(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240401BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240401BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240401BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 301E
H02J50/10
H02J7/00 301D
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020557014
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 IB2019059682
(87)【国際公開番号】W WO2020104892
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2018219323
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】大貫 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135884(JP,A)
【文献】特表2016-530742(JP,A)
【文献】特表2002-510850(JP,A)
【文献】特開平9-312172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
7/34-7/36
50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池の第1の端子に接続され、放電時に前記二次電池から出力される電力を伝送する第1の伝送路と、
前記第1の伝送路に接続され、前記二次電池の側面に接して可撓性基板上に設けられた充電制御回路と、
前記充電制御回路と前記二次電池の第2の端子とを接続する第2の伝送路と、
前記第2の伝送路を遮断する遮断用スイッチと、
前記充電制御回路と電気的に接続された充電回路と、
前記充電回路と電気的に接続されたアンテナと、
前記アンテナから前記充電回路を介して、充電時に前記二次電池へ電力が供給される第3の伝送路と、を有し、
前記充電制御回路は、前記遮断用スイッチを制御
して前記第2の伝送路を遮断する機能と、前記充電回路の出力トランジスタを制御
して前記第3の伝送路を遮断する機能と、前記第2の伝送路の遮断と前記第3の伝送路の遮断とを同時に行わせる機能と、を有し、
前記二次電池は、前記側面において曲面領域を有し、
前記充電制御回路は、前記二次電池と接する領域において、曲面領域を有する、半導体装置。
【請求項2】
二次電池と、
前記二次電池の第1の端子に接続され、放電時に前記二次電池から出力される電力を伝送する第1の伝送路と、
前記第1の伝送路に接続され、前記二次電池の側面に接して可撓性基板上に設けられた充電制御回路と、
前記充電制御回路と前記二次電池の第2の端子とを接続する第2の伝送路と、
前記第2の伝送路を遮断する遮断用スイッチと、
前記充電制御回路と電気的に接続された充電回路と、
前記充電回路と電気的に接続されたアンテナと、
前記アンテナから前記充電回路を介して、充電時に前記二次電池へ電力が供給される第3の伝送路と、を有し、
前記充電制御回路は、前記遮断用スイッチをオフにして前記第2の伝送路を遮断する機能と、前記充電回路の出力トランジスタをオフにして前記第3の伝送路を遮断する機能と、前記遮断用スイッチをオフにするときに前記充電回路の出力トランジスタをオフにする機能と、を有し、
前記二次電池は、前記側面において曲面領域を有し、
前記充電制御回路は、前記二次電池と接する領域において、曲面領域を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1
又は2において、前記遮断用スイッチ及び前記出力トランジスタは
それぞれ、酸化物半導体を用いたトランジスタである
、半導体装置。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか一において、
前記可撓性基板は、前記二次電池の側面面積と同じ又は前記二次電池の側面面積以下の面積を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一において、
前記可撓性基板は、曲率半径が9mm以上の曲面を有する領域を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、またはそれらの製造方法に関する。特に、酸化物半導体を用いる半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【0003】
また、本発明の一態様は、半導体装置を用いた充電制御システム、充電制御方法、及び二次電池を有する電子機器に関する。
【0004】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、一次電池、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、全固体電池、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0005】
近年、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、モバイル機器、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラなどに用いられている。また、リチウムイオン二次電池は、その他にも、医療機器、又は、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車や、電動バイク、電動アシスト自転車などの電動車両などにも用いられている。このように、リチウムイオン二次電池は、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0006】
二次電池は、使用者が使用して残量が減れば充電を行うことを繰り返し行う。充電を繰り返し行うことで二次電池は劣化するため、二次電池の劣化の程度に合わせて充電条件を変えることで二次電池の寿命を長くする工夫などが行われている。二次電池は、製造直後において個体差があり、サイクル数とともに劣化し、さらに電池の電圧、充放電電流、温度、内部抵抗などの様々なパラメータの影響を受ける。
【0007】
また、リチウムイオンを用いる二次電池は、劣化により内部短絡や過充電などの原因で熱暴走することが知られている。熱暴走する前に予兆となる異常を検知し、安全対策をとることが望まれている。
【0008】
携帯情報端末や電気自動車などにおいては、複数の二次電池を直列接続または並列接続して保護回路を設け、電池パック(組電池ともよぶ)として使用される。電池パックとは、二次電池の取り扱いを容易にするため、複数個の二次電池で構成される電池モジュールを、所定の回路と共に容器(金属缶、フィルム外装体)内部に収納したものを指す。
【0009】
また、組電池を構成する全ての二次電池が正常に機能していれば問題ないが、一つでも異常になると、他の二次電池にも悪影響が及び、保護回路が機能すれば組電池は使用停止となる。
【0010】
また、携帯情報端末においては、筐体の小型化、または薄型化が進められており、携帯情報端末の筐体は小さく、二次電池の容量は大きいことが望まれており、筐体内の空間には限りがある。
【0011】
従来、二次電池の異常から、安全を確保するため、過充電や過放電を防止する保護回路がICチップとしてリジッド基板(プリント配線板)に実装されている。また、放電電流の導通や遮断を行うためのスイッチング回路がICチップに実装され、これらの複数のICチップを組み合わせてリジッド基板に実装されている。また、保護回路のICチップとスイッチング回路のICチップの両方を実装した小さなリジッド基板が電池セルの2端子の間に配置され、そのリジット基板と電池セルをまとめてフィルムで固定したものが一つの電池パックを形成している場合がある。
【0012】
特許文献1では、二次電池の微小短絡を検出する電池状態検知装置及びそれを内蔵する電池パックが示されている。
【0013】
また、酸化物半導体(Oxide Semiconductor、ともいう)に関して、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛など、一元系金属の酸化物のみでなく、多元系金属の酸化物も知られている。多元系金属の酸化物の中でも、特に、In-Ga-Zn酸化物(IGZO、ともいう)に関する研究が盛んに行われている。
【0014】
IGZOに関する研究により、酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造、および、nc(nanocrystalline)構造が見出された(非特許文献1乃至非特許文献3、参照)。
【0015】
非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いて、トランジスタを作製する技術が開示されている。さらに、CAAC構造およびnc構造よりも結晶性の低い酸化物半導体でさえも、微小な結晶を有することが、非特許文献4および非特許文献5に示されている。
【0016】
非特許文献6では、酸化物半導体を用いたトランジスタの、オフ電流が非常に小さいことが報告され、非特許文献7および非特許文献8では、オフ電流が非常に小さい性質を利用した、LSI(Large Scale Integration)およびディスプレイが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【非特許文献】
【0018】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【文献】S.Ito et al.,“The Proceedings of AM-FPD’13 Digest of Technical Papers”,2013,p.151-154
【文献】S.Yamazaki et al.,“ECS Journal of Solid State Science and Technology”,2014,volume 3,issue 9,p.Q3012-Q3022
【文献】S.Yamazaki,“ECS Transactions”,2014,volume 64,issue 10,p.155-164
【文献】K.Kato et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2012,volume 51,p.021201-1-021201-7
【文献】S.Matsuda et al.,“2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers”,2015,p.T216-T217
【文献】S.Amano et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2010,volume 41,issue 1,p.626-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
二次電池の充電作業を簡略にするために、給電装置(充電器)と携帯情報端末との間で無線による電力伝送を利用した無線給電(ワイヤレス充電とも呼ばれる)が広まりつつある。
【0020】
給電装置(充電器)である送信側ワイヤレス電源と、携帯情報端末の受信側ワイヤレス電源とを空間的に接近させると、充電器から生成された交流磁束によるエネルギーが受電コイルに伝送される。受電コイルから交流電流が発生し、整流回路に送出されて直流電流に変換される。受信側ワイヤレス電源は、受電コイルと整流回路を少なくとも有する。また、受信側ワイヤレス電源は、二次電池が充電に必要とする電流及び電圧に変換するための電流電圧変換回路などの充電回路を有する。
【0021】
無線充電であっても充電時の安全性を確保するため、二次電池の異常を検知し、例えば二次電池の安全性を低下させる現象を早期に検知し、使用者に警告、または二次電池の使用を停止することにより、安全性を確保することを課題の一つとしている。
【0022】
また、二次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することも課題の一つとしている。
【0023】
また、二次電池の充電回数が増えることで寿命が短くなる傾向があることから、充電回数を減らすためには、充電タイミングの間隔を長くすることが好ましい。特に使用していない状態(スタンバイ状態)における節電、例えば画面をオフ状態にする等を行えばよいが、電源スイッチを入れていることで給電されてしまう回路もあるため、そのような回路の消費電力も制御することが望まれている。従って、充電回数を減らし、二次電池の寿命を長くすることも課題としている。また、二次電池に限らず、一次電池においても電池の交換間隔を長くすることも課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、可撓性基板上に充電制御回路を設け、電池外表面に貼り付ける。電池が有する2端子のうち、少なくとも一方と充電制御回路は電気的に接続し、充電制御を行う。無線充電を行う場合には、さらに、充電制御回路は、充電回路(電流電圧変換回路など)、整流回路、及び受電コイル(アンテナ、二次コイルとも呼ぶ)などと電気的に接続される。
【0025】
電池への過充電を防ぐため、過充電を検知した際、充電制御回路が電池のプラス側とマイナス側の2箇所に設けた遮断用スイッチをオフ状態に制御する。このようにすることで電池への電力供給を2箇所で遮断して過充電から二次電池を保護することができる。
【0026】
本明細書で開示する発明の構成の一つは、二次電池と、二次電池の第1の端子に接続され、放電時に二次電池から出力される電力を伝送する第1の伝送路と、第1の伝送路に接続され、二次電池の側面に接して可撓性基板上に設けられた充電制御回路と、充電制御回路と二次電池の第2の端子とを接続する第2の伝送路と、第2の伝送路を遮断する第1のスイッチと、充電制御回路と電気的に接続された充電回路と、充電回路に電気的に接続された受電回路と、受電回路に電気的に接続されたアンテナと、充電時に受電回路から充電回路を介して二次電池へ電力が供給される第3の伝送路と、第3の伝送路を遮断する充電回路の出力トランジスタである第2のスイッチと、を有し、第1のスイッチは、二次電池への過充電時に第2の伝送路を遮断し、二次電池の充電中に充電制御回路により異常と判定された場合に第2の伝送路を遮断して充電を停止し、第2のスイッチは、二次電池への過充電時に第3の伝送路を遮断し、充電回路は、受電回路に充電完了を通知する充電制御システムである。
【0027】
アンテナ(2次コイル)を用いてのリチウムイオン二次電池の充電は、Qi規格によるワイヤレス充電を採用し、1次コイルを有する充電器を用いて非接触の充電を行うことができる。本明細書で開示するデバイスは、Qi規格による信号通信機能を有する無線充電モジュールを有する電子機器であり、この新規の電子機器は、外部の充電器からの信号をQi規格による信号通信機能を有する無線充電モジュールで受信できる。
【0028】
可撓性基板上に設けられた充電制御回路は、過充電を検知すると、第1のスイッチと第2のスイッチをオフ状態とする信号を出力する。そして1次コイルからの送電を停止する。送電を停止することができるため、有線での充電に比べて無線での充電は過放電を防ぐことができる。
【0029】
消費電力を小さくすることができるため、上記充電制御回路は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、オフ状態でのリーク電流が非常に小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタは、チャネル幅で規格化されたオフ電流を数yA(ヨクトアンペア)/μm以上数zA(ゼプトアンペア)/μm以下程度に低くすることができる。
【0030】
また、高温環境下で使用可能であるため、充電制御回路は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、充電制御回路は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siよりも広く-40℃以上150℃以下であり、二次電池が加熱しても特性変化が単結晶に比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても温度によらず測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。
【0031】
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system)と呼称する場合がある。
【0032】
円筒形二次電池の場合、可撓性基板を曲げて、二次電池の側面の曲面に巻きつけるように設置することもできる。
【0033】
また、同一の可撓性基板上に保護回路、第1のスイッチ、及び上記充電制御回路を設けることによって筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現する。
【0034】
可撓性基板は、有機樹脂フィルム、金属フィルムを用いることができる。有機樹脂フィルムの材料としては、例えば、PET、PEN等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、PC樹脂、PES樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PTFE樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0035】
なお、金属フィルムとしてはステンレス、アルミニウムなどを用いることができる。
【0036】
充電制御回路を可撓性基板上に形成する作製方法は、半導体基板上に形成した後、剥離方法を用いて剥離後に可撓性基板上に固定する方法を用いる。剥離方法においては、公知の技術を用いることができる。また、半導体基板上に形成した後、裏面を研磨した後、可撓性基板上に固定する方法でもよい。また、レーザー光を用いて部分的に切り取った、所謂レーザーカット後、可撓性基板上に固定する方法でもよい。また、直接、充電制御回路を可撓性基板上に形成する方法でもよい。また、ガラス基板上に形成した充電制御回路を剥離方法を用いて剥離後に可撓性基板上に固定する方法を用いる。
【0037】
本明細書において充電制御回路とは、充電電圧及び充電電流量の制御、劣化の度合いに応じた充電電流量制御、マイクロショート検知のいずれか一または全てを実行する回路を指している。
【0038】
マイクロショートとは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
【0039】
充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりマイクロショートと呼ばれる現象が生じていると言われている。
【0040】
また、マイクロショートの検知だけでなく、充電制御回路は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理する。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
【0041】
本明細書で開示する他の発明の構成の一つは、二次電池と、二次電池の第1の端子に接続され、放電時に二次電池から出力される電力を伝送する第1の伝送路と、第1の伝送路に接続され、二次電池の側面に接して可撓性基板上に設けられた充電制御回路と、充電制御回路と二次電池の第2の端子とを接続する第2の伝送路と、第2の伝送路を遮断する遮断用スイッチと、充電制御回路と電気的に接続された充電回路と、を有し、充電制御回路は、遮断用スイッチと充電回路の出力トランジスタとの両方を制御する半導体装置である。
【0042】
第2の伝送路を遮断する第1のスイッチは、導通および遮断動作を制御するためのスイッチであり、保護回路とも言える。また、この第1のスイッチはダイオードと組み合わせることで保護回路を構成することもある。このような保護回路と、上述した充電制御回路とで二重に保護しているともいえ、安全性の高い半導体装置と言える。
【0043】
第1のスイッチ(遮断用スイッチとも呼ぶ)は酸化物半導体を用いたトランジスタで形成することもできる。
【0044】
また、過充電を防ぐため、第3の伝送路を遮断する充電回路の出力トランジスタである第2のスイッチは、酸化物半導体を用いたトランジスタで形成することもできる。
【0045】
本明細書において、保護回路とは、過充電の防止、過電流の防止、または過放電の防止のいずれか一または全てを実行する回路を指している。また、充電を遮断するための遮断用スイッチを保護回路に含める場合もある。
【0046】
上述した充電制御回路を設けた可撓性基板は、電池に限らず、カード型電子マネー、RFID(Radio Frequency Identification)タグなどに組み込むことも可能である。
【発明の効果】
【0047】
電池に繋がっている2つの経路を遮断することで過充電を検知した際、素早く充電停止し、過充電による電池へのダメージを低減できる。
【0048】
電池の側面に設けられた1つのフレキシブル状のシートに保護回路、充電制御回路、及び異常検知回路を設けることによって、これらをICチップとして複数実装していたプリント基板が不要になり、機能を減らすことなく小型化した電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
図1Aは、フレキシブルなフィルムである可撓性基板11上に形成された充電制御回路10を円筒形の二次電池15に実装させた無線充電の充電制御システムの概念図である。なお、
図1A内において、Vbatは二次電池の電圧、Vss及びV-は充電制御回路の電圧、Dout及びCoutは出力端子である。充電制御システムは、円筒形の二次電池15と、充電制御回路10と、第1のスイッチ20と、充電回路16と、アンテナ30とを少なくとも有している。
【0052】
円筒形の二次電池15は、上面に第1の端子12を有し、底面に第2の端子13を有している。円筒形二次電池の第1の端子12に接続され、円筒形の二次電池15から出力される電力を伝送する第1の伝送路は、電極18を介して充電制御回路の端子と電気的に接続される。また、円筒形二次電池の第2の端子13に接続されている第2の伝送路は、電極19を介して第2の伝送路を遮断する第1のスイッチ20と接続されている。
【0053】
図1Aでは、第2の伝送路を遮断する第1のスイッチ20(遮断用スイッチとも呼ぶ)として、トランジスタとダイオードからなるスイッチングダイオードが2個接続されており、過放電、過充電、または過電流を防止するための保護回路として機能している。第1のスイッチ20は、導通および遮断動作を制御しており、供給及び遮断を切り替える切替手段とも呼べる。可撓性基板11上に形成された第2の伝送路のもう一方の端子である第3の端子14は、充電回路16や電子機器17に接続されている。
【0054】
また、充電時にアンテナ30(または受電回路)から充電回路16を介して円筒形の二次電池15へ電力が供給される第3の伝送路も設けられている。
【0055】
充電制御回路10を可撓性基板11上に形成する作製方法は、半導体基板上に形成した後、剥離方法を用いて剥離した後に可撓性基板11上に固定する方法を用いる。剥離方法においては、公知の技術を用いることができる。また、半導体基板上に形成した後、裏面を研磨した後、可撓性基板11上に固定する方法でもよい。また、レーザー光を用いて部分的に切り取った、所謂レーザーカット後、可撓性基板11上に固定する方法でもよい。また、直接、充電制御回路10を可撓性基板11上に形成する方法でもよい。また、ガラス基板上に形成した充電制御回路10を剥離方法を用いて剥離した後に可撓性基板11上に固定する方法を用いてもよい。
【0056】
本実施の形態では、これらのスイッチングダイオードからなる第1のスイッチ20も可撓性基板11上に形成または実装させる例を示しているが、特にこの構成に限定されない。
【0057】
充電制御回路10でマイクロショートなどの異常を検知した場合には、第2の伝送路を遮断する第1のスイッチ20のゲートに信号を入力することで第2の伝送路を遮断することができる。第2の伝送路を遮断すれば、充電回路16からの電流の供給の停止、または電子機器17への電流の供給の停止を行うことができる。また、第2の伝送路を遮断するスイッチ20のゲートへ印加する信号電圧をメモリ回路(酸化物半導体を用いたトランジスタを含む)で保持することで、遮断を長時間維持することができる。
【0058】
また、マイクロショートなどの異常を検知した場合には、第2の伝送路を遮断する際に、充電回路16の出力トランジスタ(第2のスイッチ)をオフ状態として第3の伝送路を遮断し、アンテナ30から送電停止の信号を発信し、送電停止することができる。従って、安全性の高い充電制御システムとすることができる。
【0059】
また、
図1Bは、円筒形の二次電池15と、可撓性基板11とを貼り合わせる直前の様子を示す工程図であり、可撓性基板11の接触面側を示している。
図1Bに示すように可撓性基板11の接触面に円筒形の二次電池15の胴部をあてがって転動させ、胴部の円周方向に可撓性基板11を巻き付け貼着する。また、可撓性基板11にはY方向に電極18と電極19を並べた配置としているが特に限定されず、一方がX方向にずれていてもよい。なお、転動後の図が
図1Cである。
【0060】
円筒形の二次電池15の胴部外周面を覆うように外装フィルムが装着されている。この外装フィルムは、二次電池内部の構造を封止するための金属缶を保護し、金属缶との絶縁性を図るために用いられる。
【0061】
外装フィルムを使用せずに、円筒形の二次電池15の外表面(端子部分を除く)が金属面である場合には、金属面と電極18との間、金属面と電極19との間に絶縁シートを挟むことが好ましい。電極18、または電極19は、導電性金属箔や、導電材料からなる導電性テープや、リード線であり、円筒形の二次電池15の端子と、半田付けや、ワイヤボンディング法などの公知の方法により接続する。また、電極18、または電極19は、充電制御回路10の端子と半田付けや、ワイヤボンディング法により接続する。
【0062】
従来のように、円筒形二次電池の底面と重なる円形のリジット基板にICチップを実装した保護回路を用いる場合、ソケットに嵌めてバネに接触するため物理的な圧力がかかり故障の原因になる恐れがある。本発明においては、円筒形二次電池の側面に設けるため、従来に比べて物理的な圧力がかからない。また、従来においては、底部に円形のリジット基板を配置するとそのスペースに合わせて、電池のサイズを小さくする必要があるため、容量が小さくなる。本発明においては、円筒形二次電池の側面に設けるため、従来に比べて容量を小さくすることなく、省スペース化も実現できる。
【0063】
このように、円筒形二次電池15の側面の曲面領域に充電制御回路10や保護回路を設けることは有用である。例えば、18650電池の場合、直径18mm、長さ65mmであるため、可撓性基板11の面積は、円筒形二次電池の側面面積とほぼ同じ面積(X方向の長さは3.14×18mm、Y方向の長さは65mm)またはそれ以下となる。また、26650電池の場合、直径26mm、長さ65mmであるため、可撓性基板11の面積は、X方向の長さは3.14×26mm、Y方向の長さは65mmとする。
【0064】
また、円筒形の二次電池15が18650電池の場合、可撓性基板11を貼り付けると可撓性基板11の曲面領域は、曲率半径が約9mmとなる。可撓性基板11上に設けた回路や配線の影響で一律に曲率半径が約9mmとならない場合もあるため、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面においての曲率半径を指すことする。用いる円筒形の二次電池15のサイズにもよるが、曲率半径30mm以上、好ましくは曲率半径9mm以上の範囲で可撓性基板11を曲げることができる。
【0065】
また、充電制御回路10の具体的な回路のブロック図の一例を
図2Aに示す。
【0066】
図2Aに示すように二次電池15の充電制御回路10は、比較回路102と、第1のメモリ103と、第2のメモリ104と、制御回路106を少なくとも備える。
【0067】
図2Aでは二次電池15及び遮断用スイッチ105(第1のスイッチ)を充電制御回路10と分けて示しているが、同一基板上に遮断用スイッチ105と充電制御回路10を形成することもできる。
【0068】
比較回路102は、2つの入力電圧の大小関係を比較し、出力する。比較回路102は、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いて単極性回路を用いることもできる。
【0069】
第1のメモリ103は、アナログメモリであり、オフセットされた二次電池のアナログ電位を保存する。オフセットされた二次電池の電圧値のデータは、第1のメモリ103のトランジスタのゲートに書き込み信号を印加することでゲート電極とドレイン電極間に発生する寄生容量により作成することができる。第1のメモリ103は酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタ1つと容量とで構成される。第1のメモリ103は、高精度な充電電圧モニター回路とも呼べる。また、第1のメモリ103は、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタの低リーク電流であることのメリットを生かすことができる。
【0070】
第2のメモリ104は、第1のメモリ103と同じ素子構成であり、酸化物半導体(OS)をチャネル形成領域に有するトランジスタ1つと容量とで構成される。第2のメモリ104は、遮断用スイッチ105(第1のスイッチ)のデータ保持を行う。
【0071】
遮断用スイッチ105(第1のスイッチ)は、異常が発生した二次電池の電源への電力供給を遮断するためのスイッチである。遮断用スイッチ105は、
図2Aに示す回路構成とすることで、異常が発生した二次電池15を継続して充電してしまい、過充電により発火することを防ぐことができる。さらに充電制御回路10が充電回路の出力トランジスタをオフ状態とすることで過充電の危険性を低減できる。
【0072】
図2Aでは、遮断用スイッチ105(第1のスイッチ)を用いて異常検出後に二次電池15への電力供給をストップする例を示しているが、異常検出の回数に合わせて充電条件の変更や充電の一時停止や警告表示などを行ってもよい。
【0073】
また、
図2Aに示す第1のメモリ103、および第2のメモリ104に用いることのできるメモリセルを
図2Bに示す。
図2Bはトランジスタにバックゲートを有する場合のメモリセル100の回路構成例である。
【0074】
メモリセル100は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、フロントゲート(単に「ゲート」ともいう。)、およびバックゲートを有する。バックゲートは、ゲートとバックゲートで半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。なお、ゲートおよびバックゲートの呼称は便宜的なものであり、一方を「ゲート」という場合に他方を「バックゲート」という。よって、ゲートおよびバックゲートの呼称は、互いに入れ換えて用いることができる。ゲートまたはバックゲートの一方を「第1のゲート」と呼び、他方を「第2のゲート」と呼ぶ場合もある。
【0075】
トランジスタM1のソースまたはドレインの一方は、容量素子CAの一方の電極と電気的に接続され、トランジスタM1のソースまたはドレインの他方は、ビット線BLまたはビット線BLBと電気的に接続され、トランジスタM1のゲートは、ワード線WLと電気的に接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと電気的に接続されている。容量素子CAの他方の電極は、配線CALと接続されている。
【0076】
配線CALは、容量素子CAの他方の電極に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、および読み出し時において、配線CALには、VSSなどの固定電位を供給するのが好ましい。
【0077】
配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。
【0078】
図2Cに、トランジスタの電気特性の1つであるId-Vg特性の一例を示す。Id-Vg特性は、ゲート電圧(Vg)の変化に対するドレイン電流(Id)の変化を示す。
図2Cの横軸は、Vgをリニアスケールで示している。また、
図2Cの縦軸は、Idをログスケールで示している。
図2Cに示すように、配線BGLにバックゲート電圧(Vbg)として、正バイアスである電圧+Vbgを供給すると、Id-Vg特性がVgのマイナス方向にシフトする。配線BGLに負バイアスである電圧-Vbgを供給すると、Id-Vg特性がVgのプラス方向にシフトする。Id-Vg特性のシフト量は、配線BGLに供給される電圧の大きさで決まる。配線BGLに印加する電圧を調整することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0079】
データの書き込みおよび読み出しは、ワード線WLにトランジスタM1を導通状態(オン状態)とする電位を供給し、トランジスタM1を導通状態にして、ビット線BLまたはビット線BLBと容量素子CAの一方の電極を電気的に接続することによって行われる。
【0080】
トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータの長時間保持がトランジスタM1によって可能となるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセルにアナログデータを保持することができる。
【0081】
図1Aに示すように、円筒形の二次電池15から電子機器17に電力を供給する場合、円筒形の二次電池15は放電状態となり、第1の端子12及び第2の端子13における電圧や電流などの挙動を充電制御回路10で監視し、異常を検知した場合には、第1のスイッチ20により第2の伝送路を遮断して放電を停止する。
【0082】
電子機器17は二次電池以外の構成を指しており、電子機器17にとっての電源が、円筒形二次電池15である。なお、電子機器17とは、携帯して持ち歩けるモバイル機器を含む。
【0083】
また、円筒形の二次電池15を無線により電力を供給して充電する場合、円筒形の二次電池15は充電状態となる。第1の端子12及び第2の端子13における電圧や電流などの挙動を充電制御回路10で監視し、異常を検知した場合には、第2の伝送路及び第3の伝送路を遮断して充電を停止する。
【0084】
充電回路16は、無線信号を用いて電力伝送を行う回路を指している。なお、充電回路16が電子機器17に内蔵されている場合もある。
【0085】
充電回路16が電子機器17に内蔵されている一例を説明する。電子機器17は、複数の回路を実装したリジット基板を内蔵し、充電制御回路を巻き付けた電池を電源としている。プロセッサ23や電源回路24や充電回路16や受電回路22などをリジッド基板に実装しているブロック図を
図4Aに示している。なお、
図4Aと
図1Aとで共通している部分には同じ符号を用いている。なお、
図4Aにおいて1次コイル31と2次コイル(アンテナ30)はアンテナモジュールとしてリジット基板の端子に電気的に接続する。
【0086】
図4Bに、二次電池15に充電制御回路10を搭載した電子機器17に対して1回の充電中に過充電を検知する場合の、充電制御システムのフローの一例を示す。
【0087】
まず、充電制御回路10が過充電を検知する(S1)。次いで、充電制御回路10は、遮断用スイッチである第1のスイッチ20をオフするとともに充電回路16に過充電を検知したことを通知する(S2)。
【0088】
次いで、充電回路16の出力トランジスタをオフすることによって充電回路16が充電を停止し、受電回路22に充電完了を通知する(S3)。受電回路22が送電側に信号を送り、送電を停止する(S4)。そして、最後に1次コイル31からの送信が停止され、充電停止する(S5)。
【0089】
また、ここでは、過充電を検出する構成を主に説明したが、特に限定されず、過電流の防止、マイクロショートのような異常の検知なども同じフローで行えばよい。
【0090】
上記充電制御システムにより、異常検出後にほぼ同時に複数の回路を停止することが可能である。
【0091】
ここで、円筒形二次電池について
図3A及び
図3Bを参照して説明する。円筒形二次電池15は、
図3Bに示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)201を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)202を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)202とは、ガスケット(絶縁パッキン)210によって絶縁されている。
【0092】
図3Bは、円筒形二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶202の内側には、帯状の正極204と負極206とがセパレータ205を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶202は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶202には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶202の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板208、209により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶202の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF
4やLiPF
6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0093】
円筒形二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極204には正極端子(正極集電リード)203が接続され、負極206には負極端子(負極集電リード)207が接続される。正極端子203および負極端子207は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子203は安全弁機構212に、負極端子207は電池缶202の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構212は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子211を介して正極キャップ201と電気的に接続されている。安全弁機構212は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ201と正極204との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子211は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0094】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0095】
図3Cに示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池1400が充電される。
図3C中において、1406は電解液、1408はセパレータである。蓄電池1400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
図3Cでは、蓄電池1400の外部の端子から、正極1402の方へ流れ、蓄電池1400の中において、正極1402から負極1404の方へ流れ、負極から蓄電池1400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
【0096】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、及び酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコン及びリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、及びバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
【0097】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0098】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。
【0099】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0100】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1の円筒形二次電池の別の構造例について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0101】
図5Aは、扁平形状の二次電池913及び充電制御回路914及び接続端子911を有する電池パックの外観図を示す図である。
【0102】
充電制御回路914は、可撓性基板910上に形成または固定されている。充電制御回路914は、マイクロショートなどの異常を検出する。さらに、過充電、過放電および過電流から二次電池913を保護する、保護回路としての機能を有してもよい。
【0103】
充電制御回路914は、実施の形態1に示した充電制御回路10を用いることができる。回路構成などは同一のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略することとする。
【0104】
また、充電制御回路914に加えて
図4Aに示したようにアンテナ及び受電回路を設けてもよい。アンテナを用いて二次電池913に非接触で充電を行うこともできる。アンテナは、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。アンテナは、たとえば外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナを介した電池パックと他の機器との通信方式としては、NFCなど、電池パックと他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
【0105】
図5Bに示すように、接続端子911は、充電制御回路914を介して、二次電池913が有する端子951および端子952と電気的に接続される。なお、接続端子911を複数設けて、複数の接続端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
【0106】
電池パックは、充電制御回路914と、二次電池913との間に絶縁シート層916を有する。絶縁シート層916は、例えば二次電池913による短絡を防止する機能を有する。絶縁シート層916としては、例えば有機樹脂フィルムや接着シートを用いることができる。
【0107】
さらに、二次電池913の内部構造例について
図6を用いて説明する。
【0108】
二次電池913の内部に配置される捲回体950の構造について
図6Aに示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0109】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して
図5に示す接続端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して
図5に示す接続端子911に接続される。
【0110】
図6Aに示す捲回体950は、外装体の内部で電解液に含浸される。外装体は金属からなる筐体が用いられる。外装体はフィルムを用いる場合もあり、その場合、そのフィルムに可撓性基板上に形成された充電制御回路を設ける場合もある。
【0111】
図6Bに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、
図6Bでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0112】
筐体930としては、金属材料、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。
【0113】
図5Aでは、筐体表面に絶縁シート層916を設け、充電制御回路が設けられている面を内側にして可撓性基板を固定している例を示しているが、特に限定されず、充電制御回路が形成されている面を外側にして端子951や端子952と接続を行ってもよい。ただし、その場合には接続部分が露出することとなり、静電破壊、または短絡の危険があるため注意して組み立てることとなる。
【0114】
接続端子911と電気的に接続される充電制御回路914は、実施の形態1に示した充電制御回路10であるため、安全性の高い二次電池913とすることができる。
【0115】
本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0116】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した充電制御回路10に用いることができる、OSトランジスタの構成例について説明する。なお、OSトランジスタは薄膜トランジスタであり、ガラス基板上に設けられた剥離層上に形成することも、単結晶シリコン基板上に積層して設けることもできる。
【0117】
実施の形態1は、充電制御回路を設けた可撓性基板を二次電池の曲面に貼り付けた例であるため、ガラス基板上に設けられた剥離層上に形成したOSトランジスタを、公知の剥離方法にて可撓性基板に固定する。また、実施の形態2は、二次電池の平面に充電制御回路を貼り付けた例であるため、単結晶シリコン基板上にOSトランジスタを形成した後、例えば、単結晶シリコン基板裏面を研磨して薄膜化したものを可撓性基板に固定する。また、水素イオン注入剥離法を用いて単結晶シリコン基板からOSトランジスタを分離して可撓性基板に固定してもよい。
【0118】
以下、本実施の形態では、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタの上方に、OSトランジスタを設けた半導体装置の構成例について説明する。
【0119】
<半導体装置の構成例>
図7に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500、および容量素子600を有している。
図8Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図8Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図8Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0120】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、ソースとドレインとの間に高い電圧を印加できる、高温環境下でもオフ電流が増加しにくい、高温環境下でもオン電流とオフ電流の比が大きいという特徴を有するため、上記実施の形態では、これを充電制御回路10に用いることにより、モバイル機器を安全性の高い半導体装置とすることができる。
【0121】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図7に示すように、トランジスタ300、トランジスタ500、および容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0122】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0123】
トランジスタ300は、
図8Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0124】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0125】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0126】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0127】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0128】
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0129】
なお、
図7に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0130】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0131】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0132】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0133】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0134】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0135】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0136】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0137】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0138】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0139】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0140】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0141】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0142】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0143】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0144】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0145】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0146】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0147】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0148】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0149】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0150】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0151】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0152】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0153】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0154】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0155】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0156】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0157】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0158】
図8A、
図8Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体512および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0159】
また、
図8A、
図8Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図8A、
図8Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図8A、
図8Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0160】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0161】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図7、
図8A、
図8Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0162】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0163】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0164】
導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のVthを制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0165】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0166】
また、本明細書等において、S-channel構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造及びプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0167】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
【0168】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、および絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0169】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0170】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0171】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0172】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0173】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0174】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0175】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0176】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0177】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0178】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0179】
また、トランジスタ500には、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0180】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0181】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア密度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア密度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア密度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0182】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0183】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0184】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0185】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0186】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0187】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0188】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0189】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0190】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0191】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0192】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0193】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0194】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0195】
また、
図8Aに示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0196】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0197】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0198】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0199】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0200】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0201】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0202】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0203】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0204】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図8A、
図8Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0205】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0206】
また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0207】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0208】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0209】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0210】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0211】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0212】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0213】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0214】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0215】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
【0216】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0217】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0218】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0219】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0220】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0221】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0222】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0223】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0224】
図7では、導電体612、および導電体610は単層構造として示しているが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0225】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0226】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0227】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0228】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0229】
<トランジスタの構造例1>
図9A、
図9Bおよび
図9Cを用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。
図9Aはトランジスタ510Aの上面図である。
図9Bは、
図9Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図9Cは、
図9Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図9Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0230】
図9A、
図9Bおよび
図9Cでは、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)と、配線として機能する導電体503と、を示している。
【0231】
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、第2のゲート電極として機能する導電体505(導電体505a、および導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0232】
また、
図9に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0233】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0234】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0235】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0236】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0237】
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0238】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0239】
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、および導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0240】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。すなわち、先に記載のトランジスタ500と同様に、surrounded channel(S-channel)構造である。
【0241】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0242】
第2のゲートとして機能する導電体505は、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505aおよび導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505aおよび導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0243】
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つ、または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0244】
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0245】
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0246】
絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0247】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0248】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0249】
また、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体521を得ることができる。
【0250】
なお、
図9には、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、単層、または2層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0251】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0252】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0253】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0254】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0255】
また、
図9では導電体542が単層構造である場合を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0256】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0257】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0258】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0259】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0260】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0261】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0262】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0263】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0264】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0265】
また、導電体560bは、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0266】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0267】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0268】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0269】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0270】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0271】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0272】
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0273】
例えば、導電体546として、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0274】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0275】
<トランジスタの構造例2>
図10A、
図10Bおよび
図10Cを用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。
図10Aはトランジスタ510Bの上面図である。
図10Bは、
図10Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図10Cは、
図10Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図10Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0276】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0277】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0278】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0279】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0280】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0281】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0282】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0283】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0284】
<トランジスタの構造例3>
図11A、
図11Bおよび
図11Cを用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。
図11Aはトランジスタ510Cの上面図である。
図11Bは、
図11Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図11Cは、
図11Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図11Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0285】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0286】
図11に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0287】
図11に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0288】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0289】
また、
図11に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0290】
また、
図11に示すトランジスタ510Cは、
図9に示すトランジスタ510Aと異なり、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530bおよび酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0291】
<トランジスタの構造例4>
図12A、
図12Bおよび
図12Cを用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。
図12Aはトランジスタ510Dの上面図である。
図12Bは、
図12Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図12Cは、
図12Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図12Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0292】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0293】
図12A乃至
図12Cでは、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0294】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0295】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層(前述したOC電極)とすることができる。
【0296】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0297】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0298】
金属酸化物552がゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0299】
具体的には、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0300】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0301】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0302】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0303】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0304】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0305】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0306】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0307】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0308】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0309】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0310】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0311】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0312】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0313】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0314】
<トランジスタの構造例5>
図13A乃至
図13Cを用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。
図13Aはトランジスタ510Eの上面図である。
図13Bは、
図13Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図13Cは、
図13Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図13Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0315】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0316】
図13A乃至
図13Cでは、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0317】
図13に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0318】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0319】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0320】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0321】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0322】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、
図13に示すトランジスタを形成することができる。
【0323】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0324】
図13に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0325】
<トランジスタの構造例6>
図14A乃至
図14Cを用いてトランジスタ510Fの構造例を説明する。
図14Aはトランジスタ510Fの上面図である。
図14Bは、
図14Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図14Cは、
図14Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図14Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0326】
トランジスタ510Fはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0327】
トランジスタ510Aでは、絶縁体574の一部が絶縁体580に設けられた開口部内に設けられ、導電体560の側面を覆うように設けられている。一方で、トランジスタ510Fでは絶縁体580と絶縁体574の一部を除去して開口が形成されている。
【0328】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0329】
なお、酸化物530として酸化物半導体を用いる場合は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0330】
酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OS等の結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損等)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ510Fは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0331】
なお、酸化物530aおよび酸化物530cの一方または双方を省略してもよい。酸化物530を酸化物530bの単層としてもよい。酸化物530を、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの積層とする場合は、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物530cは、酸化物530aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物530cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0332】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0333】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いてもよい。また、酸化物530cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物530cとして用いてもよい。
【0334】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造等が挙げられる。
【0335】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ510Fは高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物530cを積層構造とした場合、上述の酸化物530bと、酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物530cが有する構成元素が、絶縁体550側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物530cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体550側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体550は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物530cを積層構造とすることで、信頼性の高い表示装置を提供することが可能となる。
【0336】
酸化物530は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0337】
<トランジスタの構造例7>
また、
図7及び
図8では、ゲートとしての機能を有する導電体560が、絶縁体580の開口の内部に形成されている構造例について説明したが、例えば、当該導電体の上方に、当該絶縁体が設けられた構造を用いることもできる。このようなトランジスタの構造例を、
図15、
図16に示す。
【0338】
【0339】
図15、
図16に示すトランジスタは、バックゲートとしての機能を有する導電体BGEと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体BGIと、酸化物半導体Sと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体TGIと、フロントゲートとしての機能を有する導電体TGEと、配線としての機能を有する導電体WEと、を有する。また、導電体PEは、導電体WEと、酸化物S、導電体BGE、又は導電体TGEと、を接続するためのプラグとしての機能を有する。なお、ここでは、酸化物半導体Sが、3層の酸化物S1、S2、S3によって構成されている例を示している。
【0340】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
【0341】
<金属酸化物の構成>
本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0342】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0343】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0344】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0345】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0346】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0347】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0348】
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
【0349】
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZO、と呼ぶ)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
【0350】
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZO、と呼ぶ)が発見された(非特許文献3参照)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
【0351】
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶サイズの結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
【0352】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0353】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー、ともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0354】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造、ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0355】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0356】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0357】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0358】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一形態の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0359】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0360】
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0361】
また、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照)。
【0362】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
【0363】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。
【0364】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0365】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0366】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0367】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0368】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0369】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0370】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0371】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0372】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0373】
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
【0374】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0375】
(実施の形態5)
上述した実施の形態では、可撓性基板に充電制御回路を設ける例を示したが、特に限定されず、同一基板上に保護回路、第2スイッチ、二次コイル、センサなどを設けてもよい。充電制御回路は、可撓性基板に形成されており、曲げることができ、且つ、二次電池のマイクロショートなどの異常を検知することができる。また、本発明の一態様の充電制御回路は、二次電池の側面に設けることができ、省スペース化及び使用部品数の削減を実現することができる。
【0376】
本実施の形態では、無線による充電制御システム及び充電制御回路を備えた電子機器の例について
図17を用いて説明を行う。
【0377】
ロボット7100は、二次電池、照度センサ、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、ディスプレイ、各種センサ(赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなど)、および移動機構などを備える。ロボット7100の二次電池に本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0378】
マイクロフォンは、使用者の音声および環境音などの音響信号を検知する機能を有する。また、スピーカは、音声および警告音などのオーディオ信号を発する機能を有する。ロボット7100は、マイクロフォンを介して入力されたオーディオ信号を解析し、必要なオーディオ信号をスピーカから発することができる。ロボット7100は、マイクロフォンおよびスピーカを用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0379】
カメラは、ロボット7100の周囲を撮像する機能を有する。また、ロボット7100は、移動機構を用いて移動する機能を有する。ロボット7100は、カメラを用いて周囲の画像を撮像し、画像を解析して移動する際の障害物の有無などを察知することができる。
【0380】
飛行体7120は、プロペラ、カメラ、および二次電池などを有し、自律して飛行する機能を有する。
【0381】
また、飛行体7120の二次電池に本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、軽量化に加えて、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0382】
掃除ロボット7140は、二次電池、上面に配置されたディスプレイ、側面に配置された複数のカメラ、ブラシ、操作ボタン、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット7140には、タイヤ、吸い込み口などが備えられている。掃除ロボット7140は自走し、ゴミを検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。掃除ロボット7140の二次電池に電気的に接続する本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0383】
移動体の一例として電気自動車7160を示す。電気自動車7160は、二次電池、タイヤ、ブレーキ、操舵装置、カメラなどを有する。電気自動車7160の二次電池に接続する本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0384】
なお、上述では、移動体の一例として電気自動車について説明しているが、移動体は電気自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体の二次電池に電気的に接続する本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0385】
充電制御回路700を備えた円筒形二次電池および/または充電制御回路730を備えた電池パックは、スマートフォン7210、PC7220(パーソナルコンピュータ)、ゲーム機7240、ゲーム機7260等に組み込むことができる。なお、充電制御回路700を備えた円筒形二次電池は、実施の形態1に示した充電制御回路10に相当する。また、充電制御回路730を備えた電池パックは、実施の形態2に示した充電制御回路914に相当する。小型の電池パックの駆動を安全に制御する充電制御回路700、730を搭載しつつ、スマートフォンの筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することもできる。
【0386】
スマートフォン7210は、携帯情報端末の一例である。スマートフォン7210は、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、各種センサ、および表示部を有する。無線による充電制御システム及び充電制御回路730によってこれら周辺機器が制御される。スマートフォン7210の二次電池に電気的に接続する本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができ、安全性を高めることができる。
【0387】
PC7220はそれぞれノート型PCの例である。ノート型PCの二次電池に電気的に接続する本発明の一態様の無線による充電制御システム及び充電制御回路を適用して、使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができ、安全性を高めることができる。
【0388】
ゲーム機7240は携帯型ゲーム機の例である。ゲーム機7260は家庭用の据え置き型ゲーム機の例である。ゲーム機7260には、無線または有線でコントローラ7262が接続されている。コントローラ7262に、充電制御回路730を備えた電池パックおよび/または充電制御回路を備えた円筒形二次電池を組み込むことで使用部品数を削減し、且つ、二次電池の過充電や、マイクロショートなどの異常を検知することができる。
【0389】
また、二次電池に限定されず、一次電池に充電制御回路700または充電制御回路730を備えることにより、消費電力を低減できるため、電池のリークを抑え、長寿命の電池を実現できる。さらに、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0390】
図18Aは、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として一次電池または二次電池を用いる。また、使用者が生活使用または屋外使用において水による耐水性を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
【0391】
例えば、
図18Aに示すような眼鏡型デバイス400に搭載することができる。眼鏡型デバイス400は、フレーム400aと、表示部400bを有する。湾曲を有するフレーム400aのテンプル部に一次電池または二次電池を搭載することで、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス400とすることができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0392】
また、ヘッドセット型デバイス401に搭載することができる。ヘッドセット型デバイス401は、少なくともマイク部401aと、フレキシブルパイプ401bと、イヤフォン部401cを有する。フレキシブルパイプ401b内やイヤフォン部401c内に一次電池または二次電池を設けることができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0393】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス402に搭載することができる。デバイス402の薄型の筐体402aの中に、一次電池または二次電池402bを設けることができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0394】
また、衣服に取り付け可能なデバイス403に搭載することができる。デバイス403の薄型の筐体403aの中に、一次電池または二次電池403bを設けることができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0395】
また、腕時計型デバイス405に搭載することができる。腕時計型デバイス405は表示部405aおよびベルト部405bを有し、表示部405aまたはベルト部405bに、一次電池または二次電池を設けることができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0396】
表示部405aには、時刻だけでなく、メールや電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
【0397】
また、腕時計型デバイス405は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康維持に役立てることができる。
【0398】
また、ベルト型デバイス406に搭載することができる。ベルト型デバイス406は、ベルト部406aおよびワイヤレス給電受電部406bを有し、ベルト部406aの内部に、一次電池または二次電池を搭載することができる。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0399】
また、日用電子製品の蓄電装置として本発明の一態様の充電制御システムを用いることで、軽量で長寿命な製品を提供できる。例えば、日用電子製品として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の蓄電装置としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の電池が望まれている。電池側面に充電制御回路を備えてもよく、二次電池または一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載しつつ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0400】
図18Bに電池側面に充電制御回路を備えた一次電池を用いた検知器、例えば火災報知器の例を示す。
【0401】
図18Bにおいて、警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、検出部と、スピーカ部と、マイクロコンピュータと、電池8101を有している。異常が検出されれば、警報装置8100のスピーカ部から音声を出力することが可能である。電池8101側面に充電制御回路を備えてもよく、二次電池または一次電池の駆動を安全に制御する回路を搭載し、消費電力を低減できるため、電池のリークを抑え、長寿命の電池を実現できる。さらに、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0402】
なお、本明細書中において、火災報知器とは、火災の発生を急報する装置全般を示すものであり、例えば、住宅用火災警報器や、自動火災報知設備や、当該自動火災報知設備に用いられる火災感知器なども火災報知器に含むものとする。
【0403】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0404】
10:充電制御回路、11:可撓性基板、12:第1の端子、13:第2の端子、14:第3の端子、15:二次電池、16:充電回路、17:電子機器、18:電極、19:電極、20:第1のスイッチ、22:受電回路、23:プロセッサ、24:電源回路、30:アンテナ、31:1次コイル、100:メモリセル、101:二次電池、102:比較回路、103:メモリ、104:メモリ、105:遮断用スイッチ、106:制御回路、201:正極キャップ、202:電池缶、203:正極端子、204:正極、205:セパレータ、206:負極、207:負極端子、208:絶縁板、209:絶縁板、211:PTC素子、212:安全弁機構、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、400:眼鏡型デバイス、400a:フレーム、400b:表示部、401:ヘッドセット型デバイス、401a:マイク部、401b:フレキシブルパイプ、401c:イヤフォン部、402:デバイス、402a:筐体、402b:二次電池、403:デバイス、403a:筐体、403b:二次電池、405:腕時計型デバイス、405a:表示部、405b:ベルト部、406:ベルト型デバイス、406a:ベルト部、406b:ワイヤレス給電受電部、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、505a:導電体、505b:導電体、510:絶縁体、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、510F:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、650:絶縁体、700:充電制御回路、730:充電制御回路、910:可撓性基板、911:接続端子、913:二次電池、914:充電制御回路、916:絶縁シート層、930:筐体、931:負極、932:正極、933:セパレータ、950:捲回体、951:端子、952:端子、1400:蓄電池、1402:正極、1404:負極、7100:ロボット、7120:飛行体、7140:掃除ロボット、7160:電気自動車、7210:スマートフォン、7220:PC、7240:ゲーム機、7260:ゲーム機、7262:コントローラ、8100:警報装置、8101:電池