(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20240401BHJP
C07F 7/12 20060101ALI20240401BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240401BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240401BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240401BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20240401BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C07F7/08 X
C07F7/12 X
C07F7/18 X
C08L83/06
C08K5/54
B01J31/02 M
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021531821
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 US2019064346
(87)【国際公開番号】W WO2020131365
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-21
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テルゲンホフ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクオ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-531925(JP,A)
【文献】特表2008-538763(JP,A)
【文献】Macromolecules,2018年,Vol. 51, No. 19,pp. 7567-7573
【文献】Polymer Preprints (American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry),2009年,Vol. 50, No. 2,pp. 814-815,ISSN 0032-3934
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
C07F 7/12
C07F 7/18
C08L 83/06
C08K 5/54
B01J 31/02
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法であって、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸、及び
B)1分子中に平均して少なくとも1つの式-OR
2;[式中、各R
2は、独立して選択された1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である]のケイ素結合基を有する有機ケイ素化合物、を含む出発物質を組み合わせて、それによって触媒による混合物を形成する工程と、その後、
2)前記触媒による混合物を、
C)1分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質に添加して、それによって前記官能化ポリオルガノシロキサンを含む生成物、及びHR
2を含む副生成物を調製する工程と、を含
み
工程1)において、前記ホウ素含有ルイス酸が、及び存在する場合、工程2)において任意の追加のホウ素含有ルイス酸が、前記有機ケイ素化合物と前記オルガノハイドロジェンシロキサンとの合計重量に基づいて、50ppm~600ppmの総量で提供される、方法。
【請求項2】
工程2)において、追加のホウ素含有ルイス酸をC)前記オルガノハイドロジェンシロキサンに添加した後、前記触媒による混合物を、前記オルガノハイドロジェンシロキサンを含む前記出発物質に添加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程2)が、5℃~40℃の温度で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加のホウ素含有ルイス酸が、C)前記オルガノハイドロジェンシロキサンの重量に基づいて、5ppm~250ppmの量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程1)において、前記ホウ素含有ルイス
酸が、B)前記有機ケイ素化合
物の重量に基づいて、
15ppm~
250ppm
の量で
存在する、請求項
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程1)において、A)前記ホウ素含有ルイス酸が、B)前記有機ケイ素化合物の重量に基づいて、5ppm~600ppmの量で存在する、請求項
2又は4に記載の方法。
【請求項7】
5℃~70℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程1)において前記触媒による混合物が、工程2)の前に40℃~70℃に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒による混合物が、工程2)において40℃未満まで冷却される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
10℃から25℃未満までの温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
A)前記ホウ素含有ルイス酸が、1分子中に少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
B)前記有機ケイ素化合物が、
式、R
1
(4-a)SiOR
2
a[式中、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
2は、1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、下付き文字aは、1~4である]のアルコキシシラン;
式、R
3
2R
XSiO-(R
3
2SiO)
b-SiR
XR
3
2[式中、各R
3は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
Xは、式、-OR
2の基であり、下付き文字b≧1である]のオルガノシロキサン;並びに
単位式、(R
1SiO
3/2)
m(R
1R
XSiO
2/2)
n(R
1R
X
2SiO
1/2)
z[式中、下付き文字mは0~20であり、下付き文字nは1~20であり、下付き文字zは0~20であり、各R
1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
Xは、式、-OR
2の基である]の樹脂;からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
C)前記オルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式、(HR
4
2SiO
1/2)
g(R
4
3SiO
1/2)
h(R
4
2SiO
2/2)
i(HR
4SiO
2/2)
j[式中、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0となり、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0となり、数量(g+j)>0となり、数量(i+j)が0~1000の範囲となり、前記数量(g+j)が、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに少なくとも1%のケイ素結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような、値を有しており、各R
4は独立して選択された一価炭化水素基である]を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生成物中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程2)中及び/又はその後、HR
2を含む副生成物を、除去する工程を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2018年12月21日出願の米国特許仮出願第62/783224号の利益を主張するものであり、米国特許仮出願第62/783224号は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法が開示される。より具体的には、本方法は、ホウ素含有ルイス酸触媒及びアルコキシシリル官能性有機ケイ素化合物を組み合わせて、触媒による混合物を形成する工程と、その後、触媒による混合物をSiH官能性有機ケイ素化合物に添加する工程と、を含む。
【背景技術】
【0003】
水素化ケイ素官能性有機ケイ素化合物及びアルコキシシリル官能性有機ケイ素化合物が関与する、Piers-Rubinsztajn反応が開示されており、Piers-Rubinsztajn反応触媒、水素化ケイ素官能性有機ケイ素化合物、及びアルコキシシリル官能性化合物は、並行して組み合わされ、又は水素化ケイ素官能性有機ケイ素化合物、及びアルコキシシリル官能性化合物が混合された後、触媒がそれに添加される。これらの方法は、触媒が失活することにより、反応速度が遅くなる、及び/又は触媒が失活する、及び/又は収率が悪くなるという欠点をもつ。
【発明の概要】
【0004】
官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法は、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸、及び
B)1分子中に平均して少なくとも1つの式-OR2;[式中、各R2は、独立して選択された1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である]のケイ素結合基を有する有機ケイ素化合物、を含む出発物質を組み合わせて、それによって触媒による混合物を形成する工程と、その後、
2)触媒による混合物を、
C)1分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質に添加して、それによって官能化ポリオルガノシロキサンを含む生成物、及び式HR2の化合物を含む副生成物を調製する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法に関する。本方法は、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸、及び
B)1分子中に平均して少なくとも1つの式-OR2;[式中、各R2は、独立して選択された1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である]のケイ素結合基を有する有機ケイ素化合物、を含む出発物質を組み合わせて、それによって触媒による混合物を形成する工程と、その後、
2)触媒による混合物を、
C)1分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質に添加して、それによって官能化ポリオルガノシロキサンを含む生成物、及び式HR2の化合物を含む副生成物を調製する工程と、を含む。工程1)において出発物質は、SiH官能性有機ケイ素化合物を含まない。工程2)において出発物質は、触媒による混合物の添加を開始する前に、アルコキシシリル官能性有機ケイ素化合物を含まなくてもよい。本明細書で使用するとき、「含まない」は、出発物質B)及びC)を反応させるための触媒として使用されるA)ホウ素含有ルイス酸を失活させるのに、全くないこと、あるいはGCによって検出不可能な量であること、あるいは非活性化するのに不十分な量であること、を包含する。本方法に使用される出発物質は、任意選択で、D)溶媒を更に含んでもよい。出発物質A)、B)、及びC)のうちの1つ以上は、溶媒中に溶解した後、本方法において添加することができる。
【0006】
本方法は、任意選択で、
工程2)において、追加のホウ素含有ルイス酸をC)オルガノハイドロジェンシロキサンに添加した後、触媒による混合物を、オルガノハイドロジェンシロキサンを含む出発物質に添加する工程と、
工程2)中及び/又はその後、HR2を含む副生成物を、除去する工程と、
生成物中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程と、
官能化ポリオルガノシロキサンを回収する工程と
からなる群から選択される1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。追加のホウ素含有ルイス酸は、工程1)において使用されるホウ素含有ルイス酸と同じであっても異なっていてもよい。
【0007】
本方法は、任意選択で、工程2)において、追加のホウ素含有ルイス酸をC)オルガノハイドロジェンシロキサンに添加した後、触媒による混合物をオルガノハイドロジェンシロキサンに添加する工程を更に含んでもよい。追加のホウ素含有ルイス酸は、C)オルガノハイドロジェンシロキサンの重量に基づいて、5ppm~250ppmの量で存在してもよい。
【0008】
この方法の工程1)及び2)において、ホウ素含有ルイス酸、及び存在する場合、任意の追加のホウ素含有ルイス酸は、有機ケイ素化合物とオルガノハイドロジェンシロキサンとの合計重量に基づいて、50ppm~6000ppm(あるいは50~600ppm)の総量で提供することができる。工程1)におけるルイス酸及び工程2)において使用される場合の追加のルイス酸は、成分A)について上述したものと同じルイス酸であっても異なるルイス酸であってもよい。あるいは、工程1)において、ホウ素含有ルイス酸は、B)有機ケイ素化合物の重量に基づいて、5ppm~600ppm(あるいは15ppm~600ppm、あるいは15ppm~250ppm)の量で存在してもよい。
【0009】
本明細書に記載の方法は、比較的低い温度で実施することができる。本方法は、5℃~70℃、あるいは5℃~65℃、あるいは10℃~60℃、あるいは15℃~50℃、あるいは20℃~35℃、あるいは5℃~30℃、あるいは30℃の温度で実施することができる。工程1)及び2)は、同じ温度で実施しても異なる温度で実施してもよい。あるいは、工程1)において触媒による混合物を、工程2)の前に40℃~70℃に加熱することができる。あるいは、40℃~70℃に加熱した後、触媒による混合物を、工程2)において40℃未満まで冷却することができる。あるいは、工程2)は、5℃~40℃の温度で実施することができる。あるいは、本方法は、10℃から25℃未満までの温度で実施することができる。
【0010】
上記の方法は、任意選択で、3)生成物中の残留ホウ素含有ルイス酸を中和する工程を更に含んでもよい。中和は、例えば、E)中和剤を添加することによって、任意の簡便な手段によって実施することができる。
【0011】
上記の方法は、任意選択で、官能化ポリオルガノシロキサンを生成物から回収する工程を更に含んでもよい。本方法は、任意選択で、工程2)中及び/又はその後、HR2(式中、R2は上記のとおりである)を含む副生成物を、除去する工程を更に含んでもよい。副生成物は、任意の簡便な手段によって、例えば、ストリッピング、液化、及び/又は燃焼によって除去することができる。例えば、R2がメチルである(副生成物がメタンである)場合、副生成物は、燃焼によって除去することができる。あるいは、粒子状副生成物が、例えば、中和の結果として存在する場合、粒子状副生成物は、濾過などの任意の簡便な手段によって除去することができる。
【0012】
出発物質A)ホウ素含有ルイス酸
本明細書に記載の方法における出発物質A)は、ホウ素含有ルイス酸である。ホウ素含有ルイス酸は、1分子中に少なくとも1つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に1~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に2~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に3つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物であってもよい。ペルフルオロアリール基は、6~12個の炭素原子、あるいは6~10個、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。A)ホウ素含有ルイス酸触媒は、(C5F4)(C6F5)2B;(C5F4)3B;(C6F5)BF2;BF(C6F5)2;B(C6F5)3;BCl2(C6F5);BCl(C6F5)2;B(C6H5)(C6F5)2;B(C6H5)2(C6F5);[C6H4(mCF3)]3B;[C6H4(pOCF3)]3B;(C6F5)B(OH)2;(C6F5)2BOH;(C6F5)2BH;(C6F5)BH2;(C7H11)B(C6F5)2;(C8H14)B(C6F5);(C6F5)2B(OC2H5);又は(C6F5)2B-CH2CH2Si(CH3)からなる群から選択される。あるいは、ホウ素含有ルイス酸触媒は、式B(C6F5)3のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランであってもよい。このようなホウ素含有ルイス酸は、例えば、Millipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。
【0013】
出発物質B)アルコキシシリル官能性有機ケイ素化合物
本明細書に記載の方法における出発物質B)は、1分子中に平均して少なくとも1つの(あるいは1~6つ、あるいは1~4つ、あるいは1~3つ、あるいは1~2つの)式-OR2;[式中、各R2は、独立して選択された1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である]のケイ素結合アルコキシ基を有する、有機ケイ素化合物である。あるいは、各R2は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基(分枝状及び直鎖異性体、例えば、n-プロピル基又はiso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、及びsec-ブチルを含む)、あるいはメチル基又はエチル基であってもよく、あるいは各R2はメチル基であってもよい。
【0014】
有機ケイ素化合物は、式B-1)、R1
(4-a)SiOR2
a[式中、R2は上記のとおりであり、各R1は、以下に記載のような一価炭化水素基及び以下に記載のような一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字aは、1~4である]のアルコキシシランであってもよい。R1に好適な一価炭化水素基は、以下に記載のように、アルキル及びアルケニルによって例示される。R1に好適なハロゲン化炭化水素基は、以下に記載のように、ハロアルキルによって例示される。あるいは、アルキル基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、ハロアルキル基は、クロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、下付き文字aは、3~4であってもよい。
【0015】
好適なアルコキシシランは市販されており、例えば、好適なテトラアルコキシシランとしては、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なテトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランが挙げられる。また、Gelestから市販されているトリアルコキシシランとしては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-クロロイソブチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノンフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、7-ブロモヘプチルトリメトキシシラン、4-ブロモブチルトリメトキシシラン、5-ブロモペンチルトリメトキシシラン、2-(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、(3,3-ジメチルブチル)トリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-シクロヘキセニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、及び7-オクテニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0016】
あるいは、有機ケイ素化合物は、オルガノシロキサンオリゴマー又はポリマーであってもよい。オルガノシロキサンオリゴマー又はポリマーは、単位式B-2)、
(RXR3
2SiO1/2)o(R3
3SiO1/2)p(R3
2SiO2/2)q(RXR3SiO2/2)r(RXSiO3/2)s(R3SiO3/2)t(SiO4/2)u[式中、RXは、上記の式-OR2の基を表し、下付き文字o、p、q、及びrは、o≧0、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0となり、数量(o+r+s)は、1以上、あるいは1~6、あるいは1~3、あるいは1~2の平均値を有するような、値を有し、各R3は、以下に記載のように独立して選択された一価炭化水素基である]を有してもよい。あるいは、数量(o+p+q+r+s+t+u)は、少なくとも3、あるいは3~2000であってもよい。あるいは、数量(q+r)は、1~2,000、あるいは1~50であってもよい。あるいは、数量(o+p)は、0~50、あるいは0~2であってもよい。あるいは、1≧s≧0である。あるいは、1≧t≧0である。あるいは、数量(o+r+s)は、1~6、あるいは1~3、あるいは1~2の平均値を有する。R3に好適な一価炭化水素基は、本明細書で以下に記載のように、アルキル、アルケニル、及びアリールによって例示される。R3に好適なハロゲン化炭化水素基は、以下に記載のように、ハロアルキルによって例示される。あるいは、アルキル基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、アリール基はフェニル基であってもよい。あるいは、ハロアルキル基は、クロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基からなる群から選択されてもよい。あるいは、式B-2)中、各RXは、メトキシ又はエトキシであってもよい。
【0017】
あるいは、(例えば、oが2の平均値を有し、p=r=s=t=u=0である場合)、出発物質B)は、式B-3)、
R3
2RXSiO-(R3
2SiO)b-OSiRXR3
2[式中、各R3及び各RXは上記のとおりであり、下付き文字b≧1である]のポリジオルガノシロキサンであってもよい。あるいは、下付き文字bは、1~2,000、あるいは5~900、あるいは5~50であってもよく、あるいは、下付き文字bは、1~50であってもよい。あるいは、式B-3)中、各R3は、アルキル(例えば、メチル、エチル、及びプロピル)、アルケニル(例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル)、アリール(例えば、フェニル)、及びハロアルキル(例えば、クロロメチル、クロロプロピル、及びトリフルオロプロピル)からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、式B-3)中、各RXは、メトキシ又はエトキシであってもよい。式B-3)のポリジオルガノシロキサン、例えば5~12cStの粘度を有するメトキシ末端ポリジメチルシロキサンは、Gelest,Inc.から市販されており、1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンはMillipore Sigmaから市販されている。
【0018】
あるいは、出発物質B)は、単位式B-4)、(R3SiO3/2)m(RXR3SiO2/2)r[式中、下付き文字mは0~100であり、下付き文字rは1~100であり、各R3及び各RXは上記のとおりである]を有してもよい。あるいは、下付き文字mは、1~20であってもよい。あるいは、下付き文字rは、1~20であってもよい。あるいは、式B-4)中、各R3は、アルキル(例えば、メチル、エチル、及びプロピル)、アルケニル(例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル)、アリール(例えば、フェニル)、及びハロアルキル(例えば、クロロメチル、クロロプロピル、及びトリフルオロプロピル)からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、式B-4)中、各RXは、メトキシ又はエトキシであってもよい。単位式B-4)の好適なアルコキシ官能性シロキサン樹脂の例としては、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)製のDOWSIL(商標)US-CF2403 Resin及びDOWSIL(商標)2405 Resinが挙げられる。
【0019】
出発物質C)オルガノハイドロジェンシロキサン
出発物質C)は、1分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子(SiH)を有するオルガノハイドロジェンシロキサンである。オルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式C-1)、(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)j[式中、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0となり、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0となり、数量(g+j)>0となり、数量(g+j)が、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに少なくとも1%のケイ素結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような、値を有し、各R4は独立して選択された一価炭化水素基である]を有してもよい。あるいは、各R4は、アルキル(例えば、メチル、エチル、又はヘキシル)及びアリール(例えばフェニル)からなる群から独立して選択されてもよい。
【0020】
あるいは、ビス-SiH末端ポリジアルキルシロキサンは、出発物質C)として使用することができ、この場合、下付き文字h=0、下付き文字j=0、下付き文字g=2、及び下付き文字i=0~500であり、各R4はアルキル基、例えばメチル基である。このビス-SiH末端ポリジアルキルシロキサンは、式C-2)、HR4
2SiO-(R4
2SiO)i-OSiHR4
2を有してもよい。
【0021】
あるいは、モノ-SiH末端ポリジアルキルシロキサンは、出発物質C)として使用することができ、この場合、g=1、h=1、i=1~500、j=0であり、各R4はアルキル基、例えばメチル基である。このモノ-SiH末端オルガノハイドロジェンシロキサンは、式C-3)、
HR4
2SiO-(R4
2SiO)i-SiR4
3[式中、R4は上記のとおりである]を含む。あるいは式C-3)中、各R4はアルキル基、例えばメチル基であってもよい。あるいは、式C-3)中、下付き文字iは1であってもよい。
【0022】
出発物質C)に好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されているDOWSIL(商標)6-3570 Polymer、及びMiliporeSigma(Sigma-Aldrich)(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサンが挙げられる。出発物質C)に好適な他のオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から市販されている、1,1,3,3,3-ペンタメチルジシロキサン及びモノヒドリド末端ポリジメチルシロキサン(上記の式C-1)(式中、jは7~80である)を有する)が挙げられる。
【0023】
出発物質B)及びC)を十分な量で使用して、0.9:1~10:1、あるいは1:1~5:1、あるいは2:1~3:1のSiH:SiOHモル比を提供することができる。
【0024】
出発物質D)溶媒
溶媒を、本方法において使用することができる。溶媒により、特定の出発物質、例えば出発物質A)ホウ素含有ルイス酸の導入を促進することができる。本明細書で使用される溶媒は、出発物質の流動化に役立つがこれらの出発物質のいずれとも本質的に反応しないものである。溶媒は、出発物質の溶解性及び溶媒の揮発性に基づいて選択されてもよい。「溶解性」は、溶媒が出発物質を溶解及び/又は分散させるのに十分であることを指す。「揮発性」は、溶媒の蒸気圧を指す。
【0025】
好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、及び/又は脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンであってもよい。
【0026】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びに選択される他の出発物質の量及び種類をはじめとする、様々な因子によって異なってもよい。しかし、溶媒の量は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、0.1重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%の範囲であってもよい。
【0027】
出発物質E)中和剤
出発物質E)は中和剤であり、生成物が形成された後に、任意選択で使用して出発物質A)を中和することができる。アルミナ、トリフェニルアミン、トリフェニルホスフィン、及びフェニルアセチレンは、好適な中和剤である。中和剤は当該技術分野において公知であり、例えばMilipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。使用される中和剤の量を十分にして、ホウ素含有ルイス酸の合計重量に基づいて1重量部~1000重量部を提供することができる。あるいは、中和剤がトリフェニルホスフィン又はフェニルアセチレンである場合、E:A比は、1:1~20:1であってもよい。あるいは、中和剤がアルミナである場合、E:A比は、100:1~1000:1であってもよい。
【実施例】
【0028】
これらの実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。表1の出発物質を本明細書の実施例で使用した。
【表1】
【0029】
この比較例1では、Bis-H及び初めの201ppmのBCFを投入し、50℃で3時間保持し、その間に反応器を定常状態の熱バランスに仕上げた。反応器に初めに14g(5%)のCPTMを投入したとき、反応は起こらなかった。次いで、追加の52ppmのBCF、続いて54ppm以上のBCFを添加し、反応を開始し継続した。180gのCPTMを添加した後(65%)、反応が著しく遅くなったので、更に50ppmのBCFを添加した。この時点で、反応は59℃まで発熱しており、再開した。反応を継続し、CPTMの添加の残りを通じて遅くなったが、反応を停止せず、ここで追加のBCFが必要であった。実行終了時に、45分かけて全ての認められる発熱を完了させた。次いで、反応物を更に50分間保持して、システム上の熱バランスを仕上げた。最終の分析では、CPTM中のメトキシシランのSi-O-Si結合への部分的な変換のみが示され、残留組成物がアルコキシシランを含有しており、2つの残留メトキシ基を有するものが0.4%、1つの残留メトキシ基を有するものが8.5%であった。
【0030】
この実施例1では、Bis-Hを反応器に投入し、45℃まで加熱し、次いで19ppmのBCFをBis-Hに投入した。供給容器において、CPTMもまた、実行全体に125ppmを提供するのに十分な量でBCFと混合した。この実行のために、供給管を、撹拌器の上5cmで反応器(Bis-Hの表面の下方)に入れた。CPTM供給を、初めの20g(6%)で開始し、問題なく反応を開始した。50gのCPTMを供給した後、温度を、CPTM供給の継続時間にかけて30℃まで下げた。反応を、実行全体を通じて継続し、反応熱は定常的であることが示され、反応が実行を通じて遅くなるという根拠はなかった。したがって、追加の触媒を反応器に投入しなかった。CPTM供給の終了時に、反応器の内容物を30℃に保持し、33分かけて認められる発熱を完了させた。次いで、反応器の内容物を30℃で更に2.5時間保持し、反応を完了させ、分析した。分析では、メトキシシランのSi-O-Si結合への完全な変換が示された。
【0031】
比較例1及び実施例1では、BCFとCPTMSとを組み合わせた後、反応を開始することにより、触媒は実行過程にわたって失活しないという効果、及びこれらの例で試験した条件下でCPTMSのメトキシ基とBis-Hのケイ素結合水素原子との反応はより完全になるという効果が得られることを示している。
【0032】
この比較例2では、Bis-Hを205ppmのBCFと混合し、40℃まで加熱した。VTM供給を、初めの10g(5%)で開始し、反応を開始した。68%のVTMを添加した後、反応を停止し、追加の42ppmのBCFを添加した。反応を継続し、次いで98%のVTMを添加した後、再度停止した。追加の40ppmのBCFを添加し、VTM、すなわち供給物を仕上げた。VTM供給の終了時に、反応物を40℃に保持し、30分かけて認められる発熱を完了させた。分析では、メトキシシランのSi-O-Si結合への完全な変換が示された。
【0033】
この実施例2では、Bis-Hを反応器に投入し、40℃まで加熱し、次いで60ppmのBCFをBis-Hに投入した。供給容器のVTMもまた、実行全体に120ppmを提供するのに十分な量でBCFと混合した。VTM供給を、初めの10g(5%)で開始し、反応を開始した。反応を、実行の残りを通じて継続し、反応熱は定常的であることが示され、反応が実行を通じて遅くなるという根拠はなかった。したがって、追加のBCFを反応器に投入しなかった。VTM供給の終了時に、反応器の内容物を40℃に保持し、30分かけて認められる発熱を完了させた。分析では、メトキシシランのSi-O-Si結合への完全な変換が示された。
【0034】
比較例2及び実施例2では、BCF触媒とVTMとを組み合わせた後、反応を開始することにより、触媒は実行過程にわたって失活しないという効果、及びこれらの例で試験した条件下、VTMのメトキシ基とBis-Hのケイ素結合水素原子との反応は低くした触媒投入量を使用して完全になるという効果が得られることを示している。
【0035】
この実施例3では、37.9gの6-3570及び38gのトルエンを、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコ内で、RTで混合した。24.8gのCPTMを150ppmのBCFと予混合し、激しい撹拌下、フラスコにゆっくり24分以内に添加した。追加のBCFを反応に添加せず、反応が遅くなる兆候はなかった。ポット温度を、氷浴を使用して35℃未満に制御した。反応混合物(透明な液体)を、RTで更に1時間撹拌した。揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより80℃及び1mmHg未満で30分かけて除去した。生成物は白色の固体樹脂であった。
【0036】
この実施例4では、Bis-Hを反応器に投入し、50ppmのBCFをそれに添加した。供給容器において、実行全体に対して161ppmのBCFの総量を提供するのに十分な量でCPTM及びBCFを混合することによって、触媒による混合物を調製した。触媒による混合物供給を、初めの20g(6%)で開始し、問題なく反応を開始した。反応を15℃で実行した。反応を、実行全体を通じて継続し、反応熱は定常的であることが示され、反応が実行を通じて遅くなるという根拠はなかった。したがって、追加のBCFをその物質に投入しなかった。触媒による混合物供給の終了時に、反応物を15℃に保持し、30分かけて認められる発熱を完了させた。分析では、メトキシシランのSi-O-Si結合への完全な変換が示された。実施例4は、反応を低温で実行できることを示している。
【0037】
この実施例5では、132gのBis-Hを、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコに入れた。25ppmのBCFを、フラスコに添加した。40.5gのCF-2403樹脂及び175ppmのBCFを滴下漏斗にて混合して、触媒による混合物を形成した。触媒による混合物を、フラスコにゆっくり32分以内に添加した。氷水浴を使用して、熱を除去し、ポット温度を30℃未満に制御した。RTで1時間撹拌した後、1H NMRにより、CF-2403樹脂中のメトキシ基が完全に反応していたことが示された。揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより150℃で1.5時間かけて除去した。生成物は無色透明の液体であった。
【0038】
この実施例6では、157.3gのBis-Hを、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコに入れた。25ppmのBCFを、フラスコに添加した。25.0gのTMOS及び175ppmのBCFを滴下漏斗にて混合して、触媒による混合物を形成した。触媒による混合物を、フラスコにゆっくり40分以内に添加した。氷水浴を使用して、熱を除去し、ポット温度を30℃未満に制御した。RTで1時間撹拌した後、1H NMRにより、Si-OMe残留含有量は0.3%であることが示された。撹拌を更に1.5時間継続した。次いで、7.3gのアルミナをフラスコに添加し、RTで2時間撹拌した。0.45μmの濾過膜を通して濾過後、揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより150℃で50分かけて除去した。生成物は、80℃より高い融点を有する無色透明の軟質ゲル状物であった。
【0039】
この実施例7では、Bis-Hを4つ口フラスコに入れて、40℃まで加熱し、次いで22ppmのBCFをBis-Hに投入した。供給容器のCPTMもまた、実行全体に対して96ppmを占めるBCFと混合した。CPTM供給を連続的に開始し、問題なく始めた。反応を、実行全体を通じて継続し、反応熱は定常的であることが示され、反応は最終盤近くで遅くなり始めるのみであったが依然として良好な速度を有していた。したがって、追加のBCFを反応混合物に投入しなかった。CPTM供給の終了時に、1時間かけて70℃までの昇温を開始し、推定によると認められる発熱が示され、30分後に停止した。次いで、反応混合物を70℃で1時間保持し、昇温後、反応を完了させ、分析した。分析では、メトキシシランのSi-O-Si結合への99.5%超の変換が示された。
【0040】
この比較例3では、MH-1109を、50ppmのBCFとフラスコ内で組み合わせた。シラノール流体(DP35)を、50ppmのBCFと供給容器内で組み合わせた。50ppmのBCFを含有するシラノール流体の混合物の半分を、MH-1109及び50ppmのBCFの触媒による混合物に供給した後、反応混合物をフラスコ内でゲル化させた。この比較例では、添加の順序はこれらの条件下で試験したOH官能性ポリオルガノシロキサン(シラノール流体)に影響しないことが示された。
【0041】
産業上の利用可能性
ホウ素含有ルイス酸、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、水素化ケイ素の存在下、急速に失活する場合がある。本発明者らは、驚くべきことに、ホウ素含有ルイス酸をアルコキシシリル官能性有機ケイ素化合物と組み合わせて、触媒による混合物を形成し、その後、触媒による混合物を、水素化ケイ素官能性有機ケイ素化合物を入れた反応器に供給することにより、もたらされる発熱を制御することができること、及び異なる添加順序を使用するよりも低い触媒濃度及びより高い制御によって完全な反応(より高い収率)を得ることができることを、見出した。更にまた、本発明者らは、驚くべきことに、より低い温度によって反応性及び触媒寿命が向上することを見出した。
【0042】
本明細書に記載の方法によって調製されたポリオルガノシロキサンには、分散剤、湿潤剤、ブロッキング防止添加剤、表面張力調整剤、表面処理剤、農業組成物用添加剤、コーティング用添加剤、塗料用添加剤、化粧品成分、又はシロキサン変性剤をはじめとするがそれらに限定されない、様々な用途における使用が見出される。
【0043】
用語の定義及び使用
本明細書で使用される略語は、以下の表5における定義を有する。
【表2】
【0044】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全出発物質の量は、合計100重量%である。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を包含する。
【0045】
「アルキル」は、分枝状又は非分枝状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基及び/又はiso-プロピル基を含む)、ブチル基(iso-ブチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、及び/又はsec-ブチル基を含む)、ペンチル基(iso-ペンチル基、ネオペンチル基、及び/又はtert-ペンチル基を含む)、並びにn-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、及びn-デシル基、更には6個以上の炭素原子を有する分枝状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有してもよい。
【0046】
「アラルキル」及び「アルカリール」は、それぞれ、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基としては、ベンジル基、トリル基、キシリル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、及びフェニルブチル基が挙げられる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は7~12個の炭素原子、あるいは7~9個の炭素原子、あるいは7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有していてよい。
【0047】
「アルケニル」は、二重結合を有する、分枝状又は非分枝状一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0048】
「アルキニル」は、三重結合を有する、分枝状又は非分枝状一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0049】
「アリール」とは、環炭素原子からの水素原子の除去により、アレーンから誘導された炭化水素基を意味する。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、あるいは10~14個の炭素原子、あるいは12~14個の炭素原子を有してもよい。
【0050】
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)、部分不飽和(例えば、シクロペンテン又はシクロヘキセン)、又は完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
【0051】
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
【0052】
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上記に定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0053】
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル);並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル)が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。
【0054】
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。用語「からなること(consisting of)」及びその派生語、例えば、「からなる(consist of)」及び「からなる(consists of)」は、列挙された要素で構成されるか、又はそれらから構成される意味になるよう、本明細書で使用され、追加の要素を除外している。用語「から本質的になること(consisting essentially of)」及びその派生語、例えば、「から本質的になる(consist essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」は、列挙された要素を含むことを意味し、例えば、本発明に必須ではない追加の要素を含んでもよい。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0055】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。
【0057】
本発明の実施形態
実施形態1では、官能化ポリオルガノシロキサンの調製方法は、
1)
A)ホウ素含有ルイス酸触媒、及び
B)1分子中に平均して少なくとも1つの(あるいは1~6つ、あるいは1~4つ、あるいは1~3つ、あるいは1~2つの)式-OR2;[式中、各R2は、独立して選択された1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である]のケイ素結合基を有する有機ケイ素化合物、から本質的になる出発物質を組み合わせて、それによって触媒による混合物を形成する工程と、その後、
2)触媒による混合物を、
C)1分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン、を含む出発物質に添加して、それによって官能化ポリオルガノシロキサンを含む生成物、及びHR2を含む副生成物を調製する工程と、を含む。
【0058】
実施形態2では、実施形態1に記載の方法は、工程2)において、追加のホウ素含有ルイス酸触媒をC)オルガノハイドロジェンシロキサンに添加した後、触媒による混合物をオルガノハイドロジェンシロキサンに添加する工程を更に含む。
【0059】
実施形態3では、実施形態2において追加のホウ素含有ルイス酸触媒は、C)オルガノハイドロジェンシロキサンの重量に基づいて、5ppm~250ppmの量で存在する。
【0060】
実施形態4では、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法において、工程2)は、5℃~40℃の温度で実施される。
【0061】
実施形態5では、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法において、A)ホウ素含有ルイス酸触媒、及び存在する場合、任意の追加のホウ素含有ルイス酸触媒は、B)有機ケイ素化合物とC)オルガノハイドロジェンシロキサンとの合計重量に基づいて、50ppm~6000ppm(あるいは50~600ppm)の総量で提供される。
【0062】
実施形態6では、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法の工程1において、A)ホウ素含有ルイス酸触媒は、B)有機ケイ素化合物の重量に基づいて、5ppm~600ppm(あるいは15ppm~600ppm、あるいは15ppm~250ppm)の量で存在する。
【0063】
実施形態7では、実施形態1に記載の方法は、5℃~70℃(あるいは5℃~65℃、あるいは10℃~60℃、あるいは15℃~50℃、あるいは20℃~35℃、あるいは5℃~30℃、あるいは30℃)の温度で実施される。
【0064】
実施形態8では、実施形態1に記載の方法において、工程1)において触媒による混合物は、工程2)の前に40℃~70℃に加熱される。
【0065】
実施形態9では、実施形態8に記載の方法の工程2)において、触媒による混合物は、40℃未満まで冷却される。
【0066】
実施形態10では、実施形態1に記載の方法は、10℃から25℃未満までの温度で実施される。
【0067】
実施形態11では、実施形態1~10に記載のいずれか1つに記載の方法において、ホウ素含有ルイス酸は、少なくとも1つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である。
【0068】
実施形態12では、実施形態1~11のいずれか1つの方法において、ホウ素含有ルイス酸は、1分子中に1~3つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物である。
【0069】
実施形態13では、実施形態1~12のいずれか1つにおいて、ホウ素含有ルイス酸は、(C5F4)(C6F5)2B;(C5F4)3B;(C6F5)BF2;BF(C6F5)2;B(C6F5)3;BCl2(C6F5);BCl(C6F5)2;B(C6H5)(C6F5)2;B(C6H5)2(C6F5);[C6H4(mCF3)]3B;[C6H4(pOCF3)]3B;(C6F5)B(OH)2;(C6F5)2BOH;(C6F5)2BH;(C6F5)BH2;(C7H11)B(C6F5)2;(C8H14)B(C6F5);(C6F5)2B(OC2H5);又は(C6F5)2B-CH2CH2Si(CH3)からなる群から選択される。
【0070】
実施形態14では、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法において、ホウ素含有ルイス酸触媒は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0071】
実施形態15では、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法において、B)有機ケイ素化合物は、式、R1
(4-a)SiOR2
a[式中、各R1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R2は、1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、下付き文字aは、1~4((あるいは3~4)である]のアルコキシシランである。
【0072】
実施形態16では、実施形態15においてアルコキシシランは、各R1が、アルキル(例えば、メチル、エチル、及びプロピル)、アルケニル(例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル)、及びハロアルキル(例えば、クロロメチル、クロロプロピル、及びトリフルオロプロピル)からなる群から独立して選択される。
【0073】
実施形態17では、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法において、B)有機ケイ素化合物は、式、R3
2RXSiO-(R3
2SiO)b(-OSiRXR3
2)[式中、各R3は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各RXは、式、-OR2の基であり、下付き文字b≧1(あるいは1~2,000、あるいは1~50)である]のオルガノシロキサンである。
【0074】
実施形態18では、実施形態17に記載のオルガノシロキサンは、各R3が、アルキル(例えば、メチル、エチル、及びプロピル)、アルケニル(例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル)、アリール(例えばフェニル)、及びハロアルキル(例えば、クロロメチル、クロロプロピル、トリフルオロプロピル)からなる群から独立して選択される。
【0075】
実施形態19では、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法において、出発物質B)は、単位式、(R1SiO3/2)m(R1RXSiO2/2)n(R1RX
2SiO1/2)z[式中、下付き文字mは0~20であり、下付き文字nは1~20であり、下付き文字zは0~20であり、各R1は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各RXは、式、-OR2の基である]を有する。
【0076】
実施形態20では、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法において、C)オルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式)、(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)j[式中、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0となり、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0となり、数量(g+j)>0となり、数量(g+j)が、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに少なくとも1%のケイ素結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような、値を有しており、各R4は独立して選択された一価炭化水素基(例えばメチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基)である]を有する。あるいは、数量(i+j)は、0~1000である。
【0077】
実施形態21では、実施形態20におけるオルガノハイドロジェンシロキサンにおいて、下付き文字h=0、下付き文字j=0、下付き文字g=2、下付き文字jは0~500であり、各R4は、メチル基などのアルキル基である。
【0078】
実施形態22では、実施形態20におけるオルガノハイドロジェンシロキサンにおいて、g=1、h=1、i=1、j=0であり、オルガノハイドロジェンシロキサンは、式、HR4
2SiO-(R4
2SiO)-SiR4
3を有する。
【0079】
実施形態23では、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法は、工程2)中及び/又はその後、HR2を含む副生成物を、(例えば、燃焼によって)除去する工程を更に含む。
【0080】
実施形態24では、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法は、3)生成物中の残留触媒を(例えば、アルミナを添加することによって)中和する工程を更に含む。