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特許7463269(メタ)アクリル接着剤組成物、その調製方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル接着剤組成物、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240401BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240401BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20240401BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240401BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240401BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240401BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/08
C08L51/00
C08L101/00
C08L33/06
C08L53/00
C08L63/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020500658
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018069041
(87)【国際公開番号】W WO2019012088
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】1756649
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハッジ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ピリ, ホザンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】イノーブリ, ラビ
(72)【発明者】
【氏名】ミショー, ギヨーム
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-502689(JP,A)
【文献】特開平02-167377(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105419661(CN,A)
【文献】特開平06-240209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)であって、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段階(A)及び60℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む少なくとも一つの段階(B)を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)であって、多段階ポリマー(MP1)及びポリマー(C1)が一次ポリマー粒子に含まれ、一次ポリマー粒子が、段階(A)、段階(B)、及びポリマー(C1)を含む更なる段階(C)を含む、第一剤組成物(P1)、並びに
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)
を含む(メタ)アクリル接着剤組成物として適したポリマー組成物であって、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項2】
多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)のみを含む組成物中のポリマー(C1)の比率rが、5重量%と35重量%の間であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ポリマー(C1)が、C1~C4アルキルメタクリレート及び/又はC1~C8アルキルアクリレートモノマーからの、少なくとも80重量%のモノマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ポリマー(C1)が官能性コモノマーユニットを含むことを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
官能性モノマーユニットが、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸、これらの酸から誘導されたアミドから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
第一剤組成物(P1)がもう一種の更なる化合物:(メタ)アクリルモノマー(M1)とは異なる少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M2)を含むことを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、エステル基のアルコール部分において炭素又は水素ではない少なくとも1個の原子を有する、アクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-又は3-エトキシプロピルアクリレート、2-又は3-エトキシプロピルメタクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6又は7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
第一剤組成物(P1)が、もう一種の更なる化合物:可撓化剤を含むことを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項10】
(a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)であって、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段階(A)及び60℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む少なくとも一つの段階(B)を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)であって、多段階ポリマー(MP1)及びポリマー(C1)が一次ポリマー粒子に含まれ、一次ポリマー粒子が、段階(A)、段階(B)、及びポリマー(C1)を含む更なる段階(C)を含む、第一剤組成物(P1)を提供する工程と
(b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)を提供する工程と
(c)(P1)と(P2)の混合物を重合させる工程と
を含む(メタ)アクリル接着剤組成物として適切なポリマー組成物を製造する方法において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする、方法。
【請求項11】
コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)とa3)第一剤組成物(P1)のポリマー(C1)が一緒にポリマー組成物(PC1)を形成し、
a)モノマー又はモノマー混合物(A)の乳化重合により重合して、ポリマー(A1)を含む段階(A)の一つの層を得る工程
b)モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合して、ポリマー(B1)を含む段階(B)の層を得る工程
c)モノマー又はモノマー混合物(C)の乳化重合により重合して、ポリマー(C1)を含む段階(C)の層を得る工程
を含む製造方法によって作製されることを特徴とし、
ポリマー(C1)が少なくとも100000g/molの質量平均分子量Mwを有することと、段階(C)の層が最大30重量%を占めることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)とa3)第一剤組成物(P1)のポリマー(C1)が一緒にポリマー組成物(PC1)を形成し、
i)ポリマー(C1)と多段階ポリマー(MP1)の混合工程、
ii)前工程の得られた混合物をポリマー粉末の形態で回収する工程
を含む製造方法によって作製されることを特徴とし、
工程i)におけるポリマー(C1)と多段階ポリマー(MP1)が、水性相中の分散液の形態にある、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)のみを含む組成物中のポリマー(C1)の比率rが、5重量%と35重量%の間である、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項14】
第一剤組成物(P1)が、もう一種の更なる化合物:(メタ)アクリルモノマー(M1)とは異なる少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M2)を含むことを特徴とする、請求項10から13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、エステル基のアルコール部分において炭素又は水素ではない少なくとも1個の原子を有する、アクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-又は3-エトキシプロピルアクリレート、2-又は3-エトキシプロピルメタクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第一剤組成物(P1)が、もう一種の更なる化合物:可撓化剤を含むことを特徴とする、請求項10から16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
構造用(メタ)アクリル接着剤を作製するための、請求項1から9の何れかに記載の組成物の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー粒子の形態の多段階ポリマーと(メタ)アクリルポリマーとを含む(メタ)アクリル接着剤組成物として好適な組成物、その調製方法、及びその使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、多段階プロセスにより製造されたポリマー粒子の形態の多段階ポリマーと(メタ)アクリルポリマーとを含む構造用(メタ)アクリル接着剤組成物、その調製方法及びその使用に関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、多段階プロセスにより作製されたポリマー粒子の形態の多段階ポリマーと(メタ)アクリルポリマーとを含む二剤型組成物から作製された構造用(メタ)アクリル接着剤組成物、その調製方法、及びその使用に関する。
【技術的課題】
【0004】
構造用接着剤は、高強度と高性能の材料である。それらの機能、主要機能は、構造体を併せて保持し、高負荷に耐えることができることである。
【0005】
熱硬化性アクリル接着剤は、室温で急速に硬化して、金属、エンジニアリングプラスチック、複合体及び表面処理を最小限に抑えた他の多くの基材の接着に適した架橋構造接着剤を提供する高靭性化系である。接合される二種の材料は異なった性質でありうる。
【0006】
それらは、高い引張せん断及び剥離強度、耐化学性、及び衝撃強度を提供する。これらの配合物では、コア-シェル、ブロック及びグラフトポリマーの添加を一般に使用し、これらは、接着剤配合物中でサイズが大きくなるが、溶解しない。これらの添加剤は、接着剤に改善された展着及び流動特性をまたもたらす。
【0007】
接着剤の満足できる衝撃性能を保証するためには、コア-シェルポリマーを接着剤全体に均一に分布させなければならない。この均一分布は、あらゆる種類のコアシェル衝撃改質剤でも容易には達成されない。
【0008】
加えて、標準的な構造用アクリル接着剤では破断点伸びが比較的低い。
【0009】
このような構造用アクリル接着剤の接着力もまた向上させる必要がある。
【0010】
本発明の目的は、(メタ)アクリル接着剤組成物に適した液体及び/又は反応性樹脂に迅速かつ容易に分散可能である多段階ポリマー組成物を提案することである。
【0011】
本発明の目的はまた、(メタ)アクリル接着剤組成物に適したポリマー粉末の形態の、液体及び/又は反応性樹脂に容易に分散可能な多段階ポリマー組成物を提案することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、良好な引張強度と高い破断点伸びの間の良好な妥協点を有する構造用接着剤ポリマー組成物を提案することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、満足のいく衝撃性能と高引張強度を有し、同時にせん断強度(ラップせん断試験)により測定されて向上した接着力を有する構造用接着剤ポリマー組成物を提案することである。
【0014】
本発明の別の目的は、液体及び/又は反応性樹脂に容易に分散可能な、コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MPI)を含む構造用接着剤ポリマー組成物の方法を提案することである。
【0015】
本発明のまた更なる目的は、コア-シェル構造を有する多段階ポリマーを含み、多段階ポリマーを均一分布させた液体ポリマー組成物の、構造用(メタ)アクリル接着剤を調製するための使用である。
【背景技術】
【0016】
文献WO2013/126377は、構造用アクリル接着剤を開示している。接着剤は靱性化剤を含みうる。
【0017】
文献WO02/0766620は、製造が容易な(メタ)アクリル接着剤組成物を開示している。この組成物は、高い耐衝撃性を保証するために分散されたコアシェル衝撃改質剤を含む。
【0018】
文献US2012/0252978は、構造用接着剤のための組成物を開示している。この組成物は、アクリレート及びメタクリレートをベースとしており、またエラストマー性ブロックコポリマーとエラストマー性ポリマー粒子を含む。
【0019】
文献US2012/0302695は、コア-シェル衝撃改質剤を含むメタクリレート系の接着剤組成物を開示している。
【0020】
従来技術文献の何れも、特定の分子量を有する(メタ)アクリルポリマーと組み合わされたポリマー粒子形態の多段階ポリマーを含む(メタ)アクリル接着剤組成物を開示していない。
【発明の概要】
【0021】
驚くべきことに、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と、
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む組成物において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする組成物が、(メタ)アクリル接着剤組成物として適していることが見出された。
【0022】
驚くべきことに、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と、
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む組成物において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする組成物が、破断点伸び及びせん断接着強度が向上した(メタ)アクリル接着剤組成物をもたらすことが見出された。
【0023】
驚くべきことに、
(a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)を提供する工程と
(b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)を提供する工程と
(c)(P1)と(P2)の混合物を重合させる工程
を含む(メタ)アクリル接着剤組成物として適切なポリマー組成物を製造する方法において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする方法が、破断点伸び及びせん断接着強度が向上した(メタ)アクリル接着剤組成物をもたらすことがまた見出された。
【0024】
驚くべきことに、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と、
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含むポリマー組成物において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とするポリマー組成物を、破断点伸び及びせん断接着強度が向上した(メタ)アクリル接着剤組成物に対して使用できることがまた見出された。
【発明の詳細な説明】
【0025】
第一の態様によれば、本発明は、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と、
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む(メタ)アクリル接着剤組成物として適した組成物において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする組成物に関する。
【0026】
第二の態様によれば、本発明は、
(a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)を提供する工程と
(b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)を提供する工程と
(c)(P1)と(P2)の混合物を重合させる工程と
を含む(メタ)アクリル接着剤組成物として適切なポリマー組成物を製造する方法において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする方法に関する。
【0027】
第三の態様によれば、本発明は、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む構造用接着剤ポリマー組成物において、
ポリマー(C1)が2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有していることを特徴とする組成物に関する。
【0028】
第四の態様によれば、本発明は、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、
a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、
a3)ポリマー(C1)
を含む第一剤組成物(P1)と
b)
b1)重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含むポリマー組成物の、構造用接着剤としての使用に関する。
【0029】
使用される「ポリマー粉末」という用語は、ナノメートル範囲の粒子を含む一次ポリマーの凝集によって得られる少なくとも1μmの範囲の粉末粒を含むポリマーを意味する。
【0030】
使用される「一次粒子」という用語は、ナノメートル範囲の粒子を含む球状ポリマーを意味する。好ましくは、一次粒子は、20nmと800nmの間の重量平均粒径を有する。
【0031】
使用される「粒径」という用語は、球状とみなされる粒子の体積平均直径を示す。
【0032】
使用される「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱されると液体に変わるか、より液状になり、又は粘性が低くなり、熱と圧力を加えることで新しい形状をとりうるポリマーを意味する。
【0033】
使用される「熱硬化性ポリマー」という用語は、硬化後に不可逆的に不溶融性、不溶性ポリマー網目構造になるポリマーを意味する。
【0034】
使用される「コポリマー」という用語は、ポリマーが少なくとも二種の異なるモノマーからなることを意味する。
【0035】
使用される「多段階ポリマー」とは、多段階重合プロセスによって連続的な形で形成されるポリマーを意味する。好ましいものは、第一のポリマーが第一段階ポリマーであり、第二のポリマーが第二段階ポリマーである多段階乳化重合プロセスであり、すなわち、第二のポリマーは第一のエマルジョンポリマーの存在下で乳化重合により形成され、組成が異なる少なくとも二つの段階がある。
【0036】
使用される「(メタ)アクリル」という用語は、あらゆる種類のアクリル及びメタクリルモノマーを意味する。
【0037】
使用される「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、(メタ)アクリルポリマーが、(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を構成する(メタ)アクリルモノマーを含むポリマーを本質的に含むことを意味する。
【0038】
使用される「乾燥」という用語は、残留水の割合が1.5重量%未満、好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0039】
本発明においてxからyの範囲であると言うのは、この範囲の上限と下限が含まれることを意味し、少なくともxとyまでと同等である。
【0040】
本発明において範囲がxとyの間であると言うのは、この範囲の上限と下限が除外されることを意味し、xより大きくyより小さいと同等である。
【0041】
本発明に係るポリマー組成物に関し、これは第一剤組成物(P1)と第二剤組成物(P2)を含む二剤型アクリル接着剤組成物である。
【0042】
第一剤(P1)は、少なくとも次の成分を含む:a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)、a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)、及びa3)ポリマー(C1)。
【0043】
(メタ)アクリルモノマー(M1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の少なくとも20重量%を占めうる。(メタ)アクリルモノマー(M1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の最大75重量%を占めうる。
【0044】
多段階ポリマー(MP1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の少なくとも5重量%を占めうる。多段階ポリマー(MP1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の最大75重量%を占めうる。
【0045】
一実施態様では、多段階ポリマー(MP1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の10重量%から20重量%、好ましくは12重量%から20重量%、より好ましくは13重量%から18重量%、有利には15重量%から18重量%を占める。
【0046】
ポリマー(C1)は、第一剤組成物(P1)の全成分の合計の少なくとも1重量%を占めうる。
【0047】
更に、第一剤組成物(P1)は、場合によっては、特に、
- 上で定義された(メタ)アクリルモノマー(M1)とは異なる少なくとも一種のモノマー(M2);
- 可撓化剤;
- 重合促進剤;
- 接着促進剤;
- フィラー;
- レオロジー調整剤;
- 及びそれらの混合物
からなる群から選択される、一種又は複数種の更なる化合物を含みうる。
【0048】
第二剤組成物(P2)は少なくともb1)重合開始剤を含む。
【0049】
更に、第二剤組成物(P2)は、場合によっては、特に、
- (メタ)アクリルモノマー(M3);
- 希釈剤(非反応性希釈剤又は反応性希釈剤);
- 可塑剤;
- 接着促進剤;
- レオロジー調整剤;
- フィラー;
- 及びそれらの混合物
からなる群から選択される、一種又は複数種の更なる化合物を含みうる。
【0050】
本発明に係る(メタ)アクリルモノマー(M1)に関し、これは、メタクリルモノマー又はアクリルモノマー又はそれらの混合物から選択されうる。
【0051】
(メタ)アクリルモノマー(M1)は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー及びそれらの混合物から選択される。
【0052】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びそれらの混合物から選択され、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状の何れかで、1から22個の炭素を有し;好ましくは、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状の何れかで、1から12個の炭素を有する。
【0053】
有利には、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-デシルアクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、及びそれらの混合物から選択される。
【0054】
例えば、SARTOMERによって市販されているSR286及びSR489を挙げることができる:
【0055】
好ましい実施態様では、(メタ)アクリルモノマー(M1)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%がメチルメタクリレートである。
【0056】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)とは異なる。
【0057】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(エステル基自体の原子を考慮しないで)エステルのアルコール部分の基の炭素又は水素ではない少なくとも1個の原子を有するアクリルエステルモノマー又はメタクリルエステルモノマーから選択されうる。好ましくは、原子は酸素である。一例は、ヒドロキシルエチルメタクリレート又はアクリルモノマーを含むポリエーテル鎖である。
【0058】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-又は3-エトキシプロピルアクリレート、2-又は3-エトキシプロピルメタクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、(好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含む)メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含むメトキシポリエチレングリコールアクリレート、好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含むポリエチレングリコールメタクリレート、好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含むポリエチレングリコールアクリレート、好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含むポリプロピレングリコールメタクリレート、好ましくは2~8個の繰り返し(EO)単位を含むポリプロピレングリコールアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
例えば、SARTOMERによって市販されているSR550及びSR256を挙げることができる:
【0060】
(メタ)アクリルモノマー(M3)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と同じであってもよい。
【0061】
第一の好ましい実施態様では、(メタ)アクリルモノマー(M3)はメチルメタクリレートである。
【0062】
本発明に係る可撓化剤に関し、これは、例えばスチレンブロックコポリマー(SBC)及びスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)から選択される、ブロックコポリマーから選択されうる。
【0063】
可撓化剤はまた液体エラストマーから選択されうる。液体エラストマーは、1000g/mol~100000g/mol、好ましくは1000g/mol~15000g/mol、より好ましくは1000g/mol~9000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有し得、エチレン性不飽和基で官能化されうる。
【0064】
第一の好ましい実施態様では、液体エラストマーはウレタンオリゴマーから選択される。好ましくは、ウレタンオリゴマーは、少なくとも二つの二重結合、好ましくは2~9の二つの二重結合を含む。好ましくは、二重結合は、アクリル基、メタクリル基又はアリル基の一部である。
【0065】
好ましい実施態様では、可撓化剤は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びその混合物から選択される。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、塗料工業又は接着剤工業の何れかにおける当業者によく知られているタイプの何れでもよい。一般に、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、通常、少なくとも二つのイソシアネート官能基を含むイソシアネート成分の、少なくとも一つの(メタ)アクリレート官能基及びイソシアネート官能基と反応性の少なくとも一つの基(例えば、ヒドロキシル又はアミノ)を含む(メタ)アクリレート成分との反応生成物である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーについての詳細は、例えばUS2012/0302695に見出すことができる。例えば、SARTOMERにより市販されているCN965、CN981、CN9400、CN966H90を挙げることができる。
【0066】
本発明に係る重合促進剤に関し、これは、塗料工業又は接着剤工業の何れかの当業者によく知られているものから選択されうる。例えば、第三級アミン、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、有機可溶性遷移金属触媒又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
本発明に係る接着促進剤に関し、これは、塗料工業又は接着剤工業の何れかの当業者によく知られているものから選択されうる。例えば、アミノシラン、メタクリロイルシラン、ホスフェート、メタクリル化ホスフェートエステル、エポキシ化シランを挙げることができる。
【0068】
本発明に係るレオロジー調整剤に関し、これは、塗料工業又は接着剤工業の何れかの当業者によく知られているものから選択されうる。例えば、シリカ(特にヒュームドシリカ)、微粉化アミドワックス(例えば、アルケマから入手可能なCRAYVALLACシリーズなど)を挙げることができる。
【0069】
本発明に係る開始剤に関して、これは、塗料工業又は接着剤工業の何れかの当業者によく知られているものから選択されうる。例えば、ペルオキシド又はヒドロペルオキシド(例えば、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシドなど)、ペルオキシエステル、ペルオキシアセタール、アゾ化合物、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0070】
重合を開始させるための開始剤は、イソプロピルカーボネート、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペル(2-エチルヘキサノエート)、クミルヒドロペルオキシド、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルピバレート、アミルペルピバレート、tert-ブチルペルオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択されうる。上記リストから選択されるラジカル開始剤の混合物を使用することは、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0071】
選択された開始剤に鑑みて、どの重合促進剤を使用すべきかは当業者には分かる。
【0072】
第一の好ましい実施態様では、開始剤はベンゾイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシドである。
【0073】
本発明に係る希釈剤に関し、これは液体エポキシ樹脂から選択されうる。
【0074】
本発明に係る可塑剤に関し、これは、塗料工業又は接着剤工業の何れかの当業者によく知られているものから選択されうる。例えば、フタレート系可塑剤、ポリオールエステル(例えば、Perstopから入手可能なペンタエリスリトールテトラバレネート)、エポキシ化油、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0075】
本発明に係る組成物の多段階ポリマー(MP1)は、そのポリマー組成が異なる少なくとも二つの段階を有しうる。
【0076】
多段階ポリマー(MP1)は、好ましくは、球状粒子と考えられるポリマー粒子の形態である。これらの粒子は、コアシェル粒子とも呼ばれる。最初の段階がコアを形成し、第二又は続く全ての段階がそれぞれのシェルを形成する。コア/シェル粒子とも呼ばれるこのような多段階ポリマーが好ましい。
【0077】
一次粒子である本発明に係る粒子は、15nmと900nmの間の重量平均粒径を有しうる。好ましくは、ポリマーの重量平均粒径は、20nmと800nmの間、より好ましくは25nmと600nmの間、更により好ましくは30nmと550nmの間、また更により好ましくは35nmと500nmの間、有利には40nmと400nmの間、更により有利には75nmと350nmの間、有利には80nmと300nmの間である。一次ポリマー粒子が凝集して、ポリマー粉末を生じる場合がある。
【0078】
本発明の第一の好ましい実施態様に係る一次ポリマー粒子は、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも一つの段階(A)、60℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む少なくとも一つの段階(B)、及び30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(C1)を含む少なくとも一つの段階(C)を含む多層構造を有する。この第一の好ましい実施態様では、一次ポリマー粒子は、本発明に係る組成物の成分a2)及びa3)を含む。コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)の成分a2)は、段階(A)として、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含み、60℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む少なくとも一つの段階(B)を含み、成分a3)は更なる段階(C)としてポリマー(C1)を含む。
【0079】
好ましくは、段階(A)は、少なくとも二つの段階の第一の段階であり、ポリマー(B1)を含む段階(B)は、ポリマー(A1)又は別の中間層を含む段階(A)にグラフトされる。
【0080】
また、段階(A)がまたシェルになるように、段階(A)の前に別の段階が存在する場合もある。
【0081】
第一の好ましい実施態様では、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、アルキルアクリレートに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含み、段階(A)は、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えれば、ポリマー(A1)を含む段階(A)は、ポリマー粒子のコアである。
【0082】
第一の好ましい実施態様のポリマー(A1)に関し、これは、アクリルモノマーに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含む(メタ)アクリルポリマーである。好ましくは、ポリマー(A1)の60重量%、より好ましくは70重量%がアクリルモノマーである。
【0083】
ポリマー(A1)中のアクリルモノマーは、C1~C18アルキルアクリレート又はそれらの混合物から選択されるモノマーを含みうる。より好ましくは、ポリマー(A1)中のアクリルモノマーは、C2~C12アルキルアクリルモノマーのモノマー又はそれらの混合物を含む。更により好ましくは、ポリマー(A1)中のアクリルモノマーは、C2~C8アルキルアクリルモノマー又はそれらの混合物のモノマーを含む。
【0084】
ポリマー(A1)は、ポリマー(A1)が10℃未満のガラス転移温度を有している限り、アクリルモノマーと共重合可能な一又は複数のコモノマーを含みうる。
【0085】
ポリマー(A1)中の一又は複数のコモノマーは、好ましくは、(メタ)アクリルモノマー及び/又はビニルモノマーから選択される。
【0086】
最も好ましくは、ポリマー(A1)のアクリル又はメタクリルコモノマーは、ポリマー(A1)が10℃未満のガラス転移温度を有している限り、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びそれらの混合物から選択される。
【0087】
特定の実施態様では、ポリマー(A1)はブチルアクリレートのホモポリマーである。
【0088】
より好ましくは、C2~C8アルキルアクリレートに由来する少なくとも70重量%のポリマー単位を含むポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃と10℃の間、更により好ましくは-80℃と0℃の間、有利には-80℃と-20℃の間、より有利には-70℃と-20℃の間である。
【0089】
第二の好ましい実施態様では、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、イソプレン又はブタジエンに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含み、段階(A)は、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えれば、ポリマー(A1)を含む段階(A)は、ポリマー粒子のコアである。
【0090】
例を挙げると、第二の実施態様のコアのポリマー(A1)は、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、イソプレンと最大98重量%のビニルモノマーのコポリマー及びブタジエンと最大98重量%のビニルモノマーのコポリマーを挙げることができる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、又はブタジエン又はイソプレンでありうる。好ましい実施態様では、コアはブタジエンホモポリマーである。
【0091】
より好ましくは、イソプレン又はブタジエンに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含むポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-100℃と10℃の間、更により好ましくは-90℃と0℃の間、有利には-80℃と0℃の間、最も有利には-70℃と-20℃の間である。
【0092】
第三の好ましい実施態様では、ポリマー(A1)はシリコーンゴム系ポリマーである。例えば、シリコーンゴムはポリジメチルシロキサンである。より好ましくは、第二の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、-150℃と0℃の間、更により好ましくは-145℃と-5℃の間、有利には-140℃と-15℃の間、より有利には-135℃と-25℃の間である。
【0093】
ポリマー(B1)に関して、例えば、二重結合を有するモノマー及び/又はビニルモノマーを含むホモポリマー及びコポリマーを挙げることができる。好ましくは、ポリマー(B1)は(メタ)アクリルポリマーである。
【0094】
好ましくは、ポリマー(B1)は、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも70重量%のモノマーを含む。更により好ましくは、ポリマー(B1)は、少なくとも80重量%のモノマーC1~C4アルキルメタクリレート及び/又はC1~C8アルキルアクリレートモノマーを含む。
【0095】
最も好ましくは、ポリマー(B1)のアクリル又はメタクリルモノマーは、ポリマー(B1)が少なくとも60℃のガラス転移温度を有している限り、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びそれらの混合物から選択される。
【0096】
有利には、ポリマー(B1)は、メチルメタクリレートに由来する少なくとも70重量%のモノマー単位を含む。
【0097】
好ましくは、ポリマー(B1)のガラス転移温度Tgは、60℃と150℃の間である。ポリマー(B1)のガラス転移温度は、より好ましくは80℃と150℃の間、有利には90℃と150℃の間、より有利には100℃と150℃の間である。
【0098】
好ましくは、ポリマー(B1)は、前の段階で作製されたポリマー上にグラフトされる。
【0099】
所定の実施態様では、ポリマー(B1)は架橋される。
一実施態様では、ポリマー(B1)は官能性コモノマーを含む。官能性コポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸、この酸から誘導されたアミド、例えば、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシ-エチルアクリレート又はメタクリレート、2-アミノエチルアクリレート又はメタクリレートで場合によっては四級化されたもの、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドンなどの水溶性ビニルモノマー又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/molから10000g/molまでの範囲の分子量を有する。
【0100】
ポリマー(C1)に関し、これは(メタ)アクリルモノマーを含むコポリマーである。より好ましくは、ポリマー(C1)は(メタ)アクリルポリマーである。更により好ましくは、ポリマー(C1)は、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも70重量%のモノマーを含む。有利には、好ましくはポリマー(C1)は、C1~C4アルキルメタクリレート及び/又はC1~C8アルキルアクリレートモノマーからの、少なくとも80重量%のモノマーを含む。
【0101】
好ましくは、ポリマー(C1)のガラス転移温度Tgは30℃と150℃の間である。ポリマー(C1)のガラス転移温度は、より好ましくは40℃と150℃の間、有利には45℃と150℃の間、より有利には50℃と150℃の間である。
【0102】
好ましくは、ポリマー(C1)は架橋されていない。
【0103】
好ましくは、ポリマー(C1)は、ポリマー(A1)又は(B1)の何れにもグラフトされていない。
【0104】
一実施態様では、ポリマー(C1)は官能性コモノマーをまた含む。
【0105】
官能性コモノマーは、式(1)を有する。
【0106】
上式中、RはH又はCHから選択され、RはH又は、C又はHではない少なくとも1個の原子を有する脂肪族又は芳香族の基である。
【0107】
好ましくは、官能性モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸、これらの酸から誘導されたアミド、例えば、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2-アミノエチルアクリレート又はメタクリレートで場合によっては四級化されたもの、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/molから10000g/molまでの範囲の分子量を有する。
【0108】
第一の好ましい実施態様では、ポリマー(C1)は、80重量%から100重量%のメチルメタクリレート、好ましくは80重量%から99.9重量%のメチルメタクリレートと0.1重量%から20重量%のC1~C8アルキルアクリレートモノマーを含む。有利には、C1~C8アルキルアクリレートモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレートから選択される。
【0109】
第二の好ましい実施態様では、ポリマー(C1)は、0重量%と50重量%の間の官能性モノマーを含む。好ましくは、メタ)アクリルポリマー(P1)は、0重量%と30重量%の間、より好ましくは1重量%と30重量%の間、更により好ましくは2重量%と30重量%の間、有利には3重量%と30重量%の間、より有利には5重量%と30重量%の間、最も有利には5重量%と30重量%の間の官能性モノマーを含む。
【0110】
好ましくは、第二の好ましい実施態様の官能性モノマーは、(メタ)アクリルモノマーである。官能性モノマーは、式(2)又は(3)を有する。
【0111】
上式中、式(2)及び(3)の双方において、RはH又はCHから選択され;式(2)において、YはOであり、RはH、又はC又はHではない少なくとも1個の原子を有する脂肪族もしくは芳香族の基であり;式(3)において、YはNであり、R及び/又はRはH又は脂肪族もしくは芳香族の基である。
【0112】
好ましくは、官能性モノマー(2)又は(3)は、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸、これらの酸から誘導されるアミド、例えば、ジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2-アミノエチルアクリレート又はメタクリレートで場合によっては四級化されたもの、ホスホネート又はホスフェート基を含むアクリレート又はメタクリレートモノマー、アルキルイミダゾリジノン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/molから10000g/molの範囲の分子量を有する。
【0113】
好ましくは、ポリマー(C1)は、2000g/molと1000000g/molの間の質量平均分子量Mwを有する。
【0114】
第一のより好ましい実施態様では、ポリマー(C1)は、少なくとも100000g/mol、好ましくは100000g/molを超え、より好ましくは105000g/molを超え、更により好ましくは110000g/molを超え、有利には120000g/molを超え、より有利には130000g/molを超え、更により有利には140000g/molを超える質量平均分子量Mwを有する。
【0115】
ポリマー(C1)は、1000000g/mol未満、好ましくは900000g/mol未満、より好ましくは800000g/mol未満、更により好ましくは700000g/mol未満、有利には600000g/mol未満、より有利には550000g/mol未満、更により有利には500000g/mol未満、最も有利には450000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有しうる。
【0116】
ポリマー(C1)の質量平均分子量Mwは、好ましくは、100000g/molと1000000g/molの間、好ましくは105000g/molと900000g/molの間、より好ましくは110000g/molと800000g/molの間、有利には120000g/molと700000g/molの間、より有利には130000g/molと600000g/molの間、最も有利には140000g/molと500000g/molの間である。
【0117】
第二のより好ましい実施態様では、ポリマー(C1)は、100000g/mol未満、好ましくは90000g/mol未満、より好ましくは80000g/mol未満、更により好ましくは70000g/mol未満、有利には60000g/mol未満、より有利には50000g/mol未満、更により有利には40000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する。
【0118】
ポリマー(C1)は、2000g/molを超え、好ましくは3000g/molを超え、より好ましくは4000g/molを超え、更により好ましくは5000g/molを超え、有利には6000g/molを超え、より有利には6500g/molを超え、更により有利には7000g/molを超え、更により有利には10000g/molを超え、最も有利には12000g/molを超える質量平均分子量Mwを好ましくは有する。
【0119】
ポリマー(C1)の質量平均分子量Mwは、好ましくは、2000g/molと100000g/molの間、好ましくは3000g/molと90000g/molの間、より好ましくは4000g/molと80000g/molの間、有利には5000g/molと70000g/molの間、より有利には6000g/molと50000g/molの間、更により有利には10000g/molと50000g/molの間、最も有利には10000g/molと40000g/molの間である。
【0120】
ポリマー(C1)の質量平均分子量Mwは、得られた組成物の粘度に応じて、第一のより好ましい実施態様又は第二のより好ましい実施態様に従って選択される。粘度を低くする必要がある場合、又は追加のレオロジー調整剤が存在する場合は、第二のより好ましい実施態様が好ましい。粘度をより高くする必要がある場合、又は追加のレオロジー調整剤が存在しない場合は、第一のより好ましい実施態様が好ましい。
【0121】
本発明に係る一次ポリマー粒子は、少なくとも二つの段階を含む多段階プロセスによって得ることができる。少なくとも成分a)と成分b)は特に多段階ポリマー(MP1)の一部である。
【0122】
好ましくは、段階(A)の間に作製される10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、段階(B)の前に作製されるか、又は多段階プロセスの第一段階である。
【0123】
好ましくは、段階(B)の間に作製される60℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多段階プロセスの段階(A)の後に作製される。
【0124】
第一の好ましい実施態様では、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の中間層である。
【0125】
好ましくは、段階(C)の間に作製される30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(C1)は、多段階プロセスの段階(B)の後に作製される。
【0126】
より好ましくは、段階(C)の間に作製される30℃を超えるガラス転移温度を有するポリマー(C1)は、多層構造を有する一次ポリマー粒子の外層である。この場合、成分a2)及びa3)が一緒に、組成物(P1)の一部となる。
【0127】
段階(A)と段階(B)の間、及び/又は段階(B)と段階(C)の間に、更なる中間段階が存在する場合がある。
【0128】
ポリマー(C1)とポリマー(B1)は、それらの組成が非常に近く、それらの特性の一部が重複している場合でも、同じポリマーではない。本質的な差異は、ポリマー(B1)が常に多段階ポリマー(MP1)の一部であることである。
【0129】
このことは、ポリマー(C1)及び多段階ポリマーを含む本発明に係る組成物を調製する方法において更に説明される。
【0130】
コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)(成分a2)+a3))を含む完全なポリマー粒子に関して、段階(C)に含まれる外層のポリマー(C1)の重量比rは、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、更により好ましくは少なくとも10重量%でありうる。
【0131】
本発明によれば、コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)(成分a2)+a3))を含む完全なポリマー粒子に関して、ポリマー(C1)を含む外部段階(C)の比率rは、好ましくは最大で30w%である。
【0132】
好ましくは、コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)(成分a2)+a3))を含む一次ポリマー粒子に鑑みたポリマー(C1)の比率rは、5重量%と30重量%の間、好ましくは5重量%と20重量%の間である。
【0133】
第二の好ましい実施態様では、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有する一次ポリマー粒子、言い換えれば多段階ポリマー(MP1)の外層である。
【0134】
好ましくは、層(B)のポリマー(B1)の少なくとも一部は、前の層で作製されたポリマー上にグラフトされる。ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ含む二つの段階(A)及び(B)のみがある場合、ポリマー(B1)の一部がポリマー(A1)上にグラフトされる。より好ましくは、ポリマー(B1)の少なくとも50重量%がグラフトされる。グラフト化の比率は、ポリマー(B1)の溶剤による抽出と、抽出前後の重量測定により、非グラフト化量を決定することにより決定されうる。
【0135】
それぞれのポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば熱機械分析として動的方法によって推定することができる。
【0136】
それぞれのポリマー(A1)及び(B1)のサンプルを得るために、それらは、それぞれの段階のそれぞれのポリマーのガラス転移温度Tgをより簡単に推定し測定するために、多段階プロセスではなく単独で調製されうる。ガラス転移温度Tgを推定し測定するために、ポリマー(C1)が抽出されうる。
【0137】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は溶剤を含まない。溶剤がないとは、最終的に存在する溶剤が組成物の1重量%未満を構成していることを意味する。それぞれのポリマーの合成のモノマーは、溶剤とはみなされない。組成物中の残留モノマーは、組成物の2重量%未満しか存在しない。
【0138】
好ましくは、本発明に係るポリマー組成物は乾燥している。乾燥とは、本発明に係るポリマー組成物が3重量%未満の湿度、好ましくは1.5重量%未満の湿度、より好ましくは1.2重量%未満の湿度を含むことを意味する。
【0139】
湿度は、ポリマー組成物を加熱して重量損失を測定する熱天秤によって測定されうる。
【0140】
本発明に係る組成物は、自由意志で添加された溶剤を含まない。最終的に、それぞれのモノマーの重合からの残留モノマーと水は、溶剤とはみなされない。
【0141】
変形態様では、二つの成分a2)コア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1)及びa3)第一剤組成物(P1)のポリマー(C1)が、一緒にポリマー組成物(PC1)を形成し、これが、a)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)、b)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)及びc)少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(C1)を含む。この変形態様では、a)とb)が一緒に成分a2)に対応し、c)がa3)に対応する。
【0142】
成分c)は、好ましくは、a)、b)及びc)に基づいて、組成物の最大40重量%を占める。好ましくは、成分c)は、a)、b)及びc)に基づいて、組成物の最大35重量%;より好ましくは最大30重量%、更により好ましくは30重量%未満、有利には25重量%未満、より有利には24重量%未満、更により有利には20重量%未満を占める。言い換えれば、多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)のみを含む組成物におけるポリマー(C1)の比率rは、最大40重量%、好ましくは最大35重量%;より好ましくは最大30重量%、更により好ましくは30重量%未満、有利には25重量%未満、より有利には24重量%未満、更により有利には20重量%未満である。
【0143】
成分c)は、好ましくは、a)、b)、及びc)に基づいて、組成物の4重量%より多くを占める。好ましくは、成分c)は、a)、b)及びc)に基づいて組成物の5重量%より多く;より好ましくは6重量%より多く、更により好ましくは7重量%より多く、有利には8重量%より多く、より有利には10重量%より多くを占める。言い換えれば、多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)のみを含む組成物中のポリマー(C1)の比率rは、5重量%を超え;より好ましくは6重量%を超え、更により好ましくは7重量%を超え、有利には8重量%を超え、より有利には10重量%を超える。
【0144】
成分c)は、好ましくは、a)b)及びc)に基づいて、組成物の4重量%と40重量%の間を占める。好ましくは、成分c)は、a)、b)及びc)に基づいて、組成物の5重量%と35重量%の間;より好ましくは6重量%と30重量%の間、更により好ましくは7重量%と30重量%未満の間、有利には7重量%と25重量%未満の間、より有利には7重量%と24重量%未満の間、更により有利には10重量%と20重量%未満の間を占める。言い換えれば、多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)のみを含む組成物中のポリマー(C1)の比率rは、5重量%と35重量%の間;より好ましくは6重量%と30重量%の間、更により好ましくは7重量%と30重量%未満の間、有利には7重量%と25重量%未満の間、より有利には7重量%と24重量%未満の間、更により有利には10重量%と20重量%未満の間を占める。
【0145】
少なくとも組成物(PC1)の成分a)と成分b)は、好ましくは、多段階ポリマー(MP1)の一部である。
【0146】
少なくとも成分a)と成分b)は、好ましくは、少なくとも二つの段階を含む多段階プロセスによって得られ;これら二つのポリマー(A1)とポリマー(B1)が、多段階ポリマー(MP1)を形成する。
【0147】
本発明に係るポリマー組成物(PC1)を製造するための第一の好ましい方法に関し、これは、
a)モノマー又はモノマー混合物(A)の乳化重合により重合して、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段階(A)の一つの層を得る工程
b)モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合して、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む段階(B)の層を得る工程
c)モノマー又はモノマー混合物(C)の乳化重合により重合して、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(C1)を含む段階(C)の層を得る工程
を含み、
ポリマー(C1)が少なくとも100000g/molの質量平均分子量Mwを有することと、成分c)がa)、b)及びc)に基づいて組成物の最大30重量%を占めることを特徴とする。
【0148】
好ましくは、工程a)は工程b)の前に行われる。
【0149】
より好ましくは、工程b)は、工程a)で得られたポリマー(A1)の存在下で実施される。
【0150】
有利には、本発明に係るポリマー組成物(PC1)を製造するための第一の好ましい方法は、
a)モノマー又はモノマー混合物(A)の乳化重合によって重合して、10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段階(A)の一つの層を得る工程
b)モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合して、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む段階(B)の層を得る工程
c)モノマー又はモノマー混合物(C)の乳化重合により重合して、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(C1)を含む段階(C)の層を得る工程
を順次含み、
ポリマー(C1)が少なくとも100000g/molの質量平均分子量Mwを有することを特徴とする。
【0151】
ポリマー(A1)、(B1)及び(C1)をそれぞれ含む層(A)、(B)及び(C)をそれぞれ形成するためのそれぞれのモノマー又はモノマー混合物(A)、(B)及び(C)は、前に定義されたものと同じである。ポリマー(A1)、(B1)、及び(C1)の特性は、それぞれ前に定義されたものと同じである。
【0152】
好ましくは、本発明に係るポリマー組成物を製造するための第一の好ましい方法は、ポリマー組成物を回収する更なる工程d)を含む。
【0153】
回収とは、水性相と固相の間の分割又は分離を意味し、後者はポリマー組成物を含む。
【0154】
より好ましくは、本発明によれば、ポリマー組成物の回収は、凝固又は噴霧乾燥によって行われる。
【0155】
10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)がアルキルアクリレートに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含み、段階(A)が、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である場合、噴霧乾燥が、本発明に係るポリマー粉末組成物の製造方法に対する好ましい回収及び/又は乾燥方法である。
【0156】
10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)がイソプレン又はブタジエンに由来する少なくとも50重量%のポリマー単位を含み、段階(A)が、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である場合、凝固が、本発明に係るポリマー粉末組成物の製造方法に対する好ましい回収及び/又は乾燥方法である。
【0157】
本発明に係るポリマー組成物の製造方法は、ポリマー組成物の乾燥の更なる工程e)を場合によっては含みうる。
【0158】
好ましくは、ポリマー組成物の回収の工程d)が凝固により行われる場合、乾燥工程e)が行われる。
【0159】
好ましくは、乾燥工程e)の後、ポリマー組成物は、3重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、有利には1%未満の湿度又は水を含む。
【0160】
ポリマー組成物の湿度は、熱天秤で測定できる。
【0161】
ポリマーの乾燥は、50℃において48時間、組成物を加熱しながらオーブン又は真空オーブンで行うことができる。
【0162】
ポリマー(C1)と多段階ポリマー(MP1)を含むポリマー組成物(PC1)を製造するための第二の好ましい方法に関し、これは、
a)ポリマー(C1)と多段階ポリマー(MP1)の混合工程、
b)場合によっては、前工程の得られた混合物をポリマー粉末の形で回収する工程
を含み、
工程a)におけるポリマー(C1)及び多段階ポリマー(MP1)が、水性相中の分散液の形態にある。
【0163】
ポリマー組成物(PC1)を製造するための第二の好ましい方法の多段階ポリマー(MP1)は、前記第一の好ましい方法の工程c)を実施することなく第一の好ましい方法に従って作製される。
【0164】
ポリマー(C1)の水性分散液及び多段階ポリマー(MP1)の水性分散液の量は、好ましくは、得られた混合物中の固体部分のみに基づく多段階ポリマーの重量比が少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、有利には少なくとも50重量%であるように選択される。
【0165】
ポリマー(C1)の水性分散液と多段階ポリマー(MP1)の水性分散液の量は、好ましくは、得られた混合物中の固体部分のみに基づく多段階ポリマーの重量比が最大99重量%、好ましくは最大95重量%、より好ましくは最大90重量%であるように選択される。
【0166】
ポリマー(C1)の水性分散液と多段階ポリマーの水性分散液の量は、好ましくは、得られた混合物中の固体部分のみに基づく多段階ポリマーの重量比が5重量%と99重量%の間、好ましくは10重量%と95重量%の間、より好ましくは20重量%と90重量%の間になるように選択される。
【0167】
回収工程b)が行われない場合、ポリマー組成物(PC1)はポリマー粒子の水性分散液として得られる。分散液の固体含有量は10重量%と65重量%の間である。
【0168】
一実施態様では、ポリマー(C1)と多段階ポリマー(MP1)を含むポリマー組成物を製造する方法の回収工程b)は、任意選択的ではなく、好ましくは凝固又は噴霧乾燥によりなされる。
【0169】
ポリマー(C1)と多段階ポリマーを含むポリマー組成物(PC1)を製造するための第二の好ましい方法のプロセスは、ポリマー組成物を乾燥させるための更なる工程c)を任意選択的に含みうる。
【0170】
乾燥とは、本発明に係るポリマー組成物が3重量%未満の湿度、好ましくは1.5重量%未満の湿度、より好ましくは1.2重量%未満の湿度を含むことを意味する。
【0171】
湿度は、ポリマー組成物を加熱して重量損失を測定する熱天秤によって測定できる。
【0172】
ポリマー(C1)と多段階ポリマーを含むポリマー組成物を製造するための第二の好ましい方法は、好ましくはポリマー粉末を生じる。本発明のポリマー粉末は粒子の形態である。ポリマー粉末粒子は、多段階プロセスによって作製された凝集した一次ポリマー粒子とポリマー(C1)を含む。
【0173】
既に述べたように、本発明に係るポリマー組成物(PC1)はまた、より大きなポリマー粒子:ポリマー粉末の形態でありうる。ポリマー粉末粒子は、第一の好ましい方法による多段階プロセスによって作製された凝集一次ポリマー粒子、又は第二の好ましい方法によってポリマー(C1)からなるポリマー粒子と多段階プロセスで得られた多段階ポリマー(MP1)を混合することによって作製された凝集一次ポリマー粒子を含む。
【0174】
本発明のポリマー粉末に関し、これは、1μmと500μmの間の体積中央粒径D50を有しうる。好ましくは、ポリマー粉末の体積中央粒径は、10μmと400μmの間、より好ましくは15μmと350μmの間、有利には20μmと300μmの間である。
【0175】
体積粒度分布D10は、好ましくは、少なくとも7μm、好ましくは10μmである。
【0176】
体積粒度分布D90は、好ましくは、最大500μm、好ましくは400μm、より好ましくは最大250μmである。
【0177】
一実施態様では、(メタ)アクリル接着剤組成物として適切な組成物は、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)で、該モノマー(M1)の少なくとも一種はメチルメタクリレートであるもの;
a2)上で定義されたコア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1);
a3)上で定義されたポリマー(C1);
a4)少なくとも一種のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;
a5)場合によっては、少なくとも一種のモノマー(M2);
a6)重合促進剤
を含む第一剤組成物(P1)で、第一剤組成物中の多段階ポリマー(MP1)の含有量が、好ましくは11重量%から20重量%、より好ましくは13重量%から18重量%、有利には15重量%から18重量%からなるものと;
b)
b1)少なくとも一種の重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む。
【0178】
一実施態様では、(メタ)アクリル接着剤組成物として適切な組成物は、
a)
a1)(メタ)アクリルモノマー(M1)の混合物で、該モノマー(M1)の少なくとも一種はメチルメタクリレートであるもの、好ましくはメチルメタクリレートとトリデシルアクリレートを含む混合物;
a2)上で定義されたコア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1);
a3)上で定義されたポリマー(C1);
a4)少なくとも一種のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;
a5)場合によっては、少なくとも一種のモノマー(M2);
a6)重合促進剤
を含む第一剤組成物(P1)で、第一剤組成物中の多段階ポリマー(MP1)の含有量が、好ましくは11重量%から20重量%、より好ましくは13重量%から18重量%、有利には15重量%から18重量%からなるものと;
b)
b1)少なくとも一種の重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む。
【0179】
一実施態様では、(メタ)アクリル接着剤組成物として適切な組成物は、
a)
a1)少なくとも一種の(メタ)アクリルモノマー(M1)で、該モノマー(M1)の少なくとも一種はメチルメタクリレートであるもの;
a2)上で定義されたコア-シェル構造を有する多段階ポリマー(MP1);
a3)上で定義されたポリマー(C1);
a4)少なくとも一種のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;
a5)2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種のモノマー(M2);
a6)重合促進剤
を含む第一剤組成物(P1)で、第一剤組成物中の多段階ポリマー(MP1)の含有量が、好ましくは11重量%から20重量%、より好ましくは13重量%から18重量%、有利には15重量%から18重量%からなるものと;
b)
b1)少なくとも一種の重合開始剤
を含む第二剤組成物(P2)と
を含む。
【0180】
[評価方法]
[ガラス転移温度]
(多段階ポリマーの)ポリマーのガラス転移(Tg)は、熱機械分析を実現できる装置で測定される。Rheometrics社によって提案されたRDAII「RHEOMETRICS DYNAMIC ANALYSER」が使用された。熱機械分析は、温度、ひずみ、又は加えられた変形に応じて、サンプルの粘弾性変化を正確に測定する。装置は、温度変化の制御されたプログラムの間、ひずみを固定して維持しながらサンプルの変形を継続的に記録する。
結果は、温度の関数として、弾性率(G’)、損失弾性率、及びtanδを描画することによって得られる。Tgは、tanδの導出値がゼロに等しい場合に、tanδ曲線で読み取られるより高い温度値である。
【0181】
[分子量]
ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される。
【0182】
[粒径分析]
多段階重合後の一次粒子の粒径は、Zetasizerで測定される。
回収後のポリマー粉末の粒径は、MALVERN製のMalvern Mastersizer3000で測定される。
重量平均粉末粒径、粒度分布、及び微粒子の比率の推定には、0.5~880μmの範囲を測定する300mmレンズを備えたMalvern Mastersizer3000装置が使用される。
【0183】
[引張強度]
引張試験片は、23℃において10mm/分のクロスヘッド速度で試験した。サンプルは、メカニカルジョーを使用して保持した。引張弾性率(E)、引張応力及びひずみを、ISO527-2規格の要件に従って、ドッグボーン試験片を使用して、破断点及び降伏点で測定した。
【0184】
[シャルピー衝撃試験]
ISO179規格の要件(タイプ1)に従って、シャルピー試験片の長さは80mm、厚さ4mm、幅10mmであった。試験片に、自動CEAST NotchVis装置を使用してノッチを形成した。このノッチング機装置には、(45°±1°)のVノッチを有し半径r=(0.25±0.05)mmのコバルト鋼ナイフが取り付けられている。ノッチ深さは0.8mmであった。
シャルピー衝撃試験は、233グラムのハンマーを備えたZwick I振り子衝撃試験機を使用して実施した。提示された結果は、7個の試験した試験片の平均である。
【0185】
[多段階ポリマー(コア/シェル粉末)の分散性評価]
多段階ポリマー(コア/シェル粉末)を含む組成物を、ニートのメチルメタクリレート中での分散容易性について試験する。これは、メタクリレート部分に添加されたときに(A剤のメタクリレート組成物調製の第一段階)コア/シェルが均一な分散状態に達するのに必要な時間として、視覚検査によって評価した。特に、コア/シェル粉末凝集体の完全な消失に注意を払った。この試験に関する貧弱な結果は困難で長いと評価したのに対し、良好な結果は容易で速いと評価した。
【0186】
引張試験及びシャルピー衝撃強度試験片を直接準備するために、PTFE型を使用した。
【0187】
200rpmの回転速度で使用し、分散ブレードを取り付けたHeidolph RZR2051撹拌モーターを、室温での二剤型のメタクリレート接着剤配合物の異なる成分の混合プロセスに使用した。
【0188】
ラップせん断試験及び引張試験を、それぞれ50kN及び5kNの力センサーを備えたInstron引張試験機を使用して実施した。引張試験の初期段階で伸縮計を使用して、引張弾性率(E)をより高い精度で評価した。
【0189】
ラップせん断試験片を準備するための基材として使用されるアルミニウムプレートは、6061合金製であった。接着剤層の一定の厚さは、接合領域の周囲にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムスペーサーを使用することにより確保した。PTFEフィルムは250μm厚で、Multi-Laboから購入した。接着したところで、プレートを40mmのダブルクリップで一緒に保持し、硬化工程中の接合プレートを維持した。
【0190】
[ラップせん断アルミニウムプレートの表面処理]
【0191】
ラップせん断サンプルは、二枚のアルミニウムプレート、標準化された厚み(200ミクロン)の接着剤層、及びクランプ装置で構成されている。ラップせん断試験に使用されるプレートの表面処理プロトコルは、試験結果の信頼性にとって重要である。使用した様々な処理工程は次の通りであった:(i)水洗浄、(ii)アセトン洗浄、最後に(iii)表面擦過。
【0192】
水洗浄は、湿った布でこすることからなり、アセトン洗浄は、含浸した布でこすることで行った。Norton Saint Gobain製のR222エメリー布シートグリット180を使用して、EN13887規格に記載されている微細な表面擦過プロセスを実施した:表面は、完全に明るくなるまで主板軸に沿って擦過した。その後、最初の擦過痕が見えなくなるまで、垂直に擦過した。最後に、最初の2工程の擦過痕が見えなくなるまで、プレートを円形に擦過した。屑は圧縮乾燥空気によって除去した。
【0193】
[アルミニウムプレート接合工程]
【0194】
テフロンフィルムを二枚のプレート間のスペーサーとして使用して、接着剤層の厚さを均一にした。EN1465規格に従って、重なり合う接着面は12.5mm×25mm×2mmとした。
【0195】
少量の接着剤組成物を堆積させ、二枚のアルミニウムプレートの一方の先端の表面にヘラを使用して平らにする。この工程の間、テフロンスペーサーを手で保持し、動かないようにする。二枚目のアルミニウムプレートを最初のアルミニウムプレートに押し付けて、正しく重なり合う接合領域を確保する。二枚のプレートは、二つのダブルクリップを使用して固定する。硬化プロセスが完了すると、クリップを取り除く。ラップせん断サンプルに使用される硬化プロトコルは、以下に記載されるメタクリレート試験片の硬化に対するものと同じである。
【0196】
[ラップせん断試験プロトコル]
【0197】
EN1465規格の要件に従って、23℃においてInstron引張試験機を使用して、ラップせん断試験片のせん断接着強度を評価した。クロスヘッド速度は2mm/分であった。サンプルは、メカニカルジョーを使用して保持した。加えた応力とその結果生じるひずみを、破断するまで測定した。結果は、試験した5個の試験片の平均値である。
【実施例
【0198】
[合成]
実施例1:多段階ポリマー粒子の合成
【0199】
[第一段階A-ポリマータイプA1の重合] 20リットルの高圧反応器に、脱イオン水116.5部、牛脂脂肪酸のカリウム塩の乳化剤0.1部、1,3-ブタジエン21.9部、t-ドデシルメルカプタン0.1部、及びp-メンタンヒドロペルオキシド0.1部を初期ケトル投入分として入れた。溶液を撹拌しながら43℃に加熱し、その時点でレドックス系の触媒溶液(水4.5部、テトラピロリン酸ナトリウム0.3部、硫酸第一鉄0.004部及びデキストロース0.3部)を入れ、重合を効果的に開始させた。次に、溶液を更に56℃に加熱し、この温度で3時間保持した。重合開始の3時間後、2回目のモノマー投入分(BD77.8部、t-ドデシルメルカプタン0.2部)、半分の更なる乳化剤と還元剤投入分(脱イオン水30.4部、牛脂脂肪酸のカリウム塩の乳化剤2.8部、デキストロース0.5部)及び更なる開始剤(p-メンタンヒドロペルオキシド0.8部)を8時間にわたって連続的に添加した。2回目のモノマー添加の完了後、残りの乳化剤と還元剤投入分並びに開始剤を更に5時間にわたって連続的に添加した。重合開始から13時間後に、溶液を68℃に加熱し、重合開始から少なくとも20時間が経過するまで反応させ、ポリブタジエンゴムラテックスR1を生成した。得られたポリブタジエンゴムラテックス(A1)は、固形分38%を含み、約160nmの重量平均粒径を有していた。
【0200】
[第二段階B-ポリマータイプB1の重合] 3.9リットルの反応器中に、固形分ベースで75.0部のポリブタジエンゴムラテックスR1、37.6部の脱イオン水、及び0.1部のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを入れた。溶液を撹拌し、窒素でパージし、77℃に加熱した。溶液が77℃に達したところで、22.6部のメチルメタクリレート、1.4部のジビニルベンゼン及び0.1部のt-ブチルヒドロペルオキシド開始剤の混合物を70分間にわたって連続的に添加し、その後80分間保持した。保持時間の開始から30分後、0.1部のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム及び0.1部のt-ブチルヒドロペルオキシドを一度に反応器に加えた。80分間の保持時間の後、安定化エマルジョンをグラフトコポリマーラテックスに加えた。安定化エマルジョンは、3.2部の脱イオン水(グラフトコポリマー質量に基づく)、0.1部のオレイン酸、0.1部の水酸化カリウム、及び0.9部のオクタデシル-3-(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを混合することにより調製した。得られたコア-シェルポリマー(A+B)は、約180nmの重量平均粒径を有していた。
【0201】
[第三段階C-ポリマータイプC1の重合]
ポリマーC1の合成:半連続プロセス:反応器中に、撹拌しながら、脱イオン水中10000gのコア-シェルポリマー(A+B)、0.01gのFeSO4及び0.032gのエチレンジアミン四酢酸,ナトリウム塩(10gの脱イオン水に溶解)、110gの脱イオン水に溶解した3.15gのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム及び21.33gの牛脂脂肪酸カリウム塩の乳化剤(139.44gの水に溶解)を入れ、コア-シェルポリマーを除き、添加された原料が完全に溶解するまで、混合物を撹拌した。3回の真空窒素パージを連続して実施し、反応器を僅かな真空下に置いた。ついで、反応器を加熱した。同時に、1066.7gのメチルメタクリレートと10.67gのn-オクチルメルカプタンを含む混合物を30分間窒素脱気した。反応器を63℃に加熱し、その温度に維持する。次に、ポンプを使用してモノマー混合物を180分で反応器に投入した。並行して、5.33gのtert-ブチルヒドロペルオキシドの溶液(100gの脱イオン水に溶解)を投入する(同じ添加時間)。ラインを50gと20gの水ですすいだ。次に、反応混合物を80℃の温度で加熱し、ついで、モノマー添加の終了後、重合が完了するまで60分間放置した。反応器を30℃に冷却した。コポリマーC1の質量平均分子量は、M=28000g/molである。
【0202】
ついで、多段階ポリマー(MP1)とポリマー(C1)からなる最終ポリマー組成物を回収し、ポリマー組成物を噴霧乾燥により乾燥させて、コア/シェル-2の粉末を得た。
【0203】
比較例1:実施例1と同じ合成を行ったが、第三段階Cは行わなかった。コア/シェル-1の粉末が得られる。
【0204】
【0205】
42gのメチルメタクリレート(MMA)を250mlのビーカーに注いだ。20gのコア/シェル粉末添加剤を、200rpmで15分間連続撹拌しながらMMAに加えた。次に、4gの2EHA、4gのHEMA、13gのCN981、2gのGenorad40及び4gのMAAを加え、15分間再び撹拌した。最後に、8gのD1160と2gのR7200を、45分間撹拌しながら加えた。得られた均質なA剤組成物を密封容器に保管した。
【0206】
【0207】
22gのLY556樹脂を、40gのBP50、20gのベンジルブチルフタレート、5gのCoatOSil1770、最後に13gのR7200と共に、500rpmで30分間連続撹拌しながら、250mlのビーカーに注いだ。得られた均質なB剤組成物を密封容器に保管した。
【0208】
メタクリレートA剤組成物と重合開始剤B剤組成物とを、1分間1200rpmで撹拌しながら10:1の比率(B剤1部当たりA剤10部)で一緒に混合した。
【0209】
得られた均質なメタクリレート接着剤混合物を上記のPTFE型に注ぎ込み、室温で24時間硬化させた。同じ接着剤混合物を使用し、同じ硬化条件を使用してラップせん断試験片を準備した。この接着剤配合物の結果として生じたコア/シェル含有量は18.2重量%である。
【0210】
参照「ニート樹脂」組成物は、上記と同じプロトコルを使用し、但しA剤組成物にコア/シェル粉末を添加しないで(0重量%のコア/シェル組成物)簡単に調製したことに留意すべきである。
【0211】
実施例1に対応する適用結果を表3に報告する。本発明の革新的なコア/シェル2は、本メタクリレート接着剤配合物において標準のコア/シェル1参照より優れた性能をもたらすと結論付けることができる。より具体的には、コア/シェル2は、コア/シェル1と比較した場合、ホストメタクリレート樹脂の粘度の増加を抑えながら、より高い強化効果(シャルピー衝撃強度)、せん断応力(ラップせん断試験)及び破断点伸びを達成することを可能にする。このメタクリレート系のような硬質マトリックスにゴム相が導入されたときに常に観察される弾性率の損失は、接着剤配合物中の比較的多量(18.2重量%)のコア/シェルの導入を考慮すると、コア/シェル2の場合には妥当なままである。コア/シェル2は非反応性コア/シェルであるため、ホストメタクリレートマトリックスのガラス転移温度(Tg)には敏感には影響を及ぼさない。
【0212】
【0213】
上記のように異なる成分を混合することにより、3通りの他の配合物F1、F2、F3を作製した。
【0214】
引張強度(MPa)と破断点伸びの結果を次の表に提示する:
【0215】
牽引試験による破断点伸びの測定を、次のプロトコルに従って実施した:
測定は、100mm/分の一定速度で動く可動ジョーを有する試験機において、硬化した組成物で作製された標準試験片を引き伸ばし、前記試験片の破断の瞬間にその伸び(%)を記録することからなる。2011年の国際規格ISO37に示されているように、標準試験片はダンベル形状である。ダンベルの狭い部分は、20mm長、4mm幅、500μm厚である。
【0216】
参照は、配合物F1、F2、及びF3に類似する配合物であるが、如何なるコア/シェル2も含まない。
本発明の配合物F1、F2、及びF3は、有利には、良好な引張強度と高い破断点伸びとの間の良好な妥協点を示す。
【0217】
カートリッジ10/1(10部のAと1部のB、体積で10/1)を、上に開示したものと同様の方法に従って準備した:
【0218】
カートリッジは、末端利用者がA剤とB剤を混合することを可能にする静的ミキサーを備えている。
【0219】
この配合物では、19MPaの引張強度と140%の破断点伸びが得られた。