IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッドの特許一覧

特許7463441複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル
<>
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図1
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図2
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図3
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図4
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図5
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図6
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図7
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図8
  • 特許-複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】複数面の撮像用の調整可能な開口を備えた超音波カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108494
(22)【出願日】2022-07-05
(65)【公開番号】P2023025676
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】17/444,777
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】リチャード シー. ロフトマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム アール. ドレスチェル
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525842(JP,A)
【文献】特表2021-502839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波撮像用の超音波プローブであって、
患者の中に挿入可能なように構成された、カテーテルのハウジングと、
前記カテーテルのハウジングの中の、複数の素子を含む第1の一次元配列と、
前記カテーテルのハウジングの中の、複数の素子を含む第2の一次元配列であって、前記第1の一次元配列と接続された第2の一次元配列と、
前記カテーテルのハウジングの中の電気伝導体であって、その先端が前記第2の一次元配列に接続され、その後端がビーム成形装置に接続された電気伝導体と、
を含み、
前記第1の一次元配列が、前記カテーテルのハウジングの縦軸に沿って、前記第2の一次元配列と縦に並んで配置される、第1の構成と、
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とが、異なる走査面を定めるように、前記第1の一次元配列が、前記第2の一次元配列に対して回転可能となる、第2の構成と、
を有し、
前記第2の一次元配列と前記電気伝導体の先端側の部分が同一平面上に存在するときに、前記第1の一次元配列は、当該平面上に存在しなくなるように前記第2の一次元配列に対して回転可能である、
超音波プローブ。
【請求項2】
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とは、
前記カテーテルのハウジングの直径よりも小さい、高さ方向の第1の幅と高さ方向の第2の幅と、
前記カテーテルのハウジングの直径よりも大きい、長手方向の第1の長さと長手方向の第2の長さと、
をそれぞれ有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記第1の構成は、患者の心臓系の中に前記カテーテルのハウジングを挿入する際に用いられ、かつ、
前記第2の構成は、患者の心臓の中に前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とを配置する際に用いられる、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第2の構成では、前記異なる走査面は、互いに対して直交し、その際、前記第1の一次元配列は、前記第2の一次元配列から、前記第1の一次元配列の、前記カテーテル本体に対して直交する深さ軸に関して90度で回転される、
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記第2の構成では、前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とは、2平面撮像用の開口を提供する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記2平面撮像用の開口は、前記カテーテルのハウジングの幅よりも長い、請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列により形成される前記2平面撮像用の開口は、それぞれ、長手方向の次元で同じ解像度を有する、請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とは、ヒンジ接続されている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
さらに、前記第1の一次元配列に対して前記第2の一次元配列を回転させるため、ワイヤ、ロッド、又はバルーンを備えた、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
さらに、前記第2の一次元配列に対する前記第1の一次元配列の回転の度合いを検知するように構成されたセンサを備えた、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とは、さらに、前記カテーテルのハウジングの縦軸に対してともに回転可能にされている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とは、第1の面上では互いに対して相対的に回転し、かつ前記第1の面外にともに回転することができる、請求項11に記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記第2の構成では、前記第1の一次元配列と前記第2の一次元配列とによって形成される撮像用の開口は、前記カテーテルのハウジングの幅よりも小さい大きさに限定された配列の解像度と比べて、より優れた長手方向の次元での解像度を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項14】
管腔内超音波プローブと超音波スキャナとを含む超音波撮像システムであって、
前記管腔内超音波プローブは、別個のトランスデューサ配列を有し、前記別個のトランスデューサ配列は、それぞれ、前記管腔内超音波プローブの最大幅よりも長い長手方向の長さと、前記最大幅よりも狭い幅とを有し、前記別個のトランスデューサ配列は、互いに対して相対的に回転することができ、
前記超音波スキャナは、前記別個のトランスデューサ配列を用いて2平面撮像を行うように構成され、前記2平面撮像によって、互いに対して相対的に回転することができる前記別個のトランスデューサ配列に基づいて、2つの非平行な面で撮像することができ、
前記別個のトランスデューサ配列は、
複数の素子を含む第1の一次元配列と、
複数の素子を含む第2の一次元配列であって、前記第1の一次元配列と接続された第2の一次元配列と、
を含み、
前記管腔内超音波プローブは、電気伝導体であって、その先端が前記第2の一次元配列に接続され、その後端がビーム成形装置に接続された電気伝導体をさらに有し、
前記第2の一次元配列と前記電気伝導体の先端側の部分が同一平面上に存在するときに、前記第1の一次元配列は、当該平面上に存在しなくなるように前記第2の一次元配列に対して回転可能である、
超音波撮像システム。
【請求項15】
前記第1の一次元配列と、前記第2の一次元配列は、互いに対して縦に並ぶ状態と、互いに対して10度-170度の角度を成す状態との間で相対的に回転することができる、請求項14に記載の超音波撮像システム。
【請求項16】
前記管腔内超音波プローブにはカテーテルが含まれる、請求項14に記載の超音波撮像システム。
【請求項17】
前記別個のトランスデューサ配列は、前記管腔内超音波プローブの関節領域では6mmよりも小さな大きさで離間し、かつ、前記関節領域にて前記相対的な回転が生じるようにした、請求項14に記載の超音波撮像システム。
【請求項18】
前記別個のトランスデューサ配列は、前記管腔内超音波プローブの縦軸に対してともに回転することができ、かつ
前記別個のトランスデューサ配列は、第1の面上では互いに対して相対的に回転し、かつ前記第1の面外にともに回転することができる、
請求項14に記載の超音波撮像システム。
【請求項19】
超音波撮像システムの作動方法であって、
前記超音波撮像システムは、管腔内プローブと超音波スキャナを含み、
記管腔内プローブは、少なくとも2つのトランスデューサ配列を含み、前記少なくとも2つのトランスデューサ配列は、前記管腔内プローブの縦軸に対して略平行で最大寸法を有するように配置され、
前記超音波スキャナが、前記少なくとも2つのトランスデューサ配列を実質的に同時に互いに対し相対的に回転させることで定められた少なくとも2つの面上で撮像を行うテップが含まれ
前記少なくとも2つのトランスデューサ配列は、
複数の素子を含む第1の一次元配列と、
複数の素子を含む第2の一次元配列であって、前記第1の一次元配列と接続された第2の一次元配列と、
を含み、
前記管腔内プローブは、電気伝導体であって、その先端が前記第2の一次元配列に接続され、その後端がビーム成形装置に接続された電気伝導体をさらに有し、
前記第2の一次元配列と前記電気伝導体の先端側の部分が同一平面上に存在するときに、前記第1の一次元配列は、当該平面上に存在しなくなるように前記第2の一次元配列に対して回転可能である、
方法。
【請求項20】
記少なくとも2つのトランスデューサ配列の間の関節領域にて前記管腔内プローブが屈曲可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
記少なくとも2つのトランスデューサ配列に共通な面上で、前記少なくとも2つのトランスデューサ配列互いに対して相対的に回転可能であり、前記面の外に前記管腔内プローブの軸に関して前記少なくとも2つのトランスデューサ配列回転可能である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内超音波プローブに関し、例えば、心臓内エコー(ICE:intracardiac echo)カテーテルに関するが、さらには、エンド・キャビティ(腔内)プローブ、経食道(TEE:transesophageal)プローブ、又は婦人科プローブに関することもできる。管腔内超音波プローブは、通常、患者の中で、ある面を撮像又は画像化するために一次元(1D)の配列(配列)を有する。この単一面からの情報では、ナビゲーション又はガイダンス(案内)が困難になる虞があった。このため、より多くの情報が提供できるように、ボリューム・イメージング(容積の撮像)が用いられることがある。管腔内プローブのトランスデューサ(変換器)は、内腔の中に挿入されるため、細長いプローブ又は軸の上に設けられるように細長くされている。例えば、ICEカテーテルは、血管内へのアクセスを可能にするため、長めの長方形の形状(例えば、7-23mmの大きさと、2-4mmの大きさの組)を有する、ボリューム撮像用の2次元(2D)の配列を備えることがある。ただし、2-4mmの次元での撮像の質は、7-23mmの次元の場合と比較して、より低い。さらに、複数次元でトランスデューサを構成する場合、その費用と複雑さは、1D配列の場合と比較して、より高い。
【背景技術】
【0002】
多くの適用例では、リアルタイムの2平面撮像(2つの面での撮像)は、複雑な構造の処置を支援する上で、十分な空間的な解剖学的情報とデバイスの位置情報を提供している。TEEとエンド・キャビティ・プローブとは、異なる面を走査(スキャン)するために、向きが固定された複数の1D配列の開口(開き口、口径、アパーチャともいう)を用いて実装されることや、1つの回転可能な1D配列を用いて実装されることがある。これら従前のデバイスでは、例えば、ICEの適用時などで、プローブ/カテーテルの本体を横切る方向で適当な大きさの開口をサポートするには小さ過ぎる内腔を通って進むことは求められていない。ボリューム撮像を可能とする2Dマトリクスのプローブでは、2平面撮像を行い得るが、それらの配列(アレイ)は、通常の1Dの配列と比較して、極めて複雑であり、かつ、典型的に、非常に高価であった。また、薄いカテーテルの次元を横切る方向での撮像の解像度(分解能)は、ICEカテーテル内に適合されるためには、非常に限定的であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
後述の好適な実施形態の説明には、管腔内超音波プローブ用の方法、システム、及び改良が、前提として含まれている。管腔内超音波プローブの内部には、2つの細長い配列(例えば、1D配列)が、2平面撮像用に設けられている。これら配列は、互いに対し相対的に回転可能である。そのため、複数の配列は、挿入の間、細長くなるように整列されて、プローブの軸を幅狭にすることを可能にする。さらに、挿入後の2平面撮像の場合には、一方の配列が他方の配列に対して回転されて、2つの非平行な撮像面を定めることを可能にする。
【0004】
第1の態様では、超音波用に、超音波プローブを提供する。カテーテルのハウジングは、患者の中に挿入可能なように構成されている。このカテーテルのハウジングの中に、複数の素子(エレメント)の第1及び第2の一次元配列が設けられている。第1の構成では、第1の一次元配列は、カテーテルのハウジングの縦軸(長手方向軸)に沿って、第2の一次元配列と縦に並んで配置される。第2の構成では、第1の一次元配列は、第2の一次元配列と回転可能に接続されており、第1の一次元配列と第2の一次元配列とが、異なる走査面(スキャン面)を定めることを可能にする。
【0005】
第2の態様では、管腔内超音波プローブと超音波スキャナとを含む超音波撮像システムを提供する。管腔内超音波プローブは、別個のトランスデューサ配列を備えており、これらトランスデューサ配列は、それぞれ、管腔内超音波プローブの最大幅よりも長い方位方向の長さと、その最大幅よりも狭い幅とを有する。別個のトランスデューサ配列は、互いに対し相対的に回転することが可能である。超音波スキャナは、別個のトランスデューサ配列を用いて、2平面撮像(2つの面での撮像)を行えるように構成されている。2平面撮像は、互いに対し相対的に回転可能な別個のトランスデューサ配列に基づいて、2つの非平行な面で画像を提供する。
【0006】
第3の態様では、超音波撮像用の方法を提供する。患者の中に、管腔内プローブが挿入される。管腔内プローブには、少なくとも2つのトランスデューサ配列が備えられているが、2つのトランスデューサ配列は、管腔内プローブの縦軸と略平行で、最長寸法を有するように配置又は構成される。患者の中に管腔内プローブが挿入された後、少なくとも2つのトランスデューサ配列は、互いに対して相対的に回転される。互いに対し相対的に回転された少なくとも2つのトランスデューサ配列は、実質的に同時に、それら配列によって定められる少なくとも2つの平面での撮像に用いられる。
【0007】
本発明は、添付された特許請求の範囲によって定められている。当該記載は、それら請求項を限定するものではない。本発明のさらなる態様と長所については、好適な実施形態と関連して後述されるが、それらについては、後に、独立して、又は組合せた状態で、請求項が作成され得る。
【0008】
構成要素(部品)と図面は、必ずしも縮尺通りである必要はない。むしろ、それらには、本発明の技術思想について例示する上で、誇張を加えることが可能である。さらに、図面では、対応する部品については、異なる図面を通じて、同じ参照番号が用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、管腔内の撮像用の超音波システムの一実施形態をブロック図で例示した図である。
図2図2は、挿入用に2つの配列を整合させたカテーテルの一実施形態を例示した図ある。
図3図3は、図2に例示したカテーテルの一実施形態に関して、2平面撮像用に、一方の配列を他方の配列に対して回転させた場合を例示した図である。
図4図4は、挿入用に2つの配列を整列させた、カテーテルの他の実施形態を例示した図である。
図5図5は、図4のカテーテルに関して、2平面撮像用に、一方の配列を他方の配列に対して相対的に回転させ、かつ双方の配列をカテーテルの縦軸に関して回転させた場合の他の実施形態を例示した図である。
図6図6は、縦軸に対する複数の配列の回転によって、複数の配列を平面外に回転させた場合を例示した図である。
図7図7は、一方の配列を他方に対して関節状に配置するためのコントロール・ワイヤ又はプッシュ・ロッドを例示した図である。
図8図8は、一方の配列を他の配列に対して関節状に配置するためのバルーンを例示した図である。
図9図9は、管腔内プローブ内で再構成可能な配列を用いた、超音波撮像用の方法の一例をフローチャートで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る管腔内プローブ(endoluminal probe)は、例えば、ICE(intra cardiac echo:心腔内心エコー法)カテーテル等として構成され、調整可能な2つの開口(アパーチャ)を有し、複数平面撮像を可能にする。本発明に係る超音波トランスデューサは、2つの配列(アレイ)区間を含むが、これら区間は、関節状となり得るように、管腔内本体に沿って配置されて、リアルタイムでの2平面撮像を可能にする。このため、本発明は、ICE及び/又はエンド・キャビティ・インターベンション(腔内への介入)に利用することができる。例えば、心臓内空間(例えば、心房)にて、2つの通常の超音波配列の開口を、挿入後に物理的に展開させる。ICEカテーテルの実施形態では、複数の配列は、カテーテルに沿って連続的に配置されて、血管系を通って進むことを可能にするが、複数の配列は、それら複数の配列の間のヒンジによって、展開され得る。このため、複数の開口によって走査可能となる2つの撮像面が、走査の深さ次元に関して回転された2つの面を定める。2平面撮像に適する相対的な方向は、物理的展開によって得られる。
【0011】
プローブの縦軸(長手方向軸)に沿って並ぶ2つの配列を用いることで、プローブは、薄いプローブ本体を保つことができる。複数の配列を互いに対して相対的に間接状にすることで、プローブ本体の幅よりも大きな2つの撮像用の開口が提供されて、複数平面撮像を可能にする。複数の1D(一次元)配列を異なる方向で固定させたエンド・キャビティやTEEトランスデューサでの2平面撮像の場合と比較して、本発明に係るカテーテル本体は、2つの配列について、単一の主要なカテーテル本体方向と縦に並んだ(縦方向の)、長めの方向で向きを定める。そのことは、プローブがある空間内で進められて、その場所で、それら配列が、再度向きが定められて、回転された撮像面での走査(スキャン)が十分に可能となるまで続けられる。単一の超音波配列の異なる走査面の向きを順番に定めるプローブの場合と比較して、本発明に係る2つの配列は、リアルタイムでの2平面撮像を可能にする。2つの配列は、フレーム又はライン間引き態様で、効果的に同時にアクティブに走査することができる。また、単一ボリューム(容積)のICEの2D(二次元)配列の場合と比較して、2つの1D(一次元)配列を用いることにより、費用面でより効果的になるとともに、より利便性を高めている。2つの1D配列は、しばしば、双方の撮像面で同等の横方向解像度(分解能)を提供できる。この同様又は同一の横方向解像度は、典型的には、単一ボリュームのICEの2D配列では欠けていたが、その理由は、カテーテル本体に課せられる大きさの制約のためである。ボリューム撮像用のマトリックス配列では、局所的にアクティブな電子機器と、高度な製造技術が必要とされているが、これに対して、2つの通常の配列では、その必要がない。通常の1Dの超音波配列を利用することで、通常の設計、製造、費用及び複雑さが可能になる。
【0012】
2平面走査(2つの面での走査)によって、多くの複雑な構造の処置がサポートされる。実際、2平面走査は、ボリューム撮像と対比して、好適である。また、このことは、2D配列を用いる場合と比較して、必要とされるナビゲーションとガイダンス(案内)の機能が、より簡便に、より安価に提供され得る。複数の配列を関節状にすることで、主要なプローブの本体の軸(縦軸)に対して横切る方向の面での優位な方向での解像度が可能になる。何故なら、その方向の解像度は、開口の寸法と直接的に関連するが、プローブ本体の直径によって関節又は展開が制約されないからである。2平面撮像時に展開される一次元の配列によって形成される撮像用の開口は、カテーテルのハウジングの幅よりも小さい大きさに制約される配列の解像度と対比して、より優れた、方位次元での解像度を有する。
【0013】
図1を参照すると、管腔内プローブ(管内プローブ、腔内プローブともいう)20を用いた医用超音波撮像用の超音波撮像システム(超音波画像化システム)が例示されている。この超音波撮像システムは、診断及び/又は治療時に用いることができる。患者の中に挿入される際、配列21は、プローブ20の縦軸(長手方向軸)に沿って縦に並んで、機械的に配置される。管腔内プローブ20は、一度、患者の中に挿入されると、超音波配列21を機械的に再配置することで形成される異なる開口を利用して、超音波撮像に用いることが可能になる。2つの配列21により、2平面撮像が可能になる。他、例えば、3つ以上の配列による3つ以上の面での撮像等、複数平面撮像は可能である。
【0014】
超音波撮像システムは、管腔内プローブ20(例えば、複数のエレメント又は素子22から成る複数の配列21と、ハウジング24を含む)と、超音波スキャナ(例えば、ビームフォーマ又はビーム成形装置11と、イメージ・プロセッサ又は画像処理装置12と、ディスプレイ又は表示装置13を含む)とを有する。なお、追加的な構成要素、異なる構成要素、又はより少ない構成要素を用いることは可能である。例えば、このシステムは、ビーム成形装置11、画像処理装置12、及び/又はディスプレイ13を含むことなく、管腔内プローブ20内に複数の配列21を備えてもよい。トランスデューサ配列21と管腔内プローブ20は、超音波スキャナ又は撮像システムと解除可能に接続される。別の例として、ビーム成形装置11及び/又は画像処理装置12は、1つ又は複数のチップに統合され得るが、そのチップは、複数の配列21とともに、又は配列21と隣接していてもよい。
【0015】
複数の配列21は、撮像用に、電気伝導体(コンダクタ)25によって、ビーム成形装置11と接続されている。ビーム成形装置11は、送信波形の生成及び/又は信号の受信のために複数の経路(チャネル)を有している。相対遅延及び/又は超解像フィルタ(アポディゼーション、アポダイゼーションともいう)によって、送信波形又は受信信号をフォーカスして、ビームを形成してもよい。ビーム成形装置11は、電気伝導体25と接続されている。ビーム成形装置11は、1つ又は複数の開口を選択するが、この開口は、複数の配列21のうちの対応する1つ又は複数の素子22のうちの1つ、幾つか、又は全てを含む。異なる開口が、異なる時点で使用されてもよい。
【0016】
管腔内プローブ20は、ハウジング24、複数の素子22を含む複数の配列21、電気伝導体25、及び1つ又は複数のガイド・ワイヤ26を有する。なお、追加的な構成要素、異なる構成要素、又はより少ない構成要素を用いることは可能である。例えば、ハウジング24に対して、流体を移送及び/又は引き出すためのポート又はチューブを含ませることができる。別の例として、ハウジングに対して、位置決定用の1つ又は複数のマーカーを含ませることができる。
【0017】
電気伝導体25によって、複数の配列21の複数の素子22がビーム成形装置11と接続されている。トレースを有するフレキシブル・サーキット(可撓性回路)及び/又はルーズ・ワイヤ(緩いワイヤ)によって、複数の素子22の複数の電極及び/又は小配列(サブアレイ)の複数のビーム成形装置の出力が、電気伝導体25と接続されている。別個の配列21には別個の接続が用意されるが、多重通信又は共有通信を利用することは可能である。あるいは、デイジーチェーン・アプローチを利用することは可能である。その際、エンド配列(エンドアレイ)21からの信号が次の配列21に渡されるようにして、このことを電気伝導体25に接続されるまで繰り返してもよい。電気伝導体25は、ワイヤ(ケーブル)、同軸ワイヤ、可撓性回路の材料上のトレース、ワイヤ、フレックス回路、ワイヤ・ジャンパの内のいずれかでもよく、これらの組合せでもよく、又は現在知られている又は将来的に開発され得る他の電気伝導体でもよい。各素子24には1つの電気伝導体16が設けられている。あるいは、例えば、スイッチされた開口、部分的ビーム成形、又は多重化等では、複数の素子22の数よりも少ない電気伝導体25を用いることは可能である。
【0018】
ハウジング24は、患者の中に挿入可能なプラスチック又は他の材料を用いて構成されるスリーブである。例えば、ハウジング24は、ペバックス(Pebax)を用いて形成される。他、ナイロンや、生体適合性の材料等の、他の材料を用いることは可能である。ハウジング24は、複数の配列21上でシール(封止)されており、プローブ20の内部を患者の体液(液体)から隔離させている。
【0019】
ハウジング24は、患者の中に挿入可能なように構成されている。ハウジング24は、概して、円筒形状を有するが、例えば、細長いチューブの形状を有する。ハウジング24は、固体、剛性、可撓性、及び/又は半可撓性であってもよい。ハウジング24の形状と大きさは、管腔内プローブ20の挿入可能な部分を形成できるように定められている。例えば、ハウジング24は、カテーテル、TEE、経尿道プローブ、又は膣内プローブを形成してもよい。一実施形態では、ハウジング24は、複数の配列21を備えたICEカテーテルを形成する。複数の配列21は、10Fr(10Fr=3.33mm)の直径のカテーテル内で適合されてもよく、他、12.5Frの直径のカテーテル内で適合されてもよく、又は異なる大きさの直径のカテーテル内に適合されてもよい。別の実施形態では、プローブ20と、対応するハウジング24とは、小児科での適用のため、マイクロTEE(小型TEE)を形成してもよい。なお、本明細書ではカテーテルが例示されているが、様々な他の管腔内プローブ20内で、複数の配列21を用いることは可能である。プローブ20は、撮像又は治療に適用されるが、例えば、高密度焦点式超音波(HIFU:high intensity focused ultrasound)を使用することができる。画像は、診断、カテーテル又はツールの案内、及び/又は治療機器の配置を助けるために用いることができる。
【0020】
2つ又は複数の、別々の配列21が、管腔内プローブ20の中又は上に設けられる。複数の配列21は、物理的な間隔(スペーシング)によって、複数の素子22の幅よりも大きく分けられており、別個の開口を形成することができ、及び/又は、別個の面で走査するために配置することができる。2つよりも多い数で、別個の配列21を設けることは可能であって、例えば、3つの面での複数面撮像用に、3つの配列を備えることは可能である。本明細書の実施例では、2つの配列を用いた2平面撮像について例示する。
【0021】
複数の配列21の各々は、複数の素子22、バッキング・ブロック(裏当てブロック)、電極、及びマッチング層(整合層)を有する。なお、追加の構成要素、異なる構成要素、又はより少ない構成要素を用いることは可能である。例えば、2つ又は複数のマッチング層を用いることは可能である。
【0022】
素子22は、圧電材料を含むことができる。固体又は複合の圧電材料を用いることができる。各素子は、長方形状の固体、立方体、又は六面体であるが、他の形状又は多面体を用いることは可能である。例えば、1つ又は複数の素子22の発光面は、立面集束(仰角方向集束、高さ方向の集束)又は周波数ベースの指向性のために、凹面状又は凸面状にされ得る。複数の素子は、バッキング・ブロックと統合されてもよい。あるいは、可撓性の膜等の微小電気機械的デバイスを用いてもよい。さらに、現在知られているものだけでなく、将来的に開発され得る超音波トランスデューサを用いることは可能である。
【0023】
各配列21に対して、任意の数の素子22を提供することができるが、例えば、10個又は数百個の素子を提供してもよい。複数の素子22は互いに隣接し、例えば、隣接する素子22の中心間に、実質的に波長又はそれ以下の間隔を有する。
【0024】
一実施形態では、複数の配列21の各々は、1D(一次元)配列である。複数の素子(エレメント)22は、直線又は曲線に沿って分布されて、複数の素子22の1D配列を形成する。他の実施形態では、複数の配列21のうちの1つ又は複数を1.5D配列又は2D配列にすることは可能である。さらに他の実施形態では、プローブ本体の幅よりも大きな1つの次元(寸法)と、その幅よりも小さな他の次元(寸法)を有する任意の配列を回転により展開させるように用いてもよい。例えば、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT:capacitive micromachined ultrasound transducer)として面状の撮像用の配列を形成し、その際、微小素子のマトリックスから各素子を構成してもよい。
【0025】
各配列21は、同じ寸法、形状、及び数の素子22から成り、他の配列21も同様である。例えば、2つの配列21が設けられる。各配列21は、110ミクロン・ピッチで、64個の素子を有し、方位方向に沿って7.5mmの配列長さを有する。複数の素子22と対応する配列21は、1.8mm-2mmの張り出し方向の幅(高さ方向の幅)を有する。双方の配列21は、8Fr-10Frのカテーテルのハウジング24内で嵌合されて、5MHzの中心周波数での撮像を可能にするように大きさが定められる。ただし、例えば、素子の異なる数、素子のピッチ、配列長さ、配列幅、動作周波数、及び/又は、異なる大きさのハウジング24内への嵌合を可能とするように、他の配列21を使用することは可能である。他の実施形態では、異なる配列21では、一方が他方の配列21とは異なる素子の数、寸法、形状、及び/又は、動作周波数を有することができる。素子の数及び/又は配列の寸法は、技術的限界や都合等に基づく。
【0026】
複数の配列は、プローブ・ハウジング24の直径又は幅よりも小さい張り出し方向の幅(高さ方向の幅)を有する。配列21の方位方向(進行方向)又は長手方向軸(縦軸)がハウジング24の縦軸と整列されると、配列21はハウジング24内に嵌合される。配列21の方位方向の長さは、ハウジング24の直径又は幅よりも長い。この寸法では、各配列21は、患者内に配置可能な部品の管腔内超音波プローブ20の最大幅よりも大きな方位方向の長さを有するとともに、その最大幅よりも狭い幅を有するため、配列21は、連続的に、プローブ20の縦軸に沿って配列することができる(図1参照)。その際、より高い解像度の撮像を可能にする上で、ハウジング24については、より大きな寸法又は拡張可能な寸法とすることを必要としない。
【0027】
複数の配列21は、プローブ20のハウジング24のステアリング部(操縦部)から遠位側に配置される。ただし、他の位置とすることは可能である。複数の配列21は、ハウジング24の中の縦軸に沿って、縦に並んで、又は連続的に配置されて、小さな隔たりを有するが、例えば、6mm未満の大きさで隔てられる。一実施形態では、2mm-4mmの大きさで隔てられてもよい。なお、例えば、関節領域又は関節部分27の屈曲半径が比較的に大きくなる場合等では、6mmよりも大きな大きさで隔てられてもよい。
【0028】
図2及び図3では、ハウジング24と、配列21A、配列21Bと、関節部分27とを有するICEカテーテルの挿入可能部分が例示されている。関節部分27は、ハウジング24が屈曲する位置に相当し、その屈曲によって、一方の配列21Aが他方の配列21Bに対して配置が変えられる(再構成される)。図2では、屈曲していない関節部分27が例示されており、図3では、90度で屈曲された関節部分27が例示されている。なお、他の屈曲角度を用いることは可能である。2つの配列21A、21Bを互いに対して接近させることが好ましいため、カテーテル・ハウジング24は、徐々に屈曲するのではなく、タイトな(きつい)関節を可能にするために、関節部分27を薄くしてもよいし、又は関節部分27の機械的特性を変化させてもよい。図2の配置(即ち、配列21A、21Bの間で屈曲が無い、又は屈曲を最小にした状態)では、関節部分27は、ハウジング24が内腔を通って挿入されることを可能にし、そして、図3の配置では、挿入後に屈曲可能となって、異なるスキャン又は撮像用の面を定める開口を形成できるにする。
【0029】
配列21A、21Bは、互いに対して相対的に回転することができる。この回転は、配列21A、21Bの間の関節部分27で生じる。関節部分27は、屈曲することで、相対的な回転を可能にする。この回転は、カテーテル本体に対して直交方向で生じ、例えば、配列によって撮像される深さ軸方向に関して生じる。例えば、図2及び図3では、配列の発光面は、図面の用紙の面で示されており、その際、用紙に対して直交する軸が、撮像の深さ軸方向に相当する。プローブ20の位置決めに用いられる、2つの超音波開口は、通常、徐々に屈曲する関節部分に対して遠位の心臓内カテーテル本体上で、互いに接近して配置される。2つの超音波開口は、配列21A、21Bの間のより急な関節部分27で、互いに対して相対的に回転することができる。関節部分27は、ほぼ90度で、舷側(ブロードサイド)の撮像軸に関して相対的な回転を可能にしている。なお、他の角度も可能であって、例えば、10度-170度の任意の回転角度でもよい。異なる相対的な回転は、2進的(1か0)に行われてもよく、例えば、90度の回転のみを可能にしてもよい。他の実施形態では、回転の度合いは、任意の中間位置及び/又はより大きな回転位置を可能にするように、設定又は制御されてもよい。また、他の軸に関して回転可能にしてもよい。
【0030】
2つの配列21A、21Bは、ヒンジ接続(ヒンジ連結等ともいう)されている。関節部分27は、ハウジング材料の可撓性を利用して、ヒンジ状に作用したり、又はヒンジにされてもよい。他の実施形態では、相対的な回転を可能にするように配列21A、21Bを接続するため、ハウジング24内で他のヒンジ構造(例えば、プラスチックのヒンジ又は金属のヒンジ)を用いることができる。
【0031】
図4及び図5では、追加の関節部分28を備えた別の実施形態が例示されている。プローブ20の操縦(ステアリング)能力によって、配列21A、21Bを患者に対して配向させることができるが、追加の関節部分28によって、配列21A、21Bを共に(一体に)回転させるために、より鋭い屈曲が可能になる。この2つのヒンジを用いる態様(即ち、関節部分27及び28)は、配列21A、21Bの互いに対する相対的回転を変化させるために使用できるが(即ち、関節部分27を用いる)、同様に、プローブ20又は縦軸に関する双方の配列21A、21Bの相対的回転を共に変化させるために使用されてもよい(即ち、関節部分28を用いる)。2つのヒンジを用いる実施形態では、通常の側方から出る超音波カテーテルで用いられるように、主要なカテーテル本体に沿って一方の配列21Bを維持することに関係なく、2つの配列21A、21Bの相対的な方向を変化させることができる。なお、関節部分28は使用せずに、縦軸又はプローブに沿って1つの配列21Bを維持させてもよい。
【0032】
図5の実施形態では、双方の関節部分27、28は、深さ軸に関して回転可能である。配列21A、21Bと、ハウジング24の少なくとも一部は、方位方向と張り出し方向とから成る1つの面上にあり、双方とも、深さ軸に関して、屈曲又は回転する。図6に例示した他の実施形態では、関節部分28によって、配列21A、21Bが、方位方向と張り出し方向とから成る面から外に屈曲又は回転されている。別個のトランスデューサ配列21A、21Bは、管腔内超音波プローブ20の縦軸に対して共に回転することができ、この際、別個のトランスデューサ配列21A、21Bは、面上で互いに対して相対的に回転可能であり、かつ共に面外に回転可能である。例えば、図5に例示した配列21A、21Bの略「L」字状又は略「V」字状の配列は、そのL字又はV字が形成される面から外に傾けられてもよい。これにより、チャンバ(心腔)内の解剖学的構造の特定のビューのため、心臓内での位置決めをより容易にすることが可能となる。また、一方の配列21Aが所望に配向されると、他方の配列21Bがその配列21Aに対して配向される、「フラッシュライト」位置が設けられている。
【0033】
関節部分27及び28は、回転を1軸に限定してもよい。あるいは、一方又は双方のヒンジによる回転は、1軸より多い数の軸で行われてもよい。
【0034】
使用上、プローブ20は、配列21A、21Bの互いに対する相対的な、及び/又は、プローブ20の縦軸に対する、2つ以上の配列21A、21Bの配置を可能にしている。例えば、図2図4では、プローブ20の縦軸と並んで配置された、配列21A、21Bの線状の配置(縦に並んだ配置)が例示されている。関節部分27、28の屈曲をなくすか、又は限定的にすることで、患者の中にカテーテル・ハウジング24を挿入して、案内することを可能にする。例えば、この配置は、患者の心臓系の内腔(ルーメン)を通るようにカテーテルを挿入して、案内する場合に用いられる。
【0035】
図3図5、及び図6では、一方の配列21Aが他方の配列21Bに対して回転された配置が例示されている。この回転によって、異なる走査面(スキャン面)が形成されており、例えば、垂直(例えば、90度で回転した)面又は他の角度の面等が定められる。例えば、カテーテルをナビゲーションして、患者の心腔内に配列21A、21Bを配置できるようにする。一旦、心臓の中に入ると、配列21Aは、配列21Bに対して回転して、同一面上にはない開口と対応する走査面を形成する。例えば、配列21Aは、深さ軸に関して、配列21Bに対して90度で回転されて、直交する走査面を提供する。これにより、異なる配列21A、21Bを用いた撮像を可能にして、ユーザ(観察者)に対して、より多くの空間情報を提供する。2つの配列21A、21Bによる2平面撮像用の開口から2平面撮像が提供される。
【0036】
各配列は、ハウジング24の幅22よりも長い方位方向で素子22の分布を提供するため、ハウジング24の幅に限定されるときに利用可能となる場合と比較して、より大きな方位分解能(方位解像度)が提供される。2平面撮像の開口は、カテーテル・ハウジング24の幅よりも長い。1D配列21A、21Bによって形成される2平面撮像の開口は、それぞれ、方位方向の次元で同一の分解能を有する。ただし、他の実施形態では、各面で、分解能は異なっていてもよく、例えば、一方の配列21Aでは、他の配列21Bと比較して、より少ない素子、及び/又は、張り出し方向の広がりを有していてもよい。ルーメンに対するアクセスを可能にするための、プローブ20の細長く、かつ可撓性のある(柔軟な)形状要因は、関節状にできるため、心腔、膀胱等の内側に配置される場合、深さ軸の周りで互いに対して回転されて、2つの高品質な撮像面を得ることができる。複数の複雑な構造である心臓や他の処置は、ボリューム撮像ではなく、リアルタイムの2平面撮像を利用して達成され得る。2D配列を用いたプローブ内からのボリューム撮像と対比して、2つの1D配列21A、21Bを用いた、より単純で、潜在的により安価で、より高画質な実装は、完全ボリュームを可能とするマトリクス配列としてではなく、2平面撮像によって達成される。
【0037】
力(負荷)を適用することで、配列21A、21Bは、互いに対して相対的に回転する。力の適用は、任意に行うことができる。図7では、プッシュ・ロッド(押し棒)又はガイド・ワイヤ70が例示されている(押し及び/又は引き)。例えば、カテーテル・ステアリングに使用される内部又は外部の連結部(テザー)を作動させて、遠位の開口又は配列21Aを引っ張る。ロッド又はワイヤ70は、ハウジング24の内部に完全に設けることができる。あるいは、ロッド又はワイヤ70の一部は、より少ない力を必要とする角度が可能となるように、ハウジング24から外に出てもよい。ロッド又はワイヤ70は、配列21Bと接続するか、又は配列21B近傍のハウジング24と接続する。他の接続用の位置を用いることは可能である。接続部、プーリ、及び/又はレバー・アームの位置を用いて、押しの力及び/又は引きの力を回転に変えることは可能である。歯車機構や他の構成を用いることも可能である。弾性部材(ばね)を含むことにより、特定の回転の度合いに対応することも可能である(例えば、図2の配置や、図3の配置を可能にするように力を適用する)。ユーザによって、又はモーター(例えば、空気圧又は電気圧)によって、プローブ20のハンドルに力を適用することができる。
【0038】
図8は、回転を生じさせるため、バルーン80の膨張及び/又は放出(リリース)を行う別の実施形態が例示されている。空気又は液体等の流体がバルーン80の内部にポンプ式に送り込まれたり、外部に送り出されることで、関節部分27にて回転を生じさせることができる。他の実施形態も可能であって、例えば、記憶金属を用いて、回転を生じさせるために、記憶金属に対して熱を加えたり、止めさせてもよい。
【0039】
関節部分28で回転を生じさせるため、同様の機構又は異なる機構を用いてもよい。関節部分27、28の一方又は双方に対して、安全機構(フェイルセーフ)として、力を適用するための弾性部材(ばね)や、他の機構や、重複機構を含ませることができる。そのため、プローブ20は、挿入用の構成(例えば、図2)に配置されるか、自動的に配置される。つまり、回転機構が上手くいかない場合には、プローブ20が自動的に配置されて、患者の中からプローブ20を引き抜くことを可能にしてもよい。この結果、カテーテルの取り外しが容易になる。
【0040】
図7及び図8では、センサ72が例示されている。センサ72は、一方の配列21Aの他方の配列21Bに対する回転の度合い(例えば、回転の変化及び/又は回転状態)を感知することができる。複数のセンサを備えることは可能である。プローブ20に対する配列21A、21Bの回転を検知するために、関節部分28上に1つ又は複数のセンサを備えてもよい。
【0041】
任意の角度センサ又は位置センサを用いることができる。例えば、センサ72は接触センサである。電流センサ、抵抗センサ、光学センサ、赤外線センサ、磁気位置センサ、ホール効果センサ、GMRセンサ、誘導性センサ、又は容量式センサを用いることができる。
【0042】
再度図1を参照すると、超音波スキャナ(例えば、ビーム成形装置11、画像処理装置12、及び/又はディスプレイ13)は、2つの面又は複数の面で撮像が行えるように構成されている。異なる走査面用に別々の開口を形成するように、別個のトランスデューサ配列21が用いられている。ビーム成形装置11は、一方の配列21の複数の素子22を用いて、走査面(スキャン面)又は撮像面(イメージ面)を走査する。ビーム成形装置11は、他方の配列21の複数の素子22を用いて、異なる走査面又は撮像面を走査する。各開口又は配列21のため、ビーム成形装置11は、方位方向に沿って電子的に焦点を合わせる。開口を用いて複数の走査線が走査される。受信動作の間、焦点は、深さの関数として変化してもよい(すなわち、動的焦点合わせ)。異なる配列を用いた走査は、フレームごと、走査ラインごと、又は走査ラインの集団ごとに、交互に配置されて、実質的に同時の走査と撮像を可能にしてもよい。あるいは、別個のビーム成形と画像処理とを行って、走査と撮像を同時に行ってもよい。互いに対して相対的に回転される別個の配列21に基づいて、2つの非平行な面を撮像してもよい。
【0043】
画像処理装置12は、検出器(デテクタ)、フィルタ、プロセッサ(処理装置)、特定用途向け集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、デジタル信号プロセッサ、制御プロセッサ、スキャン・コンバータ、三次元画像処理装置、グラフィック処理装置、アナログ回路、若しくはデジタル回路、又はこれらの任意の組合せである。画像処理装置12は、ビームフォームされたデータを受け取って、ディスプレイ13上で画像を生成する。画像は、同時に、又は交互の仕方で、ディスプレイ13上で更新される。撮像は実質的に同時である。実質的とは、10Hz以上で2つの面での画像をそれぞれ更新するなど、ユーザが別々の更新を知覚できない場合に用いられる。交互の走査では、交互の撮像を行って、ユーザが、2つの異なる走査面について、同時に、視野内で、組織、解剖学的構造、及び/又は他の物体の画像を見ることを可能にする。
【0044】
図9は、管腔内超音波プローブを用いた、超音波撮像方法の一実施形態についてのフローチャートの例示である。プローブには、複数の配列が含まれているが、これら配列は、互いに対して相対的に、選択的に回転することができ、そのため、挿入及びナビゲーション用の配置と、複数の面での撮像用の異なる配置とを可能にしている。
【0045】
図1乃至図8のプローブを用いてもよく、又は、複数の狭く(プローブの軸よりも狭い)、長い(プローブの軸の幅よりも長い)、他の管腔内プローブを用いてもよい。
【0046】
追加的な動作、異なる動作、又はより少ない動作を可能にしてもよい。例えば、超音波撮像システムを構成するための動作、及び/又は、診断又は治療のための動作が含まれ得る。他の例として、動作94、98、及び/又は、99を行わなくてもよい。複数の動作は、例示した順番で行われてもよく、又は、異なる順序で行われてもよい。
【0047】
動作(ステップ)90では、患者の中に管腔内プローブが挿入される。例えば、血管等の内腔(ルーメン)の中にプローブが挿入される。例えば、プローブは、心臓内カテーテルであって、心臓系の中に挿入されて、心臓まで案内される。
【0048】
管腔内プローブには、少なくとも2つの配列が含まれる。これら配列は、互いに対して相対的に移動可能な別個のデバイスである。患者の中の内腔を移動するプローブ及び/又は患者の中に入るプローブについて、凸部(ふくらみ)又は他の干渉部を避けるように、複数の配列が挿入用に位置決めされる。例えば、複数の配列は、短めの端部を合わせるように配置されて、長く、幅狭の構成を形成し、その際、幅の大きさは、3mm、5mm又は10mm以下である。他の種類のプローブでは、幅の大きさはより大きくてもよく、例えば、25mm以下である。他の例では、図2及び図4に例示したように、複数のトランスデューサ配列は、管腔内プローブの縦軸と略平行で、最も長い寸法を有するように配置することができる。
【0049】
挿入及び/又はナビゲーションの際、患者を撮像するため、1つ又は複数の配列を用いることができる。複数の配列は、1つの配列として共に扱うことができるが、そのことは、縦軸に沿った、縦に並んだ配置によって可能となる(その場合、撮像用の開口は、その配列を横切って延在する)。他の実施形態では、挿入とナビゲーションの際、1つの配列だけが、超音波撮像に用いられる。挿入を助けるために、画像が生成される。挿入用の開口を用いて走査することにより、二次元画像が生成される。
【0050】
動作92では、複数のトランスデューサ配列が互いに対して相対的に回転される。一方の配列が回転される間、他方の配列の位置を保つことで、相対的な回転を可能にしてもよい。あるいは、双方の配列を回転させることで、相対的な回転を可能にしてもよい。回転によって配列が再構成される。その再構成によって、複数の配列の位置に基づいて、2つの異なる走査面が形成又は定められる。
【0051】
上記回転のために力(負荷)が加えられる。力によりロックが解除され得るが、例えば、弾性部材(ばね)により配列を回転させてもよい。力により回転が生じ得るが、例えば、バルーンを拡張したり、より遠位の配列を押したり、より遠位の配列を引っ張ってもよい。
【0052】
一度、プローブの端部が、心臓内などの患者の中の所望の位置に至ると、回転により配列が再構成される。管腔内プローブは、複数の配列の間の関節領域にて屈曲される。この曲げにより、一方の配列が他方に対して回転される。
【0053】
回転は一平面上で行われる。例えば、回転は深さ軸に関して行われる。図3では、その例が示されている。図2の構成から図3の構成まで、回転が行われる。回転により一面が定められるが、その面上に、回転される双方の配列が置かれる。双方の配列は、同一の、方位方向と張り出し方向とから成る面を共有する。そのため、深さ軸に関する回転は、それら配列を、その方位方向と張り出し方向とから成る面上に保持する。なお、他の回転軸を用いることは可能であり、あるいは、複数の回転軸を用いることも可能である。
【0054】
動作94では、複数の配列が一体で、共に回転される。例えば、図4及び図5では、他の関節部分を回転させるために力が加えられることが例示されている。複数の配列は、ある軸に関して(例えばステアリング部を超えて、最も近位の関節部分の手前の、ハウジングの軸の一部にて)、共に回転される。その回転によって、複数の配列が共通の面上で再配置される。あるいは、その回転によって、複数の配列の少なくとも一つが共通の面上に存在しなくなるように、複数の配列が再配置されてもよい。図6には、複数の配列をその面から外に出すように回転する例が示されている。
【0055】
動作96では、回転された複数の配列が、撮像のために用いられる。互いに対して相対的に回転された複数の配列によって定められた異なる面上で、超音波スキャナの撮像(画像化)が行われる。複数の配列は、ビーム成形装置と接続しており、複数の異なる走査面(例えば、複数平面撮像用の直交する複数の走査面等)のそれぞれについて、複数の異なる開口を形成する。複数平面(例えば、2つの面)操作のため、複数の開口が用いられる。診断及び/又は治療を助けるため、異なる面の画像が生成される。複数の開口を用いて走査することで、2D画像を生成することができる。
【0056】
超音波スキャナは、実質的に同時に、異なる面を撮像可能である。ここで、「実質的」とは、10Hz以上で各走査面を撮像(画像化)しながら、ライン又はフレームをインターリーブする(交互にする)ことをいう。異なる面での画像は、リアルタイムで生成される。異なる配列についての走査及び/又は表示は、順次更新することができる。ただし、全走査面での全配列から、リアルタイムの撮像を視覚的に提供するために、順次と交互は十分に速いものとする。
【0057】
動作98では、配列を回転させて、縦に並んだ構成に戻す。このため、患者からの引き出しを可能にする。例えば、図2又は図4に例示したように、複数の配列を再構成してもよい。弾性力(ばね力)、制御ワイヤによって加えられる力、又は他の力によって、複数の配列を再構成して、動作90で用いられた構成へと復帰させる。動作99では、患者からプローブが取り外される。
【0058】
この2平面撮像は、介入性の分野を助けることができ、例えば、構造的な心臓分野を助けることができる(例えば、切除、又は修復)。他の応用として、TEE撮像又は小児への適用時のマイクロTEE、又は膀胱撮像用のカテーテル経尿道送出(尿道へのプローブの係止を助けるための、膨張バルーンを追加してもよい)等が含まれ得る。管腔内プローブが、2平面配列を固定させるために十分な余地を有する場合、固定された配列の替わりに相対的な回転を利用することで、形状因子(フォームファクタ)を低減させ、例えば、膣内トランスデューサの挿入可能部分の最大幅を低減させる。回転可能な配列の構成は、治療分野で用いることができ、例えば、一部の素子は、高密度焦点式超音波を送信させ、他の素子は、実質的に同時の撮像に用いられる。
【0059】
以上、様々な実施形態を参照することにより、本発明について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明について様々な変更や修正を行うことができることを理解されたい。従って、上記詳細な説明は、本発明を限定するものではなく、単なる例示であることを理解されたい。また、本発明の技術思想と範囲を定めるのは、添付した特許請求の範囲であって、その範囲内には、全ての均等物が含まれることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9