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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】航空機の模擬操縦装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/28 20060101AFI20240401BHJP
   B64C 13/08 20060101ALI20240401BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20240401BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20240401BHJP
   G09B 9/46 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
G09B9/28
B64C13/08
G05G5/03 A
G05G5/05
G09B9/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110968
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022022570
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小松 誠司
(72)【発明者】
【氏名】村田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】倉地 修
(72)【発明者】
【氏名】西村 寛史
(72)【発明者】
【氏名】志水 裕一
(72)【発明者】
【氏名】川部 祐司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】新開 颯馬
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-059293(JP,A)
【文献】特許第3091743(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3225574(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104658370(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
B64C 13/08
G05G 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を備える一方、
上下方向に延び、第1水平軸周りに回転自在な第1操縦部材、上下方向に延び、前記第1水平軸の下方に位置し且つ前記第1水平軸に垂直な第2水平軸周りに回転自在な第2操縦部材を有する操縦桿と、
前記第1操縦部材に接続されており、前記第1操縦部材の回転によって変位し前記第1操縦部材の操縦反力を生成する第1バネを有する第1反力生成部と、
前記第2操縦部材に接続されており、前記第2操縦部材の回転によって変位し前記第2操縦部材の操縦反力を生成する第2バネを有する第2反力生成部と、
前記第1操縦部材の操縦反力がゼロになるように前記第1バネを変位させて前記第1操縦部材の中立位置を変更する第1アクチュエータを有する第1中立位置変更部と、
前記第2操縦部材の操縦反力がゼロになるように前記第2バネを変位させて前記第2操縦部材の中立位置を変更する第2アクチュエータを有する第2中立位置変更部とを前記筐体内に備え、
前記第1アクチュエータの出力軸は、前記第1反力生成部よりも下方に位置し、
前記第2アクチュエータの出力軸は、前記第2反力生成部よりも上方に位置する、航空機の模擬操縦装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機の模擬操縦装置において、
前記第1アクチュエータは、前記筐体の底板に取り付けられ、
前記第2アクチュエータは、前記筐体の天板に取り付けられている、航空機の模擬操縦装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の航空機の模擬操縦装置において、
前記第1反力生成部は、前記第1操縦部材に接続され且つ2つの前記第1バネが軸方向に変位自在に装着され、前記第1操縦部材の回転によって前記第1バネを変位させる第1ロッドと、前記2つの第1バネの間に位置し、前記第1ロッドにその軸方向に移動自在に装着される第1スライダとをさらに有し、
前記第2反力生成部は、前記第2操縦部材に接続され且つ2つの前記第2バネが軸方向に変位自在に装着され、前記第2操縦部材の回転によって前記第2バネを変位させる第2ロッドと、前記2つの第2バネの間に位置し、前記第2ロッドにその軸方向に移動自在に装着される第2スライダとをさらに有し、
前記第1アクチュエータは、前記2つの第1バネの弾性力が釣り合う位置に前記第1スライダを移動させることで前記第1バネを変位させ、
前記第2アクチュエータは、前記2つの第2バネの弾性力が釣り合う位置に前記第2スライダを移動させることで前記第2バネを変位させる、航空機の模擬操縦装置。
【請求項4】
請求項3に記載の航空機の模擬操縦装置において、
前記第1および第2アクチュエータはそれぞれ、第1および第2モータであり、
前記第1中立位置変更部は、前記筐体の底板側から上方へ延びて前記第1スライダに接続され、前記第1モータの出力軸によって回転駆動されることにより前記第1スライダを移動させる第1トルクアームをさらに有し、
前記第2中立位置変更部は、前記筐体の天板側から下方へ延びて前記第2スライダに接続され、前記第2モータの出力軸によって回転駆動されることにより前記第2スライダを移動させる第2トルクアームをさらに有している、航空機の模擬操縦装置。
【請求項5】
請求項4に記載の航空機の模擬操縦装置において、
前記第1アクチュエータは、前記第1モータと第1クラッチ装置であり、
前記第2アクチュエータは、前記第2モータと第2クラッチ装置であり、
前記第1中立位置変更部は、前記第1モータの出力軸に前記第1クラッチ装置を介して接続されると共に、前記第1トルクアームが連結される第1駆動軸をさらに有し、前記第1クラッチ装置によって前記第1モータの出力軸と前記第1駆動軸との接続が遮断されると、前記第1トルクアームが前記第1バネの復元力によって回転することで前記第1スライダを移動させ、
前記第2中立位置変更部は、前記第2モータの出力軸に前記第2クラッチ装置を介して接続されると共に、前記第2トルクアームが連結される第2駆動軸をさらに有し、前記第2クラッチ装置によって前記第2モータの出力軸と前記第2駆動軸との接続が遮断されると、前記第2トルクアームが前記第2バネの復元力によって回転することで前記第2スライダを移動させる、航空機の模擬操縦装置。
【請求項6】
請求項3に記載の航空機の模擬操縦装置において、
前記第1および第2アクチュエータはそれぞれ、第1および第2ブレーキ装置であり、
前記第1中立位置変更部は、前記筐体の底板側から上方へ延びて前記第1スライダに接続され、前記第1ブレーキ装置によって回転動作が制止されることにより前記第1スライダを拘束する一方、前記第1ブレーキ装置による制止が解放されると、前記第1バネの復元力によって回転し前記第1スライダを移動させる第1トルクアームをさらに有し、
前記第2中立位置変更部は、前記筐体の天板側から下方へ延びて前記第2スライダに接続され、前記第2ブレーキ装置によって回転動作が制止されることにより前記第2スライダを拘束する一方、前記第2ブレーキ装置による制止が解放されると、前記第2バネの復元力によって回転することで前記第2スライダを移動させる第2トルクアームをさらに有している、航空機の模擬操縦装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、航空機の模擬操縦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操縦桿の中立位置(いわゆるトリム位置)を変更する機能を有した航空機の操縦装置が知られている。例えば、特許文献1に開示の操縦装置は、操縦桿の角変位によって一端が変位し操作反力を生成するばね部材と、ばね部材が自然長になるようにばね部材の他端を変位させて操縦桿の中立位置を変更する中立位置変更部(バックドライブ機構)を備えている。
【0003】
中立位置変更部は、モータと電磁ブレーキを有している。中立位置変更部は、モータを回転駆動することによって、ばね部材の他端を変位させるように構成されている。また、中立位置変更部は、電磁ブレーキがばね部材の他端の拘束を解放することにより、ばね部材の他端が自身の復元力によって変位するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3091743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような操縦装置を模擬訓練用の模擬操縦装置として構築する場合、上面に操縦席が載置される筐体内に、操縦桿の一部やばね部材、ばね部材と操縦桿とを連結する部材、中立位置変更部等を収容することが考えられる。その場合、モータや電磁ブレーキはサイズが比較的大きいため、モータや電磁ブレーキの配置の仕方によっては筐体が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、航空機の模擬操縦装置において装置のコンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示の航空機の模擬操縦装置は、筐体を備える一方、操縦桿と、第1反力生成部と、第2反力生成部と、第1中立位置変更部と、第2中立位置変更部とを前記筐体内に備えている。前記操縦桿は、上下方向に延び、第1水平軸周りに回転自在な第1操縦部材、上下方向に延び、前記第1水平軸の下方に位置し且つ前記第1水平軸に垂直な第2水平軸周りに回転自在な第2操縦部材を有している。前記第1反力生成部は、前記第1操縦部材に接続されており、前記第1操縦部材の回転によって変位し前記第1操縦部材の操縦反力を生成する第1バネを有している。前記第2反力生成部は、前記第2操縦部材に接続されており、前記第2操縦部材の回転によって変位し前記第2操縦部材の操縦反力を生成する第2バネを有している。前記第1中立位置変更部は、前記第1操縦部材の操縦反力がゼロになるように前記第1バネを変位させて前記第1操縦部材の中立位置を変更する第1アクチュエータを有している。前記第2中立位置変更部は、前記第2操縦部材の操縦反力がセロになるように前記第2バネを変位させて前記第2操縦部材の中立位置を変更する第2アクチュエータを有している。そして、前記第1アクチュエータの出力軸は、前記第1反力生成部よりも下方に位置し、前記第2アクチュエータの出力軸は、前記第2反力生成部よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0008】
上述した航空機の模擬操縦装置によれば、装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、模擬操縦装置の概略構成を示す左側面図である。
図2図2は、模擬操縦装置の概略構成を示す平面図である。
図3図3は、模擬操縦装置の概略構成を示す背面図である。
図4図4は、筐体の内部構成を概略的に示す背面図である。
図5図5は、筐体の内部構成を概略的に示す平面図である。
図6図6は、筐体の内部構成を概略的に示す左側面図である。
図7図7は、操縦桿の第1操縦部材および第2操縦部材を拡大して示す平面図である。
図8図8は、第1反力生成部および第2反力生成部の概略構成を示す側面図である。
図9図9は、図8に示すA-A線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の模擬操縦装置は、航空機の模擬的な操縦装置であり、例えば、VR空間を用いた航空機(本実施形態では、ヘリコプタ)の模擬訓練に用いられる。つまり、訓練者である操縦士または副操縦士は、模擬操縦装置を操作することにより、VR空間において航空機を飛行させる。
【0011】
図1図3に示すように、模擬操縦装置100は、筐体1を備えている。筐体1の上方空間は、訓練者である操縦士または副操縦士がシートに着座して航空機を操縦する空間となっている。なお、図1では、後述する第2操縦部材13を省略しており、図2では、後述する操作部11および第2操縦部材13を省略している。
【0012】
筐体1の上面(天板)には、シート2と、コレクティブレバー3と、ラダーペダル5と、操縦桿10とが設けられている。
【0013】
シート2は、訓練する操縦士または副操縦士が着席するものであり、前方を向いて設けられている。コレクティブレバー3は、一例として、後方から視てシート2の左側に設けられている。コレクティブレバー3は、操縦士等が引き上げ操作または押し下げ操作を行うことにより、機体を上昇下降させたり、機体の速度を制御したりするものである。
【0014】
操縦桿10は、シート2の前方に設けられており、操縦士等の両足の間に位置する。操縦桿10は、サイクリックスティックとも呼ばれ、前後方向および左右方向の二軸方向への傾け操作が可能に構成されている。操縦桿10は、操縦士等が前後方向に傾け操作することにより、機首を上下させて機体を上昇下降させるものである。つまり、操縦桿10を前後方向に傾ける(回転させる)ことにより、機体がピッチング動作を行う。また、操縦桿10は、操縦士等が左右方向に傾け操作することにより、機体を左右に傾ける(回転させる)ものである。つまり、操縦桿10を左右方向に傾ける(回転させる)ことにより、機体がローリング動作を行う。
【0015】
ラダーペダル5は、操縦士等の足元に位置しており、右足用および左足用のそれぞれ1つずつ設けられている。ラダーペダル5は、操縦士等が足で踏んで操作することにより、機体を左右に首振り運動させるものである。つまり、ラダーペダル5を操作することにより、機体がヨーイング動作を行う。
【0016】
図4図6に示すように、模擬操縦装置100は、筐体1と、操縦桿10と、第1反力生成部20と、第1中立位置変更部30と、第2反力生成部50と、第2中立位置変更部60とを備えている。
【0017】
操縦桿10、第1反力生成部20、第1中立位置変更部30、第2反力生成部50および第2中立位置変更部60は、筐体1内に収容されている。より詳しくは、操縦桿10の一部は、筐体1の外部(上方)に設けられている。
【0018】
筐体1の中央付近は、上下である二方が、天板1aおよび底板1bによって区画されており(図4参照)、前後左右である四方が、正面板1c、背面板1d、左側板1fおよび右側板1eによって区画されている(図5参照)。なお、天板1aは、操縦士等が操縦する空間における床板でもある。
【0019】
操縦桿10は、第1操縦部材12と、第2操縦部材13とを有している。
【0020】
第1操縦部材12は、上下方向に延びる軸部材である。具体的に、第1操縦部材12は、筐体1内の上部に設けられている。より詳しくは、第1操縦部材12は、天板1aを貫通し、筐体1の内外に亘って設けられている。つまり、第1操縦部材12は、一部は筐体1内に収容され、残りの部分は天板1aの開口1hを介して筐体1の上方空間まで延びている(図4参照)。第1操縦部材12は、筐体1において、左右方向における略中央に位置すると共に、後方寄りに位置している(図5参照)。
【0021】
第1操縦部材12は、上部(本実施形態では、略上半部)が円筒状に形成された筒部12aとなっており、下部(本実施形態では、略下半部)が中実の円柱状に形成された中実部(図示省略)となっている。本実施形態では、概ね、第1操縦部材12の中実部が筐体1内に位置し、第1操縦部材12の筒部12aが筐体1の上方空間に位置している。
【0022】
第1操縦部材12は、第1水平軸周りに回転自在に設けられている。具体的に、第1操縦部材12には、第1回転軸14が設けられている。第1回転軸14は、前後方向に延びる部材であり、上記の第1水平軸に相当する。図7にも示すように、第1回転軸14は、第1操縦部材12を貫通して設けられ、第1操縦部材12に固定されている。本実施形態では、第1回転軸14は、筐体1の外部に位置する筒部12aに設けられている。こうして、第1操縦部材12は、第1回転軸14周りに、第1回転軸14と共に回転するように構成されている。つまり、第1操縦部材12は、左右方向に回転するように構成されている。
【0023】
第2操縦部材13は、上下方向に延びる軸部材であり、断面が矩形の軸部材である。具体的に、第2操縦部材13では、上端部から順に、水平部13a、傾斜部13bおよび鉛直部13cが連続して形成されている。水平部13aは、水平方向(左右方向)に延びる二股形状となっている。傾斜部13bは、水平部13aから左斜め下向きに傾斜している。鉛直部13cは、傾斜部13bから鉛直下方に延びている。つまり、第2操縦部材13の大部分を占める鉛直部13cが上下方向に延びている。第2操縦部材13は、上端部(水平部13a)が第1操縦部材12に連結されて設けられている。より詳しくは、図7にも示すように、第2操縦部材13の水平部13aが第1操縦部材12から突出している第1回転軸14に対して回転自在となるように、第1回転軸14がベアリングを介して第2操縦部材13の水平部13aに挿入されている。つまり、第1操縦部材12が第1回転軸14と共に回転する際、第2操縦部材13は第1回転軸14周りに回転しない。
【0024】
第2操縦部材13は、第1操縦部材12と同様、筐体1の天板1aを貫通し、筐体1の内外に亘って設けられている。つまり、第2操縦部材13は、一部は筐体1内に収容され、残りの部分は天板1aの開口1hを介して筐体1の上方空間まで延びている(図4参照)。本実施形態では、概ね、第2操縦部材13の鉛直部13cが筐体1内に位置し、第2操縦部材13の水平部13aおよび傾斜部13bが筐体1の上方空間に位置している。第2操縦部材13も、第1操縦部材12と同様、筐体1において、左右方向における略中央に位置すると共に、後方寄りに位置している(図5参照)。第2操縦部材13の下端(鉛直部13c)は、第1操縦部材12の下端よりも下方の位置まで延びている。なお、天板1aの上(即ち、床面)には、開口1hを塞ぐフロアシャフトブーツ19が設けられている(図4参照)。
【0025】
第2操縦部材13は、第1水平軸の下方に位置し且つ前記第1水平軸に垂直な第2水平軸周りに回転自在に設けられている。具体的に、第2操縦部材13には、第2回転軸15が設けられている。第2回転軸15は、左右方向に延びる部材であり、上記の第2水平軸に相当する。つまり、第2回転軸15は、第1回転軸14に垂直な部材である。そして、第2回転軸15は、第1回転軸14の下方に位置している。第2回転軸15は、第2操縦部材13の鉛直部13cに貫通して設けられ、鉛直部13cに固定されている。また、第2回転軸15は、後述する第1反力生成部20のロッド21と同軸に配置されている。第2回転軸15の両端部は、軸受ユニット16によって回転自在に支持されている。こうして、第2操縦部材13は、第2回転軸15周りに、第2回転軸15と共に回転するように構成されている。つまり、第2操縦部材13は、前後方向に回転するように構成されている。
【0026】
なお、筐体1内には、中間板1gが設けられている。中間板1gは、水平に延びる板であり、やや天板1a寄りの高さに設けられている。第1操縦部材12は、中間板1gの近傍まで延びており、第2操縦部材13は、中間板1gの開口1kを介して中間板1gよりも下方まで延びている(図7参照)。軸受ユニット16は、中間板1gに固定されている。
【0027】
操縦桿10は、操作部11をさらに有している(図1参照)。操作部11は、操縦士等が操作する棒状部材である。操作部11は、下端が第1操縦部材12に接続されている。より詳しくは、操作部11の下端は、第1操縦部材12の筒部12aの外周に嵌め込まれている。操縦桿10では、操縦士等が操作部11を左右方向に傾けることによって、第1操縦部材12が左右方向に回転する。また、操縦桿10では、操縦士等が操作部11を前後方向に傾けることによって、第2操縦部材13が前後方向に回転する。その際、第1操縦部材12も、第2回転軸15周りに回転する。
【0028】
操作部11には、操作スイッチ11aが設けられている。操作スイッチ11aは、操縦士等が、後述する第1中立位置変更部30および第2中立位置変更部60に所定の変更動作を指示するものである。
【0029】
第1反力生成部20は、第1操縦部材12に接続されており、第1操縦部材12の回転によって変位し第1操縦部材12の操縦反力を生成する第1バネを有している。具体的には、図8にも示すように、第1反力生成部20は、ロッド21と、2つのバネ22と、スライダ23とを有している。バネ22は、上記の第1バネに相当する。なお、図8は、第1反力生成部20を筐体1の後方から視て示す図である。
【0030】
ロッド21は、第1操縦部材12に接続され且つ2つのバネ22が軸方向に変位自在に装着され、第1操縦部材12の回転によってバネ22を変位させる第1ロッドである。ロッド21は、左右方向に延びる直線的な部材である。ロッド21の一端(図8における左端)は、連結ピン27によって第1操縦部材12の下端に連結されている。ロッド21の他端(図8における右端)は、自由端である。第1反力生成部20では、上述したように、ロッド21は第2回転軸15と同軸に設けられている。
【0031】
2つのバネ22は、ロッド21の外周側に挿入されている。2つのバネ22は、ロッド21の軸方向に変位自在となっている。つまり、第1反力生成部20のバネ22の変位方向は、左右方向である。本実施形態では、2つのバネ22は何れも、コイルバネであり、圧縮バネである。
【0032】
スライダ23は、ロッド21にその軸方向(左右方向)に移動自在に装着される第1スライダである。スライダ23は、概ね矩形体状に形成され、ロッド21の外周側に挿入されている。スライダ23は、ロッド21の軸方向に摺動自在となっている。つまり、ロッド21およびスライダ23は、互いに摺動自在である。スライダ23は、2つのバネ22の間に位置している。スライダ23の外形は、バネ22の外径よりも大きい。
【0033】
ロッド21には、バネ22の位置を規制する2つの規制部24が設けられている。規制部24は、外径がバネ22の外径よりも大きい円環状に形成され、ロッド21の外周側に設けられている。2つの規制部24は、各バネ22におけるスライダ23側とは反対側の位置に設けられている。つまり、ロッド21では、2つのバネ22のそれぞれが、スライダ23と規制部24との間に位置している。各バネ22とスライダ23および規制部24とは、固定されていない。第1反力生成部20の2つのバネ22のそれぞれの両端は、スライダ23と規制部24とに接するように構成されている。即ち、ロッド21(規制部24)およびスライダ23にバネ22以外の力が作用していない状態では、2つのバネ22の長さは互いに等しく且つ自然長以下となっており、スライダ23が2つのバネ22から受ける力は互いに釣り合っている。要するに、ロッド21(規制部24)およびスライダ23にバネ22以外の力が作用していないときは、2つのバネ22はそれぞれスライダ23と規制部24との間に幾分か圧縮された状態で設けられており、このときの2つのバネ22の弾性力は互いに等しい。
【0034】
こうして構成された第1反力生成部20では、第1操縦部材12が左側(図4において反時計回り)に回転すると、ロッド21が右側へ移動する。そうすると、図8において、スライダ23が移動しない限り、左側のバネ22は規制部24によって右側へ押されて圧縮される(変位する)。その際、右側の規制部24とスライダ23との距離がバネ22の自然長よりも長くなると、右側の規制部24は右側のバネ22から離隔し、右側のバネ22は自然長となる。
【0035】
また、第1反力生成部20では、第1操縦部材12が右側(図4において時計回り)に回転すると、ロッド21が左側へ移動する。そうすると、図8において、スライダ23が移動しない限り、右側のバネ22は規制部24によって左側へ押されて圧縮される(変位する)。その際、左側の規制部24とスライダ23との距離がバネ22の自然長よりも長くなると、左側の規制部24は左側のバネ22から離隔し、左側のバネ22は自然長となる。こうして、バネ22の圧縮時の弾性力が、第1操縦部材12の操縦反力として生成される。なお、第1操縦部材12の操縦反力は、操縦桿10の操縦反力とも言える。
【0036】
第2反力生成部50は、第2操縦部材13の下端側に接続されており、第2操縦部材13の回転によって変位し第2操縦部材13の操縦反力を生成する第2バネを有している。第2反力生成部50の基本構成は、第1反力生成部20と同様である。つまり、図8にも示すように、第2反力生成部50も、ロッド51と、2つのバネ52と、スライダ53とを有している。バネ52は、上記の第2バネに相当する。ここでは、第1反力生成部20と異なる点について言及する。なお、図8は、第2反力生成部50を筐体1の右側から視て示す図である。
【0037】
ロッド51は、第2操縦部材13に接続され且つ2つのバネ52が軸方向に変位自在に装着され、第2操縦部材13の回転によってバネ52を変位させる第2ロッドである。ロッド51は、前後方向に延びる直線的な部材である。ロッド51の一端(図8における左端)は、連結ピン57によって第2操縦部材13の下端に連結されている。ロッド51の他端(図8における右端)は、自由端である。
【0038】
2つのバネ52は、ロッド51の外周側に挿入されている。2つのバネ52は、ロッド51の軸方向に変位自在となっている。つまり、第2反力生成部50のバネ52の変位方向は、前後方向である。この2つのバネ52も、第1反力生成部20のバネ22と同様、圧縮バネである。
【0039】
スライダ53の構成は、第1反力生成部20のスライダ23と同様である。つまり、スライダ53は、ロッド51にその軸方向(前後方向)に移動自在に装着される第2スライダである。スライダ53は、ロッド51の軸方向に摺動自在となっており、2つのバネ52の間に位置している。
【0040】
ロッド51には、バネ52の位置を規制する2つの規制部54が設けられている。この規制部54の構成も、第1反力生成部20の規制部24と同様である。つまり、2つの規制部54は、各バネ52におけるスライダ53側とは反対側の位置に設けられている。また、第2反力生成部50の2つのバネ52のそれぞれの両端は、スライダ53と規制部54とに接するように構成されている。即ち、ロッド51(規制部54)およびスライダ53にバネ52以外の力が作用していない状態では、2つのバネ52の長さは互いに等しく且つ自然長以下となっており、スライダ53が2つのバネ52から受ける力は互いに釣り合っている。要するに、ロッド51(規制部54)およびスライダ53にバネ52以外の力が作用していないときは、2つのバネ52はそれぞれスライダ53と規制部54との間に幾分か圧縮された状態で設けられており、このときの2つのバネ52の弾性力は互いに等しい。
【0041】
こうして構成された第2反力生成部50では、第2操縦部材13が前側(図6において反時計回り)に回転すると、ロッド51が後側へ移動する。そうすると、図8において、スライダ53が移動しない限り、右側のバネ52は規制部54によって左側へ押されて圧縮される(変位する)。その際、左側の規制部54とスライダ53との距離がバネ52の自然長よりも長くなると、左側の規制部54は左側のバネ52から離隔し、左側のバネ52は自然長となる。
【0042】
また、第2反力生成部50では、第2操縦部材13が後側(図6において時計回り)に回転すると、ロッド51が前側へ移動する。そうすると、図8において、スライダ53が移動しない限り、左側のバネ52は規制部54によって右側へ押されて圧縮される(変位する)。その際、右側の規制部54とスライダ53との距離がバネ52の自然長よりも長くなると、右側の規制部54は右側のバネ52から離隔し、右側のバネ52は自然長となる。こうして、バネ52の圧縮時の弾性力が、第2操縦部材13の操縦反力として生成される。なお、第2操縦部材13の操縦反力は、操縦桿10の操縦反力とも言える。
【0043】
このように、第1操縦部材12および第2操縦部材13の操縦反力が生成されることにより、模擬訓練において実際により近い操縦感覚を体験することができる。
【0044】
第1中立位置変更部30は、第1操縦部材12の操縦反力がゼロになるようにバネ22(第1バネ)を変位させて第1操縦部材12の中立位置を変更する第1アクチュエータを有している。第1操縦部材12の中立位置は、機体に作用するピッチ軸周りの空気力やエンジン出力等のすべての外力が釣り合う状態になったときの第1操縦部材12の位置であり、ピッチトリム位置とも呼ばれる。つまり、第1操縦部材12が中立位置にあるときは、第1操縦部材12の操縦力(即ち、操縦桿10の操縦力)はゼロとなり、第1操縦部材12の操縦反力(即ち、操縦桿10の操縦反力)はゼロになる。これは、第2操縦部材13の中立位置も同様である。
【0045】
具体的に、第1中立位置変更部30は、モータ31(第1モータ)と、クラッチ装置34(第1クラッチ装置)と、駆動軸35(第1駆動軸)と、トルクアーム38(第1トルクアーム)とを有している。モータ31およびクラッチ装置34はそれぞれ、上記の第1アクチュエータに相当する。
【0046】
モータ31は、例えば、電気モータ、油圧モータ、減速機内蔵の電気モータまたは減速機内蔵の油圧モータである。本実施形態では、モータ31は、減速機内蔵の電気モータである。
【0047】
モータ31の出力軸32は、第1反力生成部20よりも下方に位置している。モータ31は、筐体1の底板1bに取り付けられている。より詳しくは、モータ31は、下部にベース33を有しており、ベース33が底板1bにボルトによって固定されている。モータ31は、その出力軸32が後方(背面板1d)へ向く状態で設けられている。つまり、モータ31の出力軸32の軸心は、前後方向に延びている。モータ31は、筐体1内において、第1操縦部材12に対して前側で且つ右側に位置している。
【0048】
なお、モータ31の出力軸32の回転角と第1操縦部材12の回転角とを一致させるために、第1操縦部材12の第1回転軸14とロッド21との鉛直距離は、モータ31の出力軸32とロッド21との鉛直距離と等しくなっている。
【0049】
モータ31の出力軸32には、クラッチ装置34が接続されている。クラッチ装置34には、駆動軸35が接続されている。つまり、クラッチ装置34は、モータ31と駆動軸35との間に接続されている。駆動軸35は、クラッチ装置34側とは反対側の端部が軸受ユニット36によって回転自在に支持されている。モータ31の出力軸32、クラッチ装置34および駆動軸35は、互いに同軸に設けられている。クラッチ装置34は、モータ31から駆動軸35への動力伝達を断続するものである。
【0050】
つまり、クラッチ装置34は、伝達状態と遮断状態とに切り換え可能である。伝達状態は、出力軸32と駆動軸35とが接続されて、モータ31の動力が駆動軸35に伝達される状態である。遮断状態は、出力軸32と駆動軸35との接続が遮断され、モータ31の動力が駆動軸35へ伝達されない状態である。また、遮断状態では、駆動軸35は解放状態(無拘束状態)となる。クラッチ装置34は、例えば、電磁式クラッチ、機械式クラッチ、油圧式クラッチまたは空圧式クラッチ等である。本実施形態では、クラッチ装置34は電磁式クラッチである。
【0051】
クラッチ装置34は、筐体1の底板1bに取り付けられている。より詳しくは、底板1bにおけるクラッチ装置34に対応する位置に、取付部材37が設けられている(図5参照)。取付部材37は、上下方向に延びる板部材であり、底板1bに固定されている。つまり、取付部材37は底板1bに対して垂直に設けられている。クラッチ装置34は、取付部材37にボルトによって取り付けられている。つまり、クラッチ装置34は、取付部材37を介して底板1bに取り付けられている。
【0052】
トルクアーム38は、駆動軸35に固定されており、駆動軸35と共に回転する。つまり、駆動軸35は、モータ31にクラッチ装置34を介して接続されると共に、トルクアーム38が連結されている。そして、トルクアーム38は、駆動軸35(底板1b側)から上方へ延びて第1反力生成部20に接続され、モータ31によって回転駆動されることにより、スライダ23を移動させるものである。
【0053】
より詳しくは、図9に示すように、トルクアーム38は、第1反力生成部20のスライダ23に接続されている。スライダ23には、軸部25が設けられており、軸部25にトルクアーム38が回転自在に接続されている。本実施形態では、軸部25はボルトの軸部である。トルクアーム38は、駆動軸35の回転に伴って回転することで、第1反力生成部20のスライダ23をロッド21に沿って移動(変位)させるように構成されている。
【0054】
第2中立位置変更部60は、第2操縦部材13の操縦反力がゼロになるようにバネ52(第2バネ)を変位させて第2操縦部材13の中立位置を変更する第2アクチュエータを有している。第2操縦部材13の中立位置は、機体に作用するロール軸周りの空気力やエンジン出力等のすべての外力が釣り合う状態になったときの第2操縦部材13の位置であり、ロールトリム位置とも呼ばれる。第2中立位置変更部60の基本構成は、第1中立位置変更部30と同様である。つまり、第2中立位置変更部60も、モータ61(第2モータ)と、クラッチ装置64(第2クラッチ装置)と、駆動軸65(第2駆動軸)と、トルクアーム68(第2トルクアーム)とを有している。モータ61およびクラッチ装置64はそれぞれ、上記の第2アクチュエータに相当する。ここでは、第1中立位置変更部30と異なる点について言及する。
【0055】
モータ61の出力軸62は、第2反力生成部50よりも上方に位置している。モータ61は、第1中立位置変更部30と同様、減速機内蔵の電気モータである。モータ61は、筐体1の天板1aに取り付けられている。より詳しくは、モータ61は、上部にベース63を有しており、ベース63が天板1aにボルトによって固定されている。モータ61は、その出力軸62が右側(右側板1e)へ向く状態で設けられている。つまり、モータ61の出力軸62の軸心は、左右方向に延びている。モータ61は、筐体1内において、第2操縦部材13に対して前側で且つ左側に位置している。
【0056】
モータ61の出力軸62には、クラッチ装置64が接続されている。クラッチ装置64には、駆動軸65が接続されている。駆動軸65は、クラッチ装置64側とは反対側の端部が軸受ユニット66によって回転自在に支持されている。モータ61の出力軸62、クラッチ装置64および駆動軸65は、互いに同軸に設けられている。
【0057】
クラッチ装置64は、第1中立位置変更部30と同様、伝達状態と遮断状態とに切り換え可能である。伝達状態は、出力軸62と駆動軸65とが接続されて、モータ61の動力が駆動軸65へ伝達される状態である。遮断状態は、出力軸62と駆動軸65との接続が遮断されて、モータ61の動力が駆動軸65へ伝達されない状態である。また、遮断状態では、駆動軸65は解放状態(無拘束状態)となる。クラッチ装置64も、第1中立位置変更部30と同様、電磁式クラッチである。
【0058】
クラッチ装置64は、筐体1の天板1aに取り付けられている。より詳しくは、天板1aにおけるクラッチ装置64に対応する位置に、取付部材67が設けられている(図4参照)。取付部材67は、上下方向に延びる板部材であり、天板1aに固定されている。つまり、取付部材67は天板1aに対して垂直に設けられている。クラッチ装置64は、取付部材67にボルトによって取り付けられている。つまり、クラッチ装置64は、取付部材67を介して天板1aに取り付けられている。
【0059】
トルクアーム68は、駆動軸65に固定されており、駆動軸65と共に回転する。つまり、駆動軸65は、モータ61にクラッチ装置64を介して接続されると共に、トルクアーム68が連結されている。そして、トルクアーム68は、駆動軸65(天板1a)から下方へ延びて第2反力生成部50に接続され、モータ61によって回転駆動されることにより、スライダ53を移動させるものである。
【0060】
より詳しくは、図9に示すように、トルクアーム68は、第2反力生成部50のスライダ53に接続されている。トルクアーム68とスライダ53との接続態様は、第1中立位置変更部30と同様である。つまり、トルクアーム68は、スライダ53の軸部55に回転自在に接続されている。トルクアーム68は、駆動軸65の回転に伴って回転することで、第2反力生成部50のスライダ53をロッド51に沿って移動(変位)させるように構成されている。
【0061】
第1中立位置変更部30および第2中立位置変更部60はそれぞれ、中立位置の変更動作として、「通常変更モード」と「急速変更モード」の2つの変更モードを実行可能である。
【0062】
「通常変更モード」は、モータ31,61を駆動して中立位置を比較的ゆっくりと変更する、いわゆるビープトリムと呼ばれる変更動作である。「急速変更モード」は、クラッチ装置34,64を遮断状態に切り換えて中立位置を急速に変更する、いわゆるFTR(Force Trim Release)と呼ばれる変更動作である。これら2つの変更モードは、操作スイッチ11aによって選択指示される。
【0063】
これら2つの変更モードの態様は、何れの中立位置変更部30,60においても同様であるため、ここでは、代表して、第1中立位置変更部30による「通常変更モード」および「急速変更モード」について説明する。なお、この説明において、バネ22、スライダ23およびトルクアーム38に関して言及する「方向」は、図8における方向とする。
【0064】
操縦士等が、操縦桿10(操作部11)を把持しながら、「通常変更モード」で中立位置を左に移動させるための操作スイッチ11aを押すと、モータ31が例えば一定速度で駆動され、トルクアーム38が時計回りに回転する。トルクアーム38の回転により、スライダ23が右へ移動する。ここで、操縦桿10は操縦士等によって把持されているので、第1操縦部材12およびロッド21(規制部24)は変位しない。そうすると、スライダ23の移動により、スライダ23の右側のバネ22は圧縮され、スライダ23の左側のバネ22は伸長する。その結果、左右のバネ22の弾性力の差異によってロッド21は右向きの反力を受け、これにより操縦士等に操縦反力が伝達される。この状態で操縦士等が操縦桿10の把持力を緩めると、操縦桿10(第1操縦部材12)は操縦反力によって左側へ傾き、操縦士等による把持力がゼロ(即ち、第1操縦部材12の操縦反力がゼロ)となった状態の第1操縦部材12の位置が、新たな中立位置となる。こうして、第1操縦部材12の中立位置が変更される。なお、この「通常変更モード」では、クラッチ装置34は伝達状態に保持されていることは勿論である。
【0065】
また、操縦士等が、操縦桿10(操作部11)を把持しながら、「通常変更モード」で中立位置を右に移動させるための操作スイッチ11aを押すと、モータ31が駆動され、トルクアーム38が反時計回りに回転する。トルクアーム38の回転により、スライダ23が左へ移動する。ここで、操縦桿10は操縦士等によって把持されているので、第1操縦部材12およびロッド21(規制部24)は変位しない。そうすると、スライダ23の移動により、スライダ23の左側のバネ22は圧縮され、スライダ23の右側のバネ22は伸長する。その結果、左右のバネ22の弾性力の差異によってロッド21は左向きの反力を受け、これにより操縦士等に操縦反力が伝達される。この状態で操縦士等が操縦桿10の把持力を緩めると、操縦桿10(第1操縦部材12)は操縦反力によって右側へ傾き、操縦士等による把持力がゼロ(即ち、第1操縦部材12の操縦反力がゼロ)となった状態の第1操縦部材12の位置が、新たな中立位置となる。このように、「通常変更モード」においては、モータ31は、2つのバネ22の弾性力が釣り合う位置にスライダ23を移動させることでバネ22を変位させる。
【0066】
次に、第1操縦部材12を左側へ傾ける操作を行っている時に、「急速変更モード」に対応する操作スイッチ11aを例えば1回押すと、クラッチ装置34が伝達状態から遮断状態に切り換えられる。そうすると、モータ31の出力軸32と駆動軸35との接続が遮断され、駆動軸35が解放状態(無拘束状態)になる。そのため、トルクアーム38も解放状態になる。そうすると、圧縮していた左側のバネ22の復元力(弾性力)によって、スライダ23が右側へ押される。このとき、トルクアーム38は解放状態であるため、スライダ23は抵抗なく瞬時に右側へ移動し、それに伴って、トルクアーム38が時計回りに瞬時に回転する。このように、「急速変更モード」では、クラッチ装置34が遮断状態に切り換わることによって、スライダ23は、両側のバネ22から受ける弾性力が釣り合う位置に瞬時に移動する。そして、両側のバネ22の弾性力が釣り合うと、スライダ23の移動動作およびトルクアーム38の回転動作が停止する。この状態で「急速変更モード」に対応する操作スイッチ11aを離すと、クラッチ装置34は伝達状態となり、このときの第1操縦部材12の位置が、新たな中立位置となる。こうして、第1操縦部材12の中立位置が急速に変更される。
【0067】
また、第1操縦部材12を右側へ傾ける操作を行っている時に、「急速変更モード」に対応する操作スイッチ11aを押すと、クラッチ装置34が伝達状態から遮断状態に切り換えられる。そうすると、駆動軸35およびトルクアーム38が解放状態になり、圧縮していた右側のバネ22の復元力(弾性力)によって、スライダ23が左側へ押される。このとき、トルクアーム38は解放状態であるため、スライダ23は抵抗なく瞬時に左側へ移動し、それに伴って、トルクアーム38が反時計回りに瞬時に回転する。そして、両側のバネ22の弾性力が釣り合うと、スライダ23の移動動作およびトルクアーム38の回転動作が停止する。この状態で「急速変更モード」に対応する操作スイッチ11aを離すと、クラッチ装置34は伝達状態となり、このときの第1操縦部材12の位置が、新たな中立位置となる。この場合も、第1操縦部材12の中立位置が急速に変更される。このように、「急速変更モード」においては、クラッチ装置34は、2つのバネ22の弾性力が釣り合う位置にスライダ23を移動させることでバネ22を変位させる。
【0068】
上述した「急速変更モード」では、バネ22の復元力によってスライダ23が瞬時に移動することから、慣性力によってスライダ23が、本来中立位置とすべき位置を超えて移動し過ぎてしまう、いわゆるオーバーシュート現象が起きる虞がある。こうしたオーバーシュート現象は操縦桿10の操作にとって望ましくないことから、本実施形態の模擬操縦装置100は、反力生成部20,50のロッド21,51の過大な移動速度を抑制するための第1油圧ダンパー40および第2油圧ダンパー70をさらに備えている。
【0069】
各油圧ダンパー40,70は、シリンダ41,71およびピストンロッド42,72を有している。第1油圧ダンパー40は、第1反力生成部20のロッド21と平行に設けられ、ピストンロッド42が第1操縦部材12の下端に連結ピン27によって連結されている。第2油圧ダンパー70は、第2反力生成部50のロッド51と平行に設けられ、ピストンロッド72が第2操縦部材13の下端に連結ピン57によって連結されている。各油圧ダンパー40,70は、ロッド21,51が過大な速度で移動することを連結ピン27,57を介して抑制する。
【0070】
以上のように、航空機の模擬操縦装置100は、筐体1を備える一方、操縦桿10と、第1反力生成部20と、第2反力生成部50と、第1中立位置変更部30と、第2中立位置変更部60とを筐体1内に備えている。操縦桿10は、上下方向に延び、第1回転軸14(第1水平軸)周りに回転自在な第1操縦部材12、上下方向に延び、第1回転軸14の下方に位置し且つ第1回転軸14に垂直な第2回転軸15周りに回転自在な第2操縦部材13を有している。第1反力生成部20は、第1操縦部材12に接続されており、第1操縦部材12の回転によって変位し第1操縦部材12の操縦反力を生成するバネ22(第1バネ)を有している。第2反力生成部50は、第2操縦部材13に接続されており、第2操縦部材13の回転によって変位し第2操縦部材13の操縦反力を生成するバネ52(第2バネ)を有している。第1中立位置変更部30は、第1操縦部材12の操縦反力がゼロになるようにバネ22を変位させて第1操縦部材12の中立位置を変更する第1アクチュエータ(モータ31、クラッチ装置34)を有している。第2中立位置変更部60は、第2操縦部材13の操縦反力がゼロになるようにバネ52を変位させて第2操縦部材13の中立位置を変更する第2アクチュエータ(モータ61、クラッチ装置64)を有している。そして、第1アクチュエータの出力軸(モータ31の出力軸32)は、第1反力生成部20よりも下方に位置し、第2アクチュエータの出力軸(モータ61の出力軸62)は、第2反力生成部50よりも上方に位置する。
【0071】
上記の構成によれば、回転中心(第1回転軸14)が高い位置にある第1操縦部材12においては、第1操縦部材12に接続される第1反力生成部20は、筐体1内の比較的高い位置に配置される。そのため、第1反力生成部20の下方空間において、第1アクチュエータの設置スペースを確保しやすい。そのため、第1アクチュエータの出力軸を第1反力生成部20よりも下方に余裕をもって位置させることができる。一方、回転中心(第2回転軸15)が低い位置にある第2操縦部材13においては、第2操縦部材13の下端側に接続される第2反力生成部50は、筐体1内の比較的低い位置に配置される。そのため、第2反力生成部50の下方空間においては、第2アクチュエータの設置スペースを確保しづらく、設置するとなると、筐体1の高さを高くせざるを得ない。そこで、本実施形態では、第2アクチュエータの出力軸を第2反力生成部50よりも上方に位置させるようにした。つまり、第2反力生成部50が低い位置に配置されるため、第2反力生成部50の上方に比較的広い空きスペースが形成される。そのため、第2アクチュエータの出力軸を第2反力生成部50よりも上方に位置させることにより、その空きスペースを利用して余裕をもって第2アクチュエータを設置することができる。これにより、筐体1の高さを低くすることができ、模擬操縦装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0072】
より具体的に、第1アクチュエータ(モータ31、クラッチ装置34)は、筐体1の底板1bに取り付けられ、第2アクチュエータ(モータ61、クラッチ装置64)は、筐体1の天板1aに取り付けられている。この構成によれば、天板1aおよび底板1bは強度部材であるため、第1および第2アクチュエータを強固に設置することができる。
【0073】
また、第1および第2アクチュエータは、モータ31,61(第1および第2モータ)である。第1中立位置変更部30は、筐体1の底板1b側から上方へ延びてスライダ23(第1スライダ)に接続され、モータ31の出力軸32によって回転駆動されることによりスライダ23を移動させるトルクアーム38(第1トルクアーム)をさらに有している。第2中立位置変更部60は、筐体1の天板1a側から下方へ延びてスライダ53(第2スライダ)に接続され、モータ61の出力軸62によって回転駆動されることによりスライダ53を移動させるトルクアーム68(第2トルクアーム)をさらに有している。
【0074】
上記の構成によれば、比較的嵩張るモータ61であっても、第2反力生成部50の上方の空きスペースを利用して、設置することができる。
【0075】
また、航空機の模擬操縦装置100は、第1アクチュエータとしてクラッチ装置34(第1クラッチ装置)をさらに備え、第2アクチュエータとしてクラッチ装置64(第2クラッチ装置)をさらに備えている。第1中立位置変更部30は、モータ31の出力軸32にクラッチ装置34を介して接続されると共に、トルクアーム38が連結される駆動軸35(第1駆動軸)をさらに有し、クラッチ装置34によってモータ31の出力軸32と駆動軸35との接続が遮断されると、トルクアーム38がバネ22の復元力によって回転することでスライダ23を移動させる。第2中立位置変更部60は、モータ61の出力軸62にクラッチ装置64を介して接続されると共に、トルクアーム68が連結される駆動軸65(第2駆動軸)をさらに有し、クラッチ装置64によってモータ61の出力軸62と駆動軸65との接続が遮断されると、トルクアーム68がバネ52の復元力によって回転することでスライダ53を移動させる。
【0076】
上記の構成によれば、中立位置の変更動作として、モータ31,61の駆動による変更動作(通常変更モード)と、クラッチ装置34,64を遮断状態に切り換えることによる変更動作(急速変更モード)の2つを構築することができる。その場合でも、モータ61およびクラッチ装置64の両方を、第2反力生成部50の上方の空きスペースを利用して、天板1aに取り付けることができる。
【0077】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0078】
例えば、模擬操縦装置100は、ヘリコプタ以外の航空機の模擬操縦装置としても適用することができる。
【0079】
また、中立位置変更部30,60は、第1および第2アクチュエータとして、モータ31,61のみを備えるようにしてもよい。その場合、例えば、各モータ31,61の出力軸32,62にトルクアーム38,68が連結される。中立位置の変更動作としては、上述した「通常変更モード」のみとなる。
【0080】
また、中立位置変更部30,60は、モータ31,61およびクラッチ装置34,64に代えて、第1および第2アクチュエータとして、第1および第2ブレーキ装置を備えるようにしてもよい。その場合、第1中立位置変更部30のトルクアームは、筐体1の底板1b側から上方へ延びてスライダ23(第1スライダ)に接続され、第1ブレーキ装置によって回転動作が制止されることによりスライダ23を拘束する一方、第1ブレーキ装置による制止が解放されると、バネ22(第1バネ)の復元力によって回転しスライダ23を移動させるように構成される。第2中立位置変更部60のトルクアームは、筐体1の天板1a側から下方へ延びてスライダ53(第2スライダ)に接続され、第2ブレーキ装置によって回転動作が制止されることによりスライダ53を拘束する一方、第2ブレーキ装置による制止が解放されると、バネ52(第2バネ)の復元力によって回転することでスライダ53を移動させるように構成される。具体的には、上記実施形態において、クラッチ装置34の位置に第1ブレーキ装置を設け、クラッチ装置64の位置に第2ブレーキ装置を設ける。第1ブレーキ装置には駆動軸35が接続され、第2ブレーキ装置には駆動軸65が接続される。モータ31,61およびクラッチ装置34,64は省略される。この例の場合、中立位置の変更動作としては、上述した「急速変更モード」のみとなる。
【0081】
また、モータ31,61およびクラッチ装置34,64の支持形態は、上記実施形態で説明した形態に限られない。例えば、モータ31およびクラッチ装置34は筐体1の天板1aによって支持され、モータ61およびクラッチ装置64は筐体1の底板1bによって支持されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態の模擬操縦装置100を2組用意して、互いに左右方向に並設するようにしてもよい。その場合、操縦士および副操縦士の両方が同時に模擬訓練を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
100 模擬操縦装置
1 筐体
1a 天板
1b 底板
10 操縦桿
12 第1操縦部材
13 第2操縦部材
14 第1回転軸(第1水平軸)
15 第2回転軸(第2水平軸)
20 第1反力生成部
21 ロッド(第1ロッド)
22 バネ(第1バネ)
23 スライダ(第1スライダ)
30 第1中立位置変更部
31 モータ(第1アクチュエータ)
32 出力軸
34 クラッチ装置(第1アクチュエータ)
35 駆動軸(第1駆動軸)
38 トルクアーム(第1トルクアーム)
50 第2反力生成部
51 ロッド(第2ロッド)
52 バネ(第2バネ)
53 スライダ(第2スライダ)
60 第2中立位置変更部
61 モータ(第2アクチュエータ)
62 出力軸
64 クラッチ装置(第2アクチュエータ)
65 駆動軸(第2駆動軸)
68 トルクアーム(第2トルクアーム)
図1
図2
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図9