(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】タービンロータおよび軸流タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/08 20060101AFI20240401BHJP
F01D 5/06 20060101ALI20240401BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20240401BHJP
F02C 7/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F01D5/08
F01D5/06
F01D25/12 E
F02C7/16 A
(21)【出願番号】P 2020106969
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】田島 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】岩井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正雄
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132265(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143103(WO,A1)
【文献】米国特許第08668437(US,B1)
【文献】特開2001-303971(JP,A)
【文献】特開平08-014064(JP,A)
【文献】特開2008-121672(JP,A)
【文献】特開2005-320875(JP,A)
【文献】特開2016-050494(JP,A)
【文献】特開2005-155623(JP,A)
【文献】特開2002-317602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/08
F01D 5/06
F01D 25/12
F02C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のロータ胴部と、
周方向に亘って前記ロータ胴部の外周面から半径方向外側に突出するとともに、複数段のタービン段落を構成するために前記ロータ胴部の中心軸方向に設けられた複数段のタービンディスクと、
前記ロータ胴部に形成され、第1の冷却媒体が供給されるとともに、前記タービン段落のうち高圧側となる高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の冷却通路部と、
前記ロータ胴部に形成され、前記第1の冷却媒体よりも低圧の第2の冷却媒体が供給されるとともに、前記高圧側タービン段落よりも低圧側となる低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の冷却通路部と
を具備し、
前記第1の冷却通路部は、
タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第1の軸方向通路と、
前記第1の軸方向通路に前記第1の冷却媒体を導入する第1の導入通路と、
前記第1の軸方向通路から前記高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の排出通路と
を備え、
前記第2の冷却通路部は、
前記タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第2の軸方向通路と、
前記第2の軸方向通路に前記第2の冷却媒体を導入する第2の導入通路と、
前記第2の軸方向通路から前記低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の排出通路と
を備えることを特徴とするタービンロータ。
【請求項2】
前記第1の軸方向通路は、
前記ロータ胴部の、前記タービンロータの中心軸よりも半径方向外側かつ前記ロータ胴部の外周面よりも半径方向内側に形成され、
前記第2の軸方向通路は、
前記タービンロータの中心軸を中心軸として前記タービンロータの中心軸方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載のタービンロータ。
【請求項3】
前記第1の軸方向通路は、
前記タービンロータの中心軸を中心軸として前記タービンロータの中心軸方向に形成され、
前記第2の軸方向通路は、
前記ロータ胴部の、前記タービンロータの中心軸よりも半径方向外側かつ前記ロータ胴部の外周面よりも半径方向内側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のタービンロータ。
【請求項4】
前記第1の軸方向通路および前記第2の軸方向通路は、
前記ロータ胴部の、前記タービンロータの中心軸よりも半径方向外側かつ前記ロータ胴部の外周面よりも半径方向内側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のタービンロータ。
【請求項5】
前記第2の導入通路は、前記タービンロータとタービンケーシングとの間に備えられるグランドシール部または前記グランドシール部に形成される空間に連通可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のタービンロータ。
【請求項6】
ケーシングと、
前記ケーシングを貫通するタービンロータと、
前記ケーシングと前記タービンロータとの間に備えられるグランドシール部と
を備える軸流タービンであって、
前記タービンロータが、
円柱状のロータ胴部と、
周方向に亘って前記ロータ胴部の外周面から半径方向外側に突出するとともに、複数段のタービン段落を構成するために前記ロータ胴部の中心軸方向に設けられた複数段のタービンディスクと、
前記ロータ胴部に形成され、第1の冷却媒体が供給されるとともに、前記タービン段落のうち高圧側となる高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の冷却通路部と、
前記ロータ胴部に形成され、前記第1の冷却媒体よりも低圧の第2の冷却媒体が供給されるとともに、前記高圧側タービン段落よりも低圧側となる低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の冷却通路部と
を備え、
前記第1の冷却通路部は、
前記タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第1の軸方向通路と、
前記第1の軸方向通路に前記第1の冷却媒体を導入する第1の導入通路と、
前記第1の軸方向通路から前記高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の排出通路と
を備え、
前記第2の冷却通路部は、
前記タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第2の軸方向通路と、
前記第2の軸方向通路に前記第2の冷却媒体を導入する第2の導入通路と、
前記第2の軸方向通路から前記低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の排出通路と
を備え、
前記軸流タービンが、
前記ケーシングを貫通し、前記グランドシール部に形成された、前記第2の導入通路に連通する空間に外部から冷却媒体を導入する冷却媒体導入管を備えることを特徴とする軸流タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービンロータおよび軸流タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電プラントにおけるタービン効率を向上させるために、タービン性能の向上が図られている。タービン性能を向上させるために、タービン入口温度は、高温化される傾向にある。
【0003】
このようにタービン入口温度が高温化される中、タービン構造物を構成する材料を適正温度下で使用する必要がある。そのため、タービンロータ、動翼、静翼などのタービン構造物は、冷却媒体を導入することで冷却されている。
【0004】
図14は、従来の軸流タービン300の子午断面を示した図である。
図14には、ガスタービンのタービン構造を示している。
【0005】
図14に示すように、従来の軸流タービン300は、外部ケーシング310と、外部ケーシング310の内側に備えられた内部ケーシング311とを備える。また、内部ケーシング311および外部ケーシング310を貫通してタービンロータ340が設けられている。
【0006】
内部ケーシング311の内周には、外側シュラウド320が周方向に亘って設けられ、この外側シュラウド320の内側には、内側シュラウド321が周方向に亘って設けられている。そして、外側シュラウド320と内側シュラウド321との間には、周方向に複数の静翼322が支持され、静翼翼列を構成している。
【0007】
ここで、周方向とは、タービンロータの中心軸Oを中心とする周方向、すなわち、中心軸Oの軸周りである。
【0008】
内側シュラウド321の内側には、内側シュラウド321に対向して周方向に亘って遮熱ピース325が設けられている。内側シュラウド321と遮熱ピース325との間には、シール部が構成されている。また、遮熱ピース325は、タービンロータ340に植設されている。
【0009】
タービンロータ340は、周方向に亘って半径方向外側に突出するタービンディスク341を備える。タービンディスク341は、タービンロータ340の中心軸方向に複数段設けられている。そして、各タービンディスク341には、周方向に複数の動翼350が植設され、動翼翼列を構成している。
【0010】
なお、タービンロータの中心軸方向を以下において単に軸方向という。半径方向外側とは、半径方向における中心軸Oから遠ざかる側である。半径方向は、中心軸Oを基点とする、中心軸Oに垂直な方向である。
【0011】
静翼翼列と動翼翼列は、タービンロータ軸方向に交互に設けられている。そして、静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とでタービン段落を構成している。ここでは、軸方向に複数段のタービン段落が設けられている。これによって、内部ケーシング311とタービンロータ340との間に、作動流体が流れる作動流体流路312が軸方向に形成される。なお、下流とは、作動流体の主流の流れ方向に対する下流を意味する。
【0012】
図14に示すように、燃焼器(図示しない)から排出された燃焼ガス(作動流体)を初段の静翼322に導くトランジションピース360は、外部ケーシング310および内部ケーシング311を貫通して設けられている。
【0013】
また、従来の軸流タービン300において、タービンロータ340を冷却するために、冷却媒体が導入される。
【0014】
タービンロータ340の中心には、冷却媒体を軸方向に流す軸方向通路370が形成されている。軸方向通路370は、
図14に示すように、タービンロータ340の中心軸Oを中心軸とし、軸方向に延設されている。
【0015】
また、タービンロータ340には、トランジションピース360の周囲から冷却媒体供給管362を通り内部ケーシング311内の空間361に供給された冷却媒体を軸方向通路370に導く導入通路371が設けられている。導入通路371は、半径方向に形成され、軸方向通路370に連通している。
【0016】
また、タービンロータ340には、遮熱ピース325とタービンロータ340との間の空間363に、軸方向通路370を流れる冷却媒体を排出する排出通路372が設けられている。排出通路372は、半径方向に形成され、軸方向通路370に連通している。各タービン段落の空間363に冷却媒体を排出できるように、軸方向に複数の排出通路372が設けられている。
【0017】
ここで、冷却媒体供給管362から空間361に供給された冷却媒体は、導入通路371を通り軸方向通路370に導かれる。そして、軸方向通路370を流れる冷却媒体は、排出通路372を通り空間363に排出される。
【0018】
この際、各タービン段落の排出通路372から排出される冷却媒体の圧力は、軸方向通路370の通路を流れる際の圧力損失を無視すれば、基本的に同じである。すなわち、各タービン段落において、作動流体流路312に連通する空間363に排出通路372から同じ圧力の冷却媒体が噴出される。
【0019】
ここで、タービン効率を向上させるために、タービンから排出された作動流体の一部を燃焼器やタービンに冷却媒体として循環させるガスタービン設備が検討されている。このガスタービン設備では、超臨界の作動流体が燃焼器やタービンに循環する。また、このガスタービン設備のタービンでは、タービン入口における作動流体は、超臨界流体である。
【0020】
超臨界の作動流体が導入されるタービンでは、通常のガスタービンに比べて、圧力比が大きい。なお、圧力比は、タービン入口の作動流体の圧力と、最終のタービン段落の下流の排気室における作動流体の圧力との比である。
【0021】
このような超臨界の作動流体を使用するガスタービン設備においても、タービン構造物を構成する材料を適正温度下で使用するために、上記した冷却構造を備える軸流タービン300が備えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記した冷却構造を備える軸流タービン300を超臨界の作動流体で運用する場合、空間361に供給される冷却媒体の圧力は、タービンに導入される作動流体の圧力よりも高く調整される。すなわち、導入通路371を通り軸方向通路370に導かれる冷却媒体の圧力は、タービンに導入される作動流体の圧力よりも高い。
【0024】
そして、作動流体の圧力よりも高い圧力の冷却媒体は、各タービン段落において、作動流体流路312に連通する空間363に排出通路372から噴出される。
【0025】
この軸流タービン300において、作動流体流路312を流れる作動流体の圧力と、排出通路372から噴出される冷却媒体の圧力との差は、下流段のタービン段落に行くほど大きくなる。そして、軸流タービン300は高圧力比であるため、下流段のタービン段落における作動流体の圧力は、上流段のタービン段落における作動流体の圧力よりも大きく低下する。
【0026】
そのため、下流段のタービン段落では、排出通路372から排出される冷却媒体の圧力と、作動流体流路312を流れる作動流体の圧力との差が大きくなるため、排出通路372から噴出される冷却媒体の流れがチョーク流となる。
【0027】
これによって、冷却媒体の流れがチョーク流となる下流段のタービン段落では、排出通路372から噴出される冷却媒体の流量の調整が困難となる。
【0028】
本発明が解決しようとする課題は、タービンロータを冷却した冷却媒体を適正な圧力で各タービン段落に供給可能なタービンロータおよび軸流タービンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
実施形態のタービンロータは、円柱状のロータ胴部と、周方向に亘って前記ロータ胴部の外周面から半径方向外側に突出するとともに、複数段のタービン段落を構成するために前記ロータ胴部の中心軸方向に設けられた複数段のタービンディスクとを備える。
【0030】
また、タービンロータは、前記ロータ胴部に形成され、第1の冷却媒体が供給されるとともに、前記タービン段落のうち高圧側となる高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の冷却通路部と、前記ロータ胴部に形成され、前記第1の冷却媒体よりも低圧の第2の冷却媒体が供給されるとともに、前記高圧側タービン段落よりも低圧側となる低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の冷却通路部とを具備し、前記第1の冷却通路部は、タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第1の軸方向通路と、前記第1の軸方向通路に前記第1の冷却媒体を導入する第1の導入通路と、前記第1の軸方向通路から前記高圧側タービン段落に前記第1の冷却媒体を排出する第1の排出通路とを備え、前記第2の冷却通路部は、前記タービンロータの中心軸方向に形成され、穴で構成される第2の軸方向通路と、前記第2の軸方向通路に前記第2の冷却媒体を導入する第2の導入通路と、前記第2の軸方向通路から前記低圧側タービン段落に前記第2の冷却媒体を排出する第2の排出通路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施の形態のタービンロータを備える軸流タービンの子午断面を示した図である。
【
図4】第1の実施の形態の他の形態のタービンロータにおける、
図1のA-A断面に相当する断面を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態の他の形態のタービンロータにおける、
図1のB-B断面に相当する断面を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態のタービンロータを備える他の構成の軸流タービンの子午断面を示した図である。
【
図7】第2の実施の形態のタービンロータを備える軸流タービンの子午断面を示した図である。
【
図11】第2の実施の形態の他の形態のタービンロータにおける、
図7のC-C断面に相当する断面を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態の他の形態のタービンロータにおける、
図7のD-D断面に相当する断面を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態の他の形態のタービンロータにおける、
図7のE-E断面に相当する断面を示す図である。
【
図14】従来の軸流タービンの子午断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のタービンロータ10Aを備える軸流タービン1の子午断面を示した図である。なお、
図1には、超臨界の作動流体がタービンに導入されるガスタービン構造を示している。
【0034】
図1に示すように、軸流タービン1は、外部ケーシング30と、外部ケーシング30の内側に設けられた内部ケーシング31とを備える。また、内部ケーシング31および外部ケーシング30を貫通してタービンロータ10Aが設けられている。
【0035】
内部ケーシング31の内周には、外側シュラウド40が周方向に亘って設けられている。この外側シュラウド40の内側(半径方向内側)には、内側シュラウド41が周方向に亘って設けられている。そして、外側シュラウド40と内側シュラウド41との間には、周方向に複数の静翼42が支持され、静翼翼列を構成している。この静翼翼列は、軸方向(タービンロータ10Aの中心軸O方向)に複数段設けられている。
【0036】
ここで、半径方向内側とは、半径方向における中心軸Oに近づく側(中心軸O側)である。
【0037】
内側シュラウド41の内側には、内側シュラウド41に対向して周方向に亘って遮熱ピース43が設けられている。遮熱ピース43は、例えば、タービンロータ10Aに植設される。内側シュラウド41と遮熱ピース43との間には、シール部44が構成されている。
【0038】
タービンロータ10Aは、ロータ胴部11と、タービンディスク12と、冷却構造部13とを備える。
【0039】
ロータ胴部11は、円柱状の部材で構成されている。ロータ胴部11の両端は、軸受(図示しない)によって回転可能に支持されている。なお、ロータ胴部11の中心軸は、タービンロータ10Aの中心軸Oと同一である。そのため、ロータ胴部11の中心軸方向は、軸方向と称しているタービンロータ10Aの中心軸方向と同一である。
【0040】
タービンディスク12は、ロータ胴部11の外周面から周方向に亘って半径方向外側に突出している。この環状の突出体で構成されるタービンディスク12は、複数段のタービン段落を構成するために、軸方向に複数段設けられている。ここで、半径方向外側とは、半径方向における中心軸Oから遠ざかる側である。
【0041】
各タービンディスク12の先端部には、周方向に複数の動翼50が植設され、動翼翼列を構成している。動翼50の外周は、例えば、シュラウドセグメント51で包囲されている。シュラウドセグメント51は、外側シュラウド40によって支持されている。
【0042】
なお、静翼翼列と動翼翼列は、軸方向に交互に設けられている。そして、静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とでタービン段落を構成している。複数のタービン段落によって作動流体が流れる作動流体流路55が形成される。
【0043】
図1に示すように、タービンロータ10Aと外部ケーシング30との間には、グランドシール部33aを備える。タービンロータ10Aと内部ケーシング31との間には、グランドシール部33bを備える。タービンロータ10Aとパッキンヘッド32との間には、グランドシール部33c備える。これらのグランドシール部33a、33b、33cは、作動流体や冷却媒体の外部への漏洩を抑制する。
【0044】
グランドシール部33bおよびグランドシール部33aは、作動流体や冷却媒体の導入側に備えられ、高圧側グランドシール部として機能する。一方、グランドシール部33cは、排気室75側に備えられ、低圧側グランドシール部として機能する。
【0045】
また、高圧側グランドシール部において、
図1に示すように、グランドシール部33bとグランドシール部33aとの間に空間56が形成される。換言すると、グランドシール部33bを支持する内部ケーシング31とグランドシール部33aを支持する外部ケーシング30とが軸方向に間隙を有している。
【0046】
そして、その間隙によって、内部ケーシング31、外部ケーシング30、タービンロータ10A、グランドシール部33a、33bによって囲まれる空間56が形成される。なお、ここでは、空間56は、高圧側グランドシール部に形成される空間として機能する。
【0047】
タービンロータ10Aは、冷却媒体によってタービンロータ10Aを冷却する冷却構造部13を備える。この冷却構造部13は、高圧冷却通路13Aと低圧冷却通路13Bとを備える。この冷却構造部13の構造については、後に詳しく説明する。
【0048】
ここで、タービンロータ10Aは、冷却構造部13の形成工程等を考慮して、例えば、タービンロータ10Aの全体を一体で構成するモノブロック型ロータで構成されることが好ましい。この場合、タービンロータ10Aは、一体型鍛造品となる。
【0049】
なお、タービンロータ10Aは、例えば、複数のタービンロータ構成部材を接合して形成された接合ロータで構成することもできる。この場合、冷却構造部13の形成工程等を考慮して、冷却構造部13を備える部分は、一つのタービンロータ構成部材で構成されていることが好ましい。接合ロータは、タービンロータ構成部材を軸方向に、例えば、溶接や摩擦圧接などにより接合して構成されている。
【0050】
ここで、軸流タービン1には、外部ケーシング30および内部ケーシング31を貫通してトランジションピース60が備えられている。トランジションピース60の下流端は、初段の静翼42を支持する内側シュラウド41および外側シュラウド40の上流端に当接している。そして、トランジションピース60は、燃焼器(図示しない)から排出された燃焼ガス(作動流体)を初段の静翼42に導く。
【0051】
トランジションピース60が外部ケーシング30および内部ケーシング31を貫通する貫通領域において、トランジションピース60の外周は、冷却媒体を導入する冷却媒体供給管70で覆われている。すなわち、貫通領域において、トランジションピース60と、その外周側に設けられた冷却媒体供給管70とからなる二重管構造を備える。
【0052】
トランジションピース60と冷却媒体供給管70との間の環状の通路を流れる冷却媒体が外部ケーシング30と内部ケーシング31との間の空間34に流れ込まないように、冷却媒体供給管70の下流端は、内部ケーシング31に形成された貫通口35内まで延設されている。なお、貫通口35は、トランジションピース60および冷却媒体供給管70を内部ケーシング31内に貫通させるための開口である。
【0053】
冷却媒体供給管70の出口は、トランジションピース60が挿入された内部ケーシング31内の空間36に連通している。すなわち、冷却媒体供給管70から導入された冷却媒体は、空間36に流入する。
【0054】
なお、空間36に流入する冷却媒体の温度は、初段の静翼42に導入される作動流体の温度に比べて十分に低い。すなわち、空間36に流入する冷却媒体の温度は、タービンロータ10Aなどを冷却するための冷却媒体として機能する温度である。
【0055】
ここで、空間36へ冷却媒体を供給する構成は、この構成に限られない。すなわち、冷却媒体供給管70は、トランジションピース60の周囲に備えられる構成に限られない。冷却媒体供給管70の構成は、例えば、外部ケーシング30および内部ケーシング31を貫通して空間36へ冷却媒体を供給できる構成であればよい。
【0056】
なお、上記したように、軸流タービン1は、トランジションピース60から噴出された作動流体が一方向に流れる一方向流型のタービンである。
【0057】
次に、タービンロータ10Aの冷却構造部13について詳しく説明する。
【0058】
図2は、
図1のA-A断面を示す図である。
図3は、
図1のB-B断面を示す図である。なお、
図2および
図3は、タービンロータ10Aの中心軸Oに垂直な断面である。ここでは、
図1、
図2および
図3を参照して説明する。
【0059】
冷却構造部13は、タービンロータ10Aにおけるロータ胴部11に形成されている。また、前述したように、冷却構造部13は、高圧冷却通路13Aと、低圧冷却通路13Bとを備える。
【0060】
まず、高圧冷却通路13Aについて説明する。
【0061】
高圧冷却通路13Aには、冷却媒体供給管70から空間36に導入された超臨界の冷却媒体が導入される。なお、ここでは、空間36から高圧冷却通路13Aに導入される冷却媒体を高圧冷却媒体と呼ぶ。
【0062】
また、高圧冷却通路13Aは、複数段のタービン段落のうち高圧側となる高圧側タービン段落に高圧冷却媒体を排出する。なお、高圧冷却通路13Aは、第1の冷却通路部として機能する。また、高圧冷却媒体は、第1の冷却媒体として機能する。
【0063】
ここで、高圧冷却通路13Aから排出される高圧冷却媒体の圧力は、高圧側タービン段落を流れる作動流体の圧力よりも高い。
【0064】
高圧側タービン段落は、例えば、初段のタービン段落、または初段のタービン段落および初段より下流のいくつかのタービン段落で構成される。高圧側タービン段落は、高圧冷却媒体をタービン段落に噴出した際、高圧冷却媒体がチョーク流とならないタービン段落で構成される。
【0065】
図1に示した一例では、4段で構成されるタービン段落のうち、上流側の2段を高圧側タービン段落としている。なお、高圧側タービン段落の構成はこれに限られない。上記したように、高圧冷却媒体をタービン段落に噴出した際、高圧冷却媒体がチョーク流とならないタービン段落であれば、高圧側タービン段落として構成してもよい。
【0066】
図1に示すように、高圧冷却通路13Aは、導入通路80と、軸方向通路81と、排出通路82とを備える。導入通路80、軸方向通路81および排出通路82は、連通している。ここで、導入通路80は、第1の導入通路として機能し、軸方向通路81は、第1の軸方向通路として機能し、排出通路82は、第1の排出通路として機能する。
【0067】
導入通路80は、例えば、の外周面11aから軸方向通路81に貫通する貫通孔で構成される。導入通路80は、例えば、半径方向に形成される。
【0068】
なお、導入通路80は、半径方向に対して軸方向に傾斜を有するように形成されてもよい。また、導入通路80は、半径方向に対して周方向に傾斜を有するように形成されてもよい。
【0069】
導入通路80の入口80aは、超臨界の冷却媒体が導入される内部ケーシング31内の空間36に開口している。すなわち、空間36と軸方向通路81は、導入通路80を介して連通している。
【0070】
なお、導入通路80は、例えば、軸方向に複数備えられてもよい。この場合、空間36に導入された超臨界の冷却媒体は、複数の導入通路80を通り軸方向通路81に流れる。
【0071】
軸方向通路81は、
図1および
図2に示すように、ロータ胴部11の、タービンロータ10Aの中心軸Oよりも半径方向外側かつロータ胴部11の外周面11aよりも半径方向内側に、軸方向に形成されている。すなわち、軸方向通路81は、中心軸Oとロータ胴部11の外周面11aとの間に形成されている。また、軸方向通路81内には、中心軸Oを含まない。軸方向通路81は、例えば、断面が円形の穴で構成される。
【0072】
軸方向通路81は、タービンロータ10Aの中心軸方向に形成される。軸方向通路81は、例えば、
図1に示すように、タービンロータ10Aの中心軸Oに平行に形成される。
【0073】
軸方向通路81は、例えば、複数備えられる。この場合、同一形状の複数の軸方向通路81が備えられる。そして、
図2に示すように、軸方向通路81は、中心軸Oを中心とする同一円周R上に均等配置されている。換言すると、
図2に示す断面において、各軸方向通路81の中心軸Pは、中心軸Oを中心とする同一円周R上に位置し、かつ各軸方向通路81の中心軸P間の周方向の長さは、それぞれ等しい。
【0074】
また、軸方向通路81は、
図1に示すように、例えば、導入通路80が形成された軸方向位置から、最終のタービン段落の出口に対応する軸方向位置に亘って形成される。
【0075】
ここでは、軸方向通路81は、空間36の上流端36aに対応する軸方向位置から、パッキンヘッド32に対向する、タービンロータ径が小さくなる下流端11bに貫通するように形成されている。この場合、軸方向通路81の出口81aは、封止部材83で封止されている。
【0076】
なお、軸方向通路81が形成される軸方向の範囲は、これに限られるものではない。軸方向通路81は、導入通路80から高圧冷却媒体が導入され、かつ各排出通路82に高圧冷却媒体を導ける範囲に形成されていればよい。
【0077】
排出通路82は、
図1に示すように高圧側タービン段落に対応して形成される。ここでは、排出通路82は、初段のタービン段落および第2段のタービン段落に対応する軸方向位置に形成されている。
【0078】
排出通路82は、軸方向通路81からロータ胴部11の外周面11aに貫通する貫通孔で構成される。具体的には、
図1に示すように、排出通路82は、軸方向通路81と、遮熱ピース43と外周面11aとの間の空間45とを連通させる。
【0079】
ここで、空間45は、内側シュラウド41および遮熱ピース43と、タービンディスク12との間の隙間を介して作動流体流路55に連通している。
【0080】
排出通路82は、初段のタービンディスク12の上流側におけるロータ胴部11の外周面11a、および初段のタービンディスク12と第2段のタービンディスク12との間におけるロータ胴部11の外周面11aに、出口82aを有する。
【0081】
例えば、初段のタービン段落においては、排出通路82の出口82aは、遮熱ピース43、外周面11a、初段のタービンディスク12で囲まれる空間45に開口している。
【0082】
第2段のタービン段落においては、排出通路82の出口82aは、上流側および下流側のタービンディスク12、遮熱ピース43、外周面11aで囲まれる空間45に開口している。
【0083】
なお、第2段以降のタービン段落においては、排出通路82の出口82aは、上流のタービンディスク12側に位置する一例を示している。第2段以降のタービン段落においては、排出通路82の出口82aは、下流のタービンディスク12側に位置してもよい。
【0084】
排出通路82は、例えば、半径方向に形成される。なお、排出通路82は、半径方向に対して軸方向に傾斜を有するように形成されてもよい。また、排出通路82は、半径方向に対して周方向に傾斜を有するように形成されてもよい。
【0085】
ここで、
図2に示すように、排出通路82は、各軸方向通路81にそれぞれ形成されている。また、図示していないが、導入通路80も排出通路82と同様に、各軸方向通路81にそれぞれ形成されている。
【0086】
次に、低圧冷却通路13Bについて説明する。
【0087】
低圧冷却通路13Bには、高圧側グランドシール部における空間56に流入した冷却媒体が導入される。低圧冷却通路13Bには、高圧冷却通路13Aに導入される高圧冷却媒体よりも低圧の冷却媒体が導入される。なお、ここでは、低圧冷却通路13Bに導入される、高圧冷却媒体よりも低圧の冷却媒体を低圧冷却媒体と呼ぶ。また、低圧冷却媒体は、第2の冷却媒体として機能する。
【0088】
また、低圧冷却通路13Bは、高圧側タービン段落よりも低圧側の低圧側タービン段落に低圧冷却媒体を排出する。なお、低圧冷却通路13Bは、第2の冷却通路部として機能する。
【0089】
ここで、低圧冷却通路13Bから排出される低圧冷却媒体の圧力は、低圧側タービン段落を流れる作動流体の圧力よりも高い。
【0090】
低圧側タービン段落は、上記した高圧側タービン段落よりも下流側のタービン段落で構成される。
図1に示した一例では、4段で構成されるタービン段落のうち、下流側の2段を低圧側タービン段落としている。なお、低圧側タービン段落に流れる作動流体の圧力は、高圧側タービン段落に流れる作動流体の圧力よりも低い。
【0091】
図1および
図3に示すように、低圧冷却通路13Bは、導入通路90と、軸方向通路91と、排出通路92とを備える。導入通路90、軸方向通路91および排出通路92は、連通している。
【0092】
なお、
図1に示された断面では、排出通路92は見えない。すなわち、
図3に示すように、排出通路92は、
図2に示された排出通路92に対して中心軸Oを中心として周方向にずれた位置に配置されている。これによって、排出通路92が高圧冷却通路13Aの軸方向通路81に交差することを回避できる。
【0093】
ここで、導入通路90は、第2の導入通路として機能し、軸方向通路91は、第2の軸方向通路として機能し、排出通路92は、第2の排出通路として機能する。
【0094】
導入通路90は、例えば、ロータ胴部11の外周面11aから軸方向通路91に貫通する貫通孔で構成される。導入通路90は、例えば、半径方向に形成される。
【0095】
なお、導入通路90は、半径方向に対して軸方向に傾斜を有するように形成されてもよい。また、導入通路90は、半径方向に対して周方向に傾斜を有するように形成されてもよい。
【0096】
導入通路90の入口90aは、高圧側グランドシール部における空間56に開口している。すなわち、空間56と軸方向通路91は、導入通路90を介して連通している。
【0097】
ここで、空間56には、空間36からグランドシール部33bを通過した超臨界の冷却媒体が流入する。この超臨界の冷却媒体は、グランドシール部33bを通過することで圧力が減少し、低圧冷却媒体となる。なお、空間56における低圧冷却媒体の圧力は、低圧側タービン段落を流れる作動流体の圧力よりも高い。
【0098】
軸方向通路91は、
図1および
図3に示すように、タービンロータ10Aの中心軸Oを中心軸とし、軸方向に延設されている。軸方向通路91は、例えば、断面が円形の穴で構成される。
【0099】
また、軸方向通路91は、
図1に示すように、例えば、導入通路90が形成された軸方向位置から、少なくとも低圧側タービン段落に対応する軸方向位置に亘って形成される。
【0100】
なお、
図1では、軸方向通路91は、導入通路90が形成された軸方向位置から低圧側に貫通した一例を示している。この場合、軸方向通路91の出口は、封止部材(図示しない)で封止されている。また、軸方向通路91は、導入通路90から低圧冷却媒体が導入され、かつ各排出通路92に冷却媒体を導ける範囲に形成されていればよい。
【0101】
排出通路92は、
図1および
図3に示すように低圧側タービン段落に対応して形成される。ここでは、排出通路92は、第3段のタービン段落および第4段のタービン段落に対応する軸方向位置に形成されている。
【0102】
排出通路92は、軸方向通路91からロータ胴部11の外周面11aに貫通する貫通孔で構成される。排出通路92は、ロータ胴部11の外周面11aに出口92aを有する。そして、出口92aは、空間45に開口している。
【0103】
本実施の形態における軸流タービンは、超臨界の作動流体が導入されるタービンである。この軸流タービンが備えられる設備として、タービンから排出された作動流体の一部を燃焼器やタービンに冷却媒体として循環させる超臨界CO2ガスタービン設備が例示できる。超臨界CO2ガスタービン設備において循環される冷却媒体は、超臨界の二酸化炭素である。
【0104】
また、上記した軸流タービン1では、内側シュラウド41の内側に遮熱ピース43を備える一例を示したが、この構成に限られない。
【0105】
例えば、内側シュラウド41の内側に遮熱ピース43を備えなくてもよい。この場合、シール部は、内側シュラウド41とロータ胴部11の外周面11aとの間に備えられる。そして、排出通路82、92の出口82a、92aは、例えば、シール部を構成する部分のロータ胴部11の外周面11aに位置する。
【0106】
次に、軸流タービン1およびタービンロータ10Aの冷却構造部13の作用について、
図1を参照して説明する。
【0107】
まず、軸流タービン1の作用について説明する。
【0108】
燃焼器(図示しない)から排出された燃焼ガス(作動流体)は、トランジションピース60を通り軸流タービン1内に導入される。軸流タービン1内に導入された作動流体は、初段の静翼42に導かれる。そして、作動流体は、初段の静翼42から初段の動翼50に向けて噴出される。
【0109】
このようにして、作動流体は、第2段以降の静翼42および動翼50を備える作動流体流路55を流動し、膨張仕事をしながらタービンロータ10Aを回転させる。最終段の動翼50を通過した燃焼ガスは、排気室75を通り軸流タービン1から排出される。
【0110】
次に、タービンロータ10Aの冷却構造部13の作用について説明する。
【0111】
超臨界の冷却媒体は、冷却媒体供給管70を通り、トランジションピース60が挿入された内部ケーシング31内の空間36に導かれる。この際、冷却媒体は、トランジションピース60と冷却媒体供給管70との間の環状の通路を通り空間36に導かれる。この構成を備える場合、トランジションピース60は、冷却媒体によって冷却される効果が得られる。
【0112】
ここで、ロータ胴部11の外周面11aは、空間36に導かれた冷却媒体によって冷却される。なお、空間36に導入される冷却媒体の圧力は、トランジションピース60から噴出される燃焼ガスの圧力よりも高い。
【0113】
空間36に導かれた冷却媒体の一部は、入口80aから導入通路80に流入する。なお、導入通路80に流入した冷却媒体は、高圧冷却媒体として機能する。
【0114】
導入通路80に流入した高圧冷却媒体は、導入通路80を通り軸方向通路81に流入する。軸方向通路81に導く冷却媒体の流量は、例えば、導入通路80の口径などによって調整される。
【0115】
軸方向通路81に導かれた高圧冷却媒体は、軸方向通路81を軸方向の下流側に向かって流れる。軸方向通路81を軸方向の下流側に向かって流れる高圧冷却媒体は、高圧タービン段落に対応して形成された各排出通路82に流れ込む。
【0116】
排出通路82に流れ込んだ高圧冷却媒体は、排出通路82を通り出口82aから、高圧タービン段落における空間45に噴出される。なお、各排出通路82に導く高圧冷却媒体の流量は、例えば、各排出通路82の口径などによって調整される。
【0117】
ここで、ロータ胴部11(タービンロータ10A)は、導入通路80、軸方向通路81および排出通路82に高圧冷却媒体を流すことによって、内部から冷却される。
【0118】
空間45内に広がった高圧冷却媒体は、遮熱ピース43とタービンディスク12との隙間および内側シュラウド41とタービンディスク12との隙間から、作動流体流路55に流入する。作動流体流路55に流入した高圧冷却媒体は、作動流体とともに作動流体流路55を流れ、排気室75に排出される。
【0119】
ここで、空間45に面するロータ胴部11の外周面11a、タービンディスク12は、空間45に流入する高圧冷却媒体、および作動流体流路55に流出する高圧冷却媒体によって冷却される。
【0120】
また、空間36に導かれた冷却媒体の一部は、外側シュラウド40内やシール部44に流れる。具体的には、冷却媒体は、内側シュラウド41と遮熱ピース43との間のシール部44を下流側に流れる。また、冷却媒体は、例えば、外側シュラウド40内に導かれて静翼42の冷却に利用される。
【0121】
また、空間36に導かれた冷却媒体の一部は、グランドシール部33bを通り、空間56へ流入する。なお、空間56へ流入する冷却媒体の圧力は、空間36における冷却媒体の圧力よりも低い。
【0122】
空間56に導かれた冷却媒体の一部は、入口90aから導入通路90に流入する。なお、導入通路90に流入した冷却媒体は、低圧冷却媒体として機能する。
【0123】
導入通路90に流入した低圧冷却媒体は、導入通路90を通り軸方向通路91に流入する。軸方向通路91に導く冷却媒体の流量は、例えば、導入通路90の口径などによって調整される。
【0124】
軸方向通路91に導かれた低圧冷却媒体は、軸方向通路91を軸方向の下流側に向かって流れる。軸方向通路91を軸方向の下流側に向かって流れる低圧冷却媒体は、低圧タービン段落に対応して形成された各排出通路92に流れ込む。
【0125】
排出通路92に流れ込んだ低圧冷却媒体は、排出通路92を通り出口92aから、低圧タービン段落における空間45に噴出される。なお、各排出通路92に導く低圧冷却媒体の流量は、例えば、各排出通路92の口径などによって調整される。
【0126】
ここで、ロータ胴部11(タービンロータ10A)は、導入通路90、軸方向通路91および排出通路92に低圧冷却媒体を流すことによって、内部から冷却される。
【0127】
空間45内に広がった低圧冷却媒体は、遮熱ピース43とタービンディスク12との隙間および内側シュラウド41とタービンディスク12との隙間から、作動流体流路55に流入する。作動流体流路55に流入した低圧冷却媒体は、作動流体とともに作動流体流路55を流れ、排気室75に排出される。
【0128】
ここで、空間45に面するロータ胴部11の外周面11a、タービンディスク12は、空間45に流入する低圧冷却媒体、および作動流体流路55に流出する低圧冷却媒体によって冷却される。
【0129】
排出通路92から空間45、すなわち低圧側タービン段落に噴出される低圧冷却媒体の圧力と低圧側タービン段落における作動流体の圧力との差(または圧力比)は、低圧冷却媒体のチョーク流れを生じる差圧(または圧力比)よりも小さい。
【0130】
上記した第1の実施の形態のタービンロータ10Aによれば、異なる圧力の冷却媒体が導入される高圧冷却通路13Aと低圧冷却通路13Bとを備える。そして、高圧冷却通路13Aに導入された高圧冷却媒体は、高圧側タービン段落に導入される。低圧冷却通路13Bに導入された低圧冷却媒体は、低圧側タービン段落に導入される。
【0131】
このように、タービン段落に応じて、高圧の作動流体が流れるタービン段落には、高圧の冷却媒体を導入することができる。また、低圧の作動流体が流れるタービン段落には、低圧の冷却媒体を導入することができる。
【0132】
これによって、高圧力比のタービンにおいても、各タービン段落に適正な圧力で冷却媒体を導入できる。そのため、低圧側タービン段落においても、冷却媒体の流れがチョークすることなく、最適な流量の冷却媒体を各タービン段落に導入できる。
【0133】
また、空間36内には、高圧である超臨界の冷却媒体が導入される。そのため、グランドシール部33bから漏洩する冷却媒体の流量は増加する。しかしながら、第1の実施の形態のタービンロータ10Aでは、グランドシール部33bから漏洩した冷却媒体を低圧冷却通路13Bに導入する冷却媒体として利用することができる。これによって、高圧側のグランドシール部33aから外部に漏洩する冷却媒体の流量は減少する。
【0134】
(第1の実施の形態の他の形態)
図4は、第1の実施の形態の他の形態のタービンロータ10Aにおける、
図1のA-A断面に相当する断面を示す図である。
図5は、第1の実施の形態の他の形態のタービンロータ10Aにおける、
図1のB-B断面に相当する断面を示す図である。なお、
図4および
図5は、タービンロータ10Aの中心軸Oに垂直な断面である。
【0135】
この他の形態のタービンロータ10Aでは、低圧冷却通路13Bにおける軸方向通路91の構成の他の一例を示す。
【0136】
図4および
図5に示すように、軸方向通路91を複数の通路で構成してもよい。具体的には、軸方向通路91は、ロータ胴部11の、タービンロータ10Aの中心軸Oよりも半径方向外側かつロータ胴部11の外周面11aよりも半径方向内側に、軸方向に形成されてもよい。すなわち、軸方向通路91は、中心軸Oとロータ胴部11の外周面11aとの間に形成されている。
【0137】
ここでは、軸方向通路91は、高圧冷却通路13Aの軸方向通路81が形成された同一円周R上に、軸方向通路81に対して周方向にずらして均等配置されている。また、この場合、軸方向通路81および軸方向通路91は、同一円周R上に均等配置されている。
【0138】
なお、軸方向通路91の配置構成はこの構成に限られない。例えば、軸方向通路91は、同一円周Rとは異なる、中心軸Oを中心とする同一円周上に均等配置されてもよい。
【0139】
このように、低圧冷却通路13Bにおいて複数の軸方向通路91を備えるタービンロータ10Aにおいても、上記した第1の実施の形態のタービンロータ10Aの作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0140】
また、複数の軸方向通路81、91を中心軸Oを中心とする任意の同一円周上に均等配置したタービンロータ10Aでは、中心軸Oを中心軸とする軸方向通路を有するタービンロータよりも、軸方向通路の内壁部生じる接線応力(せん断応力)を小さくすることができる。
【0141】
また、複数の軸方向通路81、91を中心軸Oを中心とする任意の同一円周上に均等配置することで、タービンロータ10Aが回転した際、ロータ軸系安定性を確保することができる。
【0142】
ここで、上記した軸流タービンの構成は、この構成に限られない。
図6は、第1の実施の形態のタービンロータ10Aを備える他の構成の軸流タービン1の子午断面を示した図である。
【0143】
図6に示すように、軸流タービン1は、外部ケーシング30を貫通し、高圧側グランドシール部に形成された空間56に軸流タービン1の外部から冷却媒体を導入する冷却媒体導入管38を備えてもよい。冷却媒体導入管38の出口38aは、空間56に開口している。
【0144】
冷却媒体導入管38に導入される冷却媒体の圧力は、グランドシール部33bを通過して空間56内に流入する低圧冷却媒体の圧力よりも高く設定される。なお、冷却媒体導入管38に導入される冷却媒体の圧力は、高圧冷却媒体の圧力よりも低い。
【0145】
冷却媒体導入管38に導入される冷却媒体として、例えば、軸流タービン1を備える超臨界CO2ガスタービン設備の系統の一部から抽気された作動流体などが使用できる。また、例えば、軸流タービン1を備える超臨界CO2ガスタービン設備に併設された異なる超臨界CO2ガスタービン設備の系統の一部から抽気された作動流体などが使用できる。
【0146】
なお、冷却媒体導入管38に導入される冷却媒体の供給源は、これらに限られるものではなく、空間56内に導入される冷却媒体として圧力および温度などの条件が適する供給源であればよい。
【0147】
ここで、空間56は、導入通路90に連通しているため、冷却媒体導入管38から空間56に導入された冷却媒体は、グランドシール部33bを通過して空間56内に流入した低圧冷却媒体とともに導入通路90に流入する。
【0148】
このように冷却媒体導入管38を介して軸流タービン1の外部から空間56に冷却媒体を導入することで、導入通路90に流入する冷却媒体の流量が増える。そのため、排出通路92から空間45に噴出される冷却媒体の流量が増加する。これによって、ロータ胴部11の外周面11aやタービンディスク12などの冷却を促進することができる。
【0149】
ここで、冷却媒体導入管38には、図示しない流量調整弁が備えられ、例えば、必要に応じて空間56に冷却媒体を導入することができる。例えば、超臨界CO2ガスタービン設備の起動時において、作動流体の温度が設定温度よりも上昇することがある。このようなときに、冷却媒体導入管38を介して空間56に冷却媒体を導入することができる。
【0150】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態のタービンロータ10Bを備える軸流タービン1の子午断面を示した図である。
図8は、
図7のC-C断面を示す図である。
図9は、
図7のD-D断面を示す図である。
図10は、
図7のE-E断面を示す図である。なお、
図8、
図9および
図10は、タービンロータ10Bの中心軸Oに垂直な断面である。
【0151】
なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態のタービンロータ10Aおよびタービンロータ10Aを備える軸流タービン1と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0152】
第2の実施の形態のタービンロータ10Bでは、第1の実施の形態のタービンロータ10Aにおける高圧冷却通路13Aと低圧冷却通路13Bの配置構成を入れ替えている。すなわち、第2の実施の形態のタービンロータ10Bにおいては、冷却構造部13の構成以外は第1の実施の形態のタービンロータ10Aの構成と同じである。そのため、ここでは、主に冷却構造部13の構成について説明する。
【0153】
冷却構造部13は、タービンロータ10Bにおけるロータ胴部11に形成されている。冷却構造部13は、高圧冷却通路13Aと、低圧冷却通路13Bとを備える。
【0154】
まず、高圧冷却通路13Aについて説明する。
【0155】
高圧冷却通路13Aには、冷却媒体供給管70から空間36に導入された高圧冷却媒体が導入される。
【0156】
図7~
図9に示すように、高圧冷却通路13Aは、導入通路80と、軸方向通路81と、排出通路82とを備える。
【0157】
なお、
図7に示された断面では、導入通路80および排出通路82は見えない。すなわち、
図8および
図9に示すように、導入通路80および排出通路82は、
図7に示された導入通路90および排出通路92に対して中心軸Oを中心として周方向にずれた位置に配置されている。
【0158】
図8に示すように、導入通路80は、例えば、ロータ胴部11の外周面11aから軸方向通路81に貫通する貫通孔で構成される。導入通路80の入口80aは、高圧冷却媒体が導入される内部ケーシング31内の空間36に開口している。なお、導入通路80の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0159】
軸方向通路81は、
図7~
図9に示すように、タービンロータ10Bの中心軸Oを中心軸とし、軸方向に延設されている。軸方向通路81は、例えば、断面が円形の穴で構成される。
【0160】
また、軸方向通路81は、
図7に示すように、例えば、導入通路80が形成された軸方向位置から、少なくとも高圧側タービン段落に対応する軸方向位置に亘って形成される。
【0161】
なお、
図7では、軸方向通路81は、導入通路80が形成された軸方向位置から低圧側に貫通した一例を示している。この場合、軸方向通路81の出口は、封止部材(図示しない)で封止されている。また、軸方向通路81は、導入通路80から高圧冷却媒体が導入され、かつ各排出通路82に冷却媒体を導ける範囲に形成されていればよい。
【0162】
排出通路82は、高圧側タービン段落に対応して形成される。ここでは、排出通路82は、初段のタービン段落および第2段のタービン段落に対応する軸方向位置に形成されている。
【0163】
排出通路82は、
図9に示すように、軸方向通路81からロータ胴部11の外周面11aに貫通する貫通孔で構成される。排出通路82は、ロータ胴部11の外周面11aに出口82aを有する。排出通路82は、軸方向通路81と空間45とを連通させる。
【0164】
次に、低圧冷却通路13Bについて説明する。
【0165】
低圧冷却通路13Bには、高圧側グランドシール部における空間56に流入した低圧冷却媒体が導入される。
【0166】
図7および
図10に示すように、低圧冷却通路13Bは、導入通路90と、軸方向通路91と、排出通路92とを備える。
【0167】
導入通路90は、例えば、ロータ胴部11の外周面11aから軸方向通路91に貫通する貫通孔で構成される。導入通路90の入口90aは、高圧側グランドシール部における空間56に開口している。なお、導入通路90の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0168】
軸方向通路91は、
図7および
図10に示すように、ロータ胴部11の、タービンロータ10Bの中心軸Oよりも半径方向外側かつロータ胴部11の外周面11aよりも半径方向内側に、軸方向に形成されている。すなわち、軸方向通路91は、中心軸Oとロータ胴部11の外周面11aとの間に形成されている。軸方向通路91は、例えば、断面が円形の穴で構成される。
【0169】
なお、複数の軸方向通路91を備える際の周方向の配置構成は、第1の実施の形態における軸方向通路81の構成と同様である。
【0170】
軸方向通路91は、例えば、導入通路90が形成された軸方向位置から、最終のタービン段落の出口に対応する軸方向位置に亘って形成される。ここでは、軸方向通路91は、パッキンヘッド32に対向する、タービンロータ径が小さくなる下流端11bに貫通する。この場合、軸方向通路91の出口91aは、封止部材93で封止されている。
【0171】
なお、軸方向通路91は、導入通路90から低圧冷却媒体が導入され、かつ各排出通路92に冷却媒体を導ける範囲に形成されていればよい。
【0172】
排出通路92は、
図7および
図10に示すように低圧側タービン段落に対応して形成される。ここでは、排出通路92は、第3段のタービン段落および第4段のタービン段落に対応する軸方向位置に形成されている。
【0173】
排出通路92は、軸方向通路91からロータ胴部11の外周面11aに貫通する貫通孔で構成される。排出通路92は、ロータ胴部11の外周面11aに出口92aを有する。排出通路92は、軸方向通路91と空間45とを連通させる。
【0174】
そして、空間36に導かれた冷却媒体の高圧冷却媒体としての作用、および空間56に導かれた冷却媒体の低圧冷却媒体としての作用は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0175】
上記した第2の実施の形態のタービンロータ10Bによれば、異なる圧力の冷却媒体が導入される高圧冷却通路13Aと低圧冷却通路13Bとを備える。この高圧冷却通路13Aと低圧冷却通路13Bとを備えることによる効果は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0176】
(第2の実施の形態の他の形態)
図11は、第2の実施の形態の他の形態のタービンロータ10Bにおける、
図7のC-C断面に相当する断面を示す図である。
図12は、第2の実施の形態の他の形態のタービンロータ10Bにおける、
図7のD-D断面に相当する断面を示す図である。
図13は、第2の実施の形態の他の形態のタービンロータ10Bにおける、
図7のE-E断面に相当する断面を示す図である。なお、
図11~
図13は、タービンロータ10Bの中心軸Oに垂直な断面である。
【0177】
この他の形態のタービンロータ10Bでは、高圧冷却通路13Aにおける軸方向通路81の構成の他の一例を示す。
【0178】
図11、
図12および
図13に示すように、軸方向通路81を複数の通路で構成してもよい。具体的には、軸方向通路81は、ロータ胴部11の、タービンロータ10Bの中心軸Oよりも半径方向外側かつロータ胴部11の外周面11aよりも半径方向内側に、軸方向に形成されてもよい。すなわち、軸方向通路81は、中心軸Oとロータ胴部11の外周面11aとの間に形成されている。
【0179】
ここでは、軸方向通路81は、低圧冷却通路13Bの軸方向通路91が形成された同一円周R上に、軸方向通路91に対して周方向にずらして均等配置されている。また、この場合、軸方向通路81および軸方向通路91は、同一円周R上に均等配置されている。
【0180】
なお、軸方向通路81の配置構成はこの構成に限られない。例えば、軸方向通路81は、同一円周Rとは異なる、中心軸Oを中心とする同一円周上に均等配置されてもよい。
【0181】
このように、高圧冷却通路13Aにおいて複数の軸方向通路81を備えるタービンロータ10Bにおいても、上記した第2の実施の形態のタービンロータ10Bの作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0182】
また、複数の軸方向通路81、91を中心軸Oを中心とする任意の同一円周上に均等配置したタービンロータ10Bでは、中心軸Oを中心軸とする軸方向通路を有するタービンロータよりも、軸方向通路の内壁部生じる接線応力(せん断応力)を小さくすることができる。
【0183】
また、複数の軸方向通路81、91を中心軸Oを中心とする任意の同一円周上に均等配置することで、タービンロータ10Bが回転した際、ロータ軸系安定性を確保することができる。
【0184】
ここで、第2の実施の形態のタービンロータ10Bを備えた軸流タービン1においても、
図6に示したように、外部ケーシング30を貫通し、高圧側グランドシール部に形成された空間56に軸流タービン1の外部から冷却媒体を導入する冷却媒体導入管38を備えてもよい。なお、この冷却媒体導入管38を備えることによる作用効果は、前述したとおりである。
【0185】
以上説明した実施形態によれば、タービンロータを冷却した冷却媒体を適正な圧力で各タービン段落に供給することが可能となる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0187】
1…軸流タービン、10A、10B…タービンロータ、11…ロータ胴部、11a…外周面、11b…下流端、12…タービンディスク、13…冷却構造部、13A…高圧冷却通路、13B…低圧冷却通路、30…外部ケーシング、31…内部ケーシング、32…パッキンヘッド、33a、33b、33c…グランドシール部、34、36、45、56…空間、35…貫通口、36a…上流端、38…冷却媒体導入管、38a、81a、82a、91a、92a…出口、40…外側シュラウド、41…内側シュラウド、42…静翼、43…遮熱ピース、44…シール部、50…動翼、51…シュラウドセグメント、55…作動流体流路、60…トランジションピース、70…冷却媒体供給管、75…排気室、80、90…導入通路、80a、90a…入口、81、91…軸方向通路、82、92…排出通路、83、93…封止部材。