(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】保存組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20240401BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/34
A61Q1/00
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2020563403
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019062983
(87)【国際公開番号】W WO2019233757
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル-リー,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,ルパク
(72)【発明者】
【氏名】ポイントン,トーマス・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ストット,イアン・ピーター
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-109906(JP,A)
【文献】特表2014-507418(JP,A)
【文献】特開2011-126879(JP,A)
【文献】特開2002-080301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌保存系および組成物全体の重量の少なくとも75重量%の水を含むパーソナルケア組成物であって、
前記抗菌保存系が、
i.イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii.エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノール、P-ヒドロキシアセトフェノン、バニリン、サリチル酸またはその塩、o-シメン-5-オール、カルバクロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族アルコール
を含
み、
化合物i)対化合物ii)の重量比が1:50~50:1である、パーソナルケア組成物。
【請求項2】
前記芳香族アルコールが、エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族アルコールが、オイゲノールまたはチモールから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物i)対化合物ii)の重量比が1:10~10:1である、請求項1~
3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記保存系が組成物全体の0.05~5重量%を構成する、請求項1~
4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ヘアトリートメント組成物である、請求項1~
5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
パーソナルケア組成物の保存方法であって、
前記方法が、
該組成物に、以下:
i.イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii.エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノール、P-ヒドロキシアセトフェノン、バニリン、サリチル酸またはその塩、o-シメン-5-オール、カルバクロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族アルコール
を含む抗菌保存系を添加する工程
を含み、
前記パーソナルケア組成物が、組成物全体の重量の少なくとも75重量%の水を含
み、
化合物i)対化合物ii)の重量比が1:50~50:1である、方法。
【請求項8】
化合物i)及びii)を、保存すべき組成物に加える前に予め混合する、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
化合物i)及びii)を、保存すべき組成物に加える前にあらかじめ混合しない、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費者製品に使用するための保存系に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
消費財業界は、抗菌特性を有する薬剤を絶えず必要としており、他の方法では日持ちのしない製品(例えば、化粧品、医薬品または食品)の保存については特にそうである。
【0003】
多数の抗菌活性化合物が保存化学物質としてすでに採用されているが、考えられる生態学的懸念を回避し、皮膚に容易に許容される代替物が必要である。
【0004】
このような保存系は、安定的で、大きく好ましくは完全に無臭で、調製するのに安価で、調合が容易であり(すなわち、好ましくは液体)、最終製品に対して有害であってはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に効果的な保存系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記載
本発明は:
i.イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii.エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノール、P-ヒドロキシアセトフェノン、バニリン、サリチル酸またはその塩、o-シメン-5-オール、カルバクロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族アルコール
を含む、抗菌保存系に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記の抗菌保存系を含む組成物に関する。
【0008】
本発明の第3の態様は、組成物に、以下:
i.イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii.エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノール、P-ヒドロキシアセトフェノン、バニリン、サリチル酸またはその塩、o-シメン-5-オール、カルバクロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族アルコール
を含む抗菌保存系を添加する工程を含む、組成物の保存方法に関する。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、イタコン酸またはその塩を含む抗菌保存系に関する。
【0010】
好ましくは、その酸形態が使用される。
【0011】
当該保存系はさらに、エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノール、P-ヒドロキシアセトフェノン、バニリン、サリチル酸またはその塩、o-シメン-5-オール、カルバクロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される芳香族アルコールを含む。
【0012】
好ましい芳香族アルコールは、エチルバニリン、オイゲノール、チモール、P-ヒドロキシベンズアルデヒド、4nブチルフェノールおよびそれらの混合物である。チモールおよびオイゲノールが、より好ましく、チモールが、最も好ましい。
【0013】
チモールは、精製形態で添加されてもよい。代わりに、チモールを含むタイムオイルまたはタイムエキスを保存系に添加してもよい。タイムオイルまたはタイムエキスは、タイム植物から入手される。タイム植物は、タイム属に属する植物をいい、以下の種: Thymus vulgaris、Thymus zygis、Thymus satureoides、Thymus mastichina、Thymus broussonetti、Thymus maroccanus、Thymus pallidus、Thymus algeriensis、Thymus serpyllum、Thymus pulegoideおよびThymus citriodorusが挙げられるが、これらに限定されない。チモールの異性体(カルバクロール)もまた好ましく使用され得る。
【0014】
化合物(C1からC6)、少なくとも2つのカルボキシル基を有する不飽和有機酸の化合物(好ましくはイタコン酸)対芳香族アルコールの重量比は、1:50~50:1であり、より好ましくは1:10~10:1、最も好ましくは1:5~5:1である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、保存系は組成物の一部として含まれる。好ましくは、組成物はパーソナルケア組成物であり、より好ましくは、組成物はヘアトリートメント組成物である。
【0016】
好ましくは、組成物内の保存系の全レベルは、全組成の0.05~5重量%であり、より好ましくは全組成の0.2~2重量%である。
【0017】
本発明の保存系を含む本発明の組成物は、全組成物の重量の、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%および最も好ましくは少なくとも87重量%の水を含む。
【0018】
組成物がさらにカチオン性アニオン性、非イオン性、両性イオン性または両性界面活性剤またはそれらの混合物を含む場合に好ましい。
【0019】
有用な適当なカチオン性界面活性剤の例としては、以下の一般式に対応する第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤が挙げられる:
[N(R1)(R2)(R3)(R4)]+(X)-
(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、
(a)炭素数1~22の脂肪族基、または、
(b)22個までの炭素原子を有する、芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基
から選択され;
Xは、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、およびアルキル硫酸塩ラジカルから選択されるものなどの塩形成アニオンである。)
【0020】
脂肪族は、炭素原子や水素原子に加えてエーテル結合、アミノ基のような他の基を含むことができる。長鎖脂肪族基、例えば約12炭素以上のものは、飽和または不飽和であり得る。
【0021】
このような好ましい第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化ベヘントリモニウム(BTAC)およびそれらの混合物である。
【0022】
あるいは、第一級、第二級または第三級脂肪アミンを酸と組み合わせて使用して、本発明での使用に適したカチオン性界面活性剤を提供することができる。この酸はアミンをプロトン化し、その場でアミン塩を形成する。したがって、アミンは効果的に非永久的な第四級アンモニウムまたは擬似第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤である。
【0023】
このタイプの適当な脂肪アミンには、下記一般式のアミドアミンが含まれる:
R1-C(O)-N(H)-R2-N(R3)(R4)
(式中、R1は12~22個の炭素原子を含む脂肪酸鎖であり、R2は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R3とR4はそれぞれ独立に1~4個の炭素原子をもつアルキル基である。特に好ましいのは、ステアラミドプロピルジメチルアミンである。)
【0024】
適当なアニオン性界面活性剤には、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルカリルスルフォネート、アルカノイルイセチオネート、アルキルコハク酸塩、アルキルスルホシネート、N-アルコイルサルコシネート、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボキシレート、およびアルファ-オレフィンスルホネート、特にそれらのナトリウム、マグネシウムアンモニウムおよびモノ-、ジ-およびトリエタノールアミン塩が含まれる。アルキル基とアシル基は一般に8~18個の炭素原子を含み、不飽和であってもよい。アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩およびアルキルエーテルカルボキシレートは、1分子あたり1~10のエチレンオキシドまたはプロピレンオキサイド単位を含むことができ、好ましくは1分子あたり2~3のエチレンオキサイド単位を含有する。
【0025】
適切な陰イオン性界面活性剤の例としては、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウムおよびN-ラウリルサルコシン酸ナトリウムが挙げられる。最も好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、トリエタノールアミンラウリル硫酸塩、トリエタノールアミンモノラウリルリン酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム1EO、2EOおよび3EO、ラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリルエーテル硫酸アンモニウム1EO、2EOおよび3EOである。
【0026】
本発明の組成物に使用するのに適した非イオン性界面活性剤には、脂肪族(C8-C18)の第一級または第二級直鎖もしくは分岐鎖アルコールまたはフェノールとアルキレンオキシド(通常はエチレンオキシド)との縮合生成物が含まれ、一般に6~30のエチレンオキシド基を有する。他の適当な非イオン性化合物には、モノ-またはジ-アルキルアルカノールアミド、ラムノ脂質およびソホロ脂質の群から好ましくは選択される糖脂質が含まれる。例としては、ココモノ-またはジ-エタノールアミドおよびココモノ-イソプロパノールアミドが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物における使用に適した両性イオン界面活性剤は、アルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン(スルタイン)、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキル両性プロピオネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウレートおよびアシルグルタメートを含んでよく、ここでアルキル基およびアシル基は8~19個の炭素原子を有する。例としては、ラウリルアミンオキシド、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ならびに、好ましくは、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタインおよびコカンプトプロピオン酸ナトリウムが挙げられる。
【0028】
一般に、界面活性剤は、本発明のシャンプー組成物中に0.1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~20重量%の量で存在する。
【0029】
本発明は、ここで、以下の非限定的な例によって例示されるであろう。
【0030】
例
単離および混合における阻害性抗菌剤の種々の挙動は、Fractional Concentration and Fractional Inhibitory Concentration(FIC)の概念を用いて広く探求されてきた。例えば、JRW Lambert and R Lambert, J. Appl. Microbiol 95, 734 (2003); T. Jadavji, CG Prober and R Cheung, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 26, 91 (1984)および国際公開第2004/006876号を参照のこと。これらのパラメータは、以下のように定義することができる:
FC(成分a)=混合物中で試験された成分の濃度/MIC(単一の活性物質として試験された成分a)
FIC(成分a)=MIC(混合物中で試験された成分a)/MIC(単一の活性物質として試験された成分a)
【0031】
抗菌剤間の相互作用は、単独で試験した場合、個々の成分の同一の総濃度について得られたものと同等か、それ以上かそれ以下かによって、相加的、相乗的、またはおそらく拮抗的であり得る。
【0032】
これらの関係は、混合物中に存在する全成分の分数MIC値(fractional MIC values)を合計して「分数阻害指数(fractional inhibitory index)」を与えることによって数学的見地から表現することができる:
【数1】
【0033】
ここで:
ΣFIC≧1は、相加的または拮抗的作用に相当する
ΣFIC<1は、相乗作用に相当する
【0034】
比較可能な方法は、相乗指数(SI)の算出であり、これは、Kull, F.C.; Eisman, P.C.; Sylwestrowicz,H.D. and Mayer, R.L., in Applied Microbiology 9:538-541(1961)によって記載された工業的に許容された方法である。
【0035】
方法
液体ブロスアッセイ(MICおよびチェッカーボード)を実施し、保存化学物質の個々の組合せおよび2成分の組合せの最小濃度を同定した。スクリーニングには、ISO 20776-1:2006に修正された方法論を以下のように利用した。保存化学物質およびトリプシン大豆液体培地の保存溶液に1-5x10
6微生物を接種し、30℃で24時間インキュベートした後、OD
600 nmにおける光学濃度を測定した。MICは、保存化学物質を含まないポジティブ増殖対照と比較して<25%の増殖が認められた濃度と定義した。保存化学物質は0.0156~2%の濃度範囲でスクリーニングに供した。
【表1】
【表2】