(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】胃底部組織のインビトロでの製造のための方法及び当該方法と関連した組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240401BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N15/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021169192
(22)【出願日】2021-10-15
(62)【分割の表示】P 2018550724の分割
【原出願日】2017-05-05
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】マクラッケン、カイル
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/183920(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/159356(WO,A1)
【文献】McCracken KW, Wells JM et al.,Modelling human development and disease in pluripotent stem-cell-derived gastric organoids,Nature,516(7531),2014年,p.400-404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/071
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胃底部オルガノイド(hFGO)における傍細胞の分化を誘導するインビトロ方法であって、前記hFGOにおけるATP4A、ATP4B、および/またはGIF発現のアップレギュレーションを誘導するために十分
な期間前記hFGOをMEK阻害因子に接触させる工程を含み、前
記hFGOは、
a)哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞を、wntシグナル伝達経路活性化因子、FGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸
と、前記胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分
な期間接触させる工程と、
b)前記3次元後部前腸スフェロイドを、基底膜マトリックス中で成長因子、wntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸ととも
に、胃底部系譜を誘導し、それによって前記hFGOを製造するのに十分
な期間懸濁させる工程と、
c)工程bの前記hFGOをwntシグナル伝達経路活性化因子及びEGFシグナル伝達経路活性化因子とともに11日間±24時間であ
る期間培養する工程と、
d)工程cの前記hFGOを前記wntシグナル伝達経路活性化因子、前記EGFシグナル伝達経路活性化因子、及びFGF10とともに10日間±24時間であ
る期間培養する工程と、
を含む方法にしたがって調整され、
前記MEK阻害因子がPD0325901(PD03)であり、
前記wntシグナル伝達経路活性化因子は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16、GSK3-ベータ阻害薬、及びCHIR99021から選択され、
前記FGFシグナル伝達経路活性化因子は、FGF2、FGF4、FGF5、及びFGF8であり、
前記BMPシグナル伝達経路阻害因子は、ノギン、ドルソモルフィン、LDN189、及びDMH-1から選択され、及び
前記EGFシグナル伝達経路活性化因子は、EGFである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記
hFGOにおけるATP4A、ATP4B、および/またはGIF発現のアップレギュレーションを誘導するために十分な期間は2日間±24時間である、方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、前記
胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分な期間は3日間±24時間であり、前記レチノイン酸は、前記
胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分な期間±24時間の3日目に添加される、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において、
胃底部系譜を誘導し、それによって前記hFGOを製造するのに十分な期間は3日間±24時間である、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法において
、hFGOsにおける傍細胞の分化の誘導が、ヒスタミンとの処理に応じて前記hFGOsの管腔のpHが低下し、ファモチジンまたはオメプラゾールで前処理した場合に前記低下が抑制されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記hFGOsにおける傍細胞の分化の誘導が、前記hFGOにおける傍細胞の密集した腺の存在によって特徴づけられる、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記hFGOsを前記MEK阻害因子と接触させる工程が、前記hFGOsにおける主細胞または内分泌細胞の分化に影響を与えない、方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、前記hFGOsをBMP4シグナル伝達の活性化因子と接触させる工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項
8記載の方法において、前記BMP4シグナル伝達の活性化因子がBMP4である、方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法において、前記hFGOが胚体内胚葉に由来する、方法。
【請求項11】
請求項
10記載の方法において、前記胚体内胚葉が、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞から選択される前駆細胞に由来する、方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法によって誘導されるhFGO。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年5月5日出願の米国仮特許出願第62/332,194号に対する優先権及び利益を主張し、その内容がすべて参照により組み込まれる。
【0002】
政府支援条項
本発明は、All 16491及びDK092456の下での政府の支援を用いて行われた。当該政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
胃疾患が地球規模で蔓延しているにもかかわらず、ヒトの胃の胃底部上皮を研究するための適切なモデルは少数である。ヒト胃底部型胃オルガノイド(hFGO)の開発は、ヒトの胃の生理学、病理生理学、及び薬剤開発の分子レベルの基礎を研究するための新規のかつ強力なモデルシステムであろう。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞を特定の組織(複数可)または器官(複数可)へと、定方向分化を通じて転換するための方法に関する。特に、本開示は、分化した胚体内胚葉から形成される胃底部組織及び/またはオルガノイドの形成に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
当業者は、以下に説明する図面が、単に説明目的のためにのみあることを理解するであろう。図面は、いかなる方法においても本教示の範囲を限定するよう企図するものではない。
【0006】
【
図1】Wnt/βカテニンシグナル伝達は、マウスにおける胚性胃底部の特異性に必要である。a:Pdx1及びSox2を前庭(a)において発現させたのに対し、Pdx1は、18.5日胚でAtp4b発現傍細胞によって識別されるように、胃底部(f)に存在しなかった。b:Axin2:LacZレポーター胚由来の10.5日胚の前腸のX-gal染色は、Wnt活性が、胃の前部に制限されているが、後部胃からは除外されていることを示した。c:胃上皮におけるβカテニンの欠失は、胃の胃底部領域へのPdx1の前部増殖を生じた。d:18.5日のShh
Cre/+βカテニン
fl/fl(cKO)胚において、Pdx1を胃のいたるところに発現させたが、例外は、壁細胞含有上皮のいくらかの残余のパッチにおいてであった。挿絵1a~1c及び2a~2cはそれぞれ、対照の胃及びcKO胃における箱で囲まれた領域を示す。e、cKO胃において、Ctnnb1は、モザイク状欠失を呈し、壁細胞は、Ctnnb1の十分な上皮において分化しかしなかった。目盛尺:250μm(a)、200μm(c)、及び500μm(d及びe)。
【
図2】βカテニンの活性化は、ヒト前腸前駆体スフェロイドからの胃底部の発達を促進する。a:胃底部及び前庭の両方のhGOのための分化プロトコルの図式化した図。b、c:9日後に、CHIR処理したオルガノイドは、PDX1の減少、IRX2、IRX3及びIRX5の増加、ならびに胃マーカーSOX2またはGATA4の変化がないことを呈した。*:p<0.05、両側スチューデントt検定、n=3の生物学的複製物、データは4回の独立した実験を代表。d:hFGOは、hAGOに匹敵して生育しただけでなく、腺出芽形態形成(白色の矢頭)も呈した。e:両方のhGOは、CDH1、KRT8、及びCTNNB1ならびに胃マーカーGATA4及びCLDN18を発現する上皮を含有していた。hAGOは、ほぼ遍在的なPDX1発現を呈したのに対し、hFGOは、呈しなかった。目盛尺:50μm(c)、500μm(d)及び100μm(e)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図3】hGOにおける粘膜及び内分泌細胞系譜の分化。a:胃の胃底部及び前庭の腺において認められた共有されかつ異なる系譜の模式図。b:前庭及び胃底部のhGOは両方とも、MUC5AC陽性表面粘膜細胞及びMUC6陽性粘膜頸細胞を含有した。c、d:hFGOは、傍内分泌マーカーSYPを発現する内分泌細胞を含有した。異なるホルモン細胞タイプをhFGOにおいて識別し、これには、GHRL発現内分泌細胞、SST発現内分泌細胞、及びヒスタミン発現内分泌細胞を含んでいた。前庭特異的G細胞マーカーであるGASTは、hAGOでは発現したが、hFGOでは発現せず、逆に、GHRLは、hFGOにおいて多量であった。**:p<0.01、両側スチューデントt検定、hAGO及びhFGOにおいてそれぞれn=8及び24の生物学的複製物、データは6回の独立した実験を代表。e:hAGOは、プロ内分泌転写因子NEUROG3(+dox)の発現に応じて、前庭特異的GAST発現内分泌細胞を生じる能力があったが、hFGOはそうではなかった。*:p<0.01、両側スチューデントt検定、n=4の生物学的複製物、データは3回の独立した実験を代表。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図4】hFGOにおける主細胞の形成。a:hFGOは、MIST1及びペプシノーゲンC(PGC)の両方に陽性の細胞を有していた。b:尖端のPGC染色を有する一群の細胞を有する腺を示すパネル(a)における箱で囲まれた領域の高解像度。c:hFGOは、hAGOと比較して、主細胞マーカーPGA5(1000倍)、PGC(100倍)、及びMIST1(10倍超)の有意に高い発現を有していた。**:p<0.05、両側スチューデントt検定。n=3の生物学的複製物、データは4回の独立した実験を代表。d:主細胞を示す密なチモーゲン果粒を含有するhFGO細胞の透過電子顕微鏡写真。e:MEK阻害因子(PD03)の有無の下でのhAGOと比較したhFGOのペプシノーゲンタンパク質含有量。**:hAGOと比較してp<0.0001、両側スチューデントt検定、hAGO、対照hFGO及びhFGO(PD03非含有)においてそれぞれ、n=8、12、及び11の生物学的複製物。目盛尺:200μm(a)、25μm(b)、及び10μm(d)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図5】hFGOにおける機能的傍細胞の分化を駆動する経路の識別。a:傍細胞遺伝子ATP4、ATP4B、及びGIFの発現は、ベースラインで卵胞と比較して、hFGOの10~100倍の増加を呈したが、PD03/BMP4の2日間のパルスへhFGOを曝露することによって劇的に亢進した。**:hAGOと比較してp<0.05、#:対照hFGOと比較してp<0.05、両側スチューデントt検定、n=4の生物学的複製物、データは15回の独立した実験を代表。b:PD03/BMP4を用いた処理後のATP4B発現傍細胞の刺激された分化。c:hFGO由来の傍細胞は、インビボでの成熟マウス胃底部上皮において認められる傍細胞と類似していた。d:傍細胞を想起させる小管構造を有するhFGO細胞の透過型電子顕微鏡写真。e:ヒト胃底部腺の上皮及びhFGO上皮を、表面上皮におけるMUC5AC発現細胞、及び腺性単位におけるATP4B発現傍細胞へと組織化した。f;SNARF-5Fの管腔注射によるヒスタミンに応じたオルガノイドにおける管腔pHの分析。hFGOにおける管腔pHは迅速に低下したのに対し、hAGOは応答を呈しなかった。オルガノイドをファモチジンまたはオメプラゾールのいずれかで前処理することによって、酸性化を遮断した。hFGO(ヒスタミン)、hFGO(ヒスタミン及びファモチジン)、hFGO(ヒスタミン及びオメプラゾール)、及びhAGO(ヒスタミン)のそれぞれにおけるn=9、9、7、及び4の生物学的複製物、データは3回の独立した実験を代表。g:単離したマウス胃腺及びhFGOにおける小管型パターンでのヒスタミン誘導性アクリジンオレンジ(AO)色素の60分後の蓄積。目盛尺:100μm(b)、10μm(c)、10μm(d)、100μm(e;ヒト胃底部)、20μm(e;hFGO)、及び10μm(g)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図6】インビボで発達中の胃において規定中の分子ドメイン。a:マウス胚の胃(14.5日胚)におけるSox2、Pdx1、及びGata4の分析は、胃底部(f)がSox2+Gata4+Pdx1-であるのに対し、前庭(a)がSox2+Gata4+Pdx1+であることを示した。前胃(fs)は、Sox2を発現したが、Gata4もPdx1も発現しなかった。b:定量的PCRによって分析した14.5日胚のマウス胃の摘出した領域を示す明視野立体顕微鏡写真。fs:前胃、f:胃底部、a;前庭、d:十二指腸、c:bにおける摘出された領域を、既知の局所的に発現したマーカー(Sox2、P63、Gata4、Pdx1、及びCdx2)についての定量的PCRによって分析して、微量摘出の正確性を確証した。摘出した14.5日胚の胃の領域の定量的PCR分析は、推定上の胃底部マーカーIrx1、Irx2、Irx3、Irx5、及びPitx1は、前庭と比較して胃底部において豊富であることを示した。1箇所の摘出領域当たりのn=4の生物学的複製物。目盛尺:500μm。エラーバーは、標準偏差を表す。
【
図7】βカテニンcKO胚の分析。a:12.4日胚及び14.5日胚までに、異所性Pdx1発現をcKO胚の背側胃上皮のいたるところ及び最も近位の胃上皮で観察した。b:14.5日胚のcKO前腸の摘出した領域の定量的PCR分析(
図6のb)は、胃底部及び前胃部におけるPdx1の有意な上方調節を示した。逆に、Irx2、Irx3、及びIrx5は、これらの近位の領域において顕著に減少した。*:p<0.05、両側スチューデントt検定、各遺伝子型について摘出した領域につきn=3の生物学的複製物。c:18.5日胚から摘出した内臓の立体顕微鏡写真は、cKO胚が既に報告した通り肺の非形成を呈することを実証した。消化管、特に胃は、大きさが劇的に減少した。d:18.5日胚での免疫蛍光染色は、Ctnnb1のモザイク欠失パターンを明らかにした。箱で囲まれた領域を
図1に示す。e:18.5日胚のcKO胃において、Ctnnb1染色を欠失する組換え腺は、傍細胞を含有していなかったのに対し、頑強な傍細胞の分化は、Ctnnb1陽性腺において観察された。目盛尺:200μm(a)、500μm(d)、及び50μm(e)。エラーバーは、標準偏差を表す。
【
図8】hGOにおける胃底部の運命の適切な誘導及びプロトコルの効率。a:発明者は、CHIR処理が胃底部の識別を確立するのにどれだけ長く必要であるかを研究した。34日後までの対照成長培地中でのオルガノイドの簡潔なCHIR処理(6~9日間)及びその後の成長は結果的に、前庭マーカーPDX1を発現する胃底部オルガノイドを生じ、短期間のCHIR処理が胃底部の運命を安定させないことを示唆した。次に、発明者は、CHIRへのより長い曝露が胃底部の運命を保持するのに必要であるかどうかを検査し、少なくとも29日後までの連続的な処理のみが前庭マーカーPDX1の少量の発現を維持することができることを発見した。*:対照前庭hGOと比較してp<0.05、両側スチューデントt検定。n=3の生物学的複製物、データは2回の独立した実験を代表。b、c:プロトコルの経過にわたって、PDX1は、CHIR処理したオルガノイドにおいて低いままであったのに対し、IRX5発現は、持続的に上昇した。*:p<0.05、両側スチューデントt検定、時点あたりn=3の生物学的複製物。d:6日胚の後部前腸スフェロイドから初期胃オルガノイド(20日胚)への転換は、hAGOプロトコル及びhFGOプロトコルの両方において80%超ほど効率的である。e:20日胚で、hFGO上皮は、約90%のGATA4+/SOX2+/PDX1-であるのに対し、hAGO上皮は、約90%のGATA4+/SOX2+/PDX1+である。**:p<0.001、両側スチューデントt検定、実験あたりn=4の生物学的複製物であって、2回の独立した実験が示されている。目盛尺:100μm(c)及び200μm(d)。
【
図9】前腸前駆体から小腸の運命を誘導するためのWnt/βカテニン活性化のBMP依存性。a:小腸特異的転写因子CDX2は、9日後も20日後もCHIR処理したhGOにおいて有意に誘導されなかった。b:ヒト小腸オルガノイド(hIO)と比較した場合、胃底部hGOも前庭hGOも、MUC2、CCK、及びSCTを含む、小腸細胞タイプと関連した遺伝子を発現しなかった。*:hIOと比較してp<0.05、両側スチューデントt検定。n=3の生物学的複製物。c:前後の運命は、WNT及びBMPの活性によって協調して制御されている。BMP阻害因子ノギンの存在下で、Wnt/βカテニン経路活性にもかかわらず、オルガノイドはすべて、前腸を維持した(SOX2+)が、BMP4の存在下では、オルガノイドはすべて、後側化した(CDX2+)。BMP阻害状態におけるWnt(CHIR)の活性化は結果的に、胃底部パターンを生じた(SOX2+、PDX1-、CDX2-)のに対し、WNT(CHIR)の活性化及びBMP4の添加は結果的に、小腸の運命を生じた(CDX2+)。*:類似のノギン処理条件と比較してp<0.05、両側スチューデントt検定。n=3の生物学的複製物。d:ヒト組織の免疫蛍光染色は、CLDN18が小腸では認められない胃特異的上皮マーカーであることを明らかにした。目盛尺:200μm。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【
図10】hFGOは、関連する間充織層によって支持される組織化した腺を含有する。a:透過電子顕微鏡写真は、hFGO腺が、狭小尖端膜とともに組織化した構造を呈することを実証した。b:hFGO及びhAGOの両方は、支持層であるFOXF1+/VIM+未分化線維芽細胞を含有していた。目盛尺:5μm(a)及び100μm(b)。
【
図11】ヒト胃オルガノイドにおける局所特異的細胞分化。a:前庭及び胃底部hGOは、粘膜細胞マーカーMUC5AC及びMUC6のかなりの発現を呈した。b:透過電子顕微鏡写真において示されるように、hFGOは、分化した主細胞への前駆体である粘膜頸細胞と一致した果粒パターンを呈する多量の細胞を含有していた。c:NEUROG3欠乏性hESC株に由来するhGOにおけるNEUROG3の外来性発現は、SYP陽性内分泌細胞の頑強な分化を誘導した。hAGO及びhFGOの両方が、GHRL発現内分泌細胞及びSST発現内分泌細胞を形成したが、GAST+ G細胞の特異性は、hAGOにおいてのみ観察された。d:hGO及びヒト胃生検組織における細胞系譜マーカーの発現比較。定量的PCR分析は、hGOがいくつかの系譜マーカー(MUC5AC、ATP4B)のかなりの発現レベルを呈する一方で、他の遺伝子が、完全に分化した成体ヒト胃において認められるよりも非常に低レベルで発現する(ATP4A、PGA5、及びPGC)ことを実証した。目盛尺:5μm(b)及び100μm(c)。エラーバーは、標準偏差(a)及び平均値の標準誤差(b)を表す。
【
図12】マウス主細胞発生の分析。a:後期胚期と同じくらい早く機能的マーカー(Atp4b)を発現する傍細胞とは異なり、主細胞遺伝子産物は、発生のかなり後期まで検出することはできなかった。胚(18.5日胚)及び若齢個体(P12)の胃において、Gif及びPgcは、まだ発現しておらず、主細胞が、胃上皮における他の系譜よりも発生上非常に遅く成熟することを示した。b:Pgcがないにもかかわらず、P12マウスの胃は、主細胞特異的マーカーである核MiST1を発現する多量の腺細胞を含有していた。したがって、主細胞は、実際により早期に特異化するが、終末分化マーカーの頑強な発現を発生させるために数週間かかった。目盛尺:100μm(a)及び200μm(b)。
【
図13】胃底部hGOにおける傍細胞の分化を促進する経路のためのスクリーニング。a:傍細胞の分化を誘導することのできる成長因子/小分子について検査するために、示されたアゴニストまたはアンタゴニストへhFGOを2日間(30~32)曝露した後、34日後に分析した。異なる経路のスクリーニング実験において、PD03を用いたMEK阻害のみが、ATP4A/Bの発現を頑強に誘導することが発見された。b:培地からのEGFの減少または除去は、MEK阻害の効果を再現するのに十分ではなかった。c:傍細胞発生を誘導するPD03/BMP4の能力は、前庭hGOがPD03/BMP4に応じて胃底部マーカーを発現しなかったので、胃底部hGOに限定されていた。d:PD03/BMP4への曝露は、胃底部hGOにおけるATP4A及びATP4Bの発現を迅速に高めた。e:PD03/BMP4を用いた傍細胞発生の誘導は、主細胞(PGA5及びPGC)及び内分泌細胞(CHGA)の分化に有意に影響しなかった。f:hFGO分化プロトコルの各期における操作は、いかなる単一のステップの除去もATP4A/B発現の喪失をもたらしたので、頑強な傍細胞分化に必要であった。エラーバーは、標準偏差(a~c)及び平均値の標準誤差(d~f)を表す。
【
図14】胃オルガノイドにおける生でのインビトロpHモニタリング。a:色素SNAFR5Fは、5~8のpH範囲にわたって応答性を呈し、このことは、傍細胞仲介性酸分泌に応じた生理学的変化を検出するのに十分適していた。b:ヒスタミン添加の前(黒丸)及び60分後(白丸)に記録した培地及び管腔のpH測定。前庭hGOは、ヒスタミンに対して応答しなかったのに対し、胃底部hGOは、ヒスタミンに応答して管腔pHを低下させた。ファモチジンまたはオメプラゾールのいずれかを用いたオルガノイドの前処理によって、酸性化を阻害した。さらに、オメプラゾールは、ヒスタミン曝露の前に胃底部オルガノイドのpHを上昇させるのに十分であり、このことは、胃底部オルガノイドにおけるベースラインの酸分泌を示唆していた。培地のpHは、いかなるオルガノイドも変化させなかった。***:ヒスタミン前と比較してp<0.001、$$$:ヒスタミンなしでの管腔pHと比較してp<0.001、###:ヒスタミンありでの管腔pHと比較してp<0.001、両側スチューデントt検定。c:hFGOは、腺の管腔を裏打ちする細胞のほぼすべてにおいてアクリジンオレンジ(AO)が蓄積した傍細胞の密な腺を含有していた。d:AO蓄積は、hFGOの傍細胞における小管型パターンで観察された。目盛尺:10μm。エラーバーは、標準偏差を表す。
【
図15】ヒト胃オルガノイドの連続継代。a:hGOにおける胃幹細胞の存在を判定するための実験の概略図。b:EGFのみを含有する培地中で断片を生育させたとき、新たなオルガノイドを形成するよう生育も増殖もしなかった。しかしながら、培地へのCHIR及びFGF10の添加は、新たに形成されたオルガノイドへの個々の断片の生育を支持するのに十分であった。c:2回の継代後、hFGOは、PGC、MUC6、MUC5AC、及びGHRLを含む、胃表現型と一致する遺伝子をなおも発現した。胃の同一性を維持しながら連続継代を受けるこの能力は、hFGOが、成体胃幹細胞と類似の特性を有する細胞を含有するという結論を支持している。d:継代したhFGOは、いくつかの分化した胃細胞タイプと関係するマーカーを発現したが、ATP4Bなどの傍細胞と関係する遺伝子を発現しなかった。さらに、傍細胞の分化は、継代前ではMEK阻害を通じて誘導することができたのに、MEK阻害を通じて誘導することはできなかった。エラーバーは、標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別段の記載がない限り、用語は、当業者による従来の使用により理解されるものとする。
【0008】
本明細書で使用する場合、「胃底部組織」という用語は、酸産生傍細胞及びプロテアーゼ産生主細胞を含むがこれらに限定されない胃底部細胞タイプを含有する体において認められる胃上皮の胃底部タイプを意味する。
【0009】
本明細書で使用する場合、「胚体内胚葉(DE)細胞」という用語は、原腸形成の過程によって生じる3つの主要な胚葉のうちの1つを意味する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「wntシグナル伝達経路」という用語は、wnt/ベータカテニン経路を意味しており、ベータカテニンタンパク質を通じて作用する、Wntリガンドと縮れた(frizzled)細胞表面の受容体とによって仲介されるシグナル伝達経路である。
【0011】
本明細書で使用する場合、「wnt経路」などの経路に関する「活性化因子」という用語は、Wnt/ベータカテニン標的が増加するよう、Wnt/ベータカテニン経路を活性化する物質を意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「FGFシグナル伝達経路活性化因子」という用語は、FGF標的が増加するよう、FGF経路を活性化する物質を意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「BMPシグナル伝達経路阻害因子」という用語は、すなわち、BMP経路に干渉してBMP標的を減少させる物質である。
【0014】
本明細書で使用する場合、「成長因子」という用語は、成長、増殖、形態形成または分化を含むがこれらに限定されない細胞過程を刺激することのできる物質を意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「胃底部系譜」は、体の胃における胃底部上皮において認められる細胞タイプを意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「SOX2+GATA+PDX1上皮」という用語は、列挙したタンパク質を発現する上皮を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、マーカーの「安定した発現」という用語は、成長環境の変更の際に変化しない発現を意味する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「全能性幹細胞(全能幹細胞としても知られる)」という用語は、胚細胞タイプ及び胚体外細胞タイプへと分化することのできる幹細胞である。このような細胞は、完全な、生存可能な生体を構成することができる。これらの細胞は、卵と精子細胞との融合から生じる。受精卵の最初の数回の分裂によって生じる細胞も全能性である。
【0019】
本明細書で使用する場合、PS細胞としても一般に知られる「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、ほぼすべての細胞、すなわち、内胚葉(胃内部裏打ち、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、生殖器)、及び外胚葉(表皮組織及び神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかに由来する細胞へと分化することのできるいかなる細胞も包含する。PSCは、胚(胚性生殖細胞を含む)に由来する、またはある特定の遺伝子の発現を強制することによって成体細胞などの非多能性細胞の誘導を通じて得られた、全能性細胞の子孫であり得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、iPS細胞としても通常略記される「人工多能性幹細胞(iPSC)」は、ある特定の遺伝子の「強制的な」発現を誘導することによって、成体細胞など、通常は非多能性である細胞から人工的に得られるタイプの多能性幹細胞を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「前駆細胞」という用語は、1つ以上の前駆細胞が、本明細書に説明する方法を通じてそれ自体を新たにするまたは1つ以上の特化した細胞タイプへと分化する能力を獲得する、当該方法において使用することのできる何らかの細胞を包含する。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、多能性であり、または多能性となる能力を有する。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば、成長因子)処理へ供される。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、全能性幹細胞、多能性幹細胞(人工または非人工)、多分化能幹細胞、及び単分化能幹細胞であり得る。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、胚、幼児、青少年、または成人に由来し得る。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、多能性が遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処理を介して与えられるような処理へ供された体細胞であり得る。
【0022】
発生生物学において、細胞分化は、あまり特化していない細胞がより特化した細胞タイプとなる過程である。本明細書で使用する場合、「定方向分化」という用語は、あまり特化していない細胞が、特定の特化した標的細胞タイプとなる過程を説明する。特化した標的細胞タイプの特異性は、始原細胞の運命を定義または変更するために使用することのできる何らかの適用可能な方法によって決めることができる。例示的な方法は、遺伝子操作、化学処理、タンパク質処理、及び核酸処理を含むがこれらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用する場合、「細胞構成要素」という用語は、個々の遺伝子、タンパク質、mRNA発現遺伝子、及び/または例えば、当業者によって生物学的実験において(例えば、マイクロアレイまたは免疫組織化学によって)典型的に測定される、タンパク質修飾度(例えば、リン酸化)などの何らかの他の種々の細胞の成分またはタンパク質の活性である。生存系、一般的なヒト疾患、ならびに遺伝子の発見及び構造決定に関する生化学的過程の複雑なネットワークと関連した有意な発見は、研究過程の一部として、細胞構成要素量の適用に今では起因し得る。細胞構成要素量のデータは、バイオマーカーを識別し、疾患のサブタイプを区別し、毒性の機序を識別するのに役立ち得る。
【0024】
胚細胞由来の多能性幹細胞
いくつかの実施形態において、重要なステップとは、多能性である、または多能性となるよう誘導することのできる幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、胚性幹細胞に由来し、これが順に、初期哺乳類胚の多能性細胞に由来し、制限されない未分化の増殖をインビトロですることができる。胚性幹細胞とは、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を得るための方法は、当該技術分野で周知である。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本出願において説明される例示的な実施形態において使用されるが、本明細書で説明される方法及びシステムが、いかなる幹細胞に対しても応用可能であることは、当業者によって理解されるであろう。
【0025】
本発明に従った実施形態において使用することのできる追加の幹細胞は、米国国立幹細胞バンク(NSCB)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ヒト胚性幹細胞研究センターによって管理されるデータベース、Wi Cell研究所WISC細胞バンク、ウィスコンシン大学幹細胞及び再生医療センター(UW-SCRMC)、Novocell社(カリフォルニア州サンディエゴ市)、Cellartis AB社(スウェーデン国ヨーテボリ市)、ES Cell International Pte社(シンガポール国)、ならびにプリンストン大学及びペンシルベニア大学によって管理される幹細胞データベースによって提供されるものまたはこれらにおいて説明されるものを含むが、それらに限定されない。本発明に従った実施形態において使用することのできる例示的な胚性幹細胞は、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(13)、TE04(14)、TE06(16)、UC01(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(H1)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
胚性幹細胞に関するより詳細なことは、例えば、Thomson et al,1998,"Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts,"Science 282(5391):1145-1147、Andrews et al,2005,"Embryonic stem(ES)cells and embryonal carcinoma(EC)cells:opposite sides of the same coin,"Biochem Soc Trans 33:1526-1530、Martin 1980,"Teratocarcinomas and mammalian embryogenesis,"Science 209(4458):768-776、Evans and Kaufman,1981,"Establishment in culture of pluripotent cells from mouse embryos,"Nature 292(5819):154-156、Klimanskaya et al.,2005,"Human embryonic stem cells derived without feeder cells,"Lancet 365(9471):1636-1641において認めることができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
人工多能性幹細胞(iPSC)
いくつかの実施形態において、iPSCは、ある特定の幹細胞関連遺伝子を成体線維芽細胞などの非多能性細胞へとトランスフェクションすることによって得られる。トランスフェクションは典型的には、レトロウイルスなどのウイルスベクターを通じて達成される。トランスフェクトした遺伝子は、マスター転写調節因子Oct-3/4(Pouf51)及びSox2を含むが、他の遺伝子が誘導効率を高めることが示唆されている。3~4週間後、少数のトランスフェクトした細胞は、多能性幹細胞と形態学的に及び生化学的に類似することとなり始め、典型的には形態学的選別、倍加時間を通じて、またはレポーター遺伝子及び抗生物質による選別を通じて単離される。本明細書で使用する場合、iPSCは、マウスにおける第1世代iPSC、第2世代iPSC、及びヒト人工多能性幹細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、レトロウイルスシステムを使用して、4つの中心となる遺伝子を用いてヒト線維芽細胞を多能性幹細胞へと形質転換する。すなわち、Oct3/4、Sox2、Klf4、及びc-Mycである。代替的な実施形態において、レンチウイルスシステムを使用して、体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、及びLIN28で形質転換する。iPSCにおいて発現が誘導される遺伝子は、Oct-3/4(例えば、Pou5fl)、Sox遺伝子ファミリーのある特定のメンバー(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、及びSox15)、Klfファミリーのある特定のメンバー(例えば、Klf1、Klf2、Klf4、及びKlf5)、Mycファミリーのある特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、及びN-myc)、Nanog、及びLIN28を含むが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、非ウイルス系技術を採用して、iPSCを作製する。いくつかの実施形態において、アデノウイルスを用いて、必要な4つの遺伝子をマウスの皮膚細胞及び肝細胞のDNAへと輸送し、結果的に、胚性幹細胞と同一の細胞を生じることができる。アデノウイルスは、それ自体の遺伝子のいかなるものも、標的とされる宿主と結合しないので、腫瘍をつくり出す危険性は排除される。いくつかの実施形態において、初期化は、プラスミドを介して、ウイルストランスフェクション系を全く使用することなく達成することができるが、効率は非常に低い。他の実施形態において、タンパク質の直接的な送達を使用して、iPSCを作製し、したがって、ウイルスまたは遺伝子修飾についての必要性を排除する。いくつかの実施形態において、マウスiPSCの作製は、類似の方法論を用いて可能であり、ポリアルギニンアンカーを介してある特定のタンパク質を細胞へと運搬する細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態において、多能性誘導遺伝子の発現は、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによっても亢進することができる。
【0029】
胚性幹細胞に関するより詳細なことは、例えば、Kaji et al,2009,"Virus free induction of pluripotency and subsequent excision of reprogramming factors,"Nature 458:771-775、Woltjen et al,2009,"piggyBac transposition reprograms fibroblasts to induced pluripotent stem cells,"Nature 458:766-770、Okita et al,2008,"Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors,"Science 322(5903):949-953、Stadtfeld et al.,2008,"Induced Pluripotent Stem Cells Generated without Viral Integration,"Science 322(5903):945-949、及びZhou et al.,2009,"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins,"Cell Stem Cell 4(5):381-384において認めることができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、例示的なiPS細胞株は、iPS-DF19-9、iPS-DF19-9、iPS-DF4-3、iPS-DF6-9、iPS(包皮)、iPS(IMR90)、及びiPS(IMR90)を含むが、これらに限定されない。
【0031】
DE発生と関連するシグナル伝達経路の機能に関するより詳細なことは、例えば、Zorn and Wells,2009,"Vertebrate endoderm development and organ formation,"Annu Rev Cell Dev Biol 25:221-251、Dessimoz et al,2006,"FGF signaling is necessary for establishing gut tube domains along the anterior-posterior axis in vivo,"Mech Dev 123:42-55、McLin et al,2007,"Repression of Wnt/β-catenin signaling in the anterior endoderm is essential for liver and pancreas development.Development,"134:2207-2217、Wells and Melton,2000,Development 127:1563-1572、de Santa Barbara et al,2003,"Development and differentiation of the intestinal epithelium,"Cell Mol Life Sci 60(7):1322-1332において認めることができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
多能性幹細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉を産生するためのいかなる方法も、本明細書に説明される方法へ応用可能である。いくつかの実施形態において、多能性細胞は、桑実胚から得られる。いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、幹細胞である。これらの方法において使用される幹細胞は、胚性幹細胞を含むことができるが、これらに限定されない。胚性幹細胞は、胚性内部細胞塊からまたは胚性生殖堤から得ることができる。胚性幹細胞または胚性生殖細胞は、ヒトを含む種々の哺乳類種を含むがこれらに限定されない種々の動物種から得ることができる。いくつかの実施形態において、ヒト胚性幹細胞を使用して、胚体内胚葉を作製する。いくつかの実施形態において、ヒト胚性生殖細胞を使用して、胚体内胚葉を産生する。いくつかの実施形態において、iPSCを使用して、胚体内胚葉を産生する。
【0033】
ヒト多能性幹細胞(PSC)を、胃底部上皮を含有する胃オルガノイドへと分化させるための方法が、本明細書に開示される。発明者はまず、胚性胃底部発生における鍵となる事象を識別した後、当該事象を再現して、主張する組成物に到達した。発明者は、マウス胚におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達の中断が胃底部上皮から前庭上皮への転換をもたらすのに対し、hPSC由来の前腸前駆体におけるβ-カテニンの活性化が、ヒト胃底部型胃オルガノイド(hFGO)の発生を促進することを発見した。次に、発明者は、hFGOを用いて、主細胞及び機能的傍細胞を含む胃底部細胞タイプの上皮の形態形成及び分化における複数のシグナル伝達経路について、時間的に異なる役割を識別した。hFGOは、ヒト胃底部及びその系譜の発生を研究するための強力な新モデルであるが、hFGOは、ヒト胃の生理学、病理生理学、及び薬剤開発の分子レベルの基礎を研究するための決定的な新モデルシステムも表す。
【0034】
一態様において、胃底部組織の形成を誘導するインビトロ方法が開示される。当該方法は、以下のステップを含み得る。
【0035】
a)哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞をwnt経路活性化因子、FGFシグナル伝達経路活性化因子(例えば、FGF4)、BMPシグナル伝達経路阻害因子(例えば、ノギン)、及びレチノイン酸と第1の期間接触させるステップ。Wntシグナル伝達は、Wnt3a様タンパク質を用いて、または例えば、GSK3βを阻害するカイロン様化学物質を介して活性化され得る。第1の期間は、3日間±24時間であり得る。レチノイン酸は、第1の期間±24時間の3日目に添加され得る。一態様において、第1の期間は、胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分な期間実施され得る。
【0036】
b)該3次元後部前腸スフェロイドを、基底膜マトリックス中で成長因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸とともに第2の期間懸濁させるステップ。第2の期間は、3日間±24時間であり得る。第2の期間は、胃底部hGO(hFGO)を含む胃底部系譜を誘導するのに十分な長さの期間実施され得る。
【0037】
c)ステップb)のhFGOをwnt経路活性化因子及びEGFシグナル伝達経路活性化因子とともに第3の期間培養するステップ。第3の期間は、例えば、11日間±24時間であり得る。
【0038】
d)ステップcのhFGOをwntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、及びFGF10とともに第4の期間培養するステップ。第4の期間は、例えば、10日間±24時間であり得る。
【0039】
e)ステップdの該hFGOをMEK阻害因子と第5の期間接触させるステップ。MEK阻害因子は、例えば、PD0325901であり得る。第5の期間は、2日間±24時間、または機能的胃底部細胞タイプを含む胃底部組織を形成するのに十分な期間であり得る。
【0040】
一態様において、ステップe)は、胃底部hGOをBMP4シグナル伝達の活性化因子と接触させるステップをさらに含み得る。ある特定の態様において、ステップeは、SOX2+GATA+PDX1上皮を発達させるのに十分な期間実施され得る。
【0041】
一態様において、機能的胃底部細胞タイプは、プロトンポンプタンパク質を発現し、かつ酸を分泌する傍細胞であり得る。一態様において、機能的胃底部細胞タイプは、ペプシノーゲンを分泌する主細胞であり得る。
【0042】
一態様において、ステップd及びステップeは、系譜マーカーMUC5AC、MUC6、PGC、及びGHRLの安定した発現を与えるのに十分な期間実施される。
【0043】
一態様において、胚体内胚葉は、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、及び後腸細胞、多能性幹細胞由来の胚体内胚葉、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞から選択される多能性幹細胞に由来する胚体内胚葉から選択される前駆細胞に由来し得る。
【0044】
一態様において、胚体内胚葉は、多能性幹細胞をアクチビン、成長因子のTGFベータスーパーファミリーのBMP下位群、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、Wnt3a、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の分子と接触させることに由来し得る。
【0045】
Wnt/ベータカテニン経路を活性化するための多くの方法がある(http://web.stanford.edu/group/nusselab/cgi-bin/wnt/を参照されたい)。適切ないくつかの存在するwntシグナル伝達経路活性化因子は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0046】
タンパク質系活性化因子Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt8らを含むがこれらに限定されないWntリガンド、活性化型Wnt縮れ受容体、(LRP)共受容体、R-スポンジンタンパク質、Dkkタンパク質、Wntリガンドの分泌及び輸送の調節因子(Wntのないヤマアラシ)、ベータカテニン分解APC及びGSK3ベータ阻害を阻害すること、活性化型ベータカテニン、恒常的に活性化型のTCF/Lefタンパク質を含むがこれらに限定されないWntリガンド活性の修飾因子。
【0047】
化学的活性化因子:Wnt/ベータカテニンシグナル伝達を活性化するかまたは阻害するかのいずれかである28個を超える既知の化学物質がある。いくつかの活性化因子は、GSK3-ベータ阻害薬CHIR99021、BIO、LY2090314、SB-216763、リチウム、ヤマアラシ阻害因子IWP、LGK974、C59、SFRP阻害因子WAY-316606、ベータカテニン活性化因子DCAを含むが、これらに限定されない。
【0048】
一態様において、WNT経路活性化因子は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、及びWnt16から選択される1つ以上の分子であり得、例えば、Wnt3a、または例えば、約50~約1500ng/mlの濃度のWnt3aであり得る。
【0049】
適切なFGFシグナル伝達経路活性化因子は、以下を含む。FGFリガンドであるFGF2、4、5、8ら、FGF受容体の活性化型。MAPKタンパク質、MEKタンパク質、ERKタンパク質及びこれらの活性を調節する化学物質を含む、FGF受容体及び当該受容体の下流のシグナル伝達成分を刺激するタンパク質及び化学物質。FGFシグナル伝達は、Sproutyタンパク質ファミリーメンバーを含むがこれらに限定されないFGFシグナル伝達経路の阻害因子を阻害することによって活性化することができる。
【0050】
一態様において、BMPシグナル伝達経路阻害因子は、例えば、ノギン、ドルソモルフィン、LDN189、DMH-1、及びこれらの組み合わせから選択され得、当該前駆細胞は、約50~約1500ng/mlの濃度のBMP阻害薬と接触させられ得る。
【0051】
一態様において、当該ステップは、インビトロで実施される。
【0052】
一態様において、上述の方法(複数可)により産生される胃組織を含む組成物が開示される。胃組織は、例えば、神経支配及び/または血管がないことを特徴とし得る。
【0053】
一態様において、胃底部組織の形成を誘導するインビトロ方法が開示される。当該方法は、胃底部hGO(hFGO)をwnt経路活性化薬及びEGFシグナル伝達活性化薬と第1の期間、MEK阻害因子と第2の期間接触させるステップを含み得(当該MEK阻害因子はPD0325901であり得る)、当該第1及び第2の期間は、機能的胃底部細胞タイプを形成するのに十分な期間実施され、
【0054】
当該hFGOは、3次元後部前腸スフェロイドを基底膜マトリックス中で成長因子、wnt経路活性化薬、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と、当該3次元後部前腸スフェロイドを当該hFGOへ転換するのに十分な期間接触させることによって得られ、
【0055】
当該3次元後部前腸スフェロイドは、哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞をWNT経路活性化薬、FGFシグナル伝達経路活性化薬、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と接触させることによって得られる。
【実施例】
【0056】
近年、3次元インビトロオルガノイドシステムの開発においてかなりの進展があった1,2。オルガノイドは、構造上の複雑性及び細胞の多様性を従来の細胞培養方法の互換性及び拡張性と組み合わせる強力な実験モデルであることが立証されてきた。多能性幹細胞(PSC、胚性幹細胞及び人工PSCの両方を含む)の定方向分化を通じてのオルガノイド発生は、出発材料源に制限がないこと、組織の外科的獲得の必要のないこと、及び遺伝的操作の容易なことを含む他のアプローチを上回るいくつかの利点を提唱する。さらに、PSC系の方法は、正常な及び異常なヒト発生に潜む機序の直接的な調査を可能にする3。しかしながら、PSCを特異的なオルガノイドタイプへと分化させることは、正常な器官発生の頑強な分子レベルの知識による。胃などのいくつかの器官について、胚発生を駆動する分子レベルの経路の理解において大きな隔たりがある。
【0057】
胃は、哺乳類において最も構造上多様な器官のうちの1つである4。ヒトにおいて、胃粘膜は概して、2つのタイプの上皮腺からなる5,6。胃のより近位の解剖学的部分、すなわち内体及び胃底部にあるのが酸分泌腺であり、傍細胞、プロテアーゼ産生主細胞、粘液産生細胞、及び内分泌細胞を含む。より遠位の前庭及び幽門にある前庭型の腺はたいてい、粘膜細胞及び内分泌細胞を含有する。命名法の解剖学特異的及び種特異的システムを簡素化するために、「胃底部」及び「前庭」という用語は、胃上皮のこれら2つの組織学的タイプを広範に説明するために使用される。発明者は、hPSCの分化を、正常な前庭細胞タイプを有する純粋な前庭上皮を含有する3次元胃組織(ヒト胃オルガノイド(hGO))へと定向化する方法を既に開発した7。前庭hGO(hAGO)は、胃における前庭系譜配置及び宿主-微生物相互作用を研究するための頑強なシステムであるが、胃底部の生物学及び疾患に関する研究はできない。より近年では、Noguchi et.alは、マウスESCを、種々のタイプのマウス胃組織を含むオルガノイドへと分化させることに成功した8。しかしながら、このアプローチは、マウスESCの凝集及び自発的な分化を用いており、その結果として生じるオルガノイドは異質的であり、このことは重層上皮の存在によって立証された。そのうえ、種の違いは、ヒト胃疾患をモデル化するために、マウス胃を最適よりも下回させる9。したがって、ヒト胃底部上皮の頑強かつ効率的なPSC由来のモデルは、胃生物学の分野で有意な前進を表すであろう。
【0058】
胚性器官の発生は、隣接する組織間の一連の有益な手掛かりによって誘導され10,11、hPSCから特異的な系譜への分化は、インビトロでの直接的な分化に対するこれらのシグナルの使用に著しく依存してきた。発明者は既に、段階を踏んだ分化アプローチを識別して、hAGOを生じ、それによりhPSCを胚体内胚葉へと分化させ、後部前腸へとパターン形成した後、予定前庭上皮へと特化させた7。発明者は、胃底部及び前庭が、後部前腸前駆体の共通の集団に由来し、このことが、適切なシグナルとともに提供された場合、胃底部系譜へと定向化され得るという仮説を立てた。しかしながら、インビボでの胃底部発生を駆動する機序がこれまでわかっていないことを考慮して、発明者はまず、近位-遠位軸に沿って胚胃をパターン形成するシグナル伝達経路を識別しなければならなかった。
【0059】
胚胃パターン形成
胚発生中の胃底部特異性を調節する経路の研究に助力するために、発明者は、マウス胚を分析して、予定胃底部と予定前庭と予定前胃とを区別することのできる分子マーカーを識別した。14.5日胚で、発明者は、Sox2が前腸器官系譜前部において発現したのに対し、Gata4が腺性胃上皮へと制限されることを発見した。Gata4+部内で、Pdx1は、予定前庭領域に特異的であったので(
図6のa)、胚性胃底部は、Sox2+Gata+Pdx1-であると考えられる。さらに、発明者は、公開されたマイクロアレイデータセット(GSM326648-GSM32665012及びGSM80809-GMS8081613)及び14.5日胚前腸の摘出した領域を分析して、転写因子Irx2、Irx3、及びIrx5の発現が、前庭と比較して胚性胃底部において10倍超多量であることを実証し(
図6のb、c)、このことは、当該転写因子の発現が、腺性胃上皮の領域間をさらに区別することができることを示した。
【0060】
分子レベルで、胃の予定胃底部及び前庭部は、10.5日胚によって既に確立された(
図6のa)。発生中の当該時点で、正準のWntシグナル伝達経路は、Wntレポーターマウスアキシン2-lacZ系を用いて示されるように、近位の胃において活性があったが、遠位の胃
14においては、ほとんどまたは全く活性を呈さなかった(
図1のb)。Wnt/βカテニンシグナル伝達の調節は、幽門-十二指腸境界を確立するうえでの役割を担っていることがわかっているが
14,15、胃上皮パターン形成におけるその役割は、研究されていなかった。Wnt/βカテニンシグナル伝達が胃底部をインビボで確立するために機能的に必要とされるかどうかを判定するために、発明者は、Shh-cre(Shh-cre;βカテニンfl/fl=cKO)を用いて前腸上皮におけるβカテニン(Ctnnb1)を欠失させた。Wnt/βカテニンシグナル伝達の崩壊は結果的に、胃底部の同一性を喪失させ、このことは、10.5日胚の胃底部における異所性Pdx1の発現によって実証された(
図1のc)。異所性Pdx1をまず、胃底部上皮の腹側半分に制限し、このことは、このShh-cre系統を用いて既に報告された組換え活性と一致していた
16が、次に、14.5日胚までに近位の胃の大部分及びより大きな曲面を含むよう、経時的に増殖させた(
図7のa)。さらに、胃底部マーカーIrx2、Irx3、及びIrx5の発現は、cKO胚において劇的に減少した(
図7のb)。集約的に、これらのデータは、胚性マウス胃において前庭の運命を抑圧しながら、胃底部の同一性の初期特化に必要とされるので、上皮Wnt/βカテニンシグナル伝達が、胃パターン形成を調節するという結論を支持している。
【0061】
その後の細胞分化に及ぼす初期Wnt/βカテニン仲介性パターン形成の異常性の影響を判定するために、発明者は、18.5日胚時のcKO胚を分析した。cKO胚における胃は、18.5日胚において奇形となり、大きさが減少し(
図1のd及び
図7のc~d)、発生後期中の胃の成長を促進するうえでのWnt/βカテニンの役割を示唆した。そのうえ、cKO胃は、上皮の最近位領域のいたるところで異所性Pdx1の発現とともに完全に誤パターン形成していた(
図1のd)。Atp4bの発現によって標識される胃底部細胞タイプである傍細胞は、CKO胃において減少し(
図1のd)、βカテニン欠乏性上皮においては完全に非存在であった(
図1のe)。対照的に、発生した傍細胞は、βカテニン発現上皮においてのみ観察された(
図1のe及び
図7のd~e)。まとめると、これらのインビボデータは、Wnt/βカテニンシグナル伝達が胃底部の特化を誘導し、かつ前庭の同一性を阻害する、というモデルを支持している。さらに、この初期パターン形成の崩壊は、傍細胞のその後の細胞の自律喪失と一致しており、細胞分化が発生のパターン形成の欠損に対して二次的に損なわれることを示唆している。
【0062】
hPSCからの胃底部hGOの分化
発明者は次に、発生中のヒト胃の胃底部-前庭パターンを確立するうえでのWnt/βカテニンシグナル伝達の役割を研究した。胃の分化の初期をモデル化するために、発明者は、高い信頼度で初期胃発生の正常期を再現する、hPSCを前庭様胃オルガノイドへと分化させるための既に説明したプロトコルを用いて出発した
7。3次元後部前腸スフェロイド(SOX2+HNF1β+)を用いて出発して、発明者は、Wnt/βカテニンシグナル伝達の刺激が、胃の特化期の間に前庭(SOX2+GATA+PDX1+)よりもむしろ胃底部(SOX2+GATA+PDX1-)の系譜へと後部前腸上皮を定向化するかどうかを検査した(
図2のa)。実際、βカテニンをGSK3阻害因子CHIR99021(CHIR)で3日間活性化した結果、9日後にPDX1のほぼ完全な抑止を生じるとともに、IRX2、IRX3、及びIRX5の発現を有意に増加させた(
図2のb~c)。重要なことに、SOX2及びGATA4のレベルは、CHIR処理によって影響されず、スフェロイドがそれらの胃の同一性を保有していることを確証した。したがって、CHIR曝露は結果的に、SOX2+GATA+PDX1上皮の形成を生じるとともに、予定胃底部上皮と一致した兆候であるIRX発現の増加が生じた。
【0063】
発明者は次に、CHIR処理したスフェロイドが、胃底部様上皮を含有するさらに成熟したhGOへとさらに発達するかどうかを判定するよう探索した。興味深いことに、6~9日後のCHIRの3日間パルスは、hGOがより後期にPDX1+前庭表現型へと最終的に逆戻りするので、胃底部同一性を不可逆的に特化させるのに十分ではなかった。しかしながら、少なくとも29日後までのCHIR処理を介したWnt刺激の持続は、胃底部遺伝子発現の安定した誘導をもたらした(
図8のa)。このことは、インビボでの胚胃発生の間のWnt/βカテニンシグナル伝達の長期活性と一致していた。先行研究は、胚胃における異所性Wnt活性化が小腸の運命を促進することを示した
14,15が、CHIR処理したhGOは、小腸マーカーCDX2、MUC2、CCK、またはSCTの有意な増加を呈さなかった(
図8のe及び
図9のa~b)。発明者はさらに、ノギンをBMP4と置き換えると、小腸転写因子の頑強な発現をもたらすので、CDX2が、BMPシグナル伝達の同時阻害により、Wnt/βカテニン活性化にもかかわらず抑制されたままであることを実証した(
図9のc)。
【0064】
局所的な部分が初期発生において一旦確立されると、原始胃上皮は、最終的な細胞タイプの成長、腺形態形成、及び分化の期間を経る。発明者は既に、hAGOが形態学的発生及び細胞発生に関して類似の進行を受けることを示した7。CHIR処理したhFGOは、播種したスフェロイド全部の75~90%がオルガノイドへと生育するので、hAGOと比較して類似の速度及び効率で生育した(
図8のd)。20日後、両タイプのhGOは、細胞の90%超で胃SOX2/GATA4の兆候を発現する上皮を含有していたのに対し、PDX1は、hAGOに制限された(hAGOにおいて87.1±8.4%及びhFGOにおいて3.9±2.0%、p=3.07×10
-6、
図8のe)。オルガノイドは、その発生の間、個々の胃の同一性を維持した(
図8のb~c)。34日後までに、hFGO及びhAGOは、CDH1+CTNB1+KRT8+の極性のある円柱状上皮を含んでおり、当該上皮は、胃特異的
17クローディンCLDN
18(
図2のe及び
図9のd)、及び匹敵する未分化の間充織細胞(
図10のb)を遍在的に発現した。1つの顕著な違いは、hFGOがオルガノイド上皮から発芽した組織化した腺を有する異なる構造を有する(
図2のd~e及び
図10のa)のに対し、hAGOは、複雑な折り畳み及び原始的な腺様組織化を有するが、まれに腺芽を有することであった
7。したがって、胃底部を特化させる新規のWnt/βカテニン依存性機序は、ヒトにおいて保存され、発生中の胃底部に分子レベルで似ている腺上皮を有する3次元hFGOを生じるよう操作することができる。
【0065】
部位特異的胃細胞分化
分化した前庭胃細胞タイプをまず、約27日後のhAGOにおいて検出した後、マウス胃における生後発達の最初の数週間
18と類似の34日後までに増加した
7。34日後に、hFGOは、予期した通り、hAGOと同様に、MUC5AC+表面粘膜細胞及びMUC6+粘膜頸細胞の両方を含有していた(
図3のa~b及び
図11のa)。hFGOは、種々の内分泌細胞タイプも形成した(
図3のc)が、ホルモンGASTの発現は、hAGOに特異的であったのに対し、GHRLは、hFGOにおいて10倍高く(
図3のd)、正常胃内分泌パターンと一致していた
19。hGOの部位特異的コンピテンスを機能的に定義するために、発明者は、誘導系を用いて、プロエンドクリン(proendocrine)転写因子NEUROG3を過剰発現させた。hGOの両サブタイプにおけるNEUROG3の発現は結果的に、パンエンドクリン(pan-endocrine)マーカーSYPならびに共通の胃ホルモンSST及びGHRLの頑強な発現を生じた(
図11のc)。しかしながら、hAGOのみがGAST発現G細胞を生じるようコンピテントであり、hFGOはそうではなく(
図3のe及び
図11のc)、ヒト胃におけるG細胞の前庭特異的分布と一致していた
19。
【0066】
胃底部特異的分泌系譜である主細胞は、酸分泌腺の基部に存在し、予備幹細胞のあるタイプとして提唱されてきた
20。hFGOは、主細胞特異的
21転写因子MIST1の上皮発現を呈し(
図4のa)、プロ酵素PGA5及びPGCについての転写産物を100~1000倍増加させ(
図4のc)、ELISAによって測定される有意に高いペプシノーゲン含有量を含有していた(
図4のe)。しかしながら、転写産物レベルは、成人胃において認められるものの1%未満であり(
図11のd)、ペプシノーゲン陽性細胞は、免疫組織化学によってまれにしか検出することはできなかった(
図4のb~c)。これと一致して、チモーゲン果粒含有細胞
22は、TEMによって識別された(
図4のd)が、まれであった。対照的に、より未成熟の粘膜顆粒パターンを有する細胞は多量であった(
図11のb)。インビボの主細胞は出生後の最初の数週間、頑強なペプシノーゲン発現を呈しない(
図12のa~b)ので、発明者は、主細胞が、hFGOにおいて存在するが、未成熟であると結論付けた。hFGOはそれゆえ、主細胞の成熟を調節する内因性機序と外因性機序とを分離するための頑強なプラットフォームを表す。
【0067】
傍細胞分化を制御する経路
ベースラインで、hFGOは、プロトンポンプ(ATP4Aサブユニット及びATP4Bサブユニットからなる)を介して胃管腔を酸性化する胃底部腺に関して定義する細胞タイプである少数の傍細胞(PC)しか含有しなかった(
図5のa~b)。PC集団を増大させる効率的な方法の識別は、PC集団の発生を駆動するシグナル伝達機序の理解がないので、理解しづらいままであった。発明者はそれゆえ、PC分化を調節するうえでの役割についての候補シグナル伝達経路を機能的にスクリーニングするためのプラットフォームとしてPSC由来のhFGOを用いた。スクリーニングのため、発明者は、30日後のhFGOをシグナル伝達アゴニストまたはアンタゴニストへ2日間曝露し、34日後にPC分化を分析した。シグナル伝達操作の大部分が明らかな効果を有していなかったが、PD0325901(PD03)を用いたMEK経路の一過性阻害は結果的に、ATP4A及びATB4Bの両方の実質的な上方調節を生じた(
図13のa)。さらに、BMP4だけではPC遺伝子発現に影響しなかったが、PD03の効果を亢進することができた(データ非表示)。したがって、PD03/BMP4の2日間パルスは、PCマーカーATP4A、ATP4B及びGIFの迅速かつ頑強な発現を誘導するのに十分であった(
図5のa~b及び
図13のd)。興味深いことに、この効果は、培地からEGFまたはFGFを単純に除去することによって観察されることはなく(
図13のb)、PC分化をhFGO培養へ制限することに起因するMEK/ERKの上流の内因性シグナル伝達相互作用があるようであることを示唆した。さらに、PD03/BMP4処理は、PC系譜に影響しただけであり(
図13のe)、hAGOにおいてPCを誘導することはできず(
図13のc)、胃上皮の初期パターン形成がその最終的な分化能を規定することをさらに強調した。
【0068】
34日後にhFGO上皮は、ヒト胃へかなり組織化されているのが呈され、それとともに、表面ドメインを裏打ちする粘膜細胞及びPCは、腺部分の中に濃縮していた(
図5のe)。そのうえ、傍細胞の形態は、インビボでの成熟傍細胞とよく似ていた(
図5のc)。インビボでのPCとの類似性及び透過型電子顕微鏡で観られるような管状小胞微細構造(
図5のd)を考慮すると、発明者は、hFGOにおけるPCが適切な刺激に対する応答において酸を分泌する能力を呈するであろうと仮説を立てた。pH感受性色素(SNARF5F)を用いてリアルタイム共焦点顕微鏡で測定すると(
図14のa)、hFGOは、H2アンタゴニストであるファモチジンまたはH+K±ATPアーゼアンタゴニストであるオメプラゾールのいずれかによって遮断されたヒスタミンに応答して管腔pHの迅速かつ顕著な低下を生じた(
図5のf及び
図14のb)。ヒスタミンに対する細胞応答を可視化するために、hGOを、酸性区画において金属イオン封鎖したときにオレンジ色へとシフトする蛍光色素であるアクリジンオレンジ(AO)とともに培養した
23。単離したマウス胃腺と同様に、AOは、ヒスタミンに応じて、hFGO腺における酸性化細胞小胞の中に蓄積した(
図5のg及び
図14のc~d)。これらのデータは、PCが酸誘導刺激に応じて、分泌性小管構造の適切な変化を受けたことを示す。
【0069】
インビボでの分化した胃細胞系譜は、未分化の幹細胞または前駆細胞の共通のプールに由来すると考えられている。ここで、発明者は、遺伝的手段(内分泌細胞のNEUROG3仲介性調節)を通じて、または外因性シグナル伝達経路(PCに対するPD03/BMP4)の操作によってのいずれかで、hFGOにおける細胞タイプの相対的な比を変化させる能力を実証した。これらの観察は、hFGOが成体胃から単離されたものと類似した胃幹細胞の集団を含有し得るという仮説をもたらした。実際、発明者は、解離した34日後のhFGOが、新たなオルガノイドを生じるよう連続的に継代することができることを発見した(
図15のa~b)。継代したhFGO由来のオルガノイドの再生育は、初代胃組織オルガノイドを生育させるのに使用するのと類似の高濃度Wnt及び高濃度FGF培地に依存していた
24,25。2回の継代後、hFGOは、系譜マーカーであるMUC5AC、MUC6、PGC、及びGHRLの発現を維持したが、当該系譜マーカーは、PCを含有しておらず、傍細胞系譜のPD03/BMP4仲介性誘導に対して不応性であった(
図15のc~d)。この知見は、真に酸分泌粘膜に由来するにもかかわらず、PCを頑強に生じない、成体幹細胞由来の胃オルガノイドにおいて観察されたものと類似していた
20,26。したがって、hGO及び成体胃オルガノイドの長期培養におけるPCコンピテンスを保存する条件を識別することは重要であろう。
【0070】
要約すると、発明者は、hPSCを新たな組織タイプへと分化させることへインビボ及びインビトロでの発見を基にした研究を直接適用した。発明者は、マウスにおける胃発生中の胃底部ドメインを特化させるうえでのWnt/βカテニンシグナル伝達の新規の機能を定義し、hPSCを3次元ヒト胃底部オルガノイドへ分化させることを定向化するための機序についての基礎として、Wnt調節を使用した。マウス及びヒトの両方において、Wnt仲介性胃底部特化によって、PCのその後の形成がもたらされた。この定向性分化プロトコルの初期における胃底部特異的操作は、頑強なPC誘導をもたらした(
図13のf)。先行報告は、間充織因子Barx1が、Wntシグナル伝達を抑止するよう間接的に作用し、胃における小腸遺伝子発現を防止するのに役立つことを識別した
14,15。本研究が、上皮Wnt/βカテニン機能を識別したこと及び先行研究が間充織経路を識別したことを考慮すると、Wnt/βカテニンは、上皮対間充織における異なる役割を有し得るようであると思われる。例えば、Wnt/βカテニンについての間充織の役割は、BMPなどの他のシグナル伝達経路を調節することができ
27、このことは、Wntと初期内胚葉から小腸特化を促進するためにWntと協同することを、本データが示す(
図7及び
図9のc)ヒト胃オルガノイドシステムは、動物モデルとの組み合わせで間充織及び上皮においてこれらのシグナル伝達経路がどのように相互作用して初期胚消化管発生を調整するのかを精査するために有用であろう。
【0071】
異なる系譜への胃前駆細胞の分化を制御する経路も欠失している。発明者は、MEK/ERKシグナル伝達が、傍細胞特化を強力に抑止することを識別する、この新たなhGOプラットフォームの有用性を実証した。これらの知見と一致して、MEK/MAPK依存性経路のトランスジェニック活性化は、インビボでの傍細胞の喪失をもたらした28,29。それゆえ、hGOは、胃底部及び前庭における正常な細胞のホメオスタシスに関与するシグナル伝達機序を識別及び研究するための新たなかつ追跡可能なヒトモデルシステムである。さらに、発生プログラムの異常な調節も、内体/胃底病理がしばしば、傍細胞の萎縮30~32、前庭型組織学的特徴33、さらにはPdx134の誤発現と関係しているので、胃疾患にも寄与し得る。したがって、これらの経路のターゲティングは、MEKの薬理学的阻害が異形成のマウスモデルにおける正常傍細胞の分化を修復するのに十分であることをChoi et al.が近年実証した35ので、臨床的な有用性を有し得る。さらに、前庭型及び胃底部型の両hGOを今や確立したので、これらのヒト胃組織がどのように生理学的に相互作用し、感染及び損傷に異なって応答し、薬理学的処置に応答するのかを研究することは可能である。
【0072】
方法
マウス実験
以下の遺伝的マウス系統をジャクソン研究室から得、シンシナティこども病院研究財団動物施設に収容し、IACUCプロトコル(0b09074)によって維持した。アキシン2:LacZ(ストック番号009120)、Shh:Cre(ストック番号005622)、及びloxPが導入されたβカテニン(ストック番号004152)。膣栓が観察された午前を0.5日胚と記し、基準交尾を用いて種々の期における胚を作製し、これをホールマウント染色または組織解剖のいずれかのために収集した。少なくとも2匹の同腹胚を、検討した各発生期において分析した。雌雄両方の胚を分析した。
【0073】
多能性幹細胞培養
ヒト胚性幹細胞株WA01(HI、WiCellから入手)をシンシナティこども病院医学センターの多能性幹細胞施設によって供給した。細胞の識別を短いタンデム反復分析(マイクロサテライトSTR分析、Applied Biosystems)によって確認し、細胞をマイコプラズマ混入について所定の通り検査した(マイコアラートマイコプラズマ検出キット、Lonza)。多能性細胞をmTesR1培地(Stem Cell Technologies)中でHESC定性化マトリゲル(BD Biosciences)上でフィーダーのない条件下で維持した。コロニーを、ディスパーゼ(Invitrogen)を用いて4日間ごとに継代した。
【0074】
後部前腸スフェロイドの分化
胃オルガノイドの定向性分化のためのプロトコルを、本発明者らの先行プロトコル7から応用し、表1は、各期についての培地及び成長因子の完全なリストを含んでいる。分化のために、hPSCを単一の細胞へと、Accutase(Stem Cell Technologies)を用いて解離し、Y-27632含有mTesR1(10μM、Stemgent)中で、ウェルあたりおよそ200,000個の細胞密度で24穴プレート中へ播種した。翌日、RPMI1640培地(Invitrogen)中のアクチビンA(100ng/ml、Cell Guidance Systems)を3日間添加することによって、細胞を胚体内胚葉(DE)へと分化させた。培地にNEAA(1×、Gibco)及び規定FBS(dFBS、Invitrogen)も1日後、2日後、及び3日後にそれぞれ0%、0.2%、及び2.0%補充した。さらに、BMP4(50ng/ml、R&D Systems)を初日に添加した。その後、細胞をCHIR99021(2μΜ、Stemgent)、FGF4(500ng/ml、R&D Systems)、及びノギン(200ng/ml、R&D systems)へ、NEAA及び2.0%dFBSを補充したRPMI1640中で3日間曝露することによって、DEを後部前腸内胚葉へと分化させた。レチノイン酸(2μΜ、Sigma Aldrich)を最終日に添加した。培地を毎日交換した。この過程は結果的に、3次元後部前腸スフェロイドの自律的な形成を生じた。
【0075】
【0076】
前腸スフェロイド-胃オルガノイドの3次元培養
後部前腸スフェロイドを収集し、既に説明した通り36、3次元培養システムへと移した。簡潔には、スフェロイドを50μlのマトリゲル(BD Biosciences)中に懸濁し、24穴プレート中へ液滴として播種した。マトリゲルを組織培養インキュベータ中で10分間凝固させておいた後、成長因子及び/または小分子アゴニストを含有する塩基成長培地(BGM)で層状化した。BGMは、N2(1×、Invitrogen)、B27(1×、Invitrogen)、HEPES(10μM、Gibco)、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びEGF(100ng/ml、R&D Systems)を補充した高度DMEM/F12培地(Gibco)からなった。6~9日後の間、スフェロイドをRA及びノギンとともに培養し、前庭系譜を特化させた。胃底部特化のために、CHIRをこの期の間に添加した。前庭hGOをその後、EGFのみを有するBGM中で培養した。胃底部hGOを6~30日後からCHIRへ連続的に曝露した。さらに、CHIRによって駆動される腺形態形成を亢進することが示された(データ非表示)ので、FGF10(50ng/ml、R&D Systems)を20~30日後から胃底部hGOへ添加した。20日後、オルガノイドを収集し、1:10~1:20の希釈で再播種した。
【0077】
傍細胞分化を高める因子を識別するためのスクリーニング実験のために、hFGOを30日後まで生育させたのち、個々のシグナル伝達経路のアゴニスト及びアンタゴニストへ2日間曝露した。DAPT(1μΜ、Stemgent)、SB431542(10μΜ、Stemgent)、BMP4(50ng/ml、R&D Systems)、PD0325901(2μM、Stemgent)、ガストリン(10nM、Sigma Aldrich)、デキサメタゾン(50nM、Sigma Aldrich)、及びWnt5a(50ng/ml、R&D Systems)。処理後、hFGOをさらに2日間、34日後まで生育させた後、定量的PCRによって分析した。
【0078】
RNA単離及び定量的PCR
既に説明した通り、全RNAを、Nucleospin RNA IIキット(Machery Nagel)を用いて単離し、cDNAへと転換した7。Quantstudio 6(Applied Biosystems)上で、Quantitect SYBR Greenマスターミックス(Qiagen)を用いて定量的PCRを実施し、プライマー配列を以下に列挙する。
【0079】
プライマー配列
定量的PCRに使用したプライマーは以下であった。
hATP4A、順方向5'-TGGTAGTAGCCAAAGCAGCC-3'、逆方向5'-TGCCATCCAGGCTAGTGAG-3'、
hATP4B、順方向5'-ACCACGTAGAAGGCCACGTA-3'、逆方向5'-TGGAGGAGTTCCAGCGTTAC-3'、
hAXIN2、順方向5'-CTGGTGCAAAGACATAGCCA-3'、逆方向5'-AGTGTGAGGTCCACGGAAAC-3'、
hCCK、順方向5'-CGGTCACTTATCCTGTGGCT-3'、逆方向5'-CTGCGAAGATCAATCCAGCA-3'、
hCDX2、順方向5'-CTGGAGCTGGAGAAGGAGTTTC-3'、逆方向5'-ATTTTAACCTGCCTCTCAGAGAGC-3'、
hCHGA、順方向5'-TGACCTCAACGATGCATTTC-3'、逆方向5'-CTGTCCTGGCTCTTCTGCTC-3'、
hGAPDH、順方向5'-CCCATCACCATCTTCCAGGAG-3'、逆方向5'-CTTCTCCATGGTGGTGAAGACG-3'、
hGAST、順方向5'-CAGAGCCAGTGCAAAGATCA-3'、逆方向5'-AGAGACCTGAGAGGCACCAG-3'、
hGATA4、順方向5'-TCCAAACCAGAAAACGGAAGC-3'、逆方向5'-GCCCGTAGTGAGATGACAGG-3'、
hGHRL、順方向5'-GCTGGTACTGAACCCCTGAC-3'、逆方向5'-GATGGAGGTCAAGCAGAAGG-3'、
hGIF、順方向5'-CATTTTCCGCGATATTGTTG-3'、逆方向5'-GCACAGCGCAAAAATCCTAT-3'、
MRX2、順方向5'-GTGGTGTGCGCGTCGTA-3'、逆方向5'-GGCGTTCAGCCCCTACC-3'、
MRX3、順方向5'-GGAGAGAGCCGATAAGACCA-3'、逆方向5'-AGTGCCTTGGAAGTGGAGAA-3'、
MRX5、順方向5'-GGTGTGTGGTCGTAGGGAGA-3'、逆方向5'-GCTACAACTCGCACCTCCA-3'、
hMIST1、順方向5'-TGCTGGACATGGTCAGGAT-3'、逆方向5'-CGGACAAGAAGCTCTCCAAG-3'、
hMUC2、順方向5'-TGTAGGCATCGCTCTTCTCA-3'、逆方向5'-GACACCATCTACCTCACCCG-3'、
hMUC5AC、順方向5'-CCAAGGAGAACCTCCCATAT-3'、逆方向5'-CCAAGCGTCATTCCTGAG-3'、
hMUC6、順方向5'-CAGCAGGAGGAGATCACGTTCAAG-3'、逆方向5'-GTGGGTGTTTTCCTGTCTGTCATC-3'、
hPdx1、順方向5'-CGTCCGCTTGTTCTCCTC-3'、逆方向5'-CCTTTCCCATGGATGAAGTC-3'、
hSCT、順方向5'-GGTTCTGAAACCATAGGCCC-3'、逆方向5'-GTCAGGGTCCAACATGCC-3'、
hSOX2、順方向5'-GCTTAGCCTCGTCGATGAAC-3'、逆方向5'-AACCCCAAGATGCACAACTC-3'、
mCdx2、順方向5'-TCTGTGTACACCACCCGGTA-3'、逆方向5'-GAAACCTGTGCGAGTGGATG-3'、
mGata4、順方向5'-CCATCTCGCCTCCAGAGT-3'、逆方向5'-CTGGAAGACACCCCAATCTC-3'、
mGapdh、順方向5'-TTGATGGCAACAATCTCCAC-3'、逆方向5'-CGTCCCGTAGACAAAATGGT-3'、
mIrx1、順方向5'-AATAAGCAGGCGTTGTGTGG-3'、逆方向5'-CTCAGCCTCTTCTCGCAGAT-3'、
mIrx2、順方向5'-AGCTGGTATGGATAGGCCG-3'、逆方向5'-GGCTTCCCGTCCTACGTG-3'、
mIrx3、順方向5'-ATAAGACCAGAGCAGCGTCC-3'、逆方向5'-GTGCCTTGGAAGTGGAGAAA-3'、
mIrx5、順方向5'-GGAGTGTGGTCGTAGGGAGA-3'、逆方向5'-GCTACAACTCGCACCTCCA-3'、
mPdx1、順方向5'-ACGGGTCCTCTTGTTTTCCT-3'、逆方向5'-TGGATGAAATCCACCAAAGC-3'、
mPitx1、順方向5'-GTCCATGGAGGTGGGGAC-3'、逆方向5'-GCTTAGGCGCCACTCTCTT-3'、
mSox2、順方向5'-AAAGCGTTAATTTGGATGGG-3'、逆方向5'-ACAAGAGAATTGGGAGGGGT-3'、
mTrp63、順方向5'-AGCTTCTTCAGTTCGGTGGA-3'、逆方向5'-CCTCCAACACAGATTACCCG-3'。
【0080】
免疫蛍光染色
組織を4%パラホルムアルデヒド中、4℃で一晩固定した後、PBSで完全に洗浄した。ホールマウント免疫蛍光染色のため、胚を既に説明した通り加工した37。簡潔には、胚をDentのブリーチ液(4:1:1のEtOH:DMSO:30% H2O2)中で、室温で2時間透過処理し、メタノール連続洗浄を通じて再水和させた。次に、胚を1時間ブロッキングし、1次抗体中で一晩4℃でインキュベートし、PBS中で洗浄し、1次抗体中で一晩4℃でインキュベートし、完全に洗浄した。パラフィン包埋のために、組織をエタノール連続洗浄で脱水し、キシレン中で洗浄した後、パラフィン中に包埋した。染色のため、スライドを脱パラフィン化し、再水和させた。抗原賦活化をクエン酸緩衝液中で、スチーマーの中で45分間実施した。1次抗体を4℃で一晩インキュベートした。1次抗体後、スライドをPBS中で洗浄した後、2次抗体(1:500の希釈)とともに1時間室温でインキュベートした。2次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)をロバ中で作製し、Alexa Fluor488、594、または647へ共役させた。
【0081】
1次抗体
免疫蛍光染色に使用する抗体を、抗原、宿主種、製造元及びカタログ番号、ならびに染色に使用する希釈とともに列挙する。Atp4b、ウサギ、Santa Cruz sc84304、1:500;Cdh1、ヤギ、R&D Systems AF648、1:500;Cdh1、マウス、BD Biosciences 610182、1:500;Cdx2、マウス、Biogenex MU392A、1:500、Cldn18、ウサギ、Sigma HP A018446、1:200;Ctnnb1、ウサギ、Santa Cruz sc7190、1:100;FoxF1、ヤギ、R&D Systems F4798、1:500、ガストリン、ウサギ、Dako A0568、1:1,000;Gata4、ヤギ、Santa Cruz sc1237、1:200;Gif、ウサギ、Sigma HP A040774、1:100;Ghrl、ヤギ、Santa Cruz scl0368、1:200;ヒスタミン、ウサギ、Immunostar 22939、1:1,000;Krt8、ラット、DSHBトロマール-s;1:100;Mist1、ウサギ、Sigma HP A047834、1:200;Muc5ac、マウス、Abcam ab3649、1:500;Muc6、マウス、Abcam ab49462、1:100;Pdx1、ヤギ、Abcam ab47383、1:5,000;Pgc、ヒツジ、Abcam ab31464、1:10,000;Sst、ヤギ、Santa Cruz sc7819、1:100;Syp、モルモット、シナプス系101004、1:1,000;ビメンチン、ヤギ、Santa Cruz sc7557、1:200
【0082】
撮像
ニコンAIRsi倒立型共焦点顕微鏡上で、共焦点撮像を実施した。ホールマウント撮像のため、胚をメタノール中で脱水し、Murrayのクリア液(2:1の安息香酸ベンジル:ベンジルアルコール)中で透明にした直後に撮像した。染色後、スライドをFluoromount G(SouthernBiotech)でマウントし、室温で一晩空気乾燥させた。
【0083】
透過型電子顕微鏡
透過型電子顕微鏡のために、hGOを既に説明した通り加工した7。簡潔には、オルガノイドを3%グルタルアルデヒド中で固定し、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中で洗浄し、1時間の4%四酸化オスミウムについてインキュベートした。これらをその後、洗浄した後、エタノール中で連続脱水し、酸化プロピレン/LX112中で最終的に包埋した。次に、組織を切片化し、2%酢酸ウラニル、次いでクエン酸鉛で染色した。画像を日立透過電子顕微鏡上で可視化した。
【0084】
ペプシノーゲンELISA
製造元の説明書により、ヒトペプシノーゲンI型(PGI)ELISAキット(Thermo Scientific,EHPGI)を用いてELISAを行った。簡潔には、34日後のhGOを細胞回収溶液(Coming)中に4℃で1時間収集及びインキュベートした後、PBS中で洗浄した。オルガノイドをRIPA緩衝液で可溶化した後、高速で室温で30分間激しくボルテックスした。溶解液をペレット化し、上清を-80℃で収集及び保存した。ELISAのために、試料及び標準物質を技術的な複製物中で実施した。反応物をμQuantマイクロプレートリーダー(Bio Tek)上で測定した。450nmでの吸光度を測定し、570nmの吸光度を減算した。
【0085】
酸分泌アッセイ
酸分泌アッセイを既に説明した通り実施した(Schumacher et al,2015)。hGOをチャンバー付きのカバーガラス(Thermo Scientific)中で生育させ、チャンバーを倒立型共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710)上に置き、実験を5%CO2及び37℃の条件下で実施した(インキュベーションチャンバー、PeCon、ドイツ国エルバッハ)。
【0086】
新鮮に単離したマウス胃底部腺または培養したhGOをアクリジンオレンジ(10μM)とともにインキュベートした後、アクリジンオレンジ蛍光を458nmまたは488nmで励起させ、画像を600~650nm(赤色)または500~550nm(緑色)でそれぞれ収集した。その一方で、hGOの管腔pHをモニターするために、供給電圧比例pH感受性色素、5-(及び-6)-カルボキシSNARF 5F(5mMストック:励起560nm、発光565~605(緑色)及び620~680(赤色)nm:Invitrogen)を管腔中へ微量注入し(46~92nl)、モニターした。蛍光色素を培地中へも添加した。ヒスタミン(100μΜ;Sigma)を培地へ添加した一方で、ファモチジン(100μΜ;Sigma)またはオメプラゾール(100μΜ;Sigma)をヒスタミンの少なくとも30分前にプレインキュベートした。画像をMetaMorphソフトウェア(Molecular Devices、ペンシルベニア州ダウニングタウン地区)を用いて分析した。背景補正した620~680/565~605nm比の値を、標準曲線を用いてpHへ変換した。
【0087】
統計分析
統計的な有意性を、対形成していないスチューデントT検定、または一元配置分散分析をDunnettの多重比較事後検査とともに用いて判定した。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0088】
統計、及び実験の再現性
統計分析を使用しないで、実験試料の規模を決め、特別な無作為化法を使用せず、研究者は実験中盲検ではなかった。統計方法及び基準を図の凡例において説明する。胃底部hGOの分化のためのプロトコルを、実験室における7名の独立したユーザによって、20回超、完了を成功させた。事例全部において、示されるデータは、複数の実験を代表する単一の実験に由来する。
【0089】
例示的な組み合わせ
以下の例は、本明細書の教示が組み合わされ得または適用され得る種々の非徹底的な方法に関する。以下の例は、本出願においてまたは本出願書類のその後の提出において、いかなるときにも呈され得るいかなる請求項の網羅も制限するよう企図するものではないことは理解されるべきである。ディスクレーマーは企図していない。以下の例は、単に説明目的以下のために提供されている。本明細書の種々の教示が数多くの他の方法において配置及び適用され得ることは熟慮される。いくつかの変法が、以下の例において引用されるある特定の特徴を省略し得ることも熟慮される。それゆえ、以下に引用される態様または特徴はいずれも、本発明者らによって、または本発明者らに対して関心のある相続人によって、後日明白に示されていない限り、決定的とみなされるべきではない。何らかの請求項が、本出願において、または以下に引用されるもの以外のさらなる特徴を含む本出願と関連するその後の出願において存在する場合、当該さらなる特徴は、特許性に関するいかなる理由についても追加されたと仮定されてはならない。
【0090】
例1.胃底部組織は、インビトロで生じ、以下のステップを含む。
【0091】
a)哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞を、wnt経路活性化因子、FGFシグナル伝達経路活性化因子(例えば、FGF4)、BMPシグナル伝達経路阻害因子(例えば、ノギン)、及びレチノイン酸と第1の期間接触させ、当該第1の期間は、当該胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分であり、
b)3次元後部前腸スフェロイドを、成長因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸を有する基底膜マトリックス(例えば、マトリゲル)中で、胃底部hGO(hFGO)を含む胃底部系譜を誘導するのに十分な第2の期間懸濁し、
c)ステップb)のhFGOをwnt経路活性化因子及びEGFシグナル伝達経路活性化因子の存在下で、第3の期間培養し、
d)ステップcのhFGOをwntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、及びFGF10とともに第4の期間培養し、
e)ステップdのhFGOをMEK阻害因子と、機能的胃底部細胞タイプを含む胃底部組織を形成するのに十分な期間の第5の期間接触させる(MEK阻害因子は、例えば、PD0325901であり得る)。
【0092】
例2.例1の方法であって、当該第1の期間は、3日間±24時間であり、かつ当該レチノイン酸は、当該期間±24時間の3日目に添加される
【0093】
例3.例1~2に記載の方法であって、当該第2の期間は、3日間±24時間である
【0094】
例4.例1~3に記載の方法であって、当該第3の期間は、11日間±24時間である
【0095】
例5.例1~4のいずれかに記載の方法であって、当該第4の期間は、10日間±24時間である
【0096】
例6.例1~5のいずれかに記載の方法であって、当該第5の期間は、2日間の期間±24時間である
【0097】
例7.例1~6のいずれかに記載の方法であって、ステップe)は、当該胃底部hGOをBMP4シグナル伝達活性化因子と接触させるステップをさらに含む。
【0098】
例8.例1~7のいずれかに記載の方法であって、当該機能的胃底部細胞タイプは、プロトンポンプタンパク質を発現し、かつ酸を分泌する傍細胞である。
【0099】
例9.例1~8のいずれかに記載の方法であって、当該機能的胃底部細胞は、ペプシノーゲンを分泌する主細胞である。
【0100】
例10.例1~9のいずれかに記載の方法であって、当該ステップeは、SOX2+GATA+PDX1上皮を発生させるのに十分な期間実施される。
【0101】
例11.例1~10のいずれかに記載の方法であって、当該ステップd及びステップeは、系譜マーカーMUC5AC、MUC6、PGC、及びGHRLの安定した発現を与えるのに十分な期間実施される。
【0102】
例12.例1~11のいずれかに記載の方法であって、当該胚体内胚葉は、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、及び後腸細胞、多能性幹細胞由来の胚体内胚葉、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞から選択される多能性幹細胞に由来する胚体内胚葉から選択される前駆細胞に由来する。
【0103】
例13.例1~12のいずれかに記載の方法であって、当該胚体内胚葉は、多能性幹細胞をアクチビン、成長因子のTGFベータスーパーファミリーのBMP下位群、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、Wnt3a、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の分子と接触させることに由来する。
【0104】
例14.例1~13のいずれかに記載の方法であって、当該WNT経路活性化因子は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、及びWnt16から選択される1つ以上の分子であり、例えば、Wnt3a、または例えば、約50~約1500ng/mlの濃度のWnt3aである。
【0105】
例15.例1~14のいずれかに記載の方法であって、当該BMPシグナル伝達経路阻害因子は、例えば、ノギン、ドルソモルフィン、LDN189、DMH-1、及びこれらの組み合わせから選択され、当該前駆細胞は、約50~約1500ng/mlの濃度のBMP阻害薬と接触させられる。BMP阻害因子は、BMPシグナル伝達経路を阻害することのできるタンパク質及び/または化学物質であり得る。
【0106】
例16.例1~15のいずれかに記載の方法であって、当該ステップは、インビトロで実施される。
【0107】
例17.例1~16のいずれかに記載の胃組織を含む組成物が産生される。胃組織は、神経支配及び/または血管がないことを特徴とする。
【0108】
例18.胃底部組織は、以下のステップを介して形成される。胃底部hGO(hFGO)をwnt経路活性化薬及びEGFシグナル伝達経路活性化薬と第1の期間、かつMEK阻害因子と第2の期間接触させるステップを含み(当該MEK阻害因子は、例えば、PD0325901であり得る)、当該第1及び第2の期間は、機能的胃底部細胞タイプを形成するのに十分な期間実施され、
当該hFGOは、3次元後部前腸スフェロイドを、基底膜マトリックス中で、成長因子、wnt経路活性化薬、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と、当該3次元後部前腸スフェロイドを前記hFGOへ変換するのに十分な期間接触させることによって得られ、
当該3次元後部前腸スフェロイドは、哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞をwnt経路活性化薬、FGFシグナル伝達経路活性化薬、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と接触させることによって得られる。
【0109】
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【0146】
百分率及び比率はすべて、別段の記載がない限り、重量により算出される。
【0147】
百分率及び比率はすべて、別段の記載がない限り、組成物全体に基づいて算出される。
【0148】
本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最高数値限界が、あらゆる最低数値限界が本明細書に明確に記載されているかのように、当該最低数値限界を含むことは理解されるべきである。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最低数値限界は、あらゆる最高数値限界が本明細書に明確に記載されているかのように、当該最高数値限界を含むであろう。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる数値範囲は、あらゆるより狭い数値範囲が本明細書にすべて明確に記載されているかのように、このようなより広い数値範囲内に収まるこのようなより狭い数値範囲を含むであろう。
【0149】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙される実際の数値に厳格に制限されるものとして理解されることにはなっていない。代わりに、別段の指定がない限り、各このような寸法は、列挙される値及び当該値を取り囲む機能的に等価の範囲の両方を意味するよう企図される。例えば、「20mm」と開示された寸法は、「約20mm」を意味するよう企図される。
【0150】
いかなる相互参照したまたは関連する特許または出願も含む、本明細書に引用されるあらゆる文書は、別段の明確な排除またはさもなければ制限がない限り、本明細書によりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文書の引用も、本明細書で開示または請求されるいかなる発明に関しても、従来技術を認めているわけではなく、あるいはそれを単独で、またはいかなる他の参考文献もしくは参考文献類とのいかなる組み合わせにおいても、いかなるこのような発明も教示、示唆もしくは開示することを認めているわけではない。さらに、本文書における用語の何らかの意味または定義が、参照により組み込まれる文書における同じ用語の何らかの意味または定義と矛盾するほど、本文書における当該用語に割り当てられた意味または定義は規制されなければならない。
【0151】
本発明の詳細な実施形態が説明及び記載されてきたが、種々の他の変更及び改変が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行えることは、当業者に対して明白であろう。それゆえ、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるこのような変更及び改変をすべて網羅することが企図されている。
【配列表】