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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/10 20060101AFI20240401BHJP
   E06B 9/262 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E06B7/10
E06B9/262
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020104146
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021195821
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 幸康
(72)【発明者】
【氏名】大橋 貴文
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-209876(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120889(JP,U)
【文献】特開2009-2121(JP,A)
【文献】特開2008-163578(JP,A)
【文献】特開2013-087534(JP,A)
【文献】特開2016-029246(JP,A)
【文献】実公昭57-017038(JP,Y2)
【文献】特開2014-224374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47H1/00-99/00
E06B1/00-1/70
7/00-9/00
9/02
9/06-9/50
9/56-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、室外空間から外側仕切体と内側仕切体の間の中間層に連通する室外側通気部と、室内空間から中間層に連通する室内側通気部を有し、整流体は、中間層に設けてあり、内側仕切体は、透光性スクリーン部と、透光性スクリーン部よりも断熱性が高い遮光性スクリーン部とを有し、透光性スクリーン部と遮光性スクリーン部の面積比を変更自在であり、外側仕切体の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、内側仕切体の外側面に沿って他方向に空気が流れるか、内側仕切体の外側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、外側仕切体の内側面に沿って他方向に空気が流れることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気を行いつつ熱の出入りを少なくできる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内環境は、空調設備で制御していたが、窓からの熱の出入りが多く電気代がかかるため、経済的に優れたものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることのできる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、室外空間から外側仕切体と内側仕切体の間の中間層に連通する室外側通気部と、室内空間から中間層に連通する室内側通気部を有し、整流体は、中間層に設けてあり、内側仕切体は、透光性スクリーン部と、透光性スクリーン部よりも断熱性が高い遮光性スクリーン部とを有し、透光性スクリーン部と遮光性スクリーン部の面積比を変更自在であり、外側仕切体の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、内側仕切体の外側面に沿って他方向に空気が流れるか、内側仕切体の外側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、外側仕切体の内側面に沿って他方向に空気が流れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、室外空間から外側仕切体と内側仕切体の間の中間層に連通する室外側通気部と、室内空間から中間層に連通する室内側通気部を有し、整流体は、中間層に設けてあり、外側仕切体の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、内側仕切体の外側面に沿って他方向に空気が流れるか、内側仕切体の外側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部付近で折り返し、外側仕切体の内側面に沿って他方向に空気が流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることができ、これにより窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。内側仕切体は、透光性スクリーン部と、透光性スクリーン部よりも断熱性が高い遮光性スクリーン部とを有し、透光性スクリーン部と遮光性スクリーン部の面積比を変更自在であるため、例えば、冬期の日中には透光性スクリーン部の面積を大きくして日射熱の取得を増加させ、冬期の夜間には遮光性スクリーン部の面積を大きくして断熱性能を高めることで、暖房負荷をより一層抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2】第1実施形態の建具の横断面図である。
図3】第1実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図4】第1実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を遮光性スクリーン部スクリーン部のみとした状態を示す。
図5】第1実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を縮めた状態を示す。
図6】本発明の建具の第2実施形態を示す縦断面図である。
図7】第2実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図8】第2実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を遮光性スクリーン部スクリーン部のみとした状態を示す。
図9】本発明の建具の第3実施形態を示す縦断面図である。
図10】第3実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図11】第3実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を遮光性スクリーン部スクリーン部のみとした状態を示す。
図12】第3実施形態の建具の縦断面図であって、中間仕切体を縮めた状態を示す。
図13】本発明の建具の第4実施形態を示す縦断面図である。
図14】第4実施形態の建具の横断面図である。
図15】第4実施形態の建具の横断面図であって、中間仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図16】第4実施形態の建具の横断面図であって、中間仕切体を遮光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図17】第4実施形態の建具の横断面図であって、中間仕切体を縮めた状態を示す。
図18】本発明の建具の第5実施形態を示す縦断面図である。
図19】第5実施形態の建具の横断面図である。
図20】第5実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図21】第5実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を遮光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図22】第5実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を縮めた状態を示す。
図23】本発明の建具の第6実施形態を示す縦断面図である。
図24】第6実施形態の建具の横断面図である。
図25】第6実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図26】第6実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を遮光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図27】第6実施形態の建具の縦断面図であって、内側仕切体を縮めた状態を示す。
図28】本発明の建具の第7実施形態を示す縦断面図である。
図29】第7実施形態の建具の横断面図である。
図30】第7実施形態の建具の横断面図であって、内側仕切体を透光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図31】第7実施形態の建具の横断面図であって、内側仕切体を遮光性スクリーン部のみとした状態を示す。
図32】第7実施形態の建具の横断面図であって、内側仕切体を縮めた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1~5は、本発明の建具の第1実施形態を示している。本建具は、図1,2に示すように、建物の窓開口部の室外側に設置した外側仕切体1と、窓開口部の室内側に設置した内側仕切体2と、外側仕切体1と内側仕切体2の間の中間層4に設置した中間仕切体3とを備える。
【0010】
外側仕切体1は、図1,2に示すように、躯体開口部に固定される枠10と、枠10内に引違い状に開閉自在に収めた外障子11aと内障子11bを備える引き違い窓となっている。外障子及11aび内障子11bは、上框12と下框13と戸先框14と召合せ框15とを框組みし、その内側にガラス(単板ガラス)16を嵌め込んで構成されている。上框12は、室外側壁と室内側壁とに縦長スリット状の通気孔17a,17bを左右方向に間隔をおいて多数形成して、室外空間から外側仕切体1と中間仕切体3の間の中間層4に連通する室外側通気部5を設けてある。室外側通気部内5には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター18が設けてある。
【0011】
内側仕切体2は、図1,2に示すように、四周の額縁19a,19b,19c,19dの内周側面に取付けた上枠20と下枠21及び左右の縦枠22,22と、上下枠20,21間に引違い状に開閉自在に収めた外障子23aと内障子23bを備える引き違い窓となっている。枠20,21,22と障子23a,23bの框は、樹脂製である。障子23a,23bのガラス24は、複層ガラスである。外側仕切体1の枠10と内側仕切体2の枠20,21,22の間には木製の額縁19a,19b,19c,19dがあるため、外側仕切体1と内側仕切体2とは熱的に分離されている。
上枠20の上部には、換気ブレス25を備えている。換気ブレス25は、室外側と室内側の見付面に多数の通気孔26a,26bを設け、室内空間から内側仕切体2と中間仕切体3の間の中間層4に連通する室内側通気部6が設けてある。室内側通気部6内には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター27が設けてある。
【0012】
中間仕切体3は、図1に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8とを上下に連設した縦使いの2連プリーツスクリーンとなっている。より詳細には、中間仕切体3は、上額縁19aの下面に取付けた本体ボックス28と、下横桟29と、中間横桟30とを有し、本体ボックス28と中間横桟30との間にはレース生地を用いてなる透光性スクリーン部7が設けてあり、中間横桟30と下横桟29との間には、透光性スクリーン部7よりも断熱性の高い遮光性の生地を用いてなる遮光性スクリーン部8が設けてある。透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8は、共にプリーツ状に折り畳み・展開自在なものとなっており、操作部31を操作して中間横桟30を上下に移動させることで、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の面積比を変更自在であり、図3に示すように、遮光性スクリーン部8を畳んで透光性スクリーン部7のみとしたり、図4に示すように、透光性スクリーン部7を畳んで遮光性スクリーン部8のみとすることができる。また、図5に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の両方を畳むこともできる。
中間仕切体3の使い方としては、例えば、日中は図3に示すように透光性スクリーン部7のみとし、外部からの視線をある程度遮りながら光と日射熱を室内に採り入れ、夜間は図4に示すように遮光性スクリーン部8のみとし、外部からの視線を遮ると共に窓の断熱性を高めることができる。
【0013】
本建具は、樹脂製の枠20,21,22及び框と複層ガラス24を用いた内側仕切体2を設けたことに加え、外側仕切体1の室外側通気部5と中間層4と内側仕切体2の室内側通気部6を通じて室内外を空気が流れることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱移動が妨げられ、より一層の断熱効果を発揮する。
冬期の場合について説明すると、換気扇等により室内を負圧に調整し、本建具を空気が室外から室内に向けて流れるようにする。中間仕切体3は、図1に示すように透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8とが上下に並んだ状態、図3に示すように透光性スクリーン部7のみとした状態、図4に示すように遮光性スクリーン部8のみとした状態、図5に示すように透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を両方とも畳んだ状態(スクリーン無し)の、何れの状態であってもよい。下横桟29と下額縁19bとの間には、空気の流れを確保するために隙間32を設けてある。図1,3,4,5中の矢印は、空気の流れを示している。
外側仕切体1の室外側通気部5から流入した冷たい空気(外気)は、中間仕切体3に当たることで下向きに流れる。その後、冷たい空気はコールドドラフトにより中間層4の下まで流れてから折り返し、内側仕切体2のガラス24から室内の熱が伝わることで暖められ、内側仕切体2の室外側面に沿って上昇し、この間に内側仕切体2のガラス24から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。また、窓に日射を受ける場合は、このように中間層4を空気が外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように流れる間に、日射熱を取得することができる。その後、暖められた空気は内側仕切体2上部の室内側通気部6を通って室内に流入する。空気が室内側通気部6を通過する際にも、室内の熱で暖められた換気ブレス25や上枠20の熱を空気の流れによって回収する。そうして暖められた空気を室内に取り入れることで、回収した熱を室内に戻すことができる。
このように、中間層4内を外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように迂回して空気が流れることで、室内から室外に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失がほとんどなくなるので、非常に高い断熱性が得られる。また、外気を暖めて室内に採り込めるので、室内に居る人が冷たい風を感じることがなく、暖房効率も良い。
【0014】
夏期には、換気扇等により室内を正圧に調整し、冬期とは逆に室内から室外に空気が流れるようにする。内側仕切体2の室内側通気部6から出た室内の空気は、中間仕切体3に当たることで下向きに流れる。その後、室内の空気は室外より温度が低いために内側仕切体2の外側面に沿って下向きに流れ、中間層4の下部で折り返し、外側仕切体1のガラス16等の熱が伝わることで外側仕切体1のガラス16の室内側面に沿って上昇し、この間に外側仕切体1のガラス16を通じて室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収する。その後、外側仕切体1の室外側通気部5を通って空気が室外に放出される。空気が室外側通気部5を通過する際、上框12を伝って室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収する。そして、空気が室外に放出されることで、ガラス16や上框12から回収した熱を室外に捨てる。このように室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室外に捨てることで、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられ、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれる。
【0015】
第1実施形態の建具について、スクリーン無しの場合(図5参照)、透光性スクリーン部7のみの場合(図3参照)、透光性スクリーン部8のみの場合(図4参照)の熱貫流率と日射熱取得率を実験により求めた。熱貫流率の測定は、JIS A4710「建具の断熱性試験方法」に準拠し、外気温0℃、室内温度20℃、日射なしの条件で行った。日射熱取得率の測定は、JIS A1493「日射熱取得率の測定」に準拠し、外気温30℃、室内温度25℃、日射500W/mの条件で行った。建具の仕様は、外側仕切体1をアルミサッシ-単板ガラス、内側仕切体2を樹脂サッシ-LowE複層ガラス、中間仕切体3をレース生地と遮光性生地との2連プリーツスクリーンとした。実験結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示すとおり、スクリーン無しよりも透光性スクリーン部7のみの場合が熱貫流率が小さくなり、遮光性スクリーン部8のみの場合はそれよりもさらに熱貫流率が小さくなり、断熱性能が向上することがわかる。また、日射熱取得率は、スクリーン無しの場合が最も大きく、透光性スクリーン部7のみとするとそれより若干小さくなり、遮光性スクリーン部8のみとすると大幅に小さくなる。よって、例えば、冬期の日中は日射熱の取得を優先して透光性スクリーン部7のみとし、冬期の夜間は断熱性を優先して遮光性スクリーン部8のみとするなど、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8とを適宜使い分けることで、快適な室内環境を得ることができる。
【0018】
図6~8は、本発明の建具の第2実施形態を示している。本建具は、図6,8に示すように、中間仕切体3の遮光性スクリーン部8が遮光性生地を用いて六角形が上下に連なる形に形成されたハニカムスクリーンとなっている。その他は第1実施形態と同様である。
本実施形態の建具は、中間仕切体3の遮光性スクリーン部8をハニカムスクリーンとしたことで、遮光性スクリーン部8のみとしたときに(図8参照)、遮光性生地が見込方向に二重に配置されると共に内部に空気層33が形成されるため、断熱性能がより一層向上する。
【0019】
また、本発明の建具は、外側仕切体1と内側仕切体2にそれぞれ通気部5,6が設けてある関係で、そのままでは通気部5,6の無い単なる二重窓と比べると遮音性能が低下するが、本実施形態のように中間層4にハニカムスクリーン(遮光性スクリーン部)8を設置することで、遮音性能の低下を抑えることができる。ハニカムスクリーン8は、中間層4の見込方向の中央部に設けてあってもよいが、外側仕切体1に寄せて設置することで、外側仕切体1の室外側通気部5とハニカムスクリーン8との距離が近くなるので、遮音性能が向上する。
【0020】
図9~12は、本発明の建具の第3実施形態を示している。本実施形態は、図9に示すように、中間仕切体3が透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を見込方向に並設したダブルロールスクリーンとなっている。
透光性スクリーン部7の巻取り軸34aと遮光性スクリーン部8の巻取り軸34bは、上下に並べて配置されており、両巻取り軸34a,34bの間の隙間を室外側からカバー材35で塞いでいる。カバー材35は、透光性スクリーン部7の巻取り軸34aの径の変化に追随し、先端が常に同巻取り軸34aに当接するようにしてある。これにより、外側仕切体1の室外側通気部5から流入した空気が両巻取り軸34a,34bの間を通り、中間層4をショートカットして流れるのを防いでいる。さらに中間仕切体3は、本体フレーム36と遮光性スクリーン部8の巻取り軸34bとの隙間を室内側から塞ぐカバー材37を有しており、カバー材37は同巻取り軸34bの径の変化に追随し、先端が常に同巻取り軸34bに当接するようにしてある。これにより、図中の矢印とは逆向きに空気が流れたときに、内側仕切体2の室内側通気部6から流出した空気が本体フレーム36と巻取り軸34bとの隙間を通り、中間層4をショートカットして流れるのを防いでいる。
透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8は、下端部にそれぞれボトムバー38a,38bを有しており、互いのボトムバー38a,38bは内蔵した磁石により吸着するようになっている。これにより、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8との間に空気層33が生じるので、断熱性能がさらに高まる。
【0021】
中間仕切体3は、図10に示すように、遮光性スクリーン部8を巻き上げて透光性スクリーン部7のみとしたり、図11に示すように、透光性スクリーン部7を巻き上げて遮光性スクリーン部8のみとしたり、図12に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を両方とも巻き上げてスクリーン無しとすることができる。そのように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を使い分けることで、第1・第2実施形態と同様に、断熱性能と日射熱取得率を変化させることができる。
【0022】
図13~17は、本発明の建具の第4実施形態を示している。本実施形態は、図14に示すように、中間仕切体3が透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を左右に連設した横使いの2連プリーツスクリーンとしてある。より詳細には、中間仕切体3は、一方の縦額縁19cに取付けた本体ボックス28と、他方の縦額縁19dに当接される引手框39と、本体ボックス28と戸先框39の間に設けた中間縦桟40とを有し、本体ボックス28と中間縦桟40との間に遮光性生地よりなる遮光性スクリーン部8が設けてあり、中間縦桟40と引手框39との間に透光性生地よりなる透光性スクリーン部7が設けてある。透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8は、それぞれプリーツ状に折り畳み・展開自在であり、中間縦桟40の位置を左右に移動させることで、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の面積比を変化させることができる。中間仕切体3は、図15に示すように、透光性スクリーン部7のみとしたり、図16に示すように、遮光性スクリーン部8のみとしたり、図17に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を両方とも畳んでスクリーン無しとすることができる。
透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8は、図13に示すように、上下の端部がガイドレール41a,41bに案内されている。下側のガイドレール41bは、室外側壁と室内側壁とに通気孔42a,42bを形成し、室内外方向に連通する通気部43を設けてあり、これにより中間層4の下端部で空気の流れを折り返せるようにしてある。
【0023】
本実施形態の建具も、第1実施形態等と同様に、中間層4を外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように空気が迂回して流れることで、換気をしながら窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。また、中間仕切体3の透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を適宜使い分けることで、断熱性能と日射熱取得率を変えることができ、快適な室内環境を得るのに役立つものである。
【0024】
図18~22は、本発明の建具の第5実施形態を示している。本実施形態の建具は、図18に示すように、内側仕切体2を透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を上下に連設した縦使いの2連プリーツスクリーンとしてある。
内側仕切体2の下横桟29は、下額縁19bに当接させてあり、下横桟29と下額縁19bの間から空気が漏れないように気密性を持たせてある。また、図19に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の左右両端部は、縦額縁19c,19dに沿って取付けたガイドーレール44に挿入してあり、これにより透光性スクリーン部7及び遮光性スクリーン部8と縦額縁19c,19dの間から空気が漏れないように気密性を持たせてある。内側仕切体2の本体ボックス28は、図18に示すように、上額縁19aにブラケット45(通常は左右両端部2か所に設けられる)にて取付けられており、上額縁19aと本体ボックス28との隙間を室内側通気部6としてある。
内側仕切体2は、図20に示すように、遮光性スクリーン部8を畳んで透光性スクリーン部7のみとしたり、図21に示すように、透光性スクリーン部7を畳んで遮光性スクリーン部8のみとすることができる。また、図22に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の両方を畳んでスクリーン無しとすることもできる。
【0025】
本実施形態の建具は、中間層4に外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように迂回する空気の流れを確保するために、中間仕切体3を設ける代わりに、図18に示すように、中間層4に整流体9を設けてある。整流体9は、透明な樹脂板等で形成してあり、アングル状の金具46を用いて上額縁19aから垂下して設けてある。
【0026】
本実施形態の建具は、第1実施形態等と同様に、外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように空気を室外から室内、又は室内から室外に流すことで、高い断熱性能が得られ、冷暖房負荷を抑える効果がある。また、時間帯や季節に応じて透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を適宜切り替えることで、断熱性能と日射熱取得率を変化させ、快適な室内環境をつくることができる。内側仕切体2を2連プリーツスクリーンとしたことで、内窓が不要となるので、コストを削減できる。
なお、遮光性スクリーン部8は、第2実施形態(図6参照)と同様にハニカムスクリーンとすることもできる。
【0027】
図23~27は、本発明の建具の第6実施形態を示している。本実施形態の建具は、図23に示すように、内側仕切体2を透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を見込方向に並設したダブルロールスクリーンとしてある。
透光性スクリーン部7及び遮光性スクリーン部8の下端部に設けたボトムバー38a,38bは、下額縁19bに当接させてあり、透光性スクリーン部7及び遮光性スクリーン部8と下額縁19bの間から空気が漏れないように気密性を持たせてある。また、図24に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の左右両端部は、縦額縁19c,19dに沿って取付けたガイドーレール44に挿入してあり、これにより透光性スクリーン部7及び遮光性スクリーン部8と縦額縁19c,19dの間から空気が漏れないように気密性を持たせてある。内側仕切体2の本体フレーム36は、図23に示すように、上額縁19aにブラケット45(通常は左右両端部2か所に設けられる)にて取付けられており、上額縁19aと本体フレーム36との隙間を室内側通気部6としてある。
内側仕切体2は、図25に示すように、遮光性スクリーン部8を巻き上げて透光性スクリーン部7のみとしたり、図26に示すように、透光性スクリーン部7を巻き上げて遮光性スクリーン部8のみとすることができる。また、図27に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の両方を巻き上げてスクリーン無しとすることもできる。
中間層4には、第5実施形態と同様に、整流体9が設けてある。
【0028】
本実施形態の建具は、第1実施形態等と同様に、外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように空気を室外から室内、又は室内から室外に流すことで、高い断熱性能が得られ、冷暖房負荷を抑える効果がある。また、時間帯や季節に応じて透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を適宜切り替えることで、断熱性能と日射熱取得率を変化させ、快適な室内環境をつくることができる。内側仕切体2をダブルロールスクリーンとしたことで、内窓が不要となるので、コストを削減できる。
【0029】
図28~32は、本発明の建具の第7実施形態を示している。本実施形態の建具は、図29に示すように、内側仕切体2が透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を左右に連設した横使いの2連プリーツスクリーンとしてある。内側仕切体2は、中間縦桟40を左右に移動させることで透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の面積比を変更自在であり、図30に示すように、透光性スクリーン部7のみとしたり、図31に示すように、遮光性スクリーン部8のみとすることができる。さらに、図32に示すように、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を両方とも畳んでスクリーン無しとすることができる。
透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8は、図28に示すように、上下の端部がガイドレール41a,41bに案内されている。上側のガイドレール41aは、室外側壁と室内側壁とに通気孔26a,26bを形成し、室内外方向に連通する室内側通気部6を設けてある。
中間層4には、第5実施形態と同様に、整流体9が設けてある。
【0030】
本実施形態の建具は、第1実施形態等と同様に、外側仕切体1の内側面と内側仕切体2の外側面に沿うように空気を室外から室内、又は室内から室外に流すことで、高い断熱性能が得られ、冷暖房負荷を抑える効果がある。また、時間帯や季節に応じて透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8を適宜切り替えることで、断熱性能と日射熱取得率を変化させ、快適な室内環境をつくることができる。内側仕切体2を2連プリーツスクリーンとしたことで、内窓が不要となるので、コストを削減できる。
【0031】
以上に述べたように本建具(第1~4実施形態)は、外側仕切体1と中間仕切体3と内側仕切体2とを備え、室外空間から外側仕切体1と中間仕切体3の間の中間層4に連通する室外側通気部5と、室内空間から内側仕切体2と中間仕切体3の間の中間層4に連通する室内側通気部6を有し、外側仕切体1の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層4の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に空気が流れるか、内側仕切体2の外側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層4の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に空気が流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることができ、これにより窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。中間仕切体3は、透光性スクリーン部7と、透光性スクリーン部7よりも断熱性が高い遮光性スクリーン部8とを有し、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の面積比を変更自在であるため、例えば、冬期の日中には透光性スクリーン部7の面積を大きくして日射熱の取得を増加させ、冬期の夜間には遮光性スクリーン部8の面積を大きくして断熱性能を高めることで、暖房負荷をより一層抑えることができる。
【0032】
また本建具(第5~7実施形態)は、外側仕切体1と内側仕切体2と整流体9とを備え、室外空間から外側仕切体1と内側仕切体2の間の中間層4に連通する室外側通気部5と、室内空間から中間層4に連通する室内側通気部6を有し、整流体9は、中間層4に設けてあり、外側仕切体1の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層4の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に空気が流れるか、内側仕切体2の外側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層4の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に空気が流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることができ、これにより窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。内側仕切体2は、透光性スクリーン部7と、透光性スクリーン部7よりも断熱性が高い遮光性スクリーン部8とを有し、透光性スクリーン部7と遮光性スクリーン部8の面積比を変更自在であるため、例えば、冬期の日中には透光性スクリーン部7の面積を大きくして日射熱の取得を増加させ、冬期の夜間には遮光性スクリーン部8の面積を大きくして断熱性能を高めることで、暖房負荷をより一層抑えることができる。内窓が不要なため、コストを削減できる。
【0033】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。外側仕切体と内側仕切体は、引き違い窓に限らず、回転窓、すべり出し窓、嵌め殺し窓など、あらゆる窓種とすることができる。外側仕切体と内側仕切体の枠は、一体に形成してあってもよい。
請求項中の「中間層の端部付近で折り返し」には、例えば、外側仕切体の枠と内側仕切体の枠が一体に形成してある場合に、枠よりも内周側で折り返すもの、枠の内部を通って折り返すもののいずれも含まれる。
室外空間から中間層に連通する室外側通気部、中間層から室内空間に連通する室内側通気部はどこに形成してあってもよく、例えば縦枠や下枠に設けてあったり、上框と上枠との隙間を通気部とし、その隙間から空気が流入・流出するもの等であってもよい。
外側仕切体は、室外空間と中間層とに仕切るものであればよく、ガラス入りのサッシの他、シャッター、雨戸、ロールスクリーン等であってもよい。内側仕切体は、中間層と室内空間とに仕切るものであればよく、ガラス入りのサッシの他、カーテン、ロールスクリーン、和障子等であってもよい。
整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間の中間層で下降する空気と上昇する空気とがぶつかり合って空気の流れが阻害されるのを防ぎ、外側仕切体の内側面と内側仕切体の外側面に沿うように迂回する空気の流れを形成できるものであればよく、その具体的な形状や材質は問わない。
本発明の建具は、空気の流れる向きが室外から室内だけのもの、室内から室外だけのもの、季節によって空気の流れる向きを切り替えるもの(冬期には室外から室内に空気を流し、夏期には室内から室外に空気を流すもの)の何れであってもよい。
本発明の建具は、既存の窓(外側仕切体)の室内側に中間仕切体又は整流体と、内側仕切体を後から設置したものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 外側仕切体
2 内側仕切体
3 中間仕切体
4 中間層
5 室外側通気部
6 室内側通気部
7 透光性スクリーン部
8 遮光性スクリーン部
9 整流体
図1
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