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特許7463274ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240401BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20240401BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240401BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/87
A61K8/89
A61K8/892
A61Q1/02
A61Q1/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020517830
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018053114
(87)【国際公開番号】W WO2019067715
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】15/719,788
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロサリオ-メレンデス, ロセリン
(72)【発明者】
【氏名】エル-クーリ, リタ ジャーキー
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】阪野 誠司
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520118(JP,A)
【文献】特表2007-535572(JP,A)
【文献】特開2012-082188(JP,A)
【文献】特表2017-518329(JP,A)
【文献】特表2015-516417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧料組成物であって、
(a)以下を含む成分A:
(i)組成物の総重量に対して0.01%~60%の、シルセスキオキサン、シリコーンアクリレートコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、37℃より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤;
(ii)組成物の総重量に対して0.01~20%の、少なくとも1種のフェニル化シリコーン;
(iii)組成物の総重量に対して0.01~20%の、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックス;および
(b)以下を含む成分B:
(i)組成物の総重量に対して0.01%~90%の、1000cSt~10000000cStの粘度のジメチコン、ジメチコノールおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物
を含み、
成分Aと成分Bが非混和性であり、
成分A中の少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤対成分B中の少なくとも1種のシリコーン化合物の重量比が1:50~50:1であり、
ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成
多層構造が成分Aからなる層と成分Bからなる層により形成され、かつ
ケラチン物質が皮膚又は唇である、
化粧料組成物。
【請求項2】
塗布前に非混和性の少なくとも2つの成分を含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
無水である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のフェニル化シリコーンが、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコントリメチルペンタフェニルトリシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のシロキサンポリマーワックスが、ビス-ステアリルジメチコン、ステアリルジメチコン、ビスステアロキシジメチコン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
(iv)組成物の総重量に対して0.01~10%の、グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステルをさらに含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステルがトリヒドロキシステアリンを含む、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤が、組成物の総重量に対して15%~60%の量で存在する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のシリコーン化合物が、組成物の総重量に対して0.01%~80%の量、および30000cSt~70000cStの粘度で存在する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
成分A中の膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比が50:1~1:2である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
シリコーン化合物が、シリコーンガム、シリコーン流体、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤がシルセスキオキサンを含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項13】
フッ素化物を含まない、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項14】
(a)請求項1に記載の化粧料組成物;(b)請求項1に記載の化粧料組成物を入れる少なくとも1つの容器;および(c)少なくとも1つのアプリケーターを含む、キット。
【請求項15】
少なくとも1つの容器が、化粧料組成物を混合するように構成される、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
化粧料組成物を混合して、成分Aと成分Bが一時的に混和性である混合組成物を形成することと、混合組成物をケラチン物質に塗布することとを含む、請求項1の化粧料組成物をケラチン物質に塗布する方法。
【請求項17】
ケラチン物質がリップを構成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧料組成物であって、
(a)以下を含む成分A:
(i)組成物の総重量に対して20%~40%の、ポリプロピルシルセスキオキサン、アクリレート/ジメチコンコポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤;
(ii)組成物の総重量に対して5~15%の、少なくとも1種のフェニル化シリコーン;
(iii)組成物の総重量に対して1~15%の、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックス;
(iv)組成物の総重量に対して0.1~2%の、グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステル;および
(b)以下を含む成分B:
(i)組成物の総重量に対して10%~30%の、1000cSt~100000cStの粘度のジメチコン、ジメチコノールおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種のシリコーン化合物
を含み、
成分Aと成分Bは非混和性であり;かつ、
成分A中の少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤対成分B中の少なくとも1種のシリコーン化合物の重量比が50:1~1:2であり、かつ
化粧料組成物がケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成し、
多層構造が成分Aからなる層と成分Bからなる層により形成され、かつ
ケラチン物質が皮膚又は唇である、
化粧料組成物。
【請求項19】
化粧料組成物を混合して、成分Aと成分Bが一時的に非混和性である混合組成物を形成することと、混合組成物をケラチン物質に塗布することとを含む、請求項18に記載の化粧料組成物をケラチン物質に塗布する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質に塗布した後、多層構造を形成することが可能な化粧料組成物に関する。そのような組成物は、マルチステップ塗布プロセスを行うことなく、多層化粧品に関連する利点を可能にする。
【背景技術】
【0002】
口紅、ファンデーション、アイシャドウなどの顔料化粧品を含む多くの化粧料組成物は、塗布時に長時間着用性を有するように配合されている。残念ながら、これらの組成物の多くは一般に、良好な塗布性、良好な快適性および/または良好な外観性(例えば光沢またはマット性)と良好な長時間着用性/耐移り性の両方は備えていない。
【0003】
例えばリップ製品に関しては、MQ樹脂などのシリコン樹脂を含有する市販品が知られている。このような製品は、良好な長時間着用性および/または耐移り性を提供することが知られている。しかし、このような製品は、塗布時の感触が悪い(例えばザラザラした感触)など、塗布性が悪く、また、MQ樹脂で形成された膜のために光沢性またはつや性も悪い(例えはマットな外観)。したがって、消費者に受け入れられる製品にするために、このような製品には第2の組成物(トップコート)を別途塗布して、組成物の劣った性質を改善することが行われている。さらに、トップコート組成物は、製品が消費者に受け入れられるように継続的に再塗布されなければならず、つまり、製品が一定の維持と再塗布を必要とするとおり、効果的に「長持ち」しないということである。
【0004】
また、ファンデーションに関しては、このような製品は、良好な長時間着用性および/または耐移り性を付与することができる。しかし、このような長持ちし/耐移り性がある製品は、塗布性および/または塗布時の感触が悪く、また、マット性も悪い場合がある。
【0005】
したがって、安定した配合でありながら、改善された化粧品特性、特に良好な着用性、感触、光沢、つやおよび/またはマット性を有する改善された「シングルステップ」化粧料組成物の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ケラチン物質に塗布した後、多層構造を形成することが可能な化粧料組成物に関する。1つ以上の実施態様において、該組成物は、
(a)以下を含む成分A
(i)組成物の総重量に対して約0.01%~60%の、少なくとも1種のシリコーン含有および/または炭化水素含有膜形成剤であって、ヒトの平熱よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度を有するもの;
(ii)組成物の総重量に対して約0.01%~20%の、少なくとも1種のフェニル化シリコーン;
(iii)組成物の総重量に対して約0.01%~20%の、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックス;および
(b)以下を含む成分B
(i)組成物の総重量に対して約0.01%~90%の、約1000cSt~10000000cStの粘度を得るのに十分な量の1種以上のシリコーン化合物;
を含み、
成分Aと成分Bは非混和性であり、
成分A中のシリコーン含有および/または炭化水素含有膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比が約1:50~50:1である、組成物。
【0007】
1つ以上の実施態様では、化粧料組成物は、塗布前に非混和性の少なくとも2つの成分を含む。いくつかの実施態様では、化粧料組成物は、無水である。1つ以上の実施態様では、少なくとも1つのフェニル化シリコーンは、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックスは、ビス-ステアリルジメチコン、ステアリルジメチコン、ビスステアロキシジメチコン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
1つ以上の実施態様では、組成物は、(iv)組成物の総重量に対して約0.01~10%の、グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステルをさらに含む。いくつかの実施態様では、グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステルは、トリヒドロキシステアリンを含む。1つ以上の実施態様において、少なくとも1種の、シリコーン含有および/または炭化水素含有膜形成剤は、組成物の総重量に対して約15%~60%の量で存在する。いくつかの実施態様では、1種以上のシリコーン化合物は、組成物の総重量に対して約0.01%~約80%の量、および30000cSt~70000cStの粘度を得るのに十分な量で存在する。1つ以上の実施態様において、成分A中の膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比は、50:1~1:2である。いくつかの実施態様において、シリコーン化合物は、シリコーンガム、シリコーン流体、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0009】
1つ以上の実施態様では、成分Aは、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤を含む。いくつかの実施態様において、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤は、シルセスキオキサンを含む。1つ以上の実施態様では、成分Aは、多糖、高粘度エステル、ポリブテン、ポリイソブテン、多水素化ブテン(polyhydrogenated butenes)、アクリルポリマー、アクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有ホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤を含む。いくつかの実施態様において、化粧料組成物は、フッ素化物を含まない。
【0010】
上記の実施態様はいずれも、他の実施態様と組み合わされてもよい。例えば、いくつかの実施態様において、組成物は、
(a)以下を含む成分A
(i)組成物の総重量に対して約20%~40%の、ポリプロピルシルセスキオキサン、アクリレート/ジメチコンコポリマーおよびこれらの組み合わせ;
(ii)組成物の総重量に対して約5~15%の、少なくとも1種のフェニル化シリコーン;
(iii)組成物の総重量に対して約1~10%の、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックス;
(iv)組成物の総重量に対して約0.1~2%の、グリセリンと脂肪酸からなる少なくとも1種のトリエステル;および
(b)以下を含む成分B;
(i)組成物の総重量に対して約10%~30%で、約1000cSt~100000cStの粘度を得るのに十分な量の、ジメチコン、ジメチコノールおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のシリコーン化合物
を含み、
成分Aと成分Bは非混和性であり;かつ、
成分A中のシリコーン含有および/または炭化水素含有膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比は、約50:1~1:2である。
【0011】
本発明の別の態様は、キットに関する。1つ以上の実施態様において、キットは、(a)本明細書に記載の任意の組成物;(b)請求項1に記載の化粧料組成物を入れる少なくとも1つの容器;および(c)少なくとも1つのアプリケーターを備える。1つ以上の実施態様では、少なくとも1つの容器は、化粧料組成物を混合するように構成される。
【0012】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の化粧料組成物を塗布する方法に関する。1つ以上の実施態様では、化粧料組成物を混合して、成分Aと成分Bが一時的に混和性である混合組成物を形成することと、該混合組成物をケラチン物質に塗布すること。
【0013】
前述の概略的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示的および説明的なものにすぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ/1種」という表現は、1つまたは複数を意味し、したがって、個々の成分も混合物/組み合わせも含む。
【0015】
実施例中、または別段の記載がある場合は別として、原料および/または反応条件の量を表すすべての数値は常に、示された数値の10%~15%以内を意味する「約」という用語で修飾されていると理解されるものとする。
【0016】
本明細書で使用される「塗膜形成要素」または「膜形成剤とは、それが塗布される基材上に膜を残すポリマーまたは樹脂を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「ポリマー」は、少なくとも2つのモノマーから構成される化合物を意味する。
【0018】
本明細書で使用される「置換された」は、少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。置換基の非限定的な例には、酸素原子および窒素原子などの原子、ならびにヒドロキシル基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホネート基、チオスルフェート基、シロキサン基、ヒドロキシアルキル基、およびポリシロキサン基などの官能基が含まれる。置換基はさらに置換されてもよい。
【0019】
本明細書で使用される「揮発性」とは、約100℃未満の引火点を有することを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「不揮発性」とは、約100℃を超える引火点を有することを意味する。
【0021】
「無水」は、組成物が1%未満の水を含むことを意味する。好ましくは、本発明の組成物は、0.5%未満の水を含み、最も好ましくは水を含まない。
【0022】
本明細書で使用される「耐移り性」は、例えば食事または飲酒時に、例えばグラス、衣料品または皮膚などの別の物質との接触によって容易に除去されない組成物によって示される品質を指す。そのようなものを評価するための当該技術分野で既知の任意の方法によって、耐移り性を評価することができる。組成物の耐移り性は、例えば「キス」試験によって評価することができる。この「キス」試験は、毛髪、皮膚または唇などのヒトのケラチン物質に組成物を塗布し、塗布から一定時間、例えば塗布後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15分経過した後に、例えば紙のシートなどの物質を毛髪、皮膚または唇にこすりつけることを伴う。同様に、組成物の耐移り性は、例えば毛髪、皮膚または唇への組成物の塗布から一定時間が経過した後に衣服を着た際、個人の唇から襟に移されるなど、着用者から他の任意の基材に移された製品の量によって評価される。その後、基材(例えば襟または紙)に移された組成物の量を評価し、比較することができる。組成物は、例えば、着用者の毛髪、皮膚または唇に製品の大半が残っていれば、耐移り性である。さらに、この移った量を、市販の組成物などの他の組成物によって移った量と比較することもできる。本発明の好ましい実態様では、毛髪、皮膚または唇から基材に移る組成物は殆どないか、全くない。
【0023】
本明細書で使用される「付着性」は、塗布後に基材に付着する組成物によって示される品質を指す。付着性は、それを評価するための当該分野で既知の任意の方法で評価することができる。例えば、付着性について試験するためのサンプルは、バイオスキン基材またはByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50x17.00インチ)の表面に置いてもよい。乾燥後、ASTM クロスハッチテープ(Permacel99/PA-28060/51596)をサンプルの上に置き、180°の角度で取り除く。その後、どれだけのサンプルがテープに付着しているかを測定することができる。例えば、基材からテープへのサンプルの除去の程度を評価するために、尺度1-3などの評価尺度を使用でき、ここで、1は基本的に全く除去されていない、2はいくらか除去されている、3は基本的に完全に除去されている。
【0024】
本明細書で使用される耐擦過性(rub-off resistance)という用語は、手または衣服または他の物理的相互作用でヒトの皮膚をこするなどの物理的摩耗を指す。また、これは、皮膚に有効成分を保持したり、またはByko-Charts Black Scrub Panel P122-10N(6.50x17.00インチ)もしくはバイオスキンなどの基材または皮膚からの有効成分の擦過による除去を防止したりする能力ともいえる。
【0025】
本明細書で使用される「長時間着用」組成物とは、長時間経過後に肉眼で見て、適用時と同じまたは実質的に同じままである組成物を指す。そのような特性を評価するための当該技術分野で既知の任意の方法によって、長時間着用性を評価することができる。例えば、長時間着用性は、組成物を皮膚に塗布すること、および長時間経過後の該組成物の色を評価することを含む試験によって評価することができる。例えば、組成物の色は、皮膚への塗布の直後に評価し、その後、一定時間経過後に再評価し、比較してもよい。長時間着用性は、さらに、市販の組成物などの他の組成物について評価することができる。あるいは、またはさらに、サンプルを利用し、それを乾燥させ、その後そのサンプルを摩耗させてサンプルの除去/減量を測定することにより、長時間着用性を評価することができる。
【0026】
本発明の化粧料組成物および方法は、本明細書に記載の本発明の必須要素および制限、ならびに本明細書に記載されているか、あるいはパーソナルケアに有用な追加または任意選択の原料、成分または制限を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。
【0027】
多層構造を形成可能な組成物
本発明の様々な実施形態によれば、ケラチン物質への塗布後に層構造を形成することができる化粧料組成物が提供される。そのような組成物は、マルチステップ塗布プロセスを行うことなく、多層化粧品に関連する利点を可能にする。1つ以上の実施態様において、そのような組成物は、口紅、リップグロス、ファンデーション、アイシャドウおよび他の皮膚組成物として適している。
【0028】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、本発明の化粧料組成物は、以下「成分A」および「成分B」と呼ばれる少なくとも2つの成分を含む。1つ以上の実施態様において、成分Aと成分Bの両方とも、シリコーンを含む。成分Aは、例えば、シリコーン含有膜形成剤を含み得る。成分Bは、例えば、シリコーンガムを含み得る。いくつかの実施態様では、成分Aは炭化水素膜形成剤を含み、成分Bはシリコーン化合物を含む。繰り返しになるが、成分Bは、例えば、シリコーンガムを含み得る。1つ以上の実施形態において、成分Aは、シリコーン含有膜形成剤および炭化水素含有膜形成剤の両方を含み得る。
【0029】
成分Aは、本発明の組成物のケラチン物質への塗布後に、多層構造のうち最もケラチン物質に近い層を形成する、本発明の組成物の成分である。以下、多層構造のこの層を「層A」とiいう。好ましい実施態様によれば、成分A/層Aは、これら2つの間の表面エネルギー特性により、ケラチン物質の表面に対して親和性を有する。
【0030】
成分Bは、本発明の組成物のケラチン物質への塗布後に、多層構造のうち最もケラチン物質から離れた多層構造を形成する、本発明の組成物の成分である。以下、多層構造のこの層を「層B」という。好ましい実施態様によれば、成分B/層Bは、これら2つの間の表面エネルギー特性により、空気界面に対して親和性を有する。
【0031】
本発明によれば、成分Aおよび成分Bについて本明細書に記載されているすべての重量および比率は、これらの成分中の活性物質(すなわち不揮発性物質)の量を指す。同様に、層Aおよび層Bについて本明細書に記載されているすべての重量および比率は、層Aおよび層Bが揮発性溶媒の蒸発後に存在するので、活性物質の量を指す。
【0032】
ケラチン物質への塗布前、本発明の組成物中では、成分Aと成分Bは非混和性である。好ましくは、これら非混和性成分の非混和性は、組成物が静止状態にあるときのこれら2つの成分間の不適合性、ケラチン物質への塗布後のこれら2つの成分間の不適合性、またはその両方に起因する。
【0033】
1つ以上の実施態様において、これら非混和性成分の非混和性は、例えば粘度、ガラス転移温度、界面張力、溶解度パラメーター、密度、ならびに/または成分の化学的/構造的不適合性の違い、ならびに/または温度および/もしくは圧力によって誘導される違いなどの違いに起因する。
【0034】
例えば、組成物が静止状態にあるときのこれら非混和性成分の非混和性は、例えば、化学的/構造的な不適合性、成分間の界面張力の違い、例えば相溶性のある溶媒(複数可)内の相間の界面張力の違い、粘度の違い、各相内のポリマーのガラス転移温度の違い、ならびに/または温度および/もしくは圧力によって引き起こされる違いなどに起因し得る。
【0035】
例えば、組成物が塗布されているときのこれら非混和性成分の非混和性は、例えば、化学的/構造的な不適合性、成分間の界面張力の違い、溶媒蒸発後の成分の密度の違い、ならびに/または温度および/もしくは圧力によって引き起こされる違いなどに起因し得る。
【0036】
1つ以上の実施態様において、本発明の組成物をケラチン物質に塗布する際に成分Aと成分Bが一時的に混和するように、本発明の組成物は、ケラチン物質への塗布の直前および/または塗布中に混合またはブレンドされる。
【0037】
本発明の組成物がケラチン物質に塗布されると、成分Aが成分Bから分離する。塗布されたケラチン物質上で組成物が乾燥すると、非混和性成分Aおよび成分Bは、例えばケラチン物質上にそれぞれ層Aおよび層Bを含む、例えば以下のような多層構造を形成する。
【0038】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、本発明の組成物がケラチン物質に塗布された後、成分Bは、水平である層Bをもたらし、すなわち層Bは、組成物に光沢を付与する屈折特性を有し得る平面である。これらの実施態様によれば、成分Bはセルフレベリング性を有する。すなわち、それは塗布後に水平な層Bをもたらす。所望であれば、このような組成物の光沢は、高屈折率特性を有する1種以上の光沢またはつや増強剤を添加することによって増強することができる。あるいは、このような組成物には、1種以上のマット化剤の添加によってマット性が与えられる。
【0039】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物がケラチン物質に塗布された後、成分Bは、水平でない層Bをもたらし、すなわち層Bは、組成物にマット性を付与するような平面ではない。これらの実施態様によれば、成分Bはセルフレベリング性を有しない。すなわち、それは塗布後に非水平層Bをもたらす。所望であれば、このような組成物のマット性は、1種以上のマット化剤の添加によって増強することができる。あるいは、このような組成物には、高屈折率特性を有する1種以上の光沢またはつや増強剤の添加によって光沢/明度が与えられる。本組成物の別の利点は、ベース層/プライマーとして使用される際に、本組成物のセルフレベリング性が平滑化表面を提供し、それにより皮膚の欠陥を減らすことができる点である。
【0040】
本発明によれば、多層構造は、層Aと層Bとを含む。特定の例では、原料比率、原料濃度、溶媒の蒸発性、およびポリマーのTgなどの要因に応じて、ケラチン物質への塗布後に層が互いにわずかに混ざり、結果として、層Aはより多量のAとより少量のBを有することになり、および/または層Bはより多量のBとより少量のAを有することになる。好ましくは、層Aは、40%未満の層B、好ましくは30%未満の層B、好ましくは20%未満の層B、好ましくは10%未満の層B、好ましくは5%未満の層B(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)を含む。同様に、好ましくは、層Bは、40%未満の層A、好ましくは30%未満の層A、好ましくは20%未満の層A、好ましくは10%未満の層B、好ましくは5%未満の層A(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)を含む。
【0041】
ケラチン物質への塗布後の成分Aと成分Bの分離に影響を与える要因には、例えば、基材の表面エネルギー、各成分の密度、溶媒の蒸発性、塗膜形成要素のTgおよび/または塗膜形成要素の粘度を含むがこれらに限定されない上記の特性が含まれ得る。
【0042】
特定の理論に拘束されることを望まないが、成分Aは、成分Bよりも、塗布されるケラチン物質の表面エネルギー特性により近い表面エネルギー特性を有すると考えられている。例えば、皮膚の表面エネルギーは36mN/mと推定される。したがって、成分Aが約36mN/mの表面エネルギーを有する場合、成分Aは皮膚に移動することができると考えられている。成分Bは表面エネルギーが低いことが好ましく、それによって空気界面に向かって移動する可能性が高くなる。
【0043】
特定の理論に束縛されることを望まないが、成分AとBの界面張力は相分離(特に、成分AおよびBが適用後に分離する速度)に影響を与えると考えられている。このような相分離は、上述したような違い、例えば、成分AとBの温度の違い、成分AとBのTgの違い(Tgが高いほど、成分は層分離するのに時間がかかる)、塗膜形成要素の重量分率の違い、および/または成分AとBの圧力の違いなどによって影響を受け得ると考えられる。
【0044】
このような違いについては、さらに後述する。
【0045】
ガラス転移温度(Tg)
好ましい実施態様によれば、成分Aおよび/または成分Bは、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜Fまたは37℃)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1種のシリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤を含む。好ましくは、成分Aおよび/または成分Bは、ガラス転移温度(複数可)のすべてがヒトの平熱(98.6゜Fまたは37℃)を下回る少なくとも1種のシリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤を含む。当該技術分野で知られているように、可塑剤を添加して、膜形成剤のTgを調整することができる。好ましい実施態様によれば、層Aおよび層Bは両方とも、37℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種の形成剤を含む。
【0046】
Tgを測定する好ましい方法は、層からすべての揮発性溶媒を除去し、示差走査熱量測定でTgを測定することである。
【0047】
密度
好ましい実施態様によれば、成分Aおよび成分Bは、異なる密度特性を有し、その違いは、成分Aと成分Bが本発明の組成物中で非混和性であるほどである。好ましくは、成分A/層Aと成分B/層Bは、0.001-1kg/m3、好ましくは0.005-0.8kg/m3、好ましくは0.01-0.6kg/m3の密度差を有する。
【0048】
温度
好ましい実施態様によれば、成分Aおよび成分Bは温度の影響を受け、その影響は、当該技術分野で知られているように、50℃以下の温度で所定の時間にわたって、そのような条件下で安定であると考えられるエマルションとは異なり、成分Aと成分Bが本発明の組成物中で非混和性であるほどである。
【0049】
重量分率
好ましい実施態様によれば、成分Aおよび/または成分Bは、例えば、以下のような絡み合いの臨界分子量(Mc)を有する膜形成剤などの少なくとも1つのポリマーを含む。
【0050】
少なくとも1つポリマーは、成分Aに存在する場合、Mc<wMwであり、ここで、wはポリマーの重量分率、Mwはポリマーの分子量である。
【0051】
また、成分Bに存在する場合、少なくとも1つのポリマーはMc≦wMw≦108g/molである。
【0052】
さらに、好ましい実施態様によれば、成分B中の少なくとも1つのポリマーの粘度は、350cStを超え、好ましくは500cSt超え、好ましくは50cStを超え、好ましくは1000cStを超える(この間のすべての範囲および部分範囲を含む)。
【0053】
原料
成分Aと成分Bは、主に層Aと層Bに関連付けられた異なる機能性に基づいて、様々点で異なり得る。例えば、層Aが耐移り性または付着性の機能を果たす場合、成分Aの原料は、耐移り性または付着性をもたらすように選択され得る。同様に、層Aが色増強機能を果たす場合、少なくとも1種の着色剤が成分Aに添加され得る。また、例えば、層Bが光沢増強機能を果たし、かつ/またはより良好な感触を提供する(例えば、より快適な感触を与える)、かつ/または色移りを抑制するバリア層を提供する場合、成分Bの原料は、つや、光沢、快適性および/またはバイア層の特性を効果的に発揮するように選択することができる。ただし、層Aと層Bの界面において、層Aの界面は、層Bとより関連した特性(例えば光沢)を有してもよく、一方、層Bは、層Aとより関連した特性(例えば付着性)を有してもよいことが理解されるべきである。
【0054】
好ましい実施態様によれば、成分Aは、少なくとも1種のシリコーン-および/または炭化水素含有膜形成剤、少なくとも1種の着色剤またはその両方を含み、層Aは、多層構造に付着性、耐移り性および/または色特性を提供する。そのような実施態様によれば、成分Bは、少なくとも1種の光沢増強剤、少なくとも1種の快適剤(comfort agent)および/または少なくとも1種のバリア剤を含み得、層Bは多層構造に光沢、快適性および/またはバリア特性を提供する。
【0055】
いくつかの実施態様では、組成物は、約1%未満または0.5%未満のフッ素化物を含むか、またはフッ素化物を含まない。
【0056】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、0.5%未満のフッ素化物を含有する。好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、フッ素化物を含まない。
【0057】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1種の同じ溶媒が、成分Aと成分Bで使用される。好ましくは、各成分中に存在する全溶媒のうち、各成分中の大部分は同じである。
【0058】
好ましい実施態様によれば、成分A対成分Bの重量比は、1:50~1.5:1、1:75~1.5:1、1:50~1.5:1または1:20~1.5:1(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)。
【0059】
成分Aおよび/または成分Bに添加される許容可能な原料の例は、後述する。
【0060】
膜形成剤(塗膜形成要素)
本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーン-および/または炭化水素含有膜形成剤を含み得る。シリコーン及び炭化水素含有膜形成剤は、当該技術分野で知られており、任意のシリコーン-および/または炭化水素含有膜形成剤を使用することができる。好ましい実施態様によれば、本発明の組成物中には、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1種のシリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤が含まれる。好ましくは、少なくとも1種のシリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤は、そのガラス転移温度のすべてが60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)未満である。少なくとも1種のシリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤のTg特性は、例えば、シリコーンおよび/または炭化水素含有膜形成剤自体のTg、ヒトの平熱より低いTgを得るための異なる膜形成剤の組み合わせ、またはヒトの平熱.より低いTgを得るための膜形成剤(複数可)と可塑剤(複数可)との組み合わせ等、当該技術分野で知られている様々な方法から得ることができる。
【0061】
好ましい実施態様によれば、膜形成剤(複数可)は、好ましくは約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20または25重量%から約25、30、35、45、50、55、60、65、70、80または90重量%の量で存在する。
【0062】
炭化水素含有膜形成剤(塗膜形成要素)
本発明の組成物は、少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「炭化水素含有膜形成剤」とは、少なくとも1種の約2.5、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95または99重量%の炭化水素を含む膜形成剤をいう。さらなる実施態様Iでは、炭化水素含有膜形成剤は、約5%未満または約1%未満のシリコーン樹脂を含み、またさらなる実施態様Iでは、シリコーン樹脂を含まない。
【0063】
炭化水素含有膜形成剤は、当該技術分野で知られており、任意の炭化水素含有膜形成剤を使用することができる。好ましい実施態様によれば、本発明の組成物中には、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤が含まれる。好ましくは、少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤は、そのガラス転移温度のすべてが60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)未満である。少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤のTg特性は、例えば、炭化水素含有膜形成剤自体のTg、ヒトの平熱より低いTgを得るための異なる膜形成剤の組み合わせ、またはヒトの平熱.より低いTgを得るための膜形成剤(複数可)と可塑剤(複数可)との組み合わせ等、当該技術分野で知られている様々な方法から得ることができる。
【0064】
膜形成剤の許容可能な種類には、アクリルポリマー、アクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有ホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0065】
アクリルポリマー
許容可能なポリマー膜形成剤は当該技術分野で知られており、米国特許出願公開第2004/0170586号及び同第2011/002026号に開示されているものを含むが、これらに限定されるものではなく、これらの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本明細書で使用される「アクリルポリマー塗膜形成要素」とは、膜形成剤であり、1つ以上の(メタ)アクリル酸(および対応する(メタ)アクリレート)モノマーまたは類似のモノマーをベースとするポリマーを指す。さらなる実施態様では、アクリルポリマー塗膜形成要素は、シリコーンまたはシロキサン基を含まない。
【0067】
そのような膜形成剤の非限定的な代表例には、少なくとも1つの無極性モノマー、少なくとも1つのオレフィン系不飽和モノマー、および少なくとも1つのビニル系機能性モノマーを含むコポリマーが含まれる。
【0068】
無極性モノマーについては、4~14個のC原子、好ましくは4~9個のC原子で構成されるアルキル基を有するアクリルおよびメタクリルエステルを含むアクリルモノマーが好ましい。この種のモノマー例は、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、およびそれらの分岐異性体、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0069】
オレフィン系不飽和モノマーについては、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸基、ホスホン酸基、酸無水物、エポキシド、およびアミンから選択される官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。オレフィン系不飽和モノマーの特に好ましい例には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、ベータ-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロルアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが含まれる。
【0070】
ビニル系官能化化合物については、好ましいモノマーには、先に述べたモノマーの一方または両方と共重合可能なモノマー、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert-ブチルフェニルアクリレート、tert-ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5-ジメチルアダマンチルアクリレート、4-クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4-ビフェニルアクリレート、4-ビフェニルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、2-ナフチルメタクリレート、トラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、メチル3-メトキシアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシ-ポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-(1-メチルウンデシル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)アクリルアミド、およびN,N-ジアルキル-置換アミド、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルピロリドン、スチレン、a-およびp-メチルスチレン、a-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、2ポリスチレン-エチルメタクリレート(分子量Mwが400~13000g/mol)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(Mwが2000~8000g/mol)などのマクロモノマーが含まれる。
【0071】
アクリルポリマーの例は、アクリル酸、イソブチルアクリレート、および酢酸イソボルニルのコポリマーであり、例えばPseudoblock(Chimex)およびSynamer-3の名称で販売されている。これら両方の市販品において、コポリマーは、溶媒と1:1の比率で存在している(50%固体)。別の好ましい塗膜形成要素は、50%オクチルドデシルネオペンタノエート中50%活性物質ポリ(イソボルニルメタクリレート-8 コ-イソボルニルアクリレート-コ-イソブチルアクリレート-コ-アクリル酸)(Chimex社のMexomere PAZ)である。
【0072】
ビニルピロリドンポリマー
許容できるビニルピロリドンホモポリマーまたはコポリマーには、例えば、ポリマーACP-10などの架橋または非架橋のビニルピロリドンホモポリマー、およびアルファ-オレフィンとビニルピロリドンから製造されるコポリマーが含まれ、ここでコポリマーは、例えばVP/エイコセン(GANEX V-220)およびVP/トリコンタニルコポリマー(GANEX WP660)などのGanexの名称でAshlandから入手可能なものなど、ビニルピロリドンと、少なくとも1つのC4-C30部分を含有するアルキル成分とを好ましくは10~80パーセントの濃度で好ましくは含有する。
【0073】
高粘度エステル
1つ以上の実施態様において、本発明の化粧料組成物はまた、少なくとも1種の高粘度エステルも含有し得る。その例には、限定されないが、糖類および関連材料のC1-C30モノエステルおよびポリエステルが含まれる。これらのエステルは、糖またはポリオール部分と1つ以上のカルボン酸部分とから誘導される。これらのエステルは、構成する酸や糖にもよるが、室温で液状または固体状のいずれかである。適切な液体エステルには、限定されないが、グルコーステトラオレアート、大豆油脂肪酸のグルコーステトラエステル(不飽和)、混合大豆油脂肪酸のマンノーステトラエステル、オレイン酸のガラクトーステトラエステル、リノール酸のアラビノーステトラエステル、キシローステトラリノレアート、グルコースペンタオレアート、ソルビトールテトラオレアート、不飽和大豆油脂肪酸のソルビトールヘキサエステル、キシリトールペンタオレアート、スクローステトラオレアート、スクロースペンタオレアート、スクロースヘキサオレアート、スクロースヘプタオレアート(hepatoleate)、スクロースオクタオレアート、およびこれらの混合物が含まれる。適切な固体エステルには、限定されないが、カルボン酸エステル部分が1:2のモル比のパルミトレアートとアラキデートであるソルビトールヘキサエステル;カルボン酸エステル部分が1:3のモル比のリノレアートとベヘネートであるラフィノースのオクタエステル;エステル化カルボン酸部分が3:4のモル比のヒマワリ種子油脂肪酸とリグノセラートであるマルトースのヘプタエステル;エステル化カルボン酸部分が2:6のモル比のオレアートとベヘネートであるスクロースのオクタエステル;およびエステル化カルボン酸部分が1:3:4のモル比のラウレート、リノレアート、ベヘネートであるスクロースのオクタエステルが含まれる。一実施態様では、エステルは、エステル化度が7-8であり、脂肪酸部分がC18のモノおよび/またはジ不飽和べヘン(behenic)であり、不飽和化合物:べヘンのモル比が1:7~3:5であるスクロースポリエステルである。別の実施態様では、糖ポリエステルは、分子内に約7個のベヘン脂肪酸部分とおよそオレイン酸部分(about oleic acid moiety)が存在するスクロースのオクタエステルである。他の材料は、スクロースの綿実油または大豆油脂肪酸エステルを含み得る。
【0074】
1つ以上の実施態様において、高粘度エステルは、スクロースアセテートイソブチレートを含む。適切なスクロースアセテートイソブチレート化合物の一例は、テネシー州キングスポートのイーストマン登録商標)から市販されているSAIB-100(登録商標)である。このエステルは、30℃で約100000cpsの粘度および20℃で約1.5の屈折率を有する。アクリルポリマー
【0075】
許容可能なポリマー膜形成剤は当該技術分野で知られており、米国特許出願公開第2004/0170586号及び同第2011/002026号に開示されているものを含むが、これらに限定されるものではなく、これらの内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
シリコーン含有膜形成剤(塗膜形成要素)
本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「シリコーン含有膜形成剤」とは、シリコーンを含有する膜形成剤を指す。1つ以上の実施態様において、「シリコーン含有膜形成剤」には、重量比で少なくとも約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のシリコーンを含有するポリマーが含まれる。シリコーン含有膜形成剤は当該技術分野で知られており、任意のシリコーン含有膜形成剤が使用され得る。好ましい実施態様によれば、本発明の組成物中には、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤が含まれる。好ましくは、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤は、そのガラス転移温度のすべてが60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくはヒトの平熱(98.6゜F)未満である。少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤のTg特性は、例えば、シリコーン含有膜形成剤自体のTg、ヒトの平熱より低いTgを得るための異なる膜形成剤の組み合わせ、またはヒトの平熱.より低いTgを得るための膜形成剤(複数可)と可塑剤(複数可)との組み合わせ等、当該技術分野で知られている様々な方法から得ることができる。
【0077】
シリコーン含有膜形成剤の許容可能な種類には、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有コポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0078】
1つ以上の実施態様において、シリコーン含有膜形成剤は、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、これらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
シリコーン樹脂
本明細書で使用される場合、「樹脂」という用語は、架橋または非架橋の三次元構造を意味する。本発明の1つ以上の実施態様によれば、成分Aは、少なくとも1種のシリコーンアクリレートを含む。シリコーン樹脂の命名法は、当該技術分野において「MDTQ」命名法として知られており、それにより、シリコーン樹脂は、ポリマーを構成する様々なモノマーのシロキサン単位に従って記載される。
【0080】
「MDTQ」の各文字は、異なる種類の単位を示す。Mの文字は、単官能単位(CH3)3SiO1/2を示す。この単位は、この単位がポリマーの一部である場合にシリコーン原子は酸素を共有するだけであるため、単官能性であると見なされる。「M」単位は、次の構造で表すことができる。
【0081】
M単位のメチル基の少なくとも1つを別の基で置き換えると、例えば次の構造で表される式[R(CH3)2]SiO1/2の単位が得られる。
上式中、Rは、メチル基以外の基から選択される。そのようなメチル基以外の基の非限定的な例には、メチル基以外のアルキル基、アルケン基、アルキン基、水酸基、チオール基、エステル基、酸基、エーテル基が含まれ、ここで、メチル基以外の基はさらに置換されていてもよい。
【0082】
Dの記号は、二官能性単位(CH3)2SiO2/2を示し、シリコーン原子に結合した2つの酸素原子が残りのポリマーへの結合に使用される。この単位「D」は、ジメチコン油の主要な構成要素であり、以下のように表される。
【0083】
D単位のメチル基の少なくとも1つを別の基で置き換えると、例えば式[R(CH3)2]SiO1/2の単位が得られる。
【0084】
記号Tは、(CH3)SiO3/2の三官能性単位を示し、次のように表される。
【0085】
T単位のメチル基の少なくとも1つを別の基で置き換えると、例えば式[R(CH3)2]SiO1/2の単位が得られる。
【0086】
最後に文字Qは、ケイ素原子が、残りのポリマーに結合している4つの水素原子に結合している四官能性単位SiO4/2を意味する。
【0087】
したがって、非常に多くの異なるシリコーンポリマーを製造することができる。さらに、潜在的なシリコーンポリマーのそれぞれの特性が、モノマーの種類、置換の種類、ポリマー鎖のサイズ、架橋度、任意の側鎖(複数可)のサイズによって変化することは、当業者には明らかであろう。
【0088】
シリコーンポリマーの非限定的な例には、シロキシシリケートおよびシルセスキオキサンが含まれる。
【0089】
シロキシシリケートの非限定的な例は、トリメチルシロキシシリケートであり、以下の式によって表すことができる。
[(CH3)3XSiXO]xX(SiO4/2)y
(すなわちMQ単位)上式中、xおよびyは、例えば、50~80の範囲であり得る。一方、シルセスキオキサンは、次の式で表すことができる。
(CH3SiO3/2).x
(すなわちT単位)上式中、xは、例えば、数千までの値を有し得る。
【0090】
Wacker、ゼネラルエレクトリックおよびダウコーニングから入手可能な樹脂MQは、許容できる市販のシロキシシリケートの例である。例えば、トリメチルシロキシシリケート(TMS)は、SR1000の商品名でゼネラルエレクトリックから、TMS 803の商品名でWackerから市販されている。TMSはまた、例えばシクロメチコンなどの溶媒でダウケミカルから市販されている。しかしながら、本発明によれば、TMSは、100%活性物質の形態で使用され、すなわち溶媒では使用されなくてもよい。
【0091】
本発明による少なくとも1つのT単位を含む適切なシリコン樹脂は、例えば、米国特許出願公第2007/0166271号、2011/0038820号、2011/0002869号および2009/0214458号に開示されており、これらの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
シリコーン樹脂が少なくとも1つのT単位を含む場合、それは、例えば、T、MT、MTQまたはMDTQ樹脂であり得る。
【0093】
好ましい実施態様によれば、シリコーン樹脂の単位組成は、少なくとも50%T単位または少なくとも70%T単位または少なくとも80%T単位または少なくとも90%T単位であり得る。
【0094】
上で例として挙げたM、DおよびT単位では、メチル基の少なくとも1つが置換されていてもよい。好ましい実施態様によれば、式(R)SiO3/2の少なくとも1つの三官能性単位を含む少なくとも1種のシリコーン樹脂は、式:((R’)SiO3/2)x(式中、xは100~500の範囲であり、R’は、少なくとも1つのR’が炭化水素ベースの基であることを条件として、1~10個の炭素原子を含む炭化水素ベースの基またはヒドロキシル基から、三官能性単位によって独立に選択される)のシルセスキオキサンから選択される。好ましい実施態様によれば、1~10個の炭素原子を含む炭化水素ベースの基は、メチル基である。好ましい実施態様によれば、式(R)SiO3/2の少なくとも1つの三官能性単位を含む少なくとも1種のシリコーン樹脂は、式:((R’)SiO3/2)x(式中、xは100~500の範囲であり、R’は、少なくとも1つのR’が炭化水素ベースの基であることを条件として、CH3、2~10個の炭素原子を含む炭化水素ベースの基またはヒドロキシル基から、単位によって独立に選択される)のシルセスキオキサンから選択される。
【0095】
好ましい実施形態によれば、T樹脂は、シリコーンの総量に対して少なくとも80mol%または少なくとも90mol%がT単位であるように、M、DおよびQ単位を含有することができる。T樹脂はまた、ヒドロキシルおよび/またはアルコキシ基を含み得る。T樹脂は、2%~10%の範囲のヒドロキシル官能基の総重量、および20%までであり得るアルコキシ官能基の総重量を有し得る。いくつかの実施態様では、ヒドロキシル官能基の総重量は4%~8%の範囲であり、アルコキシ官能基の総重量は10%までであってよい。
【0096】
シリコーン樹脂は、式:((CH3)SiO3/2)x(式中、xは数千までであり、CH3基は、T単位の定義で前述した通り、R基で置換することができる)によって表されるシルセスキオキサンから選択される。シルセスキオキサンのT単位の数Xは、500以下であってもよく、または50~500の範囲であってもよい(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)。シリコーン樹脂の分子量は、約500、1000、5000、10000、15000または20000g/molから、約30000、35000、40000、45000、50000、75000または100000g/molの範囲であり得る(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)。
【0097】
少なくとも1つのT単位を含有するこれらのシリコーン樹脂の適切な例としては、以下のものが挙げられる。
式((R)SiO3/2)x(T単位)(式中、xは100より大きく、R基は、独立に、メチル又は上で定義した他の置換基であり得る)のポリシルセスキオキサン;
Rがメチル基であるポリシルセスキオキサンである、ポリメチルシルセスキオキサン。このようなポリメチルシルセスキオキサンは、例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第5246694号に記載されている。
Rがプロピル基であるポリプロピルシルセスキオキサン。これらの化合物とそれらの合成は、例えば、全体が参照により本明細書に援用される特許出願国際公開第2005/075567号に記載されている;および
Rがフェニル基であるポリフェニルシルセスキオキサン。これらの化合物とそれらの合成は、例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0180011号に記載されている。
【0098】
挙げることができる市販のポリメチルシルセスキオキサン樹脂の例には、
Belsil PMS MKなど、樹脂MKのリファレンスでWacker社によって販売されているものであって、1重量%までの(CH3)2SiO2/2単位(D単位)を含むことができ、約10000g/molの平均分子量を有するCH3SiO3/2繰り返し単位(T単位)を含むポリマーが含まれる。下図に示すように、ポリマーは、「ケージ」と「はしご」の形をしていると考えられる。「ケージ」型の単位の平均分子量は、536g/molと計算されている。大部分のポリマーは、エトキシ基を末端に有する「はしご」型である。これらのエトキシ基は、ポリマーの4.5質量%を占める。これらの末端基は水と反応することができるため、少量かつ可変量のSiOH基も、信越化学工業からの、式CH3SiO3/2のT単位で構成され、Si--OH(シラノール)末端基を有するリファレンスKR-220Lのもとで、98%のT単位と2%のジメチルD単位からなり、Si--OH末端基を有するリファレンスKR-242Aのもとで、または88%のT単位と12%のジメチルD単位からなり、Si--OH末端基を有するリファレンスKR-251のもとで存在し得る。
【0099】
挙げることができる市販のポリプロピルシルセスキオキサン樹脂の例には、
ダウコーニング社により、ダウコーニング670 Fluidまたは680 Fluidのリファレンスで発売されているものが含まれる。典型的には、そのような市販の製品は、揮発性炭化水素油などの揮発性油またはD5などの揮発性シリコーン油で希釈されたポリプロピルシルセスキオキサンである。ダウコーニング670および680 Fluidは、RnSiO(4-n)/2の一般式を有し、式中、Rは、独立に、水素原子と3つの炭素原子を含む1価の炭化水素基とから選択され、Rの80モル%以上がプルピル基であり、nは1.0~1.4の値であり、コポリマーの60モル%以上がRSiO3/2単位を含み、0.2~10重量%、例えば1~4重量%の間、好ましくは5~10重量%の間、より好ましくは6~8重量%の間のヒドロキシルまたはアルコキシ含量を有する。好ましくは、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂は、約5000、7000、10000、15000、20000、25000から約30000、50000、75000、100000g/molの分子量と、約37℃未満、約-100、-50、-37または-20~約37℃までのTgを有する。
【0100】
挙げることができる市販のポリフェニルシルセスキオキサン樹脂の例には、
ダウコーニング社からダウコーニング217 Flake Resinのリファレンスで発売されている、シラノール末端基を有するポリフェニルシルセスキオキサン、およびWacker社からBelsil SPR45 VPのリファレンスで発売されているものが含まれる。
【0101】
シリコーンアクリレートコポリマー
適切なシリコーンアクリレートコポリマーには、シロキサン基と炭化水素基とを含むポリマーが含まれる。いくつかの実施態様では、このようなシリコーンアクリレートコポリマーは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90重量%のシリコーンを含む。例えば、適切なポリマーには、例えば、ビニルポリマー、メタクリルポリマーおよび/またはアクリルポリマーから選択される骨格と、ペンダントシロキサン基から選択される少なくとも1つの鎖とのような炭化水素骨格を含むポリマー、ならびに、シロキサン基の骨格と、例えば、ペンダントビニル、メタクリルおよび/またはアクリル基等の少なくとも1つのペンダント炭化水素鎖とを含むポリマーが含まれる。
【0102】
少なくとも1つのシリコーンアクリレートコポリマーは、米国特許第5061481号、5219560号および5262087号、ならびに米国特許出願第2012/0301415号(これらすべての内容は参照により本明細書に援用される)に記載されているようなシリコーン/(メタ)アクリレートコポリマーから選択することができる。
【0103】
少なくとも1つのシリコーンアクリレートコポリマーは、少なくとも1つの極性(メタ)アクリレート単位の繰り返し単位を含む非極性シリコーンコポリマーに由来するポリマーと少なくとも1つの非極性シリコーン鎖をグラフトしたビニルコポリマーとから選択され得る。このようなコポリマーの非限定的な例は、例えば、信越化学工業から市販されているアクリレート/ジメチコンコポリマー、例えばKP-545(シクロペンタシロキサン(および)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-543(酢酸ブチル(および)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-549(メチルトリメチコン(および)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-550(INCI名:イソドデカン(および)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-561(アクリレート/ステアリルアクリレート/ジメチコンアクリレートコポリマー)、KP-562―(アクリレート/ベヘニルアクリレート/ジメチコンアクリレートコポリマー)の商品名で販売されている製品、およびこれらの混合物である。追加の例には、ダウコーニングがFA 4001 CM SILICONE ACRYLATE(シクロペンタシロキサン(および)アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマー)およびFA 4002 ID SILICONE ACRYLATE(イソドデカン(および)アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマー)の商品名で販売しているアクリレート/ジメチコンコポリマーおよびこれらの混合物が含まれる。
【0104】
そのようなポリマーのさらなる非限定的な例およびそれらの合成は、例えば米国特許第4972037号、5061481号、5209924号、5849275号および6033650号、ならびにPCT出願国際公開第93/23446号、国際公開第95/06078号および国際公開第01/32737号(これらすべての開示は参照により本明細書に援用される)に記載されている。これらのポリマーは、さまざまな企業から供給され得る。そのような企業の1つが、Minnesota Mining and Manufacturing Companyであり、同社はこれらのタイプのポリマーを「Silicone Plus」ポリマーの商品名で提供している (例えば、SA 70-5 IBMMFの商品名で販売されているポリ(イソブチルメタクリレート-コ-メチル FOSEA)-g-ポリ(ジメチルシロキサン))。
【0105】
有用はシリコーンアクリレートコポリマーの他の非限定的な例には、シリコーン/アクリレートグラフトターポリマー、例えば、PCT出願国際公開第01/32727号(この開示は参照により本明細書に援用される)に記載されているコポリマーが含まれる。
【0106】
他の有用なポリマーには、米国特許第5468477号(その開示は参照により本明細書に援用される)に記載されているものが含まれる。これらのポリマーの非限定的な例は、ポリ(ジメチルシロキサン)-g-ポリ(イソブチルメタクリレート)であり、これは3M社からVS 70 IBMの商品名で市販されている。
【0107】
適切はシリコーンアクリレートコポリマーには、米国特許第5061481号、5219560号および5262087号(これらの開示は参照により本明細書に援用される)に記載されているようなシリコーン/(メタ)アクリレートコポリマーが含まれる。シリコーン膜形成要素のさらなる非限定的な例は、少なくとも1つの極性(メタ)アクリレート単位の繰り返し単位を含む非極性シリコーンコポリマー、および少なくとも1つの非極性シリコーン鎖をグラフトしたビニルコポリマーである。そのようなコポリマーの非限定的な例は、信越化学工業から市販されているものなどのアクリレート/ジメチコンコポリマー、例えば商品名KP-545で販売されている製品である。
【0108】
本発明での使用に適したシリコーン塗膜形成要素の他の非限定的な例は、米国特許第6045782号、5334737号、および4725658号(これらの開示は参照により本明細書に援用されるに開示されている式(A)および(B):
Ra REb SiO[4-(a+b)/2] (A);および
R’x REy SiO1/2 (B)
上式中、RおよびR’は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ置換されていてもよい炭化水素基から選択され;
aおよびbは、同じでも異なっていてもよく、aとbの合計が1~3の範囲の数であることを条件に、それぞれが0~3の範囲の数であり、
xおよびyは、同じでも異なっていてもよく、xとyの合計が1~3の範囲の数であることを条件に、それぞれが0~3の範囲の数であり;
REは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、少なくとも1つのカルボン酸エステルを含む基から選択される。
【0109】
好ましい実施態様によれば、RE基は、少なくとも1つの酸と少なくとも1つのアルコールとの反応から形成される少なくとも1つのエステル基を含む基から選択される。好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの酸は、少なくとも2つの炭素原子を含む。好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのアルコールは、少なくとも10個の炭素原子を含む。少なくとも1つの酸の非限定的な例には、イソステアリン酸などの分岐酸、およびベヘン酸などの線状酸が含まれる。少なくとも1つのアルコールの非限定的な例には、一価アルコールおよび多価アルコール、例えばn-プロパノールなど、および分岐エーテルアルカノール、例えば3,3,3-トリメチロールプロポキシ)プロパンが含まる。
【0110】
少なくとも1種のシリコーンアクリレートコポリマー塗膜形成要素のさらなる非限定的な例には、液状シロキシシリケートおよびシリコーンエステル、例えば米国特許第5334737号(この開示は参照により本明細書に援用される)に開示されているもの、例えば、ジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケートおよびジラウロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケートのような、ゼネラルエレクトリック社からそれぞれSF 1318およびSF 1312の商品名で市販されているものが含まれる。
【0111】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、成分Aは、少なくとも1種のシリコーンアクリレートと少なくとも1種のシリコーン樹脂を含む。好ましくは、少なくとも1種のシリコーン樹脂は、ポリピプロピルシルセスキオキサン樹脂である。
【0112】
好ましい実施態様によれば、膜形成剤(複数可)は、好ましくは約0.01%、0.05%、0.08%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%、30%、35%から約20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の量で存在する。1つ以上の実施態様において、これらの量は、シリコーン含有膜形成剤の量に関する。いくつかの実施態様では、これらの量は、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤以外に他のものが存在する場合、膜形成剤の総量に関する。さらなる実施態様では、該膜形成剤(複数可)は、それらが見出される成分の総重量の、好ましくは約0.01重量%~約90重量%、好ましくは0.08重量%~80重量%、好ましくは0.1重量%~60重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の量で存在する。
【0113】
シリコーン化合物
1つ以上の実施態様において、成分Bは、1種以上のシリコーン化合物を含む。本明細書で使用される場合、「シリコーン化合物」は、成分A中のシリコーン含有膜形成剤の表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有するシリコーンを含む化合物を指す。1つ以上の実施態様において、この用語は、少なくとも1つの酸素、さらに別の実施形態では2つの酸素に結合したケイ素を含む、ポリマーであってよい化合物を指す。いくつかの実施態様では、ケイ素は、炭化水素(例:C1-22の直鎖状、分岐状、および/またはアリール)に結合している。さらなる実施態様では、炭化水素は、メチル、エチル、プロピルおよびフェニルからなる群から選択される。1つ以上の実施態様において、シリコーン化合物は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。いくつかの実施態様では、シリコーン化合物自体は、直鎖状、分岐状または樹枝状であってもよい。さらなる実施態様では、シリコーン化合物は、直鎖状または実質的に直鎖状である。1つ以上の実施態様において、シリコーン化合物は、炭化水素、アルコール、エステル、酸、ケトン、アミン、アミド、エポキシ、ビニル基(例えば、アルケン基またはアルキン基)、ハロゲン、水素化物等からなる群から選択される鎖末端を含む。例えば、シリコーン化合物がポリジメチルシロキサンを含む実施態様では、該化合物は、鎖末端が-OHまたはメチル基で終端されていてもよい。
【0114】
1つ以上の実施態様において、用語「シリコーン化合物」には、限定されないが、シリコーンガム、シリコーン油、シリコーンワックス等が含まれる。シリコーン化合物は、組成物に特性を付与し得る(例えば、光沢またはマット特性を高める)。1つ以上の実施態様において、シリコーン化合物は、約1000cSt超および/または約22000000cSt未満の粘度を得るのに十分な量で存在する。いくつかの実施態様では、粘度は、約1000、5000、10000、20000、30000、40000、50000または60000cStから約100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、5000000、10000000または22000000cStの範囲である。1つ以上の実施態様において、シリコーン化合物は、約10000、15000、20000、25000、30000、35000または40000から約60000、65000、70000、80000、90000または100000の範囲の粘度を得るのに十分な量で存在する。
【0115】
快適剤
本明細書に記載される化粧料組成物は、少なくとも1種のシロキサンポリマーワックスを含む。特定の理論に縛られることを望まないが、シロキサンポリマーワックスは、ユーザーにさらなる快適さおよび/または滑り感を提供すると考えられている。いくつかの実施態様では、シロキサンポリマーワックスは、ビス-ステアリルジメチコン、ステアリルジメチコン、ビスステアロキシジメチコン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。シロキサンポリマーワックスは、組成物の総重量に対して約0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7から約4、4.5、5、5.6、6、6.5、7、7.5、8、8.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20%の量で存在する。
【0116】
光沢/明度増強剤
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種の光沢増強剤が成分A、成分B、またはその両方に添加され得る。このような光沢増強剤は、本明細書に記載の組成物に、ファンデーション組成物の場合に有利である発光および/またはうるおい効果、またはリップ組成物の場合に有利である光沢効果を付与することができる。本発明の組成物は、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のフェニル化シリコーンを含む。フェニル化シリコーンは、組成物の総重量に対して約0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7から約4、4.5、5、5.6、6、6.5、7、7.5、8、8.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20%の量で存在する。
【0117】
追加の光沢増強剤を添加することができる。いくつかの実施態様では、光沢増強剤は、層のセルフレベリングを促進する剤、高屈折率を有する剤、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0118】
適切な光沢増強剤には、約1.45~約1.60の範囲の屈折率を有し、かつ、15000未満、好ましくは10000未満、好ましくは2000未満の重量平均分子量を有する化合物が含まれる。そのような剤の例には、限定されないが、Goldschmidtより商品名「ABIL AV 8853」で市販されているもの、ダウコーニングにより商品名「DC 554」、「DC 555」、「DC 556」および「SF 558」で市販されているもの、Rhone-Poulencより商品名「SILBIONE 70633 V 30」で市販されているもの等のフェニル化シリコーンが含まれる。
【0119】
適切なフェニル化シリコーンの追加の例には、25℃で約20cStの粘度を有するフェニル化シリコーンであるBELSIL PDM 20;25℃で約200cStの粘度を有するフェニル化シリコーンであるBELSIL PDM 200;25℃で約1000cStの粘度を有するフェニル化シリコーンであるBELSIL PDM 1000等、Wacker Siliconesによって市販されているものを含まれるがこれらに限定されない。
【0120】
適切な光沢増強剤の追加の例には、ポリシクロペンタジエン、ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾエート(nD=1.5345)、アミノプロピルフェニルトリメチコン(nD=1.49-1.51)、エクソンモービルからPURESYN 4E68として市販されているペンタエリスリチルテトラオレアート(nD=1.473)、およびCroda社からCRODAMOL STS(nD=1.4696)として市販されているPPG-3ベンジルエーテルミリステートが含まれるがこれらに限定されない。
【0121】
特に好ましい光沢増強剤は、フェニルトリメチコンおよびトリメチルペンタフェニルトリシロキサン等のフェニル化シリコーン、並びにペンタエリスリチルテトラオレアートおよびPPG-3ベンジルエーテルミリステート等のエステルである。
【0122】
適切な光沢増強剤には、本発明の組成物にセルフレベリング特性を提供するものが含まれる。そのような組成物の適切な例には、以下で論じるシリコーンガムが含まれるが、これに限定されない。
【0123】
該シリコーンガムは、式:
に相当し、上式中、
R7、R8、R11およびR12は、同じかまたは異なっており、1~6個の炭素原子を含むアルキル基からそれぞれ選択され、
R9およびR10は、同じかまたは異なっており、1~6個の炭素原子を含むアルキル基からそれぞれ選択され、
Xは、1~6個の炭素原子を含むアルキル基と、ヒドロキシル基およびビニル基から選択され、
nおよびpは、350cSt~50000000cSt、好ましくは500cSt~40000000cSt、好ましくは750cSt~30000000cSt、好ましくは850cSt~20000000cSt、好ましくは950cSt~18000000cSt、好ましくは1000cSt~10000000cSt(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の粘度をシリコーンガムに与えるように選択される。特に好ましい範囲は、20000cSt~800000cStであり、25000cSt~750000cStが最も好ましい。
【0124】
一般に、nおよびpはそれぞれ、0~5000など、0~10000の範囲の値を取り得る。
【0125】
本発明に従って使用することができるシリコーンガムとしては、以下のものを挙げることができる。
【0126】
置換基R7からR12およびXはメチル基を表し、p=0およびn=2700、例えば、ゼネラルエレクトリック社からSE30の名称で販売または製造された製品、
置換基R7~R12およびXはメチル基を表し、p=0およびn=2300、例えば、Wacker社によってAK 500000の名称で販売または製造された製品
置換基R7~R12はメチル基を表し、置換基Xはヒドロキシル基を表し、p=0およびn=2700、シクロペンタシロキサン中13%溶液として、例えば、ダウコーニング社によりQ2-1401の名称で販売または製造された製品、
置換基R7~R12はメチル基を表し、置換基Xはヒドロキシル基を表し、p=0およびn=2700、ポリジメチルシロキサン中13%溶液として、例えば、ダウコーニング社によりQ2-1403の名称で販売または製造された製品、
置換基R7、R8、R11、R12およびXはメチル基を表し、置換基R9およびR10はアリール基を表し、ガムの分子量が約600000であるもの、例えば、ローヌ・プーラン社(ローディア・ケミカルズ)により761の名称で販売または製造された製品。
【0127】
好ましい実施態様によれば、シリコーンガムは、以下の式に対応する。
【0128】
この式中、末端Siはメチル以外のものであってもよく、R基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、アミル、ヘキシル、ビニル、アリル、シクロヘキシル、フェニル、およびこれらの混合物から選択される直鎖状、分岐状、および/または官能基化された、1~6個の炭素原子からなるアルキルであるように、繰り返しSi上の置換で表されてもよい。本発明で使用されるシリコーンガムは、式R’3のトリオルガノシリル基で終端されていてもよく、ここでR’は1~6個の炭素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基およびこれらの混合物を含む1価の炭化水素のラジカルである。
【0129】
好ましい実施態様によれば、成分B/層Bは、少なくとも1種の光沢(つや)増強剤を含む。
【0130】
好ましい実施態様によれば、成分B/層Bは、層Aと層Bとの間および/または層Bと空気との間の平坦な界面をもたらすセルフレベリング特性を有し、この平坦な界面は、組成物の光沢を増強させる層Bの光回折、屈折および/または反射特性をもたらす。
【0131】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物中には、シリコーン油(例えば上述のフェニル化シリコーン)および/またはシリコーンガムなどの少なくとも2種のシリコーン化合物が存在する。
【0132】
好ましい実施態様によれば、存在する場合、シリコーンガムなどのような層のセルフレベリングを促進する剤(複数可)は、好ましくは、組成物の総重量の約0.01重量%~約90重量%、好ましくは1重量%~85重量%、好ましくは5重量%~80重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の量で存在する。
【0133】
好ましい実施態様によれば、存在する場合、フェニル化シリコーン油などのような高屈折率を有する剤(複数可)は、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%~約90重量%、好ましくは0.1重量%~75重量%、好ましくは1重量%~50重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の量で存在する。
【0134】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物中には、シリコーン油(例えば上述のフェニル化シリコーン)および/またはシリコーンガムなどの少なくとも2種のシリコーン化合物が存在する。
【0135】
好ましい実施態様によれば、光沢増強剤(複数可)は、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%~約90重量%、好ましくは0.1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~35重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の量で存在する
【0136】
マット増強剤(マット化剤)
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種のマット増強剤が成分A、成分B、またはその両方に添加され得る。成分Bに関して、少なくとも1種のマット増強剤が、成分Bがセルフレベリング性であるか否か、および/または層Bが上記のような組成物にマット性を付与する屈折特性を有するか否かに関わらず、添加され得る。
【0137】
適切なマット増強剤には、限定されないが、例えばタルク、シリカ、シリコーンエラストマーおよびポリアミド等のマット化フィラー、ならびに、例えば蜜蝋およびコペルニシアセリフェラセラ(カルナウバ)ロウなどのワックスが含まれる。
【0138】
好ましい実施態様によれば、マット増強剤(複数可)は、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%~約90重量%、好ましくは0.1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~35重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)。
【0139】
ソフトフォーカス剤
1つ以上の実施態様によれば、本明細書に記載されている組成物は、ソフトフォーカス剤を含む。本明細書で使用される場合、「ソフトフォーカス」という用語は、皮膚の外観がより均質でマットであり、皮膚の欠点をぼかすまたは隠すことにつながることを意味する。
【0140】
いくつかの実施態様では、少なくともソフトフォーカス剤は、疎水性シリカエアロゲル粒子から選択され得る。シリカエアロゲルは、シリカゲルの液体成分を空気と置き換える(乾燥させる)ことにより得られる多孔材である。
【0141】
本開示の実施態様による有用な疎水性シリカエアロゲル粒子には、シリル化シリカ(INCI名:シリカシリレート)エアロゲル粒子が含まれる。シリル化によって表面修飾された疎水性シリカエアロゲル粒子の調製は、参照により本明細書に援用される米国特許第7470725号により詳細に記載されている。様々な実施態様においてトリメチルシリル基で表面修飾された疎水性シリカのエアロゲル粒子が選択されてもよい。例えば、ダウコーニング社によりVM-2260(登録商標)の名称で販売されているエアロゲルであって、粒子の平均サイズは約1000ミクロンであり、単位質量あたりの比表面積が600~800m2/gの範囲であるもの、またはダウコーニング社によりVM-2270(登録商標)の名称で販売されているエアロゲルであって、粒子の平均サイズが5~15ミクロンの範囲であり、単位質量あたりの比表面積が600~800m2/gの範囲であるものが選択されてもよい。他の実施態様において、Cabot社よりAerogel TLD 201(登録商標)、Aerogel OGD 201(登録商標)およびAerogel TLD 203(登録商標)、CAB-O-SIL TS-530、CAB-O-SIL TS-610、CAB-O-SIL TS-720、Enova Aerogel MT 1 100(登録商標)およびEnova Aerogel MT 1200(登録商標)の名称で販売されているエアロゲルが選択されてもよい。
【0142】
他のソフトフォーカス効果剤は、全内容が参照により本明細書に援用される国際公開第2016100690号に見出すことができる。
【0143】
濃厚剤
本発明の好ましい実施態様によれば、組成物は、濃厚剤を含む。濃厚剤は、グリセリンと脂肪酸からなるトリエステルを含んでもよい。さらなる実施態様によれば、グリセリンと脂肪酸からなるトリエステルは、トリヒドロキシステアリンを含む。グリセリンのトリエステルは、約0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4から約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、7、8、9または10まで存在する。
【0144】
着色剤
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種の着色剤をさらに含む組成物が提供される。好ましくは、そのような着色組成物は、例えばリップ組成物(例えば口紅)またはファンデーションなどの化粧料組成物であり得る。
【0145】
本実施態様によれば、少なくとも1種の着色剤は、好ましくは、顔料、脂溶性染料などの染料、真珠顔料(nacreous pigment)、およびパール化剤から選択される。
【0146】
本発明に従って使用され得る代表的な脂溶性染料には、スーダンレッド、DCレッド17、DCグリーン6、B-カロテン、大豆油、スーダンブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5、アナットー、およびキノリンイエローが含まれる。脂溶性染料は、存在する場合、一般に、組成物の総重量の最大20%、例えば0.0001%~6%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の濃度を有する。
【0147】
本発明に従って使用され得る真珠顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの白色真珠顔料、酸化鉄でコーティングされたチタン雲母、フェリックブルーまたは酸化クロムでコーティングされたチタン雲母、上記のものから選択される有機顔料でコーティングされたチタン雲母、およびオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠顔料などの着色真珠顔料から選択され得る。真珠顔料は、存在する場合、組成物の総重量の最大50%、例えば0.1%~20%、好ましくは0.1%~15%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の濃度で存在する。
【0148】
本発明に従って使用され得る顔料は、白色、着色、無機、有機、ポリマー、非ポリマー、コーティングおよび非コーティング顔料から選択することができる。鉱物顔料の代表的な例には、二酸化チタン(任意選択的に表面処理されたもの)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、およびフェリックブルーが含まれる。有機顔料の代表的な例には、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、および、コチニールカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、およびアルミニウムをベースとしたレーキが含まれる。
【0149】
着色剤は、存在する場合、組成物の全重量に対して最大50%、例えば0.01%~40%、さらに例えば0.1%~30%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の範囲の濃度で存在し得る。特定の製品の場合、顔料(真珠顔料を含む)は、例えば組成物の最大50重量%を占め得る。
【0150】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、組成物は少なくとも1種の顔料またはフィラーを含み、顔料またはフィラーはトリアルコキシアルキルシランで表面処理されている。トリアルコキシアルキルシランで表面処理された少なくとも1種の顔料またはフィラーは、成分A中に(すなわち、炭化水素および/またはシリコーン含有膜形成剤とともに)見出され得る。
【0151】
表面処理された顔料のサプライヤーは、Kobo、大東化成、Gelest、Sensient、および三好がある。
【0152】
1つ以上の実施態様において、顔料は、金属酸化物(トリアコキシアルキルシランで表面処理されているもの)を含む。さらなる実施態様では、金属酸化物は、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、またはこれらの組み合わせを含む。トリアルコキシアルキルシランで表面処理するのに適したフィラーには、タルクおよびマイカが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、トリアルコキシシランは、トリエトキシカプリリルシランを含む。
【0153】
トリアルコキシアルキルシランで表面処理された少なくとも1種の顔料またはフィラーは、組成物の全重量の50重量%までの範囲の濃度、例えば約0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20%~5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35または40%の濃度で組成物中に存在し得る。組成物中に2種以上の顔料が存在する実施態様では、上記の量は、顔料の総量を指す。
【0154】
1つ以上の実施態様において、組成物は、2種以上の顔料をさらに含む。この追加の顔料は、組成物中で安定を維持していることを条件に、処理されていても未処理であってもよい。いくつかの実施態様では、組成物は、処理済みおよび未処理の有機顔料をさらに含む。
【0155】
油相
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種の脂肪物質をさらに含む組成物が提供される。適切な脂肪物質の例には、油(複数可)および/またはワックス(複数可)が含まれる。「油」とは、周囲温度(25℃)および大気圧(760mm Hg)で液体である任意の非水溶性媒体を意味する。本開示における「ワックス」とは、周囲温度(25℃)で固体であり、固体から液体状態に可逆的に変化し、30℃超、例えば45℃超の融点を有し、これは150℃まで高くすることができ、周囲温度で0.5MPa以上の硬度を有し、固体状態では異等方性の結晶組織を有する。ワックスをその融点に持っていくことにより、ワックス(複数可)自体を担体として使用することが可能であり、かつ/またはワックス(複数可)を油分と混和させて顕微鏡的に均質な混合物を形成することが可能である。
【0156】
適切な油には、揮発性および/または揮発性油が含まれる。そのような油は、シリコーン油および/または炭化水素油を含むがこれらに限定されない任意の許容できる油であり得る。
【0157】
特定の実施態様によれば、本発明の組成物は、好ましくは、1種以上のシリコーン油を含む。そのような揮発性シリコーン油の例には、室温で6cSt以下の粘度を有し、2~7個のケイ素原子を有する、直鎖状または環状のシリコーン油が含まれ、これらのシリコーンは、1~10個の炭素原子からなるアルキルまたはアルコキシ基で置換されていてもよい。本発明で用いることができる具体的な油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびこれらの混合物が含まれる。用いることができる他の揮発性油には、粘度が6cStのKF 96Aが含まれ、これは、信越化学工業から市販されている94℃の引火点を有する製品であり、好ましくは、該揮発性シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0158】
以下の表1に、揮発性シリコーン油の非限定的な例を挙げる。
【0159】
さらに、本発明では、揮発性直鎖状シリコーン油を用いてもよい。適切な揮発性直鎖状シリコーン油には、米国特許第6338839号および国際公開第03/042221号(これらの内容は参照により本明細書に援用される)に記載されているものが含まれる。一実施態様では、揮発性直鎖状シリコーン油は、デカメチルテトラシロキサンである。別の実施態様では、このデカメチルテトラシロキサンは、デカメチルテトラシロキサンよりも揮発性が高い別の溶媒とさらに組み合わされる。
【0160】
本発明の特定の実施態様によれば、組成物は、好ましくは1種以上の非シリコーン揮発性油を含み、揮発性炭化水素油、揮発性エステルおよび揮発性エーテルから選択され得る。そのような揮発性非シリコーン油の例には、限定されないが、8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油およびその混合物、特に分岐状C8~C16アルカン、例えばC8~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、イソヘキサセカン、イソドデカン、イソデカン、および、例えばIsoparまたはPermethylの商品名で販売されている油が含まれる。好ましくは、揮発性非シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0161】
以下の表2に、揮発性非シリコーン揮発性油の非限定的な例を挙げる。
【0162】
溶媒/油の揮発性は、米国特許第6338839号(その内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている蒸発速度を使用して決定することができる。
【0163】
本発明の特定の実施態様によれば、組成物は、少なくとも1種の非揮発性油を含む。本発明で使用され得る非揮発性油の例には、以下の極性油が含まれるが、これらに限定されない。
グリセリンの脂肪酸エステルからなるトリグリセリド含有量の高い炭化水素系植物油であり、その脂肪酸は様々な鎖の長さを有していてもよく、これらの鎖は直鎖状または分岐状であり、飽和または不飽和であり得、特に、小麦胚芽油、コーン油、ヒマワリ油、カリテバター、ヒマシ油、スイートアーモンド油、マカデミア油、アプリコット油、大豆油、ナタネ油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ油、骨髄油、アボカド油、ヘーゼルナッツ油、ブドウ種子油、カシス種子油、月見草油、キビ油、大麦油、キノア油、オリーブ油、ライ麦油、ベニバナ油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油またはマスクローズ油;またはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社によって販売されているもの、またはDynamit Nobel社によってMiglyol 810、812および818の名称で販売されているもの;
式R5COOR6の合成油またはエステルであって、式中、R5は、7~19個の炭素原子などの1~40個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状の高級脂肪酸残基を表し、R6は、3~20個の炭素原子などの1~40個の炭素原子を含有する分岐状の炭化水素ベースの鎖を表し、R6+R7≧10であり、例えばパーセリン油(ピュアセリンオイル)(オクタン酸セトステアリル)、イソノニルイソノナノエート、オクチルドデシルネオペンタノエート、C12~C15アルキルベンゾエート、イソプロピルミリステート、2-エチルヘキシルパルミテート、およびオクタノエート、アルコールまたは多価アルコールのデカノエートまたはリシノレート;水酸化エステル、例えばイソステアリルラクテートまたはジイソステアリルマレート;およびペンタエリトリトールエステル;
10~40個の炭素原子を含有する合成エーテル;
C8~C26の脂肪アルコール、例えばオレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびセテアリル(cetearly)アルコール;ならびに
これらの混合物。
【0164】
さらに、本発明で使用され得る非揮発性油の例には、ポリオレフィン、特にワセリン(ペトロラタム)、パラフィン油、スクアラン、スクアレン、水素化ポリイソブテン、水素化ポリデセン、ポリブテン、鉱油、ペンタヒドロスクアレン、およびこれらの混合物を含む分岐状および非分岐状の炭化水素および炭化水素ワックス等の非極性油が含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
好ましい実施態様によれば、存在する場合、少なくとも1種の油が、組成物の総重量に対して約5~約60重量%、より好ましくは約1~約50重量%、最も好ましくは約15~約35重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の量で本発明の組成物に存在する。
【0166】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種のワックスをさらに含む。本開示に従って使用することができるワックスの適切な例には、化粧品分野で一般的に使用される以下のものが含まれる。それは、天然由来のもの、例えばミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オウリキュリーワックス、木ロウ、コルク繊維ロウ、またはサトウキビロウ、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、亜炭ワックス、またはマイクロクリスタンワックス、セレシンまたはオゾケライト、ならびに水素化油、例えば水素化ヒマシ油またはホホバ油;合成ワックス、例えばエチレンの重合または共重合から得られるポリエチレンワックス、およびフィッシャートロプシュワックス、または脂肪酸のエステル、例えばオクタコサニルステアレート、30℃、例えば45℃で固体であるグリセリドが含まれる。
【0167】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーンワックスをさらに含む。適切なシリコーンワックスの例には、シリコーンワックス、例えば炭素原子数10~45までのアルキルまたはアルコキシ鎖を有するアルキルまたはアルコキシジメチコン、30℃で固体で、エステル鎖が少なくとも10個の炭素原子を含むポリ(ジ)メチルシロキサンエステル、HEST 2T-4Sの名称でHetereneによって販売または製造されているジ(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレート;少なくとも40モル%の、式(R2R’SiO1/2)x(R’’SiO3/2)yを有するシロキシ単位を含むアルキル化シリコーンアクリレートコポリマーワックス(式中、xおよびyは0.05~0.95の値を有し、Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、カルビノール基またはアミノ基であり、Rは9~40個の炭素原子を有する一価の炭化水素であり、R’は1~8個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、または全内容が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0149703号に開示されているもののようなアリール基であって、特定の例がC30~C45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンであるものである)、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の長鎖アルコールワックスをさらに含む。好ましくは、少なくとも1種の長鎖アルコールワックスは、約20~約60個の間の炭素原子、最も好ましくは約30~約50個の間の炭素原子の平均炭素鎖長を有する。長鎖アルコールワックスの適切な例には、例えばPerformacol 350、425および550等、Performacolの商品名でBaker Hughesから市販されているアルコールワックスが含まれるが、これらに限定されない。長鎖アルコールワックスは、最も好ましくは、約93℃~約105℃の範囲の融点を有する。
【0169】
ワックス(複数可)は、存在する場合、組成物の全重量に対して1~30重量%、例えば2~20重量%、例えば3~10重量%(これらの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる)の範囲の量で存在する。
【0170】
方法
本発明の好ましい実施態様によれば、ケラチン物質を処置、ケア又はメイクアップするのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に塗布することによる、ケラチン物質を処置、ケア又はメイクアップする方法が提供される。好ましくは、ケラチン材料を「メイクアップ」することは、ケラチン物質に色をつけるのに十分な量の少なくとも1種の着色剤を塗布することを含む。
【0171】
さらに他の好ましい実施態様によれば、ケラチン物質の外観を向上させるのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に塗布することによる、ケラチン物質の外観を向上させる方法が提供される。
【0172】
本発明の好ましい実施態様によれば、非混和性成分が一時的に混和性になるように組成物を混合またはブレンドすること、および該一時的に混和性の成分を含む組成物をケラチン物質(例えば皮膚および/または唇)に塗布することを含む、ケラチン物質に本発明の組成物を塗布する方法が提供される。1つ以上の実施態様において、組成物は、混合パック内で混合されてもよく、または手で混合されてもよい。ケラチン物質への塗布後、成分は分離して、ケラチン物質上に多層構造を形成する。
【0173】
本発明の好ましい実施態様によれば、キットは、(1)少なくとも1つの容器;(2)少なくとも1つのアプリケーター;および(3)ケラチン物質への塗布後に多層構造を形成することができる少なくとも1種の化粧料組成物であって、該組成物が適用前に少なくとも2つの非混和性成分を含む化粧料組成物を含む。
【0174】
前述の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ケラチン物質に関連する欠陥、皮膚の不完全性または変色をカバーまたは隠すために、またはケラチン物質の外観を向上させるために、ケラチン物質を処置、ケアおよび/またはメイクアップするのに十分な量で、ケラチン物質の所望の領域に局所的に塗布される。組成物は、必要に応じて、好ましくは1日1回、所望の領域に塗布されてもよく、その後、好ましくは、衣類または他の物体との接触に供する前に乾燥させてもよい。好ましくは、組成物は、約4分間以下、より好ましくは約2分間以下、乾燥させる。
【0175】
また、前述の好ましい実施態様によれば、組成物は、好ましくは、化粧料組成物用の適切な容器に入れられる。そのような容器の適切な形状は、例えば正方形、長方形、ピラミッド型、楕円形、円形、半球形等の任意の幾何学的形状が含まれるが、これらに限定されない。さらに、該容器は、可撓性材料作られていても、非可撓性材料で作られていてもよい。
【0176】
同様に、化粧料組成物の塗布に適した任意のアプリケーターを本発明に従って使用することができ、アプリケーターの適切な種類の例には、ブラシ、スティック、パッド、ローラーボール等が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
好ましくは、(1)容器は本発明の組成物を混合またはブレンドすることが可能であり、そのため非混和性成分は一時的に混和性である;(2)アプリケーターは本発明の組成物を混合またはブレンドすることが可能であり、そのため混和性成分は一時的に混和性である;または(3)一緒に働く容器とアプリケーターは、本発明の組成物を混合またはブレンドすることができ、そのため非混和性成分は前述の好ましい実施態様に従って一時的に混和性である。例えば、その可撓性のために可撓性容器は、本発明の組成物を一時的に混合またはブレンドするように操作されたときに十分な力を生み出すことができ、非混和性成分が一時的に混和性になる;その設計のためにアプリケーターは、容器から引き出されたときに、本発明の組成物を一時的に混合またはブレンドするのに十分な力を生み出すことができ、非混和性成分が一時的に混和性となるか、または(3)非可撓性容器とアプリケーターは、それらの相乗的設計要素のために、アプリケーターが容器から引き出されたときに、本発明の組成物を一時的に混合またはブレンドするのに十分な力を生み出すことができ、非混和性成分が一時的に混和性となる。
【0178】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される原料の量、反応条件などを表すすべての数は、「約」という用語によってすべての場合に変更されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されてない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0179】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であることにかかわらず、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告されている。ただし、いずれの数値にも、それぞれの測定で見出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれている。以下の実施例は、結果として本発明の範囲を限定することなく、本発明を例示することを意図している。パーセントは、重量ベースで与えられている。
【実施例
【0180】
調製
以下の表3に示す原料を含有する液状口紅の配合を調製した。顔料と塗膜形成要素との混合物を処理して顔料分散液を作成した。このブレンドは、Disconti Millを用いて、分散液ヘグマンゲージ試験(ASTM D1210-05)に合格するまで処理した。ジメチコノールとジメチコンを高せん断で均質になるまで混合した。その後、顔料分散液、シリコーン混合液および残りの原料を均質な液状組成物が得られるまで60℃で撹拌しながら混合した。その後、サンプルを室温まで冷却し、所望の容器および/またはアプリケーターに移した。
【0181】
本発明の実施例1-4を比較例5-6と比較した。比較例5は、以下の表5に示す原料を有していた。
【0182】
In Vitro光沢測定
各配合の膜を、3MILドローダウンバーおよび自動ドローダウンマシン(Automatic Drawdown Machine)を使用して、コントラストカード上に堆積させた。膜を40℃で一晩乾燥させ、その後、光沢計(BYK:micro-TRI-gloss)を使用して20°と60°の角度で分析した。その結果を表5に示す。
【0183】
上記から分かるように、本発明の実施例は、特に角度20°で比較例よりも多くの光沢を示した。