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特許7463321正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240401BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240401BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240401BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021120460
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2022042478
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0111715
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ペ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒュン ジョン
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0044448(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106099059(CN,A)
【文献】特開2017-162554(JP,A)
【文献】特表2018-505508(JP,A)
【文献】特表2015-536558(JP,A)
【文献】特表2018-500720(JP,A)
【文献】特開2020-077611(JP,A)
【文献】特表2015-528181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質であり、
前記小粒子は、平均粒径(D50)が8μm以下のリチウム複合酸化物であり、前記大粒子は、平均粒径(D50)が8.5μm以上のリチウム複合酸化物であり、
前記正極活物質は、
前記第1リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第1コーティング層を含み、
前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第2コーティング層を含み、かつ、
SEM/EDS分析から求めた、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(at%)をr1といい、SEM/EDS分析から求めた、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(at%)をr2というとき、前記r1および前記r2は、下記の式2-1を満たし、
前記第2リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの1次粒子を含む複合粒子であり、
前記1次粒子は、1つの結晶粒(grain or crystallite)であり、
前記第2リチウム複合酸化物は、前記第2リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第2リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対し下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.90以上である、正極活物質。
[式2-1]
0.76≦r2/r1≦1.18
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【請求項2】
前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表示される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ce、Cr、Mn、Mo、Na、K、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦
α≦0.02である)
【請求項3】
前記第1コーティング層および前記第2コーティング層に含まれた前記金属酸化物は、
下記の化学式2で表示される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式2]
LiM3
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【請求項4】
前記第1リチウム複合酸化物の平均粒径(D50)は、8μm以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第2リチウム複合酸化物の平均粒径(D50)は、8.5μm以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第1リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの1次粒子を含む複合粒子であり、
前記第1リチウム複合酸化物は、前記第1リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.75以下である、請求項1に記載の正極活物質。
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【請求項7】
前記第1リチウム複合酸化物は、単結晶構造を有する、請求項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質の中で、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の重量比は、5:95~50:50である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質のプレス密度は、3.63g/cc以上である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項11】
請求項10に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的に、平均粒径が互いに異なる小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質であり、前記小粒子および前記大粒子の表面の少なくとも一部をコーティングするコーティング層が偏在することにより発生する正極活物質の電気化学的特性および安定性等の低下を防止することが可能な正極活物質、前記正極活物質を含む正極、前記正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって、電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
一方、最近では、リチウム二次電池の高容量化のために、平均粒径が互いに異なる小粒子と大粒子を混合したバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質もたびたび使用されている。小粒子と大粒子を混合する場合、大粒子間の空隙を、相対的に平均粒径の小さい小粒子が充填できるようになることによって、単位体積内リチウム複合酸化物の集積密度が向上して、単位体積当たりエネルギー密度を高めることができる。
【0009】
しかし、小粒子と大粒子をコーティング原料物質と混合した後、同時に焼成する場合、相対的に比表面積の大きい小粒子にコーティング原料物質が偏在することにより、小粒子と大粒子間のコーティング不均衡の問題が発生することがあり、これは、小粒子と大粒子が混合されたバイモーダル形態の正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させる原因として作用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許公開第10-2010-0131921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極材の需要も持続的に変化している。
【0012】
例えば、従来、安全性の確保等の観点から、LFPを用いたリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になって、LFPに比べて重量当たりのエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0013】
このような正極材の動向に符合して、本発明は、平均粒径が互いに異なる小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質を提案することによって、高いエネルギー密度を有する正極活物質を提供することを目的とする。
【0014】
特に、本発明は、前記バイモーダル形態の正極活物質中、小粒子および大粒子の表面の少なくとも一部をコーティングするコーティング層が偏在する現象を減らして電気化学的特性および安定性等を向上させることが可能な正極活物質に関する。
【0015】
また、本発明の他の目的は、本願で定義された正極活物質を含む正極を提供することにある。
【0016】
また、本発明のさらに他の目的は、本願で定義された正極を使用するリチウム二次電池を提供することにある。
【0017】
本発明の目的は、以上で言及した目的(例えば、電気自動車用)に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解され得る。また、本発明の目的および長所は、特許請求の範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質が提供される。
【0019】
ここで、前記正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第1コーティング層と、前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第2コーティング層を含むことができる。
【0020】
この際、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(at%)をr1といい、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(at%)をr2というとき、前記r1および前記r2は、下記の式1を満たすことができる。
【0021】
[式1]
0.71<r2/r1
【0022】
また、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表示され得る。
【0023】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
【0024】
(ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、M2は、P、Sr、Ba、B、Ce、Cr、Mn、Mo、Na、K、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、M1とM2は、互いに異なり、0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦α≦0.02である)
【0025】
前記第1コーティング層および前記第2コーティング層に含まれた前記金属酸化物は、下記の化学式2で表示され得る。
【0026】
[化学式2]
LiM3
【0027】
(ここで、M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【0028】
一方、前記バイモーダル形態の正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の結晶粒界の密度が互いに異なっていてもよい。前記結晶粒界の密度は、一般的に複数の1次粒子が凝集した2次粒子形態の正極活物質を構成するリチウム複合酸化物内1次粒子の数を間接的に示す指標であり、本願発明では、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の結晶粒界の密度を下記の式3および式3で定義する。
【0029】
具体的に、前記第1リチウム複合酸化物は、少なくとも一つの1次粒子を含む複合粒子であり、前記第1リチウム複合酸化物は、前記第1リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.75以下でありうる。
【0030】
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0031】
この場合、前記第1リチウム複合酸化物は、単結晶構造を有してもよい。
【0032】
また、前記第2リチウム複合酸化物は、少なくとも一つの1次粒子を含む複合粒子であり、前記第2リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第2リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.90以上でありうる。
【0033】
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0034】
このように、前記バイモーダル形態の正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の互いに異なる範囲内の結晶粒界の密度を有し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部を占有するコーティング層の占有率間の偏差を減らすことによって、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を向上させることが可能である。
【0035】
また、本発明の他の態様によれば、本願に定義された正極活物質を含む正極が提供される。
【0036】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本願に定義された正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0037】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、平均粒径が互いに異なる小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質であり、大粒子間の空隙を、相対的に平均粒径の小さい小粒子が充填できるようになることによって、単位体積内リチウム複合酸化物の集積密度が向上し、単位体積当たりエネルギー密度を高めることができる。
【0038】
また、本発明によれば、前記小粒子および前記大粒子の表面のうち少なくとも一部に存在するコーティング層の占有率の偏差を減らして、前記バイモーダル形態の正極活物質の電気化学的特性および安定性等が低下するのを防止することができる。
【0039】
特に、本発明によれば、前記バイモーダル形態の正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の互いに異なる範囲内の結晶粒界の密度を有するようにすることによって、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部を占有するコーティング層の占有率間の偏差をさらに緩和させることが可能である。
【0040】
上述した効果とともに、本発明の具体的な効果は、以下で発明を実施するための具体的な事項を説明しつつ、共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本願で定義された結晶粒界の密度を算出するリチウム複合酸化物の断面を概略的に示す図である。
図2】本願で定義された結晶粒界の密度を算出するリチウム複合酸化物の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0043】
以下、本発明による正極活物質および前記正極活物質を含むリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することにする。
【0044】
正極活物質
本発明の一態様によれば、小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)形態の正極活物質が提供される。
【0045】
本願において小粒子および大粒子の平均粒径(D50)の範囲は、特に制限されないが、任意のリチウム複合酸化物が小粒子または大粒子であるかを区分するために、下記のような小粒子および大粒子の平均粒径(D50)の基準範囲が決定され得る。
【0046】
小粒子は、平均粒径(D50)が8μm以下のリチウム複合酸化物を意味し、大粒子は、平均粒径(D50)は、8.5μm以上のリチウム複合酸化物を意味する。前記大粒子の平均粒径(D50)の上限は制限がないが、例えば、前記大粒子は、8.5~23.0μmの平均粒径を有することができる。
【0047】
本発明の多様な実施例によるバイモーダル形態の正極活物質は、上記に定義された平均粒径(D50)を示す前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物が5:95~50:50の重量比で混合された状態で存在することができる。
【0048】
この際、前記第1リチウム複合酸化物は、前記第2リチウム複合酸化物間の空隙内充填された形態で存在したり、前記第2リチウム複合酸化物の表面に付着したり、前記第1リチウム複合酸化物同士凝集した形態でも存在することができる。
【0049】
一方、前記正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物は、5:95~50:50の重量比で存在することが好ましい。
【0050】
前記正極活物質中、前記第2リチウム複合酸化物に対して前記第1リチウム複合酸化物の割合が過度に多いかまたは過度に少ない場合、かえって前記正極活物質のプレス密度が減少するにつれて前記正極活物質の単位体積当たりエネルギー密度の向上効果が微小になり得る。
【0051】
また、前記正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物が上述した重量比で存在するところで、3.63g/ccのプレス密度を有することができる。
【0052】
一方、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表示されるリチウム複合酸化物でありうる。
【0053】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
【0054】
(ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、M2は、P、Sr、Ba、B、Ce、Cr、Mn、Mo、Na、K、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、M1とM2は、互いに異なり、0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦α≦0.02である)
【0055】
また、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物は、前記化学式1で表示され、同じ組成を有するリチウム複合酸化物でありうるが、必ずこれに制限されるものではない。例えば、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物は、同じ組成を有し、かつ、平均粒径が異なる前駆体の焼成により合成され得るか、または、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物は異なる組成を有し、平均粒径が異なる前駆体の焼成により合成され得る。
【0056】
一方、前記化学式1で表示される前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物のうち少なくとも1つ、好ましくは、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物が、いずれも、Niの含有量(モル比)が80%以上であるHigh-Niタイプのリチウム複合酸化物でありうる。この際、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物中、Niの含有量は、下記のように下記の化学式1中、x+y+zの含有量によって決定され得る。
【0057】
Ni(mol%)/(Ni+Co+M1+M2)(mol%)≧80
【0058】
Niを含むリチウム複合酸化物の場合、LiとNiのカチオン混合により前記リチウム複合酸化物の表面に残留リチウム、すなわちLiOHおよびLiCOのようなLi不純物が形成され得る。このようなLi不純物は、前記Li不純物は、正極を製造するためのペーストの製造時にゲル(gel)化したり、セルのスウェリング現象を引き起こす原因として作用することができる。
【0059】
このようなLi不純物は、High-Niタイプの正極活物質においてさらに多量で形成され得るが、後述するように、本発明による正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含むコーティング層を形成する過程で前記リチウム複合酸化物の表面に存在するLi不純物を除去することができるという利点がある。
【0060】
より具体的に、前記正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第1コーティング層を含み、前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含む第2コーティング層を含むことができる。
【0061】
また、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層に含まれた前記金属酸化物は、下記の化学式2で表示され得る。この際、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層は、それぞれ、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、下記の化学式2で表示される金属酸化物が存在する領域で定義され得る。
【0062】
[化学式2]
LiM3
【0063】
(ここで、M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【0064】
前記第1コーティング層および前記第2コーティング層に含まれた金属酸化物は、同一または互いに異なる金属酸化物でありうる。
【0065】
また、前記コーティング層は、1つの層内異種の金属酸化物が同時に存在したり、前記の化学式2で表示される異種の金属酸化物がそれぞれ別個の層に存在する形態でありうる。
【0066】
上記の化学式2で表示される金属酸化物は、上記の化学式1で表示される1次粒子と物理的および/または化学的に結合した状態でありうる。また、前記金属酸化物は、上記の化学式1で表示される1次粒子と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0067】
本実施例による正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことによって、構造的な安定性が高まることができる。また、このような正極活物質をリチウム二次電池に使用する場合、正極活物質の高温貯蔵安定性および寿命特性が向上することができる。また、前記金属酸化物は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(pathway)として作用することによって、リチウム二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。
【0068】
また、前記金属酸化物は、リチウムとAで表示される元素が複合化した酸化物であるか、または、Aの酸化物であり、前記金属酸化物は、例えば、Li、LiZr、LiTi、LiNi、Li、LiCo、LiAl、Co、Al、W、Zr、Tiまたは、B等でありうるが、上述した例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願で定義された前記金属酸化物は、上述した例に制限されない。
【0069】
他の実施例において、前記金属酸化物は、リチウムとAで表示される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物であるか、または、リチウムとAで表示される少なくとも2種の元素が複合化された金属酸化物をさらに含むことができる。リチウムとAで表示される少なくとも2種の元素が複合化した金属酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/B)等でありうるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0070】
ここで、前記金属酸化物は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これにより、前記金属酸化物の濃度は、前記2次粒子の最表面から前記2次粒子の中心部に向かって減少することができる。
【0071】
上述したように、前記金属酸化物が前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを効果的に減少させて、未反応の残留リチウムによる副反応を未然に防止することができる。また、前記金属酸化物により前記正極活物質の表面内側領域における結晶性が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中、前記金属酸化物により正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止することができる。
【0072】
追加的に、前記コーティング層は、上記の化学式2で表示される少なくとも1つの金属酸化物を含む第1酸化物層と、上記の化学式2で表示される少なくとも1つの金属酸化物を含み、かつ、前記第1酸化物層に含まれた金属酸化物と異なる金属酸化物を含む第2酸化物層を含むことができる。
【0073】
例えば、前記第1酸化物層は、前記2次粒子の最外郭に存在する前記1次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができ、前記第2酸化物層は、前記第1酸化物層によりカバーされていない前記1次粒子の露出した表面および前記第1酸化物層の表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができる。
【0074】
一方、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物が少なくとも1つの1次粒子を含む複合粒子であると定義するとき、前記コーティング層は、前記複合粒子の表面(例えば、2次粒子)のうち少なくとも一部をカバーするだけでなく、前記複合粒子を構成する複数の1次粒子間の界面にも存在することができる。
【0075】
また、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前記2次粒子の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在することができる。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、前記コーティング層は、アイランド(island)の形態で存在することができる。他の場合において、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前記1次粒子が凝集して形成された前記2次粒子と境界を形成しない固溶体の形態で存在することもできる。
【0076】
一方、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の前駆体と前記化学式2で表示される金属酸化物の原料物質を混合した後、1次焼成したり、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の前駆体を1次焼成した後、前記化学式2で表示される金属酸化物の原料物質を混合した後、2次焼成することによって得られることができる。この際、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を互いに独立に1次焼成することもできる。
【0077】
例えば、前記第1リチウム複合酸化物の前駆体と前記第2リチウム複合酸化物の前駆体を互いに独立に1次焼成して得られた前記第1リチウム複合酸化物、前記第2リチウム複合酸化物および前記化学式2で表示される金属酸化物の原料物質を混合した後、コーティング工程を行う場合、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面にそれぞれ前記第1コーティング層および前記第2コーティング層が形成され得るが、この際、相対的に比表面積が大きい小粒子にコーティング原料物質が偏在し得る。
【0078】
この場合、小粒子の前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率と、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率との偏差が激しくなって、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物が所定の割合で混合されたバイモーダル形態の正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させる原因として作用することができる。
【0079】
これにより、小粒子の前記第1リチウム複合酸化物および大粒子の前記第2リチウム複合酸化物の所定の割合で混合されたバイモーダル形態の正極活物質において、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率と、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率との偏差による前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等の低下を防止するために、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(at%)をr1といい、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(at%)をr2というとき、前記r1および前記r2は、下記の式1を満たすことが好ましい。
【0080】
ここで、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(at%)および前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(at%)は、それぞれ、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で存在する前記第1コーティング層(より具体的に、前記第1コーティング層中、化学式2で表示される金属酸化物に特異的な金属元素)の含有量(at%)および前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で存在する前記第2コーティング層(より具体的に、前記第2コーティング層中化学式2で表示される金属酸化物に特異的な金属元素)の含有量(at%)で定義され得る。この際、前記r1と前記r2の測定対象となる金属元素は、互いに同じであってもよい。
【0081】
例えば、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(r1)、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(r2)およびこれらの比(r2/r1)は、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層が存在しない前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、金属元素の組成を測定し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面に前記第1コーティング層と前記第2コーティング層をそれぞれ形成した後、表面の中で、金属元素の組成を測定して、前記第1コーティング層と前記第2コーティング層を構成する金属酸化物に特異的に含まれる金属元素の含有量の変化を通じて算出され得る。
【0082】
すなわち、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率(r1)および前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率(r2)は、それぞれ、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面をカバーする前記第1コーティング層および前記第2コーティング層の面積比を意味することもできるが、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面に存在する前記第1コーティング層および前記第2コーティング層の含有量比としても理解され得る。
【0083】
[式1]
0.71<r2/r1
【0084】
もし、上記の式1で表示されるr2/r1が0.71以下である場合、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率に対して前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率が過度に大きくなって、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面特性のギャップが生じて、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させる恐れがある。
【0085】
より具体的に、前記r1および前記r2は、下記の式2を満たすことができる。
【0086】
[式2]
0.72≦r2/r1<1.23
【0087】
もし、上記の式2で表示されるr2/r1が1.23以上である場合、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率に対して前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率が過度に大きくなるにつれて、同様に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面特性のギャップが生じて、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させることができる。
【0088】
また、上述したように、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物は、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な少なくとも1つの1次粒子を含む複合粒子でありうる。もし、前記第1リチウム複合酸化物および/または前記第2リチウム複合酸化物が複数の1次粒子を含む場合、前記複数の1次粒子は、互いに凝集した凝集体である2次粒子として存在することができる。
【0089】
前記1次粒子は、1つの結晶粒(grain or crystallite)を意味し、2次粒子は、複数の1次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記2次粒子を構成する前記1次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在することができる。
【0090】
追加的に、本発明によれば、前記バイモーダル形態の正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の互いに異なる範囲内の結晶粒界の密度を有するようにすることによって、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部を占有するコーティング層の占有率間の偏差をさらに低減することが可能である。
【0091】
具体的に、前記第1リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの1次粒子からなる複合粒子であり、前記第1リチウム複合酸化物は、前記第1リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.75以下でありうる。
【0092】
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0093】
図1および図2は、本願で定義された結晶粒界の密度を算出するリチウム複合酸化物の断面を概略的に示すものである。図1および図2を参照して計算されたリチウム複合酸化物の結晶粒界の密度は、下記の表1に示した。
【0094】
【表1】
【0095】
この際、前記第1リチウム複合酸化物は、図1に示されたように、仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面(結晶粒界)の数が0個であり、前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数が1個であることにより、結晶粒界の密度が0である単結晶構造を有することができる。
【0096】
前記式3で表示される前記結晶粒界の密度が0.75以下の値を有することにより、前記第1リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第1コーティング層の占有率と、前記第2リチウム複合酸化物の表面の中で、前記第2コーティング層の占有率との偏差を緩和させることが可能である。
【0097】
一方、前記第2リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの1次粒子からなる複合粒子であり、前記第2リチウム複合酸化物は、前記第2リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記第2リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式3で計算される結晶粒界の密度が0.90以上でありうる。
【0098】
[式3]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0099】
平均粒径の小さい小粒子が充填できるようになることによって、単位体積内リチウム複合酸化物の集積密度が向上し、単位体積当たりエネルギー密度を高めることができる。
【0100】
また、本発明の多様な実施例によるバイモーダル形態の正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に存在するコーティング層の占有率の偏差を減らして、前記バイモーダル形態の正極活物質の電気化学的特性および安定性等が低下するのを防止することができる。
【0101】
特に、本発明によれば、前記バイモーダル形態の正極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の互いに異なる範囲内の結晶粒界の密度を有するようにすることによって、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部を占有するコーティング層の占有率間の偏差をさらに緩和させることが可能である。
【0102】
リチウム二次電池
本発明の他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。したがって、正極活物質は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。
【0103】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0104】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0105】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含有量で含まれ得る。上記した含有量の範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0106】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0107】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0108】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0109】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0110】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0111】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0112】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0113】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0114】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0115】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0116】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0117】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0118】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0119】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0120】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0121】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造され得る。
【0122】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥したり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0123】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0124】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0125】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0126】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0127】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0128】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0129】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0130】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0131】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0132】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0133】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0134】
製造例1.正極活物質の製造
(1)実施例1
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いて小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物のNiCoMn(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Mn=91:8:1(at%))を合成した。前記第1リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体(第1水酸化物前駆体)の平均粒径(D50)は、3.0μmであり、前記第2リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体(第2水酸化物前駆体)の平均粒径(D50)は、18.0μmであった。
【0135】
次に、前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ850℃まで分当たり2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得した。
【0136】
また、これとは別途に、前記第2水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第2リチウム複合酸化物を収得した。
【0137】
次に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を10:90の重量比で混合して混合物を製造した後、前記混合物に蒸留水を投入し、1時間水洗した。
【0138】
次に、前記混合物に3.0mol%の硫酸コバルトを投入しつつ撹拌して、前記混合物中、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の表面にCoをコーティングした。以後、真空乾燥機で120℃で12時間乾燥させた。
【0139】
最後に、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(2次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物と大粒子の第2リチウム複合酸化物が所定の割合で混合されたバイモーダル形態の正極活物質を収得した。
【0140】
(2)実施例2
水洗前に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を20:80の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0141】
(3)実施例3
水洗前に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を30:70の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0142】
(4)実施例4
水洗前に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を40:60の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0143】
(5)実施例5
水洗前に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を50:50の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0144】
(6)実施例6
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれBa含有化合物(Ba(OH))0.5mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0145】
(7)実施例7
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれSr含有化合物(Sr(OH))0.5mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0146】
(8)実施例8
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれMg含有化合物(Mg(OH))0.5mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0147】
(9)実施例9
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれNa含有化合物(Na(NO))0.5mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0148】
(10)実施例10
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれNb含有化合物(Nb)0.2mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0149】
(11)実施例11
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれW含有化合物(WO)0.2mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0150】
(12)実施例12
1次焼成前に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体にそれぞれZr含有化合物(ZrO)0.3mol%を追加的に混合した後、熱処理したことを除いて、実施例3と同一に正極活物質を製造した。
【0151】
(13)実施例13
前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の混合物に3.0mol%の硫酸コバルトを投入する代わりに、3.0mol%の硫酸アルミニウムを投入してAlをコーティングしたことを除いて、実施例12と同一に正極活物質を製造した。
【0152】
(14)実施例14
前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の混合物に3.0mol%の硫酸コバルトを投入する代わりに、3.0mol%の硫酸マンガンを投入してMnをコーティングしたことを除いて、実施例12と同一に正極活物質を製造した。
【0153】
(15)実施例15
前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物の混合物に3.0mol%の硫酸コバルトを投入する代わりに、3.0mol%の硝酸ジルコニウムを投入してZrをコーティングしたことを除いて、実施例12と同一に正極活物質を製造した。
【0154】
(16)実施例16
前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を30:70の重量比で混合して混合物を製造した後、前記混合物に蒸留水を投入し、1時間水洗した後、真空乾燥機で120℃で12時間乾燥させて正極活物質を得、前記乾燥した正極活物質に1.0mol%のNbを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(2次焼成)して、Nbをコーティングしたことを除いて、実施例12と同一に正極活物質を製造した。
【0155】
(17)実施例17
前記乾燥された正極活物質に1.0mol%のNbの代わりに1.0mol%のCobalt phosphateを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(2次焼成)して、Cobalt phosphateをコーティングしたことを除いて、実施例16と同一に正極活物質を製造した。
【0156】
(18)比較例1
前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0157】
(19)比較例2
前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を20:80の重量比で混合して混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0158】
(20)比較例3
前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を30:70の重量比で混合して混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0159】
(21)比較例4
前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を40:60の重量比で混合して混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0160】
(22)比較例5
前記第1水酸化物前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.05±0.05)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ700℃まで分当り2℃で昇温して12時間熱処理(1次焼成)して、小粒子の第1リチウム複合酸化物を収得し、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を50:50の重量比で混合して混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0161】
(23)比較例6
水洗前に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物を3:97の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0162】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質それぞれ92wt%、人造黒鉛4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚み15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0163】
前記正極に対してリチウムホイールを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚み:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。
【0164】
実験例1.正極活物質の構造分析
(1)正極活物質のSEM/EDS分析
製造例1によって製造された正極活物質に含まれた小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物の表面の中で、コーティング層の分布およびコーティング元素の含有量を測定するために、まず、表面コーティングされていない状態の第1リチウム複合酸化物および第2リチウム複合酸化物の表面をEDS分析して、Base lineを設定した。
【0165】
以後、製造例1に開示された所定の方法によってコーティングされた状態の第1リチウム複合酸化物と第2リチウム複合酸化物の表面をEDS分析し、コーティング前後のコーティング元素の含有量の差異を算出して、第1コーティング層の占有率(r1)と第2コーティング層の占有率(r2)を測定した。
【0166】
【表2】
【0167】
(2)正極活物質の断面SEM分析
製造例1によって製造された正極活物質に含まれた小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物それぞれに対してFE-SEM(Bruker社)を使用して断面SEMイメージを収得した後、前記断面SEMイメージから下記の式3による結晶粒界の密度の平均値を計算した。
【0168】
[式3]
結晶粒界の密度=(リチウム複合酸化物の断面SEMイメージでリチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0169】
前記結晶粒界の密度の測定結果は、下記の表3に示した。
【0170】
【表3】
【0171】
実験例2.正極活物質の電気化学的特性の評価
(1)リチウム二次電池の電池容量および寿命特性の評価
製造例2によって製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲3.0V~4.25V、0.5C~4.0Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、初期充電容量、初期放電容量およびエネルギー密度を測定した。前記エネルギー密度(Wh/L)は、下記の式4によって計算された。
【0172】
[式4]
エネルギー密度(Wh/L)=初期放電容量*平均電圧*プレス密度
【0173】
また、上述した方法で製造されたリチウム二次電池を25℃の温度で3.0V~4.25Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充放電を実施した後、初期容量に対する50サイクル目の放電容量の割合(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0174】
前記方法によって測定されたリチウム二次電池の電気化学的特性評価結果は、下記の表4に示した。
【0175】
【表4】
【0176】
前記表4の結果を参考にすると、実施例1~実施例17による正極活物質の場合、2800Wh/L以上のエネルギー密度を示すと同時に、88%以上の寿命特性を示す反面、比較例1~比較例6による正極活物質の場合、実施例1~実施例17による正極活物質に比べてエネルギー密度および寿命特性が低いことを確認することができる。
【0177】
実験例3.正極活物質およびリチウム二次電池の安定性の評価
(1)正極活物質の熱的安定性の評価
製造例1によって製造された正極活物質の熱的安定性を評価する熱重量分析装置(TA Instruments、Q20)を使用して常圧のAr雰囲気下で25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失を測定した。この際、それぞれの正極活物質において重量損失(熱分解)ピークが現れる開始温度(op-set)を下記の表5に示した。
【0178】
【表5】
【0179】
前記表5の結果を参考にすると、実施例1~実施例17による正極活物質において重量損失(熱分解)ピークが現れる開始温度(op-set)は、比較例1~比較例6による正極活物質より高いことが確認された。すなわち、実施例1~実施例17による正極活物質の熱的安定性が、比較例1~比較例6による正極活物質よりさらに優れていることが分かる。
【0180】
(2)リチウム二次電池のガス発生量の測定
製造例2によって製造されたリチウム二次電池を定電流0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管して、リチウム二次電池内ガス発生に起因したリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化の測定結果は、下記の表6に示した。
【0181】
【表6】
【0182】
前記表6の結果を参考にすると、実施例1~実施例17による正極活物質を使用したリチウム二次電池の体積変化量は、比較例1~比較例6による正極活物質を使用したリチウム二次電池の体積変化量より小さいことを確認することができる。
【0183】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1
図2