(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】繊維用集束剤
(51)【国際特許分類】
D06M 13/17 20060101AFI20240401BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20240401BHJP
D06M 13/322 20060101ALI20240401BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20240401BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
D06M13/17
C08J5/06 CEZ
D06M13/322
D06M15/55
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2020022766
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019029940
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪口 幸矢佳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129946(JP,A)
【文献】特開2001-003266(JP,A)
【文献】国際公開第2011/092962(WO,A1)
【文献】特開昭59-199872(JP,A)
【文献】特開2007-321103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
B29B11/16、15/08-15/14、C08J5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を2~8個有する多価活性水素基含有化合物(A0)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物(A)を含有してなり、
前記(A0)が、炭素数2~18の直鎖又は分岐脂肪族ポリアミン(A011)及び炭素数8~15の芳香環含有脂肪族ポリアミン(A013)からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記(A)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)の平均付加モル数が1.5~10であり、空気中で昇温速度5℃/分で加熱した場合における前記(A)の95%熱減量温度(T95)が250~350℃である繊維用集束剤(X)。
【請求項2】
更に、熱硬化性樹脂(B)及び/又は界面活性剤(C)を含有してなる請求項1記載の繊維用集束剤。
【請求項3】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が、請求項1又は2記載の繊維用集束剤(X)で処理された繊維束。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維束を含有する繊維製品。
【請求項5】
請求項3に記載の繊維束又は請求項4に記載の繊維製品を強化繊維とし、熱可塑性樹脂(E)をマトリックスとしてなる樹脂組成物(Y)。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(E)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6記載の樹脂組成物(Y)を成形してなる成形体(Z)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用集束剤に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維用集束剤は、繊維材料とマトリックス樹脂との複合材料に使用される。繊維用集束剤としては、例えば、特定のエポキシ化合物を含有するものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術であっても、エポキシ樹脂以外のマトリックス樹脂では、複合材料(成形体)の強度が十分に満足できるものとは言えず、改良が求められていた。本発明は、成形体に優れた強度を与える繊維用集束剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、活性水素基を2~8個有する多価活性水素基含有化合物(A0)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物(A)を含有してなり、空気中で昇温速度5℃/分で加熱した場合における前記(A)の95%熱減量温度(T95)が250~350℃である繊維用集束剤(X)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の繊維用集束剤(X)は、以下の効果を奏する。
(1)成形体に優れた強度を与える。
(2)成形体に優れた外観を与える。
(3)繊維束に優れた集束性を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<活性水素基を2~8個有する多価活性水素基含有化合物(A0)>
本発明における多価活性水素基含有化合物(A0)としては、例えば、ポリアミン(A01)、ポリオール(A02)及びそれらの混合物が挙げられる。
(A0)の有する活性水素基の数は、2~8個であり、強度及び外観の観点から、好ましくは3~8個、更に好ましくは4~8個である。
【0008】
<ポリアミン(A01)>
本発明におけるポリアミン(A01)としては、例えば、下記の(A011)~(A014)等が挙げられる。
【0009】
(A011)直鎖又は分岐脂肪族ポリアミン(炭素数[以下、Cと略記することがある]2~18)
〔1〕直鎖又は分岐脂肪族ポリアミン〔C2~6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(C2~C6)ポリアミン[例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等]〕
〔2〕直鎖又は分岐脂肪族ポリアミンのアルキル(C1~4)置換体〔例えば、ジアルキル(C1~3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルヘキサメチレンジアミン(2,5-ジメチル-2,5-ヘキサメチレンジアミン等)、メチルイミノビスプロピルアミン等〕
【0010】
(A012)脂環式ポリアミン(C4~15)
例えば、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン等;
【0011】
(A013)芳香環含有脂肪族ポリアミン(C8~15)
例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル-p-キシリレンジアミン等;
【0012】
(A014)芳香族ポリアミン(C6~20)
〔1〕芳香族ポリアミン
例えば、1,2-、1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、2,6-ジアミノピリジン、m-アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリアミン、ナフチレンジアミン;
2,4-又は2,6-トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ビス(o-トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3-ジメチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジメチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,4-ジエチル-2,5-ジアミノベンゼン、1,4-ジブチル-2,5-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノメシチレン、1,3,5-トリエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリイソプロピル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、2,3-ジメチル-1,4-ジアミノナフタレン、2,6-ジメチル-1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジイソプロピル-1,5-ジアミノナフタレン及びこれらの異性体の混合物等;
芳香族ポリアミンの-NH2の一部又は全部が-NH-R’(R’はアルキル基、例えばメチル、エチル等の低級アルキル基)で置き換ったもの(4,4’-ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1-メチル-2-メチルアミノ-4-アミノベンゼン等)等。
【0013】
上記ポリアミン(A01)のうち、強度及び外観の観点から、好ましいのは直鎖又は分岐脂肪族ポリアミン(A011)及び芳香環含有脂肪族ポリアミン(C8~15)(A013)、更に好ましいのはアルキレンジアミン、(A013)、特に好ましいのはエチレンジアミン、キシリレンジアミンである。
【0014】
<ポリオール(A02)>
本発明におけるポリオール(A02)としては、例えば、下記の(A021)~(A023)が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリオール(A021)としては、C2~30のものが挙げられ、好ましくはC4~8のものであり、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が含まれ、例えばエチレングリコール及びその二、三量体、プロピレングリコール及びその二、三量体、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-又は1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,3-プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0016】
脂環式ポリオール(A022)としては、C5~12のものが挙げられ、例えば1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0017】
糖類及びその誘導体(A023)としては、C6~12のものが挙げられ、例えばグルコース、フルクトース、マンニトール、ショ糖、ソルビトール、ソルビタン、メチルグルコシド等が挙げられる。
【0018】
上記ポリオール(A02)のうち、強度及び外観の観点から、好ましいのは(A021)、(A023)、更に好ましいのは(A023)、特に好ましいのはソルビトールである。
【0019】
<活性水素基を2~8個有する多価活性水素基含有化合物(A0)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物(A)>
本発明における(A)は、前記多価活性水素基含有化合物(A0)にアルキレンオキサイドを付加したものである。(A)は、公知の方法により、製造できるが、市販品を用いてもよい。
【0020】
本発明におけるアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)としては、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する場合がある)、1,2-プロピレンキサイド(以下、POと略記する場合がある)、1,2-ブチレンオキサイド(以下、BOと略記する場合がある)及びこれらの混合物が挙げられる。
上記アルキレンオキサイドのうち、好ましいのはEO及びPO、更に好ましいのはPOである。
上記(A)のうち、強度及び外観の観点から、好ましくはポリアミン(A01)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物及びポリオール(A02)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物であり、更に好ましくはポリアミン(A01)のEO及び/又はPO付加物並びにポリオール(A02)のEO及び/又はPO付加物である。
上記(A)は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
該(A)は、空気中で昇温速度5℃/分で加熱した場合における重量減量率が95%の時の温度である95%熱減量温度(T95)が250~350℃であり、好ましくは260~340℃、更に好ましくは270~330℃である。
上記(T95)が250℃未満の場合、集束性が不十分になり、350℃を超える場合、強度が不十分になる。
【0022】
上記(A)の空気中で昇温速度5℃/分で加熱した場合における重量減量率が10%の時の温度である10%熱減量温度(T10)は、集束性の観点から、好ましくは150℃以上であり、更に好ましくは160℃以上である。
また、(T95)と(T10)との差は、成形性の観点から、好ましくは10~150℃、更に好ましくは30~130℃である。
【0023】
上記(T95)、(T10)は、以下の条件で測定したものである。
(A)の95%熱減量温度(T95)及び10%熱減量温度(T10)は株式会社日立ハイテクサイエンス製示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200を用いて以下条件で測定する。重量減量率が95%の時の温度を95%熱減量温度、重量減量率が10%の時の温度を10%熱減量温度とする。
各(A)を、120℃で45分乾燥させて測定サンプルとする。φ5mm×高さ2.5mmのアルミニウムパンに測定サンプルを5mg量りとり、熱減量温度を評価する。
測定条件は空気流量を200ml/min、30℃から500℃まで昇温速度5℃/minとする。
【0024】
該(A)の25℃での粘度は、集束性の観点から、好ましくは1~100Pa・sであり、更に好ましくは2~90Pa・sである。
上記25℃での粘度は、以下の条件で測定できる。
アントンパール社製レオメータ・MCR92を用い、(A)をスパチュラ等で適量をステージに設置する。ステージ上の試料を直径50mmのコーンプレートで挟み、コーンプレートからはみ出した余分な試料をスキージ等で取り除いたうえで、25℃に達した後、ギャップ0.1μm、せん断速度10s-1で測定する。
【0025】
上記(A)の(T95)、(T10)及び粘度それぞれは、例えば、<1>~<5>の方法により、適宜調整できる。
<1>多価活性水素基含有化合物(A0)のうち、好ましい(A0)を使用することにより、(T95)、(T10)及び粘度は、好ましい範囲となる。
<2>(A0)の分子量が大となると、(T95)及び(T10)は大となり、粘度は大となる傾向がある。
<3>(A0)へのアルキレンオキサイドの付加モル数を大とすると、(T95)及び(T10)は大となり、粘度は大となる傾向がある。
なお、(A0)へのアルキレンオキサイドの平均付加モル数((A)のアルキレンオキサイドの平均付加モル数)は、好ましくは1.5~12、更に好ましくは2.0~9.0である。
<4>(A)のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、(A0)の有する活性水素1個当たり、乳化性及び強度の観点から、好ましくは0.3~2.0、更に好ましくは0.5~1.5である。
<5>(A)のアルキレンオキサイドの炭素数を小さくすると(T95)及び(T10)は大となる傾向がある。
【0026】
<繊維用集束剤(X)>
本発明の繊維集束剤(X)は、前記多価活性水素基含有化合物(A0)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物(A)を含有してなる。
該(X)には、(A)以外に、強度、外観、集束性の観点から、後述の熱硬化樹脂(B)及び/又は界面活性剤(C)を含有してもよい。
【0027】
上記の場合、強度の観点から、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、(A)の含有量は、下限について好ましくは50重量%、更に好ましくは60重量%、特に好ましくは70重量%であり、上限について好ましくは100重量%、更に好ましくは99重量%であり、特に好ましくは98.5重量%である。
【0028】
また、繊維用集束剤(X)は、取り扱い、工業上の観点から、水性媒体の溶液又は分散体の形態であることが好ましい。その場合、(X)の重量に基づいて、(A)、(B)及び(C)の合計重量は、好ましくは20~80重量%、更に好ましくは25~60重量%である。
前記水性媒体としては、例えば、水、炭素数1~3のアルコール(イソプロパノール等)、炭素数3~6のケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン等)が挙げられる。
上記水性媒体のうち、作業環境の観点から、好ましいのは水である。
【0029】
本発明の繊維用集束剤(X)は、例えば、混合容器に、前記(A)、必要により、熱硬化性樹脂(B)、界面活性剤(C)、水性媒体、その他の添加剤を仕込み、好ましくは20~90℃であり、更に好ましくは40~80℃で均一になるまで撹拌して製造する方法等が挙げられる。
【0030】
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、カテキンとエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)、レゾルシノールとエピクロルヒドリンとの縮合物、ヒドロキノンとエピクロルヒドリンとの縮合物、1,5-ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリンとの縮合物、ジヒドロキシビ
フェニルとエピクロルヒドリンとの縮合物、オクタクロロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニルとエピクロルヒドリンとの縮合物、テトラメチルビフェニルとエピクロルヒドリンとの縮合物及び9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フロオレンとエピクロルヒドリンとの縮合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリアルキレングリコール系エポキシ樹脂、ポリウレタン系エポキシ樹脂、脂肪族アルコールのグリシジル化物、メタクリル酸グリシジルエステルとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等)の共重合体等)、不飽和ポリエステル樹脂(特許3723462号に記載のもの、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と不飽和二塩基酸からなるポリエステル等)、ビニルエステル樹脂(先述したエポキシ樹脂の(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリレート変性熱可塑性樹脂[アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂{ポリウレタン、ポリエステル及びポリエーテル(ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコール等)等}の水酸基を(メタ)アクリル酸で変性した変性物]、変性ポリエーテル(アミノ基、メルカプト基などの官能基を分子末端に有するポリエーテル)、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、繊維束の集束性の観点から、変性ポリエーテル、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が更に好ましい。
熱硬化性樹脂(B)は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、(B)の含有量は、集束性及び強度の観点から、好ましくは0~40重量%、更に好ましくは1~20重量%である。
【0033】
<界面活性剤(C)>
界面活性剤(C)としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤等の公知の界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤(C)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
非イオン界面活性剤としては、例えばアルキレンオキサイド[炭素数2~4;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用、以下界面活性剤の説明において同じ)]付加型非イオン界面活性剤[例えば、高級アルコール(炭素数8~18)又は高級脂肪酸(炭素数12~24)のアルキレンオキサイド付加物[重量平均分子量(以下Mwと略記する)=158~20,000];アルキルフェノール(炭素数10~20)、スチレン化フェノール(炭素数14~62)、スチレン化クミルフェノール又はスチレン化クレゾール(炭素数15~61)のアルキレンオキサイド付加物(Mw500~5,000)等が挙げられる。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸(炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸)又はその塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアルカノールアミン等の塩)、炭素数8~16の脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物の塩、炭素数8~24の脂肪族アルコールエーテルカルボン酸(例えば、炭素数8~24、好ましくは炭素数10~18の脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド1~10モル付加物のカルボキシメチル化物等)、硫酸エステル塩[高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8~18の脂肪酸アルコールの硫酸エステル塩等)]、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩[炭素数8~18の脂肪酸アルコールのエチレンオキサイド(1~10モル)付加物の硫酸エステル塩]、硫酸化油(天然の不飽和油脂又は不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和したもの)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和したもの)、硫酸化オレフィン(炭素数12~18のオレフィンを硫酸化して中和したもの)、スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル、α-オレフィン(炭素数12~18)スルホン酸塩及びイゲポンT型等]及びリン酸エステル塩[高級アルコール(炭素数8~60)リン酸エステル塩、高級アルコール(炭素数8~60)エチレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、アルキル(炭素数8~60)フェノールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等]、アルキルフェノール(炭素数10~20)のアルキレンオキサイド付加物(Mw500~5,000)の硫酸エステル塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩等)、アリールアルキルフェノール[スチレン化フェノール(炭素数14~62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15~61)等]のアルキレンオキサイド付加物(Mw500~5,000)の硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0036】
カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]等が挙げられる。
【0038】
上記の界面活性剤(C)のうち、乳化安定性の観点から、好ましくはアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤であり、更に好ましくはアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物、アリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩及びアリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩であり、特に好ましくはアリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド)付加物及びアリールアルキルフェノールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド)付加物の硫酸エステル塩である。
【0039】
(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、(C)の含有量は、乳化安定性及び強度の観点から、好ましくは0~30重量%、更に好ましくは0.5~15重量%である。
【0040】
<繊維>
本発明の繊維用集束剤(X)を適用できる繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維等の無機繊維並びにアラミド繊維等の有機繊維等が挙げられる。上記繊維のうち、成形体強度の観点から、好ましいのは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維、更に好ましいのは炭素繊維である。
【0041】
<繊維束>
本発明の繊維束は、前記繊維を、上記の繊維用集束剤(X)で処理して得られる。得られる繊維束は、3,000~50,000本程度の繊維が束ねられていることが好ましい。
【0042】
前記繊維束における繊維の処理方法としては、スプレー法又は浸漬法等が挙げられる。繊維上への繊維用集束剤の固形分付着量は、集束性の観点から、繊維の重量に基づいて、好ましくは0.05~5重量%であり、更に好ましくは0.2~3.5重量%である。
【0043】
<繊維製品>
本発明の繊維製品は、前記繊維束を含有してなる。例えば、繊維束の加工品(織物など)、繊維束と少量のマトリックス樹脂[好ましくは後述の熱可塑性樹脂(E)]との複合繊維材料である。
【0044】
<樹脂組成物(Y)>
本発明の樹脂組成物(Y)は、上記繊維束又は上記繊維製品を強化繊維とし、熱可塑性樹脂(E)をマトリックスとしてなる樹脂組成物である。
上記樹脂組成物(Y)において、繊維と熱可塑性樹脂(E)との重量比[(繊維)/(E)]は、成形性及び強度の観点から、好ましくは5/95~75/25、更に好ましくは10/90~70/30、特に好ましくは20/80~60/40である。
【0045】
本発明における熱可塑性樹脂(E)としては、強度の観点から、好ましくは耐熱性樹脂(融点が好ましくは210℃以上、更に好ましくは230℃以上)、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。
【0046】
本発明の樹脂組成物(Y)の製造方法としては、特に限定はなく、チョップドファイバー、長繊維ペレットなどによるコンパウンド射出成型、UDシート、織物シートなどによるプレス成型、その他フィラメントワインディング成型、引き抜き成型など公知の方法を採用できる。
熱可塑性樹脂(E)と強化繊維を混練する際には、熱可塑性樹脂が汎用エンジニアプラスチック(一般的に耐熱温度100~150℃、曲げ強度50MPa以上のエンジニアリングプラスチックであり、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる)やスーパーエンジニアプラスチック(一般的に耐熱温度150℃以上、曲げ強度50MPa以上のエンジニアリングプラスチックであり、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる)の様な高融点の場合、融点以上の温度250℃~450℃でベントで脱気しながら強化繊維と混練することが好ましい。
【0047】
<成形体(Z)>
本発明の成形体(Z)は、前記樹脂組成物を成形してなる。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法及びインフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
また、本発明の成形体は、優れた強度(機械物性)、外観を有するため、種々の樹脂成形体用途、とりわけ耐熱性の必要な用途(例えば、自動車用途)に好適である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、実施例4、6、7は、それぞれ参考例1~3である。
【0049】
<製造例1>
・キシリレンジアミンPO2モル付加物(A-1)の製造>
ガラス製オートクレーブにキシリレンジアミン136重量部(1モル部)を仕込み、耐圧滴下ロートに仕込んだPO116重量部(2モル部)を反応温度135~140℃を保つように制御しながら6時間かけて滴下した後、135℃で更に3時間熟成した。その後、80℃に冷却後、減圧下でストリッピングしてキシリレンジアミンのPO2モル付加物(A-1)を得た。
【0050】
<製造例2>
・キシリレンジアミンEO2モル付加物(A-2)の製造
製造例1において、PO116重量部(2モル部)をEO88重量部(2モル部)に変更した以外は製造例1と同様にしてキシリレンジアミンEO2モル付加物(A-2)を得た。
【0051】
<製造例3>
・キシリレンジアミンEO4モル付加物(A-3)の製造
製造例1において、PO116重量部(2モル部)をEO176重量部(4モル部)に変更した以外は製造例1と同様にしてキシリレンジアミンEO4モル付加物(A-3)を得た。
【0052】
<製造例4>
・ソルビトールPO7モル付加物(A-4)の製造
SUS製オートクレーブにソルビトール182重量部(1モル部)、及び水酸化カリウム2部を仕込み、耐圧滴下ロートに仕込んだPO406重量部(7モル部)を反応温度130~140℃を保つように制御しながら6時間かけて滴下した後、135℃で3時間熟成した。次いで100℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]30重量部を投入し、100℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してソルビトールPO7モル付加物(A-4)を得た。
【0053】
<製造例5>
・エチレンジアミンPO4モル付加物(A-5)の製造
製造例1において、キシリレンジアミン136重量部(1モル部)をエチレンジアミン60重量部(1モル部)に、PO116重量部(2モル部)をPO232重量部(4モル部)に変更した以外は製造例1と同様にしてエチレンジアミンPO4モル付加物(A-5)を得た。
【0054】
<実施例1~5、比較例1>
表1にしたがって、各原料を攪拌機付き反応容器で室温、1時間撹拌し均一溶解させ、40重量%水溶液である繊維用集束剤(X-1)~(X-5)、比較用の繊維用集束剤(比X-1)を、それぞれ250重量部得た。
【0055】
<実施例6~8>
表1にしたがって、水を除く各原料を、万能混合機[万能混合攪拌機、(株)三英製作所製]中で80℃に温調しながら30分均一溶解させた後、60℃まで冷却し温調しながら水を6時間かけて滴下し、水分散濃度が40重量%である繊維用集束剤(X-6)~(X-8)を、それぞれ250重量部得た。
【0056】
上記で得られた各繊維用集束剤(X)を用いて、後述の評価方法で、25℃における粘度、炭素繊維束の集束性、成形体の曲げ強度を評価した。また、上記で得られた各活性水素基を2~8個有する多価活性水素基含有化合物(A0)のアルキレンオキサイド(アルキレンの炭素数2~4)付加物(A)を用いて、95%熱減量温度(T95)及び10%熱減量温度(T10)を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
なお、表1に記載した記号の原料の化学組成は以下の通りである。
(比A-1):ビスフェノールAのEO6モル付加物[商品名「ニューポールBPE-60」、三洋化成工業(株)製]
(B-1):ポリエポキシ樹脂[商品名「jER1001」、三菱ケミカル(株)製]
(C-1):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物「Soprophor 796/P」[ソルベイ日華(株)製]
【0059】
<(A)の95%熱減量温度(T95)及び10%熱減量温度(T10)>
(A)の95%熱減量温度(T95)及び10%熱減量温度(T10)は株式会社日立ハイテクサイエンス製示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200を用いて以下条件で測定した。重量減量率が10%の時の温度を10%熱減量温度、重量減量率が95%の時の温度を95%熱減量温度とした。
φ5mm×高さ2.5mmのアルミニウムパンに各(A)を5mg量りとり、熱減量温度を評価した。
測定条件は空気流量を200ml/min、30℃から500℃まで昇温速度5℃/minとした。
【0060】
<粘度>
アントンパール社製レオメータ・MCR92を用い、各(A)をスパチュラ等で適量をステージに設置した。ステージ上の試料を直径50mmのコーンプレートで挟み、コーンプレートからはみ出した余分な試料をスキージ等で取り除いたうえで、25℃に達した後、ギャップ0.1μm、せん断速度10s-1で測定した。
【0061】
<集束性の評価>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、更に水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を作製した。炭素繊維束の重量を基準として固形分として1重量%の繊維用集束剤が付着した炭素繊維束を作製した。
(2)得られた炭素繊維束の集束性を、JIS L1096:2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準じて評価した。
数値(cm)が大きいほど集束性に優れることを意味する。
この処理条件で得られた炭素繊維束をカンチレバーで評価した集束性の値は、一般に13cm以上が好ましい。
【0062】
<成形体[1]の曲げ強度>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、更に水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて得られた炭素繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、熱可塑性樹脂(E)としてポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて320℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し繊維強化樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:330℃、金型温度:80℃で評価用試験片(各成形体(Z))を成形した。
(5)得られた評価用試験片を用い、JIS K 7171:2016に基づき、成形体の曲げ強度を測定した。
<成形体[2]の曲げ強度>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、更に水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて得られた炭素繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、熱可塑性樹脂(E)としてポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて350℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し繊維強化樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:360℃、金型温度:80℃で評価用試験片(各成形体(Z))を成形した。
(5)得られた評価用試験片を用い、JIS K 7171:2016に基づき、成形体の曲げ強度を測定した。
【0063】
<成形体[1]及び[2]の外観>
上記で得られた成形体について、20倍のマイクロスコープで観察して、以下の評価基準で、外観を評価した。
<評価基準>
☆:ボイドが全くない
◎:ホイドがほとんどない(10cm2あたり1~5か所)
〇:ボイドがわずかにある(10cm2あたり6~10か所)
△:ボイドが少しある(10cm2あたり11~20か所)
×:ボイドが目立つ(10cm2あたり21か所以上)
【0064】
表1の結果から、本発明の繊維用集束剤(X)は、繊維束に優れた集束性を与え、比較例の成形体と比べて、成形体に優れた強度、外観を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の繊維用集束剤(X)は、繊維束に優れた集束性を与え、成形体に優れた強度及び外観を与える。このことから種々の樹脂組成物の成形体、とりわけ耐熱性の必要な用途(例えば、自動車用途)に極めて有用である。