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特許7463323海水電解による二酸化炭素固定システムおよび方法
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  • 特許-海水電解による二酸化炭素固定システムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】海水電解による二酸化炭素固定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20240401BHJP
   C01F 5/24 20060101ALI20240401BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240401BHJP
   C25B 1/16 20060101ALI20240401BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240401BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240401BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B01D53/18
C01F5/24
C01B32/50
C25B1/16
C25B9/19
C25B15/08 302
B01D53/14 210
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021131156
(22)【出願日】2021-08-11
(65)【公開番号】P2023025798
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭子
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-125354(JP,A)
【文献】特開2011-056345(JP,A)
【文献】国際公開第2021/061213(WO,A1)
【文献】特開2013-126940(JP,A)
【文献】特表2012-513944(JP,A)
【文献】特表2010-531732(JP,A)
【文献】特表2013-525246(JP,A)
【文献】特開2002-233880(JP,A)
【文献】特開昭63-151399(JP,A)
【文献】特開2007-029899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/18
C01F 5/24
C01B 32/50
C02F 1/58
C25B 1/16
C25B 9/19
C25B 15/08
B01D 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を電気分解して水酸化ナトリウム(NaOH)を発生させる電解槽と、
前記電解槽において発生した前記水酸化ナトリウムと、濃縮海水と、二酸化炭素(CO)とを混合させることによって、前記濃縮海水に含まれるマグネシウム(Mg)に前記二酸化炭素が固定された炭酸マグネシウムを沈殿させる沈殿槽と
前記電解槽において発生した水酸化ナトリウムに、前記沈殿槽において混合される二酸化炭素を同伴させるために、前記沈殿槽へ供給される前の前記水酸化ナトリウムに向けて、空気を送風する送風機とを備える、二酸化炭素固定システム。
【請求項2】
前記電解槽の内部に、陽極側と陰極側とを仕切るように陽イオン交換膜を設け、
前記電解槽では、前記海水の電気分解によって前記陽極側に発生したナトリウムイオン(Na)が、前記陽イオン交換膜を通過して、前記陰極側へ移動し、前記陰極側において発生した水酸化イオン(OH)と結合して、前記水酸化ナトリウムが発生する、請求項1に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項3】
前記濃縮海水を前記沈殿槽に供給する海水濃縮部をさらに備える、請求項1または2に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項4】
前記海水濃縮部は、逆浸透膜を使って海水を濃縮する、請求項3に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項5】
前記海水濃縮部は、塩析装置である、請求項3に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項6】
前記水酸化ナトリウムと混合される二酸化炭素を、前記沈殿槽へ供給する二酸化炭素供給部をさらに備える、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項7】
前記沈殿槽に沈殿した炭酸マグネシウムを回収する沈殿回収部をさらに備える、請求項1乃至のうち何れか1項に記載の二酸化炭素固定システム。
【請求項8】
電解槽において、海水を電気分解して水酸化ナトリウムを発生させる工程と
沈殿槽において、前記水酸化ナトリウムと、濃縮海水と、二酸化炭素とを混合させることによって、前記濃縮海水に含まれるマグネシウムに二酸化炭素が固定された塩基性炭酸マグネシウムを沈殿させる工程と
前記電解槽において発生した水酸化ナトリウムに、前記沈殿槽において混合される二酸化炭素を同伴させるために、前記沈殿槽へ供給される前の前記水酸化ナトリウムに向けて、空気を送風する工程とを含む、二酸化炭素固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、海水電解による二酸化炭素固定システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化による気象災害が頻発し、温室効果ガスであるCOの削減は人類にとって急務である。COの削減に関し、既に種々の方法が提案され、実行されているが、いずれも十分なものとは言えない。
【0003】
例えばCCS(Carbon Capture and Storage)は、火力発電所などで排出されるCOをアミン水溶液で吸収している。しかし、アミン水溶液は加熱されてCOを放出し、放出したCOは利用されるか、地中奥深くで放出して地層に貯留することが検討されている。この方式で貯留できる地層はそう多くはない。また電気化学的にCOを還元して、有価物にして回収しようという研究も進められている。
【0004】
特許文献1では、鉄炭酸塩でCOを固定化する技術も発表されている。この技術はボールミルで鉄スクラップを粉砕してCOと反応させるものだが、工程で使用するエネルギーの大きさが莫大なものとなることが予想される。
【0005】
また特許文献2では、最初からマグネシウムイオンを添加する方法も提案されている。
【0006】
また非特許文献1では、NaOHを用いて、海水から炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)を沈殿させる方式も提案されている。
【0007】
非特許文献2では、電解を利用してMg(OH)の生成を狙ったシミュレーションの研究では、海水淡水化のRO(逆浸透)膜の濃厚排水を電解することで、海水淡水化全体の効率を著しく上げられる見込みが述べられている。
【0008】
一方、非特許文献3および非特許文献4では、海水を直接電解してNaOHを発生させ、COなど排ガスを吸収しようという研究がなされている。
【0009】
COを効率よく捕捉するには、アルカリ性の強い吸収液、もしくは吸収個体が必要であることが知られている。このうち、苛性ソーダ(NaOH)は最も強いアルカリ性の物質として知られている。NaOHは、良く精製された塩(NaCl)と真水を用いて作った塩水の電解で製造される。純度の高いNaOHを得るために純度の良いNaClが使用される。
【0010】
非特許文献5では、隔膜を使用しないと、pHの上昇が止まることが示されている。この原因は共存するマグネシウムによることが考えられている。
【0011】
非特許文献6では、隔膜が存在すれば、水酸化マグネシウムの生成が生じるが、COの捕捉に必要な条件であるpH=9以上のアルカリ性にすることができることが述べられている。
【0012】
以上のように、海水の直接電解で陽イオン交換膜の隔膜を使えばNaOHが生成することが知られている。またNaOHがCOと反応してNaCOができることも知られている。さらに、NaCOとMgClが水中で反応して塩基性炭酸マグネシウムができることも知られている。特に後者は、塩基性炭酸マグネシウムの製造方法として知られている。
【0013】
COの削減に関しては、十分な検討をすることなく実施すると、かえってエネルギーを消費して、その結果、COを放出してしまうというリスクがある。従って、これらの問題を最小にし、かつCCSとしても有効な技術の提供が望まれる。
【0014】
空気中から直接COを回収しようとするのがDAC(Direct Air Capture)であるが、DAC方式では、非特許文献7に開示されているものがある。
【0015】
非特許文献8に示されるように、この方式では、NaOHに吸収させたCOを水酸化Caと反応させ、炭酸Caにして、この炭酸Caを900℃の加熱でCaOにして、これを水に反応させて水酸化Caに戻すというものである。最終的にCOが生成して、この純度が高いということで、コンプレッサーで圧縮して一時的に高圧容器に蓄えることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2010-012392号公報
【文献】特開2019-30840号公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】Jun-Hwan Bang, Yeongsuk Yoo, Lee Seung Woo, Kyungsun Song、Minerals 2017, 7, 207
【文献】P.A.Davies, Q.Yuan and R. de Richter, Water Res. Technol., 2018,4, 839-850
【文献】西田修身、安淑憲、藤田広嗣、原野亘、田代正憲;日本マリンエンジニアリング学会誌,37,(9),728-736, 2002.、海水の電解水による船用排煙SOx、NOx、COxとPMの処理システムの開発
【文献】西田修身、細田茂、藤田広嗣、安淑憲、井原淳、原野亘、広井正男、佐藤正昭、綾威男、田代正憲;日本マリンエンジニアリング学会誌,38,(2),81-86, 2003.、海水電解法を用いた船用機関のCOx後処理システムの開発
【文献】乾貴誌ら、環境技術 Vol.44、No.2,p41、(2015)、電気分解による海水のアルカリ上昇に及ぼす海水成分の影響─海水による湿式スクラバの性能向上に関して─
【文献】緒方英世、日本塩学会誌 第12巻 第2号(1958)p85、海水、かん水中に溶存するマグネシウムおよびカルシウムの直接電解分離に関する研究(第1報)
【文献】Keith, D.W., Holmes, G., St. Angelo, D., Heidel, K., 2018. A process for capturing CO2 from the atmosphere. Joule 2, 1~22.
【文献】M. M. de Jonge, J. Daemen, J. M. Loriaux, Z. J. Steinmann and M. A. Huijbregts, Int. J. Greenhouse Gas Control, 2019, 80, 25~31.
【文献】G. Holmes, D. W. KEITH, Phil. Trans. R. Soc. A (2012) 370, 4380~4403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上説明したように、DACでは、アルカリの手配と、その後の二酸化炭素固定に関する問題が懸念される。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、海水を利用することによって、アルカリの手配と、効率的な二酸化炭素固定との両方を実現する、二酸化炭素固定システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
実施形態の二酸化炭素固定システムは、電解槽と、沈殿槽と、送風機とを備えている。電解槽は、海水を電気分解して水酸化ナトリウム(NaOH)を発生させる。沈殿槽は、電解槽において発生したNaOHと、濃縮海水と、二酸化炭素(CO)とを混合させることによって、濃縮海水に含まれるマグネシウム(Mg)にCOが固定された炭酸マグネシウムを沈殿させる。送風機は、電解槽において発生した水酸化ナトリウムに、沈殿槽において混合される二酸化炭素を同伴させるために、沈殿槽へ供給される前の前記水酸化ナトリウムに向けて、空気を送風する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態の二酸化炭素固定システムの電解槽における反応の流れを示すフローチャートである。
図2B図2Bは、第1の実施形態の二酸化炭素固定システムの沈殿槽における反応の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、第2の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
図4図4は、第3の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
図5図5は、実施例における実験に使用した装置の構成を示す概念図である。
図6図6は、経時的な実験条件を示す表である。
図7図7は、陰極側におけるpHの経時的な変化を示すグラフである。
図8図8は、結晶から得られたIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の各実施形態の二酸化炭素固定システムおよび方法を、図面を参照して説明する。
【0023】
なお、以下の実施形態の説明において、同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
【0025】
二酸化炭素固定システム10は、電解槽20と、沈殿槽30と、海水濃縮装置40と、沈殿回収装置50とを備える。
【0026】
海の水である海水Wは、水を主成分とし、3.5wt%程度の塩分、および微量金属から構成されている。電解槽20は、このような海水Wを電気分解して水酸化ナトリウム(NaOH)を発生させる。
【0027】
そのために、電解槽20には、海水Wを導入するための海水導入部21が設けられ、電解槽20の内部には、陽極22aおよび陰極22bからなる一対の電極が配置されている。さらに、陽極22aが配置された陽極側23aと、陰極22bが配置された陰極側23bとを仕切るように陽イオン交換膜24が設けられている。
【0028】
海水導入部21から電解槽20の内部に導入された海水Wは、電解槽20内に貯えられる。
【0029】
電解槽20には、過剰に導入された過剰海水W’を、電解槽20の外部へ排出するための過剰水排出配管25も設けられている。過剰水排出配管25の設置は任意である。
【0030】
過剰水排出配管25を設けることで、電解槽20に貯液される海水Wの液位を、過剰水排出配管25が設けられた高さ以下に維持できる。
【0031】
陽極22aおよび陰極22bからなる電極は、導電性の物質であればその材質は特に限定されず、例えば、鉄(Fe)、炭素(C)、あるいは合金を適用することができる。
【0032】
電極の下端よりも高い液位まで海水Wを貯液した状態で、電源70から電極に電流を流すと、陽極22a側では、以下の反応式(1)に示す反応が生じる。なお、電源70には、風量や太陽光などで得た再生可能エネルギーを用いることが望ましい。特に、グリッド上で余剰となった再生可能エネルギーを用いることで、COの発生を伴う発電をせずに済む。
【0033】
陽極反応 2Cl→Cl+2e (1)
このように塩素ガスが発生するので、電解槽20の陽極側23aの上部には、逃がし穴26aが設けられており、塩素ガスは、逃がし穴26aから、電解槽20の外部に出る。
【0034】
一方、陰極22b側では、以下の反応式(2)に示す反応が生じる。
【0035】
陰極反応 2Na+2H0+2e→2NaOH+H (2)
このように水素ガスが発生するので、電解槽20の陰極側23bの上部には、逃がし穴26bが設けられており、水素ガスは、逃がし穴26bから、電解槽20の外部に出る。
【0036】
逃がし穴26a、26bから電解槽20の外部に出た塩素ガスおよび水素ガスは、有価物として既存方法および設備で適切に処理することができる。
【0037】
上述した反応式(1)、(2)を考慮すると、電解槽20内部では、以下の反応式(3)、(4)に示す反応が生じる。
【0038】
電解槽内反応 2NaOH+Cl→NaCl+NaClO+H0 (3)
トータル反応 NaCl+2H0→NaClO+H↑ (4)
上記のように、海水Wを電解槽20で単に電解すると、生成した塩素(Cl)とNaOHとが反応して、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)ができる。
【0039】
このままでは発生したNaOHが消費されてしまい、溶液がアルカリ性にならないので、COを補足できなくなってしまう。
【0040】
このようなことが起きないように、電解槽20には、陽イオン交換膜24が設けられている。これによって、溶液がアルカリ性に維持され、陽イオンであるNaのみが、陽イオン交換膜24を通過し、陽極側23aから陰極側23bへ移動でき、陰極側23bにおいて、陰極22bにおいて発生した水酸化イオン(OH)と結合して、陽極と陰極の生成物が混じることなく、NaOHが生成される。
【0041】
電解槽20には、生成したNaOHの水溶液(以下、「NaOH水溶液」と称する)を、沈殿槽30へ移送するための移送配管27も設けられている。このようにして、NaOH水溶液Bは、移送配管27を通って沈殿槽30へ導入される。
【0042】
電解槽20では、海水導入部21から導入する海水Wの量と、移送配管27から排出されるNaOH水溶液Bの量が同一となるように運転することが望ましい。さらに、電解槽20に、図示しないpH計を備え、pH計によって、電解槽20内に貯液されている水溶液のpHが、10以上であることをモニタしながら電解槽20を運転することが望ましい。
【0043】
沈殿槽30には、電解槽20からNaOH水溶液Bが導入されることに加えて、海水濃縮装置40から、濃縮海水Dも導入される。
【0044】
このため、沈殿槽30には、海水濃縮装置40からの濃縮海水Dを導入するための濃縮海水導入管32が接続されている。
【0045】
海水濃縮装置40は、例えば、塩析装置や、RO膜(逆浸透膜)を使ったRO装置(第2の実施形態参照)によって実現することができるが、海水Wを濃縮できる機能を備えていれば、他の任意の装置であってもよい。このような海水濃縮装置40は、沈殿槽30に、COの固定に十分な量のマグネシウム(Mg)を供給するために、例えば、海水を2倍に濃縮した濃縮海水Dを生成する。ちなみに、通常の海水中のマグネシウム濃度は、海水重量の平均3.5%である溶質重量の3.7%程度であり、ナトリウムの30.6%よりもはるかに小さい。なおカルシウムは、溶質重量の1.2%程度である。海水濃縮装置40として、塩析装置を使うことができる。例えば膜などで簡単に水と分離できるならば、アルコール類を添加して塩類を塩析沈殿で濃縮することができる。この場合スラリー状の濃縮塩類を用いて電解することができる。
【0046】
沈殿槽30にはさらに、二酸化炭素供給部31からCOガスTも導入される。このため、沈殿槽30には、二酸化炭素供給部31から供給されるCOガスTを導入するためのCO導入管31aも設けられている。二酸化炭素供給部31からのCOガスTは、CO導入管31aの先端から出る。したがって、CO導入管31aの先端を、NaOH水溶液Bと濃縮海水Dとの混合水に液浸させることによって、COガスTを、混合水内でバブリングさせながら、混合水に供給することができる。
【0047】
二酸化炭素供給部31は、例えば、ゴミ焼却炉や火力発電所から排気されたCOガスTを供給することが好ましい。
【0048】
沈殿槽30にはさらに撹拌器33が設けられているので、沈殿槽30内では、撹拌器33を使って、NaOH水溶液B、濃縮海水D、およびCOガスTを撹拌することができる。沈殿槽30は撹拌器33を備えていても、備えていなくてもよい。
【0049】
このように、沈殿槽30において、NaOH水溶液B、濃縮海水D、およびCOガスTを撹拌すると、以下の反応式(5)に示すように、炭酸ナトリウム(NaCO)が生成し、さらに反応式(6)に示すように、炭酸ナトリウム(NaCO)は、濃縮海水D中のマグネシウムイオンと塩素イオンが結合したMgClと反応して、塩基性炭酸マグネシウム(MgCO)の沈殿が生じ、炭酸ガスが固定される。
【0050】
2NaOH+CO→NaCO+HO (5)
NaCO+MgCl→2NaCl+MgCO↓ (6)
以上のように、沈殿槽30では、NaOH水溶液Bと、濃縮海水Dと、COとの混合により、濃縮海水Dに含まれるマグネシウム(Mg)に、COが固定された炭酸マグネシウム(MgCO)の沈殿Eが生成する。
【0051】
上記(5)および(6)に示す反応は、26%のNaClの飽和塩濃度でも生じるので、NaClの濃度に依存せずに生じる。
【0052】
なお上記(6)では沈殿Eとして、MgCOのように、単純化した炭酸マグネシウムで示しているが、沈殿Eは、実際には以下の式に示すように、水酸化マグネシウムや水の結晶を巻き込んだ、塩基性炭酸マグネシウムが生成すると考えられる。
【0053】
3MgCO・Mg(OH)・3H20(hydromagnesite)
4MgCO・Mg(OH)・4H0(hydromagnesite)
MgCO3・Mg(OH)・3H0(artinite)
4MgCO3・Mg(OH)・5H0(dypingite)
4MgCO3・Mg(OH)・5H0(giorgiosite)
4MgCO3・Mg(OH)・8H
沈殿槽30の底部近傍には、生成した沈殿Eを沈殿回収装置50へ排出するための沈殿排出配管34が設けられており、生成した沈殿Eは、沈殿排出配管34を介して沈殿回収装置50へ排出され、沈殿回収装置50によって回収される。
【0054】
次に、以上のように構成した第1の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの動作例について説明する。
【0055】
図2Aは、第1の実施形態の二酸化炭素固定システムの電解槽における反応の流れを示すフローチャートである。
【0056】
二酸化炭素固定システム10は、海水の直接電解によりNaOH水溶液Bを生成することにより、アルカリ環境を実現し、このアルカリ環境の下で、濃縮海水Dに含まれるMgと、NaCOとの反応によって生成される塩基性炭酸マグネシウムによって、COを安定に固定化する。
【0057】
これを実現するために、先ず、電解槽20に、海水導入部21から、海水Wが導入される(S1)。これによって、電解槽20内に海水Wが貯えられる。海水Wの導入は、断続的でもよいが、ムラのない電解処理のためには、連続的の方が好ましい。電解槽20には、過剰水排出配管25も設けることができる。過剰水排出配管25を設けることで、液位が過剰水排出配管25に達すると、電解槽20内の過剰海水W’は、過剰水排出配管25から電解槽20の外部へ排出されるので、電解槽20に貯液される海水Wの液位は、過剰水排出配管25が設けられた高さ以下に維持することができる。
【0058】
電解槽20の内部には、陽極22aおよび陰極22bからなる一対の電極が配置されている。さらに、陽極22aが配置された陽極側23aと、陰極22bが配置された陰極側23bとを仕切るように陽イオン交換膜24が設けられている。
【0059】
電解槽20に海水Wが貯液された状態で、例えば、風量や太陽光などの再生可能エネルギー電源70から電極22a、22bに電流を供給する(S2)。
【0060】
これによって、陽極22a側では、前述した反応式(1)に従って塩素ガスが発生する(S3)。塩素ガスは、逃がし穴26aから、電解槽20の外部に排出される(S4)。
【0061】
一方、陰極22b側では、前述した反応式(2)に従って水素ガスおよびNaOH水溶液Bが生成する(S5)。水素ガスは、逃がし穴26bから、電解槽20の外部に排出される。
【0062】
つまり、電解槽20内部では、前述した反応式(3)、(4)に示す反応が生じる。ここで、反応式(3)によれば、NaOHが消費され、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が生成するので、アルカリ性の維持の観点からは好ましくはない。
【0063】
これを補うために、電解槽20では、以下に説明するように、陽イオン交換膜24の導入により、NaOHの生成が促進されるので、反応式(3)によるNaOHの消費を補い、電解槽20内の溶液をアルカリ性に維持することができる。
【0064】
すなわち、陽イオン交換膜24を通過できるのは、海水Wに含まれる陽イオンであるNaのみであるので、陽極側23aから陰極側23bへのNaの移動が起こる(S6)。Naは、陰極側23bにおいて、陰極22bにおいて発生した水酸化イオン(OH)と結合して、NaOHが生成する(S7)。これによって、反応式(3)によるNaOHの消費が補われ、電解槽20内の溶液のアルカリ性が維持される。
【0065】
このようにして生成されたNaOH水溶液Bは、移送配管27を通って沈殿槽30へ導入される(S8)。
【0066】
図2Bは、第1の実施形態の二酸化炭素固定システムの沈殿槽における反応の流れを示すフローチャートである。
【0067】
沈殿槽30には、電解槽20からNaOH水溶液Bが、海水濃縮装置40から濃縮海水Dが、二酸化炭素供給部31からCOガスが導入され、撹拌器33によって撹拌されることにより混合が促進される(S11)。
【0068】
これによって、前述した反応式(5)に従って炭酸ナトリウム(NaCO)が生成する(S12)。
【0069】
さらに反応式(6)に従って、炭酸ナトリウム(NaCO)は、濃縮海水D中のマグネシウムイオンと塩素イオンが結合したMgClと反応して、塩基性炭酸マグネシウムの沈殿Eが生じ、炭酸ガスが固定される(S13)。
【0070】
上記(5)および(6)に示す反応は、26%の飽和塩濃度でも生じるので、NaClの濃度に依存せずに生じる。
【0071】
一方、マグネシウム濃度がどれだけ希薄なところから沈殿Eが目視できるか実験した。目視できないということは、沈殿Eがほとんど生じていない、あるいは、生じているにしても有意な量ではないことを意味する。実験の結果、塩化マグネシウム6水塩で2wt%のところまでは目視できた。これはマグネシウム(Mg2+)換算で0.24wt%である。海水中には0.13wt%のMg2+が存在するので、0.24wt%であるマグネシウム濃度は、海水中のマグネシウム濃度の約2倍に相当する。濃縮海水Dの濃度を海水濃度の2倍以上としたのは、このような根拠に基づく。
【0072】
沈殿槽30の底部近傍には、生成した沈殿Eを沈殿回収装置50へ排出するための沈殿排出配管34が設けられており、生成した沈殿Eは、沈殿排出配管34を介して沈殿回収装置50へ排出され、沈殿回収装置50によって回収される(S14)。
【0073】
なお、上記では、説明の容易のために、図2Aおよび図2Bの2図に分けたフローチャートを用い、さらに、各ステップを別個に表しているが、図2Aおよび図2Bに示すすべてのステップは、独立的に別個に行われるのではなく、同時連続的に行われてもよい。図2Aおよび図2Bに記載されたステップ順の通りに進めばよいので、連続しても、例えばステップ同士の間に時間が生じて断続的になってもよい。
【0074】
上述したように、第1の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムによれば、海水の直接電解によりNaOHを生成することにより、NaOH製造時に発生するCOの発生を未然に防ぐことができるとともに、アルカリ環境を実現することができる。
【0075】
さらに、このアルカリ環境の下で、濃縮海水に含まれるMgと、NaCOとの反応によって、塩基性炭酸マグネシウムを生成することができる。塩基性炭酸マグネシウムは、沈殿するので、COを安定に固定化することができることに加えて、湿った状態で放置することで、空気中のCOを固定化して炭酸マグネシウムに変化することもできる。
【0076】
このように、本実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムは、海水の直接電解の適用と、既存の反応の利用とによって、アルカリの手配と、効率的な二酸化炭素固定との両方を、容易に実現することが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
【0078】
図3に例示する第2の実施形態の二酸化炭素固定システム12は、図1に例示する第1の実施形態の二酸化炭素固定システム10における海水濃縮装置40に、複数段の海水淡水化逆浸透膜(RO膜)設備40bが適用された例を示している。
【0079】
複数段の海水淡水化逆浸透膜(RO膜)設備40bは、RO膜を適用した海水淡水化プラントとすることができる。
【0080】
この種の海水淡水化プラントでは、高圧をかけられた海水が、複数段のRO膜を通過する。海水は、RO膜を通過する毎に薄められ、最終的には真水が生成されるが、それと同時に、リジェクト水として濃縮海水Dも生成される。
【0081】
海水淡水化プラントでは、リジェクト水として生成された濃縮海水Dをそのまま海に流すのは環境上好ましくないとされている。
【0082】
そこで、本実施形態では、海水淡水化プラントでリジェクト水として生成された濃縮海水Dを活用して、沈殿槽30へ導入する。濃縮海水Dは、第1の実施形態で説明したように、マグネシウム濃度が海水W中の場合の2倍以上になるように、海水Wを2倍以上に濃縮したものとする。したがって、海水淡水化逆浸透膜(RO膜)設備40bの段数は、海水Wを2倍以上に濃縮できる段数であればよい。
【0083】
このようにしても、マグネシウムが沈殿槽30に供給されるようになるので、沈殿槽30では、炭酸マグネシウムが沈殿する。
【0084】
したがって、第2の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムでもまた、第1の実施形態と同様に、海水の直接電解の適用と、既存の反応の利用とによって、アルカリの手配と、効率的な二酸化炭素固定との両方を、容易に実現することが可能となる。
【0085】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムの構成例を示す概念図である。
【0086】
図4に例示する第3の実施形態の二酸化炭素固定システム13は、図1に例示する第1の実施形態の二酸化炭素固定システム10における電解槽20と沈殿槽30との間に、エアコンタクター60を設ける一方、二酸化炭素供給部31およびCO導入管31aを削除した構成としている。
【0087】
エアコンタクター60は、導入配管61と、ポンプ62と、円筒部63と、送風機64とを備える。
【0088】
導入配管61は、移送配管27と、直立型の円筒部63の上端との間を接続する配管である。
【0089】
導入配管61にはポンプ62が設けられている。
【0090】
ポンプ62は、移送配管27から排出されたNaOH水溶液Bを、導入配管61内を上昇させ、円筒部63の上端から、円筒部63の内部へ導入する。
【0091】
円筒部63の内筒表面は、円筒の長尺方向(すなわち、図中上下方向)に沿って波打つような波板形状となっており、円筒部63の上端から円筒内部へ導入されたNaOH水溶液Bは、波板63aの表面を辿りながら、自重によって、円筒部63内部をゆっくりと降下する。円筒部63の表面には、多くの貫通穴65が開けられている。
【0092】
送風機64は、円筒部63の近傍に配置され、円筒部63の内部を波板63aの表面を辿りながらゆっくりと降下するNaOH水溶液Bに対して、空気中に400ppmの割合で存在するCOを効率的に直接捕捉させるために、円筒部63の全高にわたって、円筒部63に向けて空気を送風できるほうが好ましい。したがって、送風機64は、円筒部63よりも高い有効高さを有するほうが好ましく、円筒部63と同様に直立型であることが好ましい。
【0093】
円筒部63の表面には、多くの貫通穴65が設けられているので、送風機64によって送風された空気は、これら貫通穴65から円筒部63の内側に入り込み、円筒部63の内側を降下するNaOH水溶液Bと接触する。円筒部63の内側では、NaOH水溶液Bは、波板63aの表面を辿りながら降下するので、波板63aによってNaOH水溶液Bの表面積率が高められ、空気との接触効率が向上する。このように、波板63aは、NaOH水溶液Bをゆっくりと降下させる効果に加えて、NaOH水溶液Bの表面積率を高める効果もある。これら2つの効果によって、円筒部63では、NaOH水溶液Bと空気との接触効率が高められる。なお、円筒部63の構成としては、波板63aを備えた構成には限定されず、NaOH水溶液Bと空気との接触効率を高めることができるのであれば、他の構成でも構わない。
【0094】
エアコンタクターではNaOH水溶液Bを降下させられる部材を備えていればよいので、円筒部や波型に限らない。鎖樋のような部材にNaOH水溶液Bを伝わらせ、直接送風機から送られた風があたるような形状でもよい。
【0095】
ポンプ62および送風機64の電源にもまた、再生可能エネルギー電源70を利用することが好ましい。
【0096】
前述したように、NaOH水溶液Bは、円筒部63において、空気と効率よく接触するので、COを十分同伴した状態で、沈殿槽30へ移行する。そして、沈殿槽30では、前述した(5)式に示す化学反応に従って炭酸ナトリウム水溶液が生成され、さらに前述した(6)に示す化学反応が生じ、COが固定化される。
【0097】
二酸化炭素固定システム13では、このように、COが同伴されたNaOH水溶液Bが沈殿槽30へ供給されるので、二酸化炭素固定システム10,12において沈殿槽30へCOを供給するために備えられていた二酸化炭素供給部31およびCO導入管31aは不要となる。

なお、海水濃縮装置40としては、前述したように、海水Wを濃縮できる機能を備えていれば特定の装置に限定されず、例えば、塩析装置や、図3に示す複数段の海水淡水化逆浸透膜(RO膜)設備40bを適用することもできる。
【0098】
また、図4において、電解槽20には、他の実施形態と同様に、過剰に導入された海水Wを、電解槽20の外部へ排出するための過剰水排出配管25も設けられているので、ポンプ62によって回収されるNaOH水溶液Bの量よりも多くの海水Wを、海水導入部21から電解槽20に導入することによって、電解槽20内の海水Wの水位を一定に維持し、円筒部63へNaOH水溶液Bを安定的に供給することができる。
【0099】
また、図4に例示する構成に対する変形例として、電解槽20に過剰水排出配管25を設けず、代わりに図示しない水位計を電解槽20内に設置し、水位計によって電解槽20内の水位が一定であることを確認しながら、海水導入部21からの海水Wの供給量と、ポンプ62の吐出量とを制御するようにしてもよい。
【0100】
以上説明したように、第3の実施形態の二酸化炭素固定方法が適用された二酸化炭素固定システムでもまた、第1の実施形態と同様に、海水の直接電解の適用と、既存の反応の利用とによって、アルカリの手配と、効率的な二酸化炭素固定との両方を、容易に実現することが可能となる。
【実施例
【0101】
第1乃至第3の実施形態で説明した効果を確認するために、第1乃至第3の実施形態で説明した原理を適用した簡易的な装置を使って実施した実験の結果を、実施例として以下に示す。
【0102】
図5は、本実施例における実験に使用した装置の構成を示す概念図である。
【0103】
図5でもまた、第1乃至第3の実施形態の何れかで説明されたものと同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0104】
まず、16gの食塩と、50gの塩化マグネシウム6水塩を、200gの水に溶解し、電解液モデルとした。この溶液を、陽イオン交換膜24で分離されたH型セル80の左側セル81aおよび右側セル81bにそれぞれ入れた。
【0105】
次に、左側セル81aおよび右側セル81bにそれぞれ炭素棒を、溶液に浸漬するように入れた。
【0106】
左側セル81aの炭素棒が陽極22aとなり、右側セル81bの炭素棒が陰極22bとなるように、両炭素棒に電源71を接続した。そして、電源71から電力を供給することによって、左側セル81aは、陽極側23aとなり、右側セル81bは、陰極側23bとなる。
【0107】
図6は、経時的な実験条件を示す表である。
【0108】
図6に示すように、電源71からは、64mAに固定された電流を供給し、電圧がほぼ一定であることを確認しながら電解を行い、陽極側23aおよび陰極側23bの両方におけるpHを測定した。なお、電解によって、陰極側23bから塩素が発生するので、実験は、H型セル80をドラフト内に配置して実施した。
【0109】
図7は、陰極側におけるpHの経時的な変化を示すグラフである。
【0110】
実験開始から36分後に、陽極側23aがpH=3付近の酸性になり、陰極側23bがpH=10付近のアルカリ性になったことを確認して、陰極側23bの溶液内にCO導入管31aの先端を沈め、二酸化炭素供給部31からCO導入管31a介して、陰極側23bの溶液にCOガスTをゆっくりと供給することによって、COガスTによるバブルを開始した。バブル速度が速いと、陰極側23bのpHが酸性になるので、陰極側23bのpHが9以下にならないように、ゆっくりとした速度でバブルを行った。
【0111】
その後、実験開始から200分を過ぎたところで、電源71からの電力供給を停止し、電解を終了した。そして、陰極22bである炭素棒に付着した結晶を掻き落とし、乾燥後、結晶の重量およびIRスペクトルを測定した。この重量測定で得られた重量は155mgであった。
【0112】
図8は、結晶から得られたIRスペクトルを示す図である。
【0113】
図8より、この結晶は、IRスペクトルで1631cm-1から1438cm-1の強いピークを有しており、塩基性炭酸マグネシウムが生成されていることが確認された。
【0114】
このように、第1乃至第3の実施形態で説明した原理によって、電解によりアルカリ環境を実現し、このアルカリ環境の下で、COを固定化できる塩基性炭酸マグネシウムを生成できることを実証することができた。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
10、12、13・・二酸化炭素固定システム、20・・電解槽、21・・海水導入部、22a・・陽極、22b・・陰極、23a・・陽極側、23b・・陰極側、24・・陽イオン交換膜、25・・過剰水排出配管、26a、26b・・逃がし穴、27・・移送配管、30・・沈殿槽、31・・二酸化炭素供給部、31a・・CO導入管、32・・濃縮海水導入管、33・・撹拌器、34・・沈殿排出配管、40・・海水濃縮装置、50・・沈殿回収装置、60・・エアコンタクター、61・・導入配管、62・・ポンプ、63・・円筒部、63a・・波板、64・・送風機、65・・・貫通穴、70・・再生可能エネルギー電源、71・・電源、80・・H型セル、81a・・左側セル、81b・・右側セル、B・・NaOH水溶液、D・・濃縮海水、E・・沈殿、T・・COガス、W・・海水、W’・・過剰海水
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8