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特許7463174固体炭素生成装置および固体炭素生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】固体炭素生成装置および固体炭素生成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20240401BHJP
   C21B 7/00 20060101ALI20240401BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240401BHJP
   C01B 3/22 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C01B32/05
C21B7/00 312
C01B32/50
C01B3/22 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020068427
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165214
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】堀添 浩司
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516361(JP,A)
【文献】特開昭54-150388(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108546(WO,A1)
【文献】特開2004-256314(JP,A)
【文献】特開2005-144282(JP,A)
【文献】特開2013-122084(JP,A)
【文献】特開2013-237901(JP,A)
【文献】特許第6843490(JP,B1)
【文献】特開2018-104812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C21B 7/00-9/16
C21B 3/00-5/06
C21B 11/00-15/04
C01B 3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離部と、
メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源により加熱し、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応部と、
前記分離部で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応部で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成部と、を備える固体炭素生成装置。
【請求項2】
前記反応部および前記加熱源へ前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部を備え、
前記加熱源は、前記燃料ガス供給部から供給される前記燃料ガスを燃焼させることにより、前記燃料ガス供給部から前記反応部へ供給される前記燃料ガスを加熱する請求項1に記載の固体炭素生成装置。
【請求項3】
前記加熱源で前記燃料ガスを燃焼させることにより生成される燃焼ガスを前記分離部へ供給する燃焼ガス供給部を備える請求項2に記載の固体炭素生成装置。
【請求項4】
前記加熱源は、電力を熱に変換して前記燃料ガスを加熱する請求項1に記載の固体炭素生成装置。
【請求項5】
前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素を前記高炉へ供給する固体炭素供給ラインを備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体炭素生成装置。
【請求項6】
前記固体炭素供給ラインは、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素を、前記高炉へ鉄鉱石とコークスが供給される原料供給口と、前記高炉へ微粉炭が供給される微粉炭供給口の双方へ供給する請求項5に記載の固体炭素生成装置。
【請求項7】
前記固体炭素供給ラインは、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素の全量を、前記高炉へ微粉炭が供給される微粉炭供給口へ供給する請求項5に記載の固体炭素生成装置。
【請求項8】
前記固体炭素供給ラインに設けられ、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素をバインダーと混合して粒状固体炭素質材料を成型する固体成型部を備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の固体炭素生成装置。
【請求項9】
高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離工程と、
メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源により加熱し、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応工程と、
前記分離工程で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応工程で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成工程と、を備える固体炭素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスから固体炭素質を生成する固体炭素生成装置および固体炭素生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鉱石を還元して溶銑を得る高炉で発生する二酸化炭素の発生量を実質的に低減するために、高炉で発生する二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素に水素を添加してメタンに変換する高炉の操業方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、二酸化炭素を変換して得られたメタンを含むガスから水分を除去し、水分が除去されたメタンを高炉に吹き込む。二酸化炭素を変換して得られたガスから水分を除去するのは、高炉に水分を導入することにより高炉内のコークスが消費され、高炉からの二酸化炭素の排出量が増加してしまうためである。高炉に吹き込まれたメタンは、高炉内において還元剤に変換され、鉄鉱石の還元に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5796672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、二酸化炭素を変換して得られたメタンを含むガスに水分が含まれるため、高炉内でコークスを消費しないようにするために、水分を除去する必要がある。例えば、冷却方式で水分を除去する場合には、ガスに含まれる水分を露点温度以下に冷却するための冷却設備が必要となる。また、吸着方式で水分を除去する場合には、ガスに含まれる水分を吸着する除湿用吸着剤が内部に配置される吸着設備が必要となる。このように、二酸化炭素に水素を添加してメタンに変換する方法では、設備が大型化するとともにその設備を動作させるための動力が必要となってしまう。
【0006】
また、二酸化炭素を変換して得られたメタンは、高炉で鉄鉱石の還元剤として主に用いられるコークスと種類の異なる還元剤である。そのため、高炉に設けられるコークスの供給設備とは異なる別途の設備を設けてメタンを高炉へ供給する必要がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡素な設備により二酸化炭素ガスから固体炭素を生成するとともに既存の設備を利用して還元剤である固体炭素を高炉へ供給することが可能な固体炭素生成装置および固体炭素生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る固体炭素生成装置は、高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離部と、メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源により加熱し、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応部と、前記分離部で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応部で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る固体炭素生成方法は、高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離工程と、メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源により加熱し、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応工程と、前記分離工程で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応工程で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡素な設備により二酸化炭素ガスから固体炭素を生成するとともに既存の設備を利用して還元剤である固体炭素を高炉へ供給することが可能な固体炭素生成装置および固体炭素生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る高炉設備を示す概略構成図である。
図2】本開示の第2実施形態に係る高炉設備を示す概略構成図である。
図3】本開示の第3実施形態に係る高炉設備を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係る高炉設備300について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る高炉設備300を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の高炉設備300は、固体炭素生成設備(固体炭素生成装置)100と、高炉200とを備える。
【0013】
高炉200は、鉄鉱石を高温環境で還元剤であるコークスと反応させ、鉄鉱石を還元して銑鉄を生成する設備である。高炉200には、ベルトコンベヤ(図示略)を介して、原料供給口210から鉄鉱石とコークスとが供給される。高炉200には、配管220を介して熱風が供給され内部が高温環境に維持される。さらに、高炉200には、微粉炭供給口230が設けられており、微粉炭供給機構(図示略)を介して微粉炭が吹き込まれるようになっている。
【0014】
高炉200では、コークスが燃焼することにより、下記の反応式(1)により、コークスが酸化して一酸化炭素ガスが生成される。
2C+O → 2CO (1)
また、鉄鉱石が一酸化炭素により還元されて、下記の反応式(2)により、鉄(銑鉄)と二酸化炭素ガスが生成される。
Fe +3CO → 2Fe+3CO (2)
【0015】
固体炭素生成設備100は、高炉200で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離し、二酸化炭素ガスから固体炭素を生成する設備である。図1に示すように、固体炭素生成設備100は、分離設備(分離部)110と、反応設備(反応部)120と、生成設備(生成部)130と、供給設備(燃料ガス供給部)140と、加熱設備(加熱源)150とを備える。
【0016】
分離設備110は、高炉200で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する設備である。高炉200で生成された二酸化炭素ガスを含む生成ガスは、配管L1を介して高炉200から分離設備110へ導かれる。分離設備110では、例えば、アミンを含む吸収液に二酸化炭素ガスを吸収することにより生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する(分離工程)。
【0017】
分離設備110は、二酸化炭素ガスを吸収液に吸収した後に、吸収液を加熱して吸収液から二酸化炭素ガスを放出し、配管L2を介して高濃度の二酸化炭素ガスを生成設備130へ供給する。吸収液により二酸化炭素ガスが分離された生成ガスは、配管L3を介して高炉設備300の外部へ排出される。
【0018】
反応設備120は、供給設備140から供給されるメタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱設備150により加熱し、下記の反応式(3)に示す熱分解反応により、メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する(反応工程)。
CH → 2H+C (3)
【0019】
反応設備120には、供給設備140から配管L4を介して燃料ガスが供給される。燃料ガスは、メタンガスを主成分とするものであり、例えば天然ガスである。反応設備120には、加熱設備150で加熱された加熱媒体が配管L5を介して供給される。反応設備120は、加熱媒体が燃料ガスに直接的には混合せずに熱交換可能な構造となっている。
【0020】
反応設備120は、メタンガスを熱分解して生成した水素ガスを、配管L8を介して生成設備130へ供給する。また、反応設備120は、メタンガスを熱分解して生成した固体炭素を、配管L9へ供給する。配管L9へ供給された固体炭素は、配管L12を介して高炉200の原料供給口210へ供給される。
【0021】
生成設備130は、分離設備110で分離された二酸化炭素ガスと反応設備120で生成された水素ガスとを、下記の反応式(4)により反応させて固体炭素および水を生成する(生成工程)。
CO+2H → C+2HO (4)
反応式(4)に示す反応は、例えば、二酸化炭素ガスと水素ガスとを400℃~900℃の反応温度にて、ニッケルまたはコバルトからなる金属触媒に接触させることにより生じる。
【0022】
なお、反応設備120から配管L8を介して生成設備130に供給されるガスには、熱分解反応により分解されずに残存したメタンガスが含まれている。そのため、生成設備130は、分離設備110で分離された二酸化炭素ガスと反応設備120から供給されるメタンガスとを、下記の反応式(5)により反応させて固体炭素および水を生成する。
CO+CH → 2C+2HO (5)
【0023】
生成設備130は、反応式(4)および反応式(5)による反応により発生する熱を、反応設備120における熱分解反応に必要な加熱源として、あるいは高炉設備300の他の加熱用途として用いるための熱供給機構(図示略)を備えていてもよい。
【0024】
生成設備130では、例えば、金属触媒を振動させることにより、金属触媒に付着した粉体状の固体炭素を落下させて回収する。あるいは、液体金属触媒等の液体反応場を用い、生成した固体炭素を水素或いはメタン或いは水蒸気の微細気泡を付着させて液体反応場中を浮上させて回収する。生成設備130は、回収した固体炭素を配管L10へ供給する。配管L10へ供給された固体炭素は、搬送機構(図示略)が設けられた配管L12を介して高炉200の原料供給口210へ供給される。
【0025】
配管L12には、反応設備120から配管L9を介して搬送される固体炭素と、生成設備130から配管L10を介して搬送される固体炭素の双方が供給される。配管L12は配管L13に分岐している。そのため、配管L12に供給された固体炭素の一部は配管L12から原料供給口210へ供給され、配管L12に供給された固体炭素のその他は配管L13から微粉炭供給口230へ供給される。このように、配管L9,配管L10,配管L12,配管L13は、反応設備120で分解された固体炭素と生成設備130で生成された固体炭素とを高炉200へ供給する固体炭素供給部として機能する。
【0026】
反応設備120では、燃料ガスが加熱設備150により加熱されるため、反応設備120で生成される水素ガスは比較的高温(例えば、500℃~1200℃)となる。そして、生成設備130で生成される水は高温環境において気相の水蒸気となる。そのため、金属触媒を振動させるという比較的簡素な設備により、生成設備130において固体である固体炭素を水蒸気から分離することができる。生成設備130は、反応式(5)により生成された水蒸気を、配管L11を介して高炉設備300の外部へ排出する。
【0027】
供給設備140は、メタンガスを主成分とする燃料ガスを、配管L4を介して反応設備120へ供給する。また、供給設備140は、配管L4から分岐した配管L6を介して、燃料ガスを加熱設備150へ供給する。
【0028】
加熱設備150は、供給設備140から供給される燃料ガスを燃焼させることにより、供給設備140から反応設備120へ供給される燃料ガスを加熱する。加熱設備150は、燃料ガスを燃焼させて加熱媒体を加熱し、配管L5を介して、加熱した加熱媒体を反応設備120へ供給する。
【0029】
加熱設備150で燃料ガスを燃焼させることにより生成された燃焼ガスは、配管(燃焼ガス供給部)L7により、配管L1に供給される。配管L1へ供給された燃焼ガスは、分離設備110に供給される。このように、配管L7および配管L1は、燃焼ガスを分離設備110へ供給する燃焼ガス供給部として機能する。燃焼ガスに二酸化炭素ガスが含まれるため、燃焼ガスを分離設備110へ供給することにより、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素ガスを生成設備130に供給することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、加熱設備150で生成された燃焼ガスを分離設備110へ供給することとしたが、他の態様であってもよい。例えば、配管L7を配管L1に接続せず、配管L7を介して燃焼ガスを高炉設備300の外部へ排出するようにしてもよい。
【0031】
なお、本実施形態では、固体炭素の一部を配管L12から原料供給口210へ供給することとしたが、他の態様であってもよい。例えば、配管L12を配管L10と原料供給口210間に接続せず、配管L13のみを介して固体炭素の全量を微粉炭供給口230へ供給するようにしてもよい。そのようにすることで、微粉炭に類似した細かな粉状で固体炭素が生成する場合に、既存の設備の操業変更を最小限に抑えることができる。
【0032】
以上説明した本実施形態の固体炭素生成設備100が奏する作用および効果について説明する。
本開示に係る固体炭素生成設備100によれば、分離設備110で分離された二酸化炭素ガスと反応設備120で分解された水素ガスとが生成設備130において反応し、固体炭素および水が生成される。反応設備120ではメタンガスを主成分とする燃料ガスが加熱設備150により加熱されるため、反応設備120で生成される水素ガスは比較的高温となる。そして、生成設備130で生成される水は高温環境において気相の水蒸気となるため、比較的簡素な設備により、生成設備130において固体である固体炭素を水蒸気から分離することができる。
【0033】
また、本実施形態の固体炭素生成設備100によれば、生成設備130で生成される固体炭素は、高炉200で鉄鉱石の還元剤として主に用いられるコークスの主成分と同一である。そのため、鉄鉱石の還元剤としてコークスを高炉200へ供給する既存の設備である原料供給口210を利用して還元剤である固体炭素を高炉200へ供給することができる。
【0034】
また、本実施形態の固体炭素生成設備100によれば、供給設備140から反応設備120および加熱設備150の双方に燃料ガスが供給される。そのため、メタンガスを主成分とする燃料ガスを反応設備120で加熱設備150により加熱するために、燃料ガスとは異なる燃料を供給する別途の供給設備や、加熱設備150で加熱するための別途の加熱手段を設ける必要がない。
【0035】
また、本実施形態の固体炭素生成設備100によれば、加熱設備150で燃料ガスを燃焼させることにより生成される燃焼ガスが配管L7および配管L1により分離設備110へ供給される。そのため、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素ガスを高炉設備300の外部へ排出することなく、分離設備110で分離して生成設備130で固体炭素を生成することができる。
【0036】
また、本実施形態の固体炭素生成設備100によれば、作業者が運搬作業等を行うことなく、固体炭素供給ラインとして機能する配管L9,配管L10,配管L12,配管L13により、反応設備120で分解された固体炭素と生成設備130で生成された固体炭素の双方を高炉200へ供給することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態について、図面を参照して説明する。図2は、本開示の第2実施形態に係る高炉設備300Aを示す概略構成図である。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0038】
第1実施形態の固体炭素生成設備100は、供給設備140から供給されるメタンガスを主成分とする燃料ガスを燃焼させることにより加熱媒体を加熱する加熱設備150を備えるものであった。それに対して、本実施形態の固体炭素生成設備100Aは、供給設備140から燃料ガスが供給されずに、電力を熱に変換して加熱媒体を加熱する加熱設備150Aを備えるものである。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の固体炭素生成設備100Aは、配管L6および配管L7を備えていない点で第1実施形態の固体炭素生成設備100と異なる。本実施形態の固体炭素生成設備100Aが配管L6を備えていないのは、加熱設備150Aが、供給設備140が貯留する燃料ガスを用いずに加熱媒体を加熱するからである。また、本実施形態の固体炭素生成設備100Aが配管L7を備えていないのは、加熱設備150Aが燃料ガスを用いずに加熱媒体を加熱するため、燃焼ガスを生成しないからである。
【0040】
本実施形態の加熱設備150Aは、電力を熱に変換することにより加熱媒体を加熱して配管L5へ供給するものである。配管L5へ供給される加熱媒体は、反応設備120において燃料ガスを熱分解反応させるための熱源として用いられる。加熱設備150Aが電力を熱に変換する方式としては、種々のものを採用することができる。
【0041】
加熱設備150Aは、例えば、抵抗体に電流を流すことにより抵抗体を介して加熱媒体を加熱するものであってよい。また、例えば、誘導加熱、誘電加熱、アーク加熱、赤外線加熱等の他の加熱方式を用いて加熱媒体を加熱するものであってもよい。
【0042】
本実施形態の固体炭素生成設備100Aによれば、燃焼反応を伴わずに電力を用いて燃料ガスを加熱することができるため、燃焼反応に伴って生成される二酸化炭素ガスの排出量を抑制することができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態について、図面を参照して説明する。図3は、本開示の第3実施形態に係る高炉設備300Bを示す概略構成図である。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。本実施形態の高炉設備300Bは、固体炭素生成設備100Bがペレット成型設備(固体成型部)160を備える点で、第1実施形態の高炉設備300と異なる。
【0044】
図3に示すように、本実施形態の固体炭素生成設備100Bは、配管L13を備えていない点で第1実施形態の固体炭素生成設備100と異なる。また、本実施形態の固体炭素生成設備100Bは、配管L14を備える点で第1実施形態の固体炭素生成設備100と異なる。
【0045】
本実施形態の固体炭素生成設備100Bが第1実施形態の固体炭素生成設備100の配管L13を備えていないのは、ペレット成型設備160により固体炭素から粒状のペレットを生成するため、粒状のペレットを微粉炭供給口230に導かないようにするためである。また、本実施形態の固体炭素生成設備100Bが配管L14を備えるのは、粉体状の固体炭素を微粉炭供給口230へ導くためである。
【0046】
本実施形態の固体炭素生成設備100Bは、粒状のペレットを原料供給口210へ供給し、粉体状の固体炭素を微粉炭供給口230へ供給する。本実施形態の固体炭素生成設備100Bによれば、固体炭素を性状に応じて適切な供給口から高炉200へ供給し、高炉200における鉄鉱石の還元反応の効率を高めることができる。
【0047】
ペレット成型設備160は、配管L12に設けられており、粉体状の固体炭素をバインダーと混合して粒状のペレット(粒状固体炭素質材料)を生成して高炉200へ供給する設備である。ペレット成型設備160が固体炭素と混合するバインダーとしては、例えば、ピッチ製品や樹脂製品を好適に用いることができる。ピッチ製品は、例えば、アスファルトピッチ,ソフトオイルピッチ等である。樹脂製品は、例えば、ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂,ポリウレタン樹脂,ロジン,フェノール樹脂等である。
【0048】
ペレット成型設備160は、固体炭素とバインダーとを混合し、成型処理および焼成処理を施して、粉体状の固体炭素よりも高強度の粒状のペレットを生成する。なお、ペレット成型設備160は、固体炭素だけでなく鉄鉱石の粉末をバインダーと混合してもよい。本実施形態の固体炭素生成設備100Bによれば、固体炭素をバインダーと混合されたペレット(粒状固体炭素質材料)として高炉200に供給することができる。これにより、高炉200に供給される固体炭素の強度が上昇し、鉄鉱石を効率的に還元することができる。
【0049】
以上説明した各実施形態に記載の固体炭素生成装置(100)は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る固体炭素生成装置(100)は、高炉(200)で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離部(110)と、メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源(150)により加熱して、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応部(120)と、前記分離部で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応部で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成部(130)と、を備える。
【0050】
本開示に係る固体炭素生成装置によれば、分離部で分離された二酸化炭素ガスと反応部で分解された水素ガスとが生成部において反応し、固体炭素および水が生成される。反応部ではメタンガスを主成分とする燃料ガスが加熱源により加熱されるため、反応部で生成される水素ガスは比較的高温となる。そして、生成部で生成される水は高温環境において気相の水蒸気となるため、比較的簡素な設備により、生成部において固体である固体炭素を水蒸気から分離することができる。
【0051】
本開示に係る固体炭素生成装置によれば、生成部で生成される固体炭素は、高炉で鉄鉱石の還元剤として主に用いられるコークスの主成分と同一である。そのため、鉄鉱石の還元剤としてコークスを高炉へ供給する既存の設備を利用して還元剤である固体炭素を高炉へ供給することができる。
【0052】
本開示に係る固体炭素生成装置においては、前記反応部および前記加熱源へ前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部(140)を備え、前記加熱源は、前記燃料ガス供給部から供給される前記燃料ガスを燃焼させることにより、前記燃料ガス供給部から前記反応部へ供給される前記燃料ガスを加熱する構成とするのが好ましい。
【0053】
本構成に係る固体炭素生成装置によれば、燃料ガス供給部から反応部および加熱源の双方に燃料ガスが供給される。そのため、メタンガスを主成分とする燃料ガスを反応部で加熱源により加熱するために、燃料ガスとは異なる燃料を供給する別途の供給設備や、加熱源で加熱するための別途の加熱手段を設ける必要がない。
【0054】
上記構成に係る固体炭素生成装置においては、前記加熱源で前記燃料ガスを燃焼させることにより生成される燃焼ガスを前記分離部へ供給する燃焼ガス供給部を備える構成とするのが好ましい。
本構成に係る固体炭素生成装置によれば、加熱源で燃料ガスを燃焼させることにより生成される燃焼ガスが燃焼ガス供給部により分離部へ供給される。そのため、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素ガスを外部へ排出することなく、分離部で分離して生成部で固体炭素を生成することができる。
【0055】
上記構成に係る固体炭素生成装置において、前記加熱源は、電力を熱に変換して前記燃料ガスを加熱する構成とするのが好ましい。
本構成に係る固体炭素生成装置によれば、燃焼反応を伴わずに電力を用いて燃料ガスを加熱することができるため、燃焼反応に伴って生成される二酸化炭素ガスの排出量を抑制することができる。
【0056】
本実施形態に係る固体炭素生成装置においては、前記反応部で分解された固体炭素と前記生成部で生成された固体炭素とを前記高炉へ供給する固体炭素供給ライン(L9,L10,L12,L13)を備える構成とするのが好ましい。
本構成に係る固体炭素生成装置によれば、作業者が運搬作業等を行うことなく、固体炭素供給ラインにより、反応部で分解された固体炭素と生成部で生成された固体炭素の双方を高炉へ供給することができる。
【0057】
上記構成の固体炭素生成装置において、前記固体炭素供給ラインは、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素を、前記高炉へ鉄鉱石とコークスが供給される原料供給口と、前記高炉へ微粉炭が供給される微粉炭供給口の双方へ供給する態様とするのが好ましい。
本態様に係る固体炭素生成装置によれば、反応部で分解された固体炭素および生成部で生成された固体炭素を、原料供給口から供給されるコークスと、微粉炭供給口から供給される微粉炭の双方を補助するために供給することができる。
【0058】
上記構成の固体炭素生成装置において、前記固体炭素供給ラインは、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素の全量を、前記高炉へ微粉炭が供給される微粉炭供給口へ供給する態様とするのが好ましい。
本態様に係る固体炭素生成装置によれば、反応部で分解された固体炭素および生成部で生成された固体炭素の全量を、微粉炭供給口から供給される微粉炭を補助するために供給することができる。
【0059】
本実施形態に係る固体炭素生成装置において、前記固体炭素供給ラインに設けられ、前記反応部で分解された固体炭素および前記生成部で生成された固体炭素をバインダーと混合して粒状固体炭素質材料を成型する固体成型部(160)を備える構成とするのが好ましい。
本構成に係る固体炭素生成装置によれば、固体炭素をバインダーと混合された粒状固体炭素質材料として高炉に供給することができる。これにより、高炉に供給される固体炭素の強度が上昇し、鉄鉱石を効率的に還元することができる。
【0060】
以上説明した実施形態に記載の固体炭素生成方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る固体炭素生成方法は、高炉で生成された生成ガスに含まれる二酸化炭素ガスを分離する分離工程と、メタンガスを主成分とする燃料ガスを加熱源により加熱して、前記メタンガスを固体炭素および水素ガスに分解する反応工程と、前記分離工程で分離された前記二酸化炭素ガスと前記反応工程で分解された前記水素ガスとを反応させて固体炭素および水を生成する生成工程と、を備える。
【0061】
本開示に係る固体炭素生成方法によれば、分離工程で分離された二酸化炭素ガスと反応部で分解された水素ガスとが生成部において反応し、固体炭素および水が生成される。反応工程ではメタンを主成分とする燃料ガスが加熱源により加熱されるため、反応部で生成される水素ガスは比較的高温となる。そして、生成工程で生成される水は高温環境において気相の水蒸気となるため、比較的簡素な設備により、生成工程において固体である固体炭素を水蒸気から分離することができる。
【0062】
本開示に係る固体炭素生成方法によれば、生成工程で生成される固体炭素は、高炉で鉄鉱石の還元剤として主に用いられるコークスの主成分と同一である。そのため、鉄鉱石の還元剤としてコークスを高炉へ供給する既存の設備を利用して還元剤である固体炭素を高炉へ供給することができる。
【符号の説明】
【0063】
100,100A,100B 固体炭素生成設備
110 分離設備(分離部)
120 反応設備(反応部)
130 生成設備(生成部)
140 供給設備(燃料ガス供給部)
150,150A 加熱設備(加熱源)
160 ペレット成型設備(固形成型部)
200 高炉
210 原料供給口
220 配管
230 微粉炭供給口
300,300A,300B 高炉設備
図1
図2
図3