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▶ メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエルの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】細胞組成物及び処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240401BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240401BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240401BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K31/7105 ZNA
A61K35/76
A61P35/00
C12N5/10
C12N5/0775
C12N15/113 130Z
C12N15/87 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020528166
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 IB2018001439
(87)【国際公開番号】W WO2019102268
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/589,764
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ブリンク
(72)【発明者】
【氏名】アイラ・コーヘン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・リン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ドローニン
(72)【発明者】
【氏名】イリナ・ポタポワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルギニジュス・ヴァリウナス
(72)【発明者】
【氏名】ダン・デヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・サンドラサグラ
(72)【発明者】
【氏名】ニック・ロイゾス
(72)【発明者】
【氏名】シルビウ・イテシュ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165641(WO,A1)
【文献】特表2006-511201(JP,A)
【文献】特表2017-536127(JP,A)
【文献】国際公開第2010/111522(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/141177(WO,A1)
【文献】J Cell Physiol.,2010年,Vol.223,p.530-540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P
A61K 31/7105
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系前駆細胞(MPC)又は間葉系幹細胞(MSC)を含む、がんを治療するための医薬組成物であって、前記MPC又はMSCが、そのKIF11 siRNAを含むか、又は前記siRNA若しくはKIF11 shRNAを発現するためのベクターを含み、MPC又はMSCが、前記siRNA又はshRNAをがん標的細胞に送達するためのものである、医薬組成物。
【請求項2】
MPC又はMSCKIF11 siRNAを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
MPCを含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記KIF11 siRNA又はshRNAが、前記siRNA又はshRNAが送達された標的細胞を殺滅するが、前記siRNA又はshRNAを送するMPCの生存能力には実質的に影響しない、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
MPCが、STRO-1および/またはCD46も発現する、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
MPCが、実質的にSTRO-1briである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
MPCが標的細胞と接触した際に、MPCが標的細胞とギャップ結合を形成し、それによって、KIF11 siRNA又はshRNAが、ギャップ結合を横断することによって標的細胞に送達される、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
標的細胞が、がん細胞又は白血球である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
がん細胞が、肺がん、膵がん、結腸直腸がん、肝臓がん、子宮頸がん、前立腺がん、骨肉腫又は黒色腫細胞である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
標的細胞が、合胞体細胞である、請求項7から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
MPCが、ウイルスベクターを使用して、KIF11 shRNAを導入するように改変されている、請求項1及び3から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
MPCが、少なくとも500nMのKIF11 siRNA又はshRNAを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記siRNA又はshRNAの標的細胞又はがん標的細胞へのMPC媒介性移入が、0.5~3.3nMの標的細胞又はがん標的細胞内部のKIF11 siRNA又はshRNAの濃度をもたらすのに十分なレベルで起こる、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
MPCが、α1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3インテグリンからなるインテグリンの群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核酸又はそれを発現するベクターを導入するように改変された細胞組成物に関する。そのような組成物を使用して、核酸を標的細胞に送達し、がん等の疾患を処置することができる。
【背景技術】
【0002】
一本鎖若しくは二本鎖、又はその両方の核酸は、コネキシンタンパク質を発現するように改変されたHeLa細胞対においてコネキシンタンパク質によって形成されるギャップ結合を通過することが示されている。移入は、蛍光タグ付きオリゴヌクレオチドのドナー細胞への単電極送達及びギャップ結合媒介性コミュニケーションによる標的細胞へのそれらの移入の決定によって証明された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2004/85630
【文献】米国特許第5486359号
【文献】米国特許第7,615,374号
【文献】米国特許出願第2014273211号
【文献】米国特許第9,453,203号
【文献】米国特許第5,578,475号
【文献】米国特許第6,020,202号
【文献】米国特許第6,051,429号
【文献】米国特許第6,723,561号
【文献】米国特許第6,627,442号
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984)
【文献】J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、
【文献】T.A. Brown (編)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、Volumes 1及び2、IRL Press (1991)
【文献】D.M. Glover及びB.D. Hames (編)、DNA Cloning: A Practical Approach、Volumes 1-4、IRL Press (1995及び1996)
【文献】F.M. Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの全てのアップデートを含む)
【文献】Ed Harlow及びDavid Lane (編) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory(1988)
【文献】J.E. Coliganら(編)、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までの全てのアップデートを含む)
【文献】Barberiら、Plos medicine、Vol 2(6):0554~0559頁(2005)
【文献】Vodyanikら、Cell Stem cell、Vol 7:718~728頁(2010)
【文献】Obinata M., Cell, Vol 2:235~244頁(1997)
【文献】Akimovら、Stem Cells, Vol 23:1423~1433頁
【文献】Kabaraら、Laboratory Investigation, Vol 94: 1340~1354頁(2014)
【文献】miRBase V.21命名法;Kozomaraら、2013; Griffiths-Jones、S. 2004
【文献】N. E. Good、G. D. Winget、W. Winter、T N. Conolly、S. Izawa及びR. M. M. Singh、Biochemistry 5、467頁(1966)
【文献】N. E. Good、S. Izawa、Methods Enzymol. 24、62頁(1972)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Mac Publishing Company (1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
核酸を標的細胞に送達する改善された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、間葉系前駆細胞又は幹細胞が、標的細胞への高率の核酸移入を導くことができることを同定した。本発明者らはまた、間葉系前駆細胞又は幹細胞が、核酸をがん細胞に送達して、がん細胞増殖を低減させることができることも同定した。驚くべきことに、間葉系前駆細胞又は幹細胞のこれらの能力は、細胞間での核酸の移入に関与する重要なタンパク質のノックアウトにも拘わらず維持される。
【0007】
核酸の標的細胞への送達のために間葉系前駆細胞又は幹細胞を使用する別の利点は、標的組織にホーミングする細胞の能力である。間葉系前駆細胞又は幹細胞は、遊走及び接着能力を有するので、この目的にとって特に好適である。
【0008】
したがって、ある例では、本開示は、オリゴヌクレオチドを標的細胞に送達する方法であって、標的細胞と、α1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞とを接触させる工程を含み、前記細胞が、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを発現するベクターを導入するように改変された、方法に関する。ある例では、接触は、間葉系前駆細胞又は幹細胞が標的細胞とギャップ結合を形成するのを可能にする条件下で起こり、それによって、オリゴヌクレオチドは、ギャップ結合を横断することによって標的細胞に送達される。ある例では、ギャップ結合は、Cx40又はCx43によって形成される。別の例では、ギャップ結合は、Cx43によって形成される。別の例では、オリゴヌクレオチドの送達は、Cx43以外の機構を介する。例えば、オリゴヌクレオチドを、Cx40、Cx45、Cx30.3、Cx31又はCx31.1によって形成されるギャップ結合を横断させることによって送達することができる。別の例では、オリゴヌクレオチドを、エキソソームの形成によって送達することができる。別の例では、オリゴヌクレオチドの送達は、細胞間接触とは無関係である。この例では、オリゴヌクレオチドの送達は、コネキシンを介して起こらない。
【0009】
ある例では、標的細胞は、がん細胞又は白血球である。例えば、がん細胞は、肺がん、膵がん、結腸直腸がん、肝臓がん、子宮頸がん、前立腺がん、骨肉腫又は黒色腫細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、合胞体細胞である。例えば、合胞体細胞は、心筋細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、結合組織細胞又は合胞体がん細胞であってもよい。
【0010】
別の例では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、α1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物を投与する工程を含み、前記細胞が、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを発現するプラスミドを導入するように改変された、方法に関する。
【0011】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、対象のがんを構成する細胞によっても発現されるコネキシンを発現する。ある例では、コネキシンは、Cx40又はCx43である。ある例では、対象のがんを構成する細胞は、Cx43を発現する。
【0012】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、CD46を発現する。
【0013】
ある例では、がんは、肺がん、膵がん、結腸直腸がん、肝臓がん、子宮頸がん、前立腺がん、骨肉腫及び黒色腫からなる群から選択される。ある例では、方法は、本開示による組成物を投与する工程を含む。
【0014】
ある例では、オリゴヌクレオチドは、約12~24ヌクレオチド長である。別の例では、オリゴヌクレオチドは、RNAである。別の例では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子である。別の例では、オリゴヌクレオチドは、shRNAである。別の例では、オリゴヌクレオチドは、siRNAである。ある例では、siRNAは、KIF11 siRNA又はPLK1 siRNAである。別の例では、siRNAは、KIF11 siRNAである。
【0015】
ある例では、KIF11 siRNAは、配列番号1(NCBI参照番号NM_004523.3)に示されるKIF11 mRNAの5'末端に対して結合する。ある例では、KIF11 siRNAは、5'末端から800bpと3,600bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から900bpと3,200bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6又は7のいずれか1つに示される核酸配列を含む。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6又は7のいずれか1つに示される核酸配列からなる。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号3に示される核酸配列を含む。別の例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号3に示される核酸配列からなる。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号4に示される核酸配列を含む。別の例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号4に示される核酸配列からなる。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号7に示される核酸配列を含む。別の例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号7に示される核酸配列からなる。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号3、4又は7のいずれか1つに示される核酸配列を含む。別の例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号3、4又は7のいずれか1つに示される核酸配列からなる。これらの例では、標的細胞は、骨がん細胞であってもよい。ある例では、がんは、肉腫であってもよい。別の例では、標的細胞は、膵がん細胞であってもよい。ある例では、がんは、膵がんであってもよい。別の例では、標的細胞は、前立腺がん細胞であってもよい。ある例では、がんは、前立腺がんであってもよい。
【0016】
別の例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8又は9のいずれか1つに示される核酸配列を含む。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8又は9のいずれか1つに示される核酸配列からなる。ある例では、オリゴヌクレオチドは、配列番号8又は9に示される核酸配列からなる。
【0017】
別の例では、オリゴヌクレオチドは、18~22ヌクレオチド長である。別の例では、オリゴヌクレオチドは、miRNAである。ある例では、miRNAを、miR-155、miR-155-inh、miR-181-B1、miR-15a、miR-16-1、miR-21、miR-34a、miR-221、miR-29a、let-7bからなる群から選択することができる。
【0018】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、標的細胞を殺滅するが、間葉系前駆細胞又は幹細胞の生存能力には実質的に影響しないオリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変されている。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、それらが阻害的オリゴヌクレオチドをがん細胞等の標的細胞に送達することができる前に間葉系前駆細胞又は幹細胞を殺滅しない阻害的オリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変されている。
【0019】
本発明者らはまた、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、がん細胞を殺滅する、及び/又はがん細胞増殖を低減させることが知られる様々な阻害的オリゴヌクレオチドを導入するように改変することができることも同定した。驚くべきことに、これらの改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、生存能力を保持し、がん細胞を殺滅する、及び/又は細胞増殖を低減させるのに十分なレベルで阻害的オリゴヌクレオチドをがん細胞に送達することができる。
【0020】
したがって、別の例では、本開示は、α1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物であって、前記細胞が、阻害的オリゴヌクレオチドを導入する、又は阻害的オリゴヌクレオチドを発現するベクターを含むように改変された、組成物に関する。
【0021】
ある例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、約12~24ヌクレオチド長である。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、RNAである。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子である。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、shRNAである。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、siRNAである。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、18~22ヌクレオチド長である。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、miRNAである。ある例では、miRNAを、miR-155、miR-155-inh、miR-181-B1、miR-15a、miR-16-1、miR-21、miR-34a、miR-221、miR-29a、let-7bからなる群から選択することができる。
【0022】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1も発現する。したがって、ある例では、本開示は、オリゴヌクレオチドを標的細胞に送達する方法であって、標的細胞と、STRO-1並びにα1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞とを接触させる工程を含み、前記細胞が、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを発現するベクターを導入するように改変された、方法に関する。別の例では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、STRO-1並びにα1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物を投与する工程を含み、前記細胞が、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを発現するプラスミドを導入するように改変された、方法に関する。別の例では、本開示は、STRO-1並びにα1、α2、α3、α4及びα5、αv、β1及びβ3からなる群から選択される1つ又は複数のマーカーを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む組成物であって、前記細胞が、阻害的オリゴヌクレオチドを導入する、又は阻害的オリゴヌクレオチドを発現するベクターを含むように改変された、組成物に関する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、実質的にはSTRO-1briである。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、Cx40又はCx43を発現するように改変されていない。
【0023】
ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、例えば、がん細胞等の標的細胞の生存能力を低下させるのに十分なレベルのオリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.25~5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~4nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~3.5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。
【0024】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、多能性細胞に由来する。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞に由来してもよい。
【0025】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、ウイルスベクターを使用して、オリゴヌクレオチドを導入するように改変されている。ある例では、ウイルスベクターは、レンチウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)又はその組換え形態からなる群から選択される。別の例では、ウイルスベクターは、AAVである。別の例では、ウイルスベクターは、組換えAAVである。
【0026】
ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、間葉系前駆細胞又は幹細胞上の細胞表面グリカンの改変を生じるように処理されている。ある例では、処理は、間葉系前駆細胞又は幹細胞上の細胞表面グリカンの改変をもたらす条件下での間葉系前駆細胞又は幹細胞のグリコシルトランスフェラーゼへの曝露を含む。
【0027】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、外因性グリコシルトランスフェラーゼに曝露される。
【0028】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、グリコシルトランスフェラーゼを発現するように改変されている。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を導入するように改変されており、細胞中でのグリコシルトランスフェラーゼの発現は、in vivoの炎症部位での細胞の保持の増強をもたらす。
【0029】
ある例では、グリコシルトランスフェラーゼは、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、又はシアリルトランスフェラーゼである。ある例では、フコシルトランスフェラーゼは、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIII、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIV、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVI、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVII又はアルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIX等のアルファ1,3フコシルトランスフェラーゼである。
【0030】
本明細書のいずれの例も、別途具体的に記述されない限り、変更すべきところは変更して任意の他の例にも適用されると取られるべきである。
【0031】
本開示は、例示のみを目的として意図される、本明細書に記載される特定の例によってその範囲を限定されない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、本明細書に記載されるように、明確に本開示の範囲内にある。
【0032】
本明細書を通して、別途具体的に記述されない限り、又は別途文脈が必要としない限り、単一の工程、組成物、工程群又は組成物群に対する参照は、1つ及び複数(すなわち、1つ又は複数)のこれらの工程、組成物、工程群又は組成物群を包含すると取られるべきである。
【0033】
以後、本開示を、以下の非限定的な実施例によって、及び添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】MPCはギャップ結合タンパク質:コネキシンCx43及びCx40を発現する。
図1B】MSCはギャップ結合タンパク質:コネキシンCx43及びCx40を発現する。
図2】パッチクランプ技術-機能的ギャップ結合のMPC発現。
図3-1】スクリーニングパネルにおける腫瘍細胞株中でのCx43の発現。
図3-2】スクリーニングパネルにおける腫瘍細胞株中でのCx43の発現。
図4】Lipofectamine: 1~1000nMの細胞外濃度を使用してシアニン3蛍光標識されたsiRNAをトランスフェクトされたMPC。
図5(i)】(A)GFPを発現するHeLa-Cx43細胞及び(B)GFPを発現するPANC-1細胞へのギャップ結合を介した、Cy-5-MiR16のMPCによる移入。
図5(ii)】GFPを発現するPANC-1細胞へのKIF11 siRNAのMPCによる移入。
図6A】(A)KIF11 siRNA(100nM)をロードしたMPC及びPANC-1腫瘍細胞の同時培養。
図6B】(B)KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びPANC-1腫瘍細胞の同時培養。
図7】KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びSNUC2A腫瘍細胞の同時培養。
図8A】KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びSAOS2腫瘍細胞の同時培養。
図8B】KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びSAOS2腫瘍細胞の同時培養。
図9】(A)Mir-16(100nM)をロードしたMPC及びPANC-1腫瘍細胞の同時培養。(B)Mir-16(100nM)をロードしたMPC及びトランスフェクトされていないMPCの同時培養。
図10】(A)let7b(500nM)をロードしたMPC及びPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)又はPANC-1の同時培養。let7bをトランスフェクトしたPANC-1細胞及びトランスフェクトされていないPANC-1細胞の増殖も示す。(B)let7bをトランスフェクトしたMPC及びトランスフェクトされていないMPCの増殖。
図11】(A)KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)又はPANC-1の同時培養。トランスフェクトされていないMPCと共にPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)の増殖も示す。(B)KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びトランスフェクトされていないMPCの増殖。
図12】データを合わせた:KIF11 siRNA(500nM)をロードしたMPC及びPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)又はPANC-1の同時培養。PANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)又はPANC-1と同時培養したトランスフェクトされていないMPCの増殖、及びKIF11をトランスフェクトしたPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)の増殖も示す。
図13】(A)Mir-34a(500nM)をロードしたMPC及びPANC-1(CRISP/Cas9 Cx43 KO)又はPANC-1の同時培養。トランスフェクトされていないMPCと共にPANC-1細胞、及びPANC-1トランスフェクト細胞の増殖も示す。(B)Mir-34a(500nM)をロードしたMPC及びトランスフェクトされていないMPCの増殖。
図14A】(A)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたMPCの死滅、5日目;非標的化siRNA、死滅siRNA、PLK1 siRNA及びKIF11 siRNAをトランスフェクトしたMPCの細胞数の蛍光アッセイ。
図14B】(B)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたMPCのWSTアッセイ、5日目。
図15A】(A)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたPANC-1細胞の死滅、5日目。
図15B】(B)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたPANC-1細胞のWSTアッセイ、5日目。
図16A】(A)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたPC3細胞の死滅、5日目。
図16B】(B)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたPC3細胞のWSTアッセイ、5日目。
図17A】(A)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたSAOS2細胞の死滅、5日目。
図17B】(B)mir模倣体、PLK1 siRNA又はKIF11 siRNAをトランスフェクトしたSAOS2細胞のWSTアッセイ、5日目。
図18】細胞死とWSTアッセイ(MPC; PANC-1)の比較分析。
図19】細胞死とWSTアッセイ(PC3; SAOS2)の比較分析。
図20】PC3前立腺異種移植腫瘍モデル。マウスの前立腺に、KIF11に対する500nMのsiRNAをロードした50万個のMPCで処置した、又は処置していない(対照)、ルシフェラーゼを発現する50万個のPC3細胞を同所的に埋め込んだ。1週間後、マウスに、ルシフェリンを注入し、画像化して腫瘍を可視化した。パネル(A)は、対照マウスを示し、パネル(B)は、MPCで処置されたマウスを示す。パネル(C)は、処置及び非処置マウスに関する生存曲線を示す。
図21】500nMのKIF11をトランスフェクトしたMPCとの同時培養後の全(パネルA)及び生きた(パネルB)PANC-1細胞(1/1比のMPC/PANC-1細胞)の測定。パネルA及びBのX軸:- PANC-1、1日目: 培養物中で1日後のPANC-1細胞の数(PANC-1細胞のみを培養)- PANC-1-KIF11 siRNA、1日目: 培養物中で1日後に測定された500nMのKIF11をトランスフェクトしたPANC-1の数- MPC-PANC-1、1日目: MPCとの同時培養物(1/1比)中で1日後のPANC-1細胞の数- MPC_KIF11- PANC-1: KIF11(500nM; 1/1比)をトランスフェクトしたMPCとの同時培養物中で1日後のPANC-1細胞の数- PANC-1、6日目: 培養物中で6日後のPANC-1細胞の数(PANC-1細胞のみを培養)- PANC-1-KIF11 siRNA、6日目: 培養物中で6日後に測定された500nMのKIF11をトランスフェクトしたPANC-1の数- MPC-PANC-1、1日目: MPCとの同時培養物(1/1比)中で6日後のPANC-1細胞の数- MPC_KIF11- PANC-1: KIF11(500nM; 1/1比)をトランスフェクトしたMPCとの同時培養物中で6日後のPANC-1細胞の数。
図22】同時培養物中のPANC-1細胞に対するMPC由来KIF11 siRNAの効果。パネルAは、KIF11 siRNA(0~500nM)をロードしたMPCとの同時培養物中でのPANC-1細胞増殖の時間経過を示す。パネルBは、細胞培養の5日目でのKIF11 siRNA(0~500nM)をロードしたMPCとの同時培養物中でのPANC-1細胞増殖の用量応答曲線を示す。パネルCは、PANC-1との同時培養物中でのKIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のMPC増殖の時間経過を示す。結果は、3つの独立した測定の平均を表す。
図23】KIF11(直接トランスフェクション)によるPANC-1細胞生存能力の用量依存的阻害。
図24】PANC-1細胞増殖に対するKIF11 siRNAの効果。パネルAは、KIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のPANC-1細胞増殖の時間経過を示す。パネルBは、細胞培養の6日目でのKIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のPANC-1細胞増殖の用量応答曲線を示す。
図25】MPC細胞増殖に対するKIF11 siRNAの効果。パネルAは、KIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のMPC増殖の時間経過を示す。パネルBは、細胞培養の6日目でのKIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のMPC細胞増殖の用量応答曲線を示す。
図26】同時培養物中のPC3細胞に対するMPC由来KIF11 siRNAの効果。パネルAは、KIF11 siRNA(0~500nM)をロードしたMPCとの同時培養物中でのPC3細胞増殖の時間経過を示す。パネルBは、細胞培養の5日目でのKIF11 siRNA(0~500nM)をロードしたMPCとの同時培養物中でのPC3細胞増殖の用量応答曲線を示す。パネルCは、PC3細胞との同時培養物中でのKIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のMPC増殖の時間経過を示す。結果は、3つの独立した測定の平均を表す。
図27】PC3細胞増殖に対するKIF11 siRNAの効果。パネルAは、KIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のPC3細胞増殖の時間経過を示す。パネルBは、細胞培養の6日目でのKIF11 siRNA(0~500nM)によるトランスフェクション後のPC3細胞増殖の用量応答曲線を示す。
図28】MPCドナー細胞のKIF11 siRNAのローディング。
図29】腫瘍細胞へのMPCドナー細胞のKIF11 siRNAの移入。
図30】KIF11 siRNAをトランスフェクトされた細胞中のKIF11 mRNAレベル。
図31】KIF11 siRNAをロードしたMPCとの同時培養後のPANC-1細胞中のKIF11 mRNAレベル。MPC = KIF11 siRNAを直接トランスフェクトされたMPC; MPC-Co = KIF11 siRNAを直接トランスフェクトされ、PANC-1と同時培養したMPC;PANC-1-Co = KIF11 siRNAをトランスフェクトされたMPCと共に24時間にわたって同時培養したPANC-1細胞; KIF11発現を、トランスフェクションの48時間後にアッセイした。qRT-PCRデータを分析するための比較Ct法(ΔΔCt法)-1.試料のKIF11の平均Ct-GAPDHの平均Ct = ΔCt KIF11-GAPDH; 2.ΔΔCT = ΔCt処置-ΔCt未処置; 3.未処置と比較したKIF11における倍数差 = 2-ΔΔCt。
図32】siRNAと、ヒトKIF11 mRNA配列とのアラインメント。
図33】MPC及び腫瘍細胞の生存能力に対するKIF11 siRNAの効果。
図34】対照と比較した、KIF11 siRNAをトランスフェクトされたMPC及びMSC中での遺伝子発現分析。
【発明を実施するための形態】
【0035】
配列表の凡例
配列番号1: KIF11 mRNA(NCBI参照番号NM_004523.3)
配列番号2: Hs KIF11 8 siRNA
配列番号3: Hs KIF11 9 siRNA
配列番号4: Hs KIF11 6 siRNA
配列番号5: Hs KIF11 12 siRNA
配列番号6: Hs KIF11 7 siRNA
配列番号7: Hs KIF11 4 siRNA
【0036】
発明の詳細な説明
一般的技術及び選択された定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業界(例えば、分子生物学、細胞培養、幹細胞分化、細胞療法、遺伝子改変、生化学、生理学、及び臨床研究)における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると取られるべきである。
【0037】
別途指摘されない限り、本開示において使用される分子技術及び統計技術は、当業者には周知の標準的な手順である。そのような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A. Brown (編)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、Volumes 1及び2、IRL Press (1991)、D.M. Glover及びB.D. Hames (編)、DNA Cloning: A Practical Approach、Volumes 1-4、IRL Press (1995及び1996)、及びF.M. Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までの全てのアップデートを含む)、Ed Harlow及びDavid Lane (編) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988)、並びにJ.E. Coliganら(編) Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までの全てのアップデートを含む)等の供給源に文献を通して記載及び説明されている。
【0038】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数及び単数形「a」、「an」及び「the」で記載される用語は、例えば、本文が別途明確に指示しない限り、必要に応じて複数の指示対象を含む。かくして、例えば、「分析物(an analyte)」に対する参照は、必要に応じて、1つ又は複数の分析物を含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「約」は、それと反対に記述されない限り、指定された値の+/-10%、より好ましくは、+/-5%、より好ましくは、+/-1%を指す。
【0040】
用語「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X若しくはY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、両方の意味又はいずれかの意味に対する明確な支持を提供すると取られるべきである。
【0041】
本明細書を通じて、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記述された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の含有を意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0042】
本明細書で使用される用語「コネキシン」は、細胞間コミュニケーション並びにイオン及び小さいシグナル伝達分子の移入を可能にし、集合してギャップ結合を形成する膜貫通タンパク質の大きいファミリーを意味する。コネキシンは、CとNの両方の細胞質末端、細胞質ループ(CL)並びに2個の細胞外ループ、(EL-1)及び(EL-2)を有する4回通過型膜貫通タンパク質である。コネキシンは、6個の群で集合してヘミチャネルを形成するか、又はコネクソン、及び2個のヘミチャネルは、それぞれの細胞上に1個ずつあり、組み合わさって、2個の細胞間のギャップ結合を形成する。コネキシンという用語は、Cxと省略され、それをコードする遺伝子は斜体でCxと省略される。
【0043】
本明細書で使用される用語「ギャップ結合」とは、細胞型間の特殊化した細胞間接続を意味する。ギャップ結合は、2個の細胞の細胞質を直接接続し、核酸、イオン及び電気インパルス等の様々な分子が、細胞間の調節されたゲートを直接通過できるようにする。
【0044】
様々な対象に、本開示による細胞組成物を投与することができる。ある例では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、イヌ若しくはネコ等のペット、又はウマ若しくはウシ等の家畜であってもよい。別の例では、対象はヒトである。「対象」、「患者」又は「個体」等の用語は、文脈の中で、本開示で互換的に使用することができる用語である。
【0045】
本明細書で使用される用語「処置」とは、臨床病理の経過中に処置される個体又は細胞の自然の経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善又は軽減、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。例えば、疾患と関連する1つ又は複数の症状が軽減されるか、又は除去される場合、個体は上手く「処置」される。
【0046】
「有効量」とは、所望の治療又は予防結果を達成するのに必要な用量で、及び期間にわたって少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回又は複数回の投与で提供することができる。本開示の一部の例では、用語「有効量」は、前記の疾患又は状態の処置を行うのに必要な量を指すために使用される。有効量は、処置しようとする疾患又は状態に応じて、また、処置される哺乳動物の体重、年齢、人種的背景、性別、健康及び/又は身体の状態及び他の因子に応じて変化してもよい。典型的には、有効量は、医師による日常的な試験及び実験によって決定することができる相対的に広い範囲(例えば、「用量」範囲)内にあるであろう。有効量を、単回用量で、又は処置期間にわたって1回若しくは数回繰り返される用量で投与することができる。
【0047】
「治療有効量」は、特定の障害(例えば、がん)の測定可能な改善を行うのに必要とされる少なくとも最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を惹起する細胞組成物の能力等の因子に応じて変化してもよい。治療有効量はまた、組成物の任意の毒性効果又は有害効果を、治療的に有益な効果が上回るものである。がんの場合、治療有効量は、がん細胞の数を減少させる;原発腫瘍のサイズを減少させる;末梢臓器へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度減速させ、一部の例では、停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度減速させ、一部の例では、停止させる);腫瘍増殖若しくは腫瘍進行をある程度阻害する、若しくは遅延させる;並びに/又は障害と関連する1つ若しくは複数の症状をある程度緩和することができる。本開示による組成物が増殖を防止する、及び/又は存在するがん細胞を殺滅することができる程度で、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であってもよい。がん療法について、in vivoでの効能を、例えば、生存の持続期間、疾患進行までの時間(TTP)、応答率(PR)、応答の持続期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定することができる。
【0048】
間葉系前駆細胞(MPC)又は幹細胞
本明細書で使用される用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」とは、多能性を維持しながら自己再生する能力並びに間葉起源のいくつかの細胞型、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、又は非中胚葉起源のいくつかの細胞型、例えば、肝細胞、神経細胞及び上皮細胞に分化する能力を有する未分化の多能性細胞を指す。
【0049】
用語「間葉系前駆細胞又は幹細胞」は、親細胞と、その未分化の子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉系前駆細胞又は幹細胞(MPC)、多能性間質細胞、間葉系幹細胞、血管周囲間葉系前駆細胞又は幹細胞、及びそれらの未分化の子孫も含む。
【0050】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、自家、同種異系、異種、同系又は同種であってもよい。自家細胞は、それらが再び埋め込まれるであろう同じ個体から単離される。同種異系細胞は、同じ種のドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系又は同種細胞は、双子、クローン、又は高度近交系研究動物モデル等の遺伝的に同一の生物から単離される。
【0051】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、主に骨髄に存在するが、例えば、臍帯血及び臍帯、成体末梢血、脂肪組織、骨梁及び歯髄等の多様な宿主組織中に存在することも示されている。
【0052】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1及び1つ又は複数のインテグリンを発現する。インテグリンは、細胞間接着事象と、細胞-細胞外マトリックス接着事象の両方を媒介する細胞接着受容体のクラスである。インテグリンは、一本のα鎖ポリペプチドが一本のβ鎖と非共有的に会合するヘテロ二量体ポリペプチドからなる。現在、細胞接着受容体のインテグリンファミリーを構成する約16種の異なるα鎖ポリペプチド及び少なくとも約8種の異なるβ鎖ポリペプチドが存在する。一般に、異なる結合特異性及び組織分布は、α及びβ鎖ポリペプチド又はインテグリンサブユニットのユニークな組合せに由来する。特定のインテグリンが会合するファミリーは、通常、βサブユニットによって特徴付けられる。しかしながら、インテグリンのリガンド結合活性は、αサブユニットによって大きく影響される。
【0053】
ある例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、β1(CD29)鎖ポリペプチドを有するインテグリンとを発現する。
【0054】
別の例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、α1(CD49a)、α2(CD49b)、α3(CD49c)、α4(CD49d)、α5(CD49e)及びαv(CD51)からなる群から選択されるα鎖ポリペプチドを有するインテグリンとを発現する。したがって、ある例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα1とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα2とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα3とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα4とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα5とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とαvとを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα2とα3とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα2とα5とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα3とα5とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα2とα3とα5とを発現する。
【0055】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びα1+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、α1+細胞について富化された集団は、少なくとも約3%又は4%又は5%のα1+細胞を含んでもよい。
【0056】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びα2+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、α2+細胞について富化された集団は、少なくとも約30%又は40%又は50%のα2+細胞を含んでもよい。
【0057】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びα3+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、α3+細胞について富化された集団は、少なくとも約40%又は45%又は50%のα3+細胞を含む。
【0058】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びα4+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、α4+細胞について富化された集団は、少なくとも約5%又は6%又は7%のα4+細胞を含む。
【0059】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びα5+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、α5+細胞について富化された集団は、少なくとも約45%又は50%又は55%のα5+細胞を含む。
【0060】
別の例では、本開示は、STRO-1+及びαv+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、αv+細胞について富化された集団は、少なくとも約5%又は6%又は7%のαv+細胞を含む。
【0061】
別の例では、本開示は、STRO-1+、α1+、α3+、α4+及びα5+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。
【0062】
別の例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、α1β1、α2β1、α3β1、α4β1及びα5β1からなる群から選択されるインテグリンを発現することができる。したがって、ある例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα1β1とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα2β1とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα4β1とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とα5β1とを発現する。
【0063】
別の例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、β3(CD61)鎖ポリペプチドを有するインテグリンとを発現する。ある例では、本開示は、STRO-1+及びβ3+細胞について富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を包含する。この例では、β3+細胞について富化された集団は、少なくとも約8%又は10%又は15%のβ3+細胞を含む。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とαvβ3とを発現する。別の例では、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、β5(ITGB5)鎖ポリペプチドを有するインテグリンとを発現する。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とαvβ5とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とαvβ6とを発現する。
【0064】
上で参照したインテグリンを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞の同定及び/又は富化を、当業界で公知の様々な方法を使用して達成することができる。一例では、商業的に入手可能な抗体(例えば、Thermofisher社; Pharmingen社; Abcam社)を使用する蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、所望のインテグリンポリペプチド鎖又はその組合せを発現する細胞を同定及び選択することができる。
【0065】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体と、1つ又は複数の上で参照されたインテグリンとを発現する。
【0066】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体と、αvβ3とαvβ5とを発現する。
【0067】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、1つ若しくは複数の上で参照したインテグリン又はコクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体をその細胞表面上に発現するように遺伝的に改変されている。
【0068】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1と、キメラ抗原受容体(CAR)とを発現する。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、STRO-1とCARとαvβ3とαvβ5とを発現する。
【0069】
ある例では、CARを発現する間葉系前駆細胞又は幹細胞は、T細胞媒介性免疫応答を誘発することができる。別の例では、CARは、間葉系前駆細胞又は幹細胞をがん細胞に付着させる手段として作用する。別の例では、CARは、間葉系前駆細胞又は幹細胞のがん細胞への接着の増強を誘発する手段として作用する。
【0070】
ある例では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。ある例では、抗原結合ドメインは、1つ又は複数の腫瘍抗原に対する親和性を有する。例示的な腫瘍抗原としては、HER2、CLPP、707-AP、AFP、ART-4、BAGE、MAGE、GAGE、SAGE、b-カテニン/m、bcr-abl、CAMEL、CAP-1、CEA、CASP-8、CDK/4、CDC-27、Cyp-B、DAM-8、DAM-10、ELV-M2、ETV6、G250、Gp100、HAGE、HER-2/neu、EPV-E6、LAGE、hTERT、スルビビン、iCE、MART-1、チロシナーゼ、MUC-1、MC1-R、TEL/AML、及びWT-1が挙げられる。
【0071】
例示的な細胞内ドメインとしては、CD3-ゼータ、CD28及び4-IBBが挙げられる。一部の例では、CARは、CD3-ゼータ、CD28、4-1 BB、TLR-4の組合せを含んでもよい。
【0072】
例示的な膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、35 CD154に由来してもよい(すなわち、それらの少なくとも膜貫通領域を含んでもよい)。別の例では、膜貫通ドメインは、合成であってもよく、その場合、それはロイシン及びバリン等の疎水性残基を主に含むであろう。
【0073】
間葉系前駆細胞又は幹細胞を、上で参照したもの等の宿主組織から単離し、免疫選択によって富化することができる。例えば、対象に由来する骨髄穿刺液を、STRO-1又はTNAPに対する抗体で更に処理して、間葉系前駆細胞又は幹細胞の選択を可能にすることができる。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、Simmons & Torok-Storb、1991に記載されたSTRO-1抗体を使用することによって富化することができる。
【0074】
STRO-1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜に見出される細胞であり、中胚葉及び/又は内胚葉及び/又は外胚葉等の生殖系列に分化することができる。かくして、STRO-1+細胞は、限定されるものではないが、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織、及び線維性結合組織等の多数の細胞型に分化することができる。これらの細胞が進入する特定の分化系列決定及び分化経路は、機械的影響及び/又は増殖因子、サイトカイン等の内因性生物活性因子、及び/又は宿主組織によって確立される局部微小環境条件からの様々な影響に依存する。
【0075】
本明細書で使用される用語「富化される」は、1つの特定の細胞型の割合又はいくつかの特定の細胞型の割合が、未処理の細胞集団(例えば、その天然の環境にある細胞)と比較した場合に増加する細胞の集団を記載する。一例では、STRO-1+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%のSTRO-1+細胞を含む。これに関して、用語「STRO-1+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞の集団」(ここで、X%は、本明細書に記載されるパーセンテージである)に対する明確な支持を提供すると取られるであろう。STRO-1+細胞は、一部の例では、クローン形成性コロニーを形成し、例えば、CFU-F(線維芽細胞)又はそのサブセット(例えば、50%又は60%又は70%又は70%又は90%又は95%)は、この活性を有してもよい。
【0076】
一例では、細胞の集団は、選択可能な形態でSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から富化される。これに関して、用語「選択可能な形態」は、細胞がSTRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解されるであろう。マーカーは、STRO-1であってもよいが、それである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示されるように、STRO-2及び/又はSTRO-3(TNAP)及び/又はSTRO-4及び/又はVCAM-1及び/又はCD146及び/又は3G5を発現する細胞(例えば、MPC)もまたSTRO-1を発現する(及びSTRO-1brightであってもよい)。したがって、細胞がSTRO-1+であることの指示は、細胞がSTRO-1発現によって選択されることを意味するものではない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらはSTRO-3+(TNAP+)である。
【0077】
細胞又はその集団の選択に対する参照は、特定の組織供給源からの選択を必ずしも必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞を、多様な供給源から選択する、又は単離する、又は富化することができる。そうは言っても、一部の例では、これらの用語は、STRO-1+細胞を含む任意の組織又は血管化された組織又は周皮細胞(例えば、STRO-1+若しくは3G5+周皮細胞)を含む組織又は本明細書に記載された組織のいずれか1つ若しくは複数からの選択に対する支持を提供する。
【0078】
一例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+ (HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+からなる群から個別に、又は集合的に選択される1つ又は複数のマーカーを発現する。
【0079】
「個別に」とは、本開示が、記載されるマーカー又はマーカー群を別々に包含すること、及び個々のマーカー又はマーカー群が本明細書に別々に列挙されないにも拘わらず、添付の特許請求の範囲が、そのようなマーカー又はマーカー群を互いに別々に、分けて定義することができることを意味する。
【0080】
「集合的に」とは、本開示が、任意の数又は組合せの記載されるマーカー又はマーカー群を包含すること、及びマーカー又はマーカー群のそのような数又は組合せが本明細書に具体的に列挙されないにも拘わらず、添付の特許請求の範囲が、そのような組合せ又は下位の組合せを、マーカー又はマーカー群の任意の他の組合せとは別々に、分けて定義することができることを意味する。
【0081】
所与のマーカーについて「陽性」であると記載される細胞は、マーカーが細胞表面上に存在する程度に応じて、低い(lo若しくはdim(薄暗い)若しくはdull(鈍い))、中間(intermediate)の(中央(median))又は高い(bright(明るい)、bri)レベルのそのマーカーを発現し得、その場合、この用語は、細胞の選別プロセス又は細胞のフローサイトメトリー分析において使用される蛍光又は他のマーカーの強度に関するものである。低い(lo若しくはdim若しくはdull)、中間(median)又は高い(bright、bri)の区別は、選別又は分析される特定の細胞集団上で使用されるマーカーの文脈で理解されるであろう。所与のマーカーについて「陰性」であると記載される細胞は、必ずしもそのマーカーがその細胞に完全に存在しないということではない。この用語は、マーカーがその細胞によって相対的に非常に低レベルで発現されること、及びそれが検出可能に標識された場合、非常に低いシグナルを生成するか、又はバックグラウンドレベル、例えば、アイソタイプ対照抗体を使用して検出されるレベルを超えて検出不可能であることを意味する。
【0082】
本明細書で使用される用語「明るい(bright)」又はbriとは、検出可能に標識された場合、相対的に高いシグナルを生成する細胞表面上のマーカーを指す。理論によって限定されることを望むものではないが、「明るい」細胞は、試料中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1抗体によって認識される抗原)を発現すると提唱される。例えば、STRO-1bri細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析によって決定されるように、FITCコンジュゲート化STRO-1抗体で標識された場合、明るくない細胞(STRO-1lo/dim/dull/intermediate/median)よりも大きい蛍光シグナルを産生する。一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、骨髄から単離され、STRO-1+細胞の選択によって富化される。この例では、「明るい」細胞は、出発試料中に含有される少なくとも約0.1%の最も明るく標識された骨髄単核細胞である。他の例では、「明るい」細胞は、出発試料中に含有される少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%又は少なくとも約2%の最も明るく標識された骨髄単核細胞である。ある例では、STRO-1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわち、STRO-1-である細胞と比較して、2 log規模高いSTRO-1表面発現を有する。比較により、STRO-1lo/dim/dull及び/又はSTRO-1intermediate/median細胞は、「バックグラウンド」よりも2 log規模未満高いSTRO-1表面発現、典型的には、約1 log以下の発現を有する。
【0083】
一例では、STRO-1+細胞は、STRO-1brightである。一例では、STRO-1bright細胞は、STRO-1lo/dim/dull又はSTRO-1intermediate/median細胞と比較して優先的に富化される。
【0084】
一例では、STRO-1bright細胞は更に、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+ (HSP-90β)及び/又はCD146+のうちの1つ又は複数である。例えば、細胞は、1つ若しくは複数の前記マーカーについて選択される、及び/又は1つ若しくは複数の前記マーカーを発現することが示される。これに関して、マーカーを発現すると示された細胞を、具体的に試験する必要はなく、むしろ、予め富化又は単離された細胞を試験した後に使用してもよく、単離又は富化された細胞を、同じマーカーを発現すると合理的に推定することもできる。
【0085】
一例では、STRO-1bright細胞は、血管周囲マーカー3G5の存在を特徴とする、WO2004/85630に定義された血管周囲間葉系前駆細胞又は幹細胞である。
【0086】
本明細書で使用される用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することが意図される。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPは、BAPである。一例では、TNAPとは、受託番号PTA-7282の下、ブダペスト条約の定めるところに従って2005年12月19日にATCCに預託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるSTRO-3抗体に結合することができる分子を指す。
【0087】
更に、一例では、STRO-1+細胞は、クローン形成性CFU-Fを生じることができる。
【0088】
一例では、有意な割合のSTRO-1+細胞が、少なくとも2つの異なる生殖系列に分化することができる。細胞が分化系列を決定され得る系列の非限定例としては、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞について多能性である肝細胞前駆体;オリゴデンドロサイト及びアストロサイトに進行するグリア細胞前駆体を生成することができる神経限定細胞;ニューロンに進行する神経前駆細胞;心筋及び心筋細胞、グルコース応答性インスリン分泌膵臓ベータ細胞系の前駆体が挙げられる。他の系列としては、限定されるものではないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト等の皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靱帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、グリア細胞、神経細胞、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトが挙げられる。
【0089】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、MSCである。MSCは、均一な組成物であってもよく、又はMSCが富化された混合細胞集団であってもよい。均一なMSC組成物を、接着性の骨髄又は骨膜細胞を培養することによって取得し、MSCを、ユニークなモノクローナル抗体を用いて同定された特定の細胞表面マーカーによって同定することができる。MSCが富化された細胞集団を取得するための方法は、例えば、米国特許第5486359号に記載されている。従来のプラスチック接着単離により調製されるMSCは、CFU-Fの非特異的プラスチック接着特性に依拠する。STRO-1に基づく免疫選択によって骨髄から単離された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、他のプラスチック接着性骨髄集団の非存在下で骨髄集団からクローン形成性間葉前駆細胞を特異的に単離する。MSCのための代替的な供給源としては、限定されるものではないが、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜が挙げられる。
【0090】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等の多能性細胞に由来する。一実施形態では、多能性細胞は、ヒト多能性細胞である。多能性細胞からの間葉系前駆細胞又は幹細胞の生成のための好適なプロセスは、例えば、米国特許第7,615,374号及び米国特許出願第2014273211号、Barberiら、Plos medicine、Vol 2(6):0554~0559頁(2005)、並びにVodyanikら、Cell Stem cell、Vol 7:718~728頁(2010)に記載されている。
【0091】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、不死化される。不死化された間葉系前駆細胞又は幹細胞の生成のための例示的なプロセスは、例えば、Obinata M., Cell, Vol 2:235~244頁(1997)、米国特許第9,453,203号、Akimovら、Stem Cells, Vol 23:1423~1433頁及びKabaraら、Laboratory Investigation, Vol 94: 1340~1354頁(2014)に記載されている。
【0092】
本開示の好ましい実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、健康なボランティアの骨髄から富化された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来するマスター細胞バンクから得られる。そのような供給源に由来する間葉系前駆細胞又は幹細胞の使用は、間葉系前駆細胞若しくは幹細胞ドナーとして役立ち得る適切な家族メンバーが利用可能でない、又は即時の処置を必要とし、間葉系前駆細胞又は幹細胞を生成するのにかかる時間の間、再発、疾患関連低下若しくは疾患関連死のリスクが高い対象にとって特に有利である。
【0093】
別の例では、間葉系前駆細胞は、Cx43を発現する。別の例では、間葉系前駆細胞は、Cx40を発現する。別の例では、間葉系前駆細胞は、Cx43とCx40とを発現する。別の例では、間葉系前駆細胞は、Cx45、Cx32及び/又はCx37を発現する。ある例では、間葉系前駆細胞は、特定のコネキシンを発現するように改変されていない。
【0094】
別の例では、間葉系前駆細胞は、STRO-1とCD46とを発現する。この例では、間葉系前駆細胞は、上で参照された1つ又は複数のインテグリンを発現することもできる。
【0095】
単離された、又は富化された間葉系前駆細胞を、培養によってin vitroで拡大することができる。単離された、又は富化された間葉系前駆細胞を、凍結保存し、解凍した後、培養によってin vitroで拡大することができる。
【0096】
一例では、単離された、又は富化された間葉系前駆細胞を、培養培地(無血清又は血清添加)、例えば、5%ウシ胎仔血清(FBS)及びグルタミンを添加したアルファ最少必須培地(αMEM)中、50,000個の生細胞/cm2で播種し、37℃、20% O2で一晩、培養容器に接着させる。次いで、培養培地を必要に応じて交換及び/又は変更し、細胞を37℃、5% O2で更に68~72時間培養する。
【0097】
当業者であれば理解できるように、培養された間葉系前駆細胞は、in vivoの細胞と表現型が異なる。例えば、一実施形態では、それらは、以下のマーカー、CD44、CD46、NG2、DC146及びCD140bのうちの1つ又は複数を発現する。培養された間葉系前駆細胞はまた、in vivoの細胞と生物学的にも異なり、in vivoの大部分の非周期(静止)細胞と比較して高い増殖速度を有する。
【0098】
Ang1及びVEGFレベル
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも0.1μg/106細胞の量のAng1を発現する。しかしながら、他の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも0.2μg/106細胞、0.3μg/106細胞、0.4μg/106細胞、0.5μg/106細胞、0.6μg/106細胞、0.7μg/106細胞、0.8μg/106細胞、0.9μg/106細胞、1μg/106細胞、1.1μg/106細胞、1.2μg/106細胞、1.3μg/106細胞、1.4μg/106細胞、1.5μg/106細胞の量のAng1を発現する。
【0099】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、約0.05μg/106細胞未満の量のVEGFを発現する。しかしながら、他の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、約0.05μg/106細胞、0.04μg/106細胞、0.03μg/106細胞、0.02μg/106細胞、0.01μg/106細胞、0.009μg/106細胞、0.008μg/106細胞、0.007μg/106細胞、0.006μg/106細胞、0.005μg/106細胞、0.004μg/106細胞、0.003μg/106細胞、0.002μg/106細胞、0.001μg/106細胞未満の量のVEGFを発現する。
【0100】
間葉系前駆細胞又は幹細胞の組成物又は培養物中で発現される細胞性Ang1及び/又はVEGFの量を、当業者には公知の方法によって決定することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、例えば、定量的ELISAアッセイ等の定量的アッセイが挙げられる。この例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞の培養物に由来する細胞溶解物を、ELISAプレートのウェルに添加する。ウェルを、Ang1又はVEGFに対する、モノクローナル又はポリクローナル抗体である一次抗体でコーティングしてもよい。次いで、ウェルを洗浄した後、一次抗体に対する、モノクローナル又はポリクローナル抗体である二次抗体と接触させる。二次抗体を、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ等の適切な酵素にコンジュゲートする。次いで、ウェルをインキュベートした後、インキュベーション期間の後に洗浄する。次いで、ウェルを、1つ又は複数の色素原等の、二次抗体にコンジュゲートした酵素のための適切な基質と接触させる。用いることができる色素原としては、限定されるものではないが、過酸化水素及びテトラメチルベンジジンが挙げられる。基質を付加した後、ウェルを適切な期間にわたってインキュベートする。インキュベーションの完了後、「停止」溶液をウェルに添加して、酵素と基質との反応を停止させる。次いで、試料の光密度(OD)を測定する。試料の光密度を、既知量のAng1又はVEGFを含有する試料の光密度と相関させて、試験される幹細胞の培養物によって発現されるAng1又はVEGFの量を決定する。
【0101】
別の態様では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも約2:1の比でAng1:VEGFを発現する。しかしながら、他の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも約10:1、15:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、50:1の比でAng1:VEGFを発現する。
【0102】
Ang1:VEGF発現比を決定するための方法は、当業者には明らかであろう。例えば、Ang1及びVEGF発現レベルを、上で考察された定量的ELISAによって定量することができる。Ang1及びVEGFのレベルを定量した後、Ang1及びVEGFの定量されたレベルに基づく比を、(Ang1のレベル/VEGFのレベル)=Ang1:VEGF比として表すことができる。
【0103】
ある例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、上で例示されたレベル又は比でAng1及び/又はVEGFを発現するように遺伝的に改変されていない。Ang1及び/又はVEGFを発現するように遺伝的に改変されていない細胞は、Ang1及び/又はVEGFを発現又はコードする核酸を用いたトランスフェクションによって改変されていない。疑いを避けるために、本開示の文脈では、Ang1及び/又はVEGFをコードする核酸をトランスフェクトされた間葉系前駆細胞又は幹細胞は、遺伝的に改変されていると考えられる。本開示の文脈では、Ang1及び/又はVEGFを発現するように遺伝的に改変されていない細胞は、Ang1及び/又はVEGF1をコードする核酸のトランスフェクションを用いずとも、ある程度までAng1及び/又はVEGFを自然に発現する。
【0104】
核酸
本開示は、様々な核酸の使用を包含する。用語「核酸」及び「核酸分子」は、本開示を通して互換的に使用することができる。例示的な核酸としては、DNA(例えば、相補的DNA(cDNA)、ゲノムDNA(gDNA))、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、短い阻害的RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、tRNA、マイクロRNA)、DNA又はRNAアナログ(例えば、塩基アナログ、糖アナログ及び/又は非天然骨格等を含有する)、RNA/DNAハイブリッド並びにポリアミド核酸(PNA)が挙げられ、それらは全て一本鎖又は二本鎖形態にあってもよい。ある例では、核酸は単離される。本明細書で使用される用語「単離された核酸」は、ヒトの介入によって天然状態から変化した、又は取り出された核酸を意味する。
【0105】
別の例示的な核酸は、オリゴヌクレオチドである。本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、短いDNA又はRNA分子を意味する。オリゴヌクレオチドは、配列特異的な様式で、その対応する相補的オリゴヌクレオチド、DNA又はRNAに容易に結合して、二本鎖を形成する。
【0106】
ある例では、オリゴヌクレオチドは、DNA分子であってもよい。別の例では、オリゴヌクレオチドは、RNA分子であってもよい。
【0107】
様々な例では、オリゴヌクレオチドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長であるか、又はそれより長くてもよい。
【0108】
ある例では、本開示のオリゴヌクレオチドは、阻害的オリゴヌクレオチドである。ある例では、用語「阻害的オリゴヌクレオチド」とは、1つ又は複数のタンパク質の産生、発現又は生物活性を低下させる任意のオリゴヌクレオチドを指す。例えば、阻害的オリゴヌクレオチドは、リボソーム中でのmRNAのタンパク質への翻訳を阻害し得る。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子又はmRNAに結合する(ハイブリダイズする)ことによって、標的タンパク質の発現又は生物活性を低下させる1つ又は複数のタンパク質をコードする遺伝子又はmRNAと十分に相補的であってよい。別の例では、阻害的オリゴヌクレオチドは、タンパク質をコードしない細胞内核酸の生物活性を阻害する。例えば、阻害的オリゴヌクレオチドは、非コードRNAの生物活性を阻害することができる。
【0109】
例示的な阻害的オリゴヌクレオチドとしては、単離された、又は合成のアンチセンスRNA又はDNA、siRNA又はsiDNA、miRNA、miRNA模倣体、shRNA又はDNA及びキメラアンチセンスDNA又はRNAが挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される用語「アンチセンス」とは、転写を受けるDNA二重らせんの鎖のもの、又はメッセンジャーRNA分子のものであってもよい、コード配列と相補的であり、したがって、それに結合することができるヌクレオチドの配列を意味する。アンチセンスDNAは、二本鎖DNA中のコード鎖と相補的な非コード鎖である。アンチセンス鎖は、メッセンジャーRNA(mRNA)合成の鋳型として働く。
【0111】
用語「短ヘアピンRNA」又は「shRNA」とは、二本鎖領域とループ領域とを有するRNA構造を指す。
【0112】
短い干渉RNA又はサイレンシングRNAとしても知られることがある、低分子干渉RNA(siRNA)という用語は、20~25塩基対の長さの二本鎖RNA分子のクラスである。特定のタンパク質への翻訳を阻害又は防止するsiRNAは、siRNAの用語と共にタンパク質名によって示される。かくして、KIF11の翻訳を阻害するsiRNAは、「KIF11 siRNA」の表現によって示される。典型的には、siRNAは、様々な実施形態では、それぞれの鎖が約19~約28ヌクレオチド(すなわち、約19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28ヌクレオチド)を有する、2個のヌクレオチド鎖を含む二本鎖核酸分子である。本開示によって包含される例示的なsiRNAとしては、KIF11 siRNA、KRAS siRNA及びPLK1 siRNAが挙げられる。
【0113】
用語「マイクロRNA」(miRNAと省略される)は、植物、動物及び一部のウイルスに認められ、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能する小さい非コードRNA分子(約22ヌクレオチドを含有する)である。接頭辞「miR」の後にダッシュ及び数字があり、後者は名称の順序を示すことが多い。1個又は2個のヌクレオチドを除いてほぼ同一の配列を有する異なるmiRNAは、追加の小文字で注釈される。いくつかのmiRNAが当業界で公知である(miRBase V.21命名法;Kozomaraら、2013; Griffiths-Jones、S. 2004)。ヒトmiRNAの例としては、hsa-let-7d-3p、hsa-miR-101-5p、hsa-miR-106b-3p、hsa-miR-1179、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-141-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-195-5p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-200b-3p、hsa-miR-217、hsa-miR-223-3p、hsa-miR-371a-3p、hsa-miR-487b、hsa-miR-515-3p、hsa-miR-605、hsa-let-7a-3p、hsa-let-7a-5p、hsa-let-7b-3p、hsa-let-7b-5p、hsa-let-7c、hsa-let-7d-5p、hsa-let-7e-3p、hsa-let-7e-5p、hsa-let-7f-l-3p、hsa-let-7f-2-3p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7g-3p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7i-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-1、hsa-miR-100-3p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-101-3p、hsa-miR-103a-2-5p、hsa-miR-103a-3p、hsa-miR-103b、hsa-miR-105-5p、hsa-miR-106a-3p、hsa-miR-106a-5p、hsa-miR-106b-5p、hsa-miR-107、hsa-miR-10a-3p、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-10b
-3p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-1178-3p、hsa-miR-1180、hsa-miR-1181、hsa-miR-1182、hsa-miR-1183、hsa-miR-1184、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-1204、hsa-miR-1207、hsa-miR-1208、hsa-miR-122-3p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-1224、hsa-miR-1226、hsa-miR-1227-3p、hsa-miR-1228-5p、hsa-miR-1229-3p、hsa-miR-1231、hsa-miR-124-3p、hsa-miR-1245 a、hsa-miR-1246、hsa-miR-1249、hsa-miR-125a-3p、hsa-miR-125b-l-3p、hsa-miR-125b-2-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-1251、hsa-miR-1252、hsa-miR-1253、hsa-miR-1255 a、hsa-miR-1255b-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-1260a、hsa-miR-1260b、hsa-miR-1262、hsa-miR-1263、hsa-miR-1265、hsa-miR-1268a、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-1270、hsa-miR-1272、hsa-miR-1273 a、hsa-miR-1275、hsa-miR-1276、hsa-miR-1277-3p、hsa-miR-1278、hsa-miR-128、hsa-miR-1285-3p、hsa-miR-1286、hsa-miR-1287、hsa-miR-129-2-3p、hsa-miR-1292-5p、hsa-miR-1293、hsa-miR-1301、hsa-miR-1302、hsa-miR-1303、hsa-miR-1305、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-130a-5p、hsa-miR-130b-3p、hsa-miR-130b-5p、hsa-miR-132-3p、hsa-miR-132-5p、hsa-miR-1321、hsa-miR-1323、hsa-miR-1324、hsa-miR-133a、hsa-miR-133b、hsa-miR-134、hsa-miR-135a-3p、hsa-miR-135a-5p、hsa-miR-135b-3p、hsa-miR-135b-5p、hsa-miR-136-3p、hsa-miR-136-5p、hsa-miR-137、hsa-miR-138-l-3p、hsa-miR-138-2-3p、hsa-miR-138-5p、hsa-miR-139-3p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-140-3p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-143-5p、hsa-miR-144-3p、hsa-miR-144-5p、hsa-miR-145-3p、hsa-miR-145-5p、hsa-miR-1468、hsa-miR-146a-5p、hsa-miR-146b-3p、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-147a、hsa-miR-147b、hsa-miR-148a-5p、hsa-miR-148b-3p、hsa-miR-148b-5p、hsa-miR-149-3p、hsa-miR-149-5p、hsa-miR-150-3p、hsa-miR-150-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-151a-5p、hsa-miR-152、hsa-miR-153、hsa-miR-1538、hsa-miR-1539、hsa-miR-154-3p、hsa-miR-154-5p、hsa-miR-155-5p、hsa-miR-15a-3p、hsa-miR-15a-5p、hsa-miR-15b-3p、hsa-miR-15b-5p、hsa-miR-16-l-3p、hsa-miR-16-2-3p、hsa-miR-17-3p、hsa-miR-17-5p、hsa-miR-181a-2-3p、hsa-miR-181a-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-181c-3p、hsa-miR-181c-5p、hsa-miR-181d、hsa-miR-182-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-183-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-184、hsa-miR-185-3p、hsa-miR-185-5p、hsa-miR-186-3p、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-187-3p、hsa-miR-187-5p、hsa-miR-188-5p、hsa-miR-18a-3p、hsa-miR-18a-5p、hsa-miR-18b-3p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR-190a、hsa-miR-190b、hsa-miR-191-3p、hsa-miR-191-5p、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-192-3p、hsa-miR-193a-3p、hsa-miR-193a-5p、hsa-miR-193b-3p、hsa-miR-193b-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-195-3p、hsa-miR-196a-3p、hsa-miR-196a-5p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-197-3p、hsa-miR-198、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-199a-5p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-199b-5p、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19a-5p、hsa-miR-1909-3p、hsa-miR-191 l-3p、hsa-miR-200a-3p、hsa-miR-200a-5p、hsa-miR-200b-5p、hsa-miR-200c-3p、hsa-miR-200c-5p、hsa-miR-202-3p、hsa-miR-202-5p、hsa-miR-203a、hsa-miR-203b-5p、hsa-miR-204-5p、hsa-miR-205-5p、hsa-miR-206、hsa-miR-208b、hsa-miR-20a-3p、hsa-miR-20b-3p、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-210、hsa-miR-21 l-5p、hsa-miR-2110、hsa-miR-212-3p、hsa-miR-214-3p、hsa-miR-214-5p、hsa-miR-215、hsa-miR-216a-5p、hsa-miR-218-l-3p、hsa-miR-218-5p、hsa-miR-219-1-3p、hsa-miR-219-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-22-5p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-221-5p、hsa-miR-222-3p、hsa-miR-222-5p、hsa-miR-223-5p、hsa-miR-224-3p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-2355-3p、hsa-miR-23a-3p、hsa-miR-23a-5p、hsa-miR-23b-3p、hsa-miR-23b-5p、hsa-miR-24-l-5p、hsa-miR-24-2-5p、hsa-miR-24-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-25-5p、hsa-miR-26a-2-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-26b-3p、hsa-miR-26b-5p、hsa-miR-27a-3p、hsa-miR-27a-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-27b-5p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-28-5p、hsa-miR-296-3p、hsa-miR-296-5p、hsa-miR-297、hsa-miR-298、hsa-miR-299-3p、hsa-miR-299-5p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-29a-5p、hsa-miR-29b-l-5p、hsa-miR-29b-2-5p、hsa-miR-29b-3p、hsa-miR-29c-3p、hsa-miR-29c-5p、hsa-miR-2909、hsa-miR-301a-3p、hsa-miR-301b、hsa-miR-302a-5p、hsa-miR-302b-5p、hsa-miR-302c-5p、hsa-miR-302d-3p、hsa-miR-302d-5p、hsa-miR-302f、hsa-miR-3064-5p、hsa-miR-3065-3p、hsa-miR-3065-5p、hsa-miR-3074-3p、hsa-miR-3074-5p、hsa-miR-30a-3p、hsa-miR-30a-5p、hsa-miR-30b-3p、hsa-miR-30b-5p、hsa-miR-30c-l-3p、hsa-miR-30c-2-3p、hsa-miR-30c-5p、hsa-miR-30d-3p、hsa-miR-30d-5p、hsa-miR-30e-3p、hsa-miR-30e-5p、hsa-miR-31-3p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-3120-3p、hsa-miR-3120-5p、hsa-miR-3184-5p、hsa-miR-32-3p、hsa-miR-32-5p、hsa-miR-320a、hsa-miR-320b、hsa-miR-320c、hsa-miR-323a-3p、hsa-miR-323b-5p、hsa-miR-324-3p、hsa-miR-324-5p、hsa-miR-325、hsa-miR-326、hsa-miR-328、hsa-miR-329、hsa-miR-330-3p、hsa-miR-330-5p、hsa-miR-331-3p、hsa-miR-331-5p、hsa-miR-335-3p、hsa-miR-335-5p、hsa-miR-337-3p、hsa-miR-337-5p、hsa-miR-338-3p、hsa-miR-338-5p、hsa-miR-339-3p、hsa-miR-339-5p、hsa-miR-33a-5p、hsa-miR-33b-3p、hsa-miR-33b-5p、hsa-miR-340-3p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-342-3p、hsa-miR-342-5p、hsa-miR-345-5p、hsa-miR-346、hsa-miR-34a-3p、hsa-miR-34a-5p、hsa-miR-34b-3p、hsa-miR-34b-5p、hsa-miR-34c-3p、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-3591-3p、hsa-miR-361-3p、hsa-miR-361-5p、hsa-miR-3613-5p、hsa-miR-3615、hsa-miR-3619、hsa-miR-362-3p、hsa-miR-362-5p、hsa-miR-363-3p、hsa-miR-363-5p、hsa-mir-365a-3p、hsa-mir-365a-5p、hsa-mir-3653、hsa-miR-3656、hsa-miR-367-3p、hsa-miR-367-5p、hsa-miR-3676-3p、hsa-miR-369-3p、hsa-miR-369-5p、hsa-miR-370、hsa-miR-372、hsa-miR-373-3p、hsa-miR-373-5p、hsa-miR-374a-3p、hsa-miR-374a-5p、hsa-miR-374b-3p、hsa-miR-374b-5p、hsa-miR-375、hsa-miR-376a-2-5p、hsa-miR-376a-3p、hsa-miR-376a-5p、hsa-miR-376b-3p、hsa-miR-376c-3p、hsa-miR-377-3p、hsa-miR-377-5p、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-378a-5p、hsa-miR-378c、hsa-miR-378d、hsa-miR-379-3p、hsa-miR-379-5p、hsa-miR-380-3p、hsa-miR-380-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-382-3p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-383、hsa-miR-384、hsa-miR-3912、hsa-miR-3928、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-409-5p、hsa-miR-410、hsa-miR-41 l-3p、hsa-miR-41 l-5p、hsa-miR-412、hsa-miR-421、hsa-miR-422a、hsa-miR-423-3p、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-424-3p、hsa-miR-424-5p、hsa-miR-425-3p、hsa-miR-425-5p、hsa-miR-429、hsa-miR-4291、hsa-miR-431-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-433、hsa-miR-4421、hsa-miR-449a、hsa-miR-450a-5p、hsa-miR-450b-3p、hsa-miR-450b-5p、hsa-miR-4505、hsa-miR-4510、hsa-miR-4516、hsa-miR-451a、hsa-miR-452-3p、hsa-miR-452-5p、hsa-miR-4533、hsa-miR-4539、hsa-miR-454-3p、hsa-miR-454-5p、hsa-miR-455-3p、hsa-miR-455-5p、hsa-miR-4634、hsa-miR-4732-3p、hsa-miR-4732-5p、hsa-miR-4747-5p、hsa-miR-4792、hsa-miR-483-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-484、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-486-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-489、hsa-miR-490、hsa-miR-491-3p、hsa-miR-491-5p、hsa-miR-492、hsa-miR-493-3p、hsa-miR-493-5p、hsa-miR-494、hsa-miR-495-3p、hsa-miR-496、hsa-miR-497-3p、hsa-miR-497-5p、hsa-miR-498、hsa-miR-499a-5p、hsa-miR-500a-3p、hsa-miR-501-3p、hsa-miR-501-5p、hsa-miR-502-3p、hsa-miR-502-5p、hsa-miR-503-5p、hsa-miR-504、hsa-miR-505-3p、hsa-miR-505-5p、hsa-miR-506-3p、hsa-miR-508-3p、hsa-miR-508-5p、hsa-miR-509-3p、hsa-miR-511、hsa-miR-512-5p、hsa-miR-513a-3p、hsa-miR-513a-5p、hsa-miR-513b、hsa-miR-514a-3p、hsa-miR-514a-5p、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-516b-3p、hsa-miR-516b-5p、hsa-miR-517a-3p、hsa-miR-518a-3p、hsa-miR-518b、hsa-miR-518e-3p、hsa-miR-518e-5p、hsa-miR-518f-3p、hsa-miR-519a-5p、hsa-miR-519b-5p、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-519c-5p、hsa-miR-519d、hsa-miR-519e-5p、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-520e、hsa-miR-520f、hsa-miR-520g、hsa-miR-520h、hsa-miR-521、hsa-miR-522-5p、hsa-miR-523-5p、hsa-miR-525-3p、hsa-miR-532-3p、hsa-miR-532-5p、hsa-miR-539-5p、hsa-miR-541、hsa-miR-542-3p、hsa-miR-542-5p、hsa-miR-543、hsa-miR-545-3p、hsa-miR-545-5p、hsa-miR-548a-3p、hsa-miR-548d-3p、hsa-miR-548e、hsa-miR-548i、hsa-miR-548m、hsa-miR-549、hsa-miR-550a-3p、hsa-miR-550a-5p、hsa-miR-551b-3p、hsa-miR-551b-5p、hsa-miR-552、hsa-miR-553、hsa-miR-554、hsa-miR-557、hsa-miR-563、hsa-miR-564、hsa-miR-567、hsa-miR-569、hsa-miR-570-3p、hsa-miR-571、hsa-miR-572、hsa-miR-574-3p、hsa-miR-574-5p、hsa-miR-575、hsa-miR-576-3p、hsa-miR-576-5p、hsa-miR-577、hsa-miR-578、hsa-miR-580、hsa-miR-582-3p、hsa-miR-582-5p、hsa-miR-583、hsa-miR-584-5p、hsa-miR-585、hsa-miR-586、hsa-miR-589-3p、hsa-miR-589-5p、hsa-miR-590-3p、hsa-miR-590-5p、hsa-miR-593-3p、hsa-miR-593-5p、hsa-miR-595、hsa-miR-598、hsa-miR-601、hsa-miR-602、hsa-miR-603、hsa-miR-606、hsa-miR-608、hsa-miR-609、hsa-miR-611、hsa-miR-612、hsa-miR-613、hsa-miR-615-3p、hsa-miR-615-5p、hsa-miR-616-5p、hsa-miR-618、hsa-miR-619、hsa-miR-620、hsa-miR-623、hsa-miR-625-5p、hsa-miR-626、hsa-miR-627、hsa-miR-628-3p、hsa-miR-628-5p、hsa-miR-629-3p、hsa-miR-629-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-631、hsa-miR-634、hsa-miR-635、hsa-miR-636、hsa-miR-638、hsa-miR-639、hsa-miR-641、hsa-miR-642a-3p、hsa-miR-642a-5p、hsa-miR-643、hsa-miR-645、hsa-miR-646、hsa-miR-647、hsa-miR-649、hsa-miR-650、hsa-miR-651、hsa-miR-652-3p、hsa-miR-653、hsa-miR-654-3p、hsa-miR-655、hsa-miR-656、hsa-miR-657、hsa-miR-658、hsa-miR-659-3p、hsa-miR-660-5p、hsa-miR-663a、hsa-miR-663b、hsa-miR-664a-3p、hsa-miR-664a-5p、hsa-miR-668、hsa-miR-671-5p、hsa-miR-675-3p、hsa-miR-675-5p、hsa-miR-7-l-3p、hsa-miR-7-2-3p、hsa-miR-7-5p、hsa-miR-708-3p、hsa-miR-708-5p、hsa-miR-718、hsa-miR-744-3p、hsa-miR-744-5p、hsa-miR-761、hsa-miR-765、hsa-miR-766、hsa-miR-767-3p、hsa-miR-769-3p、hsa-miR-769-5p、hsa-miR-770-5p、hsa-miR-874、hsa-miR-875、hsa-miR-876、hsa-miR-877-3p、hsa-miR-877-5p、hsa-miR-885-3p、hsa-miR-887、hsa-miR-888-3p、hsa-miR-889、hsa-miR-890、hsa-miR-891a、hsa-miR-891b、hsa-miR-9-3p、hsa-miR-9-5p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-92b-3p、hsa-miR-92b-5p、hsa-miR-921、hsa-miR-922、hsa-miR-93-3p、hsa-miR-93-5p、hsa-miR-935、hsa-miR-940、hsa-miR-941、hsa-miR-942、hsa-miR-95、hsa-miR-96-3p、hsa-miR-96-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-miR-99a-3p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-99b-3p、及び/又はhsa-miR-99b-5pが挙げられる。これらのmiRNAの配列は、当業界で周知であり、例えば、mirbase.orgでワールドワイドウェブ上に見出すことができる。
【0114】
上記一覧に由来する好適なmiRNAの例としては、hsa-miR-155、hsa-miR-155-inh、hsa-miR-181-B1、hsa-miR-15a、hsa-miR-16-1、hsa-miR-21、hsa-miR-34a、hsa-miR-221及びhsa-miR-29aが挙げられる。
【0115】
ある例では、「阻害的オリゴヌクレオチド」は、1つ又は複数のmiRNAの活性を模倣する。本明細書で使用される用語「miRNA模倣体」とは、細胞中に導入された場合、内因性成熟miRNA分子を模倣するように設計された小さい二本鎖RNA分子を指す。miRNA模倣体を、Sigma Aldrich社及びThermo Fisher Scientific社等の様々な供給業者から取得することができる。
【0116】
別の例では、「阻害的オリゴヌクレオチド」は、1つ又は複数のmiRNAの活性を阻害する。様々なmiRNA種が、この目的にとって好適である。例としては、限定されるものではないが、アンタゴミール、干渉RNA、リボザイム、miRNAスポンジ及びmiRマスクが挙げられる。本開示の文脈で使用される用語「アンタゴミール」は、標的miRNAに結合し、miRNAのその同族遺伝子標的への結合を防止することによってmiRNA機能を阻害する化学的に改変されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。アンタゴミールは、当業界で公知の任意の塩基改変を含んでもよい。ある例では、上で参照されたmiRNA種は、約10~50ヌクレオチド長である。例えば、アンタゴミールは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド長のアンチセンス部分を有してもよい。
【0117】
ある例では、miRNA種は、それぞれ、少なくとも1個のヌクレオチドから構成される、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するキメラオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、1つ又は複数の有益な特性(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増大、細胞への取込みの増加、標的に対する結合親和性の増大等)を付与する改変ヌクレオチドの少なくとも1つの領域及びRNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素のための基質である領域を含有する。
【0118】
ある例では、本開示により包含される核酸は、合成のものである。用語「合成核酸」は、核酸が天然に存在する核酸の化学構造又は配列を有しないことを意味する。合成ヌクレオチドは、DNA又はRNA分子等の操作された核酸を含む。しかしながら、細胞に投与された合成核酸は、続いて、その構造又は配列が、成熟miRNA配列等の、非合成の、又は天然に存在する核酸と同じであるように細胞中で改変又は変化され得ることが企図される。例えば、合成核酸は、miRNA前駆体の配列とは異なるが、細胞中で変化したら、内因性のプロセシングされたmiRNAと同じである配列を有してもよい。結果として、用語「合成miRNA」は、天然に存在するmiRNAとして、細胞中で、又は生理的条件下で機能する「合成核酸」を指すことが理解されるであろう。別の例では、核酸構造を、3'-エンド(North)コンフォメーションにあるリボースを、A型コンフォメーションの核酸にロックするために、2'酸素と4'炭素との間にメチレン架橋を有するロックド核酸(LNA)に改変することもできる(Lennoxら、2011; Baderら、2011)。miRNAの文脈では、この改変は、分子の標的特異性と、ハイブリダイゼーション特性の両方を有意に増加させることができる。
【0119】
本明細書に開示される方法における使用のための核酸を、必要に応じて日常的な方法を使用して設計することができる。例えば、阻害的オリゴヌクレオチドの文脈では、種配列内に又はそれとすぐ隣接して少なくとも5個の連続するヌクレオチドのストレッチを含む5、6、7、8、9、10個又はそれより多いヌクレオチドの標的セグメントは、遺伝子を標的化するのに好適であると考えられる。例示的な標的セグメントは、1つの種配列の5'末端から少なくとも5個の連続するヌクレオチドを含む配列を含んでもよい(残りのヌクレオチドは、種配列の5'末端のすぐ上流から始まり、核酸が約5~約30個のヌクレオチドを含有するまで続く同じRNAの連続するストレッチである)。別の例では、標的セグメントは、1つの種配列の3'末端から少なくとも5個の連続するヌクレオチドを含むRNA配列によって表される(残りのヌクレオチドは、標的セグメントの3'末端のすぐ下流から始まり、核酸が約5~約30個のヌクレオチドを含有するまで続く同じRNAの連続するストレッチである)。本開示の文脈で使用される用語「種配列」は、標的特異性の重要な決定基であるmiRNA(すなわち、種配列)の5'末端の最初の8ヌクレオチド(nt)以内の6~8nt長の部分配列を指す。1つ又は複数の標的領域、セグメント又は部位を同定したら、標的と十分に相補的である、すなわち、所望の効果を与えるために、十分によく、また十分な特異性でハイブリダイズする(すなわち、他の非標的核酸配列に実質的に結合しない)阻害的核酸化合物を選択する。
【0120】
改変
本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、上で参照された核酸を導入することができる。本開示の文脈で使用される用語「導入された」は、本開示による間葉系前駆細胞又は幹細胞の核又は細胞質への核酸の導入を指す。
【0121】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、核酸が人工的操作の任意の好適な手段によって細胞中に移入された場合、又は細胞が核酸を継承した元々変化した細胞の子孫である場合、「改変された」と考えられる。
【0122】
「遺伝的に変化した」、「トランスフェクトされた」、「形質導入された」又は「遺伝的に形質転換された」等の用語は、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を指すように本開示の文脈で互換的に使用することもできる。間葉系前駆細胞又は幹細胞を、安定的又は一過的な様式で改変することができる。
【0123】
ある例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20の核酸、例えば、siRNA又はmiRNAを導入することができる。例えば、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11 siRNA、KRAS siRNA、PLK1 siRNA又はその組合せを導入することができる。例えば、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11 siRNAを導入することができる。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、配列番号1(NCBI参照番号NM_004523.3)に示されるKIF11 mRNAの5'末端に対して結合するKIF11 siRNAを導入することができる。ある例では、KIF11 siRNAは、5'末端から800bpと3,600bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から900bpと3,200bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から900bpと2,500bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から3,200bpより前でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から3,600bpの後でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から4,000bpの後でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から3,600bpと5101bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から4,600bpと5101bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。
【0124】
別の例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_4 siRNAを導入することができる。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_6を導入することができる。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_9を導入することができる。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_8、KIF11_9、KIF11_6、KIF11_12、KIF11_7又はKIF11_4のうちの1つ又は複数を導入することができる。
【0125】
別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から800bpと4,800bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から900bpと4,800bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_8、KIF11_9、KIF11_6、KIF11_12、KIF11_7、KIF11_4、KIF11_15又はKIF11_13のうちの1つ又は複数を導入することができる。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、KIF11_15又はKIF11_13を導入することができる。
【0126】
上で参照されたKIF11 siRNAに関する配列の詳細は、以下のTable 1(表1)に示される。
【0127】
【表1】
【0128】
別の例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、hsa-miR-let7b、hsa-miR-155、hsa-miR-155-inh、hsa-miR-181-B1、hsa-miR-15a、hsa-miR-16-1、hsa-miR-21、hsa-miR-34a、hsa-miR-221、hsa-miR-29a又はその組合せを導入するように改変されていてもよい。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、間葉系前駆細胞又は幹細胞と比較して標的細胞を優先的に殺滅するオリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変されている。
【0129】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、標的細胞を殺滅するが、間葉系前駆細胞又は幹細胞の生存能力には実質的に影響しないオリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変されている。
【0130】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、それらがオリゴヌクレオチドをがん細胞等の標的細胞に送達することができる前に間葉系前駆細胞又は幹細胞を殺滅しないオリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変されている。
【0131】
ある例では、本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変して、上で参照された核酸を発現するベクターを導入することができる。細胞中での発現のためのいくつかのベクターが、当業界で公知である。ベクター成分は、一般的には、限定されるものではないが、以下のもの:シグナル配列、オリゴヌクレオチド等の核酸をコードする配列、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数を含む。
【0132】
例示的な発現ベクターとしては、プラスミド、ファージ、自己複製配列(ARS)、ウイルス、セントロメア、人工染色体、染色体、又は本開示による間葉系前駆細胞若しくは幹細胞中の核酸を発現することができる他の構造が挙げられる。
【0133】
間葉系前駆細胞又は幹細胞中にトランスフェクトするための好適なベクタープラスミドとしては、米国特許第5,578,475号;第6,020,202号;及び第6,051,429号に記載のもの等の脂質/DNA複合体が挙げられる。DNA-脂質複合体を作製するための好適な試薬としては、リポフェクタミン(Gibco社/Life Technologies社、#11668019)及びFuGENE(商標)6(Roche Diagnostics Corp.社、#1814443);並びにLipoTAXI(商標)(Invitrogen Corp.社、#204110)が挙げられる。
【0134】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、ウイルス発現ベクターを使用して、オリゴヌクレオチドを導入するように改変されている。例示的なウイルス発現ベクターとしては、レンチウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)等の組換え形態並びに自己相補的AAV(scAAV)及び非組込みAV等のその誘導体を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)が挙げられる。
【0135】
ある例では、ウイルスベクターは、複製欠損である。この例では、複製遺伝子は、欠失されるか、又は高活性プロモーターを有する発現カセットと置き換えられる。例えば、AVの文脈では、E1/E3遺伝子を欠失させるか、又は置き換えることができる。AAVの文脈では、E1A及びE1B遺伝子を欠失させるか、又は置き換えることができる。例示的な高活性プロモーターとしては、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、ヒトベータアクチン、CAG、TRE、UAS及びAc5が挙げられる。
【0136】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、AVベクター又はその組換え型を使用してオリゴヌクレオチドを導入するように改変されている。様々なAV血清型が、オリゴヌクレオチドを導入するために間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するのに好適であり得る。ある例では、AV血清型1(AV1)が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AV2が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。他の例では、AV3、AV4、AV7、AV8、AV9、AV10、AV11、AV12又はAV13が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AV5が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AV6が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。
【0137】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、AAVベクター又はその組換え型を使用してオリゴヌクレオチドを導入するように改変されている。様々なAAV血清型が、オリゴヌクレオチドを導入するために間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するのに好適であり得る。
【0138】
ある例では、AAV血清型1(AAV1)が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AAV2が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。他の例では、AAV3、AAV4、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12又はAAV13が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AAV5が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。別の例では、AAV6が、間葉系前駆細胞又は幹細胞を改変するために使用される。
【0139】
最適なベクターを、当業界で公知の様々な技術を使用して同定することができる。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する様々なベクターと接触させる/間葉系前駆細胞又は幹細胞に、それをトランスフェクトすることができる。この例では、最適なベクターを、トランスフェクション/形質導入効率、GFP発現レベル、向細胞性、及び/又はGFP発現の持続性に基づいて同定することができる。
【0140】
ウイルス形質導入の方法は、当業界で公知である(例えば、米国特許第6,723,561号; 第6,627,442号)。様々なウイルス発現ベクター系は、Miltenyi Biotech社(MACSductin), Sigma-Aldrich社(ExpressMag)及びThermo Fisher Scientific社(ViraPower)等の商業的供給業者からも入手可能である。
【0141】
改変の効率が100%であることは稀であり、通常は、上手く改変された細胞について集団を富化することが望ましい。ある例では、改変された細胞を、新しい遺伝子型の機能的特徴を利用することによって富化することができる。改変された細胞を富化する1つの例示的な方法は、ネオマイシン等の薬物に対する耐性を使用する陽性選択である。
【0142】
ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、標的細胞の生存能力を低下させるのに十分なレベルのオリゴヌクレオチドを含む。ある例では、標的細胞は、がん細胞である。したがって、ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、がん細胞の生存能力を低下させるのに十分なレベルのオリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも0.25nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも0.3nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.4nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも0.5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも1nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも3nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.25~5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~4nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、0.5~3.5nMの阻害的オリゴヌクレオチドの標的細胞への移入を行うのに十分なレベルの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。
【0143】
別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも100nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも200nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも300nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも400nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも500nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも600nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも700nMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも1μMの阻害的オリゴヌクレオチドを含む。
【0144】
標的細胞への送達
本発明者らは、間葉系前駆細胞又は幹細胞が、核酸をがん細胞に移入させることができることを同定した。したがって、ある例では、本開示は、上で参照された核酸と、上で参照された核酸又はそれを発現するベクターを導入するように改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞とを接触させることによって、それらを標的細胞に送達する方法を包含する。疑いを避けるために、標的細胞に送達される核酸は、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞に導入される核酸である。
【0145】
本開示の文脈で使用される用語「接触させること」は、「直接的」又は「間接的」接触を指す。本開示の文脈で使用される「直接的接触」は、標的細胞と、核酸の移入を容易にする改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞との物理的接触を指す。例えば、標的細胞と、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞とは、共通のコネキシン(すなわち、標的細胞と、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞の両方によって発現されるコネキシン)により直接的に接触してもよい。この例では、共通のコネキシンは、ギャップ結合を介した、間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の、標的細胞への移入を容易にする。したがって、ある例では、接触は、間葉系前駆細胞又は幹細胞が標的細胞とギャップ結合を形成するのを可能にする条件下で起こり、それによって、核酸は、ギャップ結合を横断することによって標的細胞に送達される。ある例では、ギャップ結合は、Cx40によって形成される。別の例では、ギャップ結合は、Cx43によって形成される。別の例では、ギャップ結合は、Cx45、Cx32及び/又はCx37によって形成される。
【0146】
本開示の文脈で使用される「間接的接触」は、直接的接触がない、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の、標的細胞への送達を指す。例えば、標的細胞にごく近い改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、標的細胞と間接的に接触してもよい。ある例では、標的細胞と間接的接触にある改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、エキソソームにより核酸を標的細胞に送達することができる。
【0147】
別の例では、標的細胞と直接的接触にある改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、共通のコネキシンにより、及びエキソソームにより間接的に、核酸を標的細胞に送達することができる。
【0148】
改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞から核酸を受け取る標的細胞は、それらが改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞によって直接的又は間接的に接触され、核酸の移入を容易にする限り特に限定されない。例示的な標的細胞としては、合胞体組織中の細胞が挙げられる。本開示の文脈で使用される用語「合胞体」とは、活動電位において電気的に同調した、ギャップ結合を有する特殊化された膜によって相互接続された細胞から構成される組織を指す。例示的な合胞体細胞としては、心筋細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、結合組織細胞及び合胞体がん細胞が挙げられる。ある例では、標的細胞は、免疫細胞である。例えば、標的細胞は、白血球であってもよい。
【0149】
ある例では、標的細胞は、がん細胞である。例えば、標的細胞は、膵がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、肺がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、子宮頸がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、結腸直腸がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、肝臓がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、骨がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、骨肉腫細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、前立腺がん細胞であってもよい。別の例では、標的細胞は、黒色腫細胞であってもよい。
【0150】
別の例では、標的細胞は、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞と共通のコネキシンを有する。ある例では、標的細胞は、Cx40を発現する。別の例では、標的細胞は、Cx43を発現する。別の例では、標的細胞は、Cx45、Cx32及び/又はCx37を発現する。
【0151】
改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の標的細胞への送達を、in vitro又はin vivoで容易にすることができる。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の標的細胞への送達を、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を標的細胞と共に同時培養することによってin vitroで容易にすることができる。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の標的細胞への送達を、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を対象に投与することによってin vivoで容易にすることができる。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、例えば、静脈内、動脈内、又は腹腔内投与等によって全身に投与することができる。間葉系前駆細胞又は幹細胞を、鼻内、筋肉内又は心臓内投与によって投与することもできる。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、周囲の組織等の標的細胞にごく近い部位に投与される。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、標的細胞を含む組織中に直接的に投与される。
【0152】
処置方法
一例では、本開示による組成物を、がんの処置のために投与することができる。用語「がん」とは、典型的には、未制御の細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指す、又は説明する。がんの例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が挙げられる。そのようながんのより特定の例としては、限定されるものではないが、扁平上皮がん(例えば、扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がん及び消化管間質がんを含む胃(gastric)又は胃(stomach)がん、膵がん、グリア芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿路のがん、肝がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん又は腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症と関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連するもの等)、メーグス症候群、脳、並びに頭頸部がん、及び関連する転移が挙げられる。
【0153】
ある例では、がんは、KRASにおける腫瘍形成性G12D突然変異を有する。当業者であれば、G12D突然変異がコドン12中に存在する単一ヌクレオチド点突然変異であることを理解できる。例えば、がんを、KRAS中に腫瘍形成性G12D突然変異を有する結腸がん、肺がん、黒色腫、肝臓がん及び骨肉腫からなる群から選択することができる。
【0154】
ある例では、がんは、膵がんである。別の例では、がんは、肺がんである。別の例では、がんは、子宮頸がんである。別の例では、がんは、結腸直腸がんである。別の例では、がんは、肝臓がんである。別の例では、がんは、骨肉腫である。別の例では、がんは、前立腺がんである。別の例では、がんは、黒色腫である。
【0155】
別の例では、本開示に従って処置されるがんは、本開示による間葉系前駆細胞又は肝細胞と共通のコネキシンを共有する細胞を含む。この例では、共通のコネキシンは、間葉系前駆細胞又は幹細胞に由来する核酸の、がん細胞への移入を容易にする。
【0156】
ある例では、がんは、Cx40を発現する細胞を含む。別の例では、がんは、Cx43を発現する細胞を含む。別の例では、がんは、Cx40とCx43とを発現する細胞を含む。
【0157】
改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞の保存及び/又はホーミングの改善
一態様では、本明細書で定義される間葉系前駆細胞又は幹細胞は、その細胞表面グリカンを改変するために処理されている。CD44等の細胞表面タンパク質上のグリカンの改変は、炎症部位の微小血管上でin vivoで発現されるE-セレクチン分子に結合することができるE-セレクチンリガンドを創出することが示されている。このように、間葉系前駆細胞又は幹細胞上の細胞表面グリカンの改変は、in vivoで組織損傷の部位への間葉系前駆細胞又は幹細胞のホーミングを改善する。
【0158】
本発明者らはまた、細胞表面グリカンのグリコシルトランスフェラーゼ媒介性改変は、凍結保存後の細胞生存能力を改善する(すなわち、より多くの細胞が凍結解凍サイクル後に生存する)ことも同定した。したがって、ある例では、本開示は、細胞上の細胞表面グリカンを改変する条件下でグリコシルトランスフェラーゼ(E.C 2.4)で処理された間葉系前駆細胞又は幹細胞の凍結保存された集団を包含する。別の例では、本開示は、間葉系前駆細胞又は幹細胞を凍結保存する方法であって、間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を、細胞上の細胞表面グリカンの改変をもたらす条件下でグリコシルトランスフェラーゼで処理する工程、及び組成物中の細胞を凍結保存する工程を含む方法を包含する。別の例では、本開示は、治療的細胞を生産する方法であって、間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団を、細胞上の細胞表面グリカンの改変をもたらす条件下でグリコシルトランスフェラーゼで処理する工程、及び組成物中の細胞を凍結保存する工程を含む方法を包含する。
【0159】
ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞の「処理」は、グリコシルトランスフェラーゼが酵素活性を有する条件下で、細胞と、グリコシルトランスフェラーゼとを接触させることを含む。この例では、グリコシルトランスフェラーゼは、間葉系前駆細胞又は幹細胞上の細胞表面グリカンを改変する。細胞表面グリカン改変の例は、フコシル化である。ある例では、CD44が改変される。別の例では、CD14が改変される。別の例では、CD44、CD14、CD3及びCD19のうちの1つ又は複数が改変される。
【0160】
ある例では、表面グリカン改変は、フローサイトメトリーを使用して同定される。この例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも1 log規模高い、フコシル化された細胞表面グリカンの発現を有する。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも2 log規模高い、フコシル化された細胞表面グリカンの発現を有する。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも3 log規模高い、フコシル化された細胞表面グリカンの発現を有する。例えば、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも1 log規模高い、フコシル化されたCD14の発現を有してもよい。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも2 log規模高い、フコシル化されたCD14の発現を有する。別の例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、未処理の間葉系前駆細胞よりも3 log規模高い、フコシル化されたCD14の発現を有する。
【0161】
ある例では、「処理」は、ヌクレオチド糖ドナー基質の存在下で、間葉系前駆細胞又は幹細胞と、グリコシルトランスフェラーゼとを接触させることを含む。好適なドナー基質としては、フコース、ガラクトース、シアル酸、又はN-アセチルグルコサミンが挙げられる。例えば、基質は、GDP-フコースであってもよい。
【0162】
例えば、処理は、間葉系前駆細胞又は幹細胞の集団と、フコシルトランスフェラーゼ等の外因性グリコシルトランスフェラーゼとを接触させることを含んでもよい。この例では、グリコシルトランスフェラーゼを、間葉系前駆細胞又は幹細胞を含む細胞培養培地又は他の生理的に許容される溶液に添加することができる。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、グリコシルトランスフェラーゼを含む培地中で培養することができる。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、グリコシルトランスフェラーゼを含む培養培地中に懸濁される。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、培養物から解離し、グリコシルトランスフェラーゼを含む好適な培地中に再懸濁することができる。ある例では、細胞を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用して解離することができる。別の例では、細胞を、トリプシンのみ、又はEDTAと組み合わせたトリプシン等のプロテアーゼを使用して解離することができる。
【0163】
ある例では、細胞培養培地は、少なくとも1.8μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、少なくとも2.0μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、少なくとも2.5μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、2~15μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、2~10μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、2~5μgのグリコシルトランスフェラーゼを含む。ある例では、細胞培養培地は、少なくとも1.8μgのフコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、少なくとも2.0μgのフコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、少なくとも2.5μgのフコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、2~15μgのフコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、細胞培養培地は、2~10μgのフコシルトランスフェラーゼを含む。別の例では、2~5μgのフコシルトランスフェラーゼを、細胞培養培地に添加する。これらの例では、グリコシルトランスフェラーゼを、30μlの反応容量で、約5×105個の間葉系前駆細胞又は幹細胞に提供することができる。
【0164】
例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、エキソフコシル化として知られるプロセスにおいて外因性グリコシルトランスフェラーゼで処理することができる。この実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼを、低レベルの二価金属コファクターを有する生理的に許容される溶液中に提供することができる。様々な実施形態では、生理的に許容される溶液は緩衝化される。生理的に許容される溶液は、例えば、ハンクス平衡塩溶液、ダルベッコ改変イーグル培地、グッド緩衝剤(N. E. Good、G. D. Winget、W. Winter、T N. Conolly、S. Izawa及びR. M. M. Singh、Biochemistry 5、467頁(1966); N. E. Good、S. Izawa、Methods Enzymol. 24、62頁(1972)を参照されたい)、例えば、HEPES緩衝剤、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝剤、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。
【0165】
ある例では、生理的に許容される溶液は、グリセロールを実質的に含まない。
【0166】
別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、グリコシルトランスフェラーゼを発現するように細胞を改変することによって、グリコシルトランスフェラーゼで処理される。例えば、グリコシルトランスフェラーゼを、間葉系前駆細胞又は幹細胞によって細胞内で生成させることができる。この実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を、間葉系前駆細胞又は幹細胞中に導入する。次いで、間葉系前駆細胞又は幹細胞によってグリコシルトランスフェラーゼを発現させて、その表面グリカンの改変を生じさせる。
【0167】
間葉系前駆細胞又は幹細胞は、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸が人工的操作の任意の好適な手段によって細胞中に移入された場合、又は細胞がグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を担持する元々変化した細胞の子孫である場合、「グリコシルトランスフェラーゼを発現するように遺伝的に改変された」と考えられる。細胞を、グリコシルトランスフェラーゼを発現するように安定的又は一過的に改変することができる。
【0168】
ある例では、遺伝的に改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞中でのグリコシルトランスフェラーゼの発現は、in vivoの炎症部位での細胞の保持の増強をもたらす。例えば、遺伝的に改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を、腫瘍又はその転移において保持することができる。別の例では、遺伝的に改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を、臓器移植拒絶の部位で保持することができる。別の例では、遺伝的に改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を、梗塞心臓等の傷害部位で保持することができる。遺伝的に改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞がin vivoの炎症部位で保持されるかどうかを決定するために様々な方法が利用可能である。ある例では、細胞を、放射性トレーサー又は他の好適な標識を使用してin vivoで画像化する。
【0169】
間葉系前駆細胞又は幹細胞を、当業界で公知の様々な方法を使用して遺伝的に改変することができる。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、in vitroでウイルスベクターで処理する。核酸の細胞への送達のために、遺伝的に改変されたウイルスが広く適用されている。本明細書に記載の細胞の遺伝的改変のための例示的なウイルスベクターとしては、ガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルス、マウス白血病ウイルス(MLV又はMuLV)、及びアデノウイルス等のレトロウイルスベクターが挙げられる。例えば、ウイルスを、間葉系前駆細胞又は幹細胞培養培地に添加することができる。非ウイルス方法を用いることもできる。例としては、プラスミド移入及びインテグラーゼ又はトランスポザーゼ技術の使用による標的遺伝子組込みの適用、リポソーム又はタンパク質形質導入ドメイン媒介性送達及びエレクトロポレーション等の物理的方法が挙げられる。
【0170】
遺伝的改変の効率が100%であることは稀であり、通常は、上手く改変された細胞について集団を富化することが望ましい。ある例では、改変された細胞を、新しい遺伝子型の機能的特徴を利用することによって富化することができる。改変された細胞を富化する1つの例示的な方法は、ネオマイシン等の薬物に対する耐性を使用する陽性選択又はlacZの発現に基づく比色選択である。
【0171】
様々な実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、1より多いグリコシルトランスフェラーゼ及びその適切なドナー基質(例えば、糖)と接触させる。例えば、細胞を、2つのグリコシルトランスフェラーゼと同時的又は連続的に接触させ、それぞれ、異なる単糖を適切な結合において(伸長)コアグリカン構造に付加する。別の例では、遺伝的に改変された細胞は、2つのグリコシルトランスフェラーゼを発現する。
【0172】
一実施形態では、処理された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、CD44、例えば、アルファ(2,3)シアル化CD44を発現する。別の実施形態では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、CD34もPSGL-1も発現しない。ある例では、処理された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、E-セレクチン及び/又はL-セレクチンに結合する。ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、P-セレクチンに結合しない。
【0173】
別の例では、CD14は、処理された間葉系前駆細胞又は幹細胞上でフコシル化される。別の例では、CD14及びCD3は、処理された間葉系前駆細胞又は幹細胞上でフコシル化される。
【0174】
一実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、37℃、pH6.5で、1分あたり1.0ミリモルの糖を転移することができる。
【0175】
ある例では、グリコシルトランスフェラーゼは、フコシルトランスフェラーゼ(L-フコース糖の転移を触媒する)である。別の例では、グリコシルトランスフェラーゼは、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼ、例えば、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIII、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIV、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVI、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVII、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼIX、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼX、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼXIである。例えば、細胞を、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVIIで処理することができる。別の例では、細胞を、アルファ1,3フコシルトランスフェラーゼVIで処理することができる。これらの例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞のフコシル化を、E-セレクチン等のセレクチンに結合する処理された細胞の能力の増大及び/又は処理された細胞の、限定されるものではないが、HECA-452等のsLeXに結合することが当業界で公知の抗体との反応性の増大を検出することによって同定することができる。
【0176】
別の例では、グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼ(ガラクトースの転移を触媒する)である。別の例では、グリコシルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼ(シアル酸の転移を触媒する)である。
【0177】
細胞組成物
本開示の方法の実施において、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、組成物の形態で投与することができる。
【0178】
本開示による例示的な組成物は、siRNA若しくはmiRNA又はそれを発現するベクターを導入するように改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含んでもよい。例えば、本開示による組成物は、KIF11 siRNA、KRAS siRNA、PLK1 siRNA、その組合せ又はそれを発現するベクターを導入するように改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含んでもよい。
【0179】
ある例では、組成物は、5'末端から800bpと3,600bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合するKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から900bpと3,200bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合するKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から900bpと2,500bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合するKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から3,200bpより前でKIF11 mRNA転写物に結合するKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。これらの例では、KIF11 mRNA転写物は、配列番号1(NCBI参照番号NM_004523.3)に示される。
【0180】
ある例では、組成物は、KIF11_4を導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、KIF11_6を導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、KIF11_9を導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、KIF11_8、KIF11_9、KIF11_6、KIF11_12、KIF11_7又はKIF11_4のうちの1つ又は複数を導入するように改変された幹細胞を含む。
【0181】
別の例では、組成物は、5'末端から800bpと4,800bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から900bpと4,800bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から3,600bpより前でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から3,600bpの後でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物は、5'末端から4,000bpの後でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、KIF11 siRNAは、5'末端から3,600bpと5101bpの間でKIF11 mRNA転写物に結合する。別の例では、組成物は、5'末端から4,600bpと5101bpとの間でKIF11 mRNA転写物に結合する1つ又は複数のKIF11 siRNAを導入するように改変された幹細胞を含む。
【0182】
別の例では、組成物は、KIF11_8、KIF11_9、KIF11_6、KIF11_12、KIF11_7、KIF11_4、KIF11_15又はKIF11_13のうちの1つ又は複数を導入するように改変された幹細胞を含む。別の例では、組成物はKIF11_15又はKIF11_13のうちの一方又は両方を導入するように改変された幹細胞を含む。
【0183】
上で参照されたKIF11 siRNAに関する配列の詳細は、上のTable 1(表1)に示される。
【0184】
他の例では、本開示による組成物は、上で参照されたmiRNA、その組合せ又はそれを発現するベクターを導入するように改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含んでもよい。例えば、本開示による組成物は、hsa-miR-let7b、hsa-miR-155、hsa-miR-155-inh、hsa-miR-181-B1、hsa-miR-15a、hsa-miR-16-1、hsa-miR-21、hsa-miR-34a、hsa-miR-221、hsa-miR-29、その組合せ又はそれを発現するベクターを導入するように改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞を含んでもよい。
【0185】
別の例では、本開示による組成物は、間葉系前駆細胞又は幹細胞が少なくとも1つの型の阻害的オリゴヌクレオチドをがん細胞等の標的細胞に送達することができる前にそれらを殺滅しない阻害的オリゴヌクレオチド又はそれを発現するベクターを導入するように改変された、間葉系前駆細胞又は幹細胞を含んでもよい。
【0186】
一例では、そのような組成物は、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。
【0187】
用語「担体」及び「賦形剤」とは、活性化合物の保存、投与、及び/又は生物活性を容易にするために当業界で従来使用されている組成物を指す(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Mac Publishing Company (1980)を参照されたい)。担体はまた、活性化合物の望ましくない副作用を低減させることもできる。好適な担体は、例えば、安定である、例えば、担体中の他の成分と反応することができない。一例では、担体は、処置のために用いられる用量及び濃度でレシピエントにおいて有意な局部又は全身有害効果をもたらさない。
【0188】
本開示のための好適な担体としては、従来使用されているものが挙げられ、例えば、水、塩水、水性デキストロース、ラクトース、リンゲル溶液、緩衝溶液、ヒアルロナン及びグリコールは、特に(等張性である場合)、溶液のための例示的な液体担体である。好適な薬学的担体及び賦形剤としては、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0189】
別の例では、担体は、例えば、細胞を増殖させるか、又は懸濁する培地組成物である。そのような培地組成物は、それが投与される対象においていかなる有害な効果も誘導しない。
【0190】
例示的な担体及び賦形剤は、細胞の生存能力及び/又は疾患を処置若しくは防止する細胞の能力に有害に影響しない。
【0191】
一例では、担体又は賦形剤は、好適なpHで細胞及び/又は可溶性因子を維持することによって、生物活性を発揮する緩衝活性を提供し、例えば、担体又は賦形剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。PBSは、細胞及び因子と最小限に相互作用し、細胞及び因子の迅速な放出を可能にするため、魅力的な担体又は賦形剤であり、そのような場合、本開示の組成物を、例えば注射による、血流又は組織若しくは組織の周囲の領域若しくは組織に隣接する領域への直接適用のための液体として生産することができる。
【0192】
本明細書に記載の細胞組成物を、単独で、又は他の細胞との混合物として投与することができる。異なる型の細胞を、すぐに、若しくは投与の直前に、本開示の組成物と混合するか、又はそれらを投与前に一定期間にわたって一緒に同時培養することができる。
【0193】
一例では、組成物は、有効量又は治療有効量の細胞を含む。例えば、組成物は、約1×105個の細胞~約1×109個の細胞又は約1.25×103個の細胞~約1.25×107個の細胞を含む。投与される細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、及び性別、並びに処置される障害の程度及び重症度等の様々な因子に依存する。
【0194】
例示的な用量は、少なくとも約1.2×108~約8×1010個の細胞、例えば、約1.3×108~約8×109個の細胞、約1.4×108~約8×108個の細胞、約1.5×108~約7.2×108個の細胞、約1.6×108~約6.4×108個の細胞、約1.7×108~約5.6×108個の細胞、約1.8×108~約4.8×108個の細胞、約1.9×108~約4.0×108個の細胞、約2.0×108~約3.2×108個の細胞、約2.1×108~約2.4×108個の細胞を含む。例えば、用量は、少なくとも約1.5×108個の細胞を含んでもよい。例えば、用量は、少なくとも約2.0×108個の細胞を含んでもよい。
【0195】
言い換えれば、例示的な用量は、少なくとも約1.5×106個の細胞/kg(80kgの対象)を含む。ある例では、用量は、少なくとも約2.5×106個の細胞/kgを含んでもよい。他の例では、用量は、約1.5×106~約1×109個の細胞/kg、約1.6×106~約1×108個の細胞/kg、約1.8×106~約1×107個の細胞/kg、約1.9×106~約9×106個の細胞/kg、約2.0×106~約8×106個の細胞/kg、約2.1×106~約7×106個の細胞/kg、約2.3×106~約6×106個の細胞/kg、約2.4×106~約5×106個の細胞/kg、約2.5×106~約4×106個の細胞/kg、約2.6×106~約3×106個の細胞/kgを含んでもよい。
【0196】
ある例では、改変された間葉系前駆細胞又は幹細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%を占める。
【0197】
本開示の組成物を凍結保存することができる。間葉系前駆細胞又は幹細胞の凍結保存を、当業界で公知の低速冷却法又は「高速」凍結プロトコールを使用して実行することができる。好ましくは、凍結保存の方法は、非凍結細胞と比較して、類似する表現型、細胞表面マーカー及び凍結保存細胞の増殖速度を維持する。
【0198】
凍結保存された組成物は、凍結保存溶液を含んでもよい。凍結保存溶液のpHは、典型的には、6.5~8、好ましくは、7.4である。
【0199】
凍結保存溶液は、例えば、PlasmaLyte ATM等の滅菌非発熱性等張溶液を含んでもよい。100mLのPlasmaLyte ATMは、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7);368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO2・3H2O);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl2・6H2O)を含有する。それは、抗微生物剤を含有しない。pHを、水酸化ナトリウムで調整する。pHは、7.4(6.5~8.0)である。
【0200】
凍結保存溶液は、Profreeze(商標)を含んでもよい。凍結保存溶液は、更に、又は或いは、培養培地、例えば、αMEMを含んでもよい。
【0201】
凍結を容易にするために、通常、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の抗凍結剤を凍結保存溶液に添加する。理想的には、抗凍結剤は、細胞及び患者にとって非毒性的であり、非抗原性であり、化学的に不活性であり、解凍後に高い生存率を提供し、洗浄することなく移植を可能にするべきである。しかしながら、多くの一般的に使用される抗凍結剤であるDMSOは、いくらかの細胞傷害性を示す。ヒドロキシエチルデンプン(HES)を、代用物として、又はDMSOと組み合わせて使用して、凍結保存溶液の細胞傷害性を低減させることができる。
【0202】
凍結保存溶液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清成分及び他のタンパク質増量剤のうちの1つ又は複数を含んでもよい。一例では、凍結保存溶液は、約5%のヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%のDMSOを含む。凍結保存溶液は、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)及びトレハロースのうちの1つ又は複数を更に含んでもよい。
【0203】
一実施形態では、細胞を、42.5%のProfreeze(商標)/50%のαMEM/7.5%のDMSO中に懸濁し、制御された速度の冷凍庫中で冷却する。
【0204】
凍結保存された組成物を解凍し、対象に直接投与するか、又は例えば、ヒアルロン酸を含む別の溶液に添加してもよい。或いは、凍結保存された組成物を解凍し、投与前に代替的な担体中に間葉系前駆細胞又は幹細胞を再懸濁してもよい。
【0205】
ある例では、本明細書に記載の細胞組成物を、単回用量として投与することができる。別の例では、細胞組成物を、複数用量にわたって投与する。例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10用量である。
【0206】
一例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を単離するか、又は単離及び富化し、培養物をex vivo又はin vivoで拡大した後、凍結保存する。別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞を単離するか、又は単離及び富化し、凍結保存し、解凍した後、培養物をex vivo又はin vivoで拡大する。更に別の例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、凍結保存の前後に培養拡大される。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を解凍した後、培養拡大することができる。間葉系前駆細胞又は幹細胞培養物の様々な方法が、当業界で公知である。ある例では、間葉系前駆細胞又は幹細胞は、投与前に無血清培地中で培養拡大される。例えば、間葉系前駆細胞又は幹細胞を、投与前に少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれより多く継代することができる。
【0207】
間葉系前駆細胞を、例えば、静脈内、動脈内、又は腹腔内投与等によって全身に投与することができる。間葉系前駆細胞を、鼻内、筋肉内又は心臓内投与によって投与することもできる。ある例では、間葉系前駆細胞を、対象の腫瘍中に直接投与する。
【実施例
【0208】
(実施例1)
間葉系前駆細胞によるMiR/siRNAの細胞への移入
コネキシンのヒト間葉系前駆細胞(MPC)発現を、免疫組織化学及びウェスタンブロットによって評価した。生成されたデータは、MPCが機能的なCx43及びCx40を発現し、共通のコネキシンも発現する標的細胞型との機能的なギャップ結合を作ることを証明する(図1A)。コネキシンのヒト間葉系幹細胞(MSC)発現も、免疫組織化学及びウェスタンブロットによって評価した。点状のCx43及びCx40染色がhMSC上で観察された(図1B)。パッチクランプ技術を使用して、MPCにおいて機能的なギャップ結合も証明された(図2)。様々な腫瘍細胞もまたCx43(図3)及びCx40(データは示さない)を発現する。
【0209】
ギャップ結合を介した移入による核酸の標的細胞へのMPC媒介性送達を調査した。MPCの脂質に基づくローディングを、蛍光標識されたMiRを用いて証明した。miR及びsiRNAの高レベルの細胞内ローディングが、脂質に基づくトランスフェクション(transection)(Lipofectamine(商標);Thermo Fisher Scientific社;図4)を使用して達成された。
【0210】
Mir16のHeLa-Cx43及びPANC-1腫瘍細胞への移入を示すための実験も行った。Cy-5 Mir16(Red;100nM)をトランスフェクトされたMPCを、GFPを発現するHeLa-Cx43細胞及びGFPを発現するPANC-1細胞と共に24時間同時培養した。図5Aは、HeLa細胞(A)とPANC-1細胞(B)の両方へのCy-5-Mir16の移入を示す。図5Bは、GFPを発現するPANC-1細胞へのKIF11 siRNAの移入を示す。
【0211】
続いて、腫瘍細胞株上でのMPCをロードしたmiR及びsiRNAの抗増殖効果及び細胞傷害効果を測定するために、同時培養アッセイを確立した。KIF11 siRNAをロードしたMPC(100nM)と、PANC-1との同時培養の結果を、図6Aに示す。KIF11 siRNAをロードしたMPC(500nM)と、PANC-1との同時培養の結果を、図6Bに示す。これらの結果は、PANC-1細胞死が、KIF11 siRNAをロードしたMPC(100nM)の存在下で誘導され、より高用量(500nM)のKIF11 siRNAの存在下で増加することを示す。
【0212】
KIF11 siRNAをロードしたMPC(500nM)と、SNUC2A細胞との同時培養の結果を、図7に示す。これらの結果は、KIF11のMPCによる移入がSNUC2A腫瘍細胞死を誘導することを示す。
【0213】
KIF11 siRNAをロードしたMPC(500nM)と、SAOS2細胞との同時培養の結果を、図8(A)及び(B)に示す。これらの結果は、KIF11のMPCによる移入がSAOS2腫瘍細胞死を誘導することを示す。
【0214】
Mir-16をロードしたMPC(100nM)と、PANC-1腫瘍細胞株との同時培養も、腫瘍細胞死を誘導した(図9A)。Mir-16をロードしたMPCと、ロードされていないMPCとの同時培養は、MPC増殖を阻害したが、ロードされていないMPCの生存能力には有意に影響しなかった(図9B)。
【0215】
続いて、Cx43のCRISPR/CAS9媒介性ノックアウトをPANC-1細胞中で行って、MPCに由来する核酸の標的細胞への移入におけるギャップ結合の役割を評価した。
【0216】
let7bをロードしたMPC(500nM)と、PANC-1細胞との同時培養は、PANC-1細胞増殖を阻害した。しかしながら、Cx43ノックアウトPANC-1細胞の増殖は、let7bをロードしたMPCと共に同時培養した場合、有意に影響されなかったが、これは、let7bの移入がCx43によって起こっていることを示唆している(図10A)。図10Bは、MPC中でのlet7bの直接トランスフェクションが、細胞増殖の減少をもたらしたが、PANC-1細胞に関して観察されるような細胞死の増加をもたらさなかったことを示す。
【0217】
KIF11 siRNAをロードしたMPCと、PANC-1細胞との同時培養は、細胞死を誘導した。細胞死のレベルの低下は、KIF11 siRNAをロードしたMPCと同時培養した場合にCx43ノックアウトPANC-1細胞中で観察された。しかしながら、細胞増殖のMPC特異的阻害は、驚くべきことに、Cx43ノックアウトPANC-1細胞中で維持された(図11A及び図12)。これは、siRNAの移入が、コネキシン43によってだけでなく、例えば、様々なコネキシン(例えば、Cx40、Cx45、Cx30.3、Cx31若しくはCx31.1)等の別の機構によっても、又はエキソソームの形成によっても起こることを示唆している。図11Bは、MPC中でのKIF11 siRNAの直接トランスフェクションが、細胞増殖の減少をもたらしたが、PANC-1細胞に関して観察されるような細胞死の増加をもたらさなかったことを示す。
【0218】
Mir-34aをロードしたMPCと、PANC-1細胞との同時培養も、細胞死を誘導した。細胞死のレベルの低下は、Mir-34aをロードしたMPCと同時培養した場合にCx43ノックアウトPANC-1細胞中で観察された。しかしながら、細胞増殖のMPC特異的阻害は、驚くべきことに、Cx43ノックアウトPANC-1細胞中で維持された(図13A)。再度、これは、Mir-34aの移入が、コネキシン43によってだけでなく、例えば、様々なコネキシン等の別の機構によっても、又はエキソソームの形成によっても起こることを示唆している。図13Bは、MPC中でのMir-34aの直接トランスフェクションが、細胞増殖の減少をもたらしたが、PANC-1細胞に関して観察されるような細胞死の増加をもたらさなかったことを示す。
【0219】
細胞死及び細胞増殖に対するmiRNA及びsiRNAの効果を、MPC、PANC-1、PC3及びSOAS2細胞中で評価した。細胞を、96ウェル又は3.5cmの細胞培養プレート上に約25%の集密度で播種し、トランスフェクション試薬としてLipofectamine RNAiMaxを使用して100nMのsiRNA又はmiR-模倣体をトランスフェクトした。hsa-miR-15A、hsa-miR-16-1、hsa-miR-34a、hsa-miR-155、hsa-let7b、hs_KIF11_4 siRNA及びhs_PLK1_2 siRNAの効果を評価した。細胞死及び細胞増殖に対するsiRNA及びmiRNAの効果を、トランスフェクションの5日後に測定した(図14図17)。細胞死とWSTアッセイの比較分析を、図18及び図19に示す。これらのデータは、トランスフェクトされたmiR及びsiRNAが様々ながん細胞を殺滅する、及び/又はその増殖を阻害することができることを示す。
【0220】
(実施例2)
siRNAのMPCに基づく送達のin vivoでの効能
6匹のマウスの前立腺に、500nMのKIF11に対するsiRNAをロードした50万個のMPCで処置した、又は処置していない、ルシフェラーゼを安定的に発現する50万個のPC3細胞を同所的に埋め込んだ(24時間前)。注入の容量は、PBS中で60μlであった。1週間後、マウスにルシフェリンを注入した後、IVISイメージングシステムを用いて画像化して、腫瘍を可視化した(図20A及び図20B)。35日後、MPCで処置したマウスに、500nMのKIF11に対するsiRNAをロードした100万個のMPCを注入した。対照マウスには、塩水を注入した。図20Cに示されるように、中央生存時間は、対照群については38日であり、MPC処置群については57日であった。P=0.0067(Log-Rank検定)。
【0221】
これらの結果は、KIF11をロードしたMPCがマウスPC3前立腺異種移植腫瘍モデルにおいて生存時間を有意に増大させたことを示している。
【0222】
(実施例3)
siRNAのMPCに基づく送達及び細胞生存能力の用量依存的低下
PANC-1細胞を、KIF11 siRNAをロードしたMPC(500nMのKIF11)と同時培養した。6日間の同時培養は、PANC-1細胞の生存能力を77%低下させた(図21)。細胞増殖速度の約80%の低下も観察された(図22)。
【0223】
次いで、PANC-1細胞に、増加する量のKIF11 siRNA(0~3.3nM)を直接トランスフェクトした。PANC-1細胞の生存能力を、トランスフェクションの6日後に測定した。細胞生存能力の用量依存的低下が、直接トランスフェクションの後に観察された(図23)。特に、3.3nMでのPANC-1の生存能力の最大の低下は、500nMをトランスフェクトされたMPCとの同時培養後に見られたものと同様、76%であった。図6(a)及び図6(b)に示されるように、500nMのKIF11 siRNAをトランスフェクトされたMPCは、100nMのKIF11 siRNAをトランスフェクトされたMPCと比較して、30%を超えてPANC-1の増殖を阻害した。これらの結果は、100~500nMの濃度のKIF11 siRNAをトランスフェクトされたMPCによるPANC-1の生存能力の段階的阻害と一致する。PANC-1生存能力の直接的オリゴヌクレオチド阻害の効果は、3.3nMから0.5nMまで約30%低下したため、本発明者らは、オリゴヌクレオチドの標的腫瘍細胞へのMPC媒介性移入が、0.5~3.3nMの腫瘍細胞内部のオリゴヌクレオチドの濃度をもたらすのに十分なレベルで起こると結論付ける。
【0224】
更なる実験において、MPC又はPANC-1細胞の培養物に、増加する量のKIF11 siRNA(0~500nM)を直接トランスフェクトした。PANC-1細胞の用量応答曲線を、図24に、MPCを図25に示す。
【0225】
また、PC3細胞を、KIF11 siRNAをロードしたMPC(500nMのKIF11)と同時培養した。6日間の同時培養は、細胞増殖速度を約55%低下させた(図26)。次いで、PC3細胞に、増加する量のKIF11 siRNA(0~500nM)を直接トランスフェクトした。用量応答曲線を、図27に示す。
【0226】
(実施例4)
MPCのローディング及び生存能力
3個体のドナーに由来するMPCに、Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(15μl/ウェル)を使用して、KIF11-FITC-siRNA(0~1000nM)をトランスフェクトした。次いで、トランスフェクションの24時間後、MPC中の蛍光標識の蓄積をフローサイトメトリーによってアッセイした(図28)。MPCへのsiRNAローディングの最適濃度は、約500nMであると決定された。
【0227】
次いで、KIF11-FITC-siRNAをロードしたMPCを、PANC-1又はPC3細胞と同時培養した。KIF11-FITC-siRNAをロードしたMPCからがん細胞へのsiRNAの移入を、同時培養の24時間後に測定した。24時間以内に、約10%のsiRNAががん細胞に移入され、移入はMPCドナーに関してわずかな変動を示した(図29)。
【0228】
次いで、MPC及びPANC-1細胞を、1.3×105個の細胞/ウェルで6ウェルプレート中で培養した。Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(15μl/ウェル)を使用して、細胞に異なる濃度(0~最終500nM)のsiRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後にRNAを細胞から回収し、qRT-PCR(Taqman遺伝子発現アッセイ;Applied Biosystems社;ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)についてはs03929097_g1及びKIF11についてはHs00189698_m1)を使用して遺伝子発現を評価した。図30及び図31は、KIF11 siRNA種が、MPC及び腫瘍細胞中でその機能を保持する(すなわち、トランスフェクトされ、MPCから腫瘍細胞に移入されるsiRNAが、KIF11 mRNAを減少させることができる)ことを示す。
【0229】
(実施例5)
MPC及び腫瘍細胞の生存能力に対するKIF11 siRNAの効果
MPC、SJSA1、PANC-1、PC3、SAOS2及びSNUC2a細胞を、96ウェルプレート中、25~50%の集密度で播種した(処置群あたりn=3ウェル)。細胞に、100nMのKIF11 siRNA又は対照siRNAをトランスフェクトした(Lipofectamine; RNAiMax; siRNA配列の詳細は上のTable 1(表1)に示される;KIF11配列標的は図32にまとめられる)。トランスフェクションの5日後に細胞生存能力を測定し、生存能力データを、対照細胞データを使用して正規化した(図33)。驚くべきことに、KIF11 mRNA転写物の5'末端に対して標的化されるKIF11 siRNAは、特に、PANC-1及びSAOS2細胞株において、腫瘍細胞生存能力を低下させる効果がより高かった。例えば、KIF11 mRNA転写物の3'末端を標的とするKIF11_13及びKIF11_15は、試験した他のKIF11 siRNAと比較して、腫瘍細胞生存能力に対する効果が相対的に低かった(図33)。また驚くべきことに、KIF11_4、KIF11_6及びKIF11_9 siRNAは、MPCの生存能力に対する最小限の効果を有しながら、腫瘍細胞の生存能力を一貫して低下させることもわかった(図33)。
【0230】
(実施例6)
MPC及びMSCにおける遺伝子発現に対するKIF11 siRNAの効果
MPC及びMSCを、1.25×106個の細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、Lipofectamineを使用してKIF11 siRNA(100nM)をトランスフェクトした。対照細胞を、Lipofectamineのみで処理した。細胞処理の48時間後にRNAを回収し、ヒトClariom S Assay(Affymetrix社)を使用して包括的遺伝子発現を分析した。遺伝子発現分析により、MPCとMSCがKIF-11 siRNAによって下方調節される遺伝子(図34;上位10種の下方調節される遺伝子)に関して類似していることが示された。KIF11 siRNAは、MPCにおいては約18倍及びMSCにおいては約20倍、KIF11 mRNAレベルを低下させた。上位10種の下方調節される遺伝子を見ると、FSTL1:MIR198、ALDH9A1、ELK3 & SYPL1 mRNAも、MPCとMSCの両方において低下した。上記、特に、MPCとMSCの両方がCx43とCx40とを発現すると指摘する実施例1で概略された知見とまとめると、遺伝子発現分析は、MPCとMSCは両方とも、がん細胞へのオリゴヌクレオチド移入のためのビヒクルとして使用することができることを更に支持する。
【0231】
当業者であれば、広く記載される本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本開示に対して、いくつかの変更及び/又は改変を加えることができることを理解するであろう。本発明の実施形態は、したがって、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないと考えるべきである。
【0232】
本出願は、2017年11月22日に出願された米国特許出願第62/589,764号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0233】
上で考察された全ての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0234】
本明細書に含まれた文献、行為、材料、デバイス、論文等の考察は、単に本開示に関する文脈を提供するためのものである。それは、これらの事柄のいずれか、又は全部が、先行技術ベースの一部を形成するか、又は本出願のそれぞれの請求項の優先日より前に存在していたために本開示と関連する分野における共通一般知識であったとの承認と取られるべきではない。
【0235】
(参考文献)
図1A
図1B
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5(i)】
図5(ii)】
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33A
図33B
図33C
図33D
図33E
図33F
図34
【配列表】
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