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  • 特許-魚釣用リール及び制動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】魚釣用リール及び制動装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/0155 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A01K89/0155
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020193052
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081857
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-055712(JP,A)
【文献】特開2018-113920(JP,A)
【文献】特開2017-216938(JP,A)
【文献】実開昭62-001575(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/0155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールを制動するスプール制動部と、該スプール制動部による制動力を制御可能なスプール制動力制御部と、モーションセンサと、第1のボタンと、を備える魚釣用リールであって、
該スプール制動力制御部は、該第1のボタン操作時の該モーションセンサの出力値に応じてブレーキ設定値を変更可能であることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記第1のボタンは、クラッチ操作ボタンを兼ねる、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記モーションセンサは加速度センサであり、前記ブレーキ設定値の変更は、釣竿が上
向き状態又は魚釣用リールが下向き状態のいずれかである場合に行う、請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記モーションセンサは角速度センサであり、その出力値に応じてブレーキ設定値の変
更を行う、請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記モーションセンサの出力値が、釣竿が上向きのときから所定の角度の範囲内にあることを示す場合、前記ブレーキ設定値を大きくし、前記モーションセンサの出力値が、スプール方向を地面に向けたときから所定の角度の範囲内にあることを示す場合、前記ブレーキ設定値を小さくし、前記モーションセンサの出力値がこれら以外の場合、前記ブレーキ設定値の変更を行わない、請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記釣竿が上向きのときから所定の角度は、±10°の範囲であり、前記スプール方向を地面に向けたときから所定の角度は、±10°の範囲である、請求項5に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動力を調整可能な魚釣用リール及びこれに用いる可能な制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸受リールを用いてルアーや釣糸、錘、釣針等の投擲対象物を遠方まで投擲する際、投擲時のバックラッシュ(糸がらみ)防止のためにスプールを制動する制動装置が設けられることが多い。このような制動装置では、制動力が最適化された際に最も遠方まで投擲することができるが、制動力が大きすぎると飛距離の減少を招き、他方で、制動力が小さすぎるとバックラッシュを招いてしまう。制動力の最適化は、投擲するルアー等の重量や空気抵抗、釣り糸の種類、竿の特性といった使用する釣具の種類によって変わり得る。また、ユーザの投擲方法、風等の気象条件によっても変わり得る。ユーザは使用時に試行錯誤しながら制動力を調整する必要がある。
【0003】
このような魚釣用リールとして、例えば、特許文献1では、キャスティングに用いられ、リール本体に回転自在に装着され釣り糸が装着されるスプールを制動する両軸受リールのスプール制動装置であって、スプールとリール本体とに設けられ、電気的に制御可能に前記スプールを制動するスプール制動手段と、リール本体に移動自在に設けられ複数の第1操作位置に操作可能な第1操作具と、リール本体に移動自在に設けられ複数の第2操作位置に操作可能な第2操作具と、第1操作具の第1操作位置及び第2操作具の第2操作位置に応じてスプール制動手段の制動力を電気的に制御するスプール制御手段とを備えた両軸受リールのスプール制動装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-135417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、制動力の変更は2つの操作具により行うものであり、両手を使うことなく制動力を変更することができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザが意図しない制動力変更を回避しつつ、両手を使うことなく簡易かつ確実に制動力の変更を行うことが可能な魚釣用リール及びこれに用いる制動装置を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールを制動するスプール制動部と、該スプール制動部による制動力を制御可能なスプール制動力制御部と、モーションセンサと、を備え、該スプール制動力制御部は、該モーションセンサの出力値に基づき検出された魚釣用リールの姿勢に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールを制動するスプール制動部と、該スプール制動部による制動力を制御可能なスプール制動力制御部と、モーションセンサと、第1のボタンと、を備え、該スプール制動力制御部は、該第1のボタン操作時の該モーションセンサの出力値に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記第1のボタンは、クラッチ操作ボタンを兼ねる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記モーションセンサは加速度センサであり、前記ブレーキ設定値の変更は、釣竿が上向き状態又は魚釣用リールが下向き状態のいずれかである場合に行う。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記モーションセンサは角速度センサであり、その出力値に応じてブレーキ設定値の変更を行う。
【0012】
本発明の一実施形態に係る制動装置(スプール制動装置)は、魚釣用リールのスプールを制動するスプール制動部と、スプール制動部による制動力を制御可能なスプール制動力制御部と、を備え、該スプール制動力制御部は、入力されたモーションセンサの出力値に基づき検出された魚釣用リールの姿勢に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【発明の効果】
【0013】
上記実施形態によれば、ユーザが意図しない制動力変更を回避しつつ、両手を使うことなく簡易かつ確実に制動力の変更を行うことが可能な魚釣用リール及びこれに用いる制動装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの制動部又は制動装置を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの検出部を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける基準軸を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの第1のボタンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の構成について説明する。
【0017】
図示のように、魚釣用リール10は、スプール11に釣糸31を巻き取り、スプール11から釣糸31が放出可能な状態と不能な状態とを切り替え、釣糸31に設定値以上の張力をかけるとスプール11が空転し(ドラグ機能)、上記の閾値張力を設定し、キャスト時のバックラッシュを防止するための制動力を調整することができる。
【0018】
スプール11は、釣糸31を巻回可能であり、操作部14によって正回転させると釣糸31を巻き取ることができる。クラッチ12は、操作部14との動力伝達の接続・解放を選択することができる。接続状態では操作部14による巻き取りが可能である。開放状態ではスプール11を正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸31は放出可能となる。また、ドラグ装置13は、釣糸31に設定した張力以上の負荷がかかると、スプール11を空転させることができる。また、スプール11の回転に連動して、釣糸を案内するラインガイドを往復運動させることで、釣糸31をスプール11に均等に巻き取る公知のオシレータ装置を設けてもよい。
【0019】
操作部14は、例えば、ハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ等の伝達機構によってスプール11に伝え、該スプール11を正回転することができる。なお、操作部14は、レバー等の操作部材と、モータ等の動力源との組み合わせでもよい。また、制動部(スプール制動部)15は、スプールに制動力を働かせることができる。これにより、キャスティング時のバックラッシュ発生を抑制する。この制動力は、制動力制御部(スプール制動力制御部)16で設定できる。
【0020】
次に、制動部(スプール制動部)15について図2を用いてより詳細に説明する。制動部(スプール制動部)15は、スプール11に一体的に取り付く非磁性導体からなる環状回転体状の渦電流発生板51の径方向に微小間隙を以て対向配置する環状で周方向に交互にN極とS極が着磁される固定磁石と回転磁石とを備え、この回転磁石を回転させるモータと磁石の回転位置を検出すると、渦電流発生板51と対向して配置される固定磁石52と、固定磁石52の反対側から渦電流発生板51を挟み込む回転磁石53と、回転磁石53を回転移動させるモータ54(図示しない)と、モータ54の駆動を減速して第2の永久磁石53に伝達するギヤ列55と、永久磁石53の位置を検出する磁石位置センサが配設されている磁石位置センサ56とによって構成される。
【0021】
固定磁石52は、外周部が6等分されN極S極交互に着磁される。また、回転磁石53は、内周部が6等分されN極S極交互に着磁される。固定磁石52と回転磁石53によって作られた磁場は、その間に位置する渦電流発生板51を貫通する。したがって、スプール11の回転時には、渦電流発生板51に渦電流が発生し、回転速度に応じた制動力が働く。
【0022】
当該モータ54およびギヤ列55によって回転磁石53を回転させることで、渦電流発生板51に働く磁場を変化させることができる。これにより、制動力を所定の量に設定することができる。すなわち、回転磁石53と固定磁石52を同極同士で対向させると、渦電流発生板51にかかる磁場は弱くなり、制動力は弱くなる。回転磁石53と固定磁石52を異極同士で対向させると、渦電流発生板51にかかる磁場は強くなり、制動力は強くなる。
【0023】
磁石位置センサ56は、回転磁石53の位置を検出するセンサであり、磁気センサや電気抵抗式等の公知の位置センサで構成される。
【0024】
制動力制御部(スプール制動力制御部)16は、磁石位置センサ56の値を見ながらモータ54に必要な電流を流すことで、モータ54をフィードバック制御する。これにより、スプール11に所定の制動力を与えることができる。このように、制動力制御部(スプール制動力制御部)設定部16によって、スプール11に与える制動力を経時的に変更することができる。
【0025】
なお、渦電流発生板51は、スプール11の一部で構成するようにすることができる。また、渦電流発生板51は、公知のようにスプール11の回転スピードに応じて遠心力の作用によりスプール11に対して相対移動させることで磁場を変化させ、所定の制動力特性を持たせるようにしてもよい。
【0026】
また、上述した制動部(スプール制動部)15は、上述のような渦電流を利用する方式に限らず、マイコンで制動力を経時的に調整可能なものであれば、同様の効果を実現できる。制動装置の他の方式には、スプールに取り付けた永久磁石とリール本体に設けたコイルとの間に回生ブレーキを発生させる方式や、スプールに取り付けた摩擦板への接触力を電磁アクチュエータ等で変化させる接触ブレーキを用いる方式等があり、特定の方式に限定されるものではない。
【0027】
次に、図3は、リール10の電気的な構成を示す図である。魚釣用リール10は、ユーザによる各種操作や、リールの状態を検出する検出部(センサ)19を有する。検出結果は演算部17に送られ、必要に応じて演算処理や、記憶部18で一時保存された後、制動力制御部16に目標制動力を指示する。検出部19には、下記のものが挙げられる。コストや大きさなどの制限から、一部を省略してもよい。
【0028】
クラッチ状態検出部191は、リール10から釣糸31が放出可能であるか否かを検出する。クラッチ12の接続状態を検出することで実現できる。クラッチの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。
【0029】
次に、方位検出部192は、地磁気の方向を検出することで、リール10の向いている方角を検出することができる。加速度検出部193は、リール10の並進方向の加速度を検出する。ピエゾ抵抗方式や静電容量検出方式などの、従来公知の加速度センサを利用することにより実現できる。また、角速度検出部194は、リール10の角速度(回転方向の速度)を検出する。振動させた圧電素子の周波数変化を検知する方式など、従来公知のジャイロセンサを利用することにより実現できる。
【0030】
なお、直交する3軸それぞれの方位、加速度、角速度を検出する9軸モーションセンサと呼ばれるセンサを利用することで、方位検出部192、加速度検出部193、角速度検出部194とすることができる。以後、これらをモーションセンサと呼ぶ。これらの検出結果を演算することで、リール10を取付けた釣竿の姿勢やユーザによる操作を取得できる。
【0031】
例えば、釣竿を静止させた状態にて、加速度検出部193によって直交する3軸それぞれの加速度を検出することで、重力に対する釣竿の方向を取得できる。また、各々のセンサの出力値には、誤差を含む可能性がある。したがって、モーションセンサの複数の出力値から、カルマンフィルタなどの公知の演算手法を使って、リールの位置や姿勢を確立的に推定することで、より正確な値を得ることができる。なお、モーションセンサは、釣竿に配置してもよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10は、釣糸を巻回可能なスプール11と、該スプール11を制動するスプール制動部15と、該スプール制動部15による制動力を制御可能なスプール制動力制御部16と、モーションセンサ19と、第1のボタン21と、を備え、該スプール制動力制御部16は、該モーションセンサ19の出力値に基づき検出された魚釣用リールの姿勢に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【0033】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10によれば、ユーザが意図しない制動力変更を回避しつつ、両手を使うことなく簡易かつ確実に制動力の変更を行うことが可能な魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10は、釣糸を巻回可能なスプール11と、該スプール11を制動するスプール制動部15と、該スプール制動部15による制動力を制御可能なスプール制動力制御部16と、モーションセンサ19と、第1のボタン21と、を備え、該スプール制動力制御部16は、該第1のボタン21操作時の該モーションセンサ19の出力値に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【0035】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10によれば、ユーザが意図しない制動力変更を回避しつつ、簡易かつ確実に制動力の変更を行うことが可能な魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10において、当該第1のボタン21は、クラッチ操作ボタンを兼ねる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10において、当該モーションセンサ19は加速度センサであり、当該ブレーキ設定値の変更は、釣竿が上向き状態又は魚釣用リール10が下向き状態のいずれかである場合に行う。
【0038】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10において、当該モーションセンサ19は角速度センサであり、その出力値に応じてブレーキ設定値の変更を行う。
【0039】
本発明の一実施形態に係る制動装置(スプール制動装置)1は、魚釣用リール10のスプール11を制動するスプール制動部15と、スプール制動部15による制動力を制御可能なスプール制動力制御部16と、を備え、該スプール制動力制御部16は、入力されたモーションセンサ19の出力値に基づき検出された魚釣用リールの姿勢に応じてブレーキ設定値を変更可能であるように構成される。
【0040】
本発明の一実施形態に係る制動装置1によれば、ユーザが意図しない制動力変更を回避しつつ、両手を使うことなく簡易かつ確実に制動力の変更を行うことが可能で魚釣用リールに用いることができる制動装置を提供することが可能となる。
【0041】
次に、制動力制御部16又は制動装置1の制動力調整方法について説明する。なお、以下では、図4に示すように釣竿の長手方向をX軸、ハンドル回転軸方向をY軸、X軸とY軸に直交する方向をZ軸と定義する。加速度センサは、それぞれの軸方向の加速度を検出可能である。また、角速度センサは、それぞれの軸方向回りの角速度を検出可能である。また、地磁気センサは、それぞれの軸方向における地磁気の成分を検出可能である。
【0042】
検出部(センサ)によりクラッチ操作が行なわれたときの魚釣用リール10の姿勢(重力方向とのなす角)を取得し、その時の姿勢に応じて制動力の設定を行なう。すなわち、姿勢が状態Aであれば、制動力を大きくする。姿勢が状態Bであれば、制動力を小さくする。それ以外であれば、制動力の変更を行わない。
【0043】
ここで、状態Aとは、通常のキャスト動作とは区別しやすく、かつユーザが無理なく操作可能な状態であり、例えば、X軸と重力方向のなす角が180°(釣竿が上向きのとき)から所定の範囲内(例えば±10°)のときを指す。他方、状態Bとは、通常のキャスト動作とは区別しやすく、かつユーザが無理なく操作可能で、状態A以外の状態である。例えば、Z軸と重力方向のなす角が0°から所定の範囲内(例えば±10°)のとき(スプール方向を地面に向けたとき)を指す。
【0044】
これにより、ユーザはリールから手を離すことなく、制動力の変更をすることができる。両手を使うことなく制動力の変更ができるため、操作性の向上を実現することができる。また、通常のキャスト動作中に制動力が意図せずに変わってしまうのを避けることができる。また、竿を激しく動かさないときのリールの向きは、3軸加速度センサによって重力方向を検出することで推定することができる。これにより、比較的少ない演算負荷でリールの姿勢を検出することができる。
【0045】
また、クラッチ操作を行なったときのリールの姿勢によって制動力を変更することで、ブレーキ設定変更のための新たな操作手段を設ける必要がない。これにより、リール全体の小型化や低コスト化、防水性の向上などが実現できる。
【0046】
なお、制動力を変更するための条件判断は、重力方向とのなす角以外の値でも良く、方位検出部192によって釣竿の向けた方向によって判断しても良いし、角速度検出部194によってリールを動かす角速度の方向や大きさによって判断しても良い。
【0047】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10について説明する。図示のように、魚釣用リール10には制動力変更のための専用の操作ボタン21を設けられている。この例では、操作ボタン21を押したときの状態によって制動力を設定する。ユーザは制動力を変更したいときのみこのボタンを操作する。これにより、通常のキャスト時にはこのボタンを押すことがないため、様々な姿勢を制動力変更に用いることができる。
【0048】
また、例えば、操作ボタンを押したときの竿の仰角によって制動力を決めるようにしてもよい。すなわち、例えば、制動力を6段階に設定できるようにした場合、釣竿の向き(X軸)が水平方向のときを0°として、0°~15°の範囲にあれば設定1、15°~30°の範囲にあれば設定2、…75°~90°(鉛直方向)にあれば設定6、というように設定を行う。
【0049】
これにより、制動力の変更を大幅に変えたい時又は微調整をしたい時のいずれの場合も、魚釣用リール10から手を離すことなく1つの操作で変更することができる。また、専用の操作ボタン21を有するため、通常のキャスト時にはユーザの意図しない設定変更が発生してしまうのを避けることができる。
【0050】
なお、本発明による制動力変更方法と、別の制動力変更方法(例えば、操作ダイヤル)との双方を有する構成としてもよい。その場合、携帯電話等の外部機器や、魚釣用リール10内の操作手段によって、本発明による制動力変更方法のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。これにより、個々のユーザの好みに応じて制動力変更方法を選択することが可能となる。
【0051】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 制動装置
10 魚釣用リール
11 スプール
12 クラッチ
14 操作部
15 制動部(スプール制動部)
16 制動力制御部(スプール制動力制御部)
17 演算部
18 記憶部
19 検出部(センサ)
21 第1のボタン
51 渦電流発生板
52 固定磁石
53 回転磁石
54 モータ
55 ギヤ列
56 磁石位置センサ
図1
図2
図3
図4
図5