(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
F16K31/06 305J
(21)【出願番号】P 2021518366
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2020018108
(87)【国際公開番号】W WO2020226101
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019088205
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】塩井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】岩永 弘行
(72)【発明者】
【氏名】笠置 好成
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214906(JP,A)
【文献】特開平9-4735(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044759(WO,A1)
【文献】実開昭64-51765(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0061959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力によりステータに接離するプランジャによりロッドを移動させて弁を開閉する弁体を往復移動させるソレノイドバルブであって、
前記プランジャには凹部が形成されており、前記凹部には前記プランジャと前記弁体との間に配置される前記ロッドの端部が嵌入されており、
前記ロッドと前記凹部との間には、該凹部内の空間と前記プランジャの外部空間とを連通する連通路が形成されており
、
前記凹部の縁部は、前記凹部の中心部に向けて傾斜するテーパ面となっているソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記連通路は前記ロッドの切欠きにより区画されている請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記切欠きは周方向に等配されている請求項2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記ロッドの嵌入側端部は先細り形状を成している請求項1ないし3のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記ロッドには、前記プランジャに接触する大径部が形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記連通路は、前記凹部の前記テーパ面と前記ロッドの切欠きとにより区画されている請求項
1ないし5のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧回路の油圧制御に用いられるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧制御用のソレノイドバルブとして、スリーブに収納された円柱状のスプールを有するスプール弁部と、ステータ、プランジャおよびコイルが樹脂により覆われたソレノイド成形体を収容するソレノイドケースを有しスプールを軸方向に駆動させるソレノイド部と、を具備し、ポンプやアキュムレータ等の圧力源と供給先との間に配置され、スプールを駆動させることにより圧力や流量が調整された流体を供給先に供給できるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているソレノイドバルブは、プランジャにおけるスプール側の端部には、軸方向に向けて延びる凹部が形成されており、該凹部にロッドの端部が嵌入接続されている。コイルに通電して励磁すると、プランジャおよびロッドがステータに引き寄せられてスプールを軸方向に移動させることができ、スリーブに形成された各種ポートの連通状態を切り換えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-203991号公報(第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のソレノイドバルブにあっては、プランジャ自身の容積を大きくして磁束を効率的に作用させることで小型とすることができるものの、プランジャの凹部にロッドの端部を嵌入した際に、凹部に空気が圧縮された状態で残存することとなる。これにより、温度の上昇により凹部の圧縮された空気が膨張してロッドが凹部から抜け出し方向に移動してしまう虞があるだけでなく、液中で用いる場合には凹部に残存した空気によって浮力が生じ、ソレノイドバルブの所期の精度が得られない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、小型かつ精度が高いソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドバルブは、
電磁力によりステータに接離するプランジャによりロッドを移動させて弁を開閉する弁体を往復移動させるソレノイドバルブであって、
前記プランジャには凹部が形成されており、前記凹部には前記プランジャと前記弁体との間に配置される前記ロッドの端部が嵌入されており、
前記ロッドと前記凹部との間には、該凹部内の空間と前記プランジャの外部空間とを連通する連通路が形成されている。
これによれば、連通路により凹部内の空間がプランジャの外部空間と連通するので、凹部とロッドとの間に組み立て雰囲気の流体が残存することを回避でき、プランジャを小型にしつつ動作の精度を高めることができる。
【0008】
前記連通路は前記ロッドの切欠きにより区画されていてもよい。
これによれば、プランジャにおける磁束の有効領域をバランスよく形成できる。
【0009】
前記切欠きは周方向に等配されていてもよい。
これによれば、凹部に流体を流出入させやすく、組立て雰囲気の流体が凹部内に残存しにくい。
【0010】
前記ロッドの嵌入側端部は先細り形状を成していてもよい。
これによれば、ロッドを凹部に嵌入させやすく、且つ凹部とロッドとの間の空間とプランジャの外部空間とで流体を円滑に移動させることができる。
【0011】
前記ロッドには、前記プランジャに接触する大径部が形成されていてもよい。
これによれば、大径部がプランジャの端面に接触することで凹部に対するロッドの嵌入深度を決定できる。
【0012】
前記凹部の縁部は、前記凹部の中心部に向けて傾斜するテーパ面となっていてもよい。
これによれば、テーパ面に沿って凹部内にロッドを嵌入させやすい。
【0013】
前記連通路は、前記凹部の前記テーパ面と前記ロッドの切欠きとにより区画されていてもよい。
これによれば、ロッドの切欠きとプランジャのテーパ面により連通路が区画されるので、切欠きとテーパ面との大きさを小さくすることができ、ロッドとプランジャの強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1におけるソレノイドバルブを示す斜視図である。
【
図2】実施例1におけるソレノイドバルブを示す断面図である。尚、説明の便宜上、スプールおよびロッドについては側面図で図示する。
【
図3】(a)は、実施例1におけるロッドの構造を示す側面図であり、(b)は、ロッドの凸部を軸方向から見た図である。
【
図4】実施例1におけるロッドの変形例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2におけるソレノイドバルブを示す断面図である。尚、説明の便宜上、スプールおよびロッドについては側面図で図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るソレノイドバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係るソレノイドバルブにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図2の紙面右側をソレノイドバルブの軸方向一端側とし、
図2の紙面左側をソレノイドバルブの軸方向他端側として説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施例のソレノイドバルブ1は、スプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば車両の自動変速機等の油圧により制御される装置に用いられるものである。尚、ソレノイドバルブ1は、装置側のバルブハウジングの装着穴に水平方向に取付けられ、バルブハウジング内の液体である作動油に浸漬される、いわゆる油浸形のソレノイドバルブとして使用される。
【0018】
図1および
図2に示されるように、ソレノイドバルブ1は、流体、すなわち作動油等の制御流体の流量を調整するバルブ部2がソレノイド部3に一体に取付けられて構成されている。尚、
図2は、ソレノイド成形体31のコイル34に通電されていないソレノイドバルブ1のオフ状態を示すものである。
【0019】
先ず、バルブ部2の構造について説明する。
図1および
図2に示されるように、バルブ部2は、バルブハウジングの装着穴内に設けられた流路と接続される入力ポート24、出力ポート25、排出ポート26、ドレンポート27、フィードバックポート28等の各種ポートの開口が設けられたスリーブ21と、スリーブ21の内径側において軸方向に形成される貫通孔21aに液密に収容される弁体としてのスプール22と、スプール22を軸方向他方側に付勢するコイル状のスプリング29と、スプリング29を保持するリテーナ23と、から構成されている。
【0020】
スリーブ21には、軸方向一端側から軸方向他端側に向けて、排出ポート26、出力ポート25、入力ポート24、フィードバックポート28、ドレンポート27の順に形成されている。スプール22は、軸方向に往復移動可能となっており、スプール22を軸方向に往復移動させることにより、各種ポートの連通状態を変化させ、作動油の圧力や流量を制御するようになっている。尚、スリーブ21、スプール22、リテーナ23は、アルミ、鉄、ステンレス、樹脂等の材料により形成されている。
【0021】
次に、ソレノイド部3の構造について説明する。
図2に示されるように、ソレノイド部3は、鉄等の磁性を有する金属材料から形成されるソレノイドケース30と、ソレノイドケース30に収容されるソレノイド成形体31と、ソレノイド成形体31の内側に配置されるステータ32と、ステータ32の軸方向他方側に軸方向に移動可能な状態で配置されるプランジャ4と、から主に構成されている。
【0022】
ソレノイド成形体31は、コイル34を樹脂35によりモールド成形することにより形成され、ソレノイドケース30の外径側に設けられる開口部30jから外部に延び出ているコネクタ部35aのコネクタから制御電流がコイル34へ供給されるようになっている。このソレノイド成形体31はステータ32の外径側に一体に形成されている。また、ソレノイドケース30は軸方向他端が開口となっており、該開口は蓋部材10がかしめ固定されることにより閉塞されている。
【0023】
ステータ32は、その中央部に軸方向に貫通する貫通孔32aを有する筒状体であり、鉄等の磁性を有する金属材料から形成される。ステータ32は、軸方向他端に軸方向一端側に凹む凹部32bが形成されており、該凹部32bは貫通孔32aに連通している。また、ステータ32の軸方向一端側の端面にはスプール22の軸方向他端部が接触しており、スプール22の軸方向他方側への移動が規制されている。
【0024】
また、ステータ32の軸方向他端側には非磁性体から構成される第1筒状体7が配設され、第1筒状体7の軸方向他端側には磁性体から構成される第2筒状体8が配設されており、第1筒状体7および第2筒状体8の内側には磁性体から構成される第3筒状体9が第1筒状体7および第2筒状体8に亘って配設されている。第3筒状体9は、内周面が低摩擦加工されており、プランジャ4に対する摺動性が高くなっている。
【0025】
プランジャ4は、鉄等の磁性を有する金属材料により円柱状に形成されており、第3筒状体9の内周面に摺接可能に配置されている。プランジャ4の外周面と第3筒状体9の内周面との間は僅かに離間しており、その隙間からはほとんど流体が通過しないようになっている。
【0026】
プランジャ4の軸方向一方側には、プランジャ4の外部空間としての空間S1が形成され、プランジャ4の軸方向他方側には、空間S2が形成されている。具体的には、空間S1は、プランジャ4、ステータ32の貫通孔32a、凹部32b、スプール22により区画されており、空間S2は、プランジャ4、第2筒状体8、蓋部材10により区画されている。
【0027】
プランジャ4は、軸方向一端に軸方向他端側に凹む凹部4aが形成されており、ステータ32の貫通孔32aに挿通されるロッド5の軸方向他端側の端部としての凸部53が嵌入固定されている。凹部4aの縁部には、凹部4aの中心部に向けて傾斜するテーパ面4bが形成されている。また、ロッド5の軸方向一端側の先端はスプール22の軸方向他端側の端面に当接している。すなわち、ロッド5は空間S1内に配置されている。尚、ロッド5の軸方向一端側の先端は、スプール22の軸方向他端側の端面に固定されていてもよい。さらに尚、ロッド5の軸方向一端側の先端は、スプール22の軸方向他端側の端面に当接していなくてもよい。
【0028】
次いで、ロッド5の構造について説明する。
図2および
図3に示されるように、ロッド5は、樹脂やゴムなどの非磁性体から構成され、ステータ32の貫通孔32aに挿通される円柱状の基部51と、基部51の軸方向他端部から外径側に張り出す大径部としての鍔部52と、基部51の軸方向他端側の端面の内径部から軸方向他方側に突出する小径の凸部53が形成されている。
【0029】
凸部53の軸方向他端部は、凸部53の中心軸に向けて傾斜するテーパ面を有する嵌入側端部53bが形成されることにより先細り形状を成している。また、凸部53の外周には、軸方向に直線状に延びる切欠き53cが周方向に2つ等配されている。尚、切欠き53cは、底面が平面状に形成され、軸方向一端側の端部が凸部53の外周面53aにおいて鍔部52の軸方向他端側の端面から軸方向他端側に離間した位置に形成されるとともに、軸方向他端部が嵌入側端部53bの一部を切り欠くように形成されている。また、鍔部52は、切欠き53c,53cと対応する円板の両側が切り欠かれることにより直線状の側面52a,52a(
図3参照)が形成されている。
【0030】
図2に示されるように、ロッド5の凸部53は、プランジャ4の凹部4aに嵌入固定される。すなわち、凸部53の外周面53aとプランジャ4の凹部4aの内周面とは圧接されている。凸部53を凹部4aに嵌入する際には、凸部53の軸方向他端部は、嵌入側端部53bが形成されることにより先細りしているので、嵌入側端部53bのテーパ面がプランジャ4の凹部4aの縁部に案内されて凸部53を凹部4aに嵌入させやすくなっている。
【0031】
また、凸部53を凹部4aに所定長さ嵌入すると、凸部53よりも外径側に張り出した鍔部52の軸方向他端側の端面がプランジャ4の軸方向一端側の端面に接触する(特に
図2参照)。このように、鍔部52の軸方向他端側の端面がプランジャ4の軸方向一端側の端面に接触することで、ロッド5の嵌入が規制されるので、プランジャ4に対するロッド5の嵌入深度を決定でき、プランジャ4に対してロッド5を精度よく固定することができる。また、ロッド5の製作時において、鍔部52の軸方向他端側の端面と凸部53の外周面53aの軸方向一端部との連続部分に形成される図示しないR状部がプランジャ4のテーパ面4bよりも内径側に収容されるため、鍔部52の軸方向他端側の端面をプランジャ4の軸方向一端側の端面に確実に接触させることができ、プランジャ4に対してロッド5をより精度よく固定することができる。
【0032】
また、コイル34への通電によってステータ32とプランジャ4との間に磁力を発生させることにより、プランジャ4およびロッド5をステータ32へ向けて軸方向一方側に移動させた際には、非磁性体から構成されるロッド5の鍔部52の軸方向一端側の端面がステータ32の凹部32bの底面に当接することにより、プランジャ4がステータ32に張り付くことが防止される。
【0033】
図2の拡大部に示されるように、プランジャ4の凹部4aにロッド5の凸部53が嵌入された状態にあっては、凹部4aの底部と凸部53の軸方向他端側の端面との間に空間S3が形成されている。
【0034】
これによれば、プランジャ4の凹部4aにロッド5の凸部53が嵌入された状態で、ロッド5の切欠き53cにより区画される連通路P1と、プランジャ4の凹部4aの縁部に形成されるテーパ面4bとロッド5の凸部53の外周面53aとの間に区画される連通路P2と、鍔部52の軸方向他端側の端面とプランジャ4の軸方向一端側の端面との間の隙間により形成される連通路P3とによって、プランジャ4の凹部4a内の空間S3とプランジャ4の外部空間S1とを連通させることができるので、凹部4aとロッド5の凸部53との間の空間S3に組み立て雰囲気の流体(例えば大気)が残存することを回避でき、プランジャ4とロッド5の動作の精度を高めることができる。加えて、連通路P1と連通路P2とが両方設けられることで、ロッド5の切欠き53cとプランジャ4のテーパ面4bの大きさをそれぞれ小さくすることができ、ロッド5とプランジャ4の強度を確保できる。
【0035】
また、ロッド5の切欠き53cにより連通路P1が区画されるため、プランジャ4を均一な形状に形成してプランジャ4における磁束の有効領域をバランスよく形成しながら小型にすることができる。さらに、切欠き53cは周方向に2つ等配されているため、バルブハウジング内の作動油に浸漬される際に、凹部4a内の空間S3に対して一方の切欠き53cにより作動油を流入させるとともに、他方の切欠き53cにより作動油を流出させやすくなり、組立て雰囲気の流体が凹部4a内の空間S3に残存しにくい。
【0036】
また、ロッド5の凸部53は、軸方向他端部にテーパ面を有する嵌入側端部53bが形成されることにより先細り形状を成しているため、凹部4a内の空間S3とプランジャ4の外部空間S1とで作動油または組立て雰囲気の流体を円滑に移動させることができる。
【0037】
また、鍔部52は、切欠き53c,53cと対応する円板の両側が切り欠かれた側面52a,52aが形成されることにより、切欠き53c,53cからプランジャ4の外部空間S1までの径方向の距離を短くすることができるため、鍔部52の軸方向他端側の端面とプランジャ4の軸方向一端側の端面との間の隙間により形成される連通路P3(
図2参照)を通してプランジャ4の外部空間S1との間で作動油または組立て雰囲気の流体を円滑に移動させることができる。
【0038】
尚、ロッド5の変形例として、
図4に示されるように、切欠き53c,53cと対応して鍔部52の軸方向他端側の端面に側面52a,52aから凸部53の外周面53a近傍まで延びる溝52b,52bにより区画される連通路P4が形成されていてもよい。これによれば、鍔部52の軸方向他端側の端面とプランジャ4の軸方向一端側の端面との間の隙間により形成される連通路P3に加えて、溝52b,52bにより区画される連通路P4によって流路断面積を拡大することができるため、プランジャ4の外部空間S1との間で作動油または組立て雰囲気の流体をより円滑に移動させることができる。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例2に係るソレノイドバルブにつき、
図5を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0040】
本実施例2のソレノイドバルブ101において、
図5に示されるように、プランジャ104の凹部104aの縁部は、プランジャ104の軸方向一端側の端面に対して直角に形成されている。また、ロッド105の端部としての凸部153に形成される切欠き153cは、軸方向一端部が凸部153の外周面153aにおいて大径部としての鍔部152の軸方向他端側の端面の位置まで形成されるとともに、軸方向他端部が嵌入側端部153bを構成するテーパ面の一部を切り欠くように形成されている。
【0041】
これによれば、プランジャ104の凹部104aにロッド105の凸部153が嵌入された状態で、ロッド105の切欠き153cにより区画される連通路P5と、鍔部152の軸方向他端側の端面とプランジャ104の軸方向一端側の端面との間の隙間により形成される連通路P3とによって、プランジャ104の凹部104a内の空間S3とプランジャ4の外部空間S1を連通させることができるので、凹部104aとロッド105の凸部153との間の空間S3に組み立て雰囲気の流体が残存することを回避でき、プランジャ104とロッド105の動作の精度を高めることができる。
【0042】
尚、ロッド105の鍔部152に対して前記実施例1の変形例のように溝52b,52b(
図4参照)を形成してもよい。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0044】
例えば、前記実施例では、ロッドの凸部形成される切欠きにより連通路の一部が区画される構成について説明したが、これに限らず、プランジャの凹部の内周面に形成される溝により連通路の一部が区画されてもよい。
【0045】
また、ロッドの凸部に形成される切欠きは、周方向に2つ等配されるものとして説明したが、凸部に形成される切欠きの数は自由に構成されてよく、また、周方向に等配されるものでなくてもよい。また、切欠きの底面は平面状に限らず、例えばV字形状やラウンド形状等であってもよい。
【0046】
また、ロッドの軸方向他端部は、テーパ面を有さない直線状に形成されていてもよい。
【0047】
また、ロッドの大径部としての鍔部の形状は自由に構成されてよい。
【0048】
また、ロッドには、大径部としての鍔部が形成されなくてもよく、この場合、例えばステータ32の凹部32bの底部に樹脂やゴムなどの非磁性体から構成されるリング状のダンパ部材が設けられることが好ましい。
【0049】
また、プランジャの前後の空間S1,S2間がプランジャを軸方向に貫通する貫通孔等の連通手段により連通されていてもよい。
【0050】
また、前記実施例では、弁体にスプールを用いるスプールタイプのソレノイドバルブとして説明したが、これに限られず、グローブ弁やゲート弁等を用いたソレノイドバルブであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ソレノイドバルブ
2 バルブ部
3 ソレノイド部
4 プランジャ
4a 凹部
4b テーパ面
5 ロッド
7 第1筒状体
8 第2筒状体
9 第3筒状体
10 蓋部材
21 スリーブ
22 スプール(弁体)
32 ステータ
51 基部
52 鍔部(大径部)
52a 側面
52b 溝
53 凸部(端部)
53a 外周面
53b 嵌入側端部
53c 切欠き
101 ソレノイドバルブ
104 プランジャ
104a 凹部
105 ロッド
152 鍔部(大径部)
153 凸部(端部)
153a 外周面
153b 嵌入側端部
153c 切欠き
S1~S3 空間
P1~P5 連通路