(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】エンドエフェクタおよびそれを備えるロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B25J15/08 D
B25J15/08 B
(21)【出願番号】P 2022202677
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2018180555の分割
【原出願日】2018-09-26
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】篠平 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-096284(JP,A)
【文献】特開2016-049576(JP,A)
【文献】特表2009-527366(JP,A)
【文献】特開2004-276141(JP,A)
【文献】特開昭63-144985(JP,A)
【文献】特開平08-132363(JP,A)
【文献】特開平01-274989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するための複数の把持部材と、
前記複数の把持部材を
他の把持部材とは個別に揺動させるための複数のエアアクチュエータと、
前記複数のエアアクチュエータの
それぞれの内部の空気圧を計測するための圧力センサと、
前記エアアクチュエータによって揺動される把持部材の動きを規制するガイドと、
を備え、
前記複数の把持部材
の一端側は、前記複数のエアアクチュエータの
いずれかに連結されており、
前記圧力センサによって測定された空気圧に基づいて、各把持部材がワークを押圧する力を調整することを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記エアアクチュエータと前記ガイドとの距離が調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
固定されている把持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記複数の把持部材は、先端が近づいたり離れたりするように前記エアアクチュエータによって制御されることを特徴とする請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを支持するアームと、
前記エンドエフェクタおよび前記アームを制御する制御装置と、を備えることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドエフェクタおよびそれを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロボットのアームに取り付けられる、ワークを把持するためのエンドエフェクタが知られている。近年では、協調ロボットの成長が著しく、それに取り付けられるエンドエフェクタの開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、不定形のワークを把持することができる、比較的簡素な機構のエンドエフェクタを模索し、本発明に想到した。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、不定形のワークを把持することができる、比較的簡素な機構のエンドエフェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のエンドエフェクタは、ワークを把持するための第1、第2把持部材と、第1把持部材を第2把持部材とは個別に揺動させるためのアクチュエータと、アクチュエータによって揺動される第1把持部材の動きを規制するガイドと、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不定形のワークを把持することができる、比較的簡素な機構のエンドエフェクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るロボットの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)~(c)はそれぞれ、
図1のエンドエフェクタの上面図、正面図、側面図である。
【
図4】
図1の制御装置の機能および構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係るロボット1の概略構成を示す図である。ロボット1は、ワークをハンドリングするための装置である。ロボット1は、好適には、要介護者等の食事を支援するロボットとして、具体的には食べ物を把持して口元まで運ぶのを支援するロボットとして用いられる。ロボット1は、ワークを把持するためのエンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10を支持し、エンドエフェクタ10の位置や姿勢を変化させるアーム12と、エンドエフェクタ10およびアーム12を制御する制御装置14と、を備える。
【0012】
図2は、エンドエフェクタ10の斜視図である。
図3(a)~(c)はそれぞれ、エンドエフェクタ10の上面図、正面図、側面図である。エンドエフェクタ10は、接続部20と、基部21と、第1把持部材31、第2把持部材32および第3把持部材33と、第1アクチュエータ41および第2アクチュエータ42と、第1ガイド51および第2ガイド52と、を備える。
【0013】
接続部20は、例えば着脱可能に、アーム12(
図2、3では不図示)に接続される。基部21は、接続部20に固定される。基部21は、形状は特に限定されないが、図示の例では、本体部22と、補強部23と、を含む。本体部22は、長尺状の部材であり、一端側(図示の例では上端側)が接続部20に固定されている。本体部22は、延在方向に垂直な断面が、略ホームベース状の略五角形である。補強部23は、側面視で略三角形状の板状の部材であり、接続部20と本体部22との固定を補強する。
【0014】
第1アクチュエータ41は、本体部22の第1面22aであって、本体部22の延在方向に平行な第1面22aに固定される。第2アクチュエータ42は、本体部22の第2面22bであって、本体部22の延在方向に平行で、第1面22aと交差する第2面22bに固定される。第1アクチュエータ41および第2アクチュエータ42は、本実施の形態では、それらの内部に供給される空気の圧力により作動するエアアクチュエータである。各把持部材は、その形状は特に限定しないが、図示の例では棒状、特に先細の棒状である。
【0015】
第1把持部材31は、一端側が第1アクチュエータ41に連結されている。第1把持部材31は特に、基部21の本体部22の延在方向に略平行な方向であって第1アクチュエータ41の駆動方向と交差する方向に延在するように、図示の例では第1アクチュエータ41の駆動方向と実質的に直交する方向に延在するように、一端側が第1アクチュエータ41に連結されている。第1アクチュエータ41は、第1把持部材31の一端側を、第1面22aに直交する方向(すなわち延在方向Dに直交する方向)に駆動する。これにより、第1把持部材31は、第1ガイド51に環囲されている部分を支点として、基部21に対して揺動する。
【0016】
第2把持部材32は、一端側が第2アクチュエータ42に連結されている。第2把持部材32は特に、基部21の本体部22の延在方向に略平行な方向であって第2アクチュエータ42の駆動方向と交差する方向に延在するように、図示の例では第2アクチュエータ42の駆動方向と実質的に直交する方向に延在するように、一端側が第2アクチュエータ42に連結されている。第2アクチュエータ42は、第2把持部材32の一端側を、第2面22bに直交する方向(すなわち延在方向Dに直交する方向)に駆動する。これにより、第2把持部材32は、第2ガイド52に環囲されている部分を支点として、基部21に対して揺動する。
【0017】
第3把持部材33は、基部21の本体部22の延在方向に略平行に延在するように、一端側が基部21に固定されている。つまり、第3把持部材33は、第1把持部材31および第2把持部材32と異なり、基部21に対して動かない。
【0018】
第1把持部材31、第2把持部材32および第3把持部材33は、それらの延在方向が互いに概ね平行で、それらの先端が周方向に並ぶように設けられる。
【0019】
第1ガイド51は、基部21の本体部22の第1面22aに取り付けられている。第1ガイド51は、第1アクチュエータ41によって揺動される第1把持部材31の動きを規制する。第1ガイド51は特に、第1把持部材31が或る一平面上でのみ揺動するように第1把持部材31の動きを規制する。当該平面は、例えば基部21の本体部22の第1面22aに直交する平面であってもよく、また例えば第1アクチュエータ41の駆動方向と平行な平面であってもよい。
【0020】
第1ガイド51の構成は特には限定しないが、本実施の形態では第1ガイド51は、基部21の本体部22の延在方向に当該第1ガイド51を貫通する貫通孔を有し、この貫通孔に第1把持部材31が挿通されている。この貫通孔は、第1把持部材31を一平面上でのみ揺動するよう構成されている。具体的には、当該平面と平行な方向においては、貫通孔は第1把持部材31よりも .かに幅広であり(すなわち遊び隙間があり)、当該平面に直交する方向においては、当該貫通孔は第1把持部材31と実質的に同じ幅となっている。
【0021】
第2ガイド52は、基部21の本体部22の第2面22bに取り付けられている。第2ガイド52は、第2アクチュエータ42によって揺動される第2把持部材32の動きを規制する。第2ガイド52は特に、第2把持部材32が或る一平面上でのみ揺動するように第2把持部材32の動きを規制する。当該平面は、例えば基部21の本体部22の第2面22bに直交する平面であってもよく、また例えば第2アクチュエータ42の駆動方向と平行な平面であってもよい。
【0022】
第2ガイド52の構成は特には限定しないが、本実施の形態では第2ガイド52は、第1ガイド51と同様に、基部21の本体部22の延在方向に当該第2ガイド52を貫通する貫通孔を有し、この貫通孔に第2把持部材32が挿通されている。この貫通孔は、第1ガイド51の貫通孔と同様に、第2把持部材32を一平面上でのみ揺動するよう構成されている。
【0023】
第1アクチュエータ41によって第1把持部材31の一端側が第1面22aからより離れるように駆動されると、第1把持部材31の先端(他端)側が第1面22aひいては第3把持部材33の先端に近づく。反対に、第1アクチュエータ41によって第1把持部材31の一端側が第1面22aに近づくように駆動されると、第1把持部材31の先端側が第1面22aひいては第3把持部材33の先端から離れる。
【0024】
また、第2アクチュエータ42によって第2把持部材32の一端側が第2面22bからより離れるように駆動されると、第2把持部材32の先端(他端)側が第2面22bひいては第3把持部材33の先端に近づく。反対に、第2アクチュエータ42によって第2把持部材32の一端側が第2面22bに近づくように駆動されると、第2把持部材32の先端側が第2面22bひいては第3把持部材33の先端から離れる。
【0025】
エンドエフェクタ10は、例えば第1把持部材31および第2把持部材32の各先端を第3把持部材33に近づけることによってワークを把持でき、また例えば第1把持部材31および第2把持部材32の各先端を第3把持部材33から遠ざけることによって把持しているワークを離すことができる。
【0026】
図4は、制御装置14の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0027】
制御装置14は、アーム制御部62と、エンドエフェクタ制御部64とを含む。アーム制御部62は、エンドエフェクタ10が所望の位置に移動し、所望の姿勢となるようにアーム12を制御する。
【0028】
エンドエフェクタ制御部64は、エンドエフェクタ10がワークを把持したり把持しているワークを離すように、第1アクチュエータ41および第2アクチュエータ42を個別に制御する。具体的には例えば、エンドエフェクタ制御部64は、エンドエフェクタ10にワークを把持させるべく、第1把持部材31および/または第2把持部材32の先端が第3把持部材33の先端に近づくように第1アクチュエータ41および/または第2アクチュエータ42を制御する。また例えばエンドエフェクタ制御部64は、エンドエフェクタ10に把持しているワークを離させるべく、第1把持部材31および/または第2把持部材32の先端が第3把持部材33の先端から離れるように第1アクチュエータ41および/または第2アクチュエータ42を制御する。
【0029】
ここで、把持部材がワークを把持したり、把持しているワークを離すと、第1アクチュエータ41、第2アクチュエータ42が把持部材から受ける反力が変化する。上述のように本実施の形態の第1アクチュエータ41、第2アクチュエータ42はエアアクチュエータであるため、把持部材から受ける反力が変化するとそれらの内部の空気圧が変化する。そこで、第1アクチュエータ41、第2アクチュエータ42の内部の空気圧を計測するための圧力センサを設け、第1アクチュエータ41、第2アクチュエータ42の内部の空気圧をエンドエフェクタ制御部64にフィードバックし、エンドエフェクタ制御部64はフィードバックされた空気圧に基づいて各把持部材がワークを押圧する力を調整してもよい。これにより、軟らかいワークでも安全に把持できる。
【0030】
つづいて、本実施の形態が奏する効果について述べる。本実施の形態によれば、各把持部材は他の把持部材とは個別に揺動されるため、例えば不定形のワークを把持することが可能となる。加えて、アクチュエータによって揺動される把持部材の動きは、ガイドによって規制されるため、アクチュエータ自体がガイドを持つ必要はなく、したがってアクチュエータを簡素化できる。
【0031】
また、本実施の形態では、アクチュエータにエアアクチュエータを採用しているため、アクチュエータに電動モータを採用する場合に比べて、アクチュエータを軽量化できる。これにより、基部21等のエンドエフェクタ10の各部材には、そこまでの強度が求められないため、例えば樹脂などの、比較的軽量で低コストな材料を使用することができる。また、アクチュエータにエアアクチュエータを採用してエンドエフェクタ10を軽量化したことにより、エンドエフェクタ10を支持するアーム12を駆動するための駆動電力を低減できる。また、ロボット1全体としても当然軽量化するため、その設置が容易となる。
【0032】
以上、実施の形態に係るエンドエフェクタとそれを備えるロボットについて説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、実施の形態同士の組み合わせも可能である。
【0033】
実施の形態では、エンドエフェクタ10が3本の把持部材を備える場合について説明したが、把持部材の数は複数であればよく、これには限定されない。
【0034】
例えばエンドエフェクタ10は、2本の把持部材を備えてもよい。この場合、例えば、2本の把持部材の一方は、実施の形態の第1把持部材31に相当し、他方は実施の形態の第3把持部材に相当するものであってもよい。つまり、2本の把持部材のうちの一方の把持部材は、アクチュエータに駆動されて、ガイドに環囲されている部分を支点として基部21ひいては他方の把持部材に対して揺動し、他方の把持部材は、基部21に対して動かないように一端側が基部21に対して固定されてもよい。また例えば、2本の把持部材は、いずれもアクチュエータに駆動されて、基部21ひいては他方の把持部材に対して揺動するものであってもよい。
【0035】
また例えばエンドエフェクタ10は、4以上の把持部材を備えてもよい。この場合、すべての把持部材は、延在方向が互いに概ね平行で、それらの先端が周方向に並ぶように設けられればよい。すべての把持部材は、実施の形態の第1把持部材31や第2把持部材32のように、それぞれアクチュエータに駆動されて、ガイドに環囲されている部分を支点として基部21ひいては他の把持部材に対して揺動するものであってもよい。あるいは、複数の把持部材のうちの一部の把持部材が、実施の形態の第3把持部材33のように、基部21に対して動かないように一端側が基部21に対して固定されてもよい。
【0036】
実施の形態では、各ガイドは、その貫通孔が、把持部材を所定の平面上でのみ揺動するよう構成されている場合について説明したが、これには限定されない。各ガイドは、把持部材を所定の平面上でのみ揺動するよう構成されていればよく、例えば揺動可能に把持部材を支持するヒンジを有していてもよい。
【0037】
実施の形態では、第1ガイド51と第2ガイド52が別体である場合について説明したが、これには限定されず、第1ガイド51と第2ガイド52は一体であってもよい。
【0038】
実施の形態では特に言及しなかったが、第1ガイド51は、第1アクチュエータ41との距離L1が調整可能なように基部21に取り付けられてもよい。同様に、第2ガイド52は、第2アクチュエータ42との距離L2が調整可能なように基部21に取り付けられてもよい。別の言い方をすると、第1把持部材31、第2把持部材32はそれぞれ、支点の位置が調整可能であってもよい。なお、距離L1と距離L2は、同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
アクチュエータとガイドとの距離が近い(すなわち支点が第1把持部材31の先端から遠い)場合、アクチュエータの駆動範囲を短くできる。一方、アクチュエータとガイドのとの距離が遠い(すなわち支点が第1把持部材31の先端に近い)場合、そうでない場合と比べて、同じアクチュエータの駆動力でもより強い把持力を実現できる。
【0040】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0041】
1 ロボット、 10 エンドエフェクタ、 31 第1把持部材、 32 第2把持部材、 33 第3把持部材、 41 第1アクチュエータ、 42 第2アクチュエータ。