(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】液体回収装置および液体回収充填システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240401BHJP
B65D 25/42 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B65D25/42 B
(21)【出願番号】P 2020108914
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019139477
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】楠城 達雄
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勇治
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-039262(JP,A)
【文献】特開2002-307702(JP,A)
【文献】特開2018-104006(JP,A)
【文献】特開2011-073770(JP,A)
【文献】特開2000-190520(JP,A)
【文献】米国特許第6172695(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65D 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する貯蔵部と前記貯蔵部に液体を充填可能な流路部材とを備えた液体容器に接続され、前記貯蔵部に貯蔵された液体を回収する液体回収装置であって、
弾性復元力を有し、外部と連通する第1及び第2の開口を備えたボトル本体と、
前記第1の開口を介して前記ボトル本体に接続されるとともに、前記流路部材に連結される第1の連結部を備えた回収ジョイント部であって、前記第1の開口と前記第1の連結部との間を延びる内部流路を備え、前記内部流路は絞り部と、前記第1の開口と前記絞り部との間に形成される空間とを備えた回収ジョイント部と、
前記空間に液体の流通方向に可動に設置され、前記第1の開口の開口面積及び前記絞り部の開口面積よりも面積の大きい第1の弁体と、を有する、液体回収装置。
【請求項2】
前記流路部材は、空気が流通する空気流路と液体が流通する液体流路とを有し、前記第1の連結部に前記流路部材が連結されるとき、前記空気流路を閉塞し前記液体流路を開放する部材をさらに有する、請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項3】
前記部材は前記内部流路の中心軸に対して傾斜して設けられたOリングであり、前記空気流路の前記内部流路に開口する開口と前記液体流路の前記内部流路に開口する開口は、前記中心軸の方向において同じ位置にある、請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
前記空気流路は、前記貯蔵部の上方から前記貯蔵部の上部まで延在しており、前記液体流路は、前記貯蔵部の上方から前記貯蔵部の底部の近傍まで延在している、請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項5】
前記第2の開口を閉塞または開放する第2の弁体をさらに備え、前記第2の弁体は、前記ボトル本体に押圧力が加わると前記第2の開口を開放し、前記押圧力が取り除かれると前記第2の開口を閉塞する、請求項1から4の何れか1項に記載の液体回収装置。
【請求項6】
前記ボトル本体の前記第2の開口の周囲に設けられ、前記ボトル本体とともに前記第2の弁体を収容する空間を形成する弁体収容部を有し、前記弁体収容部は前記空間に連通する第3の開口を備え、前記第2の弁体は前記第2の開口と前記第3の開口とを結ぶ方向に可動に設置され、前記第2の開口の開口面積及び前記第3の開口の開口面積よりも面積が大きい、請求項5に記載の液体回収装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の液体回収装置と、
前記液体容器に液体を充填する際、前記回収ジョイント部に代えて前記ボトル本体に着脱可能に接続される充填ジョイント部と、を有し、
前記回収ジョイント部は前記ボトル本体に着脱可能であり、
前記充填ジョイント部は前記流路部材に連結される第2の連結部を備え、前記第2の連結部は、前記流路部材を挿入可能なシール部材を備える、液体回収充填システム。
【請求項8】
前記回収ジョイント部と前記充填ジョイント部を前記ボトル本体に接続する際の位置を定める規制部材をさらに備える、請求項7に記載の液体回収充填システム。
【請求項9】
前記規制部材は、前記回収ジョイント部と前記充填ジョイント部の外周面にそれぞれ設けられたフランジと、前記ボトル本体の上面から立ち上がり、前記フランジと当接する頂面を備える円周壁とを有する、請求項8に記載の液体回収充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置および液体回収充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置の一例として、いわゆるオフキャリッジ方式(チューブ方式ともいう。)と称されるインクジェットプリンタが知られている。オフキャリッジ方式のインクジェットプリンタでは、基本構造としてキャリッジにサブタンクを備えた記録ヘッドが搭載されており、画像形成装置本体側に液体タンクが据え置き配置されている。そして、記録ヘッド(サブタンク)と液体タンクとがチューブによって連結され、チューブを介したインクの供給がなされる。一般に画像形成装置は、所定の場所に設置されて使用される。しかし、使用開始後に、レイアウト変更や引っ越しなどの理由によって設置場所の移動(以下、このような移動を二次移動という。)が必要となる場合がある。オフキャリッジ方式のインクジェットプリンタでは、液体タンク内に大量の液体が充填された状態で二次移動が行われると、液体タンク自体や、記録ヘッドに液体を供給するチューブの接続箇所等から液体が漏れる可能性がある。液体の漏れを確実に防止するためには、液体タンクを空にして移動することが望まれる。
特開2007-313829号公報には、メインタンクの重力方向下方に位置するサブタンク内の液体を回収するための方法が開示されている。具体的には、液体回収用チューブをサブタンクよりも重力方向下方に位置する液体回収容器に接続し、水頭差によってサブタンク内の液体を液体回収容器に回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2007-313829号公報に記載の技術において、液体回収用チューブと液体回収容器の接続が不完全である場合、サブタンク内の液体の十分な回収が行えない状態が発生し得、その場合にはサブタンク内の液体が残存することになり、二次移動の際の液体漏れを完全に抑制することが難しい。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みて、液体を回収する際の液体の漏れをより確実に抑制して、サブタンク内の残存した液体を最小限にして安全な二次移動ができる液体回収装置及び液体回収充填システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体回収装置は、液体を貯蔵する貯蔵部と前記貯蔵部に液体を充填可能な流路部材とを備えた液体容器に接続され、前記貯蔵部に貯蔵された液体を回収する液体回収装置であって、弾性復元力を有し、外部と連通する第1及び第2の開口を備えたボトル本体と、前記第1の開口を介して前記ボトル本体に接続されるとともに、前記流路部材に連結される第1の連結部を備えた回収ジョイント部であって、前記第1の開口と前記第1の連結部との間を延びる内部流路を備え、前記内部流路は絞り部と、前記第1の開口と前記絞り部との間に形成される空間とを備えた回収ジョイント部と、前記空間に液体の流通方向に可動に設置され、前記第1の開口の開口面積及び前記絞り部の開口面積よりも面積の大きい第1の弁体と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体を回収する際の液体の漏れをより確実に抑制することができる液体回収装置及び液体回収充填システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】画像形成装置の外観を模式的に表す正面図である。
【
図2】画像形成装置の前カバーとタンクカバーを開けたときの外観を模式的に表す正面図である。
【
図3】画像形成装置の液体供給系を模式的に表す図である。
【
図4】メインタンクに液体を充填する液体充填ボトルの断面を模式的に表す図である。
【
図5】メインタンクに液体を充填する液体充填ボトルの上面を模式的に表す図である。
【
図6】メインタンクに液体充填ボトルを装着し液体を充填する状態を説明する模式図である。
【
図7】第1実施形態の液体回収ボトルの断面を、模式的に表して説明する図である。
【
図8】液体回収ボトルをメインタンクに装着し液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図9】液体回収ボトルの側面を押し潰してメインタンクから液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図10】側面が押し潰された液体回収ボトルが元の大きさに戻って液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図11】第2実施形態の液体回収ボトルの断面を、模式的に表して説明する図である。
【
図12】液体回収ボトルをメインタンクに装着し液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図13】液体回収ボトルの側面を押し潰してメインタンクから液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図14】側面が押し潰された液体回収ボトルが元の大きさに戻って液体を回収する状態を説明する模式図である。
【
図15】液体充填ジョイント部が装着された液体ボトルと液体回収ジョイント部の断面を表す模式図である。
【
図16】液体回収ジョイント部が装着された液体ボトルと液体充填ジョイント部と栓の断面を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における液体回収装置について説明する。以下説明する各実施形態では、液体の一例であるインクを吐出する記録ヘッドを搭載するインクジェット記録装置に使用される液体回収装置について具体的な構成を用いて説明する。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。本発明の液体回収装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置にも適用可能である。本発明の液体回収装置は、例えば、バイオチップ製造装置や電子回路印刷などの用途としても用いることができる。
【0010】
また、以下に述べる実施形態は、本発明を適用した一実施形態であるから、技術的に好ましい様々な限定が付されている。しかしながら、本発明の技術的思想に沿うものであれば、本発明は、本明細書における実施形態やその他の具体的方法に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中同一の番号を付与し、重複する部分についての説明は省略する。
【0011】
(インクジェット記録装置)
本発明の実施形態における液体回収装置について説明する前に、液体回収装置を使用するインクジェット記録装置について、
図1、
図2を用いて簡単に説明する。
図1は、インクジェット記録装置100の外観を、排紙部110側から見た正面図を模式的に表したものである。
図2は、
図1のインクジェット記録装置100から、前カバー140とインクタンクカバー131とを開けたときのインクジェット記録装置100の外観を、排紙部110側から見た正面図を模式的に表したものである。
【0012】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、少なくとも、メインタンク132(貯蔵部)と、メインタンクカバー131と、前カバー140と、排紙部110とを備えている。メインタンク132は、後述するカートリッジ200(
図3)に充填するインクを貯蔵する液体容器である。インクジェット記録装置100を使用して画像形成を行う際、通常、メインタンクカバー131は、
図1に示すように閉じた状態にある。インクジェット記録装置100の正面の前カバー140は、インクジェット記録装置100の筐体の一部を構成する。前カバー140は、通常の使用状態では閉められ、インクジェット記録装置100に何らかの異常(インクカートリッジの交換、用紙詰まりなど)が発生したときに開けられる。インクジェット記録装置100の正面の下部に設けられた排紙部110は、画像形成された用紙をインクジェット記録装置100の外部に排出するものである。
図1の場合、画像形成された用紙は、
図1から手前に飛び出る方向に排出される。なお、本説明において、記録媒体として紙を一例に挙げて説明を行っているが、記録媒体は紙に限定されない。
【0013】
図2に示すように、インクジェット記録装置100は、内部に、記録媒体に画像を形成するため主走査方向(
図2の左右方向)に往復走査するキャリッジ121と、キャリッジ121に装着され、記録ヘッド211(
図3)に対してインクを供給するインクカートリッジ200と、を少なくとも備えている。インクカートリッジ200が画像形成に使用するインクは、インクジェット記録装置100の本体左側(
図1、
図2の右側)に設けられているメインタンク132に充填されている。そして、メインタンク132とインクカートリッジ200とはチューブ150によって連結されている。
【0014】
図2では、前カバー140を矢印で示すように手前方向に引いて開いており、メインタンクカバー131を矢印で示すように反時計方向に回転させて開いている。
図2では、キャリッジ121には、ブラック用のインクカートリッジ201と、シアン・マゼンタ・イエローの3色からなるカラー用のインクカートリッジ202とが装着されている。なお、
図2では、カラー用のインクカートリッジ202が1個のインクカートリッジからなる場合について例示しているが、カラー用のインクカートリッジ202が、シアン用、マゼンタ用、およびイエロー用の異なるカートリッジから構成されていてもよい。
図2に示すインクジェット記録装置100の場合、キャリッジ200が
図2の左右方向に往復走査し、記録ヘッド211(
図3)からインクが吐出されることで、用紙を一例とする記録媒体上に画像を形成し、排紙部110から記録媒体が排出される。記録ヘッド211に対するインクの供給方法およびメインタンク132に対するインクの充填方法については後述する。
【0015】
次に、インクジェット記録装置100を構成する各部について
図3を用いて詳細に説明する。
図3は、インクジェット記録装置100が画像を形成していない待機中のインク供給系の状態を示している。なお、
図3では、ブラック用のインクカートリッジ201にメインタンク132からインクが供給される場合について説明を行っているが、カラー用のインクカートリッジ202にメインタンク132からインクが供給される場合についても同様である。以下では総称的にインクカートリッジ200と表記する。
【0016】
(インクカートリッジ)
インクを吐出する記録ヘッド211に、インクカートリッジ200が装着されている。インクカートリッジ200の内部には、インクを吸収する吸収体212が設けられている。吸収体212は、メインタンク132から供給されるインクを保持し、記録ヘッド211に対して負圧を発生している。これは、インクカートリッジ200を記録ヘッド211に装着する前に、記録ヘッド211からインクが漏れ出すことを防止するためである。インクカートリッジ200の上面部には蓋部材213が設けられており、蓋部材213とタンクケース214とが溶着されることでインクカートリッジ200の内部と外部との境界が定められている。
【0017】
蓋部材213にはインク導入口215が設けられている。インク導入口215は、チューブ150の一端側に設けられているジョイント部材160と連結されている。インク導入口215は、ジョイント部材160と連結する位置から所定長だけ下がった位置から筒状に延在している。インクジェット記録装置100によって画像が形成され、記録ヘッド211内のインクが消費されると、インク導入口215とジョイント部材160とが連結された状態で、チューブ150、ジョイント部材160を経由して、メインタンク132からインクカートリッジ200内にインクが充填される。
【0018】
(メインタンク)
インクを充填可能な内部空間を有するメインタンク132の底面端部には、メインタンク132の外部との連通部となる液体取出口133が設けられている。液体取出口133はチューブ150と連結されており、メインタンク132に充填されているインクは、液体取出口133からチューブ150に送出される。メインタンク132の上面部の右端には、メインタンク132内のインクが減少した分だけ大気中の空気を取り込む大気連通口134が設けられている。また、メインタンク132の上面部の中央には、インク充填パイプ170が設けられている。インク充填パイプ170は、空気流路171と液体流路172との2つの流路が形成されている流路部材の一例である。液体流路172は、メインタンク132の上面から底面近傍まで延在して形成されている。空気流路171は、メインタンク132の上面からメインタンク132の上方近傍まで延在して形成されている。インク充填パイプ170は、後述するインクボトル500(
図4)と連結されることにより、インクボトル500からメインタンク132にインクを充填する。インクボトル500からメインタンク132にインクを充填する方法については後述する。空気流路171と液体流路172は、インクジェット記録装置100による画像形成中および画像形成待機中は、ゴム栓136を用いて封止されている。
【0019】
(チューブ)
チューブ150は、メインタンク132からインクカートリッジ200までのインク経路を形成している。チューブ150の一端側はメインタンク132と連結され、他端側はジョイント部材160と連結されている。チューブ150は、エアバリア性および水蒸気バリア性が要求されているため、チューブ150の材質としては、本実施形態ではスチレン系エラストマを採用している。
【0020】
(インクカートリッジへのインク供給方法)
次に、インクカートリッジへのインク供給方法について説明する。
図3に示すように、メインタンク132のインクの液面は、記録ヘッド211の下面部に対して重力方向下方に位置している。メインタンク132の上面部の右端には、大気中の空気を取り込む大気連通口134が設けられていることから、メインタンク132の内部には大気圧が加わっている。これに対して、チューブ150内のインクには、
図3の双方向矢印Hで示した高さに相当する水頭差に伴い負圧が発生している。したがって、チューブ150内のインクがメインタンク132側へ向かう力と、吸収体212の毛管力との間の均衡が図られ、インクが記録ヘッド211から漏れ出ないようになっている。
【0021】
インクジェット記録装置100によって画像形成が行われ、記録ヘッド211からインクが吐出されると、インクカートリッジ200内のインク量は、吐出したインク量に相当する量だけ減少することになる。インクカートリッジ200内のインク量が減少すると、インクカートリッジ200内に加わる負圧はさらに高まる。そのため、負圧と吸収体212の毛管力とのバランスが崩れる。このバランスを維持するため、インク導入口215から、インクカートリッジ200内で減少したインク量に相当するインクがインクカートリッジ200内に供給(補給)され、インクカートリッジ200内の負圧が緩和される。この動作を繰り返すことにより、インクカートリッジ200に対するインクの供給が行われる。
【0022】
(メインタンクへのインク充填方法)
次に、メインタンク132に対するインクの充填方法について
図4から
図6を用いて説明する。
図4に示すように、インクボトル500は、ボトル容器510と、シール部材の一例であるジョイントゴム520と、キャップ530とから構成されている。メインタンク132にインクを充填する場合、インクボトル500からキャップ530を外し、インクボトル500の上下を逆にして、ジョイントゴム520が重力方向下方となるようにジョイントゴム520をメインタンク132のインク充填パイプ170と連結させる。
図5に示すように、ボトル容器510のジョイントゴム520にはアスタリスク形状のスリット(切れ目)521が形成されており、インク充填パイプ170を挿入可能である。スリット521は極めて細く形成されているため、メニスカス力が働き、容易にはインクボトル500内のインクは、スリット521を経由して下方向(メインタンク132側)に漏れ出ない。
【0023】
図6に示すように、メインタンク132のインク充填パイプ170とボトル容器510との連結は、メインタンク132のインク充填パイプ170が、ボトル容器510のジョイントゴム520のスリット521を押し開くようにスリット521内に挿入して行われる。この連結状態において、インク充填パイプ170とジョイントゴム520との間の隙間は小さいため、この隙間にもメニスカス力が働き、ボトル容器510からメインタンク132の外部へのインク漏れは生じない。このように、インクボトル500の上下を逆にした場合、およびボトル容器510とインク充填パイプ170とを連結した場合において、インクボトル500からインクは漏れない。ジョイントゴム520に形成するスリット521の形状として、
図5に示すようなアスタリスク形状が好ましいが、上述したメニスカス力が働き、インクボトル500からインク漏れが生じないのであれば、いかなる形状であってもよい。
【0024】
ボトル容器510とメインタンク132のインク充填パイプ170とを連結すると、
図6の矢印173に示すように、メインタンク132内の空気が、空気流路171を通ってインクボトル500内に流入する。そして、メインタンク132からインクボトル500に流入した空気量に相当するインクボトル500内のインクが、矢印174に示すように、液体流路172を通って下部開口176からメインタンク132内に流入する。このようなインク充填パイプ170を介した気体と液体とが入れ替わる気液交換供給が行われることによってメインタンク132にインクが充填される。
メインタンク132のインクの液面が、空気流路171の下部開口175の位置まで到達すると、空気流路171の下部開口175はインクで蓋をされた状態になる。そのため、メインタンク132からインクボトル500へ空気が移動できない状態になり、インクボトル500からメインタンク132に対するインクの充填が停止する。これにより、ユーザが意識することなくメインタンク132に対する所定量のインクの充填が完了する。
【0025】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態の液体回収装置の一例であるインク回収ボトルについて、
図7を用いて説明する。
図7は、インク回収ボトル600の断面図である。
【0026】
(インク回収ボトル)
図7に示すように、インク回収ボトル600は、円筒状のインク容器610と、キャップ660とから構成されている。インク容器610は、胴部611と底部613と、上面部614と、ジョイントユニット部615とを有している。ジョイントユニット部615には、ジョイント開口部612と、第4の開口651とが形成されている。ジョイント開口部612は、インク充填パイプ170を挿入する部分である。ジョイントユニット部615は、インク回収ボトル600とインク充填パイプ170とを連結する連結部である。ジョイント開口部612には、ゴム製のOリング620が設けられている。このOリング620は、水平方向に対して傾斜を付けた状態でジョイント開口部612に配置されている。
図7の場合、Oリング620の右側が斜め方向に下がる傾斜が付されている。これにより、インク回収ボトル600とメインタンク132とを連結した際、メインタンク132のインク充填パイプ170に設けられた空気流路171と液体流路172とのうち、空気流路171のみを閉塞することができる。この点については後述する。
なお、上述のOリングの配置は、インク充填パイプ170の空気流路171の上部開口177と液体流路172の上部開口178の高さ方向に関する位置が同じ位置にある場合に有効な構成である。例えば、インク充填パイプ170の空気流路171の上部開口177と液体流路172の上部開口178の高さ方向に関する位置が相違している場合には、インク回収が可能となるようにOリング620が空気流路171の上部開口177を閉鎖できるような位置に配置されていればどのような姿勢で配置されていてもよい。また、インク充填パイプ170の構造が本実施例の構造と相違する場合には、連結部分からのインク漏れを防止する封止用のOリングとは別に、インク回収が可能になるように空気流路171の上部開口177を閉鎖できる位置に封止用の部材を別途配置してもよい。
【0027】
ジョイントユニット部615のOリング620の下方には第4の開口651が設けられている。上面部614には第1の開口652が設けられている。第1の開口652とジョイントユニット部615との間には、両者間に延びる内部流路が形成されている。内部流路には、絞り部617と、第1の開口652と絞り部617との間に形成される空間618が存在する。これらの点については後述する。ジョイントユニット部615の底部には第1の開口652を閉塞する第1の弁体641が設けられている。第1の弁体641は、インクよりも比重が大きいプラスチック製であり、極めて薄い円板形状を有している。第1の弁体641は、後述するように、インクの流通方向に可動するように設けられている。第1の弁体641の面積を、第1の開口652の開口面積および上記した絞り部617の開口面積よりも大きくする。例えば、第1の弁体641の円板の直径を、第4の開口651の直径および第1の開口652の直径よりも大きくすることで、第1の弁体641が、ジョイント開口部612またはインク容器610内に入り込まないようにしている。底部613の中心には第2の開口653が設けられており、第2の開口653を介してボトル内とボトル外とが連通している。第2の開口653は栓630を用いて閉塞することが可能である。キャップ660は、ジョイントユニット部615の全体を覆うものであり、キャップ660の内側にネジ(スクリュー)を切ることによって、ジョイントユニット部615に対して着脱可能である。後述するように、メインタンク132からインクを回収した後、キャップ660を用いてジョイント開口部612を密封することが可能である。
【0028】
ここで、インク回収ボトル600の作製方法について簡単に説明する。まず、インク容器610の第1の開口652に、第1の開口652を閉塞する直径を有する第1の弁体641を第1の開口652の上に置く。そして、インク容器610の上面部614の中心にジョイントユニット部615の中心が一致するようにインク容器610にジョイントユニット部615を載置して接着する。最後に、ジョイント開口部612にOリング620を挿入する。ジョイント開口部612には、Oリング620を支持する図示しないOリング支持部を予め形成しておく。Oリング支持部は、Oリング620が、水平方向に対して右側が斜め方向に下がる傾斜を付けてジョイント開口部612に載置されるように形成されている。
【0029】
インク回収ボトル600は、メインタンク132に貯蔵されているインクをインク容器610内に回収して貯蔵する。インク容器610は樹脂を材料とする成形部品であり、弾性復元力を有している。インク容器610は、ユーザが手で押圧力を加える(以下、「スクイーズする」という。)ことによって潰れる程度の剛性を備えている。また、インク容器610は、スクイーズした後、元の形状に戻る復元力が得られる程度の肉厚を有している。
【0030】
(インク回収方法)
次に、本実施形態の液体回収装置の一例であるインク回収ボトル600を使用してインクを回収する方法について、
図8から
図10を用いて説明する。
図8はインク回収ボトル600をメインタンク132のインク充填パイプ170に装着した状態、
図9は
図8に示す状態において、インク回収ボトル600の胴部611をスクイーズした状態、
図10は
図9に示す状態において、スクイーズを止めることでインク回収ボトル600の胴部611が元の形状に戻った状態をそれぞれ示している。
【0031】
初めに、インク回収ボトル600のキャップ660を外す。次に、栓630を外す。そして、
図7に示される姿勢に対してインク回収ボトル600の上下を逆にし、ジョイント開口部612を重力方向下方に向け、ジョイント開口部612とメインタンク132のインク充填パイプ170とを対向させる。インク回収ボトル600のジョイントユニット部615がメインタンク132のインク充填パイプ170の外周を囲むように配置してインク回収ボトル600を重力方向下方に押し付ける。インク充填パイプ170の外周とOリング620とを摺動させながらインク回収ボトル600をメインタンク132に装着する。
【0032】
図8に示すように、インク充填パイプ170の上端が第4の開口651の手前の位置に到達した時点で、図示しないストッパーが作動し、インク回収ボトル600とメインタンク132との装着が完了する。上述したように、Oリング620は、ジョイント開口部612において水平方向に対して傾斜を付けた状態(
図8の場合、右側が斜め方向に下がる傾斜が付されている。)で配置されている。すなわち、Oリング620は、上記した内部流路の中心軸に対して傾斜して設けられている。このため、空気流路171の上部開口177はOリング620の左端で塞がれる状態になる。これに対して、液体流路172の上部開口178は、Oリング620の右端で塞がれず開いた状態になる。なお、本実施形態では、空気流路171の上部開口177を塞ぎ、液体流路172の上部開口178を開ける部材としてOリング620を例に挙げているが、同様の機能を有する部材であれば如何なる部材であってもよい。
【0033】
次に、
図9に示すように、ユーザが指Fを用いてインク回収ボトル600の胴部611をスクイーズする。ユーザがインク容器610の胴部611の両側面を指Fでスクイーズすると、インク容器610の両側面が潰れ、インク容器610の内容積が減少する。このとき、第1の弁体641に、重力と、インク容器610の内容積が減少することに伴う圧力とが加わることにより、第1の弁体641が第4の開口651を閉塞する状態になる。そのため、スクイーズ後における内容積の減少に伴うインク回収ボトル600内の空気の逃げ道は、第2の開口653のみとなる。したがって、スクイーズ後における内容積の減少に伴うインク回収ボトル600内の空気は、第2の開口653から外部へ放出される。
【0034】
次に、
図10に示すように、ユーザが第2の開口653を指Fで塞ぐと共に、スクイーズした指Fをインク容器610の胴部611の両側面から放すと、インク容器610の胴部611の両側面は元の形状に戻る。なお、第2の開口653を閉塞する方法は指Fに限定されず蓋状部材をインク用に付設した構成であってもよい。インク容器610の胴部611の両側面が元の形状に戻るのは、上記したように、インク容器610はスクイーズされた後に元の形状に戻る復元力を有するからである。メインタンク132には、大気中の空気を取り込む大気連通口134が設けられていることから、メインタンク132の内部には大気圧が加わっている。これに対し、第2の開口653はユーザの指F(または蓋など)によって塞がれているため、インク容器610の内部に加わる圧力は、メインタンク132の内部に加わる大気圧よりも低い状態(負圧状態)になっている。したがって、インク容器610の内部とメインタンク132の間に圧力差が生じ、第1の弁体641には、点線矢印で示すように重力方向上方に僅かに上昇させる力が加わる。すなわち、第1の弁体641は、第1の開口652とジョイントユニット部615との間に延びる内部流路のうち、第1の開口652と絞り部617との間に形成される空間618を、インクの流通方向に移動する。第1の弁体641が上昇することによって第1の弁体641と第4の開口651との間に隙間が形成される。メインタンク132内のインクは、インク充填パイプ170の液体流路172および上部開口178を通って、上部開口178と連通しているジョイント開口部612に吸引される。ジョイント開口部612に吸引されたインクは、第1の弁体641と第4の開口651との間に形成された隙間を通ってインク容器610内に流入する。
【0035】
上記説明した
図9と
図10との動作を繰り返し行うことにより、メインタンク132内に充填されているインクを、ほぼ空にすることができる。メインタンク132からインクを回収する動作を終了した後、第2の開口653を栓630で塞ぎ、インク回収ボトル600をインク充填パイプ170から外し、ジョイント開口部612をキャップ660で密封することにより、インク回収ボトル600を用いたインク回収が終了する。このインク回収を行った場合でも、メインタンク132の底部には若干のインクが残存する可能性がある。記録ヘッド211側で吸引回復動作を行い、メインタンク132の底部に残存したインクと、
図3に示したチューブ150などのインク供給経路内に残存したインクとを吸引することにより、好ましくはメインタンク132内のインクを完全に空にすることができる。
【0036】
上記説明したインク回収を行うことにより、本実施形態によればメインタンク132内のインクを空の状態に近づけることで、二次移動の際のインクの漏れを確実に抑制することが可能になる。また、本実施形態では、
図6で説明したように、メインタンク132にインクを充填する際のインクボトル500をメインタンク132に装着する方法と略同様の方法でインク回収ボトル600をメインタンク132に装着することとしている。そして、本実施形態では、インク容器610を指Fでスクイーズするだけでメインタンク132内のインクを回収することとしている。このため、何ら複雑な操作は不要である。また、ユーザの指F、メインタンク132、およびインク回収ボトル600の周辺をインクで汚す可能性も極めて少なく、安全安心に作業を行うことが可能である。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液体回収装置の一例であるインク回収ボトルについて、
図11を用いて説明する。
図11は、インク回収ボトル670の断面図である。
【0038】
(インク回収ボトル)
本実施形態におけるインク回収ボトル670は、第1実施形態のインク回収ボトル600(
図7)と比較して、構造上以下の点が異なっている。それは、インク容器640の底部613に第2の開口653を閉塞するための第2の弁体642と、底部613から重力方向下方に延伸した後、重力方向に対して直角に折れ曲がり、第2の開口653の中心に向かって延伸する底部ユニット部616とが設けられている点である。このように、インク容器640の底部613の第2の開口653の周囲に設けられ、インク容器640とともに第2の弁体642を収容する空間619を形成することで、弁体収容部621が形成されている。弁体収容部621には、空間619に連通する第3の開口654が設けられており、第2の弁体642は、第2の開口653と第3の開口654とを結ぶ方向に可動する。第2の弁体642は、インクよりも比重が大きいプラスチック製であり、極めて薄い円板形状を有している。第2の弁体642の面積を、第2の開口653の開口面積および第3の開口654の開口面積よりも大きくする。例えば、第2の弁体642の円板の直径を、第2の開口653の直径および第3の開口654の直径よりも大きくすることで、第2の弁体642が、インク容器640内または第3の開口654外に飛び出ないようにしている。これ以外は、第1実施形態のインク回収ボトル600と同じ構造であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
ここで、インク回収ボトル670の作製方法について簡単に説明する。インク容器640とジョイントユニット部615の作成方法は、第1実施形態のインク回収ボトル600(
図7)と同様であるので、異なる点についてのみ説明する。インク容器640の第2の開口653に、第2の開口653を閉塞する直径を有する第2の弁体642を第2の開口653の下に置く。そして、インク容器640の底部613の中心に底面ユニット部616の中心が一致するようにインク容器640に底面ユニット部616を載置して接着する。
【0040】
(インク回収方法)
次に、本実施形態の液体回収装置の一例であるインク回収ボトル670を使用してインクを回収する方法について、
図12から
図14を用いて説明する。
図12はインク回収ボトル670をメインタンク132のインク充填パイプ170に装着した状態、
図13は
図12に示す状態において、インク回収ボトル670の胴部611をスクイーズした状態、
図14は
図13に示す状態において、スクイーズを止めることでインク回収ボトル670の胴部611が元の大きさに戻った状態をそれぞれ示している。
【0041】
インク回収ボトル670をメインタンク132に装着する方法は、上記第1実施形態で説明したとおりである。また、
図12は、上記第1実施形態で説明した
図8の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、
図13に示すように、ユーザが指Fを用いてインク回収ボトル670の胴部611をスクイーズする。ユーザがインク容器640の胴部611の両側面を指Fでスクイーズすると、インク容器640の両側面が潰れ、インク容器640の内容積が減少する。このとき、第1の弁体641に、重力と、インク容器640の内容積が減少することに伴う圧力とが加わることにより、第1の弁体641が第4の開口651を閉塞する状態になる。そのため、スクイーズ後における内容積の減少に伴うインク回収ボトル670内の空気の逃げ道は、第2の開口653、第2の開口653を自重によって塞いでいた第2の弁体642が持ち上がることによって形成される第2の弁体642の外周部分、第3の開口654となる。したがって、スクイーズ後における内容積の減少に伴うインク回収ボトル670内の空気は、インク回収ボトル670の第2の開口653、第2の弁体642の外周部分、および第3の開口654から外部へ放出される。
【0043】
上記した第1実施形態では、
図10を参照して説明したように、第2の開口653をユーザの指Fで塞ぐことによって、インク容器610の内部に発生する負圧を使用してインク容器610内にインクを流入させていた。本実施形態では、
図14に示すように、ユーザがスクイーズした指Fをインク容器640の胴部611の両側面から放すと、インク容器640の胴部611の両側面は元の形状に戻る。インク容器640の胴部611の両側面が元の形状に戻るのは、上記したように、インク容器640はスクイーズされた後に元の形状に戻る復元力を有するからである。メインタンク132には、大気中の空気を取り込む大気連通口134が設けられていることから、メインタンク132の内部には大気圧が加わっている。これに対し、第2の開口653は、第2の弁体642の自重と、インク容器640の内部に加わる大気圧よりも低い圧力(負圧)によって塞がれている。インク容器640の内部とメインタンク132の間に圧力差が生じ、第1の弁体641には、点線矢印で示すように重力方向上方に僅かに上昇させる力が加わる。第1の弁体641が上昇することによって第1の弁体641と第4の開口651との間に隙間が形成される。メインタンク132内のインクは、インク充填パイプ170の液体流路172および上部開口178を通って、上部開口178と連通しているジョイント開口部612に吸引される。ジョイント開口部612に吸引されたインクは、第1の弁体641と第4の開口651との間に形成された隙間を通ってインク容器610内に流入する。
【0044】
上記説明した
図13と
図14との動作を繰り返し行うことにより、メインタンク132内に充填されているインクを、ほぼ空にすることができる。メインタンク132からインクを回収する動作を終了した後、第3の開口654を図示しない栓で塞ぎ、インク回収ボトル670をインク充填パイプ170から外し、ジョイント開口部612をキャップ660で密封することにより、インク回収ボトル670を用いたインク回収が終了する。
【0045】
本実施形態では、インク容器640の内部に発生する負圧を使用して、第2の弁体642が第2の開口653を完全に閉塞することによって、メインタンク132内のインクを、インク容器640内に流入させている。本実施形態によれば、ユーザが第2の開口653を指Fで塞ぐ必要がなくなるため、インク容器640の胴部611のスクイーズと、スクイーズの開放とを連続的に実行することができる。このため、メインタンク132内に充填されているインクを容易に回収することができる。
【0046】
本実施形態によれば、メインタンク132内の液体を空の状態に近づけることが可能になる。それに伴い、二次移動の際の液体の漏れを確実に抑制することが可能になる。また、何ら複雑な操作を要することなく、ユーザの指F、メインタンク132、およびインク回収ボトル670の周辺をインクで汚す可能性も極めて少なく、安全安心に作業を行うことが可能である。
【0047】
(実施例3)
次に、実施例3で示される液体回収充填システムについて、
図15および
図16を用いて説明する。
図15(a)は、インク容器540に対して充填用ジョイント(充填ジョイント部)800、キャップ530、栓630が取り付けられ、インク容器540内に充填用のインクが貯留されているインク充填用システム560を示す断面図、
図15(b)は、回収用ジョイント(回収ジョイント部)900の断面図である。
図16(a)は、
図15(a)のインク充填用システム560のインクが充填され、インクが空になったインク容器540から充填用ジョイント800を取り外し、
図15(b)の回収用ジョイント900を取り付けた状態のインク回収用システム580の断面図、
図16(b)は、取り外された充填用ジョイント800、キャップ530、および栓630の断面図である。
【0048】
この実施例は、
図15(a)に示されるように、メインタンク132と接続されるインク充填用システム560の充填用ジョイント800を取り外し可能な構造にし、インク回収が必要な場合に、インク充填用システム560から充填用ジョイント800を取り外し、別に用意された
図15(b)に示される回収用ジョイント900を取り付けて
図16(a)に示されるインク回収用システム580として利用する形態を説明するものである。言い換えるとインク容器540を再利用する形態についての説明である。
この形態では、インクを回収した後に、回収用ジョイント900を充填用ジョイント800に再び交換することで回収したインクを再びメインタンク132に充填することが可能になる。
なお、液体回収充填システムの販売形態としては、
図15(a)のインク充填用システム560と、
図15(b)の回収用ジョイント900とを1セットにした形態とすることができる。もちろん
図15(b)の回収用ジョイント900を独立して販売する形態も可能である。
【0049】
一方、
図16(a)に示されるように、インク回収用システム580の回収用ジョイント900を取り外し可能な構造にすることも可能である。この場合、インク回収が必要な場合には、このままインク回収を行う。そして、インク充填時には、インク回収用システム580から回収用ジョイント900を取り外し、別に用意された
図16(b)に示される充填用ジョイント800を取り付けて
図15(a)に示されるインク充填用システム560として利用する形態とすることができる。
この形態では、インクを回収した後に、回収用ジョイント900を充填用ジョイント800に交換して
図15(a)に示される形態とすることで回収したインクを再びメインタンク132に充填することができる。
なお、
図16(a)に示される液体回収充填システムの販売形態としては、
図16(a)のインク回収用システム580と、
図16(b)の充填用ジョイント800とを1セットにした形態とすることができる。もちろん
図16(b)の充填用ジョイント800を独立して販売する形態も可能である。
【0050】
上述したように、一度回収したインクを再びメインタンク132に充填する場合には、回収したインクに対してごみや埃などの混入が想定されるので、回収用ジョイント900あるいは充填用ジョイント800に対して不図示のフィルタを備えることがより好ましい形態となる。フィルタは充填用ジョイント800が備えているほうが、最終的に充填されるインクに対するろ過を実施することになるのでより好ましい形態となる。
以下、図面に基づき説明する。
【0051】
図15(a)に示すインク充填用システム560は、
図16(b)に示される充填用ジョイント800が独立して構成される形態である。この充填用ジョイント800は、インク充填ジョイントケース810と、フランジ811とが設けられて、これがインク容器540の開口部550に対して着脱可能になっている。インク充填ジョイントケース810には、スリット521が設けられたジョイントゴム520がインク充填用ジョイント800のインク充填パイプ170に連結される端面に対して設けられている。
充填用ジョイント800はインク容器540の開口部550に圧入可能な寸法関係となっている。また、充填用ジョイント800の外周面に設けられたフランジ811は、インク容器540の開口部550に対する挿入位置を規制する機能を有する(規制部材)。フランジ811は、インク容器540の上面部514から立ち上がって構成される円筒状の壁(円周壁)813の頂面812と当接してインク容器540に対する充填用ジョイント800の位置決めがなされる。
【0052】
図15(b)に示す回収用ジョイント900は、メインタンク132のインク充填パイプ170と連結する部分に、インク回収ジョイントケース910と、フランジ911とが設けられている。そして、インク回収ジョイントケース910には、Oリング620と、第4の開口651と、第1の開口652とが設けられており、第4の開口651と第1の開口652との間に第1の弁体641が設けられている。
回収用ジョイント900は、キャップ530、充填用ジョイント800を取り外したインク容器540の開口部550に圧入し、回収用ジョイント900の容器540の開口部550に対する挿入位置を、フランジ911を用いて規制する。回収用ジョイント900の外周面に設けられたフランジ911は、インク容器540の上面部514から立ち上がって構成される円筒状の壁(円周壁)813の頂面812と当接してインク容器540に対する回収用ジョイント900の位置決めがなされる。
【0053】
本実施例によれば、インク充填用ボトルと、インク回収用ボトルとの2種類のボトルを準備する必要がなくなる。すなわち、ボトル本体に対して着脱可能な充填用ジョイントと回収用ジョイントとを用意しておくことで、1つのボトル本体に対してインクの充填機能とインクの回収機能とを兼用させることが可能になる。
【0054】
また、上記した第1、第2の実施形態で説明したインク回収ボトルでは、回収したインクを再利用することを想定していない。しかしながら、本実施例では、回収したインクを再利用することが可能になる。すなわち、
図16に示すインク回収用システム580を使用してメインタンク132からインクを回収した後、回収用ジョイント900を取り外し、充填用ジョイント800とキャップ530と栓630とを取り付けることで、回収したインクを保管する。また、保管したインクを再利用する場合は、インク回収用システム580から回収用ジョイント900を取り外し、充填用ジョイント800を取り付けることで、
図6で説明したメインタンク132に対するインクの充填を行うことが可能になる。これにより、回収したインクを再利用することでインクの廃棄に伴う無駄を削減することができる。また、回収したインクを二次移動後に再利用することが可能になるという利点もある。
【0055】
以上説明したとおり本発明によれば、二次移動が必要な場合にメインタンクから液体を回収する際に専用の回収システムを用いることで確実な液体回収が行え、回収時や移送の際の液体の漏れをより確実に抑制することができる液体回収装置および液体回収充填システムを提供することができる。
また、回収システムのジョイントを充填システムのジョイントと交換可能な構成とすることでインク容器を再利用可能な液体回収充填システムを提供できる。
【符号の説明】
【0056】
132 メインタンク
170 インク充填パイプ
600 インク回収ボトル
610 インク容器
615 ジョイントユニット部
617 絞り部
618 空間
641 第1の弁体
652 第1の開口
653 第2の開口