(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】改良された印刷ノズルテストパターン
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240401BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 451
B41J2/01 205
G06T1/00 310A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020005075
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10 2019 200 567.5
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フェールナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ケーラー
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052031(WO,A1)
【文献】特開2016-112814(JP,A)
【文献】特開2012-133582(JP,A)
【文献】特開2010-194815(JP,A)
【文献】特開2019-142187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機(6)によって、インクジェット印刷機(7)の印刷ヘッド(5)内の印刷ノズルの状態を評価し、印刷ノズルの印刷の質を改良する方法であって、
上下に配置されており、周期的に鉛直に印刷された等間隔の線(12)の、特定数の水平な列から成る少なくとも1つのノズルテストパターンを印刷し、
前記ノズルテストパターンの各列においてそれぞれn番目の前記印刷ノズルだけが前記ノズルテストパターンに関与しており、nは、1から特定数の前記水平な列との間で各列において異なる数であり、
印刷された前記ノズルテストパターンを認識し、デジタル化し、前記ノズルテストパターンに関与している前記印刷ノズルの状態(17)に関して前記計算機(6)によって評価し、次に、関与している前記印刷ノズルの状態(17)に関連して、前記印刷ノズルの印刷の質を改良するための措置を講じる、方法において、
さらに、前記印刷ノズルが、前記水平な列の間に水平な線(18)を印刷し、前記水平な線は、四角形の対象物(14,15)が形成されるように前記鉛直に印刷された等間隔の線(12)を取り囲み、次に前記四角形の対象物は、前記計算機(6)によって、関与している前記印刷ノズルの状態(17)の評価のために用いられ、
前記印刷ノズルの状態(17)の特定のために、前記四角形の対象物(14,15)の平均サイズを統計的に検出し、
複数のピクセルによる所定の画線太さを有する前記水平な線(18)を印刷し、ここでは、関与している各印刷ノズルによって比較的大きい滴体積を使用し、
印刷された前記ノズルテストパターンの画像撮影時に、過度露光を使用し、これによって、機能が低下した
印刷ノズルによって生じた、中断箇所を有する、鉛直に印刷された等間隔の線(12)がより強く透
け、前記過度露光とは、対象物を、通常の画像撮影時の適正露光と比較して、より強度の強い光に同一時間露出させる、および/または、同一強度の光に長い時間露出させることであり、
前記計算機(6)は、画像処理アルゴリズムを用いて、見つけ出された前記四角形の対象物(14,15)が、統計的に検出された前記四角形の対象物(14,15)の前記平均サイズに相当するかを検査し、見つけ出された前記四角形の対象物(14,15)が、前記平均サイズを有する場合には、前記計算機(6)が、各印刷ノズルの状態(17)を、正、として導出する、
ことを特徴とする、計算機(6)によって、インクジェット印刷機(7)の印刷ヘッド(5)内の印刷ノズルの状態を評価し、印刷ノズルの印刷の質を改良する
、
方法。
【請求項2】
前記計算機(6)は、画像処理アルゴリズムを用いてそれぞれ、
・見つけ出された前記四角形の対象物(14)の数が、予期される、前記鉛直に印刷された等間隔の線(12)の数と比較されることによって全ての鉛直に印刷された等間隔の線(12)が存在しているかを検査すること、
・形成された前記四角形の対象物(14,15)が完全であるか、すなわち間隙を有していないかを検査すること、
・前記鉛直に印刷された等間隔の線(12)が完全に印刷されているか、すなわち中断箇所を有していないかを検査すること
、
によって、前記ノズルテストパターンに関与している前記印刷ノズルの状態(17)を前記四角形の対象物(14,15)から導出する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
印刷された前記ノズルテストパターンを、インライン画像処理システム(10)によって検出し、前記計算機(6)は、前記インライン画像処理システム(10)の画像処理計算機に相当する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
検出され、デジタル化された前記ノズルテストパターンを、前記計算機によって、評価のために、動的に検出された閾値に従って二値化し、前記計算機(6)は、このように生成された、二値化された前記ノズルテストパターンに基づいて、前記四角形の対象物(14,15)を検出する対象物識別を実行する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記印刷ノズルの印刷の質の改良のための措置は、印刷の所望の質のパラメータの範囲外にある状態(17)を有している印刷ノズルをオフにし、次に、隣接している印刷ノズルによってこれを補償し、印刷時点を整合させることによって、印刷方向において印刷点の偏差を有する印刷ノズルを補償することを含んでいる、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された印刷ノズルテストパターンならびにこのような印刷ノズルテストパターンを使用してインクジェット印刷ヘッド内の印刷ノズルの状態を評価する方法に関する。
【0002】
本発明はデジタル印刷の技術領域に属する。
【0003】
インクジェット印刷機の使用時に生じる印刷の質には、インクジェット印刷機のインクジェット印刷ヘッドの各印刷ノズルの目下の状態が決定的に重要である。したがって、このような状態を評価するために、関連している全ての印刷ヘッドもしくは印刷ノズルが作成に関与している特定のテストパターンを印刷し、次に、このようなテストパターンを相応に評価することが従来技術から知られている。次に、この評価を用いて、このテストパターンの印刷に関与している印刷ノズルの目下の状態が推測され得る。このような目的に適している、多くの使用可能なテストパターンが従来技術から知られている。しかし、生成されたテストパターンを検出するカメラシステムの画像解像度がしばしば問題になる。なぜなら、このようなカメラシステムの画像解像度はしばしば、テストされるべきインクジェット印刷機の最大印刷解像度よりも低いからである。末端作用において、これは、評価を行う画像処理計算機が、個々の印刷ノズルがテストパターンにおいて関与している画像対象物を分解し、相互に別個に評価することがもはやできないことを意味している。したがって、従来技術において、個々の印刷ノズルと印刷された対象物の複数の列から成るテストパターン構造が定着し、ここでは各列において、常に、印刷ヘッドのそれぞれn番目の印刷ノズルだけが自身の画像対象物を印刷する。多くの場合にその下に配置されている次の列ではn+x番目の印刷ノズルが印刷に関与し、さらにその下に位置する次の列ではn+y番目の印刷ノズルが印刷に関与し、これは、テストされるべきインクジェット印刷ヘッドの印刷ノズル全てが該当するテストパターンの印刷に関与するまで続く。このようにして生成されたテストパターンは次に、カメラシステムを用いて問題無く分解され、したがって個々の画像対象物は、該当する印刷ノズルに問題無く割り当てられる。個々の印刷ノズルの印刷対象物は、ここで通常は、生成する印刷ノズルによって印刷方向において実現される短い画線である。次にこのような個々の画線が、画像処理計算機によって、該当する印刷ノズルの印刷の質の特定のパラメータに関して極めて良好に評価される。個々のパラメータは例えば、振幅とも称される個々の印刷ノズルの印刷太さ、印刷方向における個々の印刷ノズルの印刷点の偏差ならびに印刷方向に対して直交する個々の印刷ノズルの印刷点の偏差等である。
【0004】
しかし、従来技術において目下使用されているテストパターンならびに対応する評価方法での問題は、印刷方向における位相の評価である。必要な測定精度を得るために、評価時に、該当する画線の信号が印刷方向において平均化されるので、印刷方向における印刷ノズルの発生している位相欠陥は多くの場合に識別されない。なぜなら、この信号は印刷方向において、測定領域において僅かな、比較的弱い振幅しか有していないからである。すなわち、このようなパラメータに関するインクジェット印刷ヘッドの印刷ノズルの状況の評価は、従来技術から公知のテストパターンおよび評価方法によっては困難である。
【0005】
したがって、本発明の課題は、印刷方向における位相欠陥によるインクジェット印刷ノズルの印刷欠陥をより良好に識別し、修正する、インクジェット印刷機の印刷の質を分析する方法を開示することである。
【0006】
上述の課題は、計算機による、インクジェット印刷機の印刷ヘッド内の印刷ノズルの状態を評価し、印刷ノズルの印刷の質を改良する方法によって解決され、ここでは、周期的に鉛直に印刷された等間隔の線の、特定数の水平な列から成る少なくとも1つのノズルテストパターンが印刷される。これらの線は上下に配置されている。ここで、デジタルノズルテストパターンの各列においてそれぞれn番目の印刷ノズルだけがデジタルノズルテストパターンに関与しており、nは各列において、1と水平な列の特定数との間の異なる数に相当する。このようなノズルテストパターンは検出され、デジタル化され、このノズルテストパターンに関与している印刷ノズルの状態に関して、計算機によって評価され、次に、関与している印刷ノズルの状態に関連して、印刷ノズルの印刷の質を改良するための措置が講じられる。この方法は、さらに、印刷ノズルが、水平な列の間に水平な線を印刷することを特徴とする。これらの水平な線は、四角形の対象物が形成されるように、鉛直に印刷された等間隔の線を取り囲む。ここでこの四角形の対象物は計算機によって、関与している印刷ノズルの状態の評価のために特有に用いられる。この四角形の対象物は、従来技術から知られている個々の画線とちょうど同じように、印刷に関与している印刷ノズルの状態に関する情報を提供する。四角形の対象物はここで、側面ではこれらの画線形状の対象物から成り、上方および下方の接続している面は水平な線から成る。したがって、四角形の対象物は、印刷方向における位相欠陥を求めるのに傑出して適している。なぜなら、このような場合には、個々の印刷ノズルによって生成された画線の形態の四角形の対象物の側面はずれており、これによって四角形の対象物が閉じられていないからである。すなわち、閉じていない四角形は、迅速かつ容易に、印刷方向における位相欠陥を検出することを示している。
【0007】
この方法の有利な発展形態は、属する従属請求項から、ならびに属する図面による説明から明らかになる。
【0008】
本発明の方法の有利な発展形態では、計算機が画像処理アルゴリズムを用いてそれぞれ以下の検査をすることによって、計算機は、ノズルテストパターンに関与している印刷ノズルの状態を四角形の対象物から導出する。すなわち、見つけ出された四角形の対象物の数が、予期される、鉛直に印刷された等間隔の線の数と比較されることによって全ての鉛直に印刷された等間隔の線が存在しているかを検査すること、形成された四角形が完全であるか、すなわち間隙を有していないかを検査すること、鉛直に印刷された等間隔の線が完全に印刷されているか、すなわち中断箇所を有していないかを検査すること、さらに、見つけ出された四角形がそれぞれ自身の予期される通常のサイズに相当するかを検査することである。すなわち本発明の方法によって、特有に、印刷方向における位相欠陥のパラメータが評価され、同様に別のパラメータ、例えば振幅または印刷方向に直交する位相欠陥も評価される。振幅はここで印刷太さの他に、極端な場合には、ミッシングノズルの形態の個々の印刷ノズルの故障も示す。これは、単に、見つけ出された四角形の対象物の数が、予期される、鉛直に印刷された等間隔の線の数と比較されることによって、本発明の方法によって極めて容易に検出される。この数は同様に、既知である、印刷に関与している印刷ノズルの数に等しい。個々の四角形の対象物は、ここで、画像処理アルゴリズムを用いて検出され、ここで自身の数に関してだけ評価されればよい。さらに、見つけ出された四角形が完全であるか、つまり閉じられており、間隙を有していないかがテストされる。ここでこのようなテストによって、極めて容易に、印刷方向において位相欠陥が生じ得るのかが求められる。振幅、すなわち個々の印刷ノズルの印刷太さの一般的な評価は、四角形の側面の長さを成す鉛直に印刷された等間隔の線が、中断箇所を有しているか、すなわち完全であるか否かについて検査されることによって行われる。さらに、印刷方向に対向する位相欠陥も求められる。これは、見つけ出された四角形がそれぞれ自身の予期される通常のサイズに相当するかが検査されることによって行われる。ここで、見つけ出された四角形の測定されたサイズが、予期されるであろうサイズのほぼ二倍の大きさである場合、これは、ミッシングノズルに対する直接的な示唆である。すなわち、発生しているミッシングノズル、つまり欠陥を有する印刷ノズルは重複して検出され、一方では、見つけ出された四角形の数を、印刷に関与している印刷ノズルの数と比較することによって検出され、他方では、見つけ出された四角形のサイズを検査することによって検出される。しかしサイズの検査によって、印刷方向に直交する位相欠陥も求められる。このような場合には、相応する四角形は、予期されているサイズよりも小さく、また、該当する印刷ノズルによって印刷された、鉛直の等間隔の線の他方の側で隣接している四角形は相応に大きいはずである。隣接している各四角形のサイズの変化はここで、二倍の大きさにおいて探されるべきではなく、サイズの僅かな偏差において探されるべきである。ここでは、ある四角形が予期されているサイズよりも小さく、隣接している四角形が予期されているサイズよりも大きいという形での、常に発生するサイズ欠陥に基づいて、印刷方向に直交する位相欠陥が検出される。
【0009】
本発明の方法の別の有利な発展形態では、複数のピクセルによる画線太さを有する水平な線が印刷され、ここでは、関与している各印刷ノズルによって比較的大きいインク滴体積が使用される。鉛直に印刷された等間隔の線を取り囲むことによって四角形の対象物を生成する水平な線は当然、それら自身、場合によって存在する「ミッシングノズル」もしくは欠陥を有する印刷ノズルによって侵害されてはいけないので、これらの水平な線は、複数のピクセルによる画線太さで印刷されるべきである。これは、鉛直の等間隔の線の他に当然ながら水平な線も印刷しなければならない、関与している全ての印刷ノズルが、相応に比較的大きいインク滴体積を、水平な線の印刷に使用することによって行われる。ここで個々の印刷ノズルが「ミッシングノズル」として故障している場合、増大したインク滴体積によって、水平な線における間隙が相応に隣接している印刷ノズルによって塞がれ、これによって完全な水平な線と、相応する、閉じられている四角形が得られる。閉じていない四角形はここで、印刷ノズルの位相欠陥が印刷方向において存在していることによって、または極端な場合には、複数の、欠陥を有する隣接している「ミッシングノズル」の発生によってのみ発生し得る。しかし、インクジェット印刷機の印刷の質にとって極めて不利である、このような、隣接している「ミッシングノズル」の発生は同様に、発生している四角形のサイズを用いて極めて容易に検出される。
【0010】
本発明の方法の有利な発展形態では、ノズルパターンは、インライン画像処理システムによって検出され、計算機は、インライン画像処理システムの画像処理計算機に相当する。四角形の対象物を伴うノズルパターンの評価はここで、ノズルパターンが有利にはインライン画像処理システムによって検出されることによって実現され、ここでインライン画像処理システムはカメラシステムを有しており、このカメラシステムはインクジェット印刷機内に、通常は最後の印刷ヘッドの後に取り付けられており、これは所期のようにノズルパターンを検出し、これを、接続されている画像処理計算機を用いて相応に評価する。当然、印刷機外のカメラを用いた外部評価も可能であり、この場合には計算機は、このように検出されたテストパターンが供給される任意の計算機であってよいが、いずれにせよ、一般的な印刷の質の検査のために多くの印刷機において設けられているインライン画像処理システムの使用が有利である。なぜなら、この場合には付加的なハードウェアを使用する必要がなく、計算機によってサポートされた、本発明の方法の実施は、インライン画像処理システムによって提供された画像データの、同様にソフトウェアによってサポートされた印刷の質の分析に極めて良好に組み込まれるからである。
【0011】
本発明の方法の有利な発展形態では、画像撮影時に、軽度の過度露光が使用され、これによって、機能の低下したノズルによって生じた、中断箇所を有する、鉛直に印刷された等間隔の線からより強く光がもれて線が透けて見える。このような軽度の過度露光によって、中断箇所を有する等間隔の線の形態ではっきりと表れる振幅のパラメータに鑑みて、テストパターンの評価が格段に改良される。
【0012】
本発明の方法の有利な発展形態では、検出され、デジタル化されたノズルパターンが、計算機によって、評価のために、動的に検出された閾値に従って二値化され、計算機は、このように生成されたバイナリ画像に基づいて対象物識別を実行し、ここから四角形が得られる。すなわち、個々の四角形の対象物の検出は、特有の画像処理アルゴリズムを用いて実行される。これには有利には、上述した手法が適しており、ここでは、ノズルパターンを有する検出されたデジタル画像が二値化され、次に、生成されたバイナリ画像によって対象物識別が実行される。ここで二値化によって、四角形の対象物識別が容易になる。
【0013】
本発明の方法の有利な発展形態では、四角形の評価による、ノズルパターンに関与している印刷ノズルの状態の特定のために、四角形の平均サイズが統計的に検出される。ここで、計算機によって、通常の四角形の存在から、各印刷ノズルの状態が正しく動作している、正、として導出される。これによって、比較的容易に、インクジェット印刷機のテストされるべき印刷ノズルの状況が評価される。ノズルテストパターンに、通常の四角形が存在する場合には、ここから、全てのパラメータが振幅ならびに印刷方向および印刷方向に直交する方向における位相に関して、所定の値の範囲にあり、したがって関与している印刷ノズルが正しく動作していることが想定される。ここでこの通常の四角形は、予期される平均サイズの、閉じている四角形に関して、予期されるパラメータに相当している。
【0014】
本発明の方法の有利な発展形態では、印刷ノズルの印刷の質の改良のための措置は、所望の印刷の質の範囲外にある状態を有している印刷ノズルをオフにし、次に、隣接している印刷ノズルによってこれを補償し、印刷時点を整合させることによって、印刷方向において印刷点の偏差を有する印刷ノズルを補償することを含んでいる。どの補償方法が使用されるのかは、該当するインクジェット印刷機の能力に関連している。しかし、隣接している印刷ノズルによる補償が特に適していることが判明している。この場合には、隣接している印刷ノズルのインク体積が相応に増やされ、これによって、生じている「ホワイトライン」が合流する。
【0015】
さらに、本発明は、上述した請求項のうちの1つに記載されている方法において使用されるノズルテストパターンから成り、このノズルテストパターンは、周期的に鉛直に印刷された等間隔の線の、特定数の水平な列から成る。これらの線は上下に配置されている。ここで、デジタルノズルテストパターンの各列においてそれぞれn番目の印刷ノズルだけがデジタルノズルテストパターンに関与しており、nは、1から水平な列の特定数との間における各列において異なる数に相当する。このノズルテストパターンは、さらに、水平な列の間に水平な線があることを特徴とする。これらの水平な線は、四角形の対象物が形成されるように、鉛直に印刷された等間隔の線を取り囲む。
【0016】
本発明のノズルテストパターンの有利な発展形態では、水平な線は、複数のピクセルによる所定の画線太さを有している。本発明のノズルテストパターンに対しても、鉛直に印刷された等間隔の線を取り囲むことによって四角形の対象物を生成する水平な線が、それら自身、場合によって存在する「ミッシングノズル」もしくは欠陥を有する印刷ノズルによって侵害されてはいけないということが当てはまるので、これらの水平な線は、複数のピクセルによる所定の画線太さで印刷されるべきである。このために、上述したように、鉛直の等間隔の線の他に当然ながら水平な線も印刷しなければならない、関与している全ての印刷ノズルが、相応する、比較的大きいインク滴体積を、水平な線の印刷に使用する。個々の印刷ノズルが「ミッシングノズル」として故障している場合、増大したインク滴体積によって、水平な線における間隙が相応に隣接している印刷ノズルによって塞がれ、これによって完全な水平な線および相応に閉じた四角形が得られる。
【0017】
本発明自体ならびに構造的かつ/または機能的に有利な、本発明の発展形態を以降で、属する図面を参照して、少なくとも1つの有利な実施例に基づいてより詳細に説明する。図面では、相応する要素にはそれぞれ同じ参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】「ミッシングノズル」によって生じた「ホワイトライン」の概略的な例
【
図3】10マスのパターンを有する2つの行のノズルテストパターンの一部分
【
図5】欠陥を有する四角形を用いた位相欠陥の対象物識別
【
図6】分割された、欠陥を有する四角形を用いた位相欠陥の対象物識別
【0019】
有利な実施形態の適用領域は、インクジェット印刷機7である。このような印刷機7の基本的な構造の例は、印刷基材2を印刷機構4に供給するフィーダ1から、デリバリ3までであり、
図1に示されている。印刷機構では印刷ヘッド5によって印刷が施される。ここでこれは、制御計算機6によってコントロールされる枚葉インクジェット印刷機7である。このような印刷機7の動作時には、上述したように、印刷機構4内の印刷ヘッド5内で、個々の印刷ノズルが故障することがある。この結果、「ホワイトライン」9もしくは多色印刷の場合には、歪んだ色値が生じる。印刷画像8におけるこのような「ホワイトライン」9の例は、
図2に示されている。
【0020】
このような「ホワイトライン」9を検出するために、規則的な間隔で、印刷された対象物12(多くの場合にはこれは印刷方向における画線12の形態である)の複数の列を伴うノズルテストパターン11が印刷される。ここで個々の印刷ノズルはそれぞれ、対象物12の各列に対して順番に関与している。印刷されたノズルテストパターン11aは次に、検出され、デジタル化され、個々の対象物12が計算機6によって計測され、評価される。対象物12の状態から、計算機6は次に、印刷ノズルの状態17の評価を、振幅および位相等のパラメータに関して実行することができる。計算機6として、印刷機の制御計算機が使用される。しかし多くの場合には、画像検出システム10の計算機が使用され、これによって印刷されたノズルテストパターン11aが検出され、デジタル化される。画像検出システム10は、ここで、有利にはインラインで、インクジェット印刷機7内で、印刷ヘッド5の後に取り付けられている。
【0021】
本発明は、ここで、このような再デジタル化されたノズルテストパターン11bの評価に関して、画像処理、具体的には対象物分割の作用を利用する。
図7は、概略的に、本発明の方法のフローを有利な実施形態で示している。類似の画線形状のノズルテストパターン11が、記載されたように使用される。ここで各印刷ノズルは鉛直な線12を印刷し、ある行において印刷ノズルの間隔がNの場合には、N個の行が上下(印刷方向)に生じる。ここでは、印刷ノズルの小さい使用可能な点が使用される。ノズルの全体は付加的に、シームレスに、行の間に、列状に配置されている鉛直な(印刷方向に延びる)線もしくは画線12の間に、水平な(印刷方向に対して垂直に延びる)線18を書き入れる。このような線18は複数のピクセルから成り、このために、必要な場合には、線12よりも比較的大きいインク滴体積が使用され、これによって印刷ノズルは大きい点を書き入れる。これによって、欠陥を有する印刷ノズルがこのような水平な線18において、間隙を生成することが回避される。通常の場合には四角形14がノズルテストパターン11内に生じるように、水平な線18は鉛直な線12を取り囲んでいる。これは例示的に
図3に示されている。従来技術において、このような水平な線18は知られていない。従来技術では、画線の行のより良好な区別のために自由選択的に使用される水平な線も存在しているが、これらは閉じておらず、ノズルテストパターン11において四角形14を形成しない。印刷されたノズルパターン11aは次に、画像検出システム10によって撮影される。画像撮影時には、有利には、軽度の過度露光が使用され、これによって、機能が低下したノズルによる、中断箇所を有する線がより強く透けて見える。再デジタル化されたノズルテストパターン11bは次に、計算機6によって、動的に検出された閾値に従って二値化され、これによって、二値化されたノズルテストパターン11cが生じる。これはより良好に評価される。
【0022】
四角形14はここで、計算機6によって所期のように、対象物識別のための画像処理アルゴリズムを用いて、二値化されたノズルテストパターン11cにおいて探され、評価される。
図4において見て取れるように、このために四角形14の平均サイズが統計的に検出される。ここでは、特定の印刷ノズル状態17によって特定の欠陥画像が四角形14において生じる。例えば、印刷ノズルが完全に故障している場合には、線12は書き入れられず、ノズルテストパターン内のこの箇所において予期される、閉じている四角形14は形成されない。計算機6はここでその代わりに、予期されているもののほぼ二倍のサイズの四角形を見つけ、これによって、印刷ノズルが欠陥を有することを推測することができる。これに対して印刷ノズルに位相欠陥13がある場合、すなわちY方向もしくは印刷方向における偏差がある場合、閉じている四角形14は生成されない。なぜなら、間隙が生じているからである(
図5も参照)。ここではその代わりに、開いている四角形15が生じている。計算機6もしくは画像処理アルゴリズムはここで、閉じている四角形14が存在せず、予期されている、通常の四角形14とは異なり得る別の対象物15が存在していることを識別し、これによって位相欠陥13を検出する。印刷ノズルに、中断につながる障害がある場合には、ここから生じる振幅欠陥は次のことによって求められる。すなわち、鉛直な線が中断箇所を有している、もしくは完全に書き入れられていないことによって求められる。印刷ノズルがX方向に傾斜している場合、すなわち印刷方向に対して横向きに傾斜している場合、2つの、閉じている四角形14が生じ、それらの四角形のサイズはそれぞれ僅かに、通常のサイズとは異なっている。該当する印刷ノズルが僅かに左側へ印刷する場合、左に置かれる四角形14は僅かに小さくなる。印刷ノズルが右側に偏差している場合、置かれる四角形14は相応に小さくなる。したがって四角形14のこのようなサイズの偏差から、関与している印刷ノズルの偏差が識別される。
【0023】
X方向における故障している印刷ノズル、振幅欠陥ならびに位相欠陥は基本的には、本発明の四角形を用いずに、通常のノズルテストパターンによっても検出される。したがって四角形14を伴う本発明のノズルテストパターン11もしくはこれを評価するための本発明の方法の主要な利点は、Y方向における位相欠陥13を格段に効率的に検出することにある。このような位相欠陥は、通常のノズルテストパターンによっては検出困難である、もしくは全く検出されない。
【0024】
四角形14の対象物識別、特にY方向における位相欠陥13の検出のための、説明された実施形態はさらに改良される。このような改良は、
図6に示されているような、計算機6によってノズルパターンの列がより小さい水平方向の領域16に分けられる別の有利な実施形態において行われる。計算機6はここで、領域16毎に振幅信号を特定し、これを以降のように評価する。
【0025】
鉛直な印刷ノズル線12が予期されるセルが、振幅信号を特定するために使用される。場合によっては、ノズル線の内側の領域19だけが信号の特定に使用され、これによって、信号における水平な線18の過度放射も回避される。セルの内側の領域19は、鉛直な印刷ノズル線12が予期される領域である。ここで内側の領域19は水平に、複数の部分領域に区分けされる。水平な線18の周りの白抜きされた領域も使用される場合、もしくは振幅信号の周りの部分領域が特定されるべき場合、通常、振幅信号は過度放射のために、同じであるはずである、またはより強いはずである。しかし、水平方向のセパレータでの2つの部分領域のうちの1つにおいて振幅信号が、振幅信号を特定するための元来の内側の領域19よりも小さい場合、印刷ノズルの位相欠陥13が存在している。
【符号の説明】
【0026】
1 フィーダ
2 目下の印刷基材/目下の印刷枚葉紙
3 デリバリ
4 インクジェット印刷機構
5 インクジェット印刷ヘッド
6 計算機
7 インクジェット印刷機
8 目下の印刷枚葉紙上の印刷画像
9 ホワイトライン
10 インライン画像検出システム
11 ノズルテストパターン
11a 印刷されたノズルテストパターン
11b 検出された、再デジタル化されたノズルテストパターン
11c 二値化されたノズルテストパターン
12 鉛直な印刷ノズル線
13 印刷方向における位相欠陥を有する印刷ノズル画線
14 対象物識別によって検出された、閉じている四角形
15 開いている四角形
16 四角形のより小さい評価領域
17 求められた印刷ノズル状態
18 ノズルテストパターンにおける水平な線
19 振幅信号を特定するための内側の領域