(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】脳卒中の血液バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20240401BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240401BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
G01N33/50 P
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2021514483
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2019062653
(87)【国際公開番号】W WO2019219831
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518098014
【氏名又は名称】ソントル オスピタリエ レジョナル エ ウニベルシテール ド ブレスト
(73)【特許権者】
【識別番号】520445989
【氏名又は名称】エタブリッセメント フランセ ドゥ サン
(73)【特許権者】
【識別番号】514203362
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】516133836
【氏名又は名称】ユニバーシテ デ ブルターニュ オキシデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ティムシット,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュナン,エマニュエル
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/067571(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/054700(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/011329(WO,A1)
【文献】特表2016-507235(JP,A)
【文献】Genomics,2014年,Vol. 104,pp. 163-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象
が脳卒中
に罹患しているかどうかを決定する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得られたサンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルよりも高い場合に、前記対象を、脳卒中に罹患していると
決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)が、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照シグネチャーを、実質的に健常な対象の参照集団において前記バイオマーカーの発現レベルを測定することにより得る、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
脳卒中をstroke mimicと区別するための、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成
したかどうかを決定する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得られたサンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルよりも低い場合に、前記対象が応答を達成
したと結論付けるステップと
を含む、方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つのバイオマーカーが、DUSP1およびADMを構成しない、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
ステップi)が、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定するステップを含む、請求項
5または
6に記載の方法。
【請求項8】
前記参照シグネチャーを、前記治療の開始前に同じ対象から得たサンプル中の前記バイオマーカーの発現レベルを測定することにより得る、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得たサンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも
3つのバイオマーカーの発現レベルよりも高い場合に、前記対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む、方法。
【請求項10】
ステップi)が、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定するステップを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記参照シグネチャーを、実質的に健常な対象の参照集団における前記バイオマーカーの発現レベルを測定することにより得る、請求項
9~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が脳卒中を経験したことがあり、前記方法が、前記対象が再発性脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定するためのものである、請求項
9~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記脳卒中が、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、または出血性脳卒中である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルが、脳のサンプルではない、請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的、短期間および長期間の予後を診断するため、ならびにリスク評価のため、特に虚血性脳卒中の治療の有効性をモニタリングするための、脳卒中の血液バイオマーカーおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、世界における死因の第2位であり、身体障害の原因の第3位である(McKay & Mensah, 2005. The atlas of heart disease and stroke (1st ed.). Geneva: World Health Organization)。局所性脳虚血、すなわち虚血性脳卒中は、梗塞のコアに重篤かつ迅速な組織損傷をもたらす。最初の損傷の後、脳細胞死はゆっくりと進行し、ペナンブラと呼ばれるコアの周辺の異質の領域にまで広がる(Astrup et al., 1977. Stroke. 8(1):51-7)。虚血性のペナンブラを救出することは、身体障害の観点からアウトカムを改善する(Emberson et al., 2014. Lancet. 384(9958):1929-35)。
【0003】
今日までに、この急病の唯一の治療上の解決策は、血栓溶解および/または血栓除去を介した血流再開である。しかしながら、短い介入ウインドウ(血流再開では6時間未満、血栓溶解では4時間30分未満)および出血の変化のリスクのため、ごく一部の急性虚血性脳卒中患者のみが、この処置に適している。たとえば、総合脳卒中センター(comprehensive stroke centre)に6時間以内に到着した全患者の中で、10.5%のみの血管内が、AHA/ASA基準による血栓除去に適していることが推定されている(Vanacker et al., 2016. Stroke. 47(7):1844-9)。
【0004】
よって、治療ウインドウを広げる新規の治療上の戦略を開発することが、主要な公衆衛生の問題である。過去に多くの臨床試験が失敗しているが、血流再開が出現するため、血流再開に関連する神経保護が、依然として治療ウインドウを広げるための潜在的に見込みのある戦略であり続けている。増加しているエビデンスから、末梢性のタンパク質、核酸、または脂質が、虚血性脳卒中の診断を確認するためおよび疾患進行をモニタリングするために使用できることが示唆されている。しかしながら今日までに、臨床診療で行われてはいない(Kim et al., 2013. J Stroke. 15(1):27-37)。
【0005】
バイオマーカー試験は、疾患の存在、進行、もしくは重症度、または処置の作用を表す、1つまたはいくつかのマーカーの存在の有無を定性的に評価または定量的に測定するために使用され得るイメージング、化学的試験、または他の生物学的な試験を表す。中枢神経系(CNS)のイメージングは、大きな発展を遂げてきているが、他方で末梢性の生物学的マーカーの同定は、あまり進歩していない。CNSの疾患および処置にとって強力なバイオマーカーとして適用される血液バイオマーカーを同定することは、血液は脳と直接接触しないため、現代の神経学において最も重要な課題の1つである。
【0006】
診断マーカーとしての血液中のRNAの使用は、乳がん、冠動脈疾患、および感染性疾患の診断におけるその臨床適応により支援されている新たに出現した分野である(Rothstein & Jickling, 2013. Biomark Med. 7(1):37-47)。さらに、血液中のRNAは、早期臨床試験において神経保護性の作用物質の効果を評価するためのコンパニオン診断として使用され得る。コーディングRNAに関する急性虚血性脳卒中における診断バイオマーカーとしてのRNAの研究は希少であり、これには少数の患者のみが含まれ、その中で急性期の梗塞である患者はごくわずかである(Tang et al., 2006. J Cereb Blood Flow Metab. 26(8):1089-102; Stamova et al., 2010. Stroke. 41(10):2171-7)。近年、脳卒中の梗塞の急性期ではないが、リスク因子としての脳卒中において見込みのあるバイオマーカーとしてノンコーディングRNAに特に急速に興味が集まっている(Mick et al., 2017. Stroke. 48(4):828-834)。
【0007】
遺伝子発現の変化を測定するため、脳虚血での多くの実験的な試験においてトランスクリプトーム解析が使用されている。大部分の実験的なトランスクリプトームの試験は、局所的または全体的な虚血性モデルのラットまたはマウスにおいて行われていた(レビューでは、Cox-Limpens et al., 2014. Brain Res. 1564:85-100を参照されたい)。虚血に加え、げっ歯類の内因的な脳の保護を試験するためのツールとしてプレコンディショニングもまた使用されている。これらげっ歯類でトランスクリプトームを試験するマイクロアレイ試験の結果は、前初期遺伝子、ストレス応答遺伝子、アポトーシス遺伝子、シグナル伝達遺伝子、神経伝達遺伝子、イオンチャネル遺伝子、炎症遺伝子、細胞骨格遺伝子、リボソーム遺伝子、および神経栄養因子遺伝子が、脳虚血の間発現の変化を経ることを示している(Schmidt-Kastner et al., 2002. Brain Res Mol Brain Res. 108(1-2):81-93; Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14; Wang et al., 2011. Brain Res. 1372:13-21; Wang et al., 2012. Neuroscience. 220:100-8; Lu et al., 2004. J Neurosci Res. 77(6):843-57)。しかしながら、本出願人らの知識では、霊長類では、ごくわずかの実験のみが行われていた(Cook et al., 2012. Nature. 483(7388):213-7; Cook & Tymianski, 2012. Neurotherapeutics. 9(2):371-9)。霊長類は、ヒトと極めて類似しているゲノムおよび解剖学的な相同性を有するため、脳虚血の試験に特有のモデルを表している。たとえば、霊長類およびヒトは両方とも、平坦ではない(non-lissencephalic)脳(すなわち皮質に畳み込みを呈する;皺脳)を有しており、これを有さないげっ歯類とは対照的である。さらに、ヒトおよびチンパンジーの両方における大脳皮質のトランスクリプトームは、互いに非常に類似しており、個体の中の領域間よりも個体間でより異なっている(Khaitovich et al., 2004. Genome Res. 14(8):1462-73)。
【0008】
動物試験からヒトへの適応までの神経保護治療の変換が成功していない理由が主に4つ同定されている(Moretti et al., 2015. Pharmacol Ther. 146:23-34; Timsit & Menn, 2012. Clin Pharmacol Ther. 91(2):327-32):
i)前臨床試験の不十分な質:
前臨床試験において、この分野の課題は、前臨床試験における品質スコアの基準、たとえばSTAIR基準(Stroke Therapy Academic Industry Roundtable (STAIR), 1999. Stroke. 30(12):2752-8; Fisher et al., 2009. Stroke. 40(6):2244-50)およびヒトでのランダム化盲検試験(Llovera et al., 2015. Sci Transl Med. 7(299):299ra121)の開発を介して、着実に改善している;
ii)初期の臨床開発における生物学的なコンパニオン薬力学バイオマーカーの不存在:
薬物を開発するためのコンパニオンバイオマーカーは現在ますます使用されている。疾患状態の患者において有効性が安全な用量で達成され得るかどうかに関する確実性を得るために後期のステージで必要とされる大きな投資の前に、比較的短期間のフェーズのIb臨床試験が、関連する疾患を有する少数の患者で行われる。これは、一部の薬力学バイオマーカーの最も重要な適用である(Zhao et al., 2015. Clin Chem. 61(11):1343-53)。
iii)ペナンブラを推定するためのフェーズIIのヒト試験での予測イメージングバイオマーカーの不存在:
血栓除去に適切である患者を同定するための脳のイメージングに基づく患者の選択は、選択された患者においてペナンブラを救うためのDAWN試験において示されるように、現在有用である(Jovin et al., 2017. Int J Stroke. 12(6):641-652; Chaisinanunkul et al., 2015. Stroke. 46(8):2238-43; Nogueira et al., 2018. N Engl J Med. 378(1):11-21)。神経保護においてほんのわずかの研究のみが、ペナンブラの特徴に基づき選択を行っている(レビューでは、Donnan et al., 2009. Lancet Neurol. 8(3):261-9を参照されたい)。今日、この新規の概念は、血流再開または再灌流を待機しつつ、治療介入に有用な道を提供し得る(Hillis & Baron, 2015. Front Neurol. 6:85)。
iv)微細な血流再開の不存在:
血栓除去は、その使用が拡散される必要があるが、急性期の虚血性脳卒中で標準的な処置となりつつある。総合脳卒中センターに6時間以内に到着した全患者のうち、10.5%のみの「血管内」が、AHA/ASA基準により、血栓除去に「適している」ことが推定されている(Vanacker et al., 2016. Stroke. 47(7):1844-9)。
【0009】
脳虚血を経た組織における遺伝子発現パターンをより良好に理解することは、診断技術を向上し得る。よって、本発明者らは、脳および血液における脳虚血の発症後の遺伝子の発現を探索した。脳および血液由来のマカクのマイクロアレイ発現データの研究は、虚血性サンプルおよび非虚血性サンプルが、それらの発現プロファイルに基づき区別でき、著しく差次的に発現した遺伝子の大部分が、虚血から6時間後に虚血性のシナリオ(ischemic scenario)においてアップレギュレートされることを明らかにした。脳および血液において差次的に発現した遺伝子の比較は、遺伝子発現パターンの有意な重複を明らかにした。驚くべきことに、これらデータは、虚血性の脳と血液との間に共通するコーディングシグネチャーが存在し、これが、患者における神経保護薬物の評価のためのコンパニオンバイオマーカーを開発するため、虚血性脳卒中を有する患者を特徴づけるための生検トランスクリプトーム発現プロファイリングのためのツールとして、血液のトランスクリプトミクスの開発を支援することを示した。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、対象の脳卒中(stoke)を診断する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得られたサンプル中のシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは前記少なくとも2つのバイオマーカーが、DUSP1およびADMを構成しない、ステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルよりも高い場合に、前記対象を、脳卒中を罹患していると診断するステップと
を含む、方法に関する。
【0011】
一実施形態では、対象の脳卒中を診断する方法のステップi)は、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも3つのバイオマーカーの発現レベルを測定するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、対象の脳卒中を診断する方法のステップi)は、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定するステップを含む。
【0013】
一実施形態では、参照シグネチャーは、実質的に健常な対象の参照集団におけるバイオマーカーの発現レベルを測定することにより得られる。
【0014】
一実施形態では、本発明に係る対象の脳卒中を診断する方法は、脳卒中をstroke mimicと区別することを目的とする。
【0015】
さらに本発明は、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得られたサンプル中のシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは前記少なくとも2つのバイオマーカーがDUSP1およびADMを構成しない、ステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルよりも低い場合に、前記対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む、方法に関する。
【0016】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法のステップi)は、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMから選択される9つのバイオマーカーの発現レベルを測定するステップを含む。
【0017】
一実施形態では、参照シグネチャーは、上記治療の開始前に同じ対象から得られたサンプル中のバイオマーカーの発現レベルを測定することにより得られる。
【0018】
本発明は、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーの発現レベルを測定することにより前記対象から得たサンプル中のシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは前記少なくとも2つのバイオマーカーが、DUSP1およびADMを構成しない、ステップと、
ii)ステップi)で決定したシグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップと、
iii)前記シグネチャー中の少なくとも3つのバイオマーカーの発現レベルが前記参照シグネチャー中の同じ少なくとも3つのバイオマーカーの発現レベルよりも高い場合に、前記対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む、方法に関する。
【0019】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法のステップi)は、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMから選択される9つのバイオマーカーの発現レベルを測定するステップを含む。
【0020】
一実施形態では、参照シグネチャーは、実質的に健常な対象の参照集団におけるバイオマーカーの発現レベルを測定することにより得られる。
【0021】
一実施形態では、対象は、脳卒中を経験しており、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、対象が再発性脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定するためのものである。
【0022】
本発明の方法のいずれかに関する一実施形態では、脳卒中は、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、または出血性脳卒中である。
【0023】
本発明の方法のいずれかに関する一実施形態では、サンプルは、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである。
【0024】
本発明の方法のいずれかに関する一実施形態では、サンプルは、脳サンプルではない。
【0025】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0026】
「脳卒中」は、本明細書中使用される場合、脳のいずれかの部分に対する破壊、減少、または血液もしくは酸素の流れの停止から生じるいずれかの病態を表す。特に、用語「脳卒中」は、限定するものではないが、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、および出血性脳卒中を包有する。
【0027】
「虚血性脳卒中」(または「IS」)は、急性梗塞のエビデンスを伴う、局所的な脳、脊髄、または網膜の虚血により引き起こされる神経機能障害のエピソードである(Easton et al., 2009. Stroke. 40(6):2276-2293)。血流妨害の少なくとも4つの異なる原因:
(1)血管中の血餅;
(2)脳から血液を排出する硬膜静脈洞における血餅;
(3)血管を詰まらせる塞栓;および/または
(4)血圧の急激な低下
が存在する。
【0028】
脳卒中の症状は、患者が最初の損傷を乗り越えた場合、24時間を超えて持続する可能性があり、多くの場合では持続する。
【0029】
「一過性虚血発作」または「TIA」は、小発作(mini-stroke)とも呼ばれる、急性梗塞のエビデンスを伴わない、局所的な脳、脊髄、または網膜の虚血により引き起こされる神経機能障害の一時的なエピソードである。TIAの症状は、病初では、症状が、通常1時間未満または最大24時間である短時間のみ持続することを除き脳卒中と同じであり得る。TIAは一時的であり、通常脳組織損傷をもたらさないが、症状の類似性のため、およびTIAがその後の虚血性脳卒中のリスク因子であるため、TIAを経た患者は、即座に専門家の支援を探すように勧告されている。
【0030】
「出血性脳卒中」は、脳のいずれかの脈管構造における何らかの断裂からもたらされる脳卒中を表す。
【0031】
脳卒中を含むかまたは脳卒中で観察されるものなどの病因もしくは症状を含む急性神経性障害の例は、上記に列挙されており、限定するものではないが、脳虚血または脳梗塞(塞栓性閉塞および血栓性閉塞を含む)、急性虚血後の再灌流、周産期低酸素虚血損傷、心停止、およびいずれかの種類(たとえば硬膜外、硬膜下、クモ膜下、および脳内など)の脳内出血を含む。
【0032】
「対象」は、本明細書中使用される場合、本発明の方法により診断または処置される個体を表す。対象として、限定するものではないが、哺乳類(たとえばマウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトが挙げられる。本発明の文脈では、用語「患者」は、全般的に、本発明の方法に係る診断または処置を求めているかまたは求めたことのある個体を表す。
【0033】
「処置している(treating)」または「処置(treatment)」は、本明細書中使用される場合、対象における特定の病態(脳卒中など)の軽減、病態(脳卒中など)の症状の排除もしくは低減、病態(脳卒中など)の進行の遅延もしくは排除、および病態(脳卒中など)の最初の発症の予防もしくは遅延、または以前に罹患した対象における病態(脳卒中など)の再発の予防もしくは遅延を表す。
【0034】
「診断している(diagnosing)」または「診断(diagnosis)」は、本明細書中使用される場合、(脳卒中などの)病態の発症または進行を評価することを表す。当業者に知られているように、この評価は、診断される対象の100%で正確であると意図されてはいるが、統計的に有意な対象で正確に行われ得る。統計的有意性は、当該分野で広く知られている方法、たとえば信頼区間の決定、p値の決定、t検定、マン・ホイットニー検定などを使用して当業者により容易に決定され得る。好ましい信頼区間は、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、および99%である。好ましいp値は、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは本発明に係る診断結果は、対象のグループの60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上で正確である。
【0035】
「予後診断する(prognosing)」または「予後(prognosis)」は、特定の治療または介入の後に、(脳卒中などの)病態を有する対象のアウトカムを予測することを表す。
【0036】
「血液サンプル」は、本明細書中使用される場合、対象に由来するかまたは対象から得られるいずれかの血液サンプルを意味する。血液サンプルの回収は、当業者によく知られている方法により行われ得る。一部の実施形態では、血液サンプルは、全血サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。
【0037】
「バイオマーカー」は、本明細書中使用される場合、脳組織または神経細胞の損傷に関連し、脳卒中と相関し得るが、好ましくは他の種類の損傷とは相関していない、遺伝子発現の産物(たとえばmRNAおよび/またはタンパク質)のセットを表す。本発明者らにより血液中で同定されたこのような脳卒中の具体的なバイオマーカーとして、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMが挙げられる。これら具体的なバイオマーカーは、本明細書以下で詳述される。
【0038】
本明細書では、目的の遺伝子のそれぞれの名称は、国際的に認識されている遺伝子配列およびタンパク質配列のデータベース、特に以下のインターネットアドレス:http://www.gene.ucl.ac.uk/nomenclature/index.htmlで利用可能である、HUGOのヒトゲノム命名法委員会由来のデータベースにおいて見出されるように、対応する国際的に認識されている遺伝子の名称を表す。
【0039】
本明細書では、目的の様々なバイオマーカーのそれぞれの名称はまた、国際的に認識されている遺伝子配列およびタンパク質配列のデータベースENTRE ID、Genbank、TrEMBL、またはENSEMBLで見出されるような、対応する国際的に認識されている遺伝子の名称を表し得る。これら国際的に認識されている配列データベースを通して、本明細書中記載される目的の遺伝子のそれぞれに対応する核酸配列は、当業者により検索され得る。
【0040】
「PTGS2」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2の遺伝子(Gene ID:5743)を表す。「PTGS2」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_000954.1(配列番号1)により提示されている。「PTGS2」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_000963.4(配列番号2)により提示されており、ここでコード配列(CDS)は、配列番号2の残基134~残基1948の範囲にある。
【0041】
「HMOX1」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、ヘムオキシゲナーゼ1の遺伝子(Gene ID:3162)を表す。「HMOX1」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_002124.1(配列番号3)により提示されている。「HMOX1」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_002133.3(配列番号4)により提示されており、ここでコード配列(CDS)は、配列番号4の残基79~残基945の範囲にある。
【0042】
「LDLR」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、低密度リポタンパク質受容体の遺伝子(Gene ID:3949)を表す。「LDLR」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_000518.1(配列番号5)により提示されている。「LDLR」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_000527.4(配列番号6)により提示されており、ここでコード配列(CDS)は、配列番号6の残基188~残基2770の範囲にある。
【0043】
「HSPA1B」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、熱ショックタンパク質ファミリーA(Hsp70)のメンバー1Bの遺伝子(Gene ID:3304)を表す。「HSPA1B」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_005337.2(配列番号7)により提示されている。「HSPA1B」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_005346.5(配列番号8)により提示されており、ここでコード配列(CDS)は、配列番号8の残基214~残基2139の範囲にある。
【0044】
「G0S2」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、G0/G1 switch 2の遺伝子(Gene ID:50486)を表す。「G0S2」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_056529.1(配列番号9)により提示されている。「G0S2」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_015714.4(配列番号10)により提示され、ここでコード配列(CDS)は、配列番号10の残基171~残基482の範囲にある。
【0045】
「BAG3」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、BCL2関連athanogene 3の遺伝子(Gene ID:9531)を表す。「BAG3」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_004272.2(配列番号11)により提示されている。「BAG3」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_004281.3(配列番号12)により提示され、ここでコード配列(CDS)は、配列番号12の残基307~残基2034の範囲にある。
【0046】
「TM4SF1」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、TM4SF1(transmembrane 4 L six family member 1)の遺伝子(Gene ID:4071)を表す。「TM4SF1」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 XP_016861874.1(配列番号13)により提示されている。「TM4SF1」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 XM_017006385.2(配列番号14)により提示され、ここでコード配列(CDS)は、配列番号14の残基235~残基954の範囲にある。
【0047】
「DUSP1」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、二重特異性ホスファターゼ1の遺伝子(Gene ID:1843)を表す。「DUSP1」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_004408.1(配列番号15)により提示されている。「DUSP1」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_004417.4(配列番号16)により提示され、ここでコード配列(CDS)は、配列番号16の残基244~残基1347の範囲にある。
【0048】
「ADM」は、本明細書中使用される場合、当該分野における一般的な意味を有し、アドレノメデュリンの遺伝子(Gene ID:133)を表す。「ADM」遺伝子によりコードされる例示的なヒトアミノ酸配列は、NCBI参照配列 NP_001115.1(配列番号17)により提示されている。「ADM」遺伝子の例示的なヒトmRNA配列は、NCBI参照配列 NM_001124.3(配列番号18)により提示されており、ここでコード配列(CDS)は、配列番号18の残基179~736の範囲にある。
【0049】
詳細な説明
本発明は、脳卒中のシグネチャーであって、上記シグネチャーが、発現レベルが脳卒中に特異的であるかまたは脳卒中を表すバイオマーカーを含む、シグネチャーに関する。本明細書中以降で、このようなバイオマーカーは、「脳卒中バイオマーカー」と呼ばれる。
【0050】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、脳卒中に特異的かまたは脳卒中を表す。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、虚血性脳卒中、小発作(一過性脳虚血発作、TIAとしても知られている)および/または出血性脳卒中(特に脳内出血により引き起こされる出血性脳卒中)に特異的であるかまたはこれを表す。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、虚血性脳卒中に特異的であるかまたはこれを表す。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、一過性脳虚血発作に特異的であるかまたはこれを表す。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、出血性脳卒中(特に脳内出血により引き起こされる出血性脳卒中)に特異的であるかまたはこれを表す。
【0051】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも8つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。一実施形態では、本発明のシグネチャーは、少なくとも9つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはこれよりなる。
【0052】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される。
【0053】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される。
【0054】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される。
【0055】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0056】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0057】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0058】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0059】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0060】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0061】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなり、ただし、この少なくとも2つのバイオマーカーは、DUSP1およびADMを構成しない。
【0062】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0063】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0064】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0065】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0066】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0067】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0068】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0069】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0070】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0071】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0072】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0073】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0074】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0075】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0076】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0077】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも8つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0078】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも8つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0079】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも9つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0080】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも9つの脳卒中バイオマーカーを含むかまたはからなる。
【0081】
よって本発明は、発現レベルが脳卒中を罹患している対象と実質的に健常な対象との間で異なる、1つまたは複数のバイオマーカーを含むかまたはからなる脳卒中のシグネチャーに関する。
【0082】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0083】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0084】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表し、ただし好ましくは少なくとも2つのバイオマーカーが、DUSP1およびADMを構成しない。
【0085】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも2つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0086】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0087】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0088】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0089】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも4つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0090】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0091】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも5つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0092】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0093】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも6つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0094】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0095】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも7つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0096】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも8つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0097】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーと比較してアップレギュレートされる場合、脳卒中に特異的かまたはこれを表す。
【0098】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおける本発明の脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、当該分野で知られている標準的なプロトコルを使用して決定され得る。
【0099】
一実施形態では、本発明の脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、それらの転写レベル(すなわちmRNAの発現)またはそれらの翻訳レベル(すなわちタンパク質の発現)に対応する。
【0100】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、対象由来のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいて、タンパク質レベル、すなわち翻訳レベルで評価される。この実施形態では、本発明に係るシグネチャーは、プロテオミクスのシグネチャーと呼ばれ得る。
【0101】
サンプル中のタンパク質レベルを決定するための方法は、当該分野でよく知られている。このような方法の例として、限定するものではないが、免疫組織化学的検査、マルチプレックス法(Luminex)、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、サンドイッチELISA、FLISA(fluorescent-linked immunosorbent assay)、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、質量分析(MS)、マイクロアレイなど、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0102】
質量分析(MS)は、異なる形態は質量分析により解明され得る異なる質量を通常有するため、タンパク質の異なる形態を解明するために使用され得る。よって、ポリペプチドまたはタンパク質の1つの形態が、別の形態のバイオマーカーよりも疾患に対して良好なバイオマーカーである場合、質量分析は、この有用な形態を特異的に検出および測定するために使用され得る。MSは、飛行時間(TOF)MS(たとえばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)-TOF MS)、表面エンハンス型レーザー脱離/イオン化(MELDI)MS、エレクトロスプレーイオン化MS、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)MSを含み得る。
【0103】
イムノアッセイは、通常、サンプルを、サンプル中のバイオマーカーと選択的に相互作用できる結合パートナーと接触させることを含む。一部の実施形態では、結合パートナーは、抗体、たとえばモノクローナル抗体またはさらにはアプタマーなどである。たとえば、結合は、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫組織化学アッセイ、競合ELISAまたはサンドイッチELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、免疫組織学的アッセイ、免疫細胞化学的アッセイ、ドットブロットアッセイ、蛍光偏光アッセイ、シンチレーション近接アッセイ、HTRF(homogeneous time resolved fluorescence)アッセイ、IAsys分析、およびBIAcore分析などの技術を使用する競合的なイムノアッセイ、非競合的なアッセイ系の使用を介して検出され得る。一般に、上述のアッセイは、固体の担体へのパートナー(すなわち抗体またはアプタマー)の結合を含む。本発明の実務に使用され得る固体の担体は、ニトロセルロース(たとえば膜またはマイクロタイターウェルの形態)、ポリビニルクロリド(たとえばシートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(たとえばビーズまたはマイクロタイタープレート)、ポリフッ化ビニリデン、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化したビーズ、磁気応答性ビーズなどの担体を含む。
【0104】
マルチプレックスアッセイは、ファージディスプレイ、抗体プロファイリング、またはLuminexプラットフォームを使用するアッセイを含み得る。ポリペプチドのプロファイルを分析するためのマイクロアレイは、分析的マイクロアレイ、機能的タンパク質マイクロアレイ、または逆相タンパク質マイクロアレイを含み得る。場合により、ポリペプチドまたはタンパク質のプロファイルは、プロテオミクスのマイクロアレイによるプロテオミクスのスキャン(たとえば全プロテオミクスのスキャン)により測定され得る。
【0105】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、対象由来のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいて、核酸レベル(すなわちRNA)、すなわち転写レベルで評価される。この実施形態では、本発明に係るシグネチャーは、トランスクリプトミクスのシグネチャーと呼ばれ得る。
【0106】
バイオマーカーの転写レベルを評価するための方法は、当該分野でよく知られている。このような方法の例として、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT-PCR、RT-qPCR、ノーザンブロット、ハイブリダイゼーション技術、たとえばマイクロアレイの使用、および限定するものではないがRT-PCRにより得られるアンプリコンのハイブリダイゼーション、たとえば次世代DNAシーケンシング(NGS)またはRNA-seq(「全トランスクリプトームショットガンシーケンシング」としても知られている)などのシーケンシングなどを含むそれらの組み合わせ、またはそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0107】
従来の方法は、通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。たとえば、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号は、従来のPCR技術を開示している。PCRは、通常、選択された標的核酸配列に結合する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。本発明に有用なプライマーは、標的核酸配列の中での核酸合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドを含む。プライマーは、従来の方法による制限消化から精製することができ、またはこれは、合成的に作製され得る。PCRは、熱安定性ポリメラーゼの使用を含む。用語「熱安定性ポリメラーゼ」は、熱に安定的なポリメラーゼ酵素を表す。すなわち、この酵素は、テンプレートに相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖テンプレート核酸の変性に作用するために必要な時間の間高い温度に供される場合に不可逆的に変性しない。熱安定性ポリメラーゼは、サーマス・サーモフィルス(Thermus fiavus)、T.ruber、T.thermophilus、テルムス・アクウァーティクス(T.aquaticus)、T.lacteus、T.rubens、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、およびメタノテルムス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)から単離されている。にもかかわらず、熱安定性ではないポリメラーゼもまた、酵素が補充されるという条件で、PCRアッセイで使用され得る。通常、ポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ(すなわちテルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)ポリメラーゼ)である。
【0108】
定量的PCR(qPCR)は、通常、特定の波長の光束で各サンプルを照射し、励起したフルオロフォアにより発せられた蛍光を検出する特性を有するサーマルサイクラーにおいて行われる。またサーマルサイクラーは、サンプルを迅速に加熱および冷却することにより、核酸および熱的ポリメラーゼの物理化学的な性質を利用することができる。サンプル中のアンプリコン(すなわち増幅された標的核酸配列)の量を検出および測定するために、増殖した産物の量に相当する測定可能なシグナルが作製されなければならない。現在の全ての検出システムは、蛍光技術を使用する。これらの一部は、非特異的な技術であり、結果的に、1度に1つの標的の検出のみを可能にする。
【0109】
あるいは、特定の検出化学が、非特異的な増幅と標的の増幅との間を区別し得る。これら特異的な技術は、アッセイをマルチプレックスする、すなわち同じアッセイにおいていくつかの異なる標的を検出するために使用され得る。たとえば、SYBR(登録商標)Green Iプローブ、High Resolution Meltingプローブ、TaqMan(登録商標)プローブ、LNA(登録商標)プローブ、およびMolecular Beaconプローブが、適切であり得る。TaqMan(登録商標)プローブは、最も広く使用されている種類のプローブである。これらは、アンプリコンの鎖の1つと相補的である一本鎖のプローブ配列からなる、放射標識されたプローブ(Holland et al., 1991. Proc Natl Acad Sci U S A. 88(16):7276-80)を本来使用していたアッセイから、Roche(Basel, Switzerland)およびABI(Foster City, USA)により開発されたものであった。フルオロフォアは、プローブの5’末端に結合され、クエンチャーは、3’末端に結合される。フルオロフォアは、機械により励起され、そのエネルギーを、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を介してクエンチャーに通す。従来、FRET対は、フルオロフォアとしてFAMに、クエンチャーとしてTAMRAにコンジュゲートしている。良好に設計されたプローブでは、FAMは、TAMRA上にエネルギーを通すため、蛍光を発しない。TAMRA蛍光がFAMに対して異なる波長で検出されるため、FAMのバックグラウンドのレベルは低い。プローブは、PCRの各アニーリングステップの間、アンプリコンに結合する。Taqポリメラーゼが、アンプリコンに結合しているプライマーから伸長する場合、これは、プローブの5’末端を変位させ、Taqポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性により消化させる。切断は、残りのプローブがアンプリコンから溶けるまで続行する。このプロセスは、フルオロフォアおよびクエンチャーを溶液中に放出し、(プローブによりまとめて保持されている場合と比較して)これらを空間的に分離させる。これは、不可逆的なFAMからの蛍光の増加およびTAMRAにおける蛍光の減少をもたらす。
【0110】
一部の実施形態では、核酸レベル(すなわちRNA)での脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、RNA-seqにより決定される。使用される場合、用語「RNA-seq」または「トランスクリプトームシーケンシング」は、DNAの代わりにRNA(またはcDNA)で行われるシーケンシングであって、通常、主要目的が、発現レベルを測定すること、融合転写物、選択的スプライシング、およびRNAから良好に評価され得る他のゲノムの変更を検出することである。RNA-seqは、通常、全トランスクリプトームシーケンシングを含む。本明細書中使用される場合、用語「全トランスクリプトームシーケンシング」は、サンプルのRNAの内容についての情報を得るための、トランスクリプトーム全体をシーケンシングするための高スループットシーケンシング技術の使用を表す。全トランスクリプトームシーケンシングは、様々なプラットフォーム、たとえばGenome Analyzer(Illumina, Inc., San Diego, Calif.)およびSOLiD(商標)Sequencing System(Life Technologies, Carlsbad, Calif.)で行われ得る。しかしながら、全トランスクリプトームシーケンシングに有用ないずれのプラットフォームもが使用され得る。通常、RNAは、抽出され、リボソームRNAは、米国特許第9,005,891号に記載されるように欠失され得る。ScriptSeq(商標)M mRNA-Seq Library Preparation Kit(Epicenter Biotechnologies, Madison, Wis.)などの市販のキットを使用して、方向付けられておりsingle-endまたはpaired-endであるcDNAシーケンシングライブラリーが調製され得る。またこのライブラリーは、Epicenter Biotechnologies(Madison, Wis.)製のRNA-Seq Barcode Primerなどの市販のバーコードプライマーを使用するマルチプレックスシーケンシングでバーコード付与され得る。次にPCRが、第2のcDNAの鎖を作製してバーコードを組み込み、ライブラリーを増幅させるために行われる。ライブラリーを定量化した後、シーケンシングライブラリーがシーケンシングされ得る。核酸シーケンシング技術は、発現解析に適した方法である。これら方法の根底にある原則は、DNA配列がサンプル中で検出される回数は、配列に対応する相対的なRNAのレベルに直接関連していることである。これら方法は、場合により、結果得られるデータの別々の数値の特性を反映しているため、用語「Digital Gene Expression」またはDOEと呼ばれる。この原則を適用する初期の方法は、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)およびMPSS(Massively Parallel Signature Sequencing)であった。たとえば、Brennerら(2000. Nat Biotechnol. 18(6):630-634)を参照されたい。通常、RNA-seqは、次世代シーケンシング(またはNGS)を使用する。本明細書中使用される場合、用語「次世代シーケンシング」または「NGS」は、従来のSanger法によるシーケンシング技術と比較して比較的新規のシーケンシング技術である。レビューでは、本開示に参照により本明細書中組み込まれているShendureら(2008. Nat Biotechol. 26(10):1135-45)を参照されたい。本開示の目的のため、NGSは、特に、環状アレイのシーケンシング、マイクロ電気泳動によるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシングを含み得る。例として、環状アレイの方法を使用する典型的なNGSでは、ゲノムDNAまたはcDNAのライブラリーがまず調製され、次に共通するアダプターが、断片化されたゲノムDNAまたはcDNAにライゲートされ得る。異なるプロトコルが、制御可能な距離の分布を伴うmate-pairedタグのジャンピングライブラリーを作製するために使用され得る。各ポロニーが、単一のショットガンライブラリーフラグメントの多くのコピーからなる、数百万の空間的に固定化されたPCRコロニーのアレイまたは「ポロニー」が作製される。ポロニーは平面のアレイに拘束されているため、単一のマイクロリットルの尺度容量の試薬が、並行してアレイの性質を操作するため、たとえばプライマーのハイブリダイゼーションまたは酵素伸長反応のために、適用され得る。それぞれの伸長に組み込まれた蛍光標識のイメージングベースの検出が、並行してシーケンシングデータを全ての性質に関して獲得するために使用され得る。酵素での照合およびイメージングの連続的な反復もまた、各アレイの性質に関する連続したシーケンシングリードを構成するために使用され得る。
【0111】
一実施形態では、特定のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおける特定の脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、参照シグネチャーおよび/または所定の参照値と比較してアップレギュレートされているかどうかに関する決定が行われる。
【0112】
一実施形態では、参照シグネチャーは、HSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択され、好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される、目的の脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーのそれぞれに関する所定の参照値を含むかまたはからなり、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーは、DUSP1および/またはADMを構成しない。
【0113】
通常、参照シグネチャーは、ソフトウェアで実施されてもよく、または測定を介した全体の中央値もしくは他の算術平均が構成されてもよい。
【0114】
一実施形態では、参照シグネチャーは、同じ対象に由来する参照サンプルにおける本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルの以前の測定に由来し、たとえば、本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルのその後の測定より1月前、好ましくは6カ月前、より好ましくは1年前、またはそれ以上前に測定された脳卒中バイオマーカーの発現レベル;またはたとえば、治療を開始する前に測定された脳卒中バイオマーカーの発現レベルである。
【0115】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団における本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルの測定に由来する。
【0116】
一実施形態では、参照シグネチャーは、限定するものではないが、同様の年齢の範囲を有する対象、同じもしくは同様の民族グループにある対象、同様のがん病歴の対象などを含む、集団試験に由来するシグネチャーに関連し得る。
【0117】
一実施形態では、参照シグネチャーは、1つ以上の実質的に健常な対象由来の対照サンプルにおける本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルの測定に由来する。本明細書中使用される場合、「実質的に健常な対象」は、脳卒中と以前に診断されていないか、または脳卒中を有するもしくは罹患していると同定されていない。
【0118】
一実施形態では、参照集団は、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも500の実質的に健常な対象といった、実質的に健常な対象を含む。
【0119】
参照集団から多数のサンプルを暗示することにより、それぞれの各脳卒中バイオマーカーの発現レベルの中央値および/または平均値を計算することが考えられる。これら結果に関連して、脳卒中バイオマーカーは、差次的に発現される際にモニタリングされ得る。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団で測定される本発明のシグネチャーの脳卒中バイオマーカーの発現レベルの平均値に対応する。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団で測定される本発明のシグネチャーの脳卒中バイオマーカーの発現レベルの中央値に対応する。
【0120】
一実施形態では、参照シグネチャーは、アルゴリズム、ならびに他の統計的分類および構造的分類の方法を使用して構築される。参照集団由来のサンプルは、本発明に係る少なくとも1つの脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの平均プロファイル(すなわち参照シグネチャー)を計算するために使用される。
【0121】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、発現倍差が、少なくとも約|1.1|超、好ましくは少なくとも約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、約|2.4|、約|2.5|、約|3.0|、約|4.0|、約|5.0|、またはそれ以上の倍差を超える場合、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象と実質的に健常な対象との間で差次的に発現しているとみなされる。
【0122】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、発現倍差が、少なくとも約1.1超、好ましくは少なくとも約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約3.0、約4.0、約5.0、またはそれ以上の倍差を超える場合、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象と実質的に健常な対象との間で差次的に発現しているとみなされる。
【0123】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、log2発現倍差が、少なくとも約|0.1|超、好ましくは少なくとも約|0.2|、約|0.3|、約|0.4|、約|0.5|、約|0.6|、約|0.7|、約|0.8|、約|0.9|、約|1.0|、約|1.1|、約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、またはそれ以上の倍差を超える場合、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象と実質的に健常な対象との間で差次的に発現しているとみなされる。
【0124】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、log2発現倍差が、少なくとも約0.1超、好ましくは少なくとも約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、またはそれ以上の倍差を超える場合、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象と実質的に健常な対象との間で差次的に発現しているとみなされる。
【0125】
一実施形態では、脳卒中バイオマーカーは、上記バイオマーカーの発現レベルが、実質的に健常な対象、好ましくは参照集団において決定された同バイオマーカーの発現レベルよりも少なくとも約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約30、約40、約50、または約100倍高い場合、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象と実質的に健常な対象との間で差次的に発現しているとみなされる。
【0126】
一実施形態では、1超の脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象から得られるサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルで決定される場合、上記発現レベルの複合的なスコアであるスコアが、計算され、所定の参照値と比較され得る。一実施形態では、所定の参照値よりも高いスコアは、対象が脳卒中を有するか有していたことを表す。
【0127】
通常、所定の参照値は、閾値またはカットオフ値である。通常「閾値」または「カットオフ値」は、実験的、経験的、または理論的に決定され得る。また閾値は、当業者により認識されるように、既存の実験上および/または臨床的な条件に基づき任意に選択され得る。たとえば、適切に預けられ過去に用いられた対象サンプルにおける遡及的な測定が、所定の参照値を確立する際に使用され得る。閾値は、検定の関数およびベネフィット/リスクバランス(偽陽性および偽陰性の臨床結果)による最適な感度および特異度を得るように決定されなければならない。通常、最適な感度および特異度(よって閾値)は、実験データに基づき受信者操作特性(ROC)曲線を使用して決定され得る。たとえば、参照集団において本発明のバイオマーカーの発現レベルを決定した後、試験されるサンプルで決定される発現レベルの統計的な処置のためアルゴリズム解析を使用することができ、よって、サンプルの分類に関して有用性を有する分類の基準を得ることができる。ROC曲線の完全名は、受信者操作特性曲線であり、受信者動作特性曲線(receiver operation characteristic curve)としても知られている。これは、主に、臨床的な生化学の診断試験で使用される。ROC曲線は、真陽性比率(感度)および偽陽性比率(1-特異度)の連続変数を反映する包括的な指標である。これは、画像合成法での感度と特異度との間の関係を明らかにする。異なるカットオフ値(閾値または臨界値、診断試験の正常な結果と異常な結果との間の境界値)のシリーズが、感度および特異度の値のシリーズを計算するための連続変数として設定される。次に、曲線を描くために、感度は、垂直座標として使用され、特異度は、並行座標として使用される。曲線下面積(AUC)が大きい場合、診断の正確性が高くなる。ROC曲線において、座標図の左上端に最も近い点は、高感度かつ高特異度の値を有する臨界点である。ROC曲線のAUC値は、1.0~0.5である。AUC>0.5である場合、診断結果は、AUCが1に近づくにつれて良好となる。0.5<AUC<0.7である場合、正確性は低い。0.7<AUC<0.9である場合、正確性は中程度である。AUC<0.9である場合、正確性は高い。好ましくは、このアルゴリズム法は、コンピュータを用いて行われる。当該分野における既存のソフトウェアまたはシステム、たとえばMedCalc 9.2.0.1 medical statistical software、SPSS 9.0、ROCPOWER.SAS、DESIGNROC.FOR、MULTIREADER POWER.SAS、CREATE-ROC.SAS、GB STAT VI0.0(Dynamic Microsystems, Inc. Silver Spring, Md., USA)などが、ROC曲線の描画に使用され得る。
【0128】
さらに本発明は、本発明の脳卒中のシグネチャーを使用して、対象の脳卒中を診断する方法に関する。
【0129】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、虚血性脳卒中、小発作(または一過性脳虚血発作、TIA)および/または出血性脳卒中(特に脳内出血により引き起こされる出血性脳卒中)の診断に特に適している。
【0130】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、脳卒中ではなく脳虚血の結果ではないことを除き脳卒中と同じ症状の一部または全てを呈し得るstroke mimicと、脳卒中を区別することに特に適している。理論により拘束されることを望むものではないが、バイオマーカーのレベルの上昇は、脳卒中の結果であるため、stroke mimicを有する対象は、バイオマーカーのレベルの上昇を有さない(言い換えると、本発明のシグネチャーは脳卒中に特異的であるかまたはこれを表すため、stroke mimicを有する対象は同シグネチャーを呈さない)。
【0131】
一般的なstroke mimicとして、限定するものではないが、片頭痛、失神、末梢性前庭障害、およびBPPV(良性発作性頭位めまい症)、けいれん、機能的徴候/不安、一過性全健忘、ベル麻痺、末梢性神経疾患/機能障害、体位性低血圧、腫瘍、ウイルス性疾病、不整脈、多発性硬化症、薬物関連、低血糖、パーキンソン病、網膜/眼性病態、脊髄病態、三叉神経痛、尿路感染症、せん妄、運動ニューロン疾患、くも膜下出血、硬膜下血腫などが挙げられる(Nadarajan et al., 2014. Pract Neurol. 14(1):23-31参照)。
【0132】
よって本発明に係る脳卒中を診断する方法は、早期の正確な脳卒中の診断を可能にする利点を提供し、少なくとも以下の関連する態様において脳卒中を有する疑いのある対象に利益を提供することができる:
(1)脳卒中の誤診断の比率を下げることができる;および/または
(2)処置の必要のある対象において早期に適切な処置を可能にすることにより組織死の度合いを限定することができる。
【0133】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象由来のサンプルを準備するステップを含む。
【0134】
用語「サンプル」は、本明細書中使用される場合、全般的に、本発明に係るバイオマーカー、好ましくは脳卒中マーカーの発現レベルに関して試験され得るいずれかのサンプルを表す。
【0135】
一実施形態では、サンプルは、体液サンプルである。体液の例として、限定するものではないが、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水(ascetic fluid)、嚢胞液、尿、胆汁、粘液、漿液、皮脂、乳頭滲出液、関節液、気管支肺胞洗浄液、痰、羊水、腹水、脳脊髄液、胸水、心膜液、精液、唾液、涙、粘膜分泌物、汗、および肺胞マクロファージが挙げられる。
【0136】
一実施形態では、サンプルは、血液サンプルである。用語「血液サンプル」は、本明細書中使用される場合、全血サンプル、血清サンプル、および血漿サンプルを包有する。
【0137】
一実施形態では、サンプルは、全血、血漿、または血清サンプルである。
【0138】
一実施形態では、サンプルは、体組織サンプルではない。体組織の例として、限定するものではないが、脳、筋肉、神経、心臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、胸腺、食道、胃、腸、腎臓、前立腺、精巣、卵巣、髪、皮膚、骨、乳房、子宮、膀胱、および脊髄が挙げられる。
【0139】
一実施形態では、サンプルは、脳組織サンプルではない。よってこの実施形態では、本発明の方法は、対象由来の脳組織サンプルを準備するステップを含まない。
【0140】
一実施形態では、サンプルは生検サンプルではない。一実施形態では、サンプルは脳生検サンプルではない。
【0141】
一実施形態では、サンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルは、あらかじめ対象から採取されたものであり、すなわち本発明に係る脳卒中を診断する方法は、対象からサンプルを能動的に採取するステップを含まない。結果として、この実施形態では、本発明の方法は、非侵襲的な方法、すなわちin vitroでの方法である。
【0142】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、上記対象からのサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいて本発明に係るシグネチャーを決定するステップを含む。
【0143】
本発明に係るシグネチャーを決定するための手段および方法は、本明細書中上記に詳述されている。
【0144】
一実施形態では、シグネチャーを決定するステップは、本発明に係る少なくとも1つの脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定するサブステップを含む。
【0145】
一実施形態では、少なくとも1つの脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、本発明のシグネチャーの脳卒中バイオマーカーのそれぞれの発現レベルが同時に測定されるように、DNAマイクロアレイを使用して測定される。
【0146】
一実施形態では、少なくとも1つの脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、RNAseqを使用して測定される。
【0147】
一実施形態では、少なくとも1つの脳卒中バイオマーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルは、CodeSetを使用して測定される。所定のパネルのマーカー(たとえば本明細書中開示される脳卒中バイオマーカー)のためにカスタムされたCodeSetは、商業的に明示できる。これらは、限定するものではないが、nCounter(登録商標)Custom CodeSets(NanoString)(Malkov et al., 2009. BMC Res Notes. 2:80; Kulkarni, 2011. Curr Protoc Mol Biol. Chapter 25:Unit25B.10)を含む。
【0148】
一実施形態では、1超の脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からのサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいて決定される場合、上記発現レベルの複合的なスコアが計算される。
【0149】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーを、本明細書中上記に定義される参照シグネチャーと比較するステップを含む。
【0150】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーを、本明細書中上記に定義される所定の参照値と比較するステップを含む。
【0151】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーにおける脳卒中バイオマーカーの発現レベルを、本明細書上記に定義される参照シグネチャーにおける脳卒中バイオマーカーの発現レベルと比較するステップを含む。
【0152】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、対象からのサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおけるシグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象の脳卒中を診断するステップを含む。
【0153】
一実施形態では、対象は、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーが、本明細書中上記に定義される参照シグネチャーと異なるとみなされる場合、脳卒中と診断される。
【0154】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現倍差が、少なくとも約|1.1|超、好ましくは少なくとも約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、約|2.4|、約|2.5|、約|3.0|、約|4.0|、約|5.0|、またはそれ以上の倍差を超える場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0155】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現倍差が、少なくとも約1.1超、好ましくは少なくとも約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約3.0、約4.0、約5.0、またはそれ以上の倍差を超える場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0156】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーのlog2発現倍差が、少なくとも約|0.5|超、好ましくは少なくとも約|0.1|、約|0.2|、約|0.3|、約|0.4|、約|0.5|、約|0.6|、約|0.7|、約|0.8|、約|0.9|、約|1.0|、約|1.1|、約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、またはそれ以上の倍差を超える場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0157】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーのlog2発現倍差が、少なくとも約0.5超、好ましくは少なくとも約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、またはそれ以上の倍差を超える場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0158】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定したシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、実質的に健常な対象、好ましくは参照集団で決定された同バイオマーカーの発現レベルより少なくとも約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約30、約40、約50、または約100倍高い場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0159】
一実施形態では、対象は、本発明に係る少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、実質的に健常な対象、好ましくは参照集団で決定された同脳卒中バイオマーカーの発現レベルより高い場合、脳卒中と診断される。
【0160】
一実施形態では、対象は、本発明に係る1超、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルで計算された複合的なスコアが、所定の参照値、すなわち実質的に健常な対象、好ましくは参照集団における同バイオマーカーの発現レベルで計算された複合的なスコアより高い場合、脳卒中と診断される。
【0161】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0162】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはHSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0163】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0164】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0165】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1の発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0166】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、
i)脳卒中を罹患しているまたは罹患していないと診断される対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと
を含む。
【0167】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、i)対象から得たサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいてPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つのレベルの発現レベルを決定するステップと、ii)ステップi)で決定したレベルを、所定の参照値と比較するステップと、iii)ステップで決定された発現レベルが所定の参照値より高い場合、脳卒中と診断するステップとを含む。
【0168】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団、好ましくは少なくとも1つの実質的に健常な対象を含む参照に由来するかまたはこれより得られる。
【0169】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、脳卒中に関して見込みのある全ての原因を除外するための定期的なスクリーニングをこれまでに経験したことのない脳卒中の症状を提示する対象に適用される。
【0170】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、限定するものではないが、片目の失明、片腕もしくは片足の脱力、身体の片側全体の脱力、浮動性めまい、回転性めまい、複視、身体の両側の脱力、発話困難、不明瞭発語、または調整の失調などの脳卒中の症状を呈する対象で行われる定期的なテストのセットの一部であり得る。
【0171】
一実施形態では、本発明に係る脳卒中を診断する方法は、特にコンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴画像(MRI)を含む他の診断ツールに加えて行われ得る。
【0172】
さらに本発明は、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法に関する。さらに本発明は、脳卒中を罹患している対象が、治療の完了の間または完了後に応答を達成するかどうかを決定する方法に関する。
【0173】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、i)PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択される本発明の少なくとも1つのバイオマーカーの発現レベルを決定するステップと、ii)ステップi)で決定した発現レベルを、所定の参照値と比較するステップと、iii)ステップi)で決定したレベルが所定の参照値よりも低い場合、対象が応答を達成すると結論付けるステップとを含む。
【0174】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、上記シグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップとを含む。これらステップは、脳卒中を診断する方法の枠で本明細書中上記に詳述されており、変更すべき点は変更して本方法に適用する。
【0175】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0176】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはHSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0177】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0178】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0179】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1の発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0180】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)上記本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、対象が応答を達成すると結論付けるステップと
を含む。
【0181】
一実施形態では、参照シグネチャーは、たとえば治療の開始より前に測定された脳卒中バイオマーカーの発現レベルなど、同じ対象に由来する参照サンプルにおける本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルの以前の測定に由来するかまたはそれより得られる。
【0182】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーが本明細書中上記で定義される参照シグネチャーと異なるとみなされる場合、対象は応答を達成すると結論付けられる。
【0183】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現倍差が、少なくとも約|1.1|未満、好ましくは少なくとも約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、約|2.4|、約|2.5|、約|3.0|、約|4.0|、約|5.0|、またはそれ以上の数未満である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0184】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現倍差が、少なくとも約1.1未満、好ましくは少なくとも約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約3.0、約4.0、約5.0、またはそれ以上の数未満である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0185】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーのlog2発現倍差が、少なくとも約|0.1|未満、好ましくは少なくとも約|0.2|、約|0.3|、約|0.4|、約|0.5|、約|0.6|、約|0.7|、約|0.8|、約|0.9|、約|1.0|、約|1.1|、約|1.2|、約|1.3|、約|1.4|、約|1.5|、約|1.6|、約|1.7|、約|1.8|、約|1.9|、約|2.0|、約|2.1|、約|2.2|、約|2.3|、またはそれ以上の数未満である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0186】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーのlog2発現倍差が、少なくとも約0.1未満、好ましくは少なくとも約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、またはそれ以上の数未満である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0187】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本明細書中定義される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、実質的に健常な対象、好ましくは参照集団で決定された同バイオマーカーの発現レベルより少なくとも約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約30、約40、約50、または約100倍低い場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0188】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本発明に係る少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルが、実質的に健常な対象、好ましくは参照集団における同脳卒中バイオマーカーの発現レベル以下である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0189】
一実施形態では、対象のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルから決定されたシグネチャーは、本発明に係る1超、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルで計算された複合的なスコアが、所定の参照値、すなわち実質的に健常な対象、好ましくは参照集団における同バイオマーカーの発現レベルで計算された複合的なスコア以下である場合、参照シグネチャーと異なるとみなされる。
【0190】
よって脳卒中を罹患している対象が治療での応答を達成するかどうかを決定する方法は、「レスポンダー」を「ノンレスポンダー」と区別するのに特に適している。
【0191】
本明細書中使用される場合、用語「レスポンダー」は、治療応答を達成する対象または患者、すなわち脳卒中が低減、軽減、または治癒されている対象を表す。本発明では、レスポンダーは、客観的な応答を有し、よってこの用語は、安定した状態の脳卒中を有する対象または患者を包有せず、よって疾患は治療後に進行していない。
【0192】
本明細書中使用される場合、用語「ノンレスポンダー」(または難治性)は、治療後に脳卒中が低減または改善を示さない対象または患者を含む。本発明では、同様に用語「ノンレスポンダー」は、安定化した状態の脳卒中を有する対象または患者を含む。
【0193】
通常、レスポンダーまたはノンレスポンダーと対象を特徴づけることは、基準またはトレーニングセットを参照することにより行われ得る。この基準は、レスポンダーもしくはノンレスポンダーであることが知られている対象のプロファイルであり得、あるいはまたは数値であり得る。このような所定の基準は、印刷されたリストもしくは図、コンピュータソフトウェアプログラム、または他の媒体などの任意の適切な形態で提供され得る。一部の実施形態では、所定の値は、治療前に決定された発現レベルである。患者がノンレスポンダーであると結論付けられる場合、医師は、さらなるいずれの有害な副作用をも回避するために治療を停止する決定を行う可能性がある。
【0194】
一実施形態では、モニタリングの目的のため、発現レベルは、複数の時点、たとえば2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数、測定され得る。この方法では、治療後または治療中の経時的な発現レベルのモニタリングは、ゆっくりではあるが発現レベルが減少し得る未処置の対象と比較して処置が成功した対象において発現レベルが速く減少することが予想されるため、処置の成功の測定を提供し得る。
【0195】
通常、治療は、当業者によく知られているいずれかの方法を構成する。治療選択として、限定するものではないが、血管内手法および外科手術、たとえば血栓除去が挙げられる。
【0196】
本明細書中使用される場合、用語「血栓除去」は、血餅の何らかの外科的および/または機械的な除去または破壊を表す。通常、3つのクラスの機械的な血栓除去装置:コイル回収装置、アスピレーション装置、およびステント回収装置が知られている。現在開発中の他の装置および方法もまた、本明細書中使用される血栓除去の定義に含まれる。通常、カテーテルが血流遮断部位に送られ、血餅を除去する。血栓除去および血栓溶解の組み合わせを、患者に行うことができる。さらに、虚血性脳卒中はまた、血餅を溶解するための血栓溶解作用物質を投与することにより処置され得る(血栓溶解)。
【0197】
抗血栓性作用物質は、以下の3つのサブタイプ:抗凝固薬、抗血小板薬、および血栓溶解薬にさらに分類される。
【0198】
抗凝固薬の例として、限定するものではないが、クマリン、ヘパリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン(atromentin)、フェニンジオン、フォンダパリヌクス、イドラパリナックス、直接的な第Xa因子阻害剤(direct factor Xa inhibitors)、直接的なトロンビン阻害剤(direct thrombin inhibitors)、抗トロンビンタンパク質治療物質、バトロキソビン、およびヘメンチン(hementin)が挙げられる。
【0199】
抗血小板薬の例として、限定するものではないが、不可逆性シクロオキシゲナーゼ阻害薬(たとえばアスピリンまたはトリフルサル)、アデノシン二リン酸受容体阻害剤(たとえばクロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、またはチクロピジン)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(たとえばシロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(たとえばアブシキシマブ、エプチフィバチド、またはチロフィバン)、アデノシン再取り込み阻害剤(たとえばジピリダモール)、およびトロンボキサン阻害剤(たとえばトロンボキサンシンターゼ阻害剤またはトロンボキサン受容体アンタゴニスト)が挙げられる。
【0200】
血栓溶解薬の例として、限定するものではないが、組織プラスミノーゲンアクチベーターt-PA(アルテプラーゼおよびその他(デスモテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、…)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼが挙げられる。t-PAは、任意選択で、血管内手法の間に投与され得る。
【0201】
一実施形態では、治療は、神経保護性作用物質を投与することを構成する。
【0202】
神経保護性作用物質の例として、通常、限定するものではないが、抗フリーラジカル、抗グルタミン酸塩作用物質、およびCDK阻害剤が挙げられる。
【0203】
一部の実施形態では、神経保護性作用物質は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤である。既知のCDK阻害剤は、一般にCDKを阻害するそれらの特質によるかまたは特異的なCDKの選択性により分類され得る。たとえば、フラボピリドールは、「pan」CDKアンタゴニストとして作用し、特定のCDKに特に選択的である(Dai & Grant, 2003. Curr Opin Pharmacol. 3(4):362-70)。オロモウシン、ロスコビチン、プルバノロール(purvanolol)、およびCGP74514AなどのプリンベースのCDK阻害剤は、CDK1、2、および5により高い選択性を呈するが、CDK4および6に対しては阻害活性を示さないことが知られている(Dai & Grant, 2003. Curr Opin Pharmacol. 3(4):362-70)。さらに、S-ロスコビチンなどのプリンベースのCDK阻害剤が、神経系に抗アポトーシス性作用を発揮し得ること(O’Hare et al., 2002. Pharmacol Ther. 93(2-3):135-43; Timsit & Menn, 2012. Clin Pharmacol Ther. 91(2):327-32; Gutierrez-Vargas et al., 2017. J Cereb Blood Flow Metab. 37(6):2208-2223)、またはアルツハイマー病などの神経変性疾患における神経細胞死を予防し得ること(Filgueira de Azevedo et al., 2002. Biochem Biophys Res Commun. 297(5):1154-8; Knockaert et al., 2002. Trends Pharmacol Sci. 23(9):417-25)が示されている。
【0204】
一部の実施形態では、治療が、低体温を構成する(たとえばKurisu & Yenari, 2018. Neuropharmacology. 134(Pt B):302-309)。
【0205】
さらに本発明は、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、i)対象由来のサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおいてPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMからなる群から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つのレベルの発現レベルを決定するステップと、ii)ステップi)で決定したレベルを、所定の参照値と比較するステップと、iii)ステップで決定された発現レベルが所定の参照値よりも高い場合に対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップとを含む、方法に関する。
【0206】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、上記シグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップとを含む。これらステップは、脳卒中を診断する方法の枠で本明細書中上記に詳述されており、変更すべき点は変更して本方法に適用する。
【0207】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0208】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはHSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0209】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーが、DUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0210】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0211】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1の発現レベルを測定することにより、上記サンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0212】
一実施形態では、対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定することにより、上記サンプル中のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上述されるように上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象が脳卒中を有するリスクがあると結論付けるステップと
を含む。
【0213】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団、好ましくは少なくとも1つの実質的に健常な対象を含む参照に由来するかこれより得られる。
【0214】
一実施形態では、対象は、脳卒中をもたらし得る心血管疾患(たとえばアテローム性動脈硬化、高血圧…)を罹患しているか、または罹患したことがあるか、または心血管疾患と診断されている。
【0215】
一実施形態では、対象は、脳卒中を経験しており、本発明の本発明の方法は、再発性の脳卒中の予測に特に適している。
【0216】
よって対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定する方法は、予後を提供すること、よってリスクがある対象を同定することに特に適しており、脳卒中を予防するための全ての治療介入を担う。
【0217】
本明細書中使用される場合、用語「リスク」は、ある事象が特定の時間を通して起こる可能性に関連し、対象の「絶対リスク」または「相対リスク」を意味し得る。
【0218】
「絶対リスク」は、関連する時間のコホートで実際の測定後の観察に準拠するか、または関連のある期間の間フォローされている統計的に有効な以前使用されたコホートから発展した指標の値に準拠して測定され得る。
【0219】
「相対リスク」は、どのように臨床的なリスク因子が評価されるかにより変動し得る低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクのいずれかと比較した対象の絶対リスクの比率である。オッズ比は、所定の試験結果の負の事象に対する正の事象の比率であり、同様に、変換することなく一般的に使用されている(オッズは、式p/(1-p)(式中pは、事象の確率であり、(1-p)は、事象がない確率である)による)。
【0220】
「リスク評価」または「リスクの評価」は、本発明の文脈において、事象または疾患状態が起こり得る確率、オッズ、または尤度、事象または1つの疾患状態から別の疾患状態への変換の発生の比率の予測を作製することを含む。またリスク評価は、以前に測定された集団に対する絶対的または相対的な観点からの、将来の臨床パラメータ、従来の研究リスク因子の値、または他の再発の指数の予測を含み得る。
【0221】
対象が脳卒中を有するリスクがあるかどうかを決定することは、変換のリスクの連続的または分類のための測定を作製するため、よって変換のリスクであると定義される対象のカテゴリーのリスクスペクトラムを診断および定義するために使用され得る。分類によるシナリオでは、本発明は、正常な対象のコホートとリスクの高い他の対象のコホートとの間を区別するために使用され得る。一実施形態では、本発明は、リスクのあるものと正常なものを区別するために使用され得る。
【0222】
さらに本発明は、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法であって、i)対象から得られたサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルにおけるDUSP1、PTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、ADM、およびTM4SF1からなる群から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの発現レベルを決定するステップと、ii)ステップi)で決定したレベルを、所定の参照値と比較するステップと、iii)ステップi)で決定したレベルが所定の参照値より低い場合に患者の予後が良好であると結論付けるか、またはステップi)で決定したレベルが所定の参照値より高い場合に患者の予後が不十分であると結論付けるステップとを含む、方法に関する。
【0223】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、上記シグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップとを含む。これらステップは、脳卒中を診断する方法の枠で本明細書中上記に詳述されており、変更すべき点は変更して本方法に適用する。
【0224】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0225】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはHSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーがDUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0226】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーがDUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0227】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0228】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1の発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0229】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象の予後を決定する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき対象の患者の予後が良好であると結論付けるステップと
を含む。
【0230】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団、好ましくは少なくとも1つの実質的に健常な対象を含む参照に由来するかまたはこれより得られる。
【0231】
一実施形態では、参照シグネチャーは、同じ対象由来の参照サンプルにおける、本発明に係る脳卒中バイオマーカーの発現レベルの以前の測定に由来するかまたはこれより得られ、たとえば、脳卒中の後、好ましくは脳卒中から6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、または96時間以上後に測定された脳卒中バイオマーカーの発現レベルに由来するかまたはこれより得られる。
【0232】
本明細書中使用される場合、用語「予後」は、脳卒中の可能性のあるアウトカム、すなわち患者の脳卒中の過程または生存時間の予測を表す。
【0233】
用語「良好な予後」は、本明細書中使用される場合、脳卒中を罹患している患者において、同じ病態を罹患している同じ性別の他のメンバーと比較して高い平均生存尤度を表す。
【0234】
用語「不十分な予後」は、本明細書中使用される場合、脳卒中を罹患している患者において、同じ病態を罹患している同じ性別の他のメンバーと比較して低い平均生存尤度を表す。
【0235】
さらに本発明は、脳卒中を罹患している対象を処置する方法に関する。
【0236】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、上記シグネチャーを参照シグネチャーと比較するステップとを含む。これらステップは、脳卒中を診断する方法の枠で本明細書中上記に詳述されており、変更すべき点は変更して本方法に適用する。
【0237】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)上記サンプルにおいて本発明のシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0238】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはHSPA1B、NPAS4、DNAJB1、ATF3、HSPB1、RRAD、NR4A1、CYR61、C-FOS、GADD45G、RGS1、ARC、EGR4、PTGS2、RGS2、CCL3、BAG3、EGR2、HSPA4L、ADM、TM4SF1、EGR1、DUSP1、BTG2、LOC715456、HMOX1、LDLR、DNAJA4、MCL1、HSPA6、GADD45B、IL6、ADFP、HES4、DUSP5、GEM、およびG0S2を含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーがDUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0239】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、または9つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップであって、ただし好ましくは少なくとも1つまたは2つの脳卒中バイオマーカーがDUSP1および/またはADMを構成しない、ステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0240】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも3つの脳卒中バイオマーカーの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0241】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、およびTM4SF1の発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0242】
一実施形態では、脳卒中を罹患している対象を処置する方法は、
i)対象からサンプル、好ましくは体液サンプル、より好ましくは血液サンプルを準備するステップと、
ii)好ましくはPTGS2、HMOX1、LDLR、HSPA1B、G0S2、BAG3、TM4SF1、DUSP1、およびADMの発現レベルを測定することにより、上記サンプルにおけるシグネチャーを決定するステップと、
iii)ステップii)で決定したシグネチャーを、参照シグネチャーと比較するステップと、
iv)本明細書中上記で詳述される上記シグネチャーの参照シグネチャーとの相関に基づき、脳卒中を罹患していると対象を診断するステップと、
v)対象がステップiv)で脳卒中を罹患していると診断された場合、対象を処置するステップと
を含む。
【0243】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団、好ましくは少なくとも1つの実質的に健常な対象を含む参照に由来するかまたはこれより得られる。
【0244】
脳卒中を罹患していると診断された対象に適切な処置および治療の例は、当該分野でよく知られており、本明細書中上記で詳述されている。
【0245】
さらに本発明を、以下の実施例および図面で例示する。しかしながらこの実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでは全くない。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【
図1】
図1は、qRT-PCRによる(a)HSPA1B、(b)GADD45G、および(c)CDKN1Aの、mRNAレベルとマイクロアレイ強度の値との間の相関を示す3つのグラフのセットである。x軸は、SMC2に対して正規化したqRT-PCR mRNAのlog
2比を示し、y軸は、オリゴヌクレオチドマイクロアレイシグナルを示す。マン・ホイットニーのU検定由来のP値。
【
図2】
図2は、脳および血液で差次的に発現した遺伝子の2つのセット間の最も有意な重複の2つのベン図のセットである。上部パネルは、ダウンレギュレートされた遺伝子を示し、下部パネルは、アップレギュレートされた遺伝子を示す。
【
図3】
図3は、異なる時点:虚血前(T
0)および虚血後(T
1、T
2、T
3)の間の雄性のアカゲザルS1における上位9つの差次的に発現した遺伝子に関する血液に動的な血液遺伝子強度を示す。
【
図4】
図4は、異なる時点:虚血前(T
0)および虚血後(T
1、T
2、T
3)の間の雄性のアカゲザルS2における上位9つの差次的に発現した遺伝子に関する血液に動的な血液遺伝子強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0247】
実施例
本発明を、さらに以下の実施例により示す。
【0248】
実施例1:血栓性アカゲザルモデルにおける虚血性の脳および血液の間に共通するシグネチャーの同定
方法
動物実験
実験は、体重が16.5~17.2kgの範囲にある12~13歳の雄性の2匹のアカゲザル(Macaca mulatta)において行った。以下では、これら2匹のサルを、S1およびS2と記述した。
【0249】
実験プロトコルは、Regional Ethics Committee for Animal Experimentation(Normandy)に提出し、本試験を行うための承認を得た(参照番号N/02-03-08/03/02-11)。実験を、ライセンスが得られた調査者(C.O.)により、実験動物のケアおよび使用に関する仏国および欧州の倫理上の法律およびガイドライン(科学的な目的のため使用される動物の保護に関する2010年9月22日の欧州議会および審議会のDirective 2010/63/EU)にしたがい、行った。本試験の過程の間、サルは、Cyceron Research Centre(Establishment for Animal Experimentation, agreement No. B14118001)にて、12時間/12時間の明/暗周期、24(℃)、50%の相対湿度で維持された個別のケージにおいて収容し、新鮮な果物および水が追加された市販の食べ物を自由に与えた。これら試験期間にわたり、動物の福祉を監督するために獣外科医が対応することができた。
【0250】
動物モデル
血栓性アカゲザルモデル
実験は、前述されるように行った(Gauberti et al., 2012. Cerebrovasc Dis. 33(4):329-39)。
【0251】
簡潔に述べると、全身麻酔の後、摘出により、右中大脳動脈(MCA)を露出させた。マイクロピペットを挿入し、ヒトトロンビンを注射するM1枝を単離するために2つの縫合を位置づけた。約600μLのトロンビンを、1U/μLの濃度で注射した。最初の100μLの注射を適用した後、2分間隔で50μLの注射を6回行い、次に、近位縫合を取り除き、残りのトロンビンを注射した。次に遠位縫合を15分後に除去した。
【0252】
トロンビン注射のための手法全体は、約30分間かかった。
【0253】
麻酔および生理的パラメータの制御
動物を、ケタミン(0.1mg/kg;IM;Imalgene(登録商標))で鎮静させた。気体の麻酔を、100%の酸素においてセボフルラン(2.5%;Sevorane(登録商標))により誘導した。筋弛緩は、伏在静脈を介してアトラクリウム(0.5mg/kg;IV;Tracrium(登録商標))により得た。
【0254】
サルに、1分あたり22の一定した呼吸頻度で間欠的陽圧にて機械的に人工呼吸を行った。一回換気量(VT)は、炭酸正常状態(PaCO2=38-42mmHg)を得るように調節した。麻酔は、66%の亜酸化窒素を含むセボフルランにより維持された。
【0255】
外科手術の間、セボフルランの濃度は、3%に増大され、その後、磁気共鳴画像(MRI)手法の間、1.5~2%に減少された。静脈内アトラクリウム灌流は、0.75mg/kg/hに設定した。外科手術前に、動物は、定位固定フレームに載置した。
【0256】
in vivoでのMRIの獲得
サルを、3T臨床MRI(Philips Sense Flex M)で試験した。
【0257】
イメージングは、軸断面および冠状面で行い、以下のシーケンシング:3D-飛行時間型血管造影、T2強調型FLAIR(fluid attenuation inversion recovery)法、拡散強調イメージング(DWI)、ならびに造影前および造影後のT1強調型および拡散強調型イメージング(PWI)を含むものであった。
【0258】
血液サンプル
血液サンプルを、外科手術の前であるが全身麻酔の後のT0、およびMCA閉塞からT1=+2h、T2=+3.5h、およびT3=+4.5h後に、得た。
【0259】
各血液サンプルにおいて、2.5mLを、RNAのため採取した。血液サンプルは、PAXgenes Blood RNA tubes(PreAnalytix)を使用して回収した。
【0260】
脳サンプル
12の脳サンプルを、各サルから採取した。各サルにおいて、梗塞部位の近くで6つのサンプルを採取し、他の半球の対応する位置から6つのサンプルを採取した。よって、合計12の虚血性の脳サンプルおよび12の非虚血性の脳サンプルを、解析した。
【0261】
2匹のサルは、閉塞の発症から約5.5時間後(S1:5h12;S2:5h35)に手術され、屠殺された。閉塞の発症から3~4時間後(S1:3h10;S2:3h05)に、MRIを行った。動物に、総量約8Lの4℃の生理食塩水 血清(saline serum)を、開胸後に心臓内注射により注入した。次に、開頭術後に脳を取り外し、冠状断脳切片作製のため特に設計された型へ載置した。脳の各切片を、虚血性の半球および対側の半球上のx座標およびy座標を同定することができる格子上にさらに載置した。格子上で任意に、ローマ数字は、右の虚血性側の半球用であり、アラビア数字は、左の非虚血性側の半球用であった。
【0262】
虚血は、裸眼で視認でき(データ不図示)、非虚血性の対側の半球で得られたピンク色がかかった染色と比較して白く見えるテトラゾリウムにより処理された代謝低下状態の虚血性組織により確認された。
【0263】
動物あたり3つの虚血性皮質サンプルを調製した:1つは、潜在的にコアに対応しており、端由来の2つは、潜在的にペナンブラ領域に対応している。動物あたり3つの対応する対側の半球由来のサンプルも同様に調製した。
【0264】
TTC染色
代謝活性、よって虚血性組織を評価するために、トランスクリプトミクスに関して試験される組織に隣接する脳サンプルを、1%の塩化テトラゾリウム(TTC)で染色した。
【0265】
総RNA抽出
総RNAを、RNeasy Microarray Tissue kitを製造社の説明(Qiagen)に従い使用して、大脳皮質から単離した。RNAの完全性は、RIN(RNA integrity number)を測定することによりAgilent 2100 BioAnalyzer(Agilent Technologies)で評価した(Schroeder et al., 2006. BMC Mol Biol. 7:3)。測定したRINは、6.3~8.8であった。
【0266】
総RNAは、PAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytix)を使用して血液サンプルから単離した。グロブリンのmRNAは、GlobinClear kit(Ambion)を使用して総RNAから除去した。測定したRINは、7.8~10であった。
【0267】
マカクの発現マイクロアレイおよびサンプルの選択
大脳皮質(30ng)および血液サンプル(30ng)由来のRNAを、Low Input Quick Amp WT Labeling kit(Agilent Technologies)を使用して標識した。RNA spike-in対照を使用して、可能性のある色素作用を調節した。RNAを、逆転写酵素およびWTプライマー(T7プロモータープライマーおよびT7プロモーターを含むランダムプライマー)を使用してcDNAに変換した。T7RNAポリメラーゼは、cRNAの合成およびCy3での標識に使用した。蛍光標識したcRNAプローブを、RNeasy mini kit(Qiagen)を使用して精製した。
【0268】
等量(3.75μg)のCy3 cRNAプローブを、4x44K Agilent DNAチップ(カタログ番号:G2519F,アカゲザル(Macacca mulatta))上にハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションを、65(℃)、10rpmにて回転させながら17時間行った。次に、製造社の指示にしたがい、サンプルを洗浄し乾燥させた。
【0269】
ハイブリダイゼーションの画像を、Agilent DNAマイクロアレイスキャナーを使用して入手し、強度のデータを、Feature Extractionソフトウェア(Agilent Technologies)を使用して抽出した。このアレイは、43803のアカゲザルのプローブを含んでいる。これらプローブは、RefSeq(Release 37, Oct 2009)、Unigene(Release 13, Oct 2009)、UCSC MRNA(Oct 2009)、Ensembl(Release 56, Sep 2009)、UCSC RheMac2(Jan 2006)から供給されている。多くのプローブは、オルソロガスなヒト遺伝子に基づき予測される。さらに、一部のプローブは、アカゲザル(Macaca mulatta)のcDNAとしてのみ注釈を付されており、ヒトとの相同性から推測され得るもの以外の機能は知られていない。解析は、トランスクリプトーム解析を専門とする会社のGenosplice(Evry, France)と協同して行った。
【0270】
マイクロアレイ解析
Agilentのマイクロアレイ発現データの差次的な発現解析を、Bioconductor project製のlimmaを使用して行った(Smyth, 2004. Stat Appl Genet Mol Biol. 3:Article3)。生データは、まず、バックグラウンド補正を行い、次に同様にlimmaを使用して全ての脳サンプルおよび血液サンプルに関するアレイ間で正規化を行うことにより、正規化した。プローブは、Array Express上に提供されるAgilentのアレイの情報(http://www.ebi. ac.uk/arrayexpress/arrays/A-GEOD-9861/?page=71&pagesize=100&sortby=organism&sortorder=descending)およびGenospliceにより提供される遺伝子情報を使用して、注釈を付した。
【0271】
limmaパッケージは、まず線形モデルに対して各遺伝子の発現データを適合させることにより差次的な発現の解析を行う。次にこれは、遺伝子を通した情報を借用し、少数のアレイを通して解析を行うことを可能にする経験ベイズ(Empirical Bayes:eBayes)を利用する。
【0272】
脳のマイクロアレイデータの全ての差次的な発現解析は、limmaのeBayes法(Smyth, 2005. limma: Linear Models for Microarray Data. In: Gentleman et al. (Eds), Bioinformatics and Computational Biology Solutions Using R and Bioconductor. Statistics for Biology and Health. New York, NY: Springer)を使用して行った。
【0273】
統計
脳において著しく発現した遺伝子の比較
2匹のサルを、別々に解析した。遺伝子は、虚血性脳サンプルと非虚血性脳サンプルとを比較する際に両サルにおいて2超の倍差(すなわち1超のlog2倍差)を有する場合、およびサル間で虚血性サンプル比較する際またはサル間で非虚血性サンプルを比較する際に2未満の倍差を有する場合、「著しく差次的に発現した」と標識した。
【0274】
血液において著しく発現した遺伝子の比較
血液サンプルを、それぞれの閉塞後サンプルと閉塞前のサンプルを比較することにより解析した。2匹のサルを別々に解析した。最大の倍差を伴う時点を、さらなる解析のため選択し、「S1 max blood」および「S2 max blood」と呼んだ(表1)。遺伝子を、閉塞前のサンプルを「S1 max blood」および「S2 max blood」と比較する際に両サルにおいて1.5超の倍差を有する場合、「著しく差次的に発現した」と標識した。
【0275】
上記に定義される虚血性の脳および閉塞後の血液サンプルの両方において著しく差次的に発現した遺伝子のみを比較し、共通する著しく差次的に発現した遺伝子を同定するために使用した。
【0276】
データのクオリティコントロール
内部検証
マイクロアレイの結果を検証するために、プローブに特異的な2つのステップのTaqMan R Gene Expression Assayを使用した(Applied Biosystems)。検証のための遺伝子は、差次的な発現のランキングおよび虚血に関連する生物学的なアノテーションに基づき選択された。本発明者らは、標的遺伝子を通じた正規化のためSMC2を選択した。なぜならば、この遺伝子では、虚血性組織サンプルおよび非虚血性組織サンプルにおいて一定した発現が示されたからである。Gene Expression AssayのプローブIDは、以下の通りであった:HSPA1B(A 01 P010726)、GADD45G(A 01 P018040)、CDKN1A(A 01 P002585)、SMC2(A 01 P019124)。
【0277】
各サンプルの総RNA100ngを使用し、製造社のプロトコルにしたがいSuperScript(登録商標)III First-Strand Synthesis Kit(ThermoFisher scientific)を使用することによりcDNAを作製した。リアルタイムPCR反応を、Roche LightCycler R480 Systemで行った。遺伝子発現を、Prism software v6.0c(GraphPad, La Jolla, CA)を利用してマン・ホイットニーのU検定(Wilcoxon)を伴う比較CT法(ΔΔCT法)を使用し、虚血性組織および非虚血性組織の間で比較した。
【0278】
外部検証
本発明者らは、Cookら(2012. Nature. 483(7388):213-7)による研究からのデータを使用して、本発明者らの結果を検証しようと試みた。この研究はまた、皺脳の霊長類においてではあるが、アカゲザル(Macaca mulatta)の近縁であるカニクイザルを使用して、脳卒中のトランスクリプトミクスも試験した(Street et al., 2007. BMC Genomics. 8:480)。アカゲザル(Macaca mulatta)で見出された結果を検証するために、本発明者らは、Cookらの研究からプラセボおよび非虚血性のトランスクリプトミクスのデータを解析した。プラセボの虚血性および非虚血性のデータは、GEO(accession:GSE35589)から利用し、上述される方法を使用して解析した。
【0279】
脳-血液遺伝子の重複
脳および血液の差次的な発現結果間の有意な重複は、符号間超幾何学的重複検定(rank-rank hypergeometric overlap test)(Plaisier et al., 2010. Nucleic Acids Res. 38(17):e169)を使用して、決定した。この方法は、2つのセット間の重複が最も有意であるカットオフを同定するために、選別された遺伝子のリストの可能性のある全ての重複に関して超幾何学的検定を行う。完全な遺伝子の列挙は、2匹のサル間の平均log倍差により選別した。発現が脳および血液で変化した特定の遺伝子を試験するために、本発明者らは、脳で著しく差次的に発現した遺伝子の選別されたリストを作成し(上記の方法を参照されたい)、血液におけるこれら遺伝子のそれぞれに対する最大倍差を計算した。
【0280】
GSEA(Gene-set enrichment analysis)
GSEAは、GSEA command line tool(Subramanian et al., 2005. Proc Natl Acad Sci U S A. 102(43):15545-50)を使用して行った。このツールは、所定のセットの遺伝子を提供し、各セットが、選別された実験リストの上位または低位の近くで多く含まれる(enriched)かどうかを決定し、これは表現型の役割を表す。GSEAは、評価される各遺伝子セットに対するエンリッチメントスコア(ES)を計算する。このスコアは、セットが選別された実験上の遺伝子リストの上位または低位で過剰に提示される度合いを表す。NES(normalized enrichment score)は、遺伝子セットの大きさにより正規化される。
【0281】
脳および血液の差次的な発現解析からの結果を、log倍差により選別した。これら列挙は、GSEAの事前にランク付けされた関数(pre-ranked function)に通した。この解析を、100の並べかえを使用して行い、10未満の遺伝子を有する遺伝子セットを除外した。結果得られる遺伝子セットを、NESにより選別した。GSEA ESは、遺伝子セットが、選別した遺伝子リストの上位または低位で過剰に提示される度合いを表す。ESは、リストを下に移動し、遺伝子が存在する場合はスコアを増大させ、存在しない場合は減少させることにより、計算される。スコアが増大される大きさは、表現型(所定の遺伝子セット)と遺伝子の相関に応じて変化する。ESは、リストを下に移動させる際に直面する0からの最大偏差である。正のESは、(アップレギュレートされた遺伝子における)リストの上位でのエンリッチメントを表し、負のESは、低位でのエンリッチメントを表す。正規化したESは、遺伝子セットの大きさの差異および遺伝子セットと発現データとの間の相関を構成しており、遺伝子セット間の比較を可能にする。
【0282】
これら遺伝子セットにおける遺伝子間の相互作用を、STRINGデータベース(Szklarczyk et al., 2015. Nucleic Acids Res. 43(Database issue):D447-52)を使用して可視化した。遺伝子は、脳において少なくとも2、血液において少なくとも1.5の倍差を有する場合、STRINGへと進ませた。線の太さは、関係が存在することの確実性を表し、大きなノードは、三次構造についての情報が存在するタンパク質を表す。
【0283】
結果
動物は、虚血を発症してから約5.5時間後に屠殺した。軸位MRI拡散強調画像は、両動物においてMCA局所性虚血を示した(データ不図示)。2つの異なる動物における虚血の体積の解析は、梗塞の体積が、著しく可変性であったことを示した:S1は、S2よりも明らかに大きい体積の梗塞を有していた。表面的な梗塞および深い梗塞が、動物S1およびS2で観察された。また梗塞は、両動物においてT2フレアー画像で見ることができた。Willis Angio-MRIは、MCAが動物S1では近位で閉塞されており、動物S2ではあまり明確ではなかったことを示した。また梗塞は、動物S1およびS2において大脳基底核のレベルにおいて、T1シーケンス上で見ることができた。
【0284】
遺伝子発現の変化:虚血性脳組織対非虚血性脳組織
この試験では、虚血性脳組織と非虚血性脳組織との間での個別の遺伝子についての発現の変化を測定し、これら変化の作用を、遺伝子セットのレベルで試験した。差次的な発現解析を、虚血性脳組織由来の発現データを、虚血を経ていない対側の半球の対応する領域由来のデータと比較することにより行った。
【0285】
この解析は、虚血性脳サンプルおよび非虚血性脳サンプルの発現パターンが、明らかに異なるものであることを明らかにした(データ不図示)。遺伝子は、各サルの中で虚血性脳サンプルおよび非虚血性脳サンプルを比較する際に2超の倍差を有し、これら遺伝子がサル間の虚血性組織またはサル間の非虚血性組織を比較する際に差次的に発現しなかった場合(倍差<2)に、著しく差次的に発現したとみなした。階層的なクラスタリングを、これら上位の差次的に発現した遺伝子(37の遺伝子)に適用する際に、虚血性サンプルは、非虚血性サンプルとは明らかに無関係にクラスター形成する。
【0286】
著しく差次的に発現した全ての遺伝子は、アップレギュレートされた(表1)。
【0287】
【0288】
内部検証
マイクロアレイの結果のロバスト性を確認するために、3つの虚血に感受性のある遺伝子(HSPA1B、GADD45G、CDKN1A)のmRNAレベルを、動物由来のサンプルを使用してRT-qPCRにより定量化した。SMC2は、全ての試験サンプルで変わらない発現レベルを呈することが見出されており、内部参照(ハウスキーピング)として使用した。各RNAサンプルに3回の逆転写を行った後、3回独立したqPCRを実行し、標的および参照遺伝子の両方に関するアッセイ測定を反復した。全ての遺伝子で、変化の方向および大きさは、マイクロアレイデータと良好に一致した(
図1および表2)。
【0289】
【0290】
外部検証
カニクイザル(Macaca fascicularis)におけるCookらの脳卒中の研究(2012. Nature. 483(7388):213-7)からのトランスクリプトームデータの解析は、本明細書中記載される結果と非常に異なる結果をもたらした。このアカゲザル(Macaca mulatta)の解析は、脳卒中を罹患した組織において多くのアップレギュレートされた遺伝子を明らかにしたが、カニクイザル(Macaca fascicularis)からのデータは、主にダウンレギュレートされた遺伝子を示した。これは、霊長類において脳卒中を誘導することに関して著しく異なる方法によるためである可能性が高い。Cookらによる研究は、外科的な中大脳動脈閉塞(MCAO)を使用し、これは、ヒトにおいて通常観察されるものよりも重篤な脳卒中をもたらすことが認められている。このより重篤な脳卒中モデルは、大量の細胞死をもたらすことにより、主にダウンレギュレートされた遺伝子をもたらす可能性がある。
【0291】
遺伝子セットのエンリッチメント
虚血性脳組織において多く含まれる遺伝子セットは、Broad InstitutesのGSEA(Gene Set Enrichment Analysis)(Subramanian et al., 2005. Proc Natl Acad Sci U S A. 102(43):15545-50)を使用して同定した。GSEAのHallmark遺伝子セットからの上位5つのエンリッチメントな遺伝子セットは、NFKBを介したTNFAシグナリング、アポトーシス、P53経路、低酸素、およびUV応答の上昇であり、これら全てはアップレギュレートされていた(表3)。
【0292】
【0293】
セットの108の遺伝子のうちの60が、NFKBを介したTNFAシグナリングの遺伝子セットにおいてコアエンリッチメント(core enrichment)を有していた(NES=2.96)。本発明者らがデータを有するこのセットのほぼ全ての遺伝子がアップレギュレートされており、有意にダウンレギュレートされた遺伝子はなかった:15の遺伝子のみが、最大倍差1.17にてわずかにダウンレギュレートされる。
【0294】
アポトーシスの遺伝子セットでは、98の遺伝子のうち26が、コアエンリッチメントを有する(NES=2.57)。
【0295】
低酸素の遺伝子セットでは、118の遺伝子のうち33がコアエンリッチメントを有していた(NES=2.38)。
【0296】
UV応答の上昇の遺伝子セットの96の遺伝子のうち31がコアエンリッチメントを有していた(NES=2.3)。
【0297】
最も有意に多く含まれるダウンレギュレートされた遺伝子セットは、酸化的リン酸化であった。これら遺伝子の120のうち84が、コアエンリッチメントを有していた(NES=-2.57)。
【0298】
遺伝子産物の相互作用
上位の脳の遺伝子セットのうち脳および血液において著しく差次的に発現される遺伝子(脳において倍差≧2、血液において倍差≧1.5)の遺伝子産物の相互作用を可視化するために、STRINGデータベース(Szklarczyk et al., 2015. Nucleic Acids Res. 43(Database issue):D447-52)を使用した(データ不図示)。
【0299】
IL-6は、NFKBを介したTNFAシグナリング、アポトーシス、および低酸素を提示するネットワークにおいて著しく関連したメンバーであることが知られていた。さらに、CDKN1Aは、これらネットワークの4つ全てに出現する。CDKN1AのHMOX1との相互作用は、アポトーシス、p53経路、および低酸素に関連する遺伝子のネットワークで観察される。遺伝子ATF3はまた、4つ全てのネットワークに現れ、これは、上記の3つにおいてIL-6と相互作用する。脳において5位に順位付けられた遺伝子セット(表3)のUV応答の上昇は、このセットにおいて上位で差次的に発現した遺伝子が既知の相互作用を有さないため、示されていない。
【0300】
遺伝子発現の変化:閉塞前対閉塞後の血液サンプル
脳虚血の間血液において差次的に発現した遺伝子を、全ての閉塞前の血液サンプルを、全ての閉塞後の血液サンプルと比較することにより同定した。階層的クラスタリングを、上位の差次的に発現した遺伝子に適用する際に、閉塞前のサンプルおよび閉塞後のサンプルは、別々にクラスター形成する(データ不図示)。また、この遺伝子クラスタリングに基づき2匹のマカクの血液において異なる発現パターンが表れた。サルS1は、サルS2よりも顕著なこれら遺伝子のアップレギュレーションを有する。この2匹のサルの区別は、脳の発現パターンでは明らかではない(データ不図示)。
【0301】
脳サンプルと同様に、血液の差次的な発現結果の遺伝子セットのエンリッチメントを解析した。上位5つのエンリッチメントな遺伝子セットは、NFKBを介したTNFAシグナリング、低酸素、ヘッジホッグシグナリング、炎症性応答、および血管新生である(表4)。
【0302】
【0303】
NFKBを介したTNFAシグナリングおよび低酸素の遺伝子セットは、脳の上位5つの遺伝子セットと同様に出現した(表4)。
【0304】
NFKBを介したTNFAシグナリングの遺伝子セットにおいて108の遺伝子のうち37が、コアエンリッチメントを有していた(NES=1.92)。
【0305】
低酸素の遺伝子セットにおいて118の遺伝子のうち42が、コアエンリッチメントを有していた(NES=1.91)。
【0306】
ヘッジホッグシグナリングの遺伝子セットにおいて24の遺伝子のうち10が、コアエンリッチメントを有していた(NES=1.77)。
【0307】
炎症性応答の遺伝子セットにおいて110の遺伝子のうち35が、コアエンリッチメントを有していた(NES=1.77)。
【0308】
血管新生の遺伝子セットにおいて20の遺伝子のうち9つが、コアエンリッチメントを有していた(NES=1.76)。
【0309】
脳および血液の間に共通する差次的に発現した遺伝子
脳および血液からの差次的な発現結果を、倍差により遺伝子を選別した際の有意な重複について試験した。本発明者らは、2つの選別された遺伝子セットが、特に2つの極値:虚血の間最もアップレギュレートされた遺伝子および最もダウンレギュレートされた遺伝子で、著しく類似していることを示している。また本発明者らは、最も有意であるヒートマップからの重複している遺伝子を示した:2156のダウンレギュレートされた遺伝子が、脳サンプルおよび血液サンプルの間で有意に重複し、493のアップレギュレートされた遺伝子が、有意に重複する(
図2)。これら遺伝子の大部分は、比較的低い発現倍差を有するが、差次的に発現した遺伝子の重複は、脳サンプルおよび血液サンプルの間で非常に著しい。
【0310】
これら重複するセットにおける多くの遺伝子が著しく差次的に発現してはいなかったが、一部は発現しており、これは、本発明者らが最も興味を持っている脳での発現において非常に著しい変化を有するものである。脳において著しく差次的に発現したと同定された遺伝子のうち、9つは、同様に血液でも差次的に発現した(倍差≧1.5;表1、太線で強調)。これら遺伝子の9つ全てが、最も有意な超幾何学的重複の中で生じる(太線)。これら遺伝子は、PTGS2、G0S2-like、DUSP1、LDLR-like、HMOX1、HSPA1B、BAG3、ADM、およびTM4SF1である。これら遺伝子の大部分は、血液の発現において急増し、時間経過とともに横ばいになる(
図3および4)。
【0311】
論考
MCAの動脈にヒトトロンビンを注射した非ヒト霊長類モデル(Gauberti et al., 2012. Cerebrovasc Dis. 33(4):329-39)を使用して、虚血性脳卒中の間の遺伝子発現変化のパターンを試験した。これは、部分的なMCA虚血を伴う局所性虚血の塞栓性モデルである。6時間の時間枠を、治療介入がヒトで可能である時間のウインドウであるため(血栓溶解 発症後最大4h30分、血栓除去 発症後最大6h)、使用した。
【0312】
本発明者らの脳および血液由来のマカクのマイクロアレイ発現データの試験は、虚血性サンプルおよび非虚血性サンプルが、それらの発現プロファイルに基づき区別され得ること、および著しく差次的に発現した遺伝子の大部分が、虚血から6時間後に虚血性のシナリオにおいてアップレギュレートされることを明らかにした。これらアップレギュレートされた遺伝子の多くは、細胞死およびDNA損傷修復に関与する経路に属する。脳および血液において差次的に発現した遺伝子の比較は、遺伝子発現パターンの有意な重複を明らかにした。
【0313】
これら結果は、脳および血液でのトランスクリプトミクスを介して虚血性脳卒中を同定する見込みを表している。
【0314】
虚血性脳における遺伝子発現
データのクオリティーを、PCA解析により確認し、両サルにおいて遺伝子発現により虚血を非虚血と区別することが可能であることを示した。さらに内部検証は、作成した結果を支援するものであった。
【0315】
アカゲザル(Macaca mulatta)の脳の発現データの階層的クラスタリングは、虚血性脳サンプルおよび非虚血性脳サンプルの強力に独立したクラスタリングを明らかにした(データ不図示)。これら結果は、発現プロファイルに基づき虚血性脳組織を同定する可能性を表すものであった。最も有意に差次的に発現した遺伝子は、アップレギュレートされており、これは、マウスでの以前の多くの虚血の研究と一致している(Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14; Hori et al., 2012. Dis Model Mech. 5(2):270-83)。この研究は、脳において著しく差次的に発現した遺伝子を、両サルにおいて最小2の倍差を有する遺伝子として定義し、これら遺伝子は、サル間で非虚血性サンプルを比較する際またはサル間で虚血性サンプルを比較する際には差次的に発現していない(倍差<2)。本発明者らの解析結果は、脳において37の遺伝子がアップレギュレートされ、ダウンレギュレートされるものはなかったことを見出した。これら結果は、6時間後に115のアップレギュレートされた遺伝子および19のダウンレギュレートされた遺伝子を見出したButtnerらの結果と同様である(Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14)。Buttnerらにより同定された多数の遺伝子は、上記よりも大きな使用される発現プロファイルアレイおよび種間の発現差異により説明され得る。
【0316】
虚血性脳組織において全ての著しく差次的に発現した遺伝子がアップレギュレートされた。これら遺伝子の多くは、様々な機能、特にストレス応答、アポトーシス、およびシグナル伝達において、虚血性脳卒中でアップレギュレートされる遺伝子として以前に同定されている。
【0317】
アップレギュレートされたストレス応答遺伝子の中に、7つの熱ショックタンパク質HSPA1B(Hsp70)、HSP40、HSPB1、HSPA4L、およびDNAJA4(Hsp40-like)があった(表1)。多くの研究が、熱ショックタンパク質を虚血において著しくアップレギュレートされると同定している(Schmidt-Kastner et al., 2002. Brain Res Mol Brain Res. 108(1-2):81-93; Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14; Kawahara et al., 2004. J Cereb Blood Flow Metab. 24(2):212-23; Tang et al., 2002. Eur J Neurosci. 15(12):1937-52)。この遺伝子のヒトのオルソログは、凝集に対してタンパク質を安定化させるストレス誘導性遺伝子として十分に特徴づけられており、ユビキチン-プロテアソーム経路に関与している(NCBI, Accession:NM_005346.5)。Hsp70は、虚血性脳卒中において最も共通して報告されているアップレギュレートされる熱ショックタンパク質である(Cox-Limpens et al., 2014. Brain Res. 1564:85-100)。アカゲザル(Macaca mulatta)では、熱ショックタンパク質ファミリーA(Hsp70)のメンバー1B(HSPA1B)は、虚血性脳組織において最もアップレギュレートされる遺伝子である。マウスでのHSPA1Bノックアウト試験は、この遺伝子を欠いた心臓細胞が、虚血による損傷の影響をより受けやすいことを示した(Kim et al., 2006. Circulation. 113(22):2589-97)。脳虚血の研究により、hsp70ノックアウトマウスが、野生型マウスよりも大きな梗塞体積を経たこと(Lee et al., 2004. Stroke. 35(9):2195-9)、およびHsp70を過剰発現するマウスが、梗塞の大きさを減少させ、神経機能を改善させること(Zheng et al., 2008. J Cereb Blood Flow Metab. 28(1):53-63)が示された。マカクにおいて高レベルのHSPA1Bの差次的な発現は、これがまた虚血を経た霊長類の脳においても神経保護的な役割を有し得ることを表す。これらマイクロアレイから最も差次的に発現した遺伝子のうちの1つは、熱ショックタンパク質のホモログである、DNAJB1であることに留意することも興味深い。
【0318】
NPAS4は、神経保護物質としても知られている、別の著しく差次的に発現されるストレス応答遺伝子である(Choy et al., 2015. Int J Mol Sci. 16(12):29011-28)。この転写因子は、脳のニューロンで発現され、興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンの早期反応においてある役割を有する。この発現は、ストレス下に神経細胞を置く様々な状況により誘導される。本発明者らの研究では、NPAS4はS1で3.57、S2で2.65のlog2倍差を有した(表1)。NPAS4により制御される遺伝子C-FOS(Ramamoorthi et al., 2011. Science. 334(6063):1669-75)もまた、はS1で2.53、S2で3.77のlog2倍差にて本発明者らの研究で著しく差次的に発現されている。C-FOSは、一般に脳虚血の存在下でアップレギュレートされることが見出されている(Cox-Limpens et al., 2014. Brain Res. 1564:85-100)。
【0319】
遺伝子活性化転写因子3(ATF3)は、次に最も差次的に発現した遺伝子である。ATF3は、転写因子のcAMP応答性エレメント結合(CREB)ファミリーのメンバーをコードする。これは、細胞のストレス応答に関与する。ATF3は、S1で2.99、S2で3.38のlog2倍差を経た(表1)。さらに、この遺伝子は、上位のGSEA遺伝子セットの中で著しく結びついている(connected)メンバーである(データ不図示)。マウスでの以前の実験は、ATF3のノックアウトが脳虚血後により大きな梗塞体積を有し、神経機能を悪化させたことを見出した(Wang et al., 2012. Neuroscience. 220:100-8)。
【0320】
虚血性脳組織でアップレギュレートされた他の重要なストレス応答遺伝子は、2つの損傷誘導性遺伝子GADD45GおよびGADD45B(Growth Arrest and DNA-Damage inducible 45)である。GADD45遺伝子は、DNA修復に関与している。GADD45GはS1で2.25、S2で2.04のlog2発現倍差を経ており、GADD45Bでは、これはそれぞれ1.08および2.17であった。熱ショックタンパク質と同様に、Gadd45の遺伝子ファミリーは、脳虚血を試験した多くのげっ歯類の研究により、アップレギュレートされることが報告されている(Schmidt-Kastner et al., 2002. Brain Res Mol Brain Res. 108(1-2):81-93; 7-9, 20)。虚血の間のラット脳の以前の解析は、これら遺伝子の発現が、一時的な広範囲の虚血により誘導されることを明らかにした(Chen et al., 1998. J Cereb Blood Flow Metab. 18(6):646-57)。これら研究者は、これが、これら遺伝子に関する神経保護的な役割を表し得ると結論付けた。本発明者らの結果は、虚血の間のこの発現の増大が霊長類でも起こることを示し、虚血性細胞応答におけるこの役割をさらに暗示している。
【0321】
アポトーシス性遺伝子BAG3もまた、虚血性脳組織で有意にアップレギュレートされ、S1で1.7、S2で2.97のlog2倍差を伴う。ラットでの脳虚血の発現の研究もまた、この遺伝子が著しくアップレギュレートされることを報告した(Schmidt-Kastner et al., 2002. Brain Res Mol Brain Res. 108(1-2):81-93)。細胞骨格タンパク質の溶解が虚血後に起こることが知られており(Lipton, 1999. Physiol Rev. 79(4):1431-568)、興味深いことに、本発明者らは、遺伝子のARC(activity-regulated cytoskeleton-associated protein)が、虚血性脳組織でアップレギュレートされる(S1で1.84、S2で1.9のlog2倍差)ことを観察した。ARCのアップレギュレーションは、ラットでの以前の脳虚血の研究で観察されている(Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14)。
【0322】
脳虚血に関与している別のクラスの遺伝子は、Dusp(dual-specific phosphatases)である(Wang et al., 2011. Brain Res. 1372:13-21)。これらタンパク質産物は、MAPKタンパク質を不活性化させることができる。2つのDusp遺伝子のDUSP1(S1で1.43、S2で1.43のlog2倍差)およびDUSP5(S1で1.05、S2で1.67のlog2倍差)が、本発明者らの研究で著しくアップレギュレートされた。興味深いことに、Dusp5は、p53の標的であることが示唆されている(Ueda et al., 2003. Oncogene. 22(36):5586-91)。
【0323】
血液における遺伝子発現の変化
血液で観察される発現パターンは、脳のパターンと類似していたが、この試験において、血液のトランスクリプトミクスに関する限定がいくつか存在した。比較的少数のサンプル(各サルで時点あたり1つのサンプル)であるため、時間経過解析は、実現可能ではなかった。時間経過解析の代わりに、閉塞の前に回収したサンプルを、ペアワイズ法で各閉塞後のサンプルと比較した。遺伝子セット解析を行うために、発現において最大の変化をもたらした比較からの差次的な発現結果を、GSEAで使用した。この解析により関与した遺伝子セットは、脳での発現パターンと強力な相関を示した。
【0324】
血液発現レベルの階層的クラスタリングは、閉塞前のサンプルおよび閉塞後のサンプルが、独立してクラスター形成することを明らかにした(データ不図示)。この区別は、脳サンプルの場合ほど厳密ではないが、閉塞前および閉塞後の間の遺伝子発現において依然として明確な差異が存在している。これら結果は、さらなる実験が脳卒中の診断に使用され得る血液バイオマーカーのパネルを明らかにし得ることを示唆している。この研究における少数のサンプルおよび個体のため、診断で使用され得る遺伝子のサブセットを特定することは困難ではあるが、明確な発現パターンは、サンプルの大きさが大きい場合、これが可能であり得ることを示唆している。
【0325】
脳虚血を経たマカクの血液において差次的に発現した遺伝子の本発明者らの解析は、脳と同様に、血液における転写物の大部分がアップレギュレートされることを明らかにした。サンプルがサル間で集められ、全ての閉塞後サンプルが集められる場合、651の遺伝子が、高レベルの差次的な発現(2超の倍差)を有し、そのうちの513がアップレギュレートされる。
【0326】
これら差次的に発現した遺伝子の中でも特に、4つのS100遺伝子:S100A8、S100A12、S100P、およびS100A9がある。S100は、グリア細胞由来のカルシウム結合タンパク質である。このグループの最も著しく差次的に発現したものは、S100A8であり(3.29のlog2倍差、p=0.027;データ不図示)、これは、炎症促進性機能と強く関連している(Sedaghat & Notopoulos, 2008. Hippokratia. 12(4):198-204)。
【0327】
脳虚血に関与する遺伝子セット
脳
脳発現データのGSEAは、虚血性脳サンプルでアップレギュレートされるDNA修復およびアポトーシスに関与するいくつかの遺伝子セットを明らかにした。上位5つのエンリッチメントな遺伝子セットは、NFKBを介したTNFAシグナリング、アポトーシス、p53経路、低酸素、およびUV応答の上昇であった。これら経路の一部は、以前の研究で脳虚血に関連すると記載されている。
【0328】
脳における大部分のエンリッチメントな遺伝子セットは、NF-κBを介した腫瘍壊死因子α(TNFA)シグナリングである。TNFAサイトカインは、炎症性応答に関与するNFKBを活性化する。多くの以前の研究が、炎症促進性サイトカインのアップレギュレーションを報告している(Schmidt-Kastner et al., 2002. Brain Res Mol Brain Res. 108(1-2):81-93; Lu et al., 2004. J Neurosci Res. 77(6):843-57; Broughton et al., 2009. Stroke. 40(5):e331-9)。
【0329】
同様に、アポトーシスおよびp53経路に関与する遺伝子セットがアップレギュレートされた。これら経路は、DNA損傷または細胞ストレスの事象において活性化され、以前の研究は、様々なアポトーシス促進性因子のアップレギュレーションを記載していた(Buttner et al., 2009. Brain Res. 1252:1-14)。
【0330】
さらに、NFKBおよびp53の経路は、神経保護に寄与することが示されている(Zhang et al., 2005. J Cereb Blood Flow Metab. 25(1):30-40; Chen et al., 2011. Antioxid Redox Signal. 14(8):1505-17)。
【0331】
遺伝子IL-6が、TNFAシグナリング、アポトーシス、および低酸素の経路の著しく関連したメンバーであることに留意することは興味深い(データ不図示)。この遺伝子は、S1およびS2の脳サンプルで、それぞれ1.08および1.53の発現におけるlog2倍差の増加を有する。HMOX1-CDKN1Aの相互作用はまた、いくつかの遺伝子セット(アポトーシス、p53、および低酸素)を通して共通しており、HMOX1のアップレギュレーションもまた重要である。
【0332】
血液
血液由来の差次的な発現結果のGSEAは、シグナリング、低酸素、および炎症性応答に関与する経路を明らかにした。虚血性血液サンプルに多く含まれる上位5つの遺伝子セットは、NFKBを介したTNFAシグナリング、低酸素、ヘッジホッグシグナリング、炎症性応答、および血管新生であった。
【0333】
興味深いことに、脳における大部分のエンリッチメントな遺伝子セットのうちの2つ:NFKBを介したTNFAシグナリングおよび低酸素応答は、同様に血液でも多く含まれている。これら経路は、両方とも、虚血応答のモデルに良好に適合する。NFKBを介したTNFAシグナリングの遺伝子セットにおける108の遺伝子のうち37は、血液においてコアエンリッチメントを有し(NES=1.92)、低酸素応答の遺伝子セットにおける118の遺伝子のうち42は、コアエンリッチメントを有する(NES=1.91)。遺伝子セットのNFKBを介したTNFAシグナリングは、脳においてセットの50%超がコアエンリッチメントを有し、血液において30%超がコアエンリッチメントを有しているため、虚血に最も関与する経路であると思われる。
【0334】
脳および血液の間で共通する発現
脳および血液の差次的な発現を比較するために、全ての遺伝子を、倍差により選別し、全ての見込みのある超幾何学的重複を試験し、これにより、遺伝子のリストにおいてアップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の有意な重複が存在することが明らかにした。アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の最も有意な超幾何学的重複の本発明者らの解析は、交差が、それぞれ493および2156の遺伝子を含むことを明らかにした(
図2)。
【0335】
血液発現データのさらなるより厳密な解析も行い、ここで各サルにおける閉塞前および閉塞後のサンプルを別々に比較し、最大倍差をもたらす時点のみを保存した。これら結果を、脳の発現データと統合し、遺伝子を、脳(倍差≧2)および血液(倍差≧1.5)での著しい差次的な発現に関してフィルタリングした。9つの遺伝子が、脳および血液の両方において著しく差次的に発現したと同定された(表1)。これら遺伝子の9つ全てが、上述される最も有意な超幾何学的重複に現れる。
【0336】
これら上位9つの遺伝子は、HSPA1B、PTGS2、BAG3、ADM、TM4SF1、DUSP1、HMOX1、LDLR-like、およびG0S2である。HSPA1B、BAG3、およびDUSP1は、以前のセクションで論述されている。これら遺伝子の大部分は、発現で急激に増加し、時間を経て横ばい状態になる(
図3および4)。
【0337】
プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2(PTGS2/COX2)は、プロスタグランジンの生合成においてある役割を果たす酵素である。この遺伝子は、炎症の間アップレギュレートされることが知られており、アスピリンの標的である。アスピリンは、プロスタグランジンの産生を抑制し、ある用量は、脳卒中のリスクを下げる(Tohgi et al., 1992. Stroke. 23(10):1400-3; Eikelboom et al., 2002. Circulation. 105(14):1650-5)。
【0338】
血液におけるアドレノメデュリン(ADM)遺伝子の発現レベルは、虚血性脳卒中の重症度に関連することが示されている(Liu et al., 2014. Int J Neurosci. 124(4):271-80)。Liuらは、末梢性血液の白血球におけるADMの発現レベルが、組織損傷の重症度を表し得ることを示唆している。この仮説はまた、サルS1が、S2よりも、MRIにより示されるように(データ不図示)大きな梗塞体積を有しており、血液においても高いADMの発現レベルを有しているため本発明者らの結果に関連している。しかしながらこの発現パターンは、脳では反転されている。
【0339】
ヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)は、本発明者らが以前に論述した熱ショックタンパク質のファミリーのメンバーである。これは、脳卒中のような酸化ストレス介在性損傷に対する細胞の防御システムの一部であると考えられている(Chen & Maines, 2000. Cell Mol Biol (Noisy-le-grand). 46(3):609-17)。さらに、以前の研究により、脳虚血後の脳においてHMOX1がアップレギュレートされることが見出されている(Zhao et al., 2017. J Stroke Cerebrovasc Dis. 26(7):1622-1634)。
【0340】
結論
本発明者らのデータは、虚血性脳と血液との間に共通するシグネチャーが存在することを示しており、虚血性脳卒中を有する患者を特徴づけるため、および/または虚血性脳卒中を有する患者における神経保護薬物の評価のためのコンパニオンバイオマーカーを開発するための、生検トランスクリプトーム発現プロファイリング用のツールとして、血液のトランスクリプトミクスの発展を支援する。
【0341】
血漿中細胞外ノンコーディングRNA(ex-RNA)が、標的組織における遺伝子発現のネットワークを直接制御する循環性RNA分子のクラスであることは知られているが(Mick et al., 2017. Stroke. 48(4):828-834)、脳および血液において共通するRNAコーディング配列のプロファイルを同定することは極めて予想外なことであった。この、脳虚血を有する患者の血液で観察される虚血関連遺伝子の発現パターンは、Mooreらによる研究(2005. Circulation. 111(2):212-21)において以前に記載されている。Mooreらは、PBMC自体が低酸素性ではないにもかかわらず、脳が低酸素状態であったことを介して、PBMCの低酸素に関連した遺伝子を見出した。さらに本発明者らの結果は、血液が虚血性脳卒中を確認するための診断ツールとして使用され得るとのMooreらの結論をさらに推し進めている。
【0342】
実施例2:臨床試験のプロトコル
本発明者らは、MCAの動脈にヒトトロンビンを注射した非ヒト霊長類モデル(Gauberti et al., 2012. Cerebrovasc Dis. 33(4):329-39)を使用した。本発明者らの試験は、虚血性サンプルおよび非虚血性サンプルが、虚血から6時間後のそれらの発現プロファイルに基づき区別され得ることを明らかにした。同定されたアップレギュレートされた遺伝子は、細胞死およびDNA損傷修復に関与する経路に属している。脳および血液で差次的に発現した遺伝子の比較は、遺伝子発現パターンの有意な重複を明らかにした。
【0343】
まとめると、これら結果は、脳および血液におけるトランスクリプトミクスプロファイルを介して虚血性脳卒中を同定する見込みを示した。
【0344】
脳および血液において最も有意に重複する9つのアップレギュレートされた遺伝子が同定され、ヒト試験にさらに使用される。
【0345】
本発明者らは、サルから作製したデータをヒトへ変換することを提案する。虚血性脳卒中の霊長類モデルにおける虚血性脳および末梢血の両方で同定されたアップレギュレートされた遺伝子は、20名の虚血患者、20名の出血性患者および一致する対照由来のサンプルで試験される。次に本発明者らは、他の心血管疾患ですでに行われたような迅速な検出試験を将来的に開発することを可能にするために、対応するタンパク質を探索する。
【0346】
パイロット症例対照試験
患者における脳卒中指標(index stroke)の前にスコア(European Heart Score)により測定された年齢、性別、および心血管リスクと対形成された初めての虚血性脳卒中である症例を用いた症例対照試験。
【0347】
虚血性の症例は、ブレストの脳卒中登録所(Brest stroke registry)から採用される。この登録所は、1年あたり900名の患者を含む。対照のグループは、1つのセンター(Brest University hospital)から採用される。
【0348】
主目的:
発現が有意に増大すると同定された遺伝子に基づくRNA血液バイオマーカー試験を決定するため。
【0349】
試験設計:
患者における脳卒中指標の前にスコア(European Heart Score)により測定された年齢、性別、および心血管リスクと対形成された初めての虚血性脳卒中である症例を用いた症例対照試験。
【0350】
プライマリーエンドポイント:
虚血発症から6時間後に同定された各遺伝子の発現(log2で測定)。
【0351】
プライマリー統計解析:
各候補遺伝子の発現を、対形成されたデータについてスチューデント検定を用いて、症例および対照において比較する。
【0352】
セカンダリー統計解析:
各遺伝子の発現を、虚血性脳卒中の急性期とその3か月後との間で、症例について比較する。
【0353】
完全な試験のためのサンプルの大きさの推定:
症例と対照との間の差異は、対照と比較して症例で1.5倍に設定され(倍差 FC=1.5およびlog2FC=0.585)、log2発現強度の標準偏差では、1未満に設定される(個人的なデータ)。
【0354】
これら仮説(差異=0.585および標準偏差=1)、90%の検出力および試験の多重度に対するBonferroni補正を用いる場合、必要とされる対象の推定数は、110の症例および110の対照である。この計算は、応答の相関レベルが不明であるため、対形成することにより提供される検出力の見込みのある増加の作用を考慮していない。
【0355】
試験対象患者基準
患者:
18歳超;6時間未満での頸動脈虚血性脳卒中の発症;6時間前にT1血液サンプルを有することができる;血栓溶解または血栓除去に適合可能。
【0356】
最初のNIHSSスコア>0;虚血性脳卒中と適合可能なCTまたはMRIのイメージングを有する患者;MRIまたはCT灌流のいずれかを介してペナンブラを解析することが可能なマルチモーダルイメージング、ならびに大動脈上部の血管および脳内血管(Willis動脈輪)のイメージングを有する患者。
【0357】
除外基準は、脳内出血を伴う患者を含む。
【0358】
対照:
年齢>18歳超;脳卒中なし、画一化されたアンケート;心血管疾患を伴うことのなく、脳卒中のない高いリスクの心血管対象。
【0359】
症例報告書(CRF):
各患者および対照に、人口動態および臨床上の特徴、心血管のリスク因子、および現在の処置を、ブレストの脳卒中登録所の画一化されたレポート形式で記録させる。
【0360】
大脳のイメージング:
急性期に、灌流MRIまたはCTおよびMRA(angio-MR)または血管スキャン。
【0361】
臨床およびイメージングでの経過観察:
患者では、3カ月±15日でのランキンスコア、および3カ月±15日での脳のMRI。
【0362】
患者あたりのサンプル数:
血液42mLは、6回の異なる時間:脳卒中の発症から6時間未満、12時間±2、24時間±4、48時間±4、7日±2日、および3カ月±15日後に、採取される。
【0363】
対照あたりのサンプルの数:
各対象で血液42mLを1回採取する。
【0364】
患者および対照の数:
虚血性の症例では20名の患者;年齢、性別、およびEuropean Heart scoreに関して虚血性の症例と一致した20名の対照。
【0365】
出血性の患者
出血性の症例は、虚血性のグループの場合と同様に患者あたり同じサンプル数にて、異なるグループとしてブレストの脳卒中登録所から採用される。
【0366】
試験対象患者基準
患者:
年齢>18歳;6時間未満での脳内出血の発症;6時間前にT1血液サンプルを有することができる。
【0367】
最初のNIHSSスコア>0;出血性脳卒中と適合可能なCTまたはMRIのイメージングを有する患者。
【0368】
除外基準は、外傷性脳内出血を有する患者および虚血性脳卒中を有する患者を含む。
【0369】
患者の数
出血性の症例では、20名の患者。
【0370】
倫理的な態様:
このプロジェクトは、ヘルシンキ宣言の原則および医薬品の臨床試験の実施基準(GCP-ICHE6)にしたがい行われる。これは、仏国の臨床試験に関する規則に従いヒト研究倫理委員会に承認されるため提出される。記載済みのインフォームドコンセントは、各参加者から回収される。
【0371】
データの管理およびバイオバンク:
データの投入は、software Clinsight(Capture system)により管理されるデータベースの中へ、データ管理者により行われる。バイオバンクは、ブレスト大学病院の生物遺伝資源部門(Brest University Hospital’s centre for biological resources)(CRB-Centre de Ressources Biologiques)により承認されたNFS 96-900において保存される。
【0372】
患者および対照の採用
採用センター:
患者および対照の表現型および血液の回収は、ブレストのCHRUを介して行われる。
【0373】
イメージングの特徴付けおよびデータの処置後の回収
最初の機能的なイメージング(CTまたはMRI灌流)の目的は、梗塞のコアおよびそのペナンブラをマッピングすること、ならびにMRIで3カ月目に両領域の発展を追跡することである。最初のイメージングは、血管の開通性を考慮している。あるソフトウェアは、MRIおよびCTスキャンの規格化された灌流解析を可能にする。別のソフトウェアは、MRI上での最終的な体積の推定、および最初のイメージングで評価されたペナンブラとの比較を可能にする。
【0374】
イメージングプラットフォーム:
64列(またはそれ以上)のmulti-detector CT scanまたは1.5 Tesla MRIまたは3.0 Tesla MRIスキャナーが、最初のイメージングのための造影媒体を伴い使用される。
【0375】
データ獲得の方法:
CT非造影頭部:CT脳灌流;コンピュータ断層撮影 血管造影(CTA)頭頸部;または
拡散強調イメージング(DWI)、FLAIR(FLuid Attenuated Inversion Recovery)、およびGRE(Gradient Recalled Echo)、飛行時間を使用した頭部の磁気共鳴血管造影(MRA)、DSC(Dynamic Susceptibility Contrast)を使用するMR脳灌流、動脈弓および頸部動脈のガドリニウムMRAを含む脳のMR
のいずれか。
【0376】
CTのグループでは、虚血性コアは、相対的な脳血流または脳血液量(CBV)のいずれかにより評価される。患者のMRグループでは、虚血性コア(不可逆的に損傷したとみなされる組織)が、見かけの拡散係数(ADC)の閾値に基づき評価される。
【0377】
非常に低灌流の組織が、6秒超の逆畳みこみされたシグナル強度の曲線(Tmax)の閾値の最大シグナルに対する時間に基づき、MRおよびCTのグループで評価される。DWI病変の体積またはCTのASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)が、MRIまたはCTでそれぞれ記録される。閉塞の位置(内頸動脈(ICA)、M1、M2、脳底、または閉塞なし)が記録される。
【0378】
3カ月目に、DWI、3D T2-FLAIRおよび3D T1 Gradient Echo、T2(GRE)、TOFを使用した頭部のMRAを含む脳のMR。
【0379】
イメージング後の処理
灌流イメージング(CTまたはMRI)の生のDICOMデータを、灌流ミスマッチ解析器ソフトウェアを使用して後処理される。最終的な梗塞体積を、断片化法によりT2 FLAIRで測定する。Laboratory of Medical Information Processing(LaTIM-INSERM UMR 1101 Brest)からのエンジニアが、この試験に参加する。
【配列表】