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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】蓄電制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240401BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240401BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240401BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240401BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38
H02J3/46
H02J7/34 D
H02J13/00 311E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020107185
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022002457
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 行生
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修司
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-173570(JP,A)
【文献】特開2013-212044(JP,A)
【文献】特開2001-037085(JP,A)
【文献】特開平04-236132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 7/34
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電指令値に対して、発電機とともに電力系統に電力を供給可能な蓄電池と、
前記充放電指令値を取得する指令取得部と、
前記蓄電池の蓄電率が所定値を超える場合に前記発電機による発電を停止する発電停止信号を前記発電機に出力し、前記所定値以下の場合に前記発電機による発電を実行する発電実行信号を前記発電機に出力する発電制御部と、
前記発電機が発電する実電力値を取得する実電力取得部と、
前記充放電指令値と前記実電力値との差分に基づき、前記充放電指令値を満たすための充放電を前記蓄電池に実行させる蓄電池制御信号を出力する蓄電制御部と、
を備える、蓄電制御システム。
【請求項2】
前記発電制御部は、前記所定値として、前記発電機による発電を実行させる場合に第1閾値を設定し、前記発電機による発電を停止させる場合に前記第1閾値より高い第2閾値を設定する、請求項1に記載の蓄電制御システム。
【請求項3】
前記発電制御部は、前記発電機に発電させる場合、前記蓄電池の前記蓄電率が前記所定値以下であり、かつ、前記充放電指令値が放電する旨の値のときに、当該値に追従して前記発電機による発電を実行させる前記発電実行信号を出力する、請求項1または請求項2に記載の蓄電制御システム。
【請求項4】
前記発電制御部は、前記発電機に発電させる場合、前記蓄電池の前記蓄電率が前記所定値以下の場合、前記発電機を最大効率運転で実行させる前記発電実行信号を出力する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統の電力需給の均等化を維持するため需給制御が行われている。例えば、定格周波数に対して許容偏差内となるように周波数制御が行われ、周波数の変動が抑制される。電力系統の周波数調整は、例えば、数十分以上の周期(長周期)で変動する負荷調整を分担する経済負荷配分制御と、それ以下の周期(短周期)で変動する負荷調整を分担する負荷周波数制御等を組合せて行われている。この負荷周波数制御では、ガスタービンや蒸気タービン及び水力発電等の発電機の出力制御や、蓄電池(二次電池)の充放電制御により周波数を定格周波数に維持するように制御し、短周期の周波数の変動を抑制している。
【0003】
発電機と蓄電池を使った短周期の周波数変動抑制として、例えば、系統周波数から算出された目標出力に対して蓄電池の充電率(SOC:State Of Charge)に応じて蓄電池の出力の割合となる寄与率を決定する。そして、その寄与率に基づいて蓄電池を含む蓄電池システムの充放電量を制御し、かつ寄与率に基づいて発電機の出力を制御し、電力系統の周波数と基準周波数との差を抑制する制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-82679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術の場合、蓄電池の充電率(SOC)から蓄電池の充放電電力と発電機の出力の割合を決定するため、発電機の応答遅れを寄与率に反映できるような時間当たりの出力変化が遅い目標出力(例えば出力変化が90秒程度)であれば、蓄電池の充放電電力と発電機の出力を目標出力に追従させることができる。しかしながら、発電機の応答遅れが寄与率に反映できないような時間当たりの出力変化が速い目標出力(例えば出力変化が10秒未満)の場合、発電機の出力を目標出力に追従させることができずに、目標出力と実際の出力が乖離してしまうことがあるという問題があった。したがって、時間当たりの出力変化が速い目標出力が要求された場合でも、その目標出力と実際の出力との乖離が抑制できる蓄電制御システムが提供できれば、利用者の要求を満たす高品質の電力供給サービスが実現できて有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる蓄電制御システムは、蓄電池と、指令取得部と、発電制御部と、実電力取得部と、蓄電制御部と、を備える。蓄電池は、充放電指令値に対して、発電機とともに電力系統に電力を供給可能である。指令取得部は、充放電指令値を取得する。発電制御部は、蓄電池の蓄電率が所定値を超える場合に発電機による発電を停止する発電停止信号を発電機に出力し、所定値以下の場合に発電機による発電を実行する発電実行信号を発電機に出力する。実電力取得部は、発電機が発電する実電力値を取得する。蓄電制御部は、充放電指令値と実電力値との差分に基づき、充放電指令値を満たすための充放電を蓄電池に実行させる蓄電池制御信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態にかかる蓄電制御システムの構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる蓄電制御システムの制御部の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる蓄電制御システムによる発電機および蓄電池の制御を示す例示的なフローチャートである。
図4図4は、第2、第3実施形態にかかる蓄電制御システムの制御部の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図5図5は、第4実施形態にかかる蓄電制御システムの制御部の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0009】
図1は、以下に示す各実施形態にかかる蓄電制御システム10の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0010】
蓄電制御システム10は、蓄電池12、制御部14等を備えている。蓄電制御システム10の蓄電池12には、発電機16が並列接続され、上位システム18から入力される充放電指令値S1にしたがい、商用電源20(電力系統)に所望の電力を出力する。なお、発電機16は、例えば、ガスタービンや蒸気タービンを用いた火力発電設備や水力発電設備等である。上位システム18は、例えば、電力供給者が操作、管理可能な制御装置で、電力の需給計画等にしたがい、蓄電制御システム10に対して、充放電指令値S1等を供給可能な管理システムである。
【0011】
本実施形態の蓄電制御システム10は、蓄電池12に発電機16を併設して、常時は蓄電池12が充放電指令値に従って充放電を行うが、蓄電池12の充電率(SOC)となるエネルギー残量が低減した場合に、発電機16を起動して蓄電池12の残エネルギー量を回復することで、蓄電池12の容量を減らしたまま充放電指令値S1に追従した電力調整を可能にしている。
【0012】
図1に示されるように、蓄電池12の出力線E1と発電機16の出力線E2とは、並列に商用電源20の電力線Eに接続されている。例えば、蓄電池12がA(kW)を放電し、発電機16がB(kW)を発電すると、電力線Eを介して商用電源20にはA+B(kW)の電力が出力される。また、例えば、蓄電池12がA(kW)で充電し、発電機16がA(kW)で発電すると、商用電源20は、(A-A)=0(kW)の電力が出力されることになる。つまり、商用電源20から見るとあたかも蓄電制御システム10が運転を停止しているように見える。
【0013】
このように構成される蓄電制御システム10において、蓄電池12には、自装置のエネルギー残量(充電率)を示すSOC情報S2を制御部14に常時送信している。一般にSOCは、0%で完全放電状態を示し、100%で満充電状態を示すことが多い。なお、蓄電池12の充電率は、電流積算値(Ah)や電力積算値(Wh)等で表示される場合もある。
【0014】
また、発電機16の出力線E2上には、電流検出部22および電圧検出部24が配置されている。電流検出部22は、発電機16が発電している際に出力線E2に流れる電流値S3を測定し、制御部14に逐次提供している。同様に、電圧検出部24は、発電機16が発電している際の出力線E2における電圧値S4を測定し、制御部14に逐次提供している。制御部14では、電流検出部22から提供された電流値S3と、電圧検出部24から提供された電圧値S4とに基づき、発電機16の発電電力(実電力値)を取得している。
【0015】
したがって、制御部14は、電流値S3および電圧値S4に基づく発電機16の実電力値およびSOC情報S2に基づく蓄電池12の放電可能電力を演算する。そして、制御部14は、上位システム18から提供される充放電指令値S1に対する蓄電池12の充放電状態を制御する蓄電池制御信号S5と発電機16の発電状態を制御する発電制御信号S6を出力する。以下に示す各実施形態では、制御部14の構成が異なる。各実施形態を図2図5を用いて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図2は、蓄電制御システム10における第1実施形態の制御部14の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0017】
制御部14は、主として、指令取得部26、発電制御部28、実電力取得部30、蓄電制御部32等を含む。
【0018】
指令取得部26は、上位システム18から入力される充放電指令値S1を取得し、発電制御部28および蓄電制御部32に提供する。
【0019】
発電制御部28は、判定回路28a、運転信号発生回路28b、状態演算回路28c、リミット回路28d等の詳細回路を備える。
【0020】
判定回路28aは、蓄電池12から提供されるSOC情報S2が入力されると、蓄電池12の充電状態が、予め設定されたSOC閾値V以下の場合、発電機16の起動を許可する許可切替信号(例えば、フラグ「1」の信号)を出力する。また、蓄電池12の充電状態が、SOC閾値Vを超えている場合、発電機16を停止する停止切替信号(例えば、フラグ「0」の信号)を出力する。この切替信号S7(許可切替信号、停止切替信号)は、状態演算回路28cに提供される。状態演算回路28cは、許可切替信号が入力されると、スイッチを「1」側に切り替え、上位システム18から入力される充放電指令値S1を発電機16に対する指令値として出力する。一方、状態演算回路28cは、停止切替信号が入力されると、スイッチを「0」側に切り替え、運転信号発生回路28bが発生する停止信号S8を受け付け、発電機16に対する指令値として出力する。なお、発電機16は、発電運転はできるが、充電動作ができない。したがって、状態演算回路28cから出力される充放電指令値S1の充電側に関する指令を、リミット回路28dでカットして発電に関する指令値のみを発電制御信号S6として発電機16に出力する。
【0021】
このように、発電制御部28は、蓄電池12のSOC情報S2に基づきSOC(蓄電率)が所定値(SOC閾値V)を超える場合(蓄電池12が十分に充電されている場合)に発電機16による発電を停止する発電停止信号を発電機16に出力する。また、発電制御部28は、SOCが所定値以下の場合(蓄電池12の充電が十分でない場合、または充電の余裕がある場合)に発電機16による発電を実行する発電実行信号を発電機16に出力する。
【0022】
ところで、一般に発電機16に発電制御信号S6を提供しても、瞬時に発電出力の増減はできず、なだらかな増減変化を示す。つまり、発電制御信号S6に対して、発電機16は出力の応答遅れが存在する。また、上述したように、発電機16は、充電指令に対して充電動作できないことから充放電指令値S1と発電機16の出力との間には差異が生じる。
【0023】
そこで、蓄電制御システム10の蓄電制御部32は、充放電指令値S1と発電機16が実際に発電している実電力値S9との差分に基づき、充放電指令値S1を満たすための充放電を蓄電池12に実行させる蓄電池制御信号S5を出力する。
【0024】
具体的には、実電力取得部30は、電力演算部30aを含み、電流検出部22から提供されるS3と電圧検出部24から提供されるS4に基づき、実際に発電機16が発電し出力している電力値を算出し、蓄電制御部32に対して実電力値S9として出力する。
【0025】
蓄電制御部32は、減算回路32aを含む。減算回路32aは、指令取得部26から提供される充放電指令値S1から実電力取得部30から提供される実電力値S9を減算し、蓄電池12が放電制御または充電制御のいずれを行うか、また、放電する場合の放電量、充電する場合の充電量等を示す蓄電池制御信号S5を蓄電池12に出力する。
【0026】
蓄電池12は、一般に1000分の1秒(ms)の時間オーダーで充放電指令値S1に追従できるため、発電機16の実電力値S9と上位システム18の指示する充放電指令値S1の差は、蓄電池12の充放電動作で吸収できる。したがって、蓄電制御システム10全体としては、充放電指令値S1に従って高速に充放電動作を行っているように動作させることができる。また蓄電池12のSOCが高くなると発電機16の発電運転を停止するので、蓄電制御システム10としてのエネルギー蓄積量を減らす効果を得ることができる。例えば、次の制御タイミングで、充放電指令値S1に基づく電力供給を行う場合に、発電機16の発電量を充放電指令値S1に追従させられるように、蓄電池12に充電を許容する余裕を形成しておくことができる。つまり、スムーズな蓄電池12の充放電を実現することができる。
【0027】
図3は、第1実施形態の蓄電制御システム10による発電機16および蓄電池12の制御を示す例示的なフローチャートである。
【0028】
蓄電制御システム10が動作している場合、制御部14の発電制御部28の判定回路28aは、蓄電池12から提供されるSOC情報S2を逐次取得し(S100)、取得したSOC情報S2と予め設定されたSOC閾値Vとの比較を行い(S102)、蓄電池12の蓄電状態を常時監視する。
【0029】
そして、判定回路28aは、取得したSOC情報S2と予め設定されたSOC閾値Vとの比較の結果、現在のSOCが、SOC閾値V以下(SOC≦閾値V)の場合(S102のYes)、発電機16の起動を許可する許可切替信号「1」を出力する(S104)。また、蓄電池12の充電状態が、SOC閾値Vを超えている場合(S102のNo)、発電機16を停止する停止切替信号「0」を出力する(S106)。
【0030】
そして、状態演算回路28cは、許可切替信号を取得した場合、つまり、発電機16の起動許可の場合(S108のYes)、指令取得部26を介して入力された充放電指令値S1をリミット回路28dに出力し、充放電指令値S1の充電側に関する指令をカットして発電指令値のみを発電制御信号S6として発電機16に出力する(S110)。つまり、発電機16による発電を開始させる制御信号を出力する。
【0031】
一方、S108において、許可切替信号を取得しなかった場合、つまり、停止切替信号を取得した場合(S108のNo)、状態演算回路28cは、運転信号発生回路28bが発生する停止信号S8を受け付け、発電機16に対する指令値「0」を出力する(S112)。つまり、発電機16による発電を停止させる制御信号を出力する。
【0032】
続いて、実電力取得部30は、電流検出部22から提供される電流値S3と電圧検出部24から提供される電圧値S4とを取得し(S114)、現在発電機16が発電している実際に出力している実電力値S9を算出し(S116)、蓄電制御部32に提供する。
【0033】
蓄電制御部32では、指令取得部26を介して入力される充放電指令値S1と、実電力取得部30を介して入力される実電力値S9との差分を算出する(S118)。蓄電制御部32は、その算出結果を蓄電池12の蓄電池制御信号S5として、蓄電池12に出力し(S120)、今回の充放電指令値S1の入力に基づく蓄電制御システム10による発電機16および蓄電池12の制御を一旦終了する。つまり、充放電指令値S1に基づく蓄電池12と発電機16との出力が、商用電源20に提供されて、充放電指令値S1に追従した正確な電力供給を実現することができる。
【0034】
このように、第1実施形態の蓄電制御システム10(制御部14)によれば、蓄電池12に発電機16を併設して、常時は蓄電池12が充放電指令値に従って充放電を行うが、蓄電池12の充電率(SOC)となるエネルギー残量が低減した場合に、発電機16を起動して蓄電池12の残エネルギー量を回復する。その結果、蓄電池12の容量を減らしたまま充放電指令値S1に追従した電力調整を可能にすることができる。そして、例えば、時間当たりの出力変化が速い目標出力が要求された場合でも、その目標出力と実際に出力との乖離が抑制できる蓄電制御システムが提供できる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、蓄電制御システム10における第2実施形態を、図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態の制御部14Aの構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。なお、図2に示す制御部14の構成と図4に示す制御部14Aの構成は、制御部14の判定回路28aに対して、制御部14Aの判定回路28a1が異なるのみで、他の構成は実質的に同じである。したがって、図2図4とでは、同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0036】
図4における制御部14Aに含まれる判定回路28a1は、ヒステリシス特性付判定回路である。発電制御部28の判定回路28a1は、蓄電池12のSOC(充電率)で発電機16の起動と停止を判定する際に用いる所定値としてのSOC閾値について、第1閾値と第2閾値とを設定している。第1閾値は、発電機16による発電を実行させる場合に参照する閾値である。また、第2閾値は、発電機16による発電を停止させる場合に参照する第1閾値より高い閾値である。
【0037】
例えば、図2の判定回路28aのように、起動と停止のSOC閾値Vが同じSOCの場合(例えば20%の場合)、発電機16が発電運転して蓄電池12のSOCが20%に到達すると、判定回路28aからは、発電機16の停止を指示する停止切替信号(フラグ「0」)が出力され、発電機16による発電が停止される。この場合、充放電指令値S1に基づき商用電源20への電力出力を継続していれば、発電機16が発電運転を停止したことで、蓄電池12のSOCがすぐに20%以下になってしまう場合がある。その結果、判定回路28aにおいて、発電機16の起動を指示する許可切替信号(フラグ「1」)がすぐに出力されて、再び発電機16が発電運転して蓄電池12のSOCが20%に到達する。その結果、判定回路28aから発電機16の停止を指示する停止切替信号(フラグ「0」)が再び出力されることになる。つまり、発電機16が起動と停止を頻繁に繰り返す、いわゆる、「チャタリング事象」が発生してしまう場合がある。
【0038】
そこで、発電機16に発電を実行させる(許可する)SOC閾値V1(第1閾値)を、例えば15%に設定し、発電機16の発電を停止するSOC閾値V2(第2閾値)を、例えば25%に設定する。その結果、発電機16が運転していて蓄電池12のSOCが25%に到達すると、判定回路28a1から停止切替信号(フラグ「0」)が出力され、発電機16は運転を停止する。一方、発電機16が運転を停止したことで蓄電池12のSOCが低下する場合でも、SOC15%になるまで、判定回路28a1からは発電機16の起動を指示する許可切替信号(フラグ「1」)は出力されない。つまり、一つのSOC閾値Vを設定している場合に比べて、起動と停止の間隔が広くなり、切替動作が頻繁に繰り返されることを抑制することができる。
【0039】
このように第2実施形態の蓄電制御システム10(制御部14A)によれば、蓄電制御システム10全体としては、充放電指令値S1に従って高速に充放電動作を行っているように動作させることができるとともに、頻繁に発電機16の起動、停止が繰り返される不自然な挙動が生じることを抑制することができる。
【0040】
<第3実施形態>
次に、蓄電制御システム10における第3実施形態を、第2実施形態の説明で用いた図4を流用し説明する。したがって、第3実施形態においても、既に説明した構成に関しては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
発電制御部28は、発電機16に発電させる場合、蓄電池12のSOCが所定値(SOC閾値V1)以下であり、かつ、充放電指令値S1が放電する旨の値のときに、当該値に追従して発電機16による発電を実行させる発電実行信号を出力する。
【0042】
具体的には、図4において、発電制御部28の状態演算回路28cに、指令取得部26を介して充放電指令値S1が入力され、蓄電池12の蓄電状態を示すSOC情報S2に基づき、判定回路28a1で発電機16を起動許可と判断する許可切替信号(切替信号S7)が出力されている場合を考える。この場合、蓄電池12のSOCが所定値(SOC閾値V1)以下、つまり、発電機16に発電させる場合は、状態演算回路28cは、充放電指令値S1を追従するように制御信号として充放電指令値S1を出力する。この場合、リミット回路28dにおいて充電側の指令値がカットされ、充放電指令値S1の放電信号を追従するような発電制御信号S6を発電機16に出力し、当該発電機16の発電運転を実行させる。
【0043】
このように第3実施形態の蓄電制御システム10(制御部14A)によれば、蓄電池12は、当該蓄電池12のエネルギー残量が低下して、発電機16が起動したときには、充放電指令値S1と発電機16の実電力値S9の差分の電力を充放電することになる。その結果、過度な発電機16の起動、停止を回避して、かつ蓄電池12の容量を最低限として充放電指令値S1に追従した電力調整が可能となる。なお、この構成は、図2に示す制御部14にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0044】
<第4実施形態>
次に、蓄電制御システム10における第4実施形態を、図5を用いて説明する。図5は、第4実施形態の制御部14Bの構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。なお、図4に示す制御部14Aの構成と図5に示す制御部14Bの構成の異なる点は、制御部14Bにおいて、指令取得部26を介して提供される充放電指令値S1が蓄電制御部32のみに入力される点と、発電機16に発電を実行させる場合に状態演算回路28cに提供される信号が異なる点、リミット回路28dが省略されている点等である。したがって、他の構成は、制御部14Aと制御部14Bとは実質的に同じであり、同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
第4実施形態の制御部14Bにおける、発電制御部28は、発電機16に発電させる場合、蓄電池12のSOCが所定値(SOC閾値V1)以下の場合、発電機16を最大効率運転で実行させるような最大効率信号S10を出力する。
【0046】
最大効率信号S10は、発電機16の発電効率が最も高い運転点となる出力を示すものである。一般に、発電機16の発電電力が定格出力に近いほど発電効率は高くなる。つまり、発電機16が起動した場合は、運転信号発生回路28bは、最大効率となる最大効率信号S10を出力して、発電機16を運転する。つまり、最大効率以外で発電機16の運転は行われない。なお、この場合、状態演算回路28cから出力される制御信号には充電側の指令値は含まれないので、制御部14Aに含まれるリミット回路28dは省略することが可能で、システムの簡略化もできる。一方、判定回路28a1で蓄電池12のSOCが停止閾値(SOC閾値V2)を超えて、充分な充電ができたと判断して停止切替信号(切替信号S7)が出力された場合、運転信号発生回路28bは、停止信号を出力する。
【0047】
このように、第4実施形態の蓄電制御システム10によれば、発電機16は最も高い効率でのみ発電することができ、発電効率を向上することができる。その結果、例えば、発電燃料の削減等に寄与可能となり、蓄電制御システム10全体の損失を低減することが可能となる。なお、この構成は、図2に示す制御部14にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、上述の各実施形態では、発電機16として、ガスタービンや蒸気タービン及び水力発電等の発電システムを示したが、これに加えて、燃料電池等でも適用可能であり、同様に効果を得ることができる。また、蓄電池12は、一般に二次電池で構成されることが多いが、電気二重層キャパシタなどの高速な充放電に追従可能な蓄電手段であれば、必ずしも二次電池である必要はない。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 蓄電制御システム
12 蓄電池
14,14A,14B 制御部
16 発電機
18 上位システム
20 商用電源
22 電流検出部
24 電圧検出部
26 指令取得部
28 発電制御部
28a,28a1 判定回路
28b 運転信号発生回路
28c 状態演算回路
28d リミット回路
30 実電力取得部
30a 電力演算部
32 蓄電制御部
32a 減算回路
S1 充放電指令値
S2 SOC情報
S3 電流値
S4 電圧値
S5 蓄電池制御信号
S6 発電制御信号
S7 切替信号
S8 停止信号
S9 実電力値
S10 最大効率信号
図1
図2
図3
図4
図5