(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】固体基剤の乾燥時間を短縮するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20240401BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240401BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/891
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2021545915
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2020052117
(87)【国際公開番号】W WO2020160970
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピッケル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】藤永 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】鐵 真希男
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第3059900(FR,A1)
【文献】国際公開第2020/061658(WO,A1)
【文献】Proscience Beauty, Brazil,Hair Mask and Conditioner,Mintel GNPD [online],2018年11月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6165295, [検索日:2023.10.16], 表題部分及び成分
【文献】Aldi, UK,Conditioner,Mintel GNPD [online],2018年03月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5534485, [検索日:2023.10.16], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
C25D 9/00- 9/12
C25D 13/00-21/22
H01L 21/304
D01D 1/00-13/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト毛髪の乾燥時間を短縮するための組成物であって、
a)下記一般構造の、1種以上の第4級アンモニウム界面活性剤:
【化1】
(式中、R
1およびR
2はC
11~C
21の直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、およびC
1~C
4アルコキシから選択される1個以上の置換基
で置換されていてもよい。R
3およびR
4は、C
1~C
3の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、硫酸塩、およびメトサルフェートから選択される。)
b)ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される190g/mol~6000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する、1種以上のジメチルポリシロキサン
を含有し、
前記組成物の総質量に対して計算される前記化合物a)の総濃度が0.1質量%から5質量%未満の範囲であり、前記化合物b)に対する前記化合物a)の質量比が0.075~8の範囲である、組成物。
【請求項2】
前記化合物a)が下記一般構造を有する請求項1に記載の組成物。
【化2】
(式中、R
1およびR
2はC
11~C
21の直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、およびC
1~C
4アルコキシから選択される1個以上の置換基
で置換されていてもよい。X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、硫酸塩、およびメトサルフェートから選択される
。)
【請求項3】
前記組成物の総質量に対して計算される前記化合物a)の総濃度が、0.1質量%~5質量%未満の範
囲である、請求項
1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量に対して計算される前記化合物b)の総濃度が
、0.2質量%~20質量%の範
囲である、
請求項1~3のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物b)に対する前記化合物a)の質量比が0.07~8の範
囲である、
請求項1~4のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物b)とは異なる化合物c)として、1種以上の親油性化合物をさらに含有する、
請求項1~5のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項7】
化合物c)として、分岐または直鎖、飽和または不飽和C
12~C
22アルキル鎖を有する脂肪族アルコール、直鎖または分岐C
3~C
18アルキル鎖を有するアルコールと直鎖または分岐、飽和または不飽和C
12~C
22アルキル鎖を有する脂肪酸とのエステル、植物油、およびペトロラタム系製品、および/またはそれらの混合物から選択される1種以上の親油性化合物を含有する、
請求項1~6のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物c)である1種以上の親油性化合物が、分岐または直鎖、飽和または不飽和C
14~C
18アルキル
鎖を有する脂肪族アルコールの混合物である、
請求項1~7のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総質量に対して計算される前記化合物c)の総濃度が、0.1質量%~10質量
%の範囲である、
請求項1~8のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のpHが、3~8の範
囲である、
請求項1~9のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項11】
a)とは異な
る界面活性剤を含有する、
請求項1~10のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項12】
エマルションである、
請求項1~11のいずれ
かに記載の組成物。
【請求項13】
ヒト毛髪の乾燥時間を短縮するための方法であって、
a)前記
ヒト毛髪を水性組成物と接触させる工程、
b)請求項1~12のいずれかに記載の組成物を前記
ヒト毛髪上に塗布する工程、
c)前記組成物を10秒から600秒の間、前記
ヒト毛髪上に放置する工程、
d)前記
ヒト毛髪を水で洗い流す工程、
e)水の排出を可能にするために前記
ヒト毛髪を放置する工程、
f
)35℃~230℃の範囲の空気温度を供給する加熱装置を用いて前記
ヒト毛髪を乾燥させる工程、
を含む方法。
【請求項14】
工程d)とf)との間にタオルドライを行わない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒト毛髪からの排水を促進するための、請求項1~12
のいずれかに記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体基剤の乾燥時間を短縮するための組成物、方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国および新興工業国の人々は、電気エネルギーを生成する化石燃料の焼却、自動車および航空機の推進、ならびに家庭での暖房または冷房に起因する、日常生活における大量の汚染を経験する。また、多くの産業の製造工程では、汚染された固体製品が発生する。これらの製品は、事前にクレンジング処理をしなければ、顧客に販売したり、後続の生産工程で使用することは容易ではない。そのため、産業界や消費者は、汚染物質を除去するために固体基剤をクレンジングするという問題に直面している。多くのクレンジング手順では水性組成物を塗布する必要があるため、さらなる使用の前にそれぞれの基剤を乾燥させることが強く望まれる。しかし、空気温度が低い場合、空気湿度が高い場合、あるいは基剤の乾燥を迅速に行う必要がある場合には、工程を加速するために加熱乾燥を行うのが一般的な手法である。この点で、加熱乾燥はエネルギーの適用を必要とするため、環境負荷を低減するためには、できるだけ短時間で行う必要がある。
【0003】
このような化粧品の顧客や環境への負担を示す顕著な例として、2014年に米国で行われた200人以上の女性と200人の16歳以上のティーンエイジャーを対象とした調査で、女性は毎朝平均55分を自分の外見に費やしているという結果が発表されている。[[1]https://www.today.com/health/how-we-did-today-aol-ideal-real-body-image-survey-2D12152771
[2]https://www.today.com/health/stop-obsessing-women-spend-2-weeks-year-their-appearance-today-2D12104866を参照。]
【0004】
この時間の無視できない部分が、特にロングヘアの女性の場合、毛髪の乾燥手順に費やされる。このような背景から、一般的な化粧品業界や特にヘアケア業界では、ロングヘアの顧客の日常的な手順を短縮し、時間を節約するための解決策を見つけようとしていることは驚くべきことではない。入手可能な製品のほとんどは、ブロードライプロセス中に水を蒸発させるのに役立つ低級アルコール溶液をベースとする、いわゆるブロードライリーブインスプレーである。リンスオフ領域で利用可能な製品はごくわずかであり、ブロードライ時間の短縮が見込まれ、アルコールを使用しない自然な蒸発を促進する。残念ながら、これらの製品は一般的に、高濃度の、蒸発の速いシリコーン化合物であるシクロペンタシロキサン(例:Mintel #2303144)をベースにしている。しかし、この原料は世界の一部の地域で規制の議論が行われている。
【0005】
毛髪などの基剤の乾燥プロセスを調べる場合、ブロードライによる蒸発の前、特に、毛髪の最終すすぎ工程の直後に開始する。最初の工程は、基剤からの水の排出である。さらに、この工程は、基剤から水の大部分を除去するための決定的な工程である。したがって、熱を加える前の乾燥プロセスにおける排水がより効率的であればあるほど、顧客/産業界が後の段階の熱乾燥に費やす時間が短くなり、乾燥のために適用しなければならないエネルギーも少なくて済む。
【0006】
要約すると、消費者の利便性、産業の効率化、および環境の保護のために、水流出の速度を増加させるのに役立つ製品を研究することが最も重要である。
【0007】
本発明者らは、予想外に、特定のジアルキル4級アンモニウムカチオン性界面活性剤に加えて、低分子量のジメチルポリシロキサンを特定の濃度および質量比で含む組成物が、固体基剤、特にケラチン繊維の乾燥時間を短縮し、基剤からの水の排出を促進し、乾燥外観およびケラチン繊維の良好な束分離を提供することを見出した。
【0008】
ビス-(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムメトサルフェートおよびジメチコンを含む生成物は、先行技術から公知である(例えば、Mintel #5534485、#3904857、#5306377)。しかし、本発明では、低分子量のジメチコンと特定の質量比と濃度の化合物を利用しており、したがって、本発明は新規である。
【0009】
特許文献1は、ビス(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムメトサルフェートおよびアモジメチコンを開示しているが、この文献は低分子量ジメチコンについては言及しておらず、したがって本発明は新規である。
【0010】
特許文献2は、ビス(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムメトサルフェートおよび100csの粘度を有するジメチコンを開示しており、したがって、本発明で必要とされるジメチコンよりも高分子量である。さらに、比較例に示されるように本発明の技術的効果を達成しない。
【0011】
特許文献3には、ビス(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムメトサルフェートおよび高粘度ジメチコンが開示されており、したがって、本発明で必要とされるジメチコンよりも高分子量である。さらに、本発明の技術的効果を達成しない。
【0012】
従来技術の数多くの試みにもかかわらず、いずれの開示も本発明の問題を解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許発明第3059900号明細書
【文献】欧州特許第3168251号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015222976号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第1の目的は、固体基剤、好ましくはケラチン基剤、より好ましくはヒトケラチン基剤、さらに好ましくはヒト毛髪の乾燥時間を短縮するための組成物であって、
a)下記一般構造の、1種以上の第4級アンモニウム界面活性剤:
【化1】
(式中、R
1およびR
2はC
11~C
21の直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、およびC
1~C
4アルコキシから選択される1個以上の置換基で任意に置換されていてもよい。R
3およびR
4は、C
1~C
3の直鎖または分岐の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよい。X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、硫酸塩、およびメトサルフェートから選択される。)
b)ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される190g/mol~6000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する、1種以上のジメチルポリシロキサン
を含有し、
前記組成物の総質量に対して計算される前記化合物a)の総濃度が0.1質量%から5質量%未満の範囲であり、前記化合物b)に対する前記化合物a)の質量比が0.075~8の範囲である組成物である。
【0015】
本発明の第2の目的は、固体基剤、好ましくはケラチン基剤、より好ましくはヒトケラチン基剤、さらに好ましくはヒト毛髪の乾燥時間を短縮するための方法であって、
a)前記固体基剤を水性組成物と接触させる工程、
b)上記で定義した組成物を前記基剤上に塗布する工程、
c)前記組成物を10秒から600秒の間、前記基剤上に放置する工程、
d)前記固体基剤を水で洗い流す工程、
e)水の排出を可能にするために前記固体基剤を放置する工程、
f)必要に応じて、35℃~230℃の範囲の空気温度を供給する加熱装置を用いて前記基剤を乾燥させる工程、を含む方法である。
【0016】
工程d)と工程f)との間でタオルドライを行わないことが、ユーザーにとっての利便性の観点から好ましい。
しかしながら、別の態様では、乾燥効率、時間節約、およびエネルギー節約の観点から、タオルドライが工程d)と工程f)との間で行われることが好ましい。
工程a)の組成物が水性コンディショニング組成物であることが、ユーザーの経験および日常性の観点からさらに好ましい。
【0017】
本発明の第3の目的は、固体基剤からの排水を促進するための、上記で定義した組成物の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
組成物は、木材、コンクリート、プラスチック表面、金属表面、および繊維表面などの様々な固体基剤上での乾燥時間を短縮するのに適している。好適な繊維表面は、綿、羊毛や毛髪などのケラチン繊維である。好適な固体ケラチン基剤はまた、皮膚、好ましくはヒト皮膚である。しかしながら、本発明は、ヒトへの適用に対する安全性の観点から、ヒトのケラチン繊維、好ましくはヒトの毛髪に特に適している。
【0019】
<化合物a)>
請求項1に記載の構造の範囲内の好適な化合物a)を表1に示す。
【0020】
【0021】
生分解性の観点から、化合物a)は下記一般構造を有することが好ましい。
【化2】
式中、R
1およびR
2はC
11~C
21の直鎖または分岐、飽和または不飽和の炭化水素基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、およびC
1~C
4アルコキシから選択される1個以上の置換基で任意に置換されていてもよい。X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、硫酸塩、およびメトサルフェートから選択される。
【0022】
最も好ましい化合物a)は、商業的入手性および生分解性の観点から、ビス(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムおよび/またはその塩である。その好適な塩は、Cl-、Br-、I-、硫酸塩、およびメトサルフェートである。
a)による最も好ましい化合物は、商業的入手性および生分解性の観点から、ビス(イソステアロイル/オレオイルイソプロピル)ジモニウムメトサルフェートである。該化合物は、エボニックニュートリション&ケアGmbHから商品名Varisoft EQ100で入手可能であり、Quaternium-98としてINCI名登録申請がある。
【0023】
組成物の総質量に対して計算される化合物a)の総濃度は、排水性、外観および束分離の観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上である。
【0024】
組成物の総質量に対して計算される化合物a)の総濃度は、排水性、外観および束分離の観点から、5質量%未満、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下である。
【0025】
上述の効果を達成するために、組成物の総質量に対して計算される化合物a)の総濃度は、0.1質量%~5質量%未満の範囲、好ましくは0.2質量%~4質量%の範囲、より好ましくは0.5質量%~3質量%の範囲、さらにより好ましくは0.5質量%~2質量%の範囲、さらにより好ましくは1質量%~2質量%の範囲である。
【0026】
<化合物b)>
化合物b)については、重量平均分子量を決定する必要がある。本発明によるMwを測定するための分子量決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって適切に行われる。
化合物b)の重量平均分子量Mwは、以下に記載される方法によって決定される。
【0027】
試料をクロロホルムに、25℃で0.5g/100mLの濃度になるように溶解する。下記の測定装置および分析カラムを用いて、溶離液としてクロロホルムを毎分1.0mL流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させる。100μLの試料溶液をカラムに注入して測定を行う。クロマトグラフィー中に化合物を検出するための検出器は、屈折率検出器である。試料の分子量は、予め作成した検量線に基づいて算出する。分子量の検量線としては、数種類の単分散ポリスチレンを標準試料として使用して作成したものを用いる。
【0028】
測定装置:東ソー(株)製HLC-8320GPC。
分析カラム:昭和電工(株)製K-804L + K-804L
【0029】
そして、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される化合物b)の重量平均分子量Mwは、排水性および外観の観点から、好ましくは190g/mol以上、より好ましくは260g/mol以上、さらにより好ましくは320g/mol以上である。
【0030】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される化合物b)の重量平均分子量Mwは、排水性、外観および束分離の観点から、好ましくは6000g/mol以下、より好ましくは5200g/mol以下、さらにより好ましくは2300g/mol以下、さらにより好ましくは1300g/mol以下、さらにより好ましくは760g/mol以下である。
【0031】
上述の効果を達成するために、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される化合物b)の重量平均分子量Mwは、190g/mol~6000g/molの範囲であり、より好ましくは190g/mol~5200g/molの範囲、さらにより好ましくは190g/mol~2300g/molの範囲、さらにより好ましくは260g/mol~1300g/molの範囲、さらにより好ましくは320g/mol~760g/molの範囲である。
【0032】
化合物b)の25℃における粘度は、排水性および外観の観点から、好ましくは0.65mm2/s以上、より好ましくは1mm2/s以上、さらにより好ましくは1.5mm2/s以上である。
【0033】
化合物b)の25℃における粘度は、排水性、外観および束分離の観点から、好ましくは60mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下、さらにより好ましくは20mm2/s以下、さらにより好ましくは10mm2/s以下、さらにより好ましくは5mm2/s以下である。
【0034】
上述の効果を達成するために、化合物b)の25℃における粘度は、0.65mm2/s~60mm2/sの範囲であり、より好ましくは0.65mm2/s~50mm2/sの範囲、さらにより好ましくは0.65mm2/s~20mm2/sの範囲、さらにより好ましくは1mm2/s~10mm2/sの範囲、さらにより好ましくは1.5mm2/s~5mm2/sの範囲である。
【0035】
化合物b)の25℃における粘度は、ASTM D445-46TまたはJIS Z8803に従ってウベローデ粘度計で測定される。
【0036】
化合物b)の総濃度は、排水性、外観および束分離の観点から、0.2質量%以上であることが好ましく、好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは2質量%以上である。
【0037】
組成物の総質量に対して計算される化合物b)の総濃度は、外観および商品のコスト面の観点から、20質量%以下であることが好ましく、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下である。
【0038】
上述の効果を達成するために、組成物の総質量に対して計算される化合物b)の総濃度は、0.2質量%~20質量%の範囲であり、好ましくは0.2質量%~15質量%の範囲、より好ましくは0.5質量%~15質量%の範囲、さらにより好ましくは1質量%~10質量%の範囲、さらにより好ましくは2質量%~5質量%の範囲である。
【0039】
好ましくは、化合物b)に対する化合物a)の質量比は、排水性、外観および束分離の観点から、0.07~8の範囲であり、より好ましくは0.15~3の範囲、より好ましくは0.3~1の範囲、さらにより好ましくは0.4~0.8の範囲である。
【0040】
<化合物c)>
本発明の一態様では、組成物は、ケラチン繊維に対するケアレベルを高める観点から、化合物c)として、化合物b)とは異なる1種以上の親油性化合物をさらに含有することが好ましい。
【0041】
化合物b)とは異なる、1種以上の好適な親油性化合物は、化粧品の安全性およびケラチン繊維に対するケアレベルを高める観点から、好ましくは、分岐または直鎖、飽和または不飽和C12~C22アルキル鎖を有する脂肪族アルコール、直鎖または分岐C3~C18アルキル鎖を有するアルコールと直鎖または分岐、飽和または不飽和C12~C22アルキル鎖を有する脂肪酸とのエステル、植物油、およびペトロラタム系製品、および/またはそれらの混合物から選択され得る。
【0042】
ケラチン繊維に対するケアレベルを高める観点、およびヘアコンディショニング製品との良好な適合性の観点から、化合物b)とは異なる1種以上の親油性化合物は、分岐または直鎖、飽和または不飽和C14~C18アルキル鎖、好ましくは飽和C14~C18アルキル鎖を有する脂肪族アルコール、および/またはそれらの混合物から選択されることがさらに好ましく、より好ましくは、飽和および直鎖のC14およびC16アルキル鎖を有する脂肪族アルコールの混合物である。
【0043】
分岐または直鎖、飽和または不飽和C12~C22アルキル鎖を有する好適な脂肪族アルコールは、例えば、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、および/またはそれらの混合物である。
【0044】
好ましい脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコールおよびセチルアルコールであり、ケラチン繊維に対するケアレベルを高める観点、およびヘアコンディショニング製品との良好な適合性の観点から、上述の2つの化合物の混合物が最も好ましい。
【0045】
直鎖または分岐C3~C18アルキル鎖を有するアルコールと、直鎖または分岐、飽和または不飽和C12~C22アルキル鎖を有する脂肪酸との好適なエステルは、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸ベヘニル、および/またはそれらの混合物である。
【0046】
好適な植物油は、ホホバ油、アボカド油、ヒマワリシード油、クルミ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油、ヤシ油、ゴマ油、ダイズ油、ココナッツ油、ベニバナ油、スイートアーモンド油、マカデミアナッツ油、グレープフルーツシード油、レモンカーネル油、オレンジカーネル油、アンズカーネル油、ひまし油、アルガン油、タマヌ油、グレープシード油、メドウフォームシード油、ブラックカレントシード油、ジャスミン油、ベルガモット果実油、バジル油、米糠/胚芽油、および/またはそれらの混合物である。
【0047】
好適なペトロラタム系製品は、流動パラフィン、特に低粘性パラフィン(paraffinum perliquidum)および高粘性パラフィン(paraffinum subliquidum)、および鉱油、特に白色鉱油、および/またはそれらの混合物である。
【0048】
組成物の総質量に対して計算される、化合物b)とは異なる親油性化合物の総濃度は、ケラチン繊維に十分なコンディショニング効果を提供する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは0.75質量%以上である。
【0049】
組成物の総質量に対して計算される、化合物b)とは異なる親油性化合物の総濃度は、商品のコストおよび水性組成物の安定性の観点から、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは6質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以下である。
【0050】
好適には、上述の効果を達成するために、組成物の総質量に対して計算される、化合物b)とは異なる親油性化合物の総濃度は、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~6質量%、より好ましくは0.75質量%~4質量%の範囲である。
【0051】
本発明のこの態様においては、組成物の安定性の観点から、組成物がエマルションであることが好ましい。
【0052】
<a)とは異なる他の界面活性剤>
エマルションを配合するために、および組成物の安定性をさらに高める観点から、好ましくはカチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤から選択される、a)とは異なる1種以上の界面活性剤を含有してもよい。
【0053】
組成物の安定性を高める観点、および/またはケラチン繊維に対するコンディショニング効果を高める観点から、組成物の総質量に対して計算される、a)とは異なる界面活性剤の総濃度は、0.1質量%~10質量%の範囲であることが好ましく、好ましくは0.25質量%~6質量%の範囲である。
【0054】
組成物の化粧品許容性の観点から、組成物のpHは3~8の範囲であることがさらに好ましく、コンディショニング組成物におけるユーザーアプリケーションの観点から、好ましくは3.0~7の範囲、より好ましくは3.0~6.5の範囲、さらにより好ましくは3.0~4.5の範囲である。
【0055】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
【0057】
<方法>
(排水性測定のためのヘアストリークの調製)
ヒト毛髪繊維(コーカシア人、長さ15cm)は、ドイツのラウプハイムにあるFischbach and Miller Haarから購入した。ストリークあたりの毛髪が約10gとなるように毛髪繊維を纏めた。纏めたヘアストリークを、6質量%のアンモニア(25%active)および2質量%の塩化アンモニウム(pH9.8)および6質量%の過酸化水素(50%active)を含むブリーチ溶液で2回ブリーチした。ヘアストリークを、ブリーチセッション1回あたり30分間、水浴中のブリーチ溶液に完全に浸漬させた。2回のブリーチ処理を完了した後、ストリークを水で2分間すすぎ、梳かし、風乾させた。
【0058】
(排水性測定)
最初のステップとして、纏められたヘアストリークの乾燥質量を測定した。この目的のために、各ストリークをビーカー中で15分間水に湿潤させ、次いでそれらを商品名Goldwell Dualsenses頭皮専用ディープクレンジングシャンプーという市販のシャンプーでシャンプーし、ぬるま湯で1.5分間すすぎ、完全に風乾させた。乾燥質量(M0)を記録した。
【0059】
湿潤質量(M
1)の測定のために、水が充填された振盪浴中で12分間ヘアストリークを湿らせた。上記実施例の組成物5gを、それぞれの纏められたヘアストリークに塗布し、ストリークを1分間マッサージし、組成物を2分間静置した。次いで、組成物をぬるま湯で1分間洗い流し、水を2分間排出させた。次いで、ヘアストリークを5分30秒間遠心分離し(70rpm、約0.44g)、遠心分離後、ストリークの湿潤質量(M
1)を測定した。次に、排水性(%)を下記式に従って算出した。
【数1】
【0060】
(外観測定)
コーカシア人のブロンドヘアストリークをボランティアから入手し、上記のように纏めたが、ブリーチは行わなかった。該ストリークを、商品名Goldwell Dualsenses頭皮専用ディープクレンジングシャンプーという市販のシャンプーでシャンプーし、充分にすすぎ、完全に風乾させた。ヘアストリークを完全に風乾した後、乾燥した毛髪の色を、米国ニュージャージー州ローレンスビルのデータカラー社から入手したデータカラー45G CT機器を用いた分光光度分析によって測定した。ヘアストリーク上の5つの測定点を平均した(L1、a1、b1)。
【0061】
次いで、ヘアストリークを、商品名Goldwell Dualsenses頭皮専用ディープクレンジングシャンプーという市販のシャンプーで再び洗浄し、水で洗い流した。次いで、上記実施例の組成物3gをヘアストリークに塗布し、1分間マッサージし、1分間静置した。次いで、ストリークをぬるま湯で1分間すすぎ、操作者の指でヘアストリークを絞ることによって水を排出した。次いで、ヘアストリークに一定の圧力を加えながら(規定の重量を使用して)タオルで30秒間、ストリークを拭き取って乾燥させた。次いで、ヘアストリークを梳かし、ウエットストリークの色測定をストリーク上の5つの異なる位置(L2、a2、b2)で行った。
【0062】
測定により得られたCIE
*Lab色空間の結果に基づき、色差のΔE
ab値を下記式に従って算出した。
【数2】
【0063】
(束分離測定)
ヘアストリークを外観測定のために調製した。完全に風乾した後、ストリークを3gの実施例組成物に浸漬し、ぬるま湯で十分にすすぎ、タオルドライを行った。次いで、束分離を、評価前に専門家に組成物の詳細を提供することなく、3人の専門家によって個別に評価した。専門家は、束分離を視覚的に判断し、以下の基準に従って評価するように求められた。
3:完全に分離している(多くの小さな束)。
2:部分的に分離している(いくつかの大きな束および小さな束)。
1:ほとんど分離していない(多くの大きな束)。
次いで、専門家の判断を加えて合計スコアを得、整数として報告する。