(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】血管グラフトおよび大動脈グラフトならびに配備ツール
(51)【国際特許分類】
A61F 2/97 20130101AFI20240401BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20240401BHJP
【FI】
A61F2/97
A61F2/966
(21)【出願番号】P 2022518983
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(86)【国際出願番号】 US2019068955
(87)【国際公開番号】W WO2021061182
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521001216
【氏名又は名称】アキューデオン・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ・トーマス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー・ピン-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・ジミー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0270969(US,A1)
【文献】特表2009-523565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/97
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
少なくとも2つのリボンを含む中央セクションによって接続された遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体
の前記少なくとも2つのリボンに係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含む、血管グラフト配備ツール。
【請求項2】
前記アクチュエータに連結された複数のローラーをさらに含み、
各ローラーは、前記リボンのうちの1つに係合するように構成されている、請求項
1に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項3】
前記ローラーは、前記マンドレルの長手方向軸に対して実質的に垂直に向けられている、請求項
2に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項4】
前記アクチュエータは、複数のペグを含み、
各ペグは、前記リボンのうちの1つに係合するように構成されている、請求項
1に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項5】
前記グリップに対する前記アクチュエータの近位移動は、前記遠位シース部分を長手方向に分離させ、前記血管グラフトの遠位部分を自由にするように構成されている、請求項
1に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項6】
前記アクチュエータの別の近位移動は、前記近位シース部分を長手方向に分離させ、前記血管グラフトの近位部分を自由にするように構成されている、請求項
5に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項7】
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含む、請求項1に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項8】
前記マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能である、請求項
7に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項9】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記針は、針ブリードバックポートをさらに含み、前記針ブリードバックポートは、前記針が前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成されてい
る、血管グラフト配備ツール。
【請求項10】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記グリップ内に針後退組立体をさらに含む
、血管グラフト配備ツール。
【請求項11】
前記針後退組立体は、前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を保持するように構成され、前記針後退組立体を解放すると、前記針は前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する、請求項
10に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項12】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記針を通って延びるガイドワイヤをさらに含み、
前記ガイドワイヤの遠位端部は、前記針の前記内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成されている
、血管グラフト配備ツール。
【請求項13】
前記グリップ内にあり、前記針を遠位伸長位置と後退位置との間で移行させるように構成された針後退組立体をさらに含み、
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップをさらに含み、
前記針後退組立体は、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると、前記針を前記後退位置に移行させるように構成されている、請求項
12に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項14】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含む
、血管グラフト配備ツール。
【請求項15】
前記血管グラフトは、拡張可能なメッシュから形成された端部を有する、請求項1に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項16】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シー
スに係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの第1の動作で、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、前記アクチュエータの反復動作で、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にする、アクチュエータと、
を含
み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、その中を通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記針は、針ブリードバックポートをさらに含み、前記針ブリードバックポートは、前記針が前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成されている、血管グラフト配備ツール。
【請求項17】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シースに係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの第1の動作で、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、前記アクチュエータの反復動作で、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、その中を通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記グリップ内に針後退組立体をさらに含む
、血管グラフト配備ツール。
【請求項18】
前記針後退組立体は、前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を保持するように構成され、前記針後退組立体を解放することにより、前記針は前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する、請求項
17に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項19】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シースに係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの第1の動作で、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、前記アクチュエータの反復動作で、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含み、
前記マンドレルは、その中を通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記針を通って延びるガイドワイヤをさらに含み、
前記ガイドワイヤの遠位端部は、前記針の前記内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成されている
、血管グラフト配備ツール。
【請求項20】
前記グリップ内にあり、前記針を遠位伸長位置と後退位置との間で移行させるように構成された、針後退組立体をさらに含み、
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップをさらに含み、
前記針後退組立体は、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると、前記針を前記後退位置に移行させるように構成されている、請求項
19に記載の血管グラフト配備ツール。
【請求項21】
血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シースに係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの第1の動作で、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、前記アクチュエータの反復動作で、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にする、アクチュエータと、
を含み、
前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含む
、血管グラフト配備ツール。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本特許出願は、すべての目的で参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/906,041号の優先権を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、概して、血管グラフトおよび大動脈グラフト、ならびにそのようなグラフトのための配備ツールに関する。
【0003】
〔背景〕
循環系には、大動脈および他の大径の血管、ならびに小径の血管および毛細血管が含まれる。他の血管に影響を及ぼす疾患および他の健康状態は重篤になることがあるが、大動脈に影響を及ぼす疾患および他の健康状態は、大動脈を通って送り出される血液の量および圧力のために、より重篤になり、患者が死亡する可能性が高くなる場合がある。
【0004】
複雑な胸部大動脈疾患には、急性A型解離(AAD)および慢性A型解離(CAD)、ならびに上行大動脈および下行大動脈を巻き込んでいるかどうかにかかわらず、弓部大動脈瘤(TAA)が包含される。
【0005】
大動脈解離は、大動脈壁の内層が裂け、血液が壁の層に入りそれらを分離することで生じる。急性大動脈解離は、最初に裂けてから2週間以内に確認されたものと定義され、慢性解離は、2週間を超える時点で確認されたものと定義される。大動脈解離は、その場所、および胸部大動脈の関与の程度によって分類される。スタンフォードA型解離は、上行大動脈に影響を及ぼし、弓部および下行胸部大動脈に及び得る。スタンフォードB型解離は、上行大動脈には影響せず、典型的には左鎖骨下動脈の起始部より遠位の下行胸部大動脈が侵される。大動脈解離の約3分の2は、スタンフォードA型である。
【0006】
急性解離の患者は、典型的には疼痛を呈し、解離が大動脈壁を破裂させ、大動脈弁の完全性に影響を及ぼし、冠動脈の起始部を巻き込むことで心筋の灌流に影響を及ぼすリスクがあるため、緊急事態に分類される。
【0007】
大動脈瘤は、大動脈のどの部分にも影響を及ぼし得る深刻な状態である。腹部の大動脈瘤は、腹部大動脈瘤またはAAAと呼ばれ、胸腔内の大動脈瘤は、胸部大動脈瘤と呼ばれ、大動脈弓上の胸腔内の動脈瘤は、弓部大動脈瘤と呼ばれ得る。大動脈瘤は、未治療または重症の高血圧、喫煙、マルファン症候群などの遺伝性疾患、および大動脈壁の変性拡張(degenerative dilation)など、様々な原因によって生じ得る。胸部大動脈瘤は、大動脈壁の弱化によって生じ、局所的な拡張をもたらし、生命を脅かす状態である。胸部動脈瘤患者は、動脈瘤が拡張するまでしばしば無症状である。最もよくみられる症状は、疼痛および大動脈破裂である。動脈瘤が破裂すると、重度の内出血が起こり得、急速にショックまたは死に至ることがある。
【0008】
複雑な胸部大動脈疾患の処置は、典型的には、長く込み入った切開手術を必要とする。そのような手術の間、患者は、典型的には、心肺バイパスポンプ上に置かれ、心臓は、大動脈がクランプされ、手術されることを可能にするために、停止される。患者が心肺バイパスを受けている間、患者は一般的に低体温の状態まで冷やされる。患者が手術を乗り切ることができないリスクは、患者がオンポンプでかつ低体温下で過ごす時間と直接関係している。
【0009】
〔概要〕
本開示は、血管グラフト配備ツールを含み、これは、グリップと、グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部がマンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、遠位シース部分および近位シース部分は、挿入直径においてマンドレルに対して血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、グリップに対して移動可能であり、シース組立体に係合するアクチュエータであって、アクチュエータの動作により、遠位シース部分および近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、を特徴とし得る。
【0010】
一態様では、シース組立体は、遠位シース部分と近位シース部分とを接続する中央セクションをさらに含み得、中央セクションは、少なくとも2つのリボンを有し、アクチュエータは、リボンに係合する。アクチュエータは、複数のローラーを有することができ、各ローラーは、リボンのうちの1つに係合するように構成される。ローラーは、マンドレルの長手方向軸に対して実質的に垂直に向けられ得る。あるいは、アクチュエータは、複数のペグを有することができ、各ペグは、リボンのうちの1つに係合するように構成される。
【0011】
一態様では、グリップに対するアクチュエータの近位移動は、遠位シース部分を長手方向に分離させ、血管グラフトの遠位部分を自由にするように構成することができる。アクチュエータのさらなる近位移動は、近位シース部分を長手方向に分離させ、血管グラフトの近位部分を自由にするように構成することができる。
【0012】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、マンドレルの遠位端部に拡張器先端部を有し得る。マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を有することができ、配備ツールは、内部に内腔が画定された針を有することもでき、針は、マンドレルの内腔の中に配され、これに対してスライド可能である。ガイドワイヤが針を通って延びることができ、ガイドワイヤの遠位端部は、針内腔を通ってスライド可能に伸長可能である。針は、内腔および針ブリードバックポート(needle bleedback port)を有することができ、針ブリードバックポートは、針が、拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、針内腔を通り、針ブリードバックポートを通り、拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成される。
【0013】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、グリップ内に針後退組立体も有し得る。針後退組立体は、拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に針を保持するように構成され得、針後退組立体を解放すると、針は拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する。ガイドワイヤが、針後退組立体を通って延びることができ、ガイドワイヤの遠位端部は、針の内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成される。ガイドワイヤはまた、ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップを有していてもよく、針後退組立体は、ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると解放されるように構成されている。
【0014】
本開示は、患者の血管に血管グラフトを植え込むための方法も含む。この方法は、血管グラフト配備ツールを提供することを含み得、血管グラフト配備ツールは、グリップと、グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部がマンドレルの周りに同軸に配されている血管グラフトと、遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、遠位シース部分および近位シース部分は、挿入直径においてマンドレルに対して血管グラフトを拘束する、シース組立体と、グリップに対して移動可能であり、シース組立体に係合するアクチュエータと、を含む。血管グラフトの少なくとも遠位部分は、患者の血管の管腔内に位置付けられ得る。アクチュエータは、遠位シース部分および近位シース部分のうちの少なくとも1つを長手方向に分離させて、血管グラフトの少なくとも一部を自由にするように動作され得、血管グラフトの少なくとも一部は、血管グラフトのその一部を挿入直径から拡張することによって、血管管腔内に固定され得る。
【0015】
一態様では、この拡張は、自己拡張型の拡張である。
【0016】
一態様では、血管グラフトを血管内に固定することは、縫合材料で縫合することを含み得る。縫合することで、血管グラフトの縫合カフに係合することができる。
【0017】
一態様では、シース組立体は、遠位シース部分と近位シース部分とを接続する中央セクションを有し得、中央セクションは少なくとも2つのリボンを含み、アクチュエータはリボンに係合し、そのため、本方法は、アクチュエータをグリップに対して近位に移動させることによってアクチュエータを動作させて、遠位シース部分を長手方向に分離させ、血管グラフトの遠位部分を自由にすることすることを含む。アクチュエータを動作させることはまた、アクチュエータをグリップに対してさらに近位に移動させて、長手方向に分離させ、血管グラフトの近位部分を自由にすることをさらに含み得る。
【0018】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、内部を通って実質的に長手方向に延びる内腔を有するマンドレルの遠位端部における拡張器先端部と、内部に内腔が画定された針と、を有していてもよく、針は、マンドレルの内腔内に配され、これに対してスライド可能であり、そのため、本方法はまた、拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に針を位置付けることと、血管の壁を通して針を挿入することと、拡張器先端部を越えて突出しない後退位置に針を位置付けることと、を含む。針は、内腔および針ブリードバックポートを有し得、血管の壁を通して針を挿入することは、針内腔を通り、針ブリードバックポートを通り、拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成することを含むことができる。
【0019】
一態様では、グリップは、針後退組立体も有することができ、そのため、本方法は、針後退組立体を作動させて針を後退位置に位置付けることも含む。針後退組立体を解放することは、針後退組立体を通してガイドワイヤを遠位に前進させて、ガイドワイヤの遠位端部が針の内腔を通ってスライド可能に延び、ガイドワイヤの近位端部におけるガイドワイヤグリップが針後退組立体に係合するようにすることを含み得る。
【0020】
本開示はまた、挿入状態から配備状態に移行するように構成された血管グラフトを含み、拡張可能なメッシュを有する近位端部と、拡張可能なメッシュを有する遠位端部と、近位端部と遠位端部との間に位置付けられた少なくとも1つの縫合カフと、を特徴とすることができ、縫合カフは、近位端部および遠位端部と比べて、血管グラフトが挿入状態から配備状態に移行するときに形成されるように構成された追加の材料を含む。挿入状態から配備状態への移行は、自己拡張型の拡張とすることができる。
【0021】
一態様では、少なくとも2つの縫合カフが、血管グラフトの近位端部および遠位端部に対し、互いに比較的より近くに位置付けられ得る。縫合カフのうちの少なくとも1つは、血管グラフトを実質的に長手方向に圧縮することによって少なくとも一部が形成され得る。例えば、縫合カフのうちの少なくとも1つは、それを貫通して画定された少なくとも2つの長手方向スリットを有することができ、血管グラフトの拡張は、周方向に隣接する前記長手方向スリットの間に周方向に位置する血管グラフトの部分に、血管グラフトから半径方向外方に延びるローブを形成させるように構成される。
【0022】
対応して、本開示は、拡張可能なメッシュを有する近位端部と、拡張可能なメッシュを有する遠位端部と、近位端部と遠位端部との間に位置付けられた少なくとも1つの縫合カフと、を有することができる血管グラフトを提供することによって、患者内に血管グラフトを植え込むための方法も含む。血管グラフトの少なくとも1つの端部は、患者の血液を導くための管腔内に位置付けられ得る。血管グラフトは、挿入状態から配備状態に拡張され得る。縫合カフの少なくとも1つは、拡張の結果として形成され得、各縫合カフは、近位端部および遠位端部に比べて追加の材料を有してもよい。血管グラフトの第1の縫合カフは、縫合材料で縫合することによって、患者の血液を導くための管腔の壁に固定され得る。
【0023】
一態様では、本方法はまた、患者の血液を導くための別の管腔の中に血管グラフトの反対側の端部を位置付けることと、血管グラフトの第2の縫合カフを、縫合材料で縫合することによって、患者の血液を導くための別の管腔の壁に固定することと、を含み得る。
【0024】
さらに、本開示は、患者の血管に血管グラフトを植え込むための方法も含み、本方法は、グリップと、グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部がマンドレルの周りに同軸に配置された血管グラフトと、挿入直径においてマンドレルに対して血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、マンドレルに対して移動可能であり、シース組立体に係合するアクチュエータと、を含む血管グラフト配備ツールを提供することと、血管グラフトの少なくとも遠位部分を患者の血管の管腔内に位置付けることと、アクチュエータを動作させて、シースを引き抜き、血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にすることと、血管グラフトの少なくともその部分を、血管グラフトのその部分を挿入直径から拡張させることによって、血管の管腔内に固定することと、アクチュエータを動作させて、シースをさらに引き抜き、血管グラフトの近位部分を自由にして、血管グラフトを分枝グラフトに固定することと、を含む。
【0025】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、血管グラフトの下でマンドレルの周囲に配された膨張バルーンも有し得、そのため、本方法は、バルーンの内部に膨張流体を送達することと、膨張に続いてバルーンを収縮させるために真空を引くことと、を含む。真空を引くことは、バルーンの膨張に続いて自動的に行われ得る。
【0026】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、内部を通って実質的に長手方向に延びる内腔を有するマンドレルの遠位端部における拡張器先端部と、内部に内腔が画定された針と、を有してもよく、針は、マンドレルの内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、そのため、本方法は、拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に針を位置付けることと、血管の壁を通して針を挿入することと、拡張器先端部を越えて突出しない後退位置に針を位置付けることと、を含む。針は、内腔および針ブリードバックポートを有し得、血管の壁を通して針を挿入することは、針内腔を通り、針ブリードバックポートを通り、拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成することを含むことができる。
【0027】
一態様では、グリップは、針後退組立体も有することができ、そのため、本方法は、針後退組立体を作動させて針を後退位置に位置付けることも含む。針後退組立体を解放することは、針後退組立体を通してガイドワイヤを遠位に前進させ、ガイドワイヤの遠位端部が針の内腔を通ってスライド可能に延び、ガイドワイヤの近位端部におけるガイドワイヤグリップが針後退組立体に係合するようにすることを含み得る。
【0028】
本開示はまた、グリップと、グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部がマンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、挿入直径においてマンドレルに対して血管グラフトを拘束するように構成されたシース組立体と、グリップに対して移動可能であり、シース組立体に係合するアクチュエータと、を特徴とすることができる、血管グラフト配備ツールを含み、アクチュエータの第1の動作で、シースを引き抜き、血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、アクチュエータの反復動作で、シースをさらに引き抜き、血管グラフトの近位部分を自由にする。
【0029】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、マンドレルの遠位端部に拡張器先端部を有し得る。マンドレルは、その中を通って実質的に長手方向に延びる内腔を有することができ、配備ツールは、内部に内腔が画定された針を有することもでき、針は、マンドレルの内腔の中に配され、これに対してスライド可能である。ガイドワイヤが、針を通って延びることができ、ガイドワイヤの遠位端部は、針内腔を通ってスライド可能に伸長可能である。針は、内腔および針ブリードバックポートを有し得、針ブリードバックポートは、針が拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、針内腔を通り、針ブリードバックポートを通り、拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成される。
【0030】
一態様では、血管グラフト配備ツールは、グリップ内に針後退組立体を有してもよい。針後退組立体は、拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に針を保持するように構成することができ、針後退組立体を解放することにより、針は、拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する。ガイドワイヤは、針後退組立体を通って延びることができ、ガイドワイヤの遠位端部は、針の内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成される。ガイドワイヤはまた、ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップを有していてもよく、針後退組立体は、ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると解放されるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】挿入構成にある
図1の例示的な血管グラフトの側面図である。
【
図3】第1の配備ステップ後の
図1の例示的な血管グラフトの側面図である。
【
図4】第2の配備ステップ後の
図1の例示的な血管グラフトの側面図である。
【
図5】第3の配備ステップ後の
図1の例示的な血管グラフトの側面図である。
【
図6】大動脈グラフトの例示的な中央セクションの斜視図である。
【
図6A】大動脈グラフトの第2の例示的な中央セクションの斜視図である。
【
図7】
図6に示すジャンパーグラフトの詳細図である。
【
図8】大動脈グラフトの第3の例示的な中央セクションの斜視図である。
【
図9】大動脈グラフトの第4の例示的な中央セクションの斜視図である。
【
図9A】大動脈グラフトの第5の例示的な中央セクションの斜視図である。
【
図10】複数の第1の例示的なジャンパーの側面図である。
【
図11】複数の第2の例示的なジャンパーの側面図である。
【
図12】大動脈グラフトの例示的な中央セクションの実施形態の第1の例示的な植え込みの側面図である。
【
図13】例示的な二重自動灌流装置(dual auto-perfuser)の側面図である。
【
図14】大動脈グラフトの例示的な中央セクションの実施形態の第2の例示的な植え込みの側面図である。
【
図15】第1の通常状態にあるフローティング縫合リングの側面図である。
【
図16】第2の拡張状態にある、
図15のフローティング縫合リングの側面図である。
【
図17】第3の調節状態にある、
図16のフローティング縫合リングの側面図である。
【
図20】大動脈グラフトの植え込みのための例示的なシステムの斜視図である。
【
図23】
図22の単一の灌流カテーテルに挿入された
図21の可撓性内視鏡システムの斜視図である。
【
図24】
図20のシステムの動作におけるステップの斜視図である。
【
図25】
図20のシステムの動作における別のステップの斜視図である。
【
図26】
図20のシステムの動作における別のステップの斜視図である。
【
図27】第1の状態にある配備ツールの部分切取斜視図である。
【
図28】第2の状態にある
図27の配備ツールの部分切取斜視図である。
【
図29】第3の状態にある
図27の配備ツールの部分切取斜視図である。
【
図30】第4の状態にある
図27の配備ツールの部分切取斜視図である。
【
図31】第1の状態にある縫合カフを有する血管グラフトの側面図である。
【
図32】第1の状態にある縫合カフを有する
図31の血管グラフトの側面図であり、縫合カフは血管壁に近接している。
【
図33】血管壁に対して第2の状態にある縫合カフを有する
図32の血管グラフトの側面図である。
【
図34】平坦な構成にある格納シースの側面図である。
【
図35】圧縮状態の血管グラフトの周りに配置された
図34の格納シースの切取側面図である。
【
図36】血管グラフトを圧縮状態に圧縮している
図35の格納シースの切取側面図である。
【
図37】血管グラフトを圧縮状態に圧縮している
図36の格納シースの切取斜視図であり、格納シースを圧縮状態に保持するプルワイヤを示す。
【
図38】プルワイヤが引き抜かれるにつれて血管グラフトが自己拡張することを可能にする、
図37の格納シースの切取側面図である。
【
図39】ハイブリッドグラフトを形成するためにステントに接続されたグラフトの実施形態の側面図である。
【
図42】ハイブリッドグラフトの実施形態の作製におけるステップの側面図である。
【
図43】
図42のハイブリッドグラフトの実施形態の作製における別のステップの側面図である。
【
図44】血管内への
図42~
図43のハイブリッドグラフトの配置におけるステップの側面図である。
【
図45】血管内への
図42~
図43のハイブリッドグラフトの配置における別のステップの側面図である。
【
図46】ハイブリッドグラフトと共に使用可能である、シースを含む例示的な配備ツールの実施形態の斜視図である。
【
図50】ハイブリッドグラフトの配備の開始時における
図46の配備ツールの斜視図である。
【
図51】初期構成にある、ハイブリッドグラフトと共に使用可能である、シース配備スライダアクチュエータを含む例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図52】第2の構成にある
図51の配備ツールの斜視図である。
【
図53】配備ツールの構造を示すためにハイブリッドグラフトを除去した
図52の配備ツールの斜視図である。
【
図54】縫合フラップを利用するハイブリッドグラフトの実施形態の斜視図である。
【
図55】第1の構成にある配備ツールの別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図56】第2の構成にある
図55の配備ツールの斜視図である。
【
図57】第3の構成にある
図55の配備ツールの斜視図である。
【
図58】例示的な配備ツールの別の実施形態の斜視図である。
【
図59】例示的な配備ツールの別の実施形態の斜視図である。
【
図61】配備ツールの様々な実施形態において利用され得る例示的なシース組立体の斜視図である。
【
図62】
図58および
図59の配備ツールなどの例示的な配備ツールの遠位端部の斜視図であり、遠位端部の内部の隠れた部分の図(hidden view)を含むものである。
【
図63】配備ツールの様々な実施形態で利用されるグリップ内の針後退組立体の側面切取図であり、針後退組立体はラッチ状態にある。
【
図64】
図63の針後退組立体において使用されるラッチの斜視詳細図である。
【
図65】
図63の針後退組立体の側面切取図であり、針後退組立体はラッチ解除状態にある。
【
図66】血管の壁を通して挿入された後の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図67】血管の端部に血管グラフトを挿入した後に引き抜かれている例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図68】遠位シースを分離するための作動中の例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図70】第2の血管の端部に挿入されている血管グラフトの斜視図である。
【
図71】血管グラフトの配備されたセグメントから除去されている例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図72】2つの例示的な縫合カフを含む配備された血管グラフトの斜視図である。
【
図74】針が前進構成にある、
図58の例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図75】針が後退構成にある、
図58の例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図76】遠位シースを分離するための作動後の例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図77】血管グラフトの遠位部分が拡張されており、近位シースが分離前である、例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図79】針が血管の壁を通して挿入された後の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図80】視覚的なブリードバック表示を概略的に描く、
図79の例示的な配備ツールの詳細図である。
【
図81】血管グラフトを血管の端部内に配備するために遠位シースを分離するように作動されている例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図82】遠位シースの分離に続く、
図81の例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図83】2つの縫合カフを有する例示的な血管グラフトの斜視図である。
【
図84】縫合カフのローブの形成を概略的に描く、
図83の血管グラフトの詳細図である。
【
図85】配備ツールの別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図86】配備ツールの導入を可能にする分枝グラフト内の開口部の形成を示す詳細図である。
【
図87】大動脈グラフトの分枝グラフトを通して導入される例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図88】例示的なグラフトクランプの実施形態の斜視図である。
【
図89】分枝グラフトの周囲に固定された例示的なグラフトクランプの側面図である。
【
図90】例示的な配備ツールの遠位端部の斜視図である。
【
図92】視覚的なブリードバック表示を概略的に描く、
図90の例示的な配備ツールの詳細図である。
【
図93】針の自動後退に続く、例示的な配備ツールの側面図である。
【
図94】血管グラフトの遠位部分の配備中の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図95】血管グラフトの近位部分の配備に続く例示的な配備ツールの側面図である。
【
図96】血管グラフトの配備中の例示的な配備ツールを含む一連の動作の概略図である。
【
図97】膨張バルーンの膨張後の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図98】膨張バルーンの収縮後の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図99】大動脈グラフトの通気ポートを通して導入された例示的な配備ツールの斜視図である。
【
図100】血管内の例示的な配備ツールの側面図である。
【
図101】血管内の血管グラフトの遠位部分の配備の側面図である。
【
図102】血管内に血管グラフトの遠位部分を配備した後の、血管グラフトに対する分枝グラフトの位置決めの側面図である。
【
図103】分枝グラフト内の血管グラフトの近位部分の配備の側面図である。
【0032】
異なる図面中での同じ参照符号の使用は、同様または同一のアイテムを示す。
【0033】
〔詳細な説明〕
血管グラフト
図1を参照すると、血管グラフト2が示されている。血管グラフト2は、一端部に第1のグラフトアンカー4を、他端部に第2のグラフトアンカー6を、含む。第1のグラフトアンカー4は、第2のグラフトアンカー6から長手方向に離間している。カバー10が、血管グラフト2の実質的に全長に沿って延び、第1のグラフトアンカー4および第2のグラフトアンカー6の外側表面の実質的にすべてを覆う。あるいは、第1のグラフトアンカー4および/または第2のグラフトアンカー6の少なくとも一部、例えばグラフトアンカー4、6の端部は、カバー10によって覆われていなくてもよい。あるいは、複数のカバー10が使用され、カバー10は、複数の層を有し得るか、または、血管グラフト2の長さに沿って2つ以上の重なり合うセグメントを含み得る。カバー10は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などであるがこれに限定されない、任意の適切な1つまたは複数の材料から作製することができる。
【0034】
2つのグラフトアンカー4、6の間で、中央セグメント12が、内部構造によって支持されていないカバー10を含むことができる。このようにして、グラフトアンカー4、6間の距離は、異なる血管の解剖学的構造に適応するために、挿入中に、また使用中にも変化させることができる。グラフトアンカー4、6間の距離は、一定ではなく調節可能である。他の実施形態では、中央セグメント12は、挿入および配備中にグラフトアンカー4、6間の距離を調節する能力を妨げない構造によって支持されてもよい。
【0035】
第1のグラフトアンカー4および第2のグラフトアンカー6は、第1の挿入直径から第2の配備直径に拡張可能である。各グラフトアンカー4、6の長さは、配備構成への拡張中に実質的に変化しない。あるいは、少なくとも1つのグラフトアンカー4、6は、配備構成への拡張中に長さが変化してもよい。グラフトアンカー4、6は、第1の挿入直径から第2の配備直径への拡張を可能にし、かつグラフトアンカー4、6を配備状態で血管の内側に確実に保持する、任意の構造を有することができる。一例として、各グラフトアンカー4、6は、血管グラフト2の周囲に周方向に延びる複数のフープ8を含むことができる。フープ8は、長手方向に離間していてよく、もしそうであれば、隣接するフープ8を1つ以上のタイバー14によって接続することができる。あるいは、離間したフープ8は、カバー10以外によって相互接続されない。あるいは、少なくとも2つの隣接するフープ8は、離間されておらず、その代わりに、互いに当接するかまたは重なり合う。このような構成では、このような隣接するフープ8は、例えばレーザー溶接によって、互いに固定され得る。フープ8は、金属または他の材料から作製することができる。各フープ8は、フープ8がワイヤから作製されるかもしくはチューブからレーザー切断された複雑な形状を有してもよく、または、フープ8がジグザグ、反復するZ字形状、蛇行曲線、もしくは他の形状などの複雑な形状を有するように別様に製造されてもよい。このような形状により、フープ8を挿入直径から配備直径に拡張させることができる。少なくとも1つのフープ8のジグザグパターンは、連続的に湾曲していてもよく、または湾曲セグメントによって接続された直線セグメントを含んでいてもよい。一実施形態では、フープ8のジグザグパターンは、全体が参照により本明細書に組み込まれる、失効した米国特許第4,580,568号に記載されているとおりとすることができる。しかし、少なくとも1つのフープ8は、別様に構成され得る。
【0036】
一実施形態では、異なるフープ8を異なる材料から作製することができる。例えば、少なくとも1つのフープ8は、ニッケル-チタン合金のような超弾性材料から作製することができ、少なくとも1つの他のフープ8は、316Lステンレス鋼のような塑性変形可能な材料から作製することができる。隣接するフープ8は、異なる材料を交互に繰り返していてよく、いかなるフープ8も、同じ材料で構成されたフープに隣接しない。他の実施形態では、同じ材料で構成されるいくつかのフープ8を一緒にグループ化することができ、異なる材料で構成される少なくとも1つのフープ8を、そのグループに隣接させることができる。例えば、グラフトアンカー4、6の外側端部におけるフープ8を、ステンレス鋼で構成することができ、残りのフープ8をニッケル-チタン合金などの超弾性材料で構成することができる。異なる材料から作製されたフープ8を使用することによって、血管グラフト2は、それらの異なる材料の異なる特性を利用する。例えば、超弾性材料から作製された1つ以上のフープ8は、グラフトアンカー4、6を拡張させるのに有用であり、このような超弾性フープ8の内側にある標準的な介入バルーンカテーテルによって加えられる外向きの力は、このようなフープ8をマルテンサイト相とオーステナイト相との間で動かし、それらのフープ8をより大径の構成に自己拡張させる。316Lステンレス鋼などの塑性変形可能な材料から作製された1つ以上の追加のフープ8は、そのような材料が、フープ応力に対してより大きな抵抗を有し、拡張後に異なる結晶相に戻ることがないので、各アンカー4、6の内腔を開放状態に維持するのに有用である。本文書では「フープ」という用語を使用しているが、フープ8は端部から見て完全に円形である必要はなく、特定の用途に適した異なる形状および曲率を有してもよい。いくつかの実施形態では、フープ8は、端部から見て実質的に円形である。
【0037】
一実施形態では、グラフトアンカー4、6はそれぞれ、配備状態において同じかまたは同様の直径まで拡張する。他の実施形態では、第1のグラフトアンカー4は、配備状態において第2のグラフトアンカー6とは異なる直径まで拡張する。同様に、いくつかの実施形態において、第1のグラフトアンカー4は、挿入状態において第2のグラフトアンカー6とは異なる直径を有する。このようにして、血管グラフト2の配備を容易にすることができ、かつ/または患者の特定の血管組織における血管グラフト2のより良好な適合を容易にすることができる。第1のグラフトアンカー4と第2のグラフトアンカー6との直径の差は、第1のグラフトアンカー4内のフープ8の直径を第2のグラフトアンカー6内のフープ8の直径と異なるように制御することによって、または異なるグラフトアンカー4、6において異なる材料を有するフープ8の異なる組み合わせを提供することによって、または任意の他の適切な方法で、制御することができる。
【0038】
動作-血管グラフト
図2を参照すると、血管グラフト2は、患者の脈管構造に導入するための挿入構成にある。第2のグラフトアンカー6は、第1のグラフトアンカー4に向かって移動し、中央セグメント12は、第2のグラフトアンカー6上で反転する。グラフトアンカー4、6は、オプションとして、挿入構成においてもう少しで当接しそうになることができ、カバー10の厚さによって分離される。
【0039】
挿入構成の血管グラフト2は、標準的な大腿部切開を介するなど任意の適切な方法で脈管構造に挿入される。挿入の間、血管グラフト2は、カテーテルの内腔内部に保持され得、ガイドワイヤが血管グラフトの内腔を通って延びることができる。血管グラフト2は、標準的な方法でガイドワイヤおよびカテーテルを用いて脈管構造を通って処置部位まで前進するか、または他の任意の適切な方法で脈管構造を通って前進する。
【0040】
図3を参照すると、血管グラフト2が処置部位に到達すると、標準的な介入バルーンが第1のグラフトアンカー4内で拡張される。バルーンが拡張すると、第1のグラフトアンカー4のフープ8が、より大径の構成まで拡張する。フープ8のうちの少なくとも1つが超弾性材料で構成されている場合、バルーンの拡張は、そのような少なくとも1つのフープ8をマルテンサイト相とオーステナイト相との間で動かし、そのような少なくとも1つのフープ8を、より大径の構成まで自己拡張させる。
【0041】
図4を参照すると、第1のグラフトアンカー4をその配備直径まで拡張した後、第2のグラフトアンカー6を第1のグラフトアンカー4からその所望の配備場所まで近位に引き離す。中央セグメント12の可撓性は、グラフトアンカー4、6間の距離のこのような調節を可能にする。
図4で分かるように、中央セグメント12の直径は、第1のグラフトアンカー4の直径より小さくてよい。最後に、
図5を参照すると、標準的な介入バルーンが第2のグラフトアンカー6内で拡張され、第2のグラフトアンカー6は、第1のグラフトアンカー4に関して上述したのと同様に拡張する。上述したように、第1のグラフトアンカー4の拡張直径は、第2のグラフトアンカー6の拡張直径と実質的に同じであっても、異なっていてもよい。介入バルーン、ガイドワイヤ、カテーテル、および/または他の介入装置は、処置部位から引き抜かれ、血管グラフト2は、その配備状態および配備位置にとどまる。
【0042】
大動脈グラフト
図6~
図7を参照すると、大動脈グラフト20の中央セクション22が示されている。
図12および
図14も参照すると、大動脈グラフト20全体が示され、これは以下でさらに詳細に説明される。大動脈グラフト20の中央セクション22は、手術中に大動脈弓を補強または置換する。中央セクション22を含む大動脈グラフト20は、典型的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルから作製され、これは、時には、デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont De Nemours and Companyから入手可能なダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルとして知られている。有利には、中央セクション22を含む大動脈グラフト20は、患者自身の組織が大動脈グラフト20内に成長するのを促進するコラーゲンを含浸される。代替的に、所望であれば、大動脈グラフト20は、強く、可撓性であり、かつ漏れない他の任意の生体適合性材料から作製することができる。
【0043】
大動脈グラフト20の中央セクション22は、3つのジャンパーグラフト24a、24b、24cを含むことができる。3つのジャンパーグラフト24a、24b、24cは、大動脈弓から現れる3つの動脈、すなわち腕頭動脈、左総頸動脈、および左鎖骨下動脈に対応する。3つのジャンパーグラフト24a、24b、24cはそれぞれ、大動脈グラフト20の中央セクション22から始まる、血液が中を通って流れることを可能にする内側内腔を含む。各ジャンパーグラフト24a、24b、24cの基部26は、有利には、大動脈グラフト20の中央セクション22に固定される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cは、PTFEから作製され、大動脈グラフト20の中央セクション22に取り付けられる。他の実施形態では、少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cは、大動脈グラフト20と一体であり、また、大動脈グラフト20の中央セクション22と同じ材料から作製される。各ジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部28は、拡張可能なメッシュ34を含むことができ、これは、概ね管状であり、その中を通って画定された内腔を有する。いくつかの実施形態では、拡張可能なメッシュ34は、その全長に沿って実質的に同じ直径を有する。他の実施形態では、拡張可能なメッシュ34の近位端部(大動脈グラフト20の中央セクション22に近い端部)は、外側に向かって広がっていてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能なメッシュ34の近位端部は、対応するジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部に縫い付けられてもよいし、または別様に固定されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの拡張可能なメッシュ34は、少なくとも1つのグラフトアンカー4、6と同じかまたは同様の方法で作製され、より短い長さおよび直径に縮小され得る。拡張可能なメッシュ34は、有利には、自己拡張型であり;例えば、拡張可能なメッシュ34は、ニチノールのような超弾性材料から作製することができ;別の例として、拡張可能なメッシュ34は、ステンレス鋼のような塑性変形可能な材料から作製することができ、この材料は、その弾性限界を下回る量まで圧縮され、次いで、その圧縮が除去されて、拡張可能なメッシュ34が所定の場所に自己拡張することを可能にする。
【0044】
大動脈グラフト20の中央セクション22は、有利には、アクセスポート30も含む。アクセスポート30は内側内腔を含み、これは、器具および/またはガイドワイヤが、この内側内腔を通って大動脈グラフト20の中央セクション22に挿入され、かつそこから内側内腔を通って引き抜かれることを可能にする。いくつかの実施形態では、アクセスポート30はPTFEから作製され、大動脈グラフト20の中央セクション22に取り付けられる。このようにして、大動脈グラフト20の植え込みが完了した後に、アクセスポート30を容易に密封および/または除去することができる。他の実施形態では、アクセスポート30は、大動脈グラフト20と一体であり、また、大動脈グラフト20の中央セクション22と同じ材料から作製される。アクセスポート30の一端部は、大動脈グラフト20の中央セクション22に接続し、アクセスポート30の他端部は、止血弁32を含み、これは、血液が大動脈グラフト20の中央セクション22を通って流れている間に、器具および/またはガイドワイヤがアクセスポート30に出入りすることを可能にする。
【0045】
図6Aも参照すると、大動脈グラフト20の中央セクション22の別の例示的な実施形態が示されている。
図6Aの例示的な実施形態では、縫合バンドまたはリング23が、中央セクション22の一端部もしくは両端部またはその近傍に設けられている。各縫合バンド23は、中央セクション22の壁のより厚いセクションであってもよく、または金属もしくは非金属メッシュのような、中央セクション22に固定された別個のアイテムであってもよい。以下でさらに詳細に説明するように、各縫合バンド23は、大動脈または他の組織に縫合され得る中央セクション22上のエリアを提供し、植え込みの際に縫合糸に係合して中央セクション22を所定の場所に保持するのに、より適している。他の実施形態では、追加の縫合リング23が設けられてもよく、または、より大きな縫合領域23が中央セクション22上に設けられてもよい。1つまたは複数の縫合リング23に加えて、オプションとして、1つ以上の中央セクションアンカー25を中央セクション22に取り付けることができる。各中央セクションアンカー25は、自己拡張型であってよく;例えば、少なくとも1つの中央セクションアンカー25は、ニチノールのような超弾性材料から作製することができ;別の例として、少なくとも1つの中央セクションアンカー25は、ステンレス鋼のような塑性変形可能な材料から作製することができ、この材料は、その弾性限界を下回る量まで圧縮され、次いで、その圧縮が除去されて、中央セクションアンカー25が所定の場所に自己拡張することを可能にする。各中央セクションアンカー25は、成形、接着剤、またはワイヤなどの任意の適切な方法で中央セクション22に取り付けられ得る。オプションとして、少なくとも1つの中央セクションアンカー25は、対応する縫合バンド23に固定されてよく、縫合バンド23と中央セクション22との間の取り付けにより、その中央セクションアンカー25が中央セクション22に取り付けられる。あるいは、中央セクションアンカー25は中央セクション22に取り付けられ得、1つ以上の縫合リング23を省略してもよい。
【0046】
図8も参照すると、大動脈グラフト20の中央セクション22の別の例示的な実施形態が示されている。
図8の例示的な実施形態では、ジャンパーグラフト24a、24b、24cは、PTFEまたは同様の材料から作製され、
図7の例示的な実施形態のものよりも長い。これらのジャンパーグラフト24a、24b、24cは、
図7の実施形態のものよりも長いので、外科医は、身体内で必要に応じてそれらのジャンパーを切断または配置するのに、さらに高い柔軟性を有する。各ジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部28は、上記の
図7に関して説明したような拡張可能なメッシュ34を含まず;むしろ、各ジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部は単にチューブの端部である。
【0047】
図9も参照すると、大動脈グラフト20の中央セクション22の別の例示的な実施形態が示されている。
図9の例示的な実施形態では、分枝グラフト27が、大動脈グラフト20の中央セクション22から延びるマニホールド24dを含む。マニホールド24dは、中央セクション22に固定されていてもよいし、上述したのと同様の方法で中央セクション22に固定されたジャンパーグラフト24に接続されていてもよい。ジャンパーグラフト24a、24b、24cが、マニホールド24dから延び、マニホールド24dおよび中央セクション22の内腔と流体連通している。この構成は、特定の解剖学的構造に対してさらなる多様性を提供し得る。
図9の例示的な実施形態では、ジャンパーグラフト24a、24b、24cは、他の点では、
図7または
図8に関して説明したように構成することができ、少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部28における拡張可能なメッシュ34を含んでも排除してもよい。中央セクション22の異なる実施形態に記載された特徴は、大動脈グラフト20において所望に応じて組み合わせられ得ることは明らかであろう。ジャンパーグラフト24および血管グラフト2は、臨床医の裁量で交換可能に使用することができ、また、「ジャンパーグラフト」および「血管グラフト」という語句は、本文書において交換可能に使用され得ることにも留意されたい。
【0048】
図9Aも参照すると、大動脈グラフト20の中央セクション22の別の例示的な実施形態が示されている。中央セクション22は、概して、
図6Aに関して上述したとおりである。中央セクション22は、波形になっていてよく、概ね耐キンク性材料から作製され得る。波形にすることによって、オプションとして、中央セクション22の植え込み時に臨床医が所望するように中央セクション22を延長または短縮することが可能になる。中央セクションは、そこから延びる単一のジャンパーグラフト24を含み、これもまた、波形であってよく、概ね耐キンク性材料から作製され得る。波形にすることによって、オプションとして、臨床医が所望するようにジャンパーグラフト24を延長または短縮することが可能になる。
図6Aに関して上述したような縫合バンド23が、メッシュ構造34の近位で、メッシュ構造34とジャンパーグラフト24の残りの部分との間に位置し得る。
【0049】
分枝グラフト27は、
図9に関して説明したように、マニホールド24dと、そこから延びるジャンパーグラフト24a、24b、24cと、を含む。マニホールド24dおよびジャンパーグラフト24a、24b、24cの少なくとも1つは、波形になっていてもよく、概ね耐キンク性材料から作製され得る。波形にすることによって、オプションとして、マニホールド24dおよびジャンパーグラフト24a、24b、24cの植え込み時に臨床医が所望するようにマニホールド24dおよび/または少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cを延長または短縮することが可能になる。
図6Aに関して上述したような縫合バンド23が、マニホールド24dの自由端部に位置してもよく、ジャンパーグラフト24の縫合バンド23に対応する。マニホールド24dがジャンパーグラフト24に取り付けられると、ジャンパーグラフト24およびマニホールド24dの縫合バンド23は、互いに縫合されて、それらを接続するか、または拡張メッシュ34の拡張によって行われるこれら2つの間の接続を強化することができる。同様に、縫合バンド23は、ジャンパーグラフト24a、24b、24cのうちの少なくとも1つの先端部28に近接して位置してもよい。各縫合バンド23は、
図6Aに関して上述したとおりとすることができ、メッシュ構造34の近位で、メッシュ構造34とジャンパーグラフト24a、24b、24cの残りの部分との間に位置することができる。縫合バンド23は、ジャンパーグラフト24a、24b、24cの端部を血管29に縫合することを容易にし、縫合のための強力でアクセス可能な位置を提供する。この縫合は、血管29内での拡張可能なメッシュ34の拡張によって行われるジャンパーグラフト24a、24b、24cへの接続を補強するために使用され得る。さらに、以下に説明するような追加のジャンパー40、50が、長さを追加するためにジャンパーグラフト24a、24b、24cの先端部28に取り付けられる場合、そのジャンパー40、50の近位端部は、ジャンパーグラフト24a、24b、24cの端部における縫合バンド23に縫合されて、追加のジャンパー40、50内での拡張可能なメッシュ34の拡張によって行われるジャンパーグラフト24a、24b、24cへの接続を補強することができる。
【0050】
図31~
図33も参照すると、いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cの端部は、縫合カフ160を含むことができる。縫合カフ160は、靴下の折り返しのように最初は巻き上げられた構成にある材料のセグメントである。縫合カフ160は、ジャンパーグラフト24の外側カバーと一体であってもよく、完全に広げられた構成ではジャンパーグラフト24より長くてもよく、最初はジャンパーグラフト24a、24b、24cと長さが同一の広がりを有することができる。代替的に、縫合カフ160は、ジャンパーグラフト24の端部に縫い付けられるか、または別様に取り付けられる別個の材料片であってもよい。以下でさらに詳細に説明するように、縫合カフ160は、ジャンパーグラフト24の端部から対称または非対称に広げられて、ジャンパーグラフト24が接続されている血管の壁に接し、また、ジャンパーグラフト24をその血管壁に縫合するために外科医が利用することができる材料のリングを提供して、血管壁へのより確実な接続を提供することができる。ジャンパーグラフト24は、円筒形足場163の周りに外側カバー161を含むことができる。外側カバー161は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、時には、デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont De Nemours and Companyから入手可能なダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルとして知られる、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、などであるがこれらに限定されない、任意の適切な生体適合性材料から作製することができる。足場163は、ニッケル-チタン合金、ばね鋼、または任意の他の適切な生体適合性材料から作製することができる。足場163は、長手方向において外側カバー161よりも短くすることができ、足場163の端部から長手方向外側に延びる、外側カバー161のセクションは、縫合カフ160を形成することができる。すなわち、足場163に対する外側カバー161の過剰な長さは、最初は、足場163の一端部において足場163の長手方向中心線の周りでリングになるよう巻かれ得る。ここでは、縫合カフ160をジャンパーグラフト24との使用に関連して説明するが、縫合カフ160は、必要に応じて、本文書に記載される任意の他のジャンパー、グラフト、またはアンカーと共に使用され得る。
【0051】
また、
図34~
図38を参照すると、配備前に、拘束された初期構成で少なくとも1つのジャンパーグラフト24を保持するために、格納シース180を利用することができる。格納シース180は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、時には、デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont De Nemours and Companyから入手可能なダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルとして知られる、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、などであるがこれらに限定されない、任意の適切な生体適合性材料から作製することができる。以下でさらに詳細に説明するように、有利には、格納シース180は身体内に残されない。
図34を参照すると、格納シース180は、組み立て前の平坦な構成で示されている。格納シース180の側縁部182は、正弦曲線状またはほぼ正弦曲線状のパターンで湾曲しており、また、互いにオフセットされているので、格納シース180がジャンパーグラフト24の周りで巻かれたときに格納シース180の一方の側縁部182a上の頂部184は格納シース180の他方の側縁部182b上の谷部186に一致する。各頂部184の横方向近傍には、孔188がある。代替的に、孔188は、頂部184のいくつかの対に近接して位置し、頂部184の対は、横方向に離間しているが互いに長手方向に最も近い2つの頂部184として画定される。
【0052】
図35も参照すると、格納シース180は、初期の圧縮構成でジャンパーグラフト24の周りで巻かれ、ジャンパーグラフト24を挿入直径まで圧縮する。
図36~
図37も参照すると、プルワイヤ190が、巻かれた格納シース180の長手方向に隣接する孔188を通過する。このようにして、プルワイヤ190は、格納シース180の隣接する縁部182a、182bを一緒に保持する。プルワイヤ190の近位端部192は、配備ツール200に沿って近位に延びることができる。以下でさらに詳細に説明するように、プルワイヤ190は、孔188から近位方向に後退されて、格納シース180を開き、ジャンパーグラフト24を拡張させることができる。プルワイヤ190は、ステンレス鋼ワイヤのような任意の適切な材料から作製することができる。代替的に、プルワイヤ190は、ナイロンまたは生体適合性の布地のような生体適合性非金属材料から作製することができる。格納シース180は、ここではジャンパーグラフト24との使用に関連して説明されるが、格納シース180は、必要に応じて、本文書に記載された任意の他のジャンパー、グラフト、またはアンカーと共に使用され得る。
【0053】
図27も参照すると、例示的な配備ツール200が示されている。配備ツール200の遠位端部には、鈍い拡張器先端部202がある。拡張器先端部202は、以下でさらに詳細に説明するように、血管に形成された切開部または開口部を膨張させるようにサイズ決めされ、成形される。通路204が、拡張器先端部202を通って画定される。有利には、通路204は、まっすぐであり、配備ツール200の長手方向中心線と実質的に同軸である。代替的に、通路204は、配備ツール200に対して異なる形状および/または異なる向きにすることができる。ガイドワイヤ206は、通路204を通って伸ばすことができ、かつ/または通路204内に後退可能とすることができる。
図27および
図29~
図30で分かるように、有利には、ガイドワイヤ206は、ガイドワイヤ206が通路204を出るときに湾曲するように構成されている。すなわち、通路204を出る際、ガイドワイヤ206の遠位端部は、
図27および
図29~
図30に見られるように、片側に、または近位方向に戻って、配備ツール200の長手方向中心線から離れて湾曲する。あるいは、ガイドワイヤ206の遠位端部が拡張器先端部202の遠位端部から離間するようにガイドワイヤ206の遠位端部が遠位に前進された後、ガイドワイヤ206の遠位端部が配備ツール200の長手方向中心線から離れて湾曲し始める。また、
図28を参照すると、針210が、拡張器先端部202を通る通路204内で、中立位置に位置し得る。針210は、患者の身体内の血管を穿刺するために、拡張器先端部202に対して前進可能とすることができる。有利には、針210は中空であり、ガイドワイヤ206が針210を通過することができる。
【0054】
また、
図27を参照すると、拡張器先端部202の近位に、配備ツール200は、マンドレル208を含む。ジャンパーグラフト24は、マンドレル208に巻き付けられ、格納シース180によってマンドレル208に対して少なくとも部分的に圧縮される。上述したように、
図36も参照すると、プルワイヤ190が、長手方向に隣接する孔188を通って延び、それによって、格納シース180の側縁部182を一緒に保持する。このようにして、ジャンパーグラフト24は、格納シース180によってマンドレル208に対して圧縮される。ジャンパーグラフト24は、拡張器先端部202の近位に位置する。代替的に、ジャンパーグラフト24の遠位端部は、拡張器先端部202の遠位端部に近接して位置付けられてもよい。ジャンパーグラフト24は、上述のような縫合カフ160を含むことができる。縫合カフ160は、配備ツール200に対して、ジャンパーグラフト24の近位端部に位置付けられ得る。代替的に、縫合カフ160は、配備ツール200に対して、ジャンパーグラフト24の遠位端部に位置付けられてもよい。
【0055】
図27も参照すると、ハンドル212がマンドレル208の近位端部に接続されている。マンドレル208は、ハンドル212とは別に作製されてハンドル212に取り付けられてもよく、またはマンドレル208とハンドル212とが一体に作製されてもよい。ハンドル212は、任意の適切な材料から作製することができる。
図27の部分断面図に見られるように、内腔214が、ハンドル212、ならびにマンドレル208を通って実質的に長手方向に延びることができる。内腔214は、概ね円形の断面を有してよく、または任意の他の適切な断面形状を有してもよい。側部ポート216が、ハンドル212を通って内腔214まで横方向に延びることができる。プルワイヤ190は、内腔214内に近位に延び、次いで側部ポート216を通って外方に延び得る。内腔214の近位セクションは、内腔214の遠位セクションよりも広くてよい。内腔214のより広いセクションは、ばね受け218と呼ばれ得る。ばね受け218は、概ね円形の断面を有してよく、または任意の他の適切な断面を有してもよい。レッジ220が、ばね受け218の近位端部に位置してよく、ここで、内腔214の幅が広がる。圧縮ばね222が、ばね受け218内に位置し得る。圧縮ばね222の遠位端部は、レッジ220上に着座することができ、これにより、圧縮ばね222の遠位端部がレッジ220の遠位に移動することを防止する。針前進ボタン224が、圧縮ばね222の近位に位置付けられる。針前進ボタン224の近位端部は、圧縮ばね222に直接または間接的に接続され、針前進ボタン224の遠位運動が圧縮ばね222を圧縮する。針前進ボタン224は、針配備コントローラ228に取り付けられるか、または別様に連結される。針配備コントローラ228は、内腔214を通って延び、針210に取り付けられるか、または別様に連結される。針配備コントローラ228は、概して剛性のワイヤであるか、または圧縮力に耐え、その力を遠位に伝達することができる任意の他の構造であってもよい。代替的に、針配備コントローラ228は、少なくとも1つの中間機構を介するなどして、針210に選択的に係合可能であり、針210から係合解除可能であり得る。圧縮ばね222は、針前進ボタン224を近位に付勢し、それによって、針配備コントローラ228を介して拡張器先端部202内の通路204内へと近位に針210を付勢する。針210が拡張器先端部202内の通路204内に付勢されると、針210および針配備コントローラ228は中立状態になる。以下でさらに詳細に説明するように、針配備コントローラ228を遠位方向に押し下げると、針210は拡張器先端部202から遠位に前進する。
【0056】
針前進ボタン224は、その中を通って概ね長手方向に延びる内腔226を含む。このようにして、ガイドワイヤ206は、マンドレル208およびハンドル212の内腔214、ならびに針前進ボタン224の内腔226を通って延び、次いで、針前進ボタン224の近位端部から出ることができる。
【0057】
ここでは、配備ツール200をジャンパーグラフト24との使用に関連して説明するが、配備ツール200は、必要に応じて、本文書に記載される任意の他のジャンパー、グラフト、またはアンカーと共に使用され得る。
【0058】
図10も参照すると、異なる内径を有するジャンパー40が示されている。ジャンパー40aは、実質的に9mmの内径を有することができ、ジャンパー40bは、実質的に11mmの内径を有することができ、ジャンパー40cは、実質的に13mmの内径を有することができる。他の内径を有するジャンパー40を設けてもよい。ジャンパー40は、任意の長さとすることができる。ジャンパー40の拡張端部42は、上述したグラフトアンカー4、6と実質的に同様に構成され得、拡張端部42は、(
図10に示す)挿入状態では小径となり、拡張状態では大径となる。上述の血管グラフト2と同様に、ジャンパー40の拡張端部42は、PTFEまたは任意の他の適切な材料から作製され得るカバー44に接続され、かつ/またはカバー44によって覆われ得る。ジャンパー40の固定端部46は、ジャンパー40の拡張端部42に接続されていない、カバー44の端部とすることができる。有利には、アンカーまたは他のハードウェアは、ジャンパー40の固定端部46に固定されず、それは、ジャンパー40が、固定端部46と拡張端部42との間で切断され、外科医、看護師、または他の手術室の専門家が、患者への植え込み前に、手術室内で患者の解剖学的構造に適した長さにジャンパー40を切断することを可能にするためである。カバー44は、その側面を通してガイドワイヤ47またはカニューレ(不図示)を収容することができ、ガイドワイヤがジャンパー40の固定端部46の開口部を通してではなくジャンパー40の内腔にアクセスすることを可能にする。ガイドワイヤ47は単にカバー44に穴をあけることができ、カバー44の穴あけ部は、ガイドワイヤ47が除去された後に縫合して閉鎖されるか、または別様に閉鎖され得る。代替的に、止血ポート(不図示)または他のポートがカバー44の側面に設けられてもよく、ガイドワイヤ47のジャンパー40への入口点を閉鎖するための追加の動作を実行することなく、ガイドワイヤ47をジャンパー40の内側内腔から引き抜くことができる。拡張端部42が挿入状態にあるときに、ノーズコーン(不図示)がジャンパー40の拡張端部42上に配置されて、以下でさらに詳細に説明するように、ジャンパー40の拡張端部をその意図された場所に挿入しやすくすることができる。
【0059】
図11も参照すると、異なる内径を有する固定長ジャンパー50が示されている。ジャンパー50aは、実質的に9mmの内径を有することができ、ジャンパー50bは、実質的に11mmの内径を有することができ、ジャンパー50cは、実質的に13mmの内径を有することができる。他の内径を有するジャンパー50を設けてもよい。各ジャンパー50は、固定長で提供され、その長さは、10~20cmの範囲であってよい。他の実施形態によれば、ジャンパー50は、5~10cmの範囲で設けられてもよい。他の実施形態によれば、ジャンパー50は、20~30cmの範囲で設けられてもよい。他の実施形態によれば、ジャンパー50は、5~20cmの範囲で設けられてもよい。他の実施形態によれば、ジャンパー50は、10~30cmの範囲で設けられてもよい。特定のジャンパー50は、任意の適切な長さで設けることができる。ジャンパー50は、上述した血管アンカー2と実質的に同じように構成することができる。ジャンパー50の拡張端部52は、上述したようなグラフトアンカー4、6と実質的に同様に構成され得、拡張端部52は、(
図11に示す)挿入状態では小径となり、拡張状態では大径となる。上述の血管グラフト2と同様に、ジャンパー50の拡張端部52は、PTFEもしくは任意の他の適切な材料から作製され得るカバー54に接続され、かつ/またはカバー54によって覆われ得る。ジャンパー50の固定端部56は、ジャンパー50の拡張端部52に接続されていないカバー54の端部とすることができる。
図11に示すように、ジャンパー50の固定端部56は、拡張状態で外径が実質的に16mmであってもよい。一実施形態では、血管グラフト2に関して上述したように、固定端部56は、挿入状態から(
図11に示す)拡張状態に拡張可能である。他の実施形態では、固定端部56は、実質的に拡張可能ではなく、実質的に一定の外径を有する。カバー54は、その側面を通してガイドワイヤ47を収容することができ、ガイドワイヤがジャンパー50の固定端部56の開口部を通してではなくジャンパー50の内腔にアクセスすることを可能にする。ジャンパー50の内腔へのガイドワイヤおよび/またはカニューレのアクセスは、実質的に
図10のジャンパー40に関して上述したとおりである。
【0060】
図39~
図41も参照すると、いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのジャンパーグラフト24a、24b、24cは、ハイブリッドグラフト231とすることができる。
図39を参照すると、ハイブリッドグラフト231は、互いに取り付けられた第1のセクション230および第2のセクション232を含むことができる。第1のセクション230は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から作製されたグラフトであってよい。第2のセクション232は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または他の適切な材料から作製され得るカバー236で封じ込められたステント234とすることができる。ステント234は、有利には自己拡張型であり;例えば、ステント234は、ニチノールのような超弾性材料から作製することができ;別の例として、ステント234は、ステンレス鋼のような塑性変形可能な材料から作製することができ、この材料は、その弾性限界を下回る量まで圧縮され、その後、その圧縮が除去されて、拡張可能なメッシュ34が所定の場所に自己拡張することを可能にする。第1のセクション230は、当技術分野で知られているような焼結プロセスを使用して、第2のセクション232に焼結することができる。代替的に、第1のセクション230は、任意の他の適切な方法で第2のセクション232に固定されるかまたは取り付けられてもよい。
【0061】
図40~
図41も参照すると、このようなジャンパーグラフト241、24b、24cは、スリーブ238も含むことができる。スリーブ238は、第1のセクション230の少なくとも一部をその中に受容することができ、第1のセクション230は、スリーブ238の内腔内に部分的にスライドする。他の実施形態によれば、スリーブ238は、その中に第1のセクション230のすべてを受容することができ、また、その中に第2のセクション232の少なくとも一部も受容することができる。スリーブ238は、ポリエステルから、かつ/または任意の他の適切な材料から作製され得る。スリーブ238の少なくとも一部は、第1のセクション230に向かって巻き返されてカフ240を形成することができる。
図41に見られるように、少なくとも第2のセクション232の端部は、カフ240の外に延びることができ、少なくとも第1のセクション230の端部は、カフ240と反対側のスリーブ238の端部の外に延びることができる。代替的に、第1のセクション230および第2のセクション232の少なくとも一方は、完全にスリーブ238の内腔内にあってもよい。ハイブリッドグラフト231およびスリーブ238は、以下でさらに詳細に説明するように、送達装置と組み合わせられ得る。
【0062】
図42~
図43も参照すると、少なくとも1つのハイブリッドグラフト231は、第1のセクション230が第2のセクション232のステント34よりも小さい直径を有するグラフトであるように構成され得る。大径の第2のセクション232を小径の第1のセクション230に取り付けるのに対応するために、第1のセクション230の端部は、それ自体の上で巻き返され(反転され)てカフ242を形成する。次に、第2のセクション232の端部をカフ242に縫合するか、または別様に取り付ける。カフ242の少なくとも一部は、所望であれば、また第1のセクション230が適切に伸縮可能な材料で構成されている場合には、縫合前に、第2のセクション232の端部上に引き伸ばされ得る。いくつかの実施形態によれば、第2のセクション232の端部は、第2のセクション232の残りの部分よりも小さい直径に先細にすることができ、その結果、第2のセクション232のその端部の、カフ242への縫合または他の取り付けが容易になる。
図43も参照すると、カフ242は、次に、第2のセクション232の外側表面上で部分的にまたは全体的に広げられ得る。
【0063】
図44も参照すると、カフ242が第2のセクション232の表面上に完全には広げられていない場合、第2のセクション232のステント34の自由端部は、血管244の管腔248に挿入され得る。
図45を参照すると、カフ242は、次に、血管244の壁246の外側表面上で部分的にまたは全体的に広げられ、血管244の壁246上に縫い付けられる。いくつかの実施形態によれば、カフ242は、カフ242を血管244上に広げる前に、血管244の壁246に縫合することができ;他の実施形態によれば、カフ242は、カフ242を血管244上に広げた後に、血管244の壁246に縫合することができる。
【0064】
図54も参照すると、いくつかの実施形態によれば、カフ242の代わりに、2つ以上の縫合フラップ280が利用される。有利には、2つから5つの縫合フラップ280が提供される。あるいは、6つ以上の縫合フラップ280が提供される。縫合フラップ280は、
図54に見られるように、それらの自由端部で互いに周方向に分離されるが、少なくとも2つの隣接する縫合フラップ280の端部は、使用時に一緒にまたは互いに隣接して縫合され得る。カフ242の端部の反転ではなく、各縫合フラップ280がグラフト230に向かって折り返される。縫合フラップ280は、上述したようなカフ242と同様の方法で利用することができる。ステント34の自由端部は、血管244の管腔248に挿入することができる。次いで、縫合フラップ280は、血管244の壁246の外側表面上で部分的にまたは全体的に広げられ、血管244の壁246上に縫合され得る。
【0065】
図46も参照すると、例示的な配備ツール250が示されている。配備ツール250は、特に上述のハイブリッドグラフト231と共に使用するように適合される。他の実施形態によれば、配備ツール250は、本明細書に記載するジャンパーグラフト24a、24b、24cの他の実施形態と共に使用することができる。配備ツール250はシース252を含む。シース252は、PTFE、ePTFE、またはダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルなどのPETメッシュなどの任意の適切な材料から作製することができる。
図47~
図49も参照すると、タブ254が、シース252の近位端部において、またはその近くでシース252に取り付けられ得る。代替的に、タブ254は、シース252の遠位端部もしくはその近くで、またはシース252に沿った任意の他の適切な場所で、シース252に取り付けられてもよい。タブ254は、タブ254の一部がシース252の両側でシース252に対して横方向に延びるように、一般的に分岐されてもよく、タブ254は、シース252の上部およびシース252の両側でシース252に取り付けられてもよい。タブ254は、任意の適切な方法で、例えば、接着剤によって、溶接によって、または焼結によって、シース252に取り付けられ得る。あるいは、タブ254は、シース252と一体的に作製されてもよい。タブ254は、ユーザによって引っ張られるように構成された引き手256を含むことができる。引き手256は、ユーザが引き手256を把持し引っ張ることを容易にするような形状および/または質感を有することができる。引き手256は、
図47で最も明確に分かるように、シース252の長手方向中心線から近位方向に上向きに傾斜していてよい。
図48も参照すると、シース252は分離ライン258を含むことがで、引き手256が把持されて引っ張られるときにシース252は分離ライン258に沿って優先的に分離する。分離ライン258は、ほぼ直線状であり、シース252の長手方向中心線にほぼ平行であってよい。あるいは、分離ライン258は、シース252に沿った任意の他の適切な経路を示してもよい。一実施形態によれば、分離ライン258は、シース252に沿った一組のミシン目を含む。別の実施形態によれば、分離ライン258は、シース252に沿った一組のスリットを含む。別の実施形態によれば、分離ライン258は、シース252の残りの部分の厚さよりも薄い厚さを有するシース252に沿った線であり、シース252の分離は、分離ライン258に沿って優先的に生じる。他の実施形態によれば、分離ライン258は、任意の他の適切な方法で構成することができる。分離ライン258の近位端部において、シース252は、近位から遠位の方向へのシース252の分離を容易にする、V字型または別様に成形された切欠き259を含むことができる。切欠き259は、有利には、その遠位端部よりも、シース252の近位端部と同一の広がりを持ち得るその近位端部の方が広い。
【0066】
図46および
図50も参照すると、配備ツール250は、マンドレル208を含み、その遠位端部には拡張器先端部202がある。拡張器先端部202は、血管内に形成された切開部または開口部を膨張させるようなサイズおよび形状を有する。通路204が、拡張器先端部202を通って画定される。有利には、通路204は、まっすぐで、配備ツール250の長手方向中心線と実質的に同軸である。代替的に、通路204は、配備ツール250に対して異なるように成形され、かつ/または異なるように向けられ得る。ガイドワイヤ206は、通路204を通って伸ばすことができ、かつ/または通路204内に後退可能とすることができる。ガイドワイヤ206の端部は、ガイドワイヤ206が通路204を出るときに湾曲するように構成することができる。すなわち、通路204を出ると、ガイドワイヤ206の遠位端部は、片側に、または近位方向に戻って、配備ツール250の長手方向中心線から離れて湾曲する。
【0067】
ハイブリッドグラフト231をマンドレル208に巻き付けることができる。代替的に、ジャンパーグラフト24の別の実施形態をマンドレル208に巻き付けることができる。ハイブリッドグラフト231は、マンドレル208上で向けられてよく、ステント34を含む第2のセクション232は、マンドレル208の遠位端部にまたはその近くに位置し、ステント34の遠位端部は、拡張器先端部202の近位端部に隣接または当接することができる。ハイブリッドグラフト231の第1のセクション230の遠位端部は、タブ254とシース252との間の接合部に実質的に位置し得る。あるいは、ハイブリッドグラフト231の第1のセクション230の遠位端部は、タブ254に対して異なる場所に位置し得る。シース252は、ハイブリッドグラフト231の第2のセクションの全体または一部に巻き付けられ、第2のセクション232はマンドレル208に巻き付けられる。シース252は、ハイブリッドグラフト231の第2のセクション232の少なくとも一部をマンドレル208に対してまたはこれに向かって圧縮する。分離ライン258は、ユーザが分離ライン258に沿ってシース252を引き裂くことを可能にするように十分弱いが、第2のセクション232がマンドレル208に対してまたはこれに向かって圧縮されている間、ハイブリッドグラフト231の第2のセクション232によって加えられる外向きの力に耐えるように十分強い。
【0068】
図50も参照すると、ユーザは、ガイドワイヤ206を(
図44に見られる血管244のような)血管の端部または血管(大動脈など)の側面に挿入する。次いで、拡張器先端部202は、拡張器先端部202、そしてシース252の少なくとも遠位端部が血管に入るまで、シース252と共にガイドワイヤ206に沿ってスライドされる。シース252(および、それと共にハイブリッドグラフト231の第2のセクション232)は、ユーザによって選択された適切な距離だけ血管内にスライドされる。ハイブリッドグラフト231が所定の場所に来ると、ユーザは引き手256を把持し、マンドレル208から離れて近位方向に力を加える。シース252は、分離ライン258に沿って分離され、近位端部から遠位端部に向かってハイブリッドグラフト231から剥離される。切欠き259は、まず、引き手256(したがってタブ254)の運動からの力を、分離ライン258の近位端部に向かって導く。したがって、ユーザが引き手256を近位に引っ張り続けてマンドレル208から引き離すと、分離ライン258は遠位方向に向かって分離し続ける。シース252が分離すると、それはもはやハイブリッドグラフト231の第2のセクション232をマンドレル208に対してまたはこれに向かって圧縮せず、第2のセクション232のステント34は外側に拡張する。分離ライン258がその遠位端部で分離されると、ステント234はその外側への拡張を終了し、シース252はハイブリッドグラフト231から引き離される。血管の内側に残っているシース252のあらゆる部分が血管から引き出され、ハイブリッドグラフト231が所定の場所にくる。
【0069】
図51も参照すると、例示的な配備ツール260が示されている。配備ツール260は、特に上述のハイブリッドグラフト231と共に使用されるように適合される。他の実施形態によれば、配備ツール260は、本明細書に記載するジャンパーグラフト24a、24b、24cの他の実施形態と共に使用することができる。他の実施形態によれば、配備ツール250は、本明細書に記載するジャンパーグラフト24a、24b、24cの他の実施形態と共に使用することができる。配備ツール260は、実質的に配備ツール250に関して上述したとおりであり、かつ
図47~
図49に示すとおりであり得る、シース252を含む。さらに、配備ツール260は、マンドレル208と、実質的に配備ツール250に関して上述したとおりであり、かつ
図46および
図50に示すとおりとすることができる、ガイドワイヤ206を受容するように構成された拡張器先端部202と、を含む。針210は、拡張器先端部202を通って後退可能に延びてよく、配備ツール260上でより近位に位置する針コントロール277に連結され得る。針210は、リンク機構または任意の他の適切な構造もしくは機構を介して針コントロール277に連結されてもよい。針210は、針コントロール277の近位運動によって拡張器先端部202内に後退され、針コントロール277の遠位運動によって拡張器先端部202から延出され得る。針210は、これを通る開口を含むことができ、ガイドワイヤ206がこの開口を通過し得る。オプションとして、
図53で分かるように、マンドレル208は、リブ付きであってよい。ハイブリッドグラフト231は、配備ツール260のマンドレル208上に装着され、配備ツール250に関して実質的に上述したように、シース252によって所定の場所に保持され得る。
【0070】
配備ツール260はまた、概して配備ツール250に関して上述した通りであり、かつ
図47~
図49に示すとおりとすることができる、タブ254を含む。タブ254は、シース252の近位端部またはその近傍でシース252に圧縮力を加える。また、
図51~
図53を参照すると、タブ254は、ほぼU字形であってもよい。1つ以上のウィング262がタブ254から延び得る。ウィング262は、タブ254に取り付けられるか、または、タブ254と一体に形成され得る。ウィング262はそれぞれ、タブ254から外側に傾斜している。タブ254自体は、各ウィング262の接合部とタブ254との間で、タブの中に画定されたリビングヒンジを含むことができる。ウィング262は、以下でさらに詳細に説明するように、ユーザの手の挟む動作および挟む力の印加などによるウィング262の互いに向かう運動により、タブ254の自由端部264が互いから離れて移動するように構成される。
【0071】
アーム266が、タブ254から近位に延び得る。アーム266は、タブ254に取り付けられるか、タブ254と一体的に作製されるか、または任意の適切な方法でタブ254に接続され得る。アーム266は、実質的に円筒形であってよく、または任意の他の適切な形状および/もしくは断面を有していてもよい。有利には、アーム266は剛性であってよい。代替的に、アーム266は、可撓性を有するように構成され得る。アーム266の遠位端部はタブ254に接続され得、アーム266の近位端部はヒンジ268に接続され得る。アーム266とヒンジ268との間の接続は、アーム266がヒンジ268を中心に回転することを可能にし、以下でさらに詳細に説明するように、アーム266の回転により、タブ254は、円の円弧に沿って、シース252の長手方向中心線から上方に、また近位に移動する。ヒンジ268は、支持部材272に取り付けられていても、支持部材272の一部であってもよい。
図53を参照すると、支持部材272の遠位端部は、マンドレル208の近位端部に接続され得る。マンドレル208は、支持部材272に取り付けられていても、その一部であってもよい。支持部材272は、実質的に剛性であってよい。オプションとして、グリップ270を任意の適切な方法でアーム266に取り付けることができる。例えば、グリップ270は、アーム266を受容するようにグリップを通って画定された開口274を含むことができ、アーム266は、アーム266に対してスライド可能であり得る。代替的に、アーム266は、開口274に圧入されるか、開口274に接着されるか、開口274に溶接されるか、または別様に開口274に固定され得る。グリップウィング276が、開口274から横方向に、または任意の他の適切な方向に延びることができる。グリップウィング276は、概ね平坦で長方形であってよく、または任意の他の適切な形状を有し得る。ユーザは、以下でさらに詳細に説明するように、グリップ270を利用して、マンドレル208から離れるようにタブ254を持ち上げることができる。グリップ270は、シース252に取り付けられ得、アーム266に対するグリップ270の近位運動により、シース252が分裂され得る。
【0072】
図51も参照すると、ユーザは、ガイドワイヤ206を(
図44に見られる血管244のような)血管の端部または血管(大動脈など)の側面に挿入する。針210は遠位に延び、血管の側面を穿刺するために使用される。次いで、拡張器先端部202が穿刺部に押し込まれて穿刺部を拡張し、針210が針コントロール277の近位運動によって拡張器先端部202内に近位に引き抜かれる。次いで、ガイドワイヤ206は、拡張器先端部202を通って、オプションとして針210(現在は拡張器先端部202内にあり、もはや露出されない)の開口を通って、血管内にスライドされる。次いで、拡張器先端部202は、拡張器先端部202、そしてシース252の少なくとも遠位端部が血管に入るまで、シース252と共にガイドワイヤ206に沿ってスライドされる。シース252(および、それと共にハイブリッドグラフト231の第2のセクション232)は、ユーザによって選択された適切な距離だけ血管内にスライドされる。いったんハイブリッドグラフト231が所定の場所にくると、ユーザはウィング262を把持し、それらを一緒に圧縮する。ウィング262が互いに向かって動くと、タブ254の自由端部264が互いから離れる。タブ254がリビングヒンジを含む場合、そのリビングヒンジは、互いから離れるタブ254の自由端部264の運動を容易にする。したがって、タブ254は、シース252をマンドレル208に対してもはや圧縮しない。
【0073】
次に、ユーザは、グリップ270を把持し、アーム266に沿って近位に引き、配備ツール250に関して上述したのと同様の方法で、シース252をその近位端部から分裂させる。シース252は、分離ラインを含むことができ、それに沿ってシース252が分離する。グリップ270が近位に移動すると、シース252の分裂が継続する。シース252が分離すると、それはもはやマンドレル208に対してまたはこれに向かってハイブリッドグラフト231の第2のセクション232を圧縮せず、第2のセクション232のステント34は外側に拡張する。シース252がその遠位端部で分離すると、ステント234はその外側への拡張を終了し、シース252はハイブリッドグラフト231から引き離される。次に、アーム266は、ヒンジ268を中心に回転してグリップ270をじゃまにならない所に移動させ、グリップ270は、配備ツール260の近位端部の近位の位置に移動され得る。
図52で分かるように、血管の内側に残っているシース252のあらゆる部分が血管から引き出され、ハイブリッドグラフト231が所定の場所にくる。
【0074】
図55も参照すると、別の例示的な配備ツール290が示されている。配備ツール290は、ダブルステントグラフト292と共に使用することができる。ダブルステントグラフト292は、上述したハイブリッドグラフト231とほぼ同じ方法で作製することができるが、以下に説明する相違点がある。ダブルステントグラフトは、2つのステント234を利用しており、これらのステントは、それらの長手方向中心線に沿って互いにほぼ整列され得、互いに接続されるかまたは取り付けられ得る。あるいは、2つのステント234は、ダブルステントグラフト292の長さにほぼ沿って延びる1つの単一のステント234であってもよい。代替的に、2つのステント234は、ダブルステントグラフト292の可撓性をより大きくするために、互いに長手方向に分離されてもよい。シース252は、2つの別個のシース252a、252bを含み得、シース252aは、シース252bの遠位に位置する。各シース252s、252bは、上述のように分離ラインに沿って分裂するように構成され得る。2つのタブ294が、各シース252a、252bの端部に取り付けられ得る。あるいは、1つのタブ294または3つ以上のタブ294が各シース252a、252bの端部に取り付けられ得る。タブ294は、ほぼ円形であってよく、または楕円形もしくは多角形など、任意の他の適切な様式で成形されてもよい。代替的に、タブ294は、実質的に直線状であってよく、または曲線状であってもよい。タブ294は、互いから離間して周方向にほぼ90°に向けられ得る。代替的に、タブ294は、任意の他の適切な方法で互いに対して向けられ、離間され得る。タブ294はすべて、配備ツール290に対してほぼ同じ長手方向位置に位置し得る。代替的に、第1のシース252aに関連するタブ294は、第2のシース252bに関連するタブ294から長手方向に離間され得る。後述するように、シース252a、252bは、互いから反対の方向に長手方向に分裂するように構成されている。各シース252a、252bは、そのシース252a、252bの自由端部に向かう方向に分裂可能であってもよい。
【0075】
配備ツール290は、上述のハイブリッドグラフト231と共に使用することができる。他の実施形態によれば、配備ツール290は、本明細書に記載するジャンパーグラフト24a、24b、24cの他の実施形態と共に使用することができる。他の実施形態によれば、配備ツール290は、本明細書に記載するジャンパーグラフト24a、24b、24cの他の実施形態と共に使用することができる。配備ツール290は、実質的に配備ツール250に関して上述したとおりであり、かつ
図47~
図49に示すとおりとすることができる、シース252を含む。さらに、配備ツール290は、マンドレル208と、実質的に配備ツール250および配備ツール260に関して上述したとおりであり、かつ
図46および
図50に示すとおりとすることができる、ガイドワイヤ206を受容するように構成された拡張器先端部202と、を含む。オプションとして、
図53で分かるように、マンドレル208は、リブ付きとすることができる。ダブルステントグラフト292は、配備ツール250および配備ツール260に関して実質的に上述したように、配備ツール290のマンドレル208上に装着され、シース252によって所定の場所に保持され得る。
【0076】
図55も参照すると、ユーザは、ガイドワイヤ206を血管の側面または端部に挿入する。次いで、拡張器先端部202は、拡張器先端部202、そしてシース252の少なくとも遠位端部が血管に入るまで、シース252と共にガイドワイヤ206に沿ってスライドされる。シース252(および、それと共にダブルステントグラフト292の遠位端部)は、ユーザによって選択された適切な距離だけ血管244内にスライドされる。
図56も参照すると、ダブルステントグラフト292が所定の場所にくると、ユーザは、第1のシース252aに取り付けられたタブ294を把持し、それらを互いに引き離して、第1のシース252aを分裂させる。第1のシース252aが分離すると、それはもはやマンドレル208に対してまたはこれに向かってダブルステントグラフト292の遠位端部を圧縮せず、ダブルステントグラフト292の遠位端部におけるステント234またはステント234の遠位部分は外側に拡張する。いったん第1のシース252aがその遠位端部で分離すると、ステント234またはステント234の遠位部分はその外側への拡張を終了し、第1のシース252aはダブルステントグラフト292から引き離される。
図52で分かるように、血管の内側に残っている第1のシース252aのあらゆる部分が血管から引き出され、ダブルステントグラフト292の遠位端部は所定の場所にくる。次いで、ガイドワイヤ206は、ダブルステントグラフト292の内腔を通して血管244から引き抜かれ得る。
【0077】
次に、
図57も参照すると、ユーザは、ダブルステントグラフト292の近位端部の上で血管グラフト296を引っ張ることができる。血管グラフト296の端部は、引っ張られて残りのタブ294に近接することができる。血管グラフト296がダブルステントグラフト292上の所定の場所にくると、ユーザは、第2のシース252bに取り付けられたタブ294を把持し、それらを互いに引き離して、第2のシース252bを分裂させる。シース252bが分離されると、それはもはやマンドレル208に対してまたはこれに向かってダブルステントグラフト292の近位端部を圧縮せず、ダブルステントグラフト292の近位端部におけるステント234またはステント234の一部は、外側に拡張する。第2のシース252bがその近位端部で分離すると、ステント234またはステント234の近位部分はその外側への拡張を終了し、第2のシース252bは、ダブルステントグラフト292から引き離され、血管グラフト296の端部の外に出る。したがって、ダブルステントグラフト292の近位端部は所定の場所に固定される。
【0078】
動作-大動脈グラフト
図12を参照すると、中央セクション22を有する大動脈グラフト20を植え込む例示的な方法が示されている。患者を心肺バイパスポンプ上に配置し、心臓を停止させ、上行大動脈から離間した大動脈60上にクランプを設置する。上行大動脈を分離するために、切開部62が大動脈60に形成され、上行大動脈が除去される。次いで、大動脈グラフト20の中央セクション22は、切開部62においてまたはその近傍で大動脈断端70の近位端部に縫合される。このようにして、大動脈グラフト20の中央セクション22の内腔は容易にアクセス可能である。
【0079】
図12に示すように、マニホールド24dは、大動脈グラフト20の中央セクション22に固定され、3つのジャンパーグラフト24a、24b、24cがマニホールド24dから延びている。あるいは、3つのジャンパーグラフト24が中央セクション22に設けられている場合、3つのジャンパー40、50が選択される。ジャンパーの一方40が選択される場合、ジャンパー40をそのまま利用してもよいし、ジャンパー40を、より短い長さに切断してもよい。この長さは、大動脈グラフト20の中央セクション22と、接続される動脈64、66、68との間の距離に基づいて、臨床医によって選択される。ジャンパーの一方50が選択された場合、その長さは固定され、そのジャンパー50は、より短い長さに切断されない。次に、選択されたジャンパー40、50は、ジャンパー40、50の大部分がジャンパーグラフト24の1つを通って引っ張られるまで、そのジャンパーグラフト24を通って大動脈グラフト20の中央セクション22の内腔に挿入される。ジャンパー50が使用される場合、有利には、ジャンパー50は、そのジャンパー50の固定端部56の少なくとも一部がジャンパーグラフト24の拡張可能なメッシュ34内に位置するまで、ジャンパーグラフト24を通して引っ張られる。ジャンパー40、50は、ガイドワイヤによって対応するジャンパーグラフト24を通して引っ張られるか、または押される。有利には、標準的な介入バルーン(不図示)がジャンパー40、50の固定端部46、56内に位置付けられ、そのバルーンが膨張される。その膨張は、固定端部46、56をその拡張状態まで拡張させ、また、拡張可能なメッシュ34をその拡張状態まで拡張させる。このようにして、ジャンパー40、50の固定端部46、56は、対応する拡張可能なメッシュ34に圧入される。ガイドワイヤおよび介入バルーンが引き抜かれる。代替的に、ジャンパー40、50が大動脈グラフト20の中央セクション22と一体に作製される場合、ジャンパー40、50の選択および大動脈グラフト20の中央セクション22へのその挿入は省略される。あるいは、ジャンパー40、50の少なくとも1つは、そのジャンパー40、50を大動脈グラフト20の中央セクション22に接続する前に、対応する動脈64、66、68に挿入され得る。
【0080】
次に、大動脈グラフト20の残りの部分20aを下行大動脈74に挿入する。この残りの部分は、大動脈グラフト20の中央セクション22に固定されてよく、または大動脈グラフト20の中央セクション22に接続される別個の構成要素であってもよい。いくつかの実施形態において、大動脈グラフト20の中央セクション22は、切開部62においてまたはその近傍で、まず下行大動脈74に縫合される。大動脈グラフト20の残りの部分20aは、止血弁(hemostasis value)32を通してアクセスポート30内に挿入され、次いで中央セクション22の内腔を通して下行大動脈72内に、例えば止血弁32を通してアクセスポート30を通して挿入されるガイドワイヤ(不図示)を介して、挿入され得る。大動脈グラフト20の残りの部分20aは、標準的な介入バルーンを膨張させることなどによって、任意の適切な方法で配備され得る。他の実施形態では、大動脈グラフト20の残りの部分20aは、自己拡張型であってよい。必要に応じて、大動脈グラフト20の残りの部分20aを下行大動脈72に縫合して、大動脈グラフト20の残りの部分20aが所定の場所に確実に留まるようにしてもよい。あるいは、そのような縫合を行う必要はない。また、大動脈グラフト20の残りの部分20aは、大動脈グラフト20の中央セクション22に縫合されるか、または別様に取り付けられ得る。他の実施形態によれば、大動脈グラフト20の残りの部分20aが下行大動脈74に挿入され、次いで中央セクション22が下行大動脈74に縫合される。大動脈グラフト20の残りの部分20aが固定された状態で、アクセスポート30を通して挿入されていたガイドワイヤ、介入バルーン、および/または他の機構もしくは装置が、止血弁32を通って引き抜かれる。その後、心臓を再始動させ、標準的技法に従って患者を心肺バイパスから外す。
【0081】
少なくとも1つのジャンパーグラフト24は、配備ツール200を利用することによって植え込むことができる。
図27を参照すると、上述したように、ジャンパーグラフト24は、最初に、配備ツール200のマンドレル208に巻き付けられる。上述したように、
図35も参照すると、格納シース180は、初期の圧縮構成でジャンパーグラフト24の周りに巻かれる。
図36~
図37も参照すると、プルワイヤ190が、巻かれた格納シース180の長手方向に隣接する孔188を通過する。このようにして、プルワイヤ190は、格納シース180の隣接する縁部182a、182bを一緒に保持し、これにより、格納シース180は、マンドレル208に対してジャンパーグラフト24を圧縮する。
【0082】
配備プロセスを開始するには、ユーザは配備ツール200のハンドル212を把持し、針前進ボタン224を作動させる。ユーザによって針前進ボタン224に加えられた遠位の力は、針前進ボタン224に連結された圧縮ばね222を圧縮し、同時に、ユーザによって針前進ボタン224に加えられた遠位の力は、針配備コントローラ228を遠位に前進させる。
図28も参照すると、針配備コントローラ228が針210に取り付けられているか、または別様に連結されているので、針配備コントローラ228の遠位前進により、針210は拡張器先端部202を通って通路204から遠位に前進する。有利には、ガイドワイヤ206は、針210の前進の前に、実質的に1~2センチメートルの距離だけ拡張器先端部202を通って通路204から延びる。あるいは、ガイドワイヤ206は、通路204から異なる距離だけ延びてもよく、または針210の前進の前に通路204から全く延びなくてもよい。上述したように、有利には、針210は中空であり、ガイドワイヤ206は針を通過する。したがって、針210が遠位に前進し、ガイドワイヤ206が実質的に長手方向に静止したままであるとき、針210は湾曲したガイドワイヤ206を一時的にまっすぐにする。針210は、その遠位端部がガイドワイヤ206の遠位端部に対して遠位に位置するまで、遠位に前進し続ける。このようにして、ガイドワイヤ206の遠位端部は、組織を穿刺する針210の能力を妨げない。針210は、以前は患者の組織との接触から保護されていたが、ここで露出される。
【0083】
次に、ユーザは、ジャンパーグラフト24を挿入したい場所において、針210で患者の血管を貫通する。針210が血管を穿刺した後、ユーザは針前進ボタン224を解放する。次に、圧縮ばね222に蓄積されたエネルギーが、針前進ボタン224を近位に付勢し、それによって、針前進ボタン224に取り付けられるか、または別様に連結された針配備コントローラ228を近位に移動させる。次に、針配備コントローラ228は、針210を近位に移動させ、拡張器先端部202内の通路204内に戻す。針210が近位に移動し、ガイドワイヤ206が実質的に長手方向に静止したままであるとき、ガイドワイヤ206の遠位端部206が露出し、血管の管腔内に留まる。また、
図29を参照すると、上述したように、ガイドワイヤ206の遠位先端部は近位に湾曲し、ガイドワイヤ206は、血管の内部に対して非外傷性である。
【0084】
次いで、ガイドワイヤ206は、ほぼジャンパーグラフト24の長さ、血管の管腔内にさらに前進される。このような前進は、配備ツール200の近位端部から延びるガイドワイヤ206の近位端部を押すことによって、手動で行うことができる。あるいは、そのような前進は、配備ツール200内の機構によって実行されてもよい。次に、ユーザは、ガイドワイヤ206に沿って配備ツール200を前進させる。拡張器先端部202は鈍く、これが針210によって作られた血管内の穿刺部に押し付けられると、その穿刺部を拡張し、拡張した穿刺部を通って血管の管腔に入る。配備ツール200が拡張された穿刺部を通って前進し続けると、圧縮されたジャンパー24が血管の管腔に入る。ユーザは、ジャンパーグラフト24の縫合カフ160が血管内の穿刺部に近接するまで配備ツール200を前進させ続け、穿刺部に近接した時点でユーザは配備ツール200の前進を停止する。
【0085】
次いで、ジャンパーグラフト24が配備される。プルワイヤ190は近位に後退される。ユーザは、プルワイヤ190の近位部分を把持し、これを近位に引っ張ることができる。あるいは、このような後退は、配備ツール200内の機構によって実行されてもよい。プルワイヤ190が近位に後退されると、プルワイヤ190は、最遠位孔188から開始して、格納シース180の孔188から順次引き抜かれる。上述のように、格納シース180は、格納シース180を圧縮位置に保持する、孔188を通るプルワイヤ190の通過によってジャンパーグラフト24の周りに圧縮される。プルワイヤ190が孔188から近位に後退されると、格納シース180の縁部182は、格納シース180の近位端部から開始して互いに離れて移動するように自由になる。したがって、格納シース180によって圧縮されていたジャンパーグラフト24は、プルワイヤ190が後退されると、ジャンパーグラフト24の近位端部から始めて半径方向に拡張することができる。ジャンパーグラフト24は、プルワイヤ(pull will)190が格納シース180の最遠位孔188から除去されるまで、近位から遠位へと半径方向に拡張する。次に、ジャンパーグラフト24は、血管の管腔内で完全に半径方向に拡張される。プルワイヤ190は次に、まだ配備ツール200から完全に分離されていなければ、配備ツール200から完全に分離される。ジャンパーグラフト24は、もはや配備ツール200のマンドレル208の周りで圧縮されず、配備ツール200のマンドレル208は、ジャンパーグラフト24の内腔から容易に引き抜かれ得る。配備ツール200は、ジャンパーグラフト24の内腔から近位に移動し、ジャンパーグラフト24を血管に対して所定の場所に残す。
【0086】
縫合カフ160は、使用される場合、血管165の壁に接するように調節され得る。ジャンパーグラフト24は、血管165の長手方向中心線に対してある角度で、血管165内の拡張された穿刺部を通って外側に延びる。したがって、縫合カフ160は、血管165の壁167に接するようにジャンパーグラフト24の両側で差動的に広げられ得る。すなわち、血管165に対して鈍角を形成するジャンパーグラフト24の側では、縫合カフ160は、血管165に対して鋭角を形成するジャンパーグラフト24の側よりも大きな程度まで広げられ得る。実際、ジャンパーグラフト24は、縫合カフ160が、血管165に対して鋭角を形成するジャンパーグラフト24の側で血管165の壁に最初に接触するように、血管165の管腔内に前進され得る。縫合カフ160は、縫合カフ160が縫合カフ160の周囲の組織と実質的に係合するまで、差動的に広げられる。次に、臨床医は、血管165の壁167に縫合カフ160を縫合して、ジャンパーグラフト24を血管165に固定する。縫合カフ160は、ジャンパーグラフト24と血管165との間の確実な縫合接続を可能にするために、縫合するための厚いエリアを提供する。縫合が完了すると、ジャンパーグラフト24が血管165に固定される。
【0087】
心臓の再始動に関連して、ジャンパーグラフト24a、24b、24cまたはマニホールド24dは、処置の次の部分の間に大動脈血がそこを通って漏れるのを防止するためにクランプされる。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のジャンパーグラフト24は、上述したように配備ツール200を用いて対応する動脈64、66、68に接続される。他の実施形態によれば、ジャンパーグラフト24a、24b、24cは、大動脈弓から生じる対応する動脈、すなわち腕頭動脈64、左総頸動脈66、および左鎖骨下動脈68に挿入される。選択されたジャンパー40、50の拡張端部42、52の直径よりも短いかまたはこれと実質的に同じ長さで、これらの動脈64、66、68の1つに切開が行われる。選択されたジャンパーグラフト24a、24b、24cの拡張端部42、52は、挿入状態でその切開部を通して挿入される。このような挿入は、切開処置において直視下で実施されてもよく、または全体もしくは部分的に経皮的に実施されてもよい。ノーズコーン(不図示)が、先細にされてもよく、拡張端部42、52の遠位に位置して、選択された動脈64、66、68の管腔内への切開部を通した拡張端部42、52の進入を容易にしてもよい。ガイドワイヤは、選択されたジャンパーグラフト24a、24b、24cの内腔内に延び、拡張端部42、52を通ってノーズコーンまで延びてもよく;このようなガイドワイヤは、有利には、選択されたジャンパーグラフト24a、24b、24cのカバー44、54を通るのではなく、そのジャンパーグラフト24a、24b、24cの近位端部から延びる。拡張端部42、52は、対応する動脈64、66、68の管腔に配置される。有利には、標準的な介入バルーン(不図示)がジャンパーグラフト24a、24b、24cの拡張端部42、52内に位置付けられ、そのバルーンが膨張される。その膨張は、拡張端部42、52を、それが配置された対応する動脈64、66、68の内径よりも大きい直径を有する拡張状態まで拡張する。このようにして、拡張端部42、52は、対応する動脈64、66、68に圧入される。ガイドワイヤと介入バルーンが引き抜かれる。次に、その他の2つの動脈64、66、68について、ジャンパーグラフト24a、24b、24cの、各動脈64、66、68への接続が行われる。
【0088】
図12Aを参照すると、中央セクション22を有する大動脈グラフト20を植え込む別の例示的な方法である。この方法は、実質的に
図12に関して上述したように実施されるが、本段落に記載する相違点を有する。上行大動脈を除去した後、大動脈グラフト20の中央セクション22の端部を大動脈断端70に挿入する。中央セクション22は、大動脈断端70内で自己拡張して中央セクション22を所定の場所に保持するのを補助する、中央セクションアンカー25を含む。代替的に、標準的な介入バルーンを使用して、中央セクションアンカー25を拡張させるか、またはその拡張を補助することができる。大動脈断端70内に配置された中央セクションアンカー25は、近位中央セクションアンカー25と呼ばれ得る。次に、大動脈グラフト20の中央セクション22のその端部は、切開部62においてまたはその近傍で大動脈断端70に縫合される。中央セクション22は、縫合バンド23を含み、臨床医は、さらなる安全性のため、大動脈断端70を縫合バンド23に縫合する。大動脈グラフト20の中央セクション22の端部は、下行大動脈72内に挿入される。中央セクション22は、下行大動脈72内で自己拡張して中央セクション22を所定の場所に保持するのを補助する中央セクションアンカー25を含む。代替的に、標準的な介入バルーンを使用して、中央セクションアンカー25を拡張するか、またはその拡張を補助することができる。下行大動脈72内に配置された中央セクションアンカー25は、遠位中央セクションアンカー25と呼ばれ得る。次に、大動脈グラフト20の中央セクション22のその端部は、切開部62においてまたはその近傍で下行大動脈72に縫合される。中央セクション22は、縫合バンド23を含み、臨床医は、さらなる安全性のため、下行大動脈72を縫合バンド23に縫合する。その後、心臓を再始動させ、標準的技法に従って患者を心肺バイパスから外す。
【0089】
次に、単一のマニホールド24dが、大動脈グラフト20の中央セクション上のジャンパーグラフト24に接続される。有利には、標準的な介入バルーン(不図示)がジャンパーグラフト24の拡張可能なメッシュ34内に位置付けられ、そのバルーンが膨張される。その膨張は、拡張可能なメッシュ34を拡張状態に拡張する。このようにして、単一のマニホールド24dの固定端部は、対応する拡張可能なメッシュ34に圧入される。
図9に示すように、個々のジャンパーグラフト24a、24b、24cは、マニホールド24dから延び、マニホールド24dをジャンパーグラフト24に接続した後は、中央構造22の内腔と流体連通している。
【0090】
図12Bを参照すると、中央セクション22を有する大動脈グラフト20を植え込む別の例示的な方法である。この方法は、実質的に
図12Aに関して上述したように実行されるが、本段落で説明する相違点がある。中央セクション22の両端部を大動脈の残りの部分に接続した後、患者の心臓を再始動させる。マニホールド24dは、上述したように、中央セクション22に接続されたジャンパーグラフト24に接続されている。この実施形態では、マニホールドは、それに接続された2つの個別のジャンパーグラフト24a、24cを含み、第3のジャンパーグラフト24bはジャンパーグラフト24cから分岐している。代替的に、ジャンパーグラフト24bがジャンパーグラフト24aから分岐してもよい。臨床医は、それらのジャンパーグラフト24a、24b、24cが患者の所望の場所に到達するのに十分に長いかどうかを判定する。そうでない場合には、
図10に関して説明したように、ジャンパーグラフト24a、24b、24cを利用することができる。そのジャンパーグラフト24a、24b、24cの固定端部46は、任意の適切な長さに切断され、次いで短すぎるジャンパーグラフト24cの遠位端部において拡張可能なメッシュ34上に配置され得る。このようなジャンパー40は、ジャンパーグラフト24a、24b、24cのいずれかまたはすべてと共に使用することができる。有利には、標準的な介入バルーン(不図示)が拡張可能なメッシュ34内に位置付けられ、そのバルーンが膨張される。その膨張は、拡張可能なメッシュ34を拡張状態に拡張する。このようにして、グラフト24a、24b、24cの固定端部46は、対応する拡張可能なメッシュ34に圧入される。
【0091】
図13~
図14を参照すると、中央セクション22を有する大動脈グラフト20を植え込む別の例示的な方法が示されている。この方法は、「ウォームエレファントトランク(warm elephant trunk)」法と呼ばれることがある。ウォームエレファントトランク法は、
図13に示される二重自動灌流装置80を利用する。二重自動灌流装置80は、内部を通って画定された内腔を備える可撓性カニューレ82と、内腔から外側表面までカニューレ82を通って画定された1つ以上の開口84と、を含む。少なくとも1つのアクセスポート86がカニューレ82に接続される。アクセスポート86は内腔を含み、これは、器具および/またはガイドワイヤがこの内腔を通ってカニューレ82の内腔に挿入され、かつカニューレ82の内腔からこの内腔を通って引き抜かれることを可能にする。アクセスポート86の一端部は、カニューレ82に接続し;アクセスポート86の他端部は、オプションとして止血弁88を含み、これは、血液がカニューレ82の内腔を通って流れている間に、器具および/またはガイドワイヤがアクセスポート86に出入りすることを可能にする。1つ以上のアクセスポート86を設けることができる。各アクセスポート86は、アクセスポート86の長手方向中心線がカニューレ82の長手方向中心線に対して傾斜するように、軸外で、またはアクセスポート86の長手方向中心線がカニューレ82の長手方向中心線と実質的に同じであるように、軸上で、カニューレ82に接続され得る。
【0092】
二重自動灌流装置80の第1のバルーン90は、その中を通る血液の流れを可能にするために実質的に中空であり得る。あるいは、チューブ(不図示)が、第1のバルーン90の両側の間に延び、カニューレ82に接続して、第1のバルーン90を横切ってチューブを通る血液の流れを可能にする。ブリッジチューブ94が、第1のバルーン90と、第1のバルーンから離間した第2のバルーン92とに接続されている。第1のバルーン90および/または第2のバルーン92は、ブリッジチューブ94に対してスライド可能であり、ブリッジチューブ94はバルーン90、92に圧入され得る。両端部のフランジ(不図示)、または他の適切な構造特徴部は、ブリッジチューブ94がバルーン90、92から引き抜かれるのを防止することができる。ブリッジチューブ94は、バルーン90、92および/またはバルーン90、92内のチューブに圧入またはライン間嵌合(line-to-line fit)されて、第1のバルーン90および/または第2のバルーン92がブリッジチューブ94に対してスライドするのを可能にすると共に、ブリッジチューブ94とバルーン90、92との間の各界面での漏れを実質的に防止することができる。
【0093】
二重自動灌流装置80の第2のバルーン92は、その中を通る血液の流れを可能にするために実質的に中空であり得る。あるいは、チューブ(不図示)が、第2のバルーン92の両側の間に延び、ブリッジチューブ94に接続して、第2のバルーン92を横切ってチューブを通る血液の流れを可能にする。出口チューブ96が、第2のバルーン92に接続され、そこを通って血液が流れ、二重自動灌流装置80から出る。
【0094】
処置を開始するために、患者を心肺バイパスポンプ上に置き、心臓を停止させ、クランプを上行大動脈から離間した大動脈60上に配置する。上行大動脈を分離するために、大動脈60に切開部62が形成され、上行大動脈が除去される。次いで、大動脈グラフト20の中央セクション22が、切開部62においてまたはその近傍で大動脈断端70の近位端部に縫合される。このようにして、大動脈グラフト20の中央セクション22の内腔は容易にアクセス可能である。
【0095】
二重自動灌流装置80は、大動脈グラフト20の中央セクション22の内腔を通して、止血弁32を通して、そしてアクセスポート30を通して挿入される。二重自動灌流装置80は、第1のバルーン90が大動脈グラフト20の中央セクション22の開放端部に近接して大動脈グラフト20の中央セクション22内に位置するまで、アクセスポート30を通って前進され;次いで、第2のバルーン92は、大動脈グラフト20の中央セクション22の内腔の外側に位置する。次いで、第1のバルーン90を膨張させる。
【0096】
その後、心臓を再始動させ、標準的技法に従って患者を心肺バイパスから外す。心臓が再始動されている間、または心臓を再始動させる前に、大動脈グラフト20の残りの部分20aが下行大動脈74内に挿入され;第2のバルーン92が、下行大動脈74内で大動脈グラフトの残りの部分20aに挿入され、第2のバルーン92が膨張される。次いで、二重自動灌流装置80を通じて自動灌流が開始される。例えば、上流の開口84は、例えばスライドチューブによって、最初は遮断され、次いで、例えばスライドチューブを開口から遠ざけることによって、選択された時間に遮断解除されて自動灌流を開始する。大動脈グラフト20の植え込みが完了している間、血液は、バルーン90、92の間のブリッジチューブ94を通って流れ、大動脈を通る循環を可能にする。ジャンパー40、50が選択され、腕頭動脈64、左総頸動脈66、および左鎖骨下動脈68に接続され、実質的に
図12に関して上述したように、大動脈グラフト20の中央セクション22に固定される。このようにして、患者が心肺バイパス上にある時間が減少し、それに対応して心肺バイパスに関連する患者の副作用が減少する。
【0097】
必要に応じて、大動脈グラフト20の残りの部分20aを下行大動脈72に縫合して、大動脈グラフト20の残りの部分20aが所定の場所に留まることを確実にすることができる。あるいは、そのような縫合を行う必要はない。大動脈グラフト20の残りの部分20aは、大動脈グラフト20の中央セクション22に縫合されるか、または別様に取り付けられ得る。他の実施形態によれば、大動脈グラフト20の残りの部分20aが下行大動脈74に挿入され、次いで中央セクション22が下行大動脈74に縫合される。大動脈グラフト20の残りの部分20aが固定された状態で、バルーン90、92が収縮され、二重自動灌流装置80が止血弁32を通って引き抜かれる。
【0098】
図15~
図19を参照すると、フローティング縫合リング100が示されている。フローティング縫合リング100は、完全に円形である必要はなく、任意の他の適切な方法で湾曲していてもよい。
図15を参照すると、フローティング縫合リング100は、最初は第1の状態にある。フローティング縫合リング100は、
図16に示されるように、フローティング縫合リング100の第1の状態から第2の状態への拡張を補助するばね要素102を含む。ばね要素102は、少なくとも部分的に布カバー104によって覆われ得る。いくつかの実施形態において、布カバーは、ダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルなどのPETメッシュであってもよい。ばね要素102は、ニッケル-チタン合金のような超弾性材料から作製され得、ばね要素102に半径方向の力を加えることによって、そのばね要素102は、マルテンサイト相とオーステナイト相との間で移行し、第2の状態に拡張する。他の実施形態では、ばね要素102は、最初に第1の状態で圧縮され、次に第2の状態に自己拡張するか、または第1の状態から第2の状態に移行するように塑性変形される、ステンレス鋼のような弾性材料から作製され得る。ばね要素102は、ほぼ円形であってもよく、または任意の他の適切な形状を有してもよい。
図17~
図18を参照すると、フローティング縫合リング100は、オプションとして、調節可能セクション106を含むことができる。調節可能セクション106は、手動で調節可能であるばね要素102の波形もしくはアコーディオン形状のセクション、または手動で調節可能な他の構成とすることができる。調節可能セクション106は、オプションとして、ばね要素102の残りの部分とは異なる材料から作製され、ばね要素102に取り付けられる。調節可能セクション106は、以下でさらに詳細に説明するように、患者の中での適合の手動調節を可能にする。
図19は、第1の状態にある
図15のフローティング縫合リング100を斜視図で示す。
【0099】
図20を参照すると、大動脈グラフト20を植え込むためのシステム110が示されている。システム110により植え込まれる大動脈グラフト20は、上述したような大動脈グラフト20のいずれであってもよい。大動脈グラフト20は、
図6Aなどに関して上述したように、アクセスポート30と、少なくとも1つの縫合バンド23と、少なくとも1つの中央セクションアンカー25と、を含む中央セクション22を含むことができる。1つ以上のジャンパーグラフトが中央セクション22から延びることができ、または単一のマニホールド24dが中央セクション22から延びて、1つ以上のジャンパーグラフト24a、24b、24cがそこから延びていてもよい。1つ以上のフローティング縫合リング100は、大動脈グラフト20と関連してシステム100に含まれ得る。
図21も参照すると、可撓性内視鏡システム112が、アクセスポート30を通って大動脈グラフト20の端部の外に延びることができる。可撓性内視鏡システム112は、光およびカメラを含む可撓性スコープ本体118の端部に可視化ヘッド114を含むことができ、このような可視化ヘッド114は、当技術分野で知られているように構成することができる。カメラ120は、可視化ヘッド114の近位に位置し、これから離間していてよく、可視化ヘッド114は、解像度のためにスコープ本体118に沿ってカメラ120に画像を渡す1つ以上のレンズを含む。可撓性内視鏡システム112は、視覚化ヘッド114からのビューをユーザに表示するコンソール116に接続されてもよく;このようなコンソールは、当技術分野で既知である。オプションとして、可撓性内視鏡システム112は、標準であるように、トロカール118を通して患者に挿入することができる。
【0100】
図20および
図22を参照すると、単一の灌流カテーテル130が示されている。単一の灌流カテーテル130は、カテーテルシース132内に内腔を画定する。カテーテルシース132の遠位端部においてまたはその近傍には、膨張状態に膨張可能でありかつ収縮状態に収縮可能な閉塞バルーン142がある。閉塞バルーン12の近位において、1つ以上の灌流ポート134がカテーテルシース132を通って内腔まで延びている。バルーン注入ポート140が、1つまたは複数の灌流ポート134の近位に位置し、閉塞バルーン12の膨張を可能にする。カテーテルシース132の近位端部では、ハブ136およびシール138が単一の灌流カテーテル130の端部を閉鎖すると共に、標準的であるとおり、ツールの通過を可能にする。
図23は、ハブ136およびシール138を通して単一の灌流カテーテル130を通って挿入された可撓性内視鏡システム112を示し、可撓性内視鏡システム112の遠位端部は、単一の灌流カテーテル130の遠位端部から延びている。
【0101】
図20を参照すると、システム110は、患者内に大動脈グラフト20を配置するために使用される。このような植え込みは、一般に、上述したように実施されるが、ここで説明する特定の変更を伴う。システム110は、臨床医が下行大動脈74内の偽腔150への大動脈グラフト20の不用意な挿入による合併症を避けるのを支援する。解離は、大動脈60の内膜の裂け目により血液が中膜内に漏れるときに生じる。これにより、血液のための2つの通路が形成される。すなわち、血液の正常な通路である真腔152と、新たに形成された通路である偽腔150である。大動脈グラフト20が偽腔150内に挿入される場合、重篤な合併症を生じ得る。
【0102】
図24も参照すると、フローティング縫合リング100が大動脈74の各残りの部分の端部上をスライドする。大動脈グラフト20の近位端部は、上述のように、大動脈断端70に取り付けられ得る。近位中央セクションアンカー25が大動脈断端70に縫合された後、近位フローティング縫合リング100は、近位中央セクションアンカー25上で中央セクション22に向かってスライドされる。これにより、大動脈壁がフローティング縫合リング100と近位中央セクションアンカー25との間で圧縮される。近位フローティング縫合リング100は、これが近位中央セクションアンカー25上をスライドすることを可能にするために、その第2の状態まで拡張され得る。次いで、近位フローティング縫合リング100の調節可能セクション106は、フローティング縫合リング100がその拡張状態においてあまりにも緩い場合に、フローティング縫合リング100を締め付けるように調節され得る。次いで、近位フローティング縫合リング100は、近位中央セクションアンカー25に縫合される。
【0103】
図23に見られるように、可撓性内視鏡システム112と単一の灌流カテーテル130との組み合わせの一部が、大動脈グラフト20の中央セクション22のアクセスポート30を通して挿入される。次いで、可撓性内視鏡システム112の遠位端部は、下行大動脈74内に前進させられる。臨床医は、可撓性内視鏡システム112からの画像を利用して、可撓性内視鏡システム112の遠位端部が下行大動脈74の真腔152に位置するのか、偽腔150に位置するのかを判定する。可撓性内視鏡システム112の遠位端部が偽腔150内に位置している場合、可撓性内視鏡システム112は引き抜かれ、臨床医は次にそれを再び前進させ、可撓性内視鏡システム112の遠位端部の場所の判定を繰り返す。可撓性内視鏡システム112の遠位端部が真腔152内に位置する場合、プロセスを続ける。可撓性内視鏡システム112が引き抜かれる。その後、心臓を再始動させ、標準的技法に従って患者を心肺バイパスから外す。ジャンパーグラフト24a、24b、24cは、患者の大脳動脈に接続され、脳への血流が回復する。
【0104】
大動脈グラフト20の遠位端部は、上述のように、下行大動脈74に取り付けられ得る。これは、代わりに、臨床医の判断で、ジャンパーグラフト24a、24b、24cが大脳動脈に接続される前に行われてもよい。また、
図25を参照すると、遠位中央セクションアンカー25が大動脈74の残りの部分に縫合された後、遠位フローティング縫合リング100は、遠位中央セクションアンカー25上で中央セクション22に向かってスライドする。これにより、大動脈壁はフローティング縫合リング100と遠位中央セクションアンカー25との間で圧縮される。遠位フローティング縫合リング100は、これが遠位中央セクションアンカー25上をスライドすることを可能にするために、その第2の状態まで拡張することができる。次いで、遠位フローティング縫合リング100の調節可能セクション106は、フローティング縫合リング100がその拡張状態においてあまりにも緩い場合に、フローティング縫合リング100を締め付けるように調節され得る。次に、
図26に示すように、遠位フローティング縫合リング100は、遠位中央セクションアンカー25に縫合される。
【0105】
図58も参照すると、例示的な配備ツール300の別の実施形態が示されている。配備ツール300は、グリップ304の遠位にあり、かつグリップ304に接続された本体302を含む。本体302は、グリップ304と一体に作製されてもよいし、グリップ304とは別に作製され、後でグリップに取り付けられてもよい。本体302とグリップ304とは、互いに対して長手方向に固定されているのが有利である。本体302およびグリップ304の一方または両方は、ほぼ円筒形の形状であってよく、または任意の他の適切な形状を有してもよい。グリップ304は、ユーザによるグリップ304の取り扱いを容易にするために、そこから外側に延びる1つ以上のリッジを含むことができる。グリップ304および本体302はそれぞれ、それを通って延びる内腔214を含むことができ、この内腔214は、グリップ304の近位端部の開口308まで近位に延びる。開口308は、概ね円形であってよく、または任意の他の適切な形状を有してもよい。
図60および
図73も参照すると、ガイドワイヤ310が内腔214を通して受容され得、ガイドワイヤ310は、配備ツール300の遠位端部にある開口360から遠位に伸長可能であり、開口308からガイドワイヤグリップ312まで近位に延びる。ガイドワイヤ310およびガイドワイヤグリップ312は、以下でさらに詳細に説明するように、本体302およびグリップ304に対して長手方向にスライド可能である。
【0106】
スライダアクチュエータ320が、グリップ304の遠位に位置し得る。スライダアクチュエータ320は、ほぼ円筒形のスライダ本体322を含むことができる。スライダ本体322は、本体302の遠位端部を受容する、内部に画定されたボア324を含み得る。本体302は、その中に画定された少なくとも1つの長手方向溝326を含むことができ、これは、スライダ本体322上のタブ(不図示)と係合し、各長手方向溝326と、対応するタブとの係合は、本体302とボア324とを互いに対して実質的に長手方向に移動するように拘束し、本体302とボア324との間の回転運動を実質的に防止する。他の実施形態によれば、1つまたは複数の長手方向溝326および対応するタブは省略され、本体302およびボア324は、互いに対して自由に回転することができる。1つ以上のアーム328が、スライダ本体322から半径方向外側に延び得る。以下でさらに詳細に説明するように、1つまたは複数のアーム328は、グリップ304と同時にユーザによって把持されてもよく、1つまたは複数のアーム328は、グリップ304に対するスライダアクチュエータ320のユーザの操作を容易にする。少なくとも1つのリブ付き領域330を、オプションとしてスライダアクチュエータ320上に設けることができる。少なくとも1つのリブ付き領域330は、スライダアクチュエータ320の近位端部に位置し得る。代替的に、少なくとも1つのリブ付き領域330は、スライダアクチュエータ320上の任意の他の適切な場所に位置し得る。少なくとも1つのリブ付き領域330は、スライダアクチュエータ320をユーザが把持するのを容易にする。
【0107】
例示的な実施形態によれば、2つ以上のローラー336が、スライダアクチュエータ320の遠位端部に位置することができる。あるいは、1つ以上のローラー336が、スライダアクチュエータ320上の異なる長手方向の場所に位置付けられ得る。ローラー336は、配備ツール300の長手方向軸に対して実質的に垂直に向けられ、互いに実質的に平行に向けられ得る。ローラーフレーム338が、スライダアクチュエータ320から延びてよく、各ローラー336は2つのローラーフレーム338の間に保持され、これらのローラーフレーム338に対して回転可能である。各ローラー338は、その端部にピン340を含むことができ、各ピン340は、ローラーフレーム338の対応する開口342に受容され得る。ローラーフレーム338は、ローラー336を受容し、ローラー336をスライダ本体322から離間した場所に位置付ける。以下でさらに詳細に説明するように、格納シースの一部は、各ローラー336によって保持される。
図69も参照すると、フランジ440がローラー336の遠位に位置し、フランジ440は、本体302に取り付けられているか、またはこれと一体化されている。フランジ440は、本体302の遠位端部に位置することができる。一例として、フランジ440は、形状が実質的に正方形であってよい。別の例として、フランジ440は、実質的にI字形であってもよく、Iの各上部および下部の水平セグメントは、対応するローラーフレーム338に対して遠位でありかつ実質的に平行である。
【0108】
別の例示的な実施形態によれば、
図59に示される配備ツール301も参照すると、ローラー336を省略することができる。この実施形態では、スライダアクチュエータ320の各アーム328は、そこから延びるペグ344を含む。少なくとも1つのペグ344は、対応するアーム328に対して実質的に直角に延びることができる。代替的に、各ペグ344は、対応するアーム328に対して任意の他の適切な角度に向けられてもよい。各ペグ344は、対応するアーム328に取り付けられ得る。このように、固定ペグ344の使用は、回転可能なローラー336を含む配備ツール300の作製と比較して、配備ツール301の作製を簡略化することができる。以下でさらに詳細に説明するように、格納シースの一部は、各ペグ344によって保持される。
【0109】
図60も参照すると、配備ツール300は、本体302の遠位にあり、かつ本体302に接続されたマンドレル350を含み、配備ツール301は同様に構成され得る。マンドレル350は、本体302と一体に作製されてもよいし、または本体302とは別に作製されて、後でこれに取り付けられてもよい。本体302とマンドレル350とは、互いに対して長手方向に固定されているのが有利である。マンドレル350は、以下でさらに詳細に説明するように、血管グラフト24を通って延び、これを保持することができる。マンドレル350は本体302に対して長手方向に固定されているので、スライダアクチュエータ320はマンドレル350に対して長手方向にスライド可能である。
【0110】
図61も参照すると、シース組立体380が示されている。シース組立体380は、遠位シース352および近位シース382を含むことができ、これらはそれぞれ、異なる血管グラフト24を囲んで圧縮するように構成される。遠位シース352および近位シース382はそれぞれ、マンドレル350の上に位置付けられ、遠位シース352および近位シース382のそれぞれは、マンドレル350に対して血管グラフト24(明確にするためにこの図には示されていない)を圧縮する。血管グラフト24は、シース組立体380に沿って、遠位シース352の遠位端部近くの場所から近位シース382の近位端部近くの場所まで延びることができる。上述の他の実施形態と同様に、シース組立体380は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、時にデラウェア州ウィルミントンのE. I. Du Pont De Nemours and Companyから入手可能なダクロン(登録商標)ブランドのポリエステルとして知られる、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、などであるがこれらに限定されない、任意の適切な生体適合性材料から作製することができる。
図73も参照すると、配備ツール300、針362、およびシース組立体380を通って延びるガイドワイヤ310を示す分解組立図が示されている。遠位シース352は、近位シース382から長手方向に離間し得る。シース組立体380は、遠位シース352と近位シース382とを離間させる中央セクション384を含むことができる。中央セクション384は予め分裂しているが、遠位シース352および近位シース382はそれぞれ、ほぼ円筒形であり、したがって実質的に分裂していない。中央セクション384は、2つのリボン、すなわち上部リボン386および下部リボン388を含むことができ、これらはそれぞれ、対応する遠位シース352または近位シース382から少し離れたところから始めて、概ね平坦である。有利には、遠位シース352および近位シース382は、それが優先的に裂けるシース内の弱められたラインである、1つ以上の長手方向分離ライン389を含むことができる。リボン386、388が接合する点はまた、引裂き力を集中させ、遠位シース352および遠位シース382がこれらの場所で分裂するかまたは別様に分離するのを促す。各リボン386、388は、
図58および配備ツール300も参照すると、対応するローラー336の周りでループ状になっている。代替的に、他の実施形態によれば、
図59および配備ツール301も参照して、各リボン386、388は、スライダアクチュエータ320のアーム328上の対応するペグ344に巻き付けられ、かつ/または取り付けられ得る。以下でさらに詳細に説明するように、リボン386、388とローラー336またはペグ344との間のこのような係合により、スライダアクチュエータ320の作動中に、遠位シース352および/または近位シース382は分裂し、対応するジャンパーグラフト24を解放する。
【0111】
図60および
図62も参照すると、マンドレル350の遠位端部は、拡張器先端部202を含むことができる。内腔214は、拡張器先端部202を通って実質的に長手方向に延びる。拡張器先端部202は、その外側表面を通って画定された少なくとも1つの拡張器先端部ブリードバックポート358を含むことができ、これは、拡張器先端部202を通って画定された内腔214まで延びる。拡張器先端部202は、拡張器先端部202より近位におけるマンドレル350の直径以下の最大直径を有することができる。あるいは、拡張器先端部202は、拡張器先端部202より近位におけるマンドレル350の直径より大きいか、または小さい最大直径を有することができる。拡張器先端部202は、その遠位端部が先細になっていてよく、開口360がその遠位端部に位置し、これは拡張器先端部202を通って画定される内腔の遠位端部を表す。内腔214は、マンドレル350を通って実質的に長手方向に延びることができる。針362は、開口360から外方に遠位に伸長可能である。
図60および
図62で分かるように、針362は伸長位置にある。針362は、少なくとも部分的に配備ツール300の内腔214を通って開口360まで長手方向に延びる。針362自体は、これを通って長手方向に画定され、針362の遠位端部で開口している、内腔364を含む。また、
図62を参照すると、針362は、針362の遠位端部から離間した場所で、その壁を通って画定された針ブリードバックポート372も含んでよく、流体が針362の遠位端部から内腔364を通って針362の中に流れ込み、針ブリードバックポート372を通って針362から出ることを可能にする。拡張器先端部202は、その中に画定された中空プレナム374を含むことができる。あるいは、拡張器先端部202は、流体が中を通って流れることができる、トンネル、通路、または他のより小さな空間を含むことができる。針ブリードバックポート372がプレナム374または他の空間(拡張器先端部202内のトンネルもしくは通路など)の中に、またはそれに隣接して位置する場合、血液は、針362の遠位端部から、内腔364を通って、針362の中に流れ込み、針ブリードバックポート372を通って針362から出て、プレナム374または拡張器先端部202内の他の空間へ入り、そして拡張器先端部ブリードバックポート358から出ることができる。以下でさらに詳細に説明するように、拡張器先端部ブリードバックポート358から出る、このような血液の流れは、処置される血管の真腔における針362の遠位端部の存在を確認するために有用である。
【0112】
針362の内腔364は、ガイドワイヤ310をその中に受容する。
図58および
図73も参照すると、ガイドワイヤ310は、グリップ304内のガイドワイヤ開口308を通して配備ツール300内に供給することができる。
【0113】
また、
図59を参照すると、血管グラフト24は、実質的に本文書で前述したように、少なくとも2つの縫合カフ160を含むことができる。オプションとして、縫合カフ160のうちの少なくとも1つは、オプションとしてジャンパーグラフト24に固定されてもよく、これは、縫合カフ160のうちの少なくとも1つをジャンパーグラフト24から広げることができないことを意味する。このようにして、このような1つ以上の縫合カフ160は、血管グラフト24を組織に縫合するために使用する材料のより大きな厚さおよび体積をユーザに提供するためにのみ利用され得る。代替的に、縫合カフ160のうちの少なくとも1つは、実質的に本文書で前述したように、組織と係合するために広げられることができる。少なくとも2つの縫合カフ160を含む血管グラフト24は、
図58の配備ツール300または
図59の配備ツール301などであるがこれらに限定されない、配備ツールの任意の適切な実施形態と共に使用することができる。2つの縫合カフ160は、縫合カフ160のいずれかが血管グラフト24の端部に対して位置付けられるのに比べて、互いに近くに位置付けられ得る。また、
図83を参照すると、2つの縫合カフ160は、血管グラフト24の長手方向中心の近くに位置付けられ得、かつ/または、血管グラフト24の長手方向中心から実質的に同じ距離にそれぞれ位置付けられ得る。上述のように、少なくとも血管グラフト24の端部は、拡張可能なメッシュ34から形成され得る。あるいは、少なくとも1つの縫合カフ160は、血管グラフト24上の異なる場所に位置付けられ得る。上述のジャンパーグラフト24と同様に、少なくとも2つの縫合カフ160を含む血管グラフト24は、マンドレル350の周りに巻き付けられ、ジャンパーグラフト24の少なくとも一部は、遠位シース352または本文書で前述したようなシースの他の実施形態によって、マンドレル350に対して圧縮される。
図72も参照すると、他の実施形態によれば、少なくとも1つの縫合カフ160は、自己拡張可型とすることができる。血管グラフト24は、その中に画定された長手方向スリット450を含むことができ、拘束しているシースの除去時に血管グラフト24が自己拡張することによって、周方向に隣接するスリット450間に周方向に位置する材料が外側に拡張してローブ452を形成する。ローブ452は集合的に、ユーザが縫合できる縫合カフ160を形成する。あるいは、血管グラフト24は、長手方向に圧縮されて、ローブ452を形成させる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも2つのスリット450が、縫合カフ160ごとに血管グラフト24に画定され、少なくとも2つのローブ452が形成される。他の実施形態によれば、4つのスリット450が、縫合カフ160ごとに血管グラフト24に画定され、4つのローブ452が形成される。
図84も参照すると、組立体が圧縮構成から拡張構成に移行するときの、縫合カフ160を構成するローブ452の形成が、概略的に示される。
【0114】
図78も参照すると、
図59の配備ツール301、シース380、および血管グラフト24の組立体の分解組立図が示されている。示されるように、針362は、針362が拡張器先端部202から突出することができるように、配備ツール301のグリップ304および本体302を通って同軸に延びることができ、手動で伸長および後退されるように構成され得る。例えば、針グリップ303を針362の近位端部に設けて、操作を容易にすることができる。必要に応じて、針グリップ303の開口は、他の場所で説明された実施形態と同様に、針362を通って前進され、その遠位先端部から出る、ガイドワイヤを受容し得る。近位シース382および遠位シース352を含むシース組立体380は、スライダアクチュエータ320のペグ344と係合するためにループを形成するリボン386、388と共に、配備ツール301の上に配置され得る。本文書の開示に対応して、縫合カフ160を含み得る血管グラフトは、シース380によって配備ツール301のマンドレル350に対して拘束され、分離ライン389に沿ってシースを分裂させることによって自由になると、血管グラフト24は、その拡張構成をとることができる。
【0115】
図63も参照すると、配備ツール300のグリップ304は、グリップ304内に画定された空間392内に針後退組立体390を含むことができる。
図64も参照すると、針後退組立体390は、グリップ304に旋回可能に取り付けられたラッチ394を含む。ラッチ394は、中に軸398を受容するようにラッチを通って横方向に画定された開口396を含むことができ、軸398はグリップ304の一部であるか、またはグリップ304に取り付けられる。これにより、ラッチ394は、軸398を中心に回転可能である。代替的に、開口396はラッチを完全には貫通しておらず、ラッチ394の各側に1つずつ、2つの開口が利用され、別個の車軸が各開口内に延びる。開口396は、ラッチ394の遠位端部に近接して位置することができる。ラッチ394は、開口396の近位に位置する、実質的に平坦な第1の表面400を含むことができる。キャッチ402が、第1の表面400の近位端部から上方に、かつこれに実質的に垂直に延び得る。キャッチ402はまた、実質的に平坦な表面であってよい。ラッチ394は、実質的に平坦で、キャッチ402に対して実質的に垂直であり、キャッチ402の近位に位置する第2の表面404を含むことができる。ラッチ394の近位端部は、第2の表面404の近位端部から上方に、かつこれに実質的に垂直に延びるタブ406を含むことができる。タブ406の上端部は、その近位縁部に丸い角部408を含むことができる。丸いノッチ410が、ガイドワイヤ310を収容するために、タブ406の上面に実質的に長手方向に画定され得る。
【0116】
針後退組立体390は、少なくとも1つの板ばね412を含むことができ、板ばね412の遠位端部は、グリップ304に対して固定され、板ばね412の近位端部は、ラッチ394に対して上方に付勢される。あるいは、板ばね412は、板ばね412の近位端部をラッチ394に対して上方に付勢するために、別様にグリップ304に対して装着されてもよい。あるいは、少なくとも1つの圧縮ばね、他のタイプのばね、または他の構造もしくは機構を用いて、板ばね412の近位端部をラッチ394に対して上方に付勢してもよい。
【0117】
針後退組立体390は、グリップ304内の空間の前部に取り付けられるか、またはこれに当接するホールドオフばね(holdoff spring)413を含むことができる。ホールドオフばね413は、圧縮ばね、または任意の他の適切なばねもしくは機構であってよい。ホールドオフブロック414が、ホールドオフばね413の近位端部に取り付けられてよく、またはこれに当接してもよく、ホールドオフブロック414の長手方向の移動が針362(この図には示されていない)の対応する長手方向の移動をもたらすように針362に連結されている。ホールドオフブロック414は、第1の表面416を含むことができ、これは、実質的に平坦で、ラッチ394の第1の表面400と実質的に平行で、実質的にラッチ394の第1の表面400に接して位置付けられる。ホールドオフブロック414は、第1の表面400と実質的に平行な第1の表面416の近位端部から上方に延びるホールドオフブロックキャッチ418を含むことができる。ホールドオフブロックキャッチ418は、ラッチ394のキャッチ402に対して遠位にあり、ラッチ394のキャッチ402に対して実質的に平行であり、かつ実質的にラッチ394のキャッチ402に接して位置付けられ得る。ホールドオフブロック414は、第2の表面420を含むことができ、これは、実質的に平坦で、ラッチ394の第2の表面404と実質的に平行であり、実質的にラッチ394の第2の表面404に接して位置付けられる。ホールドオフブロック414は、ガイドワイヤ310を収容するように、ホールドオフブロックを通って長手方向に画定された通路を含み、ガイドワイヤ310は、この通路を通ってホールドオフブロック414に対して自由にスライド可能である。ホールドオフばね413は、ホールドオフブロックキャッチ418をラッチ394のキャッチ402に対して付勢し、板ばね412は、ラッチ394を付勢してホールドオフブロック414と接触させる。このように、針後退組立体390はラッチ状態にあり、ラッチ状態では、針362はホールドオフブロック414に固定され、固定位置に保持される。
【0118】
また、
図65を参照すると、針362をラッチ解除するために、ガイドワイヤグリップ312がユーザによって遠位に前進される。ガイドワイヤグリップ312が前進すると、ガイドワイヤ310も前進する。ガイドワイヤグリップ312は、その遠位端部にカム面422を含むことができる。一例として、ガイドワイヤグリップ312のカム面422は、
図65で分かるように、実質的に円錐台形であってよく、その円錐台形状の最も狭い直径は、カム面422の遠位端部またはその近傍にある。別の例として、カム面422は、ガイドワイヤグリップ312の遠位端部の下面に画定された傾斜であってもよく、この傾斜は、その近位端部よりも遠位端部のほうがガイドワイヤ310に近い。ガイドワイヤグリップ312は、さらに、カム面422の近位に、より狭い領域424を含むことができ、より狭い領域424は、グリップ304の開口308に入ることができるようにサイズ決めされ成形された直径および/または断面積を有する。代替的に、ガイドワイヤグリップ312は、より狭い領域424を含まず、カム面422のみが、グリップ304の開口308に入るようにサイズ決めされ、かつ/または成形される。ガイドワイヤグリップ312は、グリップ304の開口308に入ることができないようにサイズ決めされ、かつ/または成形された、より広い領域426を含むことができ、その結果、より広い領域426は、より広い領域426が開口308に隣接するグリップ304の外側表面に遭遇したときに、ガイドワイヤグリップ312のさらなる遠位運動を防止する停止部として作用する。
【0119】
ガイドワイヤグリップ312がグリップ304に向かって遠位に移動すると、カム面422、次いで、より狭い領域424(使用される場合)がグリップ304の開口308を通って移動し、グリップ304内に画定された空間392に入る。ガイドワイヤグリップ312が遠位に移動すると、カム面422は、ラッチ394のタブ406の近位上縁部にある丸い角部408と係合する。あるいは、丸い角部408が使用されない場合、カム面422は、任意の適切な方法でラッチ394のタブ406と係合する。ガイドワイヤ310の長手方向中心線からのカム面422の距離が近位方向に増大するため、カム面422が最初にタブ406に遭遇した後、ガイドワイヤグリップ312の継続的な遠位運動により、タブ406はガイドワイヤ310の長手方向中心線からさらに遠ざかる。タブ406のこの運動により、ラッチ394は、板ばね412によってラッチ394に加えられる付勢に抗して、軸398を中心に下方に回転する。ラッチ394が軸398を中心として下方に回転し続けると、キャッチ402は回転してホールドオフブロックキャッチ418との接触から次第に離れる。ガイドワイヤグリップ312が遠位に移動し続けると、キャッチ402は回転してホールドオフブロックキャッチ418との接触から完全に外れる。その時点で、ホールドオフばね413によって近位方向にホールドオフブロック414に加えられた力は、ホールドオフブロック414を近位に押し、ホールドオフブロック414の第1の表面416は、ラッチ394のタブ406と係合し、ラッチ394をその最初のラッチ位置から離して保持する。その結果、針362はもはやラッチ位置に保持されない。ホールドオフブロック414は近位に自由に移動し、その近位運動の過程で、ホールドオフブロック414はガイドワイヤグリップ312の遠位端部と係合する。ホールドオフばね413は、ユーザが感じることができる十分な力を及ぼすが、ガイドワイヤグリップ312がユーザの手から引っ張られるほどの力ではない。ユーザがガイドワイヤグリップ312にかかる圧力を解放すると、ホールドオフばね413によってホールドオフブロック414に対して及ぼされる近位への力が、ガイドワイヤグリップ312に伝達され、それを近位に押す。ホールドオフブロック414が針362に連結されているので、ガイドワイヤグリップ312に及ぼされる近位への力は、針362にも及ぼされ、針362を近位に移動させる。ホールドオフばね413およびホールドオフブロック414のサイズは、ラッチ394が離れて保持され、ガイドワイヤグリップ312が解放された後で、ガイドワイヤグリップ312および針362が特定の距離だけ近位に移動するように選択される。この特定の距離は、針362の遠位端部が拡張器先端部202の開口360の近位に後退することを可能にし、針362の鋭い端部を配備ツール300の本体内で安全に移動させるのに十分である。
図74~
図75も参照すると、針362の自動後退が概略的に示されている。
図74において、針362は、その伸長された遠位位置にあり、ホールドオフブロック414は対応する遠位位置にある。ラッチ394の係合解除に続いて、
図75のホールドオフブロック414は、ホールドオフばね413によって加えられた力によってその近位位置に移動し、その結果、針362が拡張器先端部202の遠位端部にある開口360内に後退する。
【0120】
動作の方法は、ここで、配備ツール300および配備ツール301との関連で説明される。針362の遠位端部は、初期状態で既に拡張器先端部202の開口360の遠位に位置付けられていてよい。他の実施形態によれば、針362の遠位端部は、初期状態で拡張器先端部202の開口360の近位に位置付けられる。もしそうであれば、針362はまず遠位に伸長される。
図65および配備ツール300を参照すると、この伸長は、ガイドワイヤグリップ312を遠位に付勢することによって実施することができる。上述のように、針362が後退位置にあるとき、ホールドオフブロック414の第1の表面416は、ラッチ394のタブ406に係合し、ラッチ394をその初期ラッチ位置から離して保持する。ガイドワイヤグリップ312が遠位に押されると、ガイドワイヤグリップ312の遠位端部は、ホールドオフブロック414の近位端部に遭遇し、次に、ホールドオフばね413の付勢に抗してホールドオフブロック414を遠位に付勢する。ホールドオフブロックキャッチ418は、最終的に、ラッチ394のキャッチ402の遠位に移動する。その時点で、ラッチ394は、板ばね412の付勢を受けて、軸398を中心に上方に回転することができる。次に、ユーザはガイドワイヤグリップ312を解放する。ラッチ394が回転して上方に戻されたので、ガイドワイヤグリップ312を解放することによって、ホールドオフばね413がホールドオフブロック414を近位に付勢し、ホールドオフブロックキャッチ418がラッチ394のキャッチ402を押圧する。次に、針後退組立体390は、
図63で分かるような構成になる。針362は、遠位端部が拡張器先端部202内の開口360の遠位に位置付けられるように伸長される。
【0121】
対応して、ガイドワイヤ310は、必要に応じて近位に引き出されてよく、次いで、ユーザは、針362の遠位端部を、処置される血管の側壁に挿入する。次いで、ガイドワイヤ310は、針310の遠位端部362における開口364から遠位に通される。ガイドワイヤ310は、例えば針362を遠位に前進させ、針後退組立体390をラッチするように、予め配備ツール300内に配置されてよく;そうでない場合、ガイドワイヤ310は、グリップ304の開口308を通って配備ツール300内に供給される。ガイドワイヤ310は、ガイドワイヤグリップ312を把持し、それを遠位に押すことによって、針362の遠位端部の開口364から遠位に押し出され得る。
図62も参照すると、針の遠位端部が拡張器先端部202内の開口360の遠位に位置付けられる、配備ツール300の挿入構成において、針ブリードバックポート372は、拡張器先端部202内に画定されたプレナム374内に位置する。同様に、
図79、および
図80の詳細図も参照すると、配備ツール301の針362の遠位端部が血管430の管腔432に入ると、血液は、血管430の管腔432から、針362の遠位端部の開口364内へ流れ、針362の内腔を通って、針ブリードバックポート372を通って外向きにプレナム374内へ入り、そしてブリードバックポート358から出る。ブリードバックポート358から出る血液の流れによって、ユーザは、針362の遠位端部が血管430の真腔432内に正確に位置付けられていること、および処置が継続可能であることを確認することができる。
【0122】
次に、ユーザは、所望に応じてガイドワイヤ310に続いて、配備ツールを遠位に移動させる。また、
図66および配備ツール301を参照すると、拡張器先端部202が血管430の管腔432に入ると、拡張器先端部202は、もともと針362によって形成された血管430の壁434の孔を拡張する。いったん拡張器先端部202が血管430の管腔432に入ると、ユーザは配備ツール301を臨床的に適切な距離だけ遠位に前進させ続けることができる。拡張器先端部202が血管430の管腔432内の適切な場所に到達した後、ユーザは配備ツール301を遠位に動かすのを停止する。
【0123】
代替的に、臨床医が2つの血管を、端と端とをつないで接合することを望む場合、針362およびガイドワイヤ310を使用する必要はないが、これらは、ユーザが所望する場合に使用することができる。
図67も参照すると、拡張器先端部202の遠位端部は、血管430の端部436に挿入される。この状況では、血管430は、配備ツールから外側への血液の流れを防止するために、配備ツール301からさらにクランプされ得るか、または血管430は、出血が問題とならないように、循環系から分離され得る。
【0124】
次いで、針362は、その目的を果たし、後退される。血管430の管腔432内に針362の遠位端部がさらに存在することは、針362の遠位端部が不注意に血管430を損傷または貫通するリスクを増大させる。針362は、配備ツール300に関してさらに詳細に上述したように、ガイドワイヤグリップ312を遠位に移動させることによって、手動または自動で後退される。針362は、針後退組立体390によって所定の位置に保持され、少なくとも部分的に針後退組立体390と接触する、ガイドワイヤグリップ312の遠位運動により、針後退組立体390が針362を解放し、針362を近位に移動させる。ホールドオフばね413は、針362を近位に自動的に後退させ、針362の遠位端部は、拡張器先端部202の遠位端部に対して近位に移動する。針362が近位に後退すると、針ブリードバックポート372はもはや拡張器先端部202のプレナム374内に位置せず、その結果、血液はもはや針ブリードバックポート372からプレナム374内に流れない。これにより、血液は、もはやブリードバックポート358から流出しない。使用される場合、ガイドワイヤ310は、ガイドワイヤ310の遠位端部が、配備ツール300のためのグリップ304内の開口308から、または配備ツール301のための針グリップ303から近位に移動するまで、ガイドワイヤを近位に引っ張ることによって除去され得る。
【0125】
拡張器先端部202が所望の場所に配置された状態で、血管グラフト24もまた、血管430に対して所望の場所にある。
図61も参照すると、ユーザは、次にシース組立体380の遠位シース352を分裂させることができる。
図68も参照すると、遠位シース352を分裂させるために、ユーザは、スライダアクチュエータ320をグリップ304に対して近位に移動させる。ユーザは、スライダアクチュエータ320の1つ以上のアーム328を把持して、そうすることができる。ユーザは、一方の手でグリップ304を保持し、他方の手でスライダアクチュエータ320を保持することができる。ユーザがスライダアクチュエータ320をグリップ304に対して近位に移動させ始めると、遠位シース352は分裂し始める。遠位シース352は、遠位方向に向かって分裂する。前述のように、遠位シース352は、1つ以上の長手方向分離ライン389を含むことができる。遠位シース352が剥離されると、剥離された場所は、配備ツールの他の実施形態に関して本文書で前述したように、もはやマンドレルに対して血管グラフト24を圧縮せず、血管グラフト24は剥離された場所で拡張し始める。また、
図76を参照すると、スライダアクチュエータ320は、その最近位位置に移動されており、遠位シース352は、遠位シース352によって拘束されていた血管グラフト24の部分が完全に拡張し、血管グラフト24のその部分が有利には血管430の内壁に対して拡張するように、完全に剥離されている。
【0126】
代替的に、スライダアクチュエータ320がローラー336の代わりにペグ344を含む、
図59に示される配備ツール301に関する、
図81も参照すると、グリップ304に対するスライダアクチュエータ320の近位運動も、遠位シース352を分裂させる。この実施形態における分裂場所は、ローラー336が利用される実施形態に比べて概ね90度回転された場所であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。先の実施形態と同様に、スライダアクチュエータ320とリボン386、388との係合によって遠位シース352が剥離されると、剥離された場所は、もはやマンドレルに対して血管グラフト24を圧縮しない。遠位シース352が完全に剥離されると、遠位シース352によって拘束されていた血管グラフト24の部分は完全に拡張し、血管グラフト24のその部分は有利には血管430の内壁に対して拡張している。対応して、
図82も参照すると、遠位シース352が完全に剥離されると、リボン386、388はスライダアクチュエータ320から自由になり、その後、後述するように、近位シース382を分裂させるために使用され得る。
【0127】
血管グラフト24は、有利には血管430の側面に形成された孔を通して配置され、血管グラフト24上の2つの縫合カフ160の遠位が血管430の側面のその孔に隣接する。次いで、ユーザは、その縫合カフ160を血管430に縫合し、血管グラフト24を所定の場所に保持するためのさらなる安全性を提供する。
図70も参照すると、血管グラフト24が血管430の端部内に配置される場合、有利には、2つの縫合カフ160の一方が血管430の端部442に配置され、その縫合カフ160が血管430の端部442に縫合され、血管グラフト24を所定の場所に保持するためのさらなる安全性を提供する。
【0128】
また、
図77を参照すると、スライダアクチュエータ320がその最近位位置にあり、遠位シース352によって拘束されていた血管グラフト24の遠位部分が完全に拡張された状態で、リボン386、388をローラーフレーム338から取り外すことができ、続いてリボンを操作して、近位シース382を剥離することができる。例えば、
図71も参照すると、配備ツール300が血管430から引き抜かれていない場合、配備ツール300が引き抜かれる。シース組立体380は血管430と接触したままであり、遠位シース352は剥離され、血管グラフト24は血管430に縫合される。あるいは、血管グラフト24を血管430に縫合した後、配備ツール300を血管430から除去する。
図70も参照すると、近位シース382を含むシース組立体380の近位端部は、第2の血管433の端部を通って第2の血管433の管腔431内に配置される。第2の血管433は、患者の体内の血管であってよく、または患者の血液を導く管腔を有する患者の身体内に植え込まれる天然もしくは人工の血管であってもよい。近位シース382は、遠位シース352が血管グラフト24の遠位端部から除去されたのと同じ方法で、血管グラフト24の近位端部から除去される。一例として、スライダアクチュエータ320を遠位に移動させて、近位シース382を血管グラフト24から剥離させることができる。別の例として、近位シース382は、リボン386、388を手で把持して引っ張るなどの任意の他の適切な方法で血管グラフト24から取り外すことができる。近位シース382が完全に剥離されると、近位シース382によって拘束されていた血管グラフト24の部分は完全に拡張し、血管グラフト24のその部分は、有利には第2の血管433の内壁に対して拡張している。血管グラフト24上の2つの縫合カフ160の近位は、第2の血管433の端部に隣接していてよく、その縫合カフ160は、第2の血管433の端部443に縫合されてよく、血管グラフト24を所定の場所に保持するためのさらなる安全性を提供する。近位シース382および遠位シース352の両方が患者から除去され、処置が完了し;血管430と第2の血管433とは接続され、血液は、所定の場所に縫合された血管グラフト24の内腔を通って、血管と第2の血管との間を流れることができる。
【0129】
図85も参照すると、別の例示的な配備ツール500が示されている。配備ツール500の遠位端部には、鈍い拡張器先端部502がある。拡張器先端部502は、上述の実施形態と同様に、血管内に形成された切開部または開口部を膨張させるようにサイズ決めされ、かつ成形される。通路504が、拡張器先端部502を通って画定され、ガイドワイヤ506が、通路504を通って伸長可能であり、かつ/または、通路504内に後退可能であり得る。針508は、拡張器先端部502を通る通路504内の中立位置に位置することができ、患者の身体内の血管を穿刺するために、拡張器先端部502に対して前進可能である。この実施形態では、針508は中空であり、ガイドワイヤ506は、針508を通過すると共に、後述するようにブリードバック表示を可能にすることができる。拡張器先端部502の近位において、配備ツール500は、この図では見えないが、上に開示された実施形態に類似し、例えば
図94~
図98に示されるようなマンドレル546を含む。概略的に示されるように、例えば拡張可能なメッシュ34から形成された端部および1つ以上の一体型縫合カフ160を有する、血管グラフト24aは、マンドレル546の周囲に巻き付けられ、後退可能なシース510によってマンドレルに対して少なくとも部分的に圧縮される。図示された実施形態では、縫合カフ160は、拡張可能なメッシュ34の部分間で中央に位置付けられているが、上述のように他の構成も好適である。ハンドル512が、取り付けまたは一体的な作製のいずれかによって、マンドレルの近位端部に接続される。ハンドル512を通って延びる内腔は、拡張器先端部502から出る通路504と連通している。したがって、ガイドワイヤグリップ514を介するなどの、ガイドワイヤ506の近位端部の操作により、ガイドワイヤ506を所望に応じて前進および後退させることができる。針508は、本開示のその他の実施形態について説明したような任意の適切な機構を使用して針前進ボタン516に連結され、拡張器先端部502内の後退位置に向かって近位に付勢される。特に、針前進ボタン516は、拡張器先端部502を越えて延びて血管壁を通した挿入を容易にする前進構成に、針508を位置付けるロック位置まで遠位に移動され得る。その後、ガイドワイヤ506が前進すると、ガイドワイヤグリップ514は、針508が自動的に後退するように針前進ボタン516を解放する。スライダアクチュエータ518は、アクチュエータ518の近位移動の結果としてシース510を選択的に引き抜くように構成される。必要に応じて、アクチュエータ518は、近位への引き抜き力のみを伝達するラチェットまたは他の適切な機構によってシース510に連結される。例えば、遠位位置から近位位置へのアクチュエータ518の第1のサイクルは、血管グラフト24aの遠位端部の配備を引き起こし得る。必要に応じて、アクチュエータ518は、第1のサイクルが完了するまで近位にのみ移動するように構成することができる。対応して、アクチュエータ518は次に、遠位位置から近位位置への第2のサイクルが血管グラフト24aの近位端部の配備を引き起こすように、遠位位置に戻る。単一のサイクルまたは3以上のサイクルで完全な配備を提供することを含め、他の構成が可能であることを認識されたい。配備ツール500はまた、三方止めコック520を通すなど、後述するような膨張流体の送達のためのフィッティング(fitting)を特徴とする。ここでは、配備ツール500を血管グラフト24aとの使用に関連して説明するが、配備ツール500は、必要に応じて、本文書に記載される任意の他のジャンパー、グラフト、またはアンカーと共に使用され得る。
【0130】
以下に詳述するように、配備ツール500の1つの例示的な使用は、大動脈分枝グラフト内に血管グラフト24aを配置するためのものである。
図86も参照すると、大動脈グラフト20の一部は、分枝グラフト24を有して示されている。開口部522が、例えばメス524または任意の他の適切なツールを用いて、分枝グラフト24の近位セクションに形成され得る。
図87も参照すると、大動脈グラフト20は、上述の実施形態と同様に、患者の脈管構造内で大動脈断端70と下行大動脈72との間に固定されているものとして示されている。次に、拡張器先端部502を有する配備ツール500の遠位端部は、開口部522を通して導入され、分枝グラフト24の内径を通して送られ、遠位端部の一方から外に前進する。グラフトクランプ526は、ばね仕掛けであり、ステントグラフトの送達および配備中の血液の流れ/損失を減少させるために、配備ツール500が内部に配された状態で、分枝グラフト24の周囲に解放可能に固定され得る。
図88も参照すると、グラフトクランプ526の詳細図が示されている。対向するジョー528が、ばね530によって閉鎖構成に付勢されており、ヒンジ532上で旋回する。閉鎖されると、ジョー528は、処置中の血液の漏出を減少させるためにグラフトを圧縮するようなサイズの概ね円形の開口部534を画定する。例示にすぎず、限定されるものではないが、開口部534は約12Fであってよい。例えば、
図87に示されるように分枝グラフト24の周囲に位置付けられたようなグラフトクランプ526の側面図を示す
図89も参照されたい。特に、グラフトクランプ526が閉鎖されると、開口部534は配備ツール500の外径に密接に一致し、分枝グラフト24は外径の周りで実質的にシールされる。
【0131】
本開示の他の実施形態と同様に、配備ツール500は、患者の血管内での位置付けを補助するためのブリードバック表示特徴部を有してもよい。
図90も参照すると、配備ツール500の遠位端部の詳細図が示されている。拡張器先端部502は、針508の内腔538と流体連通している、その外側表面を通して画定されたブリードバックポート536を備えている。さらに、配備ツール500の遠位端部の外径上の深さリブ540は、所望の量を超えてツールを挿入するリスクを低減するように構成される。この実施形態では、リブ540は、経血管動脈挿入のための所望の挿入角度に対応するように、配備ツール500の長手方向軸に対して約25°~30°傾斜されており、他の角度が、異なる用途に対して保証されるように使用されてもよい。示されたエリア542は、意図された挿入ゾーンを表し、これは、この実施形態では約1cmであるが、所望の使用に応じて保証されるように調節することもできる。
図91および
図92も参照すると、ブリードバック機能が概略的に示されている。針508の針ブリードバックポート544は、針508がその伸長構成にあるときに、拡張器先端部502のブリードバックポート536と整列される。したがって、針508が血管430の壁434を貫通した後、血管管腔432からの血液は針内腔538の中に流れ、針ブリードバックポート544を通ってブリードバックポート536から出て、血管内の針の存在を信号で知らせることができる。したがって、
図93も参照すると、ガイドワイヤ506は、針508を越えて遠位に前進され得、ガイドワイヤ506が完全に前進すると、上述したように針前進ボタン516が解放され、針508は、想像線で示すように自動的に後退する。次いで、配備ツール500は、所望の挿入深さを案内するリブ540により血管壁434を通ってさらに前進され得る。
【0132】
また、
図94を参照すると、配備ツール500の遠位端部が、(
図93に示すような)リブ540により提供される視覚的フィードバックによって、血管430内の所望の深さまで挿入されると、次に、アクチュエータ518が、例えば上述したような第1のサイクルを通して、近位に移動され、血管グラフト24aの遠位部分が、シース510を近位に引き抜くことによって配備され、血管グラフト24aのこの部分が、その圧縮された送達構成から拡張するのを可能にする。例えば、アクチュエータ518の第1のサイクルは、シース510の約3~3.5cmの近位移動を生じさせて、対応する量の血管グラフト24aを露出させることができる。この図では、アクチュエータ518の近位移動は第1のサイクルを完了しておらず、縫合カフ160はまだシース510内にある。アクチュエータ518が近位位置への移動を完了して、第1のサイクルを完了した後、アクチュエータは、遠位位置に戻ることができ、必要に応じて、第1のサイクルを完了した後に遠位位置を自動的にとるように、付勢され得る。
図95も参照すると、分枝グラフト24の端部は、血管グラフト24aがその内腔内に配備されるように位置付けられ得る。例えば、分枝グラフト24の遠位端部は、図示のように縫合カフ160に隣接して位置付けられ得る。アクチュエータ518は、例えば上述したような第2のサイクルを通して、再び近位に移動され、血管グラフト24aの近位部分は、シース510が完全に引き出されたときに配備され、血管グラフト24aの近位部分がその圧縮構成から拡張することを可能にする。所望のように、第2のサイクルの完了後、シース510が完全に引き出されていることを条件として、アクチュエータ518をその近位位置にロックすることができる。さらに、血管グラフト24aが配備されており、遠位部分は血管430内で拡張され、近位部分は分枝グラフト24内で拡張される。
【0133】
図96も参照すると、配備ツール500を伴う一連の動作が概略的に示されている。血管壁434を貫通した後、ガイドワイヤ506が前進し、ガイドワイヤグリップ514が針前進ボタン516に係合し、これを解放すると、針508は上述のように自動的に後退する。次に、アクチュエータ518の遠位位置から近位位置までの第1のサイクルは、血管グラフト24aの遠位部分からシース510を引き出し、その部分を血管430内に配備する。第1のサイクルに続いて、アクチュエータ518は、その遠位位置に戻り、次いで、アクチュエータ518の遠位位置から近位位置への第2のサイクルは、分枝グラフト24内に血管グラフト24aの近位部分を配備するために、シース510のさらなる近位移動を引き起こす。示されるように、これらの動作の結果、血管グラフト24aは、血管430および分枝グラフト24内に完全に配備されており、縫合カフ160を使用して、上述のように血管グラフト24aをさらに固定することができる。
【0134】
血管グラフト24aが、(
図86に示す)開口部522を通る血管内アプローチによって配備される場合、この動脈切開において制限の可能性が存在し、その結果、「ウエスト」または他のインピンジメントが生じる。
図95も参照すると、配備ツール500は、マンドレル546の周囲に配された膨張バルーン548を組み込んで、この状況に対処することもできる。配備ツール500を取り外す前に、膨張バルーン548の内部との流体連通を提供するために、例えばルアーフィッティングを通して、シリンジガン550が止めコック520に取り付けられる。トリガー552の動作により、プランジャー554が加圧された流体をバルーン内に送達し、動脈切開内でステントのセグメントを膨張させて狭窄部/ウエストを解放する。いくつかの実施形態では、膨張バルーン548を所望の圧力で所望の直径に膨張させるのに十分な膨張流体を送達するために使用されるトリガー552の単一ストロークは、プランジャー554の解放に至ることができ、プランジャーは、ばね556によって駆動されるか、または別様に付勢されて、バルーンを収縮させる真空を引くように選択された近位位置に自動的に戻ることができる。バルーン548の撓みは、配備ツール500が除去中に配備された血管グラフト24aと係合したままであり、それに対応してグラフトをずらすリスクを低減する。他の実施形態では、シリンジガン550は、別個の動作がプランジャー554を解放するように構成することができ、プランジャーは、同様に、所望の真空を自動的に加えてバルーンを収縮させることができる。例えば、シリンジガン550は、これらまたは任意の他の適切な技術を使用して膨張バルーン548を膨張させた後、約1気圧の真空を生成するように構成され得るが、意図された用途によって保証されるように他の圧力を使用してもよい。ここで
図97も参照すると、トリガー552の動作により、プランジャー554は、膨張バルーン548を膨張させるのに十分な流体を送達し、存在する可能性のある任意の狭窄部を拡大している。続いて、バルーン548が完全に膨張した後、
図98も参照すると、シリンジガン550は、上述のように真空を与えて、図示のようにバルーン548を収縮させるように構成される。例えば、プランジャー554は、図示のように近位に移動して、トリガー552の完全なストロークに続いて自動的に、または別個の作動に応答して、真空を引くことができる。
【0135】
上記の議論は、血管内アプローチにより配備ツール500を使用するという文脈でなされてきたが、血管グラフト24aの送達は、端と端をつなぐ構成で、患者の血液を導く血管、グラフト、または他の内腔を接合する方法で実施することもできる。
図99も参照すると、この使用の概略例が示されている。図示のように、配備ツール500の拡張器先端部502は、大動脈グラフト20の通気ポート30を通して導入され得る。対応して、拡張器先端部502は、次に、大動脈グラフト20から分枝グラフト24を通って血管430内へと進み得る。この実施形態では、上述したようなグラフトクランプ526を通気ポート30の周りに適用して、処置中の患者の血液の流れ/漏れを減少させることができる。代替的または追加的に、上述したように、グラフトクランプ526を分枝グラフト24上で使用することもできる。したがって、
図100も参照すると、配備ツール500は、拡張器先端部502と、シース510によって依然として拘束されている血管グラフト24aの遠位部分とが血管430内に位置するように位置付けられている。次に、
図101も参照すると、上述したようなアクチュエータ518の第1のサイクルに続いて、血管グラフト24aの遠位部分は、シース510を近位に引き出すことによって血管430内に配備され、縫合カフ160も露出させる。
図102も参照すると、血管グラフト24aの遠位部分が血管430内で拡張されて、それを固定したら、分枝グラフト24の相対的な位置付けを所望に応じて調節することができる。例えば、限定するものではないが、いくつかの実施形態では、血管430の端部と分枝グラフト24の端部との間の約1cmの間隔が適切であり、縫合カフ160は端部間に位置付けられる。
図103も参照すると、次に、血管グラフト24aの近位部分を、図示のように分枝グラフト24内に配備することができる。
【0136】
本文書で使用されるように、また当技術分野で慣用的に使用されるように、単語「実質的に」および近似の類似用語は、製造公差および他の製造上の不正確さから生じる、完成品の寸法および他の特性の通常の変動を指す。
【0137】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができ、同等物を用いることができることは当業者には明らかであろう。本発明は、構造の詳細、構成要素の配置、および/または上記の説明に記載されるかもしくは図面に示された方法に限定されないことが理解されるべきである。本文書の要約中の記述、および本文書中の概要の記述は、単に例示的なものであり;それらは、特許請求の範囲を限定するものではなく、限定するものとして解釈することはできない。さらに、図面は単なる例示であり、限定するものではない。見出しおよび小見出しは、読者の便宜のためのものにすぎない。それらは、本質的な意義、意味または解釈を有するものであってはならず、またそれらを有するものと解釈されてはならず、ある特定のトピックに関連するすべての情報が、特定の見出しもしくは小見出しの下に見出されるかもしくはそれらに限定されることを示すものであってはならず、また、そのようなこと示すものとみなすことはできない。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびその法的同等物に従う場合を除き、限定または制限されるものではない。
【0138】
〔実施の態様〕
(1) 血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束するように構成されている、シース組立体と、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの動作により、前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つが長手方向に分離して、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にする、アクチュエータと、
を含む、血管グラフト配備ツール。
(2) 前記シース組立体は、前記遠位シース部分と前記近位シース部分とを接続する中央セクションをさらに含み、
前記中央セクションは、少なくとも2つのリボンを含み、
前記アクチュエータは、前記リボンに係合する、実施態様1に記載の血管グラフト配備ツール。
(3) 前記アクチュエータに連結された複数のローラーをさらに含み、
各ローラーは、前記リボンのうちの1つに係合するように構成されている、実施態様2に記載の血管グラフト配備ツール。
(4) 前記ローラーは、前記マンドレルの長手方向軸に対して実質的に垂直に向けられている、実施態様3に記載の血管グラフト配備ツール。
(5) 前記アクチュエータは、複数のペグを含み、
各ペグは、前記リボンのうちの1つに係合するように構成されている、実施態様2に記載の血管グラフト配備ツール。
【0139】
(6) 前記グリップに対する前記アクチュエータの近位移動は、前記遠位シース部分を長手方向に分離させ、前記血管グラフトの遠位部分を自由にするように構成されている、実施態様2に記載の血管グラフト配備ツール。
(7) 前記アクチュエータの別の近位移動は、前記近位シース部分を長手方向に分離させ、前記血管グラフトの近位部分を自由にするように構成されている、実施態様6に記載の血管グラフト配備ツール。
(8) 前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含む、実施態様1に記載の血管グラフト配備ツール。
(9) 前記マンドレルは、これを通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能である、実施態様8に記載の血管グラフト配備ツール。
(10) 前記針は、針ブリードバックポートをさらに含み、前記針ブリードバックポートは、前記針が前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成されている、実施態様9に記載の血管グラフト配備ツール。
【0140】
(11) 前記グリップ内に針後退組立体をさらに含む、実施態様9に記載の血管グラフト配備ツール。
(12) 前記針後退組立体は、前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を保持するように構成され、前記針後退組立体を解放すると、前記針は前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する、実施態様11に記載の血管グラフト配備ツール。
(13) 前記針を通って延びるガイドワイヤをさらに含み、
前記ガイドワイヤの遠位端部は、前記針の前記内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成されている、実施態様9に記載の血管グラフト配備ツール。
(14) 前記グリップ内にあり、前記針を遠位伸長位置と後退位置との間で移行させるように構成された針後退組立体をさらに含み、
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップをさらに含み、
前記針後退組立体は、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると、前記針を前記後退位置に移行させるように構成されている、実施態様13に記載の血管グラフト配備ツール。
(15) 前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含む、実施態様1に記載の血管グラフト配備ツール。
【0141】
(16) 前記血管グラフトは、拡張可能なメッシュから形成された端部を有する、実施態様1に記載の血管グラフト配備ツール。
(17) 患者の血管に血管グラフトを植え込むための方法であって、
血管グラフト配備ツールを提供することであって、前記血管グラフト配備ツールは、グリップと、前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配されている前記血管グラフトと、遠位シース部分および近位シース部分を含むシース組立体であって、前記遠位シース部分および前記近位シース部分は、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、シース組立体と、前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータと、を含む、ことと、
前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を、前記患者の前記血管の管腔内に位置付けることと、
前記遠位シース部分および前記近位シース部分のうちの少なくとも1つを長手方向に分離させて、前記血管グラフトの少なくとも一部を自由にするように、前記アクチュエータを動作させることと、
前記血管グラフトの少なくとも前記一部を、前記血管グラフトの前記一部を前記挿入直径から拡張することによって、前記血管の前記管腔内に固定することと、
を含む、方法。
(18) 前記拡張は、自己拡張型の拡張である、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記血管グラフトを前記血管内に固定することは、縫合材料で縫合することをさらに含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記縫合することで、前記血管グラフトの縫合カフに係合する、実施態様19に記載の方法。
【0142】
(21) 前記シース組立体は、前記遠位シース部分と前記近位シース部分とを接続する中央セクションをさらに含み、
前記中央セクションは、少なくとも2つのリボンを含み、
前記アクチュエータは、前記リボンに係合し、
前記アクチュエータを前記グリップに対して近位に移動させることによって前記アクチュエータを動作させることで、前記遠位シース部分を長手方向に分離させ、前記血管グラフトの前記遠位部分を自由にすることをさらに含む、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記アクチュエータを動作させることは、長手方向に分離させ、前記血管グラフトの近位部分を自由にするための、前記グリップに対する前記アクチュエータの別の近位移動をさらに含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記血管グラフト配備ツールは、内部を通って実質的に長手方向に延びる内腔を有する前記マンドレルの前記遠位端部における拡張器先端部と、内部に内腔が画定された針と、をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔内に配され、これに対してスライド可能であり、
前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を位置付けることと、
前記血管または別のグラフトの壁を通して前記針を挿入することと、
前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置に前記針を位置付けることと、
をさらに含む、実施態様17に記載の方法。
(24) 前記針は、内腔および針ブリードバックポートを含み、
前記血管の壁を通して前記針を挿入することは、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成することを含む、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記血管または前記別のグラフトの前記壁を通して前記針を挿入した後で、前記針内腔を通してガイドワイヤを延ばすことをさらに含む、実施態様24に記載の方法。
【0143】
(26) 前記グリップは、針後退組立体をさらに含み、
前記針後退組立体を解放して前記針を前記後退位置に位置付けることをさらに含む、実施態様23に記載の方法。
(27) 前記針後退組立体を作動させることは、前記針後退組立体を通してガイドワイヤを前進させて、前記ガイドワイヤの遠位端部が前記針の内腔を通ってスライド可能に延び、前記ガイドワイヤの近位端部におけるガイドワイヤグリップが、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動が前記針後退組立体に係合したときに前記針後退組立体を解放するように構成されるようにすることを含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記血管グラフト配備ツールは、前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含み、
膨張流体を前記バルーンの内部に送達することと、
膨張に続いて前記バルーンを収縮させるために真空を引くことと、
をさらに含む、実施態様17に記載の方法。
(29) 挿入状態から配備状態に移行するように構成された血管グラフトであって、
拡張可能なメッシュを有する近位端部と、
拡張可能なメッシュを有する遠位端部と、
前記近位端部と前記遠位端部との間に位置付けられた少なくとも1つの縫合カフと、
を含み、
各縫合カフは、前記近位端部および前記遠位端部と比べて、前記血管グラフトが前記挿入状態から前記配備状態に移行するときに形成されるように構成された追加の材料を含む、血管グラフト。
(30) 前記挿入状態から前記配備状態への前記移行は、自己拡張型の拡張である、実施態様29に記載の血管グラフト。
【0144】
(31) 少なくとも2つの縫合カフが、前記血管グラフトの前記近位端部および前記遠位端部に対し、互いに比較的より近くに位置付けられている、実施態様29に記載の血管グラフト。
(32) 前記縫合カフのうちの少なくとも1つは、前記血管グラフトを実質的に前記長手方向に圧縮することによって少なくとも一部が形成されている、実施態様29に記載の血管グラフト。
(33) 前記縫合カフのうちの前記少なくとも1つは、それを貫通して画定された少なくとも2つの長手方向スリットを含み、
前記血管グラフトの拡張は、周方向に隣接する前記長手方向スリットの間に周方向に位置する前記血管グラフトの部分に、前記血管グラフトから半径方向外方に延びるローブを形成させるように構成されている、実施態様32に記載の血管グラフト。
(34) 患者内に血管グラフトを植え込むための方法であって、
拡張可能なメッシュを有する近位端部と、拡張可能なメッシュを有する遠位端部と、前記近位端部と前記遠位端部との間に位置付けられた少なくとも1つの縫合カフと、を有する前記血管グラフトを提供することと、
前記血管グラフトの少なくとも1つの端部を、前記患者の血液を導くための管腔内に位置付けることと、
前記血管グラフトを挿入状態から配備状態に拡張することと、
前記拡張の結果として、少なくとも1つの縫合カフを形成することであって、前記少なくとも1つの縫合カフは、前記近位端部および前記遠位端部に比べて追加の材料を有する、ことと、
前記血管グラフトの少なくとも1つの縫合カフを、縫合材料で縫合することによって、前記患者の血液を導くための前記管腔の壁に固定することと、
を含む、方法。
(35) 少なくとも2つの縫合カフが、前記血管グラフトの前記近位端部および前記遠位端部に対し、互いに比較的より近くに位置付けられる、実施態様34に記載の方法。
【0145】
(36) 前記患者の血液を導くための別の管腔の中に前記血管グラフトの反対側の端部を位置付けることと、
前記血管グラフトの別の第2の縫合カフを、縫合材料で縫合することによって、前記患者の血液を導くための前記別の管腔の壁に固定することと、
をさらに含む、実施態様35に記載の方法。
(37) 患者の血管に血管グラフトを植え込むための方法であって、
グリップと、前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された前記血管グラフトと、挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータと、を含む血管グラフト配備ツールを提供することと、
前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を前記患者の前記血管の管腔内に位置付けることと、
前記アクチュエータを動作させて、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にすることと、
前記血管グラフトの少なくとも前記遠位部分を、前記血管グラフトの前記部分を前記挿入直径から拡張させることによって、前記血管の前記管腔内に固定することと、
前記アクチュエータを動作させて、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にして、前記血管グラフトを分枝グラフトに固定することと、
を含む、方法。
(38) 前記血管グラフト配備ツールは、内部を通って実質的に長手方向に延びる内腔を有する前記マンドレルの前記遠位端部における拡張器先端部と、内部に内腔が画定された針と、をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能であり、
前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を位置付けることと、
前記血管の壁を通して前記針を挿入することと、
前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置に前記針を位置付けることと、
をさらに含む、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記針は、内腔および針ブリードバックポートを含み、
前記血管の壁を通して前記針を挿入することは、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成することを含む、実施態様38に記載の方法。
(40) 前記血管の前記壁を通して前記針を挿入した後に、前記針内腔を通してガイドワイヤを延ばすことをさらに含む、実施態様39に記載の方法。
【0146】
(41) 前記グリップは、針後退組立体をさらに含み、
前記針後退組立体を解放して、前記針を前記後退位置に位置付けることをさらに含む、実施態様38に記載の方法。
(42) 前記針後退組立体を作動させることは、前記針後退組立体を通してガイドワイヤを前進させ、前記ガイドワイヤの遠位端部が前記針の内腔を通ってスライド可能に延び、前記ガイドワイヤの近位端部におけるガイドワイヤグリップが、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動が前記針後退組立体に係合すると前記針後退組立体を解放するように構成されるようにすることを含む、実施態様41に記載の方法。
(43) 前記血管グラフト配備ツールが、前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含み、
膨張流体を前記バルーンの内部に送達することと、
膨張に続いて前記バルーンを収縮させるために真空を引くことと、
をさらに含む、実施態様37に記載の方法。
(44) 前記真空を引くことは、前記バルーンの膨張に続いて自動的に行われる、実施態様43に記載の方法。
(45) 前記血管グラフト配備ツールは、前記拡張器先端部の近位に形成された深さリブをさらに含み、
前記深さリブが前記血管の前記壁に隣接するまで、前記血管配備ツールを前進させることをさらに含む、実施態様38に記載の方法。
【0147】
(46) 血管グラフト配備ツールであって、
グリップと、
前記グリップの遠位に位置付けられた細長いマンドレルと、
少なくとも一部が前記マンドレルの周りに同軸に配された血管グラフトと、
挿入直径において前記マンドレルに対して前記血管グラフトを拘束する、近位に引き抜かれるように構成されたシースと、
前記グリップに対して移動可能であり、前記シース組立体に係合するアクチュエータであって、前記アクチュエータの第1の動作で、前記シースを引き抜き、前記血管グラフトの少なくとも遠位部分を自由にし、前記アクチュエータの反復動作で、前記シースをさらに引き抜き、前記血管グラフトの近位部分を自由にする、アクチュエータと、
を含む、血管グラフト配備ツール。
(47) 前記マンドレルの前記遠位端部に拡張器先端部をさらに含む、実施態様46に記載の血管グラフト配備ツール。
(48) 前記マンドレルは、その中を通って実質的に長手方向に延びる内腔を含み、
内部に内腔が画定された針をさらに含み、
前記針は、前記マンドレルの前記内腔の中に配され、これに対してスライド可能である、実施態様47に記載の血管グラフト配備ツール。
(49) 前記針は、針ブリードバックポートをさらに含み、前記針ブリードバックポートは、前記針が前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置にあるときに、前記針内腔を通り、前記針ブリードバックポートを通り、前記拡張器先端部のブリードバックポートを通る流体流路を形成するように構成されている、実施態様48に記載の血管グラフト配備ツール。
(50) 前記グリップ内に針後退組立体をさらに含む、実施態様48に記載の血管グラフト配備ツール。
【0148】
(51) 前記針後退組立体は、前記拡張器先端部を越えて突出する遠位伸長位置に前記針を保持するように構成され、前記針後退組立体を解放することにより、前記針は前記拡張器先端部を越えて突出しない後退位置まで近位に移動する、実施態様50に記載の血管グラフト配備ツール。
(52) 前記針を通って延びるガイドワイヤをさらに含み、
前記ガイドワイヤの遠位端部は、前記針の前記内腔を通ってスライド可能に伸長可能となるように構成されている、実施態様48に記載の血管グラフト配備ツール。
(53) 前記グリップ内にあり、前記針を遠位伸長位置と後退位置との間で移行させるように構成された、針後退組立体をさらに含み、
前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤの近位端部にガイドワイヤグリップをさらに含み、
前記針後退組立体は、前記ガイドワイヤグリップの遠位運動によって係合されると、前記針を前記後退位置に移行させるように構成されている、実施態様52に記載の血管グラフト配備ツール。
(54) 前記血管グラフトの下で前記マンドレルの周囲に配された膨張バルーンをさらに含む、実施態様46に記載の血管グラフト配備ツール。