(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】誘導パッケージを含む歯科的解決策を作成するシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
A61C 11/00 20060101AFI20240401BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20240401BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20240401BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20240401BHJP
A61C 19/045 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61C11/00 Z
A61C19/00 M
A61C7/08
A61C5/70
A61C19/045 110
(21)【出願番号】P 2022116516
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2019531605の分割
【原出願日】2017-08-31
【審査請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519068803
【氏名又は名称】ルーカス,ケリー
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,ケリー
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0370465(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0276159(US,A1)
【文献】特開2014-133134(JP,A)
【文献】特開2007-037687(JP,A)
【文献】特開2012-055680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 11/00
A61C 19/00
A61C 7/08
A61C 5/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置によって実行される際に、当該コンピュータ装置に、受容者の互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための望ましい運動プロファイルを提供するように構成された誘導具内蔵解決策を作成するためのプロセスを実行させるための命令が保存されたコンピュータ可読媒体であって、
前記誘導具内蔵解決策は、保持片と誘導パッケージとの組み合わせからなり、
前記プロセスは、
前記下顎骨弓および上顎骨弓と、前記上顎骨弓に対する前記下顎骨弓の指標位置と、前記下顎骨弓および前記上顎骨弓のうちの少なくとも一方の表面内に埋め込まれた領域を含む三次元領域の境界とを記述するデータを得る工程と、
運動プロファイルに関連する適切な仮想誘導パッケージを、前記望ましい運動プロファイルに基づいて特定する工程と、
前記特定された仮想誘導パッケージを仮想空間に配置する工程と、
複数の仮想誘導具内蔵解決策を作成するために、前記三次元領域の全域で、前記配置された誘導パッケージをパラメータ化する工程と、
前記互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための前記特定された仮想誘導パッケージに関連する前記運動プロファイルを提供するように構成されている、前記複数の仮想誘導具内蔵解決策の1つの仮想誘導具内蔵解決策に基づいて、少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策を作成するために用いることができるデータを生成する工程と、を含み、
前記複数の仮想誘導具内蔵解決策のそれぞれは、前記特定された仮想誘導パッケージの前記運動プロファイルを提供するように構成されており、
前記三次元領域は、その中で前記仮想誘導パッケージが利用される空間である、コンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記適切な仮想誘導パッケージは、それぞれが異なる運動プロファイルを提供するように予めプログラムされている複数の誘導パッケージから特定される、請求項1に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記プロセスはさらに、前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策を作成するために、前記生成されたデータを三次元プリンタに出力する工程を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記プロセスはさらに、前記下顎骨弓および上顎骨弓を記述するデータの少なくとも一部に基づいて、前記特定された適切な誘導パッケージの横断方向、矢状方向、および前額方向の大きさを選択する工程を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、前記誘導パッケージの少なくとも一部を含む入れ歯または部分入れ歯を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、前記誘導パッケージの少なくとも一部を含む歯冠を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、前記誘導パッケージの少なくとも一部を含むブリッジを含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、前記受容者が口を閉じる際に、前記受容者の唇が誘導要素に挟まれないように、特定の寸法で形成されたバンパー様の外周に囲まれた凹部を有する前記誘導要素を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、前記受容者の口内の組織の少なくとも一部との干渉に基づいて、前記望ましい運動プロファイルを提供するように構成されている、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記プロセスはさらに、付加コンピュータ支援製造(CAM)技術および縮小CAM技術のうちの少なくとも一方を利用して、前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策を作成する工程をさらに含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策を作成するために用いられる前記データは、連続的に損傷を治療するための複数の有形の保定片を作成するために用いることができる、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記少なくとも1つの有形の誘導具内蔵解決策は、治療用装置を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記治療用装置は、透明アライナー型歯科矯正器具を含む、請求項12記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年8月31に出願された米国仮特許出願第62/382,106号に基づく優先権を主張するものであり、その開示全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願の様々な実施形態は、概して、上顎骨弓に対する下顎骨弓の望ましい運動プロファイルを得るための誘導パッケージを有する口部保定片を作成するシステムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歯科医師は、患者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の動きを変化させようと試みることについて、しばしば、問題に直面する。例えば、多くの問題を解決するために、上顎骨弓に対する下顎骨弓の新規の指標位置が規定されてもよい。歯ぎしりや睡眠時無呼吸、顎関節機能不全(TMD)などの異なる問題に対処するために、異なる指標位置に対する異なる運動プロファイルが用いられてもよい。また、顎および歯を含む顎口腔系の最適化、機能回復、再建、または復元を行う際に、新規の指標位置に対する新規の運動プロファイルが、歯科医師によって規定されることが多い。
【0004】
例えば、歯ぎしりは、典型的には就寝中に、無意識または常習的に起こる歯の摺り合わせであり、これは、多くの歯科的問題および医学的問題を不必要に引き起こす。歯ぎしりは、顔面筋疼痛症候群や歯の損傷、顎関節(TMJ)の損傷を引き起こすことが知られている。歯ぎしりに対して誤った治療または不適切な治療を行うと、そのような効果が増幅し得る。歯ぎしりの悪影響への対処に役立つように、様々な夜用保護具が設計されている。単に歯を覆うことで摩耗を予防する夜用保護具もあれば、中心位(CR)/中心咬合(CO)の不一致を矯正して、解剖学的に最も適切で、かつ最良の咬合圧負担位置(多くの患者では中心位)でTMJが弛緩できるようにすることを狙ったものもある。他には、前方への誘導を行う夜用保護具があり、これは、他の利点の中でも、歯ぎしりに関連した不適切な筋力を大幅に低減し、後方の干渉を避けるように顎を誘導するものである。一般的に言えば、夜用保護具は、歯を保護し、CR/COの不一致に対処し、前方への誘導を行うものである。何故なら、この三点すべてに対処できない場合は、歯ぎしりがより酷くなることが多いためである。
【0005】
従来では、歯科医療従事者が、個別に調整した夜用保護具を製造しており、これらは、典型的には、上顎歯および/または下顎歯に手で取り付けられる。個別に調整した夜用保護具によって、歯科医療従事者は、患者個々の不正咬合や他の要因を考慮して、患者の顎を中心位または他の所定の指標位置(新規に規定された極限閉口位置)に配置することができる。
【0006】
他の症状である閉塞性睡眠時無呼吸症は、気道が制限されることで引き起こされる。多くの場合、この症状は、口腔器具を用いて治療することができる。ある種の器具は、上顎骨に対する下顎骨の指標位置(例えば、休止位置)を、閉口途中の位置または閉口位置においてより突き出た位置に変更して、上顎骨に対して前方で下顎骨を維持し、ひいては舌を前方へと引っぱり、ひいては気道を開放することによって、この症状に対処し得る。例えば、睡眠時無呼吸用の器具は、下顎骨の位置を、規定された経路によって、規定された突出方向(新規の極限閉口位置)へと変更し得る。
【0007】
別例として、TMD(顎関節機能不全)は、未治療で放置された場合に、患者にとって痛みやさらなる損傷の原因となる様々な症状を呈する場合がある。多くの場合、この症状は、口腔器具を用いて治療することができる。この器具は、下顎骨が、一方または両方のTMJの損傷領域に圧力をかけるように動くことを防ぎ得る。すなわち、一般的には、TMD治療の一環として、上顎骨に対する下顎骨の指標位置と、運動プロファイルとを、その新規指標位置へと変更し得る。
【0008】
他の状況の例としては、顎および歯を含む顎口腔系の最適化、機能回復、再建、または復元を行うことが挙げられる。不正咬合または他の問題が原因で、多くの患者が、重いCO(中心咬合)/CR(中心位)の不一致を患っている。換言すれば、歯または弓が閉じている際の顎の位置が、患者のTMJと適合していない場合があるか、または、顎口腔系のまた別の部分と相容れない場合がある。歯科医師が、最適化、機能回復、再建、または復元を患者に行う過程においては、この問題となっている極限咬頭嵌合位置(極限閉口位置における上顎骨に対する下顎骨の指標位置)と、運動プロファイルとを、その異なる位置へと変更することが、患者にとって有利であり得る。これは、上顎骨弓および/または下顎骨弓の改変を含んでもよい。歯科医師は、復元ガイド、外科的ガイド、および/またはインプラント配置ガイドを用いて、弓組織を改変してもよい。歯科医師は、歯または弓が閉じている際に、この新規位置と、この異なる位置への誘導を行う連続体とが、患者のTMJと適合するような(すなわち、顎口腔系における他の不適合な状況を修正する)復元物を提供してもよい。
【0009】
例示したこれらの器具、復元物、および復元ガイド/外科的ガイド/インプラント配置ガイドが有効で、これらによって、患者の下顎骨が、規定された経路によって、新規の極限閉口位置へと誘導されてもよい。しかしながら、関連技術においては、特定の患者に対して、器具、復元物、および外科的ガイド/復元ガイド/インプラント配置ガイドを製造、改変するには、典型的には相当な時間と手間が必要となる。また、歯を失った、もしくは歯周が弱っている患者、または特定の不正咬合のある患者においては、関連技術における歯ぎしり用器具、TMD用器具、および睡眠時無呼吸用器具の使用が制限され、前方への誘導がごく限られたものとなる場合がある。
【0010】
本明細書に記載の実施形態の発明者は、様々な望ましい運動プロファイルを提供するために、多数の誘導パッケージと、誘導パッケージを作成し用いるシステムとを発明した。これらは、米国特許出願第13/573,283号、第13/774,033号、第13/774,920号、第13/918,754号、第14/083,467号、および第14/748,805号に記載されており、その全体が、参照により、以下に完全に記載されているかのように、本明細書に援用される。しかしながら、関連技術における多くの解決策は、誘導パッケージを効率的な様式で特定の患者に対して個別に調整することが難しいという点で、上記問題のいくつかに対して難点がある。
【0011】
したがって、上記欠陥に対処するための改善されたシステムおよび方法が必要とされている。本出願の実施形態は、このような問題点およびその他の問題点に関するものである。
【発明の概要】
【0012】
本明細書は、患者の運動プロファイルを修正するための誘導パッケージを有する保定片を作成するシステムおよびその方法に関する。運動プロファイルは、患者の下顎骨を、上顎骨(例えば、新規の極限閉口位置)に対する下顎骨の新規の指標位置(例えば、安静位置または治療上指定された位置)へと適切に誘導するように修正され得る。
【0013】
例示的な実施形態によると、受容者の互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための望ましい運動プロファイルを提供するように構成された誘導具内蔵解決策を作成する方法であって、前記方法は、前記下顎骨弓および上顎骨弓と、前記上顎骨弓に対する前記下顎骨弓の指標位置と、三次元領域の1つ以上の境界とを記述するデータを得ることと、運動プロファイルに関連する適切な仮想誘導パッケージを、前記望ましい運動プロファイルに基づいて特定することと、前記特定された仮想誘導パッケージを仮想空間に配置することと、少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策を作成するために、前記三次元領域の全域で、前記配置された誘導パッケージをパラメータ化することと、互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための前記特定された仮想誘導パッケージに関連する前記運動プロファイルを提供するように構成されている、少なくとも1つの有形誘導具内蔵解決策を作成するために用いることができるデータを生成することとを含む、方法が提供される。
【0014】
前記方法は、前記上顎骨弓および下顎骨弓の仮想モデルを生成することをさらに含んでいてもよく、前記特定された仮想誘導パッケージは、前記仮想モデル内の仮想空間に配置されていてもよい。
【0015】
前記方法は、前記仮想空間内において、前記特定された仮想誘導パッケージの大きさ、位置、または方向のうちの少なくとも1つを調整することによって、前記特定された仮想誘導パッケージを個別に調整し、個別に調整した運動プロファイルを作成することをさらに含んでいてもよく、前記少なくとも1つの有形誘導具内蔵解決策は、前記互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための前記個別に調整した運動プロファイルを提供するように構成されていてもよい。
【0016】
前記三次元領域の境界は、前記下顎骨弓および上顎骨弓のうちの少なくとも一方の組織側表面を含んでいてもよい。
【0017】
前記三次元領域の境界は、前記下顎骨弓および上顎骨弓のうちの少なくとも一方の表面内に埋め込まれた領域を含んでいてもよい。
【0018】
前記三次元領域の全域で、前記配置された誘導パッケージをパラメータ化することは、領域全体で、複数の仮想誘導具内蔵解決策を提供してもよい。
【0019】
前記複数の仮想誘導具内蔵解決策は、それぞれが前記特定された仮想誘導パッケージに関連する前記運動プロファイルを提供するように構成されている、相乗的に成形された複数の誘導具解決策を含んでいてもよい。
【0020】
前記パラメータ化することは、前記受容者の損傷を連続的に矯正するように設計された、一連の仮想誘導具内蔵解決策を形成することを含んでいてもよい。
【0021】
前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策は、前記下顎骨弓および上顎骨弓のうちの少なくとも一方のための外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0022】
前記三次元領域の表面は、前記外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドの可能な最大深度を定義してもよい。
【0023】
前記有形誘導具内蔵解決策は、治療用装置を含んでいてもよい。
【0024】
前記治療用装置は、透明アライナー型歯科矯正器具を含んでいてもよい。
【0025】
前記方法は、前記受容者の神経・筋肉系からの望ましい応答に基づいて、前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策から、仮想誘導具内蔵解決策を選択することをさらに含んでいてもよい。
【0026】
前記方法は、前記受容者の適切な咬合曲線に基づいて、前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策から、仮想誘導具内蔵解決策を選択することをさらに含んでいてもよい。
【0027】
前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策は、前記下顎骨弓および上顎骨弓のうちの一方のための保持片を含んでいてもよく、前記保持片は、前記下顎骨弓および上顎骨弓のうちのもう一方の組織と相互作用して、互いに関連する前記下顎骨弓および上顎骨弓のための前記特定された仮想誘導パッケージに関連する前記運動プロファイルを提供するように構成されている表面を含む。
【0028】
前記方法は、前記下顎骨弓および上顎骨弓を記述するデータに基づいて、前記三次元領域の1つ以上の境界を記述するデータを生成することをさらに含んでいてもよい。
【0029】
前記方法は、前記上顎骨弓および下顎骨弓の仮想モデルを生成することをさらに含んでいてもよく、前記三次元空間の境界は、前記仮想下顎骨弓および上顎骨弓のうちの少なくとも一方の表面内に埋め込まれていてもよい。
【0030】
前記方法は、前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策の望ましい形態を特定することをさらに含んでいてもよく、前記作成された少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策は、前記望ましい形態に準拠していてもよい。
【0031】
前記方法は、前記下顎骨弓および上顎骨弓、ならびに前記少なくとも1つの仮想誘導具内蔵解決策の望ましい形態を記述するデータに基づいて、前記三次元領域の1つ以上の境界を記述するデータを生成することをさらに含んでいてもよい。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態によると、本明細書に記載の方法のうちの1つ以上を実行するためのコンピュータプログラムコードが保存されていてもよい、コンピュータ可読装置が提供される。
【0033】
例示的な実施形態によると、受容者の互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のための望ましい運動プロファイルを提供するように構成された誘導パッケージを有する保定片を作成する方法であって、前記方法は、前記下顎骨弓および上顎骨弓と、所定の極限閉口位置における前記上顎骨弓に対する前記下顎骨弓の指標位置と、前記受容者の少なくとも一方の顎関節とを記述するデータを得ることと、互いに関連する前記下顎骨弓および上顎骨弓のための前記望ましい運動プロファイルに基づいて、適切な誘導パッケージを特定することと、仮想咬合器内において、前記下顎骨弓および上顎骨弓の少なくとも一方の仮想表現付近に、前記特定された誘導パッケージの少なくとも一部を含む保定片の仮想表現を配置することと、前記特定された誘導パッケージが、前記望ましい運動プロファイルを提供するのかどうかを判断するために、前記下顎骨弓および上顎骨弓の少なくとも一方付近に配置された前記保定片の仮想表現を用いて、前記特定された誘導パッケージの仮想表現によって行われる誘導に起因する、前記仮想咬合器内における前記下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現の相対運動をモデル化することと、前記望ましい運動プロファイルを提供するように構成された前記特定された誘導パッケージを含む、少なくとも1つの有形保定片を作成するために、コンピュータ支援製造(CAM)プロセスが用いることができるデータを生成することとを含む、方法が提供される。
【0034】
前記適切な誘導パッケージは、それぞれが異なる運動プロファイルを提供するように予めプログラムされている複数の誘導パッケージから特定されてもよい。
【0035】
前記少なくとも一方の顎関節を記述するデータは、前記受容者の顎関節に特有のものであってもよい。
【0036】
前記方法は、前記生成されたデータに基づいて前記少なくとも1つの有形保定片を作成するために、三次元プリンタを用いることをさらに含んでいてもよい。
【0037】
前記方法は、前記データの少なくとも一部に基づいて、前記特定された適切な誘導パッケージの横断方向、矢状方向、および前額方向の大きさを選択することをさらに含んでいてもよい。
【0038】
前記保定片は、前記誘導パッケージの少なくとも一部を含む入れ歯または部分入れ歯、前記誘導パッケージの少なくとも一部を含む歯冠、および前記誘導パッケージの少なくとも一部を含むブリッジのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0039】
前記保定片は、前記受容者が口を閉じる際に、前記受容者の唇が前記誘導要素に挟まれないように、特定の寸法で形成されたバンパー様の外周に囲まれた凹部を有する誘導要素を含んでいてもよい。
【0040】
前記方法は、前記得られたデータの少なくとも一部に基づいて、前記特定された誘導パッケージの縮尺を調整することをさらに含んでいてもよく、前記保定片の仮想表現は、前記縮尺を調整した特定された誘導パッケージを含む
【0041】
前記方法は、前記仮想咬合器内において、前記下顎骨弓および上顎骨弓のもう一方の仮想表現付近に、前記特定された誘導パッケージの少なくとも他の部分を含む他の保定片の仮想表現を配置することと、前記特定された誘導パッケージが、前記望ましい運動プロファイルを提供するのかどうかを判断するために、前記下顎骨弓および上顎骨弓付近に配置された前記保定片および他の保定片の仮想表現を用いて、前記特定された誘導パッケージの仮想表現によって行われる誘導に起因する、前記仮想咬合器内における前記下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現の相対運動をモデル化することとを、さらに含んでいてもよい。
【0042】
前記少なくとも1つの有形保定片は、前記患者の口内の組織の少なくとも一部との干渉に基づいて、前記望ましい運動プロファイルを提供するように構成されていてもよい。
【0043】
前記方法は、付加CAM技術および縮小CAM技術のうちの少なくとも一方を利用して、前記少なくとも1つの有形保定片を作成することをさらに含んでいてもよい。
【0044】
少なくとも1つの有形保定片を作成するためにCAMプロセスが用いることができる前記データは、連続的に損傷を治療するための複数の有形保定片を作成するために用いることができるデータを含んでいてもよい。
【0045】
前記少なくとも1つの保持片は、治療用装置を含んでいてもよい。
【0046】
前記治療用装置は、透明アライナー型歯科矯正器具を含んでいてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態によると、受容者に望ましい運動プロファイルを提供するように構成された誘導パッケージを有する保定片を作成する方法が、提供される。本方法は、(1)受容者の下顎骨弓および上顎骨弓、(2)極限閉口位置における受容者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の指標位置、ならびに(3)少なくとも一方の顎関節、を記述するデータを得ることを含んでいてもよい。本方法は、そのデータの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、仮想咬合器内における、受容者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の仮想表現の動きをモデル化することと、そのデータおよび上顎骨弓を基準とした下顎骨弓の望ましい運動プロファイルに少なくとも基づいて、適切な誘導パッケージを特定することとを、さらに含むことができる。
【0048】
本方法は、指標位置と、1つ以上の保持片の位置、方向、または位置とのうちの1つ以上に基づく1つ以上の仮想点を生成することを、さらに含んでいてもよい。仮想誘導パッケージは、1つ以上の仮想点に基づく仮想空間に位置していてもよい。場合によっては、1つ以上の仮想点は、1つ以上の保持片(例えば、仮想保持片)を基準とした仮想誘導パッケージの位置だけではなく、その方向も示す。誘導パッケージは、仮想上顎誘導要素および仮想下顎誘導要素を含んでいてもよい。誘導パッケージを仮想空間に配置した後、仮想上顎誘導要素を仮想上顎保持片に接続して、仮想AGP内蔵スプリントの第1部分を形成してもよい。同様に、仮想下顎誘導要素を仮想下顎保持片に接続して、仮想誘導パッケージ内蔵器具の第2部分を形成してもよい。
【0049】
本方法は、望ましい運動プロファイルを実現する位置にある仮想咬合器内の下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現付近に、特定された誘導パッケージを含む少なくとも1つの保定片の仮想表現を配置することを、さらに含んでいてもよい。本方法は、望ましい運動プロファイルを確実に実現するために、仮想咬合器内における下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現の相対運動をモデル化することをさらに含んでいてもよく、その運動は、特定された誘導パッケージの仮想表現または数学的表現によってなされる誘導に起因するものである。本方法は、患者固有のデータを用いて運動プロファイルを個別に調整することを、さらに含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージ派生器具は、下顎骨の前端に対して、三次元的な制御、誘導、および制限を行う器具であってもよい。歯ぎしりを患う患者向けの優れた一体的誘導パッケージ派生器具、歯科医療従事者によって規定される特定の顎の整復および誘導の制限を伴った高性能の顎関節障害(TMD)用誘導パッケージ派生器具、または下顎骨突出整復睡眠時無呼吸用器具を作成するために、保持片システムにおける前額面、矢状面、および横断面の広い範囲に対して、誘導パッケージをインデックス化してもよい。誘導パッケージ派生器具は、歯の前方を含む前額面、矢状面、および横断面の広い範囲内で、保持片システムにおいて前方への誘導を行う独特な機能を有していてもよく、それによって、咀嚼筋に対する機械的な優位性が向上し得る。誘導パッケージ派生器具は、疾患や不正咬合、歯(例えば、前歯)の有無による制限なしに、顎を三次元的に前方へ誘導し、かつ後方の干渉(例えば、衝突)を排除することができる。誘導パッケージは、インデックス化された後、保持片システム内において、歯または弓に直接取り付けられるのではなく、保持片に取り付けられてもよい。誘導パッケージ派生器具は、顎が中心位(CR)にある場合に、咬合高径のペナルティを最小限にして、顎をこのように誘導してもよい。何故なら、誘導パッケージは、歯の前方に、歯とは独立して、配置されてもよいからである。また、誘導パッケージ派生器具によって、術者が、顎の前方への誘導および制限について前例のない制御を行い得る。何故なら、歯科医療従事者が選択する(または設計する)誘導は、三次元的であり、歯とは独立していてもよいからである。
【0051】
いくつかの実施形態では、開示された誘導パッケージによって、患者が誘導パッケージ派生器具を最初に受け取るのに要する時間、または以前に使用していたものが摩耗もしくは損傷した際に、新しい誘導パッケージ派生器具を手に入れるのに要する時間が短縮され得る。開示された方法のある種の実施形態によって、患者に合わせて特別に設計された新しい誘導パッケージ派生器具を手に入れるために、患者および歯科医師の両方が費やす時間および労力が最小化され得る。誘導パッケージを併用する仮想咬合器およびCAD(コンピュータ支援設計)-CAM(コンピュータ支援製造)技術を用いると、歯科医療従事者は、前例のないほど広範囲の三次元的な誘導および制限パラメータから作成できる誘導パッケージ派生器具を、患者に提供することができる。患者のデジタル記録を解析した後、誘導パッケージシステムの柔軟性を生かして、その患者に対する歯科医療従事者の目標に依存した下顎骨の誘導および制限に関する多くの設計可能性を実現することができる。例えば、顎運動解析装置によって得られたデータと併用すると、これらの器具は、特定の患者に対して極めて正確になり得る。いくつかの実施形態によると、限定しない例として、優れた一体的な誘導パッケージ派生歯ぎしり用器具、歯科医療従事者によって規定される特定の顎の整復および誘導の制限を伴った高性能のTMD用誘導パッケージ派生器具、または下顎骨突出整復睡眠時無呼吸用器具を作成するための方法が提供される。
【0052】
いくつかの実施形態によると、重度の不正咬合を患っているか否かにかかわらず、患者に対して個別に調整した誘導パッケージ派生器具を自動で作成または再現するための方法が提供される。本方法では、仮想咬合技術、顎運動解析装置技術、および/またはCAD-CAM法と、誘導パッケージシステムおよび保持片技術の独特な特質とが組み合わせられてもよい。本方法によって、重度の不正咬合を患っているか否かにかかわらず、患者が、歯科医療従事者を何度も訪れることなく、自動で、個別に調整した誘導パッケージ派生歯ぎしり用器具、特定の顎の整復および誘導の制限を伴った、個別に調整した高性能の誘導パッケージ派生TMD用器具、または誘導パッケージ派生下顎骨突出整復睡眠時無呼吸用器具を受け取ることが可能になる。
【0053】
開示された方法は、よくある誘導パッケージ、および/または後に改変されるよくある誘導パッケージ、および/または特定の患者や特定の目的のために受注設計された誘導パッケージといった広い範囲に適用することができる。誘導パッケージの大きさ、形状、または形式は、非常に広範囲の問題および/または不正咬合に対処するため、幅広い中から選択されるいずれかとすることができる。誘導パッケージの上顎要素および/または下顎要素は、術者が望む効果を実現するように、別々に、またはグループとして、幅広い形状、大きさ、または形式のうちのいずれかで設計または改変することができる。例えば、TMDの治療者は、下顎骨の制限および誘導の両方に関して、前例のない範囲の選択肢を用いることができる。他のシステムと異なり、誘導パッケージシステムは、広範囲の下顎骨の三次元的な前方への誘導および制限を行うことができ、また、疾患や位置、歯の有無とは無関係であってもよい。また、咀嚼筋に対する誘導パッケージ派生器具の機械的な優位性を向上させることまたは低下させることを含む異なる性質を、最大化または最小化するために、誘導パッケージ保持片システム内における誘導パッケージの位置(ひいては、下顎骨の誘導および制限)を制御することができる。誘導パッケージシステムの前例のない三次元的選択および設計可能性、ならびに誘導パッケージ保持片システム内における誘導パッケージの位置に関する極度の柔軟性を考慮すると、CAD-CAM誘導パッケージ派生器具、CAD-CAM TMD用誘導パッケージ派生器具、およびCAD-CAM睡眠時無呼吸用誘導パッケージ派生器具は、既存の夜用保護具、TMD用器具システム、または睡眠時無呼吸用システムよりもはるかに優れている。
【0054】
本方法は、その境界がエンベロープ領域である個別に調整した運動プロファイルをパラメータ化することと、相乗的に成形された異なる誘導パッケージを選択することとを、さらに含むことができる。本方法は、望ましい運動・停止プロファイルを実現するための特定された誘導パッケージを含む少なくとも1つの有形保定片を作成するために、コンピュータ支援製造(「CAM」)プロセスで用いることができるデータを生成することを、さらに含むことができる。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの有形保定片を作成するために、三次元プリンタなどの付加技術、および/またはCNCルーティング、レーザー切断、または水ジェット切断などの縮小プロセスを用いることを、さらに含むことができる。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、特定された適切な誘導パッケージの、横断面方向、矢状面方向、および前額面方向の大きさを選択することを、さらに含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態によると、望ましい運動プロファイルを受容者に提供するための誘導パッケージを有する保定片を作成するためのシステムが提供される。本開示の例示的な実施形態では、本システムは、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを含むことができる。少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、上述した1つ以上の方法の様々なステップを本システムに行わせる命令を含むことができる。例えば、その命令は、プロセッサによって実行される際に、(1)受容者の下顎骨弓および上顎骨弓、(2)所定の極限閉口位置における受容者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の指標位置、ならびに(3)少なくとも一方の顎関節、を記述するデータを得るように、システムを制御してもよい。
【0058】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、仮想咬合器内における、受容者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の仮想表現の運動を、システムの術者がモデル化できるようにする命令を、さらに含むことができる。少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、少なくとも互いに関連する下顎骨弓および上顎骨弓のデータと望ましい運動プロファイルとに基づいて、適切な誘導パッケージを特定できるようにする命令を、さらに含むことができる。
【0059】
場合によっては、その命令は、プロセッサによって実行される際に、1つ以上の保持片の仮想表現に関連して、特定された仮想誘導パッケージを仮想空間に配置するために、1つ以上の仮想点を識別するようにシステムに命令してもよい。場合によっては、1つ以上の仮想点は、1つ以上の保持片上の位置および特定された誘導パッケージの相対方向の両方を特定するものであってもよい。場合によっては、1つ以上の仮想点は、システムの術者(例えば、歯科医療従事者)によって、特定されてもよいし、改変されてもよい。命令は、術者による仮想点の特定または改変のためのユーザーインターフェイスを提供してもよい。
【0060】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、望ましい運動プロファイルを実現する位置にある仮想咬合器内の下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現付近に、特定された誘導パッケージを含む少なくとも1つの保定片の仮想表現を、システムの術者が配置できるようにする命令を、さらに含むことができる。
【0061】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、望ましい運動プロファイルを確実に実現するために、仮想咬合器内における下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現の相対運動を、システムの術者がモデル化できるようにする命令を、さらに含むことができ、その運動は、特定された誘導パッケージの仮想表現または数学的表現によってなされる誘導に起因するものである。
【0062】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、患者固有のデータを用いてシステムの術者が運動プロファイルを個別に調整できるようにする命令を、さらに含むことができる。
【0063】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、境界のあるエンベロープ領域(仮想三次元(3D)領域)内において、個別に調整した運動プロファイルをパラメータ化することと、相乗的に成形された異なる誘導パッケージを選択することとを、システムの術者が行えるようにする命令を、さらに含むことができる。場合によっては、その仮想3D領域は、1つ以上の保持片と、誘導パッケージと、誘導パッケージシステムのその他すべての機能とを生成するための空間を含んでいてもよく、広範囲の3D領域と称されてもよい。
【0064】
少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、望ましい運動プロファイルを実現するための特定された誘導パッケージを含む、少なくとも1つの有形保定片を作成するためにCAMプロセスにおいて用いることができるデータをシステムに生成させる命令を、さらに含むことができる。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態では、メモリは、プロセッサによって実行される際に、少なくとも1つの有形保定片を作成するために、3Dプリンタを含む付加CAM技術および/または縮小CAM技術をシステムに使用させる命令を、さらに含むことができる。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態では、メモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づく特定された適切な誘導パッケージの、横断面方向、矢状面方向、および前額面方向の大きさを、システムの術者が選択できるようにする命令を、さらに含むことができる。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態では、適切な誘導パッケージを、それぞれが異なる運動・停止プロファイルを提供するように予めプログラムされている複数の誘導パッケージから特定することができる。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態では、少なくとも一方の顎関節を記述するデータは、受容者の顎関節に特有のものであり得る。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態では、少なくとも一方の顎関節を記述するデータは、一般的な顎関節を記述するものであり得る。
【0070】
本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージの少なくとも一部を含む入れ歯または部分入れ歯のうちの一方を含むことができる。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージの少なくとも一部を含む歯冠を含むことができる。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージの少なくとも一部を含むブリッジを含むことができる。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態では、誘導パッケージは、保定片から離れる方向に延びる少なくとも1つの突出部を含むことができ、この突出部は、その反対側の下顎骨弓や上顎骨弓の表面またはそれと接する別の保定片と機械的に接触した際に、望ましい運動プロファイルにおいて下顎骨弓を運動させる幾何学的形状をしている。誘導パッケージまたは運動・停止プロファイルは、仮想表現および/または数学的対象であってもよい。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、歯冠、ブリッジ、着脱式部分入れ歯(「RPD」)、入れ歯、その他の固定式または着脱式補綴物、およびこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでいてもよい補綴物を含んでいる。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、保持片は、滑らかに流動するプラスチックであってもよいし、その他の材料であってもよい、器具であって、歯ぎしり用器具、睡眠時無呼吸用器具、TMD用器具、またはその他の治療用、復元用、もしくは保護用の器具のうちの1つ以上を含んでいてもよい、器具を含む。本開示のいくつかの実施形態では、境界が明確な空間(エンベロープ領域)を含む誘導パッケージによる解決策によって、外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドの作成が可能になってもよい。いくつかの実施形態では、エンベロープ領域を定義するために組織内に位置する保持片(例えば、エンベロープ領域を定義する装置)の表面は、組織の潜在的な改変のパラメータ化およびその制限の両方の基盤として働く。換言すると、いくつかの実施形態では、エンベロープ領域は、誘導パッケージによる解決策においてパラメータ化を検討するための定義された空間を定義するだけでなく、外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドを用いて組織をどの深さまで改変してもよいかを指示し得るものでもある。
【0076】
本開示のこれらの態様および他の態様は、添付の図面を参照しつつ、より詳細に、「発明を実施するための形態」に記載される。図面と組み合わせて、本開示の特定の例示的な実施形態についての以下の記述を検討すれば、例示的な実施形態の他の態様および特徴が、当業者にとって明らかになるであろう。本開示の特徴を、ある種の実施形態および図面と比較して述べる場合があるが、本開示の実施形態は、本明細書で論じられる特徴のうちの1つ以上を含むことができる。さらに、1つ以上の実施形態が、ある種の有利な特徴を有していると述べる場合があるが、このような特徴のうちの1つ以上は、様々な実施形態とともに用いられてもよい。同様に、例示的な実施形態について、以下において、装置、システム、または方法の実施形態として述べる場合があるが、このような例示的な実施形態は、本開示の様々な装置、システム、および方法に実装することができるということは、理解されるべきである。
【0077】
添付の図面と共に読めば、「発明を実施するための形態」がよりよく理解される。説明のために、図面には例示的な実施形態が示されているが、その主題は、開示された特定の要素および手段に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりに起因する損傷および痛みを改善するための簡易誘導パッケージの側面図である。
【
図2A】
図2Aは、例示的な実施形態に係る、誘導パッケージの上顎誘導要素の内部形態の俯瞰図である。
【
図2B】
図2Bは、例示的な実施形態に係る、簡易誘導パッケージの上顎誘導要素の、
図2AのA-A'線に沿った拡大断面図である。
【
図2C】
図2Cは、例示的な実施形態に係る、簡易誘導パッケージの上顎誘導要素の、
図2AのB-B'線に沿った拡大断面図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態に係る、簡易誘導パッケージの下顎誘導要素の斜視図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態に係る、下顎骨が適切な咬合高径位置において中心位のヒンジ軸に位置する場合の、配置済みの簡易誘導パッケージの透視図である。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態に係る、誘導パッケージを受け入れるように構成された仮想保持片または有形保持片の斜視図である。
【
図6】
図6は、上顎骨弓および下顎骨弓の両方のための誘導パッケージ用の基盤および取付点として保持片を用いる例示的な方法を示す概略図である。
【
図7】
図7は、重度の二級不正咬合患者用の保持片を用いる例示的な方法を示す概略図である。
【
図8】
図8は、重度の三級不正咬合患者用の特別な保持片を用いる例示的な方法を示す概略図である。
【
図9】
図9は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりを患う患者用の「犬歯誘導用」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図10】
図10は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたは他の疾患を患う患者用の「グループ機能」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図11A】
図11Aは、例示的な実施形態に係る、TMDを患う患者または睡眠時無呼吸を患う患者用の「両側前方再配置用」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図11B】
図11Bは、例示的な実施形態に係る、上顎骨に対して左側方にある下顎骨のインデックス化の概略図である。
【
図11C】
図11Cは、例示的な実施形態に係る、上顎骨に対して右側方にある下顎骨のインデックス化の概略図である。
【
図12A】
図12Aは、例示的な実施形態に係る、左TMJ内の円板が損傷している患者用の「非対称突出」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図12B】
図12Bは、例示的な実施形態に係る、右TMJ内の円板が損傷している患者用の「非対称突出」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図13A】
図13Aは、例示的な実施形態に係る、下顎骨の右側の構造が損傷している患者用の「非対称」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図13B】
図13Bは、例示的な実施形態に係る、下顎骨の左側の構造が損傷している患者用の「非対称」誘導パッケージの平面透視図である。
【
図14】
図14は、例示的な実施形態に係る、患者のTMJと動きデータの範囲とを収集し、患者の顎の運動をリアルタイムに視覚化するための顎運動解析装置の斜視図である。
【
図15】
図15は、例示的な実施形態に係る、一級咬合の患者からインプットされたデータに基づいて、患者の歯の仮想モデルを設定し、そのモデルが所定の位置に仮想保持片を有している場合の仮想咬合器を図示する。
【
図16】
図16は、例示的な実施形態に係る、仮想咬合器の仮想環境に設定された、上顎歯に対する誘導パッケージの相対位置(上顎咬合平面の矢状方向中央)の概念図である。
【
図17】
図17は、例示的な実施形態に係る、仮想咬合器の仮想環境において
図16の相対位置に係る仮想保持片を基準として配置された仮想誘導パッケージの仮想側面図である。
【
図18】
図18は、例示的な実施形態に係る、重度の不正咬合がない、一級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品を口の中から見た斜視図である。
【
図19】
図19は、例示的な実施形態に係る、二級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品を口の中から見た斜視図である。
【
図20】
図20は、例示的な実施形態に係る、睡眠時無呼吸を患う患者、または三級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品を口の中から見た斜視図である。
【
図21】
図21は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品の概略側面図である。
【
図22】
図22は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、二級不正咬合患者用のCAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品であって、誘導パッケージ派生器具の概略側面図である。
【
図23】
図23は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、三級不正咬合患者用のCAD-CAM誘導パッケージ派生器具の完成品、または睡眠時無呼吸用誘導パッケージ派生器具の概略側面図である。
【
図24】
図24Aは、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の、横断面に沿った上顎保持片および下顎保持片ならびに仮想点の相対位置の概念図である。
図24Bは、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、二級不正咬合患者用の、横断面に沿った上顎保持片および下顎保持片ならびに仮想点の相対位置の概念図である。
図24Cは、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、三級不正咬合患者用、または睡眠時無呼吸を患う患者用の、横断面に沿った上顎保持片および下顎保持片ならびに仮想点の相対位置の概念図である。
【
図25】
図25は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の、上顎保持片と下顎保持片との間の横断面に沿った単一の仮想点の潜在位置の概念図である。
【
図26】
図26は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしりまたはTMDを患う、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の、上顎保持片と下顎保持片との間の横断面に沿った一対の仮想点の潜在位置の概念図である。
【
図27】
図27は、単一の仮想点を選択するための3Dの基準による、横断面方向、矢状面方向、および咬合高径方向に境界を成す仮想限界内の単一の仮想点の潜在位置の概念図である。
【
図28】
図28は、例示的な実施形態に係る、歯ぎしり、TMD、および睡眠時無呼吸のうちの1つ以上を患う患者用の、誘導パッケージ内蔵器具を準備するための方法のフローチャートである。
【
図29】
図29は、いくつかの例示的な実施形態に係る、誘導パッケージに供給され得る例示的な弓の種類を示す。
【
図30A】
図30Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る、仮想弓に適用される仮想保持片を示す。
【
図30B】30Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る、仮想弓に適用される仮想保持片を示す。
【
図31A】
図31Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る、3D領域算出用の仮想平面曲線を特徴とする仮想の患者弓を示す。
【
図31B】
図31Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る、3D領域算出用の仮想平面曲線を特徴とする仮想の患者弓を示す。
【
図31C】
図31Cは、いくつかの例示的な実施形態に係る、3D領域算出用の仮想平面曲線を特徴とする仮想の患者弓を示す。
【
図31D】
図31Dは、いくつかの例示的な実施形態に係る、3D領域算出用の仮想平面曲線を特徴とする仮想の患者弓を示す。
【
図31E】
図31Eは、いくつかの例示的な実施形態に係る、3D領域算出用の仮想平面曲線を特徴とする仮想の患者弓を示す。
【
図32】
図32は、例示的な実施形態に係る、誘導解決策を開発するための方法のフローチャートである。
【
図33】
図33は、例示的な実施形態に係る誘導パッケージの開発を示す。
【
図34】
図34は、いくつかの例示的な実施形態に係る誘導パッケージを示す。
【
図35A】
図35Aは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35B】
図35Bは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35C】
図35Cは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35D】
図35Dは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35E】
図35Eは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35F】
図35Fは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図35G】
図35Gは、ある種の例示的な実施形態に従って開発された、患者用の解決策を示す。
【
図36A】
図36Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図36B】
図36Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図37A】
図37Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図37B】
図37Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図38A】
図38Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図38B】
図38Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図39A】
図39Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図39B】
図39Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図40A】
図40Aは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図40B】
図40Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図41】
図41は、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図42】
図42は、いくつかの例示的な実施形態に係る例示的な誘導パッケージから得られる異なる解決策を示す。
【
図43A】
図43Aは、例示的な実施形態に係る誘導パッケージ由来の復元ガイドを用いた改変前後の例示的な上顎骨弓を示す。
【
図43B】
図43Bは、いくつかの例示的な実施形態に係る、対向する弓を改変するための付随的復元ガイドを有する標準的な犬歯誘導パッケージから得られる、パラメータによる復元の2つの選択肢を示す。
【
図45A】
図45Aは、例示的な実施形態に係る誘導解決策の開発、選択、および実行を示す。
【
図45B】
図45Bは、例示的な実施形態に係る誘導解決策の開発、選択、および実行を示す。
【
図45C】
図45Cは、例示的な実施形態に係る誘導解決策の開発、選択、および実行を示す。
【
図45D】
図45Dは、例示的な実施形態に係る誘導解決策の開発、選択、および実行を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示の原理および特徴の理解を容易にするために、以下で様々な説明のための実施形態について述べる。説明を簡易かつ明確にするために、説明のための実施形態について、患者などの受容者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の望ましい運動プロファイルを得るための、誘導パッケージおよび誘導パッケージを含む口部保定片に適用されるものとして、以下で述べる。場合によっては、限定しない例として、歯ぎしり、TMD、睡眠時無呼吸を患う患者を治療するために、または虫歯、歯周疾患、無歯症、もしくは他の医学的問題および/または歯科的問題により、口全体を再建または最適化する必要がある患者の治療のために、誘導パッケージまたは口部保定片を用いてもよい。
【0080】
例示的な実施形態の様々な要素を構成するものとして以下で述べる要素、ステップ、および材料は、限定的なものではなく、例示的なものであることが意図される。本明細書で述べる要素、ステップ、および材料と同一または類似の機能を果たすであろう多くの適切な要素、ステップ、材料は、本発明の範囲に包含されることが意図される。本明細書で述べないこのような他の要素、ステップ、および材料は、本発明を開発した後に開発された同様の要素またはステップを含むことができるが、これらに限定されない。
【0081】
上述したとおり、歯科医師などの医師は、例えば、歯ぎしり、睡眠時無呼吸、TMDの矯正や、患者の再建、機能回復、復元、または最適化を行うために、おそらくは上顎骨に対する下顎骨の新規指標位置に向かう、患者の上顎骨に対する下顎骨のための望ましい運動・停止プロファイルを得ようとして、多くの装置および補綴物を日常的に用いてきた。しかしながら、従来のシステムは、特定の患者のためにこれらの装置を個別に調整するには、非効率的であった。
【0082】
したがって、いくつかの例示的な実施形態では、患者が用いる有形装置を作成する前に、仮想環境において装置を設計し、個別に調整することを可能にする仮想咬合器が利用される。例えば、様々な実施形態によって、しばしば上顎骨を基準とした下顎骨の新規指標位置に向かう、望ましい運動プロファイルを患者に提供する誘導パッケージを有する保定片を設計、作成する仮想咬合器を採用するためのシステムおよび方法が提供される。様々な実施形態では、Exocadや3Shape等の、当該技術分野で公知の異なる仮想咬合器、または後に開発された咬合器を用いることができる。
【0083】
例示的な実施形態によると、望ましい運動プロファイルを患者などの受容者に提供する誘導パッケージを有する1つ以上の保定片を作成するための方法が、提供される。本方法は、(1)患者の下顎骨弓および上顎骨弓、(2)所定の(規定された)極限閉口位置における患者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の指標位置、(3)少なくとも一方の顎関節、ならびに(4)動きデータにおける患者の下顎骨の範囲、を記述するデータを得ることを含む。下顎骨弓および上顎骨弓を記述するデータは、当該技術分野に公知の様々な方法によって得ることができる。いくつかの実施形態では、データは、患者から得た上顎骨および下顎骨の印象またはモデルを映像化することで得ることができる。いくつかの実施形態では、データは、直接スキャニングシステムによって得ることができる。直接スキャニングシステムとしては、Planmeca/E4D Planscan、3shape Trios、およびCadent Itero等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、データは、患者の下顎骨および上顎骨をX線などで映像化することで得ることができる。いくつかの実施形態では、データは、3D X線をスキャニングと組み合わせたシステムによって得ることができ、そのシステムとしては、Planmecaシステムなどが挙げられるが、これに限定されない。本開示のいくつかの実施形態では、仮想咬合器内に、患者の下顎骨弓および上顎骨弓の可視表現を作成するために、下顎骨弓および上顎骨弓を記述するデータを用いることができる。
【0084】
所定の(規定された)極限閉口位置における患者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の指標位置を記述するデータも、様々な方法で得ることができる。いくつかの実施形態では、データは、患者を診察する際に、歯科医師などの検査員が測定を行うことによって得ることができる。いくつかの実施形態では、歯科医師は、適切な指標位置を決定するために、3D X線撮影、3D X線撮影とスキャニング(Planmeca)との組み合わせ(融合)、および顎運動解析装置などの他の手段を用いてもよい。
【0085】
少なくとも一方の顎関節(TMJ)と、動きのデータにおける下顎の範囲とを記述するデータも、多くの異なる方法で得ることができ、また、多くの異なる情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、TMJおよび動きデータの範囲は、特定の患者に特有のものであり得る。いくつかの実施形態では、TMJおよび動きデータにおける下顎の範囲は、例えば、様々な人々の平均測定に基づいて得られた、ある一群の人々に対する一般的なTMJおよび動きデータの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、TMJおよび動きデータにおける下顎の範囲は、TMJがどのようにしてヒンジ運動し、摺動し、かつ/または回転するかを示し得、さらに、下顎骨の運動およびその機能の限界を示す。このデータは、ZebrisまたはPlanmeca 4Dなどの顎運動解析装置によって収集されてもよいし、他の方法で収集されてもよい。
【0086】
ある実施形態では、本方法は、そのデータの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、仮想咬合器内における、患者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の仮想表現の動きをモデル化することを、さらに含む。上述した通り、患者の下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現を作成するために、そのデータを用いることができる。さらには、特定の患者の下顎骨が、上顎骨に対してどのように動くかをモデル化するために、TMJデータおよび指標データに基づいて仮想咬合器を用いることができ、これは、仮想環境において、歯の摺動が起こる場所を可視化するのに役立ち得る。運動をモデル化することによって、望ましい効果、すなわち望ましい運動プロファイル、を得るために、その運動をどのように変化させ得るのかを決定することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本方法は、上顎骨を基準とした下顎骨の望ましい運動プロファイルに少なくとも基づいて、適切な誘導パッケージを特定することを、さらに含む。誘導パッケージ(標準的な運動・停止プロファイル)は、仮想表現および/または数学的対象であってもよい。いくつかの実施形態では、適切な誘導パッケージは、データの少なくとも一部(またはデータによって示される/表現される、情報)および望ましい運動プロファイルに基づいて、特定される。本開示の様々な実施形態では、患者用の多くの異なる望ましい運動プロファイルに基づいて、多くの異なる誘導パッケージを利用することができ、そのうちのいくつかについては、以下で論じる。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態では、適切な誘導パッケージを、それぞれが異なる運動プロファイルを提供するように予めプログラムされている複数の誘導パッケージから特定することができる。予めプログラムされている誘導パッケージは、誘導要素が接触している場合の相対運動が、予め決定されていてもよいという点で、「予めプログラムされて」いてもよい。例えば、誘導パッケージは、互いに接続されるように構成された下顎誘導要素および上顎誘導要素を含んでいてもよい。各保持片に正しい方向で誘導要素が配置されている場合は、誘導要素どうしが接触すると、誘導要素は、保持片(ひいては、上顎骨を基準とした下顎骨)の垂直方向、前方方向、および/または横方向の運動において、集合しかつ/または共に機能しながら、「予めプログラムされた」方式で、保持片(ひいては、下顎骨)の運動を適切に誘導し得る。
【0089】
限定しない例として、ある誘導パッケージ(すなわち、犬歯誘導用および/またはグループ機能誘導用などのある種の誘導パッケージ)は、歯ぎしりを患う患者用の望ましい運動プロファイルを得るのに役立つものであってもよく、その一方で、異なる誘導パッケージ(すなわち、両側前方再配置用誘導パッケージなどの、異なる種類の誘導パッケージ)は、睡眠時無呼吸を患う患者用の望ましい運動プロファイルを得るのに役立つものであってもよい。TMJ障害(「TMD」)の場合は、複数のTMJの動きの範囲内で、TMJの一方または両方に、損傷または疾患が以前から存在していてもよい。誘導パッケージ(例えば、犬歯誘導パッケージ、グループ機能誘導パッケージ、非対称誘導パッケージ、両側前方再配置用誘導パッケージ、または非対称突出誘導パッケージなど)は、多くの治療方針において、例えば、損傷のある範囲を避けるように、または一連のTMD用の適切な誘導パッケージ派生治療器具によって損傷した範囲を段階的なステップで治療するように、誘導を行い得る。患者の機能回復の場合、理想的な運動誘導パッケージ(例えば、犬歯誘導パッケージまたはグループ機能誘導パッケージなど)は、患者の外科的管理、復元管理、およびインプラントの配置管理を助けるのに役立つ場合があり(外科的ガイド、インプラント配置ガイド、および/または復元ガイドを提供することによる)、また、再建、機能回復、復元、または最適化のための解決策(例えば、復元物または器具)を設計、作成するのに役立つ場合がある。したがって、本開示によって、特定の患者用の望ましい運動・停止プロファイルを実現するために、その患者が用いる犬歯誘導パッケージなどの適切な誘導パッケージを、使用者が特定することが可能になる。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、仮想咬合器内の仮想空間における誘導パッケージの配置および配向を容易にするために、1つ以上の仮想点を選択することを、さらに含む。いくつかの実施態様では、1つ以上の仮想点は、下顎保持片および上顎保持片に関して、誘導パッケージの位置および方向に対応していてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、本方法は、望ましい運動プロファイルを実現する位置にある仮想咬合器内の下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現付近に、特定された誘導パッケージを含む少なくとも1つの保定片の仮想表現を配置することを、さらに含む。例えば、使用者が歯ぎしりを矯正するための誘導パッケージを特定した場合、使用者は、下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現周辺に、1つ以上の保定片の仮想表現を配置するために、仮想咬合器を用い得る。1つ以上の保定片は、使用者の下顎骨弓(またはその一部)と連結する下顎保定片と、使用者の上顎骨弓(またはその一部)と連結する上顎保定片とを含んでいてもよい。1つ以上の保定片は、それぞれ、使用者の歯が摺動することの負の効果を改善するであろう望ましい運動プロファイルを実現するために、使用者の下顎骨弓および/または上顎骨弓付近の特定の位置(例えば、仮想点)に、特定された誘導パッケージの少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0092】
例えば、下顎保定片は、凸状の突出で規定される誘導パッケージの一部を含むことができ、上顎保定片は、凸状の突出と連結するように配置された凹状のくぼみで規定される誘導パッケージの一部を含むことができる。
【0093】
1つ以上の保定片(または誘導パッケージの、1つ以上の保定片上における位置)は、少なくとも部分的に望ましい運動プロファイルに応じて、多くの異なる位置に配置することができる(また、少なくとも部分的に、下顎骨弓および/または上顎骨弓の本来の状態に応じるものであってもよい)。例えば、任意の弓上にある保持片は、その保持片の誘導具側の空間のみに作用してもよいし、保持片の誘導具側の、改変されていてもいなくてもよい組織に作用してもよい。誘導具および止め具を伴う誘導パッケージは、保持片上の多くの異なる位置に配置することができる。例えば、誘導パッケージ(例えば、予め設定された誘導パッケージ、患者データで個別に調整した誘導パッケージ、パラメータ化された誘導パッケージ、または誘導パッケージを構成する誘導具および止め具の様々な構成要素など)は、弓の前方、弓の側方、または弓どうしの間の位置、すなわち下顎骨弓および上顎骨弓が相互作用し接触する位置、に配置され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、本方法は、データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、特定された誘導パッケージの横断面方向、矢状面方向、および/または前額面方向の大きさを選択することを、さらに含むことができる。例えば、下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現を作成することを可能にするデータに基づいて、使用者は、望ましい運動プロファイルを実現するのに必要な誘導パッケージの適切な大きさを決定することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、本方法は、望ましい運動プロファイルを確実に実現するために、仮想咬合器内における下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現の相対運動をモデル化することを、さらに含むことができ、その相対運動は、特定された誘導パッケージの仮想表現および/または数学的表現によってなされる誘導に起因するものである。これによって、使用者が、誘導解決策を実行する際に、特定された誘導パッケージ、誘導パッケージの選択位置、大きさ、および/または改変により、患者用の望ましい運動プロファイルが提供されるということを実証することを可能にすることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、使用者は、弓の相対運動をモデル化した後、例えば、どの誘導パッケージを特定すべきかについてや、その誘導パッケージを配置すべき位置について、特定された誘導パッケージの大きさについて、および/または誘導パッケージの改変について、さらに調整を行うべきかを決定してもよい。その後、使用者は、仮想咬合器を用いて変更を行い、それらの調整に起因する相対運動をモデル化することができる。歯科医師などの使用者が、誘導パッケージによって作成される運動プロファイルに満足するまで、このプロセスを繰り返すことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本方法は、保持片をパラメータ化すること、ならびに/またはその境界がエンベロープ領域(限定的な、または広範囲の3次元空間)である個別に調整した運動プロファイルをパラメータ化すること、および相乗的に成形された異なる誘導パッケージを選択することを、さらに含むことができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、望ましい運動プロファイルを実現する特定された誘導パッケージを含む1つ以上の有形保定片を作成するために、CAMにおいて用いることができるデータを生成することを、さらに含むことができる。ある実施形態では、本方法は、有形保定片を作成するためにCAMを用いることを、さらに含む。使用者が、患者用の1つ以上の保定片を作成するためにローカルCAMシステムを用いることができるように、生成されたデータをローカルに保存することが、本開示の様々な例示的な実施形態によって可能になる。したがって、様々な例示的な実施形態によって、生成されたデータを、有形保定片を印刷する離れた場所へ送信することが可能になってもよい。
【0099】
本開示の様々な実施形態では、望ましい運動を提供するために用いられる誘導パッケージを含むことができる多くの異なる保定片を利用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、保定片を、患者の下顎骨弓および上顎骨弓と連結する1つ以上のトレイの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージのすべてまたはその一部を含む、入れ歯または部分入れ歯を含む。いくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージの一部を含む、歯冠を含む。本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージのすべてまたはその一部を含む、ブリッジを含む。本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージのすべてまたはその一部を含む、その他の固定式または着脱式補綴物要素を含む。本開示のいくつかの実施形態では、保定片は、誘導パッケージのすべてまたはその一部を含む、歯ぎしり用器具、睡眠時無呼吸用器具、TMD用器具、またはその他の治療用、復元用、もしくは保護用の器具を含む。
【0100】
本開示の様々な実施形態は、当業者であれば理解するであろうが、多くの異なる誘導パッケージを利用することもでき、そのような誘導パッケージの例として、米国特許出願第13/573,283号、13/774,033号、13/774,920号、13/918,754号、14/083,467号、および14/748,805号に記載の誘導パッケージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本開示の例示的な実施形態では、誘導パッケージは、保定片から離れる方向に延びる少なくとも1つの突出部を含み、この突出部は、その反対側の下顎骨弓や上顎骨弓の表面(またはその反対側の下顎骨弓や上顎骨弓に連結する誘導パッケージの表面)と機械的に接触した際に、望ましい運動プロファイルにおいて、上顎骨弓を基準として下顎骨弓を運動させる、幾何学的形状をしている。いくつかの実施態様では、誘導パッケージは、仮想表現および/または数学的対象であってもよい。
【0102】
本開示は、方法に加えて、患者の運動プロファイルを修正する誘導パッケージを有する保定片を作成するためのシステムも提供する。本開示の例示的な実施形態では、本システムは、少なくと1つのプロセッサと、少なくと1つのメモリとを含む。本開示の様々な実施形態によると、少なくとも1つのメモリは、プロセッサによって実行される際に、上述した様々な方法ステップの1つ以上をシステムに行わせる、かつ/または上述した様々な方法ステップの1つ以上を使用者が行えるようにする命令を、保存することができる。
【0103】
例えば、本開示のいくつかの実施形態では、メモリは、プロセッサによって実行される際に、システムに:(1)患者の下顎骨弓および上顎骨弓、(2)所定の(規定された)極限閉口位置における患者の上顎骨弓に対する下顎骨弓の指標位置、ならびに(3)TMJ、を記述するデータを得ること;データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、仮想咬合器における、患者の上顎骨弓および下顎骨弓の仮想表現の運動を(例えば、術者によって)モデル化できるようにすること;データの一部と、上顎骨弓を基準とした下顎骨弓の望ましい運動プロファイルとに少なくとも基づいて、誘導パッケージを選択すること;術者が、運動プロファイルを(例えば、患者固有のデータ、平均データ、汎用データ、またはその他のデータなどを用いて)個別に調整できるようにすること;術者が、保持片および特定された誘導パッケージの配置および配向のための1つ以上の仮想点を決定できるようにすること;本システムの術者が、望ましい運動プロファイルを実現するように特定された位置にある仮想咬合器における下顎骨弓および上顎骨弓の仮想表現付近に、特定された誘導パッケージまたは個別に調整した誘導パッケージを含む保定片の仮想表現を配置できるようにすること;望ましい運動プロファイルを確実に実現するために、本システムの術者が、仮想咬合器における上顎骨弓および下顎骨弓の仮想表現の決定された運動であって、特定され、個別に調整された誘導パッケージの仮想表現によってなされた誘導に起因する決定された運動を、モデル化できるようにすること;および、有形保定片、またはパラメータ化された保持片と、望ましい運動プロファイルを実現する特定された誘導パッケージの、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、取り付けられ、かつパラメータ化された各構成要素との両方を含む有形保持片を作成するためにCAMにおいて用いることができるデータを生成すること、を行わせる命令を含む。場合によっては、これらの命令は、プロセッサによって実行される際に、さらに、システムに、保持片ならびに/または広範囲のエンベロープ領域(3D領域)もしくは複数の3D領域の境界と、相乗的に成形された異なる誘導パッケージとを有する運動プロファイルの仕様を、パラメータ化させてもよい。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、メモリは、プロセッサによって実行される際に、有形保定片を作成するために、システムにCAMを使用させる命令を、さらに含む。
【0105】
本開示のいくつかの実施形態では、メモリは、プロセッサによって実行される際に、システムが、データの少なくとも一部に少なくとも部分的に基づいて、特定された誘導パッケージの、横断面方向、矢状面方向、および/または前額面方向の大きさをシステムの術者が選択できるようにする命令を、さらに含むことができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、特定の個人(例えば、患者)の下顎骨弓と上顎骨弓との間の空間容積の形状を理解することが重要となる場合がある。ヒンジ的な動きおよび摺動的な動きの組み合わせによって、TMJは、間違いなく体内のより複雑な関節のうちの1つである。特定の患者においては、下顎骨が閉じて対向する弓が接触した際に生じる、歯、補綴物、または器具の干渉および誘導が、下顎骨の動きの範囲に影響を及ぼすまでは、両方のTMJの複数の運動が、下顎骨の動きの範囲を完全に規定する。下顎骨が閉じると、TMJの動きの範囲内において、最初に、下顎骨弓および上顎骨弓が接触する。最初の接触から極限閉口に至るまでの経路は、両方の弓(例えば、患者の歯、他の組織、現存する補綴物、および/または器具)の干渉および誘導によって規定される。
【0107】
歯学や医学などに関する多くの理由から、上顎骨に対する下顎骨の極限閉口位置を異なるものとする変化に影響を及ぼし、その規定位置まで下顎骨を移動するための規定経路(治療用、矯正用、予防用、または保護用の運動プロファイル)を提供することが望ましい。そのいくつかの例として、歯ぎしり用器具、睡眠時無呼吸用器具、およびTMD用器具が挙げられる。その他の例として、患者の下顎骨に関する臨床医の選択により、臨床医が意図するように、下顎骨が閉じた際の極限閉口位置およびその位置への誘導プロファイルを確立することによる、患者の最適化、機能回復、再建、および復元が挙げられる。
【0108】
本開示の実施形態は、所定の大きさで作成され、インデックス化され、かつ調整された誘導パッケージを、特定の患者用の規定された誘導プロファイルを実現するための1つ以上の保持片に適用する(例えば、仮想的に取り付ける)方法を提供する。その後、適用された誘導パッケージを有する器具を、製造し得る(例えば、3-D印刷を用いて印刷し得る)。
【0109】
あいにく、保持片上の誘導パッケージの位置は、受容者のために考慮すべき他のことと対立する場合がある。すなわち、誘導パッケージシステムによって、規定された極限閉口位置へと向かう適切な誘導プロファイルが提供されていたとしても、その器具または復元物の形態および接触領域が異なっていなくてはならない、インプラント保持入れ歯のような特定の最終製品を、臨床医が有している。このような考慮すべき他のことによって、潜在的な解決策の選択が誘導されることもあれば、許容できる解決策の領域が限定されることもある。例えば、睡眠時無呼吸を患う患者が、前方(例えば、前歯の前方)に配置された誘導装置に関して不安に感じている場合は、患者が感知する呼吸に干渉しないように、保持片の後方側面に誘導装置を配置するために、パラメータ化を用いてもよい。別の例として、「義歯」およびインプラント保持入れ歯を伴う1つ以上の復元物を作成する場合は、義歯の形状および勾配によってすべての誘導機能が実現されることが望ましい場合があり、その場合、別個の誘導パッケージ(例えば、保定片)は不要となる。
【0110】
保持片、誘導パッケージ、および誘導パッケージシステムのその他のすべての機能向けの作業スペース全体を、広範囲の3D領域と称する。あるいは、誘導パッケージシステムの計算および改変用に、複数の3D領域が定義されていてもよい。上顎骨に対する下顎骨の規定された極限閉口位置における下顎保持片と上顎保持片との間の(またはこれらを含む)空間は、患者の上顎骨および下顎骨の骨格に適合する弓状形態の幾何学的形状をしている。その空間(双極放物面の形状であってもよい、3D領域)の全体の面積および容積内に、上顎誘導部および下顎誘導部(各保持片に付着している)の両方が存在している。この空間内において、相互作用する2つの誘導片は、接触していてもよいが、接続されていなくてもよい。接触領域は、一方または両方の弓の弓形状全体を含んでいてもよいし、その一部のみを含んでいてもよい。
【0111】
本開示の様々な実施形態を用いた場合、仮想咬合器を用いて、最初の接触から限界閉口までの望ましい誘導プロファイルを仮想環境内に確立することができる。下顎骨が極限閉口位置(または指標位置)まで閉じた際の相互作用形状によって提供される誘導プロファイルは、複数のTMJの動きの範囲の観点から、空間領域を定義するものであり、したがって、この固有対象の近似において任意の精度を実現する媒介変数表示に適した数学的対象または仮想対象とみなされてもよい。上顎保持片と下顎保持片との間の空間をパラメータ化することによって、その限度(3D領域)内において、誘導・停止要素の面積、容積、および接触面の形態を、インデックス化され、所定の大きさで作成され、調整され、かつ取り付けられた誘導パッケージの、決定された運動プロファイルを維持する方式で、互いに連携してすぐに変更することができる。保持片の間の空間は、誘導パッケージによる解決策をパラメータ化するのに用いられる、限定された3D領域とみなされてもよい。保持片、誘導パッケージによる解決策、および誘導パッケージシステムの他の機能をパラメータ化するための余地を含む空間が、広範囲の3D領域とみなされてもよい。異なる実施形態では、これらのパラメータ化は、様々な順序で逐次的または重複的に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0112】
本開示の様々な実施形態によって、望ましい運動プロファイルを得るために使用者/患者が用いることができる、多くの異なる保持片の作成が可能となる。いくつかの実施形態では、保持片を、歯ぎしり用器具、睡眠時無呼吸用器具、およびTMD用器具などの固定式器具または着脱式器具とすることができる。いくつかの実施形態では、保持片を、歯および/またはインプラントに装着する歯冠およびブリッジのような完全弓の固定式補綴物とすることができる。いくつかの実施形態では、保持片を、歯牙負担式もしくはインプラント負担式の着脱式部分入れ歯または完全入れ歯のような着脱式器具とすることができる。いくつかの実施形態では、保持片を、上記補綴物のいずれか、または患者の顔の造作、または本開示のシステムの全弓機構を反映する、改変された患者の顔の造作との組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、復元ガイド、外科的ガイド、およびインプラント配置ガイドを、誘導パッケージシステムから派生させてもよい。
【0113】
本明細書で述べるある実施形態は、患者の顎を中心位(CR)などの所定の指標位置(例えば、規定された極限閉口位置)に配置することに言及する。CRは、歯ぎしりを患う多くの患者にとっての弛緩位置であるが、所定の指標位置(例えば、規定された極限閉口位置)が、筋力テストによって選択および/または改良された位置や、3D X線撮影、MRI、超音波検査、他のイメージング、または顎運動解析装置を用いて歯科医療従事者が選択した弛緩位置などの、他の弛緩位置のことを指していてもよいということが理解されるべきである。さらに、所定の指標位置は、必ずしも弛緩しない位置を指していてもよいが、例えば、その治療価値のために他に選択されるものがない場合は、患者の障害または疾患プロファイルに基づいて歯科/医療の専門家が選択した位置、下顎骨を突き出るように適切に移動させて睡眠時無呼吸に対処する、歯科/医療の専門家が選択した位置、ならびに3D X線撮影、MRI、超音波検査、他のイメージング、および/または顎運動解析装置を用いて歯科医療従事者が選択した治療位置などが挙げられるが、これらに限定されないということは、理解されるべきである。
【0114】
指標位置のうちの1つ以上および保持片のうちの1つに基づいて、1つ以上の仮想点が生成されてもよい。1つ以上の仮想点に基づいて、仮想誘導パッケージが仮想空間に配置されてもよい。例えば、一実施形態では、いずれかの仮想保持片の方向データも、配列データも、位置データも必要とせずに、単一の仮想点に基づいて、仮想誘導パッケージが配置されてもよい。この様式において、仮想誘導パッケージは、配置後に個別に調整したストック(例えば、予め形成された、または予めプログラムされた)誘導パッケージであってもよいし、個別に調整した誘導パッケージであってもよい。
【0115】
他の実施形態では、仮想保持片のうち、少なくとも1つの仮想保持片の方向データ、配列データ、および位置データのうちの1つ以上のデータと、単一の仮想点とに基づいて、仮想誘導パッケージが配置されてもよい。仮想保持片の方向データ、配列データ、および/または位置データは、仮想3D空間における仮想点の相対的な位置取りについての状況を提示する。この様式において、仮想誘導パッケージは、個別の調整を必要としないストック誘導パッケージであってもよいし、個別の調整に要する手間を削減し、これによって、特定の患者用の誘導パッケージ派生製品の作成に関連する時間およびコストを減少させ得るような仮想誘導パッケージであってもよい。
【0116】
他の実施形態では、3つ以上の仮想点に基づいて、仮想誘導パッケージが配置されてもよく、これらの仮想点は、仮想保持片の方向も、配列も、位置も必要とせずに、三次元における誘導パッケージの相対的な位置取りについての状況を、全体として提示する。この様式において、仮想誘導パッケージは、個別の調整を必要としないストック誘導パッケージであってもよいし、個別の調整に要する手間を削減し、これによって、特定の患者用の誘導パッケージ派生製品の作成に関連する時間およびコストを減少させ得るものであってもよい。
【0117】
誘導パッケージは、仮想上顎誘導要素および仮想下顎誘導要素を含んでいてもよい。仮想空間に誘導パッケージを配置した後、仮想誘導パッケージ内蔵器具の第1部分を形成するために、仮想上顎誘導要素を仮想上顎誘導保持片に接続してもよい。同様に、仮想誘導パッケージ内蔵器具の第2部分を形成するために、仮想下顎誘導要素を仮想下顎誘導保持片に接続してもよい。仮想上顎誘導要素および仮想上顎誘導要素は、予め、正しい方向で、互いに向き合うようにされていてもよい。仮想誘導要素が各仮想保持片に接続されるまで、正しい方向が維持されていてもよい。その後、仮想誘導パッケージ内蔵器具の第1部分および第2部分に基づく誘導パッケージ内蔵器具の作成データが送信される。例えば、誘導パッケージ内蔵器具作成データは、CAM、CNC技術、オフィス3Dプリンタ、工作機械、ならびに付加CAMおよび/または縮小CAM作成装置のうちの1つ以上を備えた製造業者に送信されてもよい。
【0118】
他の実施形態では、1つ以上の仮想点を生成することが、仮想上顎保持片と仮想下顎保持片との間に閾間隙(例えば、1mm以上)を設けるために1つ以上の仮想点を配置することを含んでいてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法は、また、仮想誘導パッケージ内蔵器具の運動を、仮想的にシミュレートすることを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、どのストック誘導パッケージが特定の患者、特定の目的に最も適切か、および/または選択されたストック誘導パッケージの個別の調整が必要とされるかどうか、について決定する助けとなるように、ストック誘導パッケージの運動をシミュレートしてもよい。誘導パッケージを個別に調整する場合には、個別に調整した誘導パッケージが意図したとおりに動作し、必要であれば、有形誘導パッケージ派生器具を作成する前にさらなる個別の調整の必要性を示すかを確認するために、個別に調整した誘導パッケージの運動をシミュレートしてもよい。このことは、個別に調整した特定の患者用の誘導パッケージの作成に関連する時間およびコストを減少するのに役立ち得る。何故なら、患者の口内において有形誘導パッケージ派生器具の運動を複数回繰り返してテストすることが回避されるからである。また、患者の口内に配置された有形モデルと比較して、仮想モデルでは、歯科医による可視性が向上され得るため、精度も向上し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、1つ以上の仮想点を生成することは、基準面から左右相称に等距離の2つの仮想点を配置することを含んでいてもよい。基準面は、正中矢状面に対して直交し、咬合平面の矢状方向中央に沿う仮想保持片のうちの一方(例えば、上顎保持片)の最前面から一定の距離(いくつかの実施形態では、約6mm)に位置していてもよい。さらに、仮想誘導要素のうちの一方(例えば、上顎誘導要素)を仮想保持片のうちの一方(例えば、上顎保持片)に接続することは、2つの仮想点と、もう一方の仮想保持片(例えば、下顎保持片)の方向、配列、および/または位置とに基づいて行われてもよい。
【0121】
他の実施形態では、1つ以上の仮想点を生成することは、咬合平面の矢状方向中央に沿う仮想保持片のうちの一方(例えば、上顎保持片)の最前面から一定の距離(いくつかの実施形態では、約6mm)に位置する基準面に隣接して、1つの仮想点を配置することを含んでいてもよい。基準面は、正中矢状面に対して直交していてもよい。さらに、仮想誘導要素のうちの一方(例えば、上顎誘導要素)を各仮想保持片(例えば、上顎保持片)に接続することは、仮想点と、もう一方の仮想保持片(例えば、下顎保持片)の方向、配列、および/または位置とに基づいて行われてもよい。いくつかの実施形態では、誘導パッケージを改変しないで用いるために、または改変を最小限に抑えるために、仮想点を3次元的に(例えば、3Dベクトルとして)配置してもよい。仮想点が3Dベクトルである場合は、その方向は、運動プロファイルの方向を示し得、その大きさは、運動プロファイルの大小を示し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、患者データを得ることは、患者の左右のTMJに関連するTMJデータを得ることを、さらに含んでいてもよい。
【0123】
仮想空間に仮想誘導パッケージを配置することは、仮想点に基づいて、中心位から外れるように下顎骨を調整するように、誘導パッケージの指標位置に仮想誘導パッケージを配置することを含んでいてもよい。下顎骨を調整することによって、誘導パッケージの指標位置が、TMJの左右の円板を、前方方向、横方向、および上下方向において再捕捉するように、構成されてもよい。さらに、仮想誘導要素のうちの一方(例えば、上顎誘導要素)を各仮想保持片(例えば、上顎保持片)に接続することは、誘導パッケージの指標位置と、もう一方の仮想保持片(例えば、下顎保持片)の方向、配列、および/または位置とに基づいて行われてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、左右のTMJの顆頭のうちの一方は、関係する円板の再捕捉のために、もう一方のTMJの顆頭よりも遠くへと移動しなければならない。
【0125】
他の実施形態では、患者データを得ることは、TMJの左右の円板のうちの一方が、前方にずれているか、または損傷を受けている、患者の左右のTMJに関連するTMJデータを得ることを、さらに含んでいてもよい。1つ以上の仮想点を生成することは、正中矢状面に対して直交し、咬合平面の矢状方向中央に沿う仮想保持片のうちの一方(例えば、上顎保持片)の最前面から一定の距離(いくつかの実施形態では、約6mm)に位置する、平面に隣接して、1つ以上の仮想点を正中矢状面に対して非対称に配置することを含んでいてもよい。仮想空間に仮想誘導パッケージを配置することは、下顎骨が、1つ以上の仮想点に基づいて、損傷しているTMJの円板を再捕捉する構成となるように、誘導パッケージの指標位置に仮想誘導パッケージを配置することを含んでいてもよい。さらに、仮想誘導要素のうちの一方(例えば、上顎誘導要素)を各仮想保持片(例えば、上顎保持片)に接続することは、誘導パッケージの指標位置と、もう一方の仮想保持片(例えば、下顎保持片)の方向、配列、および/または位置とに基づいて行われてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージの指標位置は、一方のTMJの円板が中心位位置または他の安静位置にとどまることを可能にしつつ、損傷したTMJの円板を再捕捉する構成となるように、下顎骨を調整してもよい。
【0127】
他の実施形態では、患者データを得ることは、患者に関連する損傷構造データを得ることを、さらに含んでいてもよい。1つ以上の仮想点を生成することは、正中矢状面に隣接して、また、正中矢状面に対して直交し、咬合平面の矢状方向中央に沿う仮想保持片のうちの一方(例えば、上顎保持片)の最前面から一定の距離(いくつかの実施形態では、約6mm)に位置する、平面に隣接して、1つの仮想点を配置することを含んでいてもよい。他の実施形態では、1つ以上の仮想点を生成することは、前額面、矢状面、および横断面内に、3次元的に1つ以上の仮想点を配置することを含んでいてもよい。仮想空間に仮想誘導パッケージを配置することは、損傷構造データに基づいて、患者の下顎骨、TMJ、および顎口腔系疾患のうちの1つ以上を治療するように、または歯周疾患、無歯症、ならびに他の医学的および/または歯学的理由が原因の再建を処置するように構成されている、誘導パッケージの指標位置に、仮想誘導パッケージを配置することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、誘導パッケージの指標位置は、下顎骨を中心位から外れるように調整する構成であってもよい。さらに、仮想誘導要素のうちの一方(例えば、上顎誘導要素)を各仮想保持片(例えば、上顎保持片)に接続することは、誘導パッケージの指標位置と、もう一方の仮想保持片(例えば、下顎保持片)の方向、配列、および/または位置とに基づいて行われてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、損傷構造データは、患者の下顎骨の左側または右側のうちの一方が損傷しているということを示すものであってもよい。さらに、仮想空間に仮想AGPパッケージを配置することは、損傷を受けていない側の顆頭を中心位位置(または他の安静位置)に維持することを可能にしつつ、損傷を受けた側の顆頭を中心位位置から外れるように前に出すために、下顎骨の損傷を受けた側を前方へと移動させることを含んでいてもよい。
【0129】
いくつかの実施態様によると、1つ以上の例示的な実施形態のステップまたは機能のための命令は、データモジュールに保存されていてもよい。場合によっては、データモジュールは、本開示の例示的な実施形態に係る方法を行うために、プロセッサまたはシステムによって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行される際に、1つ以上の例示的な実施形態に係る機能または方法を実行するようにシステムを制御する構成とされたソフトウェアコードを有するメモリとを含む、システムが提供される。
【0130】
次に、図面を参照して、1つ以上の例示的な実施形態の態様をさらに説明する。当業者であれば、図面を参照して説明された特徴は、単なる例示であって、ある実施態様が、本開示によって予想されるように、より少ない要素、追加的な要素、または改変された要素を含んでいてもよいことが、理解されるであろう。場合によっては、ある種の周知の要素が、簡潔さのために省略されてもよい。
【0131】
図1を参照する。
図1は、例示的な誘導パッケージキットを示す。
図1の誘導パッケージキット1は、誘導パッケージ4-Sを含んでいてもよい。誘導パッケージ4-Sは、「簡易」誘導パッケージ(例えば、予め形成された有形誘導パッケージ)であってもよい。簡易誘導パッケージ4-Sは、歯ぎしりが原因の損傷および痛みを改善するために用いられてもよいし、または他の目的のために用いられてもよい。誘導パッケージキット1は、
図1で示すように、製造業者から配送することができる。すなわち、誘導パッケージは、すでに、一方の弓(例えば、上顎骨弓または下顎骨弓)用の保持片に取り付けられて、もう一方の弓に合わせて成型された保持片に対してインデックス化されていてもよい。いくつかの実施形態では、簡易誘導パッケージ4-Sは、保持片の棚状部に対して、歯科医療従事者によってインデックス化されてもよい。誘導パッケージキット1は、上顎誘導要素1-1、下顎誘導要素1-2、および望ましい位置で2つの要素1-1および1-2を共に一時的に保持するホルダー1-3を含んでいてもよい。任意の形態の有形誘導パッケージが、上顎誘導要素1-1、下顎誘導要素1-2、および一時ホルダー1-3を含んで、簡易誘導パッケージキット4-Sを構成していてもよい。任意の誘導パッケージ4の構造がそうであるように、誘導パッケージ4は、仮想環境において仮想的および/または数学的に表現され、かつ操作されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、任意の誘導パッケージ4の構造がそうであるように、術者が考慮し得る非常に幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、簡易誘導パッケージ4-Sの上顎要素1-1の横方向および突出方向の誘導具領域における斜度33および深度32を制御または改変することができる。
【0133】
図2A~
図2Cは、例示的な実施形態に係る、例示的な誘導パッケージ4-Sの上顎誘導要素1-1の内部形態を示す。
図2Aは、例示的な実施形態に係る、誘導パッケージの上顎誘導要素の内部形態の俯瞰図である。
図2Bは、例示的な実施形態に係る、簡易誘導パッケージの上顎誘導要素の、
図2AのA-A'線に沿った拡大断面図である。
図2Cは、例示的な実施形態に係る、簡易誘導パッケージの上顎誘導要素の、
図2AのB-B'線に沿った拡大断面図である。内部形態は、CR止め具2、長尺中心(LC)領域3、横方向偏位(LE)誘導具5、および突出(P)誘導具6からなる特定の誘導具を含む。
図2A~
図2Cに示すように、簡易誘導パッケージ4-Sの上顎誘導要素1-1は、LE誘導具5(
図2C)および突出(P)偏位誘導具6(
図2B)の下向き形状の凹部の様々な斜面に向けて横方向および前方に延びている、下顎骨のLC位置3の平坦領域へとさらに延ばされている安定したCR止め具2の平坦領域を有していてもよく、それによって、上顎誘導要素1-1のこれらの特徴に対して、下顎誘導要素1-2により患者の下顎骨が理想的に前方に誘導されて、筋力が最小限に抑えられ、後方の干渉がすべて回避される。偏位の際に下顎骨を下方(下向き)に移動させる、適切な前方誘導具のこのような特徴によって、理想的な咬合がそうであるように、他のデザインの場合よりも、安静状態における咬合高径が大幅に小さい夜用保護具が可能になり得る。上顎誘導要素1-1は、患者の動きの範囲に基づくいかなる大きさであってもよいと考えられる。
【0134】
図3は、 簡易誘導パッケージ4-Sキット1の下顎誘導要素1-2を示す。下顎誘導要素1-2の基部6-1は、スーパー楕円形状または歯列弓形状であってもよく、また、
図2Aに示す上顎誘導要素1-1と同じ寸法、または同様の寸法であってもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、楕円形状の下顎誘導要素1-2の長軸L'の長さとして、15~35mmが挙げられ得るが、これに限定されない。楕円形状の下顎誘導要素1-2の短軸(S')の長さとして、8~20mmが挙げられ得るが、これに限定されない。滑らかで曲線的な突出部7が、下顎誘導要素1-2の一方の表面に作成されていてもよい。突出部7の先端は、上顎誘導要素1-1の内表面の平坦部から凹部と係合し、患者の下顎骨の運動を誘導および限定してもよい。いくつかの実施形態では、滑らかな突出部の高さH'として、1~6mmが挙げられ得るが、これに限定されない。例えば、一実施形態では、高さH'は、約5mmであってもよい。任意の誘導パッケージ4の構造がそうであるように、歯科医療従事者が考慮し得る幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、簡易誘導パッケージ4-Sの下顎要素1-2における突出部7の斜度および深度を制御することができる。
【0136】
図4は、それぞれが右TMJおよび左TMJを表しているTMJ 9-Rおよび9-LのCR位置と相互に関連している簡易誘導パッケージ4-Sを示す。いくつかの実施形態では、ここで示すように、誘導パッケージ4が、理想的な前方への誘導を再現していてもよい。例えば、歯ぎしりの観点からは、患者の前歯、または、この例では簡易AGPの誘導要素、の理想的な前方への誘導によって、下顎骨のいずれの偏位においても、患者における後方の干渉がすべてすぐに排除される。参照点2は、下顎骨のTMJ 9-Rおよび9-Lの右顆頭8-Rおよび左顆頭8-LがCR位置にある場合に、下顎誘導要素1-2の突出部7が、安静状態において上顎誘導要素1-1のどこにあるかを表す。患者が、下顎骨を機能させる、または摺動させる際に、下顎誘導要素1-2は、CR2、LC3、LE5、およびP誘導具6の位置にある上顎誘導要素1-1に対して機能する下顎誘導要素1-2を利用して、下顎骨に対して理想的な前方への誘導を行い得る。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4は、歯の位置、歯の状況、または歯が抜けていることに関係なく、理想的な前方への誘導を行い得る。例えば、誘導パッケージは、歯または弓に直接取り付けられる代わりに、インデックス化されて、保持片システム内の保持片に取り付けられてもよい。
【0137】
図5は、例示的な実施形態に係る保持片を示す。保持片10は、誘導パッケージを、広範囲の不調、咬合、および不正咬合を患う多様な患者に適用することを容易にし得る。保持片10は、上顎骨または下顎骨上に、またはその周辺に、配置されてもよく、また、誘導パッケージ4の適切な要素を受け入れるための棚状部または突出部を有していてもよい。
【0138】
本開示の様々な実施形態に応じて、多くの異なる保持片を提供することができる。
図5は、本開示の例示的な実施形態に係る保持片を示す。保持片は、薄く、かつ、全体的または部分的に、患者の弓(上顎骨または下顎骨)の構造に適合するものであってもよい。保持片10は、組織側710および誘導具側720を含む。保持片の組織側710は、例えば、歯、骨、歯肉などの患者の組織に向き合うまたは接触するように構成されており、他の補綴物とすることができる。組織側710は、全体的または部分的に、各弓の組織に適合していても良い。インプラント、ミニインプラント、治療中の歯または治療中でない歯、他の身体的特徴、接着剤、ぴったり合う圧縮性プラスチック、真空、針金、留め金、結合剤、またはその他の取り付け機構を含む、様々な機構によって、保持片を組織に結合してもよい。場合によっては、保持片は、1つ以上の結合機構を収容するための空間を伴って、形成されてもよい。
【0139】
保持片10の誘導具側720は、誘導要素および/または停止要素に結合可能であってもよい。例えば、誘導具側720は、誘導パッケージまたは誘導パッケージの一部分のための取付点および/または基盤として機能する、形状および大きさが様々な複数の突出部、棚状部、または取付面を有していてもよい。いくつかの実施形態では、保持片10の誘導具側720には、その上に、本開示の誘導パッケージによって生成される誘導・停止の機能が形成されていてもよい。これらの突出部および棚状部(例えば725)は、顔面側、舌側、および咬合面側/門歯表面側を含む保持片10の誘導具側720のすべての表面に、配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、保持片10は、仮想保持片10であってもよい。この場合、ひとたび誘導パッケージを選択し、適切な取付点を決定すれば、設計された保持片10を物理的に作成する前に、他の1つ以上の突出部、棚状部、または取付面を取りのぞいてもよい。
【0140】
保持片10によると、誘導パッケージ4内蔵器具は、異なる種類の咬合および不正咬合を患い、同時に歯ぎしりを患う患者、TMJ障害を患う患者、他の顎口腔系の損傷を患う患者、または睡眠時無呼吸障害を患う患者に適したものになり得る。誘導パッケージ器具は、歯科医療従事者によって規定される特定の顎の整復、および誘導の制限を伴って作成されてもよい。
【0141】
図6は、保持片10と誘導パッケージ4との組み合わせである器具13を含む、前歯の前方に配置される誘導パッケージを可能にするための、上顎保持片および下顎保持片の両方に関しての保持片の例示的な適用を示す。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4は、接着剤14によって棚状部/突出部に取り付けられてもよい。他の実施形態では、誘導パッケージ4は、任意の化学的手段または機械的手段によって棚状部/突出部に取り付けられてもよい。他の実施形態では、仮想誘導パッケージ4が、仮想棚状部/仮想突出部に取り付けられてもよい。図示するように、下顎骨用の保持片10と上顎骨用の保持片10との間の空間は、第1接触点17および歯の咬頭の相対的な干渉(または衝突)を可視化するのを容易にするために、誇張されている。第1接触点17は、患者の顎が、歯科医療従事者による指標位置へと閉じる際に、上顎歯と下顎歯とが最初に接触する点である。前方への誘導および閾間隙を用いるこの患者に、この器具を適用することによって、第1接触17とは異なる望まない点が回避される。
【0142】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4は、歯に依存しない前方への誘導を行い得る。例えば、誘導パッケージ4は、最も前方の歯(15および21)よりも前方に配置されてもよく、ひいては、前方への誘導がそこで行われてもよい。この構成によって、偏位における咀嚼筋に対する誘導パッケージ4の機械的な優位性が向上し得る。
【0143】
さらには、上顎の前歯15および/または下顎の前歯21の実際の位置よりも前方に誘導パッケージ4を配置することによって、誘導パッケージ4は、患者の下顎骨がCR(または他の所定の指標位置/規定された極限閉口位置)において安静状態である場合に、前方誘導における咬合高径16の増加を最小限にし得る。上顎の前歯15および下顎の前歯21の前方に、誘導パッケージ4を配置することができるので、誘導パッケージ4は、干渉(例えば、衝突)の排除を容易にするために、偏位において下顎骨を下向きに変位させる3次元的な前方への誘導を行うことができる。さらには、患者が所定の指標位置(規定された極限閉口位置)である場合に、誘導パッケージ4および保持片10によって咬合高径16が最小となるので、患者の受容感や快適さが劇的に向上し得る。第1接触17を見出すためのいくつかの例示的な方法、およびCR(または所定の指標位置)において適切な空間を識別し、作成するためのスペーサー18(例えば、粘着性があるが着脱可能である1mm厚のスペーサーなど)の使用については、米国特許出願第2014/0060549号に詳細に説明されている。
【0144】
図7および
図8は、それぞれ、重度の二級不正咬合患者および重度の二級不正咬合患者に対する保持片10の例示的な使用を示す。
【0145】
図7では、保持片10は、重度の二級不正咬合患者の歯ぎしりを治療するために、患者の後退下顎骨弓20上と、上顎骨弓22上とに配置されている。保持片10によって、下顎の前歯21の解剖学的位置よりも前方に誘導パッケージ4を配置することが可能になり得、ひいては、前方への誘導が、そこで可能になり得る。図示するように、安静状態における誘導パッケージ派生器具13の咬合高径16は、保持片10を用いることによって最小化され得る。この構成では、重度の二級不正咬合および歯ぎしりを患う患者は、CRからの偏位において咀嚼筋に対して機械的にかなり優位性のある夜用保護具を身につけてもよく、CRにおいて安静状態である場合に、咬合高径16の増加が最小となるため、より快適であり得る。また、歯科医療従事者は、このような問題を抱える患者に対して、より少ない手間で、適切な夜用保護具を提供することができる。
【0146】
図8では、重度の三級不正咬合患者の歯ぎしりを治療するために、保持片10が、患者の上顎骨弓22上と、下顎骨弓20上とに配置されている。保持片10によって、上顎の前歯15の解剖学的限界よりも前方に誘導パッケージ4を配置することが可能になり得る。図示するように、誘導パッケージ派生器具13を用いる患者の安静状態における咬合高径16は、保持片システム内およびその周辺での誘導パッケージの配置に柔軟性があるため、最小化され得る。この構成では、重度の三級不正咬合および歯ぎしりを患う患者は、CRからの偏位において咀嚼筋に対して機械的にかなり優位性のある夜用保護具を身につけてもよく、CRにおいて安静状態である場合に、咬合高径16の増加が最小となるため、より快適であり得る。また、歯科医療従事者は、このような問題を抱える患者に対して、より少ない手間で、適切な夜用保護具を提供することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4は、反対側の保持片10に(例えば、「逆さまに」)、誘導パッケージ4を適切に回転させて、取り付けられてもよい。換言すると、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1は、下顎保持片に取り付けられてもよく、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2は、上顎保持片に取り付けられてもよく、したがって、誘導パッケージ4は、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0148】
誘導パッケージ4は、不正咬合や患者の歯の症状とは関係なく、3次元的に下顎骨の前端を誘導および限定するように構成されていてもよい。
【0149】
誘導パッケージ4は、歯科医療従事者によって改変され得る異なるストック構成において利用可能であってもよく、また、CAD-CAM誘導パッケージ(誘導パッケージ4の仮想的または数学的な形態)の観点においては、誘導パッケージ4は、歯科医療従事者によって、特定の患者の診断情報および損傷プロファイルに基づくテンプレートから設計され得る。この個別に調整した誘導パッケージ4によって、歯ぎしり、またはTMD、または睡眠時無呼吸と、様々な咬合および不正咬合とを患う患者を治療するための広範囲の解決策が提供され得る。また、誘導パッケージ4によって、広範囲な3D経路を通って選択された目的地へと患者の下顎骨を誘導するための多様な3Dパターニングが、歯科医療従事者に提供され得る。
【0150】
実際のヒトの不正咬合は、複雑になる傾向があり、通常は一級、二級、または三級に分類される。このような咬合および不正咬合は、前方交差咬合および後方交差咬合、水平的被蓋、過蓋咬合、開咬、その他の変化、ならびにこれらの組み合わせによって、さらに複雑化し得る。
【0151】
歯ぎしり用器具については、誘導パッケージ内蔵器具は、非常に多くの咬合および不正咬合を治療するように構成されていてもよいし、後方の干渉を中和して、歯ぎしりのストレスがある場合でも、CRでの最良の咬合圧負担位置において患者の下顎骨が機能することを可能にするために、前方への誘導を行うように構成されていてもよいし、不適切な筋活動および痙性を減少させるために、干渉のエングラムを排除するように構成されていてもよいし、歯およびTMJの保護、顔面筋疼痛症候群の抑制、ならびに偏頭痛の抑制を行うように構成されていてもよい。
【0152】
図9は、異なる誘導パッケージ4の例示的なデザイン(「犬歯誘導用」パッケージ4C(例えば、歯ぎしり用、TMD用、またはその他の復元用の誘導パッケージ))を示す。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4-Cの下顎要素1-2-C上に、理想的なヒトの「犬歯」の前方への誘導を模した様式で、横方向に離れた2つの突出部7aおよび7bが存在し得る。換言すると、理想的な下犬歯を模した誘導パッケージ4-Cの下顎誘導要素1-2-Cは、ヒトで行う理想的な犬歯誘導において、理想的な上顎歯を模した誘導パッケージ4-Cの上顎誘導要素1-1-Cに対して機能し得る。
【0153】
患者が器具13を装着して歯ぎしりした場合に、このデザインは、
図3の下顎誘導要素1-2の単一の尖った突出部7と比較して、誘導パッケージ4-Cの下顎誘導要素1-2-Cの外側極に焦点を当てた前方誘導具によって、より効果的に干渉(例えば、不正咬合)を中和することができる患者に特に適したものとなり得る。
【0154】
誘導パッケージ4-Cの上顎要素1-1-Cは、患者が歯ぎしりした場合に、犬歯誘導具にしたがって、下顎骨を3次元的に誘導および限定するように改変されてもよい。下顎要素1-2-Cは、患者が歯ぎしりした場合に、犬歯誘導具にしたがって、下顎骨を3次元的に誘導および限定するように改変されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4-Cの上顎要素1-1-Cは、水平面における断面形状が、外側が凸状であるスーパー楕円形状または歯列弓形状を形成する、凹状の内面を有していてもよい。他の実施形態では、上顎要素1-1-Cは、下顎誘導要素1-2-Cと結合するように構成された任意の形状であってもよい。上顎要素1-1-Cの大きさは、特定の患者の、水平方向および上下方向の両方に沿った下顎骨の動きの全範囲および限界境界に応じて、例えば50mm×50mm未満であってもよい。この例示的な実施形態では、上顎要素1-1-Cの平坦領域の後方部に、2つのCR接触領域2aおよび2bが存在し、また、上顎要素1-1-Cの平坦領域の前方部に、より広い長尺中心領域3'が存在している。歯科医療従事者が考慮し得る非常に幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、誘導パッケージ4-Cの上顎要素1-1-C上の横方向および突出方向の誘導具領域の、
図1に示すような斜度33および深度32を制御または改変することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、患者が、外側偏位において左に下顎骨を移動させると、左側の突出部7bのみが接触し得る。患者が、下顎骨をCRへと戻すと、右側の突出部7aは、左側の突出部7bと同時に、再び接触し得る。患者が、外側偏位においてCRから右に下顎骨を移動させると、右側の突出部7aのみが、誘導パッケージ4-Cの上顎部1-1-Cに接触し得る。
【0156】
適切な前方への「犬歯」誘導を行うことで、後方の干渉を回避したり、エングラムを排除したり、咀嚼筋の力を抑えたり、患者個々の咬合または不正咬合に関係なく、TMJ 9-Rおよび9-Lの顆頭8-Rおよび8-Lが自由に最良の咬合圧負担位置に存在することを可能にしたりするために、下顎骨8-1のTMJ 9Rおよび9Lの動きの全範囲内において、誘導パッケージ4-Cの下顎誘導要素1-2-Cの突出部7aおよび7bの両方が、CRにおいて、誘導パッケージ4-Cの上顎誘導要素1-1-Cと点2aおよび2bまたは長尺中心領域3'で接触してもよいし、突出部7aまたは7bの一方または両方が、誘導パッケージ4-Cの上顎要素1-1-Cの斜面、斜面の側方部に位置する横方向誘導具5、または斜面の前方部に位置する突出誘導具6と接触してもよい。
【0157】
歯科医療従事者が考慮し得る非常に幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、誘導パッケージ4-Cの下顎要素1-2-Cの突出部7aおよび7bの斜度、深度、および相対位置を制御することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、患者が安静状態である場合に、咬合高径16の最小ペナルティを、例えば5mm未満として、誘導パッケージ4-Cを作成および/または適用してもよい。何故なら、後方の干渉は、CRからの偏位において下顎骨を下向きに変位させる3D誘導によって排除されるからである。偏位とは、CRまたは長尺中心のヒンジ軸から、左方向、右方向、または突出方向に向かう下顎骨の運動である。
【0159】
図1、
図4、
図9、
図10、
図11A、
図12A、
図12B、
図13A、および
図13Bの誘導パッケージの3D誘導によって、CRのヒンジ軸、または歯科医療従事者が選択した他の点もしくは軸から、前方への誘導、および下顎骨の全限界境界へ向かう偏位すべてにおける干渉の排除が行われ得る。さらには、誘導パッケージの誘導具は、前歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物(例えば、誘導パッケージ)は、保持片上の上顎の前歯と下顎の前歯との間の位置に作成されず、むしろ前歯の位置に関係なく、前歯の前方(または後方)に存在することができる。
【0160】
誘導パッケージ4-Cは、逆さまに、誘導パッケージ4-Cを適切に回転させて、保持片に取り付けられてもよい。換言すると、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-Cは、下顎保持片に取り付けることができ、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-Cは、上顎保持片に取り付けられ、したがって、誘導パッケージ4-Cは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0161】
図10は、歯ぎしり用器具の別種として作成され得る、異なる誘導パッケージ4の他の例示的なデザイン(「グループ機能」誘導パッケージ4-G(例えば、歯ぎしり用、TMD用、またはその他の復元用の誘導パッケージ))を示す。誘導要素4-Gの下顎誘導要素1-2-G上に、理想的なヒトのグループ機能前方誘導を模した様式で、犬歯間または小臼歯間(または歯科医療従事者が選択した他の歯の間)のグループ機能を模した非常に広い突出部7'が存在し得る。術者の治療目的にしたがって、下顎骨に自由を与える、または下顎骨を限定するために、突出部7'の広さを、前後方向および/または横方向に強調させてもよい。患者が器具13を装着して歯ぎしりした場合に、「グループ機能」誘導パッケージ4-Gは、
図3の下顎誘導要素1-2の単一の尖った突出部7と比較して、誘導パッケージ4-Gの下顎誘導要素の、左前外側極から右前外側極までの広さを持つ前方誘導具によって、より効果的に特定の干渉(例えば、不正咬合)を中和することができる患者に特に適したものとなり得る。
【0162】
誘導パッケージ4-Gの上顎要素1-1-Gは、患者が歯ぎしりする際のグループ機能誘導にしたがって改変されてもよい。誘導パッケージ4-Gの下顎要素1-2-Gは、患者が歯ぎしりする際のグループ機能誘導にしたがって改変されてもよい。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4-Gの上顎誘導要素1-1-Gは、水平面における断面形状が、外側が凸状であるスーパー楕円形状または歯列弓形状を形成する、凹状の内面を有していてもよい。他の実施形態では、上顎誘導要素1-1-Gは、下顎誘導要素1-2-Gと結合するように構成された任意の形状であってもよい。上顎要素1-1-Gの大きさは、特定の患者の、水平方向および上下方向の両方に沿った下顎骨の動きの全範囲および限界境界に応じて、例えば50mm×50mm未満であってもよい。
【0163】
単一極突出部7に連結される上顎誘導要素のCR止め具2よりも広く、上顎誘導要素の平坦領域の後方部に位置する、広範なCR止め具領域2'と、単一極突出部7'に連結される上顎誘導要素の長尺中心領域3よりも広く、上顎誘導要素の平坦領域の前方部に位置する、広範な長尺中心領域3'とが存在してもよい。歯科医療従事者が考慮し得る非常に幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、誘導パッケージ4-Gの上顎要素1-1-G上の横方向および突出方向の誘導具領域の、
図1に示すような斜度33および深度32を制御または改変することができる。さらには、歯科医療従事者が考慮し得る非常に幅広い治療目的のために前方止め具および誘導具を下顎骨に提供するために、誘導パッケージ4-Gの下顎要素1-2-Gの突出部7'の斜度および深度を制御することができる。
【0164】
適切な前方への「グループ機能」誘導を行うことで、後方の干渉を回避したり、エングラムを排除したり、咀嚼筋の力を抑えたり、TMJ 9-Rおよび9-Lの顆頭8-Rおよび8-Lが自由に最良の咬合圧負担位置に存在することを可能にしたりするために、下顎骨8-1のTMJ 9Rおよび9Lの動きの全範囲内において、誘導パッケージ4-Gの下顎誘導要素1-2-Gの広範な突出部7'が、CR2'において、誘導パッケージ4-Gの上顎誘導要素1-1-Gまたは長尺中心領域3'と接触してもよいし、広範な突出部7'の側部が、誘導パッケージ4-Gの上顎要素1-1-Gの斜面、斜面の両側方部に位置する横方向誘導具5、または斜面の前方部に位置する突出誘導具6と接触してもよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、患者が安静状態である場合に、例えば5mm未満の咬合高径16の最小ペナルティを可能にしてもよい。何故なら、後方の干渉は、CRおよび長尺中心からの偏位において下顎骨を下向きに変位させる3D誘導によって排除されるからである。さらには、誘導パッケージ4-Gの誘導具は、歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物は、前歯に加えてというわけではなくて、前歯の位置に関係なく、前歯の前方に存在することができる。このような誘導は、歯の症状にかかわらず、または歯の存在にもかかわらず、行うことができ、また、誘導具の従来の限界よりも前方に誘導具を配置し得るので、以前のどのシステムと比較しても、偏位において咀嚼筋に対する優位な点が多い。
【0166】
誘導パッケージ4-Gは、逆さまに、誘導パッケージ4-Gを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。換言すると、誘導パッケージの上顎部1-1-Gは、下顎保持片に取り付けることができ、誘導パッケージの下顎部1-2-Gは、上顎保持片に取り付けることができ、したがって、誘導パッケージ4-Gは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0167】
図1、
図9、および
図10に示す例示的な3つの歯ぎしり用(ある種のTMD用および復元用)誘導パッケージによって、不正咬合に関係なく、歯ぎしりを患う患者の圧倒的多数に優れた歯ぎしり用器具を提供し得る。しかしながら、ヒトの咬合および不正咬合は、各個人によってかなり異なっているため、特定の咬合もしくは不正咬合、またはTMDのような特定の不調に、特定の誘導パッケージ4を対応させることは、現実的でない場合がある。特定の誘導パッケージ4の選択、および場合によってはその誘導パッケージ4の改変には、特定の状態または不正咬合および不調の組み合わせに対する臨床的判断を用いて、歯科医療従事者が十分な情報を得た上で決定を下すことが必要となる場合がある。
【0168】
図1、
図9、および
図10に示す誘導パッケージ4の最も一般的な使用(歯ぎしりの治療および改善(ある種のTMDおよび復元用途))に加えて、不正咬合または患者の歯の症状とは関係なく3次元的に下顎骨を制御および限定するために、他のデザインの誘導パッケージ4または他の誘導・停止プロファイルを用いてもよい。
【0169】
このように用いられると、誘導パッケージ4は、口、顎、TMJの他の不調および睡眠時無呼吸に対する幅広い解決策を提供し得る。誘導パッケージ4を用いる場合には、歯科医療従事者が下顎骨を3次元的に制御するだけではなく、規定された不調および治療に応じて、利用可能な治療の範囲を大きく拡張するために、CR以外の、歯科医療従事者が選択した上顎骨に対する下顎骨の位置において、誘導パッケージ4をインデックス化することができる。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4をインデックス化し、直接、歯または弓に取り付けるのではなく、保持片システム内の保持片に取り付けてもよい。誘導パッケージ4を用いることで、歯科医療従事者は、広範囲な3D経路を通って選択された目的地へと患者の下顎骨を誘導するのに利用可能な多様な3Dパターニングを手に入れる。したがって、歯科医療従事者は、大きく異なる誘導パッケージ4の幅広い臨床用途を利用し得る。いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4のデザインは、下顎骨ならびに/またはTMJ 9-Rおよび9-Lのそれぞれもしくは顎口腔系における他の変数に対して個別に、大きく異なる誘導および限定を適用するために、歯科医療従事者の選択および規定を反映してもよい。
【0170】
TMD用器具については、歯ぎしりの有無を問わず、TMDおよび顎口腔系システムのその他の様々な損傷プロファイルに関連するこれら非常に多くの異なる咬合および不正咬合のすべてにおける目的は、専門的な前方への誘導および限定を行って、特定の患者の特定の損傷プロファイルを治療することや、筋活動および痙性を減少させるために、後方の干渉を中和して、干渉に関連する有害なエングラムを排除すること、ならびに歯およびTMJの保護、顔面筋疼痛症候群の抑制、および偏頭痛の抑制を行うことである。睡眠時無呼吸については、目的は、患者が下顎骨を突出させて閉じる際に、すなわち患者が下顎骨を突出させて移動させ、ひいては舌を前方に移動させる際に、気道空間の容積を増加させることである。
【0171】
図11Aは、異なる誘導パッケージ4の例示的な実施形態(TMD用または睡眠時無呼吸用の誘導パッケージであって、歯科医療従事者が、TMJの両側前方円板変位を治療するための前方再配置用器具を作成することを可能にする「両側前方再配置用」誘導パッケージ4-TB)を示す。さらにまた、誘導パッケージ4の大きく異なる臨床用途、および誘導パッケージ4による治療の柔軟性のさらなる例示によって、下顎骨の前端を3次元的に制御できることを歯科医療従事者に提供することができる。TMJの両側円板変位を治療するためには、患者が下顎骨8-1を閉じた際に、TMJ 9-Rおよび9-Lの顆頭8-Rおよび8-Lの両方が両円板を両側で再捕捉する、患者の損傷を治療するように個別に調整された指定の安静位置2"まで、下顎骨を前方および上下方向において誘導することができるように、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TBおよび誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBの両方をインデックス化することができる。
【0172】
誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBは、突出方向および上下方向に沿って下顎骨を治療用安静位置2"まで誘導するために、上顎誘導要素1-1-TBの後方部(他の場合では、
図2および
図10において位置2および2'として示される、歯ぎしり用誘導パッケージの上顎誘導要素1-1の後方部は、下顎骨をCRに戻すように誘導するものである)に位置する個別に調整した突出誘導具6aを有していてもよい。安静位置2"、すなわち所定の指標位置(規定された極限閉口位置)2"は、各患者の損傷に基づいて、指定またはインデックス化されてもよい。
【0173】
TMJの両円板を再捕捉した指定安静位置2"から、平坦領域の前方部の長尺中心領域3"まで、さらには、横方向誘導具5および突出誘導具6まで、下顎骨を3次元的に誘導することによって、各患者が呈する特定の損傷または不調が対称的に保護および治療され、後方の干渉が排除され、エングラムが排除され、かつ偏位における咀嚼筋の力が抑えられ得る。横方向誘導具5は、上顎誘導要素の斜面の両側方部に位置していてもよい。突出誘導具は、上顎誘導要素の斜面の前方部に位置していてもよい。誘導パッケージ4-TBの上顎要素1-1-TBは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。誘導パッケージ4-TBの下顎要素1-2-TBは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、患者が安静状態にある場合に、咬合高径16のペナルティが、誘導パッケージ4-TBによって最小とされてもよい。何故なら、顆頭8-Rおよび8-Lの前方への再配置、ならびに後方の干渉の排除が、顆頭8-Rおよび8-Lを再配置するための治療のための動きにおいて下顎骨8-1を上下方向に変位させる3D誘導、ならびにこの指定位置2"からの偏位によって成されるからである。さらには、誘導パッケージ4-TBの誘導具は、歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物は、前歯に加えてというわけではなくて、前歯に関係なく、前歯の前方に存在することができる。
【0175】
このような誘導は、歯の症状にかかわらず、または歯の存在にもかかわらず、行うことができ、また、誘導具の従来の限界よりも前方に誘導具を配置し得るので、以前のどのシステムと比較しても、偏位において咀嚼筋に対する優位な点が多い。
【0176】
誘導パッケージ4-TBは、逆さまに、誘導パッケージ4-TBを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。換言すると、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBは、下顎保持片に取り付けることができ、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TBは、上顎保持片に取り付けることができ、したがって、誘導パッケージ4-TBは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0177】
任意の誘導パッケージ4がそうであるように、一連の誘導パッケージ派生器具は、後方の組織が治癒するにつれて顆頭をCRまで優しく「戻す」ように、歯科医療従事者によって設計することができる。例えば、顆頭が治癒し、その位置をさらに戻す場合に、顆頭を漸次運動させるため、同じ誘導パッケージ(または異なる誘導パッケージ)を異なる箇所でインデックス化することができる。任意の誘導パッケージ4の構造がそうであるように、歯科医療従事者の目的ならびに/または特定の患者の損傷プロファイルおよび不正咬合プロファイルに合致するよう、誘導パッケージの両誘導要素の斜度、深度、大きさ、および形状を改変してもよい。
【0178】
睡眠時無呼吸を治療するためには、患者が下顎骨8-1を閉じた際に、患者の突出可能な全体の約50~70%まで突出方向に下顎骨を運動させるように個別に調整された指定の安静位置(規定された極限閉口位置)2"まで、下顎骨を前方および上下方向において誘導することができるように、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TBおよび誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBの両方をインデックス化および/または改変することができる。臨床的に有効な突出位置まで下顎骨を運動させることによって、舌も前方へと運動して、患者の気道を開放し、患者の睡眠時無呼吸を治療する。誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBは、突出方向および上下方向に沿って下顎骨を治療用安静位置2'まで誘導するために、上顎要素の後方部(他の場合では、
図2および
図10において位置2および2'として示される、歯ぎしり用誘導パッケージの上顎誘導要素1-1の後方部は、下顎骨を中心位に誘導するものである)に位置する個別に調整した突出誘導要素6aを有していてもよい。安静位置2"は、各患者の睡眠時無呼吸を効果的に治療するために、突出方向に沿って下顎骨を運動させるべき距離に基づいて、指定またはインデックス化されてもよい。
【0179】
気道を十分に開放した指定安静位置2"から、平坦領域の前方部の長尺中心領域3"まで、さらには、横方向誘導具5および突出誘導具6まで、下顎骨を3次元的に誘導することによって、対称的な誘導が提供され、後方の干渉が排除され、エングラムが排除され、かつ偏位における咀嚼筋の力が抑えられ得る。横方向誘導具5は、上顎誘導要素1-1-TBの斜面の両側方部に位置していてもよい。突出誘導具6は、上顎誘導要素1-1-TBの斜面の前方部に位置していてもよい。誘導パッケージ4-TBの上顎要素1-1-TBは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。誘導パッケージ4-TBの下顎要素1-2-TBは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、患者が安静状態にある場合に、咬合高径16のペナルティが、誘導パッケージ4-TBによって最小とされてもよい。何故なら、下顎骨の前方への再配置、および後方の干渉の排除が、気道を開放するために下顎骨8-1を前方に再配置するための治療のための動きにおいて下顎骨8-1を上下方向に変位させる3D誘導、およびこの指定位置2"からの偏位によって成されるからである。さらには、誘導パッケージ4-TBの誘導具は、歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物は、前歯に加えてというわけではなくて、前歯に関係なく、前歯の前方に存在することができる。
【0181】
このような誘導は、歯の症状にかかわらず、または歯の存在にもかかわらず、行うことができる。さらには、既存のシステムの誘導具よりも前方に、誘導具が配置され得るので、偏位において咀嚼筋に対する優位な点が多い。
【0182】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージ4-TBは、逆さまに、誘導パッケージ4-TBを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。すなわち、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TBは、下顎保持片に取り付けることができ、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TBは、上顎保持片に取り付けることができ、したがって、誘導パッケージ4-TBは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0183】
図12Aは、異なる誘導パッケージ4の例示的な実施形態(TMD治療用誘導パッケージであって、歯科医療従事者が、各TMJ 9-Rおよび9-L、または下顎骨8-1もしくは支持構造の片側でのその他の不調に対して選択的かつ特異的なTMD治療用器具を作成することを可能にする「非対称突出」誘導パッケージ4-TU)を示す。さらにまた、これは、大きく異なる臨床用途の他の例示であり、誘導パッケージ4の強固な柔軟性を利用するものである。
【0184】
この例示的な実施形態では、患者の右TMJ 9-Rの関節間軟骨が前方に変位し、左TMJ 9-Lでは正常である。歯科医療従事者は、右顆頭8-Rを前方に再配置して変位した関節間軟骨を再捕捉するが、左顆頭8-LはCRに位置したままとする誘導パッケージ4TUを規定し得る。
【0185】
誘導パッケージの下顎部1-2-TU上には、2つの突出部7'aおよび7'bが存在してもよく、右側の突出部7'aは、左側の突出部7'bよりも高く、急勾配となっている。誘導パッケージ4-TUの上顎部1-1-TUは、それに応じて改変されてもよい。誘導パッケージ4-TUの上顎要素1-1-TUは、水平面における断面形状が、外側が凸状であるスーパー楕円形状または歯列弓形状を形成する、凹状の内面を有していてもよい。他の実施形態では、上顎誘導要素1-1-TUは、下顎誘導要素1-2-TUと結合するように構成された任意の形状であってもよい。上顎要素1-1-TUの大きさは、特定の患者の、水平方向および上下方向の両方に沿った下顎骨の動きの全範囲および限界境界に応じて、例えば50mm×50mm未満であってもよい。前方に変位した右TMJの円板を再捕捉する右側前方再配置領域2'aは、前方に位置していてもよく、また、上顎誘導要素の平坦領域の右側部の前方に位置する、より深いくぼみを有していてもよい。また、安静状態において左顆頭8-LをCRに位置させつつ、術者が右顆頭8-Rを前方へ再配置できるようにするために、上顎要素の平坦領域の左後方部に位置する安静位置2'bとは対照的に、規定の安静位置2'aよりも後方に、個別に調整した前方突出誘導具6aを有していてもよい。誘導パッケージ4-TUの上顎要素1-1-TUは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。誘導パッケージ4-TUの下顎要素1-2-TUは、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。
【0186】
この例示的な実施形態では、患者が下顎骨8-1を閉じると、右顆頭8-Rは、右TMJ 9-Rの変位した円板を再捕捉するために、誘導パッケージ4-TUの下顎誘導要素1-2-TUのより広く高い右突出部7'aによって、誘導パッケージ4-TUの上顎誘導要素1-1-TUのより深く広い領域2'aへと、前方へ、また上下方向に沿って、誘導され得る。
【0187】
左TMJ 9-Lの左顆頭8-Lは、誘導パッケージ4-TUの上顎誘導要素1-1-TUのCR位置2'bへと入る誘導パッケージ4-TUの下顎誘導要素1-2-TUの左突出部7'bによって、CRへと誘導されてもよいし、異なる指定位置へと誘導されてもよい。
【0188】
右TMJ 9-Rの右円板を再捕捉した、患者の損傷プロファイルに基づく治療のための指定安静位置(規定された極限閉口位置)2'aおよび2'bから、長尺中心安静領域3"まで、さらには、横方向誘導具5および突出誘導具6までの3D誘導によって、この患者が呈する特定の損傷または不調が非対称的に保護および治療され、後方の干渉が排除され、エングラムが排除され、かつ咀嚼筋の力が抑えられ得る。
【0189】
患者が安静状態にある場合に、咬合高径16のペナルティが、誘導パッケージ4-TUによって最小とされてもよい。何故なら、右顆頭8-Rの前方への再配置、および後方の干渉の排除が、右顆頭8-Rを再配置するための治療のための動きにおいて下顎骨8-1を上下方向に変位させる3D誘導、およびこの指定治療位置からの偏位によって成されるからである。さらには、誘導パッケージ4-TUの誘導具は、歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物は、前歯に加えてというわけではなくて、前歯に関係なく、前歯の前方に存在することができる。このような誘導は、歯の症状にかかわらず、または歯の存在にもかかわらず、行い得、また、誘導具の従来の限界よりも前方に誘導具を配置し得るので、以前のどのシステムと比較しても、偏位において咀嚼筋に対する優位な点を多くすることができる。
【0190】
誘導パッケージ4-TUは、逆さまに、誘導パッケージ4-TUを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。換言すると、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TUは、下顎保持片に取り付けられてもよく、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TUは、上顎保持片に取り付けられてもよく、したがって、誘導パッケージ4-TUは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0191】
図12Bは、
図12Aの反対の構成を示しており、患者の左TMJ 9-Lの関節間軟骨が前方に変位し、右TMJ 9-Rでは正常である。歯科医療従事者は、左顆頭8-Lを前方に再配置して変位した関節間軟骨を再捕捉するが、左顆頭8-LはCRに位置したままとする誘導パッケージ4-TUを規定し得る。
【0192】
誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TU上には、2つの突出部7'aおよび7'bが存在してもよく、左側の突出部7'aは、右側の突出部7'bよりも高く、急勾配となっている。誘導パッケージ4-TUの上顎部1-1-TUは、それに応じて改変されてもよい。誘導パッケージ4-TUの上顎要素1-1-TUは、水平面における断面形状が、外側が凸状であるスーパー楕円形状または歯列弓形状を形成する、凹状の内面を有していてもよい。他の実施形態では、上顎要素1-1-TUは、下顎誘導要素1-2-TUと結合するように構成された任意の形状であってもよい。上顎要素1-1-TUの大きさは、特定の患者の、水平方向および上下方向の両方に沿った下顎骨の動きの全範囲および限界境界に応じて、例えば50mm×50mm未満であってもよい。前方に変位した左TMJの円板を再捕捉する左側前方再配置領域2'aは、前方に位置していてもよく、また、上顎要素の平坦領域の右側部の前方に位置する、より深いくぼみを有していてもよい。また、安静状態において右顆頭8-RをCRまたは異なる指定位置に位置させつつ、術者が左顆頭8-Lを前方へ再配置できるようにするために、上顎要素の平坦領域の右後方部に位置する安静位置2'bとは対照的に、規定の安静位置2'aよりも後方に、個別に調整した前方突出誘導具6aを有していてもよい。
【0193】
この例示的な実施形態では、患者が下顎骨8-1を閉じると、左顆頭8Lは、左TMJ 9-Lの変位した円板を再捕捉するために、誘導パッケージ4-TUの下顎誘導要素1-2-TUのより広く高い左突出部7'aによって、AGP 4-TUの上顎部1-1-TUのより深く広い領域2'aへと、前方へ、また上下方向に沿って、誘導され得る。
【0194】
右TMJ 9-Rの右顆頭8-Rは、誘導パッケージ4-TUの上顎誘導要素1-1-TUのCR位置2'bへと入る誘導パッケージ4-TUの下顎誘導要素1-2-TUの右突出部7'bによって、CR位置へと誘導されてもよいし、異なる指定位置へと誘導されてもよい。
【0195】
左TMJ 9-Lの左円板を再捕捉した、患者の損傷プロファイルに基づく治療のための指定安静位置2'aおよび2'bから、長尺中心安静領域3"まで、さらには、横方向誘導具5および突出誘導具6までの3D誘導によって、この患者が呈する特定の損傷または不調が非対称的に保護および治療され、後方の干渉が排除され、エングラムが排除され、かつ咀嚼筋の力が抑えられ得る。
【0196】
患者が安静状態にある場合に、咬合高径16のペナルティが、誘導パッケージ4-TUによって最小とされてもよい。何故なら、左顆頭8-Lの前方への再配置、および後方の干渉の排除が、左顆頭8-Lを再配置するために治療のための動きにおいて下顎骨8-1を上下方向に変位させる3D誘導、およびこの指定治療位置からの偏位によって成されるからである。さらには、誘導パッケージ4-TUの誘導具は、歯よりも前方に配置され得るので、その誘導用の有形物は、前歯に加えてというわけではなくて、前歯に関係なく、前歯の前方に存在することができる。このような誘導は、歯の症状にかかわらず、または歯の存在にもかかわらず、行い得、また、誘導具の従来の限界よりも前方に誘導具を配置し得るので、以前のどのシステムと比較しても、偏位において咀嚼筋よりも優位な点を多くすることができる。
【0197】
誘導パッケージ4-TUは、逆さまに、誘導パッケージ4-TUを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。換言すると、誘導パッケージの上顎誘導要素1-1-TUは、下顎保持片に取り付けられてもよく、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-TUは、上顎保持片に取り付けられてもよく、したがって、誘導パッケージ4-TUは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0198】
図13Aおよびその鏡像である
図13Bは、誘導パッケージ4のさらなる2つの例示的な実施形態(TMD治療用誘導パッケージであって、歯科医療従事者が、一方のTMJもしくは両方のTMJ、または咀嚼筋、その靱帯、もしくはその腱の片側もしくは両側、を損傷している下顎骨、あるいは、術者が、対称的又は非対称的に、通例と異なる3D経路において下顎骨の運動および限定を制御する能力を必要とする、その他の臨床的問題または臨床的問題の組み合わせ、を治療することを可能にする「非対称」誘導パッケージ4-AT)である。これは、誘導パッケージ4の大きく異なる臨床用途である。この例示的な誘導パッケージ4-ATのデザインは、TMJ 9-Rおよび9-Lのそれぞれ、または顎口腔系における他の変数に対して個別に、大きく異なる誘導および限定を適用するために、歯科医療従事者の規定を反映してもよい。
【0199】
この実施形態では、突出部7"'が、中央線に対して横方向に位置し得る。術者の治療目的のために前方止め具、限定具、および誘導具を、この場合はTMJ 9-Rおよび9-Lのそれぞれに大きく異なるパラメータを非対称的に与えることで、提供するために、誘導パッケージ4-ATの下顎誘導要素1-2-ATおよび上顎誘導要素1-1-ATの両方の非対称な深度および斜度を制御することができる。この状況では、患者の下顎骨8-1が閉じると、各患者の特定の不調または損傷に対して歯科医療従事者が規定するCRとは別の安静位置2"'へと誘導され得る。この指定安静位置(規定された極限閉口位置)2"'から、特定の患者の損傷に基づいて設計され、この特定の損傷プロファイルのために誘導を行うように個別に調整された形状である、上顎要素の平坦領域の前方部上の長尺中心領域3"'まで、さらには、横方向誘導具5および突出誘導具6まで3D誘導が、この場合では非対称的に行われるが、特定の患者の特定の損傷または不調のために対称的に保護および治療を行うこともできる。横方向誘導具5は、上顎誘導要素の斜面の両側方部に配置されてもよい。突出誘導具6は、上顎誘導要素の斜面の前方部に配置されてもよい。誘導パッケージ4-ATの上顎要素1-1-ATおよび下顎要素1-2-ATの両方は、治療状況または考慮すべき他のことに応じて、改変されてもよい。
【0200】
誘導パッケージ4-ATは、逆さまに、誘導パッケージ4-ATを適切に回転させて、保持片に取り付けることができる。換言すると、誘導要素の上顎誘導要素1-1-ATは、下顎保持片に取り付けられてもよく、誘導パッケージの下顎誘導要素1-2-ATは、上顎保持片に取り付けられてもよく、したがって、誘導パッケージ4-ATは、上顎保持片および下顎保持片によって交換可能に用いることができる。
【0201】
CAD-CAM誘導パッケージ器具
【0202】
様々な症状および症状の組み合わせに対する解決策を提供する前例のない方法で、また、歯科医療従事者および患者の両方にとって非常に少ない費用で、歯科医療従事者が個別調整しながらCAD-CAM誘導パッケージ器具を作成することができる。歯科医療従事者は、広範囲な3D経路のうちの1つの経路を通って、選択された目的地へと患者の下顎骨を誘導するのに利用可能な多様な3Dパターニングを手に入れ得る。
【0203】
広範囲のストック誘導パッケージ、および/または歯科医療従事者によって改変されるストック誘導パッケージ、および/または特定の患者用に個別に設計された誘導パッケージに、本明細書に記載の方法の実施形態を適用することができる。選択された、または選択および改変された、または設計された、誘導パッケージは、非常に広範囲の問題または不正咬合に対処するために、大きさ、形状、またはスタイルの多くの可能性のうちの1つとすることができる。術者が望むどのような効果をも実現するために、個別に、またはグループとして、誘導パッケージの上顎誘導要素および/または下顎誘導要素を、多くの形状または大きさの選択肢のうちの1つとして選択、または選択および改変、または設計することができる。例えば、TMDの治療者は、下顎骨の限定および誘導に関して、前例のない範囲の選択肢を利用し得る。他のシステムとは対称的に、開示された誘導パッケージ4のいくつかの実施形態は、歯の状況、位置、有無に関係なく、下顎骨の3次元的な前方への誘導および限定を行うことができる。また、誘導パッケージに特異的に起因するが、偏位において咀嚼筋に対して機械的に優位な点が多い、または少ない、誘導パッケージ派生器具の異なる性質を最大化または最小化するように、誘導パッケージの位置(ひいては、誘導パッケージ保持片システム内における下顎骨の誘導および限定)を制御することができる。いくつかの実施形態では、誘導パッケージを、歯または弓に直接取り付けるのではなく、インデックス化して、保持片システム内の保持片に取り付け得る。誘導パッケージの前例のない選択、改変および設計の可能性、ならびに保持片システム内における誘導パッケージの位置に関する柔軟性を考慮すると、CAD-CAM誘導パッケージ歯ぎしり用器具、CAD-CAM TMD用器具、およびCAD-CAM睡眠時無呼吸用器具を含むCAD-CAM誘導パッケージ器具は、既存の夜用保護具、TMD用器具システム、および睡眠時無呼吸用器具システムよりも有利である。
【0204】
CAD-CAM誘導パッケージ器具は、2つの部品からなり、個別に調整され、着け心地がよく、継ぎ目がなく、軽量で、CR(または歯科医療従事者が選択した別の指標位置)における安静時の咬合高径が最小である、器具であって、3次元的な前方への誘導および限定を行う、器具であってもよい。
【0205】
いくつかの実施形態では、誘導パッケージは、歯の間ではなく、歯の前方、後方、または側方に配置またはインデックス化されてもよく(ひいては、保持片システムの横断面方向、矢状面方向、および前額面方向の広い範囲で、3D誘導が行われる)、したがって、誘導を行う構成要素は、器具に上下方向の高さを追加することがなく、器具の安静時の咬合高径を最小化することが可能となる。さらには、誘導具を、歯と比較して咀嚼筋のさらに前方に配置し得るので、誘導パッケージ内蔵器具は、歯を含むかまたは歯の上に構築された誘導具と比較して、偏位において咀嚼筋に対して優れた固有の機械的優位性を有し得る。いくつかの実施形態では、誘導パッケージを、歯または弓に直接取り付けるのではなく、インデックス化して、保持片システム内の保持片に取り付け得る。既存の夜用保護具、TMD治療用システム、および睡眠時無呼吸治療用システムとは対照的にCAD-CAM誘導パッケージ器具は、前方への誘導および限定についての選択、改変、および設計において、広範な3次元的柔軟性を有し得る。さらには、歯ぎしり用途、TMD用途、および睡眠時無呼吸用途のCAD-CAM誘導パッケージ器具は、前歯を含む歯の状況やその有無に関係なく、作成することができる。何故なら、誘導は、完全に誘導パッケージによって行われるからである。
【0206】
患者のCAD-CAM誘導パッケージ器具がなくなった、または壊れた場合は、デジタル記録が存在していることで、新しい記録をとる予定を入れる必要なく、全く同じ器具を素早く再現し得る。新しいCAD-CAM誘導パッケージ器具は、便利よく、また患者にとってコストを抑えながら、取り替えることができる。
【0207】
歯科医師およびその研究室が手作業でスプリントを作成および調整する従来の方法よりも低価格で、CAD-CAM誘導パッケージ器具を作成することができる。CAD-CAM誘導パッケージ器具は、TMDの問題、歯ぎしり、および睡眠時無呼吸に対処するための優れた器具である。既存のすべてのシステムとは対照的に、CAD-CAM誘導パッケージ器具は、患者に大いに便宜をはかり、かつより安価で、優れたシステムを患者に提供するものである。
【0208】
個別に調整した誘導パッケージ内蔵器具を作成するための開示された方法の実施形態は、歯科医療従事者および患者の両方にとって、より便利で、より低価格で、かつ手間のより少ないものであり得る。
【0209】
一実施形態では、個別に調整した誘導パッケージ内蔵器具を自動で作成または再現するための方法は、デジタルな方法および/またはデジタルに変換された従来の方法を組み合わせて、特定の患者用の、特異的に個別に調整した誘導パッケージ内蔵器具を自動で組み立てるのに必要な情報を、収集および作成することを含む。紛失または損傷のために、患者が新しい誘導パッケージ内蔵器具を必要とする場合、デジタル記録が保持されているので、再度歯科医療従事者が記録を収集することなく、新しい誘導パッケージ内蔵器具を提供することができる。
【0210】
特定の患者から収集した歯および弓の情報、ならびに誘導パッケージ器具のデザインをコンピュータに保存した後、歯科医師または患者がさらなる手間を掛けることなく、コンピュータ数値制御(CNC)ラボ、オフィス3Dプリンタ、または他のCAMが可能な装置によって、新しい誘導パッケージ内蔵器具を作成することができる。あるいは、患者の歯もしくは弓または運動パラメータに関する1つまたは2つの変数が変化すれば、コンピュータの記録においてこれらの変数が変更され、それに応じてデザインが変更され、その後、CNCラボ、3Dプリンタ、または他のCAMが可能な装置に送信されて、完全な記録を収集するための歯科医師および患者による立ち会いを行う必要なく、新しい誘導パッケージ内蔵器具を作成することができる。
【0211】
CAD-CAM誘導パッケージ器具の作成手順
【0212】
例示的な一実施形態では、患者の歯の情報の記録を収集および作成するための手順は、上顎骨弓および下顎骨弓の両方の3D情報を収集することと、指標位置を特定することと、患者の仮想3D上顎歯、仮想3D上顎骨弓、仮想3D下顎歯、および仮想3D下顎骨弓を、適切な咬合高径(例えば、歯の間に十分な空間を与えて、誘導要素(例えば、仮想保持片および/または運動・停止プロファイル)用の間隙を提供する)で、指標位置(例えば、CR)または安静位置にセットし、必要に応じて、TMJ/顆頭の記録を仮想咬合器に入力することと、エンベロープ領域(3D領域)の境界を特定することと、運動パラメータを規定し、必要に応じて、運動の制限を特定するために衝突(例えば、干渉)を検出することと、空間内の点(仮想点)を特定して、保持片に対して誘導パッケージを配置することと、場合によっては、仮想機能シミュレーションを行うことと、場合によっては、仮想棚状部/仮想突出部を仮想的に用いて、最終的な解決策のために利用可能な表面を改変することと、1つ以上の任意の最終解決策を設計することと、を含む。設計された最終解決策は、製造のために、製造業者(例えば、CAD-CAM製造業者)に提供されてもよい。
【0213】
上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の3D情報を収集することは、従来の方法(例えば、患者の歯および弓の印象を作成し、その後、型石に流し込んでモデルを作成し、モデルをスキャンすることでデジタルに変換する)を用いることを含んでいてもよいし、院内スキャナまたはその他のデータ取得装置を用いて、上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の3D情報を直接記録することを含んでいてもよい。
【0214】
上顎骨に対する下顎骨の規定された指標位置(極限閉口位置)を特定する。例えば、歯科医療従事者が、簡易歯ぎしり用誘導パッケージ4-S(例えば、
図2~
図4に示す)、または「犬歯誘導」歯ぎしり用誘導パッケージ4-C(例えば、
図9に示す)、または「グループ機能」歯ぎしり用誘導パッケージ4-G(例えば、
図10に示す)を用いることを意図する場合、歯科医療従事者は、指標位置として、適切な咬合高径で下顎骨のCR位置を決定してもよく、これは、従来の方法(例えば、下顎骨をCRヒンジ軸へと操作し、下顎骨を適切な咬合高径まで閉じることによる)を用いることを含んでいてもよい。歯ぎしりの治療効果がある、下顎骨の指標位置を特定する他の方法としては、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、およびその他のデータ収集方法が挙げられる。次に、歯科医療従事者は、歯と弓との関係についてのインデックスを作成し(例えば、その関係において、歯および弓のモデルを一緒に設置する)、その関係を、設置したモデルをスキャンすることでデジタルに変換するか、または下顎骨が指標位置にある場合の上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の関係を直接記録する。歯科医療従事者は、3D X線撮影を口腔内スキャニングと組み合わせて用いてもよい。3D X線撮影は、口腔内スキャニングデータと関連させてもよく、またはそのデータと共にインデックス化されてもよく、また、3D X線撮影によって歯科医療従事者が解明するように、適切な咬合高径での下顎骨8-1のCR位置に一致させてもよい。また、歯および弓の規定された位置は、下顎骨がCRにある場合に、関連する口腔内スキャニングデータを直接用いて記録されてもよい。場合によっては、指標位置は、仮想的に決定されてもよいし、仮想的に選択されてもよい。誘導パッケージ歯ぎしり用器具の場合、歯科医療従事者は、平均のTMJ値を用いてもよいし、従来の方法、ならびに/あるいはアキシオグラフィおよび/または
図14に示す顎運動解析装置を用いてTMJの記録を収集してもよい。これらの記録としては、顔弓移動、顆頭間距離、顆頭勾配、ベネット角および限界境界(動きの範囲)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
図14は、例示的な顎運動解析装置システム23を示し、これは、これらのデータの収集すること、および患者の顎の運動をリアルタイムに視覚化することを可能にする。このシステムは、顔の上部に設置されて、患者のTMJの位置を含むパラメータを規定する、上部受信機23-1を含んでいてもよく、また、常磁性センサー23-3が備えられていてもよい。このユニットは、さらに、患者の下顎に設置されて、金属製スプリント23-5を介して患者の下顎歯に接続される下部受信機23-4と、下部受信機23-4上にある別の常磁性センサー23-6の一式と、センサー23-3、23-6からの信号をコンピュータ23-8向けに変換するコンバータ23-7とを含んでいてもよい。TMD用誘導パッケージ(例えば、
図11A、
図12A、
図12B、
図13A、および
図13Bに示す)器具の場合、X線撮影、3D X線撮影、MRI、超音波検査、JMA、または収集したTMJの記録を含むその患者の損傷プロファイルに関する追加的な記録を、痛み・損傷プロファイルおよび/または他の方法の臨床観察と組み合わせた手動の咬合器を用いる従来の方法によって収集してもよい。
【0215】
他の例として、TMD用誘導パッケージ器具の場合、歯科医療従事者は、1つ以上の方法によって適切な安静位置(規定された極限閉口位置)を確定してもよい。例えば、歯科医療従事者は、患者との直接的な対話および臨床判断によって、下顎骨を閉じた際の適切な安静位置(規定された極限閉口位置)を確定する直接的な臨床評価の一部として、患者の下顎骨を手で操作することができる。その後、歯科医療従事者は、その安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を、患者から作成した歯および弓のモデルをその位置でスキャンすることによって記録してもよいし、その位置における上顎歯および上顎骨弓と、下顎歯および下顎骨弓との関係を、院内スキャナを用いて直接記録してもよい。歯科医療従事者は、3D X線撮影を口腔内スキャニングと組み合わせて用いてもよい。3D X線撮影は、口腔内スキャニングデータと関連させてもよく、そのデータと共にインデックス化されてもよい。歯科医療従事者は、3D X線撮影によって、治療のための安静位置(規定された極限閉口位置)を含む患者の損傷プロファイルを解明してもよい。歯科医療従事者は、関連する口腔内スキャニングデータを用いて、安静時の歯の第1接触位置における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を記録してもよい。ある種のTMJおよび顎口腔系の損傷は、MRI(磁気共鳴映像)、超音波検査、および/または顎運動解析装置(JMA)などの他の撮像法を用いて記録されてもよい。他の撮像法およびデータ収集は、指定安静位置(規定された極限閉口位置)において患者の歯のインデックス化モデルを作成し、その後、スキャンするか、オフィススキャナを用いてその位置を直接記録する従来の方法と組み合わせられてもよい。
【0216】
他の例として、歯科医療従事者が「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージ4-TBを用いることを意図する両側前方円板変位の場合、歯科医療従事者は、例えば、手による下顎骨の操作、患者との直接的な対話、および臨床判断によって、安静時(規定された極限閉口位置)に、TMJ 9RおよびLの両方の円板を再捕捉するために、突出方向、横方向、および上下方向において上顎骨(インデックス化のために歯および弓を用いる)に対して下顎骨(インデックス化のために歯および弓を用いる)をどこにインデックス化するべきかを特定してもよい。歯科医療従事者は、下顎骨を、CR位置から突出方向に沿って十分前に出してもよく、それによって、下顎骨8-1の顆頭8RおよびLは、各TMJ 9RおよびL内において、右円板および左円板を再捕捉する。治療のための下顎骨の位置を特定する他の方法としては、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、および他のデータ収集方法が挙げられる。
【0217】
場合によっては、円板の損傷(例えば、前方への変位)は、各CR位置から前方に等距離である場合があり、その結果、円板の再捕捉には、各TMJ 9RおよびL内において、各顆頭8RおよびLのCR位置から前方に同じ突出距離が必要とされる場合がある。さらには、円板の損傷(例えば、前方への変位)は、各CR位置から前方に等距離ではない場合があり、その結果、右TMJのCR位置から突出方向にある右顆頭を、左TMJのCRから突出方向にある左顆頭と比較した場合に、円板の再捕捉には異なる突出距離が必要である場合がある。
【0218】
各円板を再捕捉するための、2つの顆頭の突出値(例えば、距離)が等しい場合、下顎骨が横方向に運動しない場合があり、下顎骨の正中矢状面は、上顎骨の正中矢状面と一致するであろう。
【0219】
各円板を再捕捉するための、2つの顆頭の左右の突出値(例えば、距離)が異なる場合、下顎骨の安静位置(規定された極限閉口位置)の横方向における値は、上顎骨の正中矢状面の右寄りまたは左寄りのいずれかになり得る。
【0220】
左顆頭8Lが、関係する円板を再捕捉するために、突出方向に沿って右顆頭8Rよりも相対的に遠くへ移動しなければならない場合は、下顎骨の正中矢状面の横方向揺動位置は、顆頭それぞれが円板を両側で再捕捉するために移動した相対差動距離に比例して、上顎骨26の正中矢状面の右側に位置してもよい。
図11Cは、上顎骨に対して右側方にある下顎骨のインデックス化の例を示す。
【0221】
右顆頭8Rが、関係する円板を再捕捉するために、突出方向に沿って左顆頭8Lよりも相対的に遠くへ移動しなければならない場合は、下顎骨の正中矢状面の横方向揺動位置は、顆頭それぞれが円板を両側で再捕捉するために移動した相対差動距離に比例して、上顎骨26の正中矢状面の左側に位置してもよい。
図11Bは、上顎骨に対して左側方にある下顎骨のインデックス化の例を示す。
【0222】
上下方向の値は、必要であれば閾距離を含む、両側で円板を再捕捉するように既に確定されている下顎骨の突出方向および横方向の位置に対する歯および弓の第1接触(例えば、最も悪い干渉の接触位置)であってもよい。
【0223】
歯科医療従事者は、その安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を、上述した従来の方法を用いて、または仮想的に、記録することができる。ある種のTMJの損傷は、MRI、超音波検査、および/または
図14の顎運動解析装置などの他の撮像法を用いて記録されてもよい。あるいは、安静位置(規定された極限閉口位置)は、指定安静位置における患者の歯のインデックス化モデルを作成し、その後、スキャンするか、院内スキャナまたはその他のデータ取得装置を用いてその位置を直接記録する従来の方法と組み合わせた、他の撮像法を用いて記録されてもよい。
【0224】
歯科医療従事者が「両側前方再配置」誘導パッケージ4-TBを用いることを意図する睡眠時無呼吸の場合、歯科医療従事者は、手による下顎骨の操作、患者との直接的な対話、および/または臨床判断によって、安静時(規定された極限閉口位置;睡眠時無呼吸の治療のため)に、下顎骨を前方(突出方向)に再配置して気道を効果的に開放するために、突出方向、横方向、および上下方向において上顎骨(インデックス化のために歯および弓を用いる)に対して下顎骨をどこにインデックス化するべきかを特定してもよい。歯科医療従事者は、下顎骨の最良の睡眠時無呼吸治療位置を特定するために、ジョージ・ゲージ、ソーントン・アジャスタブル・ポジショナー、もしくはプロ・ゲージ、またはその他のゲージ、あるいは、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、およびその他のデータ収集方法を含む他の道具を用いてもよい。誘導パッケージ睡眠時無呼吸用器具の場合、
図11Aに示す「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージを用いることを歯科医療従事者が意図する際は、歯科医療従事者は、平均のTMJデータを用いてもよく、従来の方法を用いて、ならびに/またはアキシオグラフィおよび/または
図14に示す顎運動解析装置を用いて、特定の患者のTMJの記録を収集してもよい。これらの記録としては、顔弓移動、顆頭間距離、顆頭勾配、ベネット角および限界境界(動きの範囲)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0225】
歯科医療従事者は、患者の可能な突出最大の約50~70%まで、CR位置から突出方向に沿って対称的に下顎骨を前に出してもよく、それによって、下顎骨、ひいては舌が、十分前方に再配置されて、気道が効果的に開放される。
【0226】
上下方向の値は、効果的に気道を開放するように既に確定されている下顎骨の突出方向および横方向の位置に対する歯および弓の第1接触(例えば、最も悪い干渉の接触位置)であってもよく、必要であれば閾距離を含み得る。
【0227】
歯科医療従事者は、その安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を、その位置における患者の歯のモデルを作成する従来の方法を用いて記録し、設置したモデルをスキャンすることによってデジタルに変換することができ、または、院内スキャナまたはその他のデータ取得装置を用いてその安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の関係を直接記録することができる。
【0228】
術者が「非対称突出」TMD用誘導パッケージ4-TU(例えば、
図12Aおよび
図12Bに示す)を用いることを意図する片側前方円板変位の場合、歯科医療従事者は、手による下顎骨の操作、患者との直接的な対話、および臨床判断によって、安静時に、損傷したTMJの円板を、(もう一方のTMJの)もう一方の顆頭を、回転するが比較的正常である位置に残しつつ、再捕捉するために、突出方向、横方向、および上下方向において(3次元的に)下顎骨をどこに位置するべきかを特定してもよい。治療のための下顎骨の位置を特定する他の方法としては、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、および他のデータ収集方法が挙げられる。
【0229】
損傷した円板(例えば、前方に変位した円板)が左TMJ内にある場合は、歯科医療従事者は、その円板を再捕捉するために、並行して下顎骨を右に向けて横方向に揺動させて、右TMJの右顆頭を、その顆頭も回転させる、CRまたは安静位置に留まるようにしつつ、左顆頭をCR位置から前に出すのに十分なほど下顎骨を前方に出してもよい。下顎骨の正中矢状面を上顎骨26の正中矢状面の右側に配置する、下顎骨の最終的な右側方揺動位置と、右顆頭の回転との両方が、
図11Cに示すように、円板を再捕捉するために左顆頭が移動した距離に比例し得る。
【0230】
損傷した円板(例えば、前方に変位した円板)が右TMJ9R内にある場合は、歯科医療従事者は、その円板を再捕捉するために、並行して下顎骨を左に向けて横方向に揺動させて、左TMJ9Lの左顆頭8Lを、その顆頭も回転させる、CRまたは安静位置に留まるようにしつつ、右顆頭をCR位置から前に出すのに十分なほど下顎骨を前方に出してもよい。下顎骨の正中矢状面を上顎骨26の正中矢状面の左側に配置する、下顎骨8-1の最終的な左側方揺動位置と、左顆頭8Lの回転との両方が、
図11Bに示すように、円板を再捕捉するために右顆頭8Rが移動した距離に比例し得る。
【0231】
上下方向の値は、既に確定されている閾距離を含み得、損傷したTMJ内の円板が再捕捉され、損傷していないTMJ内のもう一方の顆頭が、回転するが比較的正常な位置に残る、下顎骨の突出方向および横方向の位置に対する歯および弓の第1接触(例えば、最も悪い干渉の接触位置)であってもよい。
【0232】
歯科医療従事者は、その安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を、その位置における患者の歯のモデルを作成する従来の方法を用いて記録し、設置したモデルをスキャンすることによってデジタルに変換することができ、または、院内スキャナを用いてその安静位置における上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の関係を直接記録することができる。
【0233】
歯科医療従事者は、3D X線撮影を口腔内スキャニングと組み合わせて用いてもよい。3D X線撮影は、口腔内スキャニングデータと関連させてもよく、そのデータと共にインデックス化されてもよい。歯科医療従事者は、3D X線撮影および/または
図14の顎運動解析装置によって、安静時に、損傷したTMJの円板を、(もう一方のTMJの)もう一方の顆頭を、回転するが比較的正常である位置に残しつつ、再捕捉するために、突出方向、横方向、および上下方向において(3次元的に)上顎骨に対して下顎骨をどこに位置するべきか、ということを含む、患者の損傷プロファイルを解明してもよい。歯科医療従事者は、関連する口腔内スキャニングデータを用いて、安静位置における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を記録してもよい。ある種のTMJの損傷は、MRIおよび超音波検査などの他の撮像法を用いて記録されてもよい。あるいは、安静位置(規定された極限閉口位置)は、指定安静位置(規定された極限閉口位置)における患者の歯のインデックス化モデルを作成し、その後、スキャンするか、院内スキャナまたはその他のデータ取得装置を用いてその位置を直接記録する従来の方法と組み合わせた、他の撮像法を用いて記録されてもよい。
【0234】
歯科医療従事者が、片側のTMJ、または咀嚼筋、その靱帯、もしくはその腱への損傷を含む他の構造のうちの1つまたはその組み合わせの損傷を保護または治療しようと望む、顎口腔系のその他様々な損傷の場合、あるいは、歯科医療従事者が、従来とは異なる経路で非対称的または対称的に下顎骨の前端の運動および限定を制御する能力を必要とし、「非対称」TMD用誘導パッケージを用いることを意図する、他の臨床的問題の場合、歯科医療従事者は、手による下顎骨の操作、患者との直接的な対話、および臨床判断によって、安静時に、TMJ、または咀嚼筋、その靱帯、もしくはその腱、またはその他の様々な臨床的問題、または臨床的問題の組み合わせを治療または保護するために、突出方向、横方向、および上下方向において(3次元的に)下顎骨が位置するべきところである、患者の下顎骨、TMJ、またはその他の下顎骨の顎口腔系の不調の適切な治療処置のための最良の安静位置(規定された極限閉口位置)を特定してもよい。治療のための下顎骨の位置を特定する他の方法としては、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、および他のデータ収集方法が挙げられる。
【0235】
この例では、
図13Aに示すように、損傷した構造は、下顎骨の右側の損傷した靱帯である。歯科医療従事者は、損傷した靱帯を保護するために、並行して下顎骨を左に向けて横方向に揺動させて、左TMJ9Lの左顆頭8Lを、その顆頭も回転させる、CR位置に留まるようにしつつ、右顆頭8RをCR位置から前に出すのに十分なほど下顎骨を前方に出してもよい。下顎骨の正中矢状面を上顎骨26の正中矢状面の左側に配置する(
図11Bに示すように)、下顎骨8-1の最終的な左側方揺動位置と、左顆頭8Lの回転との両方が、損傷した靱帯を保護するために右顆頭8Rが移動した距離に比例し得る。
【0236】
「非対称」TMD用誘導パッケージ器具を用いる他の例示的な状況は、顎口腔系の左右どちらかの損傷した構造を治療することであってもよい。この例では、損傷した靱帯は、下顎骨の正中矢状面の側方にあってもよい。歯科医療従事者は、損傷した靱帯を保護する位置において、下顎骨を突出方向に配置してもよい。これは、下顎骨の正中矢状面が、上顎骨の正中矢状面の側方となる指標位置であってもよい。下顎骨の正中矢状面を上顎骨26の正中矢状面の右側または左側に配置する(
図11Bおよび
図11Cに示すように)、下顎骨8-1の最終的な側方揺動位置は、損傷した靱帯を保護するために各顆頭が移動した相対距離に比例し得る。上下方向の値は、損傷した靱帯を保護するように既に確定されている下顎骨の突出方向および横方向の位置に対する歯および弓の、閾距離を含み得る第1接触(例えば、最も悪い干渉の接触位置)であってもよい。損傷した構造を治療するための下顎骨の位置を特定する他の方法としては、X線撮影、3D X線撮影、超音波検査、MRI、JMA、および他のデータ収集方法が挙げられる。
【0237】
歯科医療従事者は、その安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎骨に対する下顎骨の相対関係を、その位置における患者の歯のモデルを作成する従来の方法を用いて記録し、設置したモデルをスキャンすることによってデジタルに変換することができ、または、院内スキャナまたはその他のデータ取得装置を用いてその安静位置(規定された極限閉口位置)における上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓の関係を直接記録することができる。あるいは、安静位置(規定された極限閉口位置)を記録するために、関連する口腔内スキャニングを備える3D X線撮影を用いてもよい。3D X線撮影は、口腔内スキャニングデータと関連させてもよく、そのデータと共にインデックス化されてもよい。歯科医療従事者は、3D X線撮影を用いて、損傷した下顎構造を保護するためには、安静時に、下顎骨は、突出方向、横方向、および上下方向(3次元的に)においてどこにあるべきかを含む患者の損傷プロファイルを解明してもよい。歯科医療従事者は、関連する口腔内スキャニングデータを用いて、その安静位置(規定された極限閉口位置)における下顎骨に対する上顎骨の相対関係を記録してもよい。ある種のTMJの損傷および顎口腔系の損傷は、MRI、超音波検査、および/または顎運動解析装置などの他の撮像法を用いて記録されてもよい。あるいは、安静位置(規定された極限閉口位置)は、指定安静位置(規定された極限閉口位置)における患者の歯のインデックス化モデルを作成し、その後、スキャンするか、院内スキャナを用いてその位置を直接記録する従来の方法と組み合わせた、他の撮像法を用いて記録されてもよい。
【0238】
患者の仮想3D上顎歯、仮想3D上顎骨弓、仮想3D下顎歯、および仮想3D下顎骨弓を、適切な咬合高径データで、指標位置(CR)または安静位置(例示的な所定の指標位置;規定された極限閉口位置)にセットすることは、術者が、コンピュータにすでに保存されていてもよい、仮想咬合器-CADプログラムにデータを選択入力することを含んでいてもよい。患者の仮想モデル25を伴う仮想咬合器24を可視化するスクリーンを設定するために、患者の上顎歯、上顎骨弓、下顎歯、および下顎骨弓のデジタルモデルを仮想咬合器24に仮想的に配置してもよい。
【0239】
TMJ/顆頭の記録として、患者から収集した記録、または平均測定を用いた記録が、仮想咬合器-CADプログラムに設定されてもよい。TMDを患う患者の場合、追加的なTMJのデータが、その患者の損傷プロファイルまたは不調プロファイルに関して仮想咬合器24に配置されてもよい。この損傷プロファイルデータは、臨床試験、X線撮影の情報、MRI、JMA、または超音波検査で収集されてもよい。この追加的な情報は、TMJの運動パラメータを改変するために追加することができる。
【0240】
エンベロープ領域(3D領域)の境界を特定する(例えば、上顎保持片27および下顎保持片28を、所定の厚さ(例えば、1mm)で、上顎骨弓22および下顎骨弓20の両方に適用する)。保持片、誘導パッケージ、および誘導パッケージシステムの他のすべての機能(誘導具)のための空間を含む広範囲の3D領域として、3D空間を定義してもよいし、誘導パッケージのみを操作するための限定3D領域(例えば、保持片の間)として、3D空間を定義してもよい。
図6、
図7、および
図8に示すように、仮想保持片10は、患者の不正咬合の種類に基づいて、上顎骨弓22および下顎骨弓20に対して別々に適用される。重度の不正咬合がない一級不正咬合患者の場合、保持片10は、
図6に示すように、上顎骨弓22および下顎骨弓20に対して適用され得る。
【0241】
図15は、ステップI-aおよびbで収集した一級咬合の患者から得た入力データに基づいて、患者の歯および弓の仮想モデル25を設定し、仮想保持片をその仮想モデルに適用した際の、仮想咬合器/CADシステム24の例示的なコンピュータスクリーンを示す。仮想保持片27および28が仮想咬合器24において適用される場合、本方法は、外側偏位を含む顎の運動を、下顎骨のすべての限界境界(運動の全範囲)まで動かして測定することを、さらに含んでいてもよい。
【0242】
本方法は、運動パラメータを定義することと、運動の制限を特定するために衝突(例えば、干渉)の検出を行うこととを、さらに含んでいてもよい。この運動の制限、接触点、および深度を特定してもよい。TMD用誘導パッケージ器具の場合、追加的なTMJのデータによって、運動パラメータ、運動の制限、接触点、および深度が全体的に変更されてもよい。
【0243】
保持片に対して誘導パッケージを配置するための空間内の点(仮想点)を特定することは、自動化されていてもよいし、術者が決定するものであってもよい。誘導パッケージの配置および配向が、さらに自動化されると、その後、誘導パッケージには、よりふさわしい調整が必要となる。あるいは、誘導パッケージを改変せずに用いるために、または改変を最小限にするために、3次元的に最適に仮想点を配置してもよい(
図24~
図27)。仮想点(
図24~
図27)は、誘導パッケージの配置のための1点を表してもよいし、誘導パッケージの配置および配向の両方のためのベクトルまたは3つ以上の点を表してもよい。
【0244】
一実施形態では、咬合面(上顎歯の咬合表面を通る平面)の矢状方向中央26に沿った上顎保持片の最前部の前方に、特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて仮想点を配置してもよい。いくつかの実施形態では、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間に空間内の点があってもよい。いくつかの実施形態では、誘導パッケージを改変せずに用いるために、または改変を最小限にするために、仮想点を3次元的に最適に配置してもよい。
図16は、上顎骨咬合面の矢状方向中央26上における、例示的な仮想誘導パッケージ4の相対位置を示す。
【0245】
図17は、
図16の相対位置に係る保持片27および28を基準とした例示的な誘導パッケージ4を示す。歯科医療従事者は、誘導パッケージ4の点2(
図2A、
図4、
図16、および
図17を参照)を仮想的に配置してもよい。空間内のこの点における仮想的に配置された点2は、上顎保持片の最前部の前方に、特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置される。点2は、下顎誘導要素1-2の突出部7が、安静時に、下顎骨8-1のTMJ 9Rおよび9Lの顆頭8Rおよび8LがCR位置にある(例えば、顎が仮想CRにある)際の上顎誘導要素1-1内にあって、上下方向に展開して保持片間の空間の閾間隙(場合によっては、1mm以上)を提供する(それ以外の場合は、保持片は接触する)場所を表し得る。
【0246】
他の実施形態では、例えば、「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージ4-TB(例えば、
図11Aに示す)を用いる睡眠時無呼吸用誘導パッケージ器具の構成における例として、歯科医療従事者は、上顎保持片の最前部から特定の距離(いくつかの例では、6mm)を空けて配置される空間の点に、点2"を仮想的に配置してもよい。効果的に気道を開放するため、および保持片間の空間の閾間隙(いくつかの例では、1mm以上)を提供する(それ以外の場合は、保持片は接触する)ために、突出方向、横方向、および上下方向において、点2"、7"の位置(例えば、安静位置;規定された極限閉口位置)は、下顎骨の位置と一致していてもよい。
【0247】
「犬歯誘導」用誘導パッケージ4-C(例えば、
図9に示す)歯ぎしり用器具などの、他の歯ぎしり用器具の場合、仮想的に配置された点2aおよび2bは、誘導パッケージ4-Cの大きさに応じて、上顎保持片の最前部の前方に特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置された点から、両側において等距離であってもよい。いくつかの実施形態では、点2aおよび2bは、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間にあってもよい。点2aおよび2bは、下顎誘導要素1-2-Cの突出部7aおよび7bが、安静時に、下顎骨8-1のTMJ 9Rおよび9Lの顆頭8Rおよび8LがCR位置にある(例えば、顎が仮想CRにある)際に位置する上顎誘導要素1-1-C内の場所であって、上下方向に展開して保持片間の空間の閾間隙(いくつかの例では、1mm以上)を提供する(それ以外の場合は、保持片は接触する)場所を表し得る。
【0248】
「グループ機能」誘導パッケージ4G(例えば、
図10に示す)歯ぎしり用器具などの、また別の歯ぎしり用器具の場合、仮想的に配置された点2'は、上顎保持片の最前部の前方から特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置された点に配置される。いくつかの実施形態では、点2'は、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間にあってもよい。点2'は、下顎誘導要素1-2-Gの7'が、安静時に、下顎骨8-1のTMJ 9Rおよび9Lの顆頭8Rおよび8LがCR位置にある(例えば、顎が仮想CRにある)際の上顎誘導要素1-1-G内の場所であって、上下方向に展開して保持片間の空間の閾間隙(いくつかの例では、1mm以上)を提供する(それ以外の場合は、保持片は接触する)場所を表し得る。
【0249】
他の実施形態では、例えば、「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージ4-TB(例えば、
図11Aに示す)器具などの誘導パッケージ器具の構成における例として、仮想的に配置された点2"は、上顎保持片の最前部の前方の空間に特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置された点に配置される。いくつかの実施形態では、点2"は、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間にあってもよい。点2"、7"の位置(例えば、安静位置;規定された極限閉口位置)は、CR以外の、TMJ 9Rおよび9L内における顆頭8Rおよび8Lの位置と一致していてもよく、TMJ 9Rおよび9Lの両方の円板を再捕捉するため、および保持片間に約1mm以上の空間を提供する(それ以外の場合は、保持片は接触する)ために、突出方向、横方向、および上下方向に展開されてもよい。
【0250】
「非対称突出」TMD用誘導パッケージ4-TU(例えば、
図12Aに示す)器具の構成の場合、仮想的に配置された点2'aおよび2'bは、誘導パッケージ4-TUの大きさに応じて、上顎保持片の最前部の前方に特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置された点から、ある距離を空けて、両側において非対称である。いくつかの実施形態では、点2'aおよび2'bは、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間にあってもよい。点2'aおよび2'bの位置(例えば、安静位置)は、TMJ 9Rおよび9Lの顆頭8Rおよび8LのCR以外のいくつかの点と一致していてもよく、損傷したTMJは円板を再捕捉し、もう一方のTMJは、回転状態ではあるが、比較的正常な状態となるように、突出方向、横方向、および上下方向に、非対称に展開されてもよい。
【0251】
「非対称」誘導パッケージ4-AT(例えば、
図13Aおよび
図13Bに示す)器具の構成の場合、仮想的に配置された点2"'は、誘導パッケージ4-ATの大きさ、形状、および方向に応じて、上顎保持片の最前部の前方に特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置された点から、ある距離を空けて、横方向に沿って右側または左側にある。いくつかの実施形態では、点2"'は、患者の顎口腔系の大きさおよび患者の下顎骨の動きの範囲に応じて、上顎保持片の最前部の前方の約1mm~約10mmの間にあってもよい。点2"'の位置(例えば、安静位置;規定された極限閉口位置)は、特定の患者の下顎骨、TMJ、またはその他の下顎骨の顎口腔系の不調の治療処置のために、歯科医療従事者によって決定されてもよい。
【0252】
仮想誘導パッケージの一点、または複数の点2、2'、2"、2'、2a、2b、2'a、および2'bを配置するためのこの参照点(仮想点)は、不正咬合、安静時の咬合高径を考慮した結果、および咀嚼筋に対する機械的優位性を考慮した結果などの複数の変数に基づいて、歯科医療従事者が選択したもの(
図24~
図27)のいずれかにすることができる。
【0253】
重度の二級不正咬合患者の場合、仮想誘導パッケージのこの一点または複数の点2、2'、2"、2'"、2a、2b、2'a、および2'bは、より後方に(例えば、
図7に示すように)配置することができる。
【0254】
重度の三級不正咬合患者の場合、仮想誘導パッケージのこの一点または複数の点2、2'、2"、2'"、2a、2b、2'a、および2'bは、さらに前方に(例えば、
図8に示すように)配置することができる。
【0255】
歯科医療従事者は、
図1、
図9、
図10、
図11A、
図12A、
図12B、
図13A、および
図13Bに示すように、点2、2'、2"、2'"、または2aおよび2b、または2'aおよび2'b、ならびに、さらに配向している下顎要素1-2、1-2-C、1-2-G、1-2-TB、1-2-TU、1-2-ATの周囲で、この点において、任意のデザインの誘導パッケージを仮想的に構築することができる。
図2A~
図2C、9、10、11、12A、12B、13A、および13Bに示すように、横方向誘導具5、突出誘導具6、および特別突出誘導具6aを配置することを含むように、誘導具の大きさ、形状、深度、斜度、およびスタイルのパラメータを、すべて制御することができる。突出部の数、ならびに突出部の大きさおよび形状に関して、下顎要素を改変してもよい。歯科医療従事者は、保持片および/または誘導パッケージ4の全体的な大きさを定義するために、下顎骨の限界境界(運動範囲)を用いてもよい。
図1に示す誘導パッケージの深度32は、制御可能である。歯科医療従事者は、
図1に示す誘導具の斜度33を決定することができる。場合によっては、例えば、TMD用誘導パッケージの例として、誘導具が非対称であってもよいし、特別突出誘導具6aが含まれていてもよいし(例えば、
図11A、
図12A、および
図12Bに示す)、動きの範囲も非対称的に規定されてもよい(例えば、
図12A、
図12B、
図13A、および
図13Bに示す)。歯科医療従事者は、使用可能な多様な3D経路のうちから選択または設計される経路を通って、選択された目的地へと患者の下顎骨を誘導するのに利用可能な多様な3Dパターニングを手に入れ得る。
【0256】
あるいは、歯科医療従事者は、大きさおよび形状が異なるストック仮想誘導パッケージのデザインのライブラリから、誘導パッケージを選択することができる。他の実施形態では、歯科医療従事者は、仮想ライブラリからストック仮想誘導パッケージを選択し、改変することができる。
【0257】
歯科医療従事者は、仮想ライブラリから適切なストック仮想誘導パッケージを選択して、改変することなく用いることができる。例として、歯ぎしり用誘導パッケージ器具に対する最も一般的な応用は、対照的にすべての干渉(例えば、衝突や運動の制限など)を回避するために前方への誘導を行い、咀嚼筋に対する機械的な優位性を提供し、安静時に、CR位置において、咬合高径を好ましく最小化できるくらい十分に大きいストック誘導パッケージを選択することである。
【0258】
一旦、誘導パッケージをライブラリからモデル化または選択し、かつ/または改変すると、歯科医療従事者の目的を立証するために、仮想誘導パッケージが行う前方への誘導の、仮想咬合器における仮想機能シミュレーションを行い得る。TMDの治療には、多くの選択肢を利用可能である。TMD用誘導パッケージ器具の場合、目的は、特定の患者の特定の損傷プロファイルに対処するための特別な突出方向、横方向、および上下方向の誘導を含むことができる。「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージ4-TB器具の場合、その目的は、患者が顎を閉じる際に、安静時に咬合高径が最小となる位置であって、その位置からのすべての偏位によって、全ての干渉を回避するように下顎骨が誘導され、また、特定の患者の損傷プロファイルに治療的に対処することを意味する特定の3D経路で下顎骨が誘導される、位置から、両円板を再捕捉する安静位置2'および7'まで、下顎骨を導くように、特別な突出誘導具を設けることである。
【0259】
図11Aに示す「両側前方再配置」TMD用誘導パッケージ4TB器具を用いる睡眠時無呼吸の治療の場合、その目的は、患者が顎を閉じる際に、安静時に咬合高径が最小となる位置であって、その位置からのすべての偏位によって、全ての干渉を回避するように下顎骨が誘導され、また、特定の患者の睡眠時無呼吸に治療的に対処することを意味する特定の3D経路で下顎骨が誘導される、位置から、睡眠時無呼吸を治療するために効果的に気道を開放する安静位置2'および7'まで、下顎骨を導くように、特別な突出誘導具を設けることである。
【0260】
「非対称突出」TMD用誘導パッケージ4-TU(
図12Aおよび
図12B)器具の場合、その目的は、患者が顎を閉じる際に、安静時に咬合高径が最小となる位置であって、その位置からのすべての偏位によって、全ての干渉を回避するように下顎骨が誘導され、また、特定の患者の損傷プロファイルに治療的に対処することを意味する特定の3D経路で下顎骨が誘導される、位置から、損傷したTMJの円板を再捕捉し、もう一方の顆頭をいくらかは回転するが比較的正常な位置のままにする安静位置2'aおよび2'bまで、下顎骨を導くように、特別な突出誘導具を設けることである。「非対称」TMD用誘導パッケージ4-AT器具の場合、その目的は、安静時に咬合高径が最小となる位置であって、その位置からのすべての偏位によって、全ての干渉を回避するように下顎骨が誘導され、また、特定の患者の損傷プロファイルに治療的に対処することを意味する特定の3D経路で下顎骨が誘導される、位置から、安静位置2"'および7"'に向けての、特定の患者の下顎骨、TMJ、またはその他の下顎骨の顎口腔系の不調の治療処置のために、歯科医療従事者によって決定されてもよい。
【0261】
しかしながら、最も一般的には、歯科医療従事者は、筋肉の痙性を減少するように全ての後方の干渉、ひいては有害なエングラムを排除し、歯およびTMJを保護し、咀嚼筋に対する機械的な優位性向上し、中心咬合安静位置2、2'、2a、2b、7、7'、7a、および7bにおける咬合高径を最小化し、その位置からの理想的な3D前方誘導を行って、優れた前方誘導歯ぎしり用器具を作成するという目的を持って、誘導パッケージ歯ぎしり用器具を作成してもよい。
【0262】
本方法は、保持片10と各仮想誘導パッケージ要素との間に、1つ以上の棚状部/突出部をブリッジとして仮想的に適用することを、場合によっては含んでいてもよく、これによって、誘導パッケージ器具13の上顎部および下顎部の両方に対して、誘導パッケージの機能の限度内に留まるよう注意が払われる。
図6~
図8の例における誘導パッケージ器具13における、患者の安静時(規定された極限閉口位置)の咬合高径16は、誘導パッケージ4の適切な要素を受け入れるその例示的な現在の実施形態の保持片10の前額表面上に、仮想棚状部/突出部の相対位置を固定することによって、不正咬合の種類に関係なく最小化されたままとすることができる。
【0263】
誘導パッケージを仮想保持片および棚状部/突出部と組み合わせることによって、歯の位置に関係なく、誘導が可能となり、これは、ひいては、歯科医療従事者が、誘導を最大限に活用し、咀嚼筋に対する機械的な優位性を最大化し、安静時の咬合高径を最小化する位置に、誘導パッケージを配置することを可能にする(
図5)。
【0264】
図7および
図8に示すように、棚状部/突出部は、二級不正咬合患者用の誘導パッケージ4の下顎誘導要素1-2を受け入れ得、棚状部/突出部は、三級不正咬合患者用の誘導パッケージ4の上顎誘導要素を受け入れる。睡眠時無呼吸用誘導パッケージ器具の構成では、歯科医療従事者は、棚状部/突出部を選択する際に、三級不正咬合の観点を前提としてもよい。何故なら、それが最終的な治療目的だからである。保持片は、誘導パッケージのすべての誘導・停止の機能、または本開示の誘導パッケージによって生成されるすべての誘導・停止の機能のための取付点および/または基盤として機能する、形状および大きさが様々な複数の突出部または棚状部を有していてもよい。不正咬合ではない一級の場合は、
図6に示すように、保持片10の棚状部/突出部は、上顎骨弓22および下顎骨弓20の両方ための誘導パッケージの各要素に対して、ブリッジとして適用され得る。
【0265】
最終的な解決策(例えば、器具)を設計するために、上記のステップで収集されたこのデータおよび情報を用いてもよい。最終的な解決策のデザインは、例えば、CAM(コンピュータ支援製造)もしくはCNC(コンピュータ数値制御)の技術および設備、オフィス3Dプリンタ、または他の製造システムもしくは印刷システムを有する製造業者へ送信されてもよい。いくつかの実施形態では、開咬、過蓋咬合、交差咬合、重度の二級不正咬合、および重度の三級不正咬合(
図6~
図8を参照)などの不正咬合の種類に関係なく、特定の患者用に個別に調整され、上顎部および下顎部からなり、着け心地が良い、2つの部品からなるCAD-CAM誘導パッケージ器具、2つの部品からなるCAD-CAM TMD用誘導パッケージ器具、または2つの部品からなるCAD-CAM睡眠時無呼吸用誘導パッケージ器具を、自動で作成または再現することができる。
【0266】
ストック誘導パッケージ、ストック誘導パッケージの改変物、または特異的に設計されたストック誘導パッケージであり得る誘導パッケージのスタイル、形状、斜度、深度、および大きさは、特定の患者が呈する問題または問題の組み合わせ、および咬合または不正咬合に依存する。
【0267】
図18は、重度の不正咬合がない、一級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ器具またはCAD-CAM TMD用誘導パッケージ器具の例示的な完成品を口の中から見た図を示す。この例では、CAD-CAM誘導パッケージ器具の上顎保持片27および下顎保持片28の両方が、保持片10に含まれ得る。誘導パッケージの保持片および誘導要素1-1または1-2を含む、上顎・下顎誘導パッケージ器具部分セットは、棚状部/突出部によって、継ぎ目なく接続されていてもよい。
【0268】
図19は、重度の二級不正咬合患者用の、CAD-CAM誘導パッケージ器具またはCAD-CAM TMD用誘導パッケージ器具の例示的な完成品を口の中から見た図を示す。重度の二級不正咬合の場合、下顎保持片28は、下顎誘導要素1-2を受け入れるための棚状部/突出部を有する保持片10であってもよく、上顎保持片は、基盤としての棚状部/突出部を提供する保持片10とすることができる。
【0269】
図20は、三級不正咬合患者用のCAD-CAM誘導パッケージ器具、CAD-CAM TMD用誘導パッケージ器具、またはCAD-CAM睡眠時無呼吸用誘導パッケージ器具の例示的な完成品を口の中から見た図を示す。三級不正咬合または睡眠時無呼吸の治療の場合、上顎保持片27は、上顎誘導要素1-1を受け入れるための棚状部/突出部を有する保持片10であってもよく、下顎保持片は、基盤としての棚状部/突出部を提供する保持片10とすることができる。
【0270】
安静時にCRにおいて、咬合高径16のペナルティを最小化するように口内に配置される、または歯科医療従事者が選択したいずれかの位置に配置された際、個別に調整した誘導パッケージ器具は、個別に調整して合わせた薄い保持片と、取り付けられた誘導パッケージ4、4-C、4-G、4-TB、4-TU、または4-ATとからなっていてもよい。器具13の誘導パッケージ部分は、たいていの場合、不正咬合に、ひいては歯および唇に対する誘導パッケージの位置に応じて、患者の歯の前方の唇の間にある滑らかなコンパートメント様のパッケージに配置されてもよい。患者の口が閉じると、誘導パッケージ器具の上顎要素は、
図2A、
図4、
図9、
図10、
図11A、
図12A、
図12B、
図13Aおよび
図13Bに示す様に、下顎骨を点2、2'、2"、2"'または複数の点2aおよび2b、もしくは2'aおよび2'b、ならびに領域3、3'、3"、3"へと誘導する下顎要素と接触してもよい。この指標位置は、最も一般的には、CR(例えば、
図4の点2、
図9の点2aおよび2b、
図10の点2')および長尺中心領域(例えば、
図4、
図9、および
図10の領域3および3')であるが、TMD用誘導パッケージ処置器具、顎口腔系治療用TMD用誘導パッケージ器具、または睡眠時無呼吸用誘導パッケージ器具の場合は、歯科医療従事者が規定するCR以外の位置(
図11Aの点2"および
図13Aおよび
図13Bの点2"'、または
図12Aおよび
図12Bの点2'aおよび2'b)とすることができる。誘導パッケージ4の上顎誘導要素1-1、1-1-C、1-1-G、1-1-TB、1-1-TU、1-1-ATは、下顎要素1-2、1-2-C、1-2-G、1-2-TB、1-2-TU、1-2-ATに適合し得る。誘導パッケージ4の上顎要素の下部外周全体は、誘導パッケージの下顎要素およびそのハウジングより幅が広くてもよい。
図2Aの外周1-4は、指定された厚さ(いくつかの例では、約2mm~約6mm)であってもよく、患者の口が閉じる際に、唇が挟まれないように、バンパー様に形成されていてもよい。他の実施形態では、外周1-4は、約1mm~約10mmの厚さであってもよい。
【0271】
最終的に、異なる不正咬合患者様の様々な誘導パッケージ4,4S、4-C、4-G、4-TB、4-TU、および4-AT(例えば、
図1、
図9、
図10、
図11A、
図12A、
図12B、
図13A、および
図13Bに示す)器具がCAD-CAM法によって製造される場合、保持片27、28、および各誘導パッケージの要素1-1、1-1-C、1-1-G、1-1-TB、1-1-TU、1-1-AT、または1-2、1-2-C、1-2-G、1-2-TB、1-2-TU、1-2-ATは、すべて、継ぎ目の線なく一体に作成されてもよい。
【0272】
図21は、TMDを患う患者を処置するための特別な特性を有し得るCAD-CAM誘導パッケージ器具29、または、睡眠時無呼吸を患っていてもいなくてもよい、歯ぎしりを患う、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の器具の例示的な完成品を示す。
図6と比較すると、作成はより容易であり、再現するのはさらに容易である。
【0273】
同様に、
図22は、TMDを患う患者、歯ぎしりを患う二級不正咬合患者、または睡眠時無呼吸を患う二級不正咬合患者を処置するための特別な特性を有し得るCAD-CAM誘導パッケージ器具30の例示的な完成品を示す。
図23は、TMDを患う患者、歯ぎしりを患う三級不正咬合患者、または睡眠時無呼吸を患う患者を処置するための特別な特性を有し得る例示的なCAD-CAM誘導パッケージ器具31を示す。
【0274】
図24A~
図24Cは、誘導パッケージのための、かつ/または横断方向軸、矢状方向軸、および前額方向軸に沿って誘導パッケージが生成する、すべての誘導・停止の機能のための、取付点および/または基盤として機能するあらゆる形状および大きさの複数の突出部または棚状部を提供する、上顎保持片および下顎保持片のうちの1つ以上を基準とする仮想点の例示的な配置を示す。仮想点の配置は、自動で行われてもよいし、術者が決定してもよい。誘導パッケージの配置および配向が、さらに自動化されると、その後、誘導パッケージには、よりふさわしい調整が必要となる。あるいは、誘導パッケージを改変せずに用いるために、3次元的に最適に仮想点を配置してもよい(
図24A~
図27)。仮想点(
図24A~
図27)は、誘導パッケージの配置のための1点を表してもよいし、誘導パッケージの配置および配向の両方のための複数の点を表してもよい。
【0275】
図24Aでは、重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用に、保持片10を上顎骨弓22および下顎骨弓20に配置し得、ここで、上顎骨弓22は、下顎骨弓20を越えて前方に(少しではあるが)延在している。
図24Bでは、二級不正咬合患者用に、保持片10を、取付点としての棚状部/突出部を提供するために下顎骨弓20に配置し得、また、基盤としての棚状部/突出部を提供するために上顎骨弓22に配置し得る。
図24Cでは、三級不正咬合患者用または睡眠時無呼吸用器具用に、保持片10を、基盤としての棚状部/突出部を提供するために下顎骨弓20に配置し得、また、取付点としての棚状部/突出部を提供するために上顎骨弓22に配置し得る。
【0276】
弓20と22との間に配置されると、複数の潜在的仮想点40は、誘導パッケージの上顎誘導要素と下顎誘導要素との間の接触点を指定し得る。いくつかの実施形態では、誘導パッケージの誘導要素が接触した際に、仮想上顎骨弓22および仮想下顎骨弓20が所定の指標位置(規定された極限閉口位置)に配置されるように、誘導パッケージの誘導要素のうちの1つ以上を仮想点40に基づいて設定してもよい。いくつかの実施形態では、潜在的仮想点40は、1つ以上の内部仮想点42、縁部仮想点44、および前方仮想点46を含んでいてもよい。内部仮想点42は、安静時に理想的な咬合高径を提供しなくてもよく、咀嚼筋に対する機械的な優位性が最小であってもよく、口の他の機能と干渉してもよい。縁部仮想点44は、安静時に理想的な咬合高径を提供しなくてもよく、咀嚼筋に対する機械的な優位性が限定的であってもよく、口の他の機能と干渉してもよいししなくてもよい。前方仮想点46は、安静時に理想的な咬合高径を可能とする最適な配置を提供し、咀嚼筋に対する機械的な優位性が最大であり、口の他の機能との干渉が最小である。
【0277】
図25および
図26は、
図24Aに示す重度の不正咬合がない一級不正咬合患者用の例示的な保持片10の3D図を示す。
図25では、単一の仮想点(例えば、内部仮想点42、縁部仮想点44、または前方仮想点46のうちの1つ)が、保持片間の矢状方向軸の近くに(例えば、正中矢状面に沿って)配置され得る。あるいは、
図26に示すように、一対の仮想点(例えば、2つの内部仮想点42、2つの縁部仮想点44、または2つの前方仮想点46)が、保持片間の矢状方向軸の近くに(例えば、正中矢状面に沿って)配置され得る。一対の仮想点は、正中矢状面に対して、非対称的に配置されてもよい。仮想点は、正中矢状面に垂直な上下方向の平面の近くに配置されてもよい。いくつかの実施形態では、上下方向の平面は、咬合面の矢状方向中央に沿って、上顎保持片の最前部の前方に特定の距離(いくつかの例では、約6mm)を空けて配置されてもよい。示される仮想点は、1つの仮想点を表すものであってもよいし、配向も可能にし得る仮想点のグループを表すものであってもよい。場合によっては、単一の仮想点は、方向と位置とを(例えば、仮想ベクトルとして)示すものであってもよい。
【0278】
図27は、術者が、非改変仮想ストック誘導パッケージを用いること、またはストック誘導パッケージの個別の調整の必要性を抑えること、または誘導パッケージ解決策の複数の部分に取付点を指定すること、をより適切に可能にし得る、1つまたは複数の仮想点の、3つの軸すべて(例えば、矢状方向軸、上下方向軸、および横断方向軸)における複数の潜在的な配置を示す。換言すると、歯科医が、仮想点として3D仮想空間内の任意の点を選択できるようにすることで、方向、配列、および位置の範囲が最大化され、ストック誘導パッケージ(改変されていない)もしくは患者データを用いて縮尺を調整した誘導パッケージ、または誘導パッケージの一部を、特定の患者に適合させるために、用い得る。図示するように、仮想点48は、例えば、限定しない例として、潜在的仮想点位置48A~48MMなど、3D仮想空間内のいずれの場所に配置されてもよい。仮想点48A~48MMが示されているが、これらは単なる例示であって、仮想弓の内部または外部の様々な位置に仮想点を指定し得ることは、理解されるであろう。仮想点48を正中矢状面および咬合面の近くとしつつ、疾患、変形、損傷、治療を要する領域などを内包する3D領域のいずれの場所に配置してもよいということが期待される。さらには、損傷を連続的に治療および/または矯正するために、一連の誘導パッケージ器具を用いてもよく、試行錯誤しながら有形器具を大規模に個別調整することを必要とせずに、一連の誘導パッケージ器具を仮想的に設計および作成し得る。例示的な一実施形態では、一連の誘導パッケージ器具のうちの第1誘導パッケージ器具は、位置48Aの近くに仮想点を有していてもよく、一方で、一連の誘導パッケージ器具のうちのその後の誘導パッケージ器具は、正中矢状面および咬合面に近い例示的な「理想位置」の近くの位置48Fの近くに、仮想点を有していてもよい。他の実施形態では、上顎骨に対する下顎骨の、一連の異なる指標位置は、上顎骨に対する特定の指標位置から他の位置へと下顎骨を徐々に導くように計画される。上顎骨に対する下顎骨の治療のための重要な経時的運動のために、一連の器具を計画することができる。
【0279】
図28は、歯ぎしり、TMD、および睡眠時無呼吸のうちの1つ以上を患う患者用の、誘導パッケージ内蔵器具を準備するための例示的な方法50のフローチャートである。図示するように、方法50は、患者に関連する弓の3Dデータを含む患者データの取得52を含み得る。患者データを取得した後、例えば仮想咬合器において、患者データに基づき、1つ以上のプロセッサ上で1つ以上のデジタルモデルの生成54を行い得る。1つ以上のデジタルモデルは、仮想咬合器における仮想上顎骨弓および仮想下顎骨弓を含み得る。患者用の指標位置(規定された極限閉口位置)への仮想弓の配置58を行い得る。場合によっては、指標位置は、誘導機能および保持片のための空隙を含む。
【0280】
エンベロープ領域(3D領域)の特定62を行い得、これによって、その中で保持片および/または誘導パッケージを利用し得る空間が定義される。場合によっては、3D領域は、患者の下顎骨および上顎骨が第1接触位置にある場合、または下顎骨および上顎骨がさらに離間している場合に形成されるネガティブ空間として定義される空間であってもよい。場合によっては、エンベロープ領域(3D領域)は、配置された保持片の1つ以上の表面間に形成される空間として定義されてもよい。場合によっては、3D領域は、保持片、誘導パッケージ、および誘導パッケージシステムのその他の機能のための広範囲の3D空間または作業空間として定義されてもよい。場合によっては、境界3D空間が、仮想平面曲線によって定義されてもよい。いくつかの実施形態では、エンベロープ領域は、患者の組織または歯を含んでいてもよく、この場合、解決策を実行することは、手術またはインプラントを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エンベロープ領域が、特定の患者または特定の誘導パッケージのために予め定義されていてもよい。いくつかの実施形態では、システムが、患者データ(例えば、組織表面、TMJデータ)、咬合曲線、および解決策の種類のうちの1つ以上に基づいて、エンベロープ領域(3D領域)の境界を自動的に生成してもよい。例えば、場合によっては、復元誘導解決策のために、システムは、干渉(例えば、標準より大きい歯)を特定してもよく、また、エンベロープ領域内における特定された干渉の一部を含んでいてもよい。他の状況において、1つの部品からなる器具による解決策の場合、システムは、エンベロープ領域の境界を定義する際に、一方の弓の組織表面と、対向する弓に適合された(仮想)保持片(または仮想平面曲線)とを特定してもよい。
【0281】
指標位置および/またはエンベロープ領域に基づいて、1つ以上の仮想点の生成64を行い得る。1つ以上の仮想点(例えば、配置および配列)に基づき、仮想空間において仮想誘導パッケージの配置66を行い得る。誘導パッケージは、下顎骨が閉じる際に、第1接触位置から指標位置まで、下顎骨が上顎骨に対してどのように動くかを記述する運動プロファイルを含んでいてもよい。
【0282】
仮想空間において誘導パッケージの配置66を行った後、仮想誘導パッケージ内蔵器具を形成するために、仮想誘導パッケージのパラメータ化68を行い得る。場合によっては、誘導パッケージ内蔵解決策の一部として、1つ以上の保持片のパラメータ化68を行い得る。その後、仮想誘導パッケージ内蔵器具に基づき、誘導パッケージ内蔵器具作成データの送信70を行うことができる。例えば、誘導パッケージ内蔵器具作成データは、CAM、CNC技術、オフィス3Dプリンタ、および他のCAM可能装置の1以上を備える製造業者へ送信されてもよい。
【0283】
上述した方法のある要素は、異なる順序で実行されてもよく、同時に実行されてもよいということは、理解されるであろう。例えば、指標位置が決定される前に、エンベロープ領域(適切な3D領域)の特定62が行われてもよい。
【0284】
いくつかの実施形態では、3Dの弓データを取得することと、下顎骨の動きの範囲を含むTMJデータを取得または入力することと、運動の制限を特定し、現在の患者の状況を理解するために、運動パラメータの決定および衝突(例えば、干渉)の検出を行う(またはJMAを用いてこのデータを取得する)ことと、エンベロープ領域(例えば、仮想保持片の有無に関わらず)を確立することと、指標位置に基づいて仮想点を確立することと、運動プロファイルをパラメータ化することと、必要な場合に/必要に応じて(例えば、望ましい解決策に基づいて)、外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドのうちの1つ以上および保持片を(例えば、仮想的に、または製造することによって)作成することとを含む、方法が提供される。
【0285】
いくつかの実施形態では、3Dの弓データを取得することと、下顎骨の動きの範囲を含むTMJデータを取得または入力することと、運動の制限を特定し、現在の患者の状況を理解するために、運動パラメータの決定および衝突(例えば、干渉)の検出を行う(またはJMAを用いてこのデータを取得する)ことと、指標位置に基づいて仮想点を確立することと、誘導パッケージの仮想表現を指標位置に挿入することと、誘導パッケージと同じ形状の1つ以上の解決策(例えば、器具または保持片)を(例えば、CAMを用いて)作成することとを含む、方法が提供される。
【0286】
パラメータ化
【0287】
場合によっては、広範囲の3D空間が定義されて、保持片、誘導パッケージ、および誘導パッケージシステムのその他の機能のすべてが操作される。場合によっては、3D領域は、誘導パッケージシステムのみを操作するために作成され、誘導パッケージは、予め大きさが決められていてもよい、すなわち、誘導パッケージ内の誘導要素の各部の大きさ、つまり相対的な大きさ、および方向が、患者データを用いて決定、縮尺調整されてもよいし、必要な場合には調整されていてもよく、その後、保持片に直接取り付けられて、CAMによって作成されてもよい。しかしながら、これは、特定の個人または最終目的に最適な最終形態ではない場合がある。したがって、仮想咬合器内における、特定の患者または特定の目的のために個別に調整した運動プロファイル(例えば、誘導・停止プロファイル)は、幾何学的対象または数学的対象とみなされてもよい。1つ以上の実施形態によると、本方法は、保持片をパラメータ化することをさらに含むことができ、かつ/またはエンベロープ領域(広範囲の3D領域またはより限定された3D領域)の境界内において、個別に調整した運動プロファイル(幾何学的対象)をパラメータ化することと、相乗的に成形された異なる誘導パッケージを選択することとをさらに含むことができる。換言すると、特定の患者のために、運動プロファイルを定義することができ、その運動プロファイルを実行するための誘導パッケージを、それから得ることができる。保持片および/または個別に調整した誘導・停止プロファイルを数学的に操作することによって、2つの部品からなる器具、1つの部品からなる器具、2つの部品からなる復元物、1つの部品からなる復元物、外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイドなどの、誘導・停止プロファイルを実行するための広範な製品およびサービスが可能になる。
【0288】
場合によっては、例えば、
図5に示すように、1つ以上の保持片10の配置によって、エンベロープ領域が定義されてもよい。いくつかの実施態様では、保持片10の誘導具側表面720によって、エンベロープ領域の少なくとも一部が定義されてもよい。他の実施態様では、保持片10の組織側表面710によって、エンベロープ領域の少なくとも一部が定義されてもよい。ある状況下では、3D空間の一部は、仮想保持片および/または有形保持片の表面に対応していてもしていなくてもよい平面曲線として定義されてもよい。保持片10は、パラメータ化に基づいて開発された器具または復元物のための基部として機能し得る。保持片10は、誘導・停止システムと相互に作用する治療用要素とすることもできる。保持片10は、誘導パッケージシステムの誘導・停止の機能と組み合わせられた場合に新規の治療システムを作成するであろう透明アライナー型歯科矯正器具(例えば、インビザライン(登録商標))(または、別種類の治療用器具)を含むことができる。治療用要素を組み込んだ誘導具は、場合によっては、使用者の不快感を緩和する、または器具の有用性を向上するのに役立つ。場合によっては、矯正的な歯の運動と、TMD、歯科矯正学、整形外科学、ならびに歯学および医学の他の分野における新規の治療のための上顎に対応する下顎の誘導具および止め具との両方を、臨床医が制御してもよい。
【0289】
所与の弓における3D領域(エンベロープ領域)は、保持片の誘導具側の空間のみを含んでいてもよいし、保持片の誘導具側の、改変されていてもいなくてもよい組織を含んでいてもよい。換言すると、誘導パッケージシステムによって、規定された極限閉口位置までの下顎骨の誘導プロファイルが算出される。この算出は、誘導具および止め具の上顎要素および下顎要素の両方、ならびに/または保持片を含むことができる。ある状況下では、その算出は、保持片間の空間(保持片を含む、または除く)は含まず、改変される組織(すなわち、歯構造、歯肉、骨、および/または他の組織)を含んでいてもよい。場合によっては、算出は、改変されないが算出には含まれないといけない組織を含む。患者の組織のうちのいくらかがその算出に含まれるこの状況下では、臨床医が用いることを望む場合があるパラメータ化された運動プロファイルをすべて使用可能となるくらい十分に、その弓(または、両方の弓が算出に含まれる組織を有する場合は、両方の弓)の仮想平面曲線をその弓の組織内に仮想的に埋め込むことができる。仮想平面曲線の一部は、仮想保持片および/または有形保持片の表面に対応していてもよいし、していなくてもよい。場合によっては、平面曲線によって、仮想3D領域の境界が定義されてもよく、また、平面曲線は,双極放物面の形状であってもよい。場合によっては、3D領域(エンベロープ領域)は、仮想保持片を配置する前に、その後保持片の表面に対応してもしなくてもよい平面曲線を用いることによって、定義されてもよい。例えば、適切な閉口を妨げる、標準より大きい歯の場合を考える。追加的な矯正手段を提供するために、エンベロープ領域が、標準より大きい歯まで延伸してもよい。その後、あるパラメータ化が、歯を削ることに依拠してもよい。
【0290】
エンベロープ領域(3D領域)は、様々な弓および組織の表面のために定義され得る。
図29は、有歯弓2900-a(歯をすべて有する)、無歯弓2900-b(歯がない)、部分有歯弓2900-c(いくつかの歯を欠く)、既存の歯列または補綴物もしくは組み合わせからなる弓2900-d(例えば、既存の歯科治療をいくらか有する弓)、および非定型弓2900-e(例えば、手術または機能回復中である、あるいはその他の状況下にある、弓などの、過渡期にある弓)などの様々な種類の弓を示す。エンベロープ領域(仮想3D領域)は、弓の組織側表面として定義されてもよく、弓の組織内に埋め込まれた領域として定義されてもよく、保持片の誘導具側表面720として定義されてもよく、保持片の組織側表面710として定義されてもよく、弓の周囲に配置された、または仮想的に配置された、保持片10の他の表面として定義されてもよい。いくつかの実施形態では、仮想保持片および/または有形保持片の表面を表していてもいなくてもよい平面曲線によって、適切な3D空間が定義されてもよい。用いられる場合は、保持片10は、プラスチックまたは他の材料のような圧縮性材料、接着剤、針金、真空、留め金、結合材、インプラント、ミニインプラント、または弓および望ましい保持機構に基づく他の適切な機構(例えば、過渡期にある弓の骨に、保持片を直接取り付けるための、ステンレス鋼またはチタン製の外科用のネジなど)を含む、様々な取付機構を用いてもよい。
【0291】
図29に図示された様々な種類の弓は、下顎骨または上顎骨のいずれかに適用されてもよい。場合によっては、下顎骨および上顎骨は、弓の種類が異なっていてもよい。
【0292】
図30Aおよび
図30Bは、弓の誘導具側表面に配置されることによってエンベロープ領域(3D領域)を部分的に定義する仮想保持片の潜在表面の、限定しない2つの例を示す。
図30Aおよび
図30Bは、仮想保持片間(3D領域)に空間のみが存在している(組織は存在していない)状況を示す。
図24~
図27、
図29、
図30A、および
図30Bに示すように、誘導パッケージシステムは、誘導パッケージの開発および取付のために、保持片の表面またはその全体の仮想位置を用いることができる。また、誘導パッケージシステムは、運動・停止プロファイルのパラメータ操作(数学的算出)に利用可能な空間(限定3D領域)を定義するために、保持片の異なる表面の仮想位置を用いることもできる(
図30A~
図31D)。例えば、
図30Aを参照すると、保持片は、保持片の表面を形成してもしなくてもよい平面曲線によって表される、有形形態であってもよく仮想形態であってもよい。
【0293】
誘導具内蔵器具用または復元物用の誘導要素を作成するために、保持片10間において、すべての空間が使用可能である場合、保持片10の組織側710は、その弓の誘導具側表面に接触して取り付けられる。弓の誘導具側表面に取り付けられる保持片の例は、
図30Aおよび
図30Bに示されている。
【0294】
図30Aは、有歯下顎骨弓および有歯上顎骨弓3010aを示す。保持片3020aは、弓3030aに(仮想的に)装着される。エンベロープ領域3045aの境界は、保持片間の空間3040aとして定義され得る。誘導機構は、全体として保持片間に配置されていてもよく、また、歯ぎしり用器具、TMD容器具、睡眠時無呼吸用装置、または復元物などの誘導具内蔵器具を形成するために、1つ以上の保持片と組み合わせられてもよい。1つの部品または2つの部品からなる器具または復元物の誘導・停止の機能を、
図30Aの保持片間に構築することができる。2つの部品からなる器具または復元物のための算出およびその構築は、保持片および各保持片用の誘導・停止の機能の両方を含むが、1つの部品からなる器具の場合は、1つの弓による解決策(器具または復元物)を構築するための、実際の有形保持片を1つのみ含む。
【0295】
図30Bは、保持片3020bが配置されて3030bとなる無歯下顎骨弓および無歯上顎骨弓3010bを示す。誘導機構が、全体として保持片間に配置されるように、また、保持片と組み合わせられる場合は誘導具内蔵器具(犬歯誘導用またはグループ機能用の器具または復元物など)を形成し得るように、エンベロープ領域3045bを保持片間の空間3040bによって定義する。2つの部品からなる器具または復元物の誘導・停止の機能は、保持片間に構築することができる。2つの部品からなる器具または復元物のための算出およびその構築は、保持片および各保持片用の誘導・停止の機能の両方を含むが、1つの部品からなる器具の場合は、1つの弓による解決策(器具または復元物)を構築するための、実際の有形保持片を1つのみ含む。
【0296】
保持片について
図30Aおよび
図30Bを参照して説明したが、当業者であれば、これが単なる例示であることを認識するであろう。ある状況下では、エンベロープ領域(3D領域)は、組織側表面(例えば、歯、歯肉など)、または組織側表面の周囲に形成される空隙によって定義され得る。
【0297】
一方の弓または両方の弓に関しては、2つの弓の組織間にすべての誘導具および止め具ならびに保持片が配置される代わりに、いくつかの組織がエンベロープ領域(仮想3D領域)に含まれ、潜在的に解決策(器具または復元物)に含まれてもよいという状況があり得る。この状況下では、患者の組織のいくつかの部分が、例えば、手術によって改変されてもよい。一実施形態では、エンベロープ領域は、運動プロファイルの開発および算出に含むことができる組織を含む。所与の弓は、弓の組織が改変されなくてもよいが、運動プロファイルの開発および算出に含むことができるという状況にあってもよい。所与の弓は、弓の組織が改変されてもよく、また、運動プロファイルの開発および算出に含まれなければならないという状況にあってもよい。弓における改変されるべき組織を運動プロファイルの開発および算出に含むべきという状況下では、エンベロープ領域は、臨床医が評価することを意図する、運動・停止プロファイルのすべてのパラメータ化および潜在的な保持片を含むように、その弓の組織内へ十分入った位置において、仮想的に(例えば、平面曲線を適用する、または仮想保持片を配置することによって)定義されなければならない。弓における改変されるべきでない組織が、運動プロファイルの開発および算出に含まれるべきという状況下では、エンベロープ領域(3D領域)は、その弓の誘導側表面接触データを含むように、定義されなければならない。いずれの状況下においても、改変されるべきでない弓または改変されるべき弓は、正しい運動プロファイルを実現するために適用される、追加的な補綴物または器具を有していてもよい(CAMによって作成された器具または復元物で置き換えられる、潜在的保持片の潜在的表面を表していてもいなくてもよい平面曲線の間において、空間の一部のみが利用可能である)。
【0298】
臨床医が組織を改変する(例えば、歯を変える)こと、または解決策において組織を利用すること、を意図する状況下では、この空間は、誘導パッケージの算出のために、エンベロープ領域(3D領域)に含まれなければならない。さらには、この空間は、誘導・停止プロファイルおよび望ましい保持片の形状をさらに洗練するために、パラメータの算出に含まれなければならない。
【0299】
よって、改変されないままである一方または両方の弓について算出を行う目的で、平面曲線を用いて3D領域(エンベロープ領域)を定義する場合には、その弓の接触情報をすべて含むように、弓の誘導具側表面を十分越えた弓の組織内で、平面曲線を仮想的に配置することができ、これによって、運動・停止プロファイルおよび望ましい保持片を算出および開発するために、接触情報を利用可能にすることができる。同様に、改変される一方または両方の弓について算出を行う目的では、臨床医が評価することを意図する、潜在的誘導パッケージに由来する、その弓の改変を予想するように(例えば、3D領域内において改変されてもよい領域を含むように)、弓の誘導具側表面を十分越えた弓の組織内で、仮想平面曲線を仮想的に配置することができる。
【0300】
図31A~
図31Eに例を示す。ある状況下では、すべての誘導パッケージシステムのパラメータ化(例えば、保持片、誘導パッケージ、ならびに外科的ガイド、復元ガイド、およびインプラント配置ガイド)のための空間を含む、広範囲の3D領域を利用し得る。例えば、平面曲線または仮想保持片の組織側表面710によって、広範囲の3D領域に境界が提供される。場合によっては、広範囲の3D空間の部分セットを考慮してもよい。例えば、限定された仮想3D領域が、保持片および/または誘導・停止パッケージの機能、および/または外科的ガイド、復元ガイド、インプラント配置ガイド、および/または考慮すべき他のことの部分セットのパラメータ化のために、定義および利用されてもよい。
【0301】
図31Aは、臨床医が両方の弓の組織を改変することを意図する、2つの有歯弓3110aを示す。臨床医が評価することを意図する、運動プロファイルのパラメータ化(ひいては、潜在的誘導パッケージに由来する、弓の改変)を予測し、その後生成するために、3140aにおいてエンベロープ領域(3D領域)3145aを規定する各弓の誘導具側表面を越えて組織3130a内へ十分入ったところで、潜在的な保持片3120aの誘導具側表面の各仮想曲線を仮想的に配置することができる。この状況下で、臨床医は、誘導パッケージシステムに由来する誘導具および止め具を有する、調整手段、歯冠、ブリッジ、着脱式部分入れ歯、またはその他の補綴物を用いて歯を改変するために、誘導パッケージ由来の復元ガイド(例えば、
図35Eに示す)を生成してもよい。
【0302】
図31Bは、臨床医が両方の弓の組織を改変することを意図する、2つの無歯弓3110bを示す。臨床医が評価することを意図する、運動プロファイルのパラメータ化(ひいては、潜在的誘導パッケージに由来する、弓の改変)を予測し、その後生成するために、3140bにおいてエンベロープ領域3145bを規定する各弓の誘導具側表面を越えて組織3130b内へ十分入ったところで、潜在的な保持片3120bの誘導具側表面の各仮想曲線を仮想的に配置することができる。この状況下で、臨床医は、手術、または組織の添加または除去のためのその他の技術、を用いて組織を改変するために、誘導パッケージ由来の外科的ガイド(例えば、
図35Fに示す)を生成してもよい。これらの位置にある潜在的な保持片の仮想曲線と共に誘導パッケージシステムからの情報を用いることによって、臨床医が、咬合力を理解するために示された角度でインプラントを配置することができるようにする、インプラント配置用外科的ガイド(例えば、
図35Gに示す)を作成することができる。
【0303】
図31Cは、無歯弓に対向する有歯弓3110cを示す。この例では、臨床医は、3130cの誘導具側表面を越えて組織内へ、有歯弓上の潜在的仮想保持片3120cの誘導具側の仮想曲線を配置し、無歯弓3130cの誘導具側表面に、仮想保持片3120cの誘導具側表面の仮想曲線を配置する。この場合、3140cに示すように、臨床医が評価することを意図する、運動プロファイルのパラメータ化(ひいては、潜在的誘導パッケージに由来する、有歯弓の改変)を予測し、その後生成するために、無歯弓に仮想的に配置された保持片の誘導具側表面と、有歯弓の組織に埋め込まれた平面曲線とによって、エンベロープ領域3145cが定義されてもよい。誘導パッケージ解決策は、派生復元ガイドおよび誘導具内蔵保持片を含んでいてもよい。誘導パッケージ内蔵印刷下顎保持片は、保持片の算出およびパラメータ化と、その保持片と組み合わせられる誘導パッケージの機能の算出およびパラメータ化との両方を含む、異なる3D領域を含んでいてもよい。有形保持片は、下顎骨弓の組織に対する取付機構として、インプラントを利用してもよい。
【0304】
図31Dは、有歯弓3110dを、組織3130d内に配置される潜在的仮想保持片3120dと共に示し、組織側表面3140cの仮想曲線を利用して、パラメータ化のための3D空間の境界を定義する。
【0305】
図31Eは、有歯弓に対向する無歯弓3110eを示す。この例では、臨床医は、弓の組織3130eを越えて曲線3120eを用いることによって3D領域の境界を配置して、仮想保持片3140eを用いることなく3D空間3145eを定義する。
【0306】
ある状況下では、臨床医は、パラメータ選択の限度から誘導具および止め具によって成されるパラメータの決定によって、調整手段を用いて有歯弓を改変するための復元ガイドもしくはステント、歯冠、ブリッジ、またはその他の補綴物を作成してもよく、また、印刷された、無歯弓用の対向付随的復元物も作成してもよい。誘導具および止め具ならびに保持片のすべての表面(調整された歯もしくは組織、または調整されていない歯もしくは組織、および改変された弓の補綴物のすべての表面、ならびに、印刷された、無歯弓用の付随的復元物のすべての表面)を、誘導パッケージシステムのパラメータの算出から得ることができるか、またはこのパラメータの算出に含むことができる。
【0307】
ある状況下では、誘導プロファイルおよび保持片の形状の数学的操作のためのエンベロープ領域(仮想3D領域)は、組織を含まず、弓の接触表面データのみを含んでいてもよく、その弓の誘導具側表面を越えた組織を含んでいてもよい。したがって、臨床医が評価することを意図する運動プロファイルのパラメータ化(ひいては、潜在的誘導パッケージに由来する、その弓の改変)は、組織を含んでいてもよいし、組織の表面のみを含んでいてもよいし、所与の弓からすべての組織を除いていてもよい。所与の弓において、術者は、このデータに基づいて、器具、復元物、復元ガイド、外科的ガイド、および/またはインプラント配置ガイドを提供し得る。
【0308】
当業者であれば、有歯弓および無歯弓が、下顎骨弓と上顎骨弓のいずれであってもよいということを理解するであろう。また、
図31A~
図31Eの例は、限定的ではなく、エンベロープ領域は、組織または組織の誘導側表面の様々な部分を含むように、または除くように、様々に定義されてもよいということも、理解されるであろう。
【0309】
図32は、本開示のいくつかの実施形態に係る方法3200のフローチャートである。特定の解決策のための、特定の患者用の上顎骨に対する下顎骨の適切な指標位置(例えば、規定された極限閉口位置)の特定3210を行う。その解決策のための適切な標準的誘導パッケージ(運動・停止プロファイル)の指定3220を行う。標準的誘導パッケージは、仮想表現および/または数学的対象であってもよい。患者固有のデータ(または、平均データ、汎用データ、もしくはその他のデータ)を用いて、標準的誘導パッケージが所定の大きさで作成され、所定の位置にインデックス化され、調整され、取り付けられる。モデル内において、3D領域の定義3230が行われる。例えば、3D領域の境界を定義する曲線(例えば、平面曲線、保持片の表面、組織側表面、または表面の内部部分)を確立してもよく、また、患者の上顎骨および下顎骨の骨格に適合する弓状形態の幾何学的形状が、所定の指標位置において、保持片の仮想曲線の間に形成される。3D領域およびその境界は、異なる時間に(例えば、誘導パッケージの適用前または適用後、および指標位置の特定前または特定後)、様々な様式で決定されてもよいということは、理解されるであろう。最後に、本方法は、個別に調整した患者の下顎骨の誘導プロファイルを実行するための1つ以上の解決策を確立するために、3D領域内において、誘導パッケージおよび/または追加的な誘導解決策機能(例えば、保持片または復元ガイド)のパラメータ化3240を行うことを含む。
【0310】
図33は、
図32を参照して説明した方法の例示的な応用を示す。
図33の3300-aでは、指標位置が特定される(3210)。3300-bは、望ましい運動を定義するために仮想的に適用された誘導パッケージ3325(「GP」)(3220)を示す。誘導パッケージは、例えば、運動の幾何学的対象として適用されてもよいし、数学的表現として適用されてもよい。3300-cは、エンベロープ領域(3D領域)3335の定義(3230)を行うところを示す。例えば、エンベロープ領域の範囲は、1つ以上の仮想保持片または保持片の表面の適用に基づいて設定され得るが、これは単なる例示である。場合によっては、エンベロープ領域の範囲は、組織(例えば、歯)の表面を含んでいてもよいし、組織内へ延在していてもよい。例えば、患者の上顎骨および下顎骨の骨格に適合する弓状形態の幾何学的形状が、所定の指標位置において、仮想保持片の表面の間に形成される。
【0311】
3300-dは、個別に調整した誘導・停止プロファイルを、エンベロープ領域3335内から開発するところを示す。これは、エンベロープ領域内において、適用された誘導パッケージおよび/または保持片のパラメータ化(3240)を行うことによって達成され得る。その空間をパラメータ化することによって、その限度内において、誘導・停止要素の面積、容積、および接触面の形態を、インデックス化され、所定の大きさで作成され、調整され、かつ取り付けられた適切な誘導パッケージに由来する個別に調整した運動・停止プロファイルを維持する方式で、互いに連携してすぐに変更することができる。これによって、望ましい器具および復元物を形成することができる。いくつかの実施形態によると、最終解決策の誘導機構またはその他の機構(例えば、インプラント、保定片、組織側表面など)は、エンベロープ領域の境界内に含まれなければならない。場合によっては、最終解決策の誘導具側表面は、エンベロープ領域の境界内に含まれなければならない。
【0312】
図34は、5つの誘導・停止プロファイルの可視表現(誘導パッケージ)を示す。犬歯誘導パッケージ3410およびグループ機能誘導パッケージ3420は、ヒト群の顎口腔系の歯および弓においてよく表される運動・停止プロファイルである。これらの誘導・停止パターンによって、顎口腔系の神経・筋肉系において、特定の人に「一般的な」または「理想的な」誘導具および機能を提供することができるということが、歯科医師によって観察および注目されてきた。両側前方再配置誘導パッケージ3430、非対称誘導パッケージ3440、および非対称突出誘導パッケージ3450は、一般には、ヒトの顎口腔系では表されない運動・停止プロファイルである。これらの誘導・停止プロファイルは、睡眠時無呼吸およびTMDを含む機能の治療計画を提供するために、適用され得る。これらの運動・停止プロファイルは、顎口腔系の神経・筋肉系において治療の成功を導く(例えば、TMDおよび睡眠時無呼吸)ことが、歯科医師によって観察および注目されてきた。
図34の有形表現は、単に説明を目的としたものである。場合によっては、これらの誘導・停止プロファイルは、仮想的に表現され、仮想咬合器に適用されてもよい。
【0313】
当業者であれば、誘導・停止プロファイル(例えば、3410~3450)によって定義される動きは、幾何学的機能または数学的機能として表現されてもよく、これらは、患者の弓の仮想表現に適用されてもよいということが、理解されるであろう。どちらの状況であっても、誘導・停止プロファイルによって、最終的な解決策の要件(例えば、従わなければならない経路)の定義のみが行われてもよいが、最終的な解決策の定義(例えば、解決策が、復元ガイド、外科的ガイド、保持片、または組織側表面のうちの1つ以上を含むかどうか)が行われなくてもよい。例えば、個別に調整した運動プロファイルは、数学的対象、および数学的対象の操作に使用できる3D領域(エンベロープ領域)として理解されてもよく、最終製品について考慮すべきことおよび患者について考慮すべきその他のことを許容する、このパラメータ化された相乗的な他の形状(例えば、所定の経路に沿って下顎骨を誘導するように共に作用する形状)の限度内における連続体を、数学的に得ることができる。
【0314】
可能なパラメータの連続体から、臨床医は、
図35A~
図35Gに示す、1つまたは2つの弓による多くの異なる解決策を作成し得る。
図35Aは、本開示の様々な実施形態に係る、2つの弓の保持片10を示す。この場合、保持片10の表面は、下顎骨を指標位置へと誘導する際に相互作用するように設計されている。ある状況下では、歯ぎしり、TMD、睡眠時無呼吸、およびその他の症状を治療するために、2つの弓による解決策を用いることができる。
図35Bは、本開示の様々な実施形態に係る、2つの弓の復元物を用いる解決策を示す。復元物は、入れ歯、改変された天然歯または他の組織、改変されていない天然歯または他の組織、歯冠、ブリッジ、着脱式部分入れ歯、その他の固定補綴物、その他の着脱式補綴物、およびこれらの組み合わせを含み得る。2つの弓の復元物では、様々な要素(例えば、入れ歯、人工歯、および天然歯)の表面が、相互作用して下顎骨を指標位置へと誘導するように設計されている。
図35Cは、本開示の様々な実施形態に係る、1つの弓の保持片10を用いる解決策を示す。この場合、保持片10の表面は、下顎骨を指標位置へと誘導する際に、対向する弓の組織側表面と相互作用するように設計されている。
図35Dは、本開示の様々な実施形態に係る、1つの弓の復元物を用いる解決策を示す。1つの弓の復元物では、、様々な要素(例えば、入れ歯、人工歯、および天然歯)の表面が、対向する弓の組織と相互作用して下顎骨を指標位置へと誘導するように、設計されている。
【0315】
図35E~
図35Gは、本開示の例示的な実施形態に係る、誘導パッケージ由来の復元ガイド(
図35E)、外科的ガイド(
図35F)、およびインプラント配置ガイド(
図35G)を示す。
図35Fの外科的ガイドは、外科医が、骨、洞、歯肉、および弓のその他の組織を操作するのに役立つ、広範に弓形状を変更するステント/誘導具を含むことができ、または、より保守的には、既存の歯列または補綴物用の調整点を示す割れ目または開口を有する
図35Eの個別調整全弓復元ガイドを含むことができる。臨床医が、歯および/または他の組織および/または既存の補綴物を含む誘導パッケージ解決策と矛盾しないように、弓の形態を改変しようと望む場合に、
図35Eの復元ガイドを用いることができる。臨床医が、歯および/または骨および/または歯肉および/または他の組織および/または既存の補綴物を含む誘導パッケージ解決策と矛盾しないように、弓の形態を外科的に改変しようと望む場合に、
図35Fの外科的ガイドを用いることができる。例えば、結果として得られるその弓の形状によって、決定されたパラメータ化の適用が可能になるように、骨などの、これらの物質の分類のうちの1つを改変し得、例えば、下顎骨が改変される。一方または両方の弓を含む誘導パッケージに係る弓の形態にしたがって、臨床医が、適切な角度でインプラントを配置することを望む場合に、
図35Gのインプラント配置ガイドを用いることができる。例えば、特定のシュペー湾曲およびウィルソン湾曲のそれぞれのために、または咬合角度に対して(例えば、
図44Aおよび
図44Bを参照)、インプラントを配置するのに適切な角度を形成するために、インプラント配置ガイドを用いることが望ましい場合がある。
【0316】
図36Aおよび
図36Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、標準的な犬歯誘導パッケージ(例えば、
図34の3410)を、例えば、
図32および33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。
図36Aおよび
図36Bの両方を参照すると、エンベロープ領域の境界を定義することができ、指標位置を特定し得(例えば、適切な咬合高径での中心位)、標準的な犬歯誘導パッケージが、患者のために個別に調整され(仮想的に所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ配置され)、個別に調整した運動・停止プロファイルを作成する。これは、例えば、幾何学的対象とみなされてもよい。エンベロープ領域は、境界間の利用可能な空間によって定義され得、その後、個別に調整した運動・停止プロファイルを、解決策を作成するために、エンベロープ領域内においてパラメータ化することができる。場合によっては、解決策の形態は、弓が有歯であるか、無歯であるか、部分的に無歯であるかに基づくものであってもよい。場合によっては、解決策の形態は、例えば、歯科医師または臨床医またはシステムの術者によって選択可能であってもよい。最終解決策は、例えば、器具による解決策や、弓の再建、復元、機能回復、および/または最適化、あるいは先に挙げたものの組み合わせのいくつかであってもよいということが、理解されるであろう。
【0317】
図36Aを参照すると、下顎骨および上顎骨の両方が有歯であるか、部分的に無歯であるか、その他である場合、パラメータ化によって、2つの部品からなる器具のための1つ以上のデザインがもたらされ得る。器具の各部品を、対応する弓上に挿入することができ、器具の表面が相互作用して、個別に調整した運動・停止プロファイルを制御する。例えば、3600a-1および3600a-2は、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。3600a-1では、2つの部品からなる器具は、犬歯領域に位置する誘導具によって特徴付けられる。これと比べると、3600a-2は、より広い接触領域を有する保持片の犬歯領域の中心にある誘導具によって特徴付けられる。当業者であれば、3600a-1および3600a-2は、患者用の指標位置への、個別に調整した同じ誘導・停止プロファイルを制御する、異なる形状のパラメータ連続体から得られる単なる2つの例であるということを認識するであろう。最終的な器具は、標準的な犬歯誘導パッケージとはかなり異なるように見える場合がある、接触表面(誘導具および止め具)を含む特定の幾何形状を有する滑らかに流動するプラスチック(またはその他の物質)形状であってもよいが、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ取り付けられた犬歯誘導パッケージに数学的に由来する可能な形状の限度内で決定される形状を有するものであってもよく、同じ運動・停止プロファイルを特徴とする。
【0318】
図36Bを参照すると、下顎骨および上顎骨の両方が無歯である場合、パラメータ化によって、2つの部品からなる復元物のための1つ以上のデザインがもたらされ得る。これらの誘導パッケージに由来する復元物は、相互作用して、個別に調整した運動・停止プロファイルを制御する、代替歯列(すなわち、義歯)の表面を利用して、患者の下顎骨を誘導するのに役立ち得る。天然歯は、境界として機能しないので、無歯の状況(
図36B)は、有歯の状況(
図36A)よりも大きいエンベロープ領域を提供し得る。無歯の解決策の限定しない例として、3600b-1および3600b-2は、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。3600b-1では、2つの部品からなる復元物は、義歯上に位置する止め具(点)および誘導具(影)の特定の補完物と、誘導を行う義歯の角度とによって、特徴付けられる。これと比べると、3600b-2は、義歯上に位置する止め具および誘導具の異なる補完物と、誘導を行う義歯の角度とによって、特徴付けられる。例えば、指標位置が、適切な咬合高径での中心位である場合は、止め具、誘導具、および角度は、理想的な犬歯誘導具と矛盾しないであろう。当業者であれば、3600b-1および3600b-2は、患者用の指標位置への、個別に調整した同じ誘導・停止プロファイルを制御する、相乗的に有歯弓の仮想的なモーフィング形状のパラメータ連続体から得られる単なる2つの例であるということを認識するであろう。最終的な復元物は、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ取り付けられた犬歯誘導パッケージに由来するのと同じ運動・停止プロファイルを提供する特定の幾何学形状である、患者の組織を模倣した物質であってもよい。模倣された組織は、標準的な犬歯誘導パッケージと大きく異なる形状とすることができるが、その形状は、同じ運動・停止プロファイルを特徴とするように、その誘導パッケージに数学的に由来する犬歯誘導復元物の選択肢の可能な形状の限度内から選択される。
【0319】
顎口腔系は、神経・筋肉系を含むということが理解されるであろう。場合によっては、器具または復元物のいずれかのための、運動・停止プロファイルの異なるパラメータ化(例えば、解決策)を考慮する場合に、神経・筋肉系について考慮すべきことが含まれるべきである。顎口腔系において、同じ運動プロファイルの異なる相乗的な形状によって、神経・筋肉系からの異なる応答を生じさせる場合がある。例えば、神経・筋肉系は、前歯にかかる応力と比較して、後歯にかかる応力の場合は異なる反応を生じるので、前方に固定された誘導具および止め具と比較して、後歯の近くに固定された誘導具および止め具に対して異なる反応を生じ得る。術者は、異なる神経・筋肉系の応答を生じさせる誘導具および止め具用に、弓の異なる領域を利用するために、同じ運動・停止プロファイルの異なるパラメータ化を用いてもよい。これらの考慮すべきことは、パラメータ化の前または後の誘導パッケージの個別調整に含まれていてもよい。したがって、本開示に係るシステムまたは方法を用いることによって、関連技術よりも大きい柔軟性および選択肢の範囲が提供され得る。神経・筋肉系について考慮すべきことは、本明細書で開示されているのと、当業者に公知であるのとの両方の、様々な誘導プロファイルのパラメータ化の選択に影響を及ぼし得る。
【0320】
図37Aおよび
図37Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、標準的なグループ機能誘導パッケージ(例えば、
図34の3420)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。本方法は、
図36Aおよび
図36Bを参照して上述した方法と実質的に同様に、実行され得るので、簡潔化のために、説明は繰り返さない。最終解決策は、例えば、器具による解決策や、弓の再建、復元、機能回復、および/または最適化、あるいは先に挙げたものの組み合わせのいくつかであってもよいということが、理解されるであろう。
【0321】
図37Aを参照すると、下顎骨および上顎骨の両方が有歯であるか、部分的に無歯であるか、その他である場合、パラメータ化によって、2つの部品からなる器具(例えば、2つの部品からなる歯ぎしり用器具)のための1つ以上のデザインがもたらされ得る。器具の各部品を、対応する弓上に挿入することができ、器具の表面が相互作用して、個別に調整した運動・停止プロファイルを制御する。例えば、3700a-1および3700a-2は、患者用の指標位置への、個別に調整した同じ誘導・停止プロファイルを制御する、異なる形状のパラメータ連続体から得られる、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。3700a-1では、2つの部品からなる器具は、中線において前方に位置する誘導具によって特徴付けられる。これと比べると、3700a-2は、器具の後方領域へとさらに延在する誘導具によって特徴付けられる。臨床医は、決定を下す際には、異なるパラメータ化への神経・筋肉系の関与を考慮し得る。最終的な器具は、標準的なグループ機能誘導パッケージとはかなり異なるように見える場合がある、接触表面(誘導具および止め具)を含む特定の幾何形状を有する滑らかに流動するプラスチック(またはその他の物質)形状であってもよいが、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ取り付けられたグループ機能誘導パッケージに数学的に由来する可能な形状の限度内で決定される形状を有するものであってもよく、同じ運動・停止プロファイルを特徴とする。
【0322】
図37Bを参照すると、下顎骨および上顎骨の両方が無歯である場合、パラメータ化によって、2つの部品からなる復元物のための1つ以上のデザインがもたらされ得る。誘導パッケージによって設計された復元物は、相互作用して、個別に調整した運動・停止プロファイルを制御する、代替歯列(すなわち、義歯)の表面を利用して、患者の下顎骨を指標位置へと誘導するのに役立ち得る。無歯の解決策の限定しない例として、3700b-1および3700b-2は、個別に調整した同じ誘導・停止プロファイルを制御する、相乗的に有歯弓の仮想的なモーフィング形状のパラメータ連続体から得られる、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。3700b-1では、2つの部品からなる復元物は、義歯上に位置する止め具(点)および誘導具(影)の特定の補完物と、個別に調整したプロファイルに矛盾しない誘導を行う義歯の角度とによって、特徴付けられる。一方で、3700b-2は、義歯上に位置する止め具および誘導具の異なる補完物と、誘導を行う義歯の角度とによって、特徴付けられる。例えば、止め具、誘導具、および角度は、理想的なグループ機能誘導と矛盾しないであろう。最終的な復元物は、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ取り付けられたグループ機能誘導パッケージに由来するのと同じ運動・停止プロファイルを提供する特定の幾何学形状である、患者の組織を模倣した物質であってもよい。模倣された組織は、標準的なグループ機能誘導パッケージと大きく異なる形状とすることができるが、その形状は、同じ運動・停止プロファイルを特徴とするように、その誘導パッケージに数学的に由来するグループ機能誘導復元物の選択肢の可能な形状の限度内から選択される。
【0323】
図38Aおよび
図38Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、非対称誘導パッケージ(例えば、
図34の3440)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。一例では、2つの部品からなるTMD(TMJ障害)用器具が、有歯の患者のために計画され、指標位置が、その特定の患者および特定の目的のために、規定された非対称な各指標位置であってもよい。標準的な非対称誘導パッケージは、その患者のデータ用にすぐに個別に調整され、幾何学的対象として定義することができるように、保持片に対して個別に調整される(例えば、所定の大きさで作成され、インデックス化され、調整され、かつ取り付けられる)。この特定の患者用のデータは、特定のTMD(TMJ障害)のデータを含むことができる。臨床評価、3D X線、顎運動解析装置(例えば、
図14に示す)、またはその他の方法を用いることによって、このデータを収集することができる。このデータは、エンベロープ領域およびそのエンベロープ領域内におけるパラメータ化に影響を及ぼすことができる。所与のTMD患者の場合、特定の運動および停止が、特定の患者の特定のTMDの不調に基づいて、好まれてもよいし、回避されてもよい。保持片は、有歯弓上に、規定された非対称な方向で配置されるので、定義される空間(エンベロープ領域)は、先の例と比較すると、大きく異なる場合がある。
【0324】
個別に調整した運動プロファイルを、数学的対象、および操作に利用可能な定義された空間(エンベロープ領域)として理解すると、患者について考慮すべきその他のことを許容する、パラメータ化された相乗的な他の形状の限度内における連続体を、数学的に得ることができる。有歯の解決策、部分的無歯の解決策、およびその他の解決策の限定しない例として、
図38Aおよび
図38Bは、個別に調整した誘導プロファイルに由来し、ひいては非対称誘導パッケージに由来する、相乗的な、相互作用する形状および接触領域を有する連続体における、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。
図38Aは、誘導具が、保持片の後方側面または後方顔面側の面に位置している、非対称TMD治療用器具の正面図(3800a-1)および側面図(3800a-2)を示す。一方で、
図38Bは、誘導具が、保持片の前方領域に位置している、非対称TMD治療用器具の正面図(3800b-1)および側面図(3800B-2)を示す。他の例がそうであるように、接触領域の形状は、標準的な非対称誘導パッケージの接触面の形状と同じようには見えない場合があるが、同じ運動・停止プロファイルを特徴とするように、個別に調整した非対称誘導パッケージに数学的に由来する可能な形状の限度内から選択された。希有な非対称復元物の場合など、場合によっては、非対称復元物は、運動・停止プロファイルに貢献する特定の幾何学形状である、患者の組織を模倣した物質(例えば、歯表面の傾斜および幾何形状、ならびに歯の咬頭の角度および傾斜を特徴とする義歯)を含むことができる。
【0325】
図39Aおよび
図39Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、両側前方再配置用誘導パッケージ(例えば、
図34の3430)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。本開示の例示的な実施形態に係る両側前方再配置用誘導パッケージ(仮想表現および/または数学的対象であってもよい)の潜在的用途は、TMD用器具、その他の器具、機能回復用(例えば、変位した関節間軟骨の円板用)の一連の段階的治療器具、睡眠時無呼吸用器具(例えば、指標位置において顎を前方へ導くことによる)や、対称的に突出した弓の再建(希有だと思われる)、復元、機能回復、および/または最適化を含む。
【0326】
一例として、臨床医は、2つの弓による両側前方再配置睡眠時無呼吸用器具を計画し得る。有歯の解決策、部分的無歯の解決策、およびその他の解決策の限定しない例として、
図39Aおよび
図39Bは、個別に調整した誘導プロファイルに由来し、ひいては両側前方再配置用誘導パッケージに由来する、相乗的な、相互作用する形状および接触領域の限度内から得られる、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。
図39Aは、誘導具が、保持片の後方側面または後方顔面側の面に位置している、対称突出睡眠時無呼吸用器具の正面図(3900a-1)および側面図(3900a-2)を示す。一方で、
図39Bは、誘導具が、保持片の前方領域に位置している、対称突出睡眠時無呼吸用器具の正面図(3900b-1)および側面図(3900b-2)を示す。
【0327】
本開示に係る両側前方再配置用誘導パッケージ(
図34の3430)に由来し得る器具の他の例は、両方のTMJの両側前方円板変位を治療するための両側前方再配置用器具である。この場合、規定された指標位置(極限閉口位置)が、患者の両方のTMJの両側前方円板変位を治療するための治療位置にある患者の弓と一致していること、およびこの特定の患者用のデータが、特定のTMD(TMJ障害)データを含むことができるということ以外は、同じプロトコルが用いられる。臨床評価、3D X線、顎運動解析装置(例えば、
図14に示す)、超音波検査、MRI、またはその他の方法を用いることによって、このデータを収集することができる。このデータは、エンベロープ領域およびそのエンベロープ領域内におけるパラメータ化に影響を及ぼすことができる。TMD患者の場合、特定の患者の特定のTMDの不調に基づいて、好まれてもよいし、回避されてもよい運動の領域および停止の領域の両方が存在し得る。同じ標準的な両側前方再配置用誘導パッケージに由来する異なる器具は、しばしば同じ誘導パッケージによって幅広い種類の病気および状況を治療する、誘導パッケージシステムの柔軟性を示す。
【0328】
図40Aおよび40Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、非対称突出誘導パッケージ(
図34の3450)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。非対称突出誘導パッケージの潜在的用途は、TMD用器具、片側前方再配置用器具、その他の器具、機能回復用の一連の段階的治療器具や、非対称的に突出した弓の再建(希有)、復元、機能回復、および/または最適化のための器具を含む。標準的な非対称突出誘導パッケージは、その患者のデータ用にすぐに個別に調整され、幾何学的対象として定義することができるように、個別に調整され(所定の大きさで作成され、インデックス化され、かつ調整され)、取り付けられる(例えば、保持片に)。
【0329】
この特定の患者用のデータは、特定のTMD(TMJ障害)のデータを含むことができる。上述したように、このデータは、エンベロープ領域およびそのエンベロープ領域内におけるパラメータ化に影響を及ぼすことができる。
【0330】
一例として、臨床医は、2つの弓によるTMD用器具を計画し得る。有歯の解決策、部分的無歯の解決策、およびその他の解決策の限定しない例として、
図40Aおよび
図40Bは、個別に調整した誘導プロファイルに由来し、ひいては非対称突出誘導パッケージ(
図34の3450)に由来する、相乗的な、相互作用する形状および接触領域を有する連続体から得られる、個別に調整した、可能な2つの解決策を示す。
図40Aは、誘導具の大部分が、保持片の後方側面または後方顔面側の面に位置している、非対称突出器具の正面図を示す。一方で、
図40Bは、誘導具の大部分が、保持片の前方領域に位置している、非対称突出器具の正面図を示す。他の例を参照して上述したように、特定の形状は、標準的な誘導具と異なるものであってもよいが、同じ運動・停止プロファイルを制御する。
【0331】
先に挙げた例の多くでは、互いに相乗的に作用して新規の指標位置(規定された極限閉口位置)までの新規の運動プロファイルを提供する器具または復元物を提供する、誘導具および止め具を有する2つの弓を作成するために、誘導パッケージシステムが用いられる。誘導パッケージシステムは、患者の既存の改変されていない対向する弓を組み合わせて新規の指標位置までの新規の運動プロファイルを提供する、1つの弓による解決策を作成するための道具を提供することもできる。形状の連続体を決定した後、作成される1つの弓による解決策が、臨床医によって評価され、作成した弓を患者の改変されていない対向する弓と組み合わせると、新規の指標位置(規定された極限閉口位置)までの規定された運動プロファイルが提供される。
【0332】
場合によっては、保持片は、仮想的に設置され、その後、誘導・停止の機能と組み合わせられる。そして、印刷後、保持片は、患者の各弓の組織の表面に物理的に接続され得る。他の実施形態では、保持片または他の誘導解決策は、平面曲線で定義される広範囲のエンベロープ領域内において、開発される。
【0333】
場合によっては、本開示に係る誘導パッケージシステム(例えば、CAD-CAM誘導パッケージシステム)は、解決策のために改変されることのない既存の組織を考慮する(例えば、歯および他の組織の表面上の、人為的でない誘導機能または停止機能を用いて、指標位置または誘導経路を調整する)道具を提供することができる。いくつかの実施形態では、誘導パッケージシステムは、臨床医が、特定の誘導パッケージ解決策に鑑みて、操作/改変のために既存の組織を考慮できるようにすることもできる。
【0334】
いくつかの実施形態では、保持片は、仮想化されて、解決策の一部とみなされる組織内へ配置されてもよい。パラメータ算出のためのエンベロープ領域は、多くの方法で定義することができ、この例では、保持片および/または保持片の表面は、その目的のために仮想化されてもよい。
【0335】
いくつかの実施形態では、3D領域は、仮想曲線によって定義されてもよい。これらの曲線は、解剖学上の機能、仮想保持片、組織、または3D領域の含み方もしくは分け方について考慮すべきその他多くのことに関連していてもよいし、関連していなくてもよい。
【0336】
図41は、本開示のいくつかの実施形態に係る、犬歯誘導パッケージ(
図34の3410)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、例示的な最終解決策を示す。
図41では、最終解決策は、本開示の例示的な実施形態に係る、標準的な犬歯誘導パッケージ(
図34の3410)(仮想表現および/または数学的対象であってもよい)を用いた、上顎骨弓に重大な干渉がある有歯の患者の、1つの部品からなる(1つの弓の)器具(例えば、歯ぎしり用器具)の形態をとる。この例では、患者の改変されていない上顎骨弓と相互作用して、指定の指標位置(例えば、規定された極限閉口位置)までの犬歯誘導用運動プロファイルを提供する、1つの弓による犬歯誘導器具を作成するために、標準的な犬歯誘導パッケージが用いられる。この場合、エンベロープ領域の境界は、一方の弓(例えば、1つの弓の表面を露出するように配置された仮想曲線)と、もう一方の弓に配置された器具(例えば、その下面が、もう一方の弓に仮想的に配置される領域定義曲線を表す仮想保持片)との接触表面である。4100-aに見られるように、患者には、上顎骨弓の歯#3(普遍番号方式(別名アメリカン・システム)による)の領域に、重大な干渉4110がある。重大な干渉4110が原因で、対向する(1つの)弓の許容できる器具は、恐らく、狭い連続体に起因する可能性がある。すなわち、何れの解決策も、重大な干渉を含む改変されていない上顎骨弓において、犬歯誘導具を提供しなければならない。
【0337】
一旦、標準的な犬歯誘導パッケージを個別に調整して、適切に取り付けると、この患者のために個別にすぐ調整した運動プロファイルを、幾何学的対象として定義することができる。限定しない例として、4100-bは、同じ運動・停止プロファイルを特徴とする犬歯誘導パッケージに数学的に由来する、可能な連続体から選択された1つの弓の下顎用器具である。この例では、1つの弓の器具4100-bは、上顎骨弓の干渉(歯#3)に対向する下顎保持片の領域(4120)にある薄い物質と、重大な上顎(#3)の干渉を越えて誘導するための、下顎保持片の犬歯領域(4130)における強い犬歯誘導具とを特徴とする。下顎保持片の表面は、上顎骨弓の組織(例えば、歯)の表面と相互作用するように成形されている。下顎保持片の形状は、個別に調整した犬歯誘導パッケージと異なっている場合があるが、同じ運動・停止プロファイルを特徴としている。
【0338】
図42は、本開示のいくつかの実施形態に係る、犬歯誘導パッケージ(
図34の3410)を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用した、他の例示的な最終解決策を示す。
図41では、最終解決策は、重大な干渉と無歯の下顎骨弓をともなう、上顎骨弓が有歯である患者の、1つの部品からなる(1つの弓の)復元物の形態をとる。この構成は、患者の下顎骨弓が無歯であること、および最終解決策が復元物の形態をとること以外は、
図41を参照して上述した例と同様である。
【0339】
図42を参照すると、最終解決策は、1つの弓の下顎復元物4200の形態をとる。この例では、印刷された復元物は、上顎骨弓の干渉に対向する下顎復元物上の非常に薄い物質(非常に小さい義歯(4220))と、重大な上顎(#3)の干渉を越えて誘導するための、保持片の犬歯領域(4230)において、正しい角度で義歯の形態をとる下顎復元物上の強い犬歯誘導具とを特徴とする。歯の咬頭および他の機能の角度および傾斜を含む、義歯の傾斜および幾何形状によって、改変されていない上顎骨弓との相互作用を介して、誘導具および止め具が提供され得る。
【0340】
上記の例の多くでは、本開示のいくつかの実施形態に係る誘導パッケージシステムは、規定された3D経路(用いる誘導パッケージに応じる)を通って、規定された指標位置(例えば、規定された極限閉口位置)へと患者の下顎骨を誘導することができる、2つの部品からなる器具システム、2つの部品からなる復元システム、1つの部品からなる器具システム、および1つの部品からなる復元システムを作成するのに用いられる。しかしながら、ある状況下では、患者の一方または両方の弓の形状および大きさを調整するのが有益である場合があり、そうでなければ、望ましい誘導パッケージ解決策と両立しない場合がある。本開示のいくつかの実施形態によると、臨床医は、望ましい誘導パッケージ解決策と両立できる形態の形状、大きさ、容積、接触領域の形態、および弓のその他の面を変更するために、患者の一方または両方の弓で行われる必要がある、外科的作業/復元作業/再建作業/最適化作業を行う。ある状況下では、患者の既存の組織によって、特定の解決策の適用が、不快なものとなる、または十分に実施可能ではないものとなる(例えば、複数の過剰に大規模な干渉)場合がある。
【0341】
したがって、本開示のいくつかの実施形態によって、外科的ガイドまたは復元ガイド(例えば、
図35E~
図35Fを参照)を作成するための道具が提供されてもよい。これらのガイドは、組織を除去する、または組織を追加する、領域を示すことができる。場合によっては、対向する弓の最低限の調整を可能にする、一方の弓に対する保守的な治療計画(例えば、保持片)を利用することが有利な場合がある。可能なパラメータの限度によって、臨床医は、両方の弓について、形状の評価を同時に行うことができ、また、保守的な2つの弓によるアプローチを見出すために評価を行うことができる。場合によっては、誘導パッケージシステムは、追加または除去される組織の量、あるいは組織が追加または除去される領域の数に基づいて、保守的なアプローチを特定するように構成されてもよい。場合によっては、臨床医は、全誘導パッケージ解決策において、自分が好む印刷された対向する弓について計画を立てることを可能にするような保守的な有歯弓の調整を許容する、誘導パッケージ由来の有歯弓用の復元ガイドを選択してもよい。
【0342】
例えば、
図43Aおよび
図43Bは、本開示の例示的な実施形態に係る、無歯の下顎骨弓に対向し、重大な干渉をともなう上顎骨弓が有歯である患者の、標準的な犬歯誘導パッケージを用いる2つの弓による改変・復元解決策の形態をとる、最終解決策を示す。この状況は、望ましい解決策が異なっていること以外は、
図42を参照して説明した状況と同一であり得る。したがって、エンベロープ領域の境界は、上顎骨弓の組織内へと延在する。いくつかの実施形態では、これは、仮想曲線を上顎骨弓の組織内に配置することによって、達成される。この患者は、上顎骨弓の#3の歯の領域に重大な干渉があるだけでなく、臨床医が決定した2つの弓による犬歯誘導パッケージ解決策によって定義される、重大でない上顎骨弓の干渉がいくつかある。
【0343】
図43Aを参照すると、干渉を抑えるために、上顎骨弓に対して犬歯誘導パッケージ由来の復元ガイド4300a-1を用い得る(すなわち、ガイド4300a-1は、干渉を抑える際、そうでなければ、上顎骨弓の組織を変える際に、歯科医師、歯科医、または口腔外科医を誘導し得る)。4300a-2は、干渉を抑える前の上顎骨弓を示し、4300a-3は、干渉を抑えた後の上顎骨弓を示す。患者の無歯の下顎骨弓に適用される、対向する下顎用に作成された弓(4300b-1または4300b-2)は、規定された新規の指標位置(規定された極限閉口位置)までの規定された運動プロファイルを提供するために、復元ガイド4300a-1に従って改変された上顎骨弓と相互作用するように形成され得る。理解されるであろうが、復元ガイド4300a-1および対向する下顎骨弓(4300b-1または4300b-2)は、数学的に得た可能な連続体から得られる単なる例示的な解決策である。
【0344】
場合によっては、望ましい復元ガイド4300a-1が最初に選択されてもよく、その後、適合する弓の復元物(例えば、4300b-1または4300b-2)が、数学的に得た可能な連続体から選択されてもよい。場合によっては、望ましい弓の復元物(例えば、4300b-1または4300b-2)が選択されてもよく、適合する復元ガイド4300a-1が、数学的に得た可能な連続体から選択されてもよい。場合によっては、弓を調整するために、単一の復元ガイド4300a-1が用いられてもよい。他の場合では、2つ以上の手順で誘導を行うために、2つ以上の復元ガイドが設計および印刷されてもよい。
図43Aおよび
図43Bを参照して述べた例では、パラメータについて考慮すべきこと(例えば、可能な解決策)は、形成された、または印刷された、またはCAMによって作成された、対向する弓の系と一緒に上顎骨弓を改変するための外科的ガイド/復元ガイドまたはステントを含む。2つの弓による復元解決策は、形状の連続体から決定される。この例では、可能な形状は、誘導パッケージ由来の外科的ガイド/復元ガイドまたは鋳型を用いて、上顎骨弓上で保守的な変化を実現する場合に、印刷された対向する弓全体用の下顎復元物の、特定の範囲の選択肢が利用可能になるようなものを含むことができる。
【0345】
場合によっては、患者の現在の弓の構造が、特定のTMJのパラメータセットで上手く機能しないため、患者の弓の形態には形状変化が必要であろうということを、臨床医が決定してもよい。歯科医師の多くは、
図44Bのウィルソン湾曲および
図44Aのシュペー湾曲を含む、咬合の曲線が、歯およびTMJの両方の健康および機能にとって重要であるということを理解している。歯科医師の多くは、下顎歯は、半径が約8インチである球、すなわち、
図44Cのモンソン球、の表面で動くように、上顎歯の表面で動くと考えている。これらの曲線は、機能しているとき、および安静時に、歯およびTMJが調和することを可能にする。
【0346】
図44Aのシュペー湾曲に関しては、下顎の犬歯の咬頭から下顎の顆頭まで、正中面に投影した際に、歯または弓の咬合配列によって確立される解剖学上の曲線である(4410Aおよび4420A)。歯科医師の多くは、シュペー湾曲によって可能となる歯の前方/後方への傾斜(4430Aおよび4420A)が、個々の歯を咬合力に対して直角に保つのに適していると考えている。シュペー湾曲を、閉口時の弧の延長と見なす歯科医師もいる。例として、犬歯表面(犬歯)の傾斜と組み合わされたシュペー湾曲は、下顎骨の突出方向の偏位において後歯の適切な離解を規定する、誘導具を提供する。
【0347】
図44Bのウィルソン湾曲に関しては、後歯の咬合平面の内外方向の湾曲である。歯科医師の多くは、弧または曲線の目的は、下顎骨が運動している間の顆頭の経路を補完することであると考えている。下顎の頬側咬頭の高さの増加(ウィルソン湾曲によって提供される角度による)および上部後歯の咬頭の補完形態(ウィルソン湾曲に起因する角度による)によって、食物が咀嚼領域に残って横方向にあふれないようになることが、さらに理解される。
【0348】
上記で挙げた機能に加えて、咬合曲線の追加機能または代替機能は、本開示の1つ以上の実施形態を用いて操作され得る、弓状形態(咬合曲線)の力受け入れ構造を含み得る。誘導パッケージシステムを用いる最終回復弓の形状によって、TMJ(またはその他の治療目的)との調和をもたらす形状の、ウィルソン湾曲およびシュペー湾曲(組み合わせると、モンソン球である)(
図44A~
図44C)の図において傾斜している、義歯および義歯の個々の咬頭を作成することができる。
【0349】
誘導パッケージシステムは、すべての咬合曲線(「歯」は、多くの点で、これらの曲線を最終的に延長したものである)を収容する、利用可能な表面領域または利用可能な表面の部分セットのいずれかにわたって、誘導具および止め具を戦略的に分布させることができる。歯それ自体が特定の形状であるが、その傾斜も、咬合曲線の誘導および収容に重要である。咬合曲線または弓の「形状」が重要である。歯の機能だけでなく、歯の互い同士の傾斜もである。特定の実施形態では、誘導パッケージシステムは、弓形態の全体の3D形状と、混合された最終的な誘導具機能および止め具機能(歯)との両方を提供することができる。関連技術では、患者の特定のTMJセットの、パラメータについて考慮すべきことを許容しないので、これは、特定の実施形態の1つの利点である。
【0350】
図45A~
図45Cは、不適切な組織塊をともなう無歯の下顎骨弓に対向する、重大な干渉を伴う上顎骨弓が有歯である患者の、2つの弓による改変・復元解決策からなる解決策を、例えば、
図32および
図33を参照して説明した方法を用いて適用される標準的な犬歯誘導パッケージ(例えば、
図34の3410)を用いて開発する際に参照される。この例では、患者は、望まれる2つの弓による解決策に適合しない有歯の上顎骨弓4510A(例えば、
図41を参照して上述した干渉と同様の重大な干渉)を有する。患者の下顎骨弓は無歯であり、望まれる2つの弓による解決策に適合しない組織塊4520Aを有する。適切な咬合曲線(
図43A~
図43C)を提供して咬合/TMJの相乗効果を最適化する解決策において、この患者のTMJ値が考慮される。本例では、エンベロープ領域の境界は、例えば、上顎骨弓および下顎骨弓のいくつかの部分の下方に仮想曲線を配置することによって、下顎骨弓および上顎骨弓の組織を含むように定義される。
【0351】
ある状況下では、2つの弓による改変は、誘導パッケージに由来する復元ガイドを用いて、上顎骨弓を改変し得る。ある状況下では、2つの弓による改変は、外科的ガイドを用いて不適切な組織塊を除去することによって、無歯の下顎骨弓を改変し得る。
【0352】
いくつかの実施態様では、
図35Gの、復元ガイドおよび外科的ガイドの形態の誘導パッケージシステムによって提供される、咬合曲線に基づいた適切な角度で、誘導パッケージに由来するインプラント配置ガイドを用いて、インプラントを外科的に改変された下顎骨弓に配置し得る。誘導パッケージに由来するインプラント配置ガイドを用いることによって、術者が、誘導パッケージ解決策の湾曲および力ベクトルに適した角度で、インプラントを配置することが可能になる。
【0353】
図45A~
図45Cを参照すると、一旦、エンベロープ領域の境界が定義されて、誘導パッケージが取り付けられる(かつ/または個別に調整される)と、不適合な組織に対処するために、上顎骨弓用に1つ以上の復元ガイドが生成され得、また、下顎骨弓用に1つ以上の外科的ガイドが生成され得る。さらに、下顎用インプラント配置ガイドおよび下顎復元物(例えば、義歯)が、個別に調整した運動プロファイルを提供するために、上顎骨弓の組織(例えば、歯)に相互作用するように設計され得る。
図45Bおよび
図45Cは、可能な2つの解決策を示す。いくつかの実施形態では、2つの弓による解決策は、エンベロープ領域および誘導・停止プロファイルに基づいて決定されるだけでなく、特定の患者のために、TMJデータに基づいて適切な咬合曲線を含むように決定されてもよい(
図45Bおよび
図45C)。
【0354】
場合によっては、運動プロファイルのパラメータ化によって、TMJ値に基づいて弓形態を変更する(例えば、咬合曲線に矛盾しないTMJ値に基づいて、理想的な、またはほぼ理想的な、弓形態へと変更する)外科的ガイドおよび/または復元ガイドの生成が可能となってもよい。
【0355】
運動・停止プロファイルおよびパラメータ化は、互いの相乗効果による、上顎骨弓および下顎骨弓の仮想(および数学的)モーフィング形状の連続体である。エンベロープ領域内のこの可能な連続体によって、顎口腔系と異なる相互作用を行い得るが、術者が、決定された運動・停止プロファイルを維持することを可能にする、異なる接触領域および誘導領域が提供される。この例では、最終的に、有歯の上顎骨弓は、復元ガイド(干渉4510Aに対処するため)を用いて改変され、無歯の下顎骨弓は、外科的ガイド(組織4520Aに対処するため)およびインプラント配置ガイド(復元のための基部を提供するため、および咬合曲線を収容するため)を用いて改変され、下顎骨弓は、印刷された下顎骨弓復元物(改変された上顎骨弓の組織と相互作用するため)を用いて回復される。最終結果は、操作された上顎有歯弓(および恐らくは全誘導パッケージ解決策の部分セットとして歯冠を用いて回復された#3)と、印刷された下顎復元物の保持片に取り付けられるように適切に配置されたインプラントを伴う、外科的に操作された下顎骨とを特徴とする(
図45D)。この包括的な改変/復元は、適切な咬合曲線(シュペーおよびウィルソン)と、特定の患者の治療状況を考慮して、その患者の特定のTMJ値を含むように臨床医が決定した誘導・停止プロファイルとを特徴とする。
【0356】
図45A~
図45Dを参照すると、最終製品は、誘導パッケージに由来する改変された上顎骨弓と、外科的に改変された下顎骨弓と、誘導パッケージに由来するインプラント配置ガイドを用いて下顎骨弓に配置されたインプラントと、先に配置されているインプラント上に設置される印刷された下顎復元物とを特徴とする。この誘導パッケージに由来する改変/復元解決策は、個別に調整した誘導パッケージと同じ誘導・停止プロファイルを提供し、また、この特定の患者のために、患者のTMJデータに基づいて適切な咬合曲線を提供してもよい。
【0357】
本明細書で開示される実施形態および請求項は、明細書で説明されると共に図面に示された要素の詳細な構造および配置に適用されることに限定されるものではないということが、理解されるべきである。むしろ、明細書および図面によって、想定された実施形態の例が提供される。本明細書で開示される実施形態および請求項は、さらに、他の実施形態においても可能であり、様々な方法で実現または実施することが可能である。また、本明細書で使用された表現および専門用語は、説明のためのものであり、請求項を限定するものと見なされるべきではないということが、理解されるべきである。
【0358】
したがって、当業者であれば、本出願および請求項が基づいている概念は、本出願で表されている実施形態および請求項の目的のいくつかを実行するための他の構造、方法、およびシステムを設計する際の基盤として容易に利用することができるということが、理解されるであろう。よって、請求項が、そのような同等の構造を含むとみなすことは、重要である。
【0359】
さらには、先述の要約書の目的は、米国特許商標局、および一般にかつ特に当業者を含む、特許および法律の用語または表現をよく知らない市民が、詳細でない調査から、本出願の技術的開示の特質および本質を素早く判定できるようにすることである。要約書は、本出願の請求項を定義することを意図するものではないし、請求項の範囲を限定することを意図するものでも決してない。
【0360】
なお、明細書および添付の請求項の範囲で用いられる、単数形の「1つの("a, an")」および「その("the")」は、文脈が明らかに他のことを指している場合を除き、複数に対する言及も含む。「1つの」構成要素("a" constituent)を含む構成に対する言及は、指定された1つの構成要素に加えて、他の構成要素を含むことを意図するものである。また、好ましい実施形態について説明する際は、明確さのために、専門用語を用いる。各専門用語が、当業者によって理解される最も広い意味を意図していることと、同様の目的を達成するために、同様の方法で動作するすべての技術的な等価物を含むこととが意図されている。
【0361】
本明細書において、「有している("having,")」、「有する("has")」、「含んでいる("including")」、または「含む("includes")」などの語の使用は、開放的であり、「含んでいる("including")」または「含む("includes")」などの語と同じ意味を持つことが意図されており、その他の構造、材料、または行為の存在を除外することは意図されない。同様に、「することができる("can")」または「してもよい("may")」などの語の使用は、開放的であって、構造、材料、または行為が必要なものではないことを示すことが意図されるが、このような語を用いないことは、構造、材料、または行為が必須であるということを示すことを意図するものではない。構造、材料、または行為は、現在必須であるとみなされている範囲内において、そのようなものとして認識される。
【0362】
さらには、本明細書で用いられる「歯科医師」、「歯科医療従事者」、「術者」、「臨床医」などの語は、交換可能に、歯科診療または医療を行う人物、または開示されたシステム、方法、または装置を用いて治療を行う人物を指す。
【0363】
また、1つ以上の方法ステップについての言及は、追加的な方法ステップ、または明白に特定されたステップ間の中間的方法ステップの存在を排除するものではない。さらに、本明細書において、「ステップ」なる語は、採用される方法の異なる態様を限外に含むように用いられる場合があるが、その語は、個々のステップの順序が明確に求められる場合を除いて、本明細書に開示される様々なステップの中の、またはその間の、特定の順序を暗に示すものと解釈されるべきではない。1つ以上の例示的な実施形態の様々な要素を構成するものとして本明細書で説明された構成要素は、例示的なものであって、限定的なものではないということが意図される。本明細書で説明された構成要素と同じ、または同様の、機能を実行する多くの適切な構成要素が、本発明の範囲に包含されることが意図される。本明細書で説明されないその他の構成要素は、例えば、現在開示されている主題の開発後に開発された同様の構成要素を含むことができるが、これらに限定されない。