(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240401BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20240401BHJP
F16K 11/078 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B60H1/32 624G
F16K11/07 L
F16K11/078 Z
(21)【出願番号】P 2020015517
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】田邊 博隆
(72)【発明者】
【氏名】羽瀬 知樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】立野井 秀哲
(72)【発明者】
【氏名】仲戸 宏治
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132429(JP,A)
【文献】特開2014-020280(JP,A)
【文献】特開2017-008847(JP,A)
【文献】特開2016-199203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253105(US,A1)
【文献】特開2017-210970(JP,A)
【文献】実開昭50-101226(JP,U)
【文献】特開2014-201224(JP,A)
【文献】特開2014-218237(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が順次流通する圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、
前記凝縮器で前記冷媒と熱交換した高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路と、
前記蒸発器で前記冷媒と熱交換した低温熱媒体が循環する低温熱媒体回路と、
前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路とを接続する接続ラインと、
該熱媒体を導入可能な複数の車外熱交換器と、
複数ある前記車外熱交換器のそれぞれについて、前記高温熱媒体回路と接続する
暖房除霜モードと、前記低温熱媒体回路と接続する
強暖房モードと、前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路のどちらとも接続しないモードとに切り替え可能な切替部と、
を備え
、
前記切替部は、
軸線方向に進退するとともに前記軸線回りに回動可能な複数の弁体と、
前記複数の弁体を覆うとともに、該弁体によって開閉可能な4つの流路を形成する弁ケーシングと、
を有する車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクルは、前記強暖房モードでは、全ての前記車外熱交換器で
室外気と熱交換する前記熱媒体の温度が外気温よりも低い状態となるように前記冷媒の温度を調節する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷凍サイクルは、前記暖房除霜モードでは、前記
蒸発器で前記冷媒と熱交換した前記熱媒体が流れ込む前記車外熱交換器とは異なる前記車外熱交換器で
室外気と熱交換する前記熱媒体の温度が水の凝固点よりも高い状態となるように前記冷媒の温度を調節する請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数の弁体のうちの1つは、前記軸線に対する周方向に間隔をあけて四方向に開口する第一開口部が形成されているとともに、前記周方向に隣接する一対の前記第一開口部を前記弁体の内部で連通させる第一連通路が形成されている第一弁体である請求項
1から3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記複数の弁体のうちの1つは、前記軸線に対する周方向に間隔をあけて三方向に開口する第二開口部が形成されているとともに、前記3つの第二開口部を前記弁体の内部で連通させる第二連通路が形成されている第二弁体である請求項
1から4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記複数の弁体のうちの1つは、前記軸線に対する周方向に間隔をあけて二方向に開口する第三開口部が形成されているとともに、前記2つの第三開口部を前記弁体の内部で連通させる第三連通路が形成されている第三弁体である請求項
1から5のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記複数の弁体のうちの1つは、前記軸線に対する周方向に間隔をあけて四方向に開口する第四開口部が形成されているとともに、前記軸線に対する直径方向両側に位置する一対の前記第四開口部を前記弁体の内部で連通させる第四連通路が形成されている第四弁体である請求項
1から6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記切替部は、前記高温熱媒体回路、及び前記低温熱媒体回路の流通状態を変化させることが可能な複数の弁装置であり、
軸線を中心とする円柱状をなすとともに、該軸線方向に配列され、該軸線回りに回動可能な複数の前記弁体と、
前記複数の弁体を覆うとともに、前記高温熱媒体回路、及び前記低温熱媒体回路の少なくとも一方に連通する4つの流路を形成する前記弁ケーシングと、
前記複数の弁体を前記弁ケーシング内で前記軸線方向に進退させるとともに、前記軸線回りに回動させるアクチュエータと、
を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やトラックを含む車両に搭載される車両用空調装置の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された装置は、圧縮機、膨張弁、蒸発器(熱媒体冷却器)、及び凝縮器(熱媒体加熱器)を有するとともに冷媒が循環する冷凍サイクルと、蒸発器に低温の熱媒体を供給することで上記冷媒と当該熱媒体とを熱交換させる第1熱媒体回路と、冷却水加熱器に高温の熱媒体を供給することで上記冷媒と当該熱媒体とを熱交換させる第2熱媒体回路と、を備えている。
【0003】
つまり、各熱媒体回路は冷凍サイクルに対して独立した循環路となっている。これにより、冷凍サイクルを車室外で完結させながら、車両の熱マネジメントを行うことができるとされている。
【0004】
ところで、上記熱媒体と外気(車室外空気)とを熱交換する車外熱交換器と接続された上記車両用空調装置の運転中には、外気温が氷点以上かつラジエータ内を流れる熱媒体の温度が氷点以下の場合、車外熱交換器の表面で凝縮した空気中の水分が凍結し、霜が付着する(着霜する)ことがある。着霜が進行すると、ラジエータの通気性能が阻害されてしまう虞がある。そこで、特許文献1の装置では、着霜が生じた場合に、ラジエータに高温の冷却水を供給して霜を除去する構成を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ラジエータに高温の熱媒体を供給すると、熱媒体の温度が外気温より高くなるため、外気からの吸熱ができなくなる。これにより、ヒートポンプサイクルによる暖房運転ができなくなってしまう虞がある。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、除霜と暖房運転とを両立させることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る車両用空調装置は、冷媒が順次流通する圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、前記凝縮器で前記冷媒と熱交換した高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路と、前記蒸発器で前記冷媒と熱交換した低温熱媒体が循環する低温熱媒体回路と、前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路とを接続する接続ラインと、該熱媒体を導入可能な複数の車外熱交換器と、複数ある前記車外熱交換器のそれぞれについて、前記高温熱媒体回路と接続する暖房除霜モードと、前記低温熱媒体回路と接続する強暖房モードと、前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路のどちらとも接続しないモードとに切り替え可能な切替部と、を備え、前記切替部は、軸線方向に進退するとともに前記軸線回りに回動可能な複数の弁体と、前記複数の弁体を覆うとともに、該弁体によって開閉可能な4つの流路を形成する弁ケーシングと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両用空調装置によれば、除霜と暖房運転とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図であって、強暖房モードで運転されている状態を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図であって、暖房除霜モードで第一車外熱交換器を除霜している状態を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す系統図であって、暖房除霜モードで第二車外熱交換器を除霜している状態を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る切替部としての弁装置の構成を示す断面図である。
【
図6】第一弁体における第一連通路の構成を示す模式図である。
【
図8】第二弁体における第二連通路の構成を示す模式図である。
【
図10】第三弁体における第三連通路の構成を示す模式図である。
【
図12】第四弁体における第四連通路の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(車両用空調装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る車両用空調装置100について、
図1から
図12を参照して説明する。車両用空調装置100は、自動車やトラック等の輸送機械(車両)に搭載される。つまり、この車両用空調装置100によって、車両の内外の温度差が調節される。
図1に示すように、車両用空調装置100は、冷凍サイクル1と、高温熱媒体回路2と、低温熱媒体回路3と、第一接続ライン41と、第二接続ライン42と、第三接続ライン43と、第四接続ライン44と、切替部5と、を備えている。なお、
図1から
図3中では、開通状態にある配管を実線で示し、閉止状態にある配管を破線で示している。
【0012】
冷凍サイクル1は、冷媒を流通させる配管である冷媒ライン11と、当該冷媒ライン11上に配置された圧縮機12と、凝縮器13と、膨張弁14と、蒸発器15と、を有している。これら圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14、及び蒸発器15は、冷媒ライン11上でこの順に配列されている。また、冷凍サイクル1が運転されている場合には、冷媒もこの順で各装置を通過する。
【0013】
圧縮機12は、冷媒ライン11内の冷媒を圧送する。これにより、圧縮機12を通過した後の冷媒の圧力、及び温度は、通過前の冷媒に比べて上昇する。凝縮器13は、当該凝縮器13に流れ込んだ冷媒と、高温熱媒体回路2を流通する熱媒体(後述)との間で熱交換をさせる。膨張弁14は、当該膨張弁14を通過する冷媒の圧力を下げることで、温度を急激に低下させる。蒸発器15は、当該蒸発器15に流れ込んだ冷媒と、低温熱媒体回路3を流通する熱媒体(後述)との間で熱交換をさせる。
【0014】
高温熱媒体回路2は、上記の凝縮器13に冷却水を導入する高温熱媒体ライン23と、当該高温熱媒体ライン23上で互いに並列に配置されているヒータコア21、及びクーラコア22と、熱媒体を圧送する高温熱媒体用ポンプ24と、を有している。つまり、凝縮器13から流れ出た熱媒体は、ヒータコア21、及びクーラコア22のそれぞれに向かって分岐して流入することが可能とされている。ヒータコア21、及びクーラコア22は、車両の室内側に配置される熱交換器である。ヒータコア21、及びクーラコア22は、室内気および室外気と熱媒体との間で熱交換をさせる。なお、暖房運転時にはまずクーラコア22によって空気を冷却することで湿分を除去し、その後ヒータコア21によって当該空気を加温することで、室内の湿度上昇を抑えつつ、室温を上げる運転が可能である。
【0015】
低温熱媒体回路3は、上記の蒸発器15に熱媒体を導入する低温熱媒体ライン33と、当該低温熱媒体ライン33上で互いに並列に配置されている第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32と、熱媒体を圧送する低温熱媒体用ポンプ34と、を有している。つまり、蒸発器15から流れ出た熱媒体は、第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32のそれぞれに向かって分岐して流入することが可能とされている。これら第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32は、車両の室外側に配置される熱交換器である。第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32は、室外気と熱媒体との間で熱交換をさせる。
【0016】
第一接続ライン41、及び第二接続ライン42は、高温熱媒体回路2と低温熱媒体回路3とを接続する配管である。つまり、これら第一接続ライン41、及び第二接続ライン42には熱媒体が流通する。第一接続ライン41、及び第二接続ライン42は、互いに並列である。つまり、高温熱媒体回路2と低温熱媒体回路3は、車両用空調装置100の運転状態(運転モード)に応じて、これら第一接続ライン41、及び第二接続ライン42の少なくとも一方によって接続されることが可能である。
【0017】
第三接続ライン43、及び第四接続ライン44も、高温熱媒体回路2と低温熱媒体回路3とを接続する配管である。つまり、これら第三接続ライン43、及び第四接続ライン44には熱媒体が流通する。第三接続ライン43、及び第四接続ライン44は、互いに並列である。つまり、高温熱媒体回路2と低温熱媒体回路3は、車両用空調装置100の運転状態(運転モード)に応じて、上述の第一接続ライン41、及び第二接続ライン42の少なくとも一方に加えて、これら第三接続ライン43、及び第四接続ライン44の少なくとも一方によって接続されることが可能である。また、本実施形態では、第三接続ライン43上にのみ、車両の補機類である車載機器90が配置されている。この車載機器90の一例として、具体的にはバッテリーが挙げられる。
【0018】
高温熱媒体回路2、低温熱媒体回路3、第一接続ライン41、第二接続ライン42、第三接続ライン43、及び第四接続ライン44を流通する冷却水の経路は、切替部5によって切り替えることが可能とされている。言い換えれば、冷却水の流通経路を切り替えることによって、車両用空調装置100の運転状態(運転モード)が切り替えられる。
【0019】
切替部5は、自身が接続されている複数の流路同士の間で熱媒体の流通状態を切り替えることが可能な弁装置(切替弁)である。
図1に示すように、本実施形態では、各流路を接続する複数(8つ)の接続部分にそれぞれ1つずつの切替部5が設けられている。これら8つの切替部5のうち、第一接続ライン41と第二接続ライン42の2つの接続部のうち、クーラコア22に近接する側の接続部に設けられている切替部5は第一弁装置51とされている。
【0020】
高温熱媒体回路2におけるヒータコア21とクーラコア22との間の2つの分岐点に設けられている切替部5は、それぞれ第二弁装置52、第三弁装置53とされている。第三弁装置53は、クーラコア22と凝縮器13との間であって、上記の高温熱媒体用ポンプ24が設けられている側の分岐点に設けられている。第二弁装置52は、クーラコア22と凝縮器13との間であって、上記の高温熱媒体用ポンプ24が設けられていない側の分岐点に設けられている。
【0021】
第三接続ライン43と第四接続ライン44の2つの接続部のうち、クーラコア22に近接する側の接続部に設けられている切替部5は第四弁装置54とされている。
【0022】
同様にして、第一接続ライン41と第二接続ライン42の2つの接続部のうち、第二車外熱交換器32に近接する側の接続部に設けられている切替部5は第五弁装置55とされている。
【0023】
低温熱媒体回路3における第一車外熱交換器31及び第二車外熱交換器32の間の2つの分岐点に設けられている切替部5は、それぞれ第六弁装置56、第七弁装置57とされている。第六弁装置56は、第一車外熱交換器31と第二車外熱交換器32との間であって、上記の低温熱媒体用ポンプ34が設けられている側の分岐点に設けられている。第七弁装置57は、第一車外熱交換器31と第二車外熱交換器32との間であって、上記の低温熱媒体用ポンプ34が設けられていない側の分岐点に設けられている。
【0024】
第三接続ライン43と第四接続ライン44の2つの接続部のうち、第二車外熱交換器32に近接する側の接続部に設けられている切替部5は第八弁装置58とされている。
【0025】
図1から
図3中において、各切替部5の近傍に付されている記号は、各切替部5の開通状態を示すものである。以下、
図4から
図13を参照して切替部5の具体的な構成を説明し、各記号の表す開通状態に則して
図1から
図3を参照して車両用空調装置100の運転モードの例について説明する。
【0026】
(切替部の構成)
図4に示すように、切替部5は、複数(4つ)の弁体6と、これら弁体6を収容するとともに複数(4つ)の流路71、72、73、74を形成する弁ケーシング7と、弁体6を駆動させるアクチュエータ8と、を有している。
【0027】
各弁体6は、軸線Oに沿って延びる円柱状をなしている。弁ケーシング7内では、4つの弁体6が軸線O方向に配列されている。各弁体6は、アクチュエータ8によって駆動されることで、弁ケーシング7内で当該軸線Oに沿って進退可能であるとともに、当該軸線O回りに回動することが可能とされている。つまり、軸線O方向に弁体6を進退させることで、形状の異なる4つの弁体6のうちのいずれか1つを選択的に用いることが可能とされている。各弁体6の詳細な構成については後述する。
【0028】
弁ケーシング7は、4つの弁体6を軸線Oに対する外周側から覆う筒状をなしている。また、
図5に示すように、弁ケーシング7には、上述の高温熱媒体回路2、及び低温熱媒体回路3の少なくとも一方に連通する4つの流路71、72、73、74が形成されている。各流路71、72、73、74は、軸線Oを中心として周方向に90°の間隔をあけて放射状に延びている。各流路71、72、73、74の軸線O方向における位置は互いに同一である。
【0029】
図6と
図7に示すように、4つの弁体6のうちの1つ(第一弁体61)には、軸線Oに対する周方向に90°の間隔をあけて四方向に開口する4つの開口部(第一開口部H1)が形成されている。また、これら4つの第一開口部H1のうち、周方向に隣接する一対の第一開口部H1同士は、当該第一弁体61の内部に形成された第一連通路C1によってそれぞれ互いに連通している。
図6は、この第一弁体61の形状を模式的に示したものであり、
図1~
図3中に記されている符号と対応している。例えば、第一弁装置51では、第二弁体62が選択されているとともに、当該第二弁体62の姿勢により、高温熱媒体回路2と第一接続ライン41、及び第二接続ライン42が連通した状態となっている。以降の説明では、このように選択されている弁体6の種類とその姿勢が
図1~
図3中の記号によって示されている。
【0030】
図8と
図9に示すように、4つの弁体6のうちの1つ(第二弁体62)には、軸線Oに対する周方向に間隔をあけて三方向に開口する3つの開口部(第二開口部H2)が形成されている。また、これら3つの第二開口部H2は、当該第二弁体62の内部に形成された第二連通路C2によって互いに連通している。なお、各第二開口部H2同士の間の周方向における間隔は均一ではない。つまり、第二連通路C2は、軸線O方向から見てT字状をなしている。したがって、4つの流路71、72、73、74のうち、いずれか3つの流路のみが当該第二弁体62によって連通した状態となる。
図8は、この第二弁体62の形状を模式的に示したものであり、
図1~
図3中に記されている符号と対応している。
【0031】
図10と
図11に示すように、4つの弁体6のうちの1つ(第三弁体63)には、軸線Oに対する周方向に180°の間隔をあけて二方向に開口する2つの開口部(第三開口部H3)が形成されている。また、これら第三開口部H3同士は、当該第三弁体63の内部に形成された第三連通路C3によって互いに連通している。4つの流路71、72、73、74のうち、いずれか2つの流路のみが当該第三弁体63によって連通した状態となる。
図10は、この第三弁体63の形状を模式的に示したものであり、
図1~
図3中に記されている符号と対応している。
【0032】
図12と
図13に示すように、4つの弁体6のうちの1つ(第四弁体64)には、軸線Oに対する周方向に90°の間隔をあけて四方向に開口する4つの開口部(第四開口部H4)が形成されている。また、これら4つの第四開口部H4のうち、軸線Oに対する直径方向の両側に位置する一対の第四開口部H4同士は、それぞれ当該第四弁体64の内部に形成された第四連通路C4によって互いに連通している。2つの第四連通路C4同士は、第四弁体64の内部で、軸線O方向に干渉しないようにそれぞれ湾曲している。なお、
図13中では、図示の煩雑化を避けるため、一方の第四連通路C4のみを図示し、他方の第四連通路C4の図示を省略している。4つの流路71、72、73、74のうち、いずれか2つの流路のみが当該第四弁体64によって連通した状態となる。
図12は、この第四弁体64の形状を模式的に示したものであり、
図1~
図3中に記されている符号と対応している。
【0033】
(強暖房モード)
次いで、
図1を参照して、車両用空調装置100の運転モードの1つである「強暖房モード」時の動作について説明する。なお、以降で説明する冷媒、及び熱媒体の流通経路は、各切替部5を
図1中の記号に示す状態とすることによって実現される。
【0034】
このモードの場合、高温熱媒体回路2では、高温熱媒体用ポンプ24からヒータコア21を経て、凝縮器13に向かう方向に熱媒体が循環している。冷凍サイクル1では、冷媒ライン11中の冷媒と、高温熱媒体ライン23中の熱媒体との間で熱交換が行われる。つまり、熱媒体は、凝縮器13内で冷媒から吸熱することで加温される。加温された熱媒体の熱は、ヒータコア21から放熱され、クーラコア22の近傍に配置された室内ファン(不図示)によって室内に送風として送られる。
【0035】
また、この時、低温熱媒体回路3では、蒸発器15で冷媒と熱交換した熱媒体が、2つの車外熱交換器(第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32)の全てに導入される。つまり、冷媒は、蒸発器15内で熱媒体から吸熱することで加温される。加温された冷媒の熱は、冷凍サイクル1(冷媒ライン11)を通じて上述の凝縮器13で、高温熱媒体回路2中を流通する熱媒体に受け渡される。このように、強暖房モードでは、2つの車外熱交換器(第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32)の双方に熱媒体を導入することで、熱交換を促進して、暖房性能を向上させることができる。
【0036】
(暖房除霜モード)
次いで、
図2を参照して、車両用空調装置100の運転モードの1つである「暖房除霜モード」時の動作について説明する。なお、以降で説明する冷媒、及び熱媒体の流通経路は、各切替部5を
図2中の記号に示す状態とすることによって実現される。
【0037】
このモードの場合、高温熱媒体回路2では、強暖房モードと同様に、高温熱媒体用ポンプ24からヒータコア21を経て、凝縮器13に向かう方向に熱媒体が循環している。冷凍サイクル1では、冷媒ライン11中の冷媒と、高温熱媒体ライン23中の熱媒体との間で熱交換が行われる。つまり、熱媒体は、凝縮器13内で冷媒から吸熱することで加温される。加温された冷却水の熱は、ヒータコア21から放熱され、クーラコア22の近傍に配置された室内ファン(不図示)によって室内に送風として送られる。
【0038】
一方で、低温熱媒体回路3では、蒸発器15で冷媒と熱交換した低温熱媒体が、一方の車外熱交換器(第二車外熱交換器32)のみに導入される。このとき、上述の暖房モードと同様に、冷媒は蒸発器15内で低温熱媒体から吸熱することで加温される。加温された冷媒の熱は、冷凍サイクル1(冷媒ライン11)を通じて上述の凝縮器13で、高温熱媒体回路中を流通する熱媒体に受け渡される。また、他方の(残りの)車外熱交換器(第一車外熱交換器31)は、上述の第二接続ライン42、及び第四接続ライン44によって、高温熱媒体回路2に接続されている。これにより、第一車外熱交換器31には、第四接続ライン44を通じて、高温熱媒体回路2を流通する相対的に高温の熱媒体が流れ込む。第一車外熱交換器31の表面に霜が付着している場合(着霜している場合)、高温熱媒体によって当該第一車外熱交換器31が加温され、霜が除去される。その後、高温熱媒体は第二接続ライン42を通じて高温熱媒体回路2に戻される。
【0039】
なお、
図3に示すような経路を採ることで、上記とは反対に第一車外熱交換器31で暖房を行い、第二車外熱交換器32で除霜を行うことも可能である。このように、暖房除霜モードでは、第一車外熱交換器31、及び第二車外熱交換器32のうちの一方で除霜を行うと同時に、他方で暖房を行うことができる。
【0040】
(作用効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、強暖房モードでは、第一及び第二の車外熱交換器31、32の全てに熱媒体を導入することで、例えば車外熱交換器を1つのみ備える構成に比べて、暖房性能を向上させることができる。さらに、暖房除霜モードでは、一部のみの車外熱交換器に熱媒体を導入し、残りの車外熱交換器は高温熱媒体回路2と接続された状態となる。ここで、高温熱媒体回路2を流通する熱媒体は、低温熱媒体回路3、及び当該残りの車外熱交換器を流通する熱媒体に比べて相対的に高温、かつ水の凝固点よりも高い温度となっている。したがって、残りの車外熱交換器に着霜が生じている場合には、高温の熱媒体によって除霜することができる。このように、一方の車外熱交換器による暖房運転と、他方の車外熱交換器における除霜とを両立させることができる。
【0041】
また、上記構成によれば、全ての車外熱交換器に導入される熱媒体の温度が外気温よりも低いことによって、暖房性能をより一層向上させることができる。
【0042】
さらに、上記構成によれば、残りの車外熱交換器に導入される熱媒体の温度が外気温よりも高く、かつ水の凝固点よりも高いことによって、当該残りの車外熱交換器における除霜をより早急かつ効率的に行うことができる。
【0043】
加えて、上記構成によれば、複数の弁体6を弁ケーシング7内で軸線O方向に進退動、又は軸線O回りに回動させることによって、複数の流路71、72、73、74の連通状態を切り替えることができる。特に、複数必要とされる弁装置(切替部5)を1つの構成のみに統一することができる。さらに、接続箇所を容易に増加させることができるため、装置の発展性を確保することもできる。また、製造時に複数種類の弁装置から適切な種類を選択して取り付ける工程を省略することができる。その結果、製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。
【0044】
上記構成によれば、第一弁体61によって、4つの流路71、72、73、74のうち、互いに隣接する一対の流路を第一連通路C1によって連通させることができる。さらに、この第一弁体61を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つずつの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0045】
上記構成によれば、第二弁体62によって、4つの流路71、72、73、74のうち、3つの流路を第二連通路C2によって互いに連通させることができる。さらに、この第二弁体62を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの3つの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0046】
上記構成によれば、第三弁体63によって、4つの流路71、72、73、74のうち、2つの流路を第三連通路C3によって互いに連通させることができる。さらに、この第三弁体63を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0047】
上記構成によれば、第四弁体64によって、4つの流路71、72、73、74のうち、直径方向の両側に位置する2つの流路を第四連通路C4によって互いに連通させることができる。さらに、この第四弁体64を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つずつの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述した。なお、具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の車両用空調装置100では、各切替部5の状態を適宜切り替えることによって、強暖房モード、及び暖房除霜モードだけでなく、冷房モード等を含む他のモードで運転することができる。
【0049】
<付記>
各実施形態に記載の車両用空調装置は、例えば以下のように把握される。
【0050】
(1)第1の態様に係る車両用空調装置100は、冷媒が順次流通する圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14及び蒸発器15を有する冷凍サイクル1と、前記凝縮器13で前記冷媒と熱交換した高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路と、前記蒸発器15で前記冷媒と熱交換した低温熱媒体が循環する低温熱媒体回路3と、前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路とを接続する接続ライン41、42、43、44と、該熱媒体を導入可能な複数の車内熱交換器21、22と、該熱媒体を導入可能な複数の車外熱交換器31、32と、複数ある前記車外熱交換器のそれぞれについて、前記高温熱媒体回路と接続するモードと、前記低温熱媒体回路と接続するモードと、前記高温熱媒体回路と前記低温熱媒体回路のどちらとも接続しないモードとに切り替え可能な切替部5と、を備える。
【0051】
上記構成によれば、強暖房モードでは、第一及び第二の車外熱交換器31,32の全てに冷却水を導入することで、例えば車外熱交換器を1つのみ備える構成に比べて、暖房性能を向上させることができる。さらに、暖房除霜モードでは、一部のみの車外熱交換器31,32に低温熱媒体を導入し、残りの車外熱交換器31,32は高温熱媒体回路2と接続された状態となる。ここで、高温熱媒体回路2を流通する高温熱媒体は、低温熱媒体回路3、及び当該残りの車外熱交換器31,32を流通する低温熱媒体に比べて相対的に高温となっている。したがって、残りの車外熱交換器31,32に着霜が生じている場合には、高温熱媒体によって除霜することができる。このように、上記構成によれば、一方の車外熱交換器31又は32による暖房運転と、他方の車外熱交換器32又は31における除霜とを同時に行うことができる。
【0052】
(2)第2の態様に係る車両用空調装置100では、前記冷凍サイクル1は、前記強暖房モードでは、全ての前記車外熱交換器31,32で前記冷媒と熱交換する前記熱媒体の温度が外気温よりも低い状態となるように前記冷媒の温度を調節する。
【0053】
上記構成によれば、全ての車外熱交換器31,32に導入される熱媒体の温度が外気温よりも低いことによって、暖房性能をより一層向上させることができる。
【0054】
(3)第3の態様に係る車両用空調装置100では、前記冷凍サイクル1は、前記暖房除霜モードでは、前記残りの車外熱交換器31又は32で前記冷媒と熱交換する前記熱媒体の温度が水の凝固点よりも高い状態となるように前記冷媒の温度を調節する。
【0055】
上記構成によれば、残りの車外熱交換器31又は32に導入される熱媒体の温度が水の凝固点よりも高いことによって、当該残りの車外熱交換器31又は32における除霜をより早急かつ効率的に行うことができる。
【0056】
(4)第4の態様に係る車両用空調装置100では、前記切替部5は、前記高温熱媒体回路2、及び前記低温熱媒体回路3の流通状態を変化させることが可能な複数の弁装置であり、軸線Oを中心とする円柱状をなすとともに、該軸線O方向に配列され、該軸線O回りに回動可能な複数の弁体6と、前記複数の弁体6を覆うとともに、前記高温熱媒体回路2、及び前記低温熱媒体回路3の少なくとも一方に連通する4つの流路71、72、73、74を形成する弁ケーシング7と、前記複数の弁体6を前記弁ケーシング7内で前記軸線O方向に進退させるとともに、前記軸線O回りに回動させるアクチュエータ8と、を有する。
【0057】
上記構成によれば、複数の弁体6を弁ケーシング7内で軸線O方向に進退動、又は軸線O回りに回動させることによって、複数の流路71、72、73、74の連通状態を切り替えることができる。特に、複数必要とされる弁装置を1つの構成のみに統一することができる。さらに、接続箇所を容易に増加させることができるため、装置の発展性を確保することもできる。また、製造時に複数種類の弁装置から適切な種類を選択して取り付ける工程を省略することができる。その結果、製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。
【0058】
(5)第5の態様に係る車両用空調装置100では、前記複数の弁体6のうちの1つは、前記軸線Oに対する周方向に間隔をあけて四方向に開口する第一開口部H1が形成されているとともに、前記周方向に隣接する一対の前記第一開口部H1を前記弁体6の内部で連通させる第一連通路C1が形成されている第一弁体61である。
【0059】
上記構成によれば、4つの流路71、72、73、74のうち、互いに隣接する一対の流路を第一連通路C1によって連通させることができる。さらに、この第一弁体61を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つずつの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0060】
(6)第6の態様に係る車両用空調装置100では、前記複数の弁体6のうちの1つは、前記軸線Oに対する周方向に間隔をあけて三方向に開口する第二開口部H2が形成されているとともに、前記3つの第二開口部H2を前記弁体6の内部で連通させる第二連通路C2が形成されている第二弁体62である。
【0061】
上記構成によれば、4つの流路71、72、73、74のうち、3つの流路を第二連通路C2によって互いに連通させることができる。さらに、この第二弁体62を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72,73、74のうちの3つの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0062】
(7)第7の態様に係る車両用空調装置100では、前記複数の弁体6のうちの1つは、前記軸線Oに対する周方向に間隔をあけて二方向に開口する第三開口部H3が形成されているとともに、前記2つの第三開口部H3を前記弁体6の内部で連通させる第三連通路C3が形成されている第三弁体63である。
【0063】
上記構成によれば、4つの流路71、72、73、74のうち、2つの流路を第三連通路C3によって互いに連通させることができる。さらに、この第三弁体63を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【0064】
(8)第8の態様に係る車両用空調装置100では、前記複数の弁体6のうちの1つは、前記軸線Oに対する周方向に間隔をあけて四方向に開口する第四開口部H4が形成されているとともに、前記軸線Oに対する直径方向両側に位置する一対の前記第四開口部H4を前記弁体の内部で連通させる第四連通路C4が形成されている第四弁体64である。
【0065】
上記構成によれば、4つの流路71、72、73、74のうち、直径方向の両側に位置する2つの流路を第四連通路C4によって互いに連通させることができる。さらに、この第四弁体64を軸線O回りに回動させることにより、4つの流路71、72、73、74のうちの2つずつの流路を選択的に連通させることができる。これにより、流路71、72、73、74の連通状態を高い自由度のもとで切り替えることができる。
【符号の説明】
【0066】
100 車両用空調装置
1 冷凍サイクル
2 高温熱媒体回路
3 低温熱媒体回路
5 切替部
6 弁体
7 弁ケーシング
8 アクチュエータ
11 冷媒ライン
12 圧縮機
13 凝縮器
14 膨張弁
15 蒸発器
21 ヒータコア
22 クーラコア
23 高温熱媒体ライン
24 高温熱媒体用ポンプ
31 第一車外熱交換器
32 第二車外熱交換器
33 低温熱媒体ライン
34 低温熱媒体用ポンプ
41 第一接続ライン
42 第二接続ライン
43 第三接続ライン
44 第四接続ライン
51 第一弁装置
52 第二弁装置
53 第三弁装置
54 第四弁装置
55 第五弁装置
56 第六弁装置
57 第七弁装置
58 第八弁装置
61 第一弁体
62 第二弁体
63 第三弁体
64 第四弁体
71,72,73,74 流路
90 車載機器
C1 第一連通路
C2 第二連通路
C3 第三連通路
C4 第四連通路
H1 第一開口部
H2 第二開口部
H3 第三開口部
H4 第四開口部
O 軸線