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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】金属部品及び金属部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 12/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
C23C12/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020543874
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019053747
(87)【国際公開番号】W WO2019158668
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】102018103319.2
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520306901
【氏名又は名称】イーヴィス モートアズュステーメ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】iwis motorsysteme GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Albert-Rosshaupter-Strasse 53, 81369 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヴァッツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】マティヤ ブアガー
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017394(JP,A)
【文献】特開2008-223859(JP,A)
【文献】特開2008-025622(JP,A)
【文献】特開2003-139199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21L
C23C 10/34,12/00
F16G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料コーティング(6)によってコーティングされた内プレート(13)および/もしくは外プレート(14)、スリーブ(12)、スタッド(11)などのチェーン部品(11、12、13、14)を製造する方法であって、次の
・固結防止剤(1)を調製する方法ステップと、
・前記調製された固結防止剤(1)を粉末混合物に添加する方法ステップと、
・前記粉末混合物を提供する方法ステップと、
・金属製の基材(5)を提供する方法ステップと、
・前記粉末混合物および前記基材(5)を混合しながら加熱装置で加熱することにより、前記基材(5)上にコーティングを堆積させる方法ステップであって、
前記コーティング(6)が前記基材(5)よりも高い硬度を有する方法ステップと、
・前記基材(5)を冷却する方法ステップと、を有し、
前記粉末混合物中の前記固結防止剤(1)の含有量が25重量%以下であり、
固結防止剤(1)を調製する前記方法ステップが前記固結防止剤(1)の平均粒径の増加を生じ、
前記固結防止剤(1)の粒径分布の変化が、洗浄、ふるい分け、沈降、濾過、空気分級、空気圧分級、および/または遠心分離によって行われ、
前記固結防止剤(1)が25%未満の40μmよりも小さい粒子の含有量を有し、
前記固結防止剤の粒径分布は、ふるい分析により求められ、かつ
処理温度が断続的に450℃よりも高く、
前記基材(5)が鋼鉄製であり、前記粉末混合物が金属を含有し、前記コーティング(6)が前記金属の炭化物または窒化物である、方法。
【請求項2】
前記硬質材料コーティング(6)が、CrN、FeN、および/もしくはVNコーティングを有することを特徴とする、請求項1記載の硬質材料コーティング(6)によってコーティングされたチェーン部品(11、12、13、14)を製造する方法。
【請求項3】
前記固結防止剤(1)が20%未満の10μmよりも小さい粒子の含有量を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の硬質材料コーティング(6)によってコーティングされたチェーン部品(11、12、13、14)を製造する方法。
【請求項4】
前記固結防止剤が、カオリン(ケイ酸アルミニウム)、ムライト(酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素)、酸化ジルコニウム、窒化もしくはケイ化物セラミックス、および/または任意の他のセラミック不活性物質を含有することを特徴とする、請求項1~3のうち一項以上に記載の硬質材料コーティング(6)によってコーティングされたチェーン部品(11、12、13、14)を製造する方法。
【請求項5】
・鋼鉄製基材(5)と、
・炭化金属および/もしくは窒化金属、またはこれらの混合物で作製された硬質材料コーティング(6)であって、
固結防止剤(1)の粒子を有する前記硬質材料コーティング(6)と、から成り、
前記硬質材料コーティング(6)の顕微鏡写真において、前記硬質材料コーティング(6)内の前記固結防止剤(1)の前記粒子の表面含有量が15%未満であり、金属部品が、内プレート(13)および/もしくは外プレート(14)、スリーブ(12)、スタッド(11)などのチェーン部品(11、12、13、14)であることを特徴とする、硬質材料コーティング(6)によってコーティングされた金属部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材料コーティングによってコーティングされた金属部品を製造するための方法に関し、その方法は、固結防止剤を調製するステップと、調製された固結防止剤を粉末混合物に添加するステップと、粉末混合物を提供するステップと、金属製基材を提供するステップと、粉末および基材を加熱装置で加熱するステップと、基材上にコーティングを堆積させるステップであって、コーティングが基材よりも高い硬度を有する、堆積させるステップと、基材を冷却するステップと、を含む。本発明はまた、硬質材料コーティングを有する金属部品にも関する。
【0002】
従来技術
その都度チェーンリンクの手段によって、相互接続されたチェーン部材を有する関節式リンクチェーンは、多くの形態で使用されている。ドライブチェーンまたはコンベヤチェーンとして使用する場合、具体的にはチェーンリンクの領域には大きく負荷がかかるので、耐摩耗性のあるベアリング表面を必要とする。また、特に多数の部品に関して、費用のかかる解決策を経済的なコーティング方法およびプロセスに置き換えることも有用である。
【0003】
DE102005047449A1は、摩耗が改善された関節式リンクチェーンを提案しており、そのチェーンスタッドまたはチェーンスリーブには硬質材料コーティングが施されている。これらのコーティングは、物理蒸着(PVD)方法を使用して適用される。硬質材料コーティングは、1~10μmの厚さを有し、加えて、潤滑剤コーティング、例えばPTFEによって取り囲まれ得る。
【0004】
DE102006052869A1は、スタッドおよびスリーブのリンク表面にPVD硬質材料コーティングが施されている関節式チェーンについて記載している。この場合、スタッドおよびスリーブは、0.4重量%~1.2重量%の炭素含有量を有する高炭素鋼からなる。
【0005】
DE102011006294A1は、硬化コーティングされた金属部品を製造するための方法を提案している。金属部品は、外層の炭素および/または窒素を濃縮するために熱処理され、次いでマルテンサイトの形成よりも低い温度で焼き入れが行われる。次いで、金属部品は、その後のコーティングプロセスが行われる温度よりも高い温度で焼き戻しが行われる。コーティング自体は、化学蒸着(CVD)またはPVD方法を使用して行われる。
【0006】
DE102013222244A1は、摩擦を低減する減摩コーティングが施されたチェーン用のリンクプレートについて記載している。コーティングは、PVDまたはPACVD方法を使用して適用される。
【0007】
DE102016215709A1は、摩耗を低減するCrNコーティングが施された鋼で作製されたスリーブ、プレート、スタッド、ローラーなどのチェーン部品について開示している。CrNコーティングは、CVDプロセスを使用して生成される。この場合の窒素は、鋼から得られ、この鋼は任意選択的に処理前に窒化させてもよい。
【0008】
ローラーチェーンまたはスリーブタイプのチェーン用のリンクは、WO2014/019699に提案されている。窒化または炭化硬質材料コーティングが、PVDまたはCVD方法を使用してリンクに適用される。
【0009】
硬化コーティングされた金属部品を製造するための前述の解決策は、欠点を有する。PVDプロセスは、10-4~10Paの作動圧力を必要とし、コーティングのタイプによっては、数百℃の作動温度で行われる。したがって、PVDプロセスにおけるコーティングチャンバには、高い要求が課される。さらに、PVDプロセスは、バルク材料には好適ではない。基材および堆積される材料(ターゲット)は、コーティングチャンバ内で空間的に分離されている。PVDプロセスは、いわゆる視程プロセス、すなわち、ターゲットから目視可能な表面のみがコーティングされるプロセスである。内部表面または穴は、より薄くコーティングされる。さらに、固結防止剤が使用されると、すべての粉末プロセスでは、固結防止剤の成分が硬質材料コーティングに埋没するリスクを伴う。これは、硬質材料コーティングに損傷を生じ、当該コーティングの性能を損なう場合がある。
【0010】
したがって、本発明によって対処される問題は、硬化コーティングされた金属部品、好ましくは鋼部品、具体的には使用が簡単な窒化金属または炭化金属コーティングを生成し、それによって、単位時間当たりで多数の部品をコーティングすることを可能にし、適用するのに経済的である方法を提供することである。同時に、固結防止剤が使用されるときに、固結防止剤の成分が硬質材料コーティングに埋没するのを防ぐので、十分に高い品質の硬質材料コーティングが保証される。
【0011】
この問題は、請求項1に記載の本発明による方法、および請求項11に記載の金属部品によって解決される。本発明の他の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
硬質材料コーティングによってコーティングされた金属部品を製造するための本発明による方法は、最大7つの方法ステップを有する。第1の方法ステップでは、固結防止剤が調製される。第2の方法ステップでは、調製された固結防止剤が粉末混合物に添加される。第3の方法ステップでは、粉末混合物が提供される。
【0013】
第4の方法ステップでは、金属からなる基材が提供される。第5の方法ステップでは、粉末混合物および基材が加熱装置で加熱される。第6の方法ステップでは、コーティングが基材上に堆積される。堆積されたコーティングは、基材よりも高い硬度を有する。第7の方法ステップでは、基材が冷却される。硬化、焼き戻し、およびバレル研磨の方法ステップも、その後行ってもよい。
【0014】
化学蒸着(CVD)を使用して、炭素含有鋼で作製された基材上に硬質コーティングを堆積させ、このコーティングは、耐摩耗性および耐摩滅性が高く、高い硬度を有し、温度耐性が高く、低摩擦性を有し、良好な化学的性質および低い付着傾向を有する。硬質材料コーティングは、耐摩耗性の改善に加えて、耐食性も増加させる。炭素含有鋼は、十分な強度および良好な焼き戻し特性を有するので、これらの鋼を基材に使用することが好ましい。硬質材料コーティングには、金属および非金属の硬質材料の両方を使用することができる。硬質材料コーティングは、とりわけ、遷移元素、例えばバナジウム、クロム、タングステン、ジルコニウム、およびチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ化物、およびケイ化物で作製されることが好ましい。ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ならびにコランダム、炭化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、または窒化アルミニウムは、非金属硬質材料として好適である。本発明の好ましい実施形態では、基材は鋼基材であり、硬質材料コーティングは炭化、窒化、および/または炭窒化コーティングである。
【0015】
先行技術から既知の硬質材料コーティングを生成するためには、CVD方法は、PVD方法と比較して利点を提供する。PVD方法と比較して、CVD方法は、バルク材料に好適であり、例えば、コーティングされる基材をタンブラーで粉末と混合するプラントのエンジニアリング、作動、およびプロセス技術に関して経済的な利点を有する。コーティングプロセスは、特定のプロセス温度で数時間行われる。狭い穴を含む、基材のすべての到達可能な表面は、均一にコーティングされる。コーティングプロセスの終わりに、コーティングされた基材は冷却される。PVD方法では、コーティングは、堆積される材料を10-4~10Paの作動圧力で気化させることにより行われ、基材と堆積される材料とが空間的に分離されていることは不利である。
【0016】
具体的には、粉末混合物は、不活性固結防止剤、例えばAlを有する。固結防止剤は、粉末混合物を乾燥状態に保って、クランピングを回避する。さらに、コーティングプロセス中に、金属の部分的な焼結および融解を防ぐ。固結防止剤の粒子が、CVDプロセス中に硬質材料コーティングに組み込まれると、均質な硬質材料コーティングの形成を妨げる。基本的には、硬質材料コーティング内の固結防止剤の含有量を可能な限り低く保つためには、粉末混合物中の固結防止剤の含有量を低減すること、および粉末混合物中の固結防止剤の粒径分布が可能な限り大きく、少ない細粒含有量のみを有するように、固結防止剤を調製すること、という2つの選択肢がある。大きい粒子は、基材に付着するとすぐに、コーティングプロセス中の機械的摩擦によって、小さい粒子よりも簡単に硬質材料コーティングから除去することができる。
【0017】
硬質材料コーティングに関する本発明のさらなる実施形態は、従属請求項2~9に記載されている。
【0018】
本発明の別の実施形態では、粉末混合物中の固結防止剤の含有量は、50重量%以下、好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。粉末混合物中の固結防止剤の含有量は、固結防止剤が硬質材料コーティングに組み込まれるのを防ぐために、可能な限り低く保たれる。
【0019】
本発明の発展形態では、硬質材料コーティング内のAlの含有量は、10原子%未満、好ましくは5原子%未満、特に好ましくは3原子%未満である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、固結防止剤を調製する方法ステップは、粒径分布を変化させることを含む。固結防止剤は、粉末混合物中の固結防止剤の粒径分布が可能な限り大きいように調製される。大きい粒子は、基材に付着するとすぐに、コーティングプロセス中の機械的摩擦によって、小さい粒子よりも簡単に硬質材料コーティングから除去することができる。また、固結防止剤の粒子が小さいほど、増大していくコーティングよってより簡単に取り囲まれ、硬質材料コーティングに埋没する。
【0021】
本発明の別の実施形態では、粒径分布は、ふるい分け、沈降、濾過、ならびに/または遠心分離、空気分級および/もしくは空気圧分級によって変化する。
【0022】
本発明の別の実施形態では、固結防止剤の調製は、固結防止剤の洗浄を含む。固結防止剤を沈降または濾過し、乾燥させて、粒径分布を変化させるには、洗浄が必要である。
【0023】
本発明の別の態様では、固結防止剤は、25%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満の20μmよりも小さい粒径を有する粒子の含有量を有する。大きい粒子は、基材に付着するとすぐに、コーティングプロセス中の機械的摩擦によって、小さい粒子よりも簡単に硬質材料コーティングから除去することができるので、20μmを超えるサイズを有する粒子の含有量を、可能な限り多くする必要がある。
【0024】
本発明の別の実施形態では、固結防止剤は、20%未満、好ましくは12%未満、特に好ましくは8%未満の10μmよりも小さい粒径を有する粒子の含有量を有する。コーティングが、1~25μmの通常達成されるコーティング厚を有するとき、固結防止剤のより小さい粒子は、それらが基材に付着するとすぐに分離することができないか、または分離するのが困難であり得る。したがって、10μmよりも小さいこれらの特に小さい粒子の含有量は、可能な限り低く設定される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、固結防止剤は、Alを含有する。Alは、高い融点および高い硬度を有する不活性固体であり、部分的な焼結を防ぐ。Alはまた、低費用で入手可能である。他の可能な固結防止剤は、カオリン(ケイ酸アルミニウム)、ムライト(酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素)、酸化ジルコニウム、窒化もしくはケイ化物セラミックス、および/または任意の他のセラミック不活性物質である。
【0026】
本発明の別の実施形態では、本発明による方法のプロセス温度は、少なくとも部分的に450℃よりも高く、好ましくは500℃よりも高く、特に好ましくは550℃よりも高い。硬質材料コーティングの形成を行うためのCVD方法での反応を可能にするために、これらの高温が必要である。
【0027】
本発明による問題はまた、請求項10に記載の金属部品によって解決される。
【0028】
硬質材料コーティングによってコーティングされた、本発明による金属部品は、鋼で作製された基材と、炭化金属および/もしくは窒化金属、またはこれらの混合物で作製された硬質材料コーティングとを有する。硬質材料コーティングはまた、固結防止剤の粒子も有する。本発明によれば、硬質材料コーティングの顕微鏡写真によって決定される、硬質材料コーティング内の固結防止剤の粒子の表面含有量は、15%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満である。例えば、ふるい分けによって固結防止剤を調製した結果、硬質材料コーティング内の固結防止剤の粒子の表面含有量は、従来技術から既知の解決策と比較して低減され、したがって顕著により均質な硬質材料コーティングが達成される。
【0029】
金属部品に関する本発明のさらなる実施形態は、従属請求項11および12に記載されている。
【0030】
本発明の発展形態では、硬質材料コーティング内のAlの含有量は、10原子%未満、好ましくは5原子%未満、特に好ましくは3原子%未満である。
【0031】
本発明の別の実施形態では、基材は、チェーン部品、例えば、チェーン部品の内側および/または外側プレート、スリーブおよび/またはスタッドである。チェーンは、内側プレートによって接続される外側プレートを有し、スタッドは、その都度スリーブに回転可能に取り付けられる。スタッドおよびスリーブは、作動中に高い摩耗に晒され、したがって、硬質材料コーティングによってコーティングされるのに特に好適である。スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上の硬質材料コーティングは、1~40μmのコーティング厚を有する。この薄いコーティング厚にもかかわらず、スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上のこれらの硬質材料コーティングは、腐食から保護し、良好な耐摩耗性を有する。この場合、硬質材料コーティングを施すには、スタッドとスリーブとの間の接触領域は十分である。
【0032】
本発明の別の実施形態では、基材は、チェーン部品、例えば、チェーン部品の内側および/または外側プレート、スリーブおよび/またはスタッドである。チェーンは、内側プレートによって接続される外側プレートを有し、スタッドは、その都度スリーブに回転可能に取り付けられる。スタッドおよびスリーブは、作動中に高い摩耗に晒され、したがって、硬質材料コーティングによってコーティングされるのに特に好適である。従来の保護コーティングと比較して、チェーンに硬質材料コーティングを使用すると、スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上への硬質材料コーティングが、1~40μmのコーティング厚を有することは十分である。この薄いコーティング厚にもかかわらず、スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上のこれらの硬質材料コーティングは、腐食からの良好な保護、および良好な耐摩耗性を有する。この場合、硬質材料コーティングを施すには、スタッドとスリーブとの間の接触領域は十分である。
【0033】
本発明の別の実施形態では、基材は、チェーン部品、例えば、チェーン部品の内側および/または外側プレート、スリーブおよび/またはスタッドである。チェーンは、内側プレートによって接続される外側プレートを有し、スタッドは、その都度スリーブに回転可能に取り付けられる。スタッドおよびスリーブは、作動中に高い摩耗に晒され、したがって、硬質材料コーティングによってコーティングされるのに特に好適である。従来の保護コーティングと比較して、チェーンに硬質材料コーティングを使用すると、スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上への硬質材料コーティングが、1~40μmのコーティング厚を有することは十分である。この薄いコーティング厚にもかかわらず、スタッドおよび/またはスリーブのリンク表面上のこれらの硬質材料コーティングは、腐食からの良好な保護、および良好な耐摩耗性を有する。この場合、硬質材料コーティングを施すには、スタッドとスリーブとの間の接触領域は十分である。本発明の好ましい実施形態では、チェーン部品は、炭素含有鋼で作製されている。
【0034】
本発明によるセンサデバイスおよび方法の実施形態は、図面に概略的かつ簡略化された様式で示され、次の記載でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】チェーンドライブに使用するためのチェーンの設計を示す。
図2】固結防止剤を事前に調製せずに、先行技術からのCVD方法を使用して硬質材料コーティングを形成するプロセスを示す。
図3】固結防止剤を事前に調製した、本発明によるCVD方法を使用して硬質材料コーティングを形成するプロセスを示す。
図4】固結防止剤を事前に調製せずに、先行技術からのCVD方法を使用して生成された、硬質材料コーティングの顕微鏡写真を示す。
図5】固結防止剤を事前に調製した、本発明によるCVD方法を使用して生成された、硬質材料コーティングの顕微鏡写真を示す。
【0036】
硬質材料コーティングによってコーティングされた金属部品を製造するための本発明による方法の実施形態、および本発明による硬質材料コーティングによってコーティングされた金属部品の実施形態は、図面では概略的かつ簡略化された様式で示されており、次の記載でより詳細に説明する。
【0037】
図1は、例えばチェーンドライブに使用することができる、チェーン10の2つのチェーン部材を示す。チェーン10は、その都度、チェーンリンクを介して接続される内側チェーン部材および外側チェーン部材を含む、スリーブタイプのチェーンとして設計される。内側チェーンリンクは、平行に延在する2つの内側プレート13と、内側タブ13を互いに接続する2つのスリーブ12とからなり、スリーブ12は、内側プレート13に垂直である。
【0038】
外側チェーン部材14は、平行に延在し、2つのスタッド11の手段によって相互接続される2つの外側プレート14からなり、スタッド11は、内側チェーン部材13のスリーブ12に回転可能に取り付けられる。外側チェーン部材14は、スタッド11によって隣接する内側チェーン部材13に回転可能に締結され、外側プレート14の手段によって内側チェーン部材13を第2の内側チェーン部材13に接続し、外側プレート14は、内側プレート13と平行に延在する。外側チェーン部材14のスタッド11は、内側チェーン部材13のスリーブ12に回転可能に取り付けられ、それによってチェーン10のチェーンリンクの接続がその都度形成される。チェーン10のスタッド11は、完全に鋼、例えば100Cr6からなり、スタッド11のリンク表面には、CVD方法を使用して適用された硬質材料コーティングが施される。代替的または追加的に、スリーブ12はまた、鋼から製造され得、そのリンク表面上またはベアリング表面上にCVD硬質材料コーティングが施され得る。
【0039】
例として、スタッドが100Cr6鋼からなる、チェーン部材のスタッド11の本発明によるコーティング方法を、以下に説明する。固結防止剤1は、コーティングプロセスが始まる前に洗浄、沈降、および乾燥されて、細粒含有物が分離される。
【0040】
比較のためのコーティング方法は、先行技術から既知であるように、調製されていない固結防止剤1を使用して同じ基材上で行われる。固結防止剤は、両方の場合でAlである。調製されていない固結防止剤1は、ふるい分析で次の粒径分布を示す:0~5%>0.2mm、5~15%0.125~0.2mm、65~80%0.063~0.125mm、0~15%0.04~0.063mm、0~10%<0.04mm。したがって、63~125μmの粒径を有する粒子は、固結防止剤1において最も高い割合を形成する。塩化アンモニウムもまた、活性剤2として0.4%の割合で添加される。
【0041】
スタッド11は、両方の実施形態では硬化により前処理される。80kgのスタッド11を、37kgの粉末および37kgの固結防止剤と混合し、無酸素窒素雰囲気下の常圧、7rpmおよび950℃の回転ドラムで6時間コーティングする。粉末は、20~30%のFeおよび70~80%のVを有する。コーティングされた後、スタッド11は、空冷チャンバで冷却される。コーティングプロセスの目的は、可能な限り均質であり、固結防止剤1の可能な限り低い含有量を有する、VC硬質材料コーティングである。
【0042】
図2は、先行技術から既知である、CVDプロセス中の硬質材料コーティング形成のプロセスを概略的に示している。この粉末は、固結防止剤1、活性剤2、Fe3およびV4の成分を有する。コーティングプロセスの前に硬化されるバルク材料5には、CVDプロセス中に硬質材料コーティング6が施される。硬質材料コーティング6は、粉末に由来する金属、およびバルク材料5に由来する炭素によって形成される。さらに、剥離材料1の粒子は、硬質材料コーティング6に埋没している。固結防止剤1の粒子の粒径は、変動する粒子の直径によって示されるように、大きく変動する。固結防止剤1の粒子の数によって示されるように、硬質材料コーティング6内の固結防止剤1の含有量も多い。この概略図は、顕微鏡写真によって確認される(図4)。
【0043】
図3は、本発明による方法の間の硬質材料コーティング形成のプロセスを示している。この粉末は、固結防止剤1、活性剤2、Fe3およびV4の成分を有する。バルク材料5には、CVDプロセス中に硬質材料コーティング6が施される。硬質材料コーティング6は、粉末に由来する金属、およびバルク材料5に由来する炭素によって形成される。固結防止剤1の粒子もまた、硬質材料コーティング6に埋没している。しかしながら、固結防止剤1の粒子の粒径分布は、洗浄、沈降、および乾燥による固結防止剤1の前処理の結果として、前の実施形態よりも小さい。より小さい粒度の固結防止剤1は、調製プロセスによって分離される。調製された固結防止剤1は、ふるい分析で次の粒径分布を示す:0~5%>0.2mm、5~15%0.125~0.2mm、65~80%0.063~0.125mm、0~10%0.04~0.063mm、0~5%<0.04mm。硬質材料コーティング6内の固結防止剤1の含有量もまた、顕著に低い。この概略図は、顕微鏡写真によって確認される(図5)。
【0044】
図4は、先行技術から既知の方法を使用して、すなわち固結防止剤1を調製せずに生成された、スタッド11上の硬質材料コーティング6の顕微鏡写真を示している。本明細書での硬質材料コーティング6のコーティング厚は、10μm未満である。硬質材料コーティング6にはまた、固結防止剤1が含まれており、暗色で識別可能である。硬質材料コーティング内の固結防止剤1の表面含有量は、およそ18%であり、直径は0.1~2μmの範囲である。
【0045】
図5は、本発明による方法によって生成された、すなわち、洗浄、沈降、および乾燥の手段によって固結防止剤1を調製した、スタッド11上の硬質材料コーティング6の顕微鏡写真を示している。この実施形態での硬質材料コーティング6のコーティング厚は、10μm未満である。硬質材料コーティング6にはまた、固結防止剤1が含まれており、暗色で識別可能である。硬質材料コーティング6内の固結防止剤1の表面含有量は、およそ2.5%であり、直径は0.1~2μmの範囲である。硬質材料コーティング6内の固結防止剤1の含有量は、固結防止剤1を事前に調製しない場合よりも顕著に低い。したがって、本発明による方法は、調製された固結防止剤、本明細書では具体的に、先行技術からこれまでに既知の解決策よりも、使用される粉末から超微細成分が分離されている固結防止剤を使用して、顕著により均質な硬質材料コーティング6を生成する。
【0046】
別の実施形態では、スタッド11は、硬化によって前処理される。80kgのスタッド11を、40kgのFeCr粉末および30kgの固結防止剤(本明細書ではAl)と混合し、無酸素窒素雰囲気下の常圧、7rpmおよび950℃の回転ドラムで6時間コーティングする。粉末は、20~30%のFe、および70~80%のCrを有する。コーティングされた後、スタッド11は、空冷チャンバで冷却される。コーティングプロセスの目的は、可能な限り均質であり、固結防止剤1の可能な限り低い含有量を有する、CrN硬質材料コーティングである。
【0047】
この実施形態では、粉末は、固結防止剤1、活性剤2、Fe3およびCr4の成分を有する。基材材料5は、炭素含有鋼であり、CVDプロセス中に硬質材料コーティング6が施される。硬質材料コーティング6は、粉末に由来する金属、および大気に由来する窒素によって形成される。固結防止剤1の粒子もまた、硬質材料コーティング6に埋没している。固結防止剤1は、洗浄、沈降、乾燥によって調製され、小さい粒径を有する固結防止剤の画分の含有物が分離されている。残りの固結防止剤粉末は、CVDプロセスの粉末混合物に使用される。調製された固結防止剤1は、ふるい分析で次の粒径分布を示す:0~5%>0.2mm、5~15%0.125~0.2mm、65~80%0.063~0.125mm、0~10%0.04~0.063mm、0~5%<0.04mm。硬質材料コーティング6内の固結防止剤1の含有量は、非常に低い。EDX分析は、硬質材料コーティング内に4.5原子%のAl含有量を示した。
【符号の説明】
【0048】
1 固結防止剤
2 活性剤
3 金属1
4 金属2
5 バルク材料基材材料
6 硬質材料コーティング
10 チェーン
11 スタッド
12 スリーブ
13 内側プレート
14 外側プレート
M 金属
N 炭素
図1
図2
図3
図4
図5