(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240401BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240401BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240401BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240401BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240401BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240401BHJP
H01M 50/586 20210101ALN20240401BHJP
H01M 50/591 20210101ALN20240401BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/538
H01M4/13
H01M10/0525
H01G11/70
H01M50/586
H01M50/591 101
(21)【出願番号】P 2021186979
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/176906(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/39
H01M 50/50-50/598
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースと、
前記電池ケースに収容され、かつ、帯状の第1電極板と、該第1電極板とは極性が異なる帯状の第2電極板とが、帯状のセパレータを介して長手方向に巻回された巻回電極体と、
を備える電池であって、
前記第1電極板は、前記長手方向に延びた、第1長端辺、および、該第1長端辺と異なる第2長端辺を有
する第1電極板本体部を含み、
前記第1電極板は、第1電極芯体と、該第1電極芯体上に形成された第1電極活物質層と、を備えており、
前記第1電極芯体は、前記第1電極活物質層が形成された第1電極活物質層形成部と、前記第1電極活物質層が形成されていない第1電極活物質層未形成部と、を有しており、
前記第1長端辺には、
前記第1長端辺から突出する複数の第1電極タブが設けられており、
ここで、前記第1電極板の巻き始め端部における、
前記第1電極板本体部における前記第1長端辺側の第1角部には、第1切り欠き部が設けられており、
前記第1切り欠き部の少なくとも一部は、前記第1電極活物質層未形成部に設けられて
おり、
複数の前記第1電極タブが積層されて集電体に接合された、電池。
【請求項2】
前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1電極活物質層未形成部は、保護層を備えており、
前記第1切り欠き部は、前記保護層を備えた部分に設けられている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記保護層の厚みは、前記第1電極活物質層の厚みよりも小さい、請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記第1切り欠き部は、レーザカットにより形成された部位である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記第1切り欠き部は、前記第1電極活物質層未形成部内に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記第1切り欠き部は、R形状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板であり、
前記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層と、を備えており、
前記第1切り欠き部の、前記第2長端辺側の端部は、前記セパレータを介して前記負極活物質層に対向している、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
巻回軸に沿う方向における、前記第1電極板本体部の長さは20cm以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記第1電極板の巻き終わり端部における、前記第1長端辺側の第2角部には、第2切り欠き部が設けられており、
前記第2切り欠き部の形状と、前記第1切り欠き部の形状とは、異なっている、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記第1電極板の巻き始め端部における、前記第2長端辺側の第3角部には、切り欠き部が形成されていない、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
電池ケースと、
前記電池ケースに収容され、かつ、帯状の第1電極板と、該第1電極板とは極性が異なる帯状の第2電極板とが、帯状のセパレータを介して長手方向に巻回された巻回電極体と、
を備える電池であって、
前記第1電極板は、前記長手方向に延びた、第1長端辺、および、該第1長端辺と異なる第2長端辺を有する第1電極板本体部を含み、
前記第1電極板は、第1電極芯体と、該第1電極芯体上に形成された第1電極活物質層と、を備えており、
前記第1電極芯体は、前記第1電極活物質層が形成された第1電極活物質層形成部と、前記第1電極活物質層が形成されていない第1電極活物質層未形成部と、を有しており、
前記第1長端辺には、前記第1長端辺から突出する複数の第1電極タブが設けられており、
ここで、前記第1電極板の巻き始め端部における、前記第1電極板本体部における前記第1長端辺側の第1角部には、第1切り欠き部が設けられており、
前記第1切り欠き部の少なくとも一部は、前記第1電極活物質層未形成部に設けられており、
前記第1電極板の巻き終わり端部における、前記第1電極板本体部における前記第1長端辺側の第2角部には、第2切り欠き部が設けられている、電池。
【請求項13】
前記第2切り欠き部の形状と、前記第1切り欠き部の形状とは、異なっている、請求項12に記載の電池。
【請求項14】
前記第1切り欠き部の縁部の前記第1電極芯体の厚みは、他の部分の前記第1電極芯体の厚みよりも大きい、請求項12または13に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、例えば、第1電極と、該第1電極と極性が異なる第2電極とを有する発電要素を備えている。特許文献1では、第1の端辺と第2の端辺とを有する矩形状シートで構成された電極が開示されている。同公報に開示された電池では、発電要素として、かかる矩形状シート電極を、セパレータを介して重ね合わせた電極組立体を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、この種の電池における発電要素として、例えば、帯状の第1電極板と帯状の第2電極板とが、帯状のセパレータを介して長手方向に巻回された、いわゆる巻回電極体が用いられることがある。本発明者は、巻回電極体を備えた電池における正負極が短絡するリスクをより小さくしたい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される技術によると、電池ケースと、上記電池ケースに収容され、かつ、帯状の第1電極板と、該第1電極板とは極性が異なる帯状の第2電極板とが、帯状のセパレータを介して長手方向に巻回された巻回電極体と、を備える電池が提供される。上記第1電極板は、上記長手方向に延びた、第1長端辺、および、該第1長端辺と異なる第2長端辺を有している。上記第1電極板は、第1電極芯体と、該第1電極芯体上に形成された第1電極活物質層と、を備えている。上記第1電極芯体は、上記第1電極活物質層が形成された第1電極活物質層形成部と、上記第1電極活物質層が形成されていない第1電極活物質層未形成部と、を有している。上記第1長端辺には、複数の第1電極タブが設けられている。ここで、上記第1電極板の巻き始め端部における、上記第1長端辺側の第1角部には、第1切り欠き部が設けられている。上記第1切り欠き部の少なくとも一部は、上記第1電極活物質層未形成部に設けられている。
【0006】
第1角部は、第1電極板のなかでも、特に折れ曲がりやすい部位の一つといえる。かかる構成の電池では、折れ曲がりやすい第1角部に第1切り欠き部を設けることによって、第1角部の折れ曲がりを抑制することができる。第1角部の折れ曲がりを抑制することによって、巻回電極体内のセパレータの損傷を抑制することができ、延いては正負極の短絡を抑制することができる。
【0007】
また、ここで開示される電池の一態様では、上記第1電極板は正極板であり、上記第2電極板は負極板である。負極板よりも、正極板において、第1角部が折れ曲がりやすい。そのため、上記構成の電池において、ここで開示される技術の効果が好適に実現され得る。
【0008】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1電極活物質層未形成部は、保護層を備えている。上記第1切り欠き部は、上記保護層を備えた部分に設けられている。かかる構成によると、安全性をより向上させることができる。
【0009】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記保護層の厚みは、上記第1電極活物質層の厚みよりも小さい。かかる構成の電池において、ここで開示される技術の効果が好適に実現され得る。
【0010】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1切り欠き部は、レーザカットにより形成された部位である。かかる構成によると、上記短絡抑制効果に加えて、電池の生産性を向上することができる。
【0011】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1切り欠き部は、上記第1電極活物質層未形成部内に形成されている。かかる構成によると、電池容量を確保することができる。
【0012】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1切り欠き部は、R形状である。かかる構成によると、第1切り欠き部内での折れ曲がりを抑制することができる。
【0013】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1電極板は正極板であり、上記第2電極板は負極板である。上記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層と、を備えている。上記第1切り欠き部の、上記第2長端辺側の端部は、上記セパレータを介して上記負極活物質層に対向している。かかる構成によると、安全性をより向上させることができる。
【0014】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1電極板は、第1電極板本体部と、上記第1長端辺に設けられた上記複数の第1電極タブと、を備えている。巻回軸に沿う方向における、上記第1電極板本体部の長さは20cm以上である。かかる構成の電池において、ここで開示される技術の効果が好適に実現され得る。
【0015】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1電極板の巻き終わり端部における、上記第1長端辺側の第2角部には、第2切り欠き部が設けられている。上記第2切り欠き部の形状と、上記第1切り欠き部の形状とは、異なっている。かかる構成によると、より折れ曲がりにくい形状の切り欠き部を第1切り欠き部とすることができるため、上記短絡抑制効果をよりよく実現することができる。
【0016】
また、ここで開示される電池の他の一態様では、上記第1電極板の巻き始め端部における、上記第2長端辺側の第3角部には、切り欠き部が形成されていない。かかる構成によると、電池容量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な断面図である。
【
図3】封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図4】集電体が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る電極体の構成を示す模式図である。
【
図6】一実施形態に係る正極板を模式的に示す平面図である。
【
図7】一実施形態に係る正極板の作製手順を説明する平面図である。
【
図8】枠A内に示された凹部の形状の他の例を示す平面図である。
【
図9】枠A内に示された凹部の形状の他の例を示す平面図である。
【
図10】
図7の枠A内に示された凹部の形状の他の例を示す平面図である。
【
図11】枠D内に示された凹部の切断部位の一例を説明する平面図である。
【
図12】枠D内に示された凹部の切断部位の一例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であってここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない電池(ここで開示される技術においては、二次電池)の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味するとともに、Aを上回りBを下回る場合をも包含する。
【0019】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。本明細書では、二次電池を単に「電池」とも称する。
【0020】
図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な断面図である。また、本明細書において参照する図面における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、Dは「下」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池1の設置形態を何ら限定するものではない。
【0021】
図1,2に示されているように、電池1は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電体50と、負極集電体60と、インシュレータ70と、ガスケット90と、を備えている。図示は省略するが、電池1は、ここではさらに電解液を備えている。電池1は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0022】
電池ケース10は、電極体20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。なお、電池ケース10の内部には、電極体20の他に、電解液(図示省略)も収容されている。かかる電解液については、リチウムイオン二次電池において使用され得るものを特に制限なく使用することができ、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため詳細な説明を省略する。
【0023】
電池ケース10は、開口部12hを有する外装体12と、開口部12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。外装体12は、
図1に示すように、平面矩形の底壁12aと、底壁12aの対向する一対の辺から高さ方向Zに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、底壁12aの対向する一対の辺から高さ方向Zに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、を備えている。この実施形態では、第1側壁12bは、底壁12aの対向する一対の長辺から延びた長側壁である。また、第2側壁12cは、底壁12aの対向する一対の短辺から延びた短側壁である。この実施形態では、第2側壁12cの面積は、第1側壁12bの面積よりも小さい。
図2に示されているように、底壁12aは、開口部12hと対向している。封口板14は、外装体12の開口部12hを封口している。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0024】
封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後に電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。端子引出孔18、19は、封口板14の幅方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を高さ方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0025】
封口板14には、正極端子30および負極端子40のそれぞれが取り付けられている。正極端子30は、封口板14の幅方向Yの一方側(
図1、
図2の左側)に配置されている。負極端子40は、封口板14の幅方向Yの他方側(
図1、
図2の右側)に配置されている。正極端子30には、例えば、アルミニウム等が用いられる。負極端子40には、例えば、銅等が用いられる。
【0026】
正極端子30は、封口板14の外側の表面に配置される平板状の基部31と、基部31から高さ方向Zの下側(底壁12a側)に延びる軸部32と、を有する。正極端子30の基部31は、封口板14の外側の表面に露出している。正極端子30の軸部32は、端子引出孔18を挿通して封口板14の外部から内部へと延びている。軸部32は、電池ケース10の内部で、後述する正極集電体50の第1集電部51の貫通孔を挿通して、第1集電部51に固定されている。正極端子30は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18を囲む周縁部分に固定されている。なお、電池1では、負極端子40も正極端子30と略同様の構造を有している。そのため、負極端子40の構造について、詳細な図示と説明とを省略する。
図2中における符号41は負極端子40の基部であり、符号42は軸部である。
【0027】
封口板14の外側の面には、板状の外部導電部材35,45が取り付けられている。正極側の外部導電部材35は、正極端子30と電気的に接続されている。負極側の外部導電部材45は、負極端子40と電気的に接続されている。外部導電部材35,45は、複数の電池1を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。外部導電部材35,45は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。外部導電部材35,45は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。ただし、外部導電部材35,45は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。なお、外部絶縁部材92の構成材料として、後述のインシュレータ70やガスケット90の構成材料として挙げられた樹脂材料を使用することができる。
【0028】
インシュレータ70は、正極集電体50(例えば、第1集電部51の端子接続部51a)と封口板14の内側の表面との間に配置されている。インシュレータ70には、貫通孔が形成されている。ガスケット90は、正極端子30(詳しくは、基部31)と封口板14の外側の表面との間に配置されている。ガスケット90は、封口板14の端子引出孔18に挿入される筒状の突起を有している。かかるガスケット90の突起は、インシュレータ70の貫通孔の内周に沿うように配置されている。上記構成のインシュレータ70とガスケット90とを設けることによって、正極集電体50と封口板14との接触、および、正極端子30と封口板14との接触を防止することができる。なお、インシュレータおよびガスケットを用いた絶縁構造について、負極端子40側にも同様の構造が設けられているが、詳細な説明は省略する。なお、インシュレータ70やガスケット90の構成材料は、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、フッ素樹脂(例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の樹脂材料であり得る。
【0029】
図3は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図4は、集電体が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図3に示されているように、電池1は、一つまたは複数の電極体20を備えている。この実施形態では、電池1は、3つの電極体20を備えている。
図2に示されているように、電極体20は、ポリエチレン(PE)等の樹脂製シートからなる電極体ホルダ29に覆われた状態で、外装体12の内部に配置されている。
【0030】
図5は、一実施形態に係る電極体の構成を示す模式図である。
図5に示されているように、電極体20は、帯状の正極板22と帯状の負極板24とが、帯状のセパレータ26を介して積層され、長手方向に巻回された巻回電極体である。以下、本明細書において、電極体20を「巻回電極体20」とも称する。正極板22は、ここで開示される電池における「第1電極板」の一例である。負極板24は、ここで開示される電池における「第2電極板」の一例である。巻回電極体20は、電極体本体部20aと、正極タブ群23と、負極タブ群25と、を備えている(
図2~4参照)。電極体本体部20aは、正極板22、負極板24、およびセパレータ26が積層された部分であり、例えば、扁平形状である。
【0031】
図1,2,5に示されているように、巻回電極体20は、巻回軸WLが幅方向Yと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。この実施形態では、巻回電極体20は、巻回軸WLが底壁12aと平行になり、第2側壁12cと直交する向きで、外装体12の内部に配置されている。そして、巻回軸WLに沿った方向における巻回電極体20の両端面は、外装体12の第2側壁12cと対向している。本明細書では、説明の便宜上、正極集電体50に近接した側(
図2中の幅方向Yの左側)の第2側壁12cと対向する巻回電極体20(例えば電極体本体部20a)の端面を「第1端面201」と称する。そして、負極集電体60に近接した側(
図2中の幅方向Yの右側)の第2側壁12cと対向する巻回電極体20(例えば電極体本体部20a)の端面を「第2端面202」と称する。
【0032】
ところで、詳しくは後述するが、巻回電極体を構成する電極板は、例えば、帯状の電極芯体と、該電極芯体上に形成された電極活物質層と、を有している。電極芯体は、例えば、電極活物質層が形成された電極活物質層形成部と、電極活物質層が形成されていない電極活物質層未形成部と、を備えている。電極活物質層未形成部は、電極活物質層が形成されていないため、電極活物質層形成部よりも、柔らかく、折れ曲がりやすくなっている。
【0033】
また、例えば巻回電極体の作製過程では、電極板の長手方向(巻回方向)の端部における角部が、他の部位よりも、設備からの干渉(例えば、治具等との接触)を受けやすい。そのため、上記角部を電極活物質層未形成部が構成したときに、当該角部は、より一層折れ曲がりやすい状態になり得る。本発明者は、巻回電極体の内部において、該折れ曲がった角部がセパレータを損傷し、正負極の短絡を引き起こす短絡リスクを低減したい、と考え、電極板の巻き始め端部における角部の折れ曲がりを抑制できる構成を検討した。
【0034】
図6は、一実施形態に係る正極板を模式的に示す平面図である。正極板22は、
図5,6に示されているように、長尺な帯状である。正極板22は、この実施形態では、正極板本体部22xと、複数の正極タブ22tとを備えている。正極板本体部22xは、
図5,6に示されているように、正極板22の、第1長端辺221と第2長端辺222とに挟まれた部位である。第1長端辺221は、例えば、正極板22の長手方向Pに延びた辺である。第2長端辺222は、例えば、正極板22の長手方向Pに延びた、第1長端辺221と異なる辺である。複数の正極タブ22tは、例えば、第1長端辺221に設けられている。この実施形態では、複数の正極タブ22tは、正極芯体22cの一部である。この実施形態では、複数の正極タブ22tは、正極板22の長手方向Pに沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。また、複数の正極タブ22tは、第1長端辺221から正極板22の短手方向Qに沿って突出している。
図5に示されているように、巻回電極体20では、複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも幅方向Yに突出する。
【0035】
正極板22の短手方向Qにおける正極板本体部22xの長さは、例えば、10cm~60cmである。かかる長さは、この実施形態では、20cm以上(例えば、25cm以上、30cm以上)である。正極板本体部22xの長さが大きくなるほど、例えば、巻回電極体20の作製過程において安定的に巻回しにくくなっている。上記のような正極板本体部22xを有する正極板22では、該正極板22の長手方向Pの端部における角部が折れ曲がりやすくなっている。そのため、ここで開示される技術の効果は、かかる正極板22を用いる場合に好適に実現され得る。
【0036】
正極板22は、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に形成された正極活物質層22aとを有している。
【0037】
正極芯体22cは、例えば、帯状である。正極芯体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等からなる金属箔である。
図6に示されているように、正極芯体22cは、正極活物質層形成部22c1と、正極活物質層未形成部22c2と、を有している。正極活物質層形成部22c1は、例えば、正極活物質層22aが形成された部位である。正極活物質層形成部22c1は、この実施形態では、長手方向Pに沿って、正極板22の第2長端辺222側に帯状に設けられた部位である。正極活物質層未形成部22c2は、例えば、正極活物質層22aが形成されていない部位である。正極活物質層未形成部22c2は、この実施形態では、正極板22の第1長端辺221に沿った帯状の部位と、正極タブ22tとに設けられている。
図6に示されているように、正極活物質層未形成部22c2は、保護層22pを有している。保護層22pは、
図5,6に示されているように、正極活物質層22aの第1長端辺221側の側縁部に沿った帯状の部位と、正極タブ22tの基端側の一部とに設けられている。
【0038】
正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質層22aは、例えば80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上)の正極活物質を含んでいる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が挙げられる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。
【0039】
保護層22pは、例えば、正極活物質層22aよりも抵抗が高い層である。保護層22pは、例えば、無機粒子と、樹脂(バインダ)とを含んでいる。無機粒子としては、例えば、アルミナ、ベーマイト、マグネシア、シリカ、チタニア等の無機酸化物等が挙げられる。樹脂(バインダ)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。あるいは、保護層22pは、樹脂で構成された層であってもよい。保護層22pには、必要に応じて炭素材料等の導電材を含ませてもよい。保護層22pを設けることによって、巻回電極体20における正極板22と負極板24との短絡抑制効果を高めることができる。
【0040】
例えば、保護層22pの厚みは、正極活物質層22aの厚みよりも小さい。保護層22pの厚みが正極活物質層22aの厚みよりも小さいと、正極板22の長手方向Pの端部における角部が、より折れ曲がりやすくなる。そのため、ここで開示される技術の効果は、保護層22pの厚みが正極活物質層22aの厚みよりも小さい場合に、好適に実現され得る。また、保護層22pの厚みが小さくなるほど、正極板22の長手方向Pの端部における角部が折れ曲がりやすくなる。ここで開示される技術の効果は、正極活物質層22aの厚みを1としたときに、保護層22pの厚みが0.7以下である場合に好ましく実現され、上記厚みが0.5以下である場合により好ましく実現され得る。なお、保護層22pの形成は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0041】
図6に示されているように、正極板22の巻き始め端部22sにおける、第1長端辺221側の第1角部C1には、第1切り欠き部N1が設けられている。本明細書において「正極板22の巻き始め端部22s」とは、正極板22の長手方向Pにおける端部であって、巻回電極体20の最内周に配置される端部をいう。
図6では、第1長端辺221と第2長端辺222とに挟まれた左側の第1短端辺を巻き始め端部22sとしている。また、本明細書において「第1角部C1」とは、第1長端辺221に沿う直線L1と、上記第1短端辺に沿う直線L2とがなす角部をいう。
【0042】
この実施形態では、第1切り欠き部N1の少なくとも一部は、正極活物質層未形成部22c2に設けられている。第1角部C1は、正極板22のなかでも、特に折れ曲がりやすい部位の一つといえる。折れ曲がりやすい第1角部C1に第1切り欠き部N1を設けることによって、第1角部C1の折れ曲がりを抑制することができる。第1角部C1の折れ曲がりを抑制することによって、巻回電極体20内のセパレータ26の損傷抑制効果、延いては正負極の短絡抑制効果を実現することができる。
【0043】
この実施形態では、第1切り欠き部N1は、正極活物質層未形成部22c2内に形成されている。例えば、第1切り欠き部N1の第2長端辺222側の第1端部N1a、および、第1長端辺221側の第2端部N1bが、正極活物質層未形成部22c2内に設けられている。
図6に示されているように、第1切り欠き部N1が正極活物質層形成部22c1に到達せず、正極活物質層未形成部22c2内に納まっていることで、正極活物質層22aのロスを防ぐことができる。このため、電池容量を確保することができる。
【0044】
また、この実施形態では、第1切り欠き部N1は、保護層22pを備えた部分に設けられている。例えば、第1端部N1aおよび第2端部N1bが、保護層22pを備えた部分に設けられている。
図6に示されているように、第1切り欠き部N1が保護層22pを備えた部分(換言すれば、正極芯体22cが露出していない部分)に設けられていることで、安全性をより向上させることができる。
【0045】
また、この実施形態では、第1切り欠き部N1は、R形状である。本明細書において「第1切り欠き部N1がR形状である」とは、例えば、第1切り欠き部N1の、第1端部N1aと第2端部N1bとの間が曲線からなる(例えば、直線部がない)ことをいう。第1切り欠き部N1をR形状とすることで、第1切り欠き部N1に応力(例えば、巻回電極体20の製造過程における治具の接触による応力)が集中するのを抑制することができる。そのため、第1切り欠き部N1内での折れ曲がりを抑制することができる。
【0046】
また、この実施形態では、第1切り欠き部N1は、第1切り欠き部N1と、巻き始め端部22s(第1短端辺)とのなす角αが90度~160度となるように形成されている。かかる角は、好ましくは95度以上、より好ましくは100度以上、さらに好ましくは120度以上である。第1切り欠き部N1がR形状である場合、角αは、例えば、第1端部N1aを通る接線T1と巻き始め端部22s(第1短端辺)とのなす角により規定され得る。
【0047】
図6に示されているように、正極板22の巻き終わり端部22eにおける、第1長端辺221側の第2角部C2には、第2切り欠き部N2が設けられている。本明細書において「正極板22の巻き終わり端部22e」とは、正極板22の端部であって、巻回電極体20の最外周に配置される端部をいう。
図6では、第1長端辺221と第2長端辺222とに挟まれた右側の第2短端辺を巻き終わり端部22eとしている。また、本明細書において「第2角部C2」とは、第1長端辺221に沿う直線L1と、上記第2短端辺に沿う直線L3とがなす角部をいう。
【0048】
この実施形態では、第2切り欠き部N2の形状と、第1切り欠き部N1の形状とは、異なっている。例えば、上記角αが90度以上となるように第1切り欠き部N1が形成され、第2切り欠き部N2と、巻き終わり端部22eとがなす角βが90度未満となるように形成されている。第2切り欠き部N2がR形状である場合、角βは、例えば、第2切り欠き部N2の第2長端辺222側の第3端部N2aを通る接線T2と巻き終わり端部22e(第2短端辺)とのなす角により規定され得る。あるいは、第1切り欠き部N1の形成のために切り欠いた面積は、第2切り欠き部N2の形成のために切り欠いた面積よりも小さくすることができる。
【0049】
正極板22の作製において、例えば後述の手順を用いて第1切り欠き部N1を形成すると、第2切り欠き部N2をも形成することができる。かかる切り欠き部の形成では、正極板22に、相互に形状が異なる2つの切り欠き部が形成されることがある。巻回電極体20の作製過程では、例えば巻回機の巻き芯や電極板引出チャック等との干渉によって、正極板22の巻き始め端部22sにおける正極活物質層未形成部22c2は、巻き終わり端部22eよりも設備の干渉を受けやすい。そのため、第1角部C1は、第2角部C2よりも折れ曲がりやすくなっている。より折れ曲がりにくい形状の切り欠き部を第1切り欠き部N1とすることで、セパレータ26の損傷抑制効果、延いては短絡抑制効果をよりよく実現することができる。これに加えて、正極板22の生産性を向上させることができる。なお、切り欠き部の形成方法については、後でさらに述べる。
【0050】
この実施形態では、第2切り欠き部N2は、正極活物質層未形成部22c2内に形成されている。例えば、第3端部N2a、および、第2切り欠き部N2の第1長端辺221側の第4端部N2bが、正極活物質層未形成部22c2内に設けられている。また、第2切り欠き部N2は、保護層22pを備えた部分に設けられている。例えば、第3端部N2aおよび第4端部N2bが、保護層22pを備えた部分に設けられている。
【0051】
この実施形態では、正極板22の巻き始め端部22sにおける、第2長端辺222側の第3角部C3には、切り欠き部が形成されていない。また、正極板22の巻き終わり端部22eにおける、第2長端辺222側の第4角部C4には、切り欠き部が形成されていない。本明細書において「第3角部C3」とは、第2長端辺222と、上記第1短端辺(巻き始め端部22s)とがなす角部をいう。本明細書において「第4角部C」とは、第2長端辺222と、上記第2短端辺(巻き終わり端部22e)とがなす角部をいう。第3角部C3および第4角部C4において切り欠き部が形成されないことで、正極活物質層22aのロスを防ぐことができる。このため、電池容量を確保することができる。
【0052】
図7は、一実施形態に係る正極板の作製手順を説明する平面図である。正極板22の作製は、例えば、正極前駆体21を用意することと、正極前駆体21を切断することと、を含む(
図7参照)。
【0053】
正極前駆体21の用意では、例えば、まず、正極活物質層22aの構成材料を含む正極活物質層形成用ペーストを、正極芯体22cの長手方向Pに沿って、
図7中の符号22aで示された領域に塗布する。次いで、保護層22pの構成材料を含む保護層形成用ペーストを、正極芯体22cの長手方向Pに沿って、
図7中の符号22pで示された領域に塗布する。
図7に示された正極前駆体21では、保護層形成用ペーストの塗布領域22pは、正極活物質層形成用ペーストの塗布領域22aを、正極芯体22cの短手方向Qから挟み込んでいる。各々のペーストを乾燥させることによって、正極前駆体21を作製することができる。
【0054】
次いで、正極前駆体21を切断する。正極前駆体21の切断では、例えば、
図7中の点線L
p1、二点鎖線L
p2、および二点鎖線L
p3に沿って、正極前駆体21を切断する。点線L
p1に沿った切断を行うことで、正極前駆体21の一部を凸状に切り出し、正極タブ22tを形成することができる(
図5,6参照)。また、この実施形態では、点線L
p1に沿った切断によって、枠A内に示された凹部が形成される。かかる凹部を形成することで、後述の二点鎖線L
p3に沿った切断によって、切欠き部を形成することができる。点線L
p1に沿った切断は、レーザ、切断刃、金型、カッター等を使用した従来の切断であってよい。点線L
p1に沿った切断として、レーザカットが好ましく使用される。レーザカットを採用することによって、切欠き部をより高品質、かつ、高速で生産することができる。なお、第1切り欠き部N1がレーザカットにより形成された部位である場合、第1切り欠き部N1の縁部では、レーザによって溶融した正極芯体22cが凝固する。そのため、かかる縁部における厚みは、正極芯体22cの厚みよりも大きい。
【0055】
二点鎖線L
p2に沿った切断では、正極前駆体21の短手方向Qの中央部を、長手方向Pに沿って切断する。二点鎖線L
p2に沿った切断を行うことで、一方の長端辺(
図6における第1長端辺221)のみに、保護層22pと正極タブ22tが形成された正極板22を作製することができる。二点鎖線L
p2に沿った切断は、特に限定されず、レーザ、切断刃、金型、カッター等を使用した従来の切断であってよい。
【0056】
二点鎖線Lp3に沿った切断では、枠A内に示された凹部を、短手方向Qに沿って切断する。二点鎖線Lp3に沿った切断を行うことで、二点鎖線Lp3の左側および右側にそれぞれ切り欠き部を形成することができる。例えば、形成された切り欠き部の形状に基づいて、二点鎖線Lp3の左側および右側のいずれか一方を巻き始め端部22sとし、他方を巻き終わり端部22eとする。このように、第1角部C1に第1切り欠き部N1が形成され、第2角部C2に第2切り欠き部N2が形成された正極板22を作製することができる。
【0057】
負極板24は、
図5に示されているように、長尺な帯状である。負極板24は、この実施形態では、負極板本体部(図示なし)と、複数の負極タブ24tとを備えている。負極板本体部は、例えば、負極板24の、第1長端辺241と、第2長端辺242とに挟まれた部位である。第1長端辺241は、例えば、負極板24の長手方向に延びた辺である。第2長端辺242は、例えば、負極板24の長手方向に延びた、第1長端辺241と異なる辺である。複数の負極タブ24tは、例えば、第1長端辺241に設けられている。この実施形態では、複数の負極タブ24tは、負極芯体24cの一部である。この実施形態では、複数の負極タブ24tは、負極板24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。また、複数の負極タブ24tは、第1長端辺241から負極板24の短手方向に沿って突出している。
図5に示されているように、巻回電極体20では、複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも幅方向Yに突出する。
【0058】
図5に示されているように、負極板24は、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に形成された負極活物質層24aとを有している。
【0059】
負極芯体24cは、例えば、帯状である。負極芯体24cは、例えば銅、銅合金等からなる金属箔である。正極芯体22cは、例えば、負極活物質層形成部と、負極活物質層未形成部と、を有している。負極活物質層形成部は、例えば、負極活物質層24aが形成された部位である。負極活物質層形成部は、この実施形態では、長手方向に沿って、負極板24の第1長端辺241と第2長端辺242との間に帯状に設けられた部位(例えば、上記負極板本体部)と、負極タブ24tの基端側(例えば、第1長端辺241側)の一部とに設けられている。負極活物質層未形成部は、例えば、負極活物質層24aが形成されていない部位である。負極活物質層未形成部は、この実施形態では、負極タブ24tの突出末端側の一部である。
【0060】
負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等の炭素材料;シリコン、シリコン酸化物(シリカ)等のシリコン系材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質層24aは、例えば80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上)の負極活物質を含んでいる。負極活物質層24aは、負極活物質層以外の任意成分、例えば、バインダ、増粘剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0061】
セパレータ26は、正極板22の正極活物質層22aと、負極板24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、巻回電極体20の外表面を構成している。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートを用いるとよい。セパレータ26は、例えば、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に形成された耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有している。耐熱層は、例えば、無機フィラーとバインダとを含む層である。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等が挙げられる。バインダとしては、例えば、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。
【0062】
巻回電極体20は、2枚のセパレータ26を介して正極板22と負極板24を積層して長手方向に巻回することによって作製される。かかる巻回を行ったとき、第1切り欠き部N1の第1端部N1aは、セパレータ26を介しても負極活物質層24aと対向しないことが好ましい。しかし、第1切り欠き部N1の第1端部N1aがセパレータ26を介して負極活物質層24aと対向することがある。正極板22の巻き始め端部22sでは、上記のとおり、第1角部C1の折れ曲がりが抑制されている。そのため、第1端部N1aがセパレータ26を介して負極活物質層24aと対向した場合であっても、セパレータ26の損傷が抑制され、延いては、正負極の短絡が抑制されている。一方で、第1端部N1aが折れ曲がった場合であっても、第1端部N1aの折れ曲がった部分が負極板24に到達した際に、直接負極芯体24cに接触するのが抑制されている。そのため、電池1では、安全性がより高められている。
【0063】
上記巻回を行うと、電極体本体部20aの第1端面201から突出した複数の正極タブ22tが積層され、複数の正極タブ22tを含む正極タブ群23が形成される。
図1~4に示されているように、正極タブ群23を構成する各々の正極タブ22tの先端は、第2側壁12cに沿って配置されるように折り曲げられる。折り曲げられた正極タブ22tの一部分は、正極集電体50のタブ接合部52bと接合される。かかる接合の手段として、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等が挙げられる(負極についても同じ)。
【0064】
また、上記巻回を行うと、電極体本体部20aの第2端面202から突出した複数の負極タブ24tが積層され、複数の負極タブ24tを含む負極タブ群25が形成される。
図1~4に示されているように、負極タブ群25を構成する各々の負極タブ24tの先端が第2側壁12cに沿って配置されるように折り曲げられる。折り曲げられた負極タブ24tの一部分は、負極集電体60のタブ接合部62bと接合される。
【0065】
正極集電体50は、外装体12の内部において、巻回電極体20の正極板22と正極端子30とを電気的に接続する部材である。
図2に示されているように、正極集電体50は、第1集電部51と、第2集電部52とを備えている。第1集電部51は、断面L字型に形成されている。第1集電部51は、封口板14の内側の面に沿って配置される端子接続部51aと、端子接続部51aの幅方向Yの一方の端部から底壁12aに向かって延びるリード部51bと、を有している。端子接続部51aには、封口板14の端子引出孔18に対応する位置に貫通孔が形成されている。該貫通孔には、正極端子30の軸部32が挿通されている。
【0066】
図2~4に示されているように、第2集電部52は、外装体12の底壁12aに向かって伸びている。第2集電部52は、第1集電部接続部52aと、タブ接合部52bとを有している。第1集電部接続部52aは、第1集電部51と電気的に接続される部位である。第1集電部接続部52aは、上下方向Zに沿って延びている。第1集電部接続部52aは、各々の巻回電極体20の巻回軸WLに対して略垂直に配置されている。タブ接合部52bは、正極タブ群23と接合される部位である。タブ接合部52bは、上下方向Zに沿って延びている。タブ接合部52bは、各々の巻回電極体20の巻回軸WLに対して略垂直に配置されている。タブ接合部52bの複数の正極タブ22tと接続される面は、外装体12の第2側壁12cと略平行に配置されている。
【0067】
負極集電体60は、外装体12の内部において、巻回電極体20の負極板24と負極端子40とを電気的に接続する部材である。負極集電体60は、
図2~4に示されているように、第1集電部61と、第2集電部62とを備えている。第1集電部61は、端子接続部61aと、リード部61bと、を有している。第2集電部62は、第1集電部接続部62aと、タブ接合部62bとを有している。負極集電体60の構成は、上述した正極集電体50の構成と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
電池1は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0069】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、
図7に示された正極前駆体21における枠A内に示された凹部を二点鎖線L
p3に沿って切断することで、第1切り欠き部N1を作製した。しかし、枠A内に示された凹部の形状は、ここで開示される技術の効果を実現できる形状の第1切り欠き部N1を形成することができれば、この構造は特に限定されない。
図8~10は、
図7の枠A内に示された凹部の形状の他の例を示す平面図である。
図7における枠A内に示された凹部は、
図8の枠B内に示された形状の凹部を有するものであってもよい。例えば、
図8の枠B内に示された凹部は、該凹部の底に第1長端辺221と平行な直線部位b1を有している(
図6参照)。例えば、二点鎖線L
p3に沿った切断を、直線部位b1内で行うとよい。二点鎖線L
p3に沿った切断線と、切断後の直線部位b1とがなす角αおよび角βはいずれも90度となる。このため、
図8の枠B内に示された形状の凹部を採用することでも、好適な形状の第1切り欠き部N1を設けることができる。
【0071】
また、例えば、
図9の枠C内に示された凹部は、該凹部の底に第1長端辺221に対する傾斜角がγ(γは、0度よりも大きく、90度よりも小さい。)である直線部位caを有している(
図6参照)。例えば、二点鎖線L
p3に沿った切断を、直線部位ca内で行うとよい。二点鎖線L
p3に沿った切断線と、切断後の直線部位caとがなす角αおよび角βのうち、角の大きさが90度以上である角(
図9中では角α)を有する方を、正極板22の巻き始め端部22sとすることができる。
【0072】
また、例えば、
図10の枠D内に示された凹部は、R形状の底d1と、第1長端辺221と底d1とを結んだ直線部位d2と、を有している(
図6参照)。
図11,12は、枠D内に示された凹部の切断部位の一例を説明する平面図である。
図11に示されているように、二点鎖線L
p3に沿った切断を、直線部位d2内の任意の点K1で行うとよい(
図7,10参照)。二点鎖線L
p3に沿った切断線と、切断後の直線部位d2とがなす角αおよび角βのうち、角の大きさが90度以上である角(
図11中では角α)を有する方を、正極板22の巻き始め端部22sとすることができる。あるいは、
図12に示されているように、二点鎖線L
p3に沿った切断を、底d1の任意の点K2で行ってもよい(
図7,10参照)。二点鎖線L
p3に沿った切断線と、切断後の底d1とがなす角αおよび角βのうち、角の大きさが90度以上である角(
図12中では角α)を有する方を、正極板22の巻き始め端部22sとすることができる。なお、
図12において、角αは、例えば、上記切断により形成された辺21aと、点K2を通る接線T2と、のなす角である。角βは、例えば、上記切断により形成された辺21bと、点K2を通る接線T3と、のなす角である。
【0073】
あるいは、
図7中の点線L
p1に沿った切断で、切り欠き部形成のための凹部を形成しなくてもよい。例えば、
図7中の枠A内を平坦部としてもよい。枠A内の平坦部を二点鎖線L
p3に沿って切断した後、所望の形状の第1切り欠き部N1を形成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、第1電極板が正極板22であり、第2電極板が負極板24であった。しかし、これに限定されない。第1電極板が負極板24であり、第2電極板が正極板22であってもよい。また、上記実施形態では、外装体12と蓋14とを備える電池ケース10が用いられていた。しかし、これに限定されない。電池1の電池ケースは、ラミネート外装体であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 電池
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
20 電極体(巻回電極体)
21 正極前駆体
22 正極板
22a 正極活物質層
22c 正極芯体
22p 保護層
22t 正極タブ
23 正極タブ群
24 負極板
24a 負極活物質層
24c 負極芯体
24t 負極タブ
25 負極タブ群
26 セパレータ
29 電極体ホルダ
30 正極端子
35,45 外部導電部材
40 負極端子
50 正極集電体
60 負極集電体
70 インシュレータ
90 ガスケット
92 外部絶縁部材