態において、表面は、組織スキャフォールドの全体若しくは一部にあり、又はその全体若しくは一部を形成する。
【0193】
エクトインポリマーのバルク材料。本発明は、エクトインポリマーのバルク材料を提供する。特定の実施形態において、バルク材料は、本明細書において記述される本発明のエクトインポリマー(オリゴマー)又はエクトインコポリマー(例えば、式(IXA)又は式(IXB)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0194】
特定の実施形態において、バルク材料は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー及び他の付加ポリマー等の1種若しくは複数の他のポリマーと、1種若しくは複数のエクトインポリマー又はコポリマーをブレンドすることにより得られる。
【0195】
他の実施形態において、バルク材料は、相互侵入エクトインポリマー網目構造、並びにポリエステルポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー、及び他の付加ポリマー等の1種又は複数の他のポリマーを含む。
【0196】
エクトインポリマーの独立型材料。本発明は、エクトインポリマーの独立型材料を提供する。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のエクトインポリマー(オリゴマー)又はエクトインコポリマー(例えば、式(IXA)又は式(IXB)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、材料は、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0197】
特定の実施形態において、エクトインポリマーの独立型材料は、非汚損性材料であり、高い機械的強度を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、独立型材料は、約30ng/cm2未満、約50ng/cm2未満、又は約100ng/cm2未満のタンパク質吸着を有する非汚損性材料であり、約0.2MPaを超える、約0.5MPaを超える、又は約1.0MPaを超える引張/圧縮強さを有する。
【0198】
特定の実施形態において、エクトインポリマーの独立型材料は、(a)シアノ基(C≡N)等の双極子間相互作用、並びに(b)水素供与体/受容体、例えば、アミド基(-(NH)-(C=O)-)、複数のアミド基((-(NH)-(C=O)-)n(n=1-5))、ウレタン基(-(NH)-(C=O)-O-)、複数のウレタン基((-(NH)-(C=O)-O-)n(n=1-5))、ウレア基(-(NH)-(C=O)-(NH)-)、複数のウレア基((-(NH)-(C=O)-(NH)-)n(n=1-5))、及びそれらの組み合わせの導入により強化されたエクトインポリマー網目構造である。これらの基は、エクトインモノマー及びエクトイン(ランダム又はブロック)コポリマーに由来することができる。
【0199】
エクトインポリマー網目構造は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアミド、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブテン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、ポリ無水物、ポリエーテル、及び他の縮合/付加ポリマー等のエクトインモノマー又はエクトインポリマー中の骨格を用いて強化することができる。特定の実施形態において、エクトインポリマー網目構造は、上記のものの任意の組み合わせによって強化される。
【0200】
特定の実施形態において、エクトインポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエポキシ、芳香族ポリエステル、セルロース化合物、フルオロポリマー、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ無水物、ポリエーテル、ビニルポリマー、フェノール樹脂、エラストマー、及び他の付加ポリマー等の他のポリマー又は複合体とコポリマーを形成することができる。ファイバー、粘土、ナノチューブ、及び他の無機の物体は、これらの材料の機械的性質を増強するために添加することができる。
【0201】
本発明のエクトインの独立型材料は、射出成形、ブロー成形、押し出し成形、カレンダー成形、流延、圧縮成形、プレバリケーション成形及び3D印刷等の様々な方法によって物体を成形することができる。
【0202】
本発明のエクトインの独立型材料は、カテーテル、耳ドレナージ管、栄養管、緑内障ドレナージ管、水頭症シャント、人工角膜、神経誘導管、組織接着剤、X線ガイド、人工関節、人工心臓弁、人工血管、ペースメーカー、左心補助装置(LVAD)、動脈グラフト、血管グラフト、ステント、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、血管補綴、皮膚修復デバイス、蝸牛置換体、コンタクトレンズ、人工靱帯及び腱、歯科インプラント、並びに再生組織工学用の組織スキャフォールド、薬物送達、遺伝子送達、RNA送達、タンパク質送達、海洋及びエンジニアリングデバイス/物体(例えば、膜、チューブ、パイプ、コンテナ又はプレート)等の生物医学/生物工学、消費者向け製品、エンジニアリング/海洋、治療/診断用途において使用することができる。
【0203】
特定の実施形態において、独立型材料は、海洋船舶船体、海洋構造体、橋梁、プロペラ、熱交換器、潜望鏡、センサー、魚網、ケーブル、チューブ/パイプ、コンテナ、膜、及びオイルフェンス等の海洋製品において使用することができる。
【0204】
特定の実施形態において、独立型材料は生体材料にコンジュゲートさせることができる。代表的な生体材料としては、核酸(例えば、遺伝子、DNA、RNA)、タンパク質(例えば、酵素、抗体又はその機能性フラグメント)、ペプチド、脂質、細胞又は微生物、中実のナノ粒子(酸化鉄、シリカ、量子ドット又は金ナノ粒子)が含まれ、又は、界面活性剤によって脱水から皮膚を保護するのに使用される。
【0205】
エクトインポリマーのヒドロゲル
本発明は、エクトインポリマーのヒドロゲルを提供する。特定の実施形態において、ヒドロゲルは、本明細書において記述される本発明の架橋したエクトインポリマー(オリゴマー)又はエクトインコポリマー(例えば、式(IXA)又は式(IXB)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、ヒドロゲルは、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0206】
エクトインポリマーのヒドロゲルは、N-オキシドモノマー、及び分解性又は非分解性のエクトイン架橋剤を含む様々な架橋剤から作製することができる。エクトイン星形ポリマーは、ヒドロゲルの形成により(例えば、クリックケミストリーを介して)調製することができる。これらのヒドロゲルは、バルクヒドロゲル又はペレットヒドロゲルの形とすることができる。これらのヒドロゲルは、移植可能な材料及びカプセル形成を短縮するデバイスとして、様々な細胞(例えば、幹細胞、免疫細胞、小島、血小板及び心筋細胞)を保護、拡大、保存、識別する媒体として管理された方式で使用することができる。ペレット及び星形ヒドロゲルは、生物製剤(例えば、様々な細胞及び腫瘍ワクチン用の腫瘍)と共に注射可能にすることができる。
【0207】
特定の実施形態において、エクトインヒドロゲルは、1種又は複数の架橋剤を使用して、1種又は複数のエクトインモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)から調製された架橋したヒドロゲルである。
【0208】
これらの実施形態の幾つかにおいて、架橋剤は、エクトイン架橋剤(例えば、式(XA)又は式(XB)の架橋剤)である。
【0209】
これらの実施形態の他のものにおいて、架橋剤は、カルボキシベタイン、スルホベタイン又はホスホベタイン部分を含む、多官能性双性イオンの架橋剤である。
【0210】
これらの実施形態において更に、架橋剤は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、ポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレート若しくはジアクリルアミド、又はPEGジメタクリレート若しくはジメタクリルアミド等の多官能性架橋剤である。
【0211】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは二官能性エクトイン架橋剤を使用して調製される。他の実施形態において、ヒドロゲルは、分解性又は非分解性の架橋剤を使用して調製される。更なる実施形態において、ヒドロゲルは、分解性、双性イオンのジスルフィド架橋剤を使用して調製される。他の実施形態において、ヒドロゲルは、酵素又は適切な試剤によって分解することができるペプチド系架橋剤を使用して調製される。
【0212】
本発明のエクトインヒドロゲルは、熱、光又はレドックス等の遊離ラジカルを媒介とした重合技法によって調製することができる。
【0213】
本発明のエクトインヒドロゲルは、バイオセンサー及び生体医療デバイス、血管グラフト、血管内ステント、心臓弁、関節置換体、細胞保存/増殖/分化、薬物送達プラットフォーム、船の船体、海洋構造体/設備、及び生理学的環境と接触する他の材料及びデバイスに使用することができる。
【0214】
特定の実施形態において、エクトインヒドロゲルは星形ヒドロゲルである。星形ヒドロゲルは、コア、及び、コアに共有結合された複数のエクトイン又は他の双性イオンの分岐を有するポリマーから調製することができる。代表的なコアは、3、4、5個又はそれ以上の分岐を有する星の形状の小分子、オリゴマー又はポリマーが含まれる。
【0215】
特定の実施形態において、ヒドロゲルは、選択的に分解することができる(すなわち、特異的な条件下で)分解性の架橋剤によって架橋される。分解性架橋剤は、ペプチド架橋剤、多糖架橋剤、無水物架橋剤、ジスルフィド架橋剤及びポリエステル架橋剤から選択することができる。これらの実施形態の幾つかに関して、ヒドロゲルは酵素によって加水分解又は消化することができる。
【0216】
代表的なエクトインポリマーヒドロゲルの調製は、実施例12に述べられている。代表的なエクトインポリマーヒドロゲルについて、フィブリノーゲン及び細胞の吸着は実施例13に述べられている。
【0217】
他のエクトインポリマー組成物
別の態様において、本発明は、本発明のエクトインポリマー及びコポリマーを含むナノ粒子及びミクロ粒子を提供する。
【0218】
更なる態様において、本発明は、エクトインポリマー及びコポリマーコンジュゲートを提供する。
【0219】
また別の態様において、本発明は、エクトインポリマーナノゲル及びナノケージを提供する。
【0220】
特定の実施形態において、これらの組成物は、本明細書において記述される本発明の架橋したエクトインポリマー(オリゴマー)又はエクトインコポリマー(例えば、式(IXA)又は式(IXB)のポリマー)を含む。特定の実施形態において、これらの組成は、本明細書において記述される本発明のモノマー(例えば、式(VIIIA)又は式(VIIIB)のモノマー)を使用して、重合又は共重合プロセスによって調製される。
【0221】
ナノ粒子及びミクロ粒子、エクトインポリマー及びコポリマーコンジュゲートは、それらの対応物であるN-オキシド組成物について本明細書において記述されるように調製することができ、それらの対応物であるN-オキシド組成物について本明細書において記述されるように使用することができる。
【0222】
本明細書において使用される場合、用語「約」は、所定値の±10パーセントを指す。
【0223】
以下の実施例は、説明する目的で示すものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0224】
(実施例1)
代表的な重合性N-オキシドモノマーの合成及び精製
この実施例において、代表的な重合性N-オキシドモノマー、DMAPA N-オキシドの合成及び精製が記述される。
【0225】
【0226】
脱イオン水30mLに800mgのジエチレントリアミンペンタ酢酸を添加した。次いで、過酸化水素(50%溶液、2.87g)を添加し、反応内容物を加熱し、続いて酸素ガスをパージした。次いで、10mLの脱イオン水中のジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPA)(14.4g)を添加した。反応の完了後、反応内容物を冷却した。次いで、水溶液をゆっくりアセトンに添加し、上澄みのデカンテーションによって、底に沈んでいる得られた高粘度の液を分離した。この液体を更にジエチルエーテルを用いて洗い、その結果、高粘度の液として所望のN-オキシドモノマーを得た。NMR及び質量分析法分析によって、DMAPA N-オキシドモノマーであることを確認した。
1H NMR (500 MHz, D2O): δ 6.07 - 5.93 (m, 2H), 5.55 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 3.12 (m, 4H), 3.01 (s, 6H), 1.90 - 1.74 (m, 2H).
LRMS (ESI): m/z:173 [M+H]+.
【0227】
(実施例2)
代表的なN-オキシドポリマー表面の非汚損性
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマー表面である、DMAPA N-オキシドポリマーのブラシの非汚損性が記述される。
【0228】
金表面でコーティングされたガラス基板にTMAOポリマーブラシをグラフト化するためにSI-ATRP技術を適用した。清浄な金を施したガラス基板をブロモイソ酪酸ω-メルカプトウンデシル溶液(エタノール中0.2mmol/L)に終夜浸漬することによって自己集成モノマー層(SAM)を形成した。次いで、開始剤で被覆した基板を、臭化銅(I)(14.35mg、0.1mmol)と一緒にシュレンク管に入れ、ポンプ真空10サイクルによって脱酸素を行った。実施例1に述べたように調製したTMAOモノマー(1.72g、10mmol)、Me6TREN(23mg、0.1mmol)、メタノール(3.6mL)及び水(0.4mL)をシュレンク管に加え、同じ方法で脱酸素を行った。完全な脱酸素の後、TMAOモノマーとMe6TRENの混合水溶液を、基板及び臭化銅を保持する管に移した。反応混合物を周囲温度に終夜置いた。次いで、混合物から基板を取り出し、エタノール及び水を用いて、それぞれ3回洗い、空気乾燥して、その後、SPR試料として使用した。被覆した表面の厚さは、後でエリプソメトリーによって特性評価した。
【0229】
SPRを実行するために、まず主要な清浄化のためにSPRセンサー(Institute of Photonics and Electronics社, Prague, Czech Republic)に無処理のガラス基板を載せた。RBS(石鹸液)、塩酸水溶液、脱イオン水及びPBS緩衝液を流すことによって流動パイプをすべて洗った。次いで、ガラス基板を特性評価のためのTMAOコーティング基板と取り替えた。TMAOコーティング基板の表面に泡がなくなるまで試験パイプすべてにPBSを流した。SPRの手順に従って、機器及びソフトウェアを設定した。PBS緩衝液の10分間流動から特性評価を始め、100%のヒト血清の10分間流動、及びPBS緩衝液の10分間流動と続けた。機器は、実験の後、RBS、脱イオン水及び空気を流すことによって浄化した。
【0230】
図1にDMAPA N-オキシドコーティングについて1つのSPRセンサー曲線を示す。(膜厚10nm、吸着したタンパク質2.2ng/cm
2)。2つの他の実験を実行して20及び24nmに膜厚を調節し、それぞれ極めて高い非汚損性(<5ng/cm
2)が達成された。
【0231】
(実施例3)
代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲルの調製
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲル、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルの調製について記述する。
【0232】
33質量%のDMAPA N-オキシドモノマー(実施例1において上記のように調製した)を含有するヒドロゲル水溶液、1質量%(モノマーに対して)の架橋剤N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)、及び1質量%(モノマーに対して)の光開始剤2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを用いてバルク光重合によってDMAPA N-オキシドヒドロゲルを製作した。0.5mm厚のポリテトラフルオロエチレンスペーサーによって隔てた2枚のスライドグラス間にヒドロゲル水溶液を装入し、次いで、室温で30分間光重合した。重合の後、鋳型からヒドロゲルを取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に3日間浸して未反応の化学薬品を除去し、完全に水和されたヒドロゲル網目構造に達した。リン酸緩衝生理食塩水は、12時間ごとに更新した。
【0233】
(実施例4)
代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲルへのタンパク質吸着及び細胞接着
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマーヒドロゲル、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルへのタンパク質吸着及び細胞接着が記述される。
【0234】
タンパク質吸着。フィブリノーゲンは、非特異的相互作用によって様々な表面に容易に吸着すると知られている血液タンパク質である。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルへのフィブリノーゲンの表面吸着を定量した。ELISA法について以下に記述し、
図2Aに結果を示す。
【0235】
生検穴あけ器を使用して、水和されたDMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルシートを5mmの直径のディスクに穴あけした。24ウェルプレートのウェルにヒドロゲルディスクを入れ、1mg/mLのフィブリノーゲン1mLと共にPBS緩衝液中で1時間インキュベートし、続いて純粋なPBS緩衝液を用いて5回洗浄した。次いで、新しいウェルにヒドロゲルディスクを移し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた抗フィブリノーゲン(1μg/mL)1mLと共にPBS緩衝液中で1時間インキュベートした。次いで、純粋なPBS緩衝液を用いて5回洗浄した後、新しいウェルにヒドロゲルディスクをすべて移した。次、1mg/mLのo-フェニレンジアミン(OPD)1mL、0.03%の過酸化水素を含有する、0.1Mのクエン酸塩リン酸塩のpH5.0溶液を添加した。15分のインキュベーションの後、等量の1N HClの添加により酵素の反応を止めた。プレートリーダー(Cytation 3, BioTek社, Winooski, VT)によって、492nmの吸光度を記録し、ポリプロピレン(PP)試料のそれに規格化した。3つの試験片から平均データを得た。
【0236】
図2Aにおいて示されるように、DMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲルは、ポリプロピレンのそれに対してフィブリノーゲン接着の97.3%を減少させることにより、優れた非汚損能力を示した。
【0237】
細胞接着。1片のDMAPA N-オキシドポリマーヒドロゲル(TMAOヒドロゲル)(Φ=5mm)を含む24ウェル組織培養プレートに、37℃で5.0%の二酸化炭素を含む湿った雰囲気中で、10%FBSを補ったDMEM中1.5×10
5細胞/mlの濃度でNIH3T3のマウスの胚線維芽細胞を接種した。3日間のインキュベーションの後、培地を交換した。組織培養ポリスチレン(TCPS)表面及びTMAOヒドロゲル上の細胞の形態を、Nikon Eclipse TE2000-U顕微鏡を使用して観察した。
図2Bにおいて示されるように、TMAOヒドロゲルは有効に細胞接着に抵抗する。
【0238】
(実施例5)
代表的なN-オキシドポリマーのペレットミクロゲルを使用する血小板の保存
この実施例において、血小板を長期間保存及び貯蔵するための、代表的なN-オキシドポリマーのヒドロゲル、DMAPA N-オキシドポリマーのペレットミクロゲルの使用が記述される。DMAPA N-オキシドポリマーのペレットミクロゲルを使用する血小板保存の結果を
図3に示す。(%ディスク*4)+(%球*2)+(%デンドライト*1)+(バルーン/巨大な異物*0)として形態のスコアを規定し、最高点は400であるが、試料は様々であり得、新鮮な血小板を取る場合、通常およそ380~400である。DMAPA N-オキシドポリマーのペレットミクロゲルについて5日目及び7日目の血小板の形態のスコアを、貯蔵培地の血小板封入への影響について調査した。
【0239】
(実施例6)
代表的なN-オキシドポリマーのタンパク質コンジュゲートの調製
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマー(DMAPA N-オキシドポリマー)のタンパク質(ウリカーゼ)コンジュゲートの調製について記述する。
【0240】
適切に管理されたBoc保護DMAPA N-オキシドポリマーをATRPによって得た。テトラヒドロフラン100mLにN-Boc-エチレンジアミン(0.4806g、3mmol)及びトリエチルアミン(0.334g、3.3mmol)を溶かすことにより、ATRP開始剤を合成した。テトラヒドロフラン30mLに2-ブロモ-2-メチルプロピオニルブロミド(0.7586g、3.3mmol)を溶かし、次いで、滴下した。反応物を0℃で終夜撹拌した。次いで、生成物のtert-ブチルN-[2-(2-ブロモ-2-メチルプロパンアミド)エチル]カルバメート(1)をクロマトカラムによって精製した。重合を実行するために、1(30.7mg、0.1mmol)、DMAPA N-オキシドモノマー(1.72g、10mmol)をシュレンク管に入れ、窒素真空によって脱酸素を行った。脱酸素したミックス溶媒(水及びメタノール)(2mL)を添加して固形分をすべて溶かした。次いで、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(23mg、0.1mmol)、臭化銅(I)(14.3mg、0.1mmol)及びミックス溶媒2mLを含み、前に脱気し窒素で充填しておいた別のシュレンク管に溶液を注射器によって移した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。所望の生成物、Boc保護DMAPA N-オキシドポリマーは更に透析によって精製した。
【0241】
Boc保護DMAPA N-オキシドポリマー500mgをトリフルオロ酢酸(TFA)5mLに溶かし、室温で2時間撹拌してBoc保護基を除去し、アミン末端のDMAPA N-オキシドポリマーを得た。透析によって生成物を精製した。次いで、Traut試薬1.38mgと一緒に、アミン末端DMAPA N-オキシドポリマー150mgをPBS緩衝液5mLに溶かし、室温で2時間撹拌してチオール(SH)反応性基をDMAPA N-オキシドポリマーに導入した。一方、ウリカーゼ3mg、及びN-β-マレイミドプロピルオキシスクシンイミドエステル(BMPS)溶液(DMSO中40mg/ml)37.5μLをPBS5mLに溶かし、室温で1時間撹拌して利用可能な二重結合を有するタンパク質を改質した。限外濾過(35K)によって未反応のBMPSを除去した。次いで、二重結合改質ウリカーゼをチオール末端DMAPA N-オキシドポリマー溶液と混合し、4℃で終夜反応させた。限外濾過(100K)によってウリカーゼコンジュゲートを精製し、GPCで特性評価した。
図4Aは、ネイティブなウリカーゼ及びポリ(DMAPA N-オキシド)にコンジュゲートされたウリカーゼについてゲル浸透クロマトグラフを比較する。コンジュゲーションの後、ウリカーゼの生物活性の変化を特性評価するためにAmplex(商標) Red Uricase Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社から購入)を使用した。結果は、ウリカーゼ活性がコンジュゲーションの後におよそ10%しか落ちなかったことを示す(
図4Bを参照)。これは、N-オキシドポリマーのコンジュゲーションがタンパク質活性を壊さずに、タンパク質を保護することができることを意味する。インビトロの結果は、タンパク質コンジュゲーションにN-オキシドポリマーがよく働くことを示す。
【0242】
(実施例7)
代表的なN-オキシドポリマータンパク質コンジュゲートの免疫原性
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマータンパク質コンジュゲート、ポリ(DMAPA N-オキシド)ウリカーゼコンジュゲートの免疫原性について記述する。
【0243】
代表的なN-オキシドポリマーの免疫原の可能性を検討するために、DMAPA N-オキシドポリマー及びキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)のコンジュゲートを評価した。KLHは、グラフト化ハプテンの免疫原性を増幅する担体として一般に使用される最も免疫原性のタンパク質の1つである。対照としてPEG化したKLHコンジュゲートを調製した。手短に言えば、50mMのヘペス緩衝液(pH8.5)中でKLH(1mg/mL)及びmPEG-NHS(10kDa、1mg/mL)を混合した。4℃で反応物を終夜撹拌した。次いで、コンジュゲートを濃縮し、分子量300kDaカットオフの遠心濾過機を使用して5回PBS(pH7.4)を用いて洗浄した。DMAPA N-オキシドポリマー-KLHコンジュゲート及びPEG化KLHコンジュゲートを、オスのC57BL/6Jマウス(1群当たり5匹)の2つのコホートにそれぞれ4週間(1週当たり1回の投薬)皮下注射(SC)した。第4の週(28日目)の終わりに、マウスをすべて殺し、心臓の穿刺によって採取したそれらの血液を、抗ポリマー抗体(Ab)の直接ELISA試験に扱った。ELISA試験に関して、抗PEG抗体及び抗PCB抗体の検出には、抗原としてPEG-BSAコンジュゲート及びDMAPA N-オキシドポリマーBSAコンジュゲートを必要とする。上記と同じPEG-KLHコンジュゲートの調製プロトコルに従って、PEG-BSAコンジュゲートを調製した。DMAPA N-オキシドポリマーBSAコンジュゲートを調製するために、N-アクリロキシスクシンイミド(NAS)のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(20mg/mL)37μLをBSA溶液(10mg、50mM HEPES緩衝液(pH8.5)5mLに溶かした)に添加することによってまずアクリロイル基を用いてBSAを改質した。この反応物を4℃で2時間撹拌した。次いで、PCB-BSAコンジュゲートは、DMAPA N-オキシドモノマー(400mg、pH8.5のHEPES緩衝液5mLに溶かした)及び開始剤(脱イオン水(50μL)及びTEMED(30μL)中の20%(w/v)APS)を、前のBSA溶液に添加することによって、インサイチューラジカル重合で形成された。2時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、分子量300kDaカットオフの遠心濾過機を使用して5回PBS(pH7.4)を用いて洗浄した。
【0244】
直接のELISA試験の第一歩として、コーティングする緩衝液(0.1Mの炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.5)中に調製された抗原溶液(10μg/mLのタンパク質濃度)100μLを96ウェルプレートの各ウェルにコーティングするために使用した。4℃で終夜コーティングした後、PBS緩衝液(pH7.4)を使用して、プレートを5回洗浄して抗原溶液を除去し、次いで、遮断緩衝液(0.1MのTris緩衝液中の1%のBSA溶液、pH8.0)を用いて充填し、室温で1時間のインキュベーションをして、その後、遮断緩衝液を除去した。次いで、更に5回PBS緩衝液によってウェルをすべて洗浄した。続いて、1%のBSAを含有するPBS緩衝液中のラット血清の連続希釈液をプレート(100μL/ウェル)に添加し、37℃で1時間のインキュベーションをして、その後、ラット血清を除去し、PBS緩衝液を用いてウェルをすべて5回洗浄した。次、第2の抗体としてヤギ抗ラットIgM又はIgG(HRPにコンジュケート、Bethyl Laboratories社)を各ウェルに添加し、37℃で更に1時間のインキュベーションをした。続いて、100μL/ウェルのHRP基質3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB;Bethyl Laboratories社)の添加の前にウェルはすべて、PBS緩衝液を使用して5回洗浄した。15分間プレートを振盪し、停止液(0.2MのH2SO4)100μLを各ウェルに添加した。マイクロプレートリーダーによって450(信号)の吸光度、及び570nm(バックグラウンド)を記録した。KLHコンジュゲート試料の投与に未経験のマウス血清を、負の対照としてすべてのELISA検出に使用した。
図5に結果を示す。
【0245】
(実施例8)
タンパク質封入のための代表的なN-オキシドポリマーナノケージ
この実施例において、タンパク質封入のための代表的なN-オキシドポリマーナノケージの調製について記述する。
【0246】
AOT(ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、237mg)及びBrij30(ポリ(エチレングリコール)ドデシルエーテル、459mg)を20mLガラス製バイアルに添加し、撹拌棒を加えた。テフロンライニングされたセプタムキャップを用いてバイアルを密閉し、10分間乾燥窒素を用いてパージした。次いで、激しく撹拌しながら窒素で脱酸素したヘキサン(10のmL)をバイアルに添加した。水相については、ヘペス緩衝液(pH8.5、250μL)にタンパク質(例えば、KLH、2mg)を溶かし、それにDMAPA N-オキシドモノマー(200mg)及びN,N'-メチレンビス(アクリルアミド)(20mg)を添加し、溶かした。2分間モノマー/タンパク質溶液に乾燥窒素を通して泡立たせ、その後、水相を有機連続相にゆっくり滴下した。安定なマイクロエマルジョンを形成するためにバイアルを超音波処理した。次いで、過硫酸アンモニウム(APS)の脱イオン水(10ul)中20%(w/v)溶液をエマルジョンに添加した。5分後、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、6uL)の添加によって重合を開始し、高速磁気撹拌下4℃で維持した。2時間の反応後、ロータリーエバポレータによって有機溶媒を除去し、ナノケージは沈降させ、THFを用いて3回洗浄した。PBS緩衝液中でナノケージを再懸濁し、分子量300kDaカットオフの遠心濾過機を用いて精製し、遊離のタンパク質を除去した。
【0247】
図6Aは、動的光散乱によって測定してDMAPA N-オキシドポリマーナノケージカプセル化KLH及び遊離のKLHの粒度分布を比較する。
図6Bは、DMAPA N-オキシドナノケージのトンネル電子顕微鏡(TEM)画像である。
【0248】
(実施例9)
代表的なN-オキシドポリマータンパク質ナノケージのタンパク質安定化効果
この実施例において、代表的なN-オキシドポリマータンパク質ナノケージのタンパク質安定化効果について記述する。
【0249】
耐熱性試験のために、PBS緩衝液(pH7.4)中の改質ウリカーゼ試料を、水浴中60℃で5、10、20、40及び60分間インキュベートし、その後に各試料を取り出し、ウリカーゼ活性のアッセイのために氷浴中でクエンチした。
【0250】
図7は、ネイティブなウリカーゼ、PEG化ウリカーゼ、及び代表的なN-オキシドポリマーのナノケージ保護ウリカーゼの耐熱性を比較する。
【0251】
(実施例10)
代表的なN-オキシドタンパク質ナノケージを含むタンパク質の薬物動態
この実施例において、代表的なN-オキシドタンパク質ナノケージを使用する代表的なタンパク質の薬物動態の改善について記述する。
【0252】
ネイティブなウリカーゼ、PEG化ウリカーゼ、及びN-オキシドポリマーのナノケージ保護ウリカーゼの薬物動態(PK)を、オスのC57BL/6Jマウス(1つの群当たり5匹)で比較する。タンパク質試料はそれぞれ、ラットに25U/kg体重の用量で眼窩静脈注射によって静脈内投与(IV)した。注射の後、5分、2時間、6時間、24時間及び48時間目に、尾部静脈から血液試料を集めた。ヘパリン処理されたバイアルに血液試料を入れ、遠心分離機にかけ、酵素活性によって、血漿中の酵素含量を評価した。
【0253】
図8は、代表的なN-オキシドポリマーのナノケージ改質ウリカーゼ、PEG化ウリカーゼ、及びネイティブなウリカーゼの血液循環プロファイルを比較する。
【0254】
(実施例11)
代表的なエクトイン重合性モノマーの合成
この実施例において、代表的なエクトイン重合性モノマー、エクトインメタクリレートモノマーの合成について記述する。
【0255】
0℃で激しく撹拌しながらTFA8mLにヒドロキシエクトイン(2gm、12.6mmol)を溶かした。出発材料が溶解した後、トリフルオロメタンスルホン酸(0.37gm、2.4mmol)を添加し、反応内容物を5分間撹拌した。次いで、塩化メタクリロイル(2.44mL、25.2mmol)を反応混合物に添加し、2時間撹拌した。2時間後、反応混合物に0℃でジエチルエーテル30mLをゆっくり添加して白色粉体として化合物を得た。メタノール:ジエチルエーテルを用いて、粗の白色固形物を更に結晶化して所望のモノマーを得た。
【0256】
分析HPLCを用いてその純度を点検するために水に少量のモノマーを溶かした。この方法によって得られたエクトインモノマーは、不純物として出発物質のヒドロキシエクトインを含む72%の純度を有していた。NMR分析のためにHPLCによって、少量のこの生成物を更に精製した。
1H NMR (500 MHz, D2O): δ 6.07 (s, 1H), 5.7 (s, 1H), 5.59 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.47 (s, 1H), 3.63 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.46 (d, J = 14.95 Hz, 1H), 2.3 (s, 3H), 1.84 (s, 3H).
【0257】
(実施例12)
代表的なエクトインポリマーヒドロゲルの調製
この実施例において、代表的なエクトインポリマーヒドロゲル、ポリ(エクトイン)ヒドロゲルの調製が記述される。
【0258】
水の質量と等しい質量を有するエクトインモノマー、X質量%(エクトインモノマーの質量に対して)の架橋剤N',N'-メチレンビス(アクリルアミド)及び1質量%(エクトインモノマーの質量に対して)の熱開始剤2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩で構成される水溶液の熱重合によって、ポリ(エクトイン)ヒドロゲルを製造した。3つの相異なる架橋剤量(X=0.5、1、1.5)を用いてポリ(エクトイン)ヒドロゲルを調製した。0.8mm厚のポリテトラフルオロエチレンスペーサーによって隔てた顕微鏡用スライドグラス間でエクトインモノマー溶液を35℃で2時間、続いて50℃40時間重合した。PBS(0.01Mリン酸緩衝液、0.0027M塩化カリウム及び0.137M塩化ナトリウム、pH7.4)に、形成されたポリ(エクトイン)ヒドロゲルを水和するために浸した。未反応の化学薬品を除去するために5日間PBSを毎日変え、ポリ(エクトイン)ヒドロゲルを膨潤平衡に到達させた。その後、更なる試験の前に、ポリ(エクトイン)ヒドロゲルは長方形に、又はそれぞれ直径5mm、厚さ約1.5mmを有するディスクに生検穴あけ器によって切断した。
【0259】
代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの水和性。
図9にポリ(エクトイン)ヒドロゲルの相対的な平衡含水率(EWC)を示し、EWCは乾燥したヒドロゲル及び膨潤したヒドロゲルの質量に基づいて計算した。架橋剤含量の増加は水和の低下に帰着した。0.5~1.5質量%の範囲の架橋剤を用いたポリ(エクトイン)ヒドロゲルについて、EWCは94%から85%に減少する。
【0260】
代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの機械的性質。代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルの機械的性質を圧縮試験によって直接測定した。圧縮応力、破断点圧縮歪及び圧縮弾性率を、架橋剤量の関数として、
図10A、10B及び10Cでそれぞれ比較する(ASTM D6641: Standard Test Method for Compressive Properties of Polymer Matrix Composite Materials Using a Combined Loading Compression(CLC)Test Fixture)。
【0261】
(実施例13)
代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルに対するフィブリノーゲン及び細胞の吸着
この実施例において、代表的なポリ(エクトイン)ヒドロゲルに対する、フィブリノーゲン及び細胞の吸着について記述する。酵素結合免疫吸着検定(ELISA)試験によるポリ(エクトイン)ヒドロゲルのフィブリノーゲン接着を求めた。
【0262】
酵素結合免疫吸着検定(ELISA)法によってフィブリノーゲンの表面吸着を定量し、
図11に結果を示す。それぞれ0.5、1、1.5質量%の架橋剤量を用いて調製した、3つの試験のポリ(エクトイン)ヒドロゲルの各々は、97.0%、95.8%及び95.6%のフィブリノーゲン吸着がそれぞれ、陽性対照としてのポリプロピレン(PP)のそれと比較して、減少することによって優れた非汚損能力を示し、負の対照としての代表的なポリ(カルボキシベタイン)ヒドロゲル(PCB)(1%のMBAA架橋剤を用いて製作し、完全な膨潤の後に使用した)について得られた結果に匹敵する。
【0263】
更に、材料/細胞相互作用の研究において最も頻繁に用いられる株のうちの1つである、線維芽細胞NIH-3T3細胞をポリエクトインヒドロゲルの細胞接着試験のために選択した。
図12は、すすぎの前後の両方の細胞接着挙動を比較する。すすぎの前、NIH-3T3細胞はポリエクトインヒドロゲルの表面(ヒドロゲルの中央)で結合することができず、その代りに、細胞凝集物を形成する傾向がある。反対に、NIH-3T3細胞はTCPS表面を認識して、非特異的接着によって大量にTCPS表面と結合し、その結果、薄い仮足を伸ばして広がることができる。すすぎの後、すべての凝集した細胞はポリエクトインの表面から洗い流されるが、細胞はTCPS表面に強く結合されたまま留まる。ポリエクトインヒドロゲルの非汚損性は、その表面に細胞凝集物が形成される理由として考えられる。ポリエクトインヒドロゲルの表面でNIH-3T3細胞が移動するためには、付近のマトリックスとの焦点接着を確立する必要がある。しかしながら、NIH-3T3細胞は、ポリエクトインヒドロゲルと安定な結合を形成することができないので、そのため、それらは、ポリエクトインヒドロゲルと細胞接触を確立して細胞凝集物を形成するだけである。
【0264】
例証となる実施形態が説明され、記述されたが、本発明の趣旨及び範囲から離れることなく、様々な変更を本明細書において行うことができることは理解されよう。