(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】コロニー刺激因子を標的とすることによる、緑内障および視神経症のための療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240401BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240401BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P27/02 ZNA
A61P27/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/06
(21)【出願番号】P 2020546441
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 US2019020787
(87)【国際公開番号】W WO2019173361
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502144235
【氏名又は名称】ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チョー キン-サン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ドン フェン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162884(WO,A1)
【文献】特表2018-501254(JP,A)
【文献】Trans Vis Sci Tech.,6(2),2017年,Article 10,2017;6(2):, doi:10.1167/tvst.6.2.10
【文献】Experimental Eye Research,2009年,89,665-677
【文献】Front. Aging Neurosci. ,2017年,Volume 9,Article 214
【文献】Neurobiology of Disease,93,2016年,156-171
【文献】順天堂医学,1999年,45(3),315-321
【文献】薬剤学,2012年,72(2),117-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロニー刺激因子-1
受容体(CSF1R)に特異的な抗体を含む、対象における
緑内障を予防するまたは治療する方法において使用するための医薬であって、
該方法が、該抗体を眼部に
硝子体内投与する工程を含む、
医薬。
【請求項2】
前記抗体が、網膜神経節細胞(RGC)の生存および視覚機能を保護する、請求項
1に記載の医薬。
【請求項3】
RGCの生存が、パターン網膜電図(PERG)により査定される、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
前記抗体が、CSF1受容体のある部分に特異的に結合する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記抗体が、SEQ ID NO:1または2のある部分に特異的に結合する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記抗体が、抗体断片、Fab、Fab’、F(ab’)
2断片、Fv断片、単鎖抗体、ヒト化抗体またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
少なくとも1日1回投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
2日または3日おきに1回投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記抗体が、網膜神経節細胞(RGC)の生存および視覚機能を保護する、請求項
6に記載の医薬。
【請求項10】
RGCの生存が、パターン網膜電図(PERG)により査定される、請求項9に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年3月5日に提出された米国特許仮出願第62/638,884号の恩典を主張するものであり、その全文が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
米国連邦政府の資金提供を受けた研究についての記述
本発明は、米国国立眼病研究所からR01 EY025259として授与された政府支援を得てなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は眼障害に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
緑内障は、眼圧(IOP)の上昇、および網膜神経節細胞(RGC)の死、および視神経変性を伴う一群の眼障害である。緑内障は、世界的に、不可逆的な失明の主な原因である。治療選択肢は眼圧(IOP)を下げることしかなく、それによって疾患の進行は緩やかになるが、疾患が止まることはない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、(高IOPを伴う、または高IOPとは無関係の)失明の原因の根底にある基本的な不良に対処する組成物および方法を提供する。
【0006】
したがって、対象における視神経因性障害を治療するための方法が、コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質を眼部に局所投与することにより実施される。たとえば、阻害物質は抗体である。あるいは、方法は、コロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質またはポリペプチドを眼部に局所投与することにより実施される。
【0007】
対象は、緑内障と診断されているか、または、緑内障に罹患する素因を有するともしくは緑内障を発症するリスクがあると同定されており、たとえば対象はまだ眼圧(IOP)上昇を示していない。したがって、前記組成物および方法は、この障害の早期治療に特に有益である。
【0008】
特定の態様では、対象における視神経因性障害を治療するための方法は、コロニー刺激因子-1(CSF1)もしくはその受容体の阻害物質を眼部に局所投与する工程を含む、またはコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質もしくはポリペプチドを眼部に局所投与することによる。特定の態様では、対象は緑内障と診断されている。特定の態様では、阻害物質またはポリペプチドは硝子体内に投与される。特定の態様では、阻害物質は、CSF1またはCSF1受容体に特異的に結合する抗体を含む。
【0009】
特定の態様では、対象における視神経因性障害を予防または治療する方法は、コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質およびコロニー刺激因子-2(CSF2)ポリペプチドの治療有効量を含む薬学的組成物を、眼部に局所投与する工程を含み、それによって視神経因性障害を予防または治療する。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質は、ミクログリア活性化を抑制する。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質は、網膜神経節細胞(RGC)の喪失を防ぎ、かつ視覚機能を保護する。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質は、ミクログリア活性化を抑制し、網膜神経節細胞(RGC)の喪失を防ぎ、かつ視覚機能を保護する。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質は、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab’、F(ab’)2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体およびCSF2組み換えペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1受容体抗体およびCSF2組み換えペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体および抗CSF1受容体抗体を含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体、抗CSF1受容体抗体、およびCSF2ポリペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、CSF1抗体の阻害物質および/またはCSF1受容体の阻害物質および/またはCSF2ポリペプチドを含む。
【0010】
特定の態様では、薬学的組成物は、コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質およびコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質またはポリペプチドの治療有効量を含む。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質は、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab'、F(ab')2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、サイトカインアゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
特定の態様では、対象におけるミクログリア活性化を抑制する方法は、対象にコロニー刺激因子-1(CSF1)もしくはその受容体の阻害物質を投与する工程を含むか、またはコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質もしくはポリペプチドを眼部に局所投与することによる。特定の態様では、対象は緑内障と診断されている。特定の態様では、CSF1阻害物質、CSF1受容体阻害物質、またはCSF2ポリペプチドは硝子体内に投与される。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質は、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab’、F(ab’)2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、サイトカインアゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0012】
特定の態様では、CSF1またはCSF1受容体の阻害物質が眼内投与用に製剤化される。特定の態様では、CSF1阻害物質が眼内投与用に製剤化される。特定の態様では、CSF2のポリペプチドまたはタンパク質が眼内投与用に製剤化される。
【0013】
いくつかの例では、阻害物質またはポリペプチドは硝子体内に投与される。例示的なCSF1またはCSF受容体の阻害物質としては、CSF1にまたはCSF1受容体に特異的な抗体が挙げられる。たとえば、眼内投与用に製剤化されたCSF1阻害物質。
【0014】
代替としてまたはCSF1治療とともに、療法は、眼内投与用に製剤化されたCSF2のポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0015】
本明細書に開示される各態様は、開示される他の態様の各々に適用可能と想定されている。したがって、本明細書に記載されるさまざまな要素のあらゆる組み合わせが、本発明の範囲内である。
【0016】
[本発明1001]
コロニー刺激因子-1(CSF1)もしくはその受容体の阻害物質を眼部に局所投与する工程を含むか、またはコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質もしくはポリペプチドを眼部に局所投与することによる、対象における視神経因性障害を治療するための方法。
[本発明1002]
前記対象が緑内障と診断されている、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記阻害物質またはCSF2ポリペプチドが硝子体内に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記阻害物質が、CSF1にまたはCSF1受容体(CSF1R)に特異的な抗体を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
CSF1R阻害物質が、PLX3397、GW-2580、BLZ-945、RG-7155、FPA-008、M279、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記阻害物質が小分子である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
対象における視神経因性障害を予防または治療する方法であって、
コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質およびコロニー刺激因子-2(CSF2)ポリペプチドの治療有効量を含む薬学的組成物を、眼部に局所投与する工程を含み、それによって該視神経因性障害を予防または治療する、該方法。
[本発明1008]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質が、ミクログリア活性化を抑制する、本発明1006の方法。
[本発明1009]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質が、網膜神経節細胞(RGC)の喪失を防ぎかつ視覚機能を保護する、本発明1006の方法。
[本発明1010]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質が、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab’、F(ab’)
2
断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1006の方法。
[本発明1011]
前記薬学的組成物が、抗CSF1抗体および/またはCSF1受容体(CSF1R)の阻害物質、ならびにCSF2組み換えペプチドを含む、本発明1006の方法。
[本発明1012]
CSF1R阻害物質が、PLX3397、GW-2580、BLZ-945、RG-7155、FPA-008、M279、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1006~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質およびコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質またはポリペプチドの治療有効量を含む、薬学的組成物。
[本発明1014]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質が、ミクログリア活性化を抑制する、本発明1013の薬学的組成物。
[本発明1015]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質、およびCSF2タンパク質またはポリペプチドの組み換えタンパク質が、網膜神経節細胞(RGC)の喪失を防ぎかつ視覚機能を保護する、本発明1013または1014の薬学的組成物。
[本発明1016]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質が、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab'、F(ab')2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1010の薬学的組成物。
[本発明1017]
CSF1R阻害物質が、PLX3397、GW-2580、BLZ-945、RG-7155、FPA-008、M279、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1013~1016のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1018]
対象におけるミクログリア活性化を抑制する方法であって、
該対象にコロニー刺激因子-1(CSF1)もしくはその受容体の阻害物質を投与する工程を含むか、またはコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質もしくはポリペプチドを眼部に局所投与することによる、該方法。
[本発明1019]
前記対象が緑内障と診断されている、本発明1018の方法。
[本発明1020]
CSF1の前記阻害物質および/もしくはCSF1受容体阻害物質、またはCSF2ポリペプチドが、硝子体内に投与される、本発明1018の方法。
[本発明1021]
CSF1またはその受容体の前記阻害物質が、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab’、F(ab’)
2
断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
CSF1R阻害物質が、PLX3397、GW-2580、BLZ-945、RG-7155、FPA-008、M279、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1018~1022のいずれかの方法。
[本発明1023]
眼内投与用に製剤化されているコロニー刺激因子-1(CSF1)阻害物質。
[本発明1024]
眼内投与用に製剤化されているコロニー刺激因子-1受容体(CSFR1)阻害物質。
[本発明1025]
眼内投与用に製剤化されている、コロニー刺激因子-2(CSF2)のポリペプチドまたはタンパク質。
[本発明1026]
コロニー刺激因子-1(CSF1)阻害物質、コロニー刺激因子-1受容体(CSFR1)阻害物質、コロニー刺激因子-2(CSF2)のポリペプチドもしくはタンパク質、またはそれらの組み合わせを含む、眼用製剤。
[本発明1027]
溶液、懸濁剤、ゲル、メッシュ、インプラント、または乳剤を含む、本発明1026の眼用製剤。
本発明の他の特徴および利点は、以下のその好ましい態様の説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。別途定義しない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されるものと類似のまたは同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で引用する、公開された外国特許および特許出願はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用する、アクセッション番号で示されるGenbankおよびNCBIへの提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用する、他のすべての発表された参考資料、書類、論文、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。不一致がある場合は、定義を含め、本明細書が優先される。また、材料、方法、および例は、あくまで説明のためであり、限定的な意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1A~1Cは、健常マウス(
図1A;Ctr)、ならびにマイクロビーズ注射後3日目(3D MB)および7日目(7D MB)のマウス(それぞれ
図1B~1C)の網膜断面のCSF1発現の画像である。
図1Dは、健常網膜(Ctr)で検出された、ならびにマイクロビーズ注射後3日目(3)および7日目(7)のマウスから採取した網膜で検出された、CSF1 mRNAレベルの相対変化倍率を示す棒グラフである。略記: ONL(外顆粒層);OPL(外網状層;INL(内顆粒層);IPL(内網状層);GCL(神経節細胞層)。**は、P値<0.001を表す。これらの図(
図1A~1D)は、健常網膜および緑内障網膜におけるCSF1の発現を示している。
【
図2】
図2Aは、健常(Ctr)マウス、ならびにマイクロビーズ注射後7日目(MB 7D)および14日目(MB 14D)の緑内障マウスの網膜断面の一連の代表的な画像である。
図2Bは、RT-PCRにより測定された対照網膜および緑内障網膜のCSF2 mRNAレベル定量化を示す棒グラフである。
図2Cは、対照網膜および緑内障網膜におけるCSF2およびローディングコントロールとしてのβ-アクチンのタンパク質レベルを示す、代表的なウエスタンブロットの結果の写真である。
図2Dは、健常網膜ならびにマイクロビーズ注射後7日目および14日目の緑内障網膜のCSF2タンパク質レベル定量化を示す棒グラフであり、後者は健常網膜に対し正規化されている。*および***は、P値<0.05および0.001を表す。GCL=神経節細胞層;IPL=内網状層;INL=内顆粒層;OPL=外網状層、およびONL=外顆粒層。これらの図(
図2A~D)は、健常網膜および緑内障網膜におけるCSF2の発現を示している。
【
図3】
図3Aは、CSF1R Ab、CSF2、CSF1R Ab+CSF2、または対照ビヒクルのいずれかの硝子体内注射をD3およびD7に受けたマウスの、ベースラインからMB注射後42日目/6週目までの眼圧(IOP)レベルを示す線グラフである。
図3Bは、反対側の健常な眼に対する緑内障の眼の陽性暗所閾値反応(pSTR)の比率を示す棒グラフである。
図3Cは、OMRのコントラスト感度(CS)を示す棒グラフである。
図3Dは、対照(Ctr)、ビヒクル(Veh)、ならびにCSF1R Ab、CSF2、およびCSF2+CSF1 Ab処置群の網膜神経節細胞(RGC)密度を示す棒グラフである。なお、Ctr群は無損傷の眼である。
図3E~3Gは、マイクロビーズ注射後6週目のBrn3a+ RGC(赤)の顕微鏡写真である。これらの図(
図3A~G)では、「#」および「*」は、それぞれ対照およびビヒクル群と比較した統計学的分析を表す。*、**、および***は、それぞれP値<0.05、0.01、および0.001を表す。#、##、および###は、P値<0.05、<0.01、および<0.001を表す。これらの図(
図3A~3G)は、CSFをモジュレートすることにより、当技術分野で認知されているヒト緑内障のマウスモデル(マイクロビーズで誘導)において、網膜機能および視覚能力が保護され、かつ神経細胞喪失が防御されることを実証している。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、緑内障SPFおよび無菌マウスにおけるサイトカインプロファイルを示すグラフである。ルミネックスアッセイによる、眼圧(IOP)上昇後1週目、2週目、および8週目の特定病原体除去(SPF)マウスおよび無菌(GF)マウスの網膜におけるコロニー刺激因子1(CSF1)の血清レベルの定量化(
図4A)およびCSF2の血清レベルの定量化(
図4B)。緑内障GFマウスではSPFマウスと比べて、一貫してCSF1の下方制御およびCSF2の上方制御があることに注目されたい。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、マイクロビーズ(MB)注射マウスにおける上方制御されたCSF1/CSF1R発現を示すグラフである。qPCR定量化の結果は、マイクロビーズで誘導して眼圧を上昇させた後のマウス網膜におけるCSF1発現(
図5A)およびCSF1R発現(
図5B)の上方制御を実証している。
【
図6】
図6A、6B、および6Cは、MB注射マウスにおけるCSF2発現の下方制御を実証する一連のグラフおよびウエスタンブロットである。MBで誘導して眼圧を上昇させた後のマウス網膜におけるCSF2およびCSF2R発現の下方制御を示す、qPCR(
図6A)およびウエスタンブロット(
図6B、6C)の定量化の結果。
【
図7】実験計画を示す概略図である。CSF1R抗体(CSF1R Ab)の投与によるCSF1の阻害、および/またはCSF2シグナリングの促進により、緑内障による破損からRGCを保護できる、という仮説を立てた。4つの実験群を提案し、MB注射による高IOP誘導後、ビヒクル(PBS)、CSF1R Ab、CSF2、またはCSF1R+CSF2の処置を受けたマウスを調査した。
【
図8】マウス全群における眼圧(IOP)レベルを示すグラフである。全期間の間中IOPレベルをモニタリングした。MB注射後、IOPレベルは、すべての実験群でベースラインの10 mmHgから増加し、16 mmHgよりも上に維持された。
【
図9】MB注射後のCSF1R Abおよび/またはCSF2処置により減少したRGC喪失を示すグラフである。対照(Ctr)マウスならびにビヒクル、CSF1R Ab、CSF2、およびCSF1R Ab+CSF2処置を受けた緑内障(MB注射)マウスのRGC数。
【
図10】MB注射後のCSF1RAb/CSF2処置によりpSTRが増大したこと示すグラフである。MB注射前(Ctr)、MB注射後4週間(G4w)および6週間(G4w)の、ビヒクル、CSF1RAb、CSF2、またはCSF1RAb+CSF2処置を受けたMB誘導性緑内障マウスのpSTRの振幅を査定した。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、MB注射後のCSF1RAb/CSF2処置により視覚機能が向上したことを実証するグラフである。MB注射前(Ctr)、MB注射後4週間(G4w)および6週間(G4w)の、ビヒクル、CSF1RAb、CSF2、またはCSF1RAb+CSF2処置を受けたMB誘導性緑内障マウスの視覚コントラスト感度および視力の査定。
【
図12】高IOPがlba-1発現を誘導したことを示すグラフである。MB注射後0日目、3日目、7日目、14日目のマウス網膜におけるlba-1レベルのqPCR定量化。
【
図13】高IOPがミュラーグリアを活性化することを実証するウエスタンブロットおよびグラフである。MB注射後0日目、3日目、7日目、14日目のマウス網膜における活性化したミュラーグリアのマーカー、GFPAの発現のウエスタンブロット定量化。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
ミクログリアの活性化は、緑内障の神経変性の進行において重要な役割を果たす。コロニー刺激因子1(CSF1)およびコロニー刺激因子2(CSF2)が、ミクログリア機能の調節による緑内障性の神経細胞喪失に関与している。緑内障のマウスは、上方制御されたCSF1レベル、およびCSF2の下方制御を示した。さらに、緑内障マウスモデルにおけるCSF2組み換えタンパク質の追加、または抗CSF1もしくはCSF1受容体に対する抗体の硝子体内注射によるCSF1の中和によって、緑内障マウスモデルにおいて有意にミクログリア活性化が抑制され、網膜神経節細胞(RGC)の喪失が防御され、かつ視覚機能が保護された。このデータは、CSF経路をモジュレートすることが、緑内障および/または視神経症を有する対象に臨床的利益を与えるのに有用であることを示している。
【0019】
コロニー刺激因子
CSF-1は、主としてプロテオグリカンの形態で、およそ10 ng/mLの生物学的活性濃度で循環血中に存在する。構成的には間葉系および上皮系の起源をもつ、非常に多様な細胞により産生される。循環血中のレベルは、病因にかかわらず炎症、がん、および慢性炎症性疾患などの多くの異なる病態で増大する。CSF1は、単核食細胞の生存、増殖、および分化を制御し、かつ女性の生殖器官の細胞を調節する。CSF1はまた、卵巣、子宮内膜、乳房、および骨髄系リンパ系組織のがんでは自己分泌および/または傍分泌の役割を果たすこともある。CSF1レベルはまた、妊娠中に循環血中で上昇し、胎盤形成に寄与する。マウスでもヒトでも、分娩前後に組織および循環血中のCSF1の急増がある。炎症において、CSF1は、動員されたマクロファージ自体によって産生されることもあるが、少なくともマウスでは大半のマクロファージはCSF1を産生せず、このタンパク質の非存在下で細胞死に至る。正常な定常状態の条件下では、CSF1の産生は、CSF1受容体(CSF1R)による受容体媒介性飲食作用と、その後の細胞内破壊を通じて、組織マクロファージによって消費されることでバランスがとれている。
【0020】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子は、GM-CSFおよびCSF2としても知られる単量体糖タンパク質であり、マクロファージ、T細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞、および線維芽細胞によって分泌され、サイトカインとして機能する。CSF2は、顆粒球およびマクロファージの産生、分化、および機能を制御する。天然のCSF2の薬学的類似体はサルグラモスチムおよびモルグラモスチムと呼ばれる。CSF2は、ケモセラピー後に白血球の産生を刺激する薬として用いられ得る。HIV感染者のワクチンアジュバントとして用いられることもある。
【0021】
コロニー刺激因子3(CSF3)は、骨髄を刺激して顆粒球および幹細胞を産生させ血流中に放出させる、糖タンパク質である。機能的にはサイトカインおよびホルモンである、コロニー刺激因子の一種類であり、多数の異なる組織によって産生される。天然のCSF3の薬学的類似体はフィルグラスチムおよびレノグラスチムと呼ばれる。CSF3はまた、好中球前駆体および成熟好中球の生存、増殖、分化、および機能を刺激する。
【0022】
CSF1およびCSF2は、単球/マクロファージの作用を媒介する際に主要な役割を果たし、一方CSF2およびCSF3は、顆粒球(好中球)を調節する。マクロファージは、活性化後、サブタイプM1とM2とに二極化する。CSF2は、M1表現型を促進し、これはTNF-αおよびIL-12などの炎症促進性サイトカインを分泌し、免疫応答を刺激して細菌または腫瘍に対する防御力を高める。これに対し、CSF1は、抗炎症性サイトカインを分泌し組織修復および血管新生を促進するM2表現型を刺激する。
【0023】
CSF1およびCSF2の受容体は、チロシンキナーゼファミリーに属し、PI-3/AKT、MAPK、STAT経路の下流経路を活性化して細胞の生存/増殖、分化、および活性化のシグナルを供給する。
【0024】
緑内障または網膜神経変性疾患におけるCSF1および/またはCSF2の役割は、本発明の前には同定されていなかった。
【0025】
データ(
図1A~1D、
図2A~1D、
図3A~3F、
図5A、5B、
図9、
図10、
図11A、11B)は、ヒト緑内障のマウスモデルにおいて、CSF1またはCSF1受容体の妨害ならびにCSF2タンパク質の投与/増強が、網膜神経節細胞の変性を防ぎ、かつ視覚能力を保護したことを示した。これらのデータは、緑内障性神経破損の病理発生について新たな知見をもたらし、緑内障患者への硝子体内注射によるCSF1/CSF1受容体活性の妨害および/またはCSF2組み換えタンパク質の投与の治療可能性を実証している。そのような剤の多数の硝子体注射は、眼科クリニックでは患者に対する一般的な低リスクの診療行為である。緑内障は、視神経症の最も一般的な形態である。本組成物および方法は、他の形態の視神経症、または脳および脊髄の類似の神経変性状態の治療にも適用可能である。
【0026】
CSFによるミクログリア活性化の調節は緑内障の神経変性を推進する
本明細書に記載される諸研究により、細菌叢の非存在下で飼育したマウス(無菌マウス)は眼圧(IOP)が上昇しても網膜神経節細胞(RGC)の破損を生じないことが示された。さらに、データにより、無菌マウスでは、コロニー刺激因子1(CSF1)の発現が下方制御されたが、CSF2は上方制御されたことが示された。次いで研究を実施して、CSF1およびCSF2が、緑内障のRGC喪失を媒介する相対する役割を果たしたかどうかを判定した。本明細書では、緑内障の標準マウスモデルにおけるCSF1およびCSF2の発現および関与について報告する。
【0027】
成体B6マウスの前房にマイクロビーズ(MB)を注射して高IOPを誘導した。CSF1/2およびそれらの受容体の発現について、MB注射後の異なる時点で、免疫染色および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により調べた。高IOPのマウスにCSF2および/またはCSF1中和抗体を硝子体内に投与した。抗brn3a染色によりホールマウント網膜のRGCを標識した。
【0028】
MB注射から2週間後の網膜で、CSF1の発現は上方制御されたことが見出されたが、CSF2は下方制御されていた。また、このデータによると、生理食塩水で処置した対照マウスと比べて、CSF2にまたはCSF1に特異的な抗体、たとえば中和抗体の投与により、緑内障性RGC喪失が低減または軽減した。CSF1受容体はミクログリアおよびRGCに結合したことが見出され、一方CSF2受容体はミュラー細胞およびRGCで発現していた。
【0029】
これらのデータは、IOPが上昇するとCSF1およびCSF2がミクログリアおよびミュラー細胞の活性化において相対する役割を果たし、緑内障性RGC変性を推進することを示している。これらの知見は、CSFシグナリングの阻害および/またはCSFシグナリングの増強が、緑内障などの視神経因性障害を有する対象におけるRGC喪失および視力喪失を低減または防御するのに有効であることを示している。
【0030】
CSF1、CSF2
UniProtKB-P09603(CSF1_HUMAN)を以下に示す(SEQ ID NO: 1):
。
【0031】
ヒトコロニー刺激因子1受容体(CSF1-R)アミノ酸配列AAH47521.1を以下に示す(SEQ ID NO: 2):
。
【0032】
SEQ ID NO: 2; GenBankアクセッションAAH47521.1、参照により本明細書に組み入れられる。
【0033】
例示的なCSF1-Rの指標となる残基、ドメイン、および断片には、限定ではないが、残基28~85(免疫グロブリン様ドメイン)、残基207~293(免疫グロブリン様ドメイン)、残基209~290(免疫グロブリン様ドメイン)、残基299~400(幹細胞因子受容体(SCFR)の4番目の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン)、残基401~495(免疫グロブリン様ドメイン)、542~914(タンパク質キナーゼ、触媒ドメイン)、または残基588~591、594、596、614、616、647、663~666、778、782..783、785、ならびに795および796(ATP結合部位)が含まれる。CSF1-Rタンパク質の断片は、全長タンパク質の長さよりも短く、たとえば断片は、長さが少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200残基、またはそれ以上であるが、上記のCSF1-Rの場合はたとえば972残基よりも短い。
【0034】
ヒトCSF1-R核酸配列BC047521.1(開始コドンおよび終止コドンに下線を引いている)(SEQ ID NO: 3):
。
【0035】
CSF2(GM-CSFとしても知られる)の配列(NP_000749.2(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子前駆体;全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている)(SEQ ID NO: 4):
。
【0036】
CSF1およびCSF1Rの抗体および阻害物質
潜在的な免疫調節および抗悪性腫瘍活性を有する、サイトカインコロニー刺激因子1(CSF1;CSF-1;マクロファージコロニー刺激因子;M-CSF)に対するヒト化免疫グロブリン(Ig)G2モノクローナル抗体(mAb)、抗CSF1モノクローナル抗体PD-0360324は、CSF1を標的とし、結合し、そして中和する。これにより、CSF1は、さまざまな免疫細胞、たとえば単球およびマクロファージ上に発現しているその受容体CSF1R(CD115;M-CSFR)と結合できなくなる。これにより、これらの細胞におけるCSF1R活性化およびCSF1R媒介性シグナリングが妨げられ、したがって単球分化が阻害され、マクロファージ活性が妨害され、それらによる炎症性メディエーター産生が低下し、炎症が低減される。腫瘍微小環境におけるCSF1R依存性腫瘍関連マクロファージ(TAM)の活性および増殖を妨害することによって、PD-0360324は、TAM媒介性免疫抑制を低下させ、調節性T細胞(Treg)を減少させ、免疫系を再活性化させ、そして細胞毒性T細胞による浸潤の増大により媒介される抗腫瘍細胞応答を向上させる。TAMは、免疫抑制、ならびに腫瘍細胞の増殖および生存において主要な役割を果たす。CSF-1は、単球およびマクロファージの増殖、分化、および生存の調節において主要な役割を果たす。
【0037】
例示的な抗体としては、R&D systems(ミネソタ州ミネアポリス)から入手できるもの、たとえばマウス中和M-CSF抗体;カタログ番号: MAB416-SP、またはeBioscience(ThermoFischer);CD115(c-fms)モノクローナル抗体;カタログ番号: AFS9またはPeprotech(ニュージャージー州ロッキーヒル 08553)米国;組み換えマウスGM-CSF;カタログ番号: 315-03が挙げられる。
【0038】
潜在的な抗悪性腫瘍活性を有する経口的に生体利用可能なコロニー刺激因子1受容体(CSF-1R;CSF1R)阻害物質、CSF1R阻害物質BLZ945(4-[2((1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアミノ)-ベンゾチアゾール-6-イルオキシ]-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミド)は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)上に発現したCSF1Rに選択的に結合し、CSF1Rの活性を妨害し、CSF1R媒介性シグナル伝達経路を阻害する。これにより、TAMの活性および増殖が阻害され、既存のTAMの免疫抑制特性が再プログラムされる。まとめると、それによって腫瘍微小環境におけるTAM媒介性免疫抑制が低下し、免疫系が再活性化し、T細胞が媒介する抗腫瘍細胞応答が向上する。マクロファージコロニー刺激因子受容体(M-CSFR)およびCD115(表面抗原分類115)としても知られるCSF1Rは、そのリガンド、コロニー刺激因子1(CSF1)の細胞表面受容体であり、この受容体は腫瘍微小環境においてTAMにより過剰発現し、免疫抑制および腫瘍細胞増殖誘導の両方において大きな役割を果たす。
【0039】
潜在的な抗悪性腫瘍活性、マクロファージチェックポイント阻害活性、および免疫調節活性を有する、チロシンキナーゼ受容体コロニー刺激因子1受容体(CSF1R;CSF-1R;C-FMS;CD115;M-CSFR)の別の阻害物質、DCC-3014は、単球、マクロファージ、および破骨細胞上に発現したCSF1Rを標的とし、結合し、そしてCSF1Rリガンドコロニー刺激因子-1(CSF-1)およびインターロイキン-34(IL-34)のCSF1Rとの結合を阻害する。これにより、これらの細胞におけるCSF1R活性化およびCSF1R媒介性シグナリングが妨げられる。これにより、マクロファージおよび単球による炎症性メディエーターの産生が妨害され、炎症が低減される。CSF1R依存性腫瘍関連マクロファージ(TAM)の腫瘍微小環境への動員および活性を妨害することによって、DCC-3014は、マクロファージによる免疫調節活性を阻害し、T細胞浸潤および抗腫瘍T細胞免疫応答を増強させ、それによって腫瘍細胞の増殖を阻害する。TAMは腫瘍微小環境において主要な役割を果たし、免疫抑制を可能にする。TAMは炎症、腫瘍細胞増殖、血管新生、侵入性、および生存を促進する。
【0040】
がん患者で臨床試験中の他のCSF1受容体阻害物質の例としては、ペキシダルチニブ(PLX3397、PLX108-01)、PLX7486、ARRY-382、JNJ-40346527、BLZ945、エマクツズマブ(RG7155)、AMG820、IMC-CS4(LY3022855)、MCS110、GW-2580、Gleevec(イマチニブメシル酸塩)が挙げられる。(Cannarile, Michael A et al. “Colony-stimulating factor 1 receptor (CSF1R) inhibitors in cancer therapy” Journal for immunotherapy of cancer vol. 5,1 53. 18 Jul. 2017, doi:10.1186/s40425-017-0257-y)。
【0041】
PLX73086(AC708)は、CSF1Rの小分子阻害物質であり、CSF1R活性化の低下をもたらし、そして腫瘍関連マクロファージの減少により血管新生阻害に対する抵抗性を回復させ得る(Lyons, Y.A. et al., Oncotarget. 2017 Aug 24;8(57):96496-96505. doi: 10.18632/oncotarget.20410. eCollection 2017 Nov 14)。Chiauranib(CS2164)は、AURKB、CSF-1R、VEGFR、KIT、およびPDGFRAを阻害するマルチキナーゼ阻害物質であり、腫瘍成長および血管新生の減少をもたらす(Zhou, Y. et al., Cancer Sci. 2017 Mar;108(3):469-477. doi: 10.1111/cas.13141. Epub 2017 Mar 7)。Sprycel(ダサチニブ)は、タンパク質キナーゼのSRCファミリー、BCR-ABL、およびABLの阻害物質であり、KIT、DDR1/2、PDGFRA/B、およびEPHA2といった他のキナーゼに対しさらに活性を有し、細胞増殖を妨げる(Kothiwale S. et al., Drug Discov Today. 2015 Feb;20(2):255-61. doi: 10.1016/j.drudis.2014.09.025. Epub 2014 Oct 7)。DCC-3014は、CSF1Rを阻害し、他の作用物質との組み合わせにより抗腫瘍免疫応答の増大をもたらし得る(Cancer Res 2016;76(14 Suppl):Abstract nr 4889)。Debio 0617Bは、SRC、JAK、およびABL、クラスIIIキナーゼ、CSF1R、FLT3、KIT、およびPDGFR、ならびにクラスVキナーゼ、VEGFR1/2/3のマルチキナーゼ阻害物質であり、Stat3およびStat5シグナリングの阻害をもたらし得、腫瘍細胞の増殖および転移の阻害をもたらし得る(Murone, M. et al., Mol Cancer Ther. 2016 Oct;15(10):2334-2343. Epub 2016 Jul 20)。ドビチニブ(TKI258)は、Flt3、c-Kit、CSF1R、FGFR1-4、VEGFR1-3、ならびにPDGFRαおよびβなどの多重受容体チロシンキナーゼを標的とし、腫瘍成長の減少をもたらし得る(Lesca E., et al., J Mol Biol. 2014 Nov 11;426(22):3744-3756. doi: 10.1016/j.jmb.2014.09.004. Epub 2014 Sep 16; Andre F. et al., Clin Cancer Res. 2013 Jul 1;19(13):3693-702. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-13-0190. Epub 2013 May 8)。エマクツズマブ(RG7155)は、CSF1Rの二量体化を阻害するモノクローナル抗体であり、リガンド依存性およびリガンド非依存性のシグナリングの減少をもたらす(Ries C. H. et al., Cancer Cell. 2014 Jun 16;25(6):846-59. doi: 10.1016/j.ccr.2014.05.016. Epub 2014 Jun 2)。FF-10101は、遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)を含めたFlt3、および既知の耐性変異(D835Y、Y842C、Y842H、またはF691L)の第二世代の不可逆的阻害物質であり、かつKitおよびCsf1r(Fms)も阻害する(Yamaura T. et al., Blood. 2018 Jan 25;131(4):426-438. doi: 10.1182/blood-2017-05-786657. Epub 2017 Nov 29)。GW2580は、CSF-1RのATP競合性選択的阻害物質であり、腫瘍細胞増殖の減少をもたらし得る(Ryder M. et al., PLoS One. 2013;8(1):e54302. doi: 10.1371/journal.pone.0054302. Epub 2013 Jan 23)。JNJ-40346527はCSF1Rの小分子阻害物質である(von Tresckow B. et al., Clin Cancer Res. 2015 Apr 15;21(8):1843-50. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-14-1845. Epub 2015 Jan 27)。Ki20227はCSF1Rを阻害し、CSF依存性細胞増殖の減少をもたらし得る(Ohno H. et al., Mol Cancer Ther. 2006 Nov;5(11):2634-43)。レスタウルチニブ(CEP-701)(Hexner E. O. et al., Blood. 2008 Jun 15;111(12):5663-71. Epub 2007 Nov 5)。リニファニブ(ABT-869)は、FLT1(VEGFR1)、CSF-1R、KDR(VEGFR2)、FLT3、およびKITに対し特異性を有する受容体チロシンキナーゼ阻害物質であり、細胞増殖および腫瘍成長の阻害、ならびに腫瘍縮小をもたらし得る(Albert D. H. et al., Mol Cancer Ther. 2006 Apr;5(4):995-1006)。Rydapt(ミドスタウリン)はマルチキナーゼ阻害物質である(Ashman L.K. et al., Expert Opin Investig Drugs. 2013 Jan;22(1):103-15. doi: 10.1517/13543784.2013.740010. Epub 2012 Nov 6)。タシグナ(ニロリチニブ)は、BCR-ABL、PDGFR、KIT、DDR、およびCSF-1Rなどの数種類のチロシンキナーゼを阻害する(Blay J.Y. et al., Semin Oncol. 2011 Apr;38 Suppl 1:S3-9. doi: 10.1053/j.seminoncol.2011.01.016)。ペキシダルチニブ(PLX3397)は、KIT、CSF1R、FLT3、およびFLT3/ITDなどの多重受容体チロシンキナーゼを阻害する(Smith C. C. et al., Cancer Discov. 2015 Jun;5(6):668-79. doi: 10.1158/2159-8290.CD-15-0060. Epub 2015 Apr 6)。PLX7486は、CSF1R、TRKA、TRKB、およびTRKCに結合し、阻害する。ネクサバール(ソラフェニブ)は、RAFキナーゼ、VEGFR2、VEGFR3、PDGFR-β、KIT、FLT3、RET、およびCSF1Rなどの数種類のキナーゼに対する活性を有するマルチキナーゼ阻害物質である(Ullrich K. et al., Br J Haematol. 2011 Nov;155(3):398-402. doi: 10.1111/j.1365-2141.2011.08685.x. Epub 2011 Apr 22)。スーテント(スニチニブ)は、KDR(VEGFR2)、PDGFR、c-KIT、FLT3、RET、およびCSF1Rを阻害する(Subbiah V. et al., J Hematol Oncol. 2014 Aug 1;7:52. doi: 10.1186/s13045-014-0052-x)。
【0042】
特定の態様では、CSF1R阻害物質は、PLX3397(Tahmasebi F. et al., J Cell Biochem. 2019 Jan 10. doi: 10.1002/jcb.28344)、GW-2580(Gerber Y. N. et al., FronT Cell Neurosci. 2018; 12: 368.)、BLZ-945(Pyonteck S. M. et al., Nat Med. 2013 Oct;19(10):1264-72. doi: 10.1038/nm.3337)、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、CSF1R中和抗体は、RG-7155、FPA-008、M279(たとえばAMGENから論文を入手可能)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0043】
CSF1またはその受容体に特異的に結合する抗体は、CSF1分子の機能または活性を阻害する。SEQ ID NO: 1または2に対して作製された抗体は、当技術分野で公知の任意の手段により生成することができる。特定の態様では、抗体またはその断片は、SEQ ID NO: 1または2とそれぞれ少なくとも50%の配列同一性を有するCSF1ペプチドまたはCSF1Rに特異的に結合する。特定の態様では、抗体またはその断片は、SEQ ID NO: 1または2とそれぞれ少なくとも75%の配列同一性を有するCSF1ペプチドまたはCSF1Rに特異的に結合する。特定の態様では、抗体またはその断片は、SEQ ID NO: 1または2とそれぞれ少なくとも95%の配列同一性を有するCSF1ペプチドまたはCSF1Rに特異的に結合する。特定の態様では、抗体またはその断片は、SEQ ID NO: 1または2のエピトープに特異的に結合する。
【0044】
特定の態様では、CSF1およびその受容体の阻害物質は、CSF2と比べてCSF1およびその受容体を優先的に阻害する。特定の態様では、CSF1阻害物質またはCSF1R阻害物質は、CSF1の発現および/または活性および/または機能を、CSF2の活性または機能と比べて約1倍阻害する。特定の態様では、CSF1阻害物質またはCSF1R阻害物質は、CSF1の発現および/または活性および/または機能を、CSF2の活性または機能と比べて約2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、またはそれ以上阻害する。特定の態様では、CSF1阻害物質またはCSF1R阻害物質は、CSF1の発現および/または活性および/または機能を、CSF2の活性または機能と比べて少なくとも5%阻害する。特定の態様では、CSF1阻害物質またはCSF1R阻害物質は、CSF1の発現および/または活性および/または機能を、CSF2の活性または機能と比べて少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上阻害する。
【0045】
CSF1およびCSF2の活性は、当技術分野において公知の、および本明細書でも詳述する、任意の数のアッセイにより測定することができる。たとえば、mRNA発現、タンパク質発現(
図1A~1C、
図2A~2D、
図5A~5B、
図6A~6C)、眼圧(
図3A~3G、
図8、
図12)、サイトカインプロファイル(
図5A、5B)、RGC喪失(
図9)、陽性暗所閾値反応(pSTR)(
図10)、視覚機能(
図11A、11B)、lba-1発現(
図12)、ミュラーグリア活性化(
図13)。阻害物質が、CSF2よりもCSF1またはその受容体を特異的に阻害するかどうかは、同様のアッセイにより判定することができる。たとえば、CSF1、CSF1R対CSF2の発現。これらのアッセイを、ルーチンの臨床検査と組み合わせてもよい。
【0046】
網膜神経節細胞(RGC)の機能は、網膜内層神経細胞の活性にウエイトを置くERG技術の変形技術により、緑内障の実験的および遺伝的モデルで非侵襲的に査定することができる。最もわかりやすい技術は、機能性RGCの存在に選択的に依存する、明暗反転の格子またはチェッカーボードに対する反応のパターン網膜電図(PERG)である。緑内障モデルでは、PERGはRGCの組織損失前に変化し得、PERGの変化は、中程度のIOP低下で逆になる場合、または中程度のIOP上昇で増悪する場合がある。特定の光刺激条件下で、閃光ERGが、近位網膜で生じる電気活性を反映し得る、かついくつかの実験的緑内障モデルで変わり得る成分を表示する。(陽性暗所閾値反応、pSTR;陰性暗所閾値反応、nSTR;明順応陰性反応、PhNR;律動様小波、OP;多焦点ERG、mfERG)(Vittorio Porciatti, Exp Eye Res. 2015 Dec; 141: 164-170)。
【0047】
いくつかの態様では、抗原結合性ドメインは、ヒト化抗体またはその断片である。「ヒト化」抗体は、すべてのまたは実質的にすべての相補性決定領域(CDR)アミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、かつすべてのまたは実質的にすべてのフレームワーク領域(FR)アミノ酸残基がヒトFRに由来している抗体である。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでいてもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、典型的にはヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化されているが、親の非ヒト抗体の特異性および親和性は保持している、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、たとえば抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(たとえばCDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0048】
いくつかの態様では、抗体の重鎖および軽鎖は、全長であってもよいか、または抗原結合性部分(Fab、F(ab')2、Fv、または単鎖Fv断片(scFv))であってもよい。他の態様では、抗体重鎖定常領域は、たとえばIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAl、IgA2、IgD、およびIgEより選択され、特に、たとえばIgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4から、より具体的にはIgG1より選択される(たとえばヒトIgG1)。別の態様では、抗体軽鎖定常領域は、たとえばカッパまたはラムダ、特にカッパより選択される。
【0049】
提供される抗体には、抗体断片も含まれる。「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合する該インタクト抗体の一部分を含む、インタクト抗体ではない分子を指す。抗体断片の例としては、限定ではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ジアボディ;直鎖状抗体;可変重鎖(VH)領域、単鎖抗体分子、たとえばscFv、および単一ドメインVH単一抗体;ならびに抗体断片で形成された多特異性抗体が挙げられる。特定の態様では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片、たとえばscFvである。
【0050】
特定の態様では、抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部分、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。
【0051】
抗体断片は、限定ではないが、インタクト抗体のタンパク質消化や組み換え宿主細胞による産生などのさまざまな技術により作製することができる。いくつかの態様では、抗体は、組み換え生成された断片であり、たとえば、自然に生じることのない配置、たとえば2つまたはそれ以上の抗体領域または鎖が合成リンカー、たとえばペプチドリンカーによって連結されているもの、および/または自然に存在するインタクト抗体の酵素消化により生成できないものを含む断片である。いくつかの局面では、抗体断片はscFvである。
【0052】
特定の態様では、抗体または抗体断片は、CSF1またはCSF1受容体に対し高い結合親和性を有する。諸態様では、増大した結合親和性は、基準抗原が引き起こすよりも高い。
【0053】
特定の態様では、CSF1の阻害物質は、CSF1の発現または活性を阻害する能力に基づき選択される。特定の態様では、CSF1の阻害物質は、CSF1受容体の発現もしくは活性を阻害する能力、またはCSF1のCSF1受容体との結合を阻害する能力に基づき選択される。特定の態様では、スクリーニングアッセイに基づき同定されたこれらの潜在的治療剤が、治療活性について試験するために選択される。特定の態様では、治療活性は、ミクログリア活性化の抑制、網膜神経節細胞(RGC)の喪失の防御、および視覚機能の保護である。
【0054】
候補/被験剤: あらゆる自然に存在するまたは人工的に作製された剤を含め、さまざまな候補剤、たとえばCSF1およびその受容体の阻害物質を、本発明のスクリーニング法で使用することができる。それらは、抗体、小分子、タンパク質、ペプチド、小分子有機化合物、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、核酸、およびさまざまな構造的類似体、またはそれらの組み合わせなど、どの化学物質クラスであってもよい。いくつかの態様では、スクリーニング法は、候補剤のコンビナトリアルライブラリーを用いる。コンビナトリアルライブラリーは、段階的に合成され得る多種類の化合物について作製され得る。そのような化合物としては、ポリペプチド、βターンミメティック、核酸、ポリサッカライド、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、ヘテロ環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN-置換グリシン、およびオリゴカルバマートが挙げられる。巨大な化合物コンビナトリアルライブラリーを、AffymaxのWO 95/12608、AffymaxのWO 93/06121、コロンビア大学のWO 94/08051、PharmacopeiaのWO 95/35503、およびScrippsのWO 95/30642(各々あらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているコード化合成ライブラリー(ESL)法により構築することができる。ペプチドライブラリーは、ファージディスプレイ法により作製されることもできる。たとえばDevlinのW0 91/18980を参照されたい。
【0055】
候補剤は、多くの化学物質クラスを含むが、典型的には、小分子有機化合物などの有機化合物、オリゴヌクレオチドなどの核酸、ペプチド、または抗体である。小分子有機化合物は、好適には、たとえば約40または50よりも大きいが約2,500よりは小さい分子量を有し得る。候補剤は、タンパク質および/またはDNAと相互作用する官能基を含み得る。
【0056】
候補剤は、合成または天然の化合物ライブラリーなどの非常に多様な供給源から得ることができる。たとえば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を含め、非常に多様な有機化合物およびバイオ分子のランダムおよび定方向の合成に、多くの手段を利用可能である。あるいは、たとえば細菌、菌、および動物の抽出物の形態の天然化合物ライブラリーが利用可能であるかまたは容易に生成される。
【0057】
化学ライブラリー: コンビナトリアル化学の発展により、数百から数千種類の別々の化合物を高速かつ経済的に合成できるようになった。これらの化合物は、典型的には、高効率のスクリーニング用に設計された手ごろなサイズの小分子ライブラリーとして整列させられる。コンビナトリアル法は、新規化合物の同定に好適な、偏りのないライブラリーを作製するのに用いられ得る。その上、すでに生物学的活性が測定されている単一の親化合物に由来する、より小規模かつ多様でないライブラリーを作製することができる。
【0058】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学合成または生物学的合成のいずれかにより、試薬などの化学的「基本成分」をいくつか組み合わせることによって作製される、多様な化学物質の集合である。たとえば、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖状コンビナトリアル化学ライブラリーは、所与の化合物長さ(すなわちポリペプチド化合物のアミノ酸数)について、一組の化学的基本成分(アミノ酸)を多数の組み合わせで、かつ考えられるすべての方法で組み合わせることにより、形成される。このような化学的基本成分のコンビナトリアル混合により、何百万種類という化学物質を合成することができる。
【0059】
「ライブラリー」は、2~5千万種類の多様なメンバー化合物を含む場合がある。好ましくは、ライブラリーは、少なくとも48種類の多様な化合物、好ましくは96種類またはそれ以上の多様な化合物、より好ましくは384種類またはそれ以上の多様な化合物、より好ましくは1万種類またはそれ以上の多様な化合物、好ましくは10万種類を超える多様なメンバー、最も好ましくは100万種類を超える多様なメンバー化合物を含む。「多様な」とは、ライブラリーの化合物の50%超が、該ライブラリーの他のどのメンバーとも同一ではない化学構造を有することを意味する。好ましくはライブラリーの化合物の75%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは約99%超が、この集合の他のどのメンバーとも同一ではない化学構造を有する。
【0060】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製は当業者には周知である。概説等は、Thompson et al., Synthesis and application of small molecule libraries, Chem Rev 96:555-600, 1996; Kenan et al., Exploring molecular diversity with combinatorial shape libraries, Trends Biochem Sci 19:57-64, 1994; Janda, Tagged versus untagged libraries: methods for the generation and screening of combinatorial chemical libraries, Proc Natl Acad Sci USA. 91:10779-85, 1994; Lebl et al., One-bead-one-structure combinatorial libraries, Biopolymers 37:177-98, 1995; Eichler et al., Peptide, peptidomimetic, and organic synthetic combinatorial libraries, Med Res Rev. 15:481-96, 1995; Chabala, Solid-phase combinatorial chemistry and novel tagging methods for identifying leads, Curr Opin Biotechnol. 6:632-9, 1995; Dolle, Discovery of enzyme inhibitors through combinatorial chemistry, Mol. Divers. 2:223-36, 1997; Fauchere et al., Peptide and nonpeptide lead discovery using robotically synthesized soluble libraries, Can J. Physiol Pharmacol. 75:683-9, 1997; Eichler et al., Generation and utilization of synthetic combinatorial libraries, Mol Med Today 1: 174-80, 1995;およびKay et al., Identification of enzyme inhibitors from phage-displayed combinatorial peptide libraries, Comb Chem High Throughput Screen 4:535-43, 2001を参照されたい。
【0061】
化学的に多様なライブラリーを作製するための他の化学物質も用いることができる。そのような化学物質としては、限定ではないが、ペプトイド(PCT公報番号WO 91/19735);コード化ペプチド(PCT公報WO 93/20242);ランダムバイオオリゴマー(PCT公報番号WO 92/00091);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号);ダイバーソマー(diversomer)、たとえばヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチド(Hobbs, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 90:6909-6913 (1993));ビニログポリペプチド(Hagihara, et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992));β-D-グルコース足場を有する非ペプチド系ペプチドミメティック(Hirschmann, et al., J. Amer. Chem. Soc., 114:9217-9218 (1992));小分子化合物ライブラリーの類似体有機合成(Chen, et al., J. Amer. Chem. Soc., 116:2661 (1994));オリゴカルバマート(Cho, et al., Science, 261:1303 (1993));および/またはペプチジルホスホナート(Campbell, et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994));核酸ライブラリー(Ausubel, Berger and Sambrookを参照、すべて前記);ペプチド核酸ライブラリー(たとえば米国特許第5,539,083号を参照);抗体ライブラリー(たとえばVaughn, et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996)およびPCT/US96/10287を参照);糖ライブラリー(たとえばLiang, et al., Science, 274:1520-1522 (1996)および米国特許第5,593,853号を参照);有機小分子ライブラリー(たとえばベンゾジアゼピン Baum C&E News, January 18, (1993) 33ページ;イソプレノイド(米国特許第5,569,588号);チアゾリジノンおよびメタチアザノン(米国特許第5,549,974号);ピロリドン(米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号);モルホリノ化合物(米国特許第5,506,337号);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)を参照)等が挙げられる。
【0062】
コンビナトリアルライブラリーを調製するためのデバイスは市販されている(たとえば、ケンタッキー州ルイビルのAdvanced Chem. Techの357 MPS、390 MPS、マサチューセッツ州ウォバーンのRaininのSymphony、カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystemsの433A、マサチューセッツ州ベドフォードのMilliporeの9050 Plusを参照)。また、多数のコンビナトリアルライブラリーそのものが市販されている(たとえば、ニュージャージー州プリンストンのComGenex、ロシア、モスクワのAsinex、ミズーリ州セントルイスのTripos, Inc.、ロシア、モスクワのChemStar, Ltd.、ペンシルバニア州エクストンの3D Pharmaceuticals、メリーランド州コロンビアのMartek Bio sciences他を参照)。
【0063】
本発明のスクリーニングアッセイは好適には、動物モデル、細胞ベースのシステム、および非細胞ベースのシステムを含み、かつ体現する。同定された遺伝子、そのバリアント、断片、またはオリゴペプチドは、たとえば化合物ライブラリーのスクリーニングにより治療用関心対象である剤を同定するために、または別途多様な薬物スクリーニングもしくは分析技術のいずれかによって関心対象の化合物を同定するために用いられる。そのようなスクリーニングに使用される遺伝子、そのアレル、断片、またはオリゴペプチドは、溶液中に遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に担持されていても、または細胞内に位置していてもよい。測定は、以下の例のセクションに詳述するように実施される。
【0064】
いくつかの態様では、候補治療剤を同定する方法は、高スループットのスクリーニングアッセイにおいて、特定の標的分子を含有する試料をスクリーニングする工程を含む。
【0065】
別の態様では、治療剤を同定する方法が、(i)標的分子を候補治療剤と接触させる工程;(i)該剤が該ペプチドの機能または該ペプチドとパートナー分子との相互作用をモジュレートするかどうか、または(ii)該剤がこの標的の核酸配列の発現および/もしくは機能をモジュレートするかどうかを判定する工程を含む。
【0066】
別の態様では、疾患治療用の候補治療剤を同定する方法が、標的分子を発現する単離された細胞を培養する工程、培養した細胞に候補治療剤を投与する工程;対照細胞と比較して、候補治療剤の存在または非存在下の標的分子の発現、活性、および/または機能の相関をとる工程を含み、薬物は望ましい治療成果に基づき同定される。たとえば、薬物は標的分子のレベルをモジュレートし、それによって、そのようなレベルが疾患状態の原因となるか、標的分子が、経路の上流であれ下流であれ別の分子の活性または量をモジュレートする。他の例では、アッセイはキナーゼ活性を測定する。他の例では、アッセイは結合パートナーを測定する。他の例では、アッセイは所望の治療成果を提供する候補治療剤の量を測定する。
【0067】
診断および候補薬物発見のための別の好適な方法は、標的分子を発現している細胞に被験試料を接触させる工程、および標的分子またはそのアレルもしくは断片あるいは標的分子の発現産物またはそのアレルもしくは断片と、被験剤との相互作用を検出する工程を含む。
【0068】
別の態様では、たとえば患者の細胞または体液などの試料を単離し、候補の治療用分子と接触させる。遺伝子、それらの発現産物をモニタリングして、どの遺伝子または発現産物が薬物によって調節されるかを同定する。
【0069】
薬学的組成物
上述したように、本発明の組成物は、当業者には公知の多様な方法で調製することができる。本発明の組成物は、そのもとの供給源または取得様式にかかわらず、それらの使用に応じて製剤化することができる。たとえば、上述した核酸およびベクターを、組織培養での細胞への適用のための、または患者もしくは対象への投与のための組成物中に製剤化することができる。本発明の薬学的組成物はすべて、医薬の調製に使用するように製剤化することができ、治療という状況における具体的な使用を以下に示す。これらの組成物は、製薬業界で周知のように調製することができ、局所的治療または全身的治療のどちらが望ましいかによって、また治療部位によって、多様な経路で投与することができる。投与は、局所的(眼および粘膜への、たとえば鼻腔内、膣内、および直腸内送達を含む)、肺内(たとえば、粉末またはエアロゾルの、たとえばネビュライザーによる、吸入または吹込による;気管内、鼻腔内、上皮的、および経皮的)、眼内、経口、または非経口であり得る。眼内送達の方法には、局所投与(点眼)、結膜下注射、眼周囲注射、もしくは硝子体内注射、またはバルーンカテーテルによるもしくは結膜嚢に外科的に配置される眼用インサートによる導入が含まれ得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋内注射または輸注;あるいは頭蓋内、たとえば髄腔内または脳室内投与が含まれる。非経口投与は単回急速投与の形態であり得、または、たとえば連続灌流ポンプによるものでもよい。局所投与用の薬学的組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、座薬、スプレー、液体、粉末等を挙げることができる。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性の基剤、増粘剤等が必要であるか望ましい場合がある。
【0070】
本発明は、活性成分としての本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、およびベクターを、1種類または複数種類の薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する、薬学的組成物も含む。薬学的に許容される担体という用語には、薬学的に許容される物質の媒質として用いられ得るあらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張剤、吸収遅延剤、バッファー、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤等が含まれる。本発明の組成物を作製する際に、活性成分は、典型的には、賦形剤と混合されるか、賦形剤で希釈されるか、たとえばカプセル、錠剤、サシェ、紙、または他の入れ物の形態のような担体中に封入される。賦形剤が希釈剤の働きをする場合、それは固形、半固形、または液状物質(たとえば生理食塩水)であってもよく、活性成分のビヒクル、担体、または媒質となる。したがって、組成物は、錠剤、丸薬、粉末、甘味入り錠剤、サシェ、カシェー、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液、シロップ、エアロゾル(固形として、または液体媒質中)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、座薬、滅菌注射液、ならびに滅菌包装粉末の形態であり得る。当技術分野において公知のように、希釈剤のタイプは、意図される投与経路によって異なり得る。得られた組成物は、保存料などの追加剤を含むことがある。いくつかの態様では、担体は、脂質系またはポリマー系コロイドであってもよいか、またはそれを含んでいてもよい。いくつかの態様では、担体物質は、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはブロックコポリマーミセルとして製剤化されたコロイドの場合がある。上述したように、担体物質はカプセルを形成することができ、その物質はポリマー系コロイドであってもよい。
【0071】
いくつかの場合では、局所的眼用製剤は、溶液、懸濁剤、クリーム、軟膏、ゲル、ゲル形成液、リポソーム含有もしくはミセル含有懸濁剤、スプレー製剤、または乳剤である。いくつかのケースでは、局所的眼用製剤は、安定剤、界面活性剤、ポリマー系担体、ゲル化剤、有機共溶媒、pH活性成分、浸透圧活性成分より選択される1種類または複数種類の薬学的に許容される賦形剤も含み、保存料を含むかまたは含まない。いくつかのケースでは、持効性半固形製剤、持効性固形製剤、または眼用インプラントを、罹患した眼部に注射する。いくつかの態様では、持効性半固形製剤、持効性固形製剤、または眼用インプラントは、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかのケースでは、持効性半固形製剤、持効性固形製剤、または眼用インプラントは、CSF1もしくはその受容体の阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせ;ならびにポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PLGA)、およびポリ乳酸、およびポリグリコール酸コポリマーより選択される生分解性ポリマーを含む。
【0072】
眼用製剤は、少なくとも1種類の眼科的に許容される賦形剤、たとえば、限定ではないが、粘滑剤、浸透圧調節剤、保存料、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、界面活性剤、キレート剤、浸透増強剤、乳化剤、懸濁化剤、安定剤、抗酸化剤、担体、可塑剤、放出調整賦形剤または制御賦形剤、イオン交換樹脂等をさらに含む。好適な粘滑剤としては、限定ではないが、グリセリン、ポリビニルピロリドン、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、たとえば限定ではないがPEG 400、PEG 300等、またはそれらの組み合わせ;プロピレングリコール、ソルビトール、およびポリアクリル酸等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の組成物において有用な浸透圧調節剤としては、限定ではないが、塩、たとえば、限定ではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムを挙げることができ、非イオン性浸透圧剤としては、限定ではないが、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、デキストラン等、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0073】
好適なキレート剤としては、限定ではないが、EDTAおよびその塩を挙げることができる。使用され得る可溶化剤としては、限定ではないが、CREMOPHOR EL(登録商標)、tween 80、シクロデキストリン等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。限定ではないが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンγ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、およびジメチル-γ-シクロデキストリン等などの好適なシクロデキストリン、またはそれらの組み合わせが使用され得る。pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、ホウ酸、トリス、トリエタノールアミン、および水酸化ナトリウムを挙げることができる。好適な緩衝剤としては、限定ではないが、リン酸塩、酢酸塩等、およびアミノアルコール、たとえば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、およびトリス(トロメタミン)バッファー等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な保存料としては、限定ではないが、塩化ベンザルコニウム、ポリクアテミウム-1、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール、たとえばクロロブタノール、ベンジルアルコール、またはフェニルエタノール、グアニジン誘導体、たとえばポリヘキサメチレンビグアニド、過ホウ酸ナトリウム、ソルビン酸等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。任意で使用され得る好適な浸透増強剤としては、限定ではないが、ポリオキシエチレングリコールラウリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールステアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオレイルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、サポニン、CREMOPHOR EL等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
使用され得る好適な界面活性剤としては、限定ではないが、イオン性および非イオン性界面活性剤等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、限定ではないが、ポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ソルビタンエステル、ステアリン酸ポリオキシル、およびそれらの2つまたはそれ以上の混合物が挙げられる。好適な薬学的担体としては、滅菌水;塩化ナトリウムなどの電解質;デキストロース;水または生理食塩水中デキストロース;低級アルカノール、軟膏基剤、たとえば限定ではないが天然ワックス、たとえばサラシミツロウ、カルナウバロウ(camauba wax)、羊毛蝋(羊毛脂肪)、精製ラノリン、無水ラノリン;石蝋たとえば固形パラフィン、微結晶性ワックス;炭化水素たとえば液体パラフィン、白色ワセリン(たとえば白色PROTOPET(登録商標))、黄色ワセリン等、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な乳化剤としては、たとえば、限定ではないが、脂肪酸のモノ-グリセリドまたはジ-グリセリド、ホスファチド、たとえば、レシチン、ポリソルベート、マクロゴール、ポロキサマー、チロキサポール、ポリエチレングリコール誘導体、ポリビニルアルコール等、およびそれらの混合物を挙げることができる。好適な安定剤、たとえば、限定ではないが、ポリエチレングリコールヒドロキシステアラート、チオウレア、チオソルビトール、ナトリウムジオクチルスルホスクシナート、モノチオグリセロール等、またはそれらの組み合わせを使用することができる。抗酸化剤、たとえば、限定ではないが、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、またはアルファ-トコフェロールアセタートを使用することができる。可塑剤、たとえば、限定ではないが、グリセロール等を使用することができる。
【0075】
放出調整または制御賦形剤、たとえば、限定ではないが、高分子放出調整もしくは制御賦形剤、非高分子放出調整もしくは制御賦形剤、またはそれらの組み合わせが本発明の組成物に含まれる場合がある。例示的な放出調整または制御賦形剤としては、ベヘン酸グリセリル、キトサン、カラギーナン、セルロース誘導体、たとえばエチルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸ポリマーもしくはコポリマー等、またはそれらの誘導体もしくは組み合わせが挙げられる。本発明の眼用製剤は、追加の粘性増強剤、たとえば、限定ではないが、セルロースおよびセルロース誘導体、たとえば、限定ではないが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースアセトフタラート等、またはそれらの組み合わせ;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プロピレングリコールアルギナート、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(CARBOPOL(登録商標))、ポリビニルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとのトリブロックコポリマー、ポリエトキシル化ソルビタン、ポリソルベート80、コンドロイチン硫酸、ジメチコン、ペルフルオロノニルジメチコン、シクロメチコン、デキストラン、プロテオグリカン、天然ポリサッカライド、たとえば、限定ではないが、ヒアルロン酸およびその塩、グアーガム、カラヤ、キシログルカンガム、キトサン、ゲランガム、ペクチン、コラーゲン、加工コラーゲン等、またはそれらの組み合わせを任意で含み得る。
【0076】
本発明の眼用製剤は、追加のゲル化剤、たとえば、限定ではないが、ポリサッカライドガム、たとえば、限定ではないが、ゲランガム、タマリンドガム、トラガカント、ロカストビーンガム、アガロース、カラギーナン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒアルロン酸、キトサン、コンニャク、アカシア、ペクチン、アラビック、カードラン、グルカンガム、スクレログルカン、および硫酸化グルカンスルファート等、またはそれらの組み合わせ;セルロースおよびその誘導体、たとえば、限定ではないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセタート、エチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム等、またはそれらの組み合わせ;架橋アクリルポリマーまたはカルボマー(CARBOPOL(商標))、アロエベラゲル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポロキサマー、ポリメチルビニルエーテル-無水マレイン酸、膨張性非水溶性ポリマー、たとえば、限定ではないが、ヒドロゲル等、またはそれらの組み合わせを任意で含み得る。イオン交換樹脂、たとえば、限定ではないが、無機ゼオライト、または合成により作製された有機樹脂が本発明の組成物に使用され得る。本発明の眼用製剤は、追加の粘膜付着剤、たとえば、限定ではないが、ポリアクリル酸、ヒアルロナン、キトサン、プルラン、セルロース誘導体、たとえば、限定ではないが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリ(ガラクツロン)酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、キシログルカン、キサンタンガム、カルボマー(CARBOPOL(商標))、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポロキサマー等、またはそれらの組み合わせを任意で含み得る。
【0077】
上記の例の列挙は、説明目的で記載しており、排他的なものではない。上記の目的に有用な他の剤の例は、眼用製剤では周知であり、本発明で想定されている。本発明の製剤の賦形剤の濃度がさまざまであり得ることも想定されている。本発明の眼用製剤は、点眼剤、眼用ローション、懸濁剤、分散剤、ゲル、軟膏、乳剤、コロイド溶液、眼用インサート、眼用ヒドロゲル、フィルム、小錠剤、ナノ乳剤、および粒子系、たとえば限定ではないが、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子等の形態であり得る。一態様では、本発明の眼用製剤は、インサイチュのゲル化系の形態である。別の態様では、本発明のインサイチュータイプのゲル化組成物は、1種類または複数種類の架橋剤、たとえば限定ではないがボラート等を含み得る。別の態様では、本発明のインサイチュータイプのゲル化組成物は、1種類または複数種類の架橋剤を含まない。
【0078】
さらなる態様では、眼用インサートの形態の本発明の眼用製剤が、生体内分解性眼用インサートである。別の態様では、眼用インサートの形態の本発明の眼用製剤が、非生体内分解性眼用インサートである。
【0079】
本発明の眼用製剤は、液体、固形、または半固形剤形の形態であり得る。さらに、一態様では、本発明の眼用製剤は、眼に影響を及ぼさないpHおよび浸透圧を有するように製剤化される。本発明の眼用製剤は、最終剤形に応じて、好適な眼科的に許容される賦形剤を含み得る。一態様では、眼用製剤は、生理的に寛容されるpH範囲を維持するように製剤化される。一態様では、眼用製剤のpH範囲は、5~9の範囲である。別の態様では、眼用製剤のpH範囲は、6~8の範囲である。
【0080】
さらなる態様では、本発明の眼用製剤は、眼部への局所投与用である。別の態様では、本発明の眼用製剤は、眼内投与用または眼周囲投与用である。さらなる態様では、本発明の眼用製剤は、活性物質が眼窩で直ちに放出される。
【0081】
別の態様では、本発明の眼用製剤は、眼窩で持効的または徐放的に放出される。さらなる態様では、本発明の眼用製剤は、1日1回投与される。一態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約24時間にわたり持続する。別の態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約12時間にわたり持続する。さらなる態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約10時間にわたり持続する。さらに別の態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約8時間にわたり持続する。一態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約6時間にわたり持続する。さらなる態様では、眼用製剤からの活性物質の持効性または徐放性送達が、約4時間~約24時間にわたり持続する。
【0082】
本発明の眼用製剤の剤形に応じて、適切な調製方法が使用される。当技術分野において公知のさまざまな眼用製剤の調製方法が使用され得る。さらに剤形に応じて、眼用製剤、またはそれに使用される賦形剤および/または活性物質が、当業者には公知の1つまたは複数の方法により、好適に滅菌される。一態様では、眼用インサートの形態の本発明の眼用製剤が、当技術分野において周知の成型手法または押出手法により調製される。別の態様では、眼用溶液の形態の本発明の眼用製剤が、眼科的に許容される賦形剤とともに所定量の薬物を所定体積の担体溶媒に溶解させるか懸濁することによって調製される。本発明の特定の眼用製剤の粒子サイズは、当業者に公知の眼科的に許容される範囲内である。
【0083】
本発明の組成物は、ヒトまたは動物の治療に有用である。
【0084】
組成物または製剤の投与は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、またはそれより頻回であり得る。頻度は、治療維持期の間は減少してもよく、たとえば毎日または1日2回の代わりに2日または3日おきであってもよい。用量および投与頻度は、主治医の判断に基づき、たとえば本方法で治療する疾患または状態の臨床的兆候、病理的兆候、ならびに臨床および不顕性の症状、ならびに患者の臨床歴を考慮して、調節することができる。
【0085】
本明細書に開示される剤の治療への使用に必要な量は、投与経路、治療が必要な状態の性質、ならびに患者の年齢、体重、および状態によりさまざまであること、そして最終的には担当医が判断することが理解されよう。組成物は、典型的には、CSF1もしくはその受容体の阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせの有効量を含有するであろう。前投与量は動物試験により決定することができ、ヒトへの投与に合わせて用量を調整することは、当技術分野で認められている慣行にしたがい実施することができる。
【0086】
治療の長さ、すなわち日数は、対象を治療している医師により容易に決定されようが、治療の日数は、約1日~約365日間の範囲になり得る。本方法により提供される治療の有効性は、治療過程の間モニタリングされて、該治療が奏功しているかどうか、または追加の(または内容変更された)治療が必要かどうかを判定され得る。
【0087】
治療化合物の用量、毒性、および治療有効性は、たとえばLD50(ある個体群の50%に致死的な用量)およびED50(ある個体群の50%に治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学的手法により、細胞培養物または実験動物で決定することができる。CSF1およびCSF1Rの阻害物質、ならびにCSF2のための剤形は、当業者により容易に決定され得、かつ、たとえば、当技術分野において公知の標準的な方法にしたがい用量、安全性、および有効性を決定するために、動物モデルにおいておよび文献中の治験報告において得られることができる。実際の製剤、投与経路、および用量は、各医師が患者の状態を鑑み選ぶことができる。
【0088】
特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体およびCSF2組み換えペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1受容体抗体およびCSF2組み換えペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体および抗CSF1受容体抗体を含む。特定の態様では、薬学的組成物は、抗CSF1抗体、抗CSF1受容体抗体、およびCSF2ポリペプチドを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、CSF1抗体の阻害物質および/またはCSF1受容体の阻害物質および/またはCSF2ポリペプチドを含む。
【0089】
特定の態様では、薬学的組成物が、コロニー刺激因子-1(CSF1)またはその受容体の阻害物質およびコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質またはポリペプチドの治療有効量を含む。特定の態様では、CSF1またはその受容体の阻害物質は、抗体、抗体断片、アプタマー、小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、Fab、Fab'、F(ab')2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック、ペプトイド、サイトカイン、サイトカインアゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、細胞因子、酵素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0090】
特定の態様では、本明細書で体現される薬学的組成物は、サイトカイン、サイトカインアゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせを含む。たとえば、薬学的組成物は、コロニー刺激因子-1(CSF1)もしくはその受容体の阻害物質および/またはコロニー刺激因子-2(CSF2)のタンパク質もしくはポリペプチドならびに/あるいはサイトカイン、サイトカインアゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、またはそれらの組み合わせの治療有効量を含む。
【0091】
特定の態様では、CSF1またはCSF1受容体阻害物質が、眼内投与用に製剤化される。特定の態様では、CSF1阻害物質が眼内投与用に製剤化される。特定の態様では、眼内投与用に製剤化されたCSF2のポリペプチドまたはタンパク質。
【0092】
いくつかの例では、阻害物質またはポリペプチドは、硝子体内に投与される。例示的なCSF1またはCSF受容体の阻害物質としては、CSF1にまたはCSF1受容体に特異的な抗体が挙げられる。たとえば、眼内投与用に製剤化されたCSF1阻害物質。
【0093】
代替としてまたはCSF1治療とともに、療法は、眼内投与用に製剤化されたCSF2のポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0094】
本発明は、水に似た粘性を有する溶液として形成された、CSF1の阻害物質、CSF1Rの阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせの製剤を提供する。この溶液は、薬学的に許容される剤/賦形剤、たとえば限定ではないが、シクロデキストリンを含む。このように形成された溶液は、無色透明の溶液であり、眼部への局所投与に好適である。
【0095】
本発明の溶液は、活性物質の眼球前部曝露を低減し、それによって溶液中の活性物質濃度の増加および送達頻度の増加を可能にし、したがって後眼部における活性物質の高濃度維持を促進する。
【0096】
本発明の溶液は、約0.005%~約95% w/vの、CSF1の阻害物質、CSF1Rの阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせ、またはそれらの薬学的に許容される塩の活性物質を含む。いくつかの態様では、溶液中のCSF1の阻害物質、CSF1Rの阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせの濃度は、局所投与の場合、約0.005%~0.01% w/v、約0.01%~0.05% w/v、約0.05%~0.1% w/v、約0.1%~0.2% w/v、約0.2%~0.3% w/v、約0.3%~0.4% w/v、約0.4%~0.5% w/v、約0.5%~0.6% w/v、約0.6%~0.7% w/v、約0.7%~0.8% w/v、約0.8%~0.9% w/v、約0.9%~1.0% w/v、約1.0%~2.0% w/v、約2.0%~3.0% w/v、約3.0%~4.0% w/v、約4.0%~5.0% w/v、0.005%~20% w/v、約0.005%~%~25% w/v、約0.005%~30% w/v、約0.005%~40% w/v、約0.005%~50% w/v、またはそれ以上である。いくつかの態様では、溶液は、約0.005% w/v、約0.05% w/v、約0.1% w/v、約0.2% w/v、約0.3% w/v、約0.4% w/v、約0.5% w/v、約0.6% w/v、約0.7% w/v、約0.8% w/v、約0.9% w/v、約1.0% w/v、約2.0% w/v、約3.0% w/v、約4.0% w/v、約5.0% w/v、約10% w/v、約15% w/v、約20% w/v、約25% w/v、約30% w/v、約40% w/v、約50% w/v、またはそれ以上のCSF1の阻害物質、CSF1Rの阻害物質、CSF2ポリペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0097】
いくつかの態様では、製剤は、任意の阻害物質の可溶性を向上させるためにシクロデキストリンを含む。化合物-I。1または4つの結合により連結した6~8つのデキストロース単位で構成されるオリゴサッカライド、シクロデキストリンは、水または水溶液(たとえばPBSバッファー)中の可溶性が乏しいまたは低い活性物質の可溶性を増大させる。シクロデキストリンは、疎水性活性物質とともに親水性複合体を形成する。
【0098】
本発明の溶液に1つまたは複数のシクロデキストリンを用いることができる。本発明の製剤に使用されるシクロデキストリンの非限定例は、たとえば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ランダムメチル化-β-シクロデキストリン、エチル化-β-シクロデキストリン、トリアセチル-β-シクロデキストリン、過アセチル化-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、分岐-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ランダムメチル化-γ-シクロデキストリン、トリメチル-γ-シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせである。
【0099】
定義
別途定義しない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、(たとえば細胞培養、分子遺伝学、および生化学の)当業者が一般に理解するのと同じ意味をもつものとする。
【0100】
本明細書で使用する場合、文脈によって明白に否定されない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には複数形の言及も含まれる。したがって、たとえば「疾患(a disease)」、「疾患状態(a disease state)」、または「核酸(a nucleic acid)」への言及は、1つまたは複数のそのような態様に言及しており、かつ当業者らに公知の均等物を含む。
【0101】
本明細書で使用する場合、数値または範囲の文脈における「約」という用語は、文脈的により限定された範囲が必要でない限り、記載されているまたは特許請求されている数値または範囲の±10%を意味する。
【0102】
本明細書で使用する場合、「剤」という用語は、疾患または他の健康状態を予防する、改善する、または治療する能力がある、あらゆる分子、化学要素、組成物、薬物、治療剤、化学治療剤、または生物学的剤を包含するものとする。この用語には、小分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、エピトープ認識部位を有する抗体断片、たとえばFab、Fab’、F(ab’)2断片、Fv断片、単鎖抗体、抗体ミメティック(たとえばDARPin、アフィボディ分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アビマー、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、およびモノボディ)、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド有機または無機分子、天然または合成化合物等が含まれる。剤は、本発明の方法により、治験の任意の段階で、治験前の検査中、またはFDAの承認後に、アッセイすることができる。
【0103】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広義に用いられ、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、たとえばインタクト抗体および機能的(抗原結合性)抗体断片、たとえば抗原結合性断片(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組み換えIgG(rlgG)断片、特異的に抗原に結合できる可変重鎖(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)などの単鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(たとえば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む。この用語は、遺伝子改変された、かつ/またはそれ以外の修飾形態の免疫グロブリン、たとえばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性、たとえば二特異性抗体、ジアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。特に断らない限り、「抗体」という用語にはその機能的抗体断片が包含されると理解すべきである。この用語はまた、インタクトまたは全長抗体、たとえばあらゆるクラスまたはサブクラスの抗体、たとえばIgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを包含する。「抗体」という用語は、ヒトおよびヒト化抗体を含めすべての種を含み、抗原性標的はあらゆる種に由来し得る。したがって、たとえば抗原「X」に結合する抗体は、マウス抗ヒトX、ヒト抗ヒトX;ヒト化抗ヒトX、ヤギ抗ヒトX;ヤギ抗マウスX;ラット抗ヒトX;マウス抗ラットX等であり得る。別種に由来する、またはいくつかの場合では(たとえば自己免疫または炎症性反応では)同種に由来する抗原標的、たとえば「X」に対する、特定の種で作製された抗体の組み合わせは無限であり、本発明では全種が体現される。
【0104】
「アプタマー」は、他分子に結合する能力に基づきランダムなプールから選択されたDNAまたはRNA分子である。アプタマーは標的分子に特異的に結合し、該核酸分子は該標的分子が自然な環境で認識する配列を含む配列を有する。あるいは、アプタマーは、標的分子に結合する核酸分子であり得るが、該標的分子は核酸に自然に結合することはない。標的分子は、任意の関心対象の分子であり得る。たとえば、アプタマーは、タンパク質のリガンド結合性ドメインへの結合に用いられる場合があり、それによって天然のリガンドとタンパク質との相互作用を妨ぐ。これは非限定例であり、当業者であれば、当技術分野において広く公知の技術を用いて、他の態様を容易に作れることがわかるであろう(たとえばGold et al., Annu. Rev. Biochem. 64:763, 1995; Brody and Gold, J. Biotechnol. 74:5, 2000; Sun, Curr. Opin. Mol. Ther. 2:100, 2000; Kusser, J. Biotechnol. 74:27, 2000; Hermann and Patel, Science 287:820, 2000;およびJayasena, Clinical Chem. 45:1628, 1999を参照)。
【0105】
上記明細書および特許請求の範囲において、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」などの語句が、一連なりの要素または特徴の列挙を伴い登場する場合がある。「および/または」という用語も、2つまたはそれ以上の要素または特徴の列挙に登場し得る。それが用いられる文脈と明示的にまたは暗黙的に矛盾しない限り、そうした語句は、列挙された任意の要素または特徴を個別に、または記載の任意の要素または特徴を記載の任意の他の要素または特徴と組み合わせて、意味するものとする。たとえば、「AおよびBの少なくとも1つ」、「AおよびBの1つまたは複数」、ならびに「Aおよび/またはB」という語句は、それぞれ「Aのみ、Bのみ、またはAとB両方」を意味するものとする。3つまたはそれ以上の項目を含む列挙の場合も同様の解釈とする。たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つまたは複数」、ならびに「A、B、および/またはC」という語句はそれぞれ「Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB両方、AとC両方、BとC両方、またはAとBとC全部」を意味するものとする。また、上記および特許請求の範囲で使用される「に基づく」という用語は、「に少なくとも部分的に基づく」を意味するものなので、記載されていない特徴または要素も許容される。
【0106】
パラメーターの範囲が提供される場合、その範囲内のすべての整数、およびそれらの10分の1の数も本発明により提供されることが理解される。たとえば「0.2~5 mg」は、最大5.0 mgまでかつ5.0 mgを含む、0.2 mg、0.3 mg、0.4 mg、0.5 mg、0.6 mgなどの開示である。
【0107】
「比較ウィンドウ」は、連続する位置の任意の数のセグメント(たとえば、少なくとも約10~約100、約20~約75、約30~約50、100~500、100~200、150~200、175~200、175~225、175~250、200~225、200~250)を指し、その中の配列を、連続する位置の同数の基準配列と、これらの2つの配列を最適にアライメントされた後に、比較することができる。さまざまな態様では、比較ウィンドウは、アライメントされた2つの配列の片方または両方の全体長である。いくつかの態様では、比較される2つの配列は、異なる長さを含み、比較ウィンドウは、2つの配列のうちの長いほうか短いほうの全体長である。比較のための配列アラインメントの方法は、当技術分野では周知である。比較のための最適な配列アラインメントは、たとえば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカル相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメント・アルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムをコンピューターで実行することによって(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、ウィスコンシン州マディソン サイエンスドライブ575のGenetics Computer Group)、または手動のアラインメントおよび目視(たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)参照)によって、実施することができる。
【0108】
さまざまな態様では、配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載されるパラメーターを用いて、核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定するのに用いることができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアが、当技術分野において公知のように、米国国立生物工学情報センターにより公開されている。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントされたときに何らかの正値の閾値スコアTと一致するか適合する、クエリ配列中の長さWの短いワードを特定することにより、高スコア配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al., 前記)。これらの最初の隣接ワードのヒットが、それらを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとなる。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限り、各配列の両方向に拡張する。ヌクレオチド配列の場合、M(マッチ残基ペアの報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)のパラメーターを用いて累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合、スコア行列を用いて累積スコアを計算する。各方向のワードヒットの拡張は、アラインメントスコアがその最高獲得値よりも量Xだけ下がった場合;1つまたは複数の負スコア残基アラインメントが蓄積したせいで累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;またはどちらかの配列が終わった場合に、停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両ストランドの比較を用いる。
【0109】
「を含む(including)」、「を含有する」、または「を特徴とする」と同義である、「を含む(comprising)」という移行句は、包括的またはオープンエンドであり、かつ、追加の記載されていない要素または方法工程を排除しない。これに対し、「からなる」という移行句は特許請求の範囲に明記されていない要素、工程、または成分を排除する。「から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲を、その発明の明記されている材料または工程および「基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。
【0110】
本明細書で使用する場合、「サイトカイン」という用語はある細胞集団が放出するタンパク質全般を指し、該タンパク質は、別の細胞に細胞内メディエーターとして作用するか、または該タンパク質を産生する細胞に対する自己分泌作用を有する。そのようなサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(「IL」)、たとえばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17A~F、IL-18からIL-29(たとえばIL-23)、IL-31、たとえばPROLEUKINTM rIL-2;TNF-αまたはTNF-β、TGF-β1~3などの腫瘍壊死因子;および他のポリペプチド因子、たとえば白血病抑制因子(「LIF」)、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、CNTF様サイトカイン(「CLC」)、カルジオトロフィン(「CT」)、およびkitリガンド(「KL」)が挙げられる。
【0111】
本明細書で使用する場合、「有効」は、治療化合物の量に言及する場合、本開示の要領で用いられた場合に、妥当な利益/リスク比に対応した、著しく有害な副作用(毒性、刺激作用、またはアレルギー反応)のない所望の治療応答を得るのに十分な化合物の量を指す。
【0112】
「賦形剤」は、本明細書では、1種類または複数種類の開示の阻害物質もしくはCSF2ポリペプチドに含有され得るまたはそれと併用され得る、治療的または生物学的活性化合物ではない、任意の他の化合物を含むために用いられる。したがって、賦形剤は、薬学的または生物学的に許容されるか適切でなくてはならない(たとえば賦形剤は、対象にとって概して非毒性でなくてはならない)。「賦形剤」には単一のそのような化合物が含まれ、かつ複数の賦形剤も含まれるものとする。本願の目的では、「賦形剤」および「担体」という用語は本願明細書全体で交換可能に用いられ、また該用語は本明細書では「安全かつ有効な薬学的組成物を製剤化する慣行に用いられる成分」と定義される。
【0113】
抗体に関する「高親和性」という用語は、標的抗原に対し1×10-7 Mまたはそれ未満、より好ましくは5×10-8 Mまたはそれ未満、さらに好ましくは1×10-8 Mまたはそれ未満、さらに好ましくは5×10-9 Mまたはそれ未満、さらに好ましくは1×10-9 Mまたはそれ未満のKDを有する抗体を指す。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体イソタイプでは異なり得る。たとえば、IgMイソタイプの「高親和性」結合は、10-6 Mまたはそれ未満、10-7 Mまたはそれ未満、10-8 Mまたはそれ未満のKDを有する抗体を指す。
【0114】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一」または「同一性」パーセントという用語は、比較ウィンドウまたは指定領域の最大の対応について、配列比較アルゴリズムを用いて測定した、または手動のアラインメントおよび目視による、比較およびアラインメントを行った場合の、同一の、または同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの規定のパーセンテージを有する(たとえば全ポリペプチド配列またはその1個のドメインの規定の領域で、たとえば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。少なくとも約80%同一であるような配列は、「実質的に同一」といわれる。いくつかの態様では、2つの配列は100%同一である。特定の態様では、2つの配列は、一方の配列(2つの配列が異なる長さを有する場合に、たとえば短いほうの配列)の全体長にわたり100%同一である。さまざまな態様では、同一性は、被験配列の相補配列を指す場合がある。いくつかの態様では、同一性は、少なくとも約10~約100、少なくとも約20~約75、少なくとも約30~約50個のアミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたり存在する。特定の態様では、同一性は、少なくとも約50アミノ酸長の領域、またはより好ましくは100~500、100~200、150~200、175~200、175~225、175~250、200~225、200~250個、またはそれ以上のアミノ酸長の領域にわたり存在する。
【0115】
本明細書で使用する場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、他の細胞物質、または組み換え技術により生成された場合は培養培地、または化学合成された場合は化学物質前駆体もしくは他の化学物質を、実質的に含まない。精製された化合物は、関心対象の化合物の少なくとも60重量%(乾燥重量)である。好ましくは、調製物は、関心対象の化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%である。たとえば、精製された化合物は、所望の化合物の少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも100重量%(w/w)の化合物である。純度は、任意の適切な標準的方法、たとえばカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、自然に存在する状態では隣接している遺伝子または配列を、含まない。精製または単離されたタンパク質またはペプチドは、自然に存在する状態では隣接しているアミノ酸またはアミノ酸配列を、含まない。精製されたはまた、たとえば伝染性または毒性の作用物質を含まない、ヒト対象に投与しても安全な無菌度を定める。同様に、「実質的に純粋」とは、自然な状態で付随する成分から分離された、ヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、自然な状態で付随するタンパク質および自然に生じる有機分子を少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%含まない場合に、実質的に純粋である。
【0116】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は、文脈によって明白に否定されない限り、概して「および/または(and/or)」を含む意味で使用される。
【0117】
「配列同一性のパーセンテージ」は、最適にアライメントされた2つの配列を比較ウィンドウで比較することにより決定され、比較ウィンドウのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための基準配列(付加または欠失を含まない)と比べて、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が現れる位置の数を決定して、一致した位置の数を取得し、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを取得することで、計算される。配列比較では、典型的には、1つの配列を基準配列とし、これに対し被験配列を比較する。さまざまな態様では、配列比較アルゴリズムを用いる場合、被験配列と基準配列とをコンピューターに入力し、必要があれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムのプログラムパラメーターを指定する。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメーターを用いてもよいか、あるいはパラメーターを指定してもよい。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づき、基準配列に対し相対的に被験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0118】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」担体または賦形剤は、妥当な利益/リスク比に対応した、著しく有害な副作用(毒性、刺激作用、またはアレルギー反応)のない、ヒトおよび/または動物への使用に好適な担体または賦形剤を指す。たとえばそれは、本化合物を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤、またはビヒクルであってもよい。
【0119】
「基準」とは標準または対照条件を指す。
【0120】
「小分子」は、質量2000ダルトン未満の化合物である。小分子の分子質量は、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは600ダルトン未満であり、たとえば化合物は500ダルトン未満、400ダルトン未満、300ダルトン未満、200ダルトン未満、または100ダルトン未満である。
【0121】
本明細書で使用する場合、標的に「特異的に結合する」抗体は、標的指向性リガンド、たとえば1×10-7 Mまたはそれ未満、より好ましくは5×10-8 Mまたはそれ未満、より好ましくは3×10-8 Mまたはそれ未満、より好ましくは1×10-8 Mまたはそれ未満、さらに好ましくは5×10-9 Mまたはそれ未満のKDで標的に結合する抗体を指すものとする。
【0122】
「対象」、「患者」、「個人」等の用語は、本明細書で使用する場合、限定的なものではなく、概して交換可能である。つまり、「患者」と記載される個人は、必ずしも所与の疾患を有しておらず、単に医学的助言を求めている場合もある。「対象」という用語には、本明細書で使用する場合、視神経症と診断された対象が含まれる。たとえば、対象は、IOPの上昇ありと診断されている。あるいは、対象は、IOPの上昇はないが視神経症を有すると特徴づけられる。いくつかの場合では、初期の緑内障が、IOPの上昇はないが、異常なCSF1および/またはCSF2のレベルを特徴とする。そのような患者は、本明細書に記載される組成物および方法を用いる早期治療の恩恵を受ける。
【0123】
本明細書で使用する場合、障害に関する「症状」は、該障害に関する任意の臨床的または検査上の所見を含み、対象が感じたり観測したりできるものに限定されない。
【0124】
本明細書で使用する場合、「治療すること」は、たとえば、障害の進行の阻害、退行、または停滞を包含する。治療することはまた、障害の任意の1つの症状または複数の症状の予防または改善を包含する。本明細書で使用する場合、対象における疾患進行または疾患合併症の「阻害」は、対象における疾患進行および/または疾患合併症の予防または低減を意味する。
【0125】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体、たとえば抗体断片に関して使用される場合、該抗体の抗原結合に関与する抗体重鎖または軽鎖ドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、概して似た構造を有し、各ドメインは4つの保存フレームワーク領域(FR)、および3つのCDRを含む。(たとえば Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., (2007) 91ページを参照。)抗原結合特異性を与えるには、1つのVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、該抗原に結合する抗体のVHまたはVLドメインを用いて単離して、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングしてもよい。たとえば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0126】
本明細書に開示されるすべての遺伝子、遺伝子名、および遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物および方法が適用される任意の種のホモログに対応するものとする。したがってこの用語には、限定ではないが、ヒトおよびマウスの遺伝子および遺伝子産物が含まれる。特定の種の遺伝子または遺伝子産物が開示される場合、本開示は、例示のみを意図し、かつ、限定が登場する文脈が明らかに示さない限りは限定として解釈されるべきではないことが理解される。したがって、たとえば、本明細書に開示される、いくつかの態様では哺乳類の核酸およびアミノ酸配列に関する遺伝子または遺伝子産物は、他の動物、たとえば、限定ではないが、他の哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、および鳥類のホモログおよび/またはオルソログの遺伝子および遺伝子産物を包含するものとする。好ましい態様では、遺伝子、核酸配列、アミノ酸配列、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、ヒトである。
【0127】
本明細書で引用したアクセッション番号で示されるGenbankおよびNCBIへの提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用した他のすべての発表された参考資料、書類、論文、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。不一致がある場合は、定義を含め、本明細書が優先される。また、材料、方法、および例は、あくまで説明のためであり、限定的な意図はない。
【0128】
他の態様
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上記説明は、説明することを意図され、本発明の範囲を限定することを意図されるものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定められる。他の局面、利点、および変更形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0129】
本明細書で言及した特許および科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を構築する。本明細書で引用したあらゆる米国特許、および公開または未公開の米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用したあらゆる公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用したアクセッション番号で示されるGenbankおよびNCBIへの提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用した他のすべての発表された参考資料、書類、論文、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0130】
本発明をその好ましい態様を参照しながら具体的に示し、記載してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細にさまざまな変化を加えることができることを理解するであろう。
【配列表】