(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】振動マスセンサシステム
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5776 20120101AFI20240401BHJP
【FI】
G01C19/5776
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169046
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ アッティラ パブラス
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509878(JP,A)
【文献】特開2016-031366(JP,A)
【文献】特開2008-064528(JP,A)
【文献】特開2016-164550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動マスセンサシステムであって、
振動マスおよびハウジングを備えるセンサシステムであって、前記ハウジングは、一組
の駆動電極を含み、前記振動マスは、個別のマッチングする
前記ハウジングの前記一組
の駆動電極に容量結合された一組のマス駆動電極を含む、前記センサシステムと、
前記振動マスの周期的な振動運動を提供するために、前記一組のマス駆動電極および
前記ハウジングの前記一組
の駆動電極のうちの一方に供給される駆動信号を生成するように構成された信号発生器を備えるセンサコントローラであって、前記信号発生器は、
前記駆動信号に関連するDC電圧を生成するように構成されたDC電圧発生器と、
前記駆動信号に関連するAC電圧を生成するように構成されたAC電圧発生器と、
直交位相基準信号を生成するように構成された直交位相基準信号発生器と、
前記DC電圧、前記AC電圧、および前記直交位相基準信号の各々に関連付けられた極性を周期的
かつ同時に反転させるように構成された極性反転構成要素を備え、前記センサコントローラは、前記振動マスの前記周期的な振動運動に応答して振動マスシステムの慣性パラメータを算出するようにさらに構成されている、前記センサコントローラと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記信号発生器は、前記AC電圧に関連する周期の整数倍ごとに、前記DC電圧および前記AC電圧の各々に関連する前記極性を周期的に反転させるように構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記振動マスセンサシステムは、振動マスジャイロスコープとして構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記振動マスは、一組のX軸電極および一組のY軸電極を備えるXY平面振動マスとして構成され、前記ハウジングは、個別の対応する一組のX軸電極および一組のY軸電極を備える、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記駆動信号は、前記振動マスおよび前記ハウジングのうちの一方に関連付けられた一組のX軸電極および一組のY軸電極のうちの一方に供給される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記振動マス及び前記ハウジングの一方に関連付けられた前記一組のX軸電極及び前記一組のY軸電極のうちの他方は、一組の力再平衡電極に対応し、前記信号発生器は、前記一組の力再平衡電極に印加される力再平衡信号を生成するように構成される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサコントローラは、前記力再平衡信号の振幅に基づいて、前記振動マスジャイロスコープの受感軸を中心とする回転を決定するように構成される、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサコントローラは、センサシステムから受信した直交位相信号を前記直交位相基準信号と比較することに基づいて直交位相再平衡信号を生成するように構成され、前記極性反転構成要素は、前記直交位相基準信号に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成される、請求項
3に記載のシステム。
【請求項9】
振動マスセンサシステムのセンサにおける慣性パラメータを決定するための方法であって、
駆動信号を生成するステップと、
振動マスに関連付けられた電極に前記駆動信号を供給して、前記振動マスの周期的な振動運動を提供するステップと、
直交位相基準信号を生成するステップと、
前記駆動信号
および前記直交位相基準信号の極性を周期的に反転させるステップと、
直交位相信号を前記直交位相基準信号と比較するステップと、
前記振動マスの前記周期的な振動運動
および前記振動マスに関連付けられた前記直交位相信号を測定するステップと、
前記振動マスに関連付けられた直交位相を実質的にキャンセルするために、前記振動マスに供給される直交位相再平衡信号を生成するステップと、
前記振動マスの測定された周期的な振動運動に基づいて力再平衡信号を生成するステップと、
前記力再平衡信号の振幅に基づいて慣性パラメータを算出するステップと、を含む方法。
【請求項10】
前記駆動信号を生成するステップは、
DC電圧を生成すること、
前記振動マスの共振周波数にほぼ等しい周波数を有するAC電圧を生成すること、
前記DC電圧と前記AC電圧とを加算して、前記駆動信号を生成すること、を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記極性を周期的に反転させるステップは、前記AC電圧に関連する周期の整数倍ごとに、前記DC電圧および前記AC電圧の各々に関連する極性を周期的に反転させることを含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、センサシステムに関し、より詳しくは、振動マス(vibrating-mass)センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動マスセンサは、加速度および回転などの様々な慣性パラメータを測定するために実装することができる。一例として、振動マスセンサは、駆動信号に応答して振動するように静電的に制御される振動マスまたは振り子マスを含むことができる。慣性運動(例えば、加速、回転等)の影響に対応し得る振動マスの軸外運動が監視され得るように、振動マスの振動運動が、複数組の電極の間の静電容量に基づいて監視され得る。従って、振動マスに力再平衡信号(force-rebalance signal)を提供して、振動マスを軸外方向において実質的にヌル位置に静電的に強制することができる。従って、慣性効果を相殺するために振動マスをヌルにするのに必要な力再平衡信号の振幅は、慣性効果の測定値に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7213458号明細書
【文献】米国特許第7231824号明細書
【文献】米国特許第7444868号明細書
【文献】米国特許第9989553号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3470785号明細書
【発明の概要】
【0004】
1つの例は、振動マスセンサシステムを含む。システムは、振動マスとハウジングとを備えるセンサシステムを含む。ハウジングは、一組のハウジング駆動電極を含む。振動マスは、個別のマッチングする一組のハウジング駆動電極に容量結合された一組のマス駆動電極を含む。システムは、振動マスの周期的な振動運動を提供するために、一組のマス駆動電極および一組のハウジング駆動電極のうちの一方に供給される駆動信号を生成するように構成された信号発生器を備えるセンサコントローラを含む。信号発生器は、駆動信号に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成された極性反転構成要素を含む。センサコントローラは、振動マスの周期的な振動運動に応答して振動マスシステムの慣性パラメータを算出するようにさらに構成される。
【0005】
別の例は、振動マスセンサシステムのセンサにおける慣性パラメータを決定するための方法を含む。本方法は、駆動信号を生成するステップと、振動マスに関連付けられた電極に駆動信号を供給して、振動マスの周期的な振動運動を提供するステップとを含む。また、本方法は、駆動信号の極性を周期的に反転させるステップと、振動マスの周期的な振動運動を測定するステップとを含む。さらに、本方法は、振動マスの測定された周期的な振動運動に基づいて力再平衡信号を生成するステップと、力再平衡信号の振幅に基づいて慣性パラメータを算出するステップとを含む。
【0006】
別の例は、振動マスジャイロスコープシステムを含む。システムは、振動マスとハウジングとを備えるセンサシステムを含む。ハウジングは、一組のハウジング駆動電極を含む。振動マスは、個別のマッチングする一組のハウジング駆動電極に容量結合された一組のマス駆動電極を含む。また、システムは、DC電圧およびAC電圧を含む駆動信号を生成するように構成された信号発生器を備えるジャイロスコープコントローラを含む。駆動信号は、振動マスの周期的な振動運動を提供するために、一組のマス駆動電極および一組のハウジング駆動電極のうちの一方に供給され得る。信号発生器は、DC電圧およびAC電圧に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成された極性反転構成要素を含む。センサコントローラは、振動マスの周期的な振動運動に応答して振動マスシステムの慣性パラメータを算出するようにさらに構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】振動マスセンサシステムの例示的なブロック図である。
【
図3】振動マスセンサシステムのセンサにおける慣性パラメータを決定するための方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、概して、センサシステムに関し、より詳しくは、振動マスセンサシステムに関する。一例として、振動マスセンサシステムは、受感軸(sensitive axis)に対して直交して振動する複数の振動マスを含むクワッドマスジャイロスコープに対応することができる。振動マスセンサシステムは、少なくとも1つの振動マスとハウジングとを含むセンサシステムを含む。振動マスは一組のセンサ電極を含み、ハウジングは個別の対応する一組のハウジング電極を含む。また、振動マスセンサシステムは、信号発生器を含むセンサコントローラをも含む。信号発生器は、駆動軸に沿った振動マスの周期的な振動運動を提供するために、複数のセンサ電極および複数のハウジング電極のうちの一方に供給される駆動信号を生成するように構成される。一例として、駆動信号は、DC電圧およびAC電圧を含むことができる。
【0009】
振動マスの周期的な振動子運動は、振動マスの共振周波数と実質的に等しい周波数で(例えば、ばね撓み部を介して)提供される。駆動信号のDC電圧は、負の静電ばね力を介して振動マスの共振周波数を調整するために提供され得る。しかしながら、駆動信号の一部としてDC電圧を提供することにより、電極上の電荷の蓄積が生じ得る。時間の経過とともに、電荷の蓄積は、振動マスセンサシステムの動作に悪影響を与え得る誤差(例えば、バイアスフック(bias hook)、スケールファクタ誤差、バイアスドリフト、および/またはバイアスウォーク(bias walk))を生じさせ得る。
【0010】
振動マス上の電荷蓄積に関連する誤差を軽減するために、信号発生器は、駆動信号の極性を反転させるように構成され得る。一例として、信号発生器は、駆動信号のDC電圧とAC電圧の両方を反転させることができる。極性反転は、AC電圧の周期などに基づいて、所定の時間間隔ごとに行うことができる。一例として、AC電圧は、振動マスの共振周波数にほぼ等しい周波数を有することができる。これにより、信号発生器は、AC電圧の所定数の周期ごとに駆動信号の極性を反転させることができる。振動マスを駆動する静電力は、駆動信号の電圧の二乗(例えば、DC電圧とAC電圧の和)に基づくので、駆動信号の極性の反転(例えば、DC電圧とAC電圧の両方の極性の反転)は、静電駆動力に影響を与えない。その結果、振動マスの周期的な振動運動を提供するために振動マスに作用する駆動力に影響を与えることなく、振動マス上の容量性の電荷蓄積を軽減することができる。
【0011】
図1は、振動マスセンサシステム100の例示的なブロック図を示す。振動マスセンサシステム100は、測定可能なパラメータ(例えば、加速度または回転)を決定するために振動マスを実装する様々なセンサ(例えば、慣性センサ)のいずれかに対応することができる。一例として、振動マスセンサシステム100は、受感軸を中心とする回転を決定するように構成されたクワッドマスジャイロスコープ(QMG:quad-mass gyroscope)に対応することができる。
【0012】
図1の例では、振動マスセンサシステム100は、センサシステム102を含む。センサシステム102は、少なくとも1つの振動マス104と、振動マス(単数または複数)104を収容する構造構成要素に対応することができるハウジング106とを含む。例えば、振動マス(単数または複数)104は、振動マス(単数または複数)104がハウジング106に対して移動することができるように、ばね撓み部を介してハウジング106に機械的に結合され得る。
図1の例では、振動マス(単数または複数)104は、複数組のマス電極108を含み、ハウジング106は、複数組のハウジング電極110を含む。一例として、個々の組のマス電極108およびハウジング電極110は、マス電極またはハウジング電極のうちの一方に印加される電圧がハウジング106に対する振動マス(単数または複数)104の移動を提供するための静電力を生成することができるように、容量結合され得る。
【0013】
振動マスセンサシステム100は、センサコントローラ112をも含む。センサコントローラ112は、プロセッサ114、信号発生器116、および復調器システム118を含む。信号発生器116は、マス電極108およびハウジング電極110の一組の駆動電極に供給される駆動信号DRVと、マス電極108およびハウジング電極110の一組の力再平衡電極に供給される力再平衡信号FRBと、マス電極108およびハウジング電極110の一組の直交位相電極に供給される直交位相再平衡信号QDR(quadrature rebalance signal)とを生成するように構成される。一例として、直交位相電極は、専用の一組の電極とするか、またはマス電極108およびハウジング電極110の駆動電極および力再平衡電極の組合せに対応することができる。別の例として、センサコントローラ112は、駆動信号DRV、力再平衡信号FRB、および直交位相再平衡信号QDRがデジタル的に生成されるとともに、センサシステム102に提供されるアナログ信号として(例えば、デジタルアナログ変換器(DAC)を介して)アナログに変換されるように、デジタル領域において実装され得る。
【0014】
本明細書で説明されるように、「駆動信号DRV」、「力再平衡信号FRB」、および「直交位相再平衡信号QDR」への全ての言及は、個別の少なくとも1つの振動マス104に関して、各々のそのような駆動信号DRV、力再平衡信号FRB、および直交位相再平衡信号QDRのうちの少なくとも1つに対応する。従って、複数の振動マス104を含む振動マスセンサシステム100の場合、信号発生器116は、振動マス104の各々に対して、駆動信号DRV、力再平衡信号FRB、および直交位相再平衡信号QDRを生成することができる。
【0015】
駆動信号DRVは、DC電圧およびAC電圧を含み得る。AC電圧は、振動マス(単数または複数)104の共振周波数にほぼ等しい周波数を有することができる。DC電圧は、負の静電ばね力を介して振動マス(単数または複数)104の共振周波数を調整し、かつAC電圧の周波数の2倍とは対照的に、AC電圧の周波数において駆動信号の復調を提供するために提供され得る。従って、駆動信号DRVがマス電極108およびハウジング電極110の駆動電極に供給されることに応答して、振動マス(単数または複数)104の各々は、静電力を介して、AC電圧の周波数にほぼ等しい周波数で周期的な振動運動で駆動され得る。振動マスセンサシステム100がQMGジャイロスコープとして構成される例では、振動マスセンサシステム100は、4個の振動マス104を含むことができ、振動マス104の各々は、所与の軸に沿って駆動され、4個の振動マス104のうちの2つは、他の2つの振動マス104から180°位相がずれている。
【0016】
駆動信号DRVの印加に応答して、複数のピックオフ信号PO(pickoff signals)が、センサシステム102から(例えば、マス電極108およびハウジング電極110から)復調器システム118に提供される。一例として、ピックオフ信号POは、振動マス(単数または複数)104の運動に応答してマス電極108およびハウジング電極110に容量結合された振幅変調ピックオフ信号に対応することができる。従って、ピックオフ信号POは、振動マス(単数または複数)104の周期的な振動運動を維持するため、振動マス(単数または複数)104を感知軸(sense axis)におけるヌル位置に維持するなどのそれぞれのために、個々の力再平衡信号FRBの適切な大きさを決定するために復調器システム118により復調され得る。
【0017】
従って、プロセッサ114は、センサシステム102の測定可能な慣性パラメータを示すように、力再平衡信号FRBの大きさを算出することができる。一例として、力再平衡信号FRBの大きさ、従って、振動マス(単数または複数)104を感知軸に沿ってヌル位置に維持するために必要とされる静電力は、測定可能な慣性パラメータ(例えば、入力軸を中心とするセンサシステム102の回転速度)に対応することができる。従って、力再平衡信号FRBの大きさは、測定可能な慣性パラメータを算出するためにプロセッサ114によって実装され得る。従って、センサコントローラ112は、慣性パラメータの測定値(例えば、入力軸を中心とする回転の角速度)を出力信号MPとして提供することができる。
【0018】
一例として、製造変動および電子的変動は、振動マス(単数または複数)104のばね剛性および質量の変動に起因して、振動マス(単数または複数)104の各々の駆動軸および感知軸の共振周波数の分離の変化をもたらし得る。そのような周波数分離の結果として、再変調位相誤差によって直交位相効果(quadrature effects)が感知軸に結合し、従って、生成される力再平衡信号FRBの大きさに影響を与える可能性がある。力再平衡信号FRBの大きさは、測定可能な慣性パラメータに対応し得るので、そのような直交結合(quadrature coupling)によって、出力信号MPの算出において誤差が生じ得る。従って、復調器システム118は、本明細書でより詳細に説明するように、ピックオフ信号POから受信された直交位相信号を直交位相基準信号と比較することなどに基づいて、ピックオフ信号POから直交位相を測定することができる。従って、信号発生器116は、直交位相運動(quadrature motion)、従って力再平衡信号FRBへの直交結合を実質的に軽減するために、マス電極108およびハウジング電極110に対して直交位相再平衡信号(単数または複数)QDRを生成することができる。
【0019】
上述したように、駆動信号DRVは、駆動信号DRVがAC電圧とDC電圧との和となるように、DC電圧およびAC電圧の両方を含む。上記でも説明したように、DC電圧は、負の静電ばね力を介して振動マス(単数または複数)104の共振周波数を調整するために提供され、それにより、振動マス(単数または複数)104の共振周波数とAC電圧の周波数との間の任意の小さな差を軽減することができる。しかしながら、駆動信号DRVの一部としてDC電圧を提供することにより、マス電極108および/またはハウジング電極110上に電荷の蓄積が生じ得る。時間の経過とともに、電荷の蓄積は、振動マスセンサシステム100の動作に悪影響を与え得る誤差(例えば、バイアスフックおよび/またはバイアスウォーク)を生じさせ得る。例えば、そのようなバイアス誤差は、力再平衡信号FRBの生成における誤差、従って慣性パラメータMPの測定における誤差をもたらす可能性がある。
【0020】
図1の例では、信号発生器116は、極性反転構成要素(「POLARITY REVERSE」)120を含む。極性反転構成要素120は、駆動信号DRVの極性を周期的に反転させて、振動マス(単数または複数)104上の電荷蓄積に関連する誤差を軽減するように構成される。一例として、極性反転構成要素120は、DC電圧の符号を反転させ、AC電圧の180°位相シフトを実施することなどによって、駆動信号DRVのDC電圧とAC電圧との両方を同時に反転させることができる。例えば、駆動信号DRVの極性反転は、AC電圧の周期の整数倍に基づくなど、所定の時間間隔ごとに行うことができる。従って、極性反転構成要素120は、AC電圧の所定数の周期ごとに駆動信号DRVの極性を反転させることができる。本明細書でより詳細に説明するように、振動マス(単数または複数)104を駆動する静電力は、駆動信号DRVの電圧の二乗(例えば、DC電圧とAC電圧の和)に基づくので、駆動信号DRVの極性の反転(例えば、DC電圧とAC電圧の両方の極性の反転)は、静電駆動力に影響を与えない。結果として、振動マス(単数または複数)104の周期的な振動運動を提供するために振動マス(単数または複数)104に作用する駆動力に影響を与えることなく、振動マス(単数または複数)104上の容量性の電荷蓄積を軽減することができる。従って、容量性の電荷蓄積から生じるバイアス誤差を軽減することができる。
【0021】
図2は、信号発生器200の例示的な図を示す。信号発生器200は、
図1の例における信号発生器116に対応することができる。従って、
図2の例に関する以下の説明では、
図1の例を参照する。一例として、信号発生器200は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せに対応することができる。例えば、信号発生器200は、集積回路(IC)チップ、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または様々なデバイスのいずれかの上に、またはその一部として実装され得る。
【0022】
信号発生器200は、AC電圧発生器202及びDC電圧発生器204を含む。AC電圧発生器202は、振動マスセンサシステム100の振動マス(単数または複数)104の共振周波数にほぼ等しい周波数を有することができるAC電圧V
ACを生成するように構成される。DC電圧発生器204は、DC電圧V
DCを生成するように構成される。一例として、AC電圧V
ACは、DC電圧V
DCの振幅よりも低い振幅を有することができる。例えば、AC電圧V
ACは、1ボルト未満(例えば、約0.1ボルト)とすることができ、DC電圧V
DCは、3ボルト超(例えば、約5ボルト)とすることができる。
図2の例では、DC電圧V
DCおよびAC電圧V
ACは、駆動信号DRVを生成するために加算構成要素206を介して互いに加算される。駆動信号DRVは、マス電極108及び/又はハウジング電極110に対応し得る電極208に供給されるものとして示されている。
【0023】
また、信号発生器200は、力再平衡信号発生器(「FORCE-REBALANCE GENERATOR」)210と、直交位相再平衡信号発生器(「QUADRATURE REBALANCE GENERATOR」)212とを含む。力再平衡信号発生器210は、力再平衡信号FRBを生成するように構成され、直交位相再平衡信号発生器212は、直交位相再平衡信号QDRを生成するように構成される。上述したように、力再平衡信号FRBが(例えば、QMGジャイロスコープの駆動軸に直交する軸に沿って)振動マス(単数または複数)104を再平衡させるのに十分な力を生成するための振幅を有するように生成されるように、力再平衡信号FRBは、ピックオフ信号POに応答して生成される。
【0024】
上述したように、直交位相再平衡信号QDRは、振動マス(単数または複数)104に作用する直交位相効果を再平衡させるのに十分な力を生成するための振幅を有するように生成される。
図2の例では、信号発生器200は、所定の直交位相基準信号を生成するように構成された直交位相基準信号発生器(「QUADRATURE REFERENCE GENERATOR」)214をも含む。復調器システム118は、振動マス(単数または複数)104から測定された直交位相に対応する直交位相信号をピックオフ信号POの一部として受信することができる。従って、プロセッサ114は、受信した直交位相信号を直交位相基準信号と比較して、差を決定することができる。従って、直交位相再平衡信号発生器212は、振動マス(単数または複数)104の直交位相再平衡を提供して直交位相信号と直交位相基準信号との間の差を補償するために、マス電極108および/またはハウジング電極110に供給される直交位相再平衡信号を生成することができる。
【0025】
図2の例では、信号発生器200は、極性反転構成要素(「POLARITY REVERSAL COMPONENT」)216をさらに含む。極性反転構成要素216は、AC電圧発生器202およびDC電圧発生器204の各々に反転信号REVを供給するように構成される。従って、反転信号REVは、AC電圧V
ACおよびDC電圧V
DCの極性をそれぞれ周期的に反転させるように、AC電圧発生器202およびDC電圧発生器204に命令することができる。
図2の例では、極性反転構成要素216は、AC電圧V
ACおよびDC電圧V
DCの極性反転に対して所定のタイミングを提供することができるクロック信号CLKを受信する。上述したように、所定のタイミングは、AC電圧V
ACの周期の整数倍とすることができる。
【0026】
上述したように、振動マス(単数または複数)104を駆動する静電力は、駆動信号DRVに対応する駆動電圧VDRVの二乗に基づく。駆動電圧VDRVは、以下のように表すことができる。
【0027】
VDRV=VAC+VDC 式1
VDRV(t)=VAC cos(2πfACt)+VDC 式2
ここで、fACtは、振動マス(単数または複数)104の共振周波数である。
従って、静電力FDRVは、次のように表すことができる。
【0028】
FDRV(t)=VDRV
2 式3
FDRV(t)=VDC
2+2*VDC*VAC cos(2πfACt)+VAC
2 cos2(2πfACt) 式4
式4の余弦二乗項に三角関数の恒等式を適用すると、以下の式が得られる。
【0029】
FDRV(t)=(VDC
2+VAC
2/2)+2*VDC*VAC cos(2πfACt)+VAC
2/2 cos(2πfACt) 式5
式5の第1項は、DC電圧VDCとAC電圧VACとの和を二乗したDC電圧を表す。式5の第2項は、振動マス(単数または複数)104の駆動力を表し、式5の第3項は、駆動周波数の第2高調波である。
【0030】
式5におけるAC電圧VACおよびDC電圧VDCの二乗が駆動力FDRV(t)に影響を与えるものであるとすると、駆動信号DRVのDC電圧VDCおよびAC電圧VACの極性の反転は、静電駆動力FDRV(t)に影響を与えない。その結果、振動マス(単数または複数)104の周期的な振動運動を提供するために振動マス(単数または複数)104に作用する駆動力FDRV(t)に影響を与えることなく、振動マス(単数または複数)104上の容量性の電荷蓄積を軽減することができる。従って、容量性の電荷蓄積から生じるバイアス誤差を軽減することができる。
【0031】
さらに、
図2の例では、極性反転構成要素216は、反転信号REVを直交位相基準信号発生器214に供給する。従って、反転信号REVは、直交位相基準信号発生器214に、AC電圧V
ACおよびDC電圧V
DCと同じ周期間隔で直交位相基準信号の符号を反転させるように命令することができる。このようにして、プロセッサ114は、直交位相信号を直交位相基準信号と適切に比較することができ、その結果、直交位相再平衡信号発生器212は、振動マス(単数または複数)104に作用する直交位相効果に適切に対応するように直交位相再平衡信号QDRを生成することができる。
【0032】
上記で説明された前述の構造的特徴および機能的特徴を考慮して、本開示の様々な態様による方法は、
図3を参照してより良く理解されるであろう。説明を簡単にするために、
図3の方法は、連続的に実行されるものとして示され、説明されているが、いくつかの態様は、本開示によれば、本明細書に示され、説明されているものとは異なる順序で、および/または他の態様と同時に行われ得るので、本開示は、例示されている順序によって限定されないことを理解および認識されたい。さらに、本開示の一態様による方法を実施するために、図示されたすべての特徴が必要とされるわけではない。
【0033】
図3は、振動マスセンサシステムのセンサ(例えば、振動マスセンサシステム100)における慣性パラメータを決定するための方法300の一例を示す。302において、駆動信号(例えば、駆動信号DRV)が生成される。304において、駆動信号が振動マス(例えば、振動マス104)に関連付けられた電極(例えば、マス電極108および/またはハウジング電極110)に供給されて、振動マスの周期的な振動運動を提供する。306において、駆動信号の極性が周期的に反転される。308において、振動マスの周期的な振動運動が測定される。310において、振動マスの測定された周期的な振動運動に基づいて、力再平衡信号(例えば、力再平衡信号FRB)が生成される。312において、力再平衡信号の振幅に基づいて慣性パラメータ(例えば、測定可能な慣性パラメータMP)が算出される。
【0034】
上記の説明は、本開示の例である。もちろん、本開示を説明する目的のために構成要素または方法の考えられるあらゆる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は本開示の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれる全てのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することを意図している。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
振動マスセンサシステムであって、
振動マスおよびハウジングを備えるセンサシステムであって、前記ハウジングは、一組のハウジング駆動電極を含み、前記振動マスは、個別のマッチングする一組のハウジング駆動電極に容量結合された一組のマス駆動電極を含む、前記センサシステムと、
前記振動マスの周期的な振動運動を提供するために、前記一組のマス駆動電極および前記一組のハウジング駆動電極のうちの一方に供給される駆動信号を生成するように構成された信号発生器を備えるセンサコントローラであって、前記信号発生器は、前記駆動信号に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成された極性反転構成要素を備え、前記センサコントローラは、前記振動マスの前記周期的な振動運動に応答して振動マスシステムの慣性パラメータを算出するようにさらに構成されている、前記センサコントローラと、を備えるシステム。
[付記2]
前記駆動信号は、DC電圧およびAC電圧を含み、前記極性反転構成要素は、前記DC電圧および前記AC電圧の各々の極性を周期的に反転させるように構成される、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記信号発生器は、前記AC電圧に関連する周期の整数倍ごとに、前記DC電圧および前記AC電圧の各々に関連する前記極性を周期的に反転させるように構成されている、付記2に記載のシステム。
[付記4]
前記信号発生器は、
前記駆動信号に関連するDC電圧を生成するように構成されたDC電圧発生器と、
前記駆動信号に関連するAC電圧を生成するように構成されたAC電圧発生器と、
直交位相基準信号を生成するように構成された直交位相基準信号発生部と、を備え、
前記極性反転構成要素は、前記DC電圧、前記AC電圧、および前記直交位相基準信号の各々の極性を周期的かつ同時に反転させるように構成されている、付記2に記載のシステム。
[付記5]
前記振動マスセンサシステムは、振動マスジャイロスコープとして構成される、付記1に記載のシステム。
[付記6]
前記振動マスは、一組のX軸電極および一組のY軸電極を備えるXY平面振動マスとして構成され、前記ハウジングは、個別の対応する一組のX軸電極および一組のY軸電極を備える、付記5に記載のシステム。
[付記7]
前記駆動信号は、前記振動マスおよび前記ハウジングのうちの一方に関連付けられた一組のX軸電極および一組のY軸電極のうちの一方に供給される、付記6に記載のシステム。
[付記8]
前記振動マス及び前記ハウジングの一方に関連付けられた前記一組のX軸電極及び前記一組のY軸電極のうちの他方は、一組の力再平衡電極に対応し、前記信号発生器は、前記一組の力再平衡電極に印加される力再平衡信号を生成するように構成される、付記7に記載のシステム。
[付記9]
前記センサコントローラは、前記力再平衡信号の振幅に基づいて、前記振動マスジャイロスコープの受感軸を中心とする回転を決定するように構成される、付記8に記載のシステム。
[付記10]
前記信号発生器は、直交位相基準信号を生成するように構成された直交位相基準信号を生成するように構成され、前記センサコントローラは、センサシステムから受信した直交位相信号を前記直交位相基準信号と比較することに基づいて直交位相再平衡信号を生成するように構成され、前記極性反転構成要素は、前記直交位相基準信号に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成される、付記5に記載のシステム。
[付記11]
振動マスセンサシステムのセンサにおける慣性パラメータを決定するための方法であって、
駆動信号を生成するステップと、
振動マスに関連付けられた電極に前記駆動信号を供給して、前記振動マスの周期的な振動運動を提供するステップと、
前記駆動信号の極性を周期的に反転させるステップと、
前記振動マスの前記周期的な振動運動を測定するステップと、
前記振動マスの測定された周期的な振動運動に基づいて力再平衡信号を生成するステップと、
前記力再平衡信号の振幅に基づいて慣性パラメータを算出するステップと、を含む方法。
[付記12]
前記駆動信号を生成するステップは、
DC電圧を生成すること、
前記振動マスの共振周波数にほぼ等しい周波数を有するAC電圧を生成すること、
前記DC電圧と前記AC電圧とを加算して、前記駆動信号を生成すること、を含む、付記11に記載の方法。
[付記13]
前記極性を周期的に反転させるステップは、前記AC電圧に関連する周期の整数倍ごとに、前記DC電圧および前記AC電圧の各々に関連する極性を周期的に反転させることを含む、付記12に記載の方法。
[付記14]
前記振動マスの前記周期的な振動運動を測定するステップは、前記振動マスに関連付けられた直交位相信号を測定することを含み、前記方法は、さらに
直交位相基準信号を生成するステップと、
前記直交位相信号を前記直交位相基準信号と比較するステップと、
前記振動マスに関連付けられた直交位相を実質的にキャンセルするために、前記振動マスに供給される直交位相再平衡信号を生成するステップと、を含む、付記11に記載の方法。
[付記15]
前記直交位相基準信号の極性を周期的に反転させるステップをさらに含む、付記14に記載の方法。
[付記16]
振動マスジャイロスコープシステムであって、
振動マスおよびハウジングを備えるセンサシステムであって、前記ハウジングは、一組のハウジング駆動電極を含み、前記振動マスは、個別のマッチングする一組のハウジング駆動電極に容量結合された一組のマス駆動電極を含む、前記センサシステムと、
DC電圧およびAC電圧を含む駆動信号を生成するように構成された信号発生器を備えるジャイロスコープコントローラであって、前記駆動信号は、前記振動マスの周期的な振動運動を提供するために、前記一組のマス駆動電極および前記一組のハウジング駆動電極のうちの一方に供給され、前記信号発生器は、前記DC電圧および前記AC電圧に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成された極性反転構成要素を備え、センサコントローラは、前記振動マスの前記周期的な振動運動に応答して振動マスシステムの慣性パラメータを算出するようにさらに構成されている、前記ジャイロスコープコントローラと、を備えるシステム。
[付記17]
前記信号発生器は、前記AC電圧に関連する周期の整数倍ごとに、前記DC電圧および前記AC電圧の各々に関連する前記極性を周期的に反転させるように構成される、付記16に記載のシステム。
[付記18]
前記信号発生器は、
前記駆動信号に関連するDC電圧を生成するように構成されたDC電圧発生器と、
前記駆動信号に関連するAC電圧を生成するように構成されたAC電圧発生器と、
力再平衡信号を生成するように構成された力再平衡信号発生器と、を含む、付記16に記載のシステム。
[付記19]
前記センサコントローラは、前記力再平衡信号の振幅に基づいて、前記振動マスジャイロスコープの受感軸を中心とする回転を決定するように構成される、付記18に記載のシステム。
[付記20]
前記信号発生器は、
直交位相基準信号を生成するように構成された直交位相基準信号発生部と、
直交位相再平衡信号を生成するように構成された直交位相再平衡信号発生器と、を含み、前記センサコントローラは、センサシステムから受信した直交位相信号を前記直交位相基準信号と比較するように構成され、前記極性反転構成要素は、前記直交位相基準信号に関連付けられた極性を周期的に反転させるように構成される、付記16に記載のシステム。