(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】クレーンの制御システム
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240401BHJP
B66C 13/40 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B66C15/00 C
B66C13/40 D
(21)【出願番号】P 2020055693
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】菜原 周郎
(72)【発明者】
【氏名】能勢 和希
(72)【発明者】
【氏名】砂田 直孝
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160007(JP,A)
【文献】特開2019-112178(JP,A)
【文献】特開2019-172434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 15/00
B66C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、ジブと、フックと、制御装置と、を備え、
前記旋回体は、マストの上部に旋回可能に設けられ、
前記ジブは、前記旋回体に起伏可能に取り付けられ、
前記フックは、前記ジブの先端から垂下ろされたワイヤに昇降可能に取り付けられ、
前記制御装置は、前記旋回体、前記ジブ、及び前記フックの駆動を制御する、
タワークレーンの制御システムであって、
前記
旋回体、前記ジブ、及び前記フックの近傍の少なくとも1つに発信者からの信号を受信可能な受信装置が設けられ、
前記受信装置は、前記信号を受信すると、制御装置に送信するように構成され、
前記制御装置は、前記受信装置からの信号を受信すると、前記旋回体、前記ジブ、及び前記フックを減速停止するように制御され
、
前記減速停止の制御が、前記旋回体、前記ジブ、及び前記フックに夫々設けられたインバータによって、制御され、
前記減速停止の制御が、クレーン操縦者によって行われる減速停止より素早い減速停止となるように制御される、
タワークレーンの制御システム。
【請求項2】
請求項
1に記載のタワークレーンの制御システムであって、
前記減速停止中は、クレーン操縦者の操作が無効となるように制御される、
タワークレーンの制御システム。
【請求項3】
請求項
2に記載のタワークレーンの制御システムであって、
前記操作の無効は、クレーン操縦者がリセットスイッチを押動することで解除するよう
に制御される、
タワークレーンの制御システム。
【請求項4】
旋回体と、ジブと、フックと、制御装置と、を備え、
前記旋回体は、マストの上部に旋回可能に設けられ、
前記ジブは、前記旋回体に起伏可能に取り付けられ、
前記フックは、前記ジブの先端から垂下ろされたワイヤに昇降可能に取り付けられ、
前記制御装置は、前記旋回体、前記ジブ、及び前記フックの駆動を制御する、
タワークレーンの制御システムであって、
前記
旋回体、前記ジブ、及び前記フックの近傍の少なくとも1つに発信者からの信号を受信可能な受信装置が設けられ、
前記受信装置は、前記信号を受信すると、制御装置に送信するように構成され、
前記制御装置は、前記受信装置からの信号を受信すると、前記旋回体、前記ジブ、及び前記フックを減速停止するように制御され
、
前記受信装置は、発信者からの送信装置による信号を受信し、
前記送信装置は、A接点接続されて制御される、
タワークレーンの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの制御システム及び制御方法に関し、具体的には、非常停止を押さなくても、荷を崩すことなく迅速にクレーンの作業を停止することができるクレーンの制御システム。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルの建設等で使用されるタワークレーンにおいては、操縦者が目視またはモニター画面で玉掛者または荷受者を確認しながら、クレーンの作業を行っている。また、玉掛者又は荷受者からのトランシーバや手信号等による指示でクレーンの作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、操縦者が対人・対物への危険を察知した際、非常停止による停止か、或いは操作レバーを中立することによる減速停止か、を見極めて判断している。
減速停止の場合は、目視またはトランシーバからの指示によって判断し、そこからの手作業(操作レバーの操作)による停止のため、時間を有し、また、即座に停止(非常停止)ではなく、荷崩れをしないように減速しながら停止するため、さらに時間を有する。
一方、非常停止は、荷崩れや建物躯体への接触等による二次災害の懸念や、周りの状況の見極めなど、瞬時の判断が必要であり、可能であれば操作レバーで減速停止したい心理が働くものである。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、二次災害を被ることなく非常停止に近い速度で減速停止できるクレーンの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、旋回体と、ジブと、フックと、制御装置と、を備え、旋回体は、マストの上部に旋回可能に設けられ、ジブは、旋回体に起伏可能に取り付けられ、フックは、ジブの先端から垂下ろされたワイヤに昇降可能に取り付けられ、制御装置は、旋回体、ジブ、及びフックの駆動を制御する、タワークレーンの制御システムであって、マスト、ジブ、及びフックの近傍の少なくとも1つに発信者からの信号を受信可能な受信装置が設けられ、受信装置は、信号を受信すると、制御装置に送信するように構成され、制御装置は、受信装置からの信号を受信すると、旋回体、ジブ、及びフックを減速停止するように制御される、タワークレーンの制御システムが提供される。
【0007】
本発明に係るクレーンの制御システムでは、玉掛者又は荷受者が送信装置を携帯し、送信装置でクレーンを迅速に減速停止する構成となっている。それによって二次災害を被ることなく、非常停止とまではいかないものの、極力非常停止に近い速さで減速停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の制御システムを搭載したクレーンを停止する模式図である。
【
図2】
図1の制御システムを例示するブロック図である。
【
図3】本実施形態における送信装置と受信装置の構成及び伝達の概略図である。
【
図4】本発明のクレーンの停止までの周波数と時間との関係を模式的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。特に、本明細書において「部」とは、構造的な部材に限定されず、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0010】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0011】
1.全体構成
第1節では、クレーンシステム1の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るクレーンシステム1の構成概要を示す図である。クレーンシステム1は、クレーン2と、クレーン2を制御するための制御装置3と、クレーン操縦者Uが種々の入力情報を入力可能に構成される入力装置4と、遠隔者Eからの停止指令を受信し、制御装置3に送信する受信装置6と、を備え、これらが電気的に接続されたシステムである。
【0012】
クレーンシステム1は、クレーン操縦者Uが入力装置4を介してクレーン2を操作中に、遠隔者Eが遠隔から停止指令をすることで、操作中であっても、吊荷Lを運搬・移動を迅速に停止するように構成されるものである。ここで、遠隔者Eは、玉掛者や荷受者が好ましいが、これらは一例であり、現場監督者、危険を察知した人、または、トラブルを発見した人などであっても良い。
【0013】
1.1 クレーン
本実施形態に係るクレーンシステム1において、クレーン2の形態は特に限定されるものではないが、例えば、
図2に示されるタワークレーン(クライミングクレーンともいう)が採用されうる。具体的には、クレーン2は、ベースフレーム21の上にマスト本体22が上方に延在して構成されるマスト23を有し、その頂部にクレーン本体24が設置されている。
【0014】
クレーン2は、例えば、フロアクライミングやマストクライミングが行える。
クレーン本体24は、マスト23の頂部に設けた旋回モータ25m(
図1参照)によって回転自在な旋回体25と、この旋回体25に起伏モータ26m(
図1参照)を介して起伏可能に支持されるジブ26と、旋回体25に固定され且つ巻上げモータ27m(
図1参照)を有する巻上げウインチ27と、この巻上げウインチ27に巻き上げられるように構成され、且つジブ26の末端26aから中継シーブ26cを介して先端26bに向かって延在し、且つ先端26bから垂下するロープ28と、このロープ28の一端に取り付けられるフック29とを備えている。
【0015】
なお、各モータ25m、26m、及び27mは、インバータ制御される公知のモータを用いることができ、特に限定するものではない。
旋回モータ25mには、旋回インバータ25iから電力が供給されている。同様に、起伏モータ26mには、起伏インバータ26iから電力が供給され、巻上げモータ27mには、巻上げインバータ27iから電力が供給されている。これら各インバータ25i、26i、及び27iには、外部から交流電力が供給されている。
【0016】
なお、各インバータ25i、26i、及び27iは、供給電力に対して可変電圧可変周波数制御を行うことで各モータ25m、26m、及び27mを制御してもよいし、定電圧定周波数制御や、可変電圧定周波数制御や、定電圧可変周波数制御などを行ってもよく、特に限定するものではない。
【0017】
また、
図1に示されるように、本実施形態に係るクレーン2は、遠隔者Eが操作する送信装置5からの信号を受信可能に構成される受信装置6を備えることに留意されたい。
図3は、本実施形態における送信装置と受信装置の構成及び伝達の概略図である。
図3に示されるように、本実施形態では、送信装置5は、無線スイッチで構成され、無線スイッチによって受信装置6は信号を集約して、クレーンの減速停止がなされる。
【0018】
好ましくは、送信装置5からの信号を受信した受信装置6は、送信装置5に信号を受信した情報を出力するようすると良い。
【0019】
また、受信装置6は、本体6aとアンテナ6bとを備える。本体6aは、LANケーブル等の通信ケーブル6cを介して、制御装置3に接続されている。
すなわち、受信装置6は、各送信装置5からの無線などによる信号を集約し、制御装置3に送信するものが採用される。
【0020】
ここで受信装置6は、例えば、ジブ26、マスト23、及びフック29の近傍の少なくとも何れかに取り付けられる。
図2に示されるように、設置位置に関しては、ジブ26の先端26bに設置しているが、あくまでも例示でありこの限りではない。
【0021】
1.2 制御装置
制御装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを有し、これらの構成要素が制御装置3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0022】
<通信部>
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。これらは一例であり、専用の通信規格を採用してもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。
【0023】
特に、
図1に示されるように、通信部31は、制御情報受信部31aと、停止情報受信部31bと、制御情報送信部31c、表示送信部31dとを備える。これらは物理的に別々に実施してもよいし、これらのうちの少なくとも一部を兼用して実施してもよい。以下、これらの構成要素についてさらに詳述する。
【0024】
[制御情報受信部]
制御情報受信部31aは、クレーン操縦者Uが後述の入力装置4より入力した制御情報CIを受信可能に構成される。ここで制御情報CIとは、クレーン2を操作・駆動、停止、非常停止、及びリセットなどをさせるための各種情報であり、例えば、ジブ26の左右旋回及び起伏と、ロープ28の巻上げ又は巻下げとに係る情報を有する。
【0025】
また、緊急時の非常停止に係る情報や、外部入力による操作無効状態を解除する情報をも有する。もちろん、クレーン2に関する他の駆動箇所がある場合には、制御情報CIは、当該箇所を操作・駆動させるための情報を含んでいてもよい。
【0026】
[停止情報受信部]
停止情報受信部31bは、受信装置6より送信された減速停止情報SIを受信可能に構成される。ここで減速停止情報SIとは、例えば、遠隔者Eが危険を察知した場合に、クレーン操縦者Uに頼らず、遠隔者Eがクレーン2に対して停止指令をした際に、クレーン2をクレーン操縦者Uが手作業で減速停止する場合より迅速に減速停止させるための各種情報である。
【0027】
例えば、ジブ26の左右旋回及び起伏と、ロープ28の巻上げ又は巻下げとに係る情報を有する。もちろん、クレーン2に関する他の駆動箇所がある場合には、減速停止情報SIは、当該箇所を減速停止させるための情報を含んでいてもよい。
【0028】
[制御情報送信部]
制御情報送信部31cは、通信部31の制御情報受信部31a及び停止情報受信部31bが制御情報CI及び減速停止情報SIを受信した場合、クレーン2における各種インバータに制御信号CSを送信可能に構成される。
【0029】
例えば、制御情報送信部31cは、ジブ26の旋回角に係る旋回インバータ25iを制御するための第1の制御信号CS1と、ジブ26の傾斜角に係る起伏インバータ26iを制御するための第2の制御信号CS2と、ロープ28の巻上げ具合に係る巻上げインバータ27iを制御するための第3の制御信号CS3を送信可能に構成される。
【0030】
なお、制御信号CSは、後述の記憶部32に基づいて、制御部33における制御信号生成部33a及び終了判定部33bにおいて生成される。
【0031】
[表示情報送信部]
表示情報送信部31dは、停止情報受信部31bが減速停止情報SIを受信した場合、表示器7に表示信号DSを送信可能に構成される。例えば、表示情報送信部31dは、受信装置6によって、クレーン2が遠隔者Eからの操作で減速停止中である旨の情報を表示器7に表示させる表示信号DSを送信可能に構成される。
【0032】
<記憶部>
記憶部32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State
Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。
【0033】
特に、記憶部32は、制御情報CI及び減速停止情報SIなどを記憶する。
また、記憶部32は、制御部33によって実行される制御装置3に係る種々のプログラム等を記憶している。具体的には、例えば、記憶部32は、制御情報CIに基づいて、現在のジブ26の旋回角を制御する第1の制御信号CS1を生成するための第1の制御信号生成プログラムを記憶している。
【0034】
また、記憶部32は、制御情報CIに基づいて、現在のジブ26の傾斜角を制御する第2の制御信号CS2を生成するための第2の制御信号生成プログラムを記憶している。また、記憶部32は、制御情報CIに基づいて、現在のフック29の巻上げ又は巻下げを制御する第3の制御信号CS3を生成するための第3の制御信号生成プログラムを記憶している。
【0035】
また、記憶部32は、減速停止情報SIに基づいて、現在のクレーン2の駆動(旋回モータ25m、起伏モータ26m、及び巻上げモータ27m)を減速停止させるプログラムを記憶している。好ましくは、そのプログラムが実行する際、制御情報CIに基づくプログラムは実行不能とするのがよい。
【0036】
また、減速停止情報SIに基づいて、クレーン2を減速停止するプログラムは、制御情報CIに基づいて、クレーン2を減速停止するプログラムと比べて、素早く減速停止するプログラムを記憶している点に留意されたい。
【0037】
さらに、記憶部32は、制御情報CIに基づくプログラムの実行を終了するか否かに係る終了判定を行うための終了判定プログラムを記憶している。具体的には、制御情報CIに基づくプログラムの実行中に、リセットスイッチ(入力装置4の一例)による制御情報CIを制御情報受信部31aが受信すると、上述の実行不能が解除されるプログラムが記憶されている。
【0038】
<制御部>
制御部33は、制御装置3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部33は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、制御装置3に係る種々の機能を実現する。
【0039】
具体的には、記憶部32に基づいて現在のジブ26の旋回角を制御(減速停止)する第1の制御信号CS1を生成するための第1の制御信号生成機能が該当する。また、記憶部32に基づいて現在のジブ26の傾斜角を制御(減速停止)する第2の制御信号CS2を生成するための第2の制御信号生成機能が該当する。また、記憶部32に基づいて現在のワイヤ28の巻上げまたは巻下げを制御する第3の制御信号CS3を生成するための第3の制御信号生成機能が該当する。さらに、本実施形態に係る受信装置6に基づく制御を終了するか否かに係る終了判定機能が該当する。
【0040】
すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって、具体的に実現されることで、制御信号生成部33a及び終了判定部33bとして実行されうる。なお、
図1においては、単一の制御部33として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。また、それらの組合せであってもよい。以下、制御信号生成部33a、及び終了判定部33bについてさらに詳述する。
【0041】
[制御信号生成部]
制御信号生成部33aは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって実現されているものである。制御信号生成部33aは、必要に応じて、クレーン2を操作・駆動、停止、非常停止、及びリセットなどをさせる制御信号CSを生成する。
【0042】
具体的には、例えば、制御信号生成部33aは、制御情報CIに基づいて、記憶部32の所定のプログラムを実行し、制御信号CS1、CS2、及びCS3を生成する。それによって、クレーン2を所望に操作・駆動、停止、非常停止、及びリセットなどができる。
また、制御信号生成部33aは、減速停止情報SIに基づいて、記憶部32の所定のプログラムを実行し、制御信号CS1、CS2、及びCS3を生成する。それによって、クレーン2を入力装置4で実行するより、迅速に減速停止することができる。
【0043】
[終了判定部]
終了判定部33bは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。終了判定部33bは、制御情報CIに基づいて、制御信号生成部33aが記憶部32の所定のプログラムを実行中に、リセットスイッチ(入力装置4の一例)による制御情報CIを制御情報受信部31aが受信すると、記憶部32の所定のプログラムが実行され、制御信号CSによって減速停止中又は完了したクレーン2の制御を終了するか否かを判定する。
【0044】
1.3 入力装置
入力装置4は、クレーン2のクレーン操縦者Uによって様々な入力情報が入力可能に構成される。
図1においては、クレーン2と入力装置4とを別体の如く記載しているが、クレーン2の内部に入力装置4が包含されるように実施してもよい。入力情報には、クレーン2を操作・駆動、停止、非常停止、及びリセットなどをさせるための制御情報CIが含まれる。
【0045】
入力装置4は、クレーン2において一般的に使用されうるスイッチボタン、レバー等はもちろん、必要に応じてマウス、キーボード、タッチパネル、音声入力装置等のインターフェースを適宜採用してもよい。入力装置4が、クレーン操縦者Uの入力情報(コマンド)を受け付けると、その入力情報が電気通信回線を介して制御装置3に送信され、制御装置3における通信部31によって受信される。
【0046】
2.クレーンの制御方法
第2節では、遠隔者Eによってクレーンを減速停止する方法について説明する。
【0047】
クレーン操縦者Uが、クレーン2を操作中に、玉掛者や荷受者(遠隔者Eの一例)が危険を察知した場合、各遠隔者Eは、無線スイッチ(送信装置5の一例)を押す。ここで無線スイッチはクレーン2を遠隔から停止させるためのものである。本実施形態では、無線スイッチは、以下、3つのおそれを回避すべくA接点接続としている。
【0048】
・受信装置と送信装置との間に障害物がある場合、意図せず停止するおそれがある
・他の無線機と混信した場合、意図せず停止するおそれがある
・無線送信装置自体が壊れた場合、意図せず停止するおそれがある
【0049】
無線スイッチが押されると、その信号を親機(受信装置6の一例)が集約し、減速停止情報SIを入力し、それを停止情報受信部31bが受信する。これがトリガーとなり、制御信号生成部33aは、記憶部32に基づいて実行され、制御信号CSを出力する。これに基づいて、各インバータ25i、26i、及び27iはインバータ制御によって、各モータ25m、26m、及び27mの回転速度を制御して減速停止する。具体的には、旋回モータ25mの駆動を減速停止させる第1の制御信号CS1、起伏モータ26mの駆動を減速停止させる第2の制御信号CS2、及び巻上げモータ27mの駆動を減速停止させる第3の制御信号CS3がそれぞれ通信部31(遠隔情報送信部31c)から送信される。
【0050】
この時、記憶部32には、減速停止情報SIが入力されると、クレーン操縦者Uが行う0ノッチ作業による減速停止より素早い速度で減速するようにプログラム設定している。
すなわち、そのプログラムが実行されることで、クレーン操縦者Uの手作業による減速停止より、素早い減速停止ができ、危険を回避することができる。
なお、ここでいう“素早い減速停止”は、クレーン操縦者Uの手作業より速く、且つ、荷崩れや建物躯体への接触等による二次災害とならない速度のことをいう。
【0051】
図4は、クレーンの停止までの周波数と時間との関係を模式的に示したグラフである。縦軸を周波数、横軸を時間で表し、実線はクレーン操縦者U、破線は遠隔者Eによる減速停止を示している。なお、横軸の時間は任意である。
ここで、
図4の破線Aで示したグラフが、本実施形態における遠隔者Eが地点aでクレーン2を減速停止させた場合を示し、比較として、クレーン操縦者Uがクレーンを操作し、地点aで操作レバーを0ノッチに投入してクレーンを減速停止させた場合のグラフを、実線Bで示す。
【0052】
T1は、クレーン2の停止状態から周波数h(Hz)に加速するまでの時間を示し、T2は、加速し終わった後の周波数h(Hz)一定での運転時間を示し、T3は、クレーン操縦者Uが地点aで0ノッチ作業をして、それによってクレーンが停止するまでの時間を示し、T4は、遠隔者Eが地点aで遠隔停止指令をして、それによってクレーンが停止するまでの時間を示している。
【0053】
図4に示されるように、例えば、周波数h(Hz)でクレーン2を操作中に、地点a(時間t
0)に到達した際、クレーン操縦者Uまたは遠隔者Eが減速停止を行った場合、クレーン操縦者Uによる減速停止は、時間t
2までかかる。一方、遠隔者Eによる減速停止は、時間t
1までかかる。すなわち、破線Aの方が実線Bより減速勾配がきつくなるような、インバータ制御をするプログラムを記憶部32に記憶している。
【0054】
また、前述のトリガーによって、記憶部32は、制御情報受信部31aが受信したクレーン操縦者Uからの制御情報CIを無効とするプログラムが記憶されている。
また、前述のトリガーによって、通信部31(表示情報送信部31d)からモニタ(表示器7の一例)に、その情報が送信される。これによって、クレーン操縦者Uは、遠隔から減速停止信号がなされた状態であることを把握することができる。
【0055】
続いて、制御部33(終了判定部33b)が、遠隔者Eによるクレーン2の減速停止の制御を終了すべきか否かを判定する。具体的には、クレーンを停止後、もしくは、クレーン操縦者Uが安全を確保した際は、クレーン操縦者Uがリセットスイッチ(入力装置4の一例)を押すと制御情報CIを入力し、これが通信部31(制御情報受信部31a)に受信される。
【0056】
これによって、クレーン2の減速停止の制御の終了が判定され、制御部33(終了判定部33b)は、記憶部32のプログラムに基づいて、前述のクレーン操縦者Uからの制御情報CIの無効を解除する、制御終了の判定がなされる(終了判定部33b)。
【0057】
〈結言〉
以上のように、本実施形態によれば、玉掛者又は荷受者が送信装置を携帯し、各々が危険などを察知した際は、送信装置でクレーンを素早く減速停止させる構成となっている。それによって二次災害を被ることなく、非常停止とまではいかないものの、極力非常停止に近い速さで減速停止することができる。
【0058】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
タワークレーンの制御システムであって、減速停止の制御が、旋回体、ジブ、及びフックに夫々設けられたインバータによって、制御される、もの。
また、タワークレーンの制御システムであって、減速停止の制御が、クレーン操縦者によって行われる減速停止より素早い減速停止となるように制御される、もの。
また、タワークレーンの制御システムであって、減速停止中は、クレーン操縦者の操作が無効となるように制御される、もの。
また、タワークレーンの制御システムであって、操作の無効は、クレーン操縦者がリセットスイッチを押動することで解除するように制御される、もの。
さらに、タワークレーンの制御システムであって、受信装置は、発信者からの送信装置による信号を受信し、送信装置は、A接点接続されて制御される、もの。
【0059】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 クレーンシステム
2 クレーン
3 制御装置
4 入力装置
5 送信装置
6 受信装置
21 ベースフレーム
22 マスト本体
23 マスト
24 クレーン本体
25 旋回体
25i 旋回インバータ
25m 旋回モータ
26 ジブ
26i 起伏インバータ
26m 起伏モータ
27i 巻上げインバータ
27m 巻上げモータ
28 ロープ
29 フック