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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】駆動装置、振れ補正装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20240401BHJP
   H02K 33/18 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H02K33/18 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020023623
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021128283
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 海史
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152785(JP,A)
【文献】特開平09-200992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
H02K 5/00-5/26
H02K 33/00-33/18
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハルバッハ配列された複数の永久磁石と、前記永久磁石を保持する保持部材とを備えた磁石ユニットと、
固定部と、
前記固定部に対して移動可能な可動部と、
コイルと、を有し、
前記磁石ユニットは前記固定部および可動部の一方に支持され、前記コイルは前記磁石ユニットに対向するように前記固定部および可動部の他方に支持されていて、
前記保持部材は、前記ハルバッハ配列された永久磁石の磁石配列方向において前記永久磁石と対向する面及び前記磁石配列方向に直交する方向において前記永久磁石と対向する面を有する形状であり、前記磁石配列方向において前記永久磁石と対向する面に、前記永久磁石と当接する弾性形状部を有し、
前記保持部材は、前記磁石配列方向に沿って外側に突出するフランジ部を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記弾性形状部には、前記永久磁石に当接する複数の接触部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記接触部は、少なくとも3箇所設けられていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記接触部は、前記磁石ユニットにおける隣接する永久磁石が相互に反発する領域を前記永久磁石の配列方向に投影した投影面内に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記弾性形状部には、前記磁石ユニットを支持する前記固定部および可動部の一方に当接する複数の接触箇所が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記接触箇所は、少なくとも3か所設けられていることを特徴とする請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記保持部材には、前記固定部および可動部の一方と対向する面に、前記フランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記フランジ部に対向する前記保持部材の内壁面に、面取り部が設けられていることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記永久磁石には、前記磁石配列方向に直交する方向に、前記保持部材から突出するフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記保持部材のフランジ部の厚さは、前記永久磁石のフランジ部の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
前記保持部材は、非磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記保持部材は、樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記磁石ユニットは、大小2種類からなり、大きい磁石ユニットの保持部材が有する前記接触部および接触箇所の数は、小さい磁石ユニットの保持部材が有する前記接触部および接触箇所の数に比べて多いことを特徴とする請求項2を援用る請求項5、又は、請求項2を援用する請求項5を援用する請求項6~12の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記固定部および可動部の一方は、前記磁石ユニットと、当該磁石ユニットの上下に配置されたフロントヨーク及びリアヨークを備えており、
前記磁石ユニット、フロントヨーク及びリアヨーク、並びに前記固定部および可動部の他方のコイルとでボイスコイルモータを形成していることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記コイルに電流を流すことによって駆動力が発生し、前記可動部が前記固定部に対して移動することを特徴とする請求項14記載の駆動装置。
【請求項16】
駆動装置によって撮像素子を駆動させる振れ補正装置であって、前記駆動装置は、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の駆動装置であることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項17】
請求項16記載の振れ補正装置を備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハルバッハ配列の磁石ユニットを備えた駆動装置、当該駆動装置で撮像素子を駆動する振れ補正装置および振れ補正装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振れ補正装置が搭載されたカメラ(以下、「撮像装置」という。)が知られている。
【0003】
振れ補正装置が搭載された撮像装置に関する文献として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、コイルと永久磁石の組み合わせによりボイスコイルモータを構成し、撮像素子を含む可動部を固定部に対して移動させることによって振れを補正する振れ補正装置が開示されている。また、特許文献1には、永久磁石の配列としてハルバッハ配列を採用することによってコイルを通過する磁力を高め、これによって、コイルに電流を流した際の電磁力を増大させて駆動推力を向上させる技術が開示されている。そして、特許文献1に開示された技術によれば、必要な駆動推力を得るための電流値を小さくして撮像装置の省電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-095540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には、下記のような課題がある。すなわち、ハルバッハ配列された磁石では、隣り合う磁石相互間で反発する力が発生する。この反発力によって、磁石と、当該磁石に当接する部材とが接触して応力が掛かり、部材又は磁石が破損する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、ハルバッハ配列された磁石に発生する反発力によって磁石又は当接部材が破損する可能性を低減することができる駆動装置、駆動装置によって撮像素子を駆動する振れ補正装置および振れ補正装置を備えた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の駆動装置は、ハルバッハ配列された複数の永久磁石と、前記永久磁石を保持する保持部材とを備えた磁石ユニットと、固定部と、前記固定部に対して移動可能な可動部と、コイルと、を有し、前記磁石ユニットは前記固定部および可動部の一方に支持され、前記コイルは前記磁石ユニットに対向するように前記固定部および可動部の他方に支持されていて、前記保持部材は、前記ハルバッハ配列された永久磁石の磁石配列方向において前記永久磁石と対向する面及び前記磁石配列方向に直交する方向において前記永久磁石と対向する面を有する形状であり、前記磁石配列方向において前記永久磁石と対向する面に、前記永久磁石と当接する弾性形状部を有し、前記保持部材は、前記磁石配列方向に沿って外側に突出するフランジ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハルバッハ配列された磁石に発生する反発力を弾性形状部で吸収、緩和するので、ハルバッハ配列の磁石を備えた駆動装置、振れ補正装置及び撮像装置において、磁石の反発力によって磁石又は当接部材が破損する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る駆動装置を適用した振れ補正装置を備える撮像装置を示す図である。
図2】振れ補正装置を示す斜視図である。
図3】振れ補正装置の固定部を示す斜視図である。
図4】振れ補正装置の可動部を示す斜視図である。
図5図3の矢印113方向からみた側面図である。
図6】磁石ユニットを示す斜視図である。
図7図6を矢印110方向から見た磁石ユニットの磁石配列を示す断面図である。
図8図7の磁石ユニットの平面図である。
図9】磁石ユニット105aの斜視図である。
図10】磁石ユニットの分解斜視図である。
図11】磁石ユニット105bの平面図である。
図12図11の部分拡大図である。
図13】振れ補正装置の正面側の斜視図である。
図14】振れ補正装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明に係る駆動装置を、撮像装置において撮像素子を駆動する振れ補正装置として具現化した構成として説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る駆動装置を適用した振れ補正装置を備える撮像装置を示す図であり、図1(a)は、概略構成を示す断面図であり、図1(b)は、機能的構成を示すブロック図である。
【0012】
図1(a)において、撮像装置500は、撮像装置本体1と、該撮像装置本体1に対して着脱可能に装着された交換レンズ2を備えている。
【0013】
図1(b)において、撮像装置本体1は、カメラシステム制御回路5を備えている。カメラシステム制御回路5は、画像処理部7、記憶装置8、表示部9、操作検出部10、像ぶれ補正装置(以下、「振れ補正装置」という。)14、ぶれ検知部15及びシャッタ機構16とそれぞれ接続されている。表示部9には、ファインダ内表示装置9aと、背面表示パネル9bが含まれる。また、カメラシステム制御回路5は、振れ補正装置14を介して撮像素子6と接続されている。
【0014】
交換レンズ2は、レンズ群3、レンズシステム制御回路12及びレンズ駆動部13を備えている。撮像装置本体1に交換レンズ2が装着された状態では、電気接点11を通じて、カメラシステム制御回路5とレンズシステム制御回路12が通信可能に接続される。
【0015】
振れ補正装置14の可動部には撮像素子6が固定されており、振れ補正装置14の駆動によって撮像素子6の位置が移動する。ぶれ検知部15は、例えば、ジャイロセンサ等である。ぶれ検知部15は、撮影光軸4の方向(以下「光軸方向」という。)と直交する平面内で互いに直交する第1の方向及び第2の方向のぶれ量を示す信号をカメラシステム制御回路5へ送る。また、ぶれ検知部15は、同一平面内で撮影光軸4まわりに回転する第3の方向を合わせた3軸方向における撮像装置のぶれを検出し、ぶれ量を示す信号をカメラシステム制御回路5へ送る。
【0016】
カメラシステム制御回路5は、ぶれ検知部15から取得した信号に基づき、被写体像の像ぶれを低減するための撮像素子6の目標位置を演算する。また、カメラシステム制御回路5は、目標位置へ撮像素子6を移動させるための撮影光軸4と直交する平面内での駆動量を算出し、振れ補正装置14へ送る。
【0017】
振れ補正装置14は、撮像素子6を撮影光軸4と略直交する平面内(撮像素子6での結像面と略平行な平面内)で並進させ、又は、撮影光軸4まわりに回転させる機構である。振れ補正装置14は、カメラシステム制御回路5から受信した駆動量(制御信号)に従って、後述するコイル205への通電を制御することにより、撮影光軸4と直交する平面内で撮像素子6を目標位置へ移動させる。これにより、ユーザの手ぶれ等によるカメラぶれに起因する像ぶれを軽減(補正)することができる。なお、撮像装置を構成する各部材のうち像ぶれ補正と直接関係のないものは公知の構成である。従って、詳しい説明は省略する。
【0018】
次に、振れ補正装置14について詳細に説明する。
【0019】
図2は、振れ補正装置を示す斜視図、図3は、振れ補正装置の固定部を示す斜視図、図4は、振れ補正装置の可動部を示す斜視図である。
【0020】
振れ補正装置14の固定部100は、撮像装置本体1に固定される部材である。すなわち、振れ補正装置14は、撮像装置本体1に固定される図3の固定部100と、駆動力によって固定部100に対して移動可能に構成された図4の可動部101とから主として構成されている。可動部101には撮像素子6(図示省略)が固定されており、振れ補正装置14は、撮像素子6を固定部100に対して移動させるための駆動装置である。
【0021】
振れ補正装置14の固定部100は、永久磁石とヨークを備えており、可動部101はコイル205を備えている。永久磁石、ヨーク、及びコイル205でボイスコイルモータを構成している。すなわち、コイル205に電流を流すことによって駆動力が発生し、可動部101に固定された撮像素子6(図示省略)が固定部100に対して移動する。なお、固定部100がコイル205を備え、可動部101が永久磁石とヨークを備えている構成であってもよい。すなわち、磁石ユニットは固定部100及び可動部101の一方に支持され、コイル205は磁石ユニットに対向するように固定部100及び可動部101の他方に支持されている。
【0022】
図3において、振れ補正装置14の固定部100は、磁性材料のフロントヨーク103と、金属かつ非磁性材料の固定部材104を備えている。固定部材104が撮像装置本体1に固定される。固定部材104には、例えば、永久磁石を有する磁石ユニット105aが2つ、105bが1つ、合計で3つ取り付けられている。各磁石ユニット105aおよび105bの背面には、磁性材料のリアヨーク106が配置されている。
【0023】
図5は、図3の矢印113方向からみた側面図である。
【0024】
図5において、フロントヨーク103と磁石ユニット105aとリアヨーク106とで磁気回路が構成されている。磁石ユニット105b部分でも、同様に、フロントヨーク103と磁石ユニット105bとリアヨーク106とによって磁気回路が構成されている。このように構成された磁気回路による磁場に、図4の可動部101のコイル205が配置される。図4において、可動部101は、四角枠形状の枠部102を有しており、この枠部102に撮像素子6(図示省略)が保持される構成となっている。
【0025】
次いで、磁石ユニット105(a、b)について詳述する。図6は、磁石ユニットを示す斜視図である。
【0026】
図6において、3つの磁石ユニット105(a、a、b)は、それぞれ、3つの永久磁石107(107a、107b、107c)と、永久磁石107を収納する保持部材108(a、a、b)とで構成されている。保持部材108(a、b)は、非磁性材料の樹脂材料で構成されている。保持部材108aと保持部材108bとは、その大きさが異なる。以下、保持部材108aと保持部材108bを特に区別する必要のない場合は、まとめて保持部材108という。また、永久磁石107a、107b、107cを特に区別する必要のない場合は、まとめて永久磁石107という。
【0027】
保持部材108が非磁性材料で構成されていることによって、永久磁石107とフロントヨーク103およびリアヨーク106で形成される磁気回路を保持部材108が阻害することはない。
【0028】
図7は、図6を矢印110方向から見た磁石ユニット105aの磁石配列を示す断面図である。図7において、磁石ユニット105aの永久磁石107a、107b、及び107cと、その極性NSと、これら永久磁石を保持する保持部材108aが示されている。
【0029】
図7中、左側の磁石である永久磁石107aでは、上側がN極、下側がS極となっている。真ん中の磁石である永久磁石107bでは、左側がN極、右側がS極となっている。また、右側の磁石である永久磁石107cでは、上側がS極、下側がN極となっている。このような極性の並びの磁石配列をハルバッハ配列という。ハルバッハ配列にすることによって、図7中、永久磁石107a~107cの上側の磁場を強くすることができ、ボイスコイルモータが発生する推力が増加する。
【0030】
しかし、ハルバッハ配列には、隣り合う磁石が相互に反発するという課題がある。
【0031】
すなわち、図7において、左側の磁石である永久磁石107aのN極と、真ん中の磁石である永久磁石107bのN極は隣り合った配置となっており、破線で示す領域(反発領域111)で、お互いの磁石の間に反発力が生じる。同じく、右側の磁石である永久磁石107cのS極と、真ん中の磁石である永久磁石107bのS極の反発領域112でも、互いの磁石の間に反発力が生じる。これらの反発力によって、永久磁石107aには図7中の左方向への力が発生する。また、永久磁石107cには図7中の右方向への力が発生する。この反発力によって、永久磁石と当接する部品、例えば、保持部材108との間に応力が掛かり、保持部材108又は永久磁石107自体が破損する虞がある。
【0032】
そこで、本実施の形態に係る振れ補正装置14は、永久磁石107を保持する保持部材108に、弾性形状部を設けた。
【0033】
図8は、図7の磁石ユニット105aの平面図である。
【0034】
図8において、保持部材108aは、長方形の枠体形状を呈しており、樹脂材料で構成されている。保持部材108aにおいて、永久磁石107の磁石配列方向に対向する面が弾性形状部122となっている。すなわち、保持部材108aにおける永久磁石107の磁石配列方向に対向する面には、永久磁石107a又は107cと当接する接触部120が枠体の内側に複数設けられている。また、保持部材108aの永久磁石107の磁石配列方向に対向する面の外側には、図示省略した固定部100と接触する接触箇所121が複数設けられている。接触部120と接触箇所121は薄肉形状部で接続されており、これによって弾性形状部122が形成されている。
【0035】
永久磁石107a側の弾性形状部122は、例えば、2か所の接触部120及び3箇所の接触箇所121を備えており、永久磁石107c側の弾性形状部122も、例えば、2か所の接触部120及び3箇所の接触箇所121を備えている。弾性形状部122の接触部120は、当接方向(図8中の上下方向)に変形可能である。これによって、弾性形状部122は、ハルバッハ配列された永久磁石107相互間の反発力を緩衝させる緩衝作用を実現することができる。
【0036】
また、保持部材108aは、上述したように、樹脂材料で構成されていることから、弾性が大きく、衝撃を減衰する作用がある。これによっても緩衝作用を実現している。このように、保持部材108aは、弾性形状部122の緩衝作用によってハルバッハ配列された永久磁石の反発力に起因する構成部材及び磁石の破損の恐れを低減している。
【0037】
なお、弾性形状部122として、薄肉形状のものとして説明したが、弾性が得られる形状であれば、薄肉以外の他の形状であっても同様の緩衝効果が得られる。
【0038】
ここで、磁石ユニット105における永久磁石(107a、107b、107c)の姿勢を安定化するための構成について詳細に説明する。永久磁石(107a、107b、107c)の姿勢の安定化は、当該永久磁石の位置精度の向上や、保持部材108aからの永久磁石(107a、107b、107c)の脱落の防止に繋がる。
【0039】
まず、保持部材108aの第1の特長について説明する。一般に、ある平面内に配置された物体の回転について考察すると、当該物体を支える箇所(支点)が3か所以上あると、物体の回転姿勢が安定することが知られている。換言すれば、物体を支持する支点は、少なくとも3箇所設けることが好ましく、2か所以下では回転姿勢は安定しない。物体を3か所以上の点で支えるという考え方が本実施の形態における磁石ユニット105aにも適用されている。
【0040】
図8において、ハルバッハ配列された永久磁石107に対し、保持部材108aと永久磁石107とが接触する接触部120は、上下2か所の4か所となっている。すなわち、永久磁石107を支える支点が3箇所以上となっているので、永久磁石107は、回転姿勢が安定に支持されており、回転が防止されている。また、弾性形状部122における接触部120の数は任意に増加させることができ、この場合、ハルバッハ配列された永久磁石107を支持する支点数が増大する。永久磁石107をより多くの支点で支持することによって永久磁石107における回転姿勢はより安定化する。
【0041】
次に、保持部材108aの2つ目の特長について述べる。保持部材108aの接触部120は、図7の反発領域111および112を、永久磁石の配列方向(図7中の左右方向)に投影した領域内(投影面内)に形成されている。これにより、図8での紙面内平面の回転に対して、接触部120を支点として反発領域を力点とすると、回転モーメントにおける腕の長さをゼロにすることできる。従って、この紙面内平面の回転姿勢においても、回転姿勢の安定化を実現することができる。
【0042】
ここで、磁石ユニット105aを固定部材104に挿入する際の組み立て容易性について説明する。
【0043】
上述したように、保持部材108aには、固定部100の固定部材104と接触する接触箇所121が設けられている。また、接触箇所121と、当該接触箇所121に隣接する接触部120との間は薄肉形状部となっている。これによって、固定部材104と当接する保持部材108aの接触箇所121は、各々の接触方向(図6の上下方向)に変形することができる。磁石ユニット105aを固定部材104の所定位置である嵌合部に挿入する際に、接触部120及び接触箇所121を有する弾性形状部122によって緩衝作用が得られる。従って、樹脂材料で構成された保持部材108aが金属材料で構成された固定部材104によって削られる等のトラブルの発生を防止することができる。
【0044】
次いで、固定部材104における磁石ユニット105aの姿勢を安定化するためのもう1つ構成について説明する。
【0045】
上述したように、物体を支える支点が3か所以上あると、物体の回転姿勢は安定する。図8を用いて上述したように、固定部材104と接触する保持部材108aの接触箇所121は、例えば6か所あり、保持部材108aは3箇所以上の支点で支持されている。従って、保持部材108aで保護された磁石ユニット105aの図8中の紙面内の回転姿勢は安定する。
【0046】
図9は、磁石ユニット105aの姿勢を安定化するためのもう一つの構成を説明するための図であって、磁石ユニット105aの斜視図である。また、図10は、磁石ユニット105aの分解斜視図である。図9及び図10において、各永久磁石107a、107b、107cには、永久磁石の配列方向と直交した方向(永久磁石の長手方向)に突出したフランジ部132を備えている。
【0047】
永久磁石107aのフランジ部132は、固定部材104とリアヨーク106に挟持されており(図5参照)、これによって、永久磁石107aの厚さ方向(紙面上下方向)の位置が固定されている。永久磁石107bおよび107cも同様に、フランジ部132が、固定部材104とリアヨーク106で挟持されており、厚さ方向位置(紙面上下方向)が固定されている。これによって、永久磁石群からなる磁石ユニット105aの姿勢は、安定化している。なお、真ん中の永久磁石107bでは、磁石の配列方向には他の磁石が隣接しているので、姿勢安定化を図る形状部分を設けることができるのは、フランジ部132が張り出す方向、すなわち、永久磁石107の配列方向と直交する方向に限られる。
【0048】
また、図7図8および図9図10から分かるように、保持部材108aには、ハルバッハ配列における磁石の配列方向(図7では紙面左右方向、図8では紙面上下方向)に張り出したフランジ部130が設けられている。このフランジ部130は、保持部材108aの補強機能を担っている。これによって、磁石ユニット105aの姿勢は、安定化している。なお、フランジ部130は、組み立ての際に、吸着による把持や挟持による把持部として機能するので、組み立て性の向上に寄与し、ロボットによる自動組み立ても可能になっている。
【0049】
保持部材108aのフランジ部130の張り出し方向は、永久磁石(107a、107b、107c)のフランジ部132の張り出し方向と異なる方向となっている。フランジ部130の張り出し方向をハルバッハ配列の磁石配列方向にすることによって、上述のフランジ部132とは異なる領域に配置して磁石ユニット105aのスペース効率を向上させ、かつ駆動装置14の小型化を図ることができる。
【0050】
また、保持部材108aのフランジ部130の厚さは、永久磁石(107a、107b、107c)のフランジ部132の厚さよりも薄くなっている。これによって、永久磁石(107a、107b、107c)のフランジ部132を固定部材104とリアヨーク106で挟持した際に、永久磁石が存在しない場所の固定部材104とリアヨーク106の間に空間ができる。そして、固定部材104とリアヨーク106の間の空間の中に、保持部材108aのフランジ部130を安定に収めることができ、駆動装置14の小型化が可能となっている。
【0051】
また、図7に示したように、保持部材108aのフランジ部130に対向する内壁面には、面取り形状部131が設けられている。紙面下方から上方に向かって永久磁石107を保持部材108aに挿入する際に、この面取り形状部131を設けたことによって、互いのエッジ同士の接触を防止し、破損の虞を低減することができる。また、組み立て時の誘い込みにもなっており、組み立て安定性を向上させる効果も得られている。なお、面取り形状部131の形状は、特に限定されるものではなく、他の斜面形状であっても上述の効果を得ることができる。他の斜面形状としては、例えば、曲面を有する斜面形状が挙げられる。
【0052】
次に、磁石ユニット105bについて説明する。
【0053】
上述した図6において、磁石ユニットは、大小2種類あり、磁石ユニット105bは、磁石ユニット105aとは、永久磁石107の大きさが異なっている。すなわち、磁石ユニット105bにおける永久磁石107の磁石の配列方向に直交する方向の寸法は、磁石ユニット105aにおける寸法よりも大きくなっている。
【0054】
従って、磁石ユニット105bの保持部材108bは、永久磁石107を保持する機能に加えて、下記の機能を備えている。
【0055】
図11は、磁石ユニット105bの平面図であり、図12は、図11の部分拡大図である。
【0056】
図11および図12において、3つの永久磁石107a、107b、107cは、図7に示した極性の並びと同様、極性がハルバッハ配列となるように並んでいる。樹脂材料からなる保持部材108bには、永久磁石107と接触する接触部120が6か所あり、図示省略した固定部材104と接触する接触箇所121が8か所ある。
【0057】
磁石ユニット105aの永久磁石107に比べ、磁石ユニット105bの永久磁石107の方が永久磁石107の磁石配列方向に直交する方向の寸法が大きいので、ハルバッハ配列による反発領域も大きくなり、反発力も大きくなる。従って、永久磁石107の回転姿勢を安定化させるための保持部材108bにおける接触部120の数および接触箇所121の数を保持部材108aに比べて多くしている。これによって、隣接する永久磁石に作用するより大きな反発力に対応できるようになり、十分な緩衝効果が得られる。
【0058】
また、保持部材108bは、保持部材108aと比較して以下のような機能を備えている。すなわち、図11において、保持部材108bは、スペーサ140を備えており、スペーサ140は、樹脂材料によって保持部材108bと一体に形成されている。スペーサ140は、永久磁石107のフランジ部132よりも厚くなっている(図5参照)。これにより、スペーサ140を固定部材104とリアヨーク106で挟持する際、固定部材104とリアヨーク106の間に、永久磁石107のフランジ部132の厚さよりも大きい空間ができる。この空間に永久磁石107のフランジ部132が収納される構成となっている。
【0059】
永久磁石107のフランジ部132を固定部材104とリアヨーク106とで直接挟持すると、磁石ユニット105aの場合よりも大きい反発力が永久磁石107に掛かってしまうので、永久磁石自体が破損する恐れがある。このため、樹脂材料のスペーサ140の厚みをフランジ部132の厚みよりも大きくし、これによって、磁石ユニット105bを固定部材104とリアヨーク106に挟持させた際に、永久磁石107のフランジ部132には挟持の力が掛からないようにしている。また、上述したように、スペーサ140は、保持部材108bと一体的に形成されているので、別体に構成した場合に比べて、部品点数が減少し、組み立て部品点数が減るので、組み立て工数を減らすこともできている。
【0060】
また、保持部材108bには、FPC保護部141が一体的に形成されている。FPC保護部141は、金属で構成された固定部材104の枠部102の一部(図3参照)を保護する部材である。
【0061】
図13は、振れ補正装置14の正面側の斜視図であり、図14は、振れ補正装置14の背面側の斜視図である。図13において、可動部101には撮像素子6が固定されている。また、図14において、撮像素子6の背面には種々の電気素子が配置されると共に、撮像素子6の電源用FPC(フレキシブルプリント基板)300が接続されている。また、撮像素子6の背面には、当該撮像素子6の信号を伝送するために、信号用FPC(フレキシブルプリント基板)301も接続されている。
【0062】
電源用FPC300及び信号用FPC301における撮像素子6への接続端と対向する他方端は、カメラシステム制御回路5(図13及び図14で図示省略)に接続されており、振れ補正装置14が駆動しても接続されたままとなる。
【0063】
すなわち、振れ補正装置14が稼働されて可動部101が移動すると、撮像素子6に接続された信号用FPC(FPC)301が固定部材104の枠部102の近傍、すなわち、図14で、破線で示した近接領域302を通過する。この場合、FPCが固定部材104の枠部102に接触して枠部102に対して摺動すると、FPCに傷がつき、酷い場合には、FPC内部の配線が断線する虞がある。
【0064】
従って、本実施の形態では、このような断線を防止するために、金属で構成された枠部102の信号用FPC301が通過する付近を樹脂材料でできたFPC保護部141で覆っている。また、上述したように、FPC保護部141は、保持部材108bと一体的に形成されている。これによって、別体で構成した場合に比べて、部品点数が減り、組み立て部品点数が減少するので、組み立て工数を減らすことができる。なお、撮像素子6の電源用FPC300は、FPC保護部141に固定されている。このように固定することで、固定部材104の枠部102との接触を防ぐこともできる。
【0065】
本実施の形態によれば、ハルバッハ配列された磁石に発生する反発力を保持部材108の弾性形状部122で吸収、緩和するので、ハルバッハ配列の磁石を備えた振れ補正装置において、磁石の反発力によって磁石又は構成部材が破損する可能性を低減できる。
【0066】
また、磁石の反発力を吸収する弾性形状部に複数、例えば、3箇所以上の接触部120及び3箇所以上の接触箇所121を設けたことによって、ハルバッハ配列された永久磁石、ひいては磁石ユニットの回転姿勢を安定させることができる。
【0067】
また、振れ補正装置14の保持部材108が弾性形状部122を有することによって、振れ補正時に、磁石ユニット105が振動することによる当該磁石ユニット105の破損の恐れを低減することができる。また更に、携帯機器である撮像装置においては、保持部材108の弾性形状部122によって、落下時等における磁石ユニット105に掛かる衝撃を緩和することができるので、磁石ユニット105等の破損の恐れを低減することができる。
【0068】
本実施の形態において、振れ補正装置は、撮像装置において撮像素子6を移動するものとして説明したが、撮像素子6に変えて光学素子を移動するようにしてもよい。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 撮像装置本体
6 撮像素子
14 駆動装置(振れ補正装置)
100 固定部
101 可動部
104 固定部材
105(a、b) 磁石ユニット
107(a~c) 永久磁石
108(a、b) 保持部材
120 接触部
121 接触箇所
122 弾性形状部
205 コイル
500 撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14