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特許7463331仮設治具、該仮設治具を用いた人工地盤の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】仮設治具、該仮設治具を用いた人工地盤の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 1/00 20060101AFI20240401BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E01C1/00 A
E01D21/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021182362
(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公開番号】P2023070286
(43)【公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
(72)【発明者】
【氏名】尾添 仁志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特許第7371113(JP,B2)
【文献】特開2000-257006(JP,A)
【文献】特開2011-117274(JP,A)
【文献】特開2000-282403(JP,A)
【文献】米国特許第4687379(US,A)
【文献】特開2019-11581(JP,A)
【文献】特開2006-28902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に打設された鋼管杭と、外径が該鋼管杭の外径より大径の外鋼管及び該外鋼管の上部外周面に取り付けられた仕口部材を有し、前記鋼管杭の上端部に前記外鋼管を被せるようにして設置された格点ブロックと、該格点ブロックの前記外鋼管と前記鋼管杭の外周面との隙間に充填された充填材と、前記格点ブロックの仕口部材に取り付けられて前記格点ブロック同士を相互に連結する桁部材と、該桁部材の上に設置された床版とを備えた人工地盤を、構築する際に用いられる仮設治具であって、
前記鋼管杭における前記格点ブロックの下方に、前記鋼管杭の外周に巻き付いて着脱可能に取り付けられる取付部と、
該取付部の上部から張り出すように設けられ、前記鋼管杭への取付状態で前記格点ブロックの下端部に当接して該格点ブロックを支持すると共に、前記隙間の下方を閉止して前記充填材の注入時に該充填材の漏れるのを防止する支持板部と、
該支持板部の上面に前記格点ブロックにおける外鋼管を囲むように設けられて、前記格点ブロックの水平方向の位置決めと前記格点ブロックから受ける応力を前記支持板部に伝達する位置決め・応力伝達部とを備え、
前記支持板部の上面であって、前記格点ブロックの外鋼管の下端面と接する位置に止水性を有する止水部材が配され、
前記支持板部の上面の少なくとも前記充填材と接する面が撥水加工された仮設治具。
【請求項2】
請求項1記載の仮設治具を用いた人工地盤の構築方法であって、
鋼管杭を打設する杭打設工程と、
前記仮設治具を前記鋼管杭の上部に仮設する治具仮設工程と、
前記格点ブロックの下端を前記仮設治具の支持板部に当接させて設置する格点ブロック設置工程と、
前記位置決め・応力伝達部によって前記格点ブロックの水平方向の位置決めをする位置決工程と、
充填材を各格点ブロックと鋼管杭の隙間に充填して固化させる充填材施工工程と、
仮設治具を撤去する仮設治具撤去工程とを備えた人工地盤の構築方法。
【請求項3】
請求項1に記載の仮設治具を用いた人工地盤の構築方法であって、
鋼管杭を打設する杭打設工程と、
前記仮設治具を前記鋼管杭の上部に仮設する治具仮設工程と、
前記格点ブロックの下端を前記仮設治具の支持板部に当接させて設置する格点ブロック設置工程と、
前記位置決め・応力伝達部によって前記格点ブロックの水平方向の位置決めをする位置決工程と、
既設の格点ブロックの仕口部材との間に桁部材を設置する桁部材設置工程と、
桁部材及び格点ブロックの上に覆工板を設置する覆工板設置工程と、
覆工板の上から施工機械を用いて前記杭打設工程、前記治具仮設工程、前記格点ブロック設置工程、前記位置決工程、前記桁部材設置工程及び覆工板設置工程を行って人工地盤を延伸する人工地盤延伸工程と、
該人工地盤延伸工程を所定長さまで行った後で充填材を各格点ブロックと鋼管杭の隙間に充填して固化させる充填材施工工程と、
仮設治具を撤去する仮設治具撤去工程と、
覆工板を撤去する覆工板撤去工程と、
覆工板を撤去した後で床版を設置する床版設置工程とを備えた人工地盤の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路等の人工地盤を構築する際に用いる仮設治具、該仮設治具を用いた人工地盤の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工地盤の先行技術としては、例えば特許文献1に開示された「道路用人工地盤およびその構築方法」がある。
特許文献1に開示のものは、鋼管杭と格点ブロック及び桁部材で構成された人工地盤であり、鋼管杭と格点ブロックは鋳鋼製の杭頭ブロックを挟んで現場溶接によって接合を行う構造になっている。このような杭頭ブロックを用いることで、施工に際して生じうる施工誤差に対応でき、線形が複雑な道路にも対応することができる。
【0003】
特許文献1の人工地盤の施工は、人工地盤の構築を進める進行方向に、鋼管杭、格点ブロック及び桁部材の構築を繰り返す手延べ式施工で行う。そのため、例えば、傾斜面等における道路の拡幅工事では、構築した人工地盤上での施工ができるので、既存の道路上に重機を設置して鋼管杭、格点ブロック及び桁部材を構築する必要がなく、既存道路交通を確保したまま施工する事ができる。
【0004】
また、人工地盤に関する他の先行技術としては、特許文献2に開示された「道路等の人工地盤及びその構築方法」がある。
特許文献2に開示のものは、鋼管杭と、鋼管杭より太径の外鋼管を有する格点ブロック及び桁部材で構成された人工地盤であり、鋼管杭と格点ブロックは溶接せず、モルタルまたはコンクリートを充填硬化させ固定する構造である。
格点ブロックの外鋼管内側の上部には、鋼管杭上端と当接する鋼板で構成された仮受部材があり、この仮受部材により、鋼管杭上に格点ブロックを仮設した後、モルタル及びコンクリートを充填する前の状態で格点ブロック及び桁部材の自重を受ける構造である。
【0005】
施工に際しては、鋼管杭上に格点ブロックを載荷後、格点ブロックの外鋼管から位置決め装置であるボルトを挿入・締込みを行って位置決めを行い仮固定し、モルタルまたはコンクリートを充填して格点ブロックを固定する。
この位置決め装置によれば、溶接不要で、容易に鋼管杭と格点ブロックの位置決めができるとともに、鋼管杭と格点ブロックとの間に充填するモルタル又はコンクリートが硬化するまで相対移動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-282403号公報
【文献】特開2011-117274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、鋼管杭の施工誤差の補正が容易なので、線形が複雑な道路にも適用することができ、コストダウンと工期短縮を実現できる。
しかし、杭頭ブロックの溶接を必須としており、現場において高所での溶接作業が必要となる。このため、溶接品質の確保のため高度の技量を有する溶接技能者が必要であり、また溶接時における天候に制約があるため、工程に余裕を持たせる必要があるという問題がある。
【0008】
この点、特許文献2は、特許文献1の課題を解決するためになされたもので、鋼管杭の上部に設けた格点ブロックによって鋼管杭の芯ずれ調整が容易で、かつ現場における溶接作業が不要なため施工が容易となる。
この特許文献2のものは、鋼管杭と格点ブロックとの間にモルタル又はコンクリートを充填する際に、このモルタル又はコンクリートの漏れを防止するためにグラウトシールという仮設治具を用いている。しかし、この仮設治具は自重とモルタル又はコンクリートの重量のみしか負担できないため、モルタル又はコンクリートの充填後、これが一定の強度を発揮するまでは、次径間の鋼管杭打設及び格点ブロック及び桁部材の仮設を進める事ができないという問題がある。
【0009】
また、格点ブロックの位置決め装置であるボルトは、格点ブロックの外鋼管に貫通孔を開け、この内側にナットを溶接し、上記ナットにボルトを締めこみ、モルタルまたはコンクリート硬化後に取り外す構造である。このため、モルタル又はコンクリートの充填前にボルトねじ部を養生しておく必要があり、また、モルタル又はコンクリートの硬化後にボルトを取り外した後、ボルト孔にモルタルの充填若しくは化粧ボルトの取付けなどを行う必要があり、施工性が悪いという問題もある。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、人工地盤を構築するに際して溶接が不要でかつ施工性に優れた構築方法を実現できる仮設治具、該仮設治具を用いた人工地盤の構築方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る仮設治具は、地盤に打設された鋼管杭と、外径が該鋼管杭の外径より大径の外鋼管及び該外鋼管の上部外周面に取り付けられた仕口部材を有し、前記鋼管杭の上端部に前記外鋼管を被せるようにして設置された格点ブロックと、該格点ブロックの前記外鋼管と前記鋼管杭の外周面との隙間に充填された充填材と、前記格点ブロックの仕口部材に取り付けられて前記格点ブロック同士を相互に連結する桁部材と、該桁部材の上に設置された床版とを備えた人工地盤を、構築する際に用いられる仮設治具であって、
前記鋼管杭における前記格点ブロックの下方に、前記鋼管杭の外周に巻き付いて着脱可能に取り付けられる取付部と、
該取付部の上部から張り出すように設けられ、前記鋼管杭への取付状態で前記格点ブロックの下端部に当接して該格点ブロックを支持すると共に、前記隙間の下方を閉止して前記充填材の注入時に該充填材の漏れるのを防止する支持板部と、
該支持板部の上面に前記格点ブロックにおける外鋼管を囲むように設けられて、前記格点ブロックの水平方向の位置決めと前記格点ブロックから受ける応力を前記支持板部に伝達する位置決め・応力伝達部とを備え、
前記支持板部の上面であって、前記格点ブロックの外鋼管の下端面と接する位置に止水性を有する止水部材を配され、
前記支持板部の上面の少なくとも前記充填材と接する面が撥水加工されているものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載の仮設治具を用いた人工地盤の構築方法であって、
鋼管杭を打設する杭打設工程と、
前記仮設治具を前記鋼管杭の上部に仮設する治具仮設工程と、
前記格点ブロックの下端を前記仮設治具の支持板部に当接させて設置する格点ブロック設置工程と、
前記位置決め・応力伝達部によって前記格点ブロックの水平方向の位置決めをする位置決工程と、
充填材を各格点ブロックと鋼管杭の隙間に充填して固化させる充填材施工工程と、
仮設治具を撤去する仮設治具撤去工程とを備えたものである。
【0013】
(3)また、上記(1)に記載の仮設治具を用いた人工地盤の構築方法であって、
鋼管杭を打設する杭打設工程と、
前記仮設治具を前記鋼管杭の上部に仮設する治具仮設工程と、
前記格点ブロックの下端を前記仮設治具の支持板部に当接させて設置する格点ブロック設置工程と、
前記位置決め・応力伝達部によって前記格点ブロックの水平方向の位置決めをする位置決工程と、
既設の格点ブロックの仕口部材との間に桁部材を設置する桁部材設置工程と、
桁部材及び格点ブロックの上に覆工板を設置する覆工板設置工程と、
覆工板の上から施工機械を用いて前記杭打設工程、前記治具仮設工程、前記格点ブロック設置工程、前記位置決工程、前記桁部材設置工程及び覆工板設置工程を行って人工地盤を延伸する人工地盤延伸工程と、
該人工地盤延伸工程を所定長さまで行った後で充填材を各格点ブロックと鋼管杭の隙間に充填して固化させる充填材施工工程と、
仮設治具を撤去する仮設治具撤去工程と、
覆工板を撤去する覆工板撤去工程と、
覆工板を撤去した後で床版を設置する床版設置工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の仮設治具は、鋼管杭への取付状態で格点ブロックの下端部に当接してこれを支持すると共に充填材の漏れるのを防止する支持板部と、該支持板部の上面に前記格点ブロックにおける外鋼管を囲むように設けられて前記格点ブロックの水平方向の位置決めと前記格点ブロックから受ける応力を前記支持板部に伝達する位置決め・応力伝達部とを備えたことで、道路等の人工地盤の構築時に使用することにより、鋼管杭と格点ブロックの間に充填するモルタル又はコンクリート等の充填材の硬化を待つことなく、次径間の鋼管杭打設及び格点ブロック及び桁部材の仮設を進めることができ、従来よりも大幅に工程短縮を図ることができる。
また、支持板部の上面に前記格点ブロックの外鋼管の下端面と接する位置に止水性を有する止水部材を配し、前記支持板部の上面の少なくとも前記充填材と接する面に撥水加工を施すことにより、従来よりも施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の本実施の形態に係る仮設治具を説明するための図であって、図2の矢視A-A断面図である。
図2】本発明の本実施の形態に係る仮設治具の平面図である。
図3図2の矢視B-B断面図である。
図4図3におけるボルトを省略した状態での矢視C-C断面図である。
図5図1におけるボルトを省略した状態での矢視D-D図(図5(a))、及び図5(a)の矢視E-E図(図5(b))である。
図6】本実施の形態に係る仮設治具の設置状態の説明図であって、格点ブロックが設置される直前の状態を示す図である。
図7】本実施の形態の仮設治具を使用して構築される人工地盤の説明図である。
図8】本実施の形態に係る仮設治具を用いた人工地盤の構築方法の説明図である(その1)。
図9】本実施の形態に係る仮設治具を用いた人工地盤の構築方法の説明図である(その2)。
図10】本実施の形態に係る仮設治具を用いた人工地盤の構築方法の説明図である(その3)。
図11】本実施の形態に係る仮設治具を用いた人工地盤の構築方法の説明図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態に係る仮設治具は人工地盤を構築する際に用いられるものであるため、仮設治具の説明に先だって人工地盤について図7に基づいて説明する。
人工地盤51は、図7に示すように、地盤に打設された鋼管杭53と、鋼管杭53の外径より大径の外鋼管55及び外鋼管55の上部外周面に取り付けられた仕口部材57を有し鋼管杭53の上端に外鋼管55を被せるようにして設置された格点ブロック59と、格点ブロック59の外鋼管55と鋼管杭53の外周面との隙間に充填されたモルタル又はコンクリート等の充填材61(以下、単に「充填材61」という)と、格点ブロック59の仕口部材57に取り付けられて格点ブロック59同士を相互に連結する桁部材63と、桁部材63の上に設置された床版65とを備えている。なお、図7に示す格点ブロック59は、鋼管杭53の杭頭部が当接する仮受け部材58を有している。
【0017】
本実施の形態の仮設治具は上記のような人工地盤51を構築する際に用いられるものであって、鋼管杭53における格点ブロック59の下方に鋼管杭53の外周に巻き付いて着脱可能に取り付けられるものである。このため、本実施の形態の仮設治具1は、図1図2に示すように、周方向で2分割されたものが、ボルト接合することで鋼管杭53に装着できる構造になっている。
【0018】
このような構造の仮設治具1は、図1図2に示すように、鋼管杭53における格点ブロック59の下方に着脱可能に取り付けられる取付部3と、取付部3の上部から張り出すように設けられた支持板部5と、支持板部5の上面に格点ブロック59における外鋼管55を囲むように設けられて(図6参照)、格点ブロック59の水平方向の位置決めと格点ブロック59から受ける応力を支持板部5に伝達する位置決め・応力伝達部7とを備えている。さらに、支持板部5の上面であって格点ブロック59の外鋼管55の下端面と接する位置に止水部材Yが配され、支持板部5の上面の少なくとも充填材61と接する面に撥水加工が施されている。ここで、撥水加工された箇所を撥水加工部Zとする。
以下、各構成及びそれに付属するものについて詳細に説明する。
【0019】
<取付部>
取付部3は、仮設治具1の一部を構成し、仮設治具1を鋼管杭53に取り付ける機能を有する部分であり、鋼管杭53における格点ブロック59の下方に鋼管杭53の外周に巻き付いて着脱可能に取り付けられるように構成されている。
本実施の形態の取付部3は、円筒体を半割した半円筒体9が組み合わされたものである。各半円筒体9の下端部には、図1に示すように、応力上の必要に応じて補強用の第1補強リブ11が設けられている。
【0020】
また、各半円筒体9は、他方の半円筒体9と接合するための接合部13を有しており、この接合部13は、図3図4に示すように、各半円筒体9を円筒状に組み合わせたときに対向して当接するフランジ状の当接面部15と、当接面部15に設けられた補強用の第2補強リブ17と、当接面部15に設けられたボルト孔19と、ボルト孔19に挿通して各半円筒体9を接合する接合ボルト21と、対向する当接面部15の間に設けられた止水部材X(図3参照)とを備えている。
なお、本実施の形態では、接合部13を支持板部5の上面よりも突出させないようにしているので、格点ブロック59と鋼管杭53との隙間に充填される充填材61(モルタル又はコンクリート)(図7参照)の断面欠損防止が図れるとともに、仮設治具1の取り外しを容易になっている。
【0021】
各半円筒体9を円筒状に組み合わせた筒状体の内径は、鋼管杭径の寸法公差の上限よりわずかに大きくなっており、鋼管杭53へのはめ込みが容易である。他方、各半円筒体9を円筒状に組み合わせた筒状体内面の円弧長(L1+L2)は鋼管杭53の外周長/分割数よりも短くなっており、当接面部15を対向させた状態で接合ボルト21を締め込むことで、各半円筒体9が引っ張られて半筒状体内周面と鋼管杭外周面が密着することができ、仮設治具1と鋼管杭53を固定することができる。
【0022】
接合ボルト21を締め込んで取付部3を固定した時の耐荷力は、接合ボルト21の締め付けによる鋼管外周面との摩擦力によるが、鋼管杭表面と取付部3である筒状体内面の摩擦係数、筒状体の有効幅と長さ、使用する接合ボルト21の張力、本数により調整可能である。
仮設治具1に必要な摩擦力は、図8(e)に示す鋼管杭の負担する人工地盤構成要素の重量と、覆工板45、施工機械37および次径間の施工機械37の重量の合計以上とすればよい。すなわち、施工時に格点ブロック59に作用する全応力を、仮設治具1で負担することで、固化した充填材61による荷重負担を期待する必要がなくなり、充填材61の硬化を待たず、または充填をすることなく、次径間以降の鋼管杭、格点ブロック59及び桁部材63の構築を進める事ができる。また、このようにすれば、格点ブロック59における仮受け部材58を省略できるとともに、杭頭高さの精度管理も緩和できる。
【0023】
なお、上記の場合において、半円筒体9を組み合わせた筒状体内面の円弧長(L1+L2)をとした場合、筒状体の長さhの決め方の具体例を説明すると以下の通りである。
すなわち、筒状体の長さhは、接合ボルト21に導入された張力により鋼管杭の外周面と前記筒状体の内周面との間に発生する静止摩擦力が、仮設時に発生する重量Wより大きくなるように決定する。ここで想定する仮設時の重量Wは、仮設治具1、格点ブロック59、鋼管杭53の間に充填する充填材61、桁部材63、覆工板45、施工機械37及び施工機械37が吊り上げる鋼管杭及び桁部材63の重量の総和である。
具体的には、照査式:(仮設時の想定重量W)×(仮設時の安全係数α≧1)≦(L1+L2)×h×μ(摩擦係数)×N(仮設治具1を締める接合ボルト21の張力またはトルクから換算する垂直抗力)×n(接合ボルト本数)を解いて決定する。
【0024】
<支持板部>
支持板部5は、取付部3の上部から張り出すように設けられたドーナツ状の平板からなり、鋼管杭53への取付状態で格点ブロック59の下端部に当接してこれを支持すると共に鋼管杭53と格点ブロック59の隙間の下方を閉止して充填材61の注入時に充填材61の漏れを防止する機能を有している。
支持板部5は、取付部3の各半円筒体9にそれぞれ設けられた半ドーナツ板23が組み合わされることでドーナツ状の平板となるものである。
支持板部5の下面には、応力上の必要に応じて、支持板部5と取付部3を繋ぐように第3補強リブ25が設けられている。
【0025】
支持板部5の上面は充填材61と接することになるので、撥水加工を施し撥水加工部Zとする。これにより、支持板部5と充填材61との剥離が容易となる。撥水加工は、樹脂系材料、油性材料等の塗布、配置などによることが挙げられるが、支持板部5と充填材61との剥離を容易にするものであれば上記に限定しない。
【0026】
撥水加工部Zは、仮設治具1を撤去時に、硬化した充填材61側に残置しても、仮設治具1側に残置してもよいが、充填材61側と密着し、仮設治具1側との剥離性をよくすると、充填材61の下端面の保護も兼ねることもできる。
これにより、硬化後の充填材61と支持板部5が容易に剥離し、構築完了後の仮設治具1の撤去が容易に可能となる。
【0027】
また、仮設治具1の組み立て状態において、相対する半ドーナツ板23の間に、充填材61の充填時における漏洩防止用の止水部材Xを配置する。この止水部材Xの材質については、硬質ゴムを想定しているが、止水性かつ弾性かつ可撓性のあるものであれば、これに代替しても問題ない。また、止水部材Xは、相対するドーナツ状の平板の何れか若しくは両方に予め貼付してもよいし、施工時に別途設けるようにしてもよい。
止水部材Xの幅は、組み立て状態での半ドーナツ板23の欠損部の幅よりも大きな可撓性部材とすると接合ボルト21の締め付けにより、確実な水密性が得られるので望ましい。
【0028】
またさらに、格点ブロック59の下端面と支持板部5の当接面には、図6に示すように、止水部材Yを配する。止水部材Yは、格点ブロック59下端面又は支持板部5の少なくともどちらか一方に配置する。
止水部材Yは弾性体で、合成ゴムあるいは樹脂製の弾性体の使用を想定しているが、格点ブロック59下端面と半ドーナツ板23の上面に挟まれた際に隙間を生じさせず、止水性のあるものであれば、上記に限定しない。
これにより、充填材61を充填した後に、格点ブロック59下端面と支持板部5の当接面からの充填材61を含む余剰水の漏出を防止し、充填材61の充填部の品質管理と、周囲への汚れの付着を防止できる。また、止水部材Yの強度が一定以上あれば、格点ブロック59下端面と支持板部5が不均等に接触した際の応力緩和効果も期待できる。
【0029】
<位置決め・応力伝達部>
位置決め・応力伝達部7は、支持板部5の上面に格点ブロック59における外鋼管55を囲むように設けられて格点ブロック59の水平方向の位置決めと格点ブロック59から受ける応力を支持板部5に伝達する機能を有している。
【0030】
本実施の形態の位置決め・応力伝達部7は、支持板部5の上面に格点ブロック59における外鋼管55を囲むように複数設けられたブラケット27と、先端が格点ブロック59の外鋼管55の周面に当接可能に設けられたボルト33によって構成されている。
【0031】
《ブラケット》
ブラッケト27は、支持板部5を構成する各半ドーナツ板23上にそれぞれ4個、合計8個設けられている。各ブラケット27は、鋼管杭53を囲むようにほぼ等間隔(本例では45度間隔)で放射状に設けられている。
【0032】
各ブラケット27は、図1図2図5に示すように、支持板部5に対して略径方向に立設された一対の径方向板29と、径方向板29の一端側を繋ぐように配置された繋ぎ板31とを備え、平面視でコ字形状に形成されている。
そして、繋ぎ板31にはボルト孔30が形成され、ナット35が取り付けられている。
【0033】
支持板部5と取付部3を繋ぐように設けられた第3補強リブ25は、支持板部5におけるブラケット27が設けられた位置の下面に配置されている。
【0034】
《ボルト》
ボルト33は、ブラケット27に取り付けられ、その先端が外鋼管55に対して離接可能になっており、先端が格点ブロック59の外鋼管55の周面に当接して外鋼管55の位置決めと外鋼管55から受ける力をブラケット27に伝達する機能を有している。
図6は、補強治具を鋼管杭53に装着し、格点ブロック59を設置する直前の状態、すなわち格点ブロック59の仮受け部材58が鋼管杭53の上端に当接する前の状態を示している。
格点ブロック59を鋼管杭53に設置した状態で、8本のボルト33を調整することで、格点ブロック59の水平方向の位置を、格点ブロック59の外鋼管55を介して調整することができる。
ボルト33は、中心方向に向かって水平に延伸し、格点ブロック59の平面位置を固定可能である。なお、図1図2図5図6に示したボルト孔30にナット35をブラケット27に取り付ける代わりに、ブラケット27に設けられた貫通孔の内側にねじ切り加工を行ってもよい。
【0035】
また、位置決め・応力伝達部7は、ブラケット27とボルト33によるねじ機構のほか、固定機能を有するシリンダー、油圧ジャッキ等を用いてもよく、本目的を達成できれば、構造形式を限定しない。
【0036】
次に、上記のように構成された仮設治具1を用いて人工地盤51を構築する方法の例を、図8図11に基づいて説明する。なお、この方法の一部、具体的には下記のステップ2、ステップ4およびステップ9以外は、公知の技術を利用しても良い。
<ステップ1[鋼管杭の打設]>
図8(a)に示すように、鋼管杭53を施工機械37によって地盤39へ鉛直に打設する。鋼管杭53の打設にあたっては、鋼管杭53頂部の打設後高さを、設計上の許容誤差に収めることが重要である。この手段としては、鋼管杭53の長さを予め設計長より長めに製作し、鋼管杭打設後に杭頂部を計画高さ通りになるようガス切断機等で現場切断する方法が一般的であるが、鋼管杭打設用の孔の施工精度を高めて、設計長通りの鋼管杭53を打設する方法を採用しても構わない。
【0037】
<ステップ2[仮設治具の取付け]>
図8(b)に示すように、打設した鋼管杭53に、仮組した仮設治具1を所定の高さへ取付ける。所定の高さとは、格点ブロック59上端が、設定された高さとなる位置である。
仮設治具1の取付けにあたっては、仮設治具1を施工機械37で吊り上げ、鋼管杭53の上部まで移動させ、その後所定の設置高さまで下降させる。下降完了後、仮組した仮設治具1における取付部3を接合ボルト21で締結し、これによって鋼管杭53へ仮設治具1が取り付けられる。ここで、仮設治具1の支持板部5の上面には、格点ブロック59の外鋼管55の下端面と接する位置に止水部材Yを配置する。さらに、支持板部5の上面の充填材61と接する予定の面には、撥水加工を施して撥水加工部Zを形成する。
【0038】
<ステップ3[格点ブロックの仮設]>
図8(c)に示すように、鋼管杭53及び仮設治具1の上部に、格点ブロック59を仮設する。
なお、格点ブロック59は、前述したように、外径が鋼管杭53の外径より大径で内側上部に仮受け部材58が設けられた外鋼管55及び外鋼管55の上部外周面に取り付けられた仕口部材57から構成される。なお、本発明の仮設治具1を使用する際は、仮設冶具1が施工時荷重をすべて負担するので、仮受け部材58は必ずしも鋼管杭53上端に接していなくてもよい。その一方で、仮設治具1における支持板部5の上面と格点ブロック59の下端面とは、当接することが必須となる。
また、格点ブロック59の上部には、図7に示すように充填材61充填用の開口部43が設けられている。これについては、充填材61を充填後に蓋を取り付ける事を標準とするが、プレキャスト床版65を用い、かつプレキャスト床版65のハンチ部によって開口部43が完全に埋まるのであれば、蓋は不要とする。
【0039】
<ステップ4[格点ブロックの位置決め・仮固定]>
仮設治具1に取り付けられた位置決め・応力伝達部7のボルト33を用い、格点ブロック59の水平位置の調整を行う。調整後、位置決め・応力伝達部7のボルト33を更に締込み、全てのボルト33の先端を格点ブロック59の外鋼管55により押し付けるように当接させることで、鋼管杭53と格点ブロック59を仮固定する。
【0040】
<ステップ5[桁部材の仮設]>
図9(d)(e)に示すように、格点ブロック59の仕口部材57と既に構築済みの格点ブロック59の仕口部材57を連結する桁部材63を仮設する。
【0041】
<ステップ6[覆工板の敷設]>
図9(e)に示すように、格点ブロック59及び桁部材63上に、施工機械37を搭載するための覆工板45を敷設する。
【0042】
<ステップ7[繰り返し構築]>
図9(f)に示すように、ステップ1~ステップ6を繰り返すことで、覆工板45が敷設された状態の人工地盤を延伸するように構築する。
覆工板45に施工機械37を搭載して施工を行うと、格点ブロック59に鉛直力の他これを回転させようとする応力が作用するが、鉛直荷重は支持板部5で支持され、また回転させようとする応力はボルト33、ブラケット27、支持板部5及び取付部3を介して鋼管杭53にスムーズに流れる。したがって、格点ブロック59と鋼管杭53の隙間に充填される充填材61(モルタル又はコンクリート等)の硬化を待たずに次工程へ進める事ができるため,ステップ4以降であれば充填材61の充填はいつでも可能である。
【0043】
<ステップ8[充填材61の充填]>
図10に示すように、鋼管杭53、仮設治具1及び格点ブロック59で囲まれた空間に、充填材61を格点ブロック59の上方に設けられた開口部43から充填する。その後、充填材61が所定の強度を発現するまで硬化させる。
なお、本実施の形態の仮設治具1を用いると、格点ブロック59の外鋼管55にボルト孔を開ける必要がないので、充填材61の充填に際して養生等の必要がなく、施工性に優れている。
【0044】
<ステップ9[仮設治具の撤去]>
充填材61の硬化後、仮設治具1を鋼管杭53から撤去する。撤去に際しては、仮設治具1の取付部3の接合ボルト21を外し、仮設治具1の接合部13から分割して、格点ブロック59の下方から取り除くことで簡単に取り外すことができる。
【0045】
<ステップ10[覆工板の撤去]>
図11(g)に示すように、施工機械37搭載用の覆工板45を撤去する。
【0046】
<ステップ11[床版の施工]>
図11(h)に示すように、格点ブロック59及び桁部材63上に、床版65を施工する。これで、道路等の人工地盤51の構築作業が完了する。
なお、本発明に係る仮設治具1を用いて人工地盤51を構築する方法について、上記事例では、ステップ8にて[充填材61の充填]を行ったが、本発明はそれに限定されない。「充填材61の充填」は、ステップ4[格点ブロックの位置決め・仮固定]からステップ7[繰り返し構築]の間であれば、いつでも行うことができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態の仮設治具1を用いた場合には、仮設治具1によって仮設段階の荷重を支持できるので、格点ブロック59と鋼管杭53の隙間に充填材61の注入工程を後工程にすることができ、効率的な人工地盤51の構築施工が可能となる。
【0048】
なお、上記の実施の形態の仮設治具1は2分割の構造であったが、本発明はこれに限られず、仮設治具1の分割数は運搬等の利便性を考慮して適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 仮設治具
3 取付部
5 支持板部
7 位置決め・応力伝達部
9 半円筒体
11 第1補強リブ
13 接合部
15 当接面部
17 第2補強リブ
19 ボルト孔
21 接合ボルト
23 半ドーナツ板
25 第3補強リブ
27 ブラケット
29 径方向板
31 繋ぎ板
30 ボルト孔
33 ボルト
35 ナット
37 施工機械
39 地盤
43 開口部
45 覆工板
51 人工地盤
53 鋼管杭
55 外鋼管
57 仕口部材
58 仮受け部材
59 格点ブロック
61 充填材
63 桁部材
65 床版
X 止水部材
Y 止水部材
Z 撥水加工部
L1、L2 筒状体内面の円弧長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11