(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20240401BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240401BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240401BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240401BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240401BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/627
(21)【出願番号】P 2020201667
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-41418(JP,A)
【文献】特開2010-116862(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52-10/667
F28D 1/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室が前記機器の側方に配設され、前記冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の冷却装置であって、
前記冷媒充填室の伝熱板における冷媒が充填される側である内壁面は、重力方向に沿った上下方向の部位のうち、前記冷媒の沸騰により発生する気泡が滞留する部位に応じて濡れ性改善のための表面改質加工が施されて
おり、
前記内壁面は、重力方向に沿った上下方向のうち相対的に、底面側に位置する前記内壁面よりも、前記冷媒の液面側に位置する前記内壁面の方が濡れ性が高く設定されている冷却装置。
【請求項2】
発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室が前記機器の側方に配設され、前記冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の冷却装置であって、
前記冷媒充填室の伝熱板における冷媒が充填される側である内壁面は、重力方向に沿った上下方向の部位のうち、前記冷媒の沸騰により発生する気泡が滞留する部位に応じて濡れ性改善のための表面改質加工が施されて
おり、
前記冷媒充填室は、内部圧力による膨張変形を抑制するように、対向される前記伝熱板同士を部分的に接合する接合部を有し、
重力方向に沿った上下方向のうち、前記接合部より上方側の前記内壁面が、前記接合部より下方側の前記内壁面よりも濡れ性が高く設定されている冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記冷媒充填室は、内部圧力による膨張変形を抑制するように、対向される前記伝熱板同士を部分的に接合する接合部を有し、
重力方向に沿った上下方向のうち、前記接合部より上方側の前記内壁面が、前記接合部より下方側の前記内壁面よりも濡れ性が高く設定されている冷却装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の冷却装置であって、
前記接合部は、複数個備えられ、それらが前記伝熱板に沿って千鳥配置されている冷却装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記接合部は、水平方向に複数個が並ぶと共に重力方向に複数列が配置されており、
前記冷媒の液面よりも下方に位置する接合部の周囲の前記内壁面は、
前記接合部の水平方向側方の前記内壁面の濡れ性の設定に対して、前記接合部より上方側の前記内壁面が濡れ性が高く設定され、
前記接合部の水平方向側方の前記内壁面の濡れ性の設定に対して、前記接合部より下方側の前記内壁面が濡れ性が低く設定されている冷却装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記内壁面における濡れ性改善のための表面改質加工は、レーザーによるディンプル、線形状、格子形状のいずれか又はこれらの組み合わせによる凹凸加工が施されている冷却装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記発熱する機器として、複数の電池セルを組み合わせて一つの電池が構成された電池モジュールを冷却する冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のような冷却装置が知られている。係る特許文献1における冷却装置は、発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室の伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の装置である。そして、特許文献1には、発熱する機器としての電池セルの下面に冷却水が流れ電池下面を冷却し、さらにプレートを伝って電池側面を冷却する技術が開示されている。ところで、この電池セル上下方向の高さが大きくなると、下面から離れた上面側の冷却効率が低下することが考えられる。そのため、冷却装置には、冷媒充填室が機器の側方に配設し、冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する所謂縦型の構造のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒充填室内は、沸騰伝熱に伴う冷却の際に冷媒の沸騰による気泡が発生するところ、冷媒充填室が縦型の構造のため気泡が液面近傍の一定箇所に滞留してしまうことに伴う冷却効率の低下が懸念されており更なる改善が望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室が前記機器の側方に配設され、前記冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の冷却装置であって、冷媒の沸騰による気泡の発生及び滞留を抑制して冷却効率の低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の冷却装置は次の手段をとる。先ず、第1の発明は、発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室が前記機器の側方に配設され、前記冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の冷却装置であって、前記冷媒充填室の伝熱板における冷媒が充填される側である内壁面は、重力方向に沿った上下方向の部位のうち、前記冷媒の沸騰により発生する気泡が滞留する部位に応じて濡れ性改善のための表面改質加工が施されている。
【0007】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る冷却装置において、前記内壁面は、重力方向に沿った上下方向のうち相対的に、底面側に位置する前記内壁面よりも、前記冷媒の液面側に位置する前記内壁面の方が濡れ性が高く設定されている。
【0008】
次に、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る冷却装置において、前記冷媒充填室は、内部圧力による膨張変形を抑制するように、対向される前記伝熱板同士を部分的に接合する接合部を有し、重力方向に沿った上下方向のうち、前記接合部より上方側の前記内壁面が、前記接合部より下方側の前記内壁面よりも濡れ性が高く設定されている。
【0009】
次に、第4の発明は、上記第3の発明に係る冷却装置において、前記接合部は、複数個備えられ、それらが前記伝熱板に沿って千鳥配置されている。
【0010】
次に、第5の発明は、上記第3の発明または第4の発明に係る冷却装置において、前記接合部は、水平方向に複数個が並ぶと共に重力方向に複数列が配置されており、前記冷媒の液面よりも下方に位置する接合部の周囲の前記内壁面は、前記接合部の水平方向側方の前記内壁面の濡れ性の設定に対して、前記接合部より上方側の前記内壁面が濡れ性が高く設定され、前記接合部の水平方向側方の前記内壁面の濡れ性の設定に対して、前記接合部より下方側の前記内壁面が濡れ性が低く設定されている。
【0011】
次に、第6の発明は、上記第1の発明から第5の発明のいずれかに係る冷却装置において、前記内壁面における濡れ性改善のための表面改質加工は、レーザーによるディンプル、線形状、格子形状のいずれか又はこれらの組み合わせによる凹凸加工が施されている。
【0012】
次に、第7の発明は、上記第1の発明から第6の発明のいずれかに係る冷却装置において、前記発熱する機器として、複数の電池セルを組み合わせて一つの電池が構成された電池モジュールを冷却する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、発熱する機器の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室が前記機器の側方に配設され、前記冷媒充填室における伝熱板を介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の冷却装置であって、冷媒の沸騰による気泡の発生及び滞留を抑制して冷却効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態を示す主要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための実施形態について、
図1~
図5を用いて説明する。本実施形態は、電気自動車に用いられる電池モジュールの冷却構造を例示して説明する。ここで、電池モジュールの各方向は、図にX、Y、Zの矢印で示すように、X方向(またはX1、X2側)、Y方向(またはY1、Y2側)、Z方向(またはZ1、Z2側)として説明する。ここで、Z方向は重力方向である。なお、これらの方向に関しては、各図においても同様である。
【0016】
<全体構成>
図1に示すように、電池モジュールは、複数の電池セル6を直列接続して組み合わせている。ここでは電池セル6を6個だけ示すが、必要数だけ組み合わされる。各電池セル6の側部(X1側)には、電池セル6をまとめて冷却するための冷却装置1が配設される。電池セル6と冷却装置1は、保持枠2によって一体化される。
【0017】
<冷却装置の構成>
図1~3に示すように冷却装置1は、2枚の鋼板1a、1bの周縁部が面合わせで溶接結合されて一つの密封空間が形成され、その密封空間内に冷媒としてのハイドロフルオロカーボン(HFC)が充填されて冷媒充填室10が構成されている。鋼板1aの冷媒充填室10を形成する領域の一部には、複数の凹部11aが形成されて凹凸面11が形成されている。各凹部11aは、鋼板1aが円形スポット状に鋼板1bに向けて窪まされて、各凹部11aの底部が鋼板1bに溶接接合された接合部12を有する。ここで、鋼板1a、1bが、本発明における冷媒充填室10における「伝熱板」に相当する。
【0018】
各凹部11aは、Y方向に沿ってZ方向に2列で並べて複数個配設されている。さらに、Z方向に配設された2列の凹部11aは、互いにY方向に位置ずれした千鳥配置とされている。上下2列で千鳥配置された凹部11aは2枚の鋼板1a、1bの各溶接部分同士の間隔が概ね等しくなるように配置されている。その結果、冷媒に加えられる冷媒充填室10の内圧による応力が各溶接部分の一部に集中しないようにされている。このように、冷媒充填室10は、凹部11aが形成されることにより、冷媒充填室10内を流れる冷媒の圧力を受けて鋼板1a、1b間の隙間が拡がるように変形(膨張変形)することが防止されている。各凹部11aは、Y方向に沿ってZ方向に2列の態様を示したが、複数列であれば2列以上であってもよい。
【0019】
冷媒充填室10のY方向の一方側には、電池セル6からの熱を受けて気化した冷媒が流出する冷媒流出路16が設けられている。冷媒流出路16と凝縮器3の間は流路4を介して接続されている。冷媒充填室10のY方向の他方側には、凝縮器3で凝縮し、冷却して循環される冷媒が冷媒充填室10に流入する冷媒流入路18が設けられている。凝縮器3と冷媒流入路18の間は、流路5を介して接続されている。なお、電池セル6が、本発明の「発熱する機器」に相当する。
【0020】
このような構成により、冷媒充填室10では、各電池セル6の熱を受けて気化した冷媒が冷媒流出路16から流出して
図1の矢印で示すように流路4を通って凝縮器3に送られる。凝縮器3で凝縮、冷却されて再度液化された冷媒は、
図1の矢印で示すように流路5を通って冷媒流入路18から冷媒充填室10に循環される。この作用の繰り返しにより、冷媒充填室10によって各電池セル6の冷却が行われる。この間、冷媒充填室10内で液化された冷媒は、
図2、3に二点鎖線で示す液位11kに維持される。よって、冷媒充填室10は、鋼板1a、1b間における各凹部11aを除いた空間を冷媒が流れる冷媒流路として機能する。以上より、冷却装置1は、電池セル6の熱を受けて気化される冷媒が充填される冷媒充填室10が電池セル6の側方に配設され、冷媒充填室10における鋼板1a、1bを介して沸騰伝熱により冷却する沸騰冷却方式の装置となる。ここで、冷媒充填室10による各電池セル6の冷却は、冷媒充填室10の鋼板1aと各電池セル6の間における、熱伝導体8(例えば、合成樹脂製の電熱用樹脂シート)を介して冷却するものを示したが、冷媒充填室10の鋼板1aと各電池セル6が直接接触して冷却する態様であってもよい。
【0021】
<冷媒充填室の内壁面の表面改質加工>
冷媒充填室10の鋼板1a、1bにおける冷媒が充填される側である内壁面20について説明する。内壁面20は、重力方向に沿った上下方向(Z方向)の部位のうち、冷媒の沸騰により発生する気泡が滞留する部位に応じて濡れ性改善のための表面改質加工が施されている。
図3、4に示すように、内壁面20における濡れ性改善のための表面改質加工は、レーザー照射によるディンプル30による凹凸加工が施されている。また、表面改質加工は、
図4に示したレーザー照射によるディンプル30以外にも、
図5に示すように微細な溝40を線形状、格子形状にするものでもよいし、またこれらディンプル30、溝40による線形状、格子形状の組み合わせであってもよい。
【0022】
ディンプル30、溝40は、レーザーを照射することで内壁面20に微細な穴又は溝を複数、設けるものである。ここで、レーザーは、周波数20~80kHz、速度0.5~2.0m/sec、ピッチ60~1000μmの範囲の条件で照射を行う。これにより、ディンプル30、溝40は、径又は幅が30~55μm、深さが8~20μm、ピッチ60~1000μmで形成される。表面改質加工は、上記レーザー条件を変化させることで、ディンプル、溝の形状、ピッチ、径、溝の幅、深さを変えることができ、濡れ性を超親水から親水までのコントロールをすることができる。
【0023】
ここで、
図3に示すように、内壁面20は、Z方向(重力方向に沿った上下方向)のうち相対的に、底面13側に位置する下方内面20aよりも、冷媒の液位11k(液面)側に位置する上方内面20cの方が濡れ性が高く設定されている。また、冷媒の液位11k(液面)よりも下方に位置する接合部12(凹部11a)の周囲の内壁面20は、次のような表面改質加工が施されている。
【0024】
ここで、内壁面20は、次のように定義して説明する。接合部12(凹部11a)の水平方向(Y方向)の側方する面を中間内面20bと呼ぶ。接合部12より下方側の下方内面20aと呼ぶ。接合部12より上方側の上方内面20cと呼ぶ。ここで、中間内面20bの濡れ性の設定に対して、上方内面20cが濡れ性が高く設定されている。また、中間内面20bの濡れ性の設定に対して、下方内面20aが濡れ性が低く設定されている。すなわち、濡れ性の設定関係は、下方内面20a<中間内面20b<上方内面20cとなる。
【0025】
<作用・効果>
本実施形態の冷却装置1は、縦型に配置されて電池セル6の側方から冷却する沸騰冷却方式である。そのため、冷媒の沸騰により発生した気泡が上方(Z1方向)へと上昇する。ここで、冷媒の液面内で発生した気泡は、接合部12(凹部11a)を回り込んで、接合部12の上で気泡が集まり、対流してしまう。この気泡が滞留した部位は、限界熱流速が低下して冷却効率の低下が懸念される。そのため、接合部12(凹部11a)周りの内壁面20は、濡れ性改善のための表面改質加工が施されている。ここで、濡れ性の設定関係は、下方内面20a<中間内面20b<上方内面20cである。そのため、接合部12の上方の上方内面20cに滞留した気泡を素早く濡らすことで冷却性能の低下を抑制することができる。また、濡れ性の設定は、下方に向かうほど低く設定することで、必要以上に気泡を発生させず、冷却効率の均一化が図ることができる。そのため、冷却装置全体としての冷却性能、冷却効率を向上させることができる。また、表面改質加工は、レーザーを使った表面処理、表面改質方法である。そのため、液剤による表面処理であると、複数工程を経る必要があったところ一回の工程で表面改質加工をすることができる。また、液剤では、部分的、局所的な部位の表面処理が困難であるが、レーザーによれば部分的、局所的な部位の表面処理も容易となる。また、レーザー条件を変化させることで、超親水(接触角5度以下)の処理も可能となるし、濡れ性を超親水から親水までコントロールすることが容易となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の乗物用室内照明装置は、本実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができる。例えば、本実施形態は、
冷却装置として、電気自動車に用いられる電池モジュールの冷却構造を例示して説明したが、種々の発熱する機器に適用することができる。例えば、家庭電力供給用電池、自動車以外の乗物用電池等に適用してもよい。また、本実施形態では、各電池セルは、直列接続されている一つの電池モジュールを構成するものを示したが、各電池セルが並列接続されるもの、直列、並列が組み合わされるものであってもよい。
【0027】
また、冷却装置1は、鋼板により構成される態様を示したが、銅、アルミニウム等の素材で構成するものであってもよい。また接合部12は円形スポット状としたが、四角形、六角形等の多角形の形状としてもよい。冷媒は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を例示したが、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の代替フロンを用いてもよい。
【0028】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における第1発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0029】
第1の発明によれば、冷媒充填室10の伝熱板(鋼板1a、1b)における冷媒が充填される側である内壁面20は、重力方向に沿った上下方向(Z方向)の部位のうち、冷媒の沸騰により発生する気泡が滞留する部位に応じて濡れ性改善のための表面改質加工が施されている。そのため、沸騰による気泡発生量のコントロールと、気泡が滞留する部位の濡れ性向上を図り冷却性能を確保できる。よって、冷媒の沸騰による気泡の発生及び滞留を抑制して冷却効率の低下を抑えることができる。
【0030】
第2の発明によれば、内壁面20は、重力方向に沿った上下方向(Z方向)のうち相対的に、底面側に位置する内壁面20よりも、冷媒の液面側(液位11k)に位置する内壁面20の方が濡れ性が高く設定されている。そのため、重力方向に沿った上下方向の冷却性能の均一化を図ることができる。
【0031】
第3の発明によれば、冷媒充填室10は、内部圧力による膨張変形を抑制するように、対向される伝熱板(鋼板1a、1b)同士を部分的に接合する接合部12を有し、重力方向に沿った上下方向のうち、接合部12より上方側の内壁面20が、接合部12より下方側の内壁面20よりも濡れ性が高く設定されている。接合部12周りが気泡の発生及び滞留が著しいことから係る部位の濡れ性向上により効率的に冷却性能の低下を図ることができる。
【0032】
第4の発明によれば、接合部12は、複数個備えられ、それらが伝熱板(鋼板1a、1b)に沿って千鳥配置されている。そのため、伝熱板(鋼板1a、1b)の組付けのばらつきに伴う冷却効率の変動を抑制することができる。
【0033】
第5の発明によれば、接合部12は、水平方向に複数個が並ぶと共に重力方向に複数列が配置されており、冷媒の(液位11k)よりも下方に位置する接合部12の周囲の内壁面20は、接合部12の水平方向側方の中間内面20bの濡れ性の設定に対して、接合部12より上方側の上方内面20cが濡れ性が高く設定され、中間内面20bの濡れ性の設定に対して、接合部12より下方側の下方内面20aが濡れ性が低く設定されている。接合部12の上方の上方内面20cに滞留した気泡を素早く濡らすことで冷却性能の低下を抑制することができる。また、濡れ性の設定は、下方に向かうほど低く設定することで、必要以上に気泡を発生させず、冷却効率の均一化が図ることができる。
【0034】
第6の発明によれば、内壁面20における濡れ性改善のための表面改質加工は、レーザーによるディンプル、線形状、格子形状のいずれか又はこれらの組み合わせによる凹凸加工が施されている。レーザーによる表面改質加工により、濡れ性改善処理を高速処理、且つ低コストで行うことができる。また、表面改質加工の形状の自由度が向上するため、形状による改質特性(濡れ性)を任意に変えることができる。
【0035】
第7の発明によれば、発熱する機器として、複数の電池セル6を組み合わせて一つの電池が構成された電池モジュールを冷却する冷却装置1として好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 冷却装置
1a 鋼板(伝熱板)
1b 鋼板(伝熱板)
2 保持枠
3 凝縮器
4 流路
5 流路
6 電池セル
8 熱伝導体
10 冷媒充填室
11 凹凸面
11a 凹部
11k 液位
12 接合部
13 底面
16 冷媒流出路
18 冷媒流入路
20 内壁面
20a 下方内面
20b 中間内面
20c 上方内面
30 ディンプル
40 溝