(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】シリコングリカンおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
C08G81/00
(21)【出願番号】P 2021537918
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2019068556
(87)【国際公開番号】W WO2020142344
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クルトマンシェ、マルク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フェリット、マイケル、サルヴァトーレ
(72)【発明者】
【氏名】パーテイン、エメット
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ウェンディ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00-81/02
C08L 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有するシリコングリカンであって、
【化1】
式中、各Aが、独立して選択された糖部分であり、各Wが、独立して選択されたベータ-アミノアルコール部分であり、各Yが、独立して選択された有機ケイ素部分であり、各Rが、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択され、各R
1が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびHから選択され、各Zが、独立して選択されたエーテル部分であり、各下付き文字oが、独立して0または1であり、下付き文字xおよびyが、それぞれ独立して、≧0~<1であり、下付き文字zが、>0~1であるが、ただし、x+y+z=1であり、下付き文字x、y、およびzで示される部分が、前記シリコングリカンにおいてランダム化形態またはブロック形態であり得る、シリコングリカン。
【請求項2】
(i)各糖部分Aが、ヘキソースであり、(ii)各R
1が、HもしくはC
1~C
4ヒドロカルビル基であり、(iii)下付き文字oが、下付き文字yで示される各部分において1であり、(iv)下付き文字oが、下付き文字zで示される各部分において1であり、(v)oが1である各部分において、前記エーテル部分Zが、式-(C
tH
2tO)
u-を有するエーテルを含み、下付き文字tが、独立して、下付き文字uで示される各部分において2~4から選択され、下付き文字uが、1~50であり、(v)各Rが、H、C
1~C
18ヒドロカルビル基、ポリオキシアルキレン基、もしくは第三級アミノ基であるか、または(vi)(i)~(v)の任意の組み合わせである、請求項1に記載のシリコングリカン。
【請求項3】
各糖部分Aが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、またはそれらの組み合わせの成分であり、それらを集合的に形成する、請求項1または2に記載のシリコングリカン。
【請求項4】
各ベータ-アミノアルコール部分Wが、独立して式(i)~(iv)であり、
【化2】
式中、各R
1が、独立して選択され、上記で定義されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコングリカン。
【請求項5】
各有機ケイ素部分Yが、独立して、シリル部分および有機ポリシロキサンから選択され、
前記シリル部分が、以下の式を有し、
【化3】
式中、D
1は、2価の連結基であり、各R
2が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、シロキシ基、シリル基、H、およびアルキレンオキシド基から選択され、前記有機ポリシロキサンが、以下の式を有し、
[R
3
3SiO
1/2]
a[R
3
2SiO
2/2]
b[R
3SiO
3/2]
c[SiO
4/2]
d
式中、各R
3が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびシロキシ基から選択されるが、ただし、少なくとも1つのR
3が、前記ベータ-アミノアルコール部分Wのうちの1つに結合したケイ素結合二価連結基であり、下付き文字a、b、c、およびdが、それぞれa+b+c+d=1となるようなモル分率であるが、ただし、a+b+c>0である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコングリカン。
【請求項6】
シリコングリカンを調製する方法であって、前記方法が、
(A)アミノエチル多糖と(B)エポキシド官能性有機ケイ素化合物とを反応させて、シリコングリカンを得ることを含む、方法。
【請求項7】
前記アミノエチル多糖が、以下の式を有し、
【化4】
式中、各Aが、独立して選択された糖部分であり、各Rが、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択され、各R
1が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびHから選択され、各Zが、独立して選択されたエーテル部分であり、各下付き文字oが、独立して0または1であり、下付き文字xが、≧0~<1であり、下付き文字y’が、>0~1であるが、ただし、x+y=1であり、下付き文字xおよびy’で示される部分が、前記アミノエチル多糖(A)においてランダム化形態またはブロック形態であり得る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記各部分A内の糖類が、ヘキソースであり、(ii)各R
1が、HまたはC
1~C
4ヒドロカルビル基であり、(iii)下付き文字oが、下付き文字yで示される各部分において1であり、(iv)oが1である各部分において、前記エーテル部分Zが、式-(C
tH
2tO)
u-を有するエーテルを含み、式中、下付き文字tが、独立して、下付き文字uで示される各部分において2~4から選択され、下付き文字uが、1~50であり、(v)各Rが、H、C
1~C
18ヒドロカルビル基、ポリオキシアルキレン基、もしくは第三級アミノ基であるか、または(vi)(i)~(v)の任意の組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アミノエチル多糖(A)が、以下の式を有するアミノエチル官能性ヒドロキシエチル-グルコース部分を含み、
【化5】
式中、各Rが、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択され、R
1が、独立して選択された置換もしくは非置換のヒドロカルビル基またはHであり、前記エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)が、以下の式を有し、
【化6】
式中、D
2が、2価の連結基であり、各R
2が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびシロキシ基から選択され、または前記エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)が、以下の式を有し、
[R
3
3SiO
1/2]
a[R
3
2SiO
2/2]
b[R
3SiO
3/2]
c[SiO
4/2]
d
式中、各R
3が、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、シロキシ基、およびエポキシド官能基から選択されるが、ただし、少なくとも1つのR
3が、エポキシド官能基を含み、下付き文字a、b、c、およびdが、それぞれa+b+c+d=1となるようなモル分率であるが、ただし、a+b+c>0である、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月31日に出願された米国仮出願第62/786,648号の優先権およびすべての利点を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、機能性ポリマー、より具体的には、シリコングリカンおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レオロジー改質特性を示す化合物は、掘削流体などのさまざまな工業用組成物に使用されている。シリコーンポリマーおよび糖質ベースのポリマー(例えばセルロースエーテル)は、そのような化合物の2つのクラスである。シリコーンポリマーおよびセルロースエーテルは、非毒性の化合物であり、工業用組成物で広く使用されているが、多少とも互いに拮抗する特性を有する。シリコーンポリマーは、合成的に調製され、通常、柔軟で弾力性があり、無極性である。シリコーンポリマーは、一般に、低表面張力および低表面エネルギーに関連した高い拡散挙動とぬれ挙動を示す。比較例として、セルロースエーテルは、通常、自然源に由来する剛性の親水性水溶性ポリマーであり、レオロジー改質剤として頻繁に利用されている。
【発明の概要】
【0004】
シリコングリカンが提供される。シリコングリカンは、以下の式を有し、
【化1】
式中、各Aは、独立して選択された糖部分であり、各Wは、独立して選択されたベータ-アミノアルコール部分であり、各Yは、独立して選択された有機ケイ素部分であり、各Rは、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択され、各R
1は、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびHから選択され、各Zは、独立して選択されたエーテル部分であり、各下付き文字o、は独立して0または1であり、下付き文字xおよびyは、それぞれ独立して≧0~<1であり、下付き文字zは、>0~1であるが、ただし、x+y+z=1であり、下付き文字x、y、およびzで示される部分は、シリコングリカンにおいてランダム化形態またはブロック形態であり得る。
【0005】
シリコングリカンを調製する方法も開示される。この方法は、(A)アミノエチル多糖および(B)エポキシド官能性有機ケイ素化合物を反応させて、シリコングリカンを得ることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
シリコングリカンは、以下の一般式(I)を有し、
【化2】
式中、各Aは、独立して選択された糖部分であり、各Wは、独立して選択されたベータ-アミノアルコール部分であり、各Yは、独立して選択された有機ケイ素部分であり、各Rは、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択され、各R
1は、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびHから選択され、各Zは、独立して選択されたエーテル部分であり、各下付き文字oは、独立して0または1であり、下付き文字xおよびyは、それぞれ独立して≧0~<1であり、下付き文字zは、>0~1であるが、ただし、x+y+z=1であり、下付き文字x、y、およびzで示される部分は、シリコングリカンにおいてランダム化形態またはブロック形態であり得る。
【0007】
一般に、シリコングリカンは、次の部分(すなわち、「グリコシド部分」)に対応する一般式(I)の部分で表されるグリコシド(すなわち、グリコシド結合を介して互いに結合した少なくとも2つの糖類)を含み、
【化3】
式中、各糖部分Aは、糖類を含み、あるいは本質的に糖からなり、下付き文字x、y、およびzは、それぞれ、グリコシド部分内の特定の糖部分Aのモル分率を表す。別の言い方をすれば、各糖部分Aは、少なくとも1つの他の糖部分Aに結合し(例えば、グリコシド結合を介して)、その結果、各糖部分Aは、シリコングリカンのグリコシドの成分であり、集合的に形成される。さらに、下付き文字x、y、およびzで示される各糖部分Aは、シリコングリカンにおいてランダム化形態またはブロック形態であり得る。本明細書でさらに詳細に記載されるように、ZおよびRは、シリコングリカンのグリコシド部分内の各糖部分Aに特有のまたはそうでなければ付加される置換基を表す。
【0008】
「糖」という用語は、一般的な状況下では「炭水化物」という用語と、ならびにさらに特定の状況下では「糖質」のような用語と同義的に使用され得ることを理解すべきである。特定の糖の命名法は、全体としてのシリコングリカンの組成、または特に糖部分Aに関して排他的ではない。むしろ、当業者によって理解されるように、各糖部分Aは、糖、炭水化物、糖質、デンプン、セルロースなど、またはそれらの誘導体もしくは改変、またはそれらの組み合わせとして説明することができる任意の部分を含み得る、あるいは任意の部分であり得る。同様に、シリコングリカン内の複数の糖部分Aの任意の組み合わせは、より説明的な用語を使用して説明することができる。例えば、「多糖」という用語は、「グリコシド」という用語と同義的に使用することができ、両方の用語は、一般に、シリコングリカンにおける複数の糖部分Aの組み合わせを指す(例えば、糖部分Aの組み合わせにより、グリコシド結合(複数可)を介して互いに結合し、および集合的にグリコシド部分を形成する)。当業者は、「デンプン」および「セルロース」などの用語を使用して、特定の状況下での糖部分Aのそのような組み合わせを指し得ることを理解されよう(例えば、シリコングリカンAにおける複数の糖部分Aの組み合わせが、「デンプン」または「セルロース」などとして当技術分野で知られている構造に適合する場合)。
【0009】
上で紹介したように、下付き文字x、y、およびzは、それぞれ、シリコングリカンのグリコシド部分内の特定の糖部分Aのモル分率を表し、x+y+z=1となるように値が選択されている。より具体的には、式(I)によって表されるように、シリコングリカンのグリコシド部分内のすべての糖部分Aを同様に置換する必要があるわけではない。したがって、シリコングリカンのグリコシド部分は、さまざまな方法で、例えば、下付き文字x、y、およびzで表されるモル分率を用いて全体組成に関して、糖部分Aあたりの平均置換数に関して(すなわち、当業者によって理解されるような置換度(DS))など、またはそれらの組み合わせで説明され得る。
【0010】
一般に、下付き文字xは、≧0~<1のモル分率である。特定の実施形態において、下付き文字xは、0~0.99、例えば、0.1~0.99、あるいは0.3~0.99、あるいは0.5~0.99、あるいは0.6~0.99、あるいは0.7~0.99、あるいは0.7~0.9、あるいは0.7~0.85のモル分率である。一般に、下付き文字yは、≧0~<1のモル分率である。特定の実施形態において、下付き文字yは、0~0.9、例えば、0.001~0.7、あるいは0.001~0.5、あるいは0.002~0.5、あるいは0.002~0.4、あるいは0.002~0.3、あるいは0.005~0.3、あるいは0.01~0.25のモル分率である。一般に、下付き文字zは、>0~1のモル分率である。特定の実施形態において、下付き文字zは、0.00001~0.9、例えば、0.00001~0.7、あるいは0.00001~0.5、あるいは0.00001~0.3、あるいは0.00001~0.2、あるいは0.00001~0.15、あるいは0.000015~0.15、あるいは0.00002~0.15、あるいは0.00002から0.1、あるいは0.00005~0.09、あるいは0.0001~0.09、あるいは0.0005~0.09、あるいは0.001~0.09のモル分率である。
【0011】
一般に、シリコングリカンは、糖部分Aあたり0.00001~0.99の有機ケイ素部分の平均有機ケイ素部分置換度(DS)(すなわち、糖部分の平均数[A]z)を有する(すなわち、糖部分の総数[A]x+[A]y+[A]zに基づく)。例えば、特定の実施形態において、シリコングリカンの有機ケイ素部分置換度は、0.00001~0.5、あるいは0.00001~0.2、あるいは0.00001~0.15、あるいは0.0001~0.5、あるいは0.0001~0.2、あるいは0.0001~0.15である。
【0012】
アミノエチル多糖(A)のアミノエチル置換度(すなわち、糖部分の総数[A]X+[A]Y+[A]zに基づいて、糖部分[A]あたりの糖部分の平均数[A]y)は、当業者に知られている様々な技術によって決定することができる。例えば、アミノエチル多糖(A)の窒素含有量(例えば、Kjeldahl法で決定される)を直接利用することも、または特定の調製方法に基づいて調整することもできる。例えば、以下の方法を考慮して説明するように、アミノエチル多糖(A)の窒素含有量は、アミノエチル多糖(A)を調製するために利用されるヒドロキシル官能性多糖の窒素含有量に基づいて選択/制御することができる。
【0013】
下付き文字x、yおよびzによって記述される特定の比率に関係なく、シリコングリカンにおける糖部分Aの総数(例えば、その重合度)は、変わることがあり、一般に10~10,000である。例えば、特定の実施形態において、シリコングリカンは、合計10~10,000の糖部分A、例えば、100~8000、あるいは250~6000、あるいは400~3600の糖部分Aを含む。
【0014】
各糖部分Aは、シリコングリカンにおける他の糖部分Aと同じであっても異なっていてもよい。例えば、特定の実施形態において、各糖部分Aは、同じである(例えば、同じ糖を含む、あるいは本質的にそれからなる)。他の実施形態において、シリコングリカンは、少なくとも1つの他の糖部分Aとは異なる(例えば、その糖に関して)少なくとも1つの糖部分Aを含む。糖部分Aに適した特定の糖の一般的な例には、従来単糖および/または糖質と呼ばれていたものが含まれる。そのような単糖には、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、フルクトースなどのようなペントース(すなわち、フラノース)、およびグルコース、ガラクトース、マンノース、グロース、イドーゼ、タロース、アロース、アルトローズなどのヘキソース(すなわち、ピラノース)が含まれる。したがって、当業者は、シリコングリカンのグリコシド部分が、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなど)を含み、および/またはそれらとして定義され得ることを理解するであろう。オリゴ糖(例えば、マルトデキストリン、ラフィノース、スタキオース、フルクトオリゴ糖などのマルトオリゴ糖)、多糖(例えば、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、グリコーゲン、親水コロイド、アミロースなどのデンプン、アミロペクチン、修飾デンプン等)等、またはそれらの組み合わせ。
【0015】
特定の実施形態において、シリコングリカンは、ヘキソースである少なくとも1つの糖部分Aを含む。いくつかのそのような実施形態において、ヘキソースは、一般式を有する:
【化4】
当業者によって理解されるように、これは、そこから形成されるグリコシド部分の内部モノマーならびに末端モノマーの両方を包含する。そのような実施形態において、各Rは独立して選択され、本明細書に記載されている通りである。特定の実施形態において、シリコングリカンのグリコシド部分は、あるいは本質的にグルコースモノマーを含み、したがって一般式に対応する:
【化5】
これは、当業者によって理解されるように、そこから形成されるグリコシド部分の内部および末端モノマーの両方も包含する。このような特定の実施形態において、各Rは、独立して選択され、本明細書に記載されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、シリコングリカンのグリコシド部分は、プルラン、マンナン、ガラクトマンナン、キシログルカン、キサンタン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなど、ならびにそれらの組み合わせから選択される多糖を含み、および/またはそれらとして定義され得る。
【0017】
特定の実施形態において、シリコングリカンのグリコシド部分は、上記のオリゴ糖または多糖のうちの1つの誘導体(例えば、改質バージョンおよび/または改変バージョン)を含む。例えば、グリコシド部分は、疎水性改質多糖、カチオン性改質多糖、親水性改質多糖、共重合多糖、またはそれらの組み合わせであり得る。そのような改質は、一般的には、それに置換基を付加する(例えば、糖部分Aがヘキソースを含む場合、C2、C3、および/またはC6位にあるものなどの天然のヒドロキシル部分を介して)ことによって、グリコシド内の糖部分Aを改変する。特に、式(I)に関して上に紹介し、示したように、シリコングリカンの下付き文字xによって示された糖部分Aは、以下に記載されるように、置換基R、および任意選択でエーテル部分Zを含む。例えば、Rは、グリコシド部分で下付き文字xによって示される任意の糖部分AにおいてHであり得る。Rは、一般的に、特定の糖部分Aが少なくとも1つの遊離ヒドロキシル置換基を有するように、任意の特定の糖部分Aの各天然(すなわち、天然に存在するおよび/または非置換)糖のHである。
【0018】
シリコングリカンのグリコシド部分が上記のような多糖誘導体を含む場合、少なくとも1つのRは、置換または非置換のヒドロカルビル基、エーテル部分、およびアミン部分から選択される。しかし、本明細書の説明を考慮して、当業者によって理解されるように、シリコングリカンは、そのように定義された任意の数の置換基Rを含むことができ、グリコシド部分の糖部分A、グリコシド部分のDSなどによってのみ限定される。
【0019】
Rのヒドロカルビル基に関して、「置換された」という用語は、炭化水素部分であって、1つまたは複数の水素原子のいずれかが、水素以外の原子(例えば、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子)で置き換えられており、炭化水素の鎖内の炭素原子が、炭素以外の原子(すなわち、Rは、鎖内の1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素など)を含む)で置き換えられている、または両方である、炭化水素部分を記述する。したがって、Rは、その炭素鎖/骨格内におよび/またはその上に(すなわち、付加され、および/または一体になって)置換基を有し得る炭化水素部分を含み、その結果Rがエーテル、アミンなどを含み得るか、またはそれらであり得ることが理解されよう。
【0020】
一般に、Rに適したヒドロカルビル基は、独立して、線状、分枝状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、ならびに飽和環状基または非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式または多環式であり得る。線状および分枝状ヒドロカルビル基は、独立して、飽和または不飽和であり得る。線状と環状ヒドロカルビル基との組み合わせの一例は、アラルキル基がある。ヒドロカルビル基の一般的な例として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基など、ならびにそれらの誘導体、改質物、および組み合わせが挙げられる。適切なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ-プロピルおよび/またはn-プロピル)、ブチル(例えば、イソ-ブチル、n-ブチル、tert-ブチル、および/またはsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、および/またはtert-ペンチル)、ヘキシル、ドデシル、ヘキサデシルなど、ならびに6~18個の炭素原子を有する他の線状もしくは分枝状の飽和炭化水素基が挙げられる。適切なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、およびジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、ヘキセニル、およびシクロヘキセニル基が挙げられる。適切な一価ハロゲン化炭化水素基(すなわち、ハロカーボン基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適なハロゲン化アルキル基の例としては、1つまたは複数の水素原子がFまたはClなどのハロゲン原子で置き換えられている上記のアルキル基が挙げられる。例えば、ハロゲン化アルキル基の特定の例としては、フルオロメチル基、2-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル基、5,5,5、4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル基、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、2,3-ジフルオロシクロブチル基、3,4-ジフルオロシクロヘキシル基、3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、2-ジクロロシクロプロピル基、および2,3-ジクロロシクロペンチル基、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。好適なハロゲン化アリール基の例としては、1つまたは複数の水素原子がFまたはClなどのハロゲン原子で置き換えられている上記のアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基およびフルオロベンジル基が挙げられる。
【0021】
特定の実施形態において、Rは、平均式-(OCnH2n)m-を有するエーテル部分を含みことができ、式中、下付き文字nは、独立して、下付き文字mで示される各部分において2~4から選択され、下付き文字mは、1~200である。当業者は、さらなる基および/または代替基がエーテル部分に存在し得、それがシリコングリカンのグリコシド部分の有用性または特性を実質的に減少させないことを容易に理解する。特定の実施形態において、Rは、平均式-(OC2H4)q(OC3H6)r(OC4H8)s-を有するポリエーテルを含むことができ、式中、下付き文字q、r、およびsは、それぞれ独立して0~200であるが、1≦q+r+s≦600であり、下付き文字q、r、およびsで示される単位は、ポリエーテルにおいてランダム化形態またはブロック形態であり得る。特定の実施形態において、下付き文字q、r、およびsのそれぞれは、4、独立して、0~100、あるいは0~50、あるいは0~20であるが、ただし、上記を条件とする。特定の実施形態において、下付き文字q、r、およびsは、それぞれ独立して、1≦q+r+s≦300、あるいは1≦q+r+s≦200、あるいは1≦q+r+s≦60になるように選択される。当業者は、上記の下付き文字m、q、r、およびsで示される部分が、任意の2つ以上のそのような部分がその中に存在する場合、Rがポリオキシアルキレンを含むようなオキシアルキレン単位であることを理解するであろう。したがって、Rは、ポリオキシアルキレン基、すなわち、複数のオキシアルキレン単位を含む部分から選択され得る。特定の実施形態において、下付き文字q、r、およびsで示される各オキシアルキレン単位は、Rに存在する場合、独立して分枝状または線状であり得る。
【0022】
特定の実施形態において、Rは、第三級アミン部分、第四級アンモニウム部分(例えば、トリメチルアンモニウム部分)などのアミン部分、またはそれらの組み合わせを含み得る。第三級アミンは、式-NR’2を有し、式中、各R’が、独立して、置換および非置換のヒドロカルビル基ならびにエーテル部分(例えば、本明細書に記載のヒドロカルビル基およびエーテル部分のいずれか)から選択され、または各R’が、アミン部分が複素環(例えば、N-置換ピペリジン、モルホリンなど)を含むように、環状部分の一部であり、共に環状部分を形成する。そのような第三級アミン部分のカチオンは、そのプロトン化またはアルキル化形態であり、一般式-[N(R’)2H]+または-[N(R’)3]+を有し、式中、各R’は、独立して選択され、上記で定義されている。そのような実施形態において、選択された特定のR’に応じて、シリコングリカンのグリコシド部分は、N,N-ジエチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジメチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジイソプロピルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジメチルアミノプロピルヒドロキシエチルセルロース、N-エチルピペリジンヒドロキシエチルセルロース、N-エチルモルホリンヒドロキシエチルセルロース、N-エチルピロリジンヒドロキシエチルセルロース、もしくはそれらの組み合わせを含み得る、および/またはそれらとして定義され得る。
【0023】
各Rは、シリコングリカンにおいて他のRと同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。さらに、各Rは、その中に同じまたは異なる機能部分を含み得る。例えば、特定の実施形態において、各Rは、Hおよびアルキル基から選択され、各アルキル基は、必要に応じて、1つまたは複数の第三級アミノ部分および/または上記のポリオキシアルキレン基で(例えば、末端でおよび/またはペンダント状に)置換される。これらの実施形態において、各Rは、置換または非置換ヒドロカルビル基、エーテル部分、アミン部分、およびHから選択されると言うことができ、当業者は、この説明を考慮して、Rに適した置換ヒドロカルビル基が、エーテルおよび/またはアミン部分を含み得ることを理解されよう。特定の実施形態において、各Rは、独立して、H、C1~C18ヒドロカルビル基、ポリオキシアルキレン基、および第三級アミノ基から選択される。
【0024】
シリコングリカンは、置換基Zを含み得る。より具体的には、式(I)を参照すると、各下付き文字oは、独立して0または1であり、その結果、下付き文字x、y、およびzで示される各糖部分Aは、独立して置換基Zで置換され得る。これについては、以下でさらに詳しく説明する。特定の実施形態において、シリコングリカンは、下付き文字xで示される少なくとも1つの糖部分Aを含み、ここでは下付き文字oは、1である。これらまたは他の実施形態において、シリコングリカンは、下付き文字xで示される少なくとも1つの糖部分Aを含み、ここでは下付き文字oは、0である。これらまたは他の実施形態において、シリコングリカンは、下付き文字yで示される少なくとも1つの糖部分Aを含み、ここでは下付き文字oは、1である。いくつかのそのような実施形態において、下付き文字oは、下付き文字yで示される各部分において1である。これらまたは他の実施形態において、本明細書の説明を考慮して理解されるように、下付き文字oは、下付き文字zで示される各部分において1である。
【0025】
一般に、各Zは、エーテル部分(以下、「エーテル部分Z」という)を含む二価の連結基である。より具体的には、各エーテル部分Zは、独立して選択され、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのエーテル基を含む任意のエーテル部分であり得る。各エーテル部分Zは、いずれかまたは他のエーテル部分Zと同じであり得る。一般的には、各エーテル部分Zのエーテル基(複数可)は、式-(CtH2tO)u-を有し、式中、下付き文字tは、下付き文字uで示される各部分において、独立して2~4で選択され、下付き文字uは、1~50である。特定の実施形態において、下付き文字uは、1~25、あるいは1~10、あるいは1~5である。特定の実施形態において、各下付き文字tは、2であり、各下付き文字uは、1であり、その結果、各エーテル部分Zは、エチルエーテルを含み、シリコングリカンのグリコシド部分は、ヒドロキシエチルセルロースを含み得る、および/またはそのように定義され得る。いくつかの実施形態において、下付き文字oおよびエーテル部分Zは、シリコングリカンのグリコシド部分が、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、またはそれらの組み合わせとして含み得るか、またはそのように定義され得るように、集合的に選択され得る。これらの例を考慮して、当業者は、エーテル部分Zが、二価炭化水素連結基(例えば、メチレン、エチレン、およびプロピレン連結基など)などのエーテル基(複数可)に加えて基を含み得ることを理解されよう。
【0026】
シリコングリカンのグリコシド部分は、アミノエチルサッカライド部分を含み得る。特に、式(I)を参照すると、シリコングリカンは、下付き文字yで示される糖部分Aを含むことができ、それぞれ、サブ式-CH2CH2N(H)R1のアミノエチル部分を含み、式中、R1は、ヒドロカルビル基またはHである。より具体的には、各R1は、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基およびHから選択される。適切なヒドロカルビル基の例としては、置換基Rに関して上記記載のものが挙げられる。特定の実施形態において、各R1は、R1がアルキルである場合、アミノエチル部分が、さらにN-アルキルアミノエチル部分として定義されるように、独立して、Hおよびアルキル基から選択される。特定の実施形態において、各R1は互いに同じである。例えば、いくつかのそのような実施形態において、各R1は、HまたはC1~C4ヒドロカルビル基である。特定の実施形態において、各R1は、Hである。いくつかの実施形態において、各R1は、エチルまたはメチルである。
【0027】
特定の実施形態において、アミノエチル部分のいくつかはプロトン化され、したがってサブ式-CH2CH2-[N(H)2R1]+になる。シリコングリカンにおいてプロトン化されたアミノエチル部分の比率は、アミノエチル置換度によってのみ限定され、当業者が選択することができる(例えば、シリコングリカンの調製中、酸とそれとを組み合わせてシリコングリカンを調製した後など)。
【0028】
式(I)を引き続き参照すると、上で紹介したように、下付き文字zで示される糖部分Aは、サブ式-CH2CH2-W-Yの部分を含み、式中、Wは、二価のベータ-アミノアルコール部分(以下「ベータ-アミノアルコール部分W」)であり、Yは、有機ケイ素部分(以下「有機ケイ素部分Y」)である。
【0029】
各ベータ-アミノアルコール部分Wは、任意のベータ-アミノアルコール部分Wが、シリコングリカンに存在する他のベータ-アミノアルコール部分Wと同じであっても異なっていてもよいように、独立して選択される。特に、各ベータ-アミノアルコール部分Wは、そのアルコール基の位置に関して線状または分枝状であり得、アミン基でプロトン化または非プロトン化され得る(すなわち、アミンカチオンまたはアンモニウムカチオンを含む)。例えば、各ベータ-アミノアルコール部分Wは、独立して、以下の式のうちの1つを有することができ、
【化6】
式中、各R
1は、独立して選択され、上記で定義されている。
【0030】
各有機ケイ素部分Yは、各有機ケイ素部分Yがいずれの、または他の有機ケイ素部分Yのいずれかと同じであり得るように、独立して選択される。特定の実施形態において、各有機ケイ素部分Yは、少なくとも1つ、あるいはそれぞれ、他の有機ケイ素部分Yと同じである。有機ケイ素部分Yは、一般に、構造および/または組成に関して限定されることはなく、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つの有機ケイ素基を含む任意の部分であり得る。例えば、有機ケイ素部分Yは、有機シリル基、有機シロキサン基、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、有機ケイ素部分Yは、それ自体が有機ケイ素基と見なされる。
【0031】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つ、あるいはそれぞれの有機ケイ素部分Yは、シラン部分を含むか、あるいはシラン部分である。そのような実施形態において、シラン部分は、一般的には、以下の一般式を有し、
【化7】
式中、D
1は、2価の連結基であり、各R
2は、独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、アルコキシ基、およびシロキシ基から選択される。
【0032】
一般に、D1は、独立して、任意の有機ケイ素部分Yに存在する各シラン部分において選択される。一般的には、D1は、任意選択で、例えば、アルコキシ基、シロキシ基、シリル基、アミノ基、アミド基、アセトキシ基、およびアミノキシ基で改質または置換され得る二価の置換または非置換の炭化水素基から選択される。D1は、線状でも分枝状であってもよい。分枝状の場合、D1は、シロキサンセグメントまたはシラン部分(すなわち、上記の一般的なシラン部分の式において、サブ式-SiR2
3で表されるシラン以外)に任意選択で結合(例えば、架橋)され得る。いくつかの実施形態において、D1は、C1~C20炭化水素基である。しかし、D1は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する骨格を含む炭化水素基であり得る(例えば、O、N、Sなど)。例えば、いくつかの実施形態において、D1は、エーテル部分を含む骨格を有する炭化水素である。
【0033】
各R
2は、独立して選択され、線状、分枝状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基、アルコキシおよびシロキシ基から選択されるが、各R
2は、本明細書の説明から理解されるように、ヒドロカルビル基およびシロキシ基の組み合わせなどのそれらの組み合わせを含み得る。R
2として使用するための適切な置換または非置換のヒドロカルビル基の例は、一般式(I)のRに関して上に記載されている。適切なアルコキシ基の例としては、一般式-O-Rを有するものが挙げられ、式中、Rは、上記で定義されている。適切なアルコキシ基の特定の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、フェノキシなどが挙げられる。適切なシロキシ基の例としては、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位が挙げられ、これらは、当技術分野で理解されるように、それぞれ、有機ポリシロキサンに存在する個々の官能性の構造単位を表す。より具体的には、以下の一般的な構造部分で示すように、[M]は、一般式R
3
3SiO
1/2の単官能単位を表し、[D]は、一般式R
3
2SiO
2/2の二官能性単位を表し、[T]は、一般式R
3SiO
3/2の三官能性単位を表し、[Q]は、一般式SiO
4/2の四官能性単位を表す:
【化8】
【0034】
これらの一般的な構造部分において、各R3は、独立して一価または多価の置換基である。当技術分野で理解されるように、各R3に適した特定の置換基は、限定されるものではなく、単原子または多原子、有機または無機、線状または分枝状、置換または非置換、芳香族、脂肪族、飽和または不飽和、およびそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0035】
通常、各R3は、独立して、ヒドロカルビル基およびシロキシ基から選択される。R3によって表されるヒドロカルビル基(複数可)は、存在する場合、置換または非置換であり得、Rに適したヒドロカルビル基の例に関して上述したように、脂肪族、芳香族、環状、脂環式などであり得、R3に関して使用するのに適したものの同様の例示である。R3によって表されるシロキシ基は、存在する場合、置換または非置換であり得、あるいは、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位の任意の組み合わせを含み得る(すなわち、シラン部分は、分枝状および/またはデンドリマー状シロキサンを含み得る)。
【0036】
いくつかの実施形態において、シリコングリカンの少なくとも1つの、あるいは少なくとも2つの、あるいはそれぞれの有機ケイ素部分Yは、有機ポリシロキサンを含むか、あるいは、有機ポリシロキサンである。そのような実施形態において、有機ポリシロキサンは、一般的に、以下の式を有し、
[R3
3SiO1/2]a[R3
2SiO2/2]b[R3SiO3/2]c[SiO4/2]d
式中、各R3は、上記で定義されているが、ただし、少なくとも1つのR3は、ベータ-アミノアルコール部分Wに結合したシリコン結合二価連結基であり、下付き文字a、b、c、およびdは、それぞれa+b+c+d=1となるようなモル分率であるが、ただし、a+b+c>0である。
【0037】
上記で紹介し、説明したように、下付き文字a、b、c、およびdで示されるシロキシ部分は、それぞれ、[M]、[D]、[T]、および[Q]シロキシ単位に対応することを当業者は理解されよう。いくつかの実施形態において、有機ポリシロキサンは、繰り返し[D]単位を含む、すなわち、下付き文字b>0である。これらの実施形態において、下付き文字bは、一般的には、0.3~1(例えば、0.3≦b≦1)、例えば、0.3~0.9999、あるいは0.3~0.999、あるいは0.3~0.99、あるいは0.3~0.9、あるいは0.5~0.999、あるいは0.6~0.999、あるいは0.7~0.99、あるいは0.8~0.99、あるいは0.85~0.99、あるいは0.9~0.99の値である。下付き文字aは一般的に、0~0.1(0≦a≦0.1)、例えば、0~0.099、あるいは0~0.09、あるいは0~0.085、あるいは0~0.08、あるいは0~0.075、あるいは0~0.07、あるいは0~0.065、あるいは0~0.06、あるいは0~0.055、あるいは0~0.05、あるいは0.001~0.05、あるいは0.002~0.05、あるいは0.005~0.01の値である。下付き文字cおよびdは一般的に、それぞれ独立して選択された0~0.1の値(例えば、0≦c≦0.1および0≦d≦0.1)、例えば、0~0.09、あるいは0~0.075、あるいは0~0.05、あるいは0~0.025、あるいは0~0.009、あるいは0~0.001、あるいは0~0.0001である。特定の実施形態において、有機ポリシロキサンは、線状シロキサンセグメントを含み、下付き文字bが0.9~1であり、下付き文字aが0~0.1であり、下付き文字cおよびdがそれぞれ0である。有機ポリシロキサンが繰り返し[D]単位を含む場合、任意の1つのシロキサンセグメント中の特定の[D]単位の数(すなわち、重合度、DP)は限定されない。一般的には、そのようなシロキサンセグメントは、1~700の繰り返し[D]単位、例えば2~600、あるいは2~500、あるいは5~400、あるいは5~300、あるいは10~250、あるいは10~200、あるいは15~150、あるいは15~100、あるいは15~50の繰り返し[D]単位を含む。
【0038】
上記のシラン部分および有機ポリシロキサンの両方に関して(すなわち、いずれかまたは両方が有機ケイ素部分Yにおいてまたは有機ケイ素部分Yとして利用される場合)、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位の存在および比率は、独立して、シラン部分の各シリル置換基の各R3の特定の置換基として、ならびに任意の特定のシロキシ単位(例えば、下付き文字a、b、およびcで示されるもの)の各R3の特定の置換基として選択される。例えば、有機ポリシロキサンが線状有機ポリシロキサンである場合など、有機ポリシロキサンの直線性を高めるために、一般的に、0またはその付近の[T]および[Q]単位の比率が選択される。このような有機ポリシロキサンは、一般的に線状、または実質的に線状であるが、[T]および/または[Q]単位(例えば、c+d>0の場合)に起因するいく分かの分枝を含み得る。逆に、有機ポリシロキサンが樹脂である場合、[T]および/または[Q]単位の比率は、0より大きくなるように選択される。したがって、当業者は、シロキサンセグメントの組成を選択して、例えば、特定の有機ポリシロキサンの所望の特性と、シリコングリカン、それと共に調製されるエマルジョンの特定の相(例えば、非水相、連続相、および/もしくはシリコーン相)および/またはエマルジョン自体、シリコングリカンを含む配合物、そのような配合物から形成されるコーティング、ならびにそれらの組み合わせのいずれの所望の特性/意図される特性ならびに/または特徴(例えば、物理的、化学的、美的など)とに基づいて、有機ポリシロキサンの組成、したがってシリコングリカンを制御することになる。例えば、シリコングリカンが高い融点および/または軟化点を有すること、またはそれを用いて調製された配合物が特定の形態(例えば、固体、ゲルなどの形態)であることが望ましいことがあり、シリコングリカンの有機ポリシロキサンの組成を選択することにより、当業者がそのような望ましい特性の範囲を達成することが可能になり得る。一般に、線状シロキサンセグメントが有機ケイ素部分Yで利用される場合、本開示によるシリコングリカンを含む組成物から形成される層またはコーティングは、一般的に、有機ポリシロキサンが[T]および/または[Q]単位に起因する分枝形成の増加を含む実施形態と比較して、感触の改善(例えば、快適な堆積物)および柔軟性を有する。樹脂状有機ポリシロキサンが有機ケイ素部分Yにおいて、または有機ケイ素部分Yとして使用される場合、本開示によるシリコングリカンを含む組成物で/から形成される生成物は、一般的には、より線状のシロキサンセグメントが利用される実施形態と比較して、硬度および移動抵抗が増加する。
【0039】
シリコングリカンを調製する方法も提供し、以下、一般に「調製方法」と呼ぶこととする。調製方法は、(A)アミノエチル多糖と、(B)エポキシド官能性有機ケイ素化合物とを反応させてシリコングリカンを得ることを含む。
【0040】
本明細書の説明を考慮して当業者によって理解されるように、調製方法で利用されるアミノエチル多糖(A)は、上記のグリコシド部分に対応するシリコングリカンの一部を形成する。同様に、調製方法で利用されるエポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、有機ケイ素部分Yに対応するシリコングリカンの一部を形成する。以下でさらに詳細に説明するように、ベータ-アミノアルコール部分Wは、一般に、成分(A)と(B)との反応によって形成される。
【0041】
アミノエチル多糖(A)は、以下の一般式(II)を有し、
【化9】
式中、各A、Z、R、R
1、および下付き文字oは、独立して選択され、式(I)に関して上記で定義されており、下付き文字xは、≧0~<1であり、下付き文字y’は、>0~1であるが、ただしx+y’=1であり、下付き文字xおよびy’で示される部分は、アミノエチル多糖(A)においてランダム化形態またはブロック形態であり得る。
【0042】
アミノエチル多糖(A)は、特に限定されることはなく、一般に上記の式(I)のグリコシド部分に対応する。例えば、式(I)の下付き文字yで示される糖部分Aに関して上記のとおり、式(II)のアミノエチル多糖(A)の各R1は、独立して、ヒドロカルビル基およびHから選択される。同様に、特定の実施形態において、少なくとも1つのR1は、アミノエチル多糖(A)がN-アルキルアミノエチル多糖としてさらに定義され得るように、アルキル基(例えば、C1~C4アルキル基)である。
【0043】
特定の実施形態において、アミノエチル多糖(A)のアミノエチル部分のいくつか(すなわち、上記の一般式(II)のサブ式-CH2CH2N(H)R1によって表されるもの)は、プロトン化されており、したがって、サブ式-CH2CH2-[N(H)2R1]+である。アミノエチル多糖(A)においてプロトン化されたアミノエチル部分の比率は、アミノエチル置換度によってのみ限定され、当業者が選択することができる(例えば、アミノエチル多糖(A)の調製中、その中和量を限定することによって、アミノエチル多糖(A)調製後、酸との組み合わせによって)。
【0044】
成分(A)および(B)のそれぞれは、得られるか、または形成され得る。特定の実施形態において、調製方法は、アミノエチル多糖(A)を調製することを含む。特に、調製方法は、(A1)ヒドロキシル官能性多糖と、(A2)ハロゲン化アジリジニウム化合物とを反応させてアミノエチル多糖(A)を得ることを含み得る。そのような実施形態において、アミノエチル多糖(A)は、シリカングリカンの調製方法における中間体として定義され得るか、さもなければ考慮され得る。
【0045】
本明細書の説明を考慮して当業者によって理解されるように、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、アミノエチル多糖(A)の多糖部分を、最終的にはシリカングリカンのグリコシド部分を形成する。したがって、グリコシド部分に関する上記の説明は、ヒドロキシル官能性多糖(A1)が、上記のオリゴ糖または多糖のいずれかを含み得るように、ヒドロキシル官能性多糖(A1)に同様に適用される。例えば、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、グリコーゲン、親水コロイド、デンプン、加工デンプンなど、またはそれらの組み合わせを含み得るか、あるいは本質的にそれらからなる。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、ヒドロキシアルキルセルロースエーテルを含む。そのような実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、単一種類のヒドロキシアルキル基、または2種類以上のヒドロキシアルキル基を含み得る。例えば、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基など、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、プルラン、マンナン、ガラクトマンナン、キシログルカン、キサンタン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなど、ならびにそれらの組み合わせを含むか、あるいはそれらである。
【0046】
ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、疎水性改質多糖、カチオン性改質多糖、親水性改質多糖、共重合多糖、またはそれらの組み合わせなど、上記で定義されたオリゴ糖または多糖のうちの1つの改質/誘導体(例えば、改質バージョンおよび/または改変バージョン)を含み得る、あるいはそれらであり得る。そのような多糖の特定の例としては、N,N-ジエチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジメチルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジイソプロピルアミノエチルヒドロキシエチルセルロース、N,N-ジメチルアミノプロピルヒドロキシエチルセルロース、N-エチルピペリジンヒドロキシエチルセルロース、N-エチルモルホリンヒドロキシエチルセルロース、N-エチルピロリジン、ヒドロキシエチルセルロースなど、ならびにそれらの誘導体、改質物、および組み合わせが、挙げられる。
【0047】
特定の実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、ヒドロキシルエチルセルロースである。そのような実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、例えば炭化水素部分、ポリオキシアルキレン部分、および/またはそれに付加されるアミン部分を介して、カチオン性、疎水性、および/または親水性に改質され得る。
【0048】
ヒドロキシル官能性多糖(A1)の置換度(例えば、その中の糖部分Aあたりのヒドロキシル官能性、ヒドロキシアルキル基の数、第四級アンモニウム基の数などに関して)は、ヒドロキシル官能性多糖(A1)の分析によって決定される。当業者によって理解されるように、そのような分析としては、例えば、ASTM試験方法D4794-94(2017)に概説されているZeiselガスクロマトグラフィー(GC)技術を介したエトキシルおよび/またはヒドロキシエトキシル置換(例えば、ヒドロキシル官能性多糖(A1)がセルロースエーテルである場合)を決定すること、ASTM試験方法D3876-96(2013)などに概説されているZeisel GS技術を介してメトキシルおよび/またはヒドロキシプロポキシル置換(例えば、ヒドロキシル官能性多糖A1がセルロースエーテルである場合)を決定すること、またはそれらの組み合わせを含み得る。そのような技術は、当技術分野で知られており、例えば、利用されるヒドロキシル官能性多糖(A1)の種類、それに付加される官能基、その置換度などに基づいて、当業者によって独立して選択される。
【0049】
特定の実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、糖部分Aあたり0.50~4.0 C1~C6アルキルエーテル基、例えば、0.5~2.5、あるいは0.5~3.5、あるいは1.0~2.5、あるいは1.5~2.5の平均置換度を有するヒドロキシルアルキルセルロースエーテルである。
【0050】
ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、一般的に、少なくとも約2500の重量平均分子量(Mw)を有する。特定の実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、少なくとも2500、あるいは少なくとも5000、あるいは少なくとも10,000、あるいは少なくとも25,000、あるいは少なくとも50,000、あるいは少なくとも75,000のMwを有する。これらまたは他の実施形態において、ヒドロキシル官能性多糖(A1)は、70,000~3,000,000、例えば、100,000~1,500,000、あるいは150,000~1,000,000のMwを有し得る。重量平均分子量は、W.Gao,X.M.Liu,およびR.A.Gross,Polym.Int.,58,1115-1119(2009)に記述されているように、多角度光散乱(MALLS)検出技術を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して容易に決定できる。
【0051】
ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、以下の一般式を有し、
【化10】
式中、R
1は、上記で定義されており、-Xは、塩化物または臭化物である。当業者によって理解されるように、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、アミノエチル多糖(A)のサブ式-CH
2CH
2N(H)R
1のアミノエチル部分を形成する。したがって、R
1の範囲および限定に関する上記の説明は、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)に関しても同様に適用可能である。特定の実施形態において、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、アジリジニウム、N-メチルアジリジニウム、N-エチルアジリジニウム、N-プロピルアジリジニウム、N-ブチルアジリジニウム、およびそれらの組み合わせから選択されるカチオンの塩化物および/または臭化物塩から選択される。特定の実施形態において、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、塩化アジリジニウムまたは塩化N-メチルアジリジニウムを含むか、あるいはそれらである。
【0052】
ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、当業者が既知の任意の方法によって調製され得るか、または別の方法で得られ得る。例えば、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、対応するベータハロエチルアミンのハロゲン化物塩を化学量論量の塩基(例えば、NaOH、KOHなど)で中和することによってその場で形成され得る。
【0053】
ヒドロキシル官能性多糖(A1)およびハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、様々な量で反応して、アミノエチル多糖(A)を形成し得る。一般的には、成分(A2)は、アルキル化される(A1)のヒドロキシル基の数に基づいて、少なくとも1:1の化学量論比で利用される。したがって、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)の量は、一般的には、当業者によって理解されるように、ヒドロキシル官能性多糖(A1)の量、重合度、および/または置換度に基づいて選択される。アミノエチル多糖(A)のアミノエチル置換度を最大化するために、成分(A2)の過剰または総過剰を利用することができる。例えば、成分(A1)および(A2)は、1:≧1の化学量論比(A1:A2)で、成分(A1)の遊離ヒドロキシル置換度が≦1の場合でも、利用することができる。より高いまたはより低い比も利用することができる。
【0054】
ヒドロキシル官能性多糖(A1)およびハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)は、(例えば、利用されている特定のヒドロキシル官能性多糖(A1)および/またはハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)、形成される特定のアミノエチル多糖(A)などを考慮して)独立して選択される様々な条件下で反応し得る。例えば、成分(A1)および(A2)の反応の温度および/または雰囲気は、独立して選択され得る。より具体的には、成分(A1)および(A2)は、周囲条件下で、制御された雰囲気下で(例えば、N2下、アルゴン下、など)、高温で(例えば、>25℃で、例えば、30~150、あるいは30~100、あるいは50~100、あるいは70~100、あるいは50~85℃などで)、またはそれらの組み合わせで反応し得る。特定の実施形態において、反応成分(A1)および(A2)は、30分~24時間、例えば1~12時間、あるいは2~6時間の時間で行われる。しかし、当業者によって理解されるように、利用される特定の時間は、これらの範囲とは異なる場合があり、反応のサイズ/規模、反応が行われる特定の成分、および利用される他の反応条件に基づいて選択される。
【0055】
成分(A1)および(A2)は、反応が溶液、エマルジョン、懸濁液、スラリー、二相混合物中で、またはそれらの組み合わせで行われるように、担体液(例えば、溶媒、希釈剤、ビヒクル、またはそれらの組み合わせ)の存在下で反応され得る。利用される特定の溶媒、担体、および/または希釈剤、ならびに使用されるそれらのそれぞれの量は、独立して、例えば、利用される特定のヒドロキシル官能性多糖(A1)および/またはハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)、形成される特定のアミノエチル多糖(A)などに基づいて、当業者によって選択される。例えば、多糖の反応は、例えば、多糖が極性の有機希釈液に懸濁されているが溶解されていない状態で不均質に行われ得ることを当業者は理解されよう。しかし、反応の様々な成分は、均質な混合物として(すなわち、それと不均質な反応混合物を形成する前に)使用することができる。
【0056】
成分(A1)および(A2)の反応における希釈剤中で、または希釈剤としての使用など、担体液中でまたは担体液としての使用に適した成分の例としては、一般に水溶性極性有機溶媒が挙げられる。特定の実施形態において、希釈剤は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、またはそれらの組み合わせを含む。しかし、本明細書でさらに詳細に記載されているもののいずれなど、追加のおよび/または代替の担体液および/または希釈剤も利用することができる。
【0057】
反応中の特定の溶媒(例えば、水、プロトン化溶媒など)の含有量は、特に希釈剤を使用する場合(例えば、不均一反応において)、多糖の膨潤をもたらすように調整することができる。したがって、反応内の希釈剤、水などの量は、ヒドロキシル官能性多糖(A1)の十分な膨潤を達成するように特定の成分(例えば、成分(A1)、(A2)、塩基など)を考慮して選択され、その結果、ハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)によるそのアルキル化がそれに応じて進行し得る。
【0058】
アミノエチル多糖(A)のアミノエチル置換度は、変化し得、例えば、ヒドロキシル官能性多糖(A1)のヒドロキシル置換度、利用されるハロゲン化アジリジニウム化合物(A2)の均等物、成分(A1)と(A2)とを反応せる条件などによって、選択され、および/または制御され得る。一般的に、アミノエチル多糖(A)は、糖部分Aあたり0.05~1のアミノエチル基の平均置換度、例えば、0.075~0.75、あるいは、0.075~0.6、あるいは0.09~0.6、あるいは0.1~0.6、あるいは0.1~0.5、あるいは0.15~0.45を有する。アミノエチル多糖(A)のアミノエチル置換度は、当技術分野で知られている様々な技術によって決定することができる。例えば、アミノエチル多糖(A)の窒素含有量(例えば、Kjeldahl法で決定される)を直接利用するか、または(例えば、ヒドロキシル官能性多糖(A1)の窒素含有量に基づいて)調整して、アミノエチル多糖(A)のアミノエチル置換度を確認することができる。
【0059】
エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、以下の一般式を有し、
【化11】
式中、Yは、独立して選択された有機ケイ素部分であり、D
2は、2価の連結基である。
【0060】
一般に、D2は、任意選択で、例えば、アルコキシ基、シロキシ基、シリル基、アミノ基、アミド基、アセトキシ基、およびアミノキシ基で改質または置換され得る二価の置換または非置換炭化水素基から選択される。D2は、線状でも分枝状であってもよい。いくつかの実施形態において、D2は、C1~C20炭化水素基である。しかし、D2は、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)を有する骨格を含む炭化水素基であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、D2は、エーテル部分を含む骨格を有する炭化水素である。いくつかのそのような実施形態において、D2は、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)がグリシジルエーテルを含むように選択される。
【0061】
エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)の有機ケイ素部分Yは、すなわち、式(I)に関して上記したように、シリコングリカンの有機ケイ素部分Yに等しい。したがって、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)の有機ケイ素部分Yは、シリル部分、有機ケイ素部分、またはその両方を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、以下の式を有し、
【化12】
式中、各D
2およびR
2は、独立して選択され、上記で定義されている。特定の実施形態において、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、以下の式を有し、
[R
3
3SiO
1/2]
a[R
3
2SiO
2/2]
b[R
3SiO
3/2]
c[SiO
4/2]
d
式中、下付き文字a、b、c、およびd、ならびに各R
3は、独立して選択され、上記で定義されているが、ただし、a+b+c>0であり、少なくとも1つのR
3がエポキシド官能基を含む。特定の実施形態において、例えば、少なくとも1つのR
3は、上記の二価連結基D
2である。
【0062】
アミノエチル多糖(A)およびエポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、様々な量で反応して、シリコングリカンを形成することができる。一般的に、成分(B)は、例えば、成分(B)のエポキシドへの成分(A)のエチルアミノ基アミンの開環付加を介して、アルキル化される成分(A)のエチルアミノ基の数に基づいて、少なくとも1:1の化学量論比で利用され、それにより上記のベータ-アミノアルコールW部分が形成される。したがって、当業者によって理解されるように、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)の量は、一般的に、アミノエチル多糖(A)の量、重合度、および/または置換度に基づいて選択される。シリコングリカンのシリコン置換度を最大化するために、成分(B)の過剰または総過剰を利用することができる。例えば、成分(A)および(B)は、1:≧1の化学量論比(A:B)で、成分(A)のアミノエチル置換度が≦1の場合でも、利用することができる。より高いまたはより低い比も利用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、成分(A)および(B)を、≧1:1の化学量論比(A:B)で利用して、例えば、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)のアミノエチル多糖(A)への相対的なグラフト効率を高めることができる。
【0063】
アミノエチル多糖(A)およびエポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、当業者によって理解されるように、様々な条件下で反応させることができ、独立して選択されることができる(例えば、利用される特定の化合物(A)および/または(B)を考慮して、形成される特定のシリコングリカン、反応のサイズなど)。例えば、成分(A)および(B)の反応の温度および/または雰囲気は、独立して選択され得る。より具体的には、成分(A)および(B)は、周囲条件下で、制御された雰囲気(例えば、N2、アルゴンなど)下で、高温で(例えば、>25℃、例えば、30~150、あるいは30~100、あるいは50~100、あるいは50~90、あるいは60~80℃)、またはそれらの組み合わせで、反応させることができる。反応温度は、反応の特定の成分に基づいて選択され、したがって、蒸発損失(例えば、揮発性成分の)を最小限に抑えるため、還流を達成するため(すなわち、適切な反応器内で行われる場合)、揮発性成分を追い出すため、またはそれらを組み合わせるために(例えば、温度ランピングを使用することにより)選択することができる。特定の実施形態において、反応は、周囲温度および/または室温(例えば、20~約30、あるいは22~28、あるいは24~26℃)で行われる。
【0064】
アミノエチル多糖(A)およびエポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)は、30分~100時間などの任意の時間で反応させることができる。例えば、特定の実施形態において、成分(A)と(B)との反応は、4時間~48時間、例えば5、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、または47時間の間、行われる。いくつかの実施形態において、50、60、70、80、または90時間など、48~100時間の間利用される。しかし、当業者によって理解されるように、使用される特定の時間は、これらの範囲とは異なる場合があり、反応のサイズ/規模、使用される特定の成分(A)および(B)、および選択される他の反応条件に基づいて選択されることになる。特定の実施形態において、反応成分(A)および(B)は、0.5~24時間、例えば1~18時間、あるいは1~12時間、あるいは1~6時間の間行われる。
【0065】
成分(A)および(B)は、例えば、多相(例えば、二相性)反応などの不均一な条件下で反応させることができる。一般的に、成分(A)および(B)は、多成分希釈剤であり得る希釈剤の存在下で不均一に反応される。一般に、希釈剤は、アミノエチル多糖(A)を膨潤させるが溶解しないように、成分(B)の担体として機能するように、またはその両目的で選択される。したがって、希釈剤の特定の成分は、利用される特定のアミノエチル多糖(A)(例えば、その溶解性、膨潤性、および/または反応性に依存する)および/または利用される特定の有機ケイ素化合物(B)(例えば、溶解性および/またはそのシラン部分の官能性)に基づいて選択される。
【0066】
希釈剤は通常、有機溶媒を含む。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびn-プロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、およびオクタンなどの脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、およびエチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、および塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル;テトラヒドロフラン;揮発油;ミネラルスピリット;ナフサ;n-メチルピロリドンなど、ならびにそれらの誘導体、改質物、およびそれらの組み合わせを含むものが挙げられる。一般的に、有機溶媒は、水と親和性のある溶媒などの極性有機溶媒である。特定の実施形態で利用されるそのような極性有機溶媒の特定の例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、希釈剤は、シリコーン流体を含む。そのような実施形態において、シリコーン流体は、一般的に、低粘度および/または揮発性シロキサンであり、例えば、低粘度有機ポリシロキサン、揮発性メチルシロキサン、揮発性エチルシロキサン、揮発性メチルエチルシロキサンなど、またはそれらの組み合わせである。一般的に、シリコーン流体は、25℃で1~1,000mm2/秒の範囲の粘度を有する。いくつかの実施形態において、シリコーン流体は、一般式(R4R5SiO)eを有するシリコーンを含み、式中、各R4およびR5は、独立して、H、および置換または非置換ヒドロカルビル基から選択され、下付き文字eは、3~8である。好適なシリコーン流体の具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3、ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサンペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、ならびにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキシルトリメチコンなど、ならびにそれらの誘導体、改質物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切なシリコーン流体のさらなる例としては、5x10-7~1.5x10-6m2/秒などの適切な蒸気圧を有するポリ有機シロキサンが挙げられる。希釈剤は、一般的に、極性成分をさらに含み、これは、一般的に、水または別の極性化合物(例えば、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシドなど)が挙げられる。希釈剤の極性成分の特定の含有量は、成分(A)の多糖の膨潤をもたらするように調整される。したがって、希釈剤の量、希釈剤の極性対非極性または他の有機溶媒の比率、および反応内の成分(A)および/または(B)などに対する極性成分の比率は、有機ケイ素化合物(B)のそれへのグラフト化を容易にするためにアミノエチル多糖(A)の十分な膨潤を達成するために独立してまたは集合的に選択される。同様に、希釈剤は、1つまたは複数の添加剤を含み得、これらは、独立して、希釈剤との反応の任意の成分の溶解度および/または適合性を増加させるおよび/または減少させるために選択され得る。特定の実施形態において、極性成分は水を含む。これらまたは他の実施形態において、極性成分は、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、および/またはジメチルスルホキシドを含む。
【0068】
特定の実施形態において、アミノエチル多糖(A)と、エポキシド官能性有機ケイ素化合物(B)とを反応させて、シリコングリカンを含む反応生成物を得、この調製方法は、反応生成物からシリコングリカンを単離することを含む。そのような実施形態において、単離のための任意の適切な技術および/またはプロトコルを利用することができる。適切な単離技術の例としては、デカンテーション、蒸留、蒸発、抽出、濾過、凍結乾燥、イオン交換クロマトグラフィー(例えば吸着)、擬似移動床クロマトグラフィー、分配、相分離、ストリッピング、および洗浄が挙げられる。当業者によって理解されるように、これらの技術の多くは、シリコングリカンを単離するために互いに組み合わせて(すなわち、順次)使用され得る。単離は、シリコングリカンを精製することを含み得、したがって、シリコングリカンの精製と呼ばれ得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、シリコングリカンを単離することは、一般的に、それと組み合わせた他の化合物と比較して、シリコングリカンの相対濃度を増加させることとして定義される。したがって、当技術分野で理解されるように、単離/精製は、そのような組み合わせから他の化合物を除去すること(すなわち、シリコングリカンと混ぜ合わされる不純物の量を減らすこと)および/または混ぜ合わせからシリコングリカン自体を除去することを含み得る。選択された特定の技術(複数可)に関係なく、シリコングリカンの精製は、反応自体と順次(すなわち、一列に)行なわれることができ、したがって、自動化され得る。他の例において、精製は、シリコングリカンを含む反応生成物がさらされる独立した手順であり得る。
【0069】
特定の実施形態において、シリコングリカンを単離することは、例えば、追加の有機溶媒(例えば、アセトン)をそれに添加して、反応生成物を分配するおよび/または相分離することによって、希釈剤の溶解度プロファイルを変えることを含む。これらまたは他の実施形態において、シリコングリカンを単離することは、反応生成物の他の成分を濾過して取り除く(すなわち、シリコングリカンが残留物/固体中に存在する場合)ことを含む。これらまたは他の実施形態において、シリコングリカンを単離することは、反応生成物の他の成分をシリコングリカンから洗い流す(例えば、有機および/または水性溶媒を用いて)ことを含む。特定の実施形態において、シリコングリカンを単離することは、それから溶媒および/または他の揮発性成分をストリッピングすることを含み、これは、シリコングリカンを乾燥させる(例えば、水が除去されているときに)ことを包含する。
【0070】
本明細書の実施例を考慮して理解されるように、シリコングリカンは、そのレオロジーを改質するために、掘削流体などの工業用組成物に使用することができる。
【0071】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」に記載される表現および特定の化合物、組成物、または方法に限定されないことが理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲の範疇にある特定の実施形態間で異なる場合がある。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、他のすべてのマーカッシュメンバーから独立した各々のマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/または予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、およびまたは組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。
【0072】
さらに、本発明の様々な実施形態の説明に依拠する任意の範囲および部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範疇に独立してかつ集合的に含まれ、かかる値が本明細書に明示的に書かれていない場合であっても、それらの全体および/または小数値を含むすべての範囲を説明および企図すると理解される。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が本発明の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、かつかかる範囲および部分範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9の」範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、および上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに詳しく説明され、これは、個別および集合的に添付の特許請求の範囲の範疇にあり、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。さらに、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または改質する文言に関して、かかる文言は部分範囲、および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲には、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などが本質的に含まれ、各部分範囲は、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。最後に、開示された範囲内の個別の数字は、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。例えば、「1~9」という範囲には、3などのさまざまな個別の整数、ならびに4.1などの小数点(または小数)を含む個別の数値が含まれ、これは、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。
【0073】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0074】
蛍光X線(XRF):
すべての試料を、Rigaku Primus I波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)分光計(「XRF装置」)を使用して分析する。
【0075】
フルスキャン-相対的存在量
XRF装置には、一次ビームフィルターを備えた最大4kWのRhターゲットX線源、Rh K-ラインオーバーラップ(Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、およびSn K-ライン)用のNi400、Rh L-ラインオーバーラップ(Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、およびSn L-ライン)用のAl25、およびデリケートな試料のX線管保護用のBe30が装備されている。結晶の分析としては、LiF200(K-U)、PET(Al-Si)、Ge(P-Cl)、RX25(F-Mg)、RX35(O)、RX45(N)、RX61F(C)、およびRX75(B)が挙げられる。検出器には、Ti-U用のシンチレーションカウンター(SC)およびB-Ca用のガス(フロー)比例計数管が含まれる。
【0076】
特に指定のない限り、試料を、6μmポリプロピレン薄膜窓を含む試料カップに充填し、ヘリウム環境下で30mmの試料マスクを使用して分析する。試料中で検出された各元素の相対存在量を、特定されたマトリックス化合物を使用した1点キャリブレーションに対して計算する。メーカーによって特定された膜不純物には、Al、P、Ca、Ti、Fe、Cu、Zn、およびZrが含まれる。試料を、30mmの試料マスクおよび上記の条件を使用して真空中で分析する。
【0077】
減衰全反射赤外線(ATR-IR):
すべての試料を、Thermo Scientific Nicolet 6700フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を使用して分析する。
【0078】
試料を、ダイヤモンド結晶を備えたシングルバウンス減衰全反射アタッチメントを使用するIR分光法(4cm-1の解像度で64スキャンを使用)によって検査する。表面分析中の浸透の深さは、1000cm-1付近で2ミクロンと推定される。
【0079】
核磁気共鳴(NMR)
すべての試料を、Agilent400MHz NMR分光計を使用して分析する。
【0080】
各試料(10mg)を0.6mLのD2Oに溶解し、この混合物を分析のためにNMR管(1H NMR)に移す前に、勢いよく撹拌する。取得パラメータを、以下の表1にまとめる。
【0081】
【0082】
レオロジー
レオロジー測定は、カップとボブセンサーを備えたTA Instruments DHR-3レオメーターを使用し、25℃で40mmのコーンとプレートを使用して行う。
【0083】
各試料(0.2g)をH2O(9.8g)に溶解して2%溶液を生成し、これを70℃で18時間撹拌し、次いで自然に冷却させる。試料がH2Oに不溶性である場合、85℃ まで数時間加熱する。試料が不溶性のままである場合、酢酸(1当量)を溶液に加え、次いで24時間静置する。
【0084】
次いで、溶液をせん断する(超音波ソニケーター;100Wの電力で60秒間)。試料を予備せん断し(せん断速度1s-1で40秒)、粘度を40秒間にわたって1秒間隔で測定する。粘度は、6.31s-1のせん断速度で測定されたすべてのデータポイントの平均値として、mPa・sで報告される。
【0085】
調製例1:一般的なアミノエチル多糖の調製(N-メチルアミノエチル改質ヒドロキシエチルセルロース(HEC))
調製:
1000mLの4つ口丸底フラスコには、攪拌パドルとモーター、ゴム製血清キャップ、窒素注入口、およびクライゼンアダプターが取り付けられている。クライゼンアダプターには、J-KEMコントローラに接続された地下熱電対と、鉱油バブラーに接続されたフリードリッヒコンデンサーとが取り付けられている。フラスコに、ヒドロキシル官能性多糖(56.75gのCELLOSIZE(商標)HECEP-300、Dow Chemical Company、Midland MI製;50.23gのHEC含有量、0.2009モル、DS2.0)、ハロゲン化アジリジニウム前駆体(N-メチルアミノエチルクロリド塩酸塩);31.68g、0.2437モル)、およびイソプロピルアルコール(IPA)(280.4g)と脱イオン水(32.4g)との混合物を充填して、スラリーを形成する。窒素(毎秒約1気泡)でパージしながら、スラリーを1時間撹拌(撹拌モーターを70rpmに設定)して、混入した酸素を除去する。
【0086】
塩基(50%水酸化ナトリウム水溶液;19.01g、0.2376モル)を窒素下で1分間かけて攪拌中のスラリーに滴下(プラスチックシリンジを介して)する。スラリーを5分間攪拌し、次いで80℃に加熱し、(80℃に設定されたJ-KEMコントローラに接続された加熱マントルを介して)4時間保持する。次いで、加熱マントルを取り外し、フラスコ内の窒素圧を正に維持しながら、スラリーを冷水浴で冷却する。周囲温度で、酸(氷酢酸;6.0g)を加えることによってスラリーを中和して、アミノエチル多糖を含む反応混合物を得る。
【0087】
アミノエチル多糖を、ブフナー漏斗(金属、粗フリット)を介した真空濾過によって固体として反応混合物から単離し、次いで、ブフナー漏斗において以下の洗浄液で洗浄する:アセトン(600g)と脱イオン水(200g)の混合物で1回;アセトン(600g)と脱イオン水(160g)の混合物で3回、アセトン(600g)と脱イオン水(80g)の混合物で1回、純粋なアセトン(600g)で2回。次いで、アミノエチル多糖を50℃で一晩真空乾燥させて、単離し、乾燥したアミノエチル多糖(N-メチルアミノエチル改質ヒドロキシエチルセルロース)をオフホワイトの粉末(53.34g)として得る。
【0088】
分析
アミノエチル多糖類を手作業で粉砕し(乳鉢と乳棒)、スクリーニングし(#30米国標準ふるい)、上記の手順に従って分析して、次の結果が得られた。
【0089】
揮発性物質の含有量:1.15%。
【0090】
灰分:3.68%(塩化ナトリウムとして)。
【0091】
Kjeldahl窒素含有量:0.663%、0.123のN-メチルアミノエチル置換度に対応する。
【0092】
2.0%溶液粘度:6.31s-1のせん断速度で337mPa・s(25.0℃;揮発性物質および灰分を修正)。
【0093】
調製例2~6:中和されたアミノエチル多糖(アミノエチル-およびN-メチルアミノエチル改質ヒドロキシエチルセルロース)
アミノエチル多糖の調製
5つのアミノエチル多糖HCl塩(調製例2~6)は、以下の表2に記載のように、様々なハロゲン化アジリジニウム前駆体を使用して、上記の調製例1の手順に従って調製される。
【0094】
【0095】
次いで、調製例2~6のアミノエチル多糖HCl塩のそれぞれを、以下の中和手順に従って、5つの中和されたアミノエチル多糖(AP1~AP5)を調製する。
【0096】
中和
アミノエチル多糖HCl塩を、還流冷却器および窒素入口を備えた3つ口フラスコ内の80:20のIPA/H2O混合物(200g)に懸濁する。混合物を窒素ガスで1時間フラッシュする。次いで、NaOH溶液(水中50重量%;Kjeldahl窒素値に基づいて1当量)を一度に加える。溶液混合物を加熱して、70℃で4時間保持し、次いで自然冷却させる。反応混合物を室温で18時間激しく撹拌している。
【0097】
溶液を濾過(Whatman(登録商標)#44濾紙とともにブフナー漏斗)し、固形物を除去して、3つ口フラスコに戻し、さらに80:20のIPA/H2O混合物(200mL)とともに1~4時間撹拌した。次いで、固形物をもう一度除去(Whatman(登録商標)#44濾紙とともにブフナー漏斗)し、次いで80:20のIPA/H2O混合物(200mL)、次いで90:10のIPA/H2O混合物(200mL)、次いで純粋のIPA(200mL)ですすいだ。次いで、固形物をドラフトにおいて72時間自然乾燥させた後、さらに真空オーブンにおいて、50℃で4時間乾燥させる。固形物を細かく粉砕して(乳鉢と乳棒)、中和されたアミノエチル多糖を粉末として得る。
【0098】
以下の表3は、中和されたアミノエチル多糖(AP)1~5を調製するために調製例2~6のアミノエチル多糖HCl塩の中和に利用される特定のパラメータを示す。
【0099】
【0100】
実施例1~61および比較例1:シリコングリカン調製(シリコーン改質ヒドロキシエチルセルロース)
調製:
アミノエチル多糖(中和された)を、マグネチックスターラーを備えた20mLのシンチレーションバイアルで秤量した。シロキサン重合度(DP)(すなわち、分子あたりのケイ素中心の数)を有するエポキシド官能性有機ケイ素化合物を一度に添加し、反応混合物を多成分希釈剤(IPA/H2O)に懸濁させるバイアルを70℃の加熱ブロック内に置き、反応時間(T)の間攪拌する。反応混合物を自然に室温に冷却し、アセトン(10mL)を充填して、シリコングリカンを含む反応生成物を得る。
【0101】
シリコングリカンは、濾過(Whatman(登録商標)#44濾紙を使用したブフナー漏斗)によって反応生成物から固形物として分離され、次いで、ブフナー漏斗において以下の洗浄液で洗浄する:トルエン(20mL);80:20のIPA/H2O混合物(20mL);90:10のIPA/H2O混合物(20mL);IPA(20mL);トルエン(20mL);およびアセトン(2x20mL)。次いで、シリコングリカンをブフナー漏斗で5分間乾燥させ、風袋を量ったガラスバイアルに収集し、55℃の真空オーブンで4時間乾燥させ、単離され乾燥されたシリコングリカンを得る。
【0102】
分析
シリコンの取り込みはNMRで確認し、シリコングリカンを上記の手順に従ってATR-IRおよびXRFで分析する。
【0103】
シリコーン置換度(Si-DS)は、Kjeldahl窒素値に基づいてアミノ-DSを決定するために通常使用される方法に類似の方法を使用して計算され、これは当業者によって容易に理解される。より具体的には、Si-DSは、すべてのアミノ官能基が中性であり、すべてのシリコン含有量がセルロース骨格にグラフトされていると仮定して、以下の式(I)に従って計算される。
【0104】
【0105】
上記の式(I)において、%Siは、上記のようにXRFによって決定される値を指し、#Siは、エポキシド官能性有機ケイ素化合物中のケイ素原子の数を指す。
【0106】
以下の表4~14に、実施例1~61および比較例1のパラメータと結果を示す。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
比較例1では、有機ケイ素化合物はエポキシド官能性ではない。
【0119】
特定の試料の2%溶液粘度(水中)は、上記の手順に従って6.31s-1の一定のせん断速度で取得し、以下の表15に示す。
【0120】
【0121】
本発明を例示的に説明してきたが、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質であることを意図していることを理解されたい。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。本発明は、具体的に記載された以外の方法で実施され得る。