(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査システム、液体循環装置および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20240401BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240401BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240401BHJP
B41J 2/145 20060101ALI20240401BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 207
B41J2/165 211
B41J2/145
B41J2/17
(21)【出願番号】P 2020066183
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅朗
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-004521(JP,A)
【文献】特開2007-106063(JP,A)
【文献】特開2019-214162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の吐出口から成る吐出口列と、
前記吐出口と連通し、前記吐出口から液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生素子を有する圧力室と、
を有し、
前記圧力室内の液体を該圧力室の外部との間で循環させ、前記吐出口内の液体の粘度を制御する液体吐出ヘッドの、前記循環の状態を検査する検査システムにおいて、
前記吐出口列は、第1グループの吐出口と第2グループの吐出口とを有し、
前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる粘度調整工程と、
前記第2グループの吐出口と連通する前記圧力室内の液体を、該圧力室の外部との間で循環させる循環工程と、
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置との差に基づいて、液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査工程と、
を有することを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置との差が所定値よりも大きい場合には、前記循環が不良であると判定してその旨を表示し、
前記差が前記所定値以下の場合には、前記循環が正常であると判定してその旨を表示する請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記吐出口から吐出される液体は、記録媒体に着弾し、
前記記録媒体は、前記液体吐出ヘッドに対して相対移動し、
前記液体の着弾位置を、前記記録媒体に着弾した液体の前記記録媒体の相対移動方向における重心の位置とし、前記検査工程において前記液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する請求項
2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記所定値は、前記記録媒体に着弾した液体の直径の1.5倍ないし2.5倍の範囲内のいずれかの値である請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記粘度調整工程は、前記第1グループの吐出口からは液体を吐出し、前記第2グループの吐出口からは液体を吐出しないことにより、前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記粘度調整工程は、前記第1グループの吐出口からは液体を吐出し、前記第2グループの吐出口にエアーを吹き付けることにより、前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記粘度調整工程の前に、前記第1グループの吐出口から液体を連続して吐出する工程を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項8】
前記粘度調整工程の前に、前記第1グループの吐出口から液体を吸引する工程を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出口、前記圧力発生素子および前記圧力室を備える素子基板を複数有し、
前記第1グループの吐出口と、前記第2グループの吐出口は、それぞれ異なる前記素子基板に形成されている吐出口である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出口、前記圧力発生素子および前記圧力室を備える素子基板を有し、
前記第1グループの吐出口と、前記第2グループの吐出口は、同一の前記素子基板の異なる前記吐出口列にそれぞれ形成されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出口、前記圧力発生素子および前記圧力室を備える素子基板を有し、
前記第1グループの吐出口および前記第2グループの吐出口は、同一の前記素子基板の同一の前記吐出口列に形成されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項12】
液体を吐出する複数の吐出口から成る吐出口列と、
前記吐出口と連通し、前記吐出口から液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生素子を有する圧力室と、
を有し、
前記圧力室内の液体を該圧力室の外部との間で循環させ、前記吐出口内の液体の粘度を制御する液体吐出ヘッドの前記循環の状態を検査する循環検査装置において、
前記吐出口列は、第1グループの吐出口と第2グループの吐出口とを有し、
前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる粘度調整手段と、
前記第2グループの吐出口と連通する前記圧力室内の液体を、該圧力室の外部との間で循環させる循環手段と、
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の
記録媒体への着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の
前記記録媒体への着弾位置との差に基づいて、液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査手段と、
を有することを特徴とする循環検査装置。
【請求項13】
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置との差が所定値よりも大きい場合には、前記循環が不良であると判定してその旨を表示し、
前記差が前記所定値以下の場合には、前記循環が正常であると判定してその旨を表示する請求項12に記載の循環検査装置。
【請求項14】
前記吐出口から吐出される液体は、記録媒体に着弾し、
前記記録媒体は、前記液体吐出ヘッドに対して相対移動し、
前記液体の着弾位置を、前記記録媒体に着弾した液体の前記記録媒体の相対移動方向における重心の位置とし、前記検査手段により前記液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する請求項12または13に記載の循環検査装置。
【請求項15】
前記所定値は、前記記録媒体に着弾した液体の直径の1.5倍ないし2.5倍の範囲内のいずれかの値である請求項13に記載の循環検査装置。
【請求項16】
液体を吐出する複数の吐出口から成る吐出口列と、
前記吐出口と連通し、前記吐出口から液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生素子を有する圧力室と、
を有し、
前記圧力室内の液体を該圧力室の外部との間で循環させ、前記吐出口内の液体の粘度を制御する液体吐出ヘッドの前記循環の状態を検査することができる液体吐出装置において、
前記吐出口列は、第1グループの吐出口と第2グループの吐出口とを有し、
前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる粘度調整手段と、
前記第2グループの吐出口と連通する前記圧力室内の液体を、該圧力室の外部との間で循環させる循環手段と、
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の
記録媒体への着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の
前記記録媒体への着弾位置との差に基づいて、液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査手段と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項17】
前記第1グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置との差が所定値よりも大きい場合には、前記循環が不良であると判定してその旨を表示し、
前記差が前記所定値以下の場合には、前記循環が正常であると判定してその旨を表示する請求項16に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記吐出口から吐出される液体は、記録媒体に着弾し、
前記記録媒体は、前記液体吐出ヘッドに対して相対移動し、
前記液体の着弾位置を、前記記録媒体に着弾した液体の前記記録媒体の相対移動方向における重心の位置とし、前記検査手段により前記液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する請求項16または17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記所定値は、前記記録媒体に着弾した液体の直径の1.5倍ないし2.5倍の範囲内のいずれかの値である請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
前記粘度調整手段は、前記第1グループの吐出口からは液体を吐出し、前記第2グループの吐出口からは液体を吐出しないことにより、前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる請求項16ないし19のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査システム、液体循環装置および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に文字や画像を記録する記録装置として、記録媒体に向かって液体を吐出し記録を行う液体吐出装置がある。このような液体吐出装置は、液体を吐出する吐出口などを備えた液体吐出ヘッドを有している。
【0003】
吐出口は大気に晒されると、時間の経過とともに吐出口から液体中の揮発成分が大気中へと蒸発し、吐出口内の液体の粘度が増加することが知られている。吐出口内の液体の粘度が増加すると、液体の吐出時に吐出液滴の吐出速度が遅くなり、着弾精度に影響が生じることがある。特に、液体を吐出していない時間(以下、休止時間を称する)が長い場合には、液体の粘度の増加が顕著になり、吐出口が吐出不良となる場合がある。
【0004】
このような液体の増粘現象に対する対策の一つとして、特許文献1には、圧力室内の液体を圧力室の外部との間で循環させる(以下、液体の循環と称することもある。)ことで、吐出口内の液体の増粘を抑制する方法が開示されている。
【0005】
液体の循環が正常に行われているか否かを検査する方法として、休止時間を長く取った後に、直線等のパターンを印字してそれを評価し、循環の状態を検査する方法が考えられる。具体的に
図8を参照しながら説明する。
図8(a)は、循環が正常に行われている場合に得られる印字結果を示しており、各吐出口から吐出された液体が略一直線を形成している。一方、
図8(b)は、吐出口列のうちの中央部で液体の循環に不具合がある場合に得られる印字結果の一例を示している。液体の循環が正常に行われていない場合には、吐出口内の液体の粘度が増加するため、吐出口から吐出される液体の吐出速度は低下する。そのため、循環不良の中央部に位置する吐出口から吐出される液体は、液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向において後方側(X方向の後方側)に着弾する。この液体の着弾の遅れによる着弾位置の違いを利用し、循環の状態を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吐出口列の全域に亘って液体の循環に異常があり、各吐出口から吐出される液体の吐出速度が一様に低下した場合には、印字結果は
図8(a)と同様な略一直線のパターンとなる。したがって、吐出口列の全域に亘って液体の循環に異常が生じている場合には、液体の循環が正常であると誤判定してしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、吐出口列の全域で液体の循環に異常が生じている場合において、循環の状態を誤検査してしまうことを抑制することができる検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。即ち本発明は、液体を吐出する複数の吐出口から成る吐出口列と、前記吐出口と連通し、前記吐出口から液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生素子を有する圧力室と、を有し、前記圧力室内の液体を該圧力室の外部との間で循環させ、前記吐出口内の液体の粘度を制御する液体吐出ヘッドの、前記循環の状態を検査する検査システムにおいて、前記吐出口列は、第1グループの吐出口と第2グループの吐出口とを有し、前記第2グループの吐出口内の液体の粘度を第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加させる粘度調整工程と、前記第2グループの吐出口と連通する前記圧力室内の液体を、該圧力室の外部との間で循環させる循環工程と、前記第1グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置と前記第2グループの吐出口から吐出した液体の着弾位置との差に基づいて、液体吐出ヘッドの循環の状態を検査する検査工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出口列の全域で液体の循環に異常が生じた場合においても、誤判定することなく循環の状態を適切に検査できる検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】液体吐出ヘッドおよび素子基板を示す斜視図。
【
図3】液体循環検査のフローを示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態の検査パターンの評価フローを示すフローチャート。
【
図7】第2の実施形態の検査パターンの画像処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同じ機能を有するものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
【0013】
(液体吐出ヘッド)
図1は、本発明で検査することができる液体吐出ヘッド10の一例を示す図である。
図1(a)は、液体吐出ヘッド10を示す斜視図であり、同図に示すように液体吐出ヘッド10は、支持部材1と、インクなどの液体を吐出する素子基板Cを複数有し、支持部材1は素子基板Cを支持する。支持部材1には、複数の素子基板Cが接着剤層(不図示)を介して接合されている。液体吐出ヘッド10では、素子基板Cとして、8枚の素子基板C1~C8が支持部材1の同一面上に直線状に配置されている。素子基板C1~C8は、それぞれ同一または略同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
図1(a)では、素子基板C1~C8は同一形状であり、上から見て長方形の形状であるが、平行四辺形や台形の形状であってもよい。また、素子基板Cは、8枚に限らず何枚でもよい。
【0014】
図1(b)は、1枚の素子基板Cを拡大して示す斜視図である。
図1(b)に示すように、素子基板Cは、液体を吐出する吐出口3を複数備える。吐出口3は、素子基板Cの長手方向(Y方向)に略平行に、3a~3dの4列状に配列されている。各吐出口列3a~3dは、実際には吐出口3が512個配列されて構成されているが、
図1(b)では吐出口の数を省略して描いている。また、吐出口列の列数は、4列に限らず何列であってもよい。
【0015】
素子基板Cは、図示していないが、吐出口3と連通する圧力室と、圧力室に液体を供給するための供給口と、液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生素子を備えている。吐出口3および圧力発生素子は圧力室を挟んで互いに対向するように配置され、圧力発生素子で発生した圧力によって圧力室内の液体が吐出口3から吐出される。また、吐出口3からの液体(水等)の蒸発による液体の増粘を抑制することを目的として、圧力室内の液体は、圧力室の外部との間で循環されるようになっている。即ち、液体吐出ヘッド10は、吐出口内の液体の粘度を制御するために、液体が循環するような構成となっている。
【0016】
(循環検査装置)
図2は、液体吐出ヘッド10の循環の状態を検査するための循環検査装置20を示す図である。
図2に示す循環検査装置20には、定盤21上の2本の支柱22の間に水平の梁23が設置されており、この梁23には、検査対象の液体吐出ヘッド10と検査パターンを読み取るためのカメラ25が下向きに取り付けられている。定盤21上には、支柱22間をY方向に移動可能なYステージ26が搭載されており、その上にはX方向(記録媒体28が液体吐出ヘッド10に対して相対移動する方向(相対移動方向))に移動可能なXステージ27が搭載されている。記録媒体28は、このXステージ27上に吸着固定されている。また、液体吐出ヘッド10から吐出される液体であって、記録媒体28に着弾させない液体を受けるための液体受け皿29は、Xステージ27に固定されている。なお、記録媒体28に着弾させない液体とは、後述するステップS3における工程において吐出される液体のことである。
【0017】
液体吐出ヘッド10の循環状態を検査する際は、Yステージ26を液体吐出ヘッド10の下へ移動させ、Xステージ27の駆動と液体吐出ヘッド10による液体の吐出とを連動させながら記録媒体28に検査パターンを印字する。その後、カメラ25の下に検査パターンが配置されるようにYステージ26およびXステージ27を駆動する。そして、カメラ25にて、記録媒体28に印字された検査パターンを読み取り、不図示の画像処理装置にて読み取った検査パターンを評価して循環の状態を検査する。
【0018】
(第1の実施形態)
循環の状態を検査する検査システムの第1の実施形態について、
図3ないし
図6を用いて説明する。以下、吐出口列を構成する吐出口のうち、検査非対象となっている領域に属する吐出口を第1グループの吐出口、検査対象となっている領域に属する吐出口を第2グループの吐出口と称することもある。
図3は、本実施形態における循環状態の検査方法を示すフローチャートである。本実施形態では、
図1(a)に示した液体吐出ヘッド10に配列された8枚の素子基板C1からC8のうち、奇数番目の素子基板C1、C3、C5、C7の検査について説明する。このとき、偶数番目の素子基板C2、C4、C6、C8が検査非対象の吐出口を備える素子基板である。
【0019】
まず、検査対象の液体吐出ヘッド10を循環検査装置20に搭載し、そして、Xステージ27上に記録媒体28を搭載する(ステップS1)。
【0020】
次に、Xステージ27とYステージ26を所定の初期位置へ移動する(ステップS2)。初期位置とは、Xステージ27に固定されたインク受け皿29が液体吐出ヘッド10の真下となる位置である。
【0021】
次に、全ての吐出口から液滴を連続して吐出する(ステップS3)。このとき、各吐出口3から吐出した液滴は、インク受け皿29に回収され、記録媒体28に着弾することはない。ステップS3を行うことにより、全ての吐出口を、正常に液体を吐出する状態にすることができる。これは、例え吐出不良となっている吐出口であったとしても、連続して吐出口から液体を吐出することにより、吐出口内の増粘した液体がインク受け皿29に吐出され、新鮮な液体が吐出口にリフィルされるためである。即ち、ステップS3を行うことにより、吐出口内には、正常に吐出できる程度の粘度の液体しか存在しなくなる。ステップS3では、吐出口内に低粘度の液体を存在させている(粘度制御工程)。このように、循環検査装置はステップS3を行うことができる粘度制御手段を有している。
【0022】
ステップS3では、吐出口を正常に吐出することができる状態にするために、全ての吐出口から液体を連続して吐出する動作を行ったが、本実施形態はこれに限られることはない。即ち、吐出口を正常吐出の状態にすることができる処理であればステップS3となり得る。したがって、例えば、素子基板Cにキャップ部材(不図示)を取り付けて素子基板内を吸引し、吐出口内の液体を外部に放出することで吐出口内の液体の粘度を低粘度とし、吐出口を正常吐出可能な状態にしてもよい。また、ステップS3では、全ての吐出口から液体を吐出する例を説明したが、本実施形態はこれに限られない。即ち、ステップS3では、第1グループの吐出口からのみ液体の吐出を行ってもよい。これにより、吐出口から吐出される液体の量を抑えることができる。
【0023】
その後、所定時間が経過した時点で、検査非対象の吐出口からの液体の吐出を維持しながら、検査対象の吐出口3(奇数番目の素子基板の吐出口)からの吐出のみを停止し、吐出を休止する期間を設ける(ステップS4、粘度調整工程)。この工程で、検査対象の吐出口3は吐出を行わない休止時間に入り、液体中の揮発成分が蒸発することで、吐出口内の液体が増粘していく。即ち、ステップS4を行うことにより、第2グループの吐出口内の液体の粘度は、第1グループの吐出口内の液体の粘度よりも増加する。休止時間は吐出口の直径や液体の成分などによって異なるが、本実施形態では2分間休止させる。なお、この休止時間を短縮するため、不図示のエアーブローノズルを用いて、吐出口3に向けてエアーを吹き付けると、液体中の揮発成分の蒸発が促進される。このように、循環検査装置はステップS4を行うことができる粘度調整手段を有している。
【0024】
その後、検査対象の吐出口3に連通する圧力室内の液体を循環させる(ステップS5、循環工程)。このとき、液体循環機能が正常であるならば、吐出口3からの液体の吐出が休止中であっても、吐出口3に繋がっている圧力室の液体が圧力室外部と循環されるため、吐出口3内の液体の増粘の程度は軽微である。なお、上記では粘度調整工程のあとに循環工程を行うことと説明したが、本発明はこれに限られない。即ち、液体の循環を常に行いながら、ステップS3(粘度制御工程)やステップS4(粘度調整工程)を行ってもよい。循環工程による液体の循環をする循環手段は、例えばポンプである。本実施形態においては、液体吐出ヘッド10を用いて液体を吐出する液体吐出装置(不図示)が循環手段を有しているが、本発明はこれに限られない。即ち、液体吐出ヘッド10が循環手段を有していてもよい(この場合であっても、循環手段を備えた液体吐出ヘッド10を循環検査装置20が有しているため、循環検査装置20は循環手段を有しているという)。なお、液体吐出装置が循環手段を有している場合、液体の循環の検査をするときは、液体吐出ヘッド10のみが循環検査装置20に取り付けられているため、液体吐出装置の代わりに循環検査装置20が循環手段を有している。
【0025】
次に、検査非対象の吐出口からの液体の吐出を停止することで、全ての吐出口3からの吐出を停止し(ステップS6)、液体吐出ヘッド10を記録媒体28上に移動させる。その後、吐出の停止から時間を置かずに検査パターンを印字する(ステップS7)。ステップS5とS6とを時間を置かずに行う理由は、検査非対象の吐出口3(偶数番目の素子基板の吐出口)が仮に液体循環不良であったとしても、検査パターンを適切に印字するためである。即ち、検査非対象の吐出口3は検査パターンの印字直前まで液体を吐出していることにより、検査非対象の吐出口3の循環の状態に関わらず、検査パターンの印字時には正常な吐出状態のままにしておくためである。
【0026】
次に、Yステージ26とXステージ27を駆動し、印字した検査パターンをカメラ25で読み取り(ステップS8)、読み取った検査パターンを評価し(ステップS9)、評価結果を表示して(ステップS10)終了となる。検査パターンの評価については、詳しくは後述する。
【0027】
なお、ここまで、奇数番目の素子基板C1、C3、C5、C7の検査について説明しているが、偶数番目の素子基板C2、C4、C6、C8を検査する場合においても、ステップS4で吐出を停止する素子基板Cを偶数番目にすること以外は同様である。
【0028】
ステップS7で印字する検査パターンと、ステップS9の検査パターン評価について、
図4ないし
図6を用いて説明する。
図4は、印字した検査パターン全体の模式図である。全素子基板Cの各吐出口列3a~3dから、液滴を1滴ずつ吐出することにより、各吐出口列からの液滴の吐出で構成された直線5a~5dを形成している。検査パターン評価は、隣接する2枚の素子基板の同列の吐出口列から印字されたパターンを画像処理して行う。
図5は、その検査パターンを評価するフローチャートである。
図6は、
図5のフローチャートに沿った画像処理手順の模式図であって、C1とC2の素子基板の吐出口列3aから吐出して印字した検査パターンを図示している。以下、説明のため、
図6を用いて説明を行うが、他の素子基板Cや他の吐出口列においても評価手順は同様である。また、各吐出口列は、それぞれ512個の吐出口3が配列されているため、同数の液滴が記録媒体に着弾しているが、
図6および
図6以降の模式図では、その数を省略している。以下、評価の一例として、素子基板C1の吐出口列3aの液体循環機能を評価するフローについて説明する。
【0029】
まず、ステップS21にて、検査パターン全体の中から、画像処理する領域を設定する。素子基板C1の吐出口列3aを評価するため、画像処理対象となる検査パターンは5aとなる。さらに、評価対象素子基板は素子基板C1であるため、画像処理領域は、
図6(a)のように検査パターン5aのうちの素子基板C1とC2によって印字された直線を含んだ領域7とする。
【0030】
次に、ステップS22にて、画像処理領域7を小さな区画に分割する。
図6(b)のように、画像処理領域7を複数の区画K(各区画は右端から順にK1、K2、K3のように番号を付けて区別する)に分割する。なお、区画Kの横幅は着弾した液体(以降、着弾滴とも称す)の1滴の直径以下、縦幅は着弾滴の直径の5~10倍が好ましい。ここでは、検査する液体吐出ヘッド10の着弾滴の直径を約40マイクロメートルとし、区画Kの横幅は30マイクロメートル、縦幅は200マイクロメートルとしている。
【0031】
区画Kの横幅を着弾した液体の1滴の直径以下としたのは、記録媒体の搬送方向の着弾位置変化を敏感に検出したいためである。例えば、1区画内に複数の着弾滴が入る大きさの横幅にした場合に、1区画内に着弾した複数の液滴の着弾位置が記録媒体紙搬送方向(X方向)に散っていると、1区画内の記録媒体搬送方向の重心位置は、複数の液滴の平均位置付近になる。ここでの検査は、詳しくは後述するが、記録媒体搬送方向の重心位置の最小値と最大値を用いるため、1区画内を小さくした方が最小値と最大値の重心位置をより正確に検出できるためである。しかしながら、小さくしすぎても区画数が増えるだけで結果はあまり変わらないため、1滴の直径程度が妥当である。
【0032】
また、1区画Kの縦幅を着弾滴の直径の5~10倍としたのは、循環状態が悪く、吐出速度が遅くなった場合であっても、液滴が1区間Kの領域内に液体が着弾するようにしたいためである。仮に1区画Kの縦幅が小さく、1区画Kの領域が小さいと、液体の吐出速度が遅い場合には、1区画Kの領域外に液体が着弾してしまい、「液体が吐出されなかった」という別の不良形態として処理されてしまう恐れがあるためである。これを回避するために、多少吐出速度が遅かったとしても、確実に液滴が1区画Kに着弾させるため、本実施形態においては、1区画Kの縦幅を着弾滴の直径の5~10倍となるように設定した。
【0033】
次に、ステップS23にて、各区画K内に検査パターンの一部、即ち、着弾滴が存在しているかどうかを画素濃度から検出し、着弾滴が存在していた場合は着弾滴の面積を演算する。なお、着弾滴の面積が、予め設定しておいた面積未満の場合は、その区画Kには着弾滴が無かったものとして記憶する。そして、着弾滴が設定面積以上あった場合は、そのX方向の重心位置を演算し、各区画K別に記憶する。
図6(c)は、区画K2について、このステップS23を実行した際の模式図であり、同図に矢印で示した位置がX方向の重心位置である。
【0034】
次に、ステップS24にて、ステップS23で着弾滴が無いと記憶された区画の有無を確認する。素子基板C1の吐出口列3aの全吐出口3において、液体循環が正常であれば、直線5aの端部の区画K1以外の区画K内には、所定面積以上の着弾滴が存在している。そのため、端部の区画K1以外の全区画に一つでも所定面積以上の着弾滴が存在しない区画があった場合は、そもそも液体吐出ヘッド10には異常が生じていると判断し、循環の評価を行わずに検査パターン評価を終了する。
【0035】
ステップS24で端部以外の全区画Kに着弾滴が存在していると確認した場合は、次のステップS25にて、S23において各区画Kのそれぞれで求めたX方向の重心位置のうち、最も大きな値(最大値)と最も小さな値(最小値)との差を演算する。この差は、吐出口から吐出される液体のうち、最も吐出速度の大きいものと最も吐出速度の小さいものとの差(吐出速度の差)を表している。この差が所定値より大きい場合は、液体吐出ヘッド10には液体循環が正常に機能していない吐出口3があることを意味しており、液体吐出ヘッド10を異常ヘッドとして検出する(ステップS26、検査工程)。一方、差が所定値以下の場合には、液体吐出ヘッド10の液体の循環は正常であると判定する(ステップS26、検査工程)。そして、検査パターンの評価フローを終了する。換言すれば、液体の着弾位置の差に基づいて、循環の状態を評価(検査)している。なお、X方向の重心位置の最大値と最小値との差と比較される所定値は着弾滴の直径の1.5倍ないし2.5倍の範囲内のいずれかの値とすることが好ましい。所定値が1.5倍未満であると、液体の循環が正常であるにも関わらず、誤差等により重心位置の差が所定値より大きくなった結果、循環不良と判定してしまう恐れがある。また、所定値が2.5倍より大きいと、液体の循環が不良であるにも関わらず、重心位置の差が所定値以下となり、循環が正常であると判定してしまう恐れがある。
【0036】
例えば所定値を2.0倍に設定した場合、最大値と最小値との差が着弾滴の直径の2.0倍より大きくなっていると、液体の循環が不良であると判定する。そして、最大値と最小値との差が着弾滴の直径の2.0倍以下である場合には、液体の循環が正常であると判定する。所定値は、本実施形態では80マイクロメートルとしている。このように、循環検査装置は、ステップS26を行うことができる検査手段を有している。また、所定値を算出するための着弾滴の直径は、本実施形態においては、各区間Kに着弾した液滴の直径の平均値とした。しかしながら、本発明はこれに限られず、予め決めた値を所定値としてもよい。
【0037】
液体の着弾位置の差が所定値よりも大きい場合には、検査システムは、液体の循環が正常ではない旨を表示し、着弾位置の差が所定値以下の場合には、液体の循環は正常に行われている旨を表示するようにしてもよい。
【0038】
図6(d)に、
図5のステップS22にて画像処理領域7に小さな区画を割り当てたものであって、素子基板C1の吐出口列3aの全吐出口3の液体循環に不具合があり、全体的に一様に吐出速度が遅くなった場合の着弾状態例を示す。C1からの着弾滴は一様に吐出速度が遅くなっているため、C1からのみ吐出した液滴の着弾状態としては略一直線である。一方、素子基板C2は正常に液体を吐出することができる吐出口からのみで構成されているため、素子基板C2からの着弾滴は、素子基板C1と比較して吐出速度は遅くならない。そのため、C1からの着弾液滴が一様に記録媒体搬送方向の後側に着弾していたとしても、C2からの着弾液滴を含めて各区画KのX方向重心位置の最大値と最小値との差を評価することにより、液体循環異常を検出することができる。なお、
図6(d)に示すような検査パターンが得られる場合には、ステップS24の演算で採用するX方向重心位置の最大値は、素子基板C2による印字領域のいずれかの値となり、X方向重心位置の最小値は、素子基板C1による印字領域のいずれかの値となる。
【0039】
ここまで、素子基板C1の吐出口列3aの液体循環機能評価について説明したが、その他の素子基板や吐出口列についても同様に評価することができる。以上のことをまとめると、吐出口列を構成する吐出口を、第1グループと、循環の状態の検査対象となる第2グループと、に分ける。そして、第1グループの吐出口は液体を正常に吐出することができる状態にし、第2グループの吐出口は液体の粘度が上昇するようにする。この状態で第1グループおよび第2グループから液体を吐出して検査パターンを印字し、評価する。第2グループの吐出口の循環が正常に行われている場合には、第2グループの吐出口内の液体の粘度はあっても僅かに増加するだけである。そのため、第1グループの吐出口からの液体の着弾位置と第2グループの吐出口からの液体の着弾位置とに大きな差がなく、その差が所定値以下となる。第2グループの吐出口の循環が正常でない場合には、着弾位置の差が所定値より大きくなる。このような違いにより、液体の循環の様子を検査する。
【0040】
このように本実施形態では、ある素子基板のある吐出口列全体に液体循環不良が生じていて、一様に吐出速度が遅くなったとしても、隣の素子基板からは正常速度の吐出速度にて検査パターンを印字し、それらを合わせて1つのパターンとして評価する。これにより、ある吐出口列全体で循環不良が起こっていたとして、誤判定することなく適切に循環の状態を検査することができる。
【0041】
上記の説明においては、液体の循環の状態を検査する装置として、
図2に示す循環検査装置20を用いたが、本発明は、このような検査装置を使用することに限られない。即ち、例えばインクジェットプリンタなどの、液体吐出ヘッド10を有する液体吐出装置が
図3に示す検査フローを行うことができるようになっていれば、液体吐出装置にも好適に本発明を適用することができる。液体吐出装置が本発明の機能(粘度調整手段、循環手段、検査手段)を有していれば、液体吐出装置のユーザーが、記録品位に疑問を感じたときなどに、液体循環状態を簡単に確認することができる。そして、液体循環が記録品位の低下の原因だと判定した場合には、不必要な回復処理などの操作を抑制することができる。液体吐出装置がカメラ25(検査手段)を有していない場合には、記録媒体に印字された検査パターンをユーザーが目視で確認することで、液体の循環の状態を検査することができる。このとき、上述した液体の着弾位置の差が所定値より大きいかどうかを判定するのをユーザーが行いやすくするために、検査パターンの脇に所定値の長さを有する直線を印字しておくことが好ましい。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様のものを表す場合は、第1の実施形態と同様の符号を用いる。また、第1の実施形態と同様な内容については説明を省略する。
【0043】
本実施形態で検査対象とする液体吐出ヘッドは、
図1(a)のような記録媒体の幅の長さに応じた所謂ページワイド型ヘッドではなく、素子基板Cを1枚のみ搭載したヘッド(不図示)である。そのため、第1の実施形態では、素子基板Cを奇数番目と偶数番目に分けて検査していたが、素子基板を1枚しか搭載しない本実施形態では、吐出口列を奇数番目と偶数番目に分けて検査する。また、本実施形態の検査フローは第1の実施形態で説明した
図3のフローと大筋で同様であるが、搭載している素子基板Cの数が違うことにより異なる箇所が多少あるため、異なる箇所について以下に説明する。
【0044】
ステップS4では、検査対象からの液体の吐出を停止するが、本実施形態では同一素子基板内で吐出口列によって検査対象または非対象が異なる。そのため、検査対象が奇数番目の吐出口列の場合には吐出口列3a、3cからの液体の吐出を停止し、検査対象が偶数番目の吐出口列の場合には吐出口列3b、3dからの液体の吐出を停止する。
【0045】
印字する検査パターンは、第1の実施形態のパターン(
図4)と同様で、各吐出口列3a~3dからそれぞれ直線5a~5dを印字する。なお、本実施形態で検査する液体吐出ヘッドでは素子基板Cを1枚しか搭載していないため、直線5a~5dは短い直線となる。
【0046】
カメラ25で読み取った検査パターンを評価する際のフローも第1の実施形態のフロー(
図5)とほぼ同様であるが、ステップS26の後にステップS27として、奇数番目の直線と、その隣(偶数番目)の直線との距離を評価するステップを追加している。ステップS27で直線5aおよび5bを評価する画像処理について
図7を参照して説明する。
【0047】
図7は、2本の直線5aおよび5bの距離を評価する処理の模式図である。各直線5a、5bを1本ずつ、小さい区画Kに分割して各区画内のX方向重心位置を求める。その後、同じ区画番号が付いた区画、例えば、K2aとK2b、K3aとK3bなど、番号が同じ区画の各X方向重心位置をもとに、X方向重心位置の差を計算する。そして、各区画Kの差において、1つでも予め設定した範囲から外れている箇所(所定値より大きい箇所)は、吐出速度が遅い、即ち、液体の循環不良が生じていると判定する。
【0048】
本実施形態では、ある素子基板のある吐出口列全体に液体循環不良が生じていて、一様に吐出速度が遅くなったとしても、隣の吐出口列からは通常速度の吐出速度にて検査パターンを印字し、それらの相対距離を評価する。これにより、ある吐出口列全体で循環不良が起こっていたとして、誤判定することなく適切に液体の循環の状態を検査することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。第1および第2の実施形態と同様のものを表す場合は、第1および第2の実施形態と同様の符号を用いることとする。また、第1および第2の実施形態と同様の内容については説明を省略する。
【0050】
本実施形態における検査対象とする液体吐出ヘッドは、第2の実施形態と同様に、素子基板Cを1枚のみ搭載したヘッド(不図示)である。ただし、吐出口列は、
図1(b)のような4列ではなく、1列のみ備えた素子基板Cである。本実施形態の検査フローは第1の実施形態で説明した
図3のフローと同様であるが、搭載している素子基板Cの数や検査対象とする吐出口3の数が違うことにより異なる箇所がある。そのため、異なる箇所について以下に説明する。
【0051】
本実施形態では、1列分(512個)の吐出口3を中央で二等分し、256個ずつの2グループにし、片方のグループを検査非対象(第1グループ)、もう1グループを検査対象(第2グループ)とする。その後、検査対象と検査非対象のグループを逆にして同様に検査することにより、1列分全てを検査することができる。
【0052】
ステップS4(
図3)において、検査対象の吐出口からの吐出を停止するステップでは、検査対象となっているグループに属する256個の吐出口3からの吐出を停止する。印字する検査パターンは、第1の実施形態のパターンと同様で、吐出口列の全吐出口3にて直線を印字する。
【0053】
読み取った検査パターンを評価する際のフローは、検査パターンの長さが異なる以外は、第1の実施形態のフロー(
図5)と同様である。即ち、着弾滴が存在していない区画Kの有無や、液体の着弾位置(X方向の重心位置)の差により検査パターンを評価する。そして、吐出口列全体で循環不良が起こっていたとしても、誤判定することなく適切に液体の循環を検査することができる。
【符号の説明】
【0054】
3 吐出口
3a~3d 吐出口列
10 液体吐出ヘッド