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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】神経調節技術
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A61N7/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021509864
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019048624
(87)【国際公開番号】W WO2020047137
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】16/116,674
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】プレオ,クリストファー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コテロ,ビクトリア ユージニア
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533526(JP,A)
【文献】特表2017-506120(JP,A)
【文献】特表平08-506254(JP,A)
【文献】国際公開第2018/081763(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加して、2つ以上の神経経路の調節を誘発するようにエネルギー印加装置を制御するコントローラ(16)であって、
前記関心領域が、結節神経節または仙骨神経節の少なくとも一部を含み、
前記機械的または超音波エネルギーの前記印加が1分から数時間の期間にわたって続き、
前記2つ以上の神経経路が、神経免疫経路、抗炎症経路、ドーパミン産生経路、グルコース調節経路、インスリン産生経路の2つ以上の組み合わせから選択される、
、コントローラ(16)。
【請求項2】
前記関心領域が結節神経節を含む、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項3】
前記関心領域が仙骨神経節を含む、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項4】
前記機械的または超音波エネルギーが超音波エネルギーである、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項5】
前記関心領域が結節神経節を含み、前記つ以上の神経経路が抗炎症経路およびグルコース調節経路である、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項6】
前記関心領域が仙骨神経節を含み、前記つ以上の神経経路が抗炎症経路およびドーパミン産生経路である、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項7】
機械的または超音波エネルギーを関心領域に印加することが、前記対象内の遠位部位における1つ以上の目的分子の濃度の変化をもたらす、請求項1に記載のコントローラ(16)。
【請求項8】
前記1つ以上の目的分子がグルコースを含む、請求項7に記載のコントローラ(16)。
【請求項9】
前記1つ以上の目的分子がドーパミンを含む、請求項7に記載のコントローラ(16)。
【請求項10】
前記1つ以上の目的分子が腫瘍壊死因子を含む、請求項7に記載のコントローラ(16)。
【請求項11】
前記1つ以上の目的分子がアセチルコリンを含む、請求項7に記載のコントローラ(16)。
【請求項12】
対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加して、2つ以上の神経経路の調節を誘発するようにパルス発生器(14)を制御するコントローラ(16)であって、
前記関心領域が、神経節の少なくとも一部を含み、
前記機械的または超音波エネルギーの前記印加が1分から数時間の期間にわたって続く、コントローラ(16)。
【請求項13】
前記2つ以上の神経経路が、神経免疫経路、抗炎症経路、ドーパミン産生経路、グルコース調節経路、インスリン産生経路、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載のコントローラ(16)。
【請求項14】
前記2つ以上の神経経路が、抗炎症経路およびグルコース調節経路を含む、請求項12に記載のコントローラ(16)。
【請求項15】
前記2つ以上の神経経路が、抗炎症経路およびインスリン産生経路を含む、請求項12に記載のコントローラ(16)。
【請求項16】
前記2つ以上の神経経路が、抗炎症経路およびドーパミン産生経路を含む、請求項12に記載のコントローラ(16)。
【請求項17】
システムであって、
2つ以上の神経経路を調節するために対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、
コントローラであって、
前記関心領域を選択し、
前記エネルギー印加装置の1つ以上の調節パラメータを制御する
ように構成されたコントローラと
を備え、
前記関心領域が、結節神経節または仙骨神経節の少なくとも一部を含み、
前記機械的または超音波エネルギーの前記印加が1分から数時間の期間にわたって続き、
前記2つ以上の神経経路が、神経免疫経路、抗炎症経路、ドーパミン産生経路、グルコース調節経路、インスリン産生経路の2つ以上の組み合わせから選択される、システム。
【請求項18】
前記エネルギー印加装置が、超音波トランスデューサである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記関心領域が結節神経節を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記関心領域が仙骨神経節を含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、神経調節、より具体的には、エネルギー源から印加されるエネルギーを使用して生理学的応答を調節するための神経調節技術に関する。
【背景技術】
【0002】
神経調節は、様々な臨床症状の治療に使用されてきた。例えば、脊髄に沿った様々な場所での電気刺激は、慢性腰痛の治療に使用されてきた。埋め込み型装置は、特定の神経線維を活性化するために組織に印加される電気エネルギーを定期的に生成することができ、これは、痛みの感覚の低下をもたらすことができる。脊髄刺激に関して、刺激電極は、一般に硬膜外腔に配置されるが、パルス発生器は、電極からいくらか離れて、例えば腹部または臀部領域に配置されてもよいが、導線を介して電極に接続される。他の実装形態では、脳深部刺激療法を使用して、脳の特定の領域を刺激して運動障害を治療することができ、刺激位置は、神経画像によって導かれ得る。そのような中枢神経系の刺激は、一般に、局所神経または脳細胞機能を標的とし、電気パルスを送達し、標的神経またはその近くに配置される電極によって媒介される。しかしながら、電極を標的神経またはその近くに配置することは困難である。例えば、そのような技術は、エネルギーを送達する電極の外科的配置を含む場合がある。さらに、神経調節を介した特定の組織標的化は困難である。特定の標的神経またはその近くに配置された電極は、神経線維の活動電位を誘発することによって神経調節を媒介し、その結果、神経シナプスでの神経伝達物質の放出と次の神経とのシナプス通信をもたらす。埋め込まれた電極の現在の実装は、一度に多くの神経または軸索を刺激するため、そのような伝播は、所望よりも比較的大きいまたはより拡散した生理学的効果をもたらす可能性がある。神経経路は、複雑で相互に関連しているため、より選択的で標的を絞った調節効果が臨床的により有用である可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
特定の実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ、これらの実施形態は、可能な実施形態の簡単な要約を提供することのみを意図する。実際、本開示は、以下に記載される実施形態と類似または異なる可能性がある様々な形態を包含することができる。
【0004】
一実施形態では、方法は、1つ以上の神経経路の調節を誘発するために、対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加することを含むことができる。関心領域は、結節神経節または仙骨神経節の少なくとも一部を含むことができる。
【0005】
別の実施形態では、方法は、2つ以上の神経経路の調節を誘発するために、対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加することを含むことができる。関心領域は、神経節の少なくとも一部を含むことができる。
【0006】
別の実施形態では、システムは、1つ以上の神経経路を調節するために対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加することができるエネルギー印加装置、および関心領域を空間的に選択し、エネルギー印加装置の1つ以上の調節パラメータを制御することができるコントローラを含むことができる。関心領域は、結節または仙骨神経節の少なくとも一部を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明が、図面全体にわたって同様の文字が同様の部分を表す添付の図面を参照して読まれるときに、よりよく理解されるであろう。
図1】本開示の実施形態にかかる神経調節システムの概略図である。
図2】本開示の実施形態にかかる神経調節システムのブロック図である。
図3】本開示の実施形態にかかる、動作中の超音波エネルギー印加装置の概略図である。
図4】本開示の実施形態にかかる、仙骨神経節にエネルギーを印加する超音波エネルギー印加装置の概略図である。
図5】本開示の実施形態にかかる神経調節技術のフロー図である。
図6】本開示の実施形態にかかる、図1の神経調節システム内で使用することができるエネルギー印加装置の概略図である。
図7】本開示の実施形態にかかる、標的の生理学的結果を達成するための超音波エネルギー印加のための実験装置の概略図である。
図8A】本開示の実施形態にかかる、リポ多糖(LPS)誘発性高血糖動物モデルの脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、および孤束核(NTS)への超音波エネルギー印加後の、血液中の腫瘍壊死因子(TNF)の濃度を示すグラフである。
図8B】本開示の実施形態にかかる、LPS誘発性高血糖動物モデルの脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、およびNTSへの超音波エネルギー印加後の、血液中のアセチルコリン(ACh)の濃度を示すグラフである。
図8C】本開示の実施形態にかかる、LPS誘発性高血糖動物モデルの脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、およびNTSへの超音波エネルギー印加後の、血液中のノルエピネフリン(NE)の濃度を示すグラフである。
図8D】本開示の実施形態にかかる、LPS誘発性高血糖動物モデルの脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、およびNTSへの超音波エネルギー印加後の、血液中のドーパミン(DA)の濃度を示すグラフである。
図9】本開示の実施形態にかかる、LPS誘発性高血糖動物モデルの脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、およびNTSへの超音波エネルギー印加の効果を示すグラフである。
図10】本開示の実施形態にかかる、LPS誘発性高血糖動物モデルの肝臓への超音波エネルギー印加の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つ以上の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するための努力において、実際の実装の全ての特徴が本明細書に記載されているわけではない。そのような実際の実装のいずれかの開発では、エンジニアリングまたは設計プロジェクトのように、実装ごとに異なる場合があるシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守など、開発者の具体的な目標を達成するために、多くの実装固有の決定を行う必要があることを理解されたい。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとっては、設計、製作、および製造の日常業務であることを理解されたい。
【0009】
本明細書に記載されている例または図は、それらが使用される1つ以上の任意の用語に対する制限、限定、または定義の明示と見なされるべきではない。代わりに、これらの例または図は、様々な特定の実施形態に関して説明されており、例示のみであると見なされるべきである。当業者は、これらの例または図が利用される任意の用語が、本明細書によってまたは本明細書の他の場所で与えられる場合も与えられない場合もある他の実施形態を包含し、そのような全ての実施形態が、その用語の範囲内に含まれることが意図されることを理解するであろう。そのような非限定的な例および図を指定する文言は、限定されるものではないが、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、「例えば(e.g.)」、「含む(including)」、「特定の実施形態において(in certain embodiments)」、「いくつかの実施形態において(in some embodiments)」、および「一実施形態において(in one(an)embodiment)」を含む。
【0010】
本開示の様々な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記(said)」は、1つ以上の要素が存在することを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。さらにまた、以下の説明における数値例は、非限定的であることを意図しており、したがって、追加の数値、範囲、およびパーセンテージは、開示された実施形態の範囲内にある。
【0011】
人間の神経系は、脳と脊髄の中心部と体の様々な神経の末梢部に見られる神経細胞またはニューロンの複雑なネットワークである。ニューロンは、細胞体、樹状突起、および軸索を有する。神経は、身体の特定の部分に役立つニューロンの群である。神経は、数百のニューロンから数十万のニューロンを含むことができる。神経は、求心性ニューロンおよび遠心性ニューロンの双方を含むことがよくある。求心性ニューロンは、中枢神経系に信号を運び、遠心性ニューロンは、末梢に信号を運ぶ。末梢神経系(PNS)は、中枢神経系と、例えば皮膚、筋肉、内臓との間で信号を中継する。
【0012】
ニューロンの電気信号は、活動電位として知られている。ニューロンの興奮性は、ニューロンが活動電位を開始する傾向である。活動電位は、細胞膜の両端の電位が特定の閾値を超えたときに開始され、電位ゲートイオンチャネルを活性化する。次に、この活動電位は、ニューロンの長さ方向に伝播する。神経の活動電位は複雑であり、神経内の個々のニューロンの活動電位の合計を表す。ニューロンの軸索終末と受容細胞との間の接合部は、シナプスと呼ばれる。活動電位は、ニューロンの軸索を下ってその軸索終末に移動し、軸索終末は、神経線維のシナプス前終末またはシナプス終末を形成する軸索神経の枝の遠位終末である。活動電位の電気インパルスは、神経伝達物質を含む小胞のシナプス前軸終末のシナプス前膜への移動を引き起こし、最終的には神経伝達物質のシナプス間隙(例えば、シナプス前細胞とシナプス後細胞との間に形成される空間)または軸索細胞外空間への放出を引き起こす。神経伝達物質を放出することによって活動電位の電気信号を化学信号に変換するシナプスは、化学シナプスである。化学シナプスとは対照的に、電気シナプスは、イオン電流がシナプス前軸索終末に流れ込み、細胞膜を越えてシナプス後細胞に流れることを可能にする。
【0013】
活動電位の生理学的効果は、細胞膜を横切るイオンの動きによって媒介される。ニューロンは、Na、K、Clなどのイオンがニューロン膜を通過するのを促進するイオンポンプを介して、静止膜電位を積極的に維持する。異なる種類のニューロンは、異なる静止膜電位を維持することができる(例えば、-75mVから-55mV)。活動電位は、イオンの流入(すなわち、電荷の移動)によって生成され、膜を横切る電圧の一時的な上昇に関連する膜電位の大きな偏差を生成する。例えば、膜電位の上昇は、30mVから60mVの範囲内とすることができる。シナプス後ニューロンの活動電位は、シナプス前(例えば、上流)ニューロンからの神経伝達物質の放出に応答して開始することができる。シナプス前ニューロンから放出された神経伝達物質は、シナプス後ニューロンの受容体に結合し、これは次にイオンの流入とそれに続く膜を横切る脱分極を引き起こす。このプロセスが神経内の後続のニューロン間で発生すると、活動電位は、神経に沿って伝播する。
【0014】
シナプスは、2つのニューロン間の接合部に位置することができ、これにより活動電位が神経線維に伝播することが可能になる。しかしながら、軸索終末はまた、ニューロンと非ニューロン細胞との間の接合部でシナプスを形成するか、または間質液または体液で終結することができる。シナプスの種類は、例えば、神経免疫接合部にある免疫細胞とのシナプス、器官内の常在感覚細胞とのシナプス、または腺細胞とのシナプスを含む。神経伝達物質のシナプス間隙への放出および神経伝達物質のシナプス後細胞のシナプス後膜の受容体への結合は、シナプス前ニューロンの性質、放出される特定の神経伝達物質、およびシナプス後細胞の性質(例えば、シナプス後細胞の利用可能な受容体の種類)に依存する下流効果をもたらす。さらに、活動電位は、興奮性または抑制性とすることができる。興奮性シナプス後活動電位は、シナプス後ニューロンが発火するか、その後の活動電位を放出する可能性を高める。対照的に、抑制性シナプス後活動電位は、シナプス後ニューロンがその後の活動電位を発火または放出する可能性を低下させる。いくつかのニューロンが連携して、下流の活動電位を誘発したり、下流の活動電位を阻害したりする神経伝達物質を放出することができる。
【0015】
神経調節は、外部エネルギー源からのエネルギーを神経系の特定の領域に印加して、1つ以上の神経を活性化および/または遮断するか、神経機能を増加および/または減少させる。電気的神経調節は、標的神経またはその近くに1つ以上の電極を適用し、印加されたエネルギーは、エネルギー印加部位の下流の領域で生理学的応答を引き起こすために神経を介して伝送される(例えば、活動電位として)。しかしながら、神経系が複雑であるため、所与のエネルギー印加部位の生理学的反応の範囲と最終的なエンドポイントを予測することは困難である。中枢神経系(すなわち脳組織)の超音波変調の戦略は、神経活動の調節の成功を示しているが、末梢神経を調節する試みは遅れている。例えば、中枢神経系(CNS)の超音波変調は、シナプス構造が豊富な脳の皮質領域の刺激を含むが、末梢神経の超音波刺激の試みは、シナプス構造が豊富でない、または存在しない神経幹を対象としている。さらにまた、神経幹には、何千ものニューロンの束が密に詰まっているため、ニューロンのいずれか1つまたはセットの優先的な調節を困難にする。対照的に、神経節または核の神経線維は、ミリメートルからセンチメートルにわたって間隔が空けられており、入ってくるPNS感覚線維、出て行くPNS遠心性線維の間のシナプス接続、および脳に出入りするCNSニューロンへの接続を含む。各神経節は、特定の器官系の神経経路の通信ハブとして機能し、したがって、同時に1つ以上の神経経路の神経調節の標的を提供する。さらに、神経幹内のニューロンの刺激は、ランヴィエ絞輪(すなわち、末梢神経の有髄組織内のギャップ)内の電圧、機械的、または化学的ゲートイオンチャネル(または他の膜結合タンパク質)の活性化または調節を必要とする場合がある。この場合、神経線維に十分なエネルギーが供給されて、ランヴィエ絞輪においてそれらのチャネルを活性化し、活動電位の生成とそれに続く上流または下流の線維へのシグナル伝達を可能にする必要がある。しかしながら、樹状突起、軸索、軸索終末、およびシナプス前とシナプス後の分子/神経シグナル伝達の双方に関与する構造を含む、より多様な神経構造の類別が神経節内に存在する。この場合、特定の神経構造を優先的またはより有利に刺激または調節する超音波パラメータが見出され得る。これらの特定のパラメータを使用すると、1)累積的なイオンチャネルの活性化と活動電位の刺激を可能にする樹状構造の広い領域の優先的な刺激、2)細胞体の優先的な刺激、および/または3)シナプス後の活性化とシナプスごとの活性化を促進する組織の優先的な刺激を含む、複数の結果を可能にすることができる。特定の神経節もしくは核、または神経節もしくは核内の特定の位置の空間的選択は、特定の経路に関連する線維の優先的な活性化または調節を可能にすることができる(標的外または経路外の調節を排除する)。追加的または代替的に、特定の神経節内の部位の刺激は、一度に複数の器官系経路の同時刺激を可能にし、直接器官または直接CNA組織の神経調節または刺激では不可能な方法で、一度に複数の生理学的システムの同時刺激を可能にすることができる。最後に、同じ神経節内(または2つ以上の神経節にまたがる)の異なる位置または超音波依存の刺激パラメータは、複数の経路の動的刺激を可能にすることができる(すなわち、選択したパラメータに応じて、他の神経節よりも1つ多いまたは1つ少ない刺激)。
【0016】
1つの場所にある神経細胞体の群またはクラスタは、神経節として知られている。末梢神経系の神経節は、神経終末と中枢神経系の構造(例えば、脊髄)との間に位置することができる。神経節に似た脳幹内の核構造は、末梢神経と脳との間の接続を提供する。神経節前ニューロン、神経節後ニューロン、ニューロン間(すなわち、神経節に完全に含まれるニューロン)、および様々な非神経細胞が、神経節および核内に存在する。神経で生成された電気信号(例えば、内在的または外部から印加される可能性のある刺激を介して)は、ニューロンおよび神経を介して伝導される。ニューロンは、受容細胞に隣接するシナプス(接続)において神経伝達物質を放出し、電気信号の継続と変調を可能にする。末梢神経系では、神経節は、通常、中枢神経系と身体の他の部分(例えば、手足や器官の神経)との間の中継点として機能し、身体の1つ以上の解剖学的系に接続することができる。節前線維は、神経節の構造において節後線維とシナプスを形成し、これらの神経信号の伝播は、神経節シナプス伝達の一部として神経伝達物質の放出を引き起こす。本明細書で提供されるように、直接エネルギー印加による末梢神経節の神経調節は、エネルギーが印加された神経節の活動の調節をもたらすことができるだけでなく、影響を受けた神経節によって神経支配される器官の1つ以上の特徴の下流変化を引き起こすことができる。この変化は、関心のある最終器官に直接エネルギーを印加することなくもたらされる。関心のある器官または構造が追加の生理学的プロセス(例えば、グルコース調節)に影響を与える限り、1つ以上の末梢神経節の神経調節、および、結果として、1つ以上の下流器官または他の解剖学的構造を使用して、関心のある器官もしくは構造に局所的である、および/または全身性である特定の標的化された生理学的結果を標的化する。さらに、個々の神経節は、身体の様々な場所を神経支配する様々な種類の神経線維を含むため、末梢の特定の神経節の標的化は、他の神経節と比較して特定の標的生理学的結果を引き起こし、これは、調節された場合、同じ効果を生じない。このようにして、特定の神経節を標的とすることは、1つ以上の器官または生理学的系にわたる複数の標的化された生理学的結果の調整を可能にする。例えば、代謝を制御または変更する経路ではなく、炎症性または抗炎症性経路の調節を達成するために標的刺激を実行することができる。別の例では、標的刺激を実行して、ある炎症性または抗炎症性経路の活性化または調節(すなわち、最初の特定のサイトカインまたはホルモンの出力または調節の制御)を、別の炎症性または抗炎症性経路よりも多いまたは少なく達成することができる(すなわち、第2の特定のサイトカインまたはホルモンの出力または調節を制御する)。また、腺組織または体液組織内で直接分泌神経節を選択し、優先的または追加的に調節することもできる。さらに別の利点は、外部装置を介してエネルギーを印加するための末梢神経節の空間的選択が、視覚化するのが困難な個々の神経線維を標的にするよりも複雑でなくすることができるということである。
【0017】
関心のある標的領域の直接的かつ集中的な調節に基づく神経調節のための、および神経調節の結果として標的化された生理学的結果を引き起こすための技術が、本明細書で提供される。関心のある標的領域は、1つ以上の神経節の少なくとも一部を含むことができる。関心のある標的領域の神経調節は、関心のある標的領域の外側にエネルギーを印加することなく、関心のある標的領域のみに限定的かつ非切除的なエネルギーの印加を可能にする。しかしながら、関心のある標的領域へのエネルギーの印加は、関心のある標的領域の外側の効果を引き起こす可能性がある(例えば、関心のある標的領域を含む組織もしくは構造、または関心のある標的領域を含まない器官、組織、もしくは構造において)。例えば、末梢神経節内のシナプスへのエネルギーの印加は、結節神経節や仙骨神経節など、標的とされた特定のタイプの神経節に基づいて1つ以上の経路を調節する。いくつかの実施形態では、末梢神経節内のシナプスへのエネルギー印加は、(1)神経免疫経路もしくは抗炎症経路(例えば、コリン作動性抗炎症経路(CAP))、(2)ドーパミン産生経路、および/または(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路を調節する。関心のある標的領域外のこれらの効果は、関心のある標的領域外の領域に直接エネルギーを印加することなく達成され得る。したがって、全身的効果は、断続的および非連続的な局所的なエネルギーの印加を通じて実現され得る。さらに、効果は、エネルギー印加後、数時間および数日間実現され得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される神経調節は、進行を変化させるため、および/または慢性障害の影響を逆転させるための慢性障害の治療として使用され得る。一実施形態では、疾患と診断された患者は、神経調節治療を受けることができる。神経調節治療後、患者は、健康な患者に関連する臨床ベンチマークを達成することができる。例えば、糖尿病の患者は、神経調節治療の前に異常な血糖値および/またはインスリン値を示す可能性がある。神経調節治療を受けた後、この患者は、正常な血糖値および/またはインスリン値を示す可能性がある。別の例では、異常な免疫応答性を有する患者は、神経調節治療を受けた後、正常な免疫応答特性を獲得する可能性がある(例えば、免疫細胞集団の変化、リンパ排液の変化などを介して)。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書で提供される関心のある標的領域への神経調節は、対象における1つ以上の生理学的経路の活性化または非活性化を中断、減少、または増強することによって生理学的プロセスに変化を及ぼし、所望の生理学的結果をもたらすことができる。さらに、優先的かつ標的化された神経調節は、局所的なエネルギーの印加が全身の変化をもたらす可能性があるため、異なる方法および身体の異なる位置において異なる生理学的経路を変化させて、対象の生理学的変化の全体的な特徴的なプロファイルを引き起こす可能性がある。これらの生理学的変化は複雑であり得るが、本神経調節技術は、標的神経調節治療の結果でありかつ標的神経調節治療なしでは達成することができない可能性がある1つ以上の測定可能な生理学的結果を提供する。薬物治療および他のタイプの介入は、神経調節によって引き起こされる生理学的変化のサブセットをもたらす可能性があるが、特定の実施形態では、神経調節治療から生じる誘発される生理学的変化のプロファイルは、関心のある標的領域での神経調節治療に固有である。さらに、誘発された生理学的変化のプロファイルは、神経調節治療を受けた異なる対象間で異なる可能性がある。
【0019】
本明細書で提供される神経調節技術はまた、対象において標的化された生理学的結果を引き起こすことができる。例えば、そのような標的化された生理学的結果は、グルコース代謝および関連する障害の治療、疾患進行の変化、ならびに系炎症の制御を含むことができる。一実施形態では、関心領域での末梢神経節または核(ソリタルス管核、頸部もしくは結節神経節、腺組織の分泌神経節、または体液組織内の神経節など)の神経調節を使用して、糖尿病(すなわち、1型糖尿病または2型糖尿病)、高血糖、敗血症、外傷、感染症、糖尿病関連認知症、肥満、高脂血症、代謝機能障害、または他の摂食障害もしくは代謝障害を治療することができる。別の実施形態では、神経調節は、食欲を制御することによって、または食欲を増加させることによって悪液質を治療することによって、体重減少を促進するために使用され得る。別の実施形態では、本明細書で提供される神経調節は、治療前の状態と比較して糖調節設定値を変更して、治療を超えて数日、数週間、および/または数ヶ月持続する治療効果を達成することができる。一例では、糖尿病患者の分泌組織(すなわち、腺につながる経路)への接続を含む神経節または感覚経路を含む神経節/核における神経調節は、治療ウィンドウ(例えば、数時間または数日)中のベースライン(神経調節前)と比較して循環グルコースの初期減少をもたらすことができる。この効果は、分泌経路および/または感覚経路を優先的および/または追加的に刺激することによって誘発され得、グルコース減少は、循環へのホルモンの放出を調節することによって、または末梢もしくは中枢感覚細胞におけるグルコースおよび/もしくは代謝産物感知を改変することによって達成され得る。治療が終了した後、循環グルコースは、治療後の時間で増加する可能性があるが、増加は、治療前の設定値よりも大幅に低い新たな設定値で横ばいになる可能性がある。
【0020】
関心のある標的領域への神経調節は、治療の時間を超えて持続する治療結果をもたらす可能性がある。神経調節は、患者の病状を変化させて、長期的な結果を達成する可能性がある。例えば、所定期間にわたる関心のある標的領域への反復エネルギー印加の治療は、疾患症状の持続的な改善をもたらす可能性がある。一実施形態では、改善は、未治療の患者または従来の治療法で治療された患者に対するものである。所定期間は、神経調節治療が行われる数時間または数日の時間枠とすることができる。さらに、神経調節治療は、所定期間内の1つ以上の別個のエネルギー印加イベントを含むことができる。別個のエネルギー印加イベントは、所定期間内に同じ関心領域に繰り返し投与され得る。例えば、神経調節治療は、関心領域において1日1回行ってもよく、それにより、1日1回の治療は、2日以上連続して、事前設定された調節パラメータに従うことができる。
【0021】
特定の実施形態では、神経調節を薬物療法と組み合わせて使用して、患者の病状を変化させて、長期的な結果を達成することができる。関心のある標的領域への神経調節と低用量の医薬品を含む併用療法は、薬物療法単独よりも改善されたおよび/またはより効率的な生理学的結果を達成する可能性がある。例えば、神経調節は、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を低下させるために使用することができ、それにより、初期治療の有効性を高め(例えば、メトホルミンを使用し)、追加の薬剤投与(例えば、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾン)の必要性を低減する。
【0022】
末梢神経節の標的化された調節は、特定のタイプの神経節または標的とされた神経節、例えば、結節神経節または仙骨神経節に基づいて、1つ以上の神経経路を調節する。神経節は、節前軸索と節後神経細胞体との間のシナプスを含むことができる。開示されたシナプスは、シナプスの活動、例えば、刺激部位の上下の神経節またはシナプスに位置する節前軸索終末からの神経伝達物質の放出を変化させるように調節され得る。したがって、変化した活動は、局所的効果および/または非局所的(例えば、全身的)効果につながる可能性がある。本技術は、所望の結果を達成するために、1つ以上の神経節を含む組織の容積に標的化された方法でエネルギーを集束させることを可能にする。このようにして、関心領域内の1つ以上の標的神経節が活性化されて、節後軸索によって神経支配される構造に下流効果を引き起こす。したがって、神経調節は、標的神経節から延びる1つ以上の節後軸索の経路に基づいて、結節神経節または仙骨神経節などの特定のタイプの神経節を優先的に標的とすることができる。
【0023】
例えば、一実施形態では、節後軸索は、常在(すなわち、組織常在または非循環)肝臓、膵臓、または胃腸組織細胞と軸索細胞外シナプスを形成する軸索終末を有することができる。すなわち、軸索細胞外シナプスは、軸索終末と非神経細胞または間質液もしくは体液との間の接合部において形成される。したがって、エネルギーの印加は、関心領域の外側であるが関心領域から延びる軸索に結合されている代謝機能の調節をもたらす。しかしながら、軸索終末型の集団および節後軸索の特徴、ならびにひいては、節後軸索と軸索細胞外シナプスを形成するシナプス後細胞(例えば、免疫細胞、リンパ細胞、粘膜細胞、筋肉細胞など)に基づいて、異なる標的生理学的効果が達成され得ることが理解されるべきである。
【0024】
特定の実施形態では、脾臓、肝臓、および右副腎内のシナプスへのエネルギーの印加は、それぞれ、単一の生理学的経路を調節することができる。例えば、脾臓またはその一部内のシナプスの超音波刺激は、神経免疫経路またはコリン作動性抗炎症経路(CAP)などの抗炎症経路を調節する。別の例では、肝臓またはその一部内のシナプスの超音波刺激は、グルコース調節および/またはインスリン産生経路を調節し、右副腎またはその一部内のシナプスの超音波刺激は、ドーパミンの産生を調節する。
【0025】
特定の実施形態では、1つ以上の末梢神経節内のシナプスへのエネルギーの印加は、(1)神経免疫経路もしくは抗炎症経路、(2)ドーパミン産生経路、および/または(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路のうちの1つ以上を調節することができる。他の実施形態では、1つ以上の末梢神経節内のシナプスへのエネルギーの印加は、単一の刺激点を使用して2つ以上の生理学的経路を調節することができる。例えば、結節神経節またはその一部の超音波刺激は、神経免疫経路またはCAPなどの抗炎症経路、ならびにグルコース調節および/またはインスリン産生経路を調節する。さらに、仙骨神経節またはその一部の超音波刺激は、神経免疫またはCAPなどの抗炎症経路、およびドーパミン産生経路を調節する。
【0026】
したがって、対象の末梢神経節の関心領域にエネルギーを印加すると、末梢神経節およびその下流の軸索細胞外シナプスの軸索終末(例えば、軸索および/または神経細胞体の刺激を介して)を活性化する可能性があるが、双方とも関心領域外にありかつ1つ以上の神経節後軸索を介して関心領域の神経節に結合されていない軸索終末(および関連するシナプス)は、影響を受けない可能性がある。しかしながら、調節は全身効果をもたらす可能性があるため、関心領域外の非標的軸索終末は、関心領域内の神経節の活性化の結果として特定の全身変化を経験する可能性がある。本明細書で提供されるように、優先的調節(例えば、活性化または非活性化)は、細胞内のニューロン興奮性または関心領域内のエネルギーの直接印加を経験する神経節の構造を変化させることによる、1つ以上の標的神経経路の調節の誘導を指すことができる。関心領域は、刺激された超音波または他のエネルギーが集束される組織のセクション、ならびにその定義された解剖学的領域内の神経および非神経の双方の全ての細胞として定義され得る。関心領域は、神経節全体(他の神経節または神経組織と比較して優先的に刺激される)、腺または体液組織を伴う内部神経節に関連するニューロンの群、中枢神経系と末梢神経系との間の接続およびシナプスを含む神経核、または特定の経路(同じ神経節、核、または組織を通過する他の経路とは対照的)に関連付けられたニューロンを含むこれらの組織の一部とすることができる。すなわち、節前軸索または神経節の神経細胞体は、下流効果を誘発するために、本明細書で提供されるように印加されたエネルギーを直接経験することができる。優先的調節は、関心領域外の領域がエネルギー印加の結果として生理学的変化を受けたとしても、直接エネルギー印加を経験しないそのような領域における細胞または構造の調節とは対照的に考慮され得る。
【0027】
別の例では、一実施形態において、複数の節後軸索終末が神経節神経細胞体から延びることができる。軸索シナプスは、軸索終末と、異なる解剖学的系(例えば、消化器系、炎症系、または副腎系)および/または異なるニューロンの常在細胞との間の接合部において形成される。したがって、エネルギーの印加は、結節神経節または仙骨神経節など、標的とされる特定の神経節に基づく1つ以上の経路の調節をもたらす可能性がある。例えば、エネルギーの印加は、神経免疫経路もしくは抗炎症経路ならびにドーパミン産生経路、神経免疫経路もしくは抗炎症経路ならびにグルコース調節および/もしくはインスリン産生経路、ドーパミン産生経路ならびにグルコース調節および/もしくはインスリン産生経路、または神経免疫経路もしくは抗炎症経路、ドーパミン産生経路、ならびにグルコース調節および/もしくはインスリン産生経路の調節をもたらすことができる。
【0028】
本明細書で提供される神経調節技術は、1つ以上の末梢神経節を標的にして、(1)神経免疫経路もしくは抗炎症経路、(2)ドーパミン産生経路、または(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路の1つ以上を優先的に調節することを含む。1つ以上のエネルギーパルスが、神経節を含む対象の内部組織に印加される。神経節へのエネルギーの印加は、シナプス前神経線維(例えば、節前神経線維)の活性化、シナプス後神経線維(例えば、節後神経線維)の活性化、ならびに/または神経線維の興奮性および/もしくは活動を変更する組織内の支持細胞(すなわち、常在性免疫細胞または感覚細胞)の活性化もしくは調節を引き起こすことができ、これらのタイプの調節のいずれかを使用して、標的となる生理学的結果を引き起こすことができる。活性または活性化の変化は、上行性または下行性神経線維における活動電位を誘導するためのイオンチャネル(または他の膜タンパク質)活性の誘導とすることができ、活性の変化は、(それらの細胞の興奮性または活性を改変する)関心領域内の分泌機能もしくは遺伝子発現の局所的変化とすることができる、または隣接する支持非神経細胞の遺伝子発現および/もしくは分泌活性の変化とすることができる。例えば、刺激は、神経伝達物質または神経ペプチドを放出するか、神経伝達物質の放出の変化を誘発し、神経活動を調節する。したがって、他の組織構造または器官の調節は、直接刺激なしで達成され得る。特定の実施形態では、末梢神経節の少なくとも一部を含む関心領域への直接エネルギー印加は、異なる器官または構造(例えば、脾臓または肝臓)に突出する突出ニューロンにおける活動電位の刺激をもたらすことができる。器官または構造の直接刺激は、他の経路の望ましくない活性化をもたらす可能性があり、それは、所望の生理学的結果を妨害または圧倒する可能性がある。さらに、器官または構造の直接刺激は、侵襲的処置を伴う場合がある。例えば、視床下部を取り巻く脳の領域は、超音波による視床下部の直接刺激に対する障害となる。したがって、本技術は、直接的な脳刺激または電気的末梢神経刺激よりも標的化されかつより特異的な方法で、器官または構造内の活動の粒状の活性化を可能にする。さらに、本技術は、炎症性および/または代謝性薬物療法(例えば、抗腫瘍壊死因子(抗TNF)、インスリン、またはメトホルミン)を使用せずに、開示された経路の優先的な調節を提供する。
【0029】
さらに、神経節の調節は、これらの効果を達成するために、組織の比較的小さな領域の直接の活性化を含むことができる(例えば、個々の神経節は、長さが5cm以下とすることができる)。特定の実施形態では、エネルギーが印加される対象の関心領域は、1cm以下、4cm以下、9cm以下、16cm以下、または25cm以下の表面積を有することができる。このように、総印加エネルギーは、所望の生理学的結果を達成するために比較的小さい。特定の実施形態では、印加されるエネルギーは、非侵襲性の体外エネルギー源(例えば、超音波エネルギー源、機械的振動器)からのものとすることができる。例えば、集束エネルギープローブは、対象の皮膚を通してエネルギーを印加し、内部組織の関心領域に焦点を合わせる。そのような実施形態は、侵襲的処置なしで、または他のタイプの処置もしくは療法に関連することができる副作用なしで、所望の生理学的結果を達成する。さらに、特定の実施形態では、末梢神経節(例えば、仙骨神経節または結節神経節)は、特定の組織または肝臓および脾臓などの特定の器官よりも皮膚に近い場合がある。所望の生理学的結果を達成するために末梢神経節に印加されるエネルギーは、同じまたは同様の所望の生理学的結果を達成するために皮膚からさらに離れた組織または器官に印加されるエネルギーよりも少なくてもよい。したがって、末梢神経節に適用されるエネルギーを提供するために、低電力システムまたはウェアラブルエネルギー印加システムを使用することができる。そのために、開示された神経調節技術は、神経調節システムと組み合わせて使用することができる。特定の実施形態では、システムは、1つ以上の神経経路を調節するために、対象の関心領域に機械的または超音波エネルギーを印加することができるエネルギー印加装置を含むことができる。システムはまた、関心領域を空間的に選択し、エネルギー印加装置の1つ以上の調節パラメータを制御して、関心領域にエネルギーを印加して、1つ以上の神経経路の優先的調節を誘導することができるコントローラを含むことができる。関心領域内のニューロンは、対象内の遠位部位と通信して、遠位部位での1つ以上の関心分子の濃度の変化を引き起こす。図1は、神経伝達物質放出を達成するため、および/またはシナプスの構成要素(例えば、シナプス後細胞)を活性化して、エネルギーの印加に応じて、(1)神経免疫経路または抗炎症経路、(2)ドーパミン産生経路、および/または(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路を調節するための神経調節のためのシステム10の概略図である。図示されたシステムは、エネルギー印加装置12(例えば、超音波トランスデューサ)に結合されたパルス発生器14を含む。エネルギー印加装置12は、エネルギーパルスを(例えば、1つ以上のリード線または無線接続を介して)受信し、エネルギーパルスを関心領域(例えば、末梢神経節、またはその一部)に向けるように構成され、ひいては標的化された生理学的結果をもたらす。特定の実施形態では、パルス発生器14および/またはエネルギー印加装置12は、非侵襲的で体外とすることができる。例えば、エネルギー印加装置12は、対象の皮膚を通してエネルギーを印加し、内部組織の関心領域に焦点を合わせる集束エネルギープローブを含むことができる。例えば、エネルギー印加装置12は、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサなどの微小電気機械システム(MEMS)トランスデューサ、またはデュアルプローブとすることができる。
【0030】
特定の実施形態では、エネルギー印加装置12および/またはパルス発生器14は、例えば、パルス発生器14に命令を提供することができるコントローラ16と無線で通信することができる。他の実施形態では、パルス発生器14は、体外装置とすることができ(例えば、対象の体外の位置から経皮的または非侵襲的にエネルギーを印加するように動作することができる)、特定の実施形態では、コントローラ16内に統合され得る。パルス発生器14が体外である実施形態では、エネルギー印加装置12は、介護者によって操作され、エネルギーパルスが所望の内部組織に経皮的に送達されるように、対象の皮膚上またはその上方のスポットに配置され得る。特定の実施形態では、コントローラ15は、ロボットまたはデジタルとすることができる。エネルギーパルスを所望の部位に印加するように配置されると、システム10は、神経調節を開始して、標的化された生理学的結果または臨床効果を達成することができる。
【0031】
特定の実施形態では、システム10は、コントローラ16に結合され、調節の標的化された生理学的結果が達成されたかどうかを示す特性を評価するように構成される評価装置20を含むことができる。一実施形態では、標的化された生理学的結果は、局所的、遠位的、またはその双方とすることができる。例えば、調節は、局所組織への変化、または組織構造の変化、特定の分子の濃度の局所的変化、組織変位、流体運動の増加などの機能の変化をもたらす可能性がある。特定の実施形態では、調節は、全身的および/または非局所的(例えば、遠位)変化をもたらすことができる。標的化された生理学的結果は、循環分子の濃度の変化、またはエネルギーが直接印加された関心領域を含まない組織の特性の変化に関連することができる。変化は、局所または遠位の血流、解剖学的ランドマークもしくは組織のサイズもしくは位置の局所もしくは遠位の変化、局所もしくは回路の分子濃度の変化、機能的イメージングもしくは電磁センサーによって測定される神経活動の変化、細胞脂質組成の変化、および/または局所もしくは遠位組織の機械的特性の変化を含むことができる。したがって、評価装置20は、いくつかの実施形態において濃度変化を評価するように構成され得る。システム10の描写された要素は別々に示されているが、要素のいくつかまたは全ては互いに組み合わせることができることを理解されたい。さらに、要素のいくつかまたは全ては、有線または無線の方法で互いに通信することができる。
【0032】
評価に基づいて、コントローラ16の調節パラメータを変更することができる。例えば、所望の変調が、定義された時間枠内(例えば、エネルギー印加の手順が開始されてから5分または30分)の濃度の変化(例えば、循環濃度または1つ以上の分子の組織濃度)に関連する場合、または手順の開始時のベースラインと比較して、調節パラメータ(例えば、パルス周波数)の変更が望まれる場合、これは、次に、パルス発生器14のエネルギー印加パラメータまたは調節パラメータを定義または調整するために、オペレータによって、または自動フィードバックループを介して、コントローラ16に提供され得る。
【0033】
本明細書で提供されるシステム10は、様々な調節パラメータにしたがってエネルギーパルスを提供することができる。例えば、調節パラメータは、連続的から断続的までの範囲の様々な刺激時間パターンを含むことができる。断続的な刺激では、エネルギーは、信号オン時間中に特定の周波数で一定期間供給される。信号オン時間の後には、信号オフ時間と呼ばれる、エネルギーが供給されない期間が続く。調節パラメータはまた、刺激印加の頻度および持続時間を含むことができる。印加頻度は、連続的であっても、様々な期間、例えば、1日または1週間以内に送達されてもよい。治療期間は、数分から数時間を含むがこれらに限定されない様々な期間にわたって続いてもよい。特定の実施形態では、特定の刺激パターンによる治療期間は、1時間持続することができ、例えば、72時間間隔で繰り返され得る。特定の実施形態では、治療は、より短い期間、例えば、30分間にわたって、より高い頻度、例えば、3時間で送達されてもよい。したがって、治療期間および頻度などの調節パラメータにしたがって、エネルギーの印加を調整可能に制御して、所望の結果を達成することができる。
【0034】
図2は、システム10の特定の構成要素のブロック図である。本明細書で提供されるように、神経調節のためのシステム10は、対象の組織に印加するための複数のエネルギーパルスを生成するように適合されたパルス発生器14を含むことができる。パルス発生器14は、別個であっても、コントローラ16などの外部装置に統合されてもよい。コントローラ16は、装置を制御するためのプロセッサ30を含む。ソフトウェアコードまたは命令は、装置の様々な構成要素を制御するようにプロセッサ30によって実行されるために、コントローラ16のメモリ32に記憶される。コントローラ16および/またはパルス発生器14は、1つ以上のリード33を介して、または無線でエネルギー印加装置12に接続され得る。
【0035】
コントローラ16はまた、臨床医が調節プログラムに選択入力または調節パラメータを提供することを可能にするように適合された入力/出力回路34およびディスプレイ36を備えたユーザインターフェースを含む。各調節プログラムは、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数などを含む調節パラメータの1つ以上のセットを含むことができる。パルス発生器14は、コントローラ16からの制御信号に応答してその内部パラメータを変更して、リード33を介してエネルギー印加装置12が適用される対象に送信されるエネルギーパルスの刺激特性を変化させる。これらに限定されるものではないが、定電流、定電圧、複数の独立した電流または電圧源などを含む任意の適切なタイプのパルス生成回路を使用することができる。印加されるエネルギーは、電流の振幅とパルス幅の持続時間との関数である。コントローラ16は、調節パラメータを変更すること、および/または特定の時間にエネルギー印加を開始すること、特定の時間にエネルギー印加をキャンセルすること、または特定の時間にエネルギー印加を抑制することによって、エネルギーを調整可能に制御することを可能にする。一実施形態では、エネルギー印加装置の調整可能な制御は、対象内の1つ以上の分子(例えば、循環分子)の濃度に関する情報に基づく。情報が評価装置20からのものである場合、フィードバックループが調整可能な制御を駆動することができる。例えば、評価装置20によって測定される循環グルコース濃度が所定の閾値または範囲を超える場合、コントローラ16は、循環グルコースの減少に関連付けられた調節パラメータにより、関心領域(例えば、末梢神経節)へのエネルギー印加を開始することができる。エネルギー印加の開始は、所定の(例えば、所望の)閾値を超えて、または所定の範囲外にドリフトするグルコース濃度によって引き起こされ得る。別の実施形態では、調整可能な制御は、エネルギーの最初の印加が、所定のタイムフレーム(例えば、1時間、2時間、4時間、1日)内で標的の生理学的結果(例えば、関心のある分子の濃度)の予想される変化をもたらさない場合、調節パラメータを変更する形態とすることができる。
【0036】
一実施形態では、メモリ32は、オペレータによって選択可能な異なる動作モードを記憶する。例えば、記憶された動作モードは、特定の治療部位(例えば、仙骨神経節または結節神経節などの末梢神経節)に関連する一連の調節パラメータを実行するための命令を含むことができる。異なる部位は、異なる関連する調節パラメータを有することができる。オペレータに手動でモードを入力させるのではなく、コントローラ16は、選択に基づいて適切な命令を実行するように構成され得る。別の実施形態では、メモリ32は、異なるタイプの治療のための動作モードを記憶する。例えば、活性化は、組織機能の抑制または遮断に関連するものと比較して、異なる刺激圧力または周波数範囲に関連することができる。特定の例では、エネルギー印加装置が超音波トランスデューサである場合、時間平均電力(時間平均強度)およびピーク正圧は、1mW/cmから30,000mW/cm(時間平均強度)および0.1MPaから7MPa(ピーク圧力)の範囲内である。一例では、時間平均強度は、熱損傷およびアブレーションまたはキャビテーションに関連するレベルを回避するために、関心領域において35W/cm未満である。別の特定の例では、エネルギー印加装置が機械的アクチュエータである場合、振動の振幅は、0.1から10mmの範囲内である。選択される周波数は、エネルギー印加のモード(例えば、超音波アクチュエータまたは機械的アクチュエータ)に依存することができる。
【0037】
別の実施形態では、メモリ32は、所望の結果を達成するために調節パラメータの調整または変更を可能にする較正または設定モードを記憶する。一例では、刺激は、より低いエネルギーパラメータで始まり、自動的に、またはオペレータ入力の受信時に、漸進的に増加する。このようにして、オペレータは、調節パラメータが変更されているときに、誘発された効果の調整を達成することができる。
【0038】
システムはまた、エネルギー印加装置12の集束を容易にする撮像装置を含むことができる。特定の実施形態では、撮像装置は、エネルギー印加装置12と統合され得るか、または撮像装置は、異なる超音波パラメータ(例えば、周波数、開口、またはエネルギー)が関心領域の選択(例えば、空間的選択)のために、ならびに標的化およびその後の神経調節のために選択された関心領域にエネルギーを集束させるために適用されるように、エネルギー印加装置12と同じ装置とすることができる。別の実施形態では、メモリ32は、器官または組織構造内の関心領域を空間的に選択するために使用される1つ以上の標的化または集束モードを記憶する。空間的選択は、末梢神経節またはその一部を含む関心領域の選択を含むことができる。空間的選択に基づいて、エネルギー印加装置12は、関心領域に対応する対象において選択された容積に焦点を合わせることができる。例えば、エネルギー印加装置12は、最初に標的化モードで動作して、関心領域を識別するために使用される画像データをキャプチャするために使用される標的化モードエネルギーを印加するように構成され得る。標的化モードのエネルギーは、優先的な活性化に適したレベルで、および/または調節パラメータによって印加されない。しかしながら、関心領域が識別されると、コントローラ16は、優先的な活性化に関連する調節パラメータにしたがって、治療モードで動作することができる。
【0039】
コントローラ16はまた、調節パラメータの選択への入力として、標的化された生理学的結果に関連する入力を受信するように構成され得る。例えば、撮像モダリティを使用して、末梢神経節へのエネルギー印加の結果である組織特性を評価する場合、コントローラ16は、特性の計算された指標またはパラメータを受信するように構成され得る。インデックスまたはパラメータが所定の閾値を上回っているか下回っているかに基づいて、調節パラメータを変更することができる。一実施形態では、パラメータは、影響を受けた組織の組織変位の測定値、または影響を受けた組織の深さの測定値とすることができる。他のパラメータは、1つ以上の目的分子の濃度を評価することを含むことができる(例えば、閾値またはベースライン/対照、変化率に対する濃度の変化の1つ以上を評価すること、濃度が所望の範囲内にあるかどうかを判定すること)。さらに、エネルギー印加装置12(例えば、超音波トランスデューサ)は、コントローラ16の制御下で動作して、(1)体内の関心領域を空間的に選択するために使用され得る画像データを取得し、(2)関心領域に調節エネルギーを印加し、(3)画像データを取得して標的化された生理学的結果が発生したことを確認することができる。そのような実施形態では、撮像装置12、評価装置20およびエネルギー印加装置12は、同じ装置とすることができる。
【0040】
別の実装形態では、所望の調節パラメータセットもまた、コントローラ16によって記憶され得る。このようにして、対象固有のパラメータを判定することができる。さらに、そのようなパラメータの有効性は、経時的に評価され得る。特定のパラメータセットが時間の経過とともに効果が低下する場合、対象は、活性化された経路に対して鈍感になっている可能性がある。システム10が評価装置20を含む場合、評価装置20は、コントローラ16にフィードバックを提供することができる。特定の実施形態では、フィードバックは、標的の生理学的結果の特徴を示すユーザまたは評価装置20から受信され得る。コントローラ16は、エネルギー印加装置に調節パラメータにしたがってエネルギーを印加させ、フィードバックに基づいて調節パラメータを動的に調整するように構成され得る。例えば、フィードバックに基づいて、プロセッサ16は、調節パラメータ(例えば、超音波ビームまたは機械的振動の周波数、振幅、またはパルス幅)をリアルタイムで自動的に変更し、評価装置20からのフィードバックに応答することができる。
【0041】
一例では、本技術は、代謝機能障害を有する対象を治療するために使用され得る。本技術はまた、グルコース調節障害を有する対象における血糖値を調節するために使用され得る。したがって、本技術を使用して、目的分子の恒常性を促進するか、または1つ以上の目的分子(例えば、グルコース、インスリン、グルカゴン、またはそれらの組み合わせ)の所望の循環濃度または所望の濃度範囲を促進することができる。一実施形態では、本技術を使用して、循環グルコースレベルを制御することができる。一実施形態では、以下の閾値を使用して、血糖値を正常範囲の動的平衡に維持することができる:
(A)絶食時:
(1)50mg/dL(2.8mmol/L)未満:インスリンショック;
(2)50mg/dLから70mg/dL(2.8mmol/Lから3.9mmol/L):低血糖または低血糖症;
(3)70mg/dLから110mg/dL(3.9mmol/Lから6.1mmol/L):正常;
(4)110mg/dLから125mg/dL(6.1mmol/Lから6.9mmol/L):上昇または障害(前糖尿病);および
(5)125mg/dL(7mmol/L):糖尿病。
(B)非絶食時(食後約2時間の食後):
(1)70mg/dLから140mg/dL(3.9mmol/Lから7.8mmol/L):正常;
(2)140mg/dLから199mg/dL(8mmol/Lから11mmol/L):上昇または境界線(前糖尿病);および
(3)200mg/dL(11mmol/L)以上:糖尿病。
【0042】
例えば、開示された技術にかかる結節神経節へのエネルギーの印加(図9を参照)は、循環グルコース濃度を約200mg/dL未満および/または約70mg/dLを超えて維持するために使用され得る。この技術を使用して、グルコースを約4mmol/Lから8mmol/Lまたは約70から150mg/dLの範囲に維持することができる。この技術は、対象(例えば、患者)の正常な血糖範囲を維持するために使用することができ、正常な血糖範囲は、体重、年齢、および/または病歴などの患者の個々の要因に基づく個別の範囲とすることができる。したがって、1つ以上の関心領域へのエネルギーの印加は、目的分子の所望の最終濃度に基づいてリアルタイムで調整することができ、評価装置20からの入力に基づいてフィードバックループで調整され得る。例えば、評価装置20が循環グルコースモニタまたは血糖モニタである場合、リアルタイムのグルコース測定値をコントローラ16への入力として使用することができる。
【0043】
別の実施形態では、本技術を使用して、生理学的変化の特徴的なプロファイルを誘発することができる。例えば、特徴的なプロファイルは、エネルギー印加の結果として組織および/または血液中の濃度が増加する目的分子の群、ならびにエネルギー印加の結果として組織および/または血液中の濃度が減少する別の目的分子の群を含むことができる。特徴的なプロファイルは、エネルギーの印加の結果として変化しない分子の群を含むことができる。特徴的なプロファイルは、望ましい生理学的結果に関連する同時変化を定義することができる。例えば、プロファイルは、循環インスリンの増加とともに見られる循環グルコースの減少を含むことができる。
【0044】
図3は、エネルギー印加装置12が、対象の関心領域(例えば、末梢神経節などの標的神経節43を含む関心領域)にエネルギーを印加する超音波トランスデューサ42を含む特定の例である。エネルギー印加装置12は、超音波トランスデューサ42を制御するための制御回路を含むことができる。プロセッサ30の制御回路は、(例えば、統合されたコントローラ16を介して)エネルギー印加装置12に統合されてもよいし、別個の構成要素としてもよい。超音波トランスデューサ42はまた、画像データを取得して、所望のまたは標的の関心領域を空間的に選択し、印加されたエネルギーを選択された関心領域に集束させるのを助けるように構成され得る。
【0045】
所望のまたは標的とされる関心領域は、そこから神経節後軸索45a、45bが伸長して神経細胞体とシナプスを形成しかつ1つ以上の下流構造もしくは器官(器官46、48として示されている)内の軸索細胞外シナプスを形成する、またはそこから感覚ニューロンが伸長して中枢神経系に突出しているものを含む他の神経とシナプスを形成する軸索を含む、末梢神経節またはその一部などの標的神経節43を含む。標的神経節43内のシナプスは、標的神経節43の全部または一部を含む関心領域44に焦点を合わせた超音波トランスデューサ42の焦点深度内の軸索終末にエネルギーを直接印加することによって刺激されて、シナプス空間への分子の放出を引き起こすことができる。同様の放出は、節後軸索の下流の軸索細胞外シナプス、例えば肝細胞とのシナプスで起こることができ、神経伝達物質の放出および/またはイオンチャネル活性の変化は、グルコース代謝の活性化などの下流効果を引き起こすことができる。関心領域44は、特定のニューロンタイプの節後軸索を含む、および/または特定のタイプの非神経細胞とシナプスを形成するニューロン細胞体を含むものなど、特定のタイプの神経節43を含むように選択され得る。したがって、関心領域44は、所望の節後軸索終末(および関連する非神経細胞)を有する標的神経節43に対応するように選択され得る。特定の実施形態では、エネルギー印加は、シナプス内の神経からの1つ以上の分子(例えば、神経伝達物質)の放出を優先的に誘発するように選択され得る。特定の実施形態では、エネルギー印加は、直接的なエネルギー変換(すなわち、メカノトランスダクションまたは非神経細胞内の電圧活性化タンパク質)を介して関心領域44の神経細胞を直接活性化することによって1つ以上の分子(例えば、神経伝達物質)の放出を優先的に引き起こすように選択され得る。特定の実施形態では、エネルギー印加は、所望の生理学的効果を誘発する関心領域44内の神経細胞内で活性化を引き起こすことによって、1つ以上の分子(例えば、神経伝達物質)の放出を優先的に引き起こすように選択され得る。
【0046】
エネルギーは、関心領域44および標的神経節43の全部または一部(例えば、神経節43の総容積の約75%、50%、25%、10%、または5%未満)のみに集束または実質的に集中することができる。一実施形態では、エネルギーは、標的神経節43の全体を含むように、例えば神経節43の容積の約105%から約200%などの標的神経節43よりも大きい関心領域44に印加することができる。一実施形態では、エネルギーは、複数の標的神経節43を含む2つ以上の領域に印加することができる。一実施形態では、エネルギーは、神経節43の総容積の約1%から50%のみ、または神経節43の総容積の約25%から100%に印加される。特定の実施形態では、エネルギーは、約25mm未満の容積内に集束または集中され得る。特定の実施形態では、エネルギーは、約0.5mmから50mmの容積内に集束または集中され得る。関心領域44内にエネルギーを集束または集中させるための焦点容積および焦点深さは、エネルギー印加装置12のサイズまたは構成によって影響を受ける可能性がある。エネルギー印加の焦点容積は、エネルギー印加装置12の焦点深度によって定義され得る。例えば、超音波トランスデューサの場合、焦点深度は、超音波トランスデューサの表面に取り付けられた超音波レンズまたは超音波トランスデューサのトランスデューサ素子の配置によって定義され得る。焦点深度は、エネルギー印加装置12から対象および関心領域44へのエネルギーのサイズおよび/または形状を定義する。本明細書で提供されるように、エネルギーは、神経節43を優先的に活性化するために、1つ以上の関心領域44にのみ実質的に印加され得る。したがって、体内の複数の異なるタイプの神経節のサブセットのみが直接エネルギー印加にさらされる。
【0047】
神経節43を含む関心領域44は、空間的選択を実行するために、撮像、解剖学的ランドマーク(例えば、頸動脈アーチ)への参照などによって識別され得る。図4は、エネルギー印加装置12が、仙骨神経節43を含む関心領域44にエネルギーを印加する超音波トランスデューサ42を含む例である。関心領域44は、仙骨神経節43の器官46への入口47aの点または仙骨神経節の骨構造48への入口47bの点に基づいて選択され得る。図3に戻ると、関心領域に含まれる個々の神経節43は、これらに限定されるものではないが、履歴データまたは実験データ(例えば、特定の場所と所望のまたは標的の生理学的結果との関連を示すデータ)を含む要因に基づいて選択され得る。代替的または追加的に、システム10は、所望の標的生理学的効果が達成されるまで、個々の神経節43またはその一部を含む関心領域にエネルギーを印加することができる。視覚化された神経の空間情報を使用する関心領域への直接エネルギー印加を介した優先的活性化のための神経節43の開示された選択は、他の器官または構造(例えば、肝臓、膵臓、または胃腸組織)と組み合わせて使用され得る。
【0048】
他の実施形態では、関心領域は、1つ以上の生物学的マーカーの存在または非存在によって識別され得る。そのようなマーカーは、組織を染色し、染色を示す画像を取得して、生物学的マーカーを含む組織の領域を識別することによって評価され得る。いくつかの実施形態では、生物学的マーカー情報は、対象内の生物学的マーカーの位置データをリアルタイムで取得するためのインビボ染色技術によって取得され得る。他の実施形態では、生物学的マーカー情報は、対象内の生物学的マーカーの位置を予測するために使用される1つ以上の代表的な画像から位置データを取得するためのインビトロ染色技術によって取得され得る。いくつかの実施形態では、関心領域は、特定の生物学的マーカーが豊富であるか、または特定の生物学的マーカーを欠いている組織に対応するように選択される。例えば、1つ以上の生物学的マーカーは、ニューロン構造のためのマーカー(例えば、ミエリン鞘マーカー)を含むことができる。
【0049】
器官または組織の関心領域は、オペレータの入力に基づいて空間的に選択され得る。例えば、オペレータは、画像を直接操作することによって(例えば、画像上に関心領域を描画または書き込むことによって)、または関心領域に対応する画像座標情報を提供することによって、取得された画像上の関心領域を指定することができる。別の実施形態では、関心領域は、空間的選択を達成するために画像データに基づいて自動的に選択され得る。いくつかの実施形態では、空間的選択は、関心領域に関連するデータをメモリに記憶すること、およびデータにアクセスすることを含む。
【0050】
開示された技術は、神経調節効果の評価に使用することができ、これは、ひいては神経調節パラメータを選択または変更するための入力またはフィードバックとして使用することができる。開示された技術は、組織の状態または機能の直接的な評価を、標的化される生理学的結果として使用することができる。評価は、神経調節の前(すなわち、ベースライン評価)、最中、および/または後に行うことができる。
【0051】
評価技術は、機能的磁気共鳴画像法、拡散テンソル磁気共鳴画像法、陽放射断層撮影法、画像診断超音波、または音響モニタリング、熱モニタリングのうちの少なくとも1つを含むことができる。評価技術はまた、タンパク質および/またはマーカー濃度評価を含むことができる。評価技術からの画像は、自動または手動の評価のためにシステムによって受信され得る。評価技術からの画像データに基づいて、調節パラメータを変更することができる。例えば、組織サイズの変化または変位は、局所神経伝達物質濃度のマーカーとして利用することができ、表現型調節神経伝達物質への局所細胞の曝露の代理マーカーとして、およびグルコース代謝経路または全身性炎症経路(例えば、神経免疫もしくは抗炎症経路またはドーパミン産生経路)に対する予測される効果のマーカーとして効果的に使用され得る。局所濃度は、エネルギー印加の焦点深度内の濃度を指すことができる。
【0052】
追加的または代替的に、システムは、組織領域または血液中の1つ以上の分子の存在または濃度を評価することができる。組織内の濃度は、局所濃度または常在濃度と呼ばれる場合がある。組織は、細針吸引によって取得され得、目的分子(例えば、代謝分子、代謝経路のマーカー、ペプチド伝達物質、カテコールアミン)の存在またはレベルの評価は、当業者に知られている任意の適切な技術によって行うことができる。
【0053】
図5は、末梢神経節を刺激するための方法50のフロー図である。方法50では、関心領域が空間的に選択される52。エネルギー印加装置は、エネルギーパルスがステップ54において所望の関心領域に集束されるように配置され、パルス発生器は、ステップ56において標的組織の関心領域に複数のエネルギーパルスを印加して標的神経節におけるシナプスを活性化し、例えば、軸索終末を刺激して神経伝達物質を放出し、および/または神経伝達物質放出の変化を誘発し、および/または(シナプス内の)活動ニューロン細胞体の変化を誘発し、例えば、本明細書で提供されるステップ58において、1つ以上の器官、構造または経路を優先的に活性化することによって、標的化された生理学的結果を引き起こす。特定の実施形態では、この方法は、刺激の効果を評価するステップを含むことができる。例えば、神経節の機能または状態の状況について、1つ以上の直接的または間接的な評価を使用することができる。評価された機能に基づいて、1つ以上のエネルギーパルスの調節パラメータを変更して(例えば、動的にまたは調整可能に制御して)、標的の生理学的結果を達成することができる。
【0054】
一実施形態では、評価は、エネルギーパルスを印加する前後に実行して、調節の結果として1つ以上の目的分子(例えば、グルコース、TNF、アセチルコリン(ACh)、ノルエピネフリン(NE)、またはドーパミン(DA))の濃度の変化を評価することができる。目的分子の濃度が閾値よりも上または下である場合、調節パラメータに適切な変更を加えることができる。例えば、グルコース濃度が所望の生理学的結果と一致しない場合、神経調節中に印加されるエネルギーは、所望の結果をサポートする最小レベルに戻され得る。閾値に対する目的分子の変化が、目的分子の不十分な変化に関連している場合、これらに限定されるものではないが、調節振幅もしくは周波数、パルス形状を含む特定の調節パラメータ、刺激パターン、および/または刺激位置は、変更され得る。
【0055】
さらに、評価された特性または状態は、値または指標、例えば、流量、濃度、細胞集団、またはそれらの任意の組み合わせとすることができ、これらは、ひいては適切な技術によって分析され得る。例えば、閾値を超える相対的変化を使用して、調節パラメータが変更されているかどうかを判定することができる。所望の調節は、組織構造サイズ(例えば、リンパ節サイズ)の増加の有無または1つ以上の放出された分子の濃度の変化(例えば、神経調節前のベースライン濃度と比較して)などの測定された臨床結果を介して評価され得る。一実施形態では、所望の調節は、閾値を超える濃度の増加を含むことができる(例えば、ベースラインと比較して、濃度の約50%、100%、200%、400%、1000%の増加を超える)。ブロッキング治療の場合、評価は、時間の経過に伴う分子濃度の低下の追跡を含むことができる(例えば、目的分子の濃度の少なくとも10%、20%、30%、50%、または75%の低下)。さらに、特定の対象について、所望のブロッキング治療は、分子の濃度を増加させる傾向があり得る他の臨床事象の状況において、特定の分子の比較的安定した濃度を維持することを含むことができる。すなわち、所望のブロッキングは、潜在的な増加をブロックすることができる。増加もしくは減少または他の誘発された測定可能な効果は、治療の開始から特定の時間枠内(例えば、約5分以内または約30分以内)に測定され得る。
【0056】
特定の実施形態では、神経調節の生理学的結果が望ましいと判定された場合、神経調節の変化は、エネルギーパルスの印加を停止するための指示として機能することができる。別の実施形態では、神経調節の生理学的結果が望ましくない場合、神経調節の1つ以上のパラメータを変更することができる。例えば、調節パラメータの変更は、10Hzから100Hzの周波数の段階的な増加など、パルス繰り返し周波数の増加とすることができ、神経調節の望ましい生理学的結果が達成されるまで、望ましい特性の評価が続けられる。別の実装形態では、パルス幅を変更することができる。他の実施形態では、2つ以上のパラメータをともに(例えば、並列または直列に)変更することができる。複数のパラメータを変更した後、神経調節の生理学的結果が望ましくない場合、エネルギー印加の焦点(すなわち、部位)を変更することができる。
【0057】
エネルギー印加装置12は、体外の非侵襲的装置または内部装置(例えば、低侵襲性装置)として構成され得る。本明細書に記載されるように、エネルギー印加装置12は、体外の非侵襲的超音波トランスデューサまたは機械的アクチュエータとすることができる。例えば、エネルギー印加装置12は、超音波トランスデューサを含む携帯型超音波プローブとして構成され得る。しかしながら、解剖学的標的上に超音波トランスデューサプローブを構成、接着、または配置するための他の方法を含む、他の非侵襲的実装も想定されることを理解されたい。さらに、携帯型構成に加えて、エネルギー印加装置12は、コントローラ16からの指示に応答するステアリング機構を含むことができる。ステアリング機構は、エネルギー印加装置12を標的神経節43(または構造)に向けることができ、次いで、コントローラ16は、エネルギー印加を関心領域44に集束させることができる。
【0058】
図6は、本明細書で提供されるようにエネルギーを印加して標的組織を撮像するように(例えば、コントローラ16によって)制御され得る単一のエネルギー印加装置12に配置された高密度焦点式超音波(HIFU)トランスデューサ74Aおよび撮像超音波トランスデューサ74Bを含む、図1のシステム10と併せて使用され得るエネルギー印加装置12の例である。
【実施例
【0059】
特定の末梢神経節神経調節のための超音波標的化
神経調節が始まる前に、GE Vivid E9超音波システムおよび11Lプローブを超音波スキャンのために使用した。関心のある内部領域に対応する焦点領域を、動物の皮膚にラベル付けした。HIFUトランスデューサをラベル付けされた領域に配置した。HIFUトランスデューサの開口部に配置されたより小さな撮像プローブ(3S)を使用して、別の超音波スキャンも実行した。3Sプローブの撮像ビームを、HIFUビームと位置合わせした。したがって、HIFUビームが標的器官の画像(超音波スキャナで可視化)を使用して関心領域に向けられていることを確認することができた。
【0060】
動物対象、超音波刺激プロトコル、および組織分析
8から12週齢の成体雄のSprague-Dawleyラット(250~300g;Charles River Laboratories)を、25℃で12時間の明暗サイクルにおいて飼育し、1週間順応させてから実験を行った。水と通常のげっ歯類の餌は自由に摂取できた。
【0061】
LPS誘発性炎症および高血糖症
エンドトキシン(Escherichia coliからのLPS、0111:B4;Sigma-Aldrich)を使用して、未処置の成体のSprague Dawleyラットに炎症および代謝機能障害(例えば、高血糖や高インスリン血症など)の重大な状態を引き起こした。LPSを、腹腔内(IP)注射によって動物(10mg/kg;Rosa-Ballinas PNAS、2008)に投与し、注射後4時間でピークに到達するが対照と比較して注射後8時間まで上昇したままであるTNFと循環グルコース濃度の大幅な上昇を引き起こした。印加された超音波エネルギーを使用した神経調節を、脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、および/または孤束核で行った。LPS注射の前後1分間、超音波印加を行った。循環カテコールアミン濃度(例えば、ノルエピネフリンやドーパミン)の変化を分析するために、最後の超音波治療の15分後に血液サンプルを収集した。循環TNF濃度の変化を分析するために、最後の超音波治療の60分後に末端血液サンプルを収集した。血液サンプルは、サンプルの凝固を防ぐために抗凝固剤(二ナトリウム)EDTAとともに保存した。サンプルは、TNF(Lifespan)およびアセチルコリン(Lifespan)濃度の変化についてELISAアッセイによって分析した。カテコールアミン(例えば、ノルエピネフリンおよびドーパミン)濃度は、HPLC検出またはELISA(Rocky Mountain Diagnostic)分析を使用して評価した。
【0062】
超音波刺激プロトコル:
(A)動物を2~4%イソフルランで麻酔した。
(B)動物は、処置中の高体温を防ぐために、水循環加温パッドに腹臥位で置いた。
(C)超音波刺激の標的関心領域の上方の領域(例えば、対象神経)を、刺激の前に使い捨てかみそりと動物用バリカンによって剃った。
(D)画像診断超音波を使用して、関心領域を空間的に選択した。
(E)その領域を、後で識別するために油性ペンでマークした。
(F)FUS超音波プローブまたはLogiQ E9プローブのいずれかを、画像診断超音波によって以前に識別された指定された関心領域に配置した。
(G)次に、超音波パルスを、単一の1分間のパルスを超えない単一の刺激の合計持続時間で実行した。超音波パルスのエネルギーは、熱損傷およびアブレーションまたはキャビテーションに関連するレベル(例えば、35W/cm)には到達しない。
(H)そして、LPS(10mg/kg)を腹腔内注射することができる(急性または動態研究用)。あるいは、効果の持続期間のために、LPSは、代わりに後の指定された時点で注入してもよい。
(I)第2の1分間の超音波パルスを印加することができる。
(J)そして、動物は、急性研究(例えば、1時間)および動態研究(例えば、LPS後最大3時間まで変化する)のために、麻酔下でインキュベートすることができる。その後、動物を犠牲にし、組織と血液のサンプルを収集する。
【0063】
組織採取およびサンプル準備
切開は、腹膜腔の基部から始まり、胸膜腔まで行った。器官を迅速に取り出し、ホスファターゼ(0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、5μg/mLのアプロチニン、1mMベンズアミジン、1mMオルトバンデートナトリウムおよび2μMカンタリジン)とプロテアーゼ(Roche Diagnosticsに従い1μLから20mgの組織)阻害剤を含むPBS溶液でホモジナイズした。PBS溶液1mLあたり0.2g組織の標的最終濃度を全てのサンプルに適用した。血液サンプルは、サンプルの凝固を防ぐために抗凝固剤(二ナトリウム)EDTAとともに保存した。そして、サンプルは、分析まで-80℃で保存した。サンプルは、TNF(Lifespan/Abcam/ThermoFisher)濃度とアセチルコリン(Lifespan)濃度の変化についてELISAアッセイによって分析した。カテコールアミン濃度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)検出または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(Rocky Mountain Diagnostic)分析を使用して評価した。
【0064】
HPLC分析
血清サンプルは、前処理なしで直接HPLCに注入した。組織ホモジネートを最初に0.1M過塩素酸でホモジナイズし、15分間遠心分離した。次に、上澄みを分離し、サンプルをHPLCに注入した。
【0065】
カテコールアミン(例えば、ノルエピネフリンおよびドーパミン)は、インライン紫外線検出器を備えたHPLCによって分析された。この分析で使用したテストカラムは、Supelco Discovery C18(15cm×4.6mm I.D.、5μm粒子サイズ)であった。[A]アセトニトリル:[B]50mM KHPOから構成される二相移動相を、pH3に設定した(リン酸を使用)。次に、溶液を100mg/LのEDTAおよび200mg/Lの1-オクタンスルホン酸で緩衝した。移動相混合物の最終濃度は、5:95(A:B)に設定した。使用する移動相の粘度に起因するカラムの圧力圧縮を最小限に抑えるために、カラムを一定の20℃に保持しながら、1mL/分の流量を使用して全体的なピーク分解能を向上させた。UV検出器は、カテコールアミン(例えば、ノルエピネフリンやドーパミン)の吸収を捕捉することが知られている波長である254nmに維持した。
【0066】
図7は、本明細書で提供される標的神経節43(例えば、末梢神経節またはその一部を含む)に焦点を合わせた特定の神経調節実験を実行するために使用される実験設定を示している。エネルギー印加装置12は、コントローラ16によって設定されたパラメータにしたがって動作して、標的神経節43内の関心領域にエネルギーを印加することができる。本明細書で論じられるように、標的組織は、末梢神経節、またはその一部、例えば仙骨神経節または結節神経節を含むことができる。描かれている実験設定は、40WのRF増幅器で示されているが、これは単なる例であり、他の増幅器(例えば、線形増幅器)を使用することができる。特定の設定では、ラットの頭は、バードケージコイルに挿入する。
【0067】
特定の変調実験を実行するために使用される超音波エネルギー印加の実験タイムラインが本明細書に提供される。リポ多糖注射の前後1分間、超音波印加を行った。リポ多糖(LPS)は、強力な免疫または炎症反応を誘発する細菌の膜分子である。Escherichia coliからのLPS、0111:B4(Sigma-Aldrich)を使用して、未処置の成体のSprague Dawley(SD)ラットに炎症および代謝機能障害(例えば、高血糖やインスリン抵抗性)の重大な状態を引き起こした。LPSを、腹腔内(IP)注射によって動物(10mg/kg)に投与し、TNF、グルコース、およびインスリンの濃度の大幅な上昇を引き起こした。これらの濃度は、1時間でピークに到達し、通常は最大4時間持続したが、対照と比較して、注射後最大8時間上昇したままであった。対照は、LPS偽ラットを含んでいた(例えば、LPSおよび超音波トランスデューサを注入したラットを、超音波刺激を印加しないラットに配置した)。動物を、器官の採取および処理のために、神経節または核の超音波治療後の所定期間(例えば、1時間)に犠牲にした。
【0068】
本実施例は、刺激および関連する生理学的結果を達成するために超音波エネルギー印加を使用して、非ニューロン細胞および/または他のニューロンにつながる特定の末梢神経節におけるニューロンの特定の軸索突出を刺激する非侵襲的方法を実証する。例えば、特定の末梢神経節内のシナプスへのエネルギーの印加は、(1)神経免疫もしくは抗炎症経路、(2)ドーパミン産生経路、(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路、ならびに/または(4)認知処理および適応性を調節することができる。
【0069】
局所超音波刺激に対するCAPの反応は、CAP関連の神経伝達物質とノルエピネフリン(NE)、アセチルコリン(ACh)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインの血液中濃度を測定することによって監視した。仙骨神経節および結節神経節の超音波刺激は、血液中のNEおよびTNFの濃度の調節を達成することが見出された。この結果は、NEおよびTNFの濃度を調節するためのCAP経路に関連する脾臓および軸索の超音波刺激と類似しているか、または相関がある。さらに、仙骨神経節および結節神経節の超音波刺激は、血液中のドーパミン濃度の調節を達成することが見出された。この結果は、ドーパミンの産生に関連する右副腎および軸索の超音波刺激と類似しているか、相関がある。さらに、結節神経節の超音波刺激は、血糖循環を調節する感覚経路を調節することが示された。まとめると、このデータは、末梢神経節内の超音波神経調節が、末梢神経節内のニューロンのサブセットを刺激して特定の生理学的経路(例えば、神経免疫経路、抗炎症経路、ドーパミン産生経路、および/またはグルコース調節もしくはインスリン産生経路の調節)に影響を与えることを容易にする精密神経調節の方法を提供することができることを実証している。具体的には、仙骨神経節内の軸索およびシナプスのサブセットに焦点を合わせた超音波刺激は、神経免疫経路もしくは抗炎症経路を介して全身性炎症に影響を及ぼすことができ(例えば、全身性炎症を減少させ)、および/または右副腎でのドーパミンの産生を介して全身性炎症に影響を及ぼすことができる(例えば、全身性炎症を減少させる)。さらに、結節神経節内の軸索およびシナプスのサブセットに焦点を合わせた超音波刺激は、神経免疫もしくは抗炎症経路を介して全身性炎症に影響を及ぼすことができ(例えば、全身性炎症を減少させる)、右副腎におけるドーパミンの産生を介して全身性炎症に影響を及ぼすことができ(例えば、全身性炎症を減少させる)、および/またはグルコース恒常性を維持することができる。
【0070】
図8Aから図8Dは、脾臓、右副腎、仙骨神経節、結節神経節、または孤束核の超音波刺激後の対照と比較した様々な神経伝達物質およびサイトカインの平均濃度を示している。図8Aは、開示された標的関心領域の超音波治療後の血液中の平均TNF濃度(および標準偏差)を示している。図8Bは、開示された標的関心領域の超音波治療後の血液中の平均アセチルコリン濃度(および標準偏差)を示している。図8Cは、開示された標的関心領域の超音波治療後の血液中の平均NE濃度(および標準偏差)を示している。図8Dは、開示された標的関心領域の超音波治療後の血液中の平均DA濃度(および標準偏差)を示している。図8Aに示されるように、仙骨神経節および結節神経節の超音波刺激は、対照と比較してTNFの濃度を減少させるために、CAP経路に関連する脾臓および軸索の超音波刺激と同様の結果をもたらした。図8Bおよび図8Cに示されるように、脾臓、仙骨神経節、および結節神経節の超音波刺激の結果としての血液中のNEの濃度の増加は、血液中のアセチルコリンの濃度の増加をもたらした。図8Dに示されるように、仙骨神経節の超音波刺激は、ドーパミンの産生に関連する右副腎および軸索の超音波刺激と同様の結果をもたらした。したがって、末梢神経節(例えば、仙骨神経節または結節神経節)内の超音波調節は、刺激されている特定の末梢神経節に基づいて、1つ以上の特定の生理学的経路(例えば、神経免疫経路、抗炎症経路、ドーパミン産生経路、グルコース調節経路、および/またはインスリン産生経路の調節)に影響を与える。具体的には、結節神経節内の超音波調節は、神経免疫経路またはCAPなどの抗炎症経路、ならびにグルコース調節および/またはインスリン産生経路を調節する。さらに、仙骨神経節内の超音波調節は、神経免疫経路またはCAPなどの抗炎症経路、およびドーパミン産生経路を調節する。
【0071】
図9は、血糖濃度の標的化された調節を達成するために、LPS誘発性高血糖動物モデルの様々な領域に超音波刺激を優先的に印加する非限定的な例を提供する。図9のプロットは、LPS注射後10、15、30、および60分の時点での相対的な血糖濃度を、0分時点でのLPS注射前の血糖濃度と比較して示している。超音波刺激なしでLPS注射のみを受ける群では、LPS誘発性高血糖が観察される。対照と比較して、右副腎、仙骨神経節(例えば、仙骨後根神経節、仙骨神経叢の標的化によって空間的に選択された)、およびNTSへの超音波刺激後の循環グルコース濃度に有意差はなかったが、対照と比較して、結節神経節への超音波刺激後の循環グルコース濃度に有意な減少があった。そのため、結節神経節に超音波刺激を優先的に印加することは、LPS誘発性高血糖を逆転させ、血糖濃度を調節するために使用される。したがって、結節神経節内の超音波神経調節は、グルコース調節および/またはインスリン産生経路に影響を及ぼす。図9の実施形態に示されるように、結節神経節に超音波刺激を印加することは、モデルのLPS誘発性高血糖に対する保護を提供し、血糖濃度の増加を制限および/または制御する。したがって、結節神経節への超音波エネルギーの印加は、保護的治療として、または予想される全身的困難または破壊の前に適用される治療として使用され得る。
【0072】
図10は、血糖濃度の標的化された調節を達成するために、LPS誘発性高血糖動物モデルの肝臓に超音波刺激を優先的に印加する非限定的な例を提供する。図12のプロットは、LPS注射後5、15、30、および60分の時点での相対的な血糖濃度を示している。超音波刺激なしでLPS注射のみを受ける群では、LPS誘発性高血糖が観察される。データは、さらに、肝臓の遠位葉の超音波刺激が血糖濃度に有意な影響を与えないことを示している。対照的に、肝門に超音波刺激を優先的に印加することは、LPS誘発性高血糖を逆転させ、血糖濃度を調節するために使用され得る。
【0073】
本明細書で提供される開示された技術は、神経系の自然な階層構造および組織を採用し、単純で非侵襲的な技術による正確な神経調節を可能にする。例えば、末梢神経節へのエネルギーの印加は、単一の刺激点を使用して、(1)神経免疫経路もしくは抗炎症経路、(2)ドーパミン産生経路、および/または(3)グルコース調節もしくはインスリン産生経路のうちの1つ以上を調節することができる。したがって、末梢神経節またはその一部の刺激は、刺激されている特定の末梢神経節に基づいて、開示された経路の1つ、開示された経路の2つ、または開示された経路の3つの調節を可能にすることができる。開示された神経経路について実証されているが、この技術は、他の末梢神経回路を調節するために適用され得る。さらに、皮膚の下のより深く配置された器官および組織と比較して、所望の生理学的結果を達成するために、全体的により少ないエネルギーが末梢神経節に印加され得る。したがって、末梢神経節に印加されるエネルギーを提供するために、低電力システムまたはウェアラブルエネルギー印加システムを使用することができる。
【0074】
この詳細な説明は、例を使用して、最良のモードを含む開示を開示し、また、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに任意の組み込まれた方法の実行を含め、当業者が開示を実施できるようにする。本開示の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に生じる他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文字通りの文言とわずかに異なる同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10