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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240401BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240401BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240401BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240401BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20240401BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240401BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6557
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/169
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/262
H01M50/291
H01M50/293
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020546737
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029340
(87)【国際公開番号】W WO2020054229
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018169256
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】武田 直
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】原塚 和博
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061894(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207199806(CN,U)
【文献】国際公開第2018/003478(WO,A1)
【文献】特開2014-010983(JP,A)
【文献】特許第5813656(JP,B2)
【文献】特開2017-139099(JP,A)
【文献】特開2014-072055(JP,A)
【文献】特開2016-084836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 - 10/667
H01M 50/00 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形を角形とした複数の電池セルと、
隣接する電池セルを絶縁するための複数のセパレータであって、それぞれのセパレータが断熱性を有しており、かつ、それぞれのセパレータが隣接する電池セルの間に配置されており、かつ、それぞれのセパレータが隣接する電池セルと当接する当接部と、当接部よりも厚さが薄く形成される薄肉部と、を含んでいる、該複数のセパレータと、
前記複数の電池セルと前記複数のセパレータとを集合化する拘束部材と、を備え、
前記複数のセパレータは、それぞれ、断熱性を有する複数の積層シートからなる断熱部材であり、
前記複数の積層シートは、前記当接部に対応する面積を有する第一のシートと、前記第一のシートよりも大きい面積を有する第二のシートと、を含んでおり、かつ、前記第一のシートと前記第二のシートが接着され
前記当接部は、前記電池セルの中央部分に対応する位置に設けられ、
前記複数の電池セルは、それぞれの電池セルが開口を有する扁平な直方体形状の外装缶と、前記外装缶の開口部に溶接される封口体と、有しており、
前記薄肉部は、隣接する電池セルの封口体と外装缶の開口部の溶接部分に沿って延在しており、
前記電池セルと前記セパレータとの配列方向から見て、前記薄肉部は前記溶接部分と重なり、前記当接部は前記溶接部分より前記電池セルの内側に位置している電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記断熱部材は、主繊維を含む繊維シートと、前記繊維シートに担持される粉体と、を含んでいることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項に記載の電源装置において、
前記粉体は、シリカエアロゲルまたはシリカキセロゲルを含んでいることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項に記載の電源装置において、
前記繊維シートは、難燃性ビニロン繊維、ポリエーテルイミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうちの少なくとも一つを含んでいることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、推進用の電源装置を使用する電動車両が普及している。電動車両は、様々な構成が知られており、例えば、駆動用のモータを搭載する電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)や、モータに加えてエンジンを搭載しているハイブリッドカー(HEV:Hybrid Electric Vehicle)などがある。これらの電動車両に搭載される電源装置では、複数の電池セルが用いられる。各々の電池セルは、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の充放電が可能な二次電池である。この種の電源装置では、電源装置が占有するスペースは少ないほうが望ましく、スペース効率を向上させることが求められている。スペース効率に優れた電源装置としては、一方向に積層された複数の角形電池と、複数の角形電池を集合化するための拘束部材と、を備えた電源装置が知られている(特許文献1)。特許文献1の電源装置は、複数の電池セルと、各電池セルの間に配置される絶縁性のセパレータを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-034775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池は、高温になると様々な不具合が生じることが知られている。特に、内部の発電要素の化学反応が熱によって促進されると、化学反応によって生じる熱により、さらに、自己加熱されるおそれがある。一方で、特許文献1の電源装置は、電池セル同士が近接して配置される構成となるため、ある電池セルが何らかの異常により、自己加熱される状態となると、当該電池セルから隣接する電池セルに熱が伝わる。異常な状態となった電池セルから隣接する電池セルに伝熱する熱量が大きい場合、伝熱された熱により隣接する電池セルの内部の発電要素の化学反応が促進されるおそれがある。このような熱伝播を抑制するためには、絶縁のために設けられているセパレータを厚くする必要があるが、そのような構成は、電源装置の大型化を招き、スペース効率が低下する問題が生じる。
【0005】
本発明は、斯かる問題を解決するためになされたものであり、本発明の主な目的は、電源装置の大型化を抑制しながら、隣接する電池セル同士の伝熱を抑制する構成を備えた電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の電源装置は、外形を角形とした複数の電池セルと、隣接する電池セルを絶縁するための複数のセパレータと、複数の電池セルと複数のセパレータとを集合化する拘束部材と、を備えている。それぞれのセパレータは、断熱性を有している。また、それぞれのセパレータは、隣接する電池セル間に配置される。また、それぞれのセパレータは、隣接する電池セルと当接する当接部と、当接部よりも厚さが薄く形成され、隣接する電池セルの表面から離間する薄肉部と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる電源装置によれば、隣接する電池セルの間に介在するセパレータにより断熱することができるので、電源装置の大型化を抑制しながら、隣接する電池セル同士の伝熱を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
図2図1の電池セルの斜視図である。
図3図1の電源装置の断面図である。
図4図1のセパレータの一例を示す斜視図である。
図5図1のセパレータの一例を示す斜視図である。
図6図5のセパレータの断面図である。
図7図1のセパレータの一例を示す斜視図である。
図8図1のセパレータの一例を示す斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態における電源装置の斜視図である。
図10図9のセパレータの一例を示す斜視図である。
図11図10の視点を変えた斜視図である。
図12図9のセパレータの一例を示す斜視図である。
図13図12の視点を変えた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明のある態様の断熱部材の構成を着想するに至った経緯について説明する。特許文献1に示されるように、典型的な電源装置は、複数の電池セルが同じ姿勢で配置される。隣接する電池セルの間には、隣接する電池セル同士の短絡を防止するために、絶縁性のセパレータが配置される。一方、近年、電池セルの高容量化に伴い、個々の電池セルが保有するエネルギー量が増大する傾向にある。
【0010】
上述のとおり、特許文献1の電源装置は、電池セル同士が近接して配置される構成となるため、ある電池セルが何らかの異常により、自己加熱される状態となると、当該電池セルから隣接する電池セルに熱が伝わる。異常な状態となった電池セルから隣接する電池セルに伝熱する熱量が大きい場合、伝熱された熱により隣接する電池セルの内部の発電要素の化学反応が促進されるおそれがある。電池セルの高容量化すると、異常な状態となった電池セルから隣接する電池セルに伝熱する熱量が相対的に大きくなるため、この現象が問題になる可能性がある。
【0011】
この問題に対して、本発明の発明者らは、断熱性を有するセパレータを採用する構成について検討を行った。従来の電源装置では、セパレータは、成形性の高い樹脂が用いられる。そのため、断熱性を高めるためには、セパレータの材厚を大きくする必要がある。しかしながら、セパレータの厚さを大きくすると、電源装置の大型化を招き、電源装置としての体積あたりの容量が低下する問題ある。斯かる実情に鑑み、本発明者らは、成形性を維持しつつ、セパレータの厚みの増大を低減するための構成について検討を行った。
【0012】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態の電源装置100を示す斜視図である。図1に示すように、電源装置100は、複数の電池セル1と、複数のセパレータ2と、複数の電池セル1と複数のセパレータ2とを集合化する拘束部材3と、を備える。複数の電池セル1は、一方向に沿って配置されている。それぞれのセパレータ2は、隣接する電池セル1の間に配置される。複数のセパレータ2は、絶縁性を有しており、隣接する電池セル1同士の短絡を防止する。また、セパレータ2は、断熱性を有しており、隣接する電池セル同士の伝熱を抑制する。複数の電池セル1は、バスバー(図示せず)を介して、直列または並列に接続されている。電源装置100は、並列接続される電池セル1の数と、直列接続される電池セル1の数に応じて、電源装置の電圧と容量が決まるようになっている。電池セル1は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池など、種々の二次電池が採用されうる。
【0013】
図1に示すように、拘束部材3は、積層される複数の電池セル1の積層方向の両端に配置される一対のエンドプレート32と、一対のエンドプレート32に固定される複数のバインドバー34と、を含んでいる。エンドプレート32には、バインドバー34の端部が連結される。バインドバー34は、止ネジ36を介してエンドプレート32に固定される。
【0014】
バインドバー34は、所定の厚さの金属板を所定の幅に加工して製作される。バインドバー34は、端部をエンドプレート32に連結して、一対のエンドプレート32を連結して、その間に電池セル1を保持する。バインドバー34は、一対のエンドプレート32を所定の寸法に固定することで、その間に積層される電池セル1の膨張を抑制する。バインドバー34が伸びると、電池セル1の膨張を阻止できないため、バインドバー34には、電池セル1の膨張圧で伸びない強度の金属板、たとえばSUS304等のステンレス板や鋼板等の金属板を十分な強度を有する幅と厚さに加工して製作される。
【0015】
なお、図1のバインドバー34は、止ネジ36でエンドプレート32に固定しているが、必ずしも螺合部材で固定する必要はない。具体的には、溶接や係止構造などを利用して固定することもできる。また、図1の電源装置100では、エンドプレート32の側面にバインドバー34が固定される構成となっているが、エンドプレートとバインドバーの固定構造は、図示されている構成に限る必要はない。バインドバー34として必要な機能は、一対のエンドプレート32の相対距離を規制することにある。一対のエンドプレートの変位を規制できる構成であれば、エンドプレート32やバインドバー34の構成はどのような構成であってもよい。
【0016】
(電池セル)
図2に示すように、電池セル1は、直方体形状の外装缶12と、正負の電極端子16が設けられる封口体14とを含んでいる。また、電池セル1は、外装缶12内に収納される電極体を有しており、外装缶12内に電解液が充填されており、充放電や劣化に伴い、膨張したり、収縮したりする特性を有している。
【0017】
外装缶12は、開口を有する箱型形状に形成されている。封口体14は、外装缶12の開口を閉塞した状態で、外装缶12に溶接される。具体的には、外装缶12は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口体14は、外装缶12と同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。この封口体14は、両端部に正負の電極端子16が固定されている。封口体14は、外装缶12の開口部に挿入された状態で溶接される。典型的には、封口体14の外周と外装缶12の内周との境界にレーザービームを照射することで、封口体14を外装缶12に気密に固定される。
【0018】
以上の構成の電池セル1は、外装缶の開口部と封口体とが溶接された溶接部が外装缶の上端に沿って形成される。電池セル1が膨張すると、溶接部が破損するおそれがあるため、外装缶の上端部分の変形を抑制することが重要である。
【0019】
(セパレータ2)
図3に示すように、セパレータ2は、隣接する電池セルと当接する当接部21と、当接部21よりも厚さが薄く形成される薄肉部22と、を含んでいる。当接部21は、電池セル1の外装缶12の中央部分に対応する位置に設けられており、外装缶12の幅広面を押圧して、電池セル1の膨張を抑制する。薄肉部22は、当接部21に隣接して設けられており、隣接する電池セル1の外装缶12の上端に沿って延在している。特に、薄肉部22は、外装缶12の上端に沿って形成される外装缶12の開口部と封口体14とが溶接された溶接部18と対向するように構成されている。溶接部18が押圧されると、溶接部18に応力が集中して、溶接部18が破損するおそれがあるが、セパレータ2は、薄肉部22から当接部21が電池セル1に向かって突出するように構成することで、薄肉部22が溶接部18を押圧することを防止できるようになっている。
【0020】
なお、図3に示すセパレータ2は、当接部21と薄肉部22の境界に段差が形成されているが、必ずしも段差が形成される形状でなくてもよい。図3に示すセパレータ2は、構成を明確にするための例示であり、例えば、当接部と薄肉部の境界にテーパーが設けられ、なだらかに変化するような形状も採用できる。
【0021】
なお、外装缶や封口体が金属である電池セル1は、表面に金属を露出することになる。典型的には、結露水等を介した短絡を防止するために、外装缶12の表面を熱収縮チューブで覆う構成が知られている。本実施形態においても、必要に応じて、外装缶12の表面を熱収縮チューブで覆う構成を採用してもよい。外装缶12の表面が熱収縮チューブで覆われる構成の電池セル1を用いる場合、当接部21は、熱収縮チューブを介して、外装缶12を押圧することになる。従って、本発明において、当接部21と外装缶の当接とは、直接的な接触のみに限定する意図はなく、当接部21が、間接的に外装缶12を押圧している状態も含むものとする。
【0022】
一方、上述のとおり、異常な状態となった電池セルから隣接する電池セルに伝熱する熱量が大きい場合、伝熱された熱により隣接する電池セルの内部の発電要素の化学反応が促進されるおそれがあるため、セパレータ2は、断熱性を有する断熱部材を含む構成となっている。
【0023】
(断熱部材)
セパレータ2が有する断熱部材は、0.1~1.5mmの厚さのシートであり、織布や不織布等からなる繊維シートと、繊維シートの繊維間に担持される多孔質材とを含んでいる。本発明の実施形態に好適な断熱部材は、熱伝導率が0.02W/(m・K)以下の特性を有しているものである。多孔質材は、キセロゲルやエアロゲル等の空隙構造を有するものが好ましい。特に、シリカエアロゲルやシリカキセロゲルは、空気分子の運動を規制するナノサイズの空隙構造を有しており、優れた断熱性能を有している。また、シリカキセロゲルは、外部からの押圧に対してその構造を安定的に維持することができる。シリカ粒子は、融点が高いため、シリカキセロゲルも高い耐熱性を有している。繊維シートを構成する繊維は、種々の繊維を用いることができ、耐熱性を有する難燃性繊維を含んでいてもよい。難燃性繊維としては、酸化アクリル繊維、難燃性ビニロン繊維、ポリエーテルイミド繊維、アラミド繊維およびガラス繊維などが知られている。特に、繊維シートは、ガラス繊維を含むことで、耐熱性の向上に加え、剛性の向上およびクリープ変形の抑制が期待できる。難燃性繊維を含む繊維シートを用いた断熱部材は、電池セル1が熱暴走して高温に加熱されても破損することがなく、安定して熱エネルギーの伝導を遮断して、熱暴走の誘発を効果的に阻止できる。
【0024】
なお、断熱部材に含まれる繊維は、繊維径の細い合成繊維とすることが好ましい。断熱部材の断熱性は、後述する粉体の特性に起因するため、繊維径の細い合成繊維を基材とすることで、多量の粉体を断熱材に含ませることができる。本実施形態で用いられる繊維シートとしては、熱伝導率、生産性を両立させる観点から1~30μmが好ましい。
【0025】
また、断熱部材は、熱可塑性樹脂を添加して成形してもよい。このように断熱部材を形成する際、添加物を調整することで、要求される性能に応じて、断熱性や耐熱性等を維持しつつ、弾性等の物理特性を適宜、設計することができる。なお、断熱部材の表面をコート処理することで、様々な特性を付与することもできる。例えば、輻射率が低いアルミナからなるコーティング層で覆うことで、断熱部材の輻射伝熱の影響を抑制することができる。
【0026】
(セパレータ2A)
図4は、図1のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図4に示すセパレータ2Aは、成形性の高い樹脂で成形される挾着プレート部23Aと、挾着プレート部23Aの表面に配置される断熱部材24Aと、を備えている。断熱部材24Aは、上述の断熱部材を用いることが好ましい。挾着プレート部23Aは、当接部21と薄肉部22とを有している。セパレータ2Aは、成形性の高い樹脂で挾着プレート部23Aを成形することで、薄肉部22による溶接部18の押圧を防止できるようになっている。また、図4に示すように、必要に応じて、挾着プレート部23Aの周縁から隣接する電池セル1に向かって突出する周壁27を設けても良い。周壁27は、電池セル1の側面に沿って延在しており、電池セル1の変位を抑制したり、電池セル1を保持したりできるようになっている。周壁27を有するセパレータ2を採用することで、電源装置の組立性等の機能を向上させることができる。
【0027】
以上の構成のセパレータ2Aは、断熱部材24Aの形状には特に制限はなく、必要とされる断熱性能に応じて、厚さや形状、配置位置などを自由に選択することができる。つまり、セパレータ2Aを、成形性の高い樹脂で形成される部分と、断熱性能を確保するための部分に分けることで、断熱部材として、成形性の低い断熱部材であっても採用することができるようになっている。上述の断熱部材は、成形性が低くシート状以外の形状に成形することが困難であるが、セパレータ2Aの構成であれば、このような断熱部材を利用することができるようになる。
【0028】
(セパレータ2B)
図5および図6は、図1のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図5および図6に示すセパレータ2Bは、成形性の高い樹脂で成形される挾着プレート部23Bと、挾着プレート部23Bの内部に配置される断熱部材24Bと、を備えている。断熱部材24Bは、上述の断熱部材を用いることが好ましい。挾着プレート部23Bは、当接部21と薄肉部22とを有している。セパレータ2Bは、成形性の高い樹脂で挾着プレート部23Bを成形することで、薄肉部22による溶接部18の押圧を防止できるようになっている。また、図5および図6に示すように、必要に応じて、挾着プレート部23Bの周縁から隣接する電池セル1に向かって突出する周壁27を設けても良い。
【0029】
具体的には、セパレータ2Bは、断熱部材24Bが、挾着プレート部23Bの内部に位置するように、断熱部材24Bが成形性の高い樹脂でインサート成形されている。なお、使用する断熱部材の特性によるが、断熱部材24Bの表面は、樹脂の浸透を防止するためのフィルムで覆われていることが好ましい。複数の細孔を有する断熱部材には、細孔内の空気層により断熱を実現しているものがある。このような断熱部材の場合、細孔内に樹脂が充填されてしまうと著しく断熱性能が低下するおそれがある。フィルムで覆われている断熱部材24Bをインサート成形することで、フィルムにより、樹脂の浸透が抑制され、断熱性能の低下を抑制することができる。なお、細孔内に樹脂が充填されるおそれがない断熱部材の場合には、必ずしもフィルムで覆う必要はない。
【0030】
以上の構成のセパレータ2Bは、断熱部材24Bが成形性の高い樹脂で覆われる構成となるため、断熱部材24Bの形状には特に制限はなく、必要とされる断熱性能に応じて、厚さや形状を選択することができる。
【0031】
(セパレータ2C)
図7は、図1のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図7に示すセパレータ2Cは、熱可塑性樹脂を添加して成形される断熱部材24Cを含んでいる。断熱部材24Cは、上述の断熱部材を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂を含む断熱部材24Cは、断熱部材24Cを加熱した状態で、プレス成形することで、当接部21および薄肉部22を有する板状に成形することができる。具体的には、シート状の断熱部材24Cを部分的にプレス成形することで、薄肉部22および当接部21を有するセパレータ2Cを成形することができる。このように成形されたセパレータ2Cは、プレス成形された部分が薄肉部22に相当する部分である。セパレータ2Cは、以上の構成により、薄肉部22による溶接部18の押圧を防止できるようになっている。
【0032】
なお、シート状の断熱部材24Cを部分的に異なる厚さとなるようにプレスすることでセパレータ2Cを成形することもできる。この構成の場合、当接部21と薄肉部22の圧縮率が異なるようになっている。熱可塑性樹脂を含む断熱部材24Cは、加熱圧縮されることで剛性が向上する。
【0033】
以上の構成のセパレータ2Cは、シート状の断熱部材を用いて、当接部21および薄肉部22を有するセパレータを成形することができる。この構成のセパレータは、比較的単純な形状のセパレータに好適である。
【0034】
(セパレータ2D)
図8は、図1のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図8に示すセパレータ2Dは、複数のシート状の断熱部材24Dからなる。具体的には、セパレータ2Dは、寸法の異なる複数の断熱部材24Dを貼りあわせることで形成される。セパレータ2Dを構成する複数の断熱部材24Dは、隣接する電池セルの外装缶の幅広面より小さい面積を有する第一のシート25Dと、第一のシート25Dより面積が大きい第二のシート26Dを含んでいる。第一のシート25Dおよび第二のシート26Dの間には、接着層が介在しており、第一のシート25Dと第二のシート26Dとが接合されている。なお、接着層の構成は、どのような構成でもよく、接着剤や両面テープ等、さまざまなものが利用できる。第一のシート25Dは、第二のシートの中央に配置されている。以上の構成により、薄肉部22および当接部21を有するセパレータ2Dを成形することができ、薄肉部22による溶接部18の押圧を防止できるようになっている。
【0035】
なお、第一のシート25Dを複数枚貼り合わせることで、薄肉部22と電池セル1の間の隙間の大きさを調整することができる。そのため、以上の構成のセパレータ2Dは、厚く成形することが難しい断熱部材を用いて、セパレータを成形する場合に好適である。
【0036】
(第二実施形態)
図9は、本発明の第二実施形態の電源装置200を示す斜視図である。なお、以下の説明において、第一実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を附し、説明を省略する。図9に示すように第二実施形態の電源装置200は、セパレータ2と電池セル1との間に冷却隙間4が形成されるように構成されている。電池セル1は、高温になると劣化が促進されるため、電池セル1を冷却することで、電池の劣化を抑制できるように構成されている。なお、図9に例示されるように、バインドバー34は、セパレータ2と電池セル1との間に冷却隙間4に冷却風を導入できるような形状とすることが好ましい。具体的には、図9に例示される電源装置200では、一方の側面に一対のバインドバー34が設けられており、一対のバインドバー34の間に冷却隙間4の流入口が臨むように構成されている。
【0037】
(セパレータ2E)
図10および図11は、図9のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図10および図11に示すセパレータ2Eは、成形性の高い樹脂で成形される挾着プレート部23Eと、挾着プレート部23Eの表面に配置される断熱部材24Eと、を備えている。断熱部材24Eは、上述の断熱部材を用いることが好ましい。挾着プレート部23Eは、当接部21と、薄肉部22と、複数条のリブ28を含んでおり、挾着プレート部23Eの一方の面に当接部21が形成され、挾着プレート部23Eの他方の面に複数条のリブ28が形成されている。複数条のリブ28は、隣接する電池セルの外装缶と当接することで、隣接するリブ28の間に冷却隙間4を形成する。冷却隙間4に強制送風される空気などの冷却用の気体が、セパレータ2Eの冷却隙間4を流れることにより電池セル1を冷却することができる。
【0038】
セパレータ2Eは、断熱部材24Eが挾着プレート部23Eの当接部21が形成される面に配置されている。断熱部材24Eは、柔軟性の高い断熱部材が好ましい。柔軟性が高い断熱部材は、挾着プレート部23Eの当接部21により押圧され、間接的に電池セル1の外装缶12の幅広面を押圧する。この構成によると、断熱部材24Eが挾着プレート部23Eの当接部21より大きい場合であっても、断熱部材24Eが変形することで、溶接部18に負荷がかかることを抑制できる。なお、比較的剛性の高い断熱部材24Eを採用する場合には、断熱部材24Eの面積を当接部21より小さくするか、当接部21を断熱部材24Eで形成することが好ましい。
【0039】
(セパレータ2F)
図12および図13は、図9のセパレータ2の一例を示すための斜視図である。図12および図13に示すセパレータ2Fは、成形性の高い樹脂で成形される挾着プレート部23Fと、挾着プレート部23Fの表面に配置される断熱部材24Fと、を備えている。断熱部材24Fは、上述の断熱部材を用いることが好ましい。挾着プレート部23Fは、当接部21と、薄肉部22と、複数条のリブ28を含んでおり、挾着プレート部23Fの一方の面に当接部21が形成され、挾着プレート部23Fの他方の面に複数条のリブ28が形成されている。
【0040】
セパレータ2Fは、断熱部材24Fが挾着プレート部23Fの複数条のリブ28が形成される面に配置されている。この構成のセパレータを用いる電源装置は、リブ28による外装缶の局所的な変形を抑制する効果が期待できる。冷却隙間を有するセパレータの場合、冷却隙間を区画するためのリブが必要になる。そのため、挾着プレート部23Fのリブ28が形成される面と外装缶との接触面積は、挾着プレート部23Fの当接部21と外装缶との接触面積より小さくなる。そのため、リブ28が当接している外装缶は、当接部が当接している外装缶と比べて、応力が集中するおそれがある。図11および図12に示すセパレータを備える実施形態では、リブ28は、外装缶12に対して間接的に接触するので、応力を分散することができる。
【0041】
以上の構成によると、拘束部材を介して一対のエンドプレート32を所定の寸法に固定して、その間に積層される電池セル1を圧縮状態に固定され、電池セルの膨張を抑制することができるようになっている。そのため、一対のエンドプレート32の間に配置されている部材同士の当接部分に応力が集中する。上述の実施形態の構成では、隣接する電池セル1の間に配置されるセパレータ2は、隣接する電池セルの外装缶の開口部と封口体とが溶接された溶接部18と対向する位置に薄肉部22が設けられるようになっているため、溶接部18に負荷がかかることを抑制できる。つまり、本発明の実施形態の電源装置は、隣接する電池セルの伝熱を抑制するとともに、電池セルの溶接部に応力が集中することを抑制できるようになっている。
【0042】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各々の構成要素や各々の処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
100、200…電源装置、1…電池セル、12…外装缶、14…封口体、16…電極端子、18…溶接部、2、2A、2B、2C、2D、2E、2F…セパレータ、21…当接部、22…薄肉部、23A、23B、23E、23F…挾着プレート部、24A、24B、24C、24D、24E、24F…断熱部材、25D…第一のシート、26D…第二のシート、27…周壁、28…リブ、3…拘束部材、32…エンドプレート、34…バインドバー、36…止ネジ、
4…冷却隙間。
図1
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図13