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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240401BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240401BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 M
B60L3/00 C
B60L9/18 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020111173
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010532
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 脩一
(72)【発明者】
【氏名】川合 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 玲子
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-336647(JP,A)
【文献】特開2013-034316(JP,A)
【文献】特開平10-234130(JP,A)
【文献】特開2014-057475(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135858(WO,A1)
【文献】特開2005-137047(JP,A)
【文献】特開2017-028753(JP,A)
【文献】特開2007-166885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 3/00
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車に搭載された永久磁石同期電動機に三相交流電力を供給するインバータ装置であって、
複数の半導体スイッチの直列接続が直流電源に並列に複数接続されたインバータと、
前記インバータを制御する制御ユニットと、
を具備し、
前記インバータは、
前記半導体スイッチのスイッチングによって、前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、
前記交流電力を前記永久磁石同期電動機に供給し、
前記制御ユニットは、
前記インバータと前記永久磁石同期電動機との間に接続された真空接触器の投入を維持し、
前記インバータの動作開始から所定時間経過するまで、前記永久磁石同期電動機に連動する前記電気車の車輪にブレーキをかけ、
前記ブレーキの解除から所定時間経過後の前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる、
インバータ装置。
【請求項2】
電気車に搭載された永久磁石同期電動機に三相交流電力を供給するインバータ装置であって、
複数の半導体スイッチの直列接続が直流電源に並列に複数接続されたインバータと、
前記インバータを制御する制御ユニットと、
を具備し、
前記インバータは、
前記半導体スイッチのスイッチングによって、前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、
前記交流電力を前記永久磁石同期電動機に供給し、
前記制御ユニットは、
前記インバータと前記永久磁石同期電動機との間に接続された真空接触器の投入を維持し、
前記インバータの動作開始から所定時間経過するまで、前記永久磁石同期電動機に連動する前記電気車の車輪にブレーキをかけ、
前記ブレーキの解除後、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流が、予め設定された閾値以上になってから所定時間経過後の、前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させるインバータ装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流が、予め設定された閾値以上になってから閾値未満になった場合に、経過時間のカウントを維持する請求項に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記ブレーキを解除するまでの間、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流の電流値を第1電流値に制御し、
前記ブレーキの解除後、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流の電流値を、運転台からの指令に応じ且つ前記第1電流値よりも大きい第2電流値に制御する請求項乃至のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記インバータの前記半導体スイッチの温度を検出するサーミスタをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度と、予め設定された閾値とに基づいて、前記インバータを停止させる時間を制御する請求項1又は請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度が予め設定された閾値以上である場合、所定時間経過後に、前記インバータの停止を解除する請求項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度が予め設定された閾値未満になってから所定時間経過後に、前記インバータの停止を解除する請求項に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車は、インバータ装置と電動機とを備える。インバータ装置は、架線または第三軌条などから電力を受け取り、受け取った電力を用いて、電動機、及び電気車の種々の設備などに電力を供給する。電動機は、例えば、回転子に永久磁石が用いられた永久磁石同期電動機である。電動機は、インバータ装置からの電力の供給を受けて、電気車を力行させる。
【0003】
電気車の起動時、電動機の試験、または坂道で発進するなどの所定の条件において、電動機の回転軸が回転しない場合がある。誘導電動機は、回転子が固定されていてもすべり周波数があるため、特定の素子に電流が流れ続けることはなかった。これに対して、永久磁石同期電動機は、同期モータであるためすべりがない。この為、永久磁石同期電動機の回転子が固定されると、インバータ装置の特定の素子に電流が流れ続ける。この結果、インバータ装置の特定の素子の温度が増加し、素子が破壊される可能性があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-100435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安全なインバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施形態に係るインバータ装置は、電気車に搭載された永久磁石同期電動機に三相交流電力を供給するインバータ装置であって、インバータと、制御ユニットと、を具備する。インバータは、複数の半導体スイッチの直列接続が直流電源に並列に複数接続され、前記半導体スイッチのスイッチングによって、前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を前記永久磁石同期電動機に供給する。制御ユニットは、前記インバータを制御し、前記インバータと前記永久磁石同期電動機との間に接続された真空接触器の投入を維持し、前記インバータの動作開始から所定時間経過するまで、前記永久磁石同期電動機に連動する前記電気車の車輪にブレーキをかけ、前記ブレーキの解除から所定時間経過後の前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るインバータ装置を含む電気車制御装置の構成例について説明するための説明図である。
図2図2は、インバータの構成例について説明するための説明図である。
図3図3は、インバータから永久磁石同期電動機に供給される三相交流電力の例について説明するための説明図である。
図4図4は、永久磁石同期電動機の回転軸固着時に、インバータから永久磁石同期電動機に供給される三相交流電力の例について説明するための説明図である。
図5図5は、第1実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
図6図6は、第2実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
図7図7は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
図8図8は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットにて用いられる電流閾値の一例について説明するための図である。
図9図9は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の他の例について説明するための説明図である。
図10図10は、第4実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
図11図11は、第5実施形態において、運転台から電動機の試験を指示する信号(試験状態信号)が入力されている場合の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
図12図12は、第1乃至第5実施形態においてインバータを停止させるか否かの判断を行うタイミングを決定する為の判定時間の決定方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係るインバータ装置を含む電気車制御装置の構成例を示す説明図である。
電気車制御装置1は、例えば、電気車などの移動体に搭載される。電気車制御装置1は、架空電車線または第三軌条などの電車線2から集電器を介して直流電力を受け取り、受け取った直流電力を電動機の定格に応じた交流電力に変換し、電動機に交流電力を供給する。これにより、電気車制御装置1は、電動機の回転軸を回転させ、電動機の回転軸にギアなどを介して連動する車輪を回転させ、電気車に線路上を力行させる。
【0009】
図1に示されるように、電気車制御装置1は、集電シュー11、高速度遮断器12、第1断流器13、充電抵抗14、第2断流器15、フィルタリアクトル16、フィルタコンデンサ17、インバータ18、永久磁石同期電動機19、レゾルバ20、サーミスタ21、U相電流センサ22、W相電流センサ23、第1真空接触器24、第2真空接触器25、第3真空接触器26、車両側機器27、運転台28、及び制御ユニット29を備える。
【0010】
集電シュー11は、架線と電気的に接続され、第3軌条または架線から電力を集電する。
高速度遮断器12は、集電シュー11に接続される。高速度遮断器12は、閉路(投入)することにより、インバータ18と集電シュー11とを接続する。高速度遮断器12は、制御ユニット29からの投入指令に基づいて、投入と開放とを切り替える。
【0011】
第1断流器13及び充電抵抗14は、高速度遮断器12に直列に接続されている。第1断流器13は、制御ユニット29からの投入指令に基づいて、投入と開放とを切り替える。
第2断流器15は、第1断流器13及び充電抵抗14と並列に接続されている。第2断流器15は、制御ユニット29からの投入指令に基づいて、投入と開放とを切り替える。
【0012】
フィルタリアクトル16は、充電抵抗14と第2断流器15との接続点と、インバータ18とフィルタコンデンサ17との接続点の間に接続されている。
【0013】
フィルタコンデンサ17は、フィルタリアクトル16からみてインバータ18と並列に接続されている直流電源である。フィルタコンデンサ17の高圧側端子は、フィルタリアクトル16及びインバータ18に接続されている。フィルタコンデンサ17の低圧側端子は、インバータ18及びアース(例えば線路)に電気的に接続されている。フィルタコンデンサ17は、フィルタリアクトル16などを介して集電シュー11から供給された電力を平滑し、インバータ18に供給する。
【0014】
インバータ18は、例えば、可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)などのインバータ回路である。インバータ18は、供給された直流電力を交流電力(三相交流電力)に変換する。インバータ18は、変換した交流電力を永久磁石同期電動機(PMSM)19に供給する。
【0015】
図2は、図1に示すインバータの構成例について説明するための説明図である。
インバータ18は、それぞれ上アームと下アームとを構成する複数の半導体スイッチにより構成されたレグを3つ備える。図2に示されるようにインバータ18は、第1レグ31、第2レグ32、及び第3レグ33を有する。
【0016】
第1レグ31、第2レグ32、及び第3レグ33は、それぞれフィルタコンデンサ17に並列に接続されている。第1レグ31、第2レグ32、及び第3レグ33は、制御ユニット29からのインバータ動作信号に基づいて、後述する半導体スイッチをオンオフ制御する。これにより、第1レグ31、第2レグ32、及び第3レグ33は、フィルタコンデンサ17からの直流電圧により、永久磁石同期電動機19に交流電力を供給する。
【0017】
第1レグ31は、制御ユニット29によりオンオフ制御される半導体スイッチU及び半導体スイッチXを備える。半導体スイッチU及び半導体スイッチXは、MOSFET、IGBT、または他のパワー半導体などにより構成される。半導体スイッチUと半導体スイッチXとは、導通路が直列になるように接続されている。半導体スイッチUと半導体スイッチXとの接続点は、永久磁石同期電動機19に接続されている。半導体スイッチU及び半導体スイッチXは、電気車の力行時に一方がオンであり他方がオフになるように制御ユニット29により制御される。第1レグ31は、半導体スイッチUがオンであり、半導体スイッチXがオフである場合、永久磁石同期電動機19にU相の交流電力を供給する。また、第1レグ31は、半導体スイッチUがオフであり、半導体スイッチXがオンである場合、半導体スイッチXを介して、永久磁石同期電動機19から戻る電力をアースに流す。
【0018】
第2レグ32は、制御ユニット29によりオンオフ制御される半導体スイッチV及び半導体スイッチYを備える。半導体スイッチV及び半導体スイッチYは、MOSFET、IGBT、または他のパワー半導体などにより構成される。半導体スイッチVと半導体スイッチYとは、導通路が直列になるように接続されている。半導体スイッチVと半導体スイッチYとの接続点は、永久磁石同期電動機19に接続されている。半導体スイッチV及び半導体スイッチYは、電気車の力行時に一方がオンであり他方がオフになるように制御ユニット29により制御される。第2レグ32は、半導体スイッチVがオンであり、半導体スイッチYがオフである場合、永久磁石同期電動機19にV相の交流電力を供給する。また、第2レグ32は、半導体スイッチVがオフであり、半導体スイッチYがオンである場合、半導体スイッチYを介して、永久磁石同期電動機19から戻る電力をアースに流す。
【0019】
第3レグ33は、制御ユニット29によりオンオフ制御される半導体スイッチW及び半導体スイッチZを備える。半導体スイッチW及び半導体スイッチZは、MOSFET、IGBT、または他のパワー半導体などにより構成される。半導体スイッチWと半導体スイッチZとは、導通路が直列になるように接続されている。半導体スイッチWと半導体スイッチZとの接続点は、永久磁石同期電動機19に接続されている。半導体スイッチW及び半導体スイッチZは、電気車の力行時に一方がオンであり他方がオフになるように制御ユニット29により制御される。第3レグ33は、半導体スイッチWがオンであり、半導体スイッチZがオフである場合、永久磁石同期電動機19にV相の交流電力を供給する。また、第3レグ33は、半導体スイッチWがオフであり、半導体スイッチZがオンである場合、半導体スイッチZを介して、永久磁石同期電動機19から戻る電力をアースに流す。
【0020】
図3は、インバータ18から永久磁石同期電動機19に供給される三相交流電力の例について説明するための説明図である。図3の縦軸は、電流を示し、図3の横軸は、周波数を示す。
【0021】
第1レグ31と、第2レグ32と、第3レグ33とは、互いに位相の異なる交流電力を永久磁石同期電動機19に供給する。図3のU相は、第1レグ31を介して永久磁石同期電動機19に供給される交流電力を示す。図3のV相は、第2レグ32を介して永久磁石同期電動機19に供給される交流電力を示す。図3のW相は、第3レグ33を介して永久磁石同期電動機19に供給される交流電力を示す。図3に示されるように、永久磁石同期電動機19に供給されるU相の交流電力と、V相の交流電力と、W相の交流電力とは、互いに120°位相が異なる。即ち、インバータ18は、永久磁石同期電動機19に120°位相が異なる三相交流電力を供給する。
【0022】
永久磁石同期電動機19は、互いに星形結線された第1固定子巻線(U相コイル)、第2固定子巻線(V相コイル)、および第3固定子巻線(W相コイル)を備えた固定子と、固定子の中央部に形成された空間に回転可能に設けられた永久磁石回転子とを有する。U相コイルは、インバータ18の第1レグ31に接続されている。V相コイルは、インバータ18の第2レグ32に接続されている。W相コイルは、インバータ18の第3レグ33に接続されている。即ち、永久磁石同期電動機19は、三相式の永久磁石同期電動機である。
【0023】
永久磁石同期電動機19は、インバータ18から供給された三相交流電力に応じて動作し、機械的な動力を得る。インバータ18の第1レグ31、第2レグ32、及び第3レグ33からU相コイル、V相コイル、W相コイルにそれぞれ異なるタイミングで交流電力が供給される。各コイルに流れる電流によって各コイルに発生する磁場と、固定子の磁場との相互作用により、軸を回転させる機械的エネルギーが生じる。永久磁石同期電動機19の軸が回転すると、永久磁石同期電動機19の軸に連結されたギアなどを介して、電気車の車輪に駆動力が伝達し、電気車が力行する。
【0024】
レゾルバ20は、永久磁石同期電動機19の軸の回転を検出する速度検出手段である。レゾルバ20は、永久磁石同期電動機19の軸の回転数を検出し、制御ユニット29に検出結果を供給する。
【0025】
サーミスタ21は、インバータ18内の温度を検出し、温度検出結果を制御ユニット29に出力する。サーミスタ21は、例えば、インバータ18内の各レグの半導体スイッチの温度を検出する。また、サーミスタ21は、インバータ18内の所定の電流経路の近傍の温度を検出する構成であってもよい。
【0026】
U相電流センサ22は、インバータ18の第1レグ31から永久磁石同期電動機19のU相コイルに流れる電流を検出し、検出結果を制御ユニット29に出力する。
【0027】
W相電流センサ23は、インバータ18の第3レグ33から永久磁石同期電動機19のW相コイルに流れる電流を検出し、検出結果を制御ユニット29に出力する。
【0028】
第1真空接触器24、第2真空接触器25、及び第3真空接触器26は、それぞれインバータ18と永久磁石同期電動機19との間に接続される。第1真空接触器24は、インバータ18の第1レグ31と永久磁石同期電動機19のU相コイルとの間に接続されている。第2真空接触器25は、インバータ18の第2レグ32と永久磁石同期電動機19のV相コイルとの間に接続されている。第3真空接触器26は、インバータ18の第3レグ33と永久磁石同期電動機19のW相コイルとの間に接続されている。
【0029】
第1真空接触器24、第2真空接触器25、及び第3真空接触器26は、それぞれ閉路(投入)することにより、インバータ18と永久磁石同期電動機19とを接続する。第1真空接触器24、第2真空接触器25、及び第3真空接触器26は、制御ユニット29からの投入指令に基づいて、投入と開放とを切り替える。
【0030】
車両側機器27は、電気車の車輪に対してブレーキをかける機器である。車両側機器27は、例えば、空気ブレーキである。車両側機器27は、制御ユニット29からの指令に基づいて、圧縮空気でブレーキシリンダを動かし、制輪子を車輪に接触させることにより、空気ブレーキを有効にする。車両側機器27は、例えば、制御ユニット29からブレーキ解除指令を受信している間、車輪に対する空気ブレーキを解除する。また、車両側機器27は、制御ユニット29からブレーキ解除指令を受信していない場合、車輪に対して空気ブレーキをかける。
【0031】
運転台28は、制御ユニット29に種々の指令を出力する構成である。運転台28は、ノッチなどによる操作に応じて、インバータ動作指令、及び他の種々の指令を制御ユニット29に出力する。
【0032】
制御ユニット29は、高速度遮断器12の投入及び開放、第1断流器13の投入及び開放、第2断流器15の投入及び開放、インバータ18の各半導体スイッチのオンオフ動作、及び車両側機器27による空気ブレーキの動作の制御を行う。即ち、制御ユニット29は、高速度遮断器12への投入指令、第1断流器13への投入指令、第2断流器15への投入指令、インバータ18へのインバータ動作信号、車両側機器27へのブレーキ解除指令の出力をそれぞれ行う。制御ユニット29は、インバータ18とともに永久磁石同期電動機19に交流電力を供給するインバータ装置として構成される。また、制御ユニット29は、インバータ18と一体に構成されていてもよい。
【0033】
制御ユニット29は、レゾルバ20からの検出結果に基づいて、永久磁石同期電動機19の軸の回転速度を算出する回転速度演算部を有する。
制御ユニット29は、U相電流センサ22からの検出結果、W相電流センサ23からの検出結果、永久磁石同期電動機19の軸の回転速度、サーミスタ21からの温度検出結果、及び運転台からのインバータ動作指令などに基づいて、種々の指令及び信号を生成する。
【0034】
制御ユニット29は、インバータ18にインバータ動作信号を出力することにより、インバータ18の各半導体スイッチのオンオフを制御する。制御ユニット29は、インバータ18の第1レグ31の半導体スイッチU及び半導体スイッチX、第2レグ32の半導体スイッチV及び半導体スイッチY、並びに第3レグ33の半導体スイッチW及び半導体スイッチZを互いに120°位相をずらしてオンオフ制御する。これにより、インバータ18から永久磁石同期電動機19に三相交流電力を供給させる。
【0035】
制御ユニット29は、例えばパルス信号を生成する論理回路として構成される。また、制御ユニット29は、演算処理を実行する演算素子であるプロセッサと、プログラム及びプログラムで用いられるデータなどを記憶するメモリとを備え、プロセッサがプログラムを実行することにより、パルス信号(インバータ動作信号)を生成する構成であってもよい。
【0036】
図4は、永久磁石同期電動機19の回転軸固着時に、インバータ18から永久磁石同期電動機19に供給される三相交流電力の例について説明するための説明図である。図4の縦軸は、電流を示し、図4の横軸は、周波数を示す。
【0037】
上記のような構成において、第1真空接触器24、第2真空接触器25、及び第3真空接触器26などの真空接触器を開放することによりインバータ18の動作を停止させる場合、図3の交流電流のゼロクロス部で電流を遮断する必要がある。しかし、何らかの原因で車輪が拘束する、すなわち永久磁石同期電動機19の回転軸が停止した状態になる場合がある。この場合、図4に示されるように、インバータ18の出力電流が直流になる。また、真空接触器が固渋する可能性もある。
【0038】
例えば、運転台28から電動機の試験を指示する信号(試験状態信号)が入力されている場合、制御ユニット29は、真空接触器の投入を維持し、インバータ18を動作させ、且つ車両側機器27による空気ブレーキをかけて永久磁石同期電動機19の軸を回転させない状態にする。また、坂道などで発進する場合、制御ユニット29がインバータ18を動作させ、インバータ18から永久磁石同期電動機19に電力を供給しても、電気車の重さなどの負荷の為に永久磁石同期電動機19の軸が回転しない可能性がある。また、電気車の起動時、制御ユニット29は、真空接触器の投入を維持し、インバータ18を動作させ、且つ永久磁石同期電動機19の軸を回転させない状態にする。
【0039】
永久磁石同期電動機19の軸が回転せず、第1真空接触器24、第2真空接触器25、及び第3真空接触器26などの真空接触器の投入が維持されていると、インバータ18の特定の素子に電流が流れ続ける。図4の例では、インバータ18の第1レグ31から永久磁石同期電動機19のU相コイルに向かって電流が流れ続け、かつ永久磁石同期電動機19のV相コイル及びW相コイルからインバータ18の第2レグ32及び第3レグ33に向かって電流が流れ続けている。インバータ装置の特定の素子の温度が増加し、素子が破壊される可能性があるという課題がある。このように特定の素子に電流が流れ続けた場合、素子の温度が増加し、素子が破壊される可能性がある。
【0040】
次に、制御ユニット29の詳細な動作について説明する。
(第1実施形態)
図5は、第1実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
【0041】
「インバータ動作指令」は、運転台28から制御ユニット29に入力される信号を示す。
「インバータ動作信号」は、制御ユニット29からインバータ18に入力されるインバータ18の動作用の信号を示す。
【0042】
「インバータ出力電流」は、電流検出手段(U相電流センサ22またはW相電流センサ23)の検出結果に基づいて算出された値を示す。インバータ出力電流は、例えばインバータ18から永久磁石同期電動機19に供給される電流の実効値(電流Irms)である。
【0043】
「速度」は、レゾルバ20の検出結果に基づいて算出された永久磁石同期電動機19の軸の速度(回転速度)を示す。また、速度は、レゾルバ20の検出結果に基づいて算出された車両の走行速度などであってもよい。
【0044】
「空気ブレーキ」は、車両側機器27による電気車の車両の車輪に対するブレーキの有効の度合いを示す。
「ブレーキ解除指令」は、制御ユニット29から車両側機器27に入力される空気ブレーキの維持または解除を指示するための信号を示す。
【0045】
「インバータ停止指令」は、制御ユニット29からインバータ18に入力されるインバータ18の動作を停止させるための信号である。
「素子温度」は、サーミスタ21により検出されたインバータ18内の特定の素子の温度の検出結果を示す。
【0046】
制御ユニット29は、運転台28からのインバータ動作指令がオフからオンになると、インバータ18に入力するインバータ動作信号をオフからオンに切り替える。インバータ18に入力されるインバータ動作信号がオンになると、インバータ18が動作を開始し、永久磁石同期電動機19への電流の供給が開始され、インバータ出力電流が増加する。
【0047】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、所定時間(時間T1)経過後に、ブレーキ解除指令をオフからオンに切り替える。ブレーキ解除指令がオンになると、空気ブレーキが解除される。
【0048】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、インバータ出力電流が第1電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。さらに、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後、インバータ出力電流が第1電流値より高い第2電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。第2電流値は、運転台28からのインバータ動作指令に含まれるインバータ出力電流指令値に応じた値である。即ち、制御ユニット29は、2段階の電流値でインバータ18から電動機に電流が流れるようにインバータ18を制御する。
【0049】
また、制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、所定時間(時間T2)経過後に、インバータ18を停止させるか否か判断する。例えば、制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから時間T2経過後の速度と、予め設定された閾値とに基づいて、インバータ18を停止させるか否か判断する。
【0050】
具体的には、制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから時間T2経過後の速度が、予め設定された閾値未満である場合、インバータ18を停止させると判断する。制御ユニット29は、インバータ18を停止させると判断した場合、インバータ停止指令をインバータ18に出力する。
【0051】
インバータ18は、制御ユニット29からインバータ停止指令を受信した場合、動作を停止する。即ち、インバータ18は、制御ユニット29からインバータ停止指令を受信した場合、第1レグ31の半導体スイッチU及び半導体スイッチX、第2レグ32の半導体スイッチV及び半導体スイッチY、第3インバータ18の半導体スイッチW及び半導体スイッチZを停止させる。これにより、インバータ出力電流が0[A]になる。
【0052】
インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから時間T2経過後の速度が予め設定された閾値未満である場合、インバータ18から永久磁石同期電動機19に十分に電力が供給されており、且つ永久磁石同期電動機19の軸が回転が不十分であることが推測される。この為、制御ユニット29は、インバータ18を停止させることにより、インバータ18内の素子に電流が流れ続けることを防ぐことができる。
【0053】
また、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後にインバータ18からの出力電流を増加させることにより、永久磁石同期電動機19が回転していない間のインバータ出力電流の電流値を低く抑えることができる。これにより、制御ユニット29は、空気ブレーキ有効中に素子に流れる電流を抑制し、素子温度が素子許容温度に到達することを抑制することができる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態は、制御ユニット29がインバータ18を停止させるか否かを判断するタイミングを決定する基準が第1実施形態と異なる。第2実施形態の構成は、第1実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
【0055】
制御ユニット29は、空気ブレーキを解除してから、即ちブレーキ解除指令を出力してから所定時間(時間T3)経過後に、インバータ18を停止させるか否か判断する。例えば、制御ユニット29は、空気ブレーキを解除してから、即ちブレーキ解除指令を出力してから時間T3経過後の速度と、予め設定された閾値とに基づいて、インバータ18を停止させるか否か判断する。
【0056】
具体的には、制御ユニット29は、ブレーキ解除指令を出力してから時間T3経過後の速度が、予め設定された閾値未満である場合、インバータ18を停止させると判断する。制御ユニット29は、インバータ18を停止させると判断した場合、インバータ停止指令をインバータ18に出力する。
【0057】
ブレーキ解除指令を出力してから時間T3経過後の速度が予め設定された閾値未満である場合、インバータ18から永久磁石同期電動機19に十分に電力が供給されており、且つ永久磁石同期電動機19の軸の回転が不十分であることが推測される。この為、制御ユニット29は、インバータ18を停止させることにより、インバータ18内の素子に電流が流れ続けることを防ぐことができる。
【0058】
また、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後にインバータ18からの出力電流を増加させることにより、永久磁石同期電動機19が回転していない間のインバータ出力電流の電流値を低く抑えることができる。これにより、制御ユニット29は、空気ブレーキ有効中に素子に流れる電流を抑制し、素子温度が素子許容温度に到達することを抑制することができる。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は、制御ユニット29がインバータ18を停止させるか否かを判断するタイミングを決定する基準が第1実施形態と異なる。第3実施形態の構成は、第1実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
【0060】
図7は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、所定時間(時間T1)経過後に、ブレーキ解除指令をオフからオンに切り替える。ブレーキ解除指令がオンになると、空気ブレーキが解除される。
【0061】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、インバータ出力電流が第1電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。さらに、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後、インバータ出力電流が第1電流値より高い第2電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。
【0062】
制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であるか否か判断する。
図8は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットにて用いられる電流閾値の一例について説明するための図である。
本実施形態の制御ユニット29において用いられる電流閾値は、例えば図8に示すように、電流閾値のインバータ出力電流値としたときに、素子温度が素子許容温度に到達せずに飽和するようマージンを持たせた値に設定している。このように設定することで、例えば所定時間T4経過後に素子温度が素子許容温度を超えることを回避することが出来る。
【0063】
制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから、所定時間(時間T4)経過後に、インバータ18を停止させるか否か判断する。例えば、制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから時間T4経過後の速度と、予め設定された速度閾値とに基づいて、インバータ18を停止させるか否か判断する。
【0064】
具体的には、制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから時間T4経過後の速度が、予め設定された速度閾値未満である場合、インバータ18を停止させると判断する。制御ユニット29は、インバータ18を停止させると判断した場合、インバータ停止指令をインバータ18に出力する。
【0065】
インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから時間T4経過後の速度が予め設定された速度閾値未満である場合、インバータ18から永久磁石同期電動機19に十分に電力が供給されており、且つ永久磁石同期電動機19の軸が回転が不十分であることが推測される。この為、制御ユニット29は、インバータ18を停止させることにより、インバータ18内の素子に電流が流れ続けることを防ぐことができる。
【0066】
また、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後にインバータ18からの出力電流を増加させることにより、永久磁石同期電動機19が回転していない間のインバータ出力電流の電流値を低く抑えることができる。これにより、制御ユニット29は、空気ブレーキ有効中に素子に流れる電流を抑制し、素子温度が素子許容温度に到達することを抑制することができる。
【0067】
図9は、第3実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の他の例について説明するための説明図である。
図9に示されるように、運転台28の操作(運転手のマスコンの扱い)によって、インバータ出力電流が上記の電流閾値を上回った後に、電流閾値未満になる場合がある。制御ユニット29は、インバータ出力電流が上記の電流閾値を上回った後に、電流閾値未満になった場合であっても、上記の時間T4のカウントを継続する。即ち、制御ユニット29は、インバータ出力電流が電流閾値未満になった場合であっても、時間T4のカウントをリセットしない。
【0068】
素子の温度時定数は、インバータ出力電流に対して長い。この為、インバータ出力電流が閾値を短時間の間下回っても、素子の温度はほとんど変化しない。この為、インバータ出力電流が電流閾値未満になった場合に時間T4のカウントをリセットすると、素子温度が素子許容温度に到達する可能性がある。しかし、制御ユニット29は、インバータ出力電流が電流閾値未満になった場合であっても、上記の時間T4のカウントを継続することにより、インバータ18の動作を停止させ、インバータ18の素子の破壊を防ぐことができる。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態は、制御ユニット29がインバータ18を停止させるか否かを判断するタイミングを決定する基準が第1実施形態と異なる。第4実施形態の構成は、第1実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
【0070】
図10は、第4実施形態に係るインバータ装置の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。図10の素子温度と時間との関係に示されるように、素子温度が素子許容温度に到達寸前である状態で、運転台28からインバータ動作指令が制御ユニット29に入力された場合、所定時間(時間T1、時間T2、時間T3、または時間T4など)の経過を待たずに素子の温度が素子許容温度を超える可能性がある。
【0071】
この為、制御ユニット29は、インバータ動作指令が入力されてから、素子温度があらかじめ設定された温度閾値未満になるのに十分な時間である時間T5が経過するまで、インバータ停止指令を出力し続ける。制御ユニット29は、時間T5が経過してから、所定時間(時間T1)経過後に、ブレーキ解除指令をオフからオンに切り替える。ブレーキ解除指令がオンになると、空気ブレーキが解除される。
【0072】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、インバータ出力電流が第1電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。さらに、制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後、インバータ出力電流が第1電流値より高い第2電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。
【0073】
制御ユニット29は、空気ブレーキの解除後、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であるか否か判断する。
【0074】
制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから、所定時間(時間T4)経過後に、インバータ18を停止させるか否か判断する。例えば、制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから時間T4経過後の速度と、予め設定された速度閾値とに基づいて、インバータ18を停止させるか否か判断する。
【0075】
具体的には、制御ユニット29は、インバータ出力電流があらかじめ設定された電流閾値以上であると判断してから時間T4経過後の速度が、予め設定された速度閾値未満である場合、インバータ18を停止させると判断する。制御ユニット29は、インバータ18を停止させると判断した場合、インバータ停止指令をインバータ18に出力する。
【0076】
上記のように、制御ユニット29は、素子温度があらかじめ設定された温度閾値未満になるのに十分な時間である時間T5が経過するまで、インバータ18の動作を停止させる。これにより、素子の温度が素子許容温度を超えることを防ぐことができる。
【0077】
なお、制御ユニット29は、素子温度があらかじめ設定された温度閾値未満になるまでの間、インバータ停止指令を出力し続ける構成であってもよい。
【0078】
また、制御ユニット29は、素子温度があらかじめ設定された温度閾値未満になってからの経過時間が、予め設定された時間に達するまでの間、インバータ停止指令を出力し続ける構成であってもよい。
【0079】
(第5実施形態)
第5実施形態は、制御ユニット29がインバータ18を停止させる条件が第1実施形態と異なる。第5実施形態の構成は、第1実施形態と同様であるため、構成の説明を省略する。
【0080】
図11は、第5実施形態において、運転台から電動機の試験を指示する信号(試験状態信号)が入力されている場合の制御ユニットの動作の例について説明するための説明図である。試験状態信号が入力されている場合、制御ユニット29は、真空接触器の投入を維持し、インバータ18を動作させ、且つ車両側機器27による空気ブレーキをかけて永久磁石同期電動機19の軸を停止させる。即ち、ブレーキ解除指令がオフのままとなる。
【0081】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてから、所定時間(時間T6)が経過するまでの間、インバータ出力電流が第1電流値の電流になるようにインバータ18を制御する。即ち、制御ユニット29は、インバータ出力電流が運転台28からの指令に応じた電流値である第2電流値よりも低い値となるように、インバータ18を制御する。
【0082】
制御ユニット29は、インバータ動作信号をオフからオンに切り替えてからの経過時間が時間T6に達した場合、インバータ停止指令をインバータ18に出力する。
【0083】
これにより、制御ユニット29は、試験状態信号が入力されている場合、即ち試験中にインバータ出力電流の電流値を低く抑え、且つインバータ18の動作を開始させてから時間T6が経過後、インバータ18の動作を停止させる。これにより、インバータ18の特定の素子に電流が流れ続け、素子が発熱によって破壊されることを防ぐことができる。
【0084】
次に、上記の実施形態における所定時間の決定方法について説明する。
図12は、第1乃至第5実施形態においてインバータ18を停止させるか否かの判断を行うタイミングを決定する為の判定時間(時間T2、時間T3、時間T4、時間T5、または時間T6)の決定方法について説明するためのフローチャートである。
【0085】
制御ユニット29は、上記の実施形態において、インバータ18の動作を開始した場合、サーミスタ21により検出された温度が、予め設定された閾値(以下時間設定用温度閾値と称する)より大きいか否か判断する(ステップS1)。
【0086】
制御ユニット29は、サーミスタ21により検出された温度が、時間設定用温度閾値より大きいと判断した場合(ステップS1、YES)、時間設定用温度閾値以下であると判断した場合(ステップS1、NO)に比べて、判定時間を短時間に設定する(ステップS2)。
【0087】
また、制御ユニット29は、サーミスタ21により検出された温度が、時間設定用温度閾値以下であると判断した場合(ステップS1、NO)、時間設定用温度閾値より大きいと判断した場合(ステップS1、YES)に比べて、判定時間を長時間に設定する(ステップS3)。
【0088】
即ち、制御ユニット29は、サーミスタ21により検出された温度が、時間設定用温度閾値以下であるか否かに基づいて、インバータ18を停止させるか否かの判断を行うタイミングを決定するための所定時間(時間T2、時間T3、時間T4、時間T5、時間T6)を短くする。これにより、素子温度が素子許容温度に近い場合に、インバータ18の停止を早めることができる。この結果、インバータ18の特定の素子に電流が流れ続け、素子が発熱によって破壊されることを防ぐことができる。
【0089】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[付記1]
電気車に搭載された永久磁石同期電動機に三相交流電力を供給するインバータ装置であって、
複数の半導体スイッチの直列接続が直流電源に並列に複数接続されたインバータと、
前記インバータを制御する制御ユニットと、
を具備し、
前記インバータは、
前記半導体スイッチのスイッチングによって、前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、
前記交流電力を前記永久磁石同期電動機に供給し、
前記制御ユニットは、
前記インバータと前記永久磁石同期電動機との間に接続された真空接触器の投入を維持し、
前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる、
インバータ装置。
[付記2]
前記制御ユニットは、前記インバータの動作開始から所定時間経過後の前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる付記1に記載のインバータ装置。
[付記3]
前記制御ユニットは、
前記インバータの動作開始から所定時間経過するまで、前記永久磁石同期電動機に連動する前記電気車の車輪にブレーキをかけ、
前記ブレーキの解除から所定時間経過後の前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる付記1に記載のインバータ装置。
[付記4]
前記制御ユニットは、
前記インバータの動作開始から所定時間経過するまで、前記永久磁石同期電動機に連動する前記電気車の車輪にブレーキをかけ、
前記ブレーキの解除後、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流が、予め設定された閾値以上になってから所定時間経過後の、前記永久磁石同期電動機の速度が予め設定された閾値未満である場合、前記インバータを停止させる付記1に記載のインバータ装置。
[付記5]
前記制御ユニットは、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流が、予め設定された閾値以上になってから閾値未満になった場合に、経過時間のカウントを維持する付記4に記載のインバータ装置。
[付記6]
前記制御ユニットは、
前記ブレーキを解除するまでの間、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流の電流値を第1電流値に制御し、
前記ブレーキの解除後、前記インバータから前記永久磁石同期電動機に供給される電流の電流値を、運転台からの指令に応じ且つ前記第1電流値よりも大きい第2電流値に制御する付記3乃至5のいずれかに記載のインバータ装置。
[付記7]
前記インバータの前記半導体スイッチの温度を検出するサーミスタをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度と、予め設定された閾値とに基づいて、前記インバータを停止させる時間を制御する付記1に記載のインバータ装置。
[付記8]
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度が予め設定された閾値以上である場合、所定時間経過後に、前記インバータの停止を解除する付記7に記載のインバータ装置。
[付記9]
前記制御ユニットは、前記サーミスタの検出温度が予め設定された閾値未満になってから所定時間経過後に、前記インバータの停止を解除する付記7に記載のインバータ装置。
【符号の説明】
【0091】
1…電気車制御装置、2…電車線、11…集電シュー、12…高速度遮断器、13…断流器、14…充電抵抗、15…断流器、16…フィルタリアクトル、17…フィルタコンデンサ、18…インバータ、19…永久磁石同期電動機、20…レゾルバ、21…サーミスタ、22…U相電流センサ、23…W相電流センサ、24…真空接触器、25…真空接触器、26…真空接触器、27…車両側機器、28…運転台、29…制御ユニット、31…第1レグ、32…第2レグ、33…第3レグ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12