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特許7463295過増殖性疾患を治療するためのPCBP1の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】過増殖性疾患を治療するためのPCBP1の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240401BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20240401BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K35/76
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P13/08
A61P15/00
A61P17/00
C12N15/63 Z
A61K38/16
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2020564044
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019016688
(87)【国際公開番号】W WO2019153008
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】62/626,424
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520292039
【氏名又は名称】アイベックス バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ライ, ノーマン ジェンナン
(72)【発明者】
【氏名】カーリン, マイケル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】クローチ, アルベルト ムラート
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ クルーズ, ビダル フィリックス ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】タン, ユエビン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104338150(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280806(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0241797(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞遊走を阻害する、予防する、または減少させる方法において使用するための、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを含む組成物であって、前記方法は、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを細胞に導入することを含み、前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列が、配列番号2の野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、S223L、T60A、およびT127Aからなる群から選択される1つまたは複数の改変または変異を含むバリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドをコードし、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%の同一性パーセントを有し、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、癌細胞遊走を減少させる、PRL-3発現を減少させる、STAT3発現を減少させる、および/または減少したリン酸化を有する、組成物。
【請求項2】
癌を治療する方法において使用するための、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを含む組成物であって、前記方法は、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを癌細胞に導入することを含み、前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列が、配列番号2の野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、S223L、T60A、およびT127Aからなる群から選択される1つまたは複数の改変または変異を含むバリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドをコードし、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%の同一性パーセントを有し、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、癌細胞遊走を減少させる、PRL-3発現を減少させる、STAT3発現を減少させる、および/または減少したリン酸化を有する、組成物。
【請求項3】
前記方法が、インビトロで実施される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記方法が、エクスビボで実施される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記方法が、インビボで実施される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞が、哺乳動物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物細胞が、ヒトである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記哺乳動物細胞が、臓器細胞、組織細胞、または血液細胞である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記哺乳動物細胞が、癌細胞である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記癌細胞が、黒色腫、前立腺癌、または乳癌由来の細胞である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列が、完全にリン酸化されていないポリペプチドをコードする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
前記バリアントまたは変異型PCBP1が、PAKによって完全にリン酸化されていない、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸が、野生型PCBP1(配列番号1)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の変異を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸が、野生型PCBP1(配列番号1)に対し少なくとも75%の同一性パーセントを有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項15】
前記バリアントまたは変異型PCPB1核酸が、配列番号3の配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項16】
前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸が、配列番号5の配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項17】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、完全にリン酸化されていない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項18】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、PAKによって完全にリン酸化されていない、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1(配列番号2)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の変異を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項20】
前記バリアントまたは変異型PCPB1ポリペプチドが、配列番号4の配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項21】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、配列番号6の配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞が、前記PCBP1核酸配列の複数のコピーを発現する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項23】
前記細胞が、PCBP1ポリペプチドの複数のコピーを発現する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項24】
前記ベクターが、PCBP1の1つ、2つ、および/または3つのドメインをコードするバリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項25】
前記バリアントまたは変異型PBCB1の前記1つ以上のドメインが、完全にリン酸化されていない、請求項2に記載の組成物。
【請求項26】
細胞遊走および/または癌発生を経過観察するための方法において使用するための、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを含む組成物であって、前記方法は、バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを細胞に導入することを含み、前記バリアントまたは変異型PCBP1核酸配列が、配列番号2の野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、S223L、T60A、およびT127Aからなる群から選択される1つまたは複数の改変または変異を含むバリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドをコードし、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%の同一性パーセントを有し、前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1ポリペプチドと比較して、癌細胞遊走を減少させる、PRL-3発現を減少させる、STAT3発現を減少させる、および/または減少したリン酸化を有する、組成物。
【請求項27】
前記細胞遊走が転移である、請求項2に記載の組成物。
【請求項28】
前記細胞が、治療的処置に曝露されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項29】
前記治療的処置が、化学療法的処置である、請求項2に記載の組成物。
【請求項30】
前記癌細胞が、インビトロで治療的処置に曝露された、請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
前記癌細胞が、インビボで治療的処置に曝露された、請求項2に記載の組成物。
【請求項32】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、癌細胞の遊走を減少させる、請求項1、2および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1ポリペプチドと比較して減少したリン酸化を有する、請求項1、2および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記バリアントまたは変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1ポリペプチドと比較してPAK1による減少したリン酸化を有する、請求項1、2および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記癌が固形癌である、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月5日に出願された米国仮出願第62/626,424号の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、細胞遊走および癌転移を阻害し、かつ腫瘍負荷を減少させるための組成物および方法に関する。具体的には、本開示は、癌細胞遊走ならびに癌発生および/または転移を阻害するための癌細胞の形質導入のための方法および組成物を提供する。組成物は、インビトロ、インビボ、エクスビボ、または原位置で投与され得る。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読フォーマットコピー(ファイル名:IBEX-003/01WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2019年2月5日、ファイルサイズ15キロバイト)。
【背景技術】
【0004】
再生肝臓のホスファターゼ3(PRL-3)は発癌因子であり、その活性化は腫瘍形成および転移と関連する場合が多い。これまでの研究は、ポリ(rC)結合タンパク質(PCBP1)がPRL-3の発現を減少させ、かつ発癌の発生を阻害することが可能であり得ることを示している。
【0005】
癌に対する新規の遺伝子療法の将来性を現実化するために、癌細胞は、癌発生、ならびに腫瘍形成および転移に関連するバイオマーカーの発現が減少するか、または予防されるように操作されなければならない。これにより、癌細胞の発生を予防し、かつ/またはそれらが転移することを防ぎ、かつ全身にわたる組織および臓器の浸潤を最小限に抑える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、遺伝子療法を使用して、PCBP1ポリペプチド、その変異体および/またはバリアントをコードする組成物で癌細胞をトランスフェクトまたは/および形質導入することによって、腫瘍発生、成長、細胞遊走、および/または転移を阻害する方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、PCBP1または変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを細胞に導入することを含む、細胞遊走を阻害する、予防する、または減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、細胞遊走は、転移である。
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、PCBP1または変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを癌細胞に導入することを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、インビトロで実施される。いくつかの実施形態において、方法は、エクスビボで実施される。いくつかの実施形態において、方法は、インビボで実施される。
【0010】
いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、ヒトである。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、臓器細胞、組織細胞、または血液細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態において、癌細胞は、黒色腫、前立腺癌、膵臓癌、膠芽腫、網膜芽腫、または乳癌由来の細胞である。
【0012】
いくつかの実施形態において、変異型PCBP1核酸配列は、野生型PCBP1と比較してリン酸化することができないか、または完全にリン酸化することができないポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、p21活性化キナーゼ(PAK)によってリン酸化されていないか、または完全にリン酸化されていない。
【0013】
いくつかの実施形態において、変異型PCBP1核酸は、野生型PCBP1(配列番号1)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1核酸は、野生型PCBP1(配列番号1)との少なくとも75%の同一性パーセントを有する。いくつかの実施形態において、変異型PCPB1核酸は、配列番号3の配列を含む。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1核酸は、配列番号5の配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、ベクターは、変異型PCBP1ポリペプチドをコードする変異型PCBP1核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、野生型PCBP1と比較してリン酸化されていないか、または完全にリン酸化されていない。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、P21活性化キナーゼ-1(PAK1)によってリン酸化されていないか、または完全にリン酸化されていない。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、リン酸化PCBP1産生を阻害または防止する。
【0015】
いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、野生型PCBP1(配列番号2)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の変異を含む。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、野生型PCBP1(配列番号2)との少なくとも75%の同一性パーセントを有する。いくつかの実施形態において、変異型PCPB1ポリペプチドは、配列番号4の配列を含む。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、配列番号6の配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、細胞は、野生型または変異型PCBP1核酸配列の複数のコピーを発現する。いくつかの実施形態において、細胞は、野生型または変異型PCBP1ポリペプチドの複数のコピーを発現する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを細胞に導入することを含む、細胞遊走を阻害する、予防する、または減少させる方法。
(項目2)
変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを癌細胞に導入することを含む、癌を治療する方法。
(項目3)
前記方法が、インビトロで実施される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記方法が、エクスビボで実施される、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記方法が、インビボで実施される、項目1または2に記載の方法。
(項目6)
前記細胞が、哺乳動物である、項目1または2に記載の方法。
(項目7)
前記哺乳動物細胞が、ヒトである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記哺乳動物細胞が、臓器細胞、組織細胞、または血液細胞である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記哺乳動物細胞が、癌細胞である、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記癌細胞が、黒色腫、前立腺癌、または乳癌由来の細胞である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記変異型PCBP1核酸配列が、完全にリン酸化されていないポリペプチドをコードする、項目1または2に記載の方法。
(項目12)
前記変異型PCBP1が、PAKによって完全にリン酸化されていない、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記変異型PCBP1核酸が、野生型PCBP1(配列番号1)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の変異を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目14)
前記変異型PCBP1核酸が、野生型PCBP1(配列番号1)に対し少なくとも75%の同一性パーセントを有する、項目1または2に記載の方法。
(項目15)
前記変異型PCPB1核酸が、配列番号3の配列を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目16)
前記変異型PCBP1核酸が、配列番号5の配列を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目17)
前記ベクターが、変異型PCBP1ポリペプチドをコードする変異型PCBP1核酸配列を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目18)
前記変異型PCBP1ポリペプチドが、完全にリン酸化されていない、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記変異型PCBP1ポリペプチドが、PAKによって完全にリン酸化されていない、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記変異型PCBP1ポリペプチドが、野生型PCBP1(配列番号2)と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の変異を含む、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記変異型PCBP1ポリペプチドが、PCBP1型(配列番号2)との少なくとも75%の同一性パーセントを有する、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記変異型PCPB1ポリペプチドが、配列番号4の配列を含む、項目17に記載の方法。
(項目23)
前記変異型PCBP1ポリペプチドが、配列番号6の配列を含む、項目17に記載の方法。
(項目24)
前記細胞が、前記PCBP1核酸配列の複数のコピーを発現する、項目1または2に記載の方法。
(項目25)
前記細胞が、PCBP1ポリペプチドの複数のコピーを発現する、項目1または2に記載の方法。
(項目26)
前記ベクターが、PCBP1の1つ、2つ、および/または3つのドメインをコードする変異型PCBP1核酸配列を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目27)
前記変異型PBCB1の前記1つ以上のドメインが、完全にリン酸化されていない、項目26に記載の方法。
(項目28)
変異型PCBP1核酸配列を含むベクターを細胞に導入することを含む、細胞遊走および/または癌発生を経過観察するための方法。
(項目29)
前記細胞遊走が転移である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記細胞が、治療的処置に曝露されている、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記治療的処置が、化学療法的処置である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記癌細胞が、インビトロで治療的処置に曝露された、項目28に記載の方法。
(項目33)
前記癌細胞が、インビボで治療的処置に曝露された、項目28に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】野生型または変異型PCBP1配列を含む代表的なレンチウイルスベクターを示す。このベクターにおいて、PCBP1は、EF1aプロモーター、続いてIRES-GFPレポーター遺伝子カセットを含む二次発現カセットによって駆動される。
図1B】野生型または変異型PCBP1配列を含む代表的なAAVベクターを示す。このベクターにおいて、PCBP1配列の発現は、EF1aプロモーター、続いてIRES-GFPレポーター遺伝子カセットを含む二次発現カセットによって駆動される。このベクターは、GFP配列の後に挿入されたWPREフラグメントを含んで、導入遺伝子(複数可)の発現を増強することができる。
図2A】群間の倍率変化を測定する本開示の組成物でトランスフェクトした黒色腫細胞における遺伝子発現のqRT-PCR分析を示す(ddct):それぞれ、GFPのみ対GFPおよび野生型PCBP1(wPCBP1_0)は、発現が4.012倍高いPCBP1の上方調節を示し、GFPのみ対GFPおよびPCBP1 S223L(mPCBP1_1)は、3.97高いPCBP1発現を示し、GFPのみ対GFPおよびPCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2)は、4.02倍高いPCBP1発現を示す(*p<0.01)。ハウスキーピング遺伝子は、GAPDHである。
図2B】本開示の治療用遺伝子ベクターのインビトロトランスフェクション後の黒色腫細胞におけるGFP発現を示す。(A):GFPのみ、(B)wPCBP1_0-IRES-GFP、(C)mPCBP1_1-IRES-GFP、(D):mPCBP1_2-IRES-GFP。(スケールバー:200μm)。
図3】黒色腫細胞におけるPCBP1(野生型および変異型)遺伝子の異なる形態をコードする遺伝子療法ベクターによる処置後のウエスタンブロット分析によるPRL-3タンパク質発現を示す。レーン1:GFPのみ、レーン2:mPCBP1_1+GFP、レーン3:wPCBP1_0+GFP、レーン4:PCBP1_2+GFP。ベータ-アクチンは対照である。
図4A】トランスフェクトした黒色腫細胞の遊走を実証するために、ウェル内の全ての細胞と比較した遊走細胞の割合としての、円検出ゾーン(CDZ)における正味細胞数差の比較を示す。GFP群における(ウェル当たりの)遊走細胞の割合(11.33)は、wPCBP1_0(本明細書において「PCBP1」とも称される野生型PCBP1)、mPCBP1_1、およびmPCBP1_2よりも有意に高かった。これらの3つの群のうち、mPCBP1_2は、ウェル当たりの遊走細胞の割合が最も低い(1.82)。(*P<0.05)。
図4B】細胞遊走アッセイを示す。細胞遊走アッセイを1日目および5日目に読み取り、蛍光顕微鏡(緑色フィルタ)下で観察した。一番上の行は、1日目および5日目からのwPCBP1_0の細胞遊走を示し、中間の行は、mPCBP1_2およびmPCBP1_1を示し、一番下の行は、GFP群を示す。A列は、1日目の細胞遊走ウェル(白い点線の円は、円検出ゾーン、またはCDZと呼ばれる)であり、B列は、5日目の細胞遊走ウェル(CDZは白い点線)であり、C列は、B列の拡大CDZである。
図4C】1日目から5日目のCDZにおける正味細胞数差の比較として、円検出ゾーン(CDZ)遊走アッセイにおける正味細胞数差を示す。黒色腫細胞をGFP、wPCBP1_0、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2によってトランスフェクトした。
図5】乳癌(BC)細胞株(MCF-7)におけるPCBP1 mRNAレベルの倍率変化を示す。グラフは、MCF-7にトランスフェクトしたPCBP1(WT/変異型)またはGFPのみのベクターにおけるPCBP1 mRNA倍率変化のqRT-PCR結果を示す。GFPのみの群と比較して、全てのPCBP1+GFP群(WTおよび変異型)は、乳癌細胞におけるPCBP1 mRNA発現レベルの有意な増加を示す(図に示される倍率変化、*P<0.01)。(GFP:緑色蛍光タンパク質ベクター。w PCBP1_0-GFPベクター;mPCBP1_1(1部位の変異(c668t));mPCBP1_2(2部位の変異(a178g & a379g))。
図6】GFPのみ(レーン1)、wPCBP1_0(レーン2)、mPCBP1_1(レーン3)、およびmPCBP1_2(レーン4)をコードするベクターで処置した後の、形質転換された乳癌(MCF-7)細胞におけるPRL3タンパク質レベルのウエスタンブロット分析を示す。
図7A】円検出ゾーン(CDZ)でカウントされた正味細胞差と、ウェル当たりの全細胞の蛍光強度との比較比率を示す。
図7B】乳癌細胞(MCF-7)遊走アッセイを示す。細胞遊走アッセイを1日目および5日目に読み取り、蛍光顕微鏡(緑色フィルタ)下で観察した。(GFP:緑色蛍光タンパク質)。w PCBP1_0-GFPベクター;mPCBP1_1(1部位の変異(c668t)-GFPベクター);mPCBP1_2(2部位の変異(a178g & a379g)-GFPベクター)。
図7C】GFP、wPCBP1_0、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2によってトランスフェクトされた乳癌細胞(MCF-7)についての細胞遊走アッセイを示す。
図8A】PCBP1(野生型/変異型)またはGFP(対照)トランスフェクション後の乳癌(MCF-7)死細胞アッセイを示す。上清を除去し、市販の生/死細胞アッセイキットを適用することによって、死細胞を測定した。A:GFPトランスフェクション後の乳癌細胞密度および明野顕微鏡による観察。B:野生型PCBP1トランスフェクション後の乳癌細胞密度および明野顕微鏡による観察。C:mPCBP1_1(1部位の変異)トランスフェクション後の乳癌細胞密度および明野顕微鏡による観察。D:mPCBP1_2(2部位の変異)トランスフェクション後の乳癌細胞密度および明野顕微鏡による観察。E:PCBP1(野生型/変異型)および/またはGFPベクターによるトランスフェクション後のマイクロプレートリーダーを使用した蛍光強度測定による乳癌細胞の死細胞数。(GFP:緑色蛍光タンパク質によってトランスフェクトされた細胞。wP:野生型PCBP1によってトランスフェクトされた細胞。P1:mPCBP1_1(1部位の変異)によってトランスフェクトされた細胞。P2:mPCBP1_2(2部位の変異)によってトランスフェクトされた細胞。
図8B】同上。
図8C】同上。
図8D】同上。
図8E】同上。
図9A】本開示の組成物のうちの1つでのトランスフェクション後の膵臓癌細胞におけるPCBP1発現を示す。グラフは、野生型PCBP1(処置)またはGFP(癌細胞)を含有するベクターが膵臓癌細胞にトランスフェクションされた後のPCBP1 mRNA倍率変化のqRT-PCR結果を示す。GFP群と比較して、PCBP1群は、膵臓癌細胞におけるPCBP1 mRNAレベルの有意な増加を示す(図9Aに示される倍率変化)。GFP群はまた、PCBP1群と比較して高いPRL3 mRNA発現を示した(図9Bに示される倍率変化)。
図9B】同上。
図10】GFP群(対照)と比較した、前立腺癌細胞株(DU-145)におけるPCBP1の野生型および変異型を有する処置群におけるPCBP1 mRNA発現レベルの倍率変化を示す。グラフは、PCBP1(WT/変異型)+GFPまたはGFPのみを含有するベクターでトランスフェクトした癌細胞(DU-145)におけるPCBP1 mRNA発現倍率変化を示すqRT-PCR結果を示す。GFP群と比較して、全てのPCBP1群(WTおよび変異型)は、前立腺癌細胞におけるPCBP1 mRNAレベルの有意な増加を示した(図に示される倍率変化、*P<0.01)。(GFP:緑色蛍光タンパク質ベクター。wPCBP1_0-GFPベクター;mPCBP1_1(1部位の変異);mPCBP1_2(2部位の変異)。
図11】qRT-PCRによる膠芽腫細胞株対皮質ニューロン細胞株(HCN-2)におけるPRL3 mRNA発現レベルの測定を示す。正常な脳皮質細胞株と比較して、PRL3 mRNAは、試験した6つ全ての膠芽腫細胞株において過剰発現する。
図12】細胞特異的プロモーターの制御下でPCBP1(野生型または変異型)を発現するAAVベクターの概略図を示す。ここで、PCBP1配列(wt、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2)の発現は、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターなどの細胞特異的プロモーターによって駆動されて、脳内の膠芽腫を治療する。GFPまたはLacZは、治療用タンパク質(例えば、PCBP1)の共局在化および特定の細胞型におけるマーカータンパク質発現を例示するために使用されるレポーター遺伝子である。
図13A】膠芽腫(脳)細胞における特異的プロモーターによって駆動される導入遺伝子発現のインビトロ検出を示す。phGFAP-LacZベクターでトランスフェクトしたLN229膠芽腫細胞を、免疫組織化学を介して分析した。癌細胞(LN299)を、明野顕微鏡によって観察した(パネルA)。特異的プロモーターによって駆動されるLacZ遺伝子由来の発現タンパク質を、抗β-ガラクトシダーゼ抗体A11132(1:700に希釈)によって検出した。(パネルB)。Northernnights(商標)557コンジュゲート抗ウサギ抗体(NL004、R&D system)を二次抗体(希釈1:200)として使用し、赤色蛍光シグナルをもたらした。倍率は20倍である。
図13B】同上。
図14A】膠芽腫(脳)細胞における特異的プロモーターによって駆動される導入遺伝子発現のインビトロ検出を示す。phGFAP-LacZベクターでトランスフェクトしたU87膠芽腫細胞を、免疫組織化学を介して分析した。癌細胞(U87)を、明野顕微鏡によって観察した(パネルA)。特異的プロモーターによって駆動されるLacZ遺伝子由来の発現タンパク質を、抗β-ガラクトシダーゼ抗体A11132(1:700に希釈)によって検出した。(パネルB)。Northernnights(商標)557コンジュゲート抗ウサギ抗体(NL004、R&D system)を二次抗体(希釈1:200)として使用し、赤色蛍光シグナルをもたらした。倍率は20倍である。
図14B】同上。
図15A】腎臓細胞における特異的プロモーターによって駆動される導入遺伝子発現のインビトロ検出を示す。phGFAP-LacZベクターでトランスフェクトした293FT腎臓細胞を、免疫組織化学を介して分析した。293FT腎臓細胞を、明野顕微鏡によって観察した(パネルA)。特異的プロモーターによって駆動されるLacZ遺伝子由来の発現タンパク質は、抗β-ガラクトシダーゼ抗体A11132(1:700に希釈)によって検出されなかった。(パネルB)。Northernnights(商標)557コンジュゲート抗ウサギ抗体(NL004、R&D system)を二次抗体(希釈1:200)として使用し、これは、β-ガラクトシダーゼがこれらの細胞内で発現した場合、赤色蛍光シグナルをもたらしたであろう。倍率は20倍である。
図15B】同上。
図16A】眼細胞における特異的プロモーターによって駆動される導入遺伝子発現のインビトロ検出を示す。phGFAP-LacZベクターでトランスフェクトしたARPE-19眼細胞を、免疫組織化学を介して分析した。ARPE-19眼細胞を、明野顕微鏡によって観察した(パネルA)。特異的プロモーターによって駆動されるLacZ遺伝子由来の発現タンパク質は、抗β-ガラクトシダーゼ抗体A11132(1:700に希釈)によって検出されなかった。(パネルB)。Northernnights(商標)557コンジュゲート抗ウサギ抗体(NL004、R&D system)を二次抗体(希釈1:200)として使用し、これは、β-ガラクトシダーゼがこれらの細胞内で発現した場合、赤色蛍光シグナルをもたらしたであろう。倍率は20倍である。
図16B】同上。
図17】qRT-PCRによる、異なる細胞型におけるphGFAPプロモーターによって駆動されるLacZ mRNA発現の検出を示す。異なる細胞(LN229、U87、ARPE-19、および293FT)におけるLacZ mRNA発現レベルを、これらの細胞をhGFAPの制御下でLacZを含有するベクターでトランスフェクトした後にモニタリングした。倍率変化を対照としてAAV-GFPベクターと比較した(*p<0.05)。これらのデータは、LacZタンパク質がhGFAPプロモーター下の膠芽腫(脳)細胞(例えば、U87細胞およびNL229細胞)で発現するが、他の細胞型(例えばARPE-19細胞および293FT細胞)では発現しないことを確認する。
図18A】GFPのみ、野生型PCBP1(wP)、mPCBP1_1(P1)、またはmPCBP1_2(P2)のいずれかを含有するAAVベクターでトランスフェクトした後の膠芽腫細胞株LN229およびU87細胞の細胞生存率を示す。パネルAは、LN229膠芽腫細胞の生存率を示す。パネルBは、U87膠芽腫細胞の生存率を示す。(*p<0.05対GFP).
図18B】同上。
図19A】対照またはPCBP-1含有ベクターによるトランスフェクション後のU87膠芽腫細胞における生/死細胞シグナルを示す。細胞をAAV-GFP、AAV-PCBP1(wP)、AAV-PCBP1_1(P1)、またはAAV-PCBP1_2(P2)でトランスフェクトし、4日後に細胞生存率を試験した。生細胞をカルセインAMで染色し(パネルA)、死細胞をEthD-1で染色した(パネルB)。GFP対照ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、PCBP1含有ベクターでトランスフェクトした後、死細胞は有意に増加した。*p<0.05
図19B】同上。
図20A】AAV-GFP(パネルA)、AAV-PCBP1(パネルB(wP))、AAV-PCBP1_1(パネルC(Mu1))、またはAAV-PCBP1_2(パネルD(Mu2))によるトランスフェクション後の生および死U87膠芽腫細胞の染色を示す。
図20B】同上。
図20C】同上。
図20D】同上。
図21】AAV-GFP(レーン1)、AAV-PCBP1(レーン2)、AAV-PCBP1_1(レーン3)、またはAAV-PCBP1_2(レーン4)のいずれかでトランスフェクトしたU87膠芽腫細胞におけるPRL3発現レベルを示す。ウエスタンブロットを使用して、PRL3タンパク質レベルを試験した。ベータアクチンを内部負荷対照として使用した。
図22A】対照またはPCBP-1含有ベクターによるトランスフェクション後のLN229膠芽腫細胞における生/死細胞シグナルを示す。細胞をAAV-GFP、AAV-PCBP1(wP)、AAV-PCBP1_1(P1)、またはAAV-PCBP1_2(P2)でトランスフェクトし、4日後に細胞生存率を試験した。生細胞をカルセインAMで染色し(パネルA)、死細胞をEthD-1で染色した(パネルB)。GFP対照ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、PCBP1含有ベクターでトランスフェクトした後、死細胞は有意に増加した。*p<0.05
図22B】同上。
図23A】AAV-GFP(パネルA)、AAV-PCBP1(パネルB(wP))、AAV-PCBP1_1(パネルC(Mu1))、またはAAV-PCBP1_2(パネルD(Mu2))によるトランスフェクション後の生および死LN229膠芽腫細胞の染色を示す。
図23B】同上。
図23C】同上。
図23D】同上。
図24】AAV-GFP(レーン1)、AAV-PCBP1(レーン2)、AAV-PCBP1_1(レーン3)、またはAAV-PCBP1_2(レーン4)のいずれかでトランスフェクトしたLN229膠芽腫細胞におけるPRL3タンパク質レベルを示す。ウエスタンブロットを使用して、PRL3タンパク質レベルを試験した。ベータアクチンを内部負荷対照として使用した。
図25A】AAV-GFPおよびAAV-PCBP1および変異体によるトランスフェクション後の膠芽腫M059J細胞株の生/死分析を示す。wP=野生型PCBP1、P1=mPCBP1_1、P2=mPCBP1_2。*p<0.05、GFPと比較して。
図25B】同上。
図26A】AAV-GFPおよびAAV-PCBP1および変異体によるトランスフェクション後の膠芽腫M059K細胞株の生/死分析を示す。wP=野生型PCBP1、P1=mPCBP1_1、P2=mPCBP1_2。*p<0.05、GFPと比較して。
図26B】同上。
図27A】AAV-GFPおよびAAV-PCBP1および変異体によるトランスフェクション後の膠芽腫U118MG細胞株の生/死分析を示す。wP=野生型PCBP1、P1=mPCBP1_1、P2=mPCBP1_2。*p<0.05、GFPと比較して。
図27B】同上。
図28A】AAV-GFPおよびAAV-PCBP1および変異体によるトランスフェクション後の膠芽腫U138MG細胞株の生/死分析を示す。wP=野生型PCBP1、P1=mPCBP1_1、P2=mPCBP1_2。*p<0.05、GFPと比較して。
図28B】同上。
図29】PCBP1でトランスフェクトしたU87膠芽腫細胞におけるウエスタンブロットによるpSTAT3(Y705)タンパク質レベルの測定を示す。細胞をAAV-GFP(レーン1)、AAV-PCBP1(レーン2)、AAV-mPCBP1_1(レーン3)、またはAAV-mPCBP1_2(レーン4)でトランスフェクトした。膠芽腫細胞における全ての形態のPCBP1で下方調節したSTAT3レベルによる処置であり、mPCBP1_2が最も有意な効果を示す。ベータアクチンは内部対照として機能した。
図30】PCBP1でトランスフェクトしたLN299膠芽腫細胞におけるウエスタンブロットによるpSTAT3(Y705)タンパク質レベルの測定を示す。細胞をAAV-GFP(レーン1)、AAV-PCBP1(レーン2)、AAV-mPCBP1_1(レーン3)、またはAAV-mPCBP1_2(レーン4)でトランスフェクトした。全ての形態のPCBP1による処置が、膠芽腫細胞においてSTAT3レベルを下方調節し、mPCBP1_2が最も有意な効果を示す。(パネルA)。パネルBは、パネルAにおけるレーン1および2の反復ウエスタンブロット測定を示す。ベータアクチンは内部対照として機能した。
図31A】PCBP1または変異体によるトランスフェクション後の卵巣SKOV3細胞の細胞増殖およびカウントを示す。GFP=対照ベクター、野生型PCBP=PCBP1、PCBP1変異-1=mPCBP1_1、PCBP1-変異-2=mPCBP1_2。パネルAは、ウェル当たり0.5μgまたは2.0μgのいずれかのベクターでトランスフェクトした細胞の顕微鏡観察を示す。パネルBは、マイクロプレートリーダーによってカウントされる細胞数を示す。
図31B】同上。
図32】処置後のSKOV3卵巣細胞におけるqRT-PCRによるPCBP1およびPRL3のmRNA発現レベルの検出を示す。グラフは、処置群と対照との間のmRNAレベルの倍率変化の比較(qRT-PCRによって決定される)を示す。PCBP1 mRNA発現レベルは、野生型(11.5倍増加)、mPCBP1_1(11.3倍増加)、およびmPCBP1_2(11.4倍増加)を含む、全てのPCBP1処置群において有意な増加を示す。対照的に、PRL3 mRNAレベルは減少した:野生型(1.403倍減少)、mPCBP1_1(1.978倍減少)、およびmPCBP1_2(1.988倍減少)。GFP=対照ベクター、野生型PCBP=PCBP1、PCBP1変異-1=mPCBP1_1、PCBP1-変異-2=mPCBP1_2。
図33】DU145前立腺癌細胞株増殖に対する野生型および変異型PCBP1過剰発現の影響を示す。GFP=PCBP1なしの処置群、wP=野生型PCBP1、P1=mPCBP1_1、P2=mPCBP1_2。PCBP1またはその変異体の過剰発現は、対照と比較して前立腺癌細胞の増殖を有意に阻害した。
図34】PCBP1でトランスフェクトしたDU145前立腺癌細胞におけるウエスタンブロットによるPRL3タンパク質レベルの測定を示す。細胞をAAV-GFP(レーン1)、AAV-PCBP1(レーン2)、AAV-mPCBP1_1(レーン3)、またはAAV-mPCBP1_2(レーン4)でトランスフェクトした。全ての形態のPCBP1による処置が、前立腺癌細胞においてPRL3レベルを下方調節し、mPCBP1_2が最も有意な効果を示す。ベータアクチンは内部対照として機能した。
図35】正常な脳細胞株HCN-2についての細胞毒性(LDH)アッセイを示す。HCN-2細胞をAAV-GFP、AAV-PCBP1(wP)、AAV-mPCBP1_1(P1)、またはAAV-mPCBP1_2(P2)でトランスフェクトした。GFP対照群と比較して、処置群における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)間に有意な差はなかったが(p>0.05)、下方傾向が観察された。陽性対照中の細胞を溶解緩衝液によって処置して、最大LDH放出を引き出した(左の列)。実験を三連で実施した。
図36A】正常な乳腺細胞株MCF10Aについての細胞毒性(LDH)アッセイを示す。MCF10A細胞をAAV-GFP、AAV-PCBP1(wP)、AAV-mPCBP1_1(P1)、またはAAV-mPCBP1_2(P2)でトランスフェクトした。GFP対照群と比較して、処置群における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)間に有意な差はなかった(p>0.05)。(パネルA)。ANOVAによって試験したように、これら4つの群間で有意な差は観察されなかった(p>0.05)。(パネルB)。野生型PCBP1、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2による処置は、この正常な乳腺細胞株に対して細胞毒性ではない。
図36B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0018】
PRL-3発現は、卵巣癌、前立腺癌、および胃癌を含む転移性癌において上昇することが分かっており、PRL-3の過剰発現は、より悪い肝臓癌予後と相関する(Bardelli et al.2003、Polato et al.,2005、Peng et al.2004)。PCBP1の過剰発現は、PRL-3発現を減少させることが以前に示されている(Wang et al.,2010)。本開示は、野生型PCBP1ポリペプチドまたは発現レベルよりも大きい程度までPRL-3を減少させ、したがって細胞の腫瘍形成性および遊走を減少させる新規のPCBP1変異および/または過剰発現PCBP1を提供する。
【0019】
したがって、本明細書に開示される組成物および方法は、細胞遊走および/または転移を低減または予防するために、変異型PCBP1または過剰発現PCBP1で(例えば、トランスフェクションまたは形質導入を通して)遺伝子改変された細胞を含む。変異型PCBP1配列は、疾患の治療のために細胞遊走を直接予防する、阻害する、減少させる、または遅延させるために、遺伝子療法のためのベクター系に組み込まれる。
【0020】
ポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)
いくつかの態様において、本開示は、転写因子ポリ(rC)結合タンパク質1(hnRNP-E1およびαCP1としても既知のPCBP1)を含有するベクターを提供し、これは、腫瘍形成を阻害するか、もしくは遅延させ、かつ/または細胞成長もしくは転移を予防することができる。いくつかの実施形態において、PCBP1は、哺乳動物PCBP1である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、ヒトPCBP1、その変異体、フラグメント、またはバリアントである。いくつかの実施形態において、PCBP1、その変異体、フラグメント、またはバリアントは、発現タンパク質のリン酸化を防止するかまたは減少させる。いくつかの実施形態において、PCBP1は、本明細書に開示される変異型PCBP1_1またはPCBP1_2である。
【0021】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、細胞増殖または遊走を減少させる。いくつかの実施形態において、PCBP1は、細胞生存率を減少させる。いくつかの実施形態において、PCBP1は、細胞死を増加させる。いくつかの実施形態において、PCBP1は、免疫細胞の成長および/または増殖に影響を及ぼす。いくつかの実施形態において、PCBP1は、炎症を治療する。いくつかの実施形態において、炎症は、癌に関連する。
【0022】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、癌を治療する。いくつかの実施形態において、PCBP1は、腫瘍形成または転移に関連する癌バイオマーカーの発現および/または翻訳を変化させることによって癌を治療する。いくつかの実施形態において、PCBP1は、腫瘍形成または転移に関連する癌バイオマーカーの発現および/または翻訳を減少させる。いくつかの実施形態において、癌バイオマーカーとしては、PRL-3、CD44バリアント、E-カドヘリン、STAT-3、およびビメンチンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、転移に関連する癌バイオマーカーは、PRL-3である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、PRL-3のmRNA発現を阻害する過剰発現した野生型PCBP1または変異したPCBP1である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、PRL-3のタンパク質発現を阻害する過剰発現した野生型PCBP1または変異したPCBP1である。
【0023】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、遺伝子改変(例えばトランスフェクトまたは形質導入)された細胞における細胞遊走を減少させる。いくつかの実施形態において、細胞遊走は、転移である。
【0024】
いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、リン酸化を有しないかまたは減少している。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、PAKリン酸化を有しないかまたは減少している。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、リン酸化PCBP1産生を阻害または防止する。
【0025】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、過剰発現した野生型PCBP1である。いくつかの実施形態において、細胞は、野生型PCBP1の1つ以上のコピーで形質導入される。いくつかの実施形態において、PCBP1は、変異体である。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、単一変異体である。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、二重変異体である。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1は、三重変異体である。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1ポリペプチドは、S223L、T60A、および/もしくはT127A変異、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、単一PCBP1変異ポリペプチドは、S223L変異体(本明細書においてmPCBP1_1と称される)である。いくつかの実施形態において、二重PCBP1変異ポリペプチドは、T60A & T127A変異体(本明細書においてmPCBP1_2と称される)である。
【0026】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、核酸である。いくつかの実施形態において、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態において、核酸は、RNAである。いくつかの実施形態において、核酸は、mRNAである。いくつかの実施形態において、核酸は、cDNAである。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号1の核酸配列またはその変異体を含有する。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号1の完全長核酸配列またはその変異体である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号1の核酸配列のフラグメントまたはその変異体である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号1の核酸配列のバリアントまたはその変異体である。いくつかの実施形態において、変異型PCBP1核酸は、c668t、a178g、および/もしくはa379g変異、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、単一PCBP1変異核酸は、c668g変異体(本明細書においてmPCBP1_1と称される)である。いくつかの実施形態において、二重PCBP1変異核酸は、a178g & a379g変異体(本明細書においてmPCBP1_2と称される)である。
【0027】
理論に束縛されるものではないが、PCBP1内のKHドメインの各々は、異なるタンパク質のmRNAに結合することが示されており、1つ以上のKHドメインの使用は、所与のタンパク質の翻訳を選択的に阻害し得る。いくつかの実施形態において、PCBP1核酸は、3つ全てのK相同(KH)ドメインをコードする。いくつかの実施形態において、PCPB1核酸は、2つのKHドメインをコードする。いくつかの実施形態において、PCPB1核酸は、1つのKHドメインをコードする。
【0028】
さらに、核局在化シグナルにおける変異は、PCBP1が核内に移行する能力を変化させ、したがって、後の遺伝子発現に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、PCBP1は、一方または両方の核局在化シグナルにおける変異を含む。いくつかの実施形態において、一方または両方の核局在化シグナルの変化は、PCBP1が核内に移行する能力を阻害する。
【0029】
リン酸化はまた、PCBP1の活性においても役割を果たす(例えば、非リン酸化PCBP1は、活性を欠いている可能性があるか、またはより大きい活性を示す可能性がある)。いくつかの実施形態において、PCBP1ヌクレオチド配列は、PCBP1ポリペプチドがリン酸化される能力に影響を及ぼす変異(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1ヌクレオチド配列変異(複数可)は、PCBP1ポリペプチドリン酸化を防止する。いくつかの実施形態において、非リン酸化PCBP1または完全にリン酸化されていないPCBP1ポリペプチドは、野生型レベルで活性ではない。
【0030】
いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、多シストロン性mRNA転写物から発現する。いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、2シストロン性mRNA転写物から発現する。いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、融合タンパク質として発現する。
【0031】
いくつかの実施形態において、PCBP1ヌクレオチド配列は、野生型PCBP1(配列番号1)と比較して点変異(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、PCPB1ヌクレオチド配列は、リン酸化に影響を及ぼす点変異(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1点変異は、リン酸化を増加させる。いくつかの実施形態において、PCBP1点変異は、リン酸化を減少させる。いくつかの実施形態において、PCBP1ヌクレオチド配列は、核膜移行に影響を及ぼし得る変異(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1ヌクレオチド配列は、表1に開示される点変異(複数可)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、点変異は、G13A、G128C、A178G、T299C、T299A、G326A、A379G、G527A、C652T、C688T、G676A、G700A、G781T、T808G、G814T、A871G、C947T、G1033C、C1034T、G1048C、および/もしくはA127G、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、リン酸化を増加させる点変異は、G13A、A178G、T299C、T299A、G326A、A379G、G527A、C652T、G781T、G814T、C947T、G1033C、C1034T、G1048C、および/もしくはG1067T、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、リン酸化を減少させる点変異は、C688T、A127G、もしくはG128C、A178G、および/もしくはA379G、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、点変異は、C668T、A178Gおよび/もしくはA379G、またはそれらの組み合わせである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示は、PCBP1(配列番号1)の模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体を提供する。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1の核酸配列と比較して1つ以上の核酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1~20個の核酸が置換される。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個の核酸置換を含む。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と比較して1つ以上の核酸欠失を含む。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号3(mPCBP1_1(c668t))を含む。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号5(mPCBP1_2(a178g & a379g)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と比較して、1~20個の核酸残基が欠失している。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個の核酸残基欠失を有する。いくつかの実施形態において、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と比較して、1~10個の核酸残基がいずれかの末端で欠失している。いくつかの実施形態において、天然PCBP1の核酸配列と比較して、1~10個の核酸残基が両方の末端から欠失している。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体の核酸配列は、天然PCBP1の核酸配列と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体の核酸配列は、天然PCBP1の核酸配列(例えば、配列番号1)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一である。同一性の割合は、アライメントプログラムEMBOSS Needleを使用して計算され得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、PCBP1は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号2の完全長アミノ酸配列である。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号2のアミノ酸配列のフラグメントである。いくつかの実施形態において、PCB1は、配列番号2のアミノ酸配列のバリアントである。いくつかの実施形態において、PCBP1バリアントは、配列番号4のアミノ酸配列(mPCBP1_1(S223L))を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1バリアントは、配列番号6のアミノ酸配列(mPCBP1_2T60A & T127A)を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1は、配列番号2のアミノ酸配列の機能的フラグメントまたはバリアントである。いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、3つ全てのK相同(KH)ドメインを含む。いくつかの実施形態において、PCPB1ポリペプチドは、2つのKHドメインを含む。いくつかの実施形態において、PCPB1ポリペプチドは、1つのKHドメインを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、1つの変異K相同(KH)ドメインを含む。いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、2つの変異K相同(KH)ドメインを含む。いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチドは、3つの変異K相同(KH)ドメインを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のKHドメインにおける変異は、RNA結合に影響を及ぼす。
【0037】
いくつかの実施形態において、PCBP1ポリペプチド配列は、野生型PCBP1(配列番号2)に対するアミノ酸変異を含む。いくつかの実施形態において、PCPB1ポリペプチド配列は、リン酸化に影響を及ぼすアミノ酸変異を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸変異は、V5M、S43A、T60A、L100P、L100Q、C109Y、A127G、G128C、T237A、G176E、P218S、G226R、D234N、D261Y、Y270D、A272S、I291V、A316V、A345P、A345V、E350Q、S356I、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、リン酸化を増加させる変異は、V5M、L100P、L100Q、C109Y、G176E、D261Y、A272S、A316V、A345P、A345V、および/もしくはE350Q、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、リン酸化を減少させる変異は、S43A、T60A、T127A、および/もしくはS223L、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態において、アミノ酸変異は、T60A、S223L、S43A、および/またはT127Aである。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示は、PCBP1(配列番号2)の模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体を提供する。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、20個を超えるアミノ酸が置換される。いくつかの実施形態において、1~20個のアミノ酸が置換される。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、もしくは約10個、またはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号6を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然ペプチド治療薬のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸欠失を含む。いくつかの実施形態において、20個を超えるアミノ酸が欠失している。いくつかの実施形態において、天然タンパク質剤のアミノ酸配列と比較して、1~20個のアミノ酸が欠失している。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と比較して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、もしくは約10個、またはそれ以上のアミノ酸欠失を有する。いくつかの実施形態において、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と比較して、1~10個のアミノ酸がいずれかの末端で欠失している。いくつかの実施形態において、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と比較して、1~10個のアミノ酸が両方の末端から欠失している。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも約70%同一である。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一である。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であり、天然PCBP1の生物活性の全てまたはほとんどを保持する。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1のアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であり、天然PCBP1と比較して生物活性が低減または改変している。
【0040】
いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1の1つ以上のドメインのアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一である。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1の1つ以上のドメインのアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であり、天然PCBP1の生物活性の全てまたはほとんどを保持する。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体のアミノ酸配列は、天然PCBP1の1つ以上のドメインのアミノ酸配列(配列番号2)と約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であり、天然PCBP1と比較して生物活性が低減または改変している。同一性の割合は、アライメントプログラムEMBOSS Needleを使用して計算され得る。ペアワイズアラインメントには、次のデフォルトパラメータが使用され得る:タンパク質重量マトリックス=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.1。
【0041】
ベクターおよびプラスミド
標的組織または細胞への治療用遺伝子の効率的な送達は、遺伝子療法を成功させるための最も大きなハードルである。裸のDNAが、食細胞性免疫細胞または細胞外ヌクレアーゼによってインビボで急速に除去または分解されるため、導入遺伝子を保護する手段が所望され得る。さらに、自発的なDNA取り込みの効率が悪いため、組織または細胞移入をもたらすためのビヒクルも必要である。したがって、DNAは通常、目的の遺伝子の効果的な組織または細胞移入を保護し、媒介するために、通称ベクターである何らかのタイプの遺伝子送達ビヒクルと組み合わされる。
【0042】
遺伝子送達系は、非生物学的(例えば、哺乳動物細胞にプラスミドDNAを導入する化学的および物理的アプローチ)または生物学的(例えば、ウイルスおよび細菌)に分類され得る。非ウイルス遺伝子送達系は通常、プラスミドDNA上に担持される伝達遺伝子を伴う。用いられるプラスミドは一般に、哺乳動物細胞において複製しない。
【0043】
最も一般的に、組換えウイルスまたは裸のDNAもしくはDNA複合体が使用される。例えば、ウイルスは、修正した治療用DNAを細胞に運ぶベクターを提供するために実験室で修飾され得、そこでウイルスは、異常な遺伝子発現を改変し、かつ遺伝的疾患を治療するためにゲノムに組み込まれ得る。あるいは、ベクターは、染色体外のままであり、一時的に発現し得る。
【0044】
いくつかの態様において、本開示は、ウイルスベクターを使用する遺伝子療法の方法を提供する。遺伝子療法で使用され得るウイルスとしては、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、複製可能ベクター、ワクシニアウイルス、および単純ヘルペスウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子療法で使用され得るウイルスベクターとしては、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、複製可能ベクター、ワクシニアウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの態様において、本開示は、非ウイルスベクターを使用する遺伝子療法の方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、細菌ベクターを使用する遺伝子療法の方法を提供する。いくつかの実施形態において、遺伝子療法の方法は、裸の核酸(例えば、DNAまたはRNA)の注入を伴う。これは、当該技術分野において既知の任意の適切な手段を使用して実施され得る。いくつかの態様において、本開示は、細菌送達系を使用する遺伝子療法の方法を提供する。いくつかの実施形態において、細菌細胞は、生存、弱毒化、または死滅している。いくつかの実施形態において、細菌送達系は、細胞が哺乳動物細胞または分泌系に付着して、核酸および/またはタンパク質を標的哺乳動物細胞に送達する能力を利用する。いくつかの実施形態において、細菌送達系は、Salmonella typhi、Bifidobacterium種、Salmonella choleraesuis、Vibrio cholera、Listeria monocytogenes、Escherichia coli、Streptococcus pyogenes、およびSerratia marcescensから選択されるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの態様において、本開示は、非ウイルスおよび非細菌ベクターを使用する遺伝子療法の方法を提供する。いくつかの実施形態において、非ウイルスベクターおよび非細菌ベクターは、真核生物ベクターである。いくつかの実施形態において、真核生物ベクターは、トランスポゾン系、CRISPR系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ系、またはTALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)を含む。いくつかの実施形態において、トランスポゾン系は、Sleeping BeautyまたはpiggyBacまたはトランスポゾン系から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アルギニン豊富なペプチドまたはソノポレーションなど、核酸送達のための他の方法が使用されてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、本開示は、ナノ粒子を使用する遺伝子療法の方法を提供する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、脂質ベースのナノ粒子である。いくつかの実施形態において、脂質ベースのナノ粒子は、固体脂質ナノ粒子(SLN)である。いくつかの実施形態において、脂質ベースのナノ粒子は、非構造化脂質担体(NLC)である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリマーベースのナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ポリマーベースのナノ粒子は、ナノスフェアまたはナノカプセルである。
【0048】
プラスミドDNAベースのベクターは、遺伝子療法において一般的に使用され、DNAの大きいセグメントを収容することができ、遺伝子移入および発現に影響を及ぼす様々な調節エレメントの操作を可能にする。最も基本的には、発現プラスミドは、発現カセットと骨格を含む。発現カセットは、目的の遺伝子(複数可)と、標的細胞における発現に必要な任意の調節配列とを含む転写単位である。骨格は、選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子または栄養要求性選択遺伝子)と、細菌におけるプラスミドの産生に必要な複製起点とを含み得る。
【0049】
任意の適切なプラスミドが、本明細書に開示される方法で使用され得る。いくつかの実施形態において、プラスミドは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、プラスミドは、アデノ随伴ウイルス(AAV)プラスミドである。いくつかの実施形態において、代表的なプラスミドは、図1A~Bに開示される。発現カセットにおける遺伝子の発現を駆動するために、任意の適切なプロモーターが使用され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、プラスミドは、レトロウイルスプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、プラスミドは、ウイルスプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、プラスミドは、哺乳動物プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、ヒトプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、組織または細胞特異的である。いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーターは、ヒト形質導入α-サブユニットプロモーター、GANT2、VMD2、ヒトIRBP、K14、IRS2、およびグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターから選択される。選択されたプロモーターがキメラプロモーターとして使用され得る(例えば、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)プロモーターと共に)。いくつかの実施形態において、組織または細胞特異的プロモーターは、膵臓細胞、膵臓β細胞、皮膚細胞、角質細胞、光受容体細胞、上皮細胞、内皮細胞、および/または癌細胞(例えば、乳癌細胞、前立腺癌細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経癌細胞、膠芽腫など)に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、網膜または眼組織もしくは細胞に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、造血細胞に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、肝臓組織または細胞に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、肺組織または細胞に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、筋肉組織または細胞に特異的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、HIV感染細胞に特異的である。
【0051】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、IPTG、エクジソン、またはラパマイシンが挙げられるが、これらに限定されない任意の適切な組成または刺激によって誘導される。いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターは、TRE3G、テトラサイクリン、Lac、エクジソン、およびラパマイシンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない、当業者に既知のいずれかから選択される。いくつかの実施形態において、プロモーターは、構成的である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、合成プロモーターであるか、またはエンハンサー要素を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドプロモーターである。いくつかの実施形態において、ハイブリッドプロモーターは、遺伝子の調節領域を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、Ef1a、CAG、sv40、CMV、RSV、Oct4、Rex1、Nanog、GANT2、VMD2、hIRBP、TETプロモーター、CAATボックス、GCボックス、GT-1モチーフ、I-ボックス、ATが豊富な配列、RBCS1、TRE3G、GAL1、Lap267、ラパマイシン、CD11a、CD11b、CD18、ベータ-グロビンプロモーター/LCR、免疫グロブリンプロモーター、PEPCKプロモーター、アルブミンプロモーター、hAAT、SPC、SP-A、MCK、VLC1、HIV-LTR、Tat/Rev応答性エレメント、Tat誘導性エレメント、およびFMR1が挙げられるが、これらに限定されない群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態において、プラスミドは、遺伝子療法を介して導入される遺伝子の全てを含む。いくつかの実施形態において、プラスミドは、PCBP1を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1は、変異型PCBP1である。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号3を含む。いくつかの実施形態において、模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号5を含む。いくつかの実施形態において、PCBP1模倣体、類似体、誘導体、バリアント、または変異体は、配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターの導入は、細胞内の遺伝子コピー数を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のベクターの導入は、細胞内の遺伝子発現を増加させる。いくつかの実施形態において、本開示のベクターの導入は、細胞内のポリペプチド発現を増加させる。いくつかの実施形態において、遺伝子は、PCBP1またはその変異体である。
【0055】
疾患および障害
本明細書に開示される組成物および方法は、任意の適切な細胞または組織の種類に用いられ得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、インビトロで実施される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、エクスビボで実施される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、単離細胞に実施される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、細胞培養に実施される。いくつかの実施形態において、単離細胞または細胞培養細胞は、対象から採取され、次いで、トランスフェクションまたは形質導入後に移植される。いくつかの実施形態において、細胞は、癌細胞である。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物および方法は、インビボで用いられる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、原位置で用いられる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、眼、網膜、心臓、血液、白血球、赤血球、血小板、硝子体液、強膜、網膜、虹彩、角膜、骨格筋肉、心筋、平滑筋、軟骨、腱、骨、表皮、臓器、肝臓、心臓、腎臓、肺、胃、胃腸管、結腸、膀胱、卵巣、睾丸、膵臓、骨髄、脳、ニューロン、および/または腺が挙げられるが、これらに限定されない、身体の任意の適切な部分における細胞遊走を減少させるために使用される。
【0057】
任意の適切な疾患の治療、予防、改善、または遅延のために、本明細書に開示される組成物および方法が使用され得る。例えば、治療、予防、改善、または遅延が可能な疾患は、細胞遊走によって特徴付けられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、癌または制御されていない細胞増殖を治療するために、本明細書に開示される組成物および方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、転移または制御されていない細胞遊走の予防、阻害、改善、または減少のために、本明細書に開示される組成物および方法が使用される。いくつかの実施形態において、癌は、固形癌である。いくつかの実施形態において、癌は、非固形癌である。いくつかの実施形態において、本開示は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫(例えば、小児小脳または大脳)、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹部神経膠腫、脳癌、脳腫瘍(例えば、膠芽腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーウイング肉腫、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、胆嚢癌、胃(腹部)癌、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(例えば、脳幹、大脳星細胞腫、視覚路および視床下部)、胃カルチノイド、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、下咽頭癌、視床下部および視覚路神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞)、口唇および口腔癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞、小細胞)、リンパ腫(例えば、AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞ホジキン、非ホジキン、中枢神経系原発)、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、骨髄性白血病(myeloid leukemia)、骨髄増殖性障害、慢性、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(oral cancer)、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵臓癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、松果体星細胞腫および/または胚腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂および尿管、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(例えば、ユーイングファミリー、カポジ、軟組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚癌(例えば、非黒色腫、黒色腫、メルケル細胞)、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌(throat cancer)、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、栄養膜腫瘍、尿管癌および腎盂癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路および視床下部神経膠腫、外陰部癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない癌に関する。いくつかの実施形態において、本開示の組成物でトランスフェクトまたは形質導入された細胞は、これらの種類の癌のうちの1つ以上から得られる。
【0059】
投与
本開示の組成物は、任意の適切な手段を介して投与され得る。いくつかの実施形態において、核酸投与経路は、経皮、注射、筋肉内、皮下、経口、経鼻、膣内、直腸、経粘膜、腸内、非経口、局所、硬膜外、脳内、脳血管内、動脈内、関節内、皮内、病巣内、眼内、骨内、腹腔内、髄腔内、子宮内、静脈内、膀胱内注入、または硝子体内である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法を使用して組成物でトランスフェクトまたは形質導入された組成物または細胞は、患者に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法を使用して作られた組成物でトランスフェクトまたは形質導入された組成物または細胞は、疾患または障害の治療、予防、改善、またはその発症の遅延のために患者に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物の投与は、対象における細胞遊走を予防する、減少させる、改善する、または遅延させる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物の投与は、対象における細胞遊走を予防する、減少させる、改善する、または遅延させ、かつ疾患または障害を治療する、予防する、改善する、またはその発症を遅延させる。いくつかの実施形態において、疾患または障害は、癌または転移性癌である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物の投与は、対象における腫瘍質量/負荷を減少させる。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞は、患者に1回投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞は、患者に約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、約10回、約20回、約40回、またはそれ以上投与される。本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞は、疾患または障害の症状が改善するまで投与される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクターまたは核酸の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者と比較して、処置患者における細胞遊走または増殖を予防する、改善する、減少させる、または遅延させる。いくつかの実施形態において、細胞遊走または増殖は、1日目~10年目に処置患者において予防される、改善する、減少する、または遅延する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるプラスミドまたはベクターの投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における細胞遊走または増殖と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に細胞遊走または増殖を予防する、改善する、減少させる、または遅延させる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸またはベクターの投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における細胞遊走または増殖と比較して、約1日、約1週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、細胞遊走または増殖を防止する、改善する、減少させる、または遅延させる。
【0063】
いくつかの実施形態において、細胞遊走または増殖は、他の細胞遊走または増殖阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞遊走または増殖予防/阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、細胞遊走または増殖を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞遊走または増殖予防/阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、細胞遊走または増殖を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクターまたは核酸の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者と比較して、処置患者における腫瘍質量または負荷を低減する。いくつかの実施形態において、腫瘍質量/負荷は、1日目~10年目に処置患者において減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるプラスミドまたはベクターの投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における腫瘍質量または負荷と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に腫瘍質量または負荷を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸またはベクターの投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における腫瘍質量または負荷と比較して、約1日、約1週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、腫瘍質量または負荷を低減する。
【0065】
いくつかの実施形態において、腫瘍質量または負荷は、他の腫瘍質量または負荷低減方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の腫瘍質量または負荷低減方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、腫瘍質量または負荷を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の腫瘍質量または負荷低減方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、腫瘍質量または負荷を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞は、インビトロで処置細胞における癌バイオマーカー発現を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、処置患者における癌バイオマーカー発現を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、1日目~10年目に、処置患者またはインビトロ細胞における癌バイオマーカー発現を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の癌バイオマーカー発現阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に癌バイオマーカー発現を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるプラスミド、ベクター、または細胞の投与は、他の癌バイオマーカー発現阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、癌バイオマーカー発現を低減する。
【0067】
いくつかの実施形態において、癌バイオマーカー発現は、他の癌バイオマーカー発現阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の癌バイオマーカー発現阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、癌バイオマーカー発現を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の癌バイオマーカー発現阻害方法で処置された対照または患者またはインビトロ細胞と比較して、約1、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、癌バイオマーカー発現を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、インビトロまたはエクスビボ臓器または組織における転移を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、組織、臓器、または処置患者における転移を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、1日目~10年目に、処置患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織における転移を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の転移阻害方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に転移を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の転移阻害方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、転移または腫瘍形成を低減する。
【0069】
いくつかの実施形態において、転移は、他の転移阻害方法で処置された対照または患者と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の転移阻害方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、転移を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の転移阻害方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、転移を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低減する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、組織、臓器、または処置患者における細胞死を増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクター、核酸、または細胞の投与は、1日目~10年目に、処置患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織における細胞死を増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞死滅方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に転移を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞死滅方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、細胞死を増加させる。
【0071】
いくつかの実施形態において、細胞死は、他の細胞死滅方法で処置された対照または患者と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%増加する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞死滅方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、細胞死を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、他の細胞死滅方法で処置された対照もしくは患者、またはインビトロもしくはエクスビボ臓器もしくは組織と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、細胞死を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%増加させる。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者と比較して、処置患者における疾患または障害の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、疾患または障害の症状は、1日目~10年目に処置患者において測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における疾患または障害の症状と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に疾患または障害の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における疾患または障害の症状と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、疾患または障害の症状を軽減する。
【0073】
いくつかの実施形態において、疾患または障害の症状は、未処置患者または処置前の同じ患者における疾患または障害の症状と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における疾患または障害の症状と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、疾患または障害の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における疾患または障害の症状と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、疾患または障害の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクターまたは核酸の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者と比較して、処置患者における癌の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、癌の症状は、1日目~10年目に処置患者において測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における癌の症状と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に癌の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における癌の症状と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、癌の症状を軽減する。
【0075】
いくつかの実施形態において、癌の症状は、未処置患者または処置前の同じ患者における癌の症状と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における癌の症状と比較して、約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約1週目、約2週目、約3週目、約4週目、約5週目、約6週目、約7週目、約8週目、約9週目、約10週目、約20週目、約30週目、約40週目、約50週目、約60週目、約70週目、約80週目、約90週目、約100週目、約1年目、約2年目、または約3年目に、癌の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸、ベクター、または細胞の投与は、未処置患者または処置前の同じ患者における癌の症状と比較して、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約5年、もしくは約10年、またはそれ以上にわたって、癌の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の組成物でトランスフェクトされた細胞を正確に追跡する方法を提供する。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、細胞の挙動を決定するためにトレースされる。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、それらの遊走を決定するためにトレースされる。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、それらの転移(またはその欠如)を決定するためにトレースされる。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかで投与される任意の薬物に対するそれらの応答を決定するためにトレースされる。いくつかの実施形態において、細胞はまた、治療薬に曝露される。いくつかの実施形態において、治療薬は、化学療法薬である。いくつかの実施形態において、細胞は、インビトロで治療薬に曝露される。いくつかの実施形態において、細胞は、インビボで治療薬に曝露される。
【0077】
同時投与
いくつかの実施形態において、患者は、追加の療法に供される。いくつかの実施形態において、患者は、抗癌療法の一部として本開示の組成物で治療される。いくつかの実施形態において、抗癌療法は、放射線療法、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、幹細胞移植、およびCAR-T療法から選択されるが、これらに限定されない。抗癌療法は、本開示の組成物の投与の前、それと同時、またはその後に投与され得る。
【0078】
キット
本開示はまた、細胞遊走または転移を減少させる、予防する、改善する、または遅延させるためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のベクターまたは核酸を含む。キットは、記載の試薬の使用を指示するラベルまたは印刷された説明書をさらに含むことができる。キットは、試験される処置をさらに含むことができる。キットは、インビトロおよびインビボの細胞遊走または転移の予防、減少、改善、または遅延のために適用される。
【0079】
別途定義されない限り、本明細書の全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が使用され得るが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗癌遺伝子」は、癌遺伝子の発現または活性を予防する、遅延させる、阻害する、または別様に改変する任意の遺伝子を指す。いくつかの実施形態において、抗癌遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子である。いくつかの実施形態において、抗癌遺伝子は、転移に関連する癌バイオマーカーの発現を減少させる。
【0081】
「a」、「an」、および「the」などの単数形は、便宜上、本出願全体を通して使用されるが、文脈または明示的な記述がそうでないことを示す場合を除き、単数形は、複数形を含むよう意図されることを理解されたい。全ての数値範囲は、その数値範囲内のどの数値点も含むと理解され、どの数値点も個別に列挙するものとして解釈されるべきである。同じ構成要素または特性に向けられた全ての範囲の端点は包括的であり、独立して組み合わせ可能であることが意図される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「含む」という単語およびその変化形は、リスト内の項目の列挙が、本技術の材料、組成物、デバイス、および方法においても有用であり得る他の同様の項目を除外しないように、非限定的であることが意図される。同様に、「できる」および「してもよい」という用語ならびにそれらの変化形は、1つの実施形態がある特定の要素または特徴を含むことができる、または含み得る列挙が、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外しないように、非限定的であることが意図される。本開示を説明および請求するために、含む(including)、含有する、または有するなどの用語の同義語として、オープンエンドな用語「含む(comprising)」が本明細書で使用されるが、本技術またはその実施形態は、代替的に、列挙される成分「からなる」または「から本質的になる」などのより限定的な用語を使用して説明され得る。
【0083】
「約」という用語は、数として表される量を指すために本明細書で使用される場合、参照される数値表示の「正確に」プラスまたはマイナス最大10%を含む。「約」という用語が、ある値の範囲に関して使用される場合、「約」という用語は、その範囲の最小値および最大値の両方を指す(例えば、「約1~50μm」は、「約1μm~約50μm」を意味する)。「密接に関連している」という用語は、組成物の2つ以上の構成成分間の空間関係を説明するために本明細書で使用される場合、例えば、混合物、コーティング、およびマトリックス中などで密接に混合されている構成成分を指す。
【0084】
「形質導入」および「トランスフェクション」という用語は、本明細書で互換的に使用され、細胞への遺伝物質の導入を指す。任意の適切な遺伝子修飾手段が、本開示によって想定される。
【0085】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0086】
実施例1-PCBP1変異ポリペプチドを発現するベクターの構築
研究は、PRL-3のmRNA発現が、卵巣癌、胃癌を含む転移性癌において上昇し、PRL-3の過剰発現が、肝臓癌予後と負の相関関係があることを示している(Bardelli et al.2003、Polato et al.,2005、Peng et al.2004)。PCBP1は、PRL-3発現を調節することが知られており、PCBP1発現とPRL-3発現との間の逆相関は、PCBP1がPRL-3のmRNA翻訳を抑制し得ることを示唆する。PRL-3の下方調節には、Akt(pSer473)のリン酸化活性形態の下方調節が伴う(Wang et al.2010)。例えば、Akt-2(pSer474)リン酸化の増加を示す癌細胞はまた、PCBP1発現の有意な低減も示す(Brown et al.,2016)。
【0087】
図1Aおよび1Bに示されるように、レンチウイルス遺伝子療法ベクター(LVV)、または/およびPCBP1遺伝子をそれぞれ含有するAAV系を生成した。このベクター系は、ヒト伸長因子-1α(EF1a)プロモーター、およびmRNA分子からのタンパク質翻訳の内部開始を提供するIRESエレメントを含有する。したがって、IRESモチーフが、単一のPCBPC-IRES-GFP mRNAからの第2の遺伝子の独立した別個の翻訳を開始することができる2シストロン性mRNAが作製される。以下の表2の戦略に基づいて、PAK1によるタンパク質のリン酸化を減少させるように設計されたいくつかのPCBP1変異体を構築した。PCBP1変異ヌクレオチド配列を図1A~Bに示されるベクターにクローニングして、ベクターA(mPCBP1_1、S223L)およびベクターB(mPCBP1_2、T60A & T127A)を作った。各PCBP1変異体における変異は、PAK1によるPCBP1リン酸化を防止する。異なる遺伝子のオンは、適切なプロモーター(複数可)によって駆動される。PAK1は、アミノ酸60および127の両方でPCBP1をリン酸化するため、これらの部位での変異は、PAK1によるPCBP1リン酸化を防止する。
【表2】
【0088】
実施例2-PCBP1変異体は、内因性野生型よりも高いレベルで発現する
PCBP1 S223LおよびPCBP1 T60A & T127A変異が転写レベルに影響を及ぼしたかどうかを試験するために、黒色腫細胞におけるPCBP1発現をqRT-PCRによって決定した。図2は、群間の倍率変化の分析を示す(ddct)。GFP発現と野生型PCBP1発現(wPCBP1_0)との比較は、PCBP1発現レベルが4.012倍大きかったことを示す。GFP発現とPCBP1 S223L(mPCBP1_1)の発現との比較は、PCBP1 S223L発現レベルが3.97倍大きかったことを示す。GFP発現とPCBP1 S223L変異体の発現との比較は、PCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2)発現レベルが4.02倍大きかったことを示す。野生型PCBP1および2つの変異型は、同様のmRNA発現を示す。このアッセイで使用したハウスキーピング遺伝子は、GAPDHである。
【0089】
実施例3-黒色腫細胞におけるPCBP1の発現
黒色腫細胞を4つの群に分割し、各群を、A)GFPのみ、B)野生型PCBP1(wPCBP1_0-IRES-GFP)およびGFP、3)PCBP1 S223LおよびGFP(mPCBP1_1-IRES-GFP)、またはD)PCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2-IRES-GFP)を含有するベクターで、インビトロでトランスフェクトした。リポフェクタミンキット(Invitrogen Inc.)を使用した、野生型PCBP1または変異型PCBP1のいずれかを含有するレンチウイルスベクターのトランスフェクション後24~48時間、GFPの発現が観察された(図2)。トランスフェクション率は、それぞれ約90%であった(データは図示せず)。GFP発現レベルの変動は、異なるベクターに起因する可能性がある。理論に束縛されるものではないが、ベクターでは、PCBP1はGFPの上流にある。PCBP1効率が100%であるとき、下流遺伝子(GFP)は、より低い発現効率(例えば、約60%~80%)を示す。対照ベクターがGFPのみを含有し、PCBP1配列を含有しないため、GFP発現効率はより高い。PCBP1およびGFPが互いに相互作用することを示す証拠はない。
【0090】
ウエスタンブロットについては、PCPB1処置後に短時間、細胞培養皿を氷上に置き、細胞を氷冷PBSで3回洗浄した。次いで、氷冷溶解緩衝液(プロテアーゼ阻害剤を含有する)を細胞に添加した。付着細胞を皿から削り取り、細胞懸濁液を予め冷却したマイクロ遠心分離管に移し、それを4℃で30分間絶えず撹拌し、次いで遠心分離した。遠心分離後、管を氷上に置き、上清を新鮮な管に吸引し、ペレットを廃棄した。タンパク質定量化後、等体積の2×Laemmli試料緩衝液を添加することによって、各細胞溶解物のタンパク質濃度を決定した。試料を、この試料緩衝液中で100℃において5分間沸騰させた。処置群および対照群からの等量のタンパク質を、分子量マーカーと共にSDS-PAGEゲルの各ウェルに装填した。試験したタンパク質濃度は、細胞溶解物もしくは組織ホモジネートから約20~30μg、または約10~100ngの精製タンパク質の範囲であった。ゲルを100Vで1~2時間電気泳動した。次いで、ゲル上のタンパク質を、転写緩衝液およびBio-Rad Semi-Transfer系(Bio-Rad,CA)を使用して、活性ニトロセルロース膜に転写した。ブロッキング緩衝液を室温で1時間または4℃で一晩使用することによって膜をブロックし、次いで、TBST緩衝液で3回(5分/各洗浄)洗浄した後、抗体染色を開始した。次いで、膜を化学発光基質と共に約5分間インキュベートして、キットメーカーの推奨に従ってタンパク質シグナルを可視化した(図3および図6を参照)。
【0091】
図3は、異なる形態のPCBP1をコードする遺伝子療法ベクターでトランスフェクトした細胞におけるPRL-3タンパク質発現を示す。図3に示されるように、野生型PCBP1を含有するベクターによる黒色腫細胞のトランスフェクションは、GFPのみのベクターと比較してPRL-3発現を減少させる。PCBP1変異体のいずれかを含有するベクターによる細胞のトランスフェクションは、PRL-3発現をさらに減少させ、二重のPCBP1 T60A & T127A変異体は、単一のPCBP1 S223L変異体によるトランスフェクションよりもさらに大きい程度までPRL-3発現を減少させる。
【0092】
実施例4-変異型PCBP1によるトランスフェクションは、黒色腫細胞遊走を減少させる
変異型、脱リン酸化PCBP1変異体の細胞遊走に対する効果を、細胞遊走アッセイを使用して試験した。簡潔に、GFPのみ、野生型PCBP1(wPCBP1_0-IRES-GFP)およびGFP、またはPCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2-IRES-GFP)でトランスフェクトした黒色腫細胞を、トランスフェクション後5日間観察した。
【0093】
各処置群または/および対照からの同数の細胞を、リポフェクタミンキット(Invitrogen Inc)を使用したマーカータンパク質をコードするベクター(すなわち、GFP)によるトランスフェクションのために、24(または6)ウェルプレートに播種した。次いで、GFPでトランスフェクトした細胞を、トリプシン(0.1%)を含有する培地によって懸濁し、培養培地によって洗浄した。次いで、同量の細胞数(例えば、各個々の群からの約80,000個の細胞)を再配置し、96ウェルプレートの各ウェルに同量の細胞数を含有する100μLの装填体積で、Oris遊走アッセイプレート(Oris Cell Migration Assay kit)上に均一に分布した。次いで、Oris(商標)Cell Seeding Stopper(OCS)を含有する皿の各ウェルを加湿チャンバ(37℃、5%CO2)内で5~10時間(細胞株依存的)インキュベートして、細胞付着を可能にした。細胞をカウントする前に、Oris(商標)Stopperツールを使用してOCSを除去して、「円検出ゾーン(CDZ)」と呼ばれる、このCDZの内側に遊走した任意の新しい細胞を新しい遊走細胞として検出するための領域を作った。次いで、CDZ内でGFPを発現する細胞を、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,LLC)を使用して、または/および蛍光顕微鏡(BD Biosciences)下で、各時点でカウントした。
【0094】
細胞を、GFP発現の蛍光顕微鏡法によって可視化および分析した。GFPは、各トランスフェクトした細胞における遺伝子の発現を反映するが、GFPの強度は、時間と共に強度のレベルを減少させる可能性があるが、結果に示されるように、5日間にわたって蛍光強度はあまり失われなかった。各ウェルの強度を示す細胞総数を、同じ時間(日)点(例えば、0日目または5日目)で測定した。GFPを有する細胞は、蛍光色素で免疫染色することによってではなく、GFPを含む遺伝子をコードするベクターによって形質導入されたため、蛍光シグナルは、基質から剥離されない。蛍光シグナルを示さない細胞は、本開示のベクターでトランスフェクションされず、したがって、この分析においてカウントされず、限定されない。
【0095】
この細胞遊走アッセイの結果は、図4A~Cに示される。図4Bにおいて、白い点線の円は、円検出ゾーン(CDZ)である。A列は、1日目であり、B列は、5日目の細胞遊走ウェルであり(CDZは白い点線である)、C列は、B列からの拡大CDZである。表3は、二重T60A&T127A変異体が、野生型PCBP1およびGFPのみの細胞の両方と比較して、CDZ内で減少した正味細胞遊走を示す、細胞遊走アッセイからの定量化されたデータを示す。
【表3】
【0096】
図4A~4Cは、ウェル当たりの細胞の割合に調整された細胞遊走を示す。GFP群における遊走細胞の割合(ウェル当たり)(11.076)は、野生型PCBP1(wPCBP1_0)およびPCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2)よりも有意に高かった。これらの3つの群のうち、mPCBP1_2は、ウェル当たりの遊走細胞の最低の割合を示した(2.082)。これらの値を以下のように計算した。
【0097】
各時点において、細胞総数をマイクロプレートリーダーによって検出した(基準分母として)。細胞を、円検出ゾーン(CDZ)の領域内で、時点当たりの遊走細胞としてもカウントした(分子として)。CDZ内の調整された正味細胞差を、以下に示される式に従って計算した。
【数1】
【0098】
実施例5-変異型PCBP1によるトランスフェクションは、乳癌細胞遊走を減少させる
MCF-7細胞株からの乳癌細胞を、GFPのみ、野生型PCBP1(wPCBP1_0-IRES-GFP)およびGFP、またはPCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2-IRES-GFP)を含有するベクターでトランスフェクトし、トランスフェクション後5日間観察した。これらの細胞の遊走は、上記で詳述したように観察した。表4は、異なるトランスフェクトした細胞のCDZ内の正味細胞遊走を示す。図7A~Cは、ウェル当たりの細胞の割合に調整された細胞遊走を示す。GFP群における遊走細胞の割合(ウェル当たり)は、野生型PCBP1(wPCBP1_0)およびPCBP1 T60A & T127A(mPCBP1_2)よりも有意に高かった。これらの3つの群のうち、mPCBP1_2は、ウェル当たりの遊走細胞の最低の割合を示した。
【表4】
【0099】
実施例6-腫瘍転移を阻害するPCBP1変異体の使用
癌遺伝子療法を研究する動物モデルの設計:
実験設計:癌細胞株(すなわち、MCF-7、乳癌モデル-BCのためのATCC)は、マウスにおいて腫瘍形成性であり、免疫不全動物(すなわち、Charles River Lab,NCからのヌードマウス株:BALB/c)における乳癌(BC)腫瘍成長を研究するために使用され得る。これらの細胞を使用して、治療有効性を試験するためのインビボ精密法を開発する。これは最初に、標識された遺伝子を有する、すなわち、赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードするベクターによって安定して形質導入される注射可能な癌細胞株のために調製される。これにより、蛍光バイオイメージングシステムまたは蛍光顕微鏡によって例示またはモニタリングされる、癌細胞の成長および遊走をモニタリングすることが可能になる。癌細胞を調製した後、それらをマウスに皮下注射して、1週間後に乳癌腫瘍を発生させる。この新しい方法を使用することによって、AAV-PCBP1mなどの遺伝子治療ベクターの治療後、癌細胞を、それらの転移中に精密にトレースおよび研究する。
【0100】
手順を、BC研究の例と共に以下のように実施する。
【0101】
(1)RFPを、RFPレポーター遺伝子の安定した長期発現のために、RFP遺伝子を細胞ゲノムに組み込むためのレンチウイルス骨格を使用することなどによって、BC細胞株((MCF-7、ATCC)に送達する。細胞へのRFP軽質導入に成功したことを(蛍光顕微鏡またはFACSを使用することによって)確認した後、BC細胞を選択および注射する。
【0102】
(2)マウスを4つの群(n=6)に分割する。RFP-BC細胞を、全ての群において同じ条件(同じ細胞数、注入時間)でマウスの脇腹に注射する。BC腫瘍サイズを毎日または週2回、評価および記録する。実験設計および期待される転帰は、以下の表5に記載されるとおりになる。
【表5】
【0103】
治療用遺伝子を含有するベクターを、腫瘍に直接注射する。マウスを、処置の3週間後、組織学的研究のために屠殺する。腫瘍組織を、RFP、GFP、PRL-3、PCBP1、およびSOX2(BC細胞マーカー)の免疫組織化学(IHC)アッセイのために抽出する。上記の表に記載されるように、これらの組織上でRFPおよびGFPを検出して、BC細胞成長およびベクター送達を確認する。腫瘍形成性および転移研究のために追加の組織(肺、肝臓、脳、および膵臓を含む)を抽出する。これらの組織内でRFPおよびGFPを検出して、BCがこれらの組織内に遊走したかどうかをモニタリングする。qRT-PCR、WB、およびIHCも実施する。プロテオミクス研究を、質量分析技術と組み合わせた二次元ゲル電気泳動によって行って、対照対PCBP1変異体形質導入で、マウスにおけるタンパク質発現を比較する。実験群間の差を、スチューデントのt検定を使用して比較する。統計的有意性を、P<0.05として決定する。
【0104】
(3)処置後の結果についての転帰の分析は、以下の表6のように予想され得る。
【表6】
【0105】
実施例7-腫瘍細胞においてPCBP1を発現することによる膠芽腫の治療
PRL3 mRNAのレベルの上昇は、膠芽腫細胞において見られる。図11に示されるように、正常な脳皮質細胞株における発現と比較して、6つの異なる膠芽腫細胞株(U138MG、M059K、M059J、U118MG、U87、およびLN229)においてPRL-3発現の上昇を検出した。細胞株U87およびLN229は、PRL-3 mRNA発現の最大の増加を示し、さらなる試験のために選択された。
【0106】
野生型または変異型PCBP1の過剰発現は、膠芽腫細胞におけるPRL3発現を減少させる
以前に実証したように、野生型または変異型PCBP1の発現は、転移に関連する遺伝子、PRL-3の発現を減少させ、細胞遊走を阻害した。PCBP1配列の過剰発現の効果を試験するために、膠芽腫細胞におけるAP-PCBP1の発現を可能にする膠芽腫細胞特異的プロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の制御下において、本開示の野生型または変異型PCBP1配列を含有するrAAV9発現ベクターで、6つの異なる膠芽腫細胞株をトランスフェクトした(図12を参照)。図13~16は、膠芽腫細胞におけるこのベクター発現の特異性を示す。図13は、phGFAP-LacZベクターで処置されたLN299膠芽腫細胞の免疫組織化学分析を示す。図14は、phGFAP-LacZベクターで処置されたLN299膠芽腫細胞の免疫組織化学分析を示す。図13Bおよび14Bに示されるように、GFAPプロモーターによって駆動されるLacZ遺伝子を、両方のトランスフェクトされた膠芽腫細胞株における抗β-ガラクトシダーゼ特異的抗体、A11132(1:700の希釈におけるThermoFisher)によって検出する。しかしながら、β-ガラクトシダーゼは、腎臓(図15)または眼(図16)細胞において検出されず、このベクターが膠芽腫細胞においてのみそのカーゴを発現することを示す。LacZ mRNA発現レベルの比較が図17に示される。
【0107】
1)GFPのみ、2)野生型PCBP1、3)mPCBP1_1、または4)mPCBP1_2を含有する2マイクログラムのAAVベクターを、LN229およびU87膠芽腫細胞株にトランスフェクトし、Vybrant MTTキットを使用することによって細胞増殖を試験した。図18A~Bに示されるように、野生型PCBP1またはいずれかの変異体の過剰発現は、AAV-GFPベクター対照による非処置と比較して、膠芽腫細胞の増殖を有意に阻害する。さらに、PCBP1 mRNAの過剰発現は、図19および20に示されるように、培養物中の死細胞の数を増加させる。AAV-GFPおよびAAV-PCBP1および変異体によるトランスフェクション後、LIVE/DEAD(商標)Viability Kit(Thermofisher,Inc.)を使用して、死および生U87膠芽腫細胞を分析した。図19Aは、対照で処置した細胞培養物が、野生型または変異型PCPB1配列を含有するベクターでトランスフェクトした細胞よりも有意に多くの生細胞を含有していることを示し、図19Bは、これらのPCBP1細胞培養物が、対照で処置した細胞培養物より有意に多くの死細胞を含有していることを示す。図20A~Dは、GFP対照ベクターまたはPCBP1配列を含有するベクターのいずれかによるトランスフェクション後の生/死U87細胞の染色を示す。図21に示されるように、全ての形態のPCBP1による処置は、U87膠芽腫細胞株におけるPRL3タンパク質発現を下方制御し、mPCBP1_2で処置した細胞においてPRL3発現の最大の減少が観察された。
【0108】
これらの結果は、U87細胞株に特異的ではなく、他の膠芽腫細胞株でも実証された。野生型または変異型PCBP1によるLN299膠芽腫細胞のトランスフェクションは、細胞培養物中の死細胞の数を増加させ(図22および23)、PRL3タンパク質発現のレベルを減少させた(図24)。この場合もやはり、mPCBP1_2での処置は、PRL3タンパク質発現の最大の減少を示した(図24)。M059J(図25)、M059K(図26)、U118MG(図27)、およびU138MG(図28)膠芽腫細胞株において、細胞生存率に対する同様の効果が観察された。
【0109】
野生型または変異型PCBP1の過剰発現は、膠芽腫細胞におけるSTAT3発現を減少させる
PRL3と同様に、癌のマーカーであるSTAT3の発現は、野生型または変異型PCBP1配列を含有するベクターでトランスフェクトした膠芽腫細胞において減少した。図29および30は、野生型PCBP1、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2でトランスフェクトしたU87およびLN299膠芽腫細胞において、STAT3タンパク質発現レベルが減少し、mPCBP1_2処置細胞が、STAT3タンパク質レベルの最大の減少を示していることを示す。
【0110】
実施例8-腫瘍細胞においてPCBP1を発現することによる卵巣癌および前立腺癌の治療
PCBP1過剰発現の効果が膠芽腫細胞に限定されないことを実証するために、SKOV3卵巣癌細胞株を、野生型または変異型PCBP1配列を含有するベクターでトランスフェクトした。SKOV3細胞を、GFP、PCBP1、mPCBP1_1、またはmPCBP1_2を含有する0.5μgまたは2.0μgのレンチベクターのいずれかでトランスフェクトした。MTT(Thermofisher Inc.)を使用して細胞増殖をアッセイした。図31に示されるように、3つ全てのPCBP1含有ベクターのトランスフェクションは、用量依存的に細胞増殖の阻害を増加させた。さらに、図32は、野生型または変異型PCBP1配列によるトランスフェクションが、PRL3 mRNA発現を減少させることを示す。
【0111】
野生型または変異型PCBP1配列を含有するベクターでトランスフェクトしたDU145前立腺癌細胞においても同様の結果が観察された。図33は、PCBP1を過剰発現する細胞が、対照細胞と比較して、細胞増殖の有意な減少を示したことを示す。図34は、PRL3タンパク質発現レベルが同様に減少し、mPCBP1_2変異体が最大の減少を示していることを示す。
【0112】
実施例9-野生型または変異型PCBP1の過剰発現は、非癌性細胞に対して毒性ではない
PCBP1の過剰発現が非癌性細胞に対して毒性はないことを実証するために、野生型または変異型PCBP1を含有するベクターで2つの正常な細胞型をトランスフェクトし、乳酸デヒドロゲナーゼ(LH)アッセイを実施した。乳酸デヒドロゲナーゼは、損傷した細胞から培地に放出され、したがって、LHのレベルの上昇は、細胞毒性および細胞溶解のバイオマーカーである。正常な脳細胞(HCN-2)および正常な乳房細胞(MCF10A)をそれぞれ、1)GFPのみ(例えば、PCBP1処置なし)、2)野生型PCBP1、3)mPCBP1_1、および4)mPCBP1_2を含有するベクターでトランスフェクトした。図33~34は、PCBP1での処置による正常な脳および乳房細胞の有意な死滅は示さない。
【0113】
参照による援用
引用される全ての参考文献、出願、出版物、特許、および特許公開は、全ての目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29
図30
図31A
図31B
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
【配列表】
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