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特許7463352白金-ニッケル基合金、製品、およびそれらを製造および使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】白金-ニッケル基合金、製品、およびそれらを製造および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/04 20060101AFI20240401BHJP
   C22F 1/14 20060101ALI20240401BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C22C5/04
C22F1/14
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 694A
C22F1/00 602
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630K
C22F1/00 682
C22F1/00 675
C22F1/00 661A
C22F1/00 630F
C22F1/00 631A
C22F1/00 691C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021515527
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052176
(87)【国際公開番号】W WO2020061468
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】16/137,988
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518268189
【氏名又は名称】デリンジャー-ニー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DERINGER-NEY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・スミス
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-227189(JP,A)
【文献】特開昭61-135080(JP,A)
【文献】国際公開第03/071621(WO,A2)
【文献】特開2005-233967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/04
C22F 1/14, 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金-ニッケル基の三元系以上の合金であって、
a)前記合金の65~80質量%の白金;
b)前記合金の18~27質量%のニッケル;
c)合計で前記合金の2~7.0質量%の第3元系又はより高次の添加物の1つ以上であって、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである第3元系又はより高次の添加物の1つ以上;および
d)不可避不純物元素である残部;からなり
前記合金は、以下の少なくとも1つである:
ワイヤの長さのリニアインチあたり0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、240ksi以上の極限引張強度を維持する合金;および
時効硬化されている合金。
【請求項2】
前記白金は、前記合金の68~80質量%を形成する、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
前記第3元系又はより高次の添加物の1つ以上は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである請求項1に記載の合金。
【請求項4】
前記白金は、前記合金の68~80質量%を形成する、請求項3に記載の合金。
【請求項5】
前記合金は、Ti、V、Cl、Mn、Fe、Co、CuおよびZnを含まない、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
時効硬化されている、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
前記合金は、ワイヤの長さのリニアインチあたり0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、240ksi以上の極限引張強度を維持する、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
請求項1に記載の合金を利用した、コア及び先端の少なくとも1つを含むガイドワイヤ。
【請求項9】
白金-ニッケル基の三元系以上の合金を含む、ばね、コア又はマイクロコイルの製品であって、前記合金は:
a)前記合金の65~80質量%の白金;
b)前記合金の18~27質量%のニッケル;
c)合計で前記合金の2~7.0質量%の、第3元系又はより高次の添加物の1つ以上であって、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである第3元系又はより高次の添加物の1つ以上;および
d)不可避不純物元素である残部;からなり
前記合金を利用したコア及び/又は先端を含む、ガイドワイヤの部品である、製品。
【請求項10】
前記白金は、前記合金の70~80質量%を形成する、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記白金は、前記合金の70~75質量%を形成する、請求項9に記載の製品。
【請求項12】
前記白金は、前記合金の73~80質量%を形成する、請求項9に記載の製品。
【請求項13】
前記第3元系又はより高次の添加物の1つ以上は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである請求項9に記載の製品。
【請求項14】
前記合金は時効硬化されている、請求項9に記載の製品。
【請求項15】
前記合金は、ワイヤの長さのリニアインチあたり0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、240ksi以上の極限引張強度を維持する、請求項9に記載の製品。
【請求項16】
白金-ニッケル基の三元系以上の合金を含むテストプローブであって、前記合金は:
a)前記合金の65~80質量%の白金;
b)前記合金の18~27質量%のニッケル;
c)合計で前記合金の2~7.0質量%の第3元系又はより高次の添加物の1つ以上であって、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである第3元系又はより高次の添加物の1つ以上;および
d)不可避不純物元素である残部;からなり
前記合金は以下の少なくとも1つである、テストプローブ:
ワイヤの長さのリニアインチあたり0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、240ksi以上の極限引張強度を維持する合金;および
時効硬化されている合金。
【請求項17】
前記合金は600より大きいビッカース硬度を示す、請求項16に記載のテストプローブ。
【請求項18】
前記合金は550以上のHK50を示す、請求項16に記載のテストプローブ。
【請求項19】
前記合金は時効硬化されている、請求項16に記載のテストプローブ。
【請求項20】
前記合金は、ワイヤの長さのリニアインチあたり0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、240ksi以上の極限引張強度を維持する、請求項16に記載のテストプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白金合金組成物、白金合金組成物を含むプローブおよびワイヤ、白金合金組成物を含むマイクロコイル、それらを製造する方法、ならびに、例えば医療および電子用途においてそれらを使用する方法に関する。
【0002】
(背景)
医療用途における合金:
【0003】
先端(又はチップ:Tips)は、経皮的冠動脈形成術(又は経皮的冠動脈インターベンション:percutaneous coronary intervention)で使用されるガイドワイヤアセンブリの比較的高複雑度の部分である。これらのデバイスにおいて、放射線不透過性(radiopacity)と高い回転剛性および曲げ柔軟性とを組み合わせる必要性のバランスをとるために、テーパーワイヤコアは、ガイドワイヤの遠位端から約1インチで終端され、コイル状の貴金属ワイヤに移行することがよくある。
【0004】
先行技術は、ガイドワイヤ先端で使用されるマイクロコイルを形成するためにどの特定の金属合金組成物が特に使用されるかについて言及することを主に避けている。カテーテルガイドワイヤ先端のマイクロコイルとして使用するための前述の適用基準と一致することが知られている広く利用可能な金属材料には、以下が含まれ得る。
【0005】
1)白金89.5質量%-ニッケル10.5質量%(CowleyおよびWoodward、2011)、
【0006】
2)白金90質量%-イリジウム10質量%、および白金80質量%-イリジウム20質量%(Li、ZhangおよびCho、2013)、
【0007】
3)白金92質量%-タングステン8質量%(CowleyおよびWoodward、2011)、
【0008】
4)パリネイ(Paliney)(登録商標)1100または「Pd-Re」(KleinおよびSmith III、2008)
【0009】
血管内または埋め込み型(又は植込み型:implantable)医療機器への適用について、米国特許出願公開第2003/0018380(Craigら、2003)は、2~50質量%のPtと、5~12%のNi、11~18%のClおよびFeの追加成分とを含む合金を開示している。この材料の1つの用途は、その後血管内プロテーゼ(すなわちステント)に成形される、ストリップ、ワイヤ、またはチューブ(カニューレ)の製造である。316Lおよび同様のグレードのステンレス鋼は、血管内プロテーゼ構造の標準的な材料である。
【0010】
プローブ用途における合金:
【0011】
電子デバイスの評価において、テストツールは、「プローブ(probes)」または「ピン(pins)」と呼ばれる多数の小さな金属物体を使用して、精査中のデバイス上のテストポイントに接続される。プローブは、カンチレバープローブ、コブラプローブ、垂直プローブ、ポゴプローブアセンブリコンポーネントなどの形態をとり得る。プローブは、「プローブカード」と呼ばれる、テストポイントに合う(又は適合する:matching)固定位置のアレイ内に配置されることがよくある。
【0012】
より小さなプローブに見られるような耐摩耗性および不活性(又は貴金属性:nobility)が望まれる、より大きな断面のテストプローブも存在する。これらの場合、固体の貴金属合金構造はかなり高価になる。これらの用途において、本開示の貴金属合金は、非貴金属合金「シャフト」に取り付けることができ、それにより、固体貴金属合金の電気接触特性を有するが低コストでプローブを形成し得る。
【0013】
米国特許第8183877号(Tanaka、2012)では、Pt基の(又はPtベースの:based on Pt)プローブ材料が開示されている。Ni、W、Irおよび/またはCoを含む様々な二元系Pt合金組成物が、70~95質量%の範囲の白金含有量で開示されている。この特許は、合金の20~30質量%のNiを含み、ビッカース微小硬度(HV)が300~600である、PtおよびNiの二元系合金を開示している。この特許は、二元系Ir-Rhの他の材料も開示している。HV600を超える「過度に硬い」材料は、開示されている全ての二元材料系で加工する(process)のが困難になることに特に注意されたい。比較のために、ASM金属ハンドブックデスクエディション(「冶金用語集と工学表(Glossary of Metallurgical Terms and Engineering Tables)」、1985)は、特許請求の範囲の硬度範囲HV300~600が極限引張強度(ultimate tensile strengths)138~303ksiの範囲とほぼ同等であることを示している。前述の硬度範囲のプローブは米国特許第8183877号(Tanaka、2012)によって開示されているが、参照の白金ニッケル合金の実施形態は、HV300~500の硬度を達成することのみが報告されていることに注意すべきである。前述の白金合金組成物はすべて、鍛造硬化性(wrought hardenable)であるようにのみ見え、時効硬化性(age hardenability)に関する教示はない。
【0014】
他の用途では、白金、ニッケル、および他の成分を含む微細金属合金フィルムおよびワイヤが、ひずみゲージアセンブリの感知要素として機能することが知られている。ひずみゲージユーザーズハンドブックでは、さまざまな組成の白金合金フィラメントの用途について説明されている(HannahおよびReed、1992)。参照されている合金には白金とニッケルの両方が含まれているが、ニッケルは二元系合金に10質量%未満の低レベルで存在する。タングステンも、10質量%未満のレベルで白金への合金添加物として個別に参照される。Tong、GuoおよびChenは、Platinum Metals Reviewひずみゲージフィラメント用白金基材料への2つの個別の寄稿で報告している(TongおよびGuo、1994;Guo、TongおよびChen、1997)。これらには、最大6つの成分を含む合金が含まれる。これらの中には、10質量%未満のNi、7.5~27質量%のW、7%未満のRe、1質量%未満のCr、0.2%未満のY、45%のPd、10%のMo、および/または20%のIrを有する様々な白金合金が含まれる。前述の白金合金組成物は、鍛造硬化性のみであり、従来の開示は、これらのひずみゲージ材料のいずれの時効硬化性も教示していない。
【0015】
別の例では、PtおよびNiの合金は、Pt中の0.25~2質量%のNiの特許請求の範囲の組成範囲に加えて、ガラス加工装置について米国特許第2361578号(Vilensky、1944)で参照された。この特許は、Niが約5質量%を超える組成でのPt-Niの不十分な(又は悪い:poor)加工性について言及しており、合金は脆くなり、低温状態では変形できないと述べている。したがって、室温での加工性を維持する、このレベルを実質的に超えるNi含有量の範囲を見つけることは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0016】
先に論じたアプローチは、白金中のニッケルが12質量%未満のレベルで最も一般的に使用され、それを超える添加は、従来、加工性の低下に関連していることを示している。このレベルを超えるニッケルを含むプラチナ合金は制限される。それらの高レベルの添加のうち、硬度レベルがHV600の材料は望ましくないと考えられる。
【0017】
一定の実装形態によれば、白金-ニッケル基の三元系以上の合金が提供され、それは、少なくとも320ksiの極限引張強度または少なくともHK50600に時効硬化することができる。この合金は、合金の約65~約80質量%の白金と;合金の約18~約27質量%のニッケルと;合計で合金の約2~約8質量%の、第3の又はそれ以上の元素の添加物(又は三元系以上の添加物:the ternary or higher additions)とを含み、第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
変形例および代替例において、ニッケルは、合金の約19~約25質量%で存在し、そして全ての第3の又はそれ以上の元素の添加物は、合金の約2~約7質量%で存在する。他の場合、白金は合金の約73~約80質量%で存在し、ニッケルは合金の約18~約24質量%で存在し、全ての第3の又はそれ以上の元素の添加物は合金の約2~約7質量%で存在する。さらにまたは代替的に、白金は合金の約68~約73質量%で存在し、ニッケルは合金の約21~約26質量%で存在し、第3の又はそれ以上の元素の添加物は合金の約2~約7質量%で存在する。合金は、Ti、V、Cl、Mn、Fe、Co、Cu、および/またはZnを実質的に含まなくてもよい。合金は、0.1質量%以下の量のスカンジウム、イットリウムまたはランタノイド系列の元素を含み得る。合金は、ワイヤの長さのリニアインチ(linear inch)あたり約0.030インチの曲率よりも優れた真直度に焼鈍され(又は加熱され:annealed)、約240ksi以上の極限引張強度を維持する。さらにまたは代替的に、合金は、時効硬化され得、少なくとも580ヌープ(Knoop)微小硬度を有し得、および/または少なくとも320ksiの極限引張強度を有し得、および/または1.5%超の全引張伸び(又は全伸び:total tensile elongation)を有し得る。
【0019】
実装形態はまた、白金-ニッケル基の三元系以上の合金を含み得るばね、コイルまたはマイクロコイル製品を提供し、その合金は、合金の約65~約80質量%の白金と;合金の約18~約27質量%のニッケルと;合計で合金の約2~約8質量%である第3の又はそれ以上の元素の添加物とを含み、第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上または任意のそれらの組み合わせを含む。そのような実装形態において、ばね、コイルまたはマイクロコイルは、約40~約80kVのエネルギーでX線放射にさらされ得、そして医療現場で画像を作成するために使用され得る。合金は、1.5%超の全引張伸びおよび/または175ksi超の0.2%オフセット降伏強度を有し得る。製品は、製品を利用するコアおよび/または先端を含むガイドワイヤの部品(又は構成要素:component)であり得る。
【0020】
さらなる実装形態は、合金が合金の約65~約80質量%の白金と;合金の約18~約27質量%のニッケルと;合計で合金の約2~約8質量%である第3の又はそれ以上の元素の添加物とを含み、第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上または任意のそれらの組み合わせを含む、白金-ニッケル基の三元系以上の合金を備えたテストプローブを提供する。
【0021】
変形例および代替例では、プローブは、コブラプローブ、カンチレバープローブ、ポゴピンプローブ、垂直プローブ、またはMEMSプローブとして構成され得る。合金は、時効硬化され得、少なくとも600ビッカース微小硬度、および/または少なくとも320ksiの引張強度、および/または1.5%超の全引張伸びを有し得る。
【0022】
変形例および代替例において、白金-ニッケル基の三元系以上の合金を有するテストプローブを含むプローブカードが提供され得る。プローブ先端は、白金-ニッケル基の三元系以上の合金で構成され得、異種金属を含む本体に取り付けられ得る。プローブ先端は、プローブカード上に含まれ得る。
【0023】
他の実装形態によれば、白金-ニッケル基の三元系以上の合金を製造する方法は、合金の約65~約80質量%の白金と;合金の約18~約27質量%のニッケルと;合計で合金の約2~約8質量%である第3の又はそれ以上の元素の添加物とを含み、第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上または任意のそれらの組み合わせを含む合金を形成することを含む。合金は焼鈍され、焼鈍された合金はプローブ先端、ばね、コイルまたはマイクロコイルに成形され、成形された合金は最大8時間焼鈍されて時効硬化され、合金は少なくとも320ksiの極限引張強度または少なくともHK50600まで時効硬化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、その遠位先端に、本開示の合金で形成されたマイクロコイルを含み得るカテーテルガイドワイヤの図である。Bullerらから適合された画像(2013)。
図2図2は、(NashおよびSilenton、1991)から適合された、Ni-PtのASM合金状態図データベースからの二元系合金状態図を示している。
図3図3は、Pt-Niにおける構造秩序化反応に関連する最小自由エネルギーの概略図を示している。
図4図4は、Pt-Ni-W(合金2076)およびPt-Ni-Re(合金2072)等時性(isochronal)2時間時効曲線、オープンマーカーとして示した降伏強度、クローズドマーカーとして示した極限引張強度と共に単調張力での強度測定を示している。
図5図5は、Pt-Ni-W(合金2076)およびPt-Ni-Re(合金2072)の等時性2時間時効曲線、単調張力における破断伸び(又は破壊までの伸び:elongation to failure)を示している。
図6図6は、Pt-Ni-W(合金2076)およびPt-Ni-Re(合金2072)等時性2時間時効曲線、縦断面上のヌープ硬度(50gf)測定を示している。
図7図7は、Pt-Ni-W(合金2076)およびPt-Ni-Re(合金2072)の直径0.0025のワイヤコイルに適用されたコイル検査のSEM画像である。
図8図8は、96%冷間加工後の直径0.0025でのPt-Ni-Re(合金2072)の焼鈍曲線を示している。強度は円形マーカー(UTS:クローズドマーカー、YS:オープンマーカー)で示され、1インチについての(又は当たりの:over)真直度は四角のマーカーで示される。
図9図9は、線形度が高い(R=0.75)、96%冷間加工後の直径0.0025のPt-Ni-Re(合金2072)の降伏強度-真直度トレードオフの線形回帰分析を示している。垂直の実線は、基準の(reference)真直度値に対応する。
図10図10は、標準的なPt-NiおよびPt-Ir材料;Pt-Ni比較例合金;ならびに実験用Pt-Ni-Re、-Auおよび-W実験用合金からのX線放射線不透過性画像の編集である。
図11A図11A~11Bは、標準的なPt-NiおよびPt-Irならびに実験用Pt-Ni-Re、-Au、および-W実験用合金に対応する、図10からのX線放射線不透過性の結果の定量化のグラフを示す。
図11B図11A~11Bは、標準的なPt-NiおよびPt-Irならびに実験用Pt-Ni-Re、-Au、および-W実験用合金に対応する、図10からのX線放射線不透過性の結果の定量化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
本開示のPt-Ni-X組成物および物品は、高いニッケルレベルで加工可能であり、成形可能である。組成物はまた、600の高いビッカース硬度レベルに相当する303ksi超の極限引張強度の機械的特性を常に達成する。しかし、合金は、50μm(0.002インチ)未満のストリップの厚さまたはワイヤ径でも驚くべきことに冷間加工可能である。実装形態は、Pt-Ni基の三元系以上の合金、例えば、Pt-Ni-X、Pt-Ni-X-X四元系合金などを提供することができる。
【0026】
いくつかの実装形態では、Pt-Ni-X合金は、合金の約65~約80質量%、合金の約73~約80質量%、合金の約68~約73質量%、または合金の65~80質量%に及ぶ任意の整数値の範囲でPtを含み得る。
【0027】
合金は、合金の約18~約27質量%、合金の約19~約25質量%、合金の約18~約24質量%、合金の約21~約26質量%、または合金の18~27質量%に及ぶ任意の整数値の範囲でNiを含み得る。
【0028】
他の合金添加物、例えば、全ての第3の、第4の、第5の、などの合金の添加物は、合金の約2~約8質量%、合金の約2~約7質量%、または合金の2~8質量%に及ぶ任意の整数値の範囲であり得る。第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、第3の元素Reを添加した合金では、Pt-Ni-Re合金は、約21.8質量%のNiおよび約72.4質量%のPtおよび約5.8質量%のReを含み得る。別の例では、第3の又はそれ以上の元素の添加物は、合金の約2~約7質量%で存在し、Niは合金の約19~約25質量%で存在し、残部はPtである。
【0029】
白金リッチの合金では、白金は合金の約73~約80質量%で存在し得、ニッケルは合金の約18~約24質量%で存在し得、そして全ての第3の又はそれ以上の元素の添加物は合金の約2~約7質量%で存在し得る。ニッケルリッチの合金では、白金は合金の約68~約73質量%で存在し得、ニッケルは合金の約21~約26質量%で存在し得、第3の又はそれ以上の元素の添加物は合金の約2~約7質量%で存在し得る。
【0030】
いくつかの実装形態では、Pt-Ni-X合金は、Ti、V、Cl、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、例えばNiを除く第4周期の遷移金属の1つ以上を実質的に含まなくてもよい。他の実装形態では、合金は、Cuおよび/またはCoなどの前述の元素の1つ以上の合金添加物を含み得る。例えば、Cuおよび/またはCoは、四元系合金中のNiの一部を置換できる。いくつかの実装形態では、Pt-Ni-X合金は、0.1質量%以下の量のSc、Y、La系列の元素などの結晶粒微細化剤(grain refiners)を含み得る。
【0031】
他の実装形態では、Pt-Ni-X合金は、Ni:Ptが約1:2.4~1:4.5の質量比、または好ましくは約1:3.3の質量比の範囲にあるような比率でニッケルおよび白金を含み得る。第3の又はそれ以上の元素の添加物(「X」)は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Ta、または前述の2つ以上の任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。本明細書に開示される三元系以上の組成物に加えて、意図的な添加によってではなく、当業者にその発生がよく知られている不可避のトランプエレメントまたは不純物元素を通して存在する他の不特定微量元素も合金中に存在する。
【0032】
本開示のPt-Ni-X合金で形成されたワイヤの場合、合金を形成することができ、次に時効硬化にかけることができ、それは驚くべきことに著しく強いワイヤを提供することが発見された。例えば、合金は焼鈍状態で成形され得、その後、時効硬化のために熱処理され得る。所望の特性に応じて、例えば、通常は穏やかな還元雰囲気または不活性雰囲気下で、400°Fから1100°Fの温度で約0.15から8時間の範囲のそれぞれ時間および温度で、例えば炉内で加熱することによって、時効硬化を行うことができる。特定の例では、本開示の高強度合金を達成しながら、時効硬化を最大約8時間実施することができる。一例では、合金で構成されるワイヤが熱時効されるにつれて、ワイヤの強度は、約320ksi~約425ksiまで増加し得る。例えば、Pt-Ni-X合金は、少なくとも303ksiの極限引張強度、または少なくとも600ビッカース硬度まで時効硬化させることができる。さらに、時効硬化合金は、少なくとも580ヌープ微小硬度を有し得る。時効硬化合金は、1.5%超の全引張伸びを有し得る。
【0033】
Pt-Ni-X合金は、ガイドワイヤの構築において、医療機器のばね、コイルまたはマイクロコイルとして使用され得る。合金およびそれから作製された部品は、経皮的冠動脈形成術などの医療用途で使用され得る。
【0034】
本開示の実装形態はまた、電子デバイス部品のテストにおいてPt-Ni-X合金を含み得る。合金およびそれから作製された部品は、電子デバイスの評価のためのワイヤ、ピン、針、および他の要素などの形態のテスト工具の構築に使用され得る。
【0035】
医療機器用途
【0036】
ガイドワイヤは、経皮的冠動脈形成術(PCI)、ならびに他の血管内処置の過程で使用されるデバイスである。PCI中に体外から大腿動脈への経路として機能するデバイスである「イントロデューサ」を配置するには、大径のガイドワイヤが必要である。続いて、より細いガイドワイヤ(本開示に関係するタイプ)が、イントロデューサを通り、血管系を通り、そして冠動脈の開口部に通される。次に、ワイヤは、放射線不透過性色素導入のための診断用カテーテルおよびバルーン血管形成術用のガイドカテーテルの配置、ならびにその後のステント展開を容易にするために使用される。
【0037】
ガイドワイヤは、以下の主要な構成要素:シャフト、コア、先端、ジャケットおよびコーティング、からなると理解される。例えば、図1は、カテーテルガイドワイヤの図であり、その遠位先端に、本開示の合金で形成されたマイクロコイルを含み得る。画像はBullerらから適合された(2013)。シャフトは、通常、高降伏強度のステンレス鋼を含む硬い(solid)ワイヤである。通常の直径サイズは0.015インチ未満であるが、直径が0.009インチ程度のシャフトも利用できる。シャフトは、配置中にトルクを伝達し、処置中に経管的カテーテルの配置を容易にする役割を果たす。この部品では、ねじれ抵抗(Kink resistance)が重要である。コアは、シャフトの遠位端に取り付けられたテーパーの(又は先細の:tapered)金属部品で、通常は11インチ以上の長さである。コア材料にはステンレス鋼またはニチノールが使用され得る。円錐形または放物線状の研削によるコアのテーパーにより、先端が曲がりくねった(又はねじれた:tortuous)血管の解剖学的構造に一致するようになる。
【0038】
ガイドワイヤコアから遠位端または先端への移行領域、いわゆる「コアから先端への設計(core-to-tip design)」は、低剛性のステンレス鋼リボン、第2の内部ばねコイル、または他の工夫を含み得る。マイクロコイルの外径は0.009インチと同程度に小さくてもよい。さらに、PCI中の配置を容易にするために、チップアセンブリ(又は先端アセンブリ:tip assembly)は透視レベルのX線放射に対する不透明度を維持する小径のワイヤを含む必要がある。コアと先端の大部分がステンレス鋼などの放射線不透過性の低い材料を含む場合は、X線不透過性マーカーをデバイスの先端に取り付けることができる。
【0039】
ポリマーオーバーコーティングまたはジャケットを使用して、コアから先端への移行を改善し、ワイヤ先端と周囲組織との間の摩擦を低減することができる。(例えばマイクロコイル無し等の)ポリマーのみの先端を形成するために、これらのジャケットの拡張が試みられてきたが、回転と形状の安定性に影響があった。薄い親水性または疎水性コーティングを利用して、デバイスと組織の相互作用がさらに調整される。親水性コーティングは水を引き付けるため、均一な水の膜が形成され、組織との接触時の先端の潤滑性が向上する。疎水性コーティングは水をはじき、水膜の形成に依存することなく「滑りやすい」状態を維持する。
【0040】
一定の実装形態によれば、本開示のPt-Ni-X合金は、ばね、コイルまたはマイクロコイルとして形成され得る。例えば、合金は、ばね、コイルまたはマイクロコイルがガイドワイヤのコアまたは先端に配置されているカテーテルガイドワイヤなどの医療機器の構成要素であり得る。ばね、コイルまたはマイクロコイルの形で使用されるとき、本開示のPt-Ni-X合金のワイヤ径は、約20~100μmであり得る。合金は、1.5%超の全引張伸びを有し得る。
【0041】
マイクロコイルとしてのいくつかの実装形態では、本開示のPt-Ni-X合金の機械的要件は、以下を必要とし得る:
【0042】
1)材料は、生物学的経路を介してガイドワイヤを操縦(steer)するのに十分な剛性を有し、それは、弾性率に関連し、それは、好ましくは、約2500ksi超の高い値であり得る、および/または
【0043】
2)材料は変形せずにわずかにたわみ、それは(0.2%オフセット降伏強度をヤング率で除したものとして定義される)弾性範囲に関連し、たとえば、200ksi超の0.2%オフセット降伏強度を有し得る、および/または
【0044】
3)弾性範囲は、降伏応力を増加させることによって、通常は材料を約0.8%以上の加工硬化することによって、改善され、および/または
【0045】
4)材料は、アプリケーションでの脆性破壊を防ぐためのいくつかの最小限の延性を有し、破断伸びは約1.5%以上である。
【0046】
Pt-Ni-X材料は、スプールから取り上げることができるワイヤの形態であり得る。いくつかの実装形態では、材料は、ワイヤ形成システムによって、ばね、コイルおよび/またはマイクロコイルにさらに巻かれ得る。これは以下を要し得る:
【0047】
1)好ましくは、長さのリニアインチあたり約0.020~約0.025インチの曲率の真直度であり得る、真直度の公称レベル、および/または
【0048】
2)好ましくは、低いスプリングバック、0.6%の弾性範囲の同等以下であり得る、十分に制御されたスプリングバック挙動(成形時の材料応力を弾性率で除したものに相当)、および/または
【0049】
3)好ましくは、高い機械的および化学的均質性、および/または
【0050】
4)好ましくは、高い引張破断伸び、例えば、少なくとも1.5%の破断伸び。
【0051】
さらに、一定の医療機器構成要素としての用途のための本開示のPt-Ni-X合金の化学的要件は、以下を含み得る:
【0052】
1)材料は、介入型(interventional)または埋め込み型医療機器におけるその使用が有害反応を引き起こさないように、生体適合性および/または生体不活性である、および/または
【0053】
2)材料は、溶接されるアセンブリ内の構成要素と冶金学的に互換性がある、および/または
【0054】
3)材料は、高い原子番号および/または高密度の成分を使用することによって達成され得る、良好なX線透視コントラストを提供するために高い放射線不透過性を有する。
【0055】
例えば、ばね、コイルまたはマイクロコイルは、約40~約80kVのエネルギーでX線放射にさらされたときに、X線画像を生成するように構成され得る。
【0056】
本開示のPt-Ni-X合金は、以下によってガイドワイヤ先端構成要素として製造され得る:
【0057】
1)必要な直径にワイヤを延伸し(又は引き:drawing)、冷間加工を導入し、
【0058】
2)機械デバイス(すなわち、回転ワイヤの矯正(straightening))または熱処理によりワイヤを矯正し、
【0059】
3)矯正された材料からばね、コイルおよび/またはマイクロコイルを形成し(又は成形し:forming)、
【0060】
4)例えば、カテーテルガイドワイヤ内の構成要素を組み立てる。
【0061】
本開示で論じられる合金は、ガイドワイヤ構築においてそのように使用され得る。ただし、ガイドワイヤ部品のサイズおよび機械的要件のために、ばね/コイル/マイクロコイルを成形するための要件(低いスプリングバックを提供するための低い成形応力)と、互換性のない高い降伏応力を要する部品の機能との間には根本的な矛盾がある。これは、ばねに成形され得るワイヤの強度を制限する。これは、二元系白金ニッケル合金の従来の使用法の場合である。米国特許第8183877号(Tanaka、2012)は、白金ニッケル合金が、溝形状を通して回転し、さまざまな温度で延伸し、ダイスを通して延伸して円形ワイヤにすることによって加工され得ることを示している。材料の加工の蓄積は、強度および/または硬度を提供するために使用される;材料は「加工硬化」または「鍛造硬化」されている。
【0062】
前述の矛盾を考慮して、本開示のPt-Ni-X合金は、時効硬化され得ることが発見された。このプロセスは、望ましい機械的特性と望ましい化学的特性の両方を提供する。特に、本明細書に記載されるように、ばねを含む材料の強度は、時効硬化を通して著しく増加し得る。いくつかの実装形態では、時効硬化された本開示のPt-Ni-X合金を含むばね、コイルおよび/またはマイクロコイルの製造は、以下を含む:
【0063】
1)必要な直径にワイヤを延伸し、冷間加工を導入し;
【0064】
2)材料を焼鈍して、低い成形応力/低いスプリングバック、高いワイヤ真直度、および高い破断伸びをワイヤに提供し;
【0065】
3)ばね/コイル/マイクロコイルを製造し、その際、焼鈍後のより低い降伏強度からもたらされる低いスプリングバックのために、改善された収率を実現し;
【0066】
4)降伏強度と弾性範囲を高めるために、その後の熱処理を介して材料を時効硬化させ;
【0067】
5)カテーテルガイドワイヤまたは他の用途での高降伏応力部品の組み立てと展開。
【0068】
本明細書に開示されるPt-Ni-X合金が有する不活性、生体適合性、耐摩耗性および弾性の組み合わせは、他の血管医療デバイスにおけるその適用をさらに可能にし得る。一例として、動脈および静脈の血餅フィルタが含まれる場合があり、それは通常、血流をフィルタリングするバスケットのような構造に形成されたワイヤで構成される。別の例は、塞栓コイルの形態であり、ワイヤのコイルが血管動脈瘤の部位に導入されて、必要な塞栓を形成し、したがって、その後の破裂を防ぐ。本開示のPt-Ni-X合金が非常に細かくて柔軟なワイヤ、ばね、コイルおよび/またはマイクロコイルに成形される能力は、動脈瘤の容積を効率的に充填するための重要な特徴である。さらなる実装形態は、血管結紮(ligating)フィラメントまたは結紮クリップとしてであってもよい。
【0069】
さらに、一定の整形外科、筋骨格、顎顔面および/または頭蓋顔面のインプラントおよびデバイスは、本開示の合金を含むプレート、ワイヤまたは作製された(fabricated)部品から利益を得ることができる。特定の用途では、他の整形外科用インプラント材料と比較して白金基合金の弾性率が高いため、応力遮蔽(stress shielding)のリスクが生じることはない。適切な用途の例には、胸骨縫合、再建プレートスクリューアセンブリの部品、および頭蓋再建メッシュが含まれ得る。あるいは、本開示の合金は、X線不透過性マーカーとして他のタイプの整形外科医療デバイスに使用され得る。
【0070】
半導体テスト(又は試験:test)における用途
【0071】
テストプローブ内の合金:集積回路、パッケージングおよびアセンブリを含む、テストを必要とするすべての電気デバイスに共通するのは、部品、トランジスタおよび/または電力密度の同時増加を伴う、物理的形態因子および寸法の経時的な一定の減少である。そのようなプローブの機能は、電気インパルスおよび信号をテスト機器の一部からデバイス上のテストポイントに運ぶことである。
【0072】
電子デバイス上のテストポイントに割り当てられるパッド面積が減少するため、プローブは、より小さな断面を有する必要があり得、それでも、タッチダウン後の適切な電気的連続性を達成するために必要な所望の最小接触力(または「グラム重量(gram force)」)を達成する必要があり得る。変位は、垂直変位によって、先端の横方向変位の計画的長さもしくは「スクラブ長さ」によって、または金、銅、アルミニウムもしくは同様のパッド材料に対する同様の手段によって制御することができる。さらに、デバイスのテストポイント上に存在する強粘着性の電気絶縁酸化物を物理的に破壊して、電気的導通を確保しなければならない場合がある。このような状況において、プローブ合金は、酸化物を貫通し、すり減りによる摩耗(又はアブレシブ摩耗:wear by abration)に耐えるために高い硬度を備えていなければならない。電子パッケージングの評価の場合、先端は、さまざまな組成の鉛基のまたは鉛フリーのはんだとそれらのそれぞれの表面酸化物を含むはんだバンプ上に置かれてもよく、または載せられて(cradle)もよい。それぞれの集積回路または電子機器パッケージが適切なテストを受けていることを確認するために、テスト下のデバイスへのタッチダウン中に付けられたマークは、その後、品質管理の手段として使用される。
【0073】
いくつかの用途では、テストに使用されるプローブの耐摩耗性が最も重要である。テストプローブからの材料の除去は、アブレシブ摩耗(abrasive wear)を介して発生し得る。アブレシブモード(abrasive mode)での摩耗の場合、テストプローブの先端は金属の微粉またはフレークの形でゆっくりと摩耗する。これは、集積回路または電子パッケージ上のテストパッドとの相互作用、すり減りによって接触面から汚染物質を洗浄または除去するために使用されるデバイス、およびその他の機械的相互作用によって発生する。
【0074】
同じ用途および他の用途のいくつかでは、テストに使用されるプローブの降伏強度および極限引張強度が最も重要である。これは、「オーバードライブ」と呼ばれる、接触領域でスクラブまたはクリーニング動作を実現するためにプローブに与えられたたわみ(deflection)によるものである。
【0075】
いくつかの用途では、テストに使用されるプローブの環境相互作用に対する耐性が非常に重要である。これらの環境相互作用の例には、プローブ温度の上昇が高テスト電流に起因するときの変色または酸化に対する耐性が含まれる。これらの用途では、白金とその合金のよく知られた不活性の性質が、環境影響に対して必要な耐性を提供する。
【0076】
本開示のPt-Ni-X合金は、テストプローブに含まれ得る。例えば、プローブは、コブラプローブ、カンチレバープローブ、ポゴピンプローブ、垂直プローブ、またはMEMS(微小電気機械システム)プローブとして構成され得る。プローブは、さらに、プローブカードの構成要素(又は部品:component)であり得る。プローブは異種金属を含む本体に取り付けられてもよく、それはプローブカードの構成要素であり得る。電子試験装置のプローブまたはプローブ構成要素としてのいくつかの用途では、Pt-Ni-X合金は、以下の機械的属性を有することが望まれる場合がある。
【0077】
1)少なくとも600のビッカース微小硬度;
【0078】
2)約320ksiから約425ksiまでの高い極限引張強度;
【0079】
3)破断までの少なくとも1.5%の全伸びで示される、成形に対応するのに十分な延性;および/または
【0080】
いくつかの実装形態では、合金は、時効硬化されてもよく、前述の機械的属性を有し得る。例えば、合金は、少なくとも320ksiの引張強度であり得、および/または少なくとも600のビッカース微小硬度を有し得、および/または1.5%超の全引張伸びを有し得る。
【0081】
テスト装置のプローブまたは構成要素としての製造可能性を確保するために、いくつかの用途では、本発明のPt-Ni-X合金は、以下の属性のうちの1つ以上を有することが要求され得る。
【0082】
1)直径約15μm(0.00059インチ)まで延伸される(drawn)能力;
【0083】
2)ワイヤ形態において、長さのリニアインチあたり約0.002インチの曲率の高い真直度;および/または
【0084】
3)ロッド形態における、コンピューター数値制御ねじ加工、表面研削、放電加工、または他の同様の技術などの技術によるさまざまな形状への機械加工性。
【0085】
前述のように、電子デバイス用のテストプローブの性能は、いくつかの場合では、金属プローブとテスト基板との環境相互作用によって支配される。このため、本開示のPt-Ni-X合金は、白金と白金族金属との組み合わせとして定義される、約50質量%超の貴金属を含むことが望ましいであろう。その結果、大気汚染(すなわち、酸化、硫化など)、およびアプリケーションでプローブがさらされる可能性のあるさまざまなプロセス剤および汚染物質との反応に対する合金の耐性が向上する。
【0086】
合金およびそれらの挙動
【0087】
特定の理論に拘束されることを望まないが、本開示のPt-Ni-X合金の時効硬化は、時効硬化熱処理中に秩序化反応を受ける材料に起因する可能性があると考えられている。秩序化反応は、合金に、増加した強度を提供し得、より低いレベルの反応性に寄与し得、製品を生体適合性にし得る。名目上等原子のPtNi(原子ベースで50%Pt-50%Ni)である材料は、図2に示すように、合金を時効硬化させるのに役立ち得る秩序反応を受ける可能性がある。特に、図2は、Nash and Singleton(1991)から適合された、Ni-Pt用のASM合金状態図データベースからの二元系合金状態図を示す。PtNi相を形成するために関心のある時効硬化/秩序化応答を提供することができる基本組成範囲は、Dahmaniらによると、少なくとも約42原子%のPtから最大約58原子%のPtを含み、残りはNi(または約70.7原子%のPtから最大約82.1原子%のPtを含み、残りはNi)である(Dahmani、Cadeville、およびPierron-Bohnes、1985)。
【0088】
NiPt秩序化反応に関連する構造および動力学は、数十年にわたって研究されてきた。例えば、Greenholzらの研究では、X線回折を使用してPt-Ni合金の秩序化を分析している(Greenholz、Kidron、およびShimony、1972)が、それらの実験では秩序化反応は数十時間にわたって進行する;例えば900°Fで18~120時間。Greenbergの研究(Greenbergら、2003)では、等原子NiPtの応力-ひずみ挙動が、80時間までの一連の時効硬化処理にわたって評価さた。米国特許第8183877号(Tanaka、2012)で報告されているものとほぼ同等の極限引張強度が見出され、有効最大値は320ksiであった。
【0089】
本開示のPt-Ni-X合金中の白金および白金族金属の割合は高く、比例して高い不活性を示しているが、前述の秩序化反応は、非貴金属成分の化学活性をさらに低下させる特異な(unique)可能性を有し得る。特定の理論に拘束されることを望まないが、望ましくない化学作用物質(すなわち、Pt-Ni-X中のNi原子)は、秩序状態でそれらの隣接原子により強く結合し、したがって、周囲の環境と反応する可能性が低いと考えられる。例えば、触媒作用に使用される秩序化されたPt-Co構造は、秩序化された構成でより高い化学的安定性を示し、Wang(Wangら、2013)による「秩序構造における500回の潜在的なサイクル後の活性化の最小損失」として明らかであった。自由エネルギーのこの最小値は、図3のように概略的に表示され、それは、Pt-Niの構造秩序化反応に関連する自由エネルギーの最小値の概略図を示している。この挙動が生物学的環境でPt-Ni-Xに変換される場合、硬化/秩序化されたPt-Ni-X合金のNi成分、ならびにいずれの非貴金属の第3の及びそれ以上の元素成分のイオン放出は、無秩序状態の同じ合金と比較して減少し得る。
【0090】
前述の機械的および化学的要件に従って、一連の実験材料が原子組成に基づいて設計された。特定の組成とそれらの観察された加工性を表1に示す。NiとPtの両方に溶解度を有する高原子番号/高密度の元素が優先された。第3の添加物として評価された元素には、Ag、Au、Pd、Re、W、Ir、TaおよびRuが含まれていた。
【0091】
米国特許第8183877号(Tanaka、2012)と一致する二元構成の合金、76.87質量%Pt-23.13質量%Niも作製された。これは、表1において「CE」と示される比較例を構成する。比較例は、本開示の番号付けされた三元系以上の合金がそうであったように、ロッドおよびワイヤとして加工された。米国特許第8183877号(Tanaka、2012)が示すように、比較例はロッド/ワイヤの形態に加工可能であることがわかった。
【0092】
Pt-Ni-AgまたはPt-Ni-Ag-X-合金2061~2069のすべての組成物は、十分な品質のロッド形態またはワイヤ形態に加工可能ではなかった。特定の理論に拘束されることを望まないが、この不十分な加工性は、Pt-Niを含むマトリックスからのAgの相分離に起因すると考えられる。結果として得られる微細構造は、加工硬化特性が大きく異なる2つの相を含み得るため、材料の変形に対する耐性が低下し得る。これらの結果は、Pt-Ni-Xへの添加としてAgを避けるべきであることを示している。
【0093】
表1に示すように、合金2074および2075(Pt-Ni-Au)は、疲労型の全体的な亀裂による初期降伏中に破断する(又は故障する:fail)ことが観察されたため、加工できないことがさらに観察された。これは、結果として加工性が不十分であるため、Pt-Ni-Xに大量のAuを添加することは合理的ではないことを示唆している。Au含有量によるこの予期せぬ加工性の低下は、二元系合金状態図だけに基づいて予測されたわけではなかった可能性がある。
【0094】
【表1】
【0095】
合金2095は、ロータリーハンマースエージング中に中間直径で破壊することが観察され、合金化された材料は、制限された塑性変形が可能であることを示唆し、さらに約5.6質量%未満のTaの添加が加工性を改善し得ることを示唆している。Ta含有量のこの予想外の制限は、二元系合金状態図だけに基づいて予測されたわけではなかった。
【0096】
合金2073、2078、2081および2087は、中間延伸を通して生き残らず、中心破裂(center bursting)の結果として明らかに破断した。これは、これらの材料の変形中に急激な加工硬化挙動が発生することを示唆している可能性があり、7質量%超のReとWのみの添加は加工できないと考えられる。
【0097】
組成物の残りは、ワイヤの形態に延伸することに成功した。
【0098】
合金2072および2076から直径0.0025までのワイヤの延伸に続いて、得られた材料に対して広範な実験を行った。等時性時効曲線(2時間の一定時間)は、ある範囲の温度で材料をエージング(又は時効:aging)することによって作製された。図4に観測された材料強度を、図5に伸びを示す。図4は、Pt-Ni-W(合金2076)とPt-Ni-Re(合金2072)の等時性2時間時効曲線、降伏強度がオープンマーカーとして示され、極限引張強度はクローズドマーカーで示される単調張力における強度測定を示す。単調張力の強度値は、図4で「CE」と略されるPt-Niの比較例でも取得された。三元系合金(Pt-Ni-ReおよびPt-Ni-W合金)において約250°F~900°Fの時効温度で、350ksi超の非常に高い材料の極限引張強度に達することが観察される。これは、同じ時効処理で305ksiの最大極限引張強度を達成した二元系比較例合金の比較的低い極限引張強度とは対照的である。比較例で観察されたこの最大強度は、米国特許第8183877号(Tanaka、2012)によってクレームされている303ksi強度値(最大HV600硬度に相当)に非常に近い。図5は、Pt-Ni-W(合金2076)とPt-Ni-Re(合金2072)の等時性2時間時効曲線、単調張力での破断伸びを示す。伸びに関しては、冷間加工された、ピークに近い時効処理がされた材料(<1000°F未満で2時間)は、破断伸びが1.5%超という基準を満たす。また、微小硬度の測定は、サンプルを2成分(又は2液型:2-part)エポキシにマウントし、断面を鏡面仕上げに研磨し、サンプルごとに平均5つのインデントを使用して50gfの負荷でヌープ硬度圧子システムを利用することによって実行された。図6に示す微小硬度の測定値は、Pt-Ni-W(合金2076)とPt-Ni-Re(合金2072)の等時性2時間時効曲線、縦断面のヌープ硬度(50gf)の測定値を示す。冷間加工および最大時効状態の硬度値はHK50550を超えており、多くはHK50600を超えている。
【0099】
高強度は、古典的に、高硬度および/または微小硬度と関連している。なぜなら、両方とも、基本的に、塑性変形に対する材料の耐性に関係しているからである。驚くべきことに、これはいくつかのPt-Ni-X材料には当てはまらないようである。これは、微小硬度(図6)と極限引張強度(図4)の傾向を比較することで観察でき、どちらも90%の冷間断面減少(a cold reduction in area)の後である。図4から明らかなように、約400~625°Fで2時間の時効硬化処理を行った合金2076により、最大の極限引張強度が達成され、約365~385ksiの大きさである。対照的に、図6は、約900~950°Fで2時間の非常に異なる時効硬化処理で、合金2076によりヌープ微小硬度の最大値が達成されることを示し、約HK640~650の大きさに達する。
【0100】
この評価からの別の驚くべき結果は、本開示の組成物においてわずか2時間で達成できる劇的な時効硬化であるが、文献は、結晶学的秩序化が起こるために数十時間のエージングが必要であることを示唆している(Greenholz、KidronおよびShimony、1972)。
【0101】
直径0.0025の最終サイズの合金2072および2076の両方が、走査型電子顕微鏡による表面品質の評価を受けた。「コイル検査」法を利用した。このプロトコルでは、材料がらせん状に巻かれ、それによって表面の引張応力が劇的に増加し、検査中任意の(any)欠陥が拡大する。らせん形状により、検査(又は再調査:review)に利用できるワイヤの長さも長くなる。コイル状にした後、サンプルは、走査型電子顕微鏡を使用して、表面の欠陥(継ぎ目(semas)、スライバー(slivers)、ドローライン(draw lines)など)の痕跡が調査された。材料はこの検査を通り、Pt-Ni-W(合金2076)及びPt-Ni-Re(合金2072)の直径0.0025のワイヤコイルに適用されたコイル検査のSEM画像である図7に示されているように、不十分な加工性による欠陥の兆候は観察されなかった。およびPt-Ni-Re(合金2072)。これは、米国特許第8183877号(Tanaka、2012)の教示とは対照的に、600超の驚くほど高いレベルのビッカース微小硬度での材料の製造可能性を裏付ける。
【0102】
真直度(ワイヤ長さの1リニアインチにわたる曲率のインチとして表される)と降伏強度および極限引張強度との両方の曲線が構築された。図8は、96%の冷間加工後の直径0.0025でのPt-Ni-Re(合金2072)の焼鈍曲線を示す。強度は円形マーカー(UTS:クローズドマーカー、YS:オープンマーカー)で示され、1インチを超える真直度は正方形のマーカーで示される。水平線のセットは、所望の真直度の基準である。図9に示すように、単調張力における強度と材料真直度との間に逆線形関係が観察された。図9は、線形性の程度が高い(R=0.75)場合の降伏強度と真直度のトレードオフの線形回帰分析を示す。垂直の実線は、基準真直度値に対応する。この材料は、約240ksi超または約250ksi超の高い極限引張強度、および約200ksiなどの、175ksi超の高い0.2%オフセット降伏応力を維持しながら、所望の製品真直度を達成することができる。いくつかの実装形態では、合金は、ワイヤの長さのリニアインチあたり約0.030インチの曲率よりも良好な真直度に焼鈍され、約240ksi以上の極限引張強度を維持する。
【0103】
本開示の合金のこれらの所望の焼鈍強度は、比較例の高度に冷間加工された特性と大きさが類似している。この密接な関係は、二元系Pt-Ni材料が真直度と高強度を同時に達成できない可能性があることを強く示唆している。
【0104】
胸部X線で一般的に使用されるエネルギーの範囲(45~75kV)でのX線放射線不透過性の測定は、89.5質量%Pt-10.5質量%Ni、比較例である90質量%Pt-10質量%Ir、およびPt-Ni-X合金2072~2076のサンプルで実施された。X線イメージングは、人間の胸部腔をシミュレートすることを意図したアルミニウムプレートまたは「ファントム」の上で実行された。前述のすべての組成物からキャプチャされた一連の画像を図10に示し、それは、標準のPt-NiおよびPt-Irと実験用のPt-Ni-Re、-Au、および-Wの実験用合金からのX線放射線不透過性画像をまとめている。X線画像の取得に続いて、画像分析を使用して放射線不透過性の定量化を行った。グレースケール値(0=黒、255=白)は、選択した線に沿った各画像の各材料とそれに隣接するファントムに対して取得された。次に、これらの差を、89.5質量%Pt-10.5質量%Ni画像に正規化された値とともに、加速電圧の単純な関数としてプロットした。定量化された結果を図10および11に示す。図11A-Bは、標準の89.5質量%Pt-10.5質量%Ni、比較例のPt-Irおよび実験用Pt-Ni-Re、-Au、および-W実験用合金に対応する図10のX線放射線不透過性結果の定量化のグラフを示す。グレースケール値の差が大きいほど、X線の減衰が大きく、したがって放射線不透過性が高いことを示す。ばね、コイルまたはマイクロコイルとしての用途には、基準の89.5質量%Pt-10.5質量%Ni材料と名目上(nominally)類似したX線放射線不透過性が望ましい。
【0105】
図10および11A~11Bは、すべてのテストされた材料の放射線不透過性が非常に類似しており、すべて基準の89.5質量%Pt-10.5質量%Ni材料の約15%以内であることを示唆している。これは、驚くべきことに、X線放射線不透過性を実質的に減少させると予想される、本開示のPt-Ni-X組成物中のNiの含有量が相対的に高いこと、に起因する。当然のことながら、実験材料、および基準の89.5質量%Pt-10.5質量%Niは、55kV以上のすべての電圧で、90質量%Pt-10質量%Irよりも実質的に低いX線放射線不透過性を示し、これはNiと比較してIrの密度と原子番号が相対的に高いことに起因する。
【0106】
医療用途の場合、生体適合性を維持することが重要である。したがって、これらの用途において、合金には、例えば鉛、水銀、カドミウム、水銀、ビスマス、スズ、マンガン、アルミニウム、アンチモン、オスミウムおよびアクチニド系金属など、生体適合性がない可能性のある金属が本質的に含まれていない必要がある。さらに、製造全体を通じて生体適合性を維持するために、六価クロム(Cr6+)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸エステル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)およびフタル酸ジイソブチル(DIBP)などのRoHSの好ましくない材料は、本開示のPt-Ni-X合金の医療グレードバージョンの製造には使用すべきではない。
【0107】
「実質的に含まない」という用語は、そうでなければ合金の材料特性に影響を及ぼさない微量の成分を包含する。上記の説明および図面から、示され、説明される特定の実施形態は、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが当業者によって理解されるであろう。当業者は、本発明がその思想または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具体化され得ることを認識するであろう。特定の実施形態の詳細への言及は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
少なくとも320ksiの極限引張強度または少なくともHK 50 600まで時効硬化可能であり、
a)前記合金の約65~約80質量%の白金;
b)前記合金の約18~約27質量%のニッケル;および
c)合計で前記合金の約2~約8質量%の第3の又はそれ以上の元素の添加物を含み、前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである、白金-ニッケル基の三元系以上の合金。
(態様2)
ニッケルは前記合金の約19~約25質量%で存在し、全ての前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、前記合金の約2~約7質量%で存在する、態様1に記載の合金。
(態様3)
前記白金は、前記合金の約73~約80質量%で存在し、前記ニッケルは前記合金の約18~約24質量%で存在し、全ての前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、前記合金の約2~約7質量%で存在する、態様1に記載の合金。
(態様4)
前記白金は、前記合金の約68~約73質量%で存在し、前記ニッケルは前記合金の約21~約26質量%で存在し、全ての前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、前記合金の約2~約7質量%で存在する、態様1に記載の合金。
(態様5)
前記合金は、Ti、V、Cl、Mn、Fe、Co、Cuおよび/またはZnを実質的に含まない、態様1に記載の合金。
(態様6)
前記合金は、0.1質量%以下の量のスカンジウム、イットリウムまたはランタニドを含む、態様1に記載の合金。
(態様7)
前記合金は、ワイヤの長さのリニアインチあたり約0.030インチの曲率以上の真直度に焼鈍され、約240ksi以上の極限引張強度を維持する、態様1に記載の合金。
(態様8)
前記合金は、時効硬化され、少なくとも580ヌープの微小硬度を有する、態様1に記載の合金。
(態様9)
前記合金は、時効硬化し、少なくとも320ksiの極限引張強度を有する、態様1に記載の合金。
(態様10)
前記合金は、時効硬化し、1.5%超の全引張伸びを有する、態様1に記載の合金。
(態様11)
白金-ニッケル基の三元系以上の合金を含むばね、コイルまたはマイクロコイル製品であって、前記合金は:
a)前記合金の約65~約80質量%の白金;
b)前記合金の約18~約27質量%のニッケル;および
c)前記合金の合計約2~約8質量%の第3の又はそれ以上の元素の添加物を含み、前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである、製品。
(態様12)
前記ばね、コイルまたはマイクロコイルは、約40~約80kVのエネルギーでX線放射にさらされ、医療現場で画像を生成するのに使用される、態様11に記載の製品。
(態様13)
前記合金は、1.5%超の全引張伸びを有する、態様11に記載の製品。
(態様14)
前記合金は、175ksi超の0.2%オフセット降伏強度を有する、態様11に記載の製品。
(態様15)
前記製品は、前記製品を利用するコアおよび/または先端を含むガイドワイヤの部品である、態様11に記載の製品。
(態様16)
白金-ニッケル基の三元系以上の合金を含むテストプローブであって、前記合金は:
a)前記合金の約65~約80質量%の白金;
b)前記合金の約18~約27質量%のニッケル;および
c)前記合金の合計約2~約8質量%の第3の又はそれ以上の元素の添加物を含み、前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである、プローブ。
(態様17)
前記プローブは、コブラプローブ、カンチレバープローブ、ポゴピンプローブ、垂直プローブまたはMEMSプローブとして構成される、態様16に記載のテストプローブ。
(態様18)
前記合金は、時効硬化し、少なくとも600のビッカース微小硬度を有する、態様16に記載のテストプローブ。
(態様19)
前記合金は、時効硬化し、少なくとも320ksiの引張強度を有する、態様16に記載のテストプローブ。
(態様20)
前記合金は、時効硬化し、1.5%超の全引張伸びを有する、態様16に記載のテストプローブ。
(態様21)
態様16に記載のテストプローブを含むプローブカード。
(態様22)
前記白金-ニッケル基の三元系以上の合金からなる先端が、異種金属を含む本体に取り付けられている、態様16に記載のテストプローブ。
(態様23)
態様22に記載のテストプローブを含むプローブカード。
(態様24)
a)以下のi)~iii)を含む合金を形成する工程;
i)前記合金の約65~約80質量%の白金;
ii)前記合金の約18~約27質量%のニッケル;および
iii)合計で、前記合金の約2~約8質量%の第3の又はそれ以上の元素の添加物であって、前記第3の又はそれ以上の元素の添加物は、Ir、Pd、Rh、Ru、Nb、Mo、Re、W、Taの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである、添加物;
b)前記合金を焼鈍する工程;
c)焼鈍した前記合金をプローブチップ、スプリング、コイルまたはマイクロコイルに成形する工程;および
d)成形し、焼鈍した前記合金を、最大8時間、時効硬化させる工程を含み、
前記合金は、少なくとも320ksiの極限引張強度または少なくともHK 50 600に時効硬化可能である、白金-ニッケル基の三元系以上の合金の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B