(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20240401BHJP
B66C 1/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B66C13/16 F
B66C1/08 Z
(21)【出願番号】P 2020059312
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001369(JP,A)
【文献】特開2008-115008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20;13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントに取り付けられるリフティングマグネットと、
制御装置と、を備える作業機械であって、
前記制御装置は、
前記作業機械の姿勢または前記アタッチメントの姿勢に基づいて、前記リフティングマグネットによって吸着される物体の重量の制限値を設定する制限値設定部と、
前記リフティングマグネットによって吸着された物体の重量を算出する重量算出部と、
前記リフティングマグネットに供給する電力を制御する電力制御部と、を有し、
前記電力制御部は、
地切りする前の前記物体を前記リフティングマグネットで吸着する吸着時において、前記リフティングマグネットの作業半径に基づいて、前記作業半径が大きいほど前記リフティングマグネットに供給する電流が小さくなるように制御し、
地切り後において、前記物体の重量と
前記制限値とに基づいて、前記リフティングマグネットに供給する電力を制御する、
作業機械。
【請求項2】
前記電力制御部は、前記アタッチメントの姿勢に基づいて目標重量を設定し、前記物体の重量が前記目標重量に近づくように、前記リフティングマグネットに供給する電力を減
少させる、
請求項
1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リフティングマグネットを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクラップを吸着するリフティングマグネットを備える作業機械において、スクラップの荷重を測定する荷重測定手段を有する作業機械の荷重測定装置が開示されている。また、実転倒モーメントが定格荷重曲線で規定する転倒モーメントを超えた場合、それ以上の作業半径の拡大を制限することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リフティングマグネットを備える作業機械において、リフティングマグネットで鉄屑等の吊荷を吸着して運搬しようとした際、リフティングマグネットで大量の吊荷が吊り上げられた場合、作業機械の車体の姿勢が不安定になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、安定性を向上させる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様の作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントに取り付けられるリフティングマグネットと、制御装置と、を備える作業機械であって、前記制御装置は、前記作業機械の姿勢または前記アタッチメントの姿勢に基づいて、前記リフティングマグネットによって吸着される物体の重量の制限値を設定する制限値設定部と、前記リフティングマグネットによって吸着された物体の重量を算出する重量算出部と、前記リフティングマグネットに供給する電力を制御する電力制御部と、を有し、前記電力制御部は、地切りする前の前記物体を前記リフティングマグネットで吸着する吸着時において、前記リフティングマグネットの作業半径に基づいて、前記作業半径が大きいほど前記リフティングマグネットに供給する電流が小さくなるように制御し、地切り後において、前記物体の重量に基づいて、前記リフティングマグネットに供給する電力を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定性を向上させる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す作業機械に搭載される駆動系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】リフティングマグネットの電流補償を説明するブロック線図である。
【
図5】第1動作例における作業機械の制御を説明するフローチャートである。
【
図6】第2動作例における作業機械の制御を説明する模式図である。
【
図7】吸着時(地切り前)における作業半径とリフティングマグネット6に供給する電流との関係を説明するグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る作業機械100の側面図である。作業機械100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのリフティングマグネット6が取り付けられている。ブーム4及びアーム5はアタッチメントの一例である作業アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、リフティングマグネット6はリフティングマグネットシリンダ9で駆動される。
【0010】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、リフティングマグネット6にはリフティングマグネット角度センサS3が取り付けられている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、空間認識装置80、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5が取り付けられている。
【0011】
ブーム角度センサS1は、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出するように構成されている。ブーム角度センサS1は、例えば、ブームフートピン回りのブーム4の回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量(ブームストローク量)を検出するシリンダストロークセンサ、又は、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等であってもよく、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出するアーム角度センサS2、及び、アーム5に対するリフティングマグネット6の回動角度であるリフティングマグネット角度を検出するリフティングマグネット角度センサS3についても同様である。
【0012】
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜(機体傾斜角度)を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角度を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交して作業機械100の旋回軸上の一点である機械中心点を通る。
【0013】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
【0014】
空間認識装置80は作業機械100の周囲を撮像するように構成されている。空間認識装置80は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、赤外線カメラ又はLIDAR等である。
図1の例では、空間認識装置80は、上部旋回体3の上面前端に取り付けられたフロントカメラ80F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられたバックカメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80R(
図1では不可視。)を含む。
【0015】
そして、空間認識装置80は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。また、空間認識装置80は、空間認識装置80又は作業機械100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。撮像した画像を利用するだけでなく、空間認識装置80としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等を利用する場合には、多数の信号(レーザ光等)を物体に発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0016】
空間認識装置80は、作業機械100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。物体は、例えば、ダンプトラック、地形形状(傾斜、穴等)、電線、電柱、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、ヘルメット、安全ベスト、作業服、又は、ヘルメットにおける所定のマーク等である。このようにして、空間認識装置80は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置80は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0017】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6b、及び、ブームシリンダストロークセンサS7が取り付けられていてもよい。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS6c、アームボトム圧センサS6d、及び、アームシリンダストロークセンサS8が取り付けられていてもよい。リフティングマグネットシリンダ9にはリフティングマグネットロッド圧センサS6e、リフティングマグネットボトム圧センサS6f、及び、リフティングマグネットシリンダストロークセンサS9が取り付けられていてもよい。
【0018】
ブームロッド圧センサS6aはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS6bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS6cはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS6dはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。リフティングマグネットロッド圧センサS6eはリフティングマグネットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットロッド圧」とする。)を検出し、リフティングマグネットボトム圧センサS6fはリフティングマグネットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットボトム圧」とする。)を検出する。
【0019】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。
【0020】
図2は、作業機械100に搭載される駆動系の構成例を示す図である。
図2において、機械的動力伝達系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気制御系は一点鎖線、電気駆動系は太点線でそれぞれ示される。
【0021】
作業機械100の駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14、油圧ポンプ14G、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、コントローラ30及びエンジン制御装置74で構成されている。
【0022】
エンジン11は、作業機械100の動力源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、オルタネータ11a、メインポンプ14、油圧ポンプ14G及びパイロットポンプ15の入力軸のそれぞれに接続されている。
【0023】
メインポンプ14は、作動油ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0024】
レギュレータ14aは、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ14aは、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0025】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0026】
コントロールバルブ17は、作業機械100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対し、メインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0027】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットポンプ15からの作動油をコントロールバルブ17内にある対応する流量制御弁のパイロットポートに供給してパイロット圧を生成する。具体的には、操作装置26は、旋回操作及びアーム操作のための左操作レバー、ブーム操作及びリフティングマグネット操作のための右操作レバー、走行ペダル、並びに、走行レバー(何れも図示せず。)等を含む。パイロット圧は、操作装置26の操作内容(例えば操作方向及び操作量を含む。)に応じて変化する。
【0028】
操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、操作装置26が生成したパイロット圧を検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容を把握する。
【0029】
コントローラ30は、各種演算を実行する制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置等を備えたマイクロコンピュータである。コントローラ30は、例えば、各種機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、それらプログラムのそれぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0030】
油圧ポンプ14Gは作動油ライン16aを介して作動油を油圧モータ60に供給する。本実施形態では、油圧ポンプ14Gは固定容量型油圧ポンプであり、切換弁61を通じて油圧モータ60に作動油を供給する。
【0031】
切換弁61は、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油の流れを切り換えるように構成されている。本実施形態では、切換弁61はコントローラ30からの制御指令に応じて弁位置が切り換わる電磁弁である。切換弁61は、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を連通させる第1弁位置と、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を遮断する第2弁位置とを有する。
【0032】
コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモードに切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第1弁位置に切り換える。また、コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモード以外に切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第2弁位置に切り換える。
図2は、切換弁61が第2弁位置にある状態を示す。
【0033】
モード切換スイッチ62は、作業機械100の動作モードを切り換えるスイッチである。本実施形態では、キャビン10内に設置されるロッカスイッチである。操作者はモード切換スイッチ62を操作してショベルモードとリフティングマグネットモードとを二者択一的に切り換える。ショベルモードは作業機械100を掘削機(ショベル)として作動させるときの動作モードであり、例えばリフティングマグネット6の代わりにバケットがアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。リフティングマグネットモードは作業機械100をリフティングマグネット付き作業機械として作動させるときのモードであり、リフティングマグネット6がアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。なお、コントローラ30は各種センサの出力に基づいて作業機械100の動作モードを自動的に切り換えてもよい。
【0034】
リフティングマグネットモードが選択された場合、切換弁61は第1弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させる。一方、リフティングマグネットモード以外の動作モードが選択された場合、切換弁61は第2弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させることなく作動油タンクに流出させる。
【0035】
油圧モータ60の回転軸は発電機63の回転軸に機械的に連結されている。発電機63は、リフティングマグネット6を励磁するための電力を生成する。本実施形態では、発電機63は電力制御装置64からの制御指令に応じて動作する交流発電機である。
【0036】
電力制御装置64はリフティングマグネット6を励磁するための電力の供給・遮断を制御する。本実施形態では、電力制御装置64は、コントローラ30からの発電開始指令・発電停止指令に応じて発電機63による交流電力の発電の開始・停止を制御する。また、電力制御装置64は発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給する。また、電力制御装置64はリフティングマグネット6に印加される電圧の大きさ、及び、リフティングマグネット6を流れる電流の大きさを制御できる。
【0037】
コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオン操作されてオン状態になると電力制御装置64に対して吸着指令を出力する。吸着指令を受けた電力制御装置64は、発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給し、リフティングマグネット6を励磁する。励磁されたリフティングマグネット6は物体(磁性体)を吸着可能な吸着状態となる。
【0038】
また、コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオフ操作されてオフ状態になると電力制御装置64に対して釈放指令を出力する。釈放指令を受けた電力制御装置64は、発電機63による発電を中止させ、吸着状態にあるリフティングマグネット6を非吸着状態(釈放状態)にする。リフティングマグネット6の釈放状態は、リフティングマグネット6への電力供給が中止されてリフティングマグネット6が発生させていた電磁力が消失した状態を意味する。
【0039】
リフティングマグネットスイッチ65は、リフティングマグネット6の吸着・釈放を切り換えるスイッチである。本実施形態では、リフティングマグネットスイッチ65は、左操作レバー26Lの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての弱励磁ボタン65A及び強励磁ボタン65Bと、右操作レバー26Rの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての釈放ボタン65Cとを含む。
【0040】
弱励磁ボタン65Aは、リフティングマグネット6に所定の電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(弱吸着状態)にするための入力装置の一例である。所定の電圧は、例えば、磁力調節ダイヤル66を通じて設定される電圧である。
【0041】
強励磁ボタン65Bは、リフティングマグネット6に許容最大電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)にするための入力装置の一例である。
【0042】
釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態にするための入力装置の一例である。
【0043】
磁力調節ダイヤル66は、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、磁力調節ダイヤル66はキャビン10内に設置され、弱励磁ボタン65Aが押されたときのリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、磁力調節ダイヤル66は、第1レベルから第4レベルの4段階でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を切り換えできるように構成されている。
図2は、磁力調節ダイヤル66で第3レベルが選択された状態を示す。
【0044】
リフティングマグネット6は、磁力調節ダイヤル66で設定されたレベルの磁力(吸着力)を発生させるように制御される。磁力調節ダイヤル66は、磁力(吸着力)のレベルを示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0045】
この構成により、操作者は、左手で左操作レバー26Lを操作し且つ右手で右操作レバー26Rを操作して作業アタッチメントを動作させながら、指でリフティングマグネット6による物体(磁性体)の吸着及び釈放を実行できる。典型的には、操作者は、物体(例えば鉄屑等)にリフティングマグネット6を接触させた状態で弱励磁ボタン65Aを押して鉄屑をリフティングマグネット6に吸着させる。その後、操作者は、ブーム4を緩やかに上昇させ、鉄屑を吸着したリフティングマグネット6を持ち上げた後で、強励磁ボタン65Bを押してリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を増大させる。アタッチメント操作(ブーム操作、アーム操作及びバケット操作の少なくとも1つを含む操作)又は旋回操作による鉄屑の運搬中において、鉄屑がリフティングマグネット6から落ちるのを防止するためである。
【0046】
また、操作者は、磁力調節ダイヤル66でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節することで、物体の仕分けを行うことができる。操作者は、例えば、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いてスクラップの山から比較的軽い物体を選択的に持ち上げて移動させることで、比較的軽い物体と比較的重い物体とを仕分けることができる。操作者は、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いることで、比較的重い物体を持ち上げてしまうのを防止できるためである。
【0047】
作業機械100は、弱励磁ボタン65A又は強励磁ボタン65Bが押されたときに、動作モードを自動的に速度制限モードに切り換えるように構成されていてもよい。速度制限モードは、例えば、リフティングマグネットモードにおいて、旋回速度及びアタッチメントの駆動速度が制限される動作モードである。
【0048】
また、作業機械100は、弱励磁ボタン65Aが押された後で、所定の操作が行われた場合、或いは、所定の状態になった場合、リフティングマグネット6の状態を、強励磁ボタン65Bが押されたときの状態である強吸着状態に自動的に移行させてもよい。所定の操作は、例えば、旋回操作である。所定の状態は、例えば、アタッチメントが所定の姿勢になった状態、具体的には、ブーム角度が所定角度になった状態である。この場合、作業機械100は、例えば、弱励磁ボタン65Aが押されて弱吸着状態となっているリフティングマグネット6がブーム上げ操作に応じて持ち上げられた後で旋回操作が行われたときに、強励磁ボタン65Bが押されなくとも、リフティングマグネット6の状態を強吸着状態に自動的に移行させることができる。
【0049】
表示装置40は、各種情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置40は、運転席が設けられたキャビン10の右前部のピラー(図示せず。)に固定されている。また、
図2に示すように、表示装置40は、作業機械100に関する情報を画像表示部41に表示して操作者に情報を提供できる。また、表示装置40は、入力装置としてのスイッチパネル42を含む。操作者はスイッチパネル42を利用して各種指令をコントローラ30に対して入力できる。
【0050】
スイッチパネル42は、各種スイッチを含むパネルである。本実施形態では、スイッチパネル42は、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42cを含む。ライトスイッチ42aは、キャビン10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り換えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り換えるためのスイッチである。ウインドウォッシャスイッチ42cは、ウインドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。
【0051】
表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はオルタネータ11aで発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外の電装品72等にも供給される。エンジン11のスタータ11bは蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動する。
【0052】
エンジン制御装置74は、エンジン11を制御する。本実施形態では、エンジン制御装置74は、エンジン11の状態を示す各種データを収集し、収集したデータをコントローラ30に送信する。エンジン制御装置74とコントローラ30とは別体として構成されているが一体的に構成されていてもよい。例えば、エンジン制御装置74は、コントローラ30に統合されてもよい。
【0053】
エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、エンジン回転数調節ダイヤル75はキャビン10内に設置され、エンジン回転数を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、エンジン回転数調節ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。
図2は、エンジン回転数調節ダイヤル75でHモードが選択された状態を示す。
【0054】
SPモードは、作業量を優先させたい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音で作業機械を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態で動作させたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数(アイドリング回転数)を利用する。
【0055】
エンジン11は、エンジン回転数調節ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数が維持されるように制御される。エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0056】
また、コントローラ30は、目標重量設定部31と、重量算出部32と、吸着力制御部33と、最大積載量設定部34と、累積重量算出部35と、残重量算出部36と、を有している。
【0057】
目標重量設定部31は、リフティングマグネット6で吸着する物体の目標重量を取得する。なお、目標重量は、オペレータにより入力されてもよく、後述する残重量算出部36の残重量に基づいて設定してもよく、予め設定されていてもよい。
【0058】
重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量(現重量)を算出する。現重量は、例えば、ブーム4の根元回りのトルクの釣り合いで算出される。具体的には、リフティングマグネット6に吸着された物体によってブームシリンダ7の推力が増加し、ブームシリンダ7の推力から算出されるブーム4の根元回りのトルクも増加する。トルクの増加分と、物体の重量及び物体の重心から計算されるトルクとが、一致する。このように、重量算出部32は、ブームシリンダ7の推力(ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7Bの測定値)及び物体の重心に基づいて、物体の重量を算出することができる。なお、物体の重心は、例えば、実験的に予め求めてコントローラ30に記憶させておく。なお、物体の重量の算出方法は、これに限られるものではなく、種々の方法が適用できる。
【0059】
吸着力制御部33は、リフティングマグネット6に供給される電流の電流指令値を制御して、リフティングマグネット6の吸着力を制御する。
【0060】
最大積載量設定部34は、物体を積み込むダンプトラックの最大積載量を設定する。なお、最大積載量は、例えば、オペレータにより入力されてもよく、例えば、空間認識装置80で撮像されたダンプトラック画像に基づいてダンプトラックの車種(サイズ等)を判定し、判定された車種(サイズ等)に基づいて最大積載量を設定してもよい。
【0061】
累積重量算出部35は、ダンプトラックの荷台に積み込まれた物体の累積重量を算出する。
【0062】
残重量算出部36は、最大積載量と累積重量との差である残重量を算出する。
【0063】
以下、本実施形態に係る作業機械100の動作の一例に沿って説明する。
【0064】
まず、コントローラ30の目標重量設定部31は、リフティングマグネット6で吸着する物体の目標重量を設定する。また、最大積載量設定部34は、物体を積み込むダンプトラックの最大積載量を設定する。
【0065】
次に、オペレータは、操作装置26を操作して、リフティングマグネット6を吸着対象の物体の上に移動させる。
【0066】
次に、オペレータは、弱励磁ボタン65Aを操作して、リフティングマグネット6に磁力(吸着力)を発生させる。これにより、物体がリフティングマグネット6に吸着される。この際、コントローラ30の吸着力制御部33は、電流指令値として第1電流指令値を指令する。なお、第1電流指令値は、リフティングマグネット6に吸着される物体が目標重量以上となるような十分な電流値が設定される。電力制御装置64は、電流指令値に基づいて、リフティングマグネット6へ供給される電流を制御する。
【0067】
次に、オペレータは、操作装置26を操作して、リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇させる。これにより、リフティングマグネット6に吸着された物体が、リフティングマグネット6とともに持ち上げられる。また、コントローラ30が後述する補償制御を開始するトリガとなる。なお、リフティングマグネット6が所定の高さまで上昇したか否かは、リフティングマグネット6の位置で判断してもよく、アタッチメントの姿勢、アタッチメントの各連結ピンの位置、リフティングマグネット6の上昇を開始してからの経過時間、吸着スイッチの操作状態等に基づいて判断してもよい。
【0068】
次に、コントローラ30の重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された(吊られた)物体の重量(現重量)を算出する。
【0069】
次に、コントローラ30の吸着力制御部33は、現重量が目標重量より重い場合、リフティングマグネット6へ供給される電流の補償制御を行う。例えば、吸着力制御部33は、電流指令値を減少させるように調整する。これにより、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)が低下し、リフティングマグネット6に吸着された物体の一部が落下する。即ち、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量が低下する。
【0070】
以下、コントローラ30は、補償制御において、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量(現重量)の算出と、電流指令値の調整(減少)を繰り返し、現重量が目標重量となるまで繰り返す。なお、現重量が目標重量となった際の電流指令値を第2電流指令値とする。
【0071】
次に、コントローラ30の吸着力制御部33は、電流指令値を第3電流指令値とする。第3電流指令値は、第2電流指令値よりも大きな電流指令値である。これにより、目標重量となった物体がリフティングマグネット6から脱落することを抑制する。
【0072】
次に、コントローラ30は、現重量が目標重量となると、オペレータに報知する。なお、報知方法は、例えば、表示装置40に表示するものであってもよく、音声によるものであってもよい。
【0073】
次に、報知されたオペレータは、強励磁ボタン65Bを操作して、リフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)とする。次に、オペレータは、操作装置26を操作して、上部旋回体3、作業アタッチメント(ブーム4、アーム5)を動かし、リフティングマグネット6をダンプトラックの荷台の上まで移動させる。次に、オペレータは、釈放ボタン65Cを操作して、釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態とする。これにより、目標重量の物体がダンプトラックの荷台に積み込まれる。
【0074】
なお、累積重量算出部35は、前回までの累積重量に今回の目標重量を加算して、累積重量を更新する。残重量算出部36は、更新された累積重量に基づいて、残重量を算出する。
【0075】
これらの動作を繰り返すことにより、ダンプトラックの荷台に所望の累積重量の物体を積み込むことができる。
【0076】
なお、コントローラ30は、リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇させた後、現重量が目標重量となるまでの間(現重量の算出と電流調整を繰り返す間)、上部旋回体3の旋回を禁止または所定の角度範囲内に制限してもよい。これにより、現重量が目標重量となるように調整する際に落下する物体が周囲に散乱することを抑制することができる。
【0077】
なお、ダンプトラックへの積み込みの場合を例に説明したが、これに限られるものではなく、積み降ろしの時も同様に所望の目標重量の物体をダンプトラックから積み下ろすことができる。
【0078】
次に、
図3を用いて作業機械100のブロック線図の一例を示す。
図3は、リフティングマグネット6の電流補償を説明するブロック線図である。
図3に示すように、吸着開始判定部101と、補償器102と、重量検出部103と、を有している。
【0079】
吸着開始判定部101は、補償器102に入力する目標重量を切り替える機能を有する。吸着開始判定部101は、例えば、弱励磁ボタン65Aが操作された際、目標重量としてWref+ΔWを補償器102に入力するように切り替える。また、吸着開始判定部101は、例えば、リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇させた際、目標重量としてWrefを補償器102に入力するように切り替える。このように、弱励磁ボタン65Aが操作された後からリフティングマグネット6が所定の高さまで上昇するまでの間は、目標重量が大きくなるように処理する。
【0080】
リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇した後、補償器102は、目標重量Wrefと重量検出部103で検出した現重量との差に基づいて、リフティングマグネット6に供給する電流を補償する。ここで、電流の補償は、前記リフティングマグネット6に物体が吊られた後だけでなく、物体が吊られる前に算出された目標流量Wrefに対応する電流を補償してもよい。
【0081】
重量検出部103は、リフティングマグネット6で吸着された物体の重量を検出する。
【0082】
このように、目標重量Wrefと現重量とに基づいて、リフティングマグネット6に供給される電流を補償することで、リフティングマグネット6に吸着されている物体の重量を目標重量とすることができる。
【0083】
次に、
図4を参照し、表示装置40に表示されるメイン画面41Vの構成例について説明する。
図4のメイン画面41Vは、例えば、動作モードがリフティングマグネットモードのときに画像表示部41に表示される。
【0084】
メイン画面41Vは、日時表示領域41a、走行モード表示領域41b、アタッチメント表示領域41c、燃費表示領域41d、エンジン制御状態表示領域41e、エンジン稼働時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、回転数モード表示領域41i、尿素水残量表示領域41j、作動油温表示領域41k、カメラ画像表示領域41m、現重量表示領域41p、累積重量表示領域41q、リセットボタン41r、残重量表示領域41s及び目標重量表示領域41tを含む。
【0085】
走行モード表示領域41b、アタッチメント表示領域41c、エンジン制御状態表示領域41e及び回転数モード表示領域41iは、作業機械100の設定状態に関する情報である設定状態情報を表示する領域である。燃費表示領域41d、エンジン稼働時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、尿素水残量表示領域41j、作動油温表示領域41k、現重量表示領域41p及び累積重量表示領域41qは、作業機械100の稼動状態に関する情報である稼動状態情報を表示する領域である。
【0086】
具体的には、日時表示領域41aは、現在の日時を表示する領域である。走行モード表示領域41bは、現在の走行モードを表示する領域である。アタッチメント表示領域41cは、現在装着されているエンドアタッチメントを表す画像を表示する領域である。
図4は、リフティングマグネット6を表す画像が表示された状態を示している。
【0087】
燃費表示領域41dは、コントローラ30によって算出された燃費情報を表示する領域である。燃費表示領域41dは、生涯平均燃費又は区間平均燃費を表示する平均燃費表示領域41d1、瞬間燃費を表示する瞬間燃費表示領域41d2を含む。
【0088】
エンジン制御状態表示領域41eは、エンジン11の制御状態を表示する領域である。エンジン稼働時間表示領域41fは、エンジン11の累積稼働時間を表示する領域である。冷却水温表示領域41gは、現在のエンジン冷却水の温度状態を表示する領域である。燃料残量表示領域41hは、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を表示する領域である。回転数モード表示領域41iは、エンジン回転数調節ダイヤル75によって設定された現在の回転数モードを表示する領域である。尿素水残量表示領域41jは、尿素水タンクに貯蔵されている尿素水の残量状態を表示する領域である。作動油温表示領域41kは、作動油タンク内の作動油の温度状態を表示する領域である。
【0089】
カメラ画像表示領域41mは、空間認識装置80が撮像した画像を表示する領域である。
図4の例では、カメラ画像表示領域41mは、バックカメラ80Bが撮像したバックカメラ画像を表示している。バックカメラ画像は、作業機械100の後方の空間を映し出す後方画像であり、カウンタウェイトの画像3aを含む。
【0090】
現重量表示領域41pは、リフティングマグネット6が現に持ち上げている物体の重量(現重量)を表示する領域である。
図4は、現重量が550kgであることを示している。
【0091】
コントローラ30は、例えば、作業アタッチメントの姿勢とブームボトム圧と予め登録されている作業アタッチメントの仕様(重量及び重心位置等)とに基づいて現重量を算出する。具体的には、コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、リフティングマグネット角度センサS3及びブームボトム圧センサS6b等の情報取得装置の出力に基づいて現重量を算出する。
【0092】
累積重量表示領域41qは、所定の期間においてリフティングマグネット6が持ち上げた物体の重量の積算値(以下、「累積重量」とする。)を表示する領域である。
図4は、累積重量が9500kgであることを示している。
【0093】
所定の期間は、例えば、リセットボタン41rが押されたときに始まる期間である。操作者は、例えば、ダンプトラックの荷台に鉄屑を積み込む作業を行う場合、積み込み対象のダンプトラックが入れ替わる度にリセットボタン41rを押して累積重量をリセットする。各ダンプトラックに積み込んだ鉄屑の総重量を容易に把握できるようにするためである。
【0094】
この構成により、作業機械100は、ダンプトラックの最大積載重量を超えて、ダンプトラックの荷台に鉄屑が積み込まれてしまうのを防止できる。最大積載重量を超えて鉄屑が積み込まれていることが台貫での重量測定によって検知されると、ダンプトラックの運転者は、積み込みヤードに戻り、荷台に積み込まれた鉄屑の一部を下ろす作業を行う必要がある。作業機械100は、このような積載重量の調整作業の発生を防止できる。
【0095】
所定の期間は、例えば、1日の作業を開始する時刻から1日の作業を終了する時刻までの期間であってもよい。1日の作業によって運搬された鉄屑の総重量を操作者又は管理者が容易に認識できるようにするためである。
【0096】
リセットボタン41rは、累積重量をリセットするためのソフトウェアボタンである。リセットボタン41rは、スイッチパネル42、左操作レバー26L又は右操作レバー26R等に配置されるハードウェアボタンであってもよい。
【0097】
コントローラ30は、ダンプトラックの入れ替わりを自動的に認識して累積重量を自動的にリセットするように構成されていてもよい。この場合、コントローラ30は、空間認識装置80が撮像した画像を利用してダンプトラックの入れ替わりを認識してもよく、通信装置を利用してダンプトラックの入れ替わりを認識してもよい。
【0098】
また、コントローラ30は、空間認識装置80が撮像した画像に基づき、リフティングマグネット6で持ち上げた鉄屑がダンプトラックの荷台に積み込まれたことを認識した上で、現重量を積算するように構成されていてもよい。ダンプトラックの荷台以外の場所に移された鉄屑がダンプトラックに積み込まれた鉄屑として積算されてしまうのを防止するためである。
【0099】
コントローラ30は、作業アタッチメントの姿勢に基づき、リフティングマグネット6で持ち上げた鉄屑がダンプトラックの荷台に積み込まれたか否かを判定してもよい。具体的には、コントローラ30は、例えば、リフティングマグネット6の高さが所定値(例えば、ダンプトラックの荷台の高さ)を超え且つ釈放ボタン65Cが押された場合に、鉄屑がダンプトラックの荷台に積み込まれたと判定してもよい。
【0100】
コントローラ30は、現重量が所定値を超えていると判定した場合に警報を出力するように構成されていてもよい。所定値は、例えば、定格持ち上げ重量に基づく値である。警報は、視覚的警報、聴覚的警報又は触覚的警報であってもよい。この構成により、コントローラ30は、現重量が所定値を超えていること或いはそのおそれがあることを操作者に伝えることができる。
【0101】
鉄屑等の比較的小さいスクラップを持ち上げ対象とする場合、リフティングマグネット6に吸着するスクラップの体積には限りがあるため、作業機械100は、現重量を過度に大きくしてしまうことはない。しかし、鉄板又は鉄塊等の比較的大きい物体を持ち上げ対象とする場合、作業機械100は、作業機械100の安定度SVが所定値(例えば1.0)を下回るほどの過度に重い物体を持ち上げてしまう場合がある。なお、作業機械100の安定度SVは、SV=(W2×L2)/(W1×L1)で表される。W1は、(持ち上げられた物体の重量を含む)作業アタッチメントの重量であり、L1は、転倒支点から作業アタッチメントの重心までの水平距離である。また、W2は、(作業アタッチメントの重量を除く)作業機械100の機体の重量であり、L2は、転倒支点から機体の重心までの水平距離である。
【0102】
過度に重い物体を持ち上げてしまった場合、コントローラ30は、ブザーを鳴らし、且つ、現重量が所定値を超えたことを表す画像を表示装置40に表示させることができる。そのため、操作者が気付かないまま、過度に重い物体が持ち上げられた状態が継続してしまうのを防止できる。その結果、作業機械100による作業の安全性を高めることができる。
【0103】
残重量表示領域41sは、残重量を表示する領域である。
図4は、累積重量が9500kgで、且つ、残重量が500kgであることを示している。すなわち、最大積載量が10000kgであることを示している。但し、表示装置40は、残重量を表示させずに最大積載量を表示させてもよいし、残重量とは別に最大積載量を表示させてもよい。
【0104】
目標重量表示領域41tは、リフティングマグネット6で吸着する物体の目標重量を表示する領域である。なお、目標重量は、残重量を超えない値で設定される。
【0105】
図4に示す例では、残重量が500kgであることから、目標重量は500kgと設定されている。これに対し、現重量は、550kgである。このため、コントローラ30は、現重量が500kg(目標重量)となるまでリフティングマグネット6の電流を減少させる制御を行う。これにより、ダンプトラックの過積載を防止することができる。
【0106】
以上、本実施形態に係る作業機械100によれば、リフティングマグネット6によって持ち上げられた物体の重量(現重量)を目標重量とすることができる。
【0107】
なお、目標重量と目標電流指令とを対応付けしたテーブルを有し、目標重量に基づいて、リフティングマグネット6に供給する電流の目標電流指令を生成することにより、リフティングマグネット6によって持ち上げられた物体の重量を目標重量に近づけるという構成が考えられる。しかしながら、リフティングマグネット6で吸着する物体は、例えば、鉄屑や鉄骨等の粗密のバラツキがある物体である場合、目標重量に対応した電流値を印加しても、実際にリフティングマグネット6に吸着された物体の重量が目標重量とずれることが想定される。これに対し、本実施形態に係る作業機械100によれば、リフティングマグネットに吸着される物体の重量を目標重量とすることができる。
【0108】
また、メッセージ表示領域41m1には、メッセージが表示される。例えば、現重量が目標重量を超過している際には、その旨のメッセージが表示される。これにより、重量調整が完了する前に積み込み動作を行うことを防止することができる。また、累積重量が最大積載量を超過した場合にもメッセージを表示してもよい。これにより、オペレータに積み降ろし作業を促すことができ、ダンプトラックの過積載を防止することができる。
【0109】
次に、作業機械が吊荷を吊り上げる際における作業機械の姿勢を安定化させる制御について
図5を用いて説明する。
図5は、第1動作例における作業機械の制御を説明するフローチャートである。
【0110】
ステップS101において、作業機械は、地切りする。具体的には、まず、オペレータは、操作装置26を操作して、アタッチメントを動作させ、リフティングマグネット6を吊荷である物体の上に載置する。続いて、オペレータは、リフティングマグネットスイッチ65をONにする。これにより、コントローラ30は、リフティングマグネット6に電流を供給する。なお、供給される電流値は、最大電流としてもよい。そして、オペレータは、操作装置26を操作して、アタッチメントを動作させ、リフティングマグネット6を上昇させる。これにより、リフティングマグネット6に吊り下げられた物体が地面から離れて、地切りされる。
【0111】
ステップS102において、コントローラ30(重量検出部103)は、リフティングマグネット6で吸着された物体の重量を算出する。
【0112】
ステップS103において、コントローラ30は、ステップS102で算出された物体の重量(現重量)が制限値以下か否かを判定する。ここで、制限値とは、作業機械の姿勢に係らず一意に定められていてもよい。また、作業機械の姿勢(アタッチメントの姿勢)に基づいて、制限値が異なっていてもよい。例えば、リフティングマグネット6に吊り下げられる物体がブーム4のフートピンから水平時距離が離れるほど、モーメントは大きくなる。このため、リフティングマグネット6が近いほど制限値を大きく、リフティングマグネット6が遠いほど制限値を小さく設定してもよい。
【0113】
現重量が制限値以下の場合(S103・Yes)、
図5に示すコントローラ30の処理を終了する。
【0114】
現重量が制限値以下でない場合(S103・No)、コントローラ30の処理はステップS104に進む。
【0115】
ステップS104において、目標重量を制限する。即ち、リフティングマグネット6に供給される電流を下げる。これにより、
図3に示すように、目標重量に基づいて、リフティングマグネット6に供給される電流が減少する。即ち、リフティングマグネット6の吸着力が減少して、リフティングマグネット6に吸着されている物体の重量が減少する。そして、コントローラ30の処理は、ステップS102に戻る。
【0116】
なお、
図5に示す処理の終了後、リフティングマグネット6に供給する電流を最大値としてもよい。リフティングマグネット6は、地切り後であるため、リフティングマグネット6に供給する電流を増加させても、吊り下げられている物体の重量は増加することなく維持させることができる。これにより、例えば、上部旋回体3を旋回させてリフティングマグネット6に吸着された物体を搬送する際に、運搬経路上に物体が落下して散乱することを防止することができる。
【0117】
第1動作例の作業機械によれば、リフティングマグネット6に供給する電流を減少させて、リフティングマグネット6に吊り下げられている物体の重量を減少させることができる。これにより、物体をリフティングマグネット6で吊り上げた際に作業機械の姿勢が不安定となることを防止することができる。これにより、作業機械の安定性を向上させることができる。
【0118】
次に、第2動作例に係る作業機械について
図6及び
図7を用いて説明する。
【0119】
図6は、第2動作例における作業機械の制御を説明する模式図である。作業機械の上部旋回体3の旋回中心から、リフティングマグネット6の基準位置までの水平距離を作業半径と呼ぶものとする。
図6において、リフティングマグネット6の作業半径r2の場合を実線で図示し、その前後の作業半径r1,r3(r1<r2<r3)の場合を一点鎖線で示している。吊り下げる物体の重量が同じ場合でも、作業半径rが大きくなるほど、点Pを支点として作業機械の車体が転倒しようとするモーメント(
図6において白抜き矢印で示す。)が大きくなる。
【0120】
図7は、吸着時(地切り前)における作業半径とリフティングマグネット6に供給する電流との関係を説明するグラフの一例である。
図7に示す関係式701に示すように、作業半径rに応じて、吸着時のリフティングマグネット6に供給する電流を予め制限する。なお、作業半径rと電流Iとの関係式は、直線の関係式701に限られるものではなく、曲線702であってもよい。
【0121】
第2実施例の作業機械によれば、予めリフティングマグネット6に供給する電流を減少させて、リフティングマグネット6に吊り下げられている物体の重量を減少させることができる。これにより、作業機械の車体の姿勢が吊り下げられた物体の荷重によって不安定となることを防止することができる。よって、作業機械の安定性を向上させることができる。
【0122】
また、第2実施例の作業機械によれば、吊り下げられる物体の重量が安定化するまでの処理を短縮することができる。換言すれば、一度吊り上げられた後、電流を減少させて落下する物体を減少することができる。これにより、物体が周囲に散乱することを抑制することができる。
【0123】
また、本実施例の作業機械では、作業半径を制限することなく、作業機械の転倒や車体後方の持ち上がりを防止して、作業機械の安定性を向上させることができる。なお、特許文献1のように作業半径を制限する方法では、作業機械の走行させて吊り上げる物体に近づいた後に物体を吊り上げる必要がある。これに対し、本実施例の作業機械では、車体の位置を変更せずとも物体の運搬を行うことができる。これにより、リフティングマグネット6で吊り上げる物体が作業機械から離れた位置に置かれていても、アタッチメントを伸ばして物体を吸着し、吸着した物体を運搬することができるので、作業性が向上する。
【0124】
また、ブームシリンダ7の圧力を抜くことで、リフティングマグネット6に吊り下げられた物体による車体の転倒モーメントを低減する制御方法が知られている。しかしながら、この制御方法では、ブーム4が下がってしまうという課題がある。これに対し、本実施例の作業機械では、ブーム4が下がることなく転倒モーメントを低減することができる。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0126】
吸着力制御部33は、リフティングマグネット6に供給する電流を制御するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、電圧を制御する構成であってもよい。即ち、吸着力制御部33は、リフティングマグネット6に供給する電力を制御することにより、リフティングマグネット6の吸着力を制御してもよい。
【符号の説明】
【0127】
100 作業機械
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム(アタッチメント)
5 アーム(アタッチメント)
6 リフティングマグネット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 リフティングマグネットシリンダ
30 コントローラ
31 目標重量設定部
32 重量算出部
33 吸着力制御部(電力制御部)
34 最大積載量設定部
35 累積重量算出部
36 残重量算出部
100 作業機械
101 吸着開始判定部(電力制御部)
102 補償器(電力制御部)
103 重量検出部